以下、図面を参照して本発明の光導波路が適用された光セレクタ及び信号処理装置と、本発明の光導波路に接続される信号処理基板の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態の光セレクタの構成例>
図1は、第1の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図1(a)は、第1の実施の形態の光セレクタの側断面図、図1(b)は、第1の実施の形態の光セレクタの平面図である。
第1の実施の形態の光セレクタ1Aは、任意の方向から入射された光を、屈折率の異なる2種類の導光素材を通過させることで、全周方向から出射させる平面型の光導波路2Aと、直進性を有する光を出力するLD(レーザダイオード)3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
光導波路2Aは、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Aと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Aを備える。第1の導光部20A及び第2の導光部21Aは、本例では共に円板形状で、第1の導光部20Aの側方全周に第2の導光部21Aが設けられる。
第1の導光部20Aは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料または空気層等で形成される。また、第2の導光部21Aは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
例えば、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aが共に樹脂材料で形成される構成では、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aの境界面22で、第1の導光部20Aの外周面と第2の導光部21Aの内周面が接する構成である。
また、第1の導光部20Aが空気層で形成され、第2の導光部21Aが樹脂材料で形成される構成では、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aの境界面22で、第2の導光部21Aの内周面が空気層と接する構成である。
ここで、上述したいずれの構成でも、円形の第1の導光部20Aの中心と第2の導光部21Aの中心を合わせて、第1の導光部20Aが第2の導光部21Aの略中心に配置される。
光導波路2Aは、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aの上下面に反射材23Aを備える。反射材23Aは光反射部の一例で、第2の導光部21Aの外周面は全周に亘って露出させると共に、光を反射させる反射面を、第2の導光部21Aの平面と、例えば空気層である第1の導光部20Aに対向させて、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aを両面から挟む。
これにより、光導波路2Aは、第2の導光部21Aの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Aの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Aに入射した光が反射材23Aで反射して、第2の導光部21Aを伝送される。
また、第2の導光部21Aを伝送される光が、屈折率の異なる第1の導光部20Aと第2の導光部21Aとの境界面22を光路変更部として、境界面22で屈折及び反射されて、第1の導光部20Aから全周方向に出射される。
更に、第1の導光部20Aから全周方向に出射された光は、第2の導光部21Aを伝送されて、第2の導光部21Aの外周面から出射される。
従って、光導波路2Aは、外周の任意の位置から第1の導光部20Aに向けて光が入射されると、第1の導光部20Aで全円周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は光出力部の一例で、図示しない発光部を第2の導光部21Aの外周面に対向させて、光導波路2Aの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は光入力部の一例で、図示しない受光部を第2の導光部21Aの外周面に対向させて、光導波路2Aの外周の任意の位置に配置される。
<第1の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第1の実施の形態の光セレクタ1Aの動作例について、図1を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Aの外周面から第1の導光部20Aに向けて光導波路2Aに入射される。
第2の導光部21Aの外周面から入射された光は、反射材23Aで反射されることで第2の導光部21Aを伝送され、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
また、第1の導光部20Aに入射した光は、反射材23Aで反射されることで第1の導光部20Aを伝送され、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aとの境界面22に入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Aの外周の任意の位置から第2の導光部21Aに入射した光は、第2の導光部21Aを伝送されて、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aとの境界面22に入射することで、屈折等で光路が曲げられる。
従って、光導波路2Aでは、第1の導光部20Aの全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Aを伝送される。そして、第2の導光部21Aを伝送される光は、第2の導光部21Aの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Aの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Aの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Aの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Aの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Aの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Aが実現される。
また、光導波路2Aの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Aの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Aが実現される。
更に、光導波路2Aの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Aの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Aが実現される。
ここで、第1の導光部20Aと第2の導光部21Aの境界面22で、第2の導光部21Aの角部となる反射材23Aとの接面に光が入射するように、LD3から出力される光を集光等すると、第2の導光部21Aの角部で光が回折される。これにより、光の入射位置の設定に応じて、入射した光を回折により光導波路2Aの全周方向に出射することが可能となる。
<第2の実施の形態の光セレクタの構成例>
図2,図3及び図4は、第2の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図2〜図4では、第2の実施の形態の光セレクタを側断面図で示している。なお、第2の実施の形態の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
第2の実施の形態の光セレクタ1Bは、任意の方向から入射された光を、乱反射または散乱によって全周方向から出射させる平面型の光導波路2Bと、直進性を有する光を出力するLD3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
ここで、反射とは、進行波あるいは粒子等が、進行中の媒質と異なる媒質あるいは不連続的変化のある境界面に当たって方向を変え、もとの媒質中の新しい方向に進む現象で、境界面の凹凸が波長と同程度、あるいはそれより大きければ、反射波は種々の方向に進む。このような反射を乱反射あるいは拡散反射という。
一方、散乱とは、波がその波長に比べてあまり大きくない障害物に当たったときに、それを中心として周囲に広がっていく波ができる現象である。光の散乱とは、光の物質による散乱で量子力学的粒子による散乱の総合的効果として説明される。波長変化を伴わない共鳴線による散乱が主であるが、ラマン効果、蛍光、コンプトン効果、ブリリアン散乱などによって波長変化を伴う散乱が起こることもある。一様な物質の場合は構成粒子による波長変化を伴わない散乱と入射光とを合成したものは反射光と屈折光を与えるだけであって、巨視的な散乱光が現れるのは、構成粒子の密度や配向に揺らぎがある場合に限られる。
光導波路2Bは、図2及び図3に示す例では、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Bと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Bを備える。第1の導光部20B及び第2の導光部21Bは、本例では共に円板形状で、第1の導光部20Bの側方全周に第2の導光部21Bが設けられる。
第1の導光部20Bは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料または空気層等で形成される。また、第2の導光部21Bは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
例えば、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bが共に樹脂材料で形成される構成では、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの境界面22で、第1の導光部20Bの外周面と第2の導光部21Bの内周面が接する構成である。
また、第1の導光部20Bが空気層で形成され、第2の導光部21Bが樹脂材料で形成される構成では、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの境界面22で、第2の導光部21Bの内周面が空気層と接する構成である。
ここで、上述したいずれの構成でも、円形の第1の導光部20Bの中心と第2の導光部21Bの中心を合わせて、第1の導光部20Bが第2の導光部21Bの略中心に配置される。
一方、光導波路2Bは、図4に示す例では、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bが共に空気層で構成される。
光導波路2Bは、第2の導光部21Bの上下面に反射材23Bを備える。反射材23Bは光反射部の一例で、第2の導光部21Bの外周面は全周に亘って露出させると共に、光を反射させる反射面を第2の導光部21Bの平面に対向させて、第2の導光部21Bを両面から挟む。
更に、光導波路2Bは、図2、図3(a),(b)及び図4に示す構成では、第1の導光部20Bの上下面に乱反射材24を備える。乱反射材24は乱反射部の一例で、入射される光の波長と同程度あるいはそれより大きい凹凸で光を乱反射させる乱反射面を、例えば空気層である第1の導光部20Bに対向させて、第1の導光部20Bを両面から挟む。
ここで、図2(a)では、第2の導光部21Bを挟んだ反射材23Bを、更に乱反射材24で挟んだ構成で、乱反射材24の第1の導光部20Bに対向した乱反射面と、反射材23Bの第2の導光部21Bに対向した反射面は、反射材23Bの厚みに応じた距離を有する。なお、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、この例に限ることなく、図2(b)に示すように近づけても良いし、図3(a),図4(a)に示すように同一面でも良いし、図2(c),図3(b)及び図4(b)に示すように、乱反射材24の乱反射面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
すなわち、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、光導波路2Bの外周の任意の位置から第1の導光部20Bに向けて光を入射したときに、光導波路2Bの外周において測定される乱反射光が十分な強度になるという条件(以後、本条件を光学条件と呼ぶ)を満たす所定の距離ならいくらでも良い。
また、光導波路2Bは、図3(c)に示す構成では、第1の導光部20Bの上下面に散乱材24Bを備えると共に、散乱材24Bの外側表面に反射材25を備える。散乱材24Bは光散乱部の一例で、入射した光を散乱させるシート状の部材を、例えば空気層である第1の導光部20Bに対向させて、第1の導光部20Bを両面から挟む。また、反射材25は光反射部の一例で、光を反射させる反射面を散乱材24Bの外側表面に対向させて、第1の導光部20Bを両面から挟む。なお、反射材25は、第2の導光部21Bに設けた反射材23Bと一体で形成しても良いし、独立した部材で形成しても良い。
ここで、図3(c)では、散乱材24Bの第1の導光部20Bに対向した散乱面と、反射材23Bの第2の導光部21Bに対向した反射面を同一面としたが、散乱材24Bの散乱面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件として、光導波路2Bの外周の任意の位置から第1の導光部20Bに向けて光を入射したときに、光導波路2Bの外周において測定される散乱光が十分な強度になるという条件を満たす所定の距離であれば良い。例えば、図3(d)に示すように、散乱材24Bの散乱面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
これにより、光導波路2Bは、第2の導光部21Bの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Bの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Bに入射した光が反射材23Bで反射して、第2の導光部21Bを伝送される。
また、第2の導光部21Bを伝送される光が、図2及び図4に示す例では、乱反射材24での乱反射と、図2に示す例では、屈折率の異なる第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22での屈折や反射等により、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
一方、図3(c),(d)に示す例では、第2の導光部21Bを伝送される光が、散乱材24Bでの散乱及び反射材25での反射と、屈折率の異なる第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22での屈折や反射等により、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
更に、第1の導光部20Bから全周方向に出射された光は、第2の導光部21Bを伝送されて、第2の導光部21Bの外周面から出射される。
従って、光導波路2Bは、外周の任意の位置から第1の導光部20Bに向けて光が入射されると、第1の導光部20Bで全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は、図示しない発光部を第2の導光部21Bの外周面に対向させて、光導波路2Bの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は、図示しない受光部を第2の導光部21Bの外周面に対向させて、光導波路2Bの外周の任意の位置に配置される。
ここで、図2に示す例では、乱反射材24が光透過性を有する場合、第1の導光部20Bに入射した光の一部は乱反射材24を透過してしまう。
そこで、乱反射材24が光透過性を有する場合は、図3(a),(b)に示す例のように、乱反射材24の外側表面に反射材25を備える。反射材25は、光を反射させる反射面を乱反射材24の外側表面に対向させて、第1の導光部20Bを両面から挟む。なお、反射材25は、第2の導光部21Bに設けた反射材23Bと一体で形成しても良いし、独立した部材で形成しても良い。
これにより、第1の導光部20Bに入射して乱反射材24を透過した一部の光は反射材25で反射されて、第1の導光部20Bに閉じ込められて伝送されることで、第1の導光部20Bに入射した光が乱反射材24で乱反射されて、第1の導光部20Bの全周方向に出射される。
<第2の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第2の実施の形態の光セレクタ1Bの動作例について、図2〜図4を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Bの外周面から第1の導光部20Bに向けて光導波路2Bに入射される。
第2の導光部21Bの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Bを伝送され、図2及び図3(a),(b)に示す例では、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
第1の導光部20Bに入射した光は、図2、図3(a),(b)及び図4に示す例では、乱反射材24に入射すると乱反射されて、反射波が種々な方向に進んで第1の導光部20Bを伝送される。また、第1の導光部20Bに入射した光は、図2及び図3(a),(b)に示す例では、第1の導光部20Bを伝送されて第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22に入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Bの外周の任意の位置から第2の導光部21Bに入射した光は、第2の導光部21Bを伝送されて、第1の導光部20Bに入射することで、乱反射材24で乱反射され、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
また、図2及び図3(a),(b)に示す例では、第2の導光部21Bに入射した光は、第2の導光部21Bを伝送されて、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22に入射することで、屈折等で光路が曲げられる。
一方、図3(c),(d)に示す例では、第2の導光部21Bの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Bを伝送され、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
第1の導光部20Bに入射した光は、散乱材24Bに入射すると散乱され、更に反射材25で反射されて、第1の導光部20Bを伝送される。また、第1の導光部20Bに入射した光は、第1の導光部20Bを伝送されて第1の導光部20Bと第2の導光部21Bとの境界面22に入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
これにより、図3(c),(d)に示す例でも、LD3から出力され、光導波路2Bの外周の任意の位置から第2の導光部21Bに入射した光は、第2の導光部21Bを伝送されて、第1の導光部20Bに入射することで、散乱材24Bで散乱及び反射材25で反射され、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
従って、光導波路2Bでも、第1の導光部20Bの全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Bを伝送される。そして、第2の導光部21Bを伝送される光は、第2の導光部21Bの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Bの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Bは、中心部分の第1の導光部20Bが、乱反射材24での乱反射で全周方向に光を出射する機能を有すると共に、第1の導光部20Bの周囲の第2の導光部21Bが、入射した光を第1の導光部20Bに伝送し、かつ、乱反射した光を外部へ伝送する機能を有しており、乱反射面では光の吸収が抑えられることから、減衰が抑えられる。
また、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの屈折率を異ならせることで、例えば図3(a),(b)に示すように、光導波路2Bの外周から入射されて第2の導光部21Bを伝送される光が、境界面22での屈折により乱反射材24に入射する。そして、第1の導光部20Bの両面に乱反射材24を備えることで、第1の導光部20Bに入射した光が、対向する乱反射材24の間で乱反射されて、種々な方向に進む反射波でそれぞれ2回以上の乱反射を発生させ、光導波路2Bの外周の任意の方向から入射した光を、第1の導光部20Bの全周方向に出射させることができる。
更に、散乱材24Bを用いる構成でも、第1の導光部20Bに入射した光を、第1の導光部20Bの両面に備えた散乱材24Bで散乱させると共に、散乱材24Bで散乱された光を反射材25で反射して第1の導光部20Bに入射させることで、散逸による減衰を抑えて、第1の導光部20Bの全周方向に出射することができる。
そして、光導波路2Bの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Bの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Bの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Bの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Bが実現される。
また、光導波路2Bの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Bの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Bが実現される。
更に、光導波路2Bの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Bの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Bが実現される。
なお、反射材全面を乱反射材で構成しても良い。
ここで、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの境界面22で、第2の導光部21Bの角部に光が入射するように、LD3から出力される光を集光等すると、第2の導光部21Bの角部で光が回折される。これにより、光の入射位置の設定に応じて、入射した光を回折により光導波路2Bの全周方向に出射することが可能となる。
<第2の実施の形態の光セレクタの変形例>
図5,図6及び図7は、第2の実施の形態の光セレクタの変形例を示す構成図で、図5〜図7では、第2の実施の形態の変形例の光セレクタを側断面図で示している。なお、第2の実施の形態の変形例の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
図5(a)に示す例では、光導波路2Bの第1の導光部20Bを、乱反射素材で形成したものである。乱反射素材としては、例えば、球状の導光素材が用いられ、第2の導光部21Bの中心に形成された円形の空間に、球状の導光素材が所定の配置で並べられて、第1の導光部20Bが形成される。
球状の導光素材としては、例えば、液晶パネルで対向する基板間に液晶を充填するための空間を形成するスペーサ材としての球状ビーズが用いられ、球状ビーズが交互に位置をずらしたハニカム配列または一列上に並べた円配列で3次元配列される。
図5(b),(c)に示す例では、乱反射材24を球状の導光素材で形成したものである。図5(b),(c)に示す例でも、球状の導光素材としては、例えば、液晶パネルで対向する基板間に液晶を充填するための空間を形成するスペーサ材としての球状ビーズが用いられ、図5(d)の平面図に示すように、入射した光が全周方向に乱反射される配置、例えば、球状ビーズが交互に位置をずらしたハニカム配列または円周上に並べた円配列で配置される。乱反射素材として球状の導光素材を用いる構成では、反射率を高めるために、球状の導光素材をアルミニウムの蒸着等により鏡面とすると良く、鏡面には保護膜を付けても良い。球状の導光素材は、個々にアルミニウムを蒸着しても良いし、図5(a)〜図5(d)に示すように所定の配置で並べられた球状の導光素材の全体にアルミニウムを蒸着しても良い。
ここで、図5(b)では、乱反射材24の第1の導光部20Bに対向した表面と、反射材23Bの第2の導光部21Bに対向した反射面を同一面としたが、乱反射材24の表面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件を満たす所定の距離であれば良く、例えば、図5(c)に示すように、乱反射材24の表面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
図6に示す例では、光導波路2Bの第1の導光部20Bを樹脂材料等の固形物で形成すると共に、乱反射材に替えて、第1の導光部20Bの反射材23Bとの境界面を粗面26Aで形成したものである。
粗面26Aは、円柱状の第1の導光部20Bの上下面を、すりガラスの表面のようになるように所定の表面粗さで研磨すること等で形成される。乱反射材に替えて、第1の導光部20Bの反射材23Bとの境界面を粗面26Aとする構成では、反射率を高めるために、粗面を維持できるような膜厚でアルミニウムの蒸着等により粗面26Aを鏡面とすると良く、鏡面には保護膜を付けても良い。
これにより、第1の導光部20Bに入射した光は、粗面26Aに入射すると乱反射されて第1の導光部20Bを伝送され、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
図7に示す例では、光導波路2Bの第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの境界面22を粗面26Bで形成したものである。
粗面26Bは、第1の導光部20Bが樹脂材料等の固形物で形成される構成では、円柱状の第1の導光部20Bの外周面、または、第1の導光部20Bが空気層で形成される構成では、リング状の第2の導光部21Bの内周面を、すりガラスの表面のようになるように所定の表面粗さで研磨すること等で形成される。
これにより、第1の導光部20Bと第2の導光部21Bの境界面22に入射した光は、粗面26Bで乱反射されて第1の導光部20Bを伝送され、第1の導光部20Bから全周方向に出射される。
<第3の実施の形態の光セレクタの構成例>
図8,図9,図10及び図11は、第3の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図8〜図11では、第3の実施の形態の光セレクタを側断面図で示している。なお、第3の実施の形態の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
