JP5385171B2 - コンクリート床版の防水舗装構造、その防水施工方法及びその防水舗装の施工方法 - Google Patents
コンクリート床版の防水舗装構造、その防水施工方法及びその防水舗装の施工方法 Download PDFInfo
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Description
これらの工法において、防水層とアスファルト舗装体との接着に粉状あるいはペレット状の熱可塑性樹脂または粒状アスファルト等の接着剤を防水層上に散布した後、舗装の基層となる加熱アスファルト混合物を敷均して転圧させることにより、敷均し温度にて散布した接着材料を溶融させて防水層と舗装体を接着する方法が採られている(特許文献1〜3)。しかし、散布の際の粉体あるいは粒状体の散布密度のバラツキや施工時温度が不均一となり易いことから、安定した接着層を得ることが困難であるといった問題点を残している。
さらに、上記の防水層と舗装体間の接着問題を解決するために、速硬化性の反応型液状樹脂により形成された防水層上に、柔軟性樹脂接着剤を塗布し、接着剤が未硬化の間に粒状の熱可塑性樹脂や瀝青剤を散布し加熱アスファルト混合物を敷均して転圧する工法が接着性を高める工法として提案されている。しかし、この柔軟性樹脂接着剤塗布後に散布される熱可塑性樹脂や瀝青剤の殆どは、比重1.0前後のホットメルト材で、自重が軽いことから柔軟性樹脂接着剤内部への沈降量が小さく、接着性が脆弱で問題の解決には到っていない。
室内で試験した際に良好な成績を示せたとしても、気温や風雨などの天候に左右されて、現場において、試験結果で示した良好な成績を上げることができないのである。
骨材として珪砂を用いることも考えられるが、珪砂は、脆く、骨材自体が、上記の荷重により、砕けてしまうという危惧がある。しかし、骨材の材質を、単純に、硬質のセラミックなどの材料に代えたとしても、上記の通り、荷重の負荷にて骨材が下層を突き破って、コンクリート床版に達するという、より深刻な問題が生ずるのである。
従って、このように骨材を用いる場合も、上下方向の接着力については、骨材が撒かれた樹脂層とその上のアスファルトとの間の接着力に頼るか、特許文献4に示す通り、バインダー塗材を介して、アスファルトと骨材が散布された樹脂層との固着力を確保するというものである。
骨材を用いる上記の何れの場合も、骨材が散布された樹脂層は、骨材間からその表面の多くを露出させ、当該樹脂層と上方のアスファルトとの間の上下方向の接着力については、当該露出面とアスファルト、或いは当該露出面とバインダー塗材との間の接着に頼るものであった。
しかし、実際には、メタクリル系樹脂をはじめ樹脂系の防水塗膜と、アスファルト乳剤とは、相性が悪く、現場において、メタクリル樹脂とアスファルト乳剤との十分な固着が図れないでいた。
即ち、このものは、上面の左右へ縁石を備えたコンクリート床版の上に、下層から順に、プライマー層と、防水層と、一次接着層とが設けられたものである。接着層は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg塗布することによって形成されたものである。接着層の表面は、全面に粒状の硬質骨材が散布されたものであり、硬質骨材の上に、アスファルト乳剤が散布されたものである。硬質骨材は、粒径が0.5〜2.0mmのものが骨材全体の80重量%以上を占め、硬質骨材の粒は、比重2以上、モース硬度7以上、JIS A 1121に規定のすりへり試験方法によるすり減り減量が20%以下であり、硬質骨材は、接着層の表面に対して、有効付着量として1平方メートル当り2.5〜3.5kg散布されたものである。硬質骨材の粒は、接着層表面全体を、覆いつくすように密に分布し、その一部が接着層に沈み、且つ、他の一部が接着層から上方に露出することによって、アスファルト乳剤と接着層との間に介在して、接着層の表面とアスファルト乳剤との接触を抑制し、硬質骨材の露出した部分に対してアスファルト乳剤が接着されたものであり、上記プライマー層、防水層、接着層、アスファルト乳剤及び硬質骨材にて構成された層状部は、床版上面から縁石に沿って立ち上がり当該縁石を覆う縁石被覆部を備えるものである。
