JP5382878B2 - 未加硫タイヤの製造方法及び同タイヤの製造装置 - Google Patents
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Description
このステッチングロールは、未加硫ゴム部材(例えば、カーカス層やトレッドゴム)に押圧力を作用させて被成形体に圧着するが、その押圧力を例えばトレッドゴム複合体等の表面に対して斜めに作用させると、カーカス層やトレッドゴム複合体の表面に周方向の分力が生じ、トレッドゴムが横方向にずれる。そのため、ステッチングロールを、未加硫タイヤの表面形状に合わせて常にその表面に対して直角に当接して押圧することが必要である。
図6は、特許文献に記載されたものではないが、例えばラジアルタイヤを成形する場合に、第1成形工程で、円筒状のドラムにカーカス層、ビードワイヤ、ビードフィラー、サイドゴムなどを巻き付けてグリーンケース(未加硫タイヤ)を形成した未加硫タイヤを成形し、次に、その第1成形工程終了後の未加硫タイヤ55のショルダー部、サイド部に対してトレッドゴム及びベルトから成るトレッドゴム複合体40を圧着する状態を示す図である。
図6Aは、未加硫タイヤ55にトレッドゴム複合体40(但しベルトは省略しており、トレッドゴム42のみ示す)を配置した状態を、図6Bは未加硫タイヤ55上にトレッドゴム複合体40を貼り付けたときに本来あるべき形状を、更に、図6Cは実際の形状をそれぞれ模式的に示した斜視図である。
図6Cに示す未加硫タイヤ55のトレッドゴム42は、図6Bに示す本来の形状に比してその破線の変化で示すように僅かに延伸している。
しかしながら、上記ステッチングロールは回転するタイヤ構成部材に当接して従動するように自由回転する構造であるため、実際にタイヤ構成部材の外周面に当接してこれを押圧すると、回転抵抗等によりタイヤ構成部材の外周の速度に対して遅れが生じる。
図7Aは、この場合における未加硫ゴム部材(例えばカーカスプライ)10とステッチングロール30との関係を示す要部側面図、図7Bはカーカスプライ10とステッチングロール30との接触部の拡大図である。
従動するステッチングロール30には、図7Aに示すように成形ドラム20の中心軸に向う力Fが作用している。ここで、カーカスプライ10の外周回転速度とステッチングロール30の外周回転速度間の相対速度がゼロであれば、力Fはそのまま筒状のカーカスプライ10の中心つまりその表面に対して直角に作用する。しかし、実際には、カーカスプライ10の外周回転速度に対してステッチングロール30の外周回転速度が遅れることにより、図7Bに示すように、力Fの方向はその相対速度差に応じて直角から傾く。その結果、カーカスプライ10の表面ではカーカスプライ10に直角の成分F1とその表面に平行な成分F2とが生じる。
このカーカスプライ10の表面に平行な力の成分F2は、ステッチングロール30に作用する力Fを増大するとそれに比例して増大する。そのため、それを回避するために作用する力Fを小さくすると、圧着力が不足するため良好な圧着ができない。
トレッドゴムの表面に平行な力の成分(上記「F2」と同じ)が所定値を超えると、未加硫のトレッドゴムが周方向に伸びるため、従来は、予めトレッドゴムの長さをその伸びを見越して短めにしておかなければならなかった。
即ち、図9Aに示すように、ステッチングロール45を当接する前の未加硫タイヤ55の表面に放射状に直線L1を付しておき、次に、ステッチングロール45をトレッドゴム42に押し当ててステッチングを行うと、前記直線L1は図9Bに示すように一方向にずれた曲線L2に変化する。この直線L1から曲線L2への変化によって、当然あるべき形状を実現することができないことが分かる。
また、トレッドゴム42が周方向にずれた状態のまま未加硫タイヤ55に貼り付けると、貼り付け後のトレッドゴム42の変形箇所は周方向に残留応力を持つことになり、未加硫タイヤ放置時に、変形したトレッドゴム42が元に戻ろうとして、プライなど内側のタイヤ構成部材が部分的に変形してしまう。これによって、タイヤのユニフォーミティなどのタイヤの性能に悪影響を与えることになる。
貼り付け手段としてブラダーを用いた上記各方法及び装置では、確かに貼り付け時にトレッドゴムにずれが生じることはないが、ブラダーの繰り返し歪や、表面の劣化等によりブラダーを比較的頻繁に交換する必要がある。交換作業の頻度が高いと、それがタイヤ製造における生産性を阻害する要因になるとの別の問題が出てくる。
また、貼り付け部材間に残留するエアを排出するためには、未加硫タイヤの中心から幅方向に向かって圧着していく必要があるが、ブラダーでは必ずしもそのような順序でトレッドを圧着することにならない。