第3の実施の形態の光セレクタ1Cは、任意の方向から入射された光を、屈折率の異なる2種類の導光素材を通過させると共に、レンズの作用と乱反射材を利用して乱反射させて、全周方向から出射させる平面型の光導波路2Cと、直進性を有する光を出力するLD3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
光導波路2Cは、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Cと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Cを備える。
第1の導光部20C及び第2の導光部21Cは、本例では共に円板形状で、第1の導光部20Cの中心と第2の導光部21Cの中心を合わせて、第1の導光部20Cが第2の導光部21Cの略中心に配置され、第1の導光部20Cの側方全周に第2の導光部21Cが設けられる。
第1の導光部20Cは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料または空気層等で形成される。また、第2の導光部21Cは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
光導波路2Cは、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの境界面22または第2の導光部21にレンズ部27を備える。
レンズ部27はレンズ部材の一例で、図8に示す例では、所定の屈折率を有した円冠状の導光素材を、第1の導光部20Cの外周面に沿って設けることでレンズ部27Aが形成される。
レンズ部27Aは、第2の導光部21Cの厚みと略同等の直径を有した円形の断面形状で、第2の導光部21Cの内周面に沿って封入される形態となっている。ここで、レンズ部27Aは、本例では第1の導光部20Cと同じ屈折率を有した材質で形成される。
図9に示す例では、所定の屈折率を有した円冠状の導光素材を、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの境界面に沿って設けることでレンズ部27Bが形成される。
レンズ部27Bは、第2の導光部21Cの厚みと略同等の直径を有した円形の断面形状で、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cに封入される形態となっている。ここで、レンズ部27Bは、本例では第1の導光部20C及び第2の導光部21Cと異なる第3の屈折率を有した材質で形成される。
図10に示す例では、所定の屈折率を有した円冠状の導光素材を、第1の導光部20Cの外周面に沿って設けることでレンズ部27Cが形成される。
レンズ部27Cは、第2の導光部21Cの厚みの半分と略同等の半径を有した半円形の断面形状で、半円形の頂点を対向させて、第2の導光部21Cの内周面に沿って封入される形態となっている。ここで、レンズ部27Cは、本例では第1の導光部20C及び第2の導光部21Cと異なる第3の屈折率を有した材質で形成される。
図11に示す例では、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの境界面22を、所定の曲率半径Rを有した曲面で構成してレンズ部27Dが形成される。レンズ部27Dは、例えば、第1の導光部20Dが空気層である構成では、第2の導光部21Cの内周面を凹状の曲面として形成される。
光導波路2Cは、図2等で説明した第2の実施の形態の光セレクタ1Bの光導波路2Bと同様に、第2の導光部21Cの上下面に反射材23Bを備える。また、第1の導光部20Cの上下面に乱反射材24を備える。
ここで、図8(a),図9(a),図10(a)及び図11(a)では、第2の実施の形態の図2(a)と同様に、第2の導光部21Cを挟んだ反射材23Bを、更に乱反射材24で挟んだ構成で、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面は、反射材23Bの厚みに応じた距離を有するが、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件を満たす所定の距離であれば良い。
すなわち、図8(b),図9(b),図10(b),図11(b)に示すように近づけても良いし、図9(c)に示すように同一面でも良いし、図8(c),図10(c)及び図11(c)に示すように、乱反射材24の乱反射面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
これにより、光導波路2Cは、第2の導光部21Cの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Cの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Cに入射した光が反射材23Bで反射して、第2の導光部21Cを伝送される。
第2の導光部21Cを伝送される光は、図8に示す例では、レンズ部27A及び第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの境界面22での屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射により、第1の導光部20Cから全周方向に出射される。
図9に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光は、レンズ部27Bでの屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射により、第1の導光部20Cから全周方向に出射される。
図10に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光は、レンズ部27C及び第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの境界面22での屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射により、第1の導光部20Cから全周方向に出射される。
図11に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光は、レンズ部27Dでの屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射により、第1の導光部20Cから全周方向に出射される。
そして、第1の導光部20Cから全周方向に出射された光は、第2の導光部21Cを伝送されて、第2の導光部21Cの外周面から出射される。
従って、光導波路2Cは、外周の任意の位置から第1の導光部20Cに向けて光が入射されると、第1の導光部20Cで全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は、図示しない発光部を第2の導光部21Cの外周面に対向させて、光導波路2Cの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は、図示しない受光部を第2の導光部21Cの外周面に対向させて、光導波路2Cの外周の任意の位置に配置される。
<第3の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第3の実施の形態の光セレクタ1Cの動作例について、図8〜図11を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Cの外周面から第1の導光部20Cに向けて光導波路2Cに入射される。
第2の導光部21Cの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Cを伝送され、図8に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光が屈折率の異なるレンズ部27Aを通過すると、レンズ部27Aは断面形状が円形であるのでレンズの作用で屈折される。
レンズ部27Aで屈折された光が、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22に入射すると、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
また、第1の導光部20Cに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、様々な光路で第1の導光部20Cを伝送され、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22、更にレンズ部27Aに入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
図9に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光が屈折率の異なるレンズ部27Bを通過すると、レンズ部27Bは断面形状が円形であるのでレンズの作用で屈折されて、第1の導光部20Cに入射する。
また、第1の導光部20Cに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、第1の導光部20Cを伝送され、レンズ部27Bに入射して、屈折等により光路が曲げられる。
図10に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光が屈折率の異なるレンズ部27Cを通過すると、レンズ部27Cは断面形状が半円形であるのでレンズの作用で屈折される。
レンズ部27Cで屈折された光が、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22に入射すると、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
また、第1の導光部20Cに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、第1の導光部20Cを伝送され、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cとの境界面22、更にレンズ部27Cに入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
図11に示す例では、第2の導光部21Cを伝送される光がレンズ部27Dを通過すると、第1の導光部20Cと第2の導光部21Cは屈折率が異なり、レンズ部27Dは曲面であるのでレンズの作用で屈折されて、第1の導光部20Cに入射する。
また、第1の導光部20Cに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、第1の導光部20Cを伝送され、レンズ部27Dに入射して、屈折等により光路が曲げられる。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Cの外周の任意の位置から第2の導光部21Cに入射した光は、第2の導光部21Cを伝送されて、レンズ部27(A,B,C,D)の作用で光路が曲げられて第1の導光部20Cに入射すると共に、第1の導光部20Cに入射した光は、乱反射材24で乱反射して第1の導光部20Cを伝送されて、更にレンズ部27(A,B,C,D)で光路が曲げられることで、より均一に全周方向へ出射される。
従って、光導波路2Cでも、第1の導光部20Cから全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Cを伝送される。そして、第2の導光部21Cを伝送される光は、第2の導光部21Cの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Cの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Cは、レンズ部27(A〜D)の作用と、中心部分の第1の導光部20Cでの乱反射材24による乱反射で、光を全周方向に出射する機能を有すると共に、第1の導光部20Cの周囲の第2の導光部21Cが、入射した光を第1の導光部20Cに伝送し、かつ、乱反射した光を外部へ伝送する機能を有しており、乱反射面では光の吸収が抑えられることから、減衰が抑えられる。
そして、光導波路2Cの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Cの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Cの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Cの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Cが実現される。
また、光導波路2Cの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Cの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Cが実現される。
更に、光導波路2Cの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Cの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Cが実現される。
ここで、図10に示す構成では、半円形のレンズ部27Cの頂点に光が入射するように、LD3から出力される光を集光等すると、レンズ部27Cの頂点で光が回折される。これにより、光の入射位置の設定に応じて、入射した光を回折により光導波路2Cの全周方向に出射することが可能となる。
また、光導波路2Cにおいて、第2の導光部21Cの外周面の半径をr1、内周面の半径をr2とすると、レンズ部27(A,B,C)の円冠状の半径rは、r=r1−r2内の任意の位置に配置することで、光を全周方向に乱反射させて出射させる効果が得られる。
<第4の実施の形態の光セレクタの構成例>
図12及び図13は、第4の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図12及び図13では、第4の実施の形態の光セレクタを側断面図で示している。なお、第4の実施の形態の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
第4の実施の形態の光セレクタ1Dは、任意の方向から入射された光をレンズの作用と乱反射材を利用して乱反射させて、全周方向から出射させる平面型の光導波路2Dと、直進性を有する光を出力するLD3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
光導波路2Dは、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Dと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Dを備える。
第1の導光部20Dは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。また、第2の導光部21Dは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
第1の導光部20Dは、図12に示す例では中実の球形状に形成され、図13に示す例では中空の半球形状に形成される。また、第2の導光部21Dは、中心部に円形の空間が形成された円板形状に形成され、第1の導光部20Dの中心と第2の導光部21Dの中心を合わせて、第1の導光部20Dが第2の導光部21Dの略中心に配置され、第1の導光部20Dの側方全周に第2の導光部21Dが設けられる。
光導波路2Dは、図2等で説明した第2の実施の形態の光セレクタ1Bの光導波路2Bと同様に、第2の導光部21Dの上下面に反射材23Bを備える。また、第1の導光部20Dの上下面に乱反射材24を備える。
ここで、図12(a)及び図13(a)では、第2の実施の形態の図2(a)と同様に、第2の導光部21Dを挟んだ反射材23Bを、更に乱反射材24で挟んだ構成で、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面は、反射材23Bの厚みに応じた距離を有するが、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件を満たす所定の距離であれば良い。
すなわち、図12(b)及び図13(b)に示すように近づけても良いし、図示しないが同一面でも良いし、図12(c)及び図13(c)に示すように、乱反射材24の乱反射面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
これにより、光導波路2Dは、第2の導光部21Dの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Dの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Dに入射した光が反射材23Bで反射して、第2の導光部21Dを伝送される。
また、第2の導光部21Dを伝送される光が、第2の導光部21Dと空気層との境界面での屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射と、第1の導光部20Dのレンズの作用により、第1の導光部20Dの全周方向に出射される。
更に、第1の導光部20Dの全周方向に出射された光は、第2の導光部21Dを伝送されて、第2の導光部21Dの外周面から出射される。
従って、光導波路2Dは、外周の任意の位置から第1の導光部20Dに向けて光が入射されると、第1の導光部20Dで全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は、図示しない発光部を第2の導光部21Dの外周面に対向させて、光導波路2Dの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は、図示しない受光部を第2の導光部21Dの外周面に対向させて、光導波路2Dの外周の任意の位置に配置される。
<第4の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第4の実施の形態の光セレクタ1Dの動作例について、図12及び図13を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Dの外周面から第1の導光部20Dに向けて光導波路2Dに入射される。
第2の導光部21Dの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Dを伝送され、第2の導光部21Dと空気層との境界面に入射すると、第2の導光部21Dと空気層の屈折率の差に応じて屈折等により光路が曲げられる。
第2の導光部21Dの内周面から出射した光は、第1の導光部20Dに入射すると、第1の導光部20Dは断面形状が円形または半円形等の曲面で形成されるので、レンズの作用で屈折される。また、第2の導光部21Dの内周面から出射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射される。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Dの外周の任意の位置から第2の導光部21Dに入射した光は、第2の導光部21Dを伝送されて、第1の導光部20Dのレンズの作用で光路が曲げられ、乱反射材24で乱反射して全周方向に出射される。
従って、光導波路2Dでも、第1の導光部20Dの全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Dを伝送される。そして、第2の導光部21Dを伝送される光は、第2の導光部21Dの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Dの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Dは、中心部分の第1の導光部20Dが、レンズの作用と乱反射材24による乱反射で光を全周方向に出射する機能を有すると共に、第1の導光部20Dの周囲の第2の導光部21Dが、入射した光を第1の導光部20Dに伝送し、かつ、乱反射した光を外部へ伝送する機能を有しており、乱反射面では光の吸収が抑えられることから、減衰が抑えられる。
そして、光導波路2Dの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Dの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Dの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Dの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Dが実現される。
また、光導波路2Dの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Dの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Dが実現される。
更に、光導波路2Dの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Dの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Dが実現される。
ここで、第1の導光部20Dと第2の導光部21Dの境界面で、第2の導光部21Dの角部に光が入射するように、LD3から出力される光を集光等すると、第2の導光部21Dの角部で光が回折される。これにより、光の入射位置の設定に応じて、入射した光を回折により光導波路2Dの全周方向に出射することが可能となる。
<第5の実施の形態の光セレクタの構成例>
図14は、第5の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図14では、第5の実施の形態の光セレクタを側断面図で示している。なお、第5の実施の形態の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
第5の実施の形態の光セレクタ1Eは、任意の方向から入射された光を、屈折率の異なる2種類の導光素材を通過させると共に、プリズムを利用した屈折や回折と乱反射材による乱反射で全周方向から出射させる平面型の光導波路2Eと、直進性を有する光を出力するLD3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
光導波路2Eは、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Eと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Eを備える。
第1の導光部20E及び第2の導光部21Eは、本例では共に円板形状で、第1の導光部20Eの中心と第2の導光部21Eの中心を合わせて、第1の導光部20Eが第2の導光部21Eの略中心に配置され、第1の導光部20Eの側方全周に第2の導光部21Eが設けられる。
第1の導光部20Eは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料または空気層等で形成される。また、第2の導光部21Eは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
光導波路2Eは、第1の導光部20Eと第2の導光部21Eの境界面22にプリズム部27Eを備える。
プリズム部27Eは回折部材の一例で、所定の屈折率を有した円冠状の導光素材を、第1の導光部20Eの外周面に沿って設けることで形成される。
プリズム部27Eは、1辺の長さが第2の導光部21Eの厚みと略同等な三角形の断面形状で、三角形の一の頂点が第2の導光部21Eの厚み方向の略中央に位置させて、第2の導光部21Eの内周面に沿って封入される形態となっている。ここで、プリズム部27Eは、本例では第1の導光部20E及び第2の導光部21Eと異なる第3の屈折率を有した材質で形成される。
光導波路2Eは、図2等で説明した第2の実施の形態の光セレクタ1Bの光導波路2Bと同様に、第2の導光部21Eの上下面に反射材23Bを備える。また、第1の導光部20Eの上下面に乱反射材24を備える。
ここで、図14(a)は、第2の実施の形態の図2(a)と同様に、第2の導光部21Eを挟んだ反射材23Bを、更に乱反射材24で挟んだ構成で、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面は、反射材23Bの厚みに応じた距離を有するが、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件を満たす所定の距離であれば良い。
すなわち、図14(b)に示すように近づけても良いし、図示しないが同一面でも良いし、図14(c)に示すように、乱反射材24の乱反射面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
これにより、光導波路2Eは、第2の導光部21Eの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Eの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Eに入射した光が反射材23Bで反射して、第2の導光部21Eを伝送される。
第2の導光部21Eを伝送される光は、プリズム部27E及び第1の導光部20Eと第2の導光部21Eの境界面22での屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射により、第1の導光部20Eから全周方向に出射される。
そして、第1の導光部20Eから全周方向に出射された光は、第2の導光部21Eを伝送されて、第2の導光部21Eの外周面から出射される。
従って、光導波路2Eは、外周の任意の位置から第1の導光部20Eに向けて光が入射されると、第1の導光部20Eで全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は、図示しない発光部を第2の導光部21Eの外周面に対向させて、光導波路2Eの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は、図示しない受光部を第2の導光部21Eの外周面に対向させて、光導波路2Eの外周の任意の位置に配置される。
<第5の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第5の実施の形態の光セレクタ1Eの動作例について、図14を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Eの外周面から第1の導光部20Eに向けて光導波路2Eに入射される。
第2の導光部21Eの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Eを伝送され、第2の導光部21Eを伝送される光がプリズム部27Eを通過すると、プリズム部27Eは断面形状が三角形であるのでプリズムの作用で屈折される。
プリズム部27Eで屈折された光が、第1の導光部20Eと第2の導光部21Eとの境界面22に入射すると、第1の導光部20Eと第2の導光部21Eの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Eと第2の導光部21Eとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