即ち、プライマー層は、ウレタン変性メタクリル系樹脂を含有するものである。防水層は、メタクリル系樹脂を基材に、ウレタン変性をさせたものである。接着層は、メタクリル系樹脂を含有するものである。硬質骨材は、酸化アルミニウム、スラグ、セラミックの少なくとも何れか一種である。
即ち、この方法は、上面の左右へ縁石を備えたコンクリート床版上にプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、プライマー層の上に防水層を形成する防水層形成工程と、防水層の上に接着層を形成する接着層形成工程と、接着層の硬化完了前に接着層の上面全面に粒状の硬質骨材を散布する散布工程と、散布された硬質骨材の上にアスファルト乳剤を散布する乳剤散布工程とを備える。接着層は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg塗布することよって形成する。硬質骨材は、粒径が0.5〜2.0mmのものが骨材全体の80重量%を占め、硬質骨材の粒は、比重2以上、モース硬度7以上、JIS A 1121に規定のすりへり試験方法によるすり減り減量が20%以下であり、硬質骨材を、接着層の表面に対して、有効付着量として1平方メートル当り2.5〜3.5kg散布することにより、接着層の上面全面を硬質骨材にて覆い尽くす。硬質骨材の粒は、その一部が接着層に沈み、且つ、他の一部が接着層から上方に露出することによって、アスファルト乳剤と接着層との間に介在して、接着層の表面とアスファルト乳剤との接触を抑制し、硬質骨材の露出した部分に対してアスファルト乳剤が接着されるものであり、上記プライマー層、防水層、接着層、アスファルト乳剤及び硬質骨材にて構成された層状部は、床版上面から縁石に沿って立ち上がり当該縁石を覆う縁石被覆部を備える。
アスファルト乳剤自身は、粘度が低いものであり、硬質骨材の粒間に十分に回り込み骨材同士を強固に固着することができる。
このように、速乾性のメタクリル樹脂の上に、硬質骨材を撒いて覆い尽くすという方法により、現場で再現性が極めて優れた防水施工を実現できた。
特に、端部防水部として、床版K上面の左右の縁石に沿って立ち上がり縁石を覆う、縁石被覆部を備えるものとするのが好ましい。アスファルト舗装(アスファルト合材)から露出して縁石を覆う縁石被覆部を形成することにより、縁石と床版の上面を覆う防水舗装部の左右端との間から床版へ雨水が侵入するのを防ぐことができる。
図1に、本願発明の一実施の形態を示す。図1(A)は本願発明に係るコンクリート床版の防水舗装構造の完成した状態(アスファルト舗装前)の略断面図であり、図1(B)は図1(A)の要部拡大断面図である。
この防水施工方法は、コンクリート床版の表面に対して、前処理工程、プライマー層形成工程と、防水層形成工程と、接着層形成工程と、散布工程とを順次施すものである。そして、上記防水舗装の施工方法は、上記防水施工方法を遂行し、その散布工程後に、乳剤散布工程を施すものである。
防水施工の工法として、汎用工法と、プライマー層形成工程、防水層形成工程、接着層形成工程及び散布工程各工程にて形成される層の厚みと硬質骨材の粒度の夫々について、汎用工法に比して大きなものとする高機能工法とに大別される。
以下、高機能工法を採用する場合を例に採り、各工程について、順に説明する。
具体的には、前処理工程は、下地調整・清掃工程と、養生工程とを備える。
下地調整・清掃工程において、レイタンスの除去、床版表面の塵泥、油脂類や水分を除去する。詳しくは、下地調整・清掃工程において、コンクリート床版表面をポリッシャなどで研磨し、残存するレイタンスや固着している泥などの異物を除去する。また、集塵機又はテナントスィーパーにより、塵埃、土などを除去する。更に、下地調整・清掃工程において、高周波水分計により、コンクリート床版の施工対象表面の水分を計測し、高周波水分計の表示にて10%以上あるときは、バーナーで加温し又は天日で乾燥させ、残存する水分を、10%未満に調整する。
