JP5407931B2 - 発光装置及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このような発光装置としては、例えば、LED素子から出射された青色光により黄色光を出射する蛍光体を用い、それぞれの光を混色させることで白色光とする発光装置や、LED素子から出射された紫外光により、青色、緑色、赤色の光を出射する蛍光体を用いて、蛍光体から出射された3色の光を混色させることで白色光とする発光装置などが知られている。
しかしながら、LED素子に蛍光体を塗布する場合、LED素子上には配線が設けられるため、均一な塗布が困難であるという問題があった。また、塗布後に配線を保護するための封止材を設ける際に、塗布した蛍光体が封止材中に流出することで均一性が損なわれ、色ムラの原因となる場合があった。
しかし、それに伴ってLED素子の発熱が増大し、発光装置の温度上昇を招いている。上述のように、LED素子上に蛍光体が直接塗布されるか、もしくは封止材に分散された形で直接LED素子上に設けられる場合には、LED素子の発熱により蛍光体が熱劣化する場合がある。
そのような場合、青色光と黄色光を混色させることで白色光を形成するタイプの発光装置の場合には、黄色光の発光が弱くなることで色のバランスが崩れ、色ムラや色調変化が発生する問題があった。他方、赤、緑、青の光を出射する蛍光体を用いて白色光を形成するタイプの発光装置の場合は、特定の色の蛍光体が劣化することで、色のバランスが崩れ、色ムラや色調変化が発生する場合があった。
したがって、本発明の主な目的は、色ズレの発生と色ムラの発生とを抑制することができる発光装置及びその製造方法を提供することにある。
特定波長の光を出射するLED素子と、
前記LED素子の光が入射する光学素子と、
を有する発光装置において、
前記光学素子の光入射面には前記LED素子を収容可能な凹部が形成され、
前記凹部の底部と側部とには、セラミックスと蛍光体とを含有する蛍光体層が形成され、
前記凹部の底部と側部とで、前記蛍光体層中の蛍光体の濃度差が±10質量%以内で、かつ、前記蛍光体層の厚みの比率が0.5≦(側部/底部)≦2であることを特徴とする発光装置が提供される。
特定波長の光を出射するLED素子と、
前記LED素子の光が入射する光学素子とを有し、
前記光学素子の光入射面には前記LED素子を収容可能な凹部が形成され、
前記凹部にはセラミックスと蛍光体とを有する蛍光体層が形成された光学素子の製造方法において、
セラミックス前駆体と、セラミックス前駆体に対する重量比が50〜95質量%の蛍光体と、セラミックス前駆体と蛍光体との総和に対する重量比が60質量%以下の溶媒とを、混合して所定の混合液を調製する工程と、
前記混合液を前記凹部に充填する工程と、
前記混合液の一部を前記凹部から吸引する工程と、
前記凹部を乾燥させ前記蛍光体層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法が提供される。
他方、本発明の他の態様にかかる発光装置の製造方法によれば、セラミックス前駆体と蛍光体との総和に対する溶媒の重量比を60質量%以下とし、蛍光体の重量比をセラミックス前駆体に対して50〜95質量%とした混合液を調製し、当該混合液を光学素子の凹部に充填し、吸引した後に乾燥させて蛍光体層を形成することにより、混合液の粘度を適度に保つとともに、蛍光体の分散性を向上させた状態で均一な塗膜を形成することが可能となり、凹部の底部と側部とで、蛍光体層の蛍光体の濃度差と蛍光体層の厚みの比率とを一定範囲内に収めることができ、その結果色ズレの発生と色ムラの発生とを抑制することができる。
LEDチップ1としては、公知の青色LEDチップを用いることができる。
青色LEDチップとしては、InxGa1-xN系をはじめ既存のあらゆるものを使用することができる。青色LEDチップの発光ピーク波長は440〜480nmのものが好ましい。
なお、LEDチップ1の出射光の波長及び蛍光体層4の出射光の波長は限定されず、LEDチップ1による出射光の波長と、蛍光体層4による出射光の波長とが補色関係にあり合成された光が白色光となる組合せであればものであれば、LEDチップ1として使用可能であるが、本発明の効果を得るためには、LEDチップ1の出射光及び蛍光体層4の出射光の波長はそれぞれ可視光であることが好ましい。
