JP5403542B2 - インプラントの製造方法 - Google Patents

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本発明は、インプラント用材料、その製造方法及び骨細胞との親和性向上方法に関し、特に、人工歯根及び義歯等の骨細胞との親和性が必要な材料及びその製造方法に関する。
現在、人工歯根等をはじめとする生体内に埋め込むインプラントの基材としてチタン及びチタン合金が生体適合性、耐食性及び機械的強度に優れているという理由から使用されている。しかし、チタン及びチタン合金からなる人工歯根を直接顎骨に固定した場合には、顎骨の骨組織再生の代謝バランスが崩れ、人工歯根のゆるみが生じたり、顎骨破壊が生じたりするおそれがあることが知られている。
このような人工歯根の埋め込みが失敗する原因として、人工歯根の周囲において破骨細胞が誘導され、骨破壊が生じるインプラント周囲炎がある。インプラント周囲炎は、細菌感染等の微生物刺激及び過度の咬合力等の機械的刺激に起因する場合もあるが、人工歯根自体による破骨細胞の活性化によっても生じる。
人工歯根による破骨細胞の活性化は、インプラント初期埋入時にも発生する。初期埋入時に出現した破骨細胞は、インプラントのオッセオインテグレーションを妨げ、インプラントが失敗に至る原因となる。
このような破骨細胞の活性化は、チタン及びチタン合金が骨細胞と十分な親和性を有していないことにより生じると考えられる。骨細胞との親和性が不十分な材料の表面では、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化が促進され、これにより骨破壊が生じてしまう。チタン及びチタン合金は比較的骨細胞との親和性が高い材料であることが知られている。しかし、親和性が十分とはいえず、埋め込み対象者の顎骨の状態及び口腔内の状態等によって人工歯根の埋め込みが失敗してしまう。
人工歯根等のインプラントと骨細胞との親和性を向上させる方法としてダイヤモンド様薄膜(DLC膜)による被覆が試みられている(例えば、特許文献1を参照。)。DLC膜は、炭素を主成分とし、表面が平滑で不活性であるため生体との適合性に優れている。このため、骨細胞との親和性にも優れていると考えられる。
特開2002−204825号公報
しかしながら、インプラントと骨細胞との親和性は、破骨細胞の誘導抑制だけでなく、骨芽細胞への分化の促進という観点からも検討する必要がある。破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑制できたとしても、未熟骨芽細胞から骨芽細胞への分化が抑制されたり、骨芽細胞の増殖が阻害されたりすると、インプラントのオッセオインテグレーションは促進されない。これまで、DLC膜が骨芽細胞への分化にどのような影響を与えるかについてはほとんど知られていない。
本発明は、本願発明者らの検討により得られた骨芽細胞への分化にDLC膜が与える影響に関する知見に基づき、破骨細胞への誘導を抑制すると共に、骨芽細胞への分化を促進するインプラント用材料を実現できるようにすることを目的とする。
具体的に、本発明に係るインプラント用材料は、基材と、基材の表面に形成された炭素質薄膜とを備え、炭素質薄膜は、酸素を含む官能基及び窒素を含む官能基の少なくとも一方を有し、酸素を含む官能基の存在比は4%以下であり、窒素を含む官能基の存在比を酸素を含む官能基の存在比により除した値は10以下であることを特徴とする。
本願発明者らの検討によれば、酸素を含む官能基及び窒素を含む官能基の少なくとも一方を有し、酸素を含む官能基の存在比が4%以下であり、窒素を含む官能基の存在比/酸素を含む官能基の存在比が10以下である炭素質膜の表面において骨芽細胞への分化が生じやすく、破骨細胞への分化が生じにくくなる。このため、本発明のインプラント用材料は、破骨細胞への分化を抑制できると共に、骨芽細胞への分化を促進することができるため、骨組織との親和性に優れたインプラント用材料を実現できる。
本発明のインプラント用材料において、基材は、金属とすればよい。また、基材はチタン又はチタン合金からなることが好ましい。
本発明のインプラント用材料において、基材は、人工歯根、義歯、歯冠修復物、人工骨又は人工関節とすればよい。
本発明のインプラント用材料において、炭素質膜の表面におけるゼータ電位は、−50mV以上且つ0mV未満とすればよい。
本発明に係るインプラント用材料の製造方法は、基材を準備する工程(a)と、炭化水素を含むガスを用いた化学気相堆積法により、基材の表面に炭素質膜を形成する工程(b)と、基材の表面に形成された炭素質膜の表面のダングリングボンドが安定するまで基材を真空状態に保持する工程(c)とを備え、炭素質膜における酸素を含む官能基の存在比を4%以下とし、窒素を含む官能基の存在比を酸素を含む官能基の存在比により除した値が10以下とすることを特徴とする。