また、第1の導光部20Eに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、第1の導光部20Eを伝送され、第1の導光部20Eと第2の導光部21Eとの境界面22、更にプリズム部27Eに入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Eの外周の任意の位置から第2の導光部21Eに入射した光は、第2の導光部21Eを伝送されて、プリズム部27Eの作用で光路が曲げられて第1の導光部20Eに入射すると共に、第1の導光部20ECに入射した光は、乱反射材24で乱反射して第1の導光部20Eを伝送されて、更にプリズム部27Eで光路が曲げられることで、より均一に全周方向へ出射される。
従って、光導波路2Eでも、第1の導光部20Eから全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Eを伝送される。そして、第2の導光部21Eを伝送される光は、第2の導光部21Eの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Eの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Eは、プリズム部27Eの作用と、中心部分の第1の導光部20Eでの乱反射材24による乱反射で、光を全周方向に出射する機能を有すると共に、第1の導光部20Eの周囲の第2の導光部21Eが、入射した光を第1の導光部20Eに伝送し、かつ、乱反射した光を外部へ伝送する機能を有しており、乱反射面では光の吸収が抑えられることから、減衰が抑えられる。
そして、光導波路2Eの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Eの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Eの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Eの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Eが実現される。
また、光導波路2Eの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Eの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Eが実現される。
更に、光導波路2Eの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Eの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Eが実現される。
ここで、プリズム部27Eの頂点に光が入射するように、LD3から出力される光を集光等すると、プリズム部27Eの頂点で光が回折される。これにより、光の入射位置の設定に応じて、入射した光を回折により光導波路2Eの全周方向に出射することが可能となる。
なお、プリズム部27Eの形状としては、断面形状が四角形でも良い。断面形状が四角である場合、第2の導光部21Eとの接面の角部に光が入射するようにして、光を回折させる。また、第2の導光部21Eの厚みの半分と略同等の高さを有した三角形の導光素材を、三角形の頂点を対向させる構成でも良い。この場合も対向する三角形の頂点に光が入射するようにして、光を回折させる。
<第6の実施の形態の光セレクタの構成例>
図15は、第6の実施の形態の光セレクタの一例を示す構成図で、図15では、第6の実施の形態の光セレクタを側断面図で示している。なお、第6の実施の形態の光セレクタにおいて、平面図は図1(b)に示す形態と同様である。
第6の実施の形態の光セレクタ1Fは、任意の方向から入射された光を、積層された屈折率の異なる導光素材を通過させ、乱反射材で乱反射させて、全周方向から出射させる平面型の光導波路2Fと、直進性を有する光を出力するLD3と、光が入力されるフォトディテクタ4を備える。
光導波路2Fは、所定の波長領域において第1の屈折率を有した導光素材で形成された第1の導光部20Fと、第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有した導光素材で形成された第2の導光部21Fを備える。
第1の導光部20Fは、所定の波長領域において第1の屈折率を有して透明な樹脂材料または空気層等で形成される。また、第2の導光部21Fは、所定の波長領域において第2の屈折率を有して透明な樹脂材料等で形成される。
第2の導光部21Fは、中心部に円形の空間が形成された円板形状で、断面形状が半円状のレンズ部27Fが一方の面に円冠状に形成され、レンズ部27Fを対向させて積層される。
第1の導光部20Fは、第2の導光部21Fと中心を合わせて第2の導光部21Fの略中心及び積層された第2の導光部21Fの間の空間に配置され、第1の導光部20Fの側方全周に第2の導光部21Fが設けられる。
光導波路2Fは、図2等で説明した第2の実施の形態の光セレクタ1Bの光導波路2Bと同様に、積層された第2の導光部21Fの上下面に反射材23Bを備える。また、第2の導光部21Fの中心に配置される第1の導光部20Fの上下面に乱反射材24を備える。
ここで、図15(a)は、第2の実施の形態の図2(a)と同様に、第2の導光部21Fを挟んだ反射材23Bを、更に乱反射材24で挟んだ構成で、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面は、反射材23Bの厚みに応じた距離を有するが、乱反射材24の乱反射面と反射材23Bの反射面の距離は、上述した光学条件を満たす所定の距離であれば良い。
すなわち、図15(b)に示すように近づけても良いし、図示しないが同一面でも良いし、図15(c)に示すように、乱反射材24の乱反射面が反射材23Bの反射面より内側にあっても良い。
これにより、光導波路2Fは、第2の導光部21Fの外周面の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、第2の導光部21Fの外周面から光が入出射されると共に、第2の導光部21Fに入射した光が反射材23Bで反射して、第2の導光部21Fを伝送される。
第2の導光部21Fを伝送される光は、レンズ部27Fでの屈折と、第1の導光部20Fと第2の導光部21Fの境界面22及び積層された第2の導光部21Fと間の空気層との境界面での屈折や反射等と、乱反射材24での乱反射等により、第1の導光部20Fから全周方向に出射される。
そして、第1の導光部20Fから全周方向に出射された光は、第2の導光部21Fを伝送されて、第2の導光部21Fの外周面から出射される。
従って、光導波路2Fは、外周の任意の位置から第1の導光部20Fに向けて光が入射されると、第1の導光部20Fで全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
LD3は、図示しない発光部を第2の導光部21Fの外周面に対向させて、光導波路2Fの外周の任意の位置に配置される。また、フォトディテクタ4は、図示しない受光部を第2の導光部21Fの外周面に対向させて、光導波路2Fの外周の任意の位置に配置される。
<第6の実施の形態の光セレクタの動作例>
次に、第6の実施の形態の光セレクタ1Fの動作例について、図15を参照して説明する。
LD3では、電気信号が光の信号に変換されて出力され、LD3から出力された光は、第2の導光部21Fの外周面から第1の導光部20Fに向けて光導波路2Fに入射される。
第2の導光部21Fの外周面から入射された光は、反射材23Bで反射されることで第2の導光部21Fを伝送され、レンズ部27Fに入射した光は、レンズ部27Fは断面形状が半円形であるのでレンズの作用で屈折される。
第2の導光部21Fを伝送され、レンズ部27Fで屈折された光が第1の導光部20Fと第2の導光部21Fとの境界面22に入射すると、第1の導光部20Fと第2の導光部21Fの屈折率の差に応じて、第1の導光部20Fと第2の導光部21Fとの境界面22での屈折及び反射等により光路が曲げられる。
また、第1の導光部20Fに入射した光は、乱反射材24に入射すると乱反射されて、第1の導光部20Fを伝送され、第1の導光部20Fと第2の導光部21Fとの境界面22、及びレンズ部27Fに入射して、屈折及び反射等により光路が曲げられる。
これにより、LD3から出力され、光導波路2Fの外周の任意の位置から第2の導光部21Fに入射した光は、第2の導光部21Fを伝送されて、レンズ部27Fの作用で光路が曲げられて、第1の導光部20Fに入射すると共に、第1の導光部20Fに入射した光は、乱反射材24で乱反射して第1の導光部20Fを伝送されて、更にレンズ部27Fで光路が曲げられることで、より均一に全周方向に出射される。
従って、光導波路2Fでも、第1の導光部20Fから全周方向に光が出射されて、第2の導光部21Fを伝送される。そして、第2の導光部21Fを伝送される光は、第2の導光部21Fの外周面から全周方向に出射され、光導波路2Fの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4に入力され、光信号が電気信号に変換されて出力される。
このように、光導波路2Fは、レンズ部27Fの作用と、中心部分の第1の導光部20Fでの乱反射材24による乱反射で、光を全周方向に出射する機能を有すると共に、第1の導光部20Fの周囲の第2の導光部21Fが、入射した光を第1の導光部20Fに伝送し、かつ、乱反射した光を外部へ伝送する機能を有しており、乱反射面では光の吸収が抑えられることから、減衰が抑えられる。
そして、光導波路2Fの外周の任意の位置に配置されたLD3から出力された光が、光導波路2Fの外周の任意の位置に配置されたフォトディテクタ4で受光できるので、光導波路2Fの外周の任意の位置に1個のLD3を備えると共に、光導波路2Fの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、1対多の光セレクタ1Fが実現される。
また、光導波路2Fの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Fの外周の任意の位置に1個のフォトディテクタ4を備えることで、多対1の光セレクタ1Fが実現される。
更に、光導波路2Fの外周の任意の位置に複数個のLD3を備えると共に、光導波路2Fの外周の任意の位置に複数個のフォトディテクタ4を備えることで、多対多の光セレクタ1Fが実現される。
ここで、光導波路2Fにおいても、第2の導光部21Fの外周面の半径をr1、内周面の半径をr2とすると、レンズ部27Fの円冠状の半径rは、r=r1−r2内の任意の位置に配置することで、光を全周方向に乱反射させて出射させる効果が得られる。
<各実施の形態の光セレクタの具体例>
次に、上述した各実施の形態の光セレクタ1(A〜F)において、光導波路2(A〜F)の形状や材質等の具体例について説明する。
光導波路2を構成する第2の導光部21(A〜F)は、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)で構成される。また、第1の導光部20(A〜F)は、例えば空気、またはPMMAで構成される。
図16は、色彩拡散面の反射率を示す説明図、図17は、反射材、乱反射材及び散乱材に適した材料の反射率を示す説明図である。
図16では、乱反射材に、表記したような色彩を有するコーティング材を、図2等で説明した光学条件を満たすように限りなく薄く塗布して作成した色彩拡散面における反射率を示し、色彩を白とした場合の反射率が高いことがわかる。また、上述したように散乱と乱反射では光の散らばる機構はまったく別物であるが、光を乱反射させる乱反射材24は、反射率が高い色が好ましい。また、図3(c)等に示すように、散乱材24Bに入射して散乱した光を反射材25で正反射させる構成でも、反射率が高い色が好ましく、更に、散乱材24Bは薄くできる材料が好ましい。
このため、散乱材24Bは、構成粒子の密度や配向に揺らぎを持たせることで実現される。つまり乳化材を混入したプラスチック素材、ポリプロピレン、ポリカーボネート、白色の紙、トレーシングペーパ等が用いられ、特に反射率の高い材料で構成される。また、その構成粒子の密度や配向の、揺らぎの物理的長さLは使用する光の波長λに比べてあまり大きくない微粒子で構成される。
そのため、散乱材24Bの表面形状は、鏡面性に由来する正反射を抑えるために、第1の導光部20との接面が粗面であることが好ましい。そのためには例えば、紙やすり等の研磨工具で極細目や超極細目と呼ばれる番数と同等程度の粗面が良く、白色のプラスチック素材の表面を、サンドブラスト加工により粗面としても良い。
一方、乱反射材24は、入射した光が、進行中の媒質と異なる媒質あるいは不連続的変化のある境界面に当たって方向を変え、もとの媒質中の新しい方向に進むように乱反射させる部材であり、その境界面の表面形状の凹凸が光の波長と同程度、あるいはそれより大きくすることで、反射光は種々の方向に進み、乱反射が実現される。またその境界面の反射率を高めるため金属コーティング等による微細鏡面化も用いられる。例えば、ガラスの表面をサンドブラスト加工により粗面とし、アルミニウムの蒸着等により粗面を鏡面とすると良い。
なお、第1の導光部20と第2の導光部21の境界面22を粗面で構成する場合も、乱反射材24及び散乱材24Bと同等程度の粗面とすると良い。
第2の導光部21及び第1の導光部20に光を閉じ込めて伝送するため上下面に設けられる反射材23は、光の反射率が高い材料が好ましく、例えばアルミニウムの蒸着で構成すると良い。また、反射材23は平坦な面とすると良い。
光導波路2の大きさは任意であるが、後述するように、LD3やフォトディテクタ4等で送受信部が構成された基板を周囲に複数枚実装できるような径とする。また、厚さは3mm程度とした。但し、厚さはこれに限られるものではなく、上述した光学条件を満たす厚さならいくらでも良い。また、第1の導光部20の直径は、第2の導光部21の半径の半分以下とした。
LD3の出力は、光導波路2の直径に応じて決まる光路長での減衰量等を考慮して決められる。また、LD3から出力される光の波長は、赤色光、緑色光、青色光、紫色光等のいずれでも良い。
更に、LD3から出力される光のスポット径は、光導波路2の面方向(水平方向)に関しては、第1の導光部20に入射したときに、第1の導光部20の径より小さくなるような径、第1の導光部20の径と同等程度となるような径、第1の導光部20の周囲に円冠状にレンズ部等が形成されている構成では、レンズ部の径と同等程度となるような径等のいずれでも良い。
LD3から出力される光のスポット径は、光導波路2の厚み方向(垂直方向)に関しては、第1の導光部20に入射したときに、第1の導光部20と第2の導光部21の境界面で、第2の導光部21の厚みと同等程度となるような径、第1の導光部20の中心付近で、第1の導光部20の厚みと同等程度となるような径等のいずれでも良い。
また、LD3から出力される光のスポット径を絞り、乱反射材24に直接入射するように方向を設定しても良いし、第1の導光部20と第2の導光部21の境界面の角部に入射する用に方向を設定しても良い。
そして、LD3から出力される光のスポット径は、光学レンズで所定の径に固定的に絞っても良いし、レンズ形状を可変とできる水レンズ等を利用して、スポット径を調整できるようにしても良い。更に、光導波路2への入射角度は固定されていても良いし、可変機構を備えても良い。
ここで、光を出力する発光手段としては、LDに半導体レーザ等のレーザも利用可能である。
フォトディテクタ4の受光感度は、LD3の出力と、光導波路2での減衰量に応じて決められる。また、フォトディテクタ4で受光可能な中心波長は、LD3で出力される光の波長に応じて決められる。
フォトディテクタ4の受光面の大きさは、光導波路2から出射される光の径に応じて設定すれば良い。また、フォトディテクタ4への入射角度は、垂直でも良いし、所定の受光感度が得られる範囲で傾斜させても良い。
例えば、フォトディテクタ4で光電変換された信号を処理する受信部にゲイン調整回路を備え、LD3を備えた送信部で出力レベルやスポット径等のパラメータが設定された光をフォトディテクタ4で受光した際の受光感度からゲイン調整回路でゲインを調整した後、デジタルデータの[0],[1]の閾値を自動設定できるようにしても良い。
図18は、光導波路の形状の他の例を示す平面図である。図18(a)に示す例では、第1の導光部20は円形とすると共に、第2の導光部21は、内周面は第1の導光部20と同じ円形とし、外周面は正方形としたものである。
図18(b)に示す例では、第1の導光部20は長円形とすると共に、第2の導光部21は、内周面は第1の導光部20と同じ長円形とし、外周面も長円形としたものである。
図18(c)に示す例では、第1の導光部20は長円形とすると共に、第2の導光部21は、内周面は第1の導光部20と同じ長円形とし、外周面は長方形としたものである。
第1の導光部20は、角部がない形状とすれば、略全周に光が出射される。また、第2の導光部21は、外周面を四角形とした場合、角部以外では光の入出射が可能で、光の入出射の方向を第1の導光部20に向ければ良い。
<第1の実施の形態の信号処理装置の構成例>
図19は、第1の実施の形態の信号処理装置の一例を示す構成図である。なお、図19では、第1の実施の形態の信号処理装置を模式的な平面図で示している。
第1の実施の形態の信号処理装置5Aは、波長の異なる光が出力される光出力部30Aと、光出力部30Aから出力された波長の異なる光が入力される光入力部40Aと、光出力部30Aから出力されて、光入力部40Aで入力される光が伝送される光導波路2を備え、波長の異なる光を重ね合わせて多重化するものである。
光導波路2は、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜F)のいずれかで構成され、光導波路2の外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光出力部30Aは、直進性を有し、波長の異なる光を出力する複数のLD3を備える。本例では、赤色の波長の光を出力するLD3Rと、緑色の波長の光を出力するLD3Gと、青色の波長の光を出力するLD3Bと、紫色の波長の光を出力するLD3Pを備える。
各LD3(R,G,B,P)は、LD駆動部31Aにより駆動され、電気信号が光に変換されて出力される。
光出力部30Aは、4個のLD3(R,G,B,P)が、光導波路2の平面に対して水平に設けられ、光が出力される方向を光導波路2の第1の導光部20に向けて、それぞれが光導波路2の外周に沿って配置される。
光入力部40Aは、光出力部30Aに対応して本例では4個のフォトディテクタ4(R,G,B,P)を備える。各フォトディテクタ4(R,G,B,P)は、PD駆動部41Aにより駆動され、光が電気信号に変換されて出力される。
フォトディテクタ4Rは、受光面に赤色光を透過する光バンドパスフィルタ42Rが設けられ、光出力部30Aから出力され、光導波路2を伝送されて出射された光の中で、LD3Rから出力された波長λ1の光が入力される。
同様に、フォトディテクタ4Gは、受光面に緑色光を透過する光バンドパスフィルタ42Gが設けられ、光導波路2から出射された光の中で、LD3Gから出力された波長λ2の光が入力される。
また、フォトディテクタ4Bは、受光面に青色光を透過する光バンドパスフィルタ42Bが設けられ、光導波路2から出射された光の中で、LD3Bから出力された波長λ3の光が入力される。
更に、フォトディテクタ4Pは、受光面に紫色光を透過する光バンドパスフィルタ42Pが設けられ、光導波路2から出射された光の中で、LD3Pから出力された波長λ4の光が入力される。
光入力部40Aは、4個のフォトディテクタ4(R,G,B,P)が、光導波路2の平面に対して水平に設けられ、それぞれが光導波路2の外周に配置される。
<第1の実施の形態の信号処理装置の動作例>
次に、上述した第1の実施の形態の信号処理装置5Aの動作例について、図19等を参照して説明する。
信号処理装置5Aでは、各LD3(R,G,B,P)で電気信号が所定の波長の光の信号に変換されて出力される。
光出力部30AのLD3Rから出力された光は、光導波路2の外周から入射し、上述したように、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
LD3Rから出力されて、光導波路2の全周方向に出射された波長λ1の光は、光バンドパスフィルタ42Rを透過してフォトディテクタ4Rに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(G,B,P)では、LD3Rから出力された波長λ1の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(G,B,P)で遮断される。
同様に、LD3Gから出力されて、光導波路2の全周方向に出射された波長λ2の光は、光バンドパスフィルタ42Gを透過してフォトディテクタ4Gに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,B,P)では、LD3Gから出力された波長λ2の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,B,P)で遮断される。
また、LD3Bから出力されて、光導波路2の全周方向に出射された波長λ3の光は、光バンドパスフィルタ42Bを透過してフォトディテクタ4Bに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,G,P)では、LD3Bから出力された波長λ3の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,G,P)で遮断される。
更に、LD3Pから出力されて、光導波路2の全周方向に出射された波長λ4の光は、光バンドパスフィルタ42Pを透過してフォトディテクタ4Pに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,G,B)では、LD3Pから出力された波長λ4の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,G,B)で遮断される。
このように、信号処理装置5Aでは、各LD3(R,G,B,P)から波長の異なる光が出力されることで、光導波路2では複数の信号が重ね合わされて伝送される。また、光導波路2は、外周の任意の位置から入射された光が全周方向に出射されるので、光バンドパスフィルタ等を利用することで、光導波路2の外周に配置したフォトディテクタ4(R,G,B,P)に、所定の波長の光が入力される。
これにより、信号処理装置5Aでは、波長分割による伝送信号の多重化が可能となり、例えば、映像信号のR,G,Bの各色の信号と同期信号の4チャネルの信号を光導波路2で伝送して、光出力部30Aと光入力部40Aとの間で送受することができ、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)のような信号伝送方式の採用も可能となる。
なお、波長分割による多重化以外にも、単波長で時分割により多重化することも可能である。また、周波数分割や、ビタビ符号によるスペクトラム分割によって、伝送信号を多重化することも可能である。
また、受光素子としてアナログ出力フォトダイオード(APD)または多ビット出力フォトダイオード(TPD)で感度の高く、受光エネルギーと出力レベルの線形性が良好で出力レベル範囲の大きいフォトダイオードを用いる構成とすると、光出力部30Aから出力されて重ね合わされた光を、1つのAPDまたはTPDで分離することも可能である。以下はAPDを例に説明するが、TPDの場合はAPDの出力がデジタル化されてビット出力されるだけであり、それ以外の構成、説明に変わりは無い。
図20は、第1の実施の形態の信号処理装置の変形例を示す構成図である。例えば、光出力部30Aは、光導波路2の外周に、波長の異なる光を出力する複数のLD3が、光導波路2の面に対して水平に設けられる。一方、光入力部40Aは、光導波路2の外周に、1個のAPD4が設けられる。
LD3から光が出力されると、上述したように光導波路2を伝送されて、APD4で受光され、光電変換されて電気信号が出力されるが、出力波長毎にAPD4からの電圧レベルが異なる。
そこで、各LD3から光を出力した時のAPD4の出力レベルを例えば素数で表現し、かつ、光を出力するLD3の組み合わせに応じて、出力の総和が同じ組み合わせにならないようにすることで、複数のLD3の出力で表現される多ビットの値を、1つのAPD4の出力で区別する。
図21は、APDの出力を表現する値の演算方法を示す説明図、図22は、演算結果を示す説明図である。本例では、任意の範囲(ここでは1021まで)の素数のテーブルから読み出した素数を、所定のビット長で組み合わせて加算したテーブルを作成し、加算した値が重ならない素数の組み合わせを求める。
例えば、上述した演算方法では、ビット長を2ビットから10ビットまで変動させたときに、加算した値が重ならない組み合わせが得られる最大のビット長は6ビットで、素数の組み合わせは、図22に示すように、509、521、523、541、547、557であった。
そして、以上のようにして決められたAPD4の出力レベルが得られるように、各LD3の波長を重なり合わないように設定すると共に、各LD3の出力レベルを設定して、設定値をテーブルに格納等して利用することにより、複数のLD3の出力で表現される多ビットの値を、1つのAPD4の出力で区別することが可能となる。なお、APD4の出力レベルは、自然数等で表現しても良い。
<第2の実施の形態の信号処理装置の構成例>
図23及び図24は、第2の実施の形態の信号処理装置の一例を示す構成図である。なお、図23及び図24では、第2の実施の形態の信号処理装置を模式的な側断面図で示している。
第2の実施の形態の信号処理装置5Bは、波長の異なる光が出力される光出力部30Bと、光出力部30Bから出力された波長の異なる光が入力される光入力部40Bと、光出力部30Bから出力されて、光入力部40Bで入力される光が伝送される光導波路2を備え、波長の異なる光を重ね合わせて一点から出射して、多重化するものである。
光導波路2は、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜F)のいずれかで構成され、光導波路2の外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光出力部30Bは、波長の異なる光を出力する複数のLD3を備える。本例では、赤色の波長の光を出力するLD3Rと、緑色の波長の光を出力するLD3Gと、青色の波長の光を出力するLD3Bと、紫色の波長の光を出力するLD3Pを備える。
各LD3(R,G,B,P)は、LD駆動部31Aにより駆動され、電気信号が光に変換されて出力される。
光出力部30Bは、4個のLD3(R,G,B,P)が、光導波路2の平面に対して例えば垂直に設けられ、各LD3(R,G,B,P)から出力された光を1点から出力するため、光合波器32を備える。
光合波器32は光合波手段の一例で、本例では、LD3Bから出力される波長λ3の光を反射する反射膜32Bを備える。また、LD3Gから出力されて一方の面から入射する波長λ2の光は反射し、反射膜32Bで反射して他方の面から入射する波長λ3の光は透過する半透過膜32Gを備える。
同様に、LD3Rから出力されて一方の面から入射する波長λ1の光は反射し、半透過膜32Gで透過して他方の面から入射する波長λ3の光及び半透過膜32Gで反射して他方の面から入射する波長λ2の光は透過する半透過膜32Rを備える。