LEDチップ1の形態としては、基板上にLEDチップを実装し、そのまま上方または側方に放射させるタイプ、又は、サファイア基板などの透明基板上に青色LEDチップを実装し、その表面にバンプを形成した後、裏返して基板上の電極と接続する、いわゆるフリップチップ接続タイプなど、どのような形態のLEDチップでも適用することが可能だが、高輝度タイプやレンズ使用タイプの製造方法により適するフリップチップタイプがより好ましい。
マウント部材2としては、特に限定はされないが、光反射性に優れ、LEDチップ1からの光に対して劣化しにくい材料を用いるのが好ましい。このようなマウント部材2の凹部21を形成する底面211の略中央部にLEDチップ1が固定(実装)されている。
このように入射面31は、凹部32を形成する内壁面321と、凹部32を囲んでマウント部材2の底面21に当接する当接面314と、当接面314から集光レンズ3の周縁部へと拡径するように傾斜する傾斜面312と、傾斜面312に連続して設けられ集光レンズ3の周縁部に向けて延びる平坦な面313と、を備えている。
当接面314は平坦であり、マウント部材2の凹部21の底面211に当接している。傾斜面312は、集光レンズ3の光軸が直交する面に対して傾斜している。周縁部の平坦な面313は、マウント部材2の上端縁と密着した状態で封止材6により接合されている。その結果、LEDチップ1からの光が外部へ漏れないようになっている。
空間部7は、マウント部材2の底面211と集光レンズ3の凹部32(蛍光体層4)との間の第1の空間部71と、マウント部材2の底面211,傾斜面212と集光レンズ3の傾斜面312との間の第2の空間部72とに、区画される。
LEDチップ1は第1の空間部71の内部に密閉されており、外気の酸素や湿度による劣化が抑制されている。
第1及び第2の空間部71,72は気体が充填されて気体層Kとなっており、例えば窒素等の気体がパージされている。
さらに、第2の空間部72に気体層Kが形成されることから、図1中矢印Zで示すように、蛍光体層4から放射された光が傾斜面312により全反射され易く、蛍光体からの出射光の利用効率が高い配置となる。
なお、第2の空間部72は形成されなくてもよく、集光レンズ3の傾斜面312とマウント部材2の傾斜面212とが当接するような構成であってもよい。
蛍光体層4は主に蛍光体とセラミックスとで構成された層である。本発明におけるセラミックスとは、焼結されることで形成された蛍光体以外の無機相を意味する。
蛍光体層4は、基本的には蛍光体が、セラミックスに対し50〜95質量%の重量比で分散されていることが好ましい。
蛍光体層4中の蛍光体としては、(A1)又は(A2)の工程と(B)の工程とを経て形成された焼結体が好ましく使用される。
(A1)Y、Gd、Ce、Sm、Al、La及びGaの酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を、化学量論比で十分に混合して混合原料を得る。
(A2)Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。
(B)(A1),(A2)の各工程で得られた混合原料のいずれか一方に対し、フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して加圧し、成形体を得る。その後、成形体を坩堝に詰め、空気中1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して、蛍光体の発光特性を持った焼結体を得ることができる。
セラミックス前駆体としては、乾燥、焼結されてセラミックスを形成する溶液に含まれる溶媒、蛍光体以外の成分を意味している。
本発明における蛍光体層4を形成する為の溶液としては、セラミックス前駆体として、無機酸化物微粒子を含有する分散液中に蛍光体粒子を分散させた分散液が一例として挙げられる。無機微粒子分散液としては後述する調整方法により作成可能であり、1nm〜500nmの平均粒径の無機酸化物微粒子が5〜50質量%の濃度で溶媒中に分散しているものが好ましく用いられる。
無機酸化物粒子としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム等の粒子が好ましく用いられ、分散媒としてはアルコール溶媒,水溶媒が使用可能である。アルコール溶媒と水溶媒との一方のみを単独で使用してもよいし、アルコール溶媒と水溶媒との両方を併用してもよい。アルコール溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロパノール(IPA)などが使用可能である。この無機酸化物微粒子分散液に蛍光体粒子を所定の重量比で分散させた後に乾燥、焼結工程を経て蛍光体層4を形成することができる。この場合、セラミックス前駆体は、無機酸化物微粒子を指す。