本発明のインプラント用材料の製造方法は、工程(c)よりも後に、炭素質膜に塩基性窒素含有化合物のプラズマを照射する工程(d)をさらに備えていてもよい。
本発明に係るインプラント用材料の骨細胞との親和性向上方法は、基材の表面に酸素を含む官能基及び窒素を含む官能基の少なくとも一方を有する炭素質膜を形成し、酸素を含む官能基の存在比は4%以下とし、窒素を含む官能基の存在比を酸素を含む官能基の存在比により除した値を10以下とすることを特徴とする。
本発明に係る炭素質薄膜及びその製造方法によれば、破骨細胞への誘導を抑制すると共に、骨芽細胞への分化を促進するインプラント用材料を実現できる。
例示のインプラント用材料を示す断面図である。 基材の表面状態と骨芽細胞の増殖との関係を示すグラフである。 基材の表面状態と骨芽細胞への分化との関係を示すグラフである。 基材の表面状態と骨芽細胞への分化との関係を示すグラフである。 基材の表面状態と破骨細胞への分化との関係を示すグラフである。
本実施形態においてインプラントとは、人工歯根だけでなく、義歯、歯冠修復材料及び義歯修復材料等を含む。また、歯科用だけでなく、生体内に埋め込まれる、人工骨及び人工関節等の骨細胞と親和性が必要とされる器具を含む。
炭素質膜とは、ダイヤモンド様膜(DLC膜)に代表されるsp2炭素−炭素結合(グラファイト結合)及びsp3炭素−炭素結合(ダイヤモンド結合)を含む膜である。DLC膜のようなアモルファス状態の膜であっても、ダイヤモンド膜のような結晶状態の膜であってもよい。通常、sp2炭素−水素結合及びsp3炭素−水素結合を含んでいるが、水素は必須の構成要素ではない。また、シリコン(Si)又はフッ素(F)等が添加されていてもよい。
図1は、本実施形態に係るインプラント用材料の断面構成を示している。基材10の表面に膜厚が0.005μm〜3μm程度の炭素質膜20が形成されている。炭素質膜20の表面には、カルボキシル基に代表される酸素を含む官能基及びアミノ基に代表される窒素を含む官能基の少なくとも一方が存在している。本実施形態において、炭素質膜20における酸素を含む官能基の存在比は4%以下である。また、窒素を含む官能基の存在比を酸素を含む官能基の存在比で割った値は10以下である。なお、後で詳細に説明するが、酸素を含む官能基の存在比とは、X線光電子分光により求めた酸素の1s(O1s)ピークのピーク面積を炭素の1s(C1s)ピークのピーク面積で割った値であり、窒素を含む官能基の存在比とは、窒素の1s(N1s)ピークのピーク面積を炭素の1s(C1s)ピークのピーク面積で割った値である。
インプラント用材料は、骨細胞との親和性が非常に重要である。骨細胞との親和性とは、未熟骨芽細胞から骨芽細胞への分化の促進及び骨芽細胞の増殖の促進と、破骨前駆細胞から破骨細胞への誘導の抑制との両方の観点から評価する必要がある。
基材の表面に炭素質膜を形成し且つ炭素質膜の表面におけるカルボキシル基等の酸素を含む官能基の存在比を4%以下とし且つアミノ基等の窒素を含む官能基の存在比をカルボキシル基等の酸素を含む官能基の存在比で割った値を10以下とすることにより、骨芽細胞への分化の促進及び骨芽細胞の増殖の促進と、破骨細胞への誘導の抑制とを実現することができることを本願発明者らは見出した。
酸素を含む官能基の存在比を4%以下とし且つ窒素を含む官能基の存在比/酸素を含む官能基の存在比を10以下とした場合に、未熟骨芽細胞から骨芽細胞への分化が促進されると共に、破骨細胞への誘導が抑制される理由は明確ではない。しかし、酸素を含む官能基の存在比が4%以下で窒素を含む官能基の存在比/酸素を含む官能基の存在比が10よりも大きい場合に及び窒素を含む官能基の存在比/酸素を含む官能基の存在比が10以下で酸素を含む官能基の存在比が4%よりも高い場合には、骨芽細胞は増殖するが骨芽細胞への分化の促進は認められない。このことから、骨細胞の親和性は炭素質膜の表面におけるカルボキシル基とアミノ基とのバランスによって制御されると考えられる。
歯科インプラントの治療において、血小板が治療成績に大きな影響を与えることが知られている。例えば、インプラントの埋入前に、患者の血液より得た血小板を含む血漿(Platelet-Rich Plasma)にインプラントを浸漬し、インプラントの表面に血小板を吸着させると治療がより確実に行われることが知られている。一方、炭素質膜の表面におけるアミノ基の存在比及びカルボキシル基の存在比は、炭素質膜の表面のゼータ電位に影響を与え、炭素質膜の表面におけるゼータ電位ゼータ電位の値が−50mV以下の場合にはほとんど血小板が吸着しないことが知られている。酸素を含む官能基であるカルボキシル基の存在比が4%以下で且つ窒素を含む官能基であるアミノ基の存在比/酸素を含む官能基であるカルボキシル基の存在比が10以下の場合におけるゼータ電位の値は−60mV程度〜0mV程度となる。このことから、炭素質膜の表面のゼータ電位は、−50mV以上且つ0mV以下であることが好ましい。