更に、LD3Pから出力されて一方の面から入射する波長λ4の光は透過し、半透過膜32Rで透過して他方の面から入射する波長λ3,λ2の光及び半透過膜32Rで反射して他方の面から入射する波長λ1の光は反射する半透過膜32Pを備える。
ここで、各LD3(R,G,B,P)から出力される光は、透過及び反射する半透過膜32(R,G,B,P)の数の違いから、減衰量が異なる。そこで、各LD3(R,G,B,P)が本例の配置の場合、以下の関係が成り立つように、各発光素子の駆動レベルが設定される。
BLD*GD*RD*PD=GLD*RD*PD=RLD*PD=PLD
ここで、BLDはLD3Bの駆動レベル、GLDはLD3Gの駆動レベル、RLDはLD3Rの駆動レベル、PLDはLD3Pの駆動レベルである。また、GDは半透過膜32Gでの減衰率、RDは半透過膜32Rでの減衰率、PDは半透過膜32Pでの減衰率である。
以上の構成により、LD3Rから出射される波長λ1の光と、LD3Gから出射される波長λ2の光と、LD3Bから出射される波長λ3の光と、LD3Pから出射される波長λ4の光が、光合波器32で重ね合わされて、それぞれが略均一なレベルで1点から出力される。
光入力部40Bは、光出力部30Bに対応して本例では4個のフォトディテクタ4(R,G,B,P)を備える。各フォトディテクタ4(R,G,B,P)は、PD駆動部41Aにより駆動され、光が電気信号に変換されて出力される。
図23に示す例では、赤色光を透過する光バンドパスフィルタ42Rが設けられたフォトディテクタ4Rと、緑色光を透過する光バンドパスフィルタ42Gが設けられたフォトディテクタ4Gと、青色光を透過する光バンドパスフィルタ42Bが設けられたフォトディテクタ4Bと、紫色光を透過する光バンドパスフィルタ42Pが設けられたフォトディテクタ4Pを備える。
光入力部40Bは、4個のフォトディテクタ4(R,G,B,P)が、光導波路2の平面に対して例えば垂直に設けられ、光導波路2の外周から出射された光を各フォトディテクタ4(R,G,B,P)に分岐する光分岐器43を備える。
光分岐器43は光分岐手段の一例で、光導波路2から出射された光を透過光と反射光に分岐し、透過光をフォトディテクタ4Pに入力させる半透過膜43Pと、半透過膜43Pで反射された光を透過光と反射光に分岐し、反射光をフォトディテクタ4Rに入力させる半透過膜43Rを備える。また、半透過膜43Rを透過した光を透過光と反射光に分岐し、反射光をフォトディテクタ4Gに入力させる半透過膜43Gと、半透過膜43Gを透過した光を反射してフォトディテクタ4Bに入力させる反射膜43Bを備える。
ここで、光分岐器43では、半透過膜43Pは、入射した光の1/4は透過すると共に、3/4は反射するように反射率が設定され、半透過膜43Rは、入射した光の2/3は透過すると共に、1/3は反射するように反射率が設定される。また、半透過膜43Gは、入射した光の1/2は透過すると共に、1/2は反射するように反射率が設定され、反射膜43Bは、入射した光を全反射するように反射率が設定される。
これにより、光分岐器43は、入力された光を略同一の光量で4分割することが可能となる。
図24に示す例では、各フォトディテクタ4(R,G,B,P)には光バンドパスフィルタを設けずに、光分岐器43の各出射面に光バンドパスフィルタ42(R,G,B,P)を設けている。
すなわち、光分岐器43の半透過膜43Pを透過した光の中で、LD3Pから出力された波長λ4の光が光バンドパスフィルタ42Pを透過して光分岐器43から出射され、フォトディテクタ4Pに入力される。
同様に、光分岐器43の半透過膜43Rで反射した光の中で、LD3Rから出力された波長λ1の光が光バンドパスフィルタ42Rを透過して光分岐器43から出射され、フォトディテクタ4Rに入力される。
また、光分岐器43の半透過膜43Gで反射した光の中で、LD3Gから出力された波長λ2の光が光バンドパスフィルタ42Gを透過して光分岐器43から出射され、フォトディテクタ4Gに入力される。
更に、光分岐器43の反射膜43Bで反射した光の中で、LD3Bから出力された波長λ3の光が光バンドパスフィルタ42Bを透過して光分岐器43から出射され、フォトディテクタ4Bに入力される。
<第2の実施の形態の信号処理装置の動作例>
次に、上述した第2の実施の形態の信号処理装置5Bの動作例について、図23及び図24等を参照して説明する。
信号処理装置5Bでは、光出力部30Bの各LD3(R,G,B,P)から出力された光は、光合波器32で重ね合わされて出力される。
光出力部30Bの各LD3(R,G,B,P)から出力され、光合波器32で重ね合わされた光は、光導波路2の外周から入射し、上述したように、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光導波路2の全周方向に出射された光は、光分岐器43で4分割され、LD3Rから出力された波長λ1の光は、光バンドパスフィルタ42Rを透過してフォトディテクタ4Rに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(G,B,P)では、LD3Rから出力された波長λ1の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(G,B,P)で遮断される。
同様に、LD3Gから出力された波長λ2の光は、光バンドパスフィルタ42Gを透過してフォトディテクタ4Gに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,B,P)では、LD3Gから出力された波長λ2の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,B,P)で遮断される。
また、LD3Bから出力された波長λ3の光は、光バンドパスフィルタ42Bを透過してフォトディテクタ4Bに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,G,P)では、LD3Bから出力された波長λ3の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,G,P)で遮断される。
更に、LD3Pから出力された波長λ4の光は、光バンドパスフィルタ42Pを透過してフォトディテクタ4Pに入力される。一方、他のフォトディテクタ4(R,G,B)では、LD3Pから出力された波長λ4の光はそれぞれ光バンドパスフィルタ42(R,G,B)で遮断される。
このように、信号処理装置5Bでは、各LD3(R,G,B,P)から出力される波長の異なる光を光合波器32で重ね合わせることで、光導波路2では複数の信号が重ね合わされて伝送される。また、光導波路2の任意の1箇所から出射された光が光分岐器43で分割され、光バンドパスフィルタ等を利用することで、各フォトディテクタ4(R,G,B,P)に所定の波長の光が入力される。
これにより、信号処理装置5Bでも、波長分割による伝送信号の多重化が可能となり、例えば、R,G,Bの各色の信号と同期信号の4チャネルの信号を光導波路2で伝送して、光出力部30Aと光入力部40Aとの間で送受することができ、TMDSでの信号伝送等が可能となる。
<第3の実施の形態の信号処理装置の構成例>
図25及び図26は、第3の実施の形態の信号処理装置の一例を示す構成図である。なお、図25及び図26では、第3の実施の形態の信号処理装置を模式的な側断面図で示している。
第3の実施の形態の信号処理装置5Cは、単一の光源で波長の異なる光が出力される光出力部30Cと、光出力部30Cから出力された波長の異なる光が分波されて入力される光入力部40Cと、光出力部30Cから出力されて、光入力部40Cで入力される光が伝送される光導波路2を備え、波長の異なる光を重ね合わせて一点から出射して、多重化するものである。
光導波路2は、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜F)のいずれかで構成され、光導波路2の外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光出力部30Cは、波長の異なる光を出力する複数のLDに替えてRGB−LED(Light Emitting Diode)33を備える。RGB−LED33は、LD駆動部31Bにより駆動され、電気信号が光に変換されて、単一の光源で複数の波長の光が出射される。光出力部30Cは、光が出力される方向を光導波路2の第1の導光部20に向けて、RGB−LED33が光導波路2の外周に配置される。
光入力部40Cは、図25に示す例では4個のフォトディテクタ4(R,G,B,P)を備える。各フォトディテクタ4(R,G,B,P)は、PD駆動部41Aにより駆動され、光が電気信号に変換されて出力される。
光入力部40Cは、光導波路2の外周から出射された光を各波長毎に分波して、対応するフォトディテクタ4(R,G,B,P)に入射させる光分波器44を備える。
光分波器44は光分波手段の一例で、例えば回折格子(グレーティング)が形成されたプリズム等の分散光学素子で構成され、光導波路2から入射された光が回折により各波長毎に分波される。
フォトディテクタ4Rは、光分波器44から波長λ1の赤色光が出射される範囲に配置されることで、RGB−LED33から出力され、光導波路2を伝送されて出射された光の中で波長λ1の光が入力される。
同様に、フォトディテクタ4Gは、光分波器44から波長λ2の緑色光が出射される範囲に配置されることで、光導波路2から出射された光の中で波長λ2の光が入力される。
また、フォトディテクタ4Bは、光分波器44から波長λ3の青色光が出射される範囲に配置されることで、光導波路2から出射された光の中で波長λ3の光が入力される。
更に、フォトディテクタ4Pは、光分波器44から波長λ4の紫色光が出射される範囲に配置されることで、光導波路2から出射された光の中で波長λ4の光が入力される。
図26に示す例では、複数のフォトディテクタに替えてCCD(Charge Coupled Device)45を備える。CCD45はCCD駆動部46に駆動され、RGB−LED33から出力され、光導波路2を伝送されて出射された光が、光分波器44から出射される各波長毎に分波された光に応じた電気信号に変換されて出力される。
<第3の実施の形態の信号処理装置の動作例>
次に、上述した第3の実施の形態の信号処理装置5Cの動作例について、図25及び図26等を参照して説明する。
信号処理装置5Cでは、光出力部30CのRGB−LED33から所定の複数の波長の光が重ね合わせて出力され、RGB−LED33から出力された光は、光導波路2の外周から入射し、上述したように、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光導波路2の全周方向に出射された光は、光分波器44で各波長毎に分波され、図25に示す例では、光分波器44で分波された波長λ1の光はフォトディテクタ44Rに入力される。
同様に、光分波器44で分波された波長λ2の光はフォトディテクタ44Gに入力され、光分波器44で分波された波長λ3の光はフォトディテクタ44Bに入力され、光分波器44で分波された波長λ4の光はフォトディテクタ44Pに入力される。
また、図26に示す例では、光分波器44で分波された光は、各波長毎にCCD45の所定のエリアに入力される。
このように、信号処理装置5Cでは、RGB−LED33から所定の複数の波長の光が重ね合わせて出力されることで、光導波路2では複数の信号が重ね合わされて伝送される。また、光導波路2の任意の1箇所から出射された光が光分波器44で各波長毎に分波され、図25に示す例では、各フォトディテクタ4(R,G,B,P)に所定の波長の光が入力される。また、図26に示す例では、CCD45の所定のエリアに対応する波長の光が入力される。
これにより、信号処理装置5Cでも、波長分割による伝送信号の多重化が可能となる。なお、上述した信号処理装置の各実施の形態では、LD及びフォトディテクタの数と配置順は、以上の例に限るものではない。
<第4の実施の形態の信号処理装置の構成例>
図27は、第4の実施の形態の信号処理装置の一例を示す構成図である。なお、図27では、第4の実施の形態の信号処理装置を模式的な斜視図で示している。
第4の実施の形態の信号処理装置5Dは、所定の機能を有した複数の機能基板6が、光導波路構造体7Aによって任意の信号経路で接続される。
光導波路構造体7Aは、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜F)の何れかを備え、複数枚の光導波路2が、光を透過しない材質で構成された光遮蔽部材であるスペーサ70を間に挟んで積層される。
各層の光導波路2では、上述したように、外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
そして、各光導波路2の積層方向には光が漏れず、それぞれの光導波路2で独立して信号が伝送される。
機能基板6は信号処理装置を構成する信号処理基板の一例で、光−電気信号変換部として、光の信号が出力される単数または複数の光出力部30と、光の信号が入力される単数または複数の光入力部40を備える。
光出力部30は、信号の伝送方式等に応じて、単一の波長の光を出力する構成、または、2つ以上の異なる波長の光を出力する構成を備える。光出力部30は、単一の波長の光を出力する構成であれば、光が出力される方向を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にLDを備える。
波長の異なる光を出力する構成では、例えば、図19で説明した光出力部30A、図23等で説明した光出力部30B、または図25等で説明した光出力部30Cを備える。
図19で説明した光出力部30Aでは、波長の異なる光を出力する4個のLD3(R,G,B,P)を、光導波路構造体7Aを構成する光導波路2の平面に対して水平に備える。
また、図23等で説明した光出力部30Bでは、各LD3(R,G,B,P)から出力された光を、光導波路2の任意の1箇所から入射させるため光合波器32を備える。更に、図25等で説明した光出力部30Cでは、波長の異なる光が出力されるRGB−LED33を備える。
光入力部40は、光出力部30の構成及び信号の伝送方式に応じて、光出力部30から出力される単一の波長の光が受光可能な構成、または、2つ以上の異なる波長の光をそれぞれ受光可能な構成を備える。
光入力部40は、単一の波長の光を受光可能とする構成であれば、受光部を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にフォトディテクタを備える。
波長の異なる光を受光可能とする構成では、例えば、図19で説明した光入力部40A、図23等で説明した光入力部40B、または図25等で説明した光入力部40Cを備える。
図19で説明した光入力部40Aでは、所望の波長の光を透過する光バンドパスフィルタ42(R,G,B,P)が設けられたフォトディテクタ4(R,G,B,P)を、光導波路構造体7Aを構成する光導波路2の平面に対して水平に備える。
また、図23及び図24で説明した光入力部40Bでは、光導波路2から出射された光を分岐する光分岐器43と、所望の波長の光を光バンドパスフィルタ42(R,G,B,P)を透過させて受光するフォトディテクタ4(R,G,B,P)を備える。
更に、図25及び図26で説明した光入力部40Cでは、光導波路2から出射された光を所望の波長毎に分波する光分波器44と、分波された所望の波長の光を受光するフォトディテクタ4(R,G,B,P)またはCCD45を備える。
光出力部30と光入力部40は、本例では円柱形状の光導波路構造体7Aの外周に、光導波路2に対向させて設けられ、機能基板6間の信号経路に応じ、光導波路構造体7Aの各層の光導波路2に対して、光が入出射可能な位置に固定される。
または、光出力部30と光入力部40は、図27(a)に示す例では、それぞれ移動機構60が設けられて、光導波路2の積層方向に沿って移動し、任意の光導波路2に対して光が入射また出射可能な位置に配置され、機能基板6間の信号経路が切り替えられる。
移動機構60は、例えば機能基板6に取り付けられるレールと、光出力部30及び光入力部40に取り付けられ、レールに沿って回転するローラ及びローラの駆動機構等で構成される。
光出力部30と光入力部40は、円柱状の光導波路構造体7Aの中心軸と平行に移動できるように移動機構60に取り付けられ、光出力部30と光入力部40が独立して昇降して、所望の光導波路2に対向する位置に配置可能である。
また、機能基板6に光出力部30と光入力部40のいずれか、または双方が複数設けられている構成では、光導波路構造体7Aで異なる層の光導波路2に対向する位置に、光出力部30及び光入力部40を配置可能である。
なお、光出力部30は、図27(b)に示すように、光路分配機構として、微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)で可動する反射部材を構成したデジタルミラーデバイス(DMD:Digital Mirror Device)34を備え、LDから出射された光を、任意の光導波路2に入射するように出射方向を可変としても良い。また、各機能基板6で、光出力部30と光入力部40を、各層の光導波路2に対して光が入出射可能な位置に固定し、機能基板6間の信号経路に応じて、所定の光出力部30と光入力部40をソフトウエアで選択して使用するようにしても良い。
<第4の実施の形態の信号処理装置の動作例>
次に、上述した第4の実施の形態の信号処理装置5Cの動作例について、図27等を参照して説明する。
信号を伝送する機能基板6間で、同一層の光導波路2に光出力部30と光入力部40を対向させ、光出力部30から光の信号が出力されると、光導波路2の外周から入射した光が、上述したように、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光導波路2の全周方向に出射された光は、出力側と同一層に配置される光入力部40に入力されて電気信号に変換される。光導波路2からは全周方向に光が出射されるので、出力側と同一層に配置される光入力部40では、光導波路2の円周方向の任意の位置で受光が可能である。
2つ以上の異なる波長の光が伝送される信号処理装置5Cでは、光出力部30の各LD3(R,G,B,P)から出力されて重ね合わされた光は、光導波路2の外周から入射し、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。
光導波路2の全周方向に出射された光は、LD3(R,G,B,P)に対応した波長毎に分波され、LD3Rから出力された波長λ1の光はフォトディテクタ4Rに入力される。また、LD3Gから出力された波長λ2の光はフォトディテクタ4Gに入力され、LD3Bから出力された波長λ3の光はフォトディテクタ4Bに入力され、LD3Pから出力された波長λ4の光はフォトディテクタ4Pに入力される。
これにより、ある機能基板6(00)の光出力部30を第1層の光導波路2(00)に対向させ、別の機能基板6(01)の光入力部40を第1層の光導波路2(00)に対向させることで、機能基板6(01)から機能基板6(01)へ光による信号の伝送が可能となる。
また、機能基板6(01)の光出力部30を第2層の光導波路2(01)に対向させ、機能基板6(00)の光入力部40を第2層の光導波路2(01)に対向させることで、機能基板6(01)から機能基板6(00)へ光による信号の伝送が可能となる。
第1層の光導波路2(00)と第2層の光導波路2(01)では独立して光が伝送されるので、機能基板6(00)から機能基板6(01)への光による信号の伝送と、機能基板6(01)から機能基板6(00)への光による信号の伝送を同時に行うことが可能となる。また、各層毎に波長多重による信号の送受信が可能となる。
また、機能基板6に光出力部30と光入力部40のいずれか、または双方が複数設けられている構成では、ある機能基板6(00)の第1の光出力部30を第1層の光導波路2(00)に対向させ、第2の光出力部30を第2層の光導波路2(01)に対向させる。また、別の機能基板6(01)の光入力部40を第1層の光導波路2(00)に対向させ、更に別の機能基板6(02:不図示)の光入力部40を第2層の光導波路2(01)に対向させる。これにより、機能基板6(00)から異なる機能基板6(01),6(02)へ、異なる信号の伝送が可能となる。
同様の手法として、ある機能基板6(00)の第1の光出力部30を第1層の光導波路2(00)に対向させ、別の機能基板6(01)と更に別の機能基板6(02)の光入力部40をそれぞれ第1層の光導波路2に対向させる。そして、機能基板6(00)から機能基板6(01)に伝送する信号は例えばLD3Rから出力する赤色光を使用し、機能基板6(00)から機能基板6(02)に伝送する信号は例えばLD3Gから出力する緑色光を使用することで、波長多重による信号伝送によって、ある機能基板6(00)から異なる機能基板6(01),6(02)へ、異なる信号の伝送が可能となる。
また、同一層の光導波路2で、波長分割により伝送信号の多重化を行うことで、ある機能基板6(00)と他の機能基板6(01)との間で、多ビットの信号伝送が可能となり、例えば、各機能基板毎にIDを割り当てて、これを光信号で通知可能となる。
<第4の実施の形態の信号処理装置の信号経路の切り替え動作例>
図28は、第4の実施の形態の信号処理装置の具体例を示す構成図で、次に、機能基板間で信号経路を切り替える具体例について説明する。ここで、図28では、信号処理装置を模式的な斜視図で示している。
信号処理装置5Dは、機能基板として、制御基板6Xと、所定の機能を有した複数の信号処理基板6(A〜D)を備え、各機能基板が光導波路構造体7Bによって任意の信号経路で接続される。
光導波路構造体7Bは、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜F)の何れかが、スペーサ70を介して積層され、制御基板6Xと各信号処理基板6(A〜D)との間、及び各信号処理基板6(A〜D)の間で制御信号が伝送される制御信号伝送層71と、各信号処理基板6(A〜D)の間でデータが伝送されるデータ伝送層72を備える。
制御信号伝送層71とデータ伝送層72は、光導波路構造体7Bを介して接続可能な基板の枚数及び想定される信号経路等に応じて設定される層数の光導波路2が積層され、本例では、制御信号の伝送用に5層の光導波路2が積層されると共に、データの伝送用に5層の光導波路2が積層される。
各層の光導波路2では、上述したように、外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。そして、各光導波路2の積層方向には光が漏れず、それぞれの光導波路2で独立して信号が伝送される。
制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)は、光の信号が出力される単数または複数の光出力部30と、光の信号が入力される単数または複数の光入力部40を備える。また、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)は、光出力部30から出力される信号及び光入力部40から入力された信号の処理を行う信号処理部61を備える。信号処理部61は、制御信号の処理部とデータの処理部がそれぞれ設けられていても良い。
光出力部30は、信号の伝送方式等に応じて、単一の波長の光を出力する構成、または、2つ以上の異なる波長の光を出力する構成を備える。光出力部30は、単一の波長の光を出力する構成であれば、光が出力される方向を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にLDを備える。
波長の異なる光を出力する構成では、例えば、図19で説明した光出力部30A、図23等で説明した光出力部30B、または図25等で説明した光出力部30Cを備える。
光入力部40は、光出力部30の構成及び信号の伝送方式に応じて、光出力部30から出力される単一の波長の光が受光可能な構成、または、2つ以上の異なる波長の光をそれぞれ受光可能な構成を備える。
光入力部40は、単一の波長の光を受光可能とする構成であれば、受光部を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にフォトディテクタを備える。
波長の異なる光を受光可能とする構成では、例えば、図19で説明した光入力部40A、図23等で説明した光入力部40B、または図25等で説明した光入力部40Cを備える。
光出力部30と光入力部40は、それぞれ移動機構60が設けられて、光導波路2の積層方向に沿って移動し、任意の光導波路2に対して光が入射また出射可能な位置に配置され、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)の信号経路が切り替えられる。
信号処理装置5Dは、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)がベース基板63に実装される。ベース基板63は実装基板の一例で、図示しない電源や冷却ファンと、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)が着脱可能に実装されるソケット64を備え、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)に電源が供給される。
ソケット64は接続機構の一例で、光導波路構造体7Bの外周に沿って複数個所に設置され、任意のソケット64に制御基板6Xまたは信号処理基板6(A〜D)が実装されると、光出力部30及び光入力部40を移動機構60で移動させることで所望の光導波路2に対向させ、光の入出射が可能となる。
光導波路構造体7Bを構成する各層の光導波路2は、外周の任意の位置から入射された光が、光導波路2全周方向に出射されるので、制御基板6Xまたは信号処理基板6(A〜D)がどのソケット64に装着されても、光導波路2に対して光の入出射が可能である。
これにより、信号処理装置5Dは、ベース基板63に実装される信号処理基板6を変更や追加することで、機能変更や機能追加が可能となる。
図29〜図33は、信号処理装置における信号経路の切り替え動作例を示す説明図であり、次に、図28及び図29〜図33等を参照して、信号処理装置5Dで切り替えられる信号経路の例について説明する。
制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)の信号経路をループ構成とする場合は、図29に示すように、制御基板6Xの光出力部30(TX)を第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Aの光入力部40(RX)を第1層の光導波路2(00)に対向させる。
信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を第2層の光導波路2(01)に対向させ、信号処理基板6Bの光入力部40(RX)を第2層の光導波路2(01)に対向させる。
信号処理基板6Bの光出力部30(TX)を第3層の光導波路2(02)に対向させ、信号処理基板6Cの光入力部40(RX)を第3層の光導波路2(02)に対向させる。
信号処理基板6Cの光出力部30(TX)を第4層の光導波路2(03)に対向させ、信号処理基板6Dの光入力部40(RX)を第4層の光導波路2(03)に対向させる。
信号処理基板6Dの光出力部30(TX)を第5層の光導波路2(04)に対向させ、制御基板6Xの光入力部40(RX)を第5層の光導波路2(04)に対向させる。
これにより、制御基板6Xから信号処理基板6Aへ光により信号が伝送され、信号処理基板6Aから信号処理基板6Bへ光により信号が伝送される。
また、信号処理基板6Bから信号処理基板6Cへ光により信号が伝送され、信号処理基板6Cから信号処理基板6Dへ光により信号が伝送される。更に、信号処理基板6Dから制御基板6Xへ光により信号が伝送される。