本発明における蛍光体層4を形成する為の溶液としては、いわゆるゾルゲル溶液といわれる溶液に蛍光体粒子を分散させた分散液を用いることもできる。ゾルゲル溶液とは、加水分解等の反応によりゲル化した後、ゲルを加熱、焼成することによりセラミックスが形成されるものであってもよいし、溶媒成分を揮発させることにより、ゲル化することなく直接セラミックスが形成されるものであってもよい。ゾルゲル溶液中には、セラミックス前駆体として、金属アルコキシドやポリシロキサン等の金属化合物が用いられる。
前者(ゾルゲル溶液)の場合、金属化合物は有機化合物でもよいし無機化合物でもよい。好ましい金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、硝酸塩、酸化物などが挙げられる。中でも金属アルコキシドは、加水分解と重合反応によりゲル化し易いため好ましく、特にテトラエトキシシランが好ましく用いられる。また、複数種の金属化合物を組み合わせて使用してもよい。ゾルゲル溶液としては、上記金属化合物の他、加水分解用の水、溶媒、触媒等を適宜含有させることが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が挙げられる。また、触媒として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、アンモニア等を用いることができる。例えば、金属化合物としてテトラエトキシシランを用いる場合、テトラエトキシシラン100質量部に対して、エチルアルコール138質量部、純水52質量部とすることが好ましい。この場合、ゲルを加熱する際の加熱温度は150℃〜250℃が好ましく、LEDチップ1等の劣化をより抑制する観点からは150℃〜200℃とすることがより好ましい。また、金属化合物としてポロシロキサンを用いる場合、塗布後の加熱温度は150℃〜500℃が好ましく、LEDチップ1等の劣化をより抑制する観点からは150℃〜350℃とすることがより好ましい。また、ゾルゲル溶液は、種々の目的により無機酸化物粒子を含有することができる。この場合、ゾルゲル溶液中のセラミックス前駆体は上述の金属化合物と無機酸化物粒子を意味しており、セラミックス前駆体の重量も無機酸化物粒子と金属化合物の総和を意味する。
本発明における蛍光体層4を形成する為の溶液としては、セラミックス前駆体としてポリシラザンを用いた溶液中に蛍光体粒子を分散させた分散液を用いることも可能である。
本発明で用いられるポリシラザンとは下記一般式(1)で表される化合物を表す。
(R1R2SiNR3)n … (1)
式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基、アリール基、ビニル基、シクロアルキル基を表し、R1、R2、R3のうち少なくとも1つは水素原子であり、好ましくはすべてが水素原子であり、nは1〜60の整数を表す。
上述の一般式(1)の範囲で、ポリシラザンの分子形状はいかなる形状であってもよく、例えば、直鎖状または環状であってもよい。
上記一般式(1)に示すポリシラザンと必要に応じた反応促進剤を、適切な溶媒に溶かした溶液中に所定の重量比で蛍光体粒子を分散させた分散液を塗布し、加熱やエキシマ光処理、UV光処理を行うことで硬化した、耐熱性、耐光性の優れたセラミック膜を作成することができる。特に、170〜230nmの範囲の波長成分を含むUVU放射線(例えばエキシマ光)を照射して硬化させた後に、加熱硬化を行うとさらに水分の浸透防止効果を向上させることができる。
反応促進剤としては酸、塩基などを用いることが好ましいが用いなくても良い。反応促進剤としては例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、塩酸、シュウ酸、フマル酸、スルホン酸、酢酸やニッケル、鉄、パラジウム、イリジウム、白金、チタン、アルミニウムを含む金属カルボン酸塩などが挙げられるがこれに限られない。
反応促進剤を用いる場合に特に好ましいのは金属カルボン酸塩であり、添加量はポリシラザンを基準にして0.01〜5mol%が好ましい添加量である。
