温湿度に依存せず、高速で長期にわたってプリントが可能であることは、市場の要求を満足する上での最重要課題のひとつである。本発明者らが鋭意検討を行った結果、ある粒径を持った脂肪酸金属塩をトナーに含有させ、また、帯電部材の表面粗さをある範囲に規定することで、前記課題に対し良好な結果を得られることがわかった。
具体的には、帯電部材の表面層が、結着樹脂に樹脂粒子を分散して含むものであり、この樹脂粒子に由来する凸部が帯電部材の表面に形成されており、前記表面層の十点平均粗さRzjisが2μm以上30μm以下の範囲である。かつ、前記帯電部材表面の凹凸の平均間隔Smが7μm以上150μm以下の範囲である。さらに、前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上1.0μm以下であり、前記脂肪酸金属塩の遊離率が1.0%以上30.0%以下である。
本発明の効果発現についての考察を、以下で述べる。
例として、図1に示すような非磁性一成分トナーによる画像形成装置を考える。静電潜像担持体としての感光体21が矢印A方向に回転し、感光体21を帯電処理するための帯電部材22によって帯電され、感光体21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置24によってトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
現像装置24は、現像剤28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体21と対向設置されたトナー担持体としての現像ローラ25とを備え、感光体21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
感光体21上の現像剤画像は、転写ローラ29によって(中間転写体がある場合は、中間転写体を介して)転写材である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。転写後に感光体21上に残留したトナーは、クリーニングブレード30によって回収され、廃現像剤容器31に収容される。
上記の一例に上げた通り、静電潜像担持体を帯電する帯電工程は非常に重要な画像形成プロセスであり、本発明の目的の一つは、長期間にわたり、静電潜像担持体を均一に帯電することである。すなわち、帯電部材の表面層が、結着樹脂に樹脂粒子を分散して含むものであり、この樹脂粒子に由来する凸部が帯電部材の表面に形成されていると、帯電の均一性が向上する。本発明における凸部のプロファイルは、表面粗さで規定することができる。すなわち、帯電部材表面の十点平均粗さRzjisが2μm以上30μm以下であり、かつ、前記帯電部材表面の凹凸の平均間隔Smが7μm以上150μm以下の範囲が、本発明の条件である。
上記した帯電の均一性が増す理由を考える。表面層が樹脂粒子を含有していない平滑な表面の帯電部材では、静電潜像担持体表面とのニップ部両脇の空隙で放電するのみであり、ニップ内での放電は観察されない。しかし、樹脂粒子により凸部を形成した帯電部材では、静電潜像担持体とのニップ部両脇での放電に加え、ニップ内にできた空隙で放電が起きていることがわかった。このニップ内放電のおかげで、静電潜像担持体表面の電位がさらに均一になったと考えている。
しかしながら、帯電部材表面に凹凸があると、凹部にトナーやトナー由来物質により汚染され、さらにこの汚染が蓄積する傾向にあり、これを回避することは難しい。凹部に汚染物が堆積し過ぎると、空隙が埋まることでニップ内放電が起こり難くなり、帯電均一効果が薄れる方向である。この汚れ抑制と帯電均一性向上のバランスが効果的な表面粗さ条件が、上記の通り、帯電部材表面のRzjisが2μm以上30μm以下であり、凹凸の平均間隔Smが7μm以上150μm以下である。
Rzjisが30μmを超えると、帯電部材表面が汚れやすくなると同時に、空隙が深すぎて放電不良を引き起こす場合がある。2μmよりも小さいと、ニップ内放電がほとんど発生しなくなり、そもそもの本発明効果の一つである帯電均一性が発現しにくくなる。
また、表面凹凸の平均間隔Smが7μm未満では、帯電部材表面に汚染物が堆積した場合の、帯電均一効果の弱まり度合いが大きい。150μmを超えると、帯電均一性効果が低減してしまう。
本発明者らが鋭意検討した結果、以上のような帯電部材のすぐれた効果をより持続させ、弊害の発生をより抑制するトナーの条件を見出した。すなわち、少なくともトナー粒子と脂肪酸金属塩とを含有したトナーであり、前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上1.00μm以下であり、前記脂肪酸金属塩の遊離率が1.0%以上30.0%以下のトナーである。この条件のトナーが上記帯電部材と組み合わされて発現する効果を、以下で考察する。
まず、トナーに脂肪酸金属塩が含まれると、静電潜像担持体上の残トナークリーニング性が向上する。これは、従来より知られた技術であるが、上記脂肪酸金属塩のD50と遊離率とを最適化することで、そのようなクリーニング性向上を維持しつつ、大きな帯電均一性持続効果が得られることがわかった。上記の通り、帯電部材表面に凹凸がある場合、凹部汚染を完全に回避することは難しい。しかし、トナーに体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上1.00μm以下の脂肪酸金属塩が含まれることで、凹部の汚染物蓄積速度が抑制され、帯電均一性の持続効果が大きく向上することが明らかとなった。
トナーに脂肪酸金属塩が含まれていても、その脂肪酸金属塩のD50が1.00μmを超えると、帯電部材表面の凹部汚染抑制効果が得られ難い現象が見られた。従って、トナー含有の脂肪酸金属塩によるクリーニング性向上が得られたとしても、従来通りの凹部汚染が発生するため、帯電均一性の持続効果が不十分である。一方、D50が0.15μm以下であっても、帯電部材表面の凹部汚染抑制効果が薄れてしまうことがわかった。
恐らくは、D50が1.00μmを超えると、表面の凹部プロファイルと形状的にマッチしてしまうため、はまり込んでしまうものと推測する。D50が0.15μm以下であっても凹部汚染があまり抑制されない原因は、はっきりとはわからないが、メジアン径が小さいことによる表面積の増加に付随した付着力の増加ではなかろうか、と考えている。以上が、体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上1.00μm以下の脂肪酸金属塩がトナーに含まれることでの、本発明の帯電均一性持続効果の一因である。
さらにもう一つ、D50が0.15μm以上1.00μm以下である条件特有の効果がある。それは、凹部に同じ程度汚染物が蓄積されても、D50が0.15μm以上1.00μm以下の条件であると、その範囲外である場合よりも放電阻害性が少ないことである。つまり、凹部への汚染物蓄積が進行しても、それによる弊害が現れるタイミングが遅れるため、より帯電均一効果が持続するのである。静電潜像担持体の帯電は、主に帯電部材からの放電により形成されることは前述の通りだが、その放電は主に帯電部材の導電性と印加電圧により決定される。凹部の汚染により放電が阻害されるのは、その汚染物により帯電部材表面の導電性が機能しなくなるためと考えられる。上記脂肪酸金属塩が0.15μm以上1.00μm以下であり、帯電部材表面の粗さプロファイルが前述したRzjisとSmの範囲にあることの条件が揃うと、汚染物の堆積がある程度進んでも、ニップ内では汚染堆積物内に微視的な空間が生じ易いのではなかろうか。つまり、帯電部材表面と静電潜像担持体表面との間において微視的には完全に埋まらない状態が持続し、ニップ内放電が維持されるため、結果として帯電均一性が損なわれ難いのではないかと推測している。
前記脂肪酸金属塩の遊離率が1.0%以上30.0%以下という条件も、本発明の必要要件である。ここで言う遊離率とは、トナーをメッシュに通過させることで、トナー粒子から遊離する割合を言う。トナー粒子への脂肪酸金属塩の付着状態が不十分な場合は、メッシュ通過時に遊離し易くなり、逆にトナー粒子に脂肪酸金属塩が強固に付着している場合は、遊離し難くなる(測定方法の詳細は後述する)。
上記遊離率が25.0%よりも大きいと、トナーから遊離する脂肪酸金属塩が多いため、凹部への汚染物蓄積が速い。一方、遊離率が1.0%よりも小さいと、脂肪酸金属塩のトナー粒子からの遊離が非常に少ないため、効果的であるように思える。しかしながら、上記遊離率が1.0%よりも小さいと、凹部汚染抑制効果が急激に薄れることがわかった。帯電部材の汚れの主成分は、大抵の場合、転写工程後に静電潜像担持体に残留したトナーを回収するクリーニング工程をすり抜けた物質により発生する。このクリーニング工程すり抜け物質は、トナーそのものやトナーから遊離した物質(トナーの外添剤など)が支配的である場合が多い。特に遊離外添剤に代表されるトナー表面物資がより支配的である。これも完全に無くすことは難しい。つまり、クリーニング工程すり抜け物質は極僅かではあっても常に存在し、帯電部材は常にこのすり抜け物質と接触する機会が生じてしまう。これまで述べてきた通り、トナーに含まれる脂肪酸金属塩のD50が0.15μm以上1.00μm以下の場合、帯電部材表面の凹部汚染抑制効果と帯電均一性持続効果を有することがわかっている。しかし、遊離率が1.0%よりも小さいと、避けることが難しい帯電部材汚染の汚染物質に含まれる脂肪酸金属塩の割合が減少し、結果として凹部汚染抑制効果と帯電均一性持続効果が薄れてしまうのではないか、と推測している。
なお、本発明のトナー条件、すなわち、トナーに含まれる脂肪酸金属塩のD50と遊離率が上記の範囲にあると、トナー担持体やトナー規制部材の汚染も効果的に抑制されることがわかった。したがって、現像工程を含めた、優れた画像形成方法を提供することができる。