本実施形態のインプラント用材料は基材の表面を炭素質膜により覆うため、基材がどのような材質であっても優れた骨組織との親和性を示す。このため、基材は強度等の特性を満たしていればどのような材質であってもよい。例えば、チタン及びチタン合金等をはじめとする金属、樹脂又はセラミック等を用いることができる。また、人工歯根をはじめ、義歯、人工骨及び人工関節等の骨細胞と親和性が必要とされる種々のインプラントに適用することが可能である。
炭素質膜は、化学気相堆積法(CVD法)により形成すればよい。またCVD法以外の、スパッタ法、プラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーション法等により形成してもよい。
炭素質膜の成膜中及び成膜後にチャンバ内に存在する酸素及び水分は、炭素質膜の表面にカルボキシル基等の酸素を含む官能基を生成する原因となる。このため、酸素を含む官能基の存在比を4%以下とする場合には、成膜の際に高純度の原料ガスを用い、さらに吸着脱水装置等を介して原料ガスを供給することが好ましい。また、成膜完了後における酸素との結合を抑制するために、成膜完了直後は一定時間真空中に保持し、炭素質膜のダングリングボンドを安定化することが好ましい。例えばプラズマCVD法により炭素質膜を成膜する場合、プラズマ生成に用いるアルゴンガスの純度を99.9999%以上とし、成膜終了後は基板の温度が常温となった後、少なくとも10分間、好ましくは60分以上真空中に放置すればよい。
炭素質膜へアミノ基等の窒素を含む官能基を導入する必要がある場合には、塩基性窒素含有化合物のプラズマを炭素質膜に照射すればよい。塩基性窒素含有化合物としては、アンモニアをはじめとして、一般式がNR123により示される有機アミン類(但し、R1、R2及びR3は水素、−CH3、−C25、−C37又は−C48であり、R1、R2及びR3は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)又はベンジルアミン及びその2級、3級アミン等を用いればよい。但し、アンモニアがコスト、取り扱いの容易さから好ましい。なお、プラズマ照射時におけるチャンバ内の到達真空度は、0.01Pa程度〜500Pa程度とすればよい。但し、到達真空度が高い方が、空気中の酸素の影響を受けることがなく好ましく、5×10-3Pa程度としてもよい。
炭素質膜に酸素を含む官能基をさらに導入する必要がある場合には、酸素プラズマ又は酸素を含むガスのプラズマ等を照射すればよい。また、アンモニア等のプラズマを照射する際の到達真空度を低くしてもよい。
なお、プラズマ照射装置は、どのような構造のものを用いてもよい。また、放電形式についても、どのようなものを用いてもよく、例えば平行平板方式、アフターグロー放電方式、電磁誘導型及び有磁場型等を用いればよい。プラズマ照射条件は特に限定されない。例えば、プラズマ発生用の電源としては、商用周波数(50Hz又は60Hz)、高周波(ラジオ周波数)又はマイクロ波領域等の各種の電源周波数を用いることができる。さらに、原料ガスの圧力制御方法や供給構造についても特に限定するものではない。しかし、であまりエッチングレートが大きいプラズマ照射条件を用いると、炭素質薄膜にダメージを与えるおそれがある。
炭素質膜の厚さは特に限定されるものではないが、0.005μm〜3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01μm〜1μmの範囲である。
また、炭素質膜は基材の表面に直接形成することができるが、基材と炭素質薄膜とをより強固に密着させるために、基材と炭素質薄膜との間に中間層を設けてもよい。中間層の材質としては、基材の種類に応じて種々のものを用いることができるが、珪素(Si)と炭素(C)、チタン(Ti)と炭素(C)又はクロム(Cr)と炭素(C)からなるアモルファス膜等の公知のものを用いることができる。その厚みは特に限定されるものではないが、0.005μm〜0.3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲である。中間層は、例えば、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法、溶射法、イオンプレーティング法又はアークイオンプレーティング法等を用いて形成すればよい。
(一実施例)
以下に、本実施形態のインプラント用材料について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
−炭素質膜の形成−
純チタン(JIS2種)からなる基材の表面にDLC膜からなる炭素質膜を形成した。細胞培養の際には直径20mmの基材を用いた。DLC膜は化学気相堆積(CVD)法を用いて形成した。具体的には、基材を載置したチャンバ内にC22を流量が150sccm(cm3/分、但し1気圧、0℃)で、圧力が24.67Pa(35mTorr)となるように導入し、RF電極に100W〜500Wの高周波電力を印加した。