溶媒としては脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、エーテル類、エステル類を使用することができる。好ましくはメチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルフルオライド、クロロホルム、四塩化炭素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテルである。
また、ポリシラザン溶液中には、種々の目的で無機酸化物粒子を添加することもできる。この場合、ゾルゲル溶液中のセラミックス前駆体はポリシラザンと無機酸化物粒子、更に反応促進剤が含まれる場合は反応促進剤も含めた添加剤全てを意味しており、セラミックス前駆体の重量もポリシラザン、無機酸化物及び反応促進剤の総和を意味する。
また、ポリシラザン溶液におけるポリシラザン濃度は高い方が好ましいが、濃度の上昇はポリシラザンの保存期間の短縮につながるため、ポリシラザンは、溶媒中に5wt%以上50wt%以下で溶解していることが好ましい。
発光装置100では、蛍光体層4が(1),(2)の2つの条件を同時に満たしている。
(1)凹部32の底部322と側部323とで、蛍光体層4中の蛍光体の濃度差が±10質量%以内である。
(2)凹部32の底部322と側部323とで、蛍光体層4の厚みの比率が0.5≦(側部/底部)≦2である。
(2)の条件に関しても、蛍光体層4の厚みは、底部322の「中央部324」の蛍光体層4の厚み326を測定してこれを底部322の厚みと、側部323の「中央部325」の蛍光体の厚み327を測定してこれを側部323の厚みとする。蛍光体層4の厚みの比率は、厚み326,327を比較対象として、0.5≦(厚み327/厚み326)≦2の条件を満たすか否かを判断する。
この場合、凹部32を断面視して、凹部32を、LEDチップ1の中心部10(マウント部材2との接触面の中心部)から放射状に3等分する直線を引き、その中央部を底部322と、その両端部を側部323とする。
その結果、蛍光体層4を透過した青色光と、蛍光体で生じた黄色光とが重ね合わされて、白色光が集光レンズ3の出射面33から出射される。
このとき、集光レンズ3の傾斜面312が全反射リフレクタとして機能し光利用効率が向上する。
以上の発光装置100は、自動車用のヘッドライトなどとして好適に使用することができる。
0.3<n・(√θ)/R2<5.0 … (3)
集光レンズ3の曲率R、傾斜面312の角度θが上記範囲内である場合には、集光レンズ3による屈折率効果と反射面による光路変化の効果のバランスが良く、光を効率良く正面方向に導くことができる。
集光レンズ3の曲率Rが3.15、屈折率nが1.58、集光レンズ3の凹部32の深さが0.22mm以下、集光レンズ3の凹部32の幅が√2mm、集光レンズ3の出射面33と入射面31との境界部から入射面31の平坦な面313までの鉛直方向の高さが0.25mmである。
マウント部材2の幅が8mm、マウント部材2の凹部21の幅が4.6mm、マウント部材2の凹部21を形成する底面211の幅が2.0mmである。
LEDチップ1は1mm角である。
具体的には、ガラス基板の一方の面と、集光レンズ3の入射面31側の形状に対応したキャビティを複数有する成形型(図示しない)との間に、集光レンズ3のガラス材料を充填して硬化させる。
その後、ガラス基板の他方の面と、集光レンズ3の出射面33側の形状に対応したキャビティを複数有する成形型(図示しない)との間に、集光レンズ3のガラス材料を充填して硬化させた後、離型する。
これによって、ガラス基板の両面にレンズ部を有する複数の集光レンズ3が、その周縁部で互いに連続(連結)した状態の光学素子ユニット30が成形される。
なお、光学素子ユニット30の成形方法は、これに限らず周知のガラスモールド成形や射出成形等によって成形しても良い。
これとは別に、セラミックス前駆体,蛍光体,溶媒を混合した所定の混合液40を調製する。すなわち、上記で説明した無機微粒子分散液,ゾル−ゲル溶液,ポリシラザン溶液などを調製する。セラミックス前駆体と蛍光体と溶媒とでは、溶媒の重量比を、セラミックス前駆体と蛍光体との総和に対し60質量%以下とすることが好ましい。蛍光体層4の形成成分同士のセラミックス前駆体と蛍光体とでは、蛍光体の重量比を、セラミックスに対し50〜95質量%とすることが好ましい。溶媒としてはセラミックス前駆体が分散、溶解すれば、いずれの溶媒でも使用可能である。
その後、図6(b)に示すように、混合液40の一部(特に液体成分)を、マイクロピペッタ60で凹部32から吸引する(吸い取る)。