養生工程において、施工対象となるエリアには、マスカーテープを施し、防水材料による構造物や壁高欄の汚染防止を図る。必要に応じてコンパネ(コンクリートパネル)用い、防水材の飛散の防止を図ればよい。
プライマー層1は、ウレタン変性メタクリル樹脂系の樹脂液を、過酸化物などにて硬化させて形成するのが好ましい。
詳しくは、この工程において、コンクリート床版上に、プライマー層を形成する材料を散布又は塗布することにより、プライマー層1を形成する。
プライマー層1に使用する材料は、メタクリル樹脂、特に、ウレタン変性メタクリル樹脂系セメントコンクリート専用のプライマーを使用するのが好ましい。樹脂液の粘度はコンクリート床版面への含浸効果を得るため、1.4〜2.0dPa・s(at摂氏25度)とするのが好ましく、可使時間、施工時の気温、床版面の温度に対応して30分〜1時間の間で調整する。また、硬化剤には過酸化物などを使用する。
具体的には、タフレイヤーP(商品名/株式会社富士技建)に所定量の硬化剤を加えて、攪拌機で混合する。攪拌機で混合した後、エアレス散布機又はローラーで所定量均一に塗布又は散布する。その散布量又は塗布量は、0.2〜0.5kg/m2とし、プライマー層1の膜厚を、約0.1〜0.3mmとすることができる。
タフレイヤーPを用いる場合、硬化剤には、過酸化物などを使用することができ、BP0(商品名)を使用する場合、タフレイヤーPの樹脂成分に対して、0.5〜5重量%配合する。
塗布後、硬化養生を行う、養生時間の目安としては、気温又は床版表面温度が摂氏5〜15度のとき約1時間、気温又は床版表面温度が摂氏15〜30度のとき約40分とする。但し、このような乾燥時間は、変更可能である。条件が整えば、30〜40分の硬化時間で調整を行うことができる。
防水層2は、特に、メタクリル系樹脂を基材に、ウレタン変性させて形成するものが好ましい。
より具体的には、プライマー層の硬化後、この防水層形成工程において、タフレイヤーV(商品名/株式会社富士技建)に所定量の硬化剤を加え、攪拌機で混合する。混合後エアレス散布機または自在刷毛で所定量を均一に塗布又は散布する。
タフレイヤーVを用いる場合、硬化剤には、過酸化物などの周知の硬化剤を使用することができ、過酸化物を使用する場合、タフレイヤーVの樹脂成分に対して、1.5〜5重量%配合する。過酸化物は、有機過酸化物などの、官能基としてペルオキシド構造または過カルボン酸構造を有する一般的なものを採用することができる。
過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートを掲げることができる。
その散布量又は塗布量は、1.0〜1.5kg/m2とし、防水層2の膜厚を、約0.8〜1.2mmとすることができる。
この塗布後、その上を歩行可能な状態まで、養生する。具体的には、上記塗布後、1時間前後(±15分)、即ち、45〜75分程度養生を行う。但し、温度環境により、30分〜1時間の硬化時間で養生を行うことができる。
防水層形成工程の上記養生後、この接着層形成工程に移行する。
接着層3は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg、より好ましくは1平方メートル当り0.8〜1.0kg塗布することよって形成することができる。メタクリル系樹脂を1平方メートル当り1.0〜1.2kg塗布することよって、接着層の膜厚を、約0.8〜1.0mmとすることができる。
このように防水層2の上に形成する接着層3には、速硬化型液状樹脂を採用するのが望ましい。
特に、メタクリル系樹脂には、後述する散布工程において樹脂上全面に散布する硬質骨材を、強固に定着させ、防水層2とアスファルト舗装体間に作用するせん断力に抵抗できるメタクリル系樹脂を使用するのが好ましい。