本発明は、前記脂肪酸金属塩の下記(1)式で定義されるスパン値Bが1.75以下であることで、より大きな効果が得られる。
スパン値B=(D95s−D5s)/D50s (1)式
D5s:脂肪酸金属塩の体積基準における5%積算径
D50s:脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)
D95s:脂肪酸金属塩の体積基準における95%積算径
スパン値Bが大きいことは、上記脂肪酸金属塩の粒径分布がブロードであることを意味し、小さいことは、上記脂肪酸金属塩の粒径分布がシャープであることを意味する。スパン値Bが1.75を超えると、トナー中に存在する脂肪酸金属塩の粒径のバラツキが大きくなり、帯電部材表面の凹部汚染抑制効果が薄れる方向である。スパン値Bは1.50以下がより好ましく、さらに好ましくは1.35以下である。
本発明のさらに好ましい条件は、トナーの下記(2)式で定義されるスパン値Aと前記スパン値Bが下記(3)式を満たすことである。
スパン値A=(D90t−D10t)/D50t (2)式
D10t:トナーの個数基準における10%積算径
D50t:トナーの個数基準におけるメジアン径(D50)
D90t:トナーの個数基準における90%積算径
0.25≦(A/B)≦0.75 (3)式
スパン値Aが大きいことは、上記トナー粒子の粒径分布がブロードであることを意味し、小さいことは、上記トナー粒子の粒径分布がシャープであることを意味する。また、スパン値Aとスパン値Bの比(A/B)が0.25以上0.75以下であることが好ましい。本発明において、スパン値の比がこのような範囲にあることは、トナーの粒度分布に対し、脂肪酸金属塩の粒度分布のバランスが取れていることを意味する。スパン値の比A/Bが0.25より小さい場合、トナーの粒度分布に対し脂肪酸金属塩の粒度分布がブロードであるため、トナーの帯電量が不均一となる。また、A/Bが0.25より小さい場合、クリーニング工程通過時にトナーからの物質遊離が発生しやすい現象が観察されたが、これは恐らくは上記したトナー帯電量不均一性が原因であることが予想される。これは、帯電部材汚染には不利な方向である。逆に0.75を超える場合というのは、トナーの粒度分布に対し脂肪酸金属塩の粒度分布がシャープ過ぎることを意味する。この場合、クリーニング工程をすり抜ける物質がやや増加する傾向が見受けられ、これも帯電部材汚染には不利な方向である。詳細な原因は不明だが、脂肪酸金属塩に粒度分布がある程度存在することで、大きい粒子と小さい粒子で、例えばクリーニング性とトナー帯電に作用する機能分離が働き、その結果適度な分布が存在するのではないかと推測している。
本発明のより好ましい条件の一つは、前記脂肪酸金属塩の遊離率が2.0%以上25.0%以下である。これにより、さらに帯電部材の寿命が延びる。さらに好ましくは、2.0%以上20.0%以下である。
使用する脂肪酸金属塩は脂肪酸亜鉛または脂肪酸カルシウムであることが、帯電部材汚染抑制効果を維持しつつ、優れた現像特性が得られるため、より好ましい。
帯電部材汚染抑制効果をさらに高め、優れた現像特性をよりいっそう向上するためには、上記脂肪酸金属塩のメジアン径(D50)が0.30μm以上0.75μm以下であり、スパン値Bが1.50以下であることが、好ましい。
また、帯電部材表層の表面層に含まれる樹脂粒子としては、体積平均粒径(Dv)が1μm以上40μm以下であることが、本発明の帯電均一性効果を高める好ましい条件である。より好ましくは、上記体積平均粒径(Dv)が3μm以上30μm以下である。
帯電部材表面の凹凸の平均間隔Smが15μm以上120μm以下であることも、本発明におけるより好適な条件である。凹部の帯電部材汚染抑制と帯電均一性向上効果とがよりいっそう引き立つ範囲である。
また、帯電部材の表面層に含まれる樹脂粒子は、導電性であることが好ましい。そうすることで、帯電部材表面の凹部に汚染物が堆積しても、導電部位が増すことでニップ内放電の持続性が向上する。このとき、カーボンブラックを含有する樹脂粒子を用いることが、ニップ内放電が持続するより好ましい条件である。
以下、本発明に使用できるトナーのおよび帯電部材についての例を記す。まず、トナーについて説明する。
本発明に用いられるトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、懸濁重合法、乳化重合法、懸濁造粒法の如き、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。
以下、本発明に用いられるトナー粒子を得る上で最も好適な懸濁重合法を例示して、該トナーの製造方法を説明する。
結着樹脂、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させ、これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行なうことによってトナー粒子は製造される。
上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
トナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることが可能である。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
結着樹脂を生成するための重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
これらの重合性単量体は、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃を示すように重合性単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合は、定着性が低下する。
また、トナー粒子を製造する場合においては、トナーのTHF可溶分を好ましい分子量分布とするために、低分子量ポリマーを添加することが好ましい一例である。低分子量ポリマーは、懸濁重合法によってトナー粒子を製造する場合には、重合性単量体組成物中に添加することができる。該低分子量ポリマーとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が2,000乃至5,000の範囲で、且つ、Mw/Mnが4.5未満、好ましくは3.0未満のものが定着性と現像性において好ましい。
低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の如きカルボキシル基を有する極性樹脂を併用することが好ましい。
例えば、懸濁重合法により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように、極性樹脂の存在状態を制御することができる。即ち、極性樹脂を添加することは、コアシェル構造のシェル部を強化することができるので、微小圧縮硬度を最適化することが容易となり、本発明のトナーを現像性と定着性を両立しうるトナーとすることが容易となる。
上記極性樹脂の好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1乃至25質量部であり、より好ましくは2乃至15質量部である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となりやすく、一方、25質量部を超えるとトナー粒子の表面に形成される極性樹脂の層が厚くなるために、好ましくない。
極性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。特にポリエステル樹脂が好ましく、酸価は4乃至20mgKOH/gの範囲が好ましい。酸価が4mgKOH/gより小さい場合、シェル構造を形成しにくく、かつ帯電の立ち上がりが遅く、画像濃度の低下やカブリといった弊害を引き起こしやすい。酸価が20mgKOH/gを超える場合、帯電性に影響を及ぼし現像性が悪化し易くなる。また分子量は3,000乃至30,000にメインピークの分子量を有すると、トナー粒子の流動性、負摩擦帯電特性を良好にすることができるため好ましい。
トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナーのTHF可溶成分の分子量を制御するために、結着樹脂を合成する時に架橋剤を用いてもよい。
2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部である。
重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して3乃至20質量部である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
本発明のトナーは、着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料、有機染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー系着色剤/マゼンタ系着色剤/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
重合法を用いてトナー粒子を得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系着色剤やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系着色剤を処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質(例えば、ポリオルガノシロキサン等)で処理を行っても良い。