その後、凹部32を乾燥させ、図6(c)に示すように、凹部32に対し蛍光体層4を形成する。凹部32を乾燥させる工程では、好ましくは加熱処理を2段階にわける。1段階目の加熱では、30℃以上50℃未満の温度で30〜60分間予備加熱し、2段階目の加熱では、100℃以上500℃以下の温度で60〜180分間本加熱する。
例えば、溶媒が親水性であれば、充填部も親水性であるほうが、濡れ性が良好となり、良質な膜を作成することができ、疎水性の場合も同様なことが言える。
親水性にする表面処理方法としては例えばコロナ処理に代表されるプラズマ放電処理やカップリング反応処理、オゾン処理、紫外線処理等があり、何れの処理方法を用いても良い。また適当なカップリング反応処理剤を用いることで疎水性に表面状態を変化させることが出来る。
その後、図5(b)に示すように、蛍光体層4がLEDチップ1側を向くようにして、集光レンズ3の周縁部と基台20の上端縁とを封止材6(図示略)によって接合する。接合の際には、第1の空間部71と第2の空間部72とに対し、それぞれ窒素等の気体をパージして気体層Kを形成する。
その後、1つのLEDチップ1及び1つの集光レンズ3の単位毎に、隣り合う集光レンズ3の間及び基台20を切断する。その結果、マウント部材2に、蛍光体層4を有する集光レンズ3が接合されてなる複数の発光装置100が製造される。
その結果、凹部32の底部322と側部323とで、蛍光体の濃度差と厚みの比率とが一定範囲内に収まる蛍光体層4を形成することができ、色ズレの発生と色ムラの発生とを抑制することができる(実施例参照)。
なお、ここでいう「色ズレ」とは、発光装置100を正面から見た場合に、青色光,黄色光の混色による白色領域が形成されるが、その外側に蛍光体層4を透過した青色光による青色領域も同時に形成され、白色領域と青色領域との両方が形成される現象をいい、「色ムラ」とは、発光装置100の発光面で色分布(青色光と黄色光とが点在する状態)が形成される現象をいう。
基本的には、図1と同様の構成を有する複数の発光装置を製造し、装置ごとに蛍光体層の構成に変更を加えた。
各構成の詳細は下記の通りである。
大きさが1000μm×1000μm×100μmの青色LEDチップを使用し、当該青色LEDチップをマウント部材に対しフリップチップ実装した。
(1.2)集光レンズ
出射面の曲率を3.15と、屈折率nを1.58と、凹部の深さを0.22mmと、凹部の幅を√2mmとして、設計した集光レンズを使用した。
下記蛍光体原料を充分に混合した混合物をアルミ坩堝に充填し、これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合し、水素含有窒素ガスを流通させた還元雰囲気中において、1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品((Y0.72Gd0.24)3Al5O12:Ce0.04)を得た。
Y2O3 … 7.41g
Gd2O3 … 4.01g
CeO2 … 0.63g
Al2O3 … 7.77g
蛍光体Aについて、組成を調べたところ、所望の蛍光体であることを確認でき、波長465nmの励起光における発光波長を調べたところ、おおよそ波長570nmにピーク波長を有していた。
1L(リットル)のステンレスポットに純水400gを入れ、IKA社製ウルトラタラックスT25デジタルを用いて6000rpmにて、酸化珪素(電気化学工業株式会社製SFP-20M,平均粒径300nm)600gを5分かけて添加し、その後300分間分散をおこなった。
その後、1000gのイソプロパノールを添加し、バス温40℃,2.0×102torr(2.7×104Pa)の減圧下にて残質量が800gとなるまでエバポレータにより溶媒除去する操作を3回繰り返し、最後にイソプロパノールを200g加えて総質量1000gとし、「分散液B」を得た。
100gの分散液Bに対し、40gの蛍光体Aを添加・混合し、「蛍光体分散液C」を作製した。蛍光体分散液C中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は25.8%,42.8%,25.8%であった。
その後、蛍光体分散液Cを、集光レンズの凹部に滴下・充填して乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル1」とした。
サンプル1と同様の蛍光体分散液Cを作製し、蛍光体分散液Cを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル2」とした。