具体的には、メタクリル樹脂系接着剤であるTSD−WM(商品名/株式会社富士技建)に、所定量の硬化剤を加え、攪拌機で混合する。混合後、自在刷毛又はゴムレーキで所定量を均一に塗布する。
接着層3を形成するメタクリル樹脂に上記のTSD−WMを用いる場合、硬化剤には、BP0を使用することができ、BP0を使用する場合、TSD−WMの樹脂成分に対して、1〜5重量%配合する。
接着層3は、塗布により硬化が始まり、所定の時間の経過後、硬度が安定するが、骨材5の散布は、上記硬化前に完了するものとする。TSD−WMの上記の硬化に至るまでの硬化時間は、30分〜1時間である。
従って、接着層形成工程におけるTSD−WM塗布後、直ちに、硬質骨材5を散布するのが好ましい。
硬質骨材5の比重を上記の通り、硬化前、液状である接着層3の樹脂よりも、大きなものとすることにより、図1(B)へ示す通り、硬質骨材5…5は、接着層3内に沈み、接着層3により確実に締結される。硬質骨材5…5の他の一部は、接着層から上方に露出する。
硬質骨材には、酸化アルミニウム、スラグ、セラミックの少なくとも何れか一種を採用することができる。
硬質骨材に、酸化アルミニウムを採用する場合、アランダム(商品名)やモランダム(登録商標)などのコランダムと呼ばれるアルミナ系骨材や、硬質砂岩を採用することができる。また、硬質骨材には、酸化アルミニウムに限らず、上記の性質を備えた研磨剤を用いることができる。
硬質骨材として、特に、フェロクロム・スラグや、セラミック骨材、アランダム、安山岩や輝緑岩の砕石を採用するのが、好ましい。
例えば、硬質骨材として、フェロクロム・スラグのA粒(粒径1.0mm〜2.0mm)や、同B粒(粒径0.5mm〜1.0mm)を採用することができる。
上記の安山岩や輝緑岩といった天然の砕石は、篩いを掛けることによって、上記のA粒(粒径1.0mm〜2.0mm)としたものを採用することができる。
セラミック骨材として、セラサンド(美州興産株式会社)のA粒(粒径1.0mm〜2.0mm)やB粒(粒径0.5mm〜1.0mm)を採用することができる。
硬質骨材5に、上記のフェロクロム・スラグや、天然の砕石、セラミック骨材の何れを用いる場合も、A粒、B粒に拘らず、粒径0.5〜1.5mmのものを採用するのが好ましい。このような硬質骨材の粒径の上限値と下限値とは、高機能工法や汎用工法の接着層の膜厚の上限と下限に対応すべく、接着層3から防水層2にはみ出さず且つアスファルト合材側へ十分露出する範囲とするものである。
但し、このような数値に限定するものではない。
上記の通り、硬質骨材5を、接着層3の表面に対して、1平方メートル当り3.0〜4kg散布することによって、接着層3の表面全面を硬質骨材にて、覆い尽くすことができる。過剰に散布し、接着層3に固定できない硬質骨材5については、周知の手段により、接着層3上により除去・回収すればよい。この余剰骨材の回収量としては、1平方メートル当り散布量の約20重量%が目安となる。従って、接着層3表面に残る実質的な骨材の量としては、即ち、有効付着量は、1平方メートル当り2.2〜3.5kgとなるのが好ましく、2.4〜3.2kgとなるのがより好ましい。
より具体的には、接着層形成工程におけるTSD−WM塗布後、直ちに硬質骨材5であるフェロクロム・スラグを接着層3の塗膜上に上記の所定量均一に散布し、更に箒などで掃出し、硬質骨材の疎密部分を均して塗膜面を被覆する。骨材散布の施工後、接着層3(TSD−WM)の硬化養生(1時間±15分)の後、接着層3の樹脂(TSD−WM)に締結されない上記余剰の硬質骨材をスィーパーや集塵機で回収する。
この乳剤散布工程によるアスファルト乳剤4の散布は、アスファルト舗装施工に際して、事前に行えばよい。
上記のアスファルト乳剤4は、一般に改質アスファルト乳剤4と呼ばれるものを使用するのが好ましい。このアスファルト乳剤には、電荷がカチオン系で、摂氏25度における蒸発残留物の針入度が25以下、軟化点が摂氏60度以上であることが望ましい。