(2)本発明は、上記(1)の未加硫タイヤの製造方法において、前記押付ロールを前記被成形体の回転軸方向に移動させる工程を更に有することを特徴とする未加硫タイヤの製造方法である。
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の未加硫タイヤの製造方法において、前記未加硫ゴム部材を圧着する工程では、前記押付ロールを前記被成形体の半径方向に押圧することを特徴とする未加硫タイヤの製造方法である。
(4)本発明は、トロイダル状のタイヤ構成部材である被成形体上に未加硫ゴム部材を貼り付けて未加硫タイヤを製造する装置であって、前記被成形体を回転する駆動機構と、前記被成形体上に配置された前記未加硫ゴム部材を前記被成形体に圧着する押付ロールと、押付ロールの外周速度を前記未加硫ゴム部材の外周速度と実質的に等しい速度で逆方向に回転させる押付ロール駆動機構と、前記押付ロール駆動機構を制御する制御装置と、を有し、前記押付ロールは、前記タイヤ構成部材のセンター部に未加硫ゴム部材を圧着する第1の押付ロールと、前記タイヤ構成部材のセンター部と端部間の中間部に未加硫ゴム部材を圧着する第2の押付ロールと、前記タイヤ構成部材の端部に未加硫ゴム部材を圧着する第3の押付ロールからなり、前記制御装置は、前記押付ロール駆動機構が第1の押付ロールと、第2の押付ロールと、第3の押付ロールの順に駆動し、その際、第2の押付ロール及び第3の押付ロールを駆動する間は、第1の押付ロールの駆動を継続することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
(5)本発明は、上記(4)の未加硫タイヤの製造装置において、前記押付ロールを前記被成形体の回転軸方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
(6)本発明は、上記(4)又は(5)の未加硫タイヤの製造装置において、前記押付ロールを被成形体の半径方向に押圧する押圧機構を有することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
(7)本発明は、上記(4)の未加硫タイヤの製造装置において、前記第1の押付ロールは、一定の径を有する円筒状をなしていることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
(8)本発明は、上記(7)の未加硫タイヤの製造装置において、前記第1の押付ロールは、前記タイヤ構成部材のセンター部に略等しい幅を有していることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
(9)本発明は、上記(4)の未加硫タイヤの製造装置において、前記第2の押付ロールは前記タイヤ構成部材のショルダー部の傾斜に略等しい傾斜した円錐台形状をなしていることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置である。
そのため、従来のように未加硫ゴム部材のタイヤ構成部材への貼り付け成形に当たり、予め未加硫ゴム部材の伸び(変形)を予測してその寸法を定めておく必要が無く、また、未加硫ゴム部材の伸びを考慮することなく押付ロールに作用させる力を大きくできるから、残留エアを確実に排気することができる。したがって、ユニフォーミティ等の品質が良好な製品タイヤを得ることができる。
図1は、本発明のタイヤ構成部材の圧着の状態を説明するための図であり、成形ドラム20上に巻き付けた、例えばインナーライナー等14上に巻き付けたカーカスプライ10と、2個の押付ロールの一実施形態であるステッチングロール30が配置された状態を示す斜視図である。
図1に示す構成において、成形ドラム20上の上記インナーライナー14、つまり被成形体に未加硫ゴム部材の一例である補強コード入りのカーカスプライ10を貼り付ける場合を例に採って説明する。
左右のステッチングロール30は、成形ドラム20の回転軸22に対して接離する方向に移動可能であると共に、成形ドラム20の軸に沿って互いに逆方向に移動可能に構成されている。
以上の構成において、ピストン32aをシリンダ32bに対して伸長することにより、ステッチングロール30は、図示しない駆動機構により回転する成形ドラム20に巻き付けたカーカスプライ10をその円筒形の半径方向に押圧し、かつ、その状態で上記ねじ杆駆動機構36を駆動することにより、左右のステッチングロール30は、成形ドラム20の回転軸22に沿って互いに接離するように駆動され、未加硫ゴム部材であるカーカスプライ10をこれもタイヤ構成部材であるインナーライナー14などを含む被成形体に圧着していく。