100gの分散液Bに対し、240gの蛍光体Aを添加・混合し、「蛍光体分散液D」を作製した。蛍光体分散液D中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は11.7%,17.6%,70.5%であった。
その後、蛍光体分散液Dを、集光レンズの凹部に滴下・充填して乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル3」とした。
サンプル1と同様の蛍光体分散液Dを作製し、蛍光体分散液Dを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル4」とした。
100gの分散液Bに対し、140gの蛍光体Aを添加・混合し、「蛍光体分散液E」を作製した。蛍光体分散液E中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は16.6%,25%,58.4%であった。
その後、蛍光体分散液Eを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル5」とした。
100gの分散液Bに対し、540gの蛍光体Aを添加・混合し、「蛍光体分散液F」を作製した。蛍光体分散液F中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は9.4%,6.3%,84.3%であった。
その後、蛍光体分散液Fを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、150℃で120分焼成し、これを「サンプル6」とした。
ポロシロキサン分散液(CIKナノテック社製COAT−AT)1g中に蛍光体Aを0.56g混合し、「蛍光体分散液G」を作製した。蛍光体分散液G中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は55.1%,8.9%,36%であった。
その後、蛍光体分散液Gを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、350℃で180分焼成し、これを「サンプル7」とした。
ジブチルエーテル中に20質量%のポリシラザンと微量の反応促進剤(パラジウム触媒)を含有するポリシラザン分散液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製アクアミカNL120)1g中に蛍光体Aを0.8g混合し、「蛍光体分散液H」を作製した。蛍光体分散液H中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は44.4%,11.1%,44.4%であった。
その後、蛍光体分散液Hを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、350℃で180分焼成し、これを「サンプル8」とした。
ジブチルエーテル中に20質量%のポリシラザンと微量の反応促進剤(アミン系触媒)を含有するポリシラザン分散液 (AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製アクアミカNP120)1g中に蛍光体Aを0.8g混合し、「蛍光体分散液I」を作製した。蛍光体分散液I中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は44.4%,11.1%,44.4%であった。
その後、蛍光体分散液Iを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、350℃で180分焼成し、これを「サンプル9」とした。
ジブチルエーテル中に20質量%のポリシラザンを含有するポリシラザン分散液 (AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製アクアミカNN120)1g中に蛍光体Aを0.8g混合し、「蛍光体分散液J」を作製した。蛍光体分散液J中の溶媒,セラミックス前駆体,蛍光体の比率(質量%)は44.4%,11.1%,44.4%であった。
その後、蛍光体分散液Jを、集光レンズの凹部に滴下・充填して余分量を吸引し、乾燥させ、350℃で180分焼成し、これを「サンプル10」とした。
(2.1)厚みのバラツキ
各サンプルの蛍光体層を特定の箇所(凹部の底部中央部と側部中央部)で削り落とし、底部と側部とで、削る前後での深さの差を測定し、蛍光体層の厚みの比率(=側部/底部)(%)を算出した。