上記の通り、散布工程によって散布された硬質骨材5…5は、接着層3の表面全面を覆い尽くしているので、アスファルト乳剤4が、直接接着層3表面と接触することは抑制されている。但し、上記のアスファルト乳剤4は、エマルジョンの液体であり、比較的粘度が低いので、図1(B)へ示す通り、隣接する硬質骨材5…5同士の間には十分に回り込み、これらの骨材5…5の表面の接着層3より露出する部分に、確実に接着される。
図示の通り、硬質骨材5にアスファルト乳剤4が接着された後、アスファルト乳剤の粘度の低さから、硬質骨材5の起伏がアスファルト乳剤を通じて、上方に現われている。従って、骨材としての路面のせん断方向に対するアンカー効果も十分に発揮することができる。また、このように塗布後のアスファルト乳剤4の形状は、硬質骨材5の表面の起伏に沿うものであるので、アスファルト乳剤は、界面が平坦な層とは言えないが、上述の接着層3を一次接着層とすれば、このアスファルト乳剤4の膜を二次接着層ということができる。
より具体的には、上記の改質アスファルト乳剤の標準散布量は、約0.4kg(L)/m2であり、改質アスファルト乳剤の散布後、約30分経過後に、アスファルトの舗装作業を行うことが可能である。
図示は省略するが、アスファルト舗装については、上記の各層が形成されたコンクリート床版上に、加熱アスファルト混合物を均一に敷き、転圧をかけるものであり、これによって、改質アスファルト乳剤が溶融し、接着層3の硬質骨材5に舗装体が接着する。
上記のプライマー層1と防水層2とは、夫々上記樹脂と硬化剤をスプレイ即ち散布することにより形成することができるが、接着層3については、プライマー層1と防水層2よりも、上記材料の粘度を高くして用いるものであり、散布は困難で、塗布にて形成するのが好ましい。
高機能工法では、汎用型の樹脂と比較して各層の膜厚を、厚く形成することができるものであり、粒度の大きな硬質骨材5に対応することができる。具体的には、高機能工法では、硬質骨材5即ちフェロクロム・スラグにA粒を採用することができる。
施工対象面が、湿潤状態のときは、ウェスなどで拭き取り、水分が10%未満(高周波水分計による計測)になるまで、十分乾燥させる。
前述の通り、本願発明に係るコンクリート床版の防水施工方法は、上記乳剤散布工程を行うまでの各工程にて構成されている。そして、本願発明に係るコンクリート床版の防水舗装の施工方法は、上記防水施工方法による防水施工後、乳剤散布工程により骨材の上にアスファルト乳剤を散布し、アスファルト舗装を行うものであり、アスファルト乳剤散布後、図2へ示すアスファルト合材6(アスファルト舗装材)を施して、アスファルト舗装を完了するものである。
また、上記各工程により形成された防水舗装部10、即ち、プライマー層1、防水層2、接着層3、アスファルト乳剤4及び硬質骨材5にて構成された層状部は、床版Kの上面のみを覆うものであってもよいが、図3へ示すように、端部防水部として、床版K上面の左右の縁石k1,k1に沿って立ち上がり縁石k1,k1を覆う、縁石被覆部11,11を備えるものとするのが好ましい。この図3へ示すようにアスファルト舗装(アスファルト合材6)から露出して縁石k1,k1を覆う縁石被覆部11,11を形成することにより、縁石k1と床版Kの上面を覆う防水舗装部10の左右端との間から床版Kへ雨水が侵入するのを防ぐことができるからである。縁石k1の上下の幅は、20〜30cmあり、縁石被覆部11がだれないように、各層の粘度を、床版を覆う防水舗装部10の平面部の粘度よりも高いものとしておくのが好ましい。
この縁石被覆部11,11の形成は、シート系床版防水層によるものでは困難である。
上記において、高機能工法を例示して説明したが、汎用工法においては、防水層2と接着層3の双方の樹脂にタフレイヤーV2(商品名/株式会社富士技建)を用いること、接着層3及び防水層2の膜厚を高機能工法の膜厚よりも小さくすること、及び、硬質骨材5即ちフェロクロム・スラグにB粒を用いること以外の条件は、上記高機能工法と同様である。