制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)において、独立して移動可能な光入力部40を2系統備えることで、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)の信号経路をブロードキャスト構成に切り替えることも可能である。
すなわち、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)の信号経路をブロードキャスト構成とする場合は、図30に示すように、制御基板6Xの光出力部30(TX)を第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Aの第1の光入力部40(RX1)を第1層の光導波路2(00)に対向させる。
同様に、信号処理基板6Bの第1の光入力部40(RX1)と、信号処理基板6Cの第1の光入力部40(RX1)と、信号処理基板6Dの第1の光入力部40(RX1)のそれぞれを、第1層の光導波路2(00)に対向させる。
一方、信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を第2層の光導波路2(01)に対向させ、信号処理基板6Bの第2の光入力部40(RX2)を第2層の光導波路2(01)に対向させる。
信号処理基板6Bの光出力部30(TX)を第3層の光導波路2(02)に対向させ、信号処理基板6Cの第2の光入力部40(RX2)を第3層の光導波路2(02)に対向させる。
信号処理基板6Cの光出力部30(TX)を第4層の光導波路2(03)に対向させ、信号処理基板6Dの第2の光入力部40(RX2)を第4層の光導波路2(03)に対向させる。
信号処理基板6Dの光出力部30(TX)を第5層の光導波路2(04)に対向させ、制御基板6Xの光入力部40を第5層の光導波路2(04)に対向させる。
これにより、制御基板6Xから各信号処理基板6(A〜D)へ光により同一の信号が伝送される。
一方、信号処理基板6Aから信号処理基板6Bへ光により信号が伝送される。また、信号処理基板6Bから信号処理基板6Cへ光により信号が伝送され、信号処理基板6Cから信号処理基板6Dへ光により信号が伝送される。更に、信号処理基板6Dから制御基板6Xへ光により信号が伝送される。
ここで、光出力部30と光入力部40が、例えば4色の光を送受できる構成であれば、例えば1対4での信号伝送が可能となる。すなわち、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜D)の信号経路をブロードキャスト構成とする場合に、図31に示すように、第1層の光導波路2では、制御基板6Xから信号処理基板6Aへの信号の伝送は赤色光で行う。また、信号処理基板6Bへの信号の伝送は緑色光で行い、信号処理基板6Cへの信号の伝送は青色光で行い、信号処理基板6Dへの信号の伝送は紫色光で行う。これにより、1層の光導波路2で4系統(1対4)の信号伝送が可能となる。
更に、光出力部30と光入力部40が、例えば4色の光を送受できる構成であれば、制御基板6Xから各信号処理基板への信号伝送で、1層の光導波路2で1対4での信号伝送が可能であるので、図32に示すように、2層の光導波路2で1対8、更に3層の光導波路2で1対12の信号伝送が可能となり、波長多重を利用することで、光導波路2の層数を増加させることなく、1対多の信号伝送が可能となる。
同様に、各信号処理基板から制御基板6Xへの信号伝送では、1層の光導波路2で4対1での信号伝送が可能であるので、図33に示すように、2層の光導波路2で8対1、更に3層の光導波路2で12対1の信号伝送が可能となり、波長多重を利用することで、光導波路2の層数を増加させることなく、多対1の信号伝送が可能となる。
<第4の実施の形態の信号処理装置における信号処理の動作例>
さて、上述した第4の実施の形態の信号処理装置では、任意の信号処理基板の接続を、ユーザが容易にできるようにする必要がある。そこで、上述した第4の実施の形態の信号処理装置で、接続された信号処理基板に応じて信号経路を作成する制御について説明する。
図34は、図27で説明した各信号処理基板6(A〜D)の機能的構成例を示すブロック図である。同図に示されるように、信号処理基板6(A〜D)は、本処理部81、通信部82、および装置情報格納部83により構成されている。
通信部82は、図34に示す光出力部30及び光入力部40等で構成され、光導波路構造体7Bの選択された光導波路2を介して制御基板6Xの他、他の信号処理基板と通信する。
装置情報格納部83は、自分自身の信号処理基板ID、処理内容情報、および入出力信号形式を予め格納している。装置情報格納部83は、例えば、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などから構成される。もちろん、RAM、フラッシュROM、その他、制御回路だけの構成でもよい。本処理部81は、信号処理基板6(A〜D)の動作を制御する。
装置情報格納部83に格納される信号処理基板IDは、各信号処理基板を識別するための各信号処理基板に固有の識別番号である。
また、装置情報格納部83に格納される処理内容情報は、その信号処理基板が実行可能な処理に関する情報である。
図35は、処理内容情報の例を示す説明図である。処理内容情報としては、外部信号入力(a),(b)、外部信号出力(a)、解像度創造(a)、ノイズ除去(a),(b)が例示されている。それぞれの処理IDは、本例では00010,00011,00020,00030,00040,または00041とされている。
外部信号入力(a)は、アナログの外部からの信号を入力する処理を意味する。外部とは、光導波路構造体7Bを介さないで入力されることを意味する。外部信号入力(b)は、外部からデジタルの信号を入力する処理を意味する。外部信号出力(a)は、外部へデジタル信号を出力する処理を意味する。外部へ信号を出力するとは、光導波路構造体7Bを介さずに信号を出力することを意味する。
解像度創造(a)は、解像度を創造する処理を意味する。ノイズ除去(a)は、伝送路ノイズを除去する処理を意味し、ノイズ除去(b)は、符号化ノイズを除去する処理を意味する。
各信号処理基板6(A〜D)は、これらの処理内容のうち、自分自身が実行する処理内容を処理内容情報として装置情報格納部83に格納する。
なお、この他、システム内部の制御に必要最低限の情報と、ユーザインターフェースに利用するための情報などが、処理内容情報として記憶されるようにしてもよい。
入出力信号形式は、各信号処理基板が入力または出力可能な信号形式を意味する。
図36は、入出力信号形式の例を示す説明図である。図36の例においては、525i(60I)の信号形式で入力する信号形式と出力する信号形式が、それぞれ記述されている。前者の信号形式IDは00010、対応処理IDは00010とされ、後者の信号形式IDは00011、対応処理IDは00011とされている。
更に、625i(50I)の入力信号形式が、信号形式ID00020、対応処理ID00010として記述されている。更に、525p(60P)の入力信号形式が、信号形式ID00030、対応処理ID00030として記述されている。720p(60P)の入力信号形式も、信号形式ID00040、対応処理ID00040として記述されている。
なお、信号形式の、例えば「525」の数字は走査線の数を表し、「60I」のうちの数字(60)はフレームの数を表している。また、「I」はインターレース方式を表し、「P」はプログレッシブ(線順次方式)を意味する。
各信号処理基板6(A〜D)は、これらの入出力信号形式のうち、自分自身が有するものを装置情報格納部83に保持する。
図37は、制御基板6Xの機能的構成例を示すブロック図である。取得部91は、各信号処理基板6(A〜D)から、信号処理基板ID、処理内容情報、並びに入出力信号形式を取得する。処理基板テーブル作成部92は、取得部91により取得された信号処理基板IDに基づいて、光導波路構造体7Bに接続されている装置を特定するための処理基板テーブルを作成する。判定部93は、処理基板テーブルに変化があるか、信号処理基板として外部入力装置があるか、中間装置があるかといった判定処理や、確立していない信号経路があるか、信号経路の数は複数であるかといった判定処理を行う。
信号経路テーブル作成部94は、光導波路構造体7Bに接続されている各信号処理基板6(A〜D)の信号経路を表す信号経路テーブルを作成し、記憶する。選択部95は、判定部93の判定結果に基づいて各種の選択処理を行う。警告部96は、判定部93の判定結果に基づいて、ユーザに対して各種の警告を行う。優先順位決定部97は、信号経路が複数ある場合において、その優先順位を決定する。表示部98は、決定された信号経路やパラメータの入力画面などの表示を制御する。パラメータ設定部99は、表示部98により表示されたパラメータ入力画面に基づいて解像度等のパラメータ設定処理を行う。
図38及び図39は、信号経路テーブル作成処理を説明するフローチャートで、次に、図38及び図39を参照して、信号経路テーブル作成処理について説明する。この処理は、例えば、信号処理装置5Dの電源をオンした直後に実行される。
ステップS1において、制御基板6Xの取得部91は、光導波路構造体7Bに接続されている各信号処理基板6(A〜D)から信号処理基板IDを取得する処理を実行する。具体的には、取得部91は、光導波路構造体7Bを介して、各信号処理基板6(A〜D)に対して信号処理基板IDの送信を要求する。
各信号処理基板6(A〜D)は、装置情報格納部83に格納されている信号処理基板IDを、光導波路構造体7Bを介して制御基板6Xに通知する。
ステップS2において、制御基板6Xの処理基板テーブル作成部92は、信号処理基板IDを処理基板テーブルに追加する処理を実行する。具体的には、処理基板テーブル作成部92は、取得部91より供給された信号処理基板IDを、内部に記憶する処理基板テーブルに追加する。
図40は、処理基板テーブルの例を示す説明図である。本例では、信号処理基板6(A〜D)が接続されているので、図40に示すような処理基板テーブルが作成される。図示した例としては、信号処理基板の名称として、装置A〜Dと、それぞれの信号処理基板ID(00010等)が対応して記述されている。
次に、ステップS3において、判定部93は、処理基板テーブルに変化があるか否かを判定する。すなわち、過去に電源がオンされたときに作成された処理基板テーブルと、今回の電源オン時に作成された処理基板テーブルとが比較され、それらの間に変化がなければ、信号経路テーブルも既に作成済みであるので、処理は終了される。
これに対して、ステップS3において、判定部93により処理基板テーブルに変化があると判定された場合、ステップS4において、取得部91は、追加された信号処理基板から処理内容情報と入出力信号形式を取得する処理を実行する。
具体的には、取得部91は、今回作成された処理基板テーブルに、新たに追加された信号処理基板に対して、その処理内容情報と入出力信号形式の送信を要求する。
この要求を受けた信号処理基板は、その装置情報格納部83に格納されている自分自身の処理内容情報と入出力信号形式を読み出し、光導波路構造体7Bを介して制御基板6Xに通知する。
制御基板6Xの取得部91は、新たに追加された信号処理基板から処理内容情報と入出力信号形式を取得すると、これを信号経路テーブル作成部94に供給する。信号経路テーブル作成部94は、ステップS5において、取得部91より供給された処理内容情報と入出力信号形式を信号経路テーブルに追加し、新たな信号経路テーブルを作成する。
図41〜図45は、処理経路テーブルの例を示す説明図である。信号処理装置5Dの電源が始めてオンされた場合には、前回の処理基板テーブルと信号経路テーブルが存在しないため、接続されている全ての信号処理基板の処理基板テーブルと信号経路テーブルが作成されることになる。図41では、このようにして作成された信号経路テーブルの例を示している。
図41に示す例では、信号処理基板6Aは、外部信号入力(a)の処理内容を有し、その入力信号形式は、525i(60I),525p(60P)、または1125i(60I)とされ、対応する出力信号形式は、同様に、525i(60I),525p(60P)、または1125i(60I)とされている。すなわち、外部信号入力(a)は、入力された信号形式はそのまま出力することを意味する。
信号処理基板6Bは、ノイズ除去(a)の処理内容を有し、その入力信号形式は、525i(60I)または525p(60P)とされ、信号出力形式は、入力信号形式に対応して、それぞれ525i(60I)または525p(60P)とされている。
すなわち、ノイズ除去(a)は、525i(60I)または525p(60P)の入力信号形式の入力を、ノイズを除去した後、対応する出力信号形式、すなわち525i(60I)または525p(60P)の信号で出力する。
信号処理基板6Cは、処理内容として解像度創造(a)を有し、その入力信号形式は525i(60I)で、出力信号形式は720p(60P)、または1125i(60I)とされている。
すなわち、信号処理基板6Cは、525i(60I)の入力信号形式で入力された信号を、その解像度創造を行った後、720p(60P)の出力信号形式、または1125i(60I)の出力信号形式で出力する。
信号処理基板6Dは、処理内容として外部信号出力(a)を有し、その入力信号形式は、525i(60I),525p(60P)、または720p(60P)とされ、出力信号形式は、それぞれ入力信号形式に対応して、525i(60I),525p(60P)、または720p(60P)とされる。
すなわち、信号処理基板6Dは、入力された信号をそのまま外部に出力する機能を有していることになる。
次に、ステップS6において、制御基板6Xの判定部93は、信号経路テーブルに外部入力装置があるか否かを判定する。図41の信号経路テーブルの場合、外部入力装置としての機能を有する信号処理基板6Aが存在する。仮に、信号経路テーブルに外部入力装置が存在しない場合には、接続処理を実行することができない。そこで、判定部93により、信号経路テーブルに外部入力装置がないと判定された場合、警告部96は、ステップS7において、警告する処理を実行する。具体的には、ユーザに、例えば「外部入力装置がないので接続を行うことが出来ません」といったメッセージを提示する。
信号経路テーブルに外部入力装置が存在すると判定部93により判定された場合、ステップS8において、選択部95は、外部入力装置を選択する処理を実行する。すなわち、処理基板テーブルに記述されている装置の中から外部入力装置が1つ選択される。例えば、ここで信号処理基板6Aが選択される。
ステップS9において、信号経路テーブル作成部94は、外部入力装置の出力信号形式に対応する信号を入力信号形式とする他の信号処理基板を外部入力装置の出力装置に配置する。
具体的には、ステップS8で選択された信号処理基板6Aは、525i(60I)、525p(60P)、または1125i(60I)の出力信号形式を有している。
これらの出力信号形式の何れかに対応する入力信号形式を有している装置は、信号処理基板6B(525i(60I),525p(60P))、信号処理基板6C(525i(60I))、及び信号処理基板6D(525i(60I),525p(60P))である。
そこで、図42の信号経路テーブルに示されるように、これらの各信号処理基板6B,6C,6Dが、信号処理基板6Aの出力装置として記述される。同様に、信号処理基板6B,6C,6Dの入力装置として、信号処理基板6Aが記述される。
これにより、信号処理基板6Aの出力が信号処理基板6B,6Cまたは6Dに供給される信号経路が作成されたことになる。
次に、ステップS10において、制御基板6Xの判定部93は、信号経路テーブルに他の外部入力装置があるか否かを判定する。他の外部入力装置がある場合には、ステップS8に戻り、再び新たな外部入力装置が選択され、その選択された外部入力装置について、ステップS9で信号経路テーブルを作成する処理が実行される。
しかし、図41または図42の信号経路テーブルの場合、信号処理基板6A以外に外部入力装置は存在しない。そこで処理はステップS10からステップS11に進み、ステップS11において、判定部93は、信号経路テーブルに中間装置があるか否かを判定する。中間装置とは、外部入力装置でもなく、また、外部出力装置でもない装置を言う。換言すれば、外部入力装置と外部出力装置との間に配置される装置を意味する。
さて、信号経路テーブルに中間装置が存在しない場合には、結局、外部入力装置から入力された処理信号を外部出力装置にそのまま出力するだけのことになるので、実質的には信号経路が作成されたことにはならない。そこで、この場合には、ステップS7において、警告部96は、例えば、「接続する装置がありません」といったようなメッセージを表示する。
ステップS11において、判定部93により信号経路テーブルに中間装置が存在すると判定された場合、ステップS12において、選択部95は、信号経路テーブルから中間装置を選択する処理を実行する。
図41または図42の信号経路テーブルの例の場合、信号処理基板6Bと信号処理基板6Cが中間装置である。そこで、ステップS12において、例えば、信号処理基板6Bが選択される。ステップS13において、信号経路テーブル作成部94は、中間装置の出力信号形式に対応する信号を入力信号形式とする他の信号処理基板を中間装置の出力装置に配置する。
これにより、例えば図43に示されるように、信号処理基板6Bの出力装置として、信号処理基板6Cと信号処理基板6Dが記述され、信号処理基板6Cと信号処理基板6Dの入力装置として、信号処理基板6Bが記述される。
次に、ステップS14において、判定部93は、信号経路テーブルに他の中間装置があるか否かを判定する。図41または図43の信号経路テーブルの場合、信号処理基板6Cも中間装置である。そこで、ステップS12に戻り、選択部95は、信号処理基板6Cを中間装置として選択する。そして、ステップS13において、信号経路テーブル作成部94は、図44に示されるように、信号処理基板6Cの出力装置として信号処理基板6Dを記述し、信号処理基板6Dの入力装置として信号処理基板6Cを記述する。
再びステップS14において、判定部93は、信号経路テーブルに他の中間装置があるか否かを判定する。図41または図44の信号経路テーブルの場合、もはや他の中間装置は存在しない。そこで、ステップS15において、判定部93は、確立していない信号経路があるか否かを判定する。図44の信号経路テーブルに示されるように、中間装置である信号処理基板6Cの上から2番目の経路には出力装置が記述されていない。同様に、上から4番目の経路にも出力装置が記述されていない。このことは、この経路は確立していないことを意味する。
そこで、ステップS16において信号経路テーブル作成部94は、確立していない信号経路を削除する処理を実行する。具体的には、図示した信号処理基板6Cのうちの上から2番目と4番目の経路を削除する。これにより、信号経路テーブルは図45に示すようになる。
ステップS15において、確立していない信号経路が存在しないと判定された場合には、ステップS16の処理は必要がないのでスキップされる。
その後、ステップS17において、判定部93は、信号経路は複数あるか否かを判定する。信号経路が複数ある場合には、ステップS18において、複数の信号経路の中から1つの信号経路を選択するための優先順位決定処理が実行される。この優先順位決定処理の詳細については後述する。
ステップS17において、判定部93により信号経路は複数存在しないと判定された場合には、ステップS18の優先順位決定処理はスキップされる。次に、ステップS19において、表示部98は、信号経路を表示する処理を行う。具体的には、ステップS18またはステップS9,S13,S16で作成された信号経路がモニタ等に表示され、ユーザに提示される。
図46〜図50は、信号経路の例を示す説明図、図51〜図54は、信号処理装置における信号経路の切り替え動作例を示す説明図である。
図45の信号経路テーブルに記述されている信号経路を図示すると、図46に示されるようになる。この信号経路は、図47〜図50に示されるように、4つの信号経路を含んでいる。
図47の信号経路を実現するためには、図51に示すように、信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を例えば第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Dの光入力部40(RX)を同じ第1層の光導波路2(00)に対向させる。
図47の信号経路では、外部入力装置である信号処理基板6Aが、525i(60I)または525p(60P)の入力信号形式で入力された信号をそのままの形式で外部出力装置としての信号処理基板6Dに出力し、信号処理基板6Dは、その信号をそのままの出力信号形式で出力する。すなわち、この場合には、入力された信号がスルーされるだけで、実質的に処理は何も行われないことになる。
図48の信号経路を実現するためには、図52に示すように、信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を例えば第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Bの光入力部40(RX)を同じ第1層の光導波路2(00)に対向させる。また、信号処理基板6Bの光出力部30(TX)を例えば第2層の光導波路2(01)に対向させ、信号処理基板6Dの光入力部40(RX)を同じ第2層の光導波路2(01)に対向させる。
図48の信号経路においては、信号処理基板6A,6B,6Dが順次配置されている。信号処理基板6Aは、525i(60I)または525p(60P)の入力信号形式で入力された信号を、ノイズ除去機能を有する中間装置としての信号処理基板6Bに供給する。信号処理基板6Bは、525i(60I)または525p(60P)の入力信号形式で入力された信号のノイズを除去し、対応する出力信号形式の出力信号として、外部出力装置としての信号処理基板6Dに出力する。信号処理基板6Dは、525i(60I)または525p(60P)の入力信号形式で入力された信号を、そのままの形式で出力する。
図49の信号経路を実現するためには、図53に示すように、信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を例えば第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Cの光入力部40(RX)を同じ第1層の光導波路2(00)に対向させる。また、信号処理基板6Cの光出力部30(TX)を例えば第2層の光導波路2(01)に対向させ、信号処理基板6Dの光入力部40(RX)を同じ第2層の光導波路2(01)に対向させる。
図49の信号経路においては、信号処理基板6A,6C,6Dが順次配置されている。信号処理基板6Aは、525i(60I)の入力信号形式で信号を入力し、これを、そのままの形式で中間装置としての信号処理基板6Cに供給する。信号処理基板6Cは、525i(60I)の入力信号形式で入力された信号に対して解像度創造処理を実行し、720p(60P)の出力信号形式で外部出力装置としての信号処理基板6Dに出力する。信号処理基板6Dは、720p(60P)の入力信号形式で入力された信号を、そのままの形式で外部の装置に出力する。
図50の信号経路を実現するためには、図54に示すように、信号処理基板6Aの光出力部30(TX)を例えば第1層の光導波路2(00)に対向させ、信号処理基板6Bの光入力部40(RX)を同じ第1層の光導波路2(00)に対向させる。また、信号処理基板6Bの光出力部30(TX)を例えば第2層の光導波路2(01)に対向させ、信号処理基板6Cの光入力部40(RX)を同じ第2層の光導波路2(01)に対向させる。更に、信号処理基板6Cの光出力部30(TX)を例えば第3層の光導波路2(02)に対向させ、信号処理基板6Dの光入力部40(RX)を同じ第3層の光導波路2(02)に対向させる。
図50の信号経路においては、信号処理基板6A,6B,6C,6Dが順次配置されている。外部入力装置としての信号処理基板6Aは、525i(60I)の入力信号形式で信号を入力し、そのままの形式で中間装置としての信号処理基板6Bに出力する。信号処理基板6Bは、525i(60I)の入力信号形式で入力された信号に対してノイズ除去の処理を行い、同一の信号形式で、中間装置としての信号処理基板6Cに出力する。
信号処理基板6Cは、525i(60I)の入力信号形式で入力された信号に対して解像度創造処理を行い、720p(60P)の出力信号形式で、外部出力装置としての信号処理基板6Dに出力する。信号処理基板6Dは、720p(60P)の入力信号形式で入力された信号をそのままの形式で外部装置に出力する。
このように、4つの信号経路が存在するため、優先順位決定部97は、ステップS18の優先順位決定処理において、1つの信号経路を決定する処理を行う。このため、優先順位決定部67は、図55に示されるような機能的構成を有している。
選択部101は、複数の信号経路の中から1つの信号経路を選択する処理を実行する。重み計算部102は、選択部101により選択された信号経路の重みを計算する。判定部103は、全ての信号経路に対して重み計算処理を実行したか否かを判定し、まだ計算していない信号経路が存在する場合には、選択部101に再び他の信号経路を選択させる。決定部104は、重み計算部102により計算された重みに基づいて、優先順位を決定する。
次に、図56のフローチャートを参照して、優先順位決定処理について説明する。ステップS31において、選択部101は、複数の信号経路の中から1つの信号経路を選択する。例えば、図47〜図50に示される経路の中から、図47に示される信号経路がここで選択される。
ステップS32において、重み計算部102は、各信号処理基板の優先順位の重みを加算する。具体的には、この実施の形態の場合、信号処理基板6Aには0、信号処理基板6Bには3、信号処理基板6Cには2、信号処理基板6Dには0の重みがそれぞれ予め決められている。この重みも信号処理基板IDとともに、各信号処理基板から制御基板6Xに供給されている。重み計算部102は、この重みを記録している。図47の信号経路の場合、信号処理基板6Aと信号処理基板6Dの重みはいずれも0であるため、その加算値は0である。
次に、ステップS33において、判定部103は、全ての信号経路を選択したか否かを判定する。いまの場合、まだ全ての信号経路を選択していないため、選択部101は、ステップS31において、再び選択部101に他の1つの信号経路を選択させる。これにより、例えば、図48の信号経路が選択される。ステップS32において、重み計算部102は、図48の信号経路の各装置の重みを計算する。この場合、信号処理基板6Aの重みは0、信号処理基板6Bの重みは3、信号処理基板6Dの重みは0であるため、その加算値は3となる。
以下同様の処理が順次実行され、図49に示される信号経路は、信号処理基板6Aの重みが0、信号処理基板6Cの重みが2、信号処理基板6Dの重みが0であるため、その加算値は2となる。また、図50に示される信号経路の場合、信号処理基板6Aの重みは0、信号処理基板6Bの重みは3、信号処理基板6Cの重みは2、信号処理基板6Dの重みは0であるため、その加算値は5となる。
ステップS33において、全ての信号経路を選択したと判定された場合、ステップS34において、決定部104は、加算値の大きさの順番に優先順位を決定する。すなわち、いまの場合、図47〜図50に示される4つの信号経路の重みの加算値は、順番に図示すると、図24に示されるようになる。図18に示されるノイズ除去後解像度創造処理を実行する信号経路の重みの加算値が5で最も重く、次が、図48に示されるノイズ除去を実行する信号経路の加算値が3で、3番目に重いのが、図49に示される解像度創造処理を実行する加算値が2で、加算値が最も小さいのは、図47に示される信号経路で、その値は0である。