DLC膜成膜後に、真空中に放置することにより酸素を含む官能基の存在比が低いDLC膜とすることができる。表1は、DLC膜を成膜後10分間真空中に放置した場合と、120分間真空中に放置した場合の酸素を含む官能基の存在比及び窒素を含む官能基の存在比を示している。なお、酸素を含む官能基はカルボキシル基(COOH)であるとみなし、窒素を含む官能基はアミノ基(NH2)であるとみなして評価している。成膜後10分以上真空中に放置することにより酸素を含む官能基の存在比を4%以下とすることができる。また、真空中に放置する時間が長いほど酸素を含む官能基の存在比を小さくすることができる。
Figure 0005403542
−官能基の導入−
炭素質膜に官能基をさらに導入するためにプラズマ照射を行った。プラズマ照射は平行平板型のプラズマ照射装置により行った。プラズマ照射装置のチャンバ内に上記で得られた基材をセットした後、チャンバ内の圧力を2Pa以下まで排気した。次に、チャンバ内にアンモニア又は酸素を所定の流量で導入し、平行平板電極の間に30Wの高周波電力を印加することによりプラズマを発生させた。ガス流量の調整はマスフローコントローラにより行い、プラズマ照射時のチャンバ内圧力は130Paとした。高周波電力は、マッチングボックスを介して接続された高周波電源を用いて印加した。窒素を含む官能基の導入にはアンモニアを用い、酸素を含む官能基の導入には酸素を用いた。プラズマ照射時間は15秒とした。
−官能基存在比の評価−
炭素質膜における官能基の存在比はX線光電子分光(XPS)測定により評価した。X線源にはアルミニウムKα線を用い、加速電圧は10.0KV、エミッション電流は10mAとした。X線の入射角度は45度とし、表面から4nm程度の深さまでの状態について測定した。
窒素を含む官能基の存在比は、XPS測定において得られた窒素の1s(N1s)ピークの面積と炭素(C)1sピークの面積との比率とした。炭素質膜の表面に存在する窒素がどのような状態となっているかは明確ではない。しかし、アミノ基及びアミド基等の窒素を含む官能基(窒素性官能基)を形成していると考えられる。窒素性官能基の詳細な分析は困難であるが、XPS測定において、399eV付近にN1sピークが出現していることからも主にアミノ基として存在していると考えられる。以下においては、N1sピークの面積とC1sピークの面積との比率をアミノ基の存在比[NH2]として説明する。
酸素を含む官能基の存在比は、XPS測定において得られた酸素の1s(O1s)ピークの面積とC1sピークの面積との比率とした。酸素を含む官能基としてカルボキシル基以外の水酸基等も形成されている可能性があるが、以下においては、O1sピークの面積とC1sピークの面積との比率をカルボキシル基の存在比[COOH]とする。
なお、XPS測定において、ピーク面積の比率により求めた存在比は、原子%(at%)となる。
−骨芽細胞の評価−
直径20mmのウェル内において試料とマウス骨芽細胞様細胞株MC3T3−E1細胞(以下、MC3T3−E1細胞という。)とを接触させて培養した。細胞は1ウェル当たり5×104個播種した。培養培地には10%ウシ胎仔血清(FBS)、L−グルタミン、混合抗生物質(Invitrogen社製)及び50μg/mlのアスコルビン酸を含有したα変法イーグル培地(α−MEM)を用いた。培養温度は37℃とし、5%二酸化炭素雰囲気で培養した。
細胞を1日培養した後、細胞数をMTS(Multiple target screening)法を用いて、細胞の増殖性を評価した。増殖性を評価するための吸光度測定の波長は490nmとした。
細胞を7日間培養した後、骨分化マーカー遺伝子であるRunx2及びTypeIコラーゲン(CoI−I)の発現について評価した。具体的には、培養したMC3T3−E1細胞からTRIzol試薬(Invitrogen社製)を用いてRNAを抽出した後、ReverTra Ace reverse transcriptase(東洋紡社製)を用いてcDNAを作成した。作成したcDNAを、定量RT−PCR(Rela-time Quantitative Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction)法により評価した。
−骨破壊細胞の分化の評価−
ウェル内において試料と破骨前駆細胞とを破骨細胞分化誘導因子(Receptor Activator of NF-kB Ligand:RANKL)の存在下において接触させ、37℃で細胞培養した。破骨前駆細胞は、RANKLの存在により破骨細胞へと分化することが確立されているセルラインRAW264.7細胞 (TIB-71, ATCC)を用いた。細胞は1ウェル当たり5×103個播種した。