この実施例1において、プライマー層1を形成するメタクリル系樹脂層にタフレイヤーPを0.3kg/m2使用し、防水層2を形成するメタクリル系樹脂にタフレイヤーVを1.0kg/m2使用して防水層2の膜厚を0.8mmとし、接着層3を形成するメタクリル樹脂にTSD−WMを1.0kg/m2使用し、硬質骨材5として粒径1.0〜2.0mmのものを90重量%有するフェロクロム・スラグを4.0kg/m2散布して0.8〜1.0kg/m2回収し、改質アスファルト乳剤としてタックコート0.4リットル/m2を使用した。
上記プライマー層1のタフレイヤーP、防水層2のタフレイヤーVに対して、過酸化物を硬化剤として用いた。
特に、プライマー層1を形成するタフレイヤーPに対し、硬化剤として比較的沸点の低い過酸化物を用いた。また、防水層2を形成するタフレイヤーVに対しても、硬化剤としてプライマー層1と同様の過酸化物を用いた。接着層3を形成するTSD−WMに対する硬化剤についても、過酸化物を用いた。
表1に示すこの実施例1は、接着層3にTSD−WMを用い、硬質骨材5としてフェロクロム・スラグにA粒を用いた。
表1に、この実施例1の床版防水システムについて、社団法人日本道路協会発行の「道路橋床版防水便覧」平成19年度3月版に基づく、性能照査試験結果を示す。
また、室内試験ではあるが参考として表2へ、この実施例1について、中日本高速道路株式会社東京支社「床版防水システム設計・施工要領(案)」平成20年11月版に基づいて行われた性能照査試験の結果を示す。
このフェロクロム・スラグA粒と、このフェロクロム・スラグに代えて採用可能な骨材と、比較例としての硅砂(3号)の引張接着試験の結果を表3へ示す。
各試験供試体は、3回の計測値と、その平均を採った。
モース硬度について、上記のフェロクロム・スラグは8〜9であり、上記のセラミック骨材は7.5であり、上記のアランダムは8前後である。比較例である、硅砂は、粒径が1.2〜2.4mmである。
表3へ示す通り、フェロクロム・スラグは、強度について、強度の計測値は、何れも、0.8N/mm2を上回るものであった。セラミック骨材の強度についても、最低で0.69N/mm2であり、平均値は0.7N/mm2を上回るものである。また、アランダムについても、計測値は何れも0.8N/mm2を上回るものである。また、砕石1(安山岩)についても、最低で0.65N/mm2であり、平均値は0.75N/mm2である。砕石2(輝緑岩)についても、最低で0.69N/mm2であり、平均値は0.74N/mm2である。
一方、硅砂については、3回の計測のうち2回について強度が0.6N/mm2を下回り、平均値も0.59N/mm2であった。
上記のフェロクロム・スラグ、セラミック骨材、アランダム、安山岩、輝緑青岩の何れにおいても、アスファルト乳剤と接着層の間において剥離が生じた。また、硅砂についてはアスファルト乳剤と接着層の間において剥離の発生と骨材の破砕が確認された。
表2の試験は、摂氏23度の下で行われたが、摂氏−10度であっても、同様の結果となることが確認されている。
実施例2において、プライマー層1を形成するメタクリル層にタフレイヤーPを0.2kg/m2使用し、防水層2を形成するメタクリル系樹脂にタフレイヤーVを1.0kg/m2使用して防水層2の膜厚を0.5mmとし、接着層3を形成するメタクリル系樹脂にタフレイヤーVを1.0kg/m2使用し、硬質骨材5としてフェロクロム・スラグのB粒を1平方メートル当り3.0kg散布し、改質アスファルト乳剤としてタックコート0.4リットル/m2を使用した。
上記プライマー層1のタフレイヤーP、防水層2のタフレイヤーV、接着層3のタフレイヤーVに対して用いた硬化剤は、夫々、実施例1の、プライマー層1の樹脂、防水層2の樹脂、接着層3の樹脂に用いたものと同じである。
表4へ実施例2について行った基本照査試験結果を示す。表4に示す基本照査試験の試験期間は、平成20年8月1日〜平成20年9月11日であり、試験場所は、出願人の日進化成株式会社の技術研究所と財団法人建材試験センター(東京都中央区日本橋茅場町2丁目9番8号 友泉茅場町ビル4階)中央試験所(埼玉県草加市稲荷5丁目21番20号)である。試験は、社団法人日本建設機械化協会(静岡県冨士市大渕3154)施工技術総合研究所(所長/見波 潔)によって行われた。