従って、この場合には、図57に示されるような優先順位となる。そこで、ステップS35において、決定部104は、優先順位が最も高い信号経路を表示する信号経路とする。図57の例の場合、ノイズ除去後解像度創造処理を実行する信号経路が選択される。従って、図39のステップS19の信号経路を表示する処理では、この例の場合、図50に示される信号経路が表示されることになる。
以上の優先順位決定処理は、各信号処理基板に予め設定されている重みを利用して優先順位を決定するようにしたが、各信号処理基板に想定されている想定信号経路に基づいて重みを決定するようにしてもよい。このようにする場合、優先順位決定部97は、例えば、図58に示されるように構成される。
記憶部111は、デフォルトの優先順位を予め記憶する。デフォルト順位設定部112は、記憶部111に記憶されているデフォルト順位を設定する。判定部113は、想定信号経路を有する信号処理装置が存在するか否かを判定する。選択部114は、想定信号経路を有する信号処理装置が存在する場合、その想定信号経路の中から、より上流の信号処理装置を選択する処理を行う。
削除部115は、実際に接続されていない信号処理基板が含まれる想定信号経路を削除する処理を実行する。補正部116は、デフォルト順位設定部112により設定されたデフォルトの優先順位を、選択部114で選択された優先順位に基づいて補正する処理を実行する。決定部117は、優先順位が最も高い信号経路を決定する。
次に、図59のフローチャートを参照して、想定信号経路に基づく優先順位決定処理について説明する。
ステップS51において、デフォルト順位設定部112は、デフォルトの優先順位を設定する。具体的には、記憶部111に予め記憶されているデフォルト順位が、仮の優先順位としてここで設定される。このデフォルトの優先順位としては、例えば、上述した図56の処理により決定される優先順位とすることもできる。このようにした場合、ここで図60に示される優先順位が仮の順位として設定されることになる。
すなわち、第1番目がノイズ除去後解像度創造処理を行う信号経路、第2番目がノイズ除去を行う信号経路、第3番目が解像度創造処理を実行する信号経路、第4番目がスルー処理を行う信号経路である。
次に、ステップS52において、判定部113は、想定信号経路を有する信号処理基板があるか否かを判定する。すなわち、この実施の形態の場合、各信号処理基板に、その信号処理基板を使用する場合に想定される信号経路の優先順位が予め記憶されている。そして、この信号経路も、信号処理基板IDとともに制御基板6Xに供給される。例えば、信号処理基板6Cに、図61に示されるような想定信号経路が付加されている場合、これが制御基板6Xに供給される。図61の例の場合、第1番目が外部入力、ノイズ除去、時間解像度創造、解像度創造、外部出力の信号経路であり、第2番目の信号経路が、外部入力、解像度創造、外部出力の信号経路であり、第3番目の信号経路が、外部入力、ノイズ除去、解像度創造、外部出力の信号経路である。
ステップS53において、選択部114は、より上流の信号処理基板の想定信号経路を選択する。具体的には、ステップS51の処理で、仮に設定された優先順位のうち、最も優先順位の高い信号経路において、最もその信号の流れる上流側の信号処理基板の想定信号経路が選択される。具体的には、ステップS51では、図60に示される優先順位が設定されているため、最もその優先順位の高い第1番目の信号経路での信号処理の順番は、信号処理基板6A,6B,6C,6Dの順である。
従って、信号処理基板6Aが最も上流であり、信号処理基板6Dが最も下流である。想定信号経路が信号処理基板6Bと信号処理基板6Cとに付加されている場合には、より上流側の信号処理基板6Bの想定信号経路が選択される。いまの場合、信号処理基板6Bには、想定信号経路が付加されていないので、信号処理基板6Cの図61に示されるような想定信号経路が選択される。これにより、より最適な信号経路を設定することが可能となる。
ステップS54において、判定部113は、接続されていない信号処理基板を含む想定信号経路があるか否かを判定する。すなわち、ステップS53の処理で選択された想定信号経路の中に、実際に接続されている信号処理基板があり、実行できない機能が含まれているか否かが判定される。
すなわち、その処理を実行するには、他の信号装置基板を接続しなければできないか否かが判定される。他の信号処理基板を接続しなければ実行できない場合には、その想定信号経路は実行不能であるため、ステップS55において、削除部115は、接続されていない信号処理基板を含む想定信号経路を削除する。図61の例の場合、第1番目の信号経路のうち、時間解像度創造処理は、信号処理基板6A〜6Dのいずれも実行することができない機能であり、従って、時間解像度創造処理のための信号処理基板は、接続されていない。そこで、この想定信号経路は削除される。
ステップS54において、接続されていない信号処理基板を含む想定信号経路が存在しないと判定された場合、削除すべき想定信号経路は存在しないため、ステップS55の処理はスキップされる。
次に、ステップS56において、補正部116は、デフォルトの優先順位を想定信号経路で補正する処理を実行する。この場合、想定信号経路での優先順位がデフォルトの優先順位より優先される。このため、ステップS51の処理で設定された図60に示される優先順位は、ステップS55で設定された想定信号経路により補正され、図62に示されるような優先順位となる。
すなわち、図61では、図60の第3番目の解像度創造が第1番目であり、図60の第1番目のノイズ除去後、解像度創造を行う処理が第2番目の優先順位とされる。このため、図60の第3番目の優先順位が最上位の優先順位とされ、図62に示されるような優先順位となる。
ステップS57において、決定部117は、優先順位が最も高い信号経路を表示する信号経路とする処理を実行する。具体的には、決定部117は、図62の第1番目の解像度創造処理を実行する信号経路、すなわち、図49の信号経路を表示する信号経路として決定する。
従って、この場合には、図39のステップS19において、この図49に示される信号経路が表示されることになる。
なお、信号処理装置5Dは、機能基板として音声遅延制御基板が接続されている場合、設定された信号経路に基づいて、画像信号の処理時間遅延分と音声信号の処理時間遅延分を同期させる、いわゆるリップシンク処理を行うようにすることもできる。
例えば、図47〜図50に示される信号処理基板6A〜信号処理基板6Dのそれぞれの画像信号の処理時間の長さが0,1,2,0と設定されている場合、図47に示される信号経路が設定された場合、音声遅延量を0とし、図48に示される信号経路が設定された場合、音声遅延量を1、図49に示される信号経路が設定された場合、音声遅延量を2とし、図50に示される信号経路が設定された場合、音声遅延量を3とし、それぞれの遅延時間を音声遅延制御基板により制御するようにしてもよい。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
<第4の実施の形態の信号処理装置における信号処理の他の動作例>
図63は、第4の実施の形態の信号処理装置の他の具体例を示す構成図で、次に、第4の実施の形態の信号処理装置で実行される信号処理の他の例について説明する。ここで、図63では、信号処理装置を模式的な斜視図で示している。
近年、画像処理システムは、入力画像の帯域が広くなったため、比較的帯域の狭いLSI(Large Scale Integration)やモジュールを並列に配置し、同時に処理させる場合がある。このような場合、多数のLSIやモジュールを統一的に制御する必要がある。このとき、全ての被制御装置に対してそれぞれ独立に制御を行うのは、煩雑となり仕組みが冗長となりがちである。そこで、放送型(ブロードキャスト型)の制御が用いられることがある。
放送型の制御信号を用いれば、制御装置は、複数の被制御装置に対して共通の制御信号を出力するだけでよいので、制御が簡単となる。
但し、放送型の制御信号を用いる場合、故障した被制御装置を発見することが困難になり、結果的に、動作の確実性を確保することが困難になる課題があった。
そこで、上述した第4の実施の形態の信号処理装置で、放送型の制御信号を用いて複数の装置を制御し、かつ、動作の確実性を確保できるようにした制御について説明する。
信号処理装置5Eは、機能基板として、制御基板6Xと、所定の機能を有した複数の信号処理基板6(A〜E)を備え、各機能基板が光導波路構造体7Bによって任意の信号経路で接続される。本例では、信号処理基板6Aとして画質検出部を備え、信号処理基板6BとしてY/C分離部を備え、信号処理基板6CとしてI/P変換部を備え、信号処理基板6Dとして解像度変換部を備え、信号処理基板6Eとして画質調整部を備える。
光導波路構造体7Bは、図1〜図15で説明した光導波路2(A〜E)の何れかが、スペーサ70を介して積層され、制御基板6Xと各信号処理基板6(A〜E)との間、及び各信号処理基板6(A〜E)の間で制御信号が伝送される制御信号伝送層71と、各信号処理基板6(A〜E)の間でデータが伝送されるデータ伝送層72を備える。
各層の光導波路2では、上述したように、外周の任意の位置から入射した光が、第1の導光部20と第2の導光部21との屈折率の差による屈折や、第1の導光部20に備えられる乱反射材24による乱反射等により、光導波路2の全周方向に出射される。そして、各光導波路2の積層方向には光が漏れず、それぞれの光導波路2で独立して信号が伝送される。
制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)は、光の信号が出力される単数または複数の光出力部30と、光の信号が入力される単数または複数の光入力部40を備える。また、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)は、光出力部30から出力される信号及び光入力部40から入力された信号の処理を行う信号処理部61を備える。信号処理部61は、制御信号の処理部とデータの処理部がそれぞれ設けられていても良い。
光出力部30は、信号の伝送方式等に応じて、単一の波長の光を出力する構成、または、2つ以上の異なる波長の光を出力する構成を備える。光出力部30は、単一の波長の光を出力する構成であれば、光が出力される方向を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にLDを備える。
波長の異なる光を出力する構成では、例えば、図19で説明した光出力部30A、図23等で説明した光出力部30B、または図25等で説明した光出力部30Cを備える。
光入力部40は、光出力部30の構成及び信号の伝送方式に応じて、光出力部30から出力される単一の波長の光が受光可能な構成、または、2つ以上の異なる波長の光をそれぞれ受光可能な構成を備える。
光入力部40は、単一の波長の光を受光可能とする構成であれば、受光部を光導波路2の第1の導光部20に向けて、光導波路構造体7Aの外周にフォトディテクタを備える。
波長の異なる光を受光可能とする構成では、例えば、図19で説明した光入力部40A、図23等で説明した光入力部40B、または図25等で説明した光入力部40Cを備える。
光出力部30と光入力部40は、それぞれ移動機構60が設けられて、光導波路2の積層方向に沿って移動し、任意の光導波路2に対して光が入射また出射可能な位置に配置され、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)の信号経路が切り替えられる。
信号処理装置5Eは、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)がベース基板63に実装される。ベース基板63は、図示しない電源や冷却ファンと、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)が着脱可能に実装されるソケット64を備え、制御基板6Xと信号処理基板6(A〜E)に電源が供給される。
ソケット64は、光導波路構造体7Bの外周に沿って複数個所に設置され、任意のソケット64に制御基板6Xまたは信号処理基板6(A〜E)が実装されると、光出力部30及び光入力部40を移動機構60で移動させることで所望の光導波路2に対向させ、光の入出射が可能となる。
光導波路構造体7Bを構成する各層の光導波路2は、外周の任意の位置から入射された光が、光導波路2全周方向に出射されるので、制御基板6Xまたは信号処理基板6(A〜E)がどのソケット64に装着されても、光導波路2に対して光の入出射が可能である。
これにより、信号処理装置5Eは、ベース基板63に実装される信号処理基板6を変更や追加することで、機能変更や機能追加が可能となる。
図64は、図63で説明した制御基板6Xの機能的構成例を示すブロック図である。制御基板6Xは、主制御部211と、放送型制御部212と、異常判定部213と、通信部214により構成されている。
主制御部211は、基本的な電源管理、放送型制御部212の初期化、異常時のリセットといったシステムの維持、管理を行う。放送型制御部212は、図63に示す各信号処理基板6(A〜E)のステートマシーンを持ち、ユーザの操作に基づいた主制御部211からの指示に従って、信号処理基板6(A〜E)に放送型(ブロードキャスト型)制御信号を出力しその動作を制御する。
異常判定部213は、信号処理基板6(A〜E)からのエラー信号を受信し、そのいずれが故障したのかを判定し、その判定結果を主制御部11に通知する。
通信部214は、図63に示す光出力部30及び光入力部40等で構成され、光導波路構造体7Bの選択された光導波路2を介して信号処理基板6(A〜E)と通信する。
図65は、図64で説明した主制御部211の機能的構成例を示すブロック図である。主制御部211は、判定部221、初期化部222、表示制御部223、並びに指示部224といった機能的構成を有している。
判定部221は、異常判定部213から異常の通知を受けたか否か、終了が指令されたか否かといった各種の判定処理を行う。初期化部222は、放送型制御部212を初期化する処理を実行する。表示制御部223は、ユーザに対して所定のメッセージを表示させる制御を行う。指示部224は、放送型制御部212を介して信号処理基板6(A〜E)の各部に対して各種の指示を出力する。
次に、各信号処理基板6(A〜E)の機能について説明する。信号処理基板6A(以下、画質検出部とも称す)は、外部より入力された信号の電界強度を検出したり、入力された映像信号が2−3プルダウン形式の信号であるのかといったことを検出する。
信号処理基板6B(以下、Y/C分離部とも称す)は、画質検出部6Aより供給された映像信号を、輝度信号Yと色信号Cに分離する。このときまた、4:2:2のYUV信号を、4:4:4の信号に変換する処理も行われる。Y/C分離部6Bは、輝度信号と色信号を分離する機能を有しているものであればどのような構成でもよい。
信号処理基板6C(以下、I/P変換部とも称す)は、Y/C分離部6Bより供給された映像信号を、インターレース方式の信号からプログレシブ方式の信号に変換する。I/P変換部6Cの構成も任意である。
信号処理基板6D(以下、解像度変換部とも称す)は、I/P変換部6Cより供給された映像信号の解像度を変換する。例えば、入力されたSD(Standard Definition)信号からHD(High Definition)信号に変換する処理が行われる。解像度変換部6Dの構成も任意である。
信号処理基板6E(以下、画質調整部とも称す)は、解像度変換部6Dより供給された映像信号の画質調整を行う。具体的には、LCD(Liquid Crystal Display),CRT(Cathode Ray Tube),プラズマディスプレイといった表示装置に適した信号となるように、映像信号のレベルを調整する。
図66は、制御基板6Xが各信号処理基板6(A〜E)の故障検知を行う制御処理での信号経路の切り替え動作例を示す説明図で、図63に示す光導波路構造体7Bの制御信号伝送層71側の信号経路を示す。
信号処理装置5Eでは、制御基板6Xから各信号処理基板6(A〜E)に放送型制御信号を出力するため、制御基板6Xの光出力部30(TX)を、制御信号伝送層側の第1層の光導波路2(00)に対向させ、画質検出部6Aの第1の光入力部40(RX1)を第1層の光導波路2(00)に対向させる。
同様に、Y/C分離部6Bの第1の光入力部40(RX1)と、I/P変換部6Cの第1の光入力部40(RX1)と、解像度変換部6Dの第1の光入力部40(RX1)と、画質調整部6Eの光入力部40(RX1)のそれぞれを、第1層の光導波路2(00)に対向させる。
各信号処理基板6(A〜E)は、後段の信号処理基板に同期型制御信号を出力すると共に、制御基板6Xにはエラー信号を出力するため、光出力部30(TX)は、例えば波長多重で2系統の信号が出力できる構成である。
そして、各信号処理基板6(A〜E)から制御基板6Xにエラー信号を出力するため、画質検出部6Aの光出力部30(TX)を第2層の光導波路(01)に対向させ、制御基板6Xの第2の光入力部40(RX)を第2層の光導波路(01)に対向させる。同様に、Y/C分離部6Bの光出力部30(TX)を第3層の光導波路(02)に対向させ、制御基板6Xの第3の光入力部40(RX)を第3層の光導波路(02)に対向させる。
また、I/P変換部6Cの光出力部30(TX)を第4層の光導波路(03)に対向させ、制御基板6Xの第4の光入力部40(RX)を第4層の光導波路(03)に対向させる。更に、解像度変換部6Dの光出力部30(TX)を第5層の光導波路(04)に対向させ、制御基板6Xの第5の光入力部40(RX)を第5層の光導波路(04)に対向させる。また、画質調整部6Eの光出力部30(TX)を第6層の光導波路(05)に対向させ、制御基板6Xの第6の光入力部40(RX)を第6層の光導波路(05)に対向させる。
一方、各信号処理基板6(B〜E)で前段の信号処理基板からの同期型制御信号を受けるため、前段の画質検出部6Aの光出力部30(TX)に合わせて後段のY/C分離部6Bの第2の光入力部40(RX)を第2層の光導波路2(01)に対向させる。
同様に、前段のY/C分離部6Bの光出力部30(TX)に合わせて後段のI/P変換部6Cの第2の光入力部40(RX)を第3層の光導波路2(02)に対向させる。また、前段のI/P変換部6Cの光出力部30(TX)に合わせて後段の解像度変換部6Dの第2の光入力部40(RX)を第4層の光導波路2(03)に対向させる。更に、前段の解像度変換部6Dの光出力部30(TX)に合わせて後段の画質調整部6Eの第2の光入力部40(RX)を第5層の光導波路2(04)に対向させる。
ここで、各信号処理基板6(A〜E)から制御基板6Xへのエラー信号の伝送は例えば赤色光で行い、各信号処理基板6(A〜E)から後段の信号処理基板への同期型制御信号の伝送は例えば緑色光で行うことで、各信号処理基板6(A〜E)は、それぞれ1層の光導波路2で同期型制御信号とエラー信号の伝送が可能となる。
図67は、各信号処理基板6(A〜E)間でデータを伝送する制御処理での信号経路の切り替え動作例を示す説明図で、図63に示す光導波路構造体7Bのデータ伝送層72側の信号経路を示す。
通常は、前段の信号処理基板で処理が終了したデータを後段の信号処理基板に伝送するため、画質検出部6Aの光出力部30(TX)をデータ伝送層側の第2層の光導波路2(01)に対向させ、Y/C分離部6Bの光入力部40(RX)を第2層の光導波路2(01)に対向させる。
同様に、Y/C分離部6Bの光出力部30(TX)を第3層の光導波路2(02)に対向させ、I/P変換部6Cの光入力部40(RX)を第3層の光導波路2(02)に対向させる。
また、I/P変換部6Cの光出力部30(TX)を第4層の光導波路2(03)に対向させ、解像度変換部6Dの光入力部40(RX)を第4層の光導波路2(03)に対向させる。
更に、解像度変換部6Dの光出力部30(TX)を第5層の光導波路2(04)に対向させ、画質調整部6Eの光入力部40を第5層の光導波路2(04)に対向させる。
図68は、制御処理を説明するフローチャートであり、次に、光導波路(光導波路構造体7B)で接続された機能基板の故障を検知する処理について説明する。
ステップS61において、制御基板6Xの判定部221は、各信号処理基板6(A〜E)から、異常の通知を受けたか否かを判定する。各信号処理基板6(A〜E)から異常の通知を受けていない場合、ステップS62において、初期化部222は、放送型制御部212を初期化する処理を実行する。
例えば、初期化部222は、各信号処理基板6(A〜E)が、入力されたインターレース方式のSD信号からプログレシブ方式のHD信号を生成するように各部を初期化する。このため、初期化部222は、放送型制御部212を制御し、各信号処理基板6(A〜E)、すなわち、画質検出部、Y/C分離部、I/P変換部、解像度変換部、及び画質調整部に対して、インターレース方式のSD信号をプログレシブ方式のHD信号に変換する放送型制御信号を図66に示す信号経路で出力する。各信号処理基板6(A〜E)は、この制御信号に基づいてそれぞれの処理を行う。この処理の詳細については、図71のフローチャートを参照して後述する。
各信号処理基板6(A〜E)は、図67に示すように数珠繋ぎになっており、前段より入力された信号を処理し、後段に出力する。このとき、処理信号と共に図66に示す信号経路で同期型制御信号も前段から後段に出力され、各信号処理基板6(A〜E)は、放送型制御信号を受信した後、前段から同期型制御信号を一定時間内に受信しない場合、エラー信号を異常判定部213に出力する(後述する図71のステップS77の処理)。
異常判定部213は、各信号処理基板6(A〜E)からのエラー信号を受信したとき、いずれが故障したのかを判定し、その判定結果を主制御部211に通知する(後述する図73のステップS96の処理)。
そこで、ステップS63において、判定部221は初期化処理実行後(放送型制御信号出力後)、予め設定されている一定時間内に異常の通知を受け取ったか否かを判定する。この一定時間は、各信号処理基板6(A〜E)が、いずれも正常に動作している場合に、画質検出部6Aで処理された信号が順次後段に出力され、画質調整部6Eにより処理され、出力されるまでに要する時間より若干長い時間に設定されている。従って、この一定時間内に異常の通知が受信されない場合には、各信号処理基板6(A〜E)は正常に動作しているものと判定される。
ステップS63において、一定時間内に異常の通知が受信されたと判定された場合、ステップS64において、判定部221は、異常でない装置があるか否かを判定する。異常でない装置が存在する場合には、ステップS65において、初期化部222は、異常でない装置だけを使用するように放送型制御部212を初期化する。放送型制御部212は、この初期化に基づいて、新たな放送型制御信号を各信号処理基板6(A〜E)に出力する。
図69は、異常検知時の信号経路の切り替え動作例を示す説明図で、図63に示す光導波路構造体7Bのデータ伝送層72側の信号経路を示す。
例えば、初期化部222は、当初、図69(a)に示されるようにY/C分離部6B、I/P変換部6C、及び解像度変換部6Dをそれぞれ動作させ、入力されたインターレース方式のSD信号をプログレシブ方式のHD信号に変換させるように各部に指示したのであるが、解像度変換部6Dが故障し、解像度変換処理を行うことができなくなった場合には、インターレース方式のSD信号をプログレシブ方式のSD信号に変換して出力するように、各信号処理基板に放送型制御信号を出力して初期化を行う。画質調整部6Eは、放送型制御信号を受信することで、前段の解像度変換部6Dが故障し、解像度変換処理を行うことが出来なくなったことを認識して、入力されるフォーマットが変わることを認識し、入力されるフォーマットに応じて処理を行うように制御する。ここでは、入力される信号がHD信号からSD信号に変化することが認識される。
この場合、画質調整部6Eには、I/P変換部6Cからデータを受信するように信号経路を切り替える放送型制御信号が出力され、この放送型制御信号を受けて、画質調整部6Eは、図69(b)に示すように光入力部40(RX)を移動させて、I/P変換部6Cの光出力部30(TX)と同一層の光導波路2に対向させる。
これにより、故障した解像度変換部6Dをスルーした信号経路に切り替えられると共に、故障した解像度変換部6Dの後段の画質調整部6Eで入力されるフォーマットに応じた画質調整処理が行われることで、少なくともユーザが画像を見ることができなくなってしまうようなことが防止される。
その後、ステップS66において、判定部221は、ステップS65における初期化処理後、予め設定してある一定の時間内に、異常の通知を受けたか否かを判定する。異常の通知を受けた場合には、もはや正常な動作を保証することができないため、ステップS67において、表示制御部223は異常を表示する処理を実行する。具体的には、例えば、「異常が発生しました」のようなメッセージをユーザに呈示するように制御が行われる。ユーザはこのメッセージを見て、必要に応じて故障を修理するなどの処置を行うことになる。
ステップS68において、判定部221は、ユーザより終了が指令されたか否かを判定する。終了が指令されていない場合には、処理はステップS61に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
ステップS61において、異常の通知を受けていないと判定された場合、並びにステップS63またはステップS66において、一定時間内に異常の通知を受けていないと判定された場合にも処理はステップS68に進み、終了が指令されているか否かが判定され、指令されていなければ処理はステップS61に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
ステップS68において、ユーザより終了が指令されたと判定された場合、ステップS69において、指示部224は、放送型制御部212を制御し、各信号処理基板6(A〜E)に終了の指示の放送型制御信号を出力させる。各信号処理基板6(A〜E)は、この制御信号に基づいて処理を終了させる。
次に、各信号処理基板6(A〜E)の個別処理について説明する。その基本的な流れはいずれも同一であるので、ここではY/C分離部6Bを例として説明する。
図70は、Y/C分離部6Bの機能的構成例を示すブロック図である。Y/C分離部6Bは、判定部231、計測部232、処理部233、及び出力部234により構成される。図示は省略するが、画質検出部6A、I/P変換部6C、解像度変換部6D、画質調整部6Eも同様に構成されている。
判定部231は、制御信号を受信したか否か、受信した放送型制御信号と同期型制御信号が一致しているか否か、処理が終了したか否か、末尾の装置であるか否か、終了が指示されたか否かといった判定処理を行う。
計測部232は、計時動作を行い、放送型制御信号が受信されてから同期型制御信号が受信されるまでの時間を計測する。処理部233は、各基板で固有の処理を行う。この例の場合、Y/C分離部6Bの処理部であるので、処理部233は、輝度信号と色信号の分離処理を行う。出力部234は、処理部233により処理された処理信号を、受信された放送型制御信号と実質的に同一の内容を有する同期型制御信号とともに、後段(本例では、I/P変換部6C)に出力する。
図71は、Y/C分離部の個別処理を示すフローチャートで、次に、Y/C分離部6Bの個別処理について説明する。ステップS71において、判定部231は、放送型制御信号を受信したか否かを判定する。この放送型制御信号は、上述した図68のステップS62またはステップS65の処理で出力されるものである。放送型制御信号を受信しない場合には、受信されるまでステップS71の処理が繰り返し実行される。