分化関連遺伝子であるカテプシンK(cathepsin K)の発現を定量RTPCR法を用いて定量することにより、破骨細胞への分化を評価した。
−測定結果−
表2に示す4つの試料について測定を行った。試料1はコントロールのために設けたDLC膜を形成していない純チタンの基材である。試料2はプラズマ照射を行っていないDLC膜である。試料3は、プラズマ照射によりカルボキシル基の導入量を多くしたDLC膜である。試料4は、プラズマ照射によりアミノ基の導入量を多くしたDCL膜である。
Figure 0005403542
図3及び図4は、MC3T3−E1細胞の分化特性を示している。図3において縦軸はRunx2のmRNA発現量を示し、値が大きいほどRunx2が発現し、MC3T3−E1細胞の分化が促進されていることを示している。図4において縦軸はCoI−IのmRNA発現量を示し、値が大きいほどCoI−Iが発現し、MC3T3−E1細胞の分化が促進されていることを示している。試料2においては、Runx2及びCoI−Iの発現量が、純チタンの場合の約200倍に増加した。しかし、[COOH]が4%を越える試料3及び[NH2]/[COOH]が10を越える試料4では、骨芽細胞への分化を促進する効果は認められなかった。
図5は、破骨細胞への分化の指標であるカテプシンKの発現特性を示している。試料1及び試料2のいずれにおいても、分化促進因子であるRANKLが存在していない場合には、カテプシンKの発現量はわずかであり、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化は抑制されている。しかし、RANKLの存在下においては、試料1の場合カテプシンKの発現量がRANKLが存在しない場合の9倍以上に増加し、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化が活発に生じた。一方、[COOH]が4%以下で且つ[NH2]/[COOH]が10以下の炭素質膜を有する試料2においては、カテプシンKの発現量の増加はわずかであった。このことから、[COOH]が4%以下で且つ[NH2]/[COOH]が10以下の炭素質膜は、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑制できることが明らかとなった。
本発明に係るインプラント用材料及びその製造方法は、破骨細胞への誘導を抑制すると共に、骨芽細胞への分化を促進するインプラント用材料を実現でき、特に、人工歯根及び義歯等の骨細胞との親和性が必要な歯科用材料及びその製造方法等として有用である。
10 基材
20 炭素質膜

Claims (7)

  1. 基材を準備する工程(a)と、
    炭化水素を含むガスを用いた化学気相堆積法により、前記基材の表面に炭素質膜を形成する工程(b)と、
    前記基材の表面に形成された炭素質膜の表面のダングリングボンドが安定するまで前記基材を真空状態に保持する工程(c)とを備え、
    前記工程(c)において、前記基材を真空状態に10分以上保持することにより、前記炭素質膜における酸素を含む官能基の存在比を4%以下とし、窒素を含む官能基の存在比を前記酸素を含む官能基の存在比により除した値を10以下とし、前記炭素質膜を、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑制すると共に、未熟骨芽細胞から骨芽細胞への分化を促進する材料とすることを特徴とするインプラントの製造方法。
  2. 前記炭化水素を含むガスは、吸着脱水装置により脱水して供給することを特徴とする請求項1に記載のインプラントの製造方法。
  3. 前記工程(c)よりも後に、前記炭素質膜に塩基性窒素含有化合物のプラズマを照射する工程(d)をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプラントの製造方法。
  4. 前記基材は、金属からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプラントの製造方法。
  5. 前記基材は、チタン又はチタン合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプラントの製造方法。
  6. 前記基材は、人工歯根、義歯、歯冠修復物、人工骨又は人工関節であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプラントの製造方法。
  7. 前記炭素質膜の表面におけるゼータ電位は、−50mV以上且つ0mV未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプラントの製造方法。
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