回転駆動機構31のモータは、図示しないモータ制御装置により制御され、モータの回転は一定の減速比で減速する減速装置を介してステッチングロール30の回転軸に伝動される。モータ制御装置は、上記減速装置の減速比、ステッチングロールの径から、成形ドラム20の回転速度に等しくするのに必要なモータの回転速度を算出して、使用するモータの種別に応じた速度制御を行う。これによりステッチングロール30の外周回転速度は、未加硫ゴム部材であるカーカスプライ10の外周回転速度と実質的に等しい速度に制御される。
したがって、カーカスプライ10とステッチングロール30の接点における相対速度はゼロになるから、あたかも停止したカーカスプライ10に対してステッチングロール30を押圧する場合のように、その押圧力Fはカーカスプライ10の表面に直角に作用し、周方向の力の成分は実質上ゼロになる。
したがって、カーカスプライ10には、従来のように周方向の分力を考慮することなく、圧着のための十分な力を作用することができ、圧着面間におけるエア抜きを確実に行うことができる。
また、貼付対象となる未加硫ゴム部材としてるカーカスプライを例に採って説明したが、被成形体に貼り付ける任意の未加硫ゴム部材でよい。
次に、未加硫ゴム部材としてタイヤ構成部材であるトレッドゴム(トレッド複合体)を同様に被成形体のプライに密着させる場合について説明する。
図2は、トロイダル状のタイヤ構成部材、例えば、未加硫のラジアルタイヤの製造工程における第1成形後の未加硫タイヤ(即ち、グリーンケースを膨出変形した未加硫タイヤ)55と、その外周面に嵌合配置された未加硫ゴム部材であるベルト41及びトレッドゴム42からなるトレッドゴム複合体(タイヤ構成部材)40及び押付ロールの一実施形態であるステッチングロール45を示す要部断面図である。
このようにして未加硫タイヤ55のトレッド部(本発明のタイヤ構成部材のセンター部に相当)、ショルダー部(同センター部と端部間に相当)、サイド部(同端部に相当)表面に上記トレッドゴム42を順次貼り付けていくことにより貼り付け面間に存在するエアを容易に排出することができる。
次に、本発明のステッチングロールの第3の実施形態について説明する。
本実施形態の貼り付け装置では、未加硫タイヤのセンター部であるトレッド部、ショルダー部、サイド部におけるトレッドゴム複合体の張り付けに応じた異なる形状のステッチングロールが備えられている。
図3は、これら異なるステッチングロール45(1)、45(2)、45(3)を模式的に示す図である。
即ち、トレッド部用には、未加硫タイヤ55のトレッド部(センター部)の幅に合わせた固定幅でかつその外形が一定の円筒状の第1のステッチングロール45(1)を、ショルダー部用には、予めショルダーの外形に合わせた側面形状に形成された第2のステッチングロール45(2)を、更に、サイド用には円板状の第3のステチングロール45(3)を備える。
図2に示すように、第2成形においてブラダー52により膨張変形されて形成された未加硫タイヤ55の外周にベルト41及びトレッドゴム42から成るトレッドゴム複合体40が嵌合配置されている。
トレッドゴム複合体40は成形ドラム50と共に回転し、ステッチングロール45(1)は、トレッドゴム複合体40のトレッドゴム42に力を作用させて押圧する。これによりトレッドゴム複合体40は未加硫タイヤの外周面に圧着される。
第1のステッチングロール45(1)は、トレッドゴム42を未加硫タイヤのトレッド部に圧着した後もそのままの状態に維持し、次にステッチングロール45(2)の外周の速度をトレッドゴム42の外周速度に実質的に等しい速度で回転駆動し、ステッチングロール45(1)と同様に、トレッドゴム42に直角に当接させて所定の力で押圧変形させる。ここで、第2のステッチングロール45(2)は、図示のように未加硫タイヤのショルダー部の形状に合致したテーパー付きのローラとして構成されているので、このステッチングロール45(2)をトレッドゴム複合体40に押し当てることにより、トレッドゴム42を未加硫タイヤのショルダー部分に圧着することができる。
なお、その間、第1のステッチングロール45(1)はトレッドゴム複合体40のトレッドゴム複合体42を押圧し続けて、未加硫タイヤ55の姿勢を安定した状態に維持している。
また、従来のようにステッチングロールをトレッドゴムに押付けたときに、トレッドゴムに周方向の分力が生じることがないため、ゴム部材の不要な周方向変形を抑制するともに、ステッチングロールに対して、未加硫タイヤとトレッドゴム間に残留するエアを排除するに十分な力を作用することができる。
なお、本実施形態では、第1〜第3のステッチングロール45(1)〜45(3)の外周の速度をトレッドゴム42の外周速度に実質的に等しい速度で回転駆動するものとして説明したが、第1〜第3のステッチングロール45(1)〜45(3)のいずれか一つのステッチングロールの外周速度を、トレッドゴム42の外周速度に実質的に等しい速度で回転駆動するようにしてもよいし、或いは例えば、第2及び第3のステッチングロール45(2)、45(3)の外周速度を上記実質的に等しい速度で回転駆動するようにしてもよい。