ステップS71において、放送型制御信号が受信されたと判定された場合、ステップS72において、計測部232は、同期型制御信号を受信するまでの時間の計測を開始する。すなわち、Y/C分離部6Bの前段には画質検出部6Aが配置されているので、画質検出部6Aが処理を終了したとき、処理信号と共に同期型制御信号をY/C分離部6Bに出力してくる(画質検出部6Aによる後述するステップS81の処理)。計測部232は、この同期型制御信号を受信するまでの時間を計測する。
ステップS73において、判定部231は、自分自身(ここではY/C分離部6B)が信号処理基板6(A〜E)の先頭の装置であるか否かを判定する。先頭の装置であるか、後述するステップS80における末尾の装置であるのかは、予め各基板に設定、記憶されている。あるいはまた、各基板に放送型制御信号を受信してから、前段より制御信号と処理信号が入力されるまでに要する時間を、秒、または、映像信号のフィード数、あるいはフレーム数などの形式で記憶しておき、その時間から自分自身が位置する順番を自分自身が判断するようにしてもよい。
自分自身が先頭の装置でない場合には、ステップS74において、判定部231は、同期型制御信号を受信したか否かを判定する。先頭の装置でなければ、前段の装置から処理信号とともに同期型制御信号が供給されてくるので(後述するステップS81)、同期型制御信号が受信されない場合には、ステップS75において、計測部232は、ステップS72で計測を開始した時間が予め設定した制限時間を越えたか否かを判定する。この制限時間は、各部において共通の時間としても良いし、各部の数珠接続における順番に対応する時間とすることもできる。
経過時間が制限時間をまだ超えていない場合には、処理はステップS74に戻り、同期型制御信号を受信するまでステップS74,S75の処理が繰り返し実行される。制限時間内に、同期型制御信号が前段から受信されたと判定された場合、ステップS76において、判定部231は、2つの制御信号が一致しているか否かを判定する。すなわち、後述するステップS81において、各部は、放送型制御部212から受信した放送型制御信号と同一の内容の制御信号を、同期型制御信号として後段に出力する。従って、放送型制御信号と同期型制御信号は、実質的に一致している信号である。2つの制御信号が一致している場合には、ステップS78において、処理部233は個別処理を開始する。ここではY/C分離部6Bの処理部であるので、処理部233は、前段の画質検出部6Aより入力された映像信号を、輝度信号と色信号に分離する処理を実行する。
ステップS79において、判定部231は、処理が終了したか否かを判定し、処理が終了するまで待機する。そして、処理が終了したとき、ステップS80において、判定部231は、自分自身が末尾の装置であるか否かを判定する。ここでは末尾の装置ではないので、ステップS81において、出力部234は処理信号とともに同期型制御信号を出力する処理を実行する。すなわち、処理部233により分離された輝度信号と色信号が、ステップS71で受信された放送型制御信号と実質的に同一内容の同期型制御信号と共に、後段のI/P変換部6Cに出力される。
自分自身が末尾の装置である場合には、後段には放送型制御部212により制御される数珠接続された信号処理基板は存在しないことになる。図67の例では、画質調整部6Eが末尾の装置である。そこで、このような場合には、ステップS82において、出力部234は同期型制御信号を出力する必要がないので、処理信号だけを後段に出力する。
ステップS75において、放送型制御信号を受信してから同期型制御信号を受信するまでの時間が制限時間を越えたと判定された場合、または、ステップS76において、2つの制御信号が一致しないと判定された場合、ステップS77において、出力部234は、エラー信号を異常判定部213に出力する。異常判定部213は、このエラー信号に基づいて、どの信号処理基板が故障したのかを判定する(この処理については、図73のフローチャートを参照して後述する)。
ステップS77,S81,S82の処理の後、ステップS83において、判定部231は、終了が指示されたか否かを判定する。ユーザよりまだ終了が指示されていない場合には、処理はステップS71に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。ステップS83において、ユーザより終了が指示されたと判定された場合、処理は終了される。
なお、この終了の指示も、放送型制御信号に基づいて行われる。
以上のようにして、画質検出部6Aは、入力されたSD信号の画質を検出し、電界強度、ノイズ、および2−3プルダウン信号の検出を行った後、その検出結果と入力信号をY/C分離部6Bに出力する。Y/C分離部6Bは、入力された映像信号から輝度信号と色信号を分離する。分離された輝度信号と色信号は、I/P変換部6Cに供給される。I/P変換部6Cは、入力されたインターレース方式の輝度信号と色信号をプログレシブ方式の輝度信号と色信号に変換する。解像度変換部6Dは、I/P変換部6Cより入力されたプログレシブ方式に変換された輝度信号と色信号を、その画素密度を増加させることでSD信号からHD信号に変換する。
画質調整部6Eは、解像度変換部6Dより供給されたHD信号の輝度信号と色信号のレベルを、表示装置に最適となるレベルに調整した後、出力信号として図示せぬ表示装置に出力する。
次に、異常判定部213による異常判定処理について説明する。図72は、異常判定部213の機能的構成例を示すブロック図である。異常判定部213は、受信部241、判定部242、決定部243、及び通知部244を有している。
受信部241は、信号処理基板6(A〜E)から、図71のステップS77において出力されたエラー信号を受信する。判定部242は、受信部241により受信されたエラー信号に基づいて、信号処理基板6(A〜E)のうち故障している装置はどの装置であるのかを判定する。決定部243は、判定部242による判定結果に基づいて、信号処理基板6(A〜E)のうち、故障している装置を決定する。通知部244は、決定部243により決定された装置が故障していることを主制御部211に通知する。
図73は、異常判定処理例を示すフローチャートで、次に、異常判定部213の異常判定処理について説明する。
ステップS91において、受信部241は、各信号処理基板6(A〜E)、すなわち、画質検出部6A、Y/C分離部6B、I/P変換部6C、解像度変換部6D、及び画質調整部6Eのいずれかから、エラー信号が出力されてきたときこれを受信し、判定部242は、受信部241の出力に基づいてエラー信号を受信したか否かを判定する。エラー信号を受信した場合、判定部242は、ステップS92,ステップS93において、エラー信号を出力したのは、全ての装置か(ステップS92)、または、エラー信号を出力したのは下流側の全ての装置か(ステップS93)を判定する。
ステップS92において、エラー信号を出力したのは全ての装置であると判定された場合、ステップS94において、決定部243は制御系の異常と決定する。すなわち、この場合、画質検出部6A、Y/C分離部6B、I/P変換部6C、解像度変換部6D、及び画質調整部6Eのいずれもがエラー信号を出力したことになるので、放送型制御部212より出力された放送型制御信号そのものが、各部に有効に受信されていない可能性がある。そこで、この場合には、制御系全体が異常であると判定される。
ステップS93において、エラー信号を出力したのは下流側の全ての装置であると判定された場合、ステップS95において、決定部243は、下流側の先頭の装置の故障と決定する。例えば、画質検出部6Aはエラーを出力していないが、画質検出部6Aより下流側にあるY/C分離部6B、I/P変換部6C、解像度変換部6D、及び画質調整部6Eの4つの各基板からエラー信号が検出された場合には、その下流側の4つの各基板のうちの先頭のY/C分離部6Bに異常があり、そこから後段に信号が出力されないので、それより下流側のI/P変換部6C、解像度変換部6D、及び画質調整部6Eもエラー信号を出力するものと判定される。
同様に、画質検出部6AとY/C分離部6Bは、エラー信号を出力しておらず、それより下流側のI/P変換部6C、解像度変換部6D、及び画質調整部6Eがエラー信号を出力している場合には、下流側の3つの装置の先頭のI/P変換部6Cに異常があると判定される。また、画質検出部6A、Y/C分離部6B、及びI/P変換部6Cは、エラー信号を出力しておらず、解像度変換部6Dと画質調整部6Eがエラー信号を出力している場合には、その下流側の2つの装置のうちの先頭の解像度変換部6Dが故障しているものと判定される。さらに、画質検出部6A、Y/C分離部6B、I/P変換部6C、及び解像度変換部6Dがいずれもエラー信号を出力しておらず、最も下流に位置する画質調整部6Eだけがエラー信号を出力している場合には、画質調整部6Eが故障していると決定される。
ステップS94またはステップS95において、故障している装置が決定されると、ステップS96において、通知部244は、故障を通知する処理を実行する。具体的には、制御系の異常と決定された場合、そのことを表す通知が通知部244から主制御部211に通知される。同様に、下流側の先頭の装置の故障と決定された場合には、その装置を特定する情報が、具体的には、例えばY/C分離部6Bが故障していると判定された場合には、Y/C分離部6Bが故障していることが、主制御部211に通知される。
ステップS92及びステップS93において、いずれもエラー信号が出力されていないと判定された場合、並びにステップS96において、故障を通知する処理が行われた後、処理はステップS97に進む。ステップS97において、判定部242は、終了が指示されたか否かを判定する。終了が指示されていない場合には、処理はステップS91に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。ステップS97において、終了が指示されていると判定された場合、処理は終了される。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
<各実施の形態の信号処理装置におけるマルチパス対策の制御例>
上述したように光で信号を伝送する各実施の形態の信号処理装置に限らず、波を利用して空間内で無線通信をする場合、受信部が複数の経路を介して伝送される同じ波を受信することをマルチパスという。
送信部から複数の経路を介して受信部に信号が到達する際、信号が、波長、材料の反射率、屈折率、吸収率、材料の表面形状、粗さ、回折の影響を受け、経路毎に異なる波形歪みを持って受信部に到達する。
マルチパスで波形の歪みが発生する原因としては、波が反射、屈折、回折することによって、送信部と受信部との間で経路長が異なるために発生する遅延による経路・遅延要因と、異なる経路長を通過する波が、異なる回数で反射、屈折、回折するため、及び材料の吸収特性が異なるために発生するレベル減衰によるレベル要因がある。
マルチパスでは、経路長が異なる複数の伝送経路、つまり、伝送にかかる時間の異なる複数の伝送経路を介して波が伝送される。従って、受信部が受信した信号の所定のシンボルの信号値は、その所定のシンボルの前に伝送され、伝送にかかる時間が長い伝送経路を介して、遅延して伝送された複数のシンボルの影響(干渉)を受ける。
このように、所定のシンボルの信号値が、遅延・レベル減衰して伝送された複数のシンボルの影響を受けると、所定のシンボルの信号値が表す波形に歪(マルチパスフェージング)が生じてしまい、受信部は、信号のシンボルの値を正確に判定することができず、例えば、その信号を正確に復調することができなくなる。
従来、一般的な無線通信の信号処理によるマルチパス対策として、変調方式としてOFDM(OrthogonalFrequencyDivisionMultiplexing:直交周波数分割多重方式)を用いる方法や、スペクトラム拡散(SpreadSpectrum)とレイク受信を用いる方法などがある。
しかし、OFDMを変調方式に採用した場合には、変調および復調において用いられるFFT(FastFourierTransform)やA/D(Digital/Analog)変換などの処理を実行するデバイスに大きな負荷がかかり、それらのデバイスの発熱量が多くなる懸念がある。また、スペクトラム拡散を用いた場合には、送信信号よりも高速な信号処理が必要となるため、高速な通信を実現することが困難となる。
一方、光通信では、伝送路としてマルチモードの光ファイバを用いる場合、コアの中心の屈折率を大きくしてモード間の遅延時間差を少なくする方法が用いられている。但し、この方法では、モード分散を完全には補償できない。
また、信号光と局部発振光を合波した光から情報を取り出す光ヘテロダイン検波を用いる方法も考えられるが、異なるパス間の干渉が問題となる。
そこで、上述した図28等に示す信号処理装置で、マルチパスに起因する波形の歪みの特性を求め、信号を正確に復調できるようにする制御について説明する。なお、図28等に示す信号処理装置では、光出力部(LD)と光入力部(フォトディテクタ)との位置関係、入出射角度、波長、光導波路を構成する第1の導光部と第2の導光部の屈折率の差、第1の導光部と第2の導光部の径の関係及び乱反射材の面粗さ等が、マルチパスの変動要因となる。
図74は、図28に示す制御基板及び信号処理基板等の機能基板に実装される信号処理部の機能的構成例を示すブロック図である。
本例では、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に定常的な歪が生じる光導波路2等の伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理装置5(A〜E)において、伝送経路を介して、あらかじめ所定の値が設定されたシンボルを含む信号であるテスト信号を受信する受信手段(例えば、図74のフォトディテクタ4)と、受信手段が受信したテスト信号から、特定のシンボルの信号値を取得する取得手段(例えば、図74の光入力部40)と、取得手段が複数のテスト信号から取得した信号値が表す波形に基づき、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に生じる歪の特性を求める特性演算手段(例えば、図74の基準パターンメモリ402および引き算器403)とを備える。
また、上述した特性演算手段は、テスト信号のうちの、所定の基準となる基準テスト信号から取得された信号値が表す波形を記憶する記憶手段(例えば、図74の基準パターンメモリ402)と、テスト信号のうちの、基準テスト信号以外のテスト信号から取得された信号値が表す波形から、記憶手段に記憶されている波形を減算し、その結果得られる波形を、歪の特性として求める減算手段(例えば、図74の引き算器403)とを有することができる。
更に、上述した特性演算手段は、テスト信号を、そのシンボルの値に基づいて、所定のクラスに分類するクラス分類部(例えば、後述する図83のクラス分類部454)と、クラス分類部が分類したクラスごとに、テスト信号のシンボルの値を、歪の特性の学習の生徒となる生徒データとし、取得手段が取得した特定のシンボルの信号値を、歪の特性の学習の教師となる教師データとして、最小自乗法を利用した学習を行うことにより、歪の特性を求める学習部(例えば、図83の学習部455)とを有することができる。
また、任意の値が設定されたシンボルを含む信号の特定のシンボルの前に送信されたシンボルが、特定のシンボルの信号値が表す波形に生じさせる歪を、特性演算手段が複数のテスト信号から求めた歪の特性を合成して推定する合成手段(例えば、後述する図81の足し算器444)を更に備えることができる。
本例の信号処理装置で実行される信号処理方法またはプログラムは、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に定常的な歪が生じる伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理方法、または、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に定常的な歪が生じる伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムであって、伝送経路を介して受信した、あらかじめ所定の値が設定されたシンボルを含む信号であるテスト信号から、特定のシンボルの信号値を取得し(例えば、後述する図78のステップS112)、複数のテスト信号から取得された信号値が表す波形に基づき、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に生じる歪の特性を求める(例えば、図78のステップS116)ステップを含む。
以上により、伝送経路を介して受信した、あらかじめ所定の値が設定されたシンボルを含む信号であるテスト信号から、特定のシンボルの信号値が取得される。そして、複数のテスト信号から取得された信号値が表す波形に基づき、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、特定のシンボルの信号値が表す波形に生じる歪の特性が求められ、信号の波形に生じる歪の特性を求めることができる。
以下に、各図を参照して上述した制御及び制御を実現するための機能の詳細を説明する。
信号処理装置は、例えば図28に示すように、制御基板6Xまたは信号処理基板6(A〜D)の任意の機能基板で、信号処理部61により処理された信号が、光出力部30から光で出力され、光導波路2を伝送経路として伝送されて、任意の機能基板の光入力部40に入力し、光入力部40で取得した信号が受信側の信号処理部61で処理される。
さて、光入力部40に入力された光から取得した信号にマルチパスの影響で生じている波形の歪みは、時間の経過とともに変化することがない。即ち、受信波形には、マルチパスの影響で定常的な歪が発生している。
図75及び図76は、信号処理部が受信した信号の波形に生じる歪みを説明する図であり、次に、図75及び図76を参照して、信号処理部61が受信した信号の波形に生じる歪みについて説明する。
ここで、光通信等の無線通信で送受信される信号は、複数のシンボルからなり、変調方式によっては、1シンボルにより、複数のビットを伝送することができる。以下では、例えば、BPSK(binaryphaseshiftkeying)のように、1シンボルにより1ビット(0または1のいずれか一方)が伝送される例について説明する。
図75には、信号処理部61が受信した信号のうちの、ある特定のビット(以下、適宜、現在のビットという)の4ビット前に送信されたビットから現在のビットまでの5ビットの信号が示されている。現在のビットの4ビット前に送信されたビットから現在のビットまでの各ビットを「4ビット前、3ビット前、2ビット前、1ビット前、現在のビット」と表すとすると、図75(a)には、「1,0,0,0,0」の5ビットの信号が示されており、図75(b)には、「1,1,1,1,0」の5ビットの信号が示されている。
図75において、4ビット前から1ビット前までの各ビットから、現在のビットに向けて示されている矢印は、4ビット前から1ビット前までの各ビットが、光導波路2で異なるパスを伝送されることにより、現在のビットに重畳されることを表している。
図75(a)と図75(b)とでは、現在のビットは、いずれも0であるが、現在のビットの前に送信されたビットが「1,0,0,0」であるときと、現在のビットの前に送信されたビットが「1,1,1,1」であるときとでは、それらのビットの組み合わせ(パターン)が異なるため、現在のビットが受ける影響、つまり、現在のビットの波形に生じる歪は異なるものとなる。
即ち、図76では、「1,0,0,0,0」の5ビットの信号が送信されたときの現在のビットの波形と、「1,1,1,1,0」の5ビットの信号が送信されたときの現在のビットの波形を示す図である。図76の横軸は時間を表し、図76には、現在のビットの1ビット分の時間が示されている。また、図76の縦軸は、信号の信号値を表す。
図76には、「1,0,0,0,0」の5ビットの信号を複数回送信したときにサンプリングされた現在のビットの波形群L1と、「1,1,1,1,0」の5ビットの信号を複数回送信したときにサンプリングされた現在のビットの波形群L2とが示されている。
図76に示すように、波形群L1とL2とは、DCオフセット位置や、波形の形状が大きく異なっている。一方、図76から、波形群L1の波形同士、及び、波形群L2同士では、波形の形状が大きく異なることはなく、それぞれの波形に生じる歪は、同様の特性を有していることが分かる。
従って、例えば、図28の信号処理部61は、「1,0,0,0,0」や「1,1,1,1,0」等のように、あらかじめ設定された値を取るビットの組み合わせからなる信号(以下、適宜、テストパターン信号という)を、複数回送受信し、その結果得られた現在のビットの波形に統計的な処理を施すことで、現在のビットの前に送信された複数のビットの値に応じて、現在のビットの信号値が表す波形に生じる歪の特性(以下、適宜、遅延プロファイルという)を取得することができる。
次に、図74を参照して受信側の信号処理部の機能的構成について説明する。光入力部40は、光が入力されて電気信号に変換されるフォトディテクタ(PD)4と、PD駆動部を構成し、電気信号を増幅するトランスインピーダンスアンプ(TIA)47a及びリミッティングアンプ(LA)47bを備える。
また、光入力部40から出力された電気信号は、クロックデータリカバリー回路(CDR)を構成する受信信号処理部400で処理される。受信信号処理部400は、スイッチ401と、基準パターンメモリ402と、引き算器403と、遅延プロファイルメモリ404と、制御部405を備える。
スイッチ401は、制御部405の制御に従って、光入力部40から供給されたビットの信号値であって、他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を、基準パターンメモリ402または引き算器403に供給する。
ここで、以下、適宜、テストパターン信号のうちの、全てのビットが1または0である信号を、基準テストパターン信号と称し、基準テストパターン信号以外のテストパターン信号を、他のテストパターン信号と称する。
スイッチ401は、制御部405の制御に従って、テストパターン信号が、基準テストパターン信号であれば、現在のビットの信号値を基準パターンメモリ402に供給し、テストパターン信号が、他のテストパターン信号であれば、現在のビットの信号値を引き算器403に供給する。
基準パターンメモリ402は、スイッチ401から供給されたビットの信号値、すなわち、基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を記憶する。また、基準パターンメモリ402は、制御部405の制御に従って、自身が記憶しているビットの信号値を引き算器403に供給する。
引き算器403は、スイッチ401から供給されたビットの信号値から、基準パターンメモリ402から供給されたビットの信号値を減算した値を算出し、その値が表す波形を遅延プロファイルとして遅延プロファイルメモリ404に供給する。
すなわち、各信号処理部61は、テストパターン信号の送受信を行うことにより受信信号処理部400で遅延プロファイルを取得するが、例えば、ビットが遅延して伝送される影響によって、現在のビットの信号値が表す波形に歪が生じる以外にも、戻り光等のクロストークの影響によっても、現在のビットの信号値が表す波形に歪が生じることがある。例えば、全てのビットが0である基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値が表す波形に生じる歪は、クロストーク等のノイズの影響によるものであるので、引き算器403が、他のテストパターン信号から取得された波形から、基準テストパターン信号から取得された波形を減算することにより、このノイズの影響を除外し、現在のビットの前に送信された複数のビットの値に応じて現在のビットの信号値が表す波形に生じる歪の特性である遅延プロファイルが取得される。
遅延プロファイルメモリ404は、引き算器403から供給された遅延プロファイルを記憶する。
制御部405は、受信信号処理部400の各部を制御する。制御部405には、送信側の信号処理部61と通信を行うにあたっての決め事(プロトコル)が記憶されており、プロトコルには、テストパターン信号の送受信のタイミングや、基準テストパターン信号の全てのビットが1または0のいずれであるか、他のテストパターン信号のビットの値の組み合わせなどが設定されている。
例えば、制御部405は、そのプロトコルに基づいて、スイッチ401を制御し、テストパターン信号が、基準テストパターン信号である場合、現在のビットの信号値を、基準パターンメモリ402に供給させ、テストパターン信号が、他のテストパターン信号である場合、現在のビットの信号値を、引き算器403に供給させる。
また、制御部405は、テストパターン信号が、他のテストパターン信号である場合、基準パターンメモリ402に記憶されている信号値、すなわち、基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を引き算器403に供給するように、基準パターンメモリ402を制御する。
図77は、テストパターン信号から得られる波形を示す図で、図77には、スイッチ401から引き算器403に供給される信号値が表す波形(入力波形)と、基準パターンメモリ402に記憶される信号値が表す波形とが示されている。
図77に示されている波形は、基準テストパターン信号として、「0,0,0,0,0」を用い、他のテストパターン信号として、「1,0,0,0,0」、「0,1,0,0,0」、「0,0,1,0,0」、及び「0,0,0,1,0」を用いたときに得られたものである。
図77(a)の左欄には、テストパターン信号「1,0,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示され、右欄には、基準テストパターン信号「0,0,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示されており、これらの波形の差(違い)が、現在のビットの4ビット前に送信されたビット「1」が遅延して伝送されることにより、現在のビットの波形に与える影響である遅延プロファイルである。
また、図77(b)の左欄には、テストパターン信号「0,1,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示され、右欄には、基準テストパターン信号「0,0,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示されており、これらの波形の差が、現在のビットの3ビット前に送信されたビット「1」が遅延して伝送されることにより、現在のビットの波形に与える影響である遅延プロファイルである。
また、図77(c)の左欄には、テストパターン信号「0,0,1,0,0」から得られた現在のビットの波形が示され、右欄には、基準テストパターン信号「0,0,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示されており、これらの波形の差が、現在のビットの2ビット前に送信されたビット「1」が遅延して伝送されることにより、現在のビットの波形に与える影響である遅延プロファイルである。
また、図77(d)の左欄には、テストパターン信号「0,0,0,1,0」から得られた現在のビットの波形が示され、右欄には、基準テストパターン信号「0,0,0,0,0」から得られた現在のビットの波形が示されており、これらの波形の差が、現在のビットの1ビット前に送信されたビット「1」が遅延して伝送されることにより、現在のビットの波形に与える影響である遅延プロファイルである。
図78は、受信信号処理部が遅延プロファイルを取得する処理を説明するフローチャートで、次に、各図を参照して受信信号処理部が遅延プロファイルを取得する処理について説明する。