前記水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散安定剤の例としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、無機系の難水溶性の分散安定剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散安定剤を用いることが好ましい。
また、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至2.0質量部であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
上記のような難水溶性無機分散安定剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤の粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、難水溶性無機分散安定剤を生成させて水系媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
トナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
また、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩の如きによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも、本発明の効果を十分に発揮するためには、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して0.01乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至10質量部である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
添加剤の混合工程に用いる混合機としてはヘンシェルミキサー、スーパーミキサーといった既存の高速撹拌型の混合機を用いることができる。
本発明のトナーには脂肪酸金属塩を含有しているが、トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.50質量部以下の割合で含有していることが、好ましい範囲である。
さらに、他の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。該無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子に添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体を疎水化するための処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で用いても或いは併用しても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
無機微粉体の総量は、トナー粒子100質量部に対して1.5乃至5.0質量部であることが好ましい。また、本発明の脂肪酸金属塩は、トナー母粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.50質量部以下の割合で含まれていることが弊害無く効果が得られる好ましい範囲である。
次に、本発明における帯電部材の例を述べる。
本発明の帯電部材に用いられる導電性支持体は、例えば、炭素鋼合金表面に5μmの厚さのニッケルメッキを施した円柱である。導電性支持体を構成する他の材料としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル等の金属;これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮、青銅等の合金;カーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料などが使用できる。また、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。なお、形状としては、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒状、板状、ベルト状とすることもできる。
本発明の帯電部材の表面層は、バインダー樹脂に少なくとも導電性を有する樹脂粒子を含むものである。
本発明の帯電部材の表面層に使用するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられ、具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
本発明で該バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂が好ましく、特に好適には、ラクトン変性アクリルポリオールを用い、イソシアネート化合物とで架橋したウレタン樹脂である。
ここで用いるイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表面層がより密に架橋することができ、導電性弾性層から低分子成分がローラ表面に染み出してくるのを一層効果的に防止することができる。また、該イソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由は、イソシアネート基は反応し易く、表面層塗工用塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう場合があるからである。これに対してブロックイソシアネートでは、活性なイソシアネート基がブロックされており、ブロック結合は解離温度までは解離しないので、塗料の取扱が容易になるというメリットがある。この目的のブロック剤としては、フェノール、クレゾールのようなフェノール類、ε−カプロラクタムのようなラクタム類及びメチルエチルケトオキシムのようなオキシム類が挙げられる。本発明では、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
表面層を形成する樹脂塗料には、レベリング剤を混合してもよい。レベリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
本発明帯電部材は、バインダー樹脂に少なくとも樹脂粒子が配合されている。樹脂粒子に使用する樹脂として、例えば、PMMA、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等又はこれらの共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、上記樹脂粒子は、円形度0.9以上の粒子の割合が80%以上であることが好ましい。樹脂粒子が真円から離れてしまうと、表面層を流れる電荷の流れが不均一となり、電荷が集中してしまう部分が存在する場合がある。
また、本発明では、上記樹脂粒子が導電性を有していることが好ましく、その導電性を得るためには、平均粒径10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンのようなカーボン粉等が挙げられる。
前記樹脂粒子は、体積平均粒径(Dv)が1μm以上40μm以下であることが、帯電均一性効果を高める好ましい条件であり、より好ましくは、上記体積平均粒径(Dv)が3μm以上30μm以下である。
表面層中の樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、以下の様にして算出する。表面層のある任意の点を500μmにわたって、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(商品名、株式会社日立製作所製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じ樹脂粒子を撮影した画像を、20nm間隔で組み合わせ、立体的な粒子形状を算出する。この作業を、帯電部材の表面層の任意の100点で行う。
樹脂粒子の平均粒径は、上記で得られた立体的粒子形状から、投影面積を算出し、得られた面積の円相当径を計算する。この円相当径から体積平均粒径(Dv)を求める。
また、樹脂粒子中に内包するカーボンブラックの平均粒径については、樹脂粒子を撮影した断面画像から、任意のカーボンブラック粒子100個を選択する。そして、カーボンブラック粒子の投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒径を求め、それをカーボンブラック粒子の平均粒径として求めることができる。この時、円相当径が5nm乃至500nmの範囲にある粒子のみを、測定対象として測定した。
本発明における樹脂粒子の導電性とは、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以下である樹脂粒子のこと言う。好ましい範囲は、1×102Ω・cm以上1×109Ω・cm以下である。
樹脂粒子の体積抵抗率は、粒子そのものを23℃/50%RH環境下で12h以上放置し、抵抗測定装置「Loresta−GP」(商品名、三菱化学株式会社製)を用い、添付のマニュアルに従って、試料に10Vの電圧を印加したときの測定値とする。なお、測定対象試料としては、10.1MPa(102kgf/cm2)の圧力をかけて圧縮したものを用いる。
樹脂粒子の含有量としては、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは2質量部以上120質量部以下、より好ましくは5質量部以上100質量部以下、更に好ましくは、5質量部以上80質量部以下の範囲で、より効果を奏することができる。