図5Bに示すように、成形ドラム20にインナーライナー14を貼り付け、その上にコードが成形ドラムの軸方向に平行に配列されたプライを巻き付け、従来のステッチングロールと本発明のステッチングロールでそれぞれ圧着を行い、その結果を比較した。なお、実験ではステッチングロールの駆動機構の有無を除き、全て同一の条件とした。
その結果、従来のステッチングロールを用いたものでは、カーカスプライが成形ドラムの軸に対して角度が1.3°程度傾いたのに対し、本発明に係るステッチングロールを用いたものでは、カーカスプライの傾きは0°、つまり傾きが認められなかった。
このように、本発明の効果が確認できた。
Claims (9)
- トロイダル状のタイヤ構成部材である被成形体に未加硫ゴム部材を貼り付けて未加硫タイヤを製造する方法であって、
前記被成形体上に前記未加硫ゴム部材を配置する工程と、
前記被成形体を回転する工程と、
押付ロールの外周速度を前記未加硫ゴム部材の外周速度と実質的に等しい速度で逆方向に回転させつつ前記未加硫ゴム部材を前記被成形体に圧着する圧着工程と、
前記圧着工程は、前記タイヤ構成部材のセンター部に前記未加硫ゴム部材を圧着する第1の圧着工程と、前記タイヤ構成部材のセンター部と端部間の中間部に前記未加硫ゴム部材を圧着する第2の圧着工程と、前記タイヤ構成部材の端部に前記未加硫ゴム部材を圧着する第3の圧着工程とからなり、かつ、前記圧着工程は、前記第1の圧着工程、第2の圧着工程、第3の圧着工程の順に実施し、その際、第2の圧着工程及び第3の圧着工程を実施する間は、第1の圧着工程を継続することを特徴とする未加硫タイヤの製造方法。 - 請求項1に記載された未加硫タイヤの製造方法において、
前記押付ロールを前記被成形体の回転軸方向に移動させる工程を更に有することを特徴とする未加硫タイヤの製造方法。 - 請求項1又は2に記載された未加硫タイヤの製造方法において、
前記未加硫ゴム部材を圧着する工程では、前記押付ロールを前記被成形体の半径方向に押圧することを特徴とする未加硫タイヤの製造方法。 - トロイダル状のタイヤ構成部材である被成形体上に未加硫ゴム部材を貼り付けて未加硫タイヤを製造する装置であって、
前記被成形体を回転する駆動機構と、
前記被成形体上に配置された前記未加硫ゴム部材を前記被成形体に圧着する押付ロールと、
押付ロールの外周速度を前記未加硫ゴム部材の外周速度と実質的に等しい速度で逆方向に回転させる押付ロール駆動機構と、
前記押付ロール駆動機構を制御する制御装置と、
を有し、
前記押付ロールは、前記タイヤ構成部材のセンター部に未加硫ゴム部材を圧着する第1の押付ロールと、前記タイヤ構成部材のセンター部と端部間の中間部に未加硫ゴム部材を圧着する第2の押付ロールと、前記タイヤ構成部材の端部に未加硫ゴム部材を圧着する第3の押付ロールからなり、
前記制御装置は、前記押付ロール駆動機構が第1の押付ロールと、第2の押付ロールと、第3の押付ロールの順に駆動し、その際、第2の押付ロール及び第3の押付ロールを駆動する間は、第1の押付ロールの駆動を継続することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。 - 請求項4に記載された未加硫タイヤの製造装置において、
前記押付ロールを前記被成形体の回転軸方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。 - 請求項4又は5に記載された未加硫タイヤの製造装置において、
前記押付ロールを被成形体の半径方向に押圧する押圧機構を有することを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。 - 請求項4に記載された未加硫タイヤの製造装置において、
前記第1の押付ロールは、一定の径を有する円筒状をなしていることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。 - 請求項7に記載された未加硫タイヤの製造装置において、
前記第1の押付ロールは、前記タイヤ構成部材のセンター部に略等しい幅を有していることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。 - 請求項4に記載された未加硫タイヤの製造装置において、
前記第2の押付ロールは前記タイヤ構成部材のショルダー部の傾斜に略等しい傾斜した円錐台形状をなしていることを特徴とする未加硫タイヤの製造装置。
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