測定装置としてミツトヨ製測定顕微鏡MF−A505Hを使用した。
算出結果を表1に示す。
各サンプルの蛍光体層を特定の箇所(凹部の底部中央部と側部中央部)で削り落とし、底部と側部とで、蛍光体層の構成成分の濃度比を測定し、蛍光体層の濃度差(質量%)を算出した。
測定装置としてEDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)を用いた。
算出結果を表1に示す。
発光点から一定距離で写る光の色を目視で観察し、色ズレの発生の有無を調べた。一般に、発光点から離れるほど色ズレは顕著になるので、優れた発光装置ほど発光点から離れても色ズレは発生しないと判断することができる。
調べた結果を表1に示す。
表1中、◎,○,△,×の基準は下記の通りである。
「◎」…3m以上の距離でも色ズレが確認されない
「○」…3m以上の距離で色ズレが確認される
「△」…1.5m以上〜3m未満の距離で色ズレが確認される
「×」…0.5m以上〜1.5m未満の距離で色ズレが確認される
光源(発光装置)から一定の距離をあけた位置に向けて光照射し、その位置で目視により色ムラの具合を調べた。
「色ムラ」とは、発光面内の色分布を意味しており、発光点から離れるほど光源の面積の影響は小さくなり、色ムラの影響は小さくなる。
調べた結果を表1に示す。
表1中、◎,○,△,×の基準は下記の通りである。
「◎」…光源から5cm未満の位置でも色ムラが確認されない
「○」…光源から5cmの位置で色ムラが確認される
「△」…光源から10cmの位置で色ムラが確認される
「×」…光源から20cmの位置で色ムラが確認される
表1に示す通り、サンプル1〜3では色ズレ,色ムラの発生が顕著であるのに対し、サンプル4〜10では結果が良好であった。
この結果から、蛍光体層の蛍光体の濃度差と蛍光体層の厚みの比率とを一定範囲内に収めることは、色ズレの発生と色ムラの発生とを抑制するのに有用であることがわかる。
10 中心部
2 マウント部材
21 凹部
211 底面
212 傾斜面
3 集光レンズ
31 入射面
312 傾斜面
313 平坦な面
314 当接面
32 凹部
321内壁面
322 底部
323 側部
324,325 中央部
326,327 厚み
33 出射面
4 蛍光体層
6 封止材
7 空間部
71 第1の空間部
72 第2の空間部
30 光学素子ユニット
40 ディスペンサ
50 混合液
60 マイクロピペッタ
100 発光装置
201 LED素子
202 蛍光体(蛍光体層)
203 硬化性樹脂
204 レンズ
205 凹部
206 底部
207 側部
Claims (5)
- 特定波長の光を出射するLED素子と、
前記LED素子の光が入射する光学素子と、
を有する発光装置において、
前記光学素子の光入射面には前記LED素子を収容可能な凹部が形成され、
前記凹部の底部と側部とには、セラミックスと蛍光体のみからなる蛍光体層が形成され、
前記凹部の底部と側部とで、前記蛍光体層中の蛍光体の濃度差が±10質量%以内で、
かつ、前記蛍光体層の厚みの比率が0.5≦(側部/底部)≦2であることを特徴とする発光装置。 - 前記セラミックスが、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる一種以上の無機酸化物の粒子の焼結体を含む、請求項1に記載の発光装置。
- 前記セラミックスが、ポリシロキサンまたはポリシラザンの硬化物を含む、請求項1に記載の発光装置。
- 請求項1の発光装置の製造方法であって、
セラミックス前駆体と、蛍光体と、溶媒とを、混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液を前記凹部に充填する工程と、
前記混合液の一部を前記凹部から吸引する工程と、
前記凹部を乾燥させ前記蛍光体層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。 - 請求項4に記載の発光装置の製造方法において、
前記凹部を乾燥させる工程は、
30℃以上50℃未満の温度で30〜60分間予備加熱する工程と、
100℃以上500℃以下の温度で60〜180分間本加熱する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
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