表面層の膜厚は、粗し剤として用いる樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)に対して、好ましくは、(Dv)/3倍以上10×(Dv)以下、より好ましくは、(Dv)/2以上5×(Dv)以下である。なお、樹脂粒子の粒径に比して、表面層の膜厚が厚すぎると、膜中に樹脂粒子が埋もれて帯電部材表面に樹脂粒子由来の凸部が形成しにくくなるので好ましくない。逆に、薄すぎると、感光体との接触や摺擦で樹脂粒子が欠落する恐れがあるので好ましくない。
なお、表面層の膜厚は、ローラ状の帯電部材にあっては、その表面層を軸方向3箇所、円周方向3箇所の計9箇所を鋭利な刃物で切り出して、その断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して測定することができ、その平均値を当該帯電部材の表面層の膜厚とする。ベルト状、板状の帯電部材では、表面層を上記と同様に分散した9箇所を切り出し、膜厚を測定する。
帯電部材の表面粗さ(Rzjis及びSm)は、JIS B0601−2001に基づき、表面粗さ計「サーフコーダーSE3400」(商品名、株式会社小坂研究所製)にて、軸方向3箇所、その円周方向2箇所の計6箇所を測定し、その平均値とする。なお、本明細書中では、接触針を先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとしたものである。
また、帯電部材の表面層には、樹脂粒子とともに、イオン導電剤、電子導電剤等の導電剤を用いて抵抗を調整することもできる。
イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されるものではない。イオン導電剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムのような無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートのような陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインのような両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムのような第四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウムのような有機酸リチウム塩などが使用できる。中では、環境変化に対して抵抗が安定なことから、特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適である。
電子導電剤としては、電子導電性を示す電子導電剤であれば特に限定されるものではない。電子導電剤としては、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀のような金属系の粒子や繊維;酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛のような金属酸化物;適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウム等の導電性金属、金属酸化物を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粒子;ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンのようなカーボン粉などが使用できる。なお、ファーネスブラック、サーマルブラックは、上述したものが支障なく使用できる。
これら導電剤は、単独で使用しても良く、2種類以上組み合わせて用いても良い。なお、表面層に導電剤を使用する場合は、環境などの外的因子に影響を受けにくいものが好ましく、そのため、一般的には電子導電剤を用いる。
導電剤は、平均粒径が0.01μm以上0.9μm以下、好ましくは0.01μm以上0.5μm以下である導電性微粒子であることが好ましい。
本発明においては、導電性支持体と表面層が必須であるが、導電性支持体と表面層の間に帯電部材としての機能を向上させるために、少なくとも1層の導電性弾性層を設けることが好ましい。また、該導電性弾性層のほかに抵抗層等が設けられていてもよい。さらに、これら導電性支持体の上に設けられる各層は、その表面が各種処理されていても良く、また、導電性支持体には直接毛制される層との接着性を往生させるために接着剤が予め塗布されていても良い。
なお、導電性弾性層は導電性弾性体からなり、そして、導電性弾性体は、少なくとも導電剤と高分子弾性体から構成されている。
高分子弾性体としては、エピクロルヒドリンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマーなどが適当である。なお、高分子弾性体としては、エピクロルヒドリンゴムが、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性が発揮することができ、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来るので、好適に用いられる。
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン(EP)単独重合体、EP−エチレンオキサイド(EO)共重合体、EP−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体及びEP−EO−AGE三元共重合体が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、EP−EO−AGE三元共重合体が特に好適である。なお、EP−EO−AGE三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。エピクロルヒドリンゴムを主成分として用いた場合、必要に応じて、その他の一般的なゴムを適宜配合する。
その他の一般的なゴムとしては、EPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を用いることができる。また、SBS、SEBS等の熱可塑性エラストマーを用いてもよい。上記の一般的なゴムを配合する場合、高分子弾性体全量に対し1質量%乃至50質量%であるのが好ましい。
導電剤としては、イオン導電剤又は電子導電剤を用いることができる。導電性弾性層の電気抵抗のムラを小さくするという目的では、イオン導電剤を含有することが好ましい。イオン導電剤では、高分子弾性体の中に均一に分散しやすく、導電性弾性体の電気抵抗が均一化となり、帯電部材に直流電圧のみを印加したときでも均一な帯電を得ることができる。
イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されるものではない。イオン導電剤としては上記表面層に使用できるものが支障なく使用できる。なお、イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから、過塩素酸4級アンモニウム塩が特に好ましい。
電子導電剤としては、電子導電性を示す電子導電剤であれば特に限定されるものではない。電子導電剤としては上記表面層に使用できるものが支障なく使用できる。
また、これら導電剤は、単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
導電性弾性体には、必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、離型剤等の配合剤を加えることもできる。
導電性弾性体を導電性支持体の上に形成する方法としては、上記の導電性弾性体の原料組成物を密閉型ミキサーで混合して、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形等の公知の成形方法によるのが好ましい。また、導電性弾性層は、導電性支持体の上に直接設けてもよいし、帯電部材が帯電ローラであるときは、予め成形したチューブ形状の導電性弾性体を導電性支持体上に被覆してもよい。なお、帯電ローラを作製するときには、導電性弾性層を、形成した後に、表面研磨して形状を整えておくことも好ましい。
帯電ローラでは、該導電性弾性層の形状が、静電潜像担持体との均一な密着性を確保するために中央部を一番太く、両端部に行くほど細くなる、クラウン形状に形成されていることが好ましい。一般に使用されている帯電ローラは、支持体の両端部に所定の押圧力を与えて感光体4当接されているので、中央部の押圧力が小さく、両端部ほど大きくなっている。そのために、帯電ローラは、真直度が十分で、支持体の剛性も十分であれば問題ないが、これらが十分でない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまう場合がある。クラウン形状は、これを防止するために有効である。
また、帯電ローラを静電潜像担持体と当接させて回転させた時、ニップ幅が均一となるために、導電性弾性層を設けたときにローラの外径差振れが小さい方が望ましい。
導電性弾性体の硬さは、マイクロ硬度70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度が70°を超えると、帯電部材と感光体との間接触が不適になりやすく、特に帯電ローラにおいてはニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる。これによって帯電が安定しなくなったり、あるいは静電潜像担持体や帯電部材の表面に現像剤その他が付着し易くなったりする等の弊害が起きる場合がある。