他の機能基板の信号処理部で処理されて光出力部からテストパターン信号が送信されてくると、ステップS111において、光入力部40はテストパターン信号を受信する。ステップS112においては、ベースバンド信号に復調されたテストパターン信号が表すビットの信号値を取得し、その信号値をスイッチ401に供給する。
ステップS113では、制御部405は、上述したプロトコルに基づいて、他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号が基準テストパターン信号であるか否かを判定する。
ステップS113において、制御部405が、他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号が基準テストパターン信号であると判定した場合、ステップS114に進み、制御部405は、スイッチ401を制御して、光入力部40から供給されたビットの信号値のうち、現在のビットの信号値を基準パターンメモリ402に供給させる。これにより、基準パターンメモリ402は、基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を記憶する。
一方、ステップS113において、制御部405が、他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号が基準テストパターン信号でないと判定した場合、処理はステップS115に進む。
ステップS115において、制御部405は、ステップS114で基準パターンメモリ402に記憶させた信号値、即ち、基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を引き算器403に供給させ、処理はステップS116に進む。
ステップS116において、制御部405は、スイッチ401を制御して、光入力部40から供給されたビットの信号値のうちの現在のビットの信号値、即ち、他のテストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を、引き算器403に供給させる。
引き算器403は、スイッチ401から供給された他のテストパターン信号から取得された現在のビットの信号値から、ステップS115で基準パターンメモリ402から供給された基準テストパターン信号から取得された現在のビットの信号値を減算した値を算出し、その値を遅延プロファイルとして求める。
ステップS116の処理後、処理はステップS117に進み、引き算器403は、ステップS116で求めた遅延プロファイルを遅延プロファイルメモリ404に供給し、遅延プロファイルメモリ404は、遅延プロファイルを記憶する。また、ステップS114の処理後も、処理はステップS117に進み、この場合、基準パターンメモリ402に記憶されている信号値が、基準テストパターン信号から取得された遅延プロファイルとして遅延プロファイルメモリ404に供給される。
ステップS117の処理後、処理はステップS118に進み、制御部405は、上述したプロトコルに基づいて、他の機能基板から送信されてくることが設定されている全てのテストパターン信号が送信されてきたか否かを判定する。
例えば、図77に示したように、基準テストパターン信号として「0,0,0,0,0」が用いられ、他のテストパターン信号として「1,0,0,0,0」、「0,1,0,0,0」、「0,0,1,0,0」、「0,0,0,1,0」が用いられる場合には、制御部405は、これらの5つのテストパターン信号が送信されてきたか否かを判定する。
ステップS118において、制御部405が、全てのテストパターン信号が送信されてきていないと判定した場合、処理はステップS111に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。一方、ステップS118において、制御部405が、全てのテストパターン信号が送信されてきたと判定した場合、処理はステップS119に進む。
ステップS119において、制御部405は、上述したプロトコルに基づいて、他の機能基板から送信されてくることが設定されている全てのテストパターン信号が、所定の回数送信されてきたか否かを判定する。即ち、全てのテストパターン信号の送信を、所定の回数行うことにより、それぞれのテストパターン信号から所定の数の波形が取得される。そして、テストパターン信号毎に得られた所定の数の波形に対して統計的な処理を施すことにより、それぞれのテストパターン信号から求められる遅延プロファイルの精度を向上させることができる。
ステップS119において、制御部405が、全てのテストパターン信号が所定の回数送信されてきていないと判定した場合、処理はステップS111に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。一方、ステップS119において、制御部405が、全てのテストパターン信号が所定の回数送信されてきたと判定した場合、処理は終了される。
以上のように、受信信号処理部400は、テストパターン信号のビットの値に応じて、現在のビットの信号値が表す波形に生じる歪の特性である遅延プロファイルを取得することができる。
図79は、受信信号処理部が取得する遅延プロファイルの例を示す図で、図79では、基準テストパターン信号が「0,0,0,0,0」であり、他のテストパターン信号が「1,0,0,0,0」、「0,1,0,0,0」、「0,0,1,0,0」、「0,0,0,1,0」である場合に、受信信号処理部400が取得した遅延プロファイルの例を示す。
図79では、横軸の左から右に向かって、テストパターン信号「0,0,0,1,0」から得られた遅延プロファイル、テストパターン信号「0,0,1,0,0」から得られた遅延プロファイル、テストパターン信号「0,1,0,0,0」から得られた遅延プロファイル、テストパターン信号「1,0,0,0,0」から得られた遅延プロファイルが、順に示されている。
テストパターン信号「0,0,0,1,0」から得られた遅延プロファイルは、現在のビットの1ビット前にビット「1」が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪の特性である。また、テストパターン信号「0,0,1,0,0」から得られた遅延プロファイルは、現在のビットの2ビット前にビット「1」が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪の特性である。同様に、テストパターン信号「0,1,0,0,0」から得られた遅延プロファイルは、現在のビットの3ビット前にビット「1」が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪の特性であり、テストパターン信号「1,0,0,0,0」から得られた遅延プロファイルは、現在のビットの4ビット前にビット「1」が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪の特性である。
そして、このようにして求められた複数の遅延プロファイルを合成することにより、現在のビットの前に任意の値をとるビットが組み合わされた信号が送信されたときに、その組み合わせに応じて、歪が生じた現在のビットの波形を推定することができる。
図80は、ビットの組み合わせに応じて生じた現在のビットの波形の歪みを説明する図で、例えば、現在のビットの4ビット前から1ビット前までの4ビットの組み合わせが「1,0,1,1」であるとしたときに推定される現在のビットの波形に生じる歪について説明する。
図80では、現在のビットの区間(横軸の時間1500から2000までの区間)が、太枠で囲われており、この太枠で囲われた区間に、4つの遅延プロファイルが表す波形が示されている。
すなわち、太枠で囲われた区間の上から1番目には、テストパターン信号「1,0,0,0,0」から得られた遅延プロファイルが表す波形が示されており、太枠で囲われた区間の上から2番目には、テストパターン信号「0,1,0,0,0」から得られた遅延プロファイルが表す波形を反転させた波形が示されている。ここで、現在のビットの3ビット前には、0が送信されており、現在のビットの3ビット前に1が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪の特性を反転して合成するために、テストパターン信号「0,1,0,0,0」から得られた遅延プロファイルが表す波形が反転されている。
また、太枠で囲われた区間の上から3番目には、テストパターン信号「0,0,1,0,0」から得られた遅延プロファイルが表す波形が示されており、太枠で囲われた区間の上から4番目(一番下)には、テストパターン信号「0,0,0,1,0」から得られた遅延プロファイルが表す波形が示されている。
このように太枠で囲われた区間に示されている4つの波形を合成することで、現在のビットの前に「1,0,1,1」が送信されたときに、現在のビットの波形に生じる歪を推定することができる。
ここで、図80では、現在のビットの前に送信された4ビットが現在のビットの波形に歪を生じさせるとしたときに、4個の遅延プロファイルを合成することで、現在のビットの波形に生じる歪を推定することについて説明したが、例えば、現在のビットの前に送信されたnビットが現在のビットの波形に歪を生じさせるとしたときには、n個の遅延プロファイルを合成することで、現在のビットの波形が推定される。
図81は、現在のビットの前に送信されたnビットが現在のビットの波形に歪を生じさせるとしたときに、n個の遅延プロファイルを合成し、その結果得られる合成波を、現在のビットの波形に生じる歪として推定する演算装置の構成例を示すブロック図である。
図81において演算装置440は、遅延プロファイル供給部441、n個の遅延素子4421乃至442n、n+1個の掛け算器4431乃至443n+1、および足し算器444から構成される。
遅延プロファイル供給部441は、例えば、図74の遅延プロファイルメモリ404に記憶されている遅延プロファイルを読み出す。ここで、遅延プロファイルメモリ404に記憶されている遅延プロファイルであって、現在のビットのnビット前に送信されたビット「1」が遅延して伝送されることにより現在のビットの波形に生じる歪の特性である遅延プロファイルを以下、適宜、nビット前の遅延プロファイルCnという。また、基準テストパターン信号を送信したときに得られた現在のビットの波形を、現在のビットの遅延プロファイルC0という。
そして、遅延プロファイル供給部441は、掛け算器4431に現在のビットの遅延プロファイルC0を供給し、掛け算器4432に1ビット前の遅延プロファイルC1を供給し、掛け算器4433に2ビット前の遅延プロファイルC2を供給し、以下、同様に、掛け算器443n+1にnビット前の遅延プロファイルCnを供給する。
遅延素子4421乃至442nは、そこに入力された値を、1ビットだけ遅延して出力する。即ち、遅延素子4421は、現在のビットの値(1または0)が入力されると、現在のビットの1ビット前のビットの値を、遅延素子4422および掛け算器4432に供給する。遅延素子4422は、遅延素子4421から現在のビットの1ビット前のビットの値が供給されると、現在のビットの2ビット前のビットの値を、遅延素子4423および掛け算器4433に供給する。以下、同様に、遅延素子442nは、遅延素子442n-1から現在のビットのn−1ビット前のビットの値が供給されると、現在のビットのnビット前のビットの値を、掛け算器443n+1に供給する。
掛け算器4431乃至443n+1には、遅延プロファイル供給部441から、遅延プロファイルC0乃至Cnが、それぞれ供給される。また、掛け算器4431には、遅延素子4421に供給される現在のビットの値(1または0)が供給され、掛け算器4432乃至443n+1には、遅延素子4421乃至442nから、現在のビットのnビット前のビットの値が、それぞれ供給される。掛け算器4431乃至443n+1は、それぞれに供給された値を掛け合わせて、足し算器444に供給する。
足し算器444は、掛け算器4431乃至443n+1から供給された値を足し合わせた値を出力する。即ち、足し算器444が出力する値は、(現在のビットの遅延プロファイルC0×現在のビットの値)+(1ビット前の遅延プロファイルC1×現在のビットの1ビット前のビットの値)+(2ビット前の遅延プロファイルC2×現在のビットの2ビット前のビットの値)+・・・・・・+(nビット前の遅延プロファイルCn×現在のビットのnビット前のビットの値)となる。このようにして、足し算器444から出力される値が表す波形、即ち、遅延プロファイルが合成された合成波形が、現在のビットの前に送信されたnビットにより、現在のビットの波形に生じると推定される歪の波形である。
図82は、図81の演算装置440が、遅延プロファイルを合成して推定した歪が生じた現在のビットの波形である合成波形と、図74の受信信号処理部400が受信した信号の現在のビットの波形(実験波形)とを示す図である。
図82では、点線(sim)が合成波形を表し、実線(experiment)が実験波形を表している。図82(a)には、信号「1,1,1,1,0」に基づいて得られた合成波形と実験波形とが示されており、図82(b)には、信号「1,0,0,0,0」に基づいて得られた合成波形と実験波形が示されている。
図82に示すように、演算装置440は、受信信号処理部400が受信した信号の現在のビットの波形である実験波形と、ほぼ一致する合成波形を出力することができる。
ところで、上述したような処理により遅延プロファイルが求められるが、遅延プロファイルは、例えば、最小自乗法を利用した学習によっても求めることができる。
図83は、最小自乗法を利用した学習によって遅延プロファイルを求める受信信号処理部の構成例を示すブロック図である。
図83において、受信信号処理部410は、光入力部40、制御部452、学習対記憶部453、クラス分類部454、及び学習部455を備える。光入力部40は、図74のフォトディテクタ4、トランスインピーダンスアンプ47a及びリミッティングアンプ47b等を備え、テストパターン信号から取得した現在のビットの信号値を、順次、学習対記憶部453に供給する。
制御部452は、図74の制御部405と同様に、他の機能基板と通信を行うためのプロトコルを記憶しており、そのプロトコルに従って、他の機能基板から送信されてくるテストパターン信号と同一の信号を学習対記憶部453に供給する。すなわち、制御部452は、光入力部40が現在のビットの信号値を取得するにあたり他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号を学習対記憶部453に供給する。
学習対記憶部453は、光入力部40から供給された現在のビットの信号値と、制御部452から供給されたテストパターン信号とを対応付けて記憶する。すなわち、学習対記憶部453は、光入力部40が取得した現在のビットの信号値と、その信号値を光入力部40が取得するにあたり他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号とを対応付けて記憶する。そして、学習対記憶部453は、現在のビットの信号値を教師データとして学習部455に供給すると共に、その現在のビットの信号値に対応付けられているテストパターン信号を生徒データとして学習部455に供給する。また、学習対記憶部453は、テストパターン信号をクラス分類部454に供給する。
クラス分類部454は、学習対記憶部453から供給されたテストパターン信号に基づいて、テストパターン信号を所定のクラスに分類するクラス分類を行う。そして、クラス分類部454は、分類したクラスを表すクラスコードを生成し、クラスコードを学習部455に供給する。
例えば、クラス分類部454は、テストパターン信号の現在のビットの値(1または0)に基づいて、2個のクラスコードを生成する。また、クラス分類部454は、例えば、テストパターン信号が5ビットの信号である場合、それぞれのビットの値に基づいて32(=25)個のクラスコードを生成する。
学習部455は、学習対記憶部453から供給された教師データと生徒データとを用いて、クラス分類部454により分類されたクラス毎に、最小自乗法を利用した学習を行い、遅延プロファイルを求める。そして、学習部455は、クラス毎に求めた遅延プロファイルと、そのクラスを表すクラスコードとを対応付けて出力する。
図84は、学習部455が学習に利用する最小自乗法の概念を説明する図、図85は、学習部455が学習に用いる教師データと生徒データを説明する図であり、次に、図84及び図85を参照して、学習部455が行う学習について説明する。
まず、図84を参照して、学習部455が学習に利用する最小自乗法の概念を説明する。図84において、横軸は生徒データを表し、縦軸は教師データを表す。また、図84には、対応付けられた生徒データと教師データにより表される7個の点が示されていると共に、この7個の点に対して、最も良く当てはまる直線が示されている。この直線は、予測値y’、生徒データx、係数a、及び係数bを用いて、次の線形1次予測式で表される。
式(1)により求められる予測値y’と、教師データyとの予測誤差eを、e=y−y’とすると、予測誤差の自乗誤差和Eは、式(2)で表される。
式(2)において、samplesとは、サンプル数のことであり、図84に示す例においては、サンプル数は7個である。
ここで、式(2)の自乗誤差和Eが最小になるように、係数aおよび係数bを求めるのが最小自乗法である。具体的には、式(2)に対して、次式に示すように、係数a及び係数bそれぞれの偏微分値が0になるような演算を行う。
式(3)及び式(4)は1次式であるので、式(3)及び式(4)より係数a及び係数bを求めることができる。
このような最小自乗法を利用して、学習部455は、遅延プロファイルを求める。
次に、図85を参照して、学習部455が学習に用いる教師データと生徒データについて説明する。
図85(a)には、テストパターン信号「1,0,0,0,0」から得られる現在のビットの波形が示されており、図85(b)には、テストパターン信号「1,1,1,1,0」から得られる現在のビットの波形が示されている。図85に示されているように、現在のビットの前に送信されたビットが遅延して伝送される影響がなければ、現在のビットの波形は直線(理想的な波形)となるが、光導波路で伝送されて実際に受信した波形には、歪が生じている。
生徒データとしては、テストパターン信号「X0,X1,X2,X3,X4」の各ビットの値が用いられる。また、教師データとしては、テストパターン信号「X0,X1,X2,X3,X4」を、光導波路で伝送されて実際に受信して得られた現在の波形を、例えば、500点でサンプリングした値「y0,y1,y2・・・y499」が用いられる。
そして、生徒データX0乃至X4から予測値y’を求めるための予測係数をC0,0,C0,1・・・,C1,0,C1,1・・・C499,4とすると、予測値y’を求める予測式は、式(5)で表される。
ここで、予測係数Cの添字であって、カンマの左側の添字(0〜499)は、予測係数が現在のビットの波形の位相位置(500点のサンプリング点)に対応していることを示しており、カンマの右側の添字(0〜4)は、予測係数が生徒データX0乃至X4に対応していることを示している。
そして、式(5)により求められる位相位置nでの予測値yn’と、教師データynとの予測誤差enは、式(6)で表される。
式(6)で求められた予測誤差enを、生徒データX0乃至X4に対して教師データynがサンプリングされた数だけ足し合わせた自乗誤差和Enは、式(7)で表される。
ここで、式(7)において、samplesとは、学習部455に供給された生徒データと教師データとの組数であり、例えば、図85に示したようにテストパターン信号が5ビットの信号であって、現在のビットの波形が500点でサンプリングされたとすると、samplesは、2500となる。
そして、学習部455は、式(7)の自乗誤差和Enの予測係数Cn,iでの偏微分値が全て0になるような演算、すなわち、次式が成り立つように予測係数Cn,iを解く演算を行う。
学習部455は、式(9)について、n=0〜499、およびi=0〜4の計2500個の式が成り立つように予測係数Cn,iを解く演算を行う。ここで、samplesをsとして、式(9)のn=0〜499と、i=0〜4との全てが表されるように、式(9)を行列式で表すと、式(9)は、次式のようになる。
式(10)をA・W=Bと表すとすると、行列Aおよび行列Bには、学習対記憶部453から学習部455に供給される生徒データと教師データが代入されるので、既知であり、予測係数Cn,iで表される行列Wが未知である。
学習部455は、学習対記憶部453から供給される生徒データと教師データを式(10)に代入し(足し込み)、例えば、掃き出し法などの一般的な行列解法を用いて行列Wを求めることで予測係数Cn,i、即ち、遅延プロファイルを得ることができる。
なお、式(10)は、クラス分類部454によりクラス分類された、ある1つのクラスについての式であるので、学習部455は、例えば、クラスがm個に分類されていれば、それぞれのクラスに応じてm個の行列式を用意する必要がある。
また、受信信号処理部410は、予測係数Cn,iの個数を満たし、なおかつ、十分なサンプル数の学習対を用いて演算することにより、予測係数Cn,iを効果的に求めることができるが、学習対のサンプル数が少なくても、行列Wを求めるにあたり、何かしらの拘束条件を用いることにより、予測係数Cn,iを求めることができる。
図86は、受信信号処理部410が最小自乗法を利用した学習によって遅延プロファイルを求める処理を説明するフローチャートで、次に、図83の受信信号処理部410が最小自乗法を利用した学習によって遅延プロファイルを求める処理について説明する。
他の機能基板からテストパターン信号が送信され、光入力部40でテストパターン信号を受信すると、ステップS121において、光入力部40は、受信したテストパターン信号から、現在のビットの信号値、即ち、教師データを取得し、学習対記憶部453に供給する。
ステップS121の処理後、処理はステップS122に進み、制御部452は、光入力部40が現在のビットの信号値を取得するにあたり他の機能基板から送信されてきたテストパターン信号と同一の信号、即ち、生徒データを生成し、学習対記憶部453に供給し、処理はステップS123に進む。
ステップS123において、学習対記憶部453は、ステップS121で光入力部40から供給された教師データと、ステップS122で制御部452から供給された生徒データとを対応付けて記憶する。
ステップS123の処理後、処理はステップS124に進み、学習対記憶部453は、生徒データであるテストパターン信号をクラス分類部454に供給する。クラス分類部454は、テストパターン信号に基づいて、テストパターン信号を所定のクラスに分類するクラス分類を行い、分類したクラスを表すクラスコードを学習部455に供給し、処理はステップS125に進む。
ステップS125において、学習対記憶部453は、対応付けられている生徒データと教師データを学習部455に供給し、学習部455は、生徒データと教師データを、上述した式(10)に代入する。
ステップS125の処理後、ステップS126に進み、学習部455は、学習に用いる全ての生徒データと教師データが供給されたか否かを判定する。
ステップS126において、学習部455が、学習に用いる全ての生徒データと教師データが供給されたと判定した場合、すなわち、生徒データと教師データが代入されるべき行列に、全ての値が代入された場合、処理はステップS127に進み、学習部455が、学習に用いる全ての生徒データと教師データが供給されていないと判定した場合、ステップS121に戻り、以下、上述した処理が繰り返される。
ステップS127において、学習部455は、例えば、掃き出し法などの一般的な行列解法を用いて、式(10)の予測係数Cn,iで表される行列を求め、その結果得られた予測係数を遅延プロファイルとして出力し、処理を終了する。
以上のように、受信信号処理部410は、最小自乗法を利用した学習によって遅延プロファイルを求めることができる。そして、このようにして求められた遅延プロファイルに基づいて、光導波路を伝送される信号の波形に生じる歪を推定することにより、通信システムの検討を精度良く行うことができる。
すなわち、例えば、通信システムの設計時に、信号に生じる歪が大きくなるようなビットの配列では信号が送信されないように検討することができる。
また、光導波路で信号を伝送する受信側の信号処理部が、遅延プロファイルに基づいて、信号の波形に生じる歪を推定し、その結果得られる波形に基づいてビットの値を判定することで、ビットの値が正確に判定され、通信の品質を向上させることができる。また、送信側の信号処理部が、遅延プロファイルに基づいて、受信側の信号処理部が受信する信号の波形に生じる歪を推定して、歪の発生を抑制させるようなプリエンファシス処理を行うことによっても、通信の品質を向上させることができる。
更に、従来の無線通信では、例えば、通信の品質を保証するためにパケットに既知データを挿入する必要があったが、遅延プロファイルに基づいて、通信の品質を向上させることができるので、既知データを挿入する必要がなく、パケットのオーバーヘッドを減らすことができ、高速な通信を行うことができる。
また、複数の機能基板により通信が行われる場合、各機能基板の信号処理部は、それぞれ他の機能基板毎に遅延プロファイルを取得する。例えば、図28の信号処理装置5Dでは、制御基板6X及び信号処理基板6(A〜D)は、各信号処理部が、固有の係数をそれぞれ有し、それぞれ他の機能基板の信号処理部の係数と、その機能基板から信号を受信するときに用いる遅延プロファイルとを対応付けて記憶する。そして、各機能基板は、信号を送信してきた機能基板の係数に対応付けられている遅延プロファイルを用いて通信を行うことで、品質の高い通信を行うことができる。
なお、データもしくは制御信号と同時に同期信号を送受信することで、光の送信タイミングに対する各機能基板での受信の遅延をディレイ調整回路で認識した後、遅延量を自動設定できるようにしても良い。
ここで、本実施の形態においては、基準テストパターン信号として、全てが0のビットの信号を用い、他のテストパターン信号として、いずれかが1つのビットが1である信号を用いるとしたが、例えば、基準テストパターン信号として、全てが1のビットの信号を用い、他のテストパターン信号として、いずれかが1つのビットが0である信号を用いてもよい。
また、1シンボルにより1ビットが伝送される変調方式を用いる装置の他、例えば、QPSK(quadraturephaseshiftkeying)や、8PSK(quadraturephaseshiftkeying)のように、1シンボルにより複数のビットが伝送される変調方式を用いる装置にも適用することができる。
更に、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
1(A〜F)・・・光セレクタ、2(A〜F)・・・光導波路、20(A〜F)・・・第1の導光部、21(A〜F)・・・第2の導光部、22・・・境界面、23(A,B)・・・反射材、24・・・乱反射材、25・・・反射材、26(A,B)・・・粗面、27(A〜D)・・・レンズ部、27E・・・プリズム部、27F・・・レンズ部、3(R,G,B,P)・・・LD、30・・・光出力部、31・・・LD駆動部、32・・・光合波器、33・・・RGB−LED、4(R,G,B,P)・・・フォトディテクタ、40・・・光入力部、41・・・PD駆動部、42(R,G,B,P)・・・光バンドパスフィルタ、43・・・光分岐器、44・・・光分波器、45・・・CCD、46・・・CCD駆動部、5(A〜E)・・・信号処理装置、6・・・機能基板、6X・・・制御基板、6(A〜D)・・・信号処理基板、60・・・移動機構、61・・・信号処理部、63・・・ベース基板、64・・・ソケット、7(A,B)・・・光導波路構造体、70・・・スペーサ、71・・・制御信号伝送層、72・・・データ伝送層