2 防水層
3 接着層
4 アスファルト乳剤
5 硬質骨材
K コンクリート床版
Claims (3)
- 床版上に防水舗装が施された、コンクリート床版の防水舗装構造において、
上面の左右へ縁石を備えたコンクリート床版の上に、下層から順に、プライマー層と、防水層と、接着層とが設けられ、
接着層は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg塗布することによって形成されたものであり、
接着層の表面は、全面に粒状の硬質骨材が散布されたものであり、
硬質骨材の上に、アスファルト乳剤が散布されたものであり、
硬質骨材は、粒径が0.5〜2.0mmのものが骨材全体の80重量%以上を占め、硬質骨材の粒は、比重2以上、モース硬度7以上、JIS A 1121に規定のすりへり試験方法によるすり減り減量が20%以下であり、硬質骨材は、接着層の表面に対し、有効付着量として1平方メートル当り2.5〜3.5kg散布されたものであり、
硬質骨材の粒は、接着層表面全体を、覆いつくすように密に分布し、その一部が接着層に沈み、且つ、他の一部が接着層から上方に露出することによって、アスファルト乳剤と接着層との間に介在して、接着層の表面とアスファルト乳剤との接触を抑制し、硬質骨材の露出した部分に対してアスファルト乳剤が接着されたものであり、
上記プライマー層、防水層、接着層、アスファルト乳剤及び硬質骨材にて構成された層状部は、床版上面から縁石に沿って立ち上がり当該縁石を覆う縁石被覆部を備えるものであることを特徴とするコンクリート床版の防水舗装構造。 - プライマー層は、ウレタン変性メタクリル系樹脂を含有するものであり、
防水層は、メタクリル系樹脂を基材に、ウレタン変性をさせたものであり、
接着層は、メタクリル系樹脂を含有するものであり、
硬質骨材は、酸化アルミニウム、スラグ、セラミックの少なくとも何れか一種であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート床版の防水舗装構造。 - 床版上に防水舗装を施す、コンクリート床版の防水舗装の施工方法において、
上面の左右へ縁石を備えたコンクリート床版上にプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、プライマー層の上に防水層を形成する防水層形成工程と、防水層の上に接着層を形成する接着層形成工程と、接着層の硬化完了前に接着層の上面全面に粒状の硬質骨材を散布する散布工程と、散布された硬質骨材の上にアスファルト乳剤を散布する乳剤散布工程とを備え、
接着層は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg塗布又は散布することによって形成し、
硬質骨材は、粒径が0.5〜2.0mmのものが骨材全体の80重量%を占め、硬質骨材の粒は、比重2以上、モース硬度7以上、JIS A 1121に規定のすりへり試験方法によるすり減り減量が20%以下であり、硬質骨材を、接着層の表面に対して、有効付着量として1平方メートル当り2.5〜3.5kg散布することにより、接着層の上面全面を硬質骨材にて覆い尽くすものであり、
硬質骨材の粒は、その一部が接着層に沈み、且つ、他の一部が接着層から上方に露出することによって、アスファルト乳剤と接着層との間に介在して、接着層の表面とアスファルト乳剤との接触を抑制し、硬質骨材の露出した部分に対してアスファルト乳剤が接着されるものであり、
上記プライマー層、防水層、接着層、アスファルト乳剤及び硬質骨材にて構成された層状部は、床版上面から縁石に沿って立ち上がり当該縁石を覆う縁石被覆部を備えることを特徴とするコンクリート床版の防水舗装の施工方法。
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