なお、「マイクロ硬度」とは、微小領域ゴム硬さ計「アスカー マイクロゴム硬度計 MD−1型」(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した、ゴム部材の硬さである。なお、本発明では、23℃/55%RH(NN)環境に12時間以上放置した帯電部材に対して、該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
導電性弾性体に、マイクロ硬度を小さくする目的で、可塑剤を配してもよい。その配合量は、高分弾性体100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上20質量部以下である。なお、可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることが好ましい。高分子可塑剤は、数平均分子量で、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上のものである。該分子量が2000より小さいと可塑剤がローラの表面に染み出してきて静電潜像担持体を汚染する恐れがあり、4000以上では導電性弾性を柔らかする効果が得られないことがある。
導電性弾性層は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、上記した導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
なお、通常は、導電性弾性層を作製した後に、その被覆層として表面層が設けられる。
表面層の形成方法としては、上記の表面層を構成する材料を塗料とし、該塗料を、導電性基体の上に、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法、リングコート法等により、塗工する。なお、塗料は、表面層用の各種材料を、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により溶媒中に分散することにより得られる。
表面層の膜厚を調整するには、表面層用塗料の固形分、塗工速度等を制御することにより可能である。例えば、帯電ローラの表面層形成をディップ法による時、塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表面層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。表面層塗料は、揮発させる溶媒に対して固形分を10質量%乃至40質量%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、塗工引き上げ速度を20mm/min乃至5000mm/minの範囲で行うのが適当である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明における脂肪酸金属塩、トナーに関わる物性については、下記の方法を用いて測定を行った。
<脂肪酸金属塩のメジアン径(D50)とスパン値Bの測定>
本発明で用いられる脂肪酸金属塩の体積基準のメジアン径(D50)の測定は、JIS Z8825−1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows(登録商標) WET(LA−920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA−920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行なった後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行なう。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)前記(9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸金属塩を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、この際に脂肪酸金属塩が固まりとなって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことで固まりを水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行なう。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した脂肪酸金属塩が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%〜95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、メジアン径(D50)、5%積算径および95%積算径を算出しスパン値Bを求める。
<脂肪酸金属塩の遊離率>
本発明におけるトナー中の脂肪酸金属塩の遊離率は、デジタル振動計(デジバイブロ MODEL 1332)を有するパウダーテスター(細川ミクロン社製)と、蛍光X線分析装置 Axios(PANalytical製)及び測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いて蛍光X線の強度差により脂肪酸金属塩の遊離率を求めた。
具体的な測定法としては、パウダーテスターの振動台に目開き25μm(635メッシュ)篩をセットする。この目開き25μm(635メッシュ)篩上に正確に秤量した試料5gを加え、デジタル振動計の振幅が約0.60mmになるように調整し、約2分間振動を加える。上記作業を更に2回繰り返し、試料を25μm(635メッシュ)篩に計3回とおす。次に、得られた試料を直径40mmのアルミリングに約4g載せ、プレス機にて150kNで圧縮しサンプルを作成する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)で測定した。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
脂肪酸金属塩の遊離率は、篩前後の脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度(KCPS)を測定して、下記式より求めた。
{(篩前のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度)−(篩を通過したトナーにおけるの脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度)}/(篩前のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度)
<トナーの個数基準のメジアン径(D50)とスパン値Aの測定>
トナーの個数基準のメジアン径(D50)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、個数基準のメジアン径(D50)とスパン値Aを算出する。尚、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「d50」がメジアン径(D50)である。また、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「d10」が積算10%径であり、「d90」が積算90%径である。得られたD10t、D50t、D90tより、スパン値Aが算出できる。
〈トナー粒子1の製造〉
スチレン単量体100質量部に対して、C.I.Pigment Blue15:3を16.5質量部、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物〔ボントロンE88(オリエント化学工業社製)〕を2.0質量部用意した。これらを、アトライター(三井鉱山社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液1を調製した。
一方、イオン交換水710質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液68質量部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
・マスターバッチ分散液1 40質量部
・スチレン単量体 30質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 18質量部
・低分子量ポリスチレン 20質量部
(Mw=3,000、Mn=1,050、Tg=55℃)
・炭化水素系ワックス 9質量部
(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピーク=78℃、Mw=750)
・ポリエステル樹脂 5質量部
(テレフタル酸:イソフタル酸:プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物):エチレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)=30:30:30:10の重縮合物、酸価11、Tg=74℃、Mw=11,000、Mn=4,000)
上記材料を65℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、5,000rpmにて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液7.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し重合性単量体組成物を造粒し、その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。更に昇温速度40℃/hで80℃に昇温し4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下でトナー粒子の残存モノマーを留去した。水系媒体を冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥し、シアン色のトナー粒子(1)を得た。得られたトナー粒子の物性を表1に示す。
〈トナー粒子2の製造〉
トナー粒子1の製造において、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌するところを、8,000rpmで10分間撹拌することに変更し、それ以外はトナー粒子1の製造と同様にして、トナー粒子2を得た。得られたトナー粒子2の物性を表1に示す。
〈トナー粒子3の製造〉
下記材料を予め混合し、二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、得られた微粉砕物を分級してトナー粒子3を得た。
・結着樹脂 100質量部
[スチレン−n−ブチルアクリレート共重合樹脂(Mw=30,000、Tg=62℃)]
・C.I.Pigment Blue15:3 5質量部
・ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物 3質量部
〔オリエント化学工業社製:ボントロンE88〕
・エステルワックス 6.0質量部
(ベヘン酸ベヘニル:最大吸熱ピーク=72℃、Mw=700)
得られたトナー粒子3の物性を表1に示す。
〈トナー粒子4の製造〉
乳化重合法
−−樹脂粒子分散液1の調製−−
・スチレン 75質量部
・nブチルアクリレート 25質量部
・アクリル酸 3質量部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.2質量部をイオン交換水120質量部に溶解したものに、分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム1.5質量部を溶解したイオン交換水10質量部を投入し、窒素置換を行った後、撹拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、4時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が0.29μmである樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製した。
−−樹脂粒子分散液2の調製−−
・スチレン 40質量部
・nブチルアクリレート 58質量部
・ジビニルベンゼン 0.3質量部
・アクリル酸 3質量部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.2質量部をイオン交換水120質量部に溶解したものに、分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム0.9質量部を溶解したイオン交換水10質量部を投入し、窒素置換を行った後、撹拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、4時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が0.31μmである樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製した。
−−着色剤粒子分散液1の調製−−
・C.I.ピグメントレッド122 20質量部
・アニオン性界面活性剤 3質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78質量部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液1における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
−−離型剤粒子分散液の調製−−
・離型剤 フィッシャートロプシュワックス(融点=70℃) 50質量部
・アニオン性界面活性剤 7質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200質量部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が0.5μmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液を調製した。
−−帯電制御粒子分散液の調製−−
・ジ−アルキル−サリチル酸の金属化合物 5質量部
(帯電制御剤、ボントロンE−84、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 3質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78質量部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この帯電制御粒子分散液1における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる帯電制御粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
<混合液調製>
・樹脂粒子分散液1 280質量部
・樹脂粒子分散液2 100質量部
・着色剤分散液1 40質量部
・離型剤分散液 70質量部
以上を、撹拌装置,冷却管,温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1N−水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
<凝集粒子形成>
この混合液に凝集剤として、8%塩化ナトリウム水溶液150質量部を滴下し、撹拌しながら55℃まで加熱した。この温度の時、樹脂粒子分散液3を3質量部と帯電制御剤粒子分散液を10質量部とを加えた。55℃で2時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約3.3μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
<融着工程>
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3質量部を追加した後、撹拌を継続しながら95℃まで加熱し、4.5時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、45℃で流動層乾燥を行い、スプレードライヤーで200〜300℃の気相中に分散させることより形状を調整し、トナー粒子4を得た。得られたトナー粒子4の物性を表1に示す。
〈トナー粒子5の製造〉
トナー粒子4を、風力分級機により分級した。得られたトナー粒子5の物性を表1に示す。
次に、本発明で用いる脂肪酸金属塩の製造例について述べる。
<脂肪酸金属塩1の製造>
撹拌装置付きの受け容器を用意し、撹拌機を350rpmで回転させた。この受け容器に0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液500質量部と投入し、液温を85℃に調整した。次に、この受け容器に0.2質量%硫酸亜鉛水溶液525質量部を、15分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結した。
次に、このようにして得られた脂肪酸金属塩スラリーを濾過洗浄した。得られた洗浄後の脂肪酸金属塩ケーキを粗砕後、連続瞬間気流乾燥機を用いて105℃で乾燥した。その後、ナノグラインディングミル〔NJ−300〕(サンレックス社製)にて風量6.0m3/min、処理速度80kg/hの条件で粉砕した後、リスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥して脂肪酸金属塩1を得た。得られた脂肪酸金属塩1のメジアン径(D50)は0.45μm、スパン値Bは0.92であった。脂肪酸金属塩1の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩2の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に、また、粉砕の条件を風量10.0m3/minにし、粉砕工程を3回行うように変更した。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩2を得た。得られた脂肪酸金属塩2のメジアン径(D50)は0.18μm、スパン値Bは0.99であった。脂肪酸金属塩2の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩3の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量3.6m3/minにした。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩3を得た。得られた脂肪酸金属塩3のメジアン径(D50)は0.90μm、スパン値Bは1.35であった。脂肪酸金属塩3の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩4の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に、また、粉砕の条件を風量10.0m3/minにし、粉砕工程を3回行うように変更した。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行う際、粒子の除去率を弱めた。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩4を得た。得られた脂肪酸金属塩4のメジアン径(D50)は0.18μm、スパン値Bは1.64であった。脂肪酸金属塩4の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩5の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量3.6m3/minにした。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行う際、粒子の除去率を弱めた。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩5を得た。得られた脂肪酸金属塩5のメジアン径(D50)は0.90μm、スパン値Bは1.66であった。脂肪酸金属塩5の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩6の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に変更すること以外は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩6を得た。得られた脂肪酸金属塩6のメジアン径(D50)は0.32μm、スパン値Bは1.46であった。脂肪酸金属塩6の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩7の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量4.0m3/minにした。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行う際、分級の除去率を弱めた。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩7を得た。得られた脂肪酸金属塩7のメジアン径(D50)は0.72μm、スパン値Bは1.47であった。脂肪酸金属塩7の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩8の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、粉砕工程を行った後の分級工程は行わなかった。これにより、脂肪酸金属塩8を得た。得られた脂肪酸金属塩8のメジアン径(D50)は0.51μm、スパン値Bは1.81であった。脂肪酸金属塩8の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩9の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を2.0質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を1.0質量%塩化カルシウム水溶液に変更した。また、5分間の熟成で反応を終結させた。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1と同様にして、脂肪酸金属塩9を得た。得られた脂肪酸金属塩9のメジアン径(D50)は0.48μm、スパン値Bは1.01であった。脂肪酸金属塩9の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩10の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.3質量%塩化リチウム水溶液に変更した。それ以外は脂肪酸金属塩1と同様にして、脂肪酸金属塩10を得た。得られた脂肪酸金属塩10のメジアン径(D50)は0.48μm、スパン値Bは1.14であった。脂肪酸金属塩10の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩11の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に、また、粉砕の条件を風量10.0m3/minにし、粉砕工程を4回行うように変更した。さらに、得られた脂肪酸金属塩をリスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥し、脂肪酸金属塩2を得た。得られた脂肪酸金属塩11のメジアン径(D50)は0.12μm、スパン値Bは1.69であった。脂肪酸金属塩11の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩12>
市販されているステアリン酸亜鉛(MZ2 日本油脂製)を脂肪酸金属塩12とする。メジアン径(D50)は1.29μm、スパン値Bは1.69であった。脂肪酸金属塩12の物性を表2に示す。
<トナー製造例1>
トナー粒子(1)100質量部に対し、脂肪酸金属塩(1)0.10部及びヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.5質量部(数平均一次粒子径:10nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で150秒間混合工程を行う(混合工程1)。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程1)。120秒間の休止工程後、直ちに混合工程を再開し、150秒間の混合工程を行う(混合工程2)。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程2)。120秒経過後、直ちに混合を再開し、150秒間混合を継続した(混合工程3)。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程3)。120秒経過後、直ちに混合を再開し、150秒間混合を継続した(混合工程4)。上記のように混合工程と休止工程を繰り返すことにより槽内の最高到達温度は約34℃であった。このようにして得られたトナーをトナー1とする。得られたトナー1の物性を表3に示す。
<トナー製造例2乃至7、9乃至15、17、18>
トナー製造例1と同一の混合条件にて、表3のトナー粒子、疎水性シリカ微粉体および脂肪酸金属塩の組み合わせにて、トナーを製造した。得られたトナーそれぞれの物性を表3に示す。
<トナー製造例8>
トナー製造例1において、混合工程の時間を200秒間、休止時間を180秒間、混合回数を2に変更し、表3のトナー粒子、疎水性シリカ微粉体および脂肪酸金属塩の組み合わせにて、トナー8を得た。槽内の最高到達温度は約35℃であった。得られたトナー8の物性を表3に示す。
<トナー製造例16>
トナー製造例1において、1回、2回目及び3回目の混合工程の時間を200秒間、4回目の混合工程の時間を300秒間に、その間の停止時間を60秒間に変更し、表3のトナー粒子、疎水性シリカ微粉体および脂肪酸金属塩の組み合わせにて、トナー16を得た。槽内の最高到達温度は約39℃であった。得られたトナー16の物性を表3に示す。
<トナー製造例19>
トナー製造例1において、混合工程の時間を150秒間、休止時間を180秒間、混合回数を2に変更し、表3のトナー粒子、疎水性シリカ微粉体および脂肪酸金属塩の組み合わせにて、トナー19を得た。槽内の最高到達温度は約34℃であった。得られたトナー19の物性を表3に示す。
<トナー製造例20>
トナー製造例1において、1回、2回目及び3回目の混合工程の時間を220秒間、4回目の混合工程の時間を300秒間に、その間の停止時間を60秒間に変更し、表3のトナー粒子、疎水性シリカ微粉体および脂肪酸金属塩の組み合わせにて、トナー20を得た。槽内の最高到達温度は約40℃であった。得られたトナー20の物性を表3に示す。
次に、本発明の帯電部材の製造方法について述べる。
[樹脂粒子1の製造]
イオン交換水400質量部、ポリビニルアルコール(鹸化度85%)8質量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.04質量部の混合液を用意した。一方、エチレングリコールジメタクリレート0.1質量部、過酸化ベンゾイル0.5質量部、メタクリル酸メチル100質量部及びカーボンブラック(平均粒径28nm、pH=6.0)80質量部の混合物をφ0.5mmのジルコニアビーズを充填したビスコミル分散機を用い、周速度10m/sで60時間分散させた混合液を用意した。次いで、高速撹拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を備えた2リットル用4つ口フラスコ中に上記2種類の溶液を投入し、回転数を13000rpmで分散した。その後、撹拌機、温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、空間を窒素置換した後、60℃で12時間撹拌(撹拌機の回転は55rpm)を続けて懸濁重合を完了した。冷却後、この懸濁液を濾過、洗浄し、乾燥、分級を行い、樹脂粒子1を得た。樹脂粒子1の物性を表4に示す。
[樹脂粒子2の製造]
ニッケルが溶解し、ニッケル酸化物が分散している無電解メッキ浴に、アクリル粒子「アートパールGR−400透明」(商品名、根上工業社製)を投入し、該粒子表面にニッケル、ニッケル酸化物の複合被膜を形成し、樹脂粒子2を得た。樹脂粒子2の物性を表4に示す。
[樹脂粒子3]
アクリル粒子「アートパールGR−400透明」(商品名、根上工業社製)を、樹脂粒子3とした。樹脂粒子3の物性を表4に示す。
[樹脂粒子4]
アクリル粒子「アートパールJ−4PY」(商品名、根上工業社製)を、風力分級により分級し、樹脂粒子4を得た。樹脂粒子4の物性を表4に示す。
[樹脂粒子5]
アクリル粒子「アートパールSE−050T」(商品名、根上工業社製)を、風力分級により分級し、樹脂粒子5を得た。樹脂粒子5の物性を表4に示す。
[樹脂粒子6]
アクリル粒子「アートパールSE−050T」(商品名、根上工業社製)を、樹脂粒子6とした。樹脂粒子6の物性を表4に示す。
[導電性複合微粒子の製造]
シリカ粒子(平均粒径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgにメチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合撹拌を行った。この時の撹拌速度は22rpmであった。次に、カーボンブラック粒子(平均粒径28nm、pH=6.5)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合撹拌を行った。メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆をしたシリカ粒子にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、導電性複合微粒子を得た。なお、このカーボンブラックの付着も、撹拌速度は22rpmであった。得られた導電性複合微粒子は、平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は2.3×102Ω・cmであった。
[表面処理酸化チタン粒子の製造]
針状ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、縦:横=3:1)1000g、表面処理剤イソブチルトリメトキシシラン110g及び溶媒トルエン3000gからスラリーを調製した。このスラリーを、撹拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%がφ0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得たスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30℃乃至60℃、減圧度:約13.3kPa(100Torr))によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理後の粒子を、室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理された酸化チタンを得た。
[導電性弾性層を有する原料ローラの製造]
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製芯金を導電性支持体として使用した。これに、熱硬化性接着剤(メタロックU−20 株式会社東洋化学研究所製)を塗布し、乾燥した。
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGC三元共重合体、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対して、下記成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
炭酸カルシウム 60質量部
脂肪族ポリエステル系可塑剤 8質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)(老化防止剤) 0.5質量部
酸化亜鉛 2質量部
四級アンモニウム塩 1.5質量部
カーボンブラック(平均粒径100nm、体積抵抗率0.1Ω・cm) 5質量部
これに、加硫剤として硫黄1質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部及びテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、導電性弾性層用コンパウンドを得た。
上記導電性支持体とともに、導電性弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型し、次いで、電気オーブンの中、160℃で1時間、加硫及び接着剤の硬化を行った。ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを228mmとした後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、導電性支持体上に導電性弾性層を形成して、原料ローラを得た。なお、この原料ローラのクラウン量(中央部と中央部から90mm離れた位置の外径の差)は120μmであった。
<帯電部材1の製造>
[表面層用塗布液の調製]
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が17質量%となるように調整した。
この溶液588.2質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調製した。
複合導電性微粒子 50質量部
表面処理酸化チタン粒子 30質量部
変性ジメチルシリコーンオイル*1 0.08質量部
ブロックイソシアネート混合物*2 80.14質量部
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
*1)変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
*2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。なお、HDIとIPDIについては、HDI「デュラネートTPA−B80E」(商品名:旭化成工業株式会社製)及びIPDI「ベスタナートB1370」(商品名、デグサ・ヒュルス社製)を使用した。
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて72時間分散した。分散した後、製造例1で作製した導電性を有する樹脂粒子1を2.72g(アクリルポリオール固形分100重量部に対して10重量部相当量)を添加した後、更に5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。
[帯電部材の製造]
上記で得た原料ローラを用い、表面層用塗布液を、1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、導電性弾性層上に表面層を形成して、導電性支持体上に導電性弾性層及び表面層を有する帯電部材を得た。なお、ディッピング塗布は、浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は、時間に対して直線的に速度を変化させて、行った。得られた帯電部材の物性を表4に示す。
<帯電部材2乃至11の製造>
表4に示した樹脂粒子と添加部数により、帯電部材1と同様の製造方法により帯電部材を得た。得られたそれぞれの帯電部材の物性を表4に示す。
<画像評価>
画像評価は、市販のカラーレーザープリンタ HP Color LaserJet 4700dn(HP社製)を一部改造して評価を行った。改造はプロセススピードを240mm/secに変更し、定着温度を任意の温度に設定できるようにした。さらに、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改良した。
市販のブラックカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記試験トナー(320g)とトナー担持体をカートリッジに装着し、このカートリッジを低温低湿環境下(15℃、10%RH)と高温高湿環境下(30℃、80%RH)の両環境で現像性と耐久性の評価を行なった。なお、画像評価項目は下記の通りであり、低温低湿及び高温高湿環境下での画像評価は初期と1%の印字率の画像を2万枚、4万枚の印字した後に行った。転写材は、LETTERサイズのXEROX 4024用紙(XEROX社製、75g/m2)を用いた。
〔現像スジ〕
初期、1万枚、2万枚及び3万枚のプリントアウト試験終了後、転写紙(75g/m2、A4サイズ紙)にハーフトーン画像(トナーの載り量:0.3mg/cm2)の画像をプリントアウトし、現像スジの数で評価した。
A:未発生
B:1個所以上、3個所以下
C:4個所以上、6個所以下
D:7個所以上、あるいは幅0.5mm以上のスジ
〔フィルミング〕
トナー担持体のフィルミング評価はトナー担持体表面の目視及び画像で評価を行った。
初期、2万枚、4万枚印字後のハーフトーン画像(トナーの載り量:0.3mg/cm2)において、1%印字画像部と非印字画像部の間で濃淡ムラが発生していないか目視で評価した。その後、トナー担持体表面のトナーをエアーで吹き、トナー担持体表面の観察を行った。
A:画像上に濃淡ムラの発生がなく、トナー担持体表面も良好
B:画像上に濃淡ムラの発生はないが、トナー担持体表面に若干のフィルミングが確認される。
C:画像上に軽度な濃淡ムラ発生
D:画像上に醜い濃淡ムラ発生
<放電不良画像>
ハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)を用い、2万枚、3万枚、4万枚印字後に下記基準で評価を行った。
A:非常に良い。
B:良い。
C:ハーフトーン画像にわずかにスジ状、ポチ状の画像欠陥がある。
D:スジ状、ポチ状の画像欠陥が目立つ。
<実施例1乃至22>
表5に示すトナーおよび帯電部材により、評価を行なった。結果を表5に示す。それらは、良好な結果が得られた。
<比較例1乃至8>
表6に示すトナーおよび帯電部材により、評価を行なった。結果を表6に示す。