JP5353329B2 - 形状凍結性に優れたプレス成形方法とプレス成形装置並びに同プレス成形装置の製造方法 - Google Patents

形状凍結性に優れたプレス成形方法とプレス成形装置並びに同プレス成形装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プレス成形後の残留応力開放に伴う成形品の変形を低減する形状凍結性に優れたプレス成形方法とプレス成形装置並びに同プレス成形装置の製造方法に関する。
近年、製品の軽量化を図るために、高強度鋼板が多用されている。このような鋼板をプレス成形した後に徐荷すると、残留応力が開放されることにより成形品内部に曲げモーメントが発生し、いわゆるスプリングバック変形やキャンバー変形と称される成形品形状の変形が生じる。
このような変形を抑制するために、従来から下記特許文献1〜3に開示されている方法が行われている。下記特許文献1に開示されている方法は、引張り残留応力が発生する該当部位に最終形状に対し凸形状となるエンボス形状(最終成形品にない形状)を成形し、圧縮変形を発生させた後、この凸形状を圧下プレスし最終形状とするものであり、先に成形した圧縮変形により引張り残留応力を低減し、最終プレスによりこの圧縮変形をなくし、スプリングバック変形を抑制している。
下記特許文献2に開示されている方法は、予め問題となるキャンバー変形に対し過剰な見込み形状を織り込み、問題となる引張り残留応力部に形成する凸エンボスの高さや数量を調整することにより残留応力値を増減させ、目的形状となるようにしている。
下記特許文献3に開示されている方法は、ハットチャンネル型部材の縦壁に所定数、所定形状のビードを形成して形状剛性を高め、成形時の残留応力が開放される際の変形抵抗を増やし、スプリングバック変形を抑制している。
特開2007−222906号公報(段落番号「0012」及び図3〜図6参照) 特開平2004−25273号公報(段落番号「0024」〜「0029」及び図3など参照) 特開平2005−103613号公報(段落番号「0021」「0022」「0029」及び図4参照)
しかし、特許文献1の方法では、予めプレスにより凸形状を形成する工程と、この凸形状をプレスにより潰し成形する工程という2工程有するため、作業性が悪くなり、しかも、完全に製品形状にするには、非常に高い加工荷重と金型剛性が必要となる。実際上凸形状は予測通りには潰れず、この潰しによる応力除去も不十分で、スプリングバック低減の効果も十分得られない。また、凸形状をプレスにより潰し成形する大荷重が、該当部位以外にも加わるので、該当部位以外の部位にて変形が発生し、新たな変形対策として金型調整も必要となる。さらに、大荷重による金型の損耗によりスプリングバック低減効果が経時的に劣化し、金型維持にコストがかかる。
特許文献2の方法は、スプリングバック変形を、主として金型に見込み形状を織り込むことにより対策しており、エンボス形状の付与は、スプリングバック変形の要因となる残留応力の低減ではなく調整であるため、残留応力の絶対値は変わらず、しかもその値も大きいため、材料特性など生産条件が変動した際の残留応力変化量が大きくなり、条件変動による成形品の寸法バラツキが大きくなる。
特許文献3の方法は、ハットチャンネル型部材の縦壁にビードを形成すると、スプリングバック変形に対する抵抗の増大にはなるが、スプリングバック変形の要因である残留応力は低減されていないため、残留応力の絶対値は変わらず、しかもその値も大きく、材料特性など生産条件が変動した際の残留応力変化量も大きくなり、条件変動による成形品寸法のバラツキが大きくなる。また、ビードを凸形状にすると、成形品の剛性は向上するが、スプリングバック変形の要因である残留応力はむしろ増大することになり、凹形状では部品剛性が若干であるが低下するため、剛性向上による効果が少ない。
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、1工程で成形品を成形でき、しかも成形される成形品の形状自体でスプリングバック変形の要因である引張り残留応力を低減する形状凍結性に優れたプレス成形方法とプレス成形装置並びに同プレス成形装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する第1の発明に係るプレス成形方法は、長手方向に湾曲しハットチャ
ンネル断面を有する成形品の成形の途中に、前記成形品の円弧状湾曲部の頂点を含む長手方向所定範囲を反膨出方向に向って加圧変形し、前記成形品成形時に生じた引張り残留応力を低減する圧縮応力を生じさせる工程を有する。上記工程では、ブランク材に円弧状の湾曲部を形成する凸状部が、設けられた一方の型の凸状部内に形成された凹部と、凸状部に対向し湾曲部を形成する凹状部が、設けられた他方の型の凹状部に開設された通孔に、凹部に向って進退可能に設けられた突出部材と、を用い、突出部材を凹部に向って通孔を通じて移動させることを特徴とする。
上記目的を達成する第2の発明に係るプレス成形装置は、同様の成形品を成形するプレス成形装置であり、相対的に近接離間する一対の型に、成形の途中で前記成形品の円弧状湾曲部の頂点から長手方向所定範囲を反膨出方向に向って加圧変形し、前記成形品成形時に生じた引張り残留応力を低減する圧縮応力を生じさせる加圧変形部材を設けている。加圧変形部材は、ブランク材に円弧状の湾曲部を形成する凸状部が設けられた一方の型の凸状部内に形成された凹部と、凸状部に対向し湾曲部を形成する凹状部が設けられた他方の型の凹状部に開設された通孔に、凹部に向って進退可能に設けられた突出部材と、から構成したことを特徴とする。
第1の発明に係るプレス成形方法及び第2の発明に係るプレス成形装置では、長手方向に湾曲したハットチャンネル断面を有する成形品をプレス成形し徐荷したときの、円弧状に膨出変形された湾曲部における応力状態が、長手方向では引張り残留応力が存在し、長手方向に直交する方向でも引張り残留応力が存在しているものの、このプレス成形の途中で、前記成形品の円弧状湾曲部の頂点を含む長手方向所定範囲を反膨出方向に向って加圧変形することとしているので、湾曲部はその頂点を中心として押しつぶされ、湾曲部における応力状態は、長手方向では前記引張りによる残留応力が除去され、むしろ圧縮による残留応力が生じることになり、しかも、長手方向に直交する方向でも前記引張りによる残留応力が除去され、圧縮による残留応力が生じることになる。この結果、1工程のプレス成形で成形品を成形できるのみでなく、成形される成形品の形状自体でスプリングバック変形の要因である残留応力を低減でき、形状凍結性に優れた成形品を得ることができる。また、引張り残留応力を低減する圧縮応力を生じさせる工程では、一方の型に形成された凹部と、他方の型の凹状部に開設された通孔に、進退可能に設けられた突出部材と、から加圧変形部材を構成し、突出部材を凹部に向って通孔を通じて移動させている。そのため、凹溝部を形成するタイミングが取り易くなり、より精度のよい凹溝部を形成することができる。
スプリングバック変形のメカニズムの説明図であり、(A)は成形品を示す斜視図、(B)は(A)のB−B線に沿う矢視断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う矢視断面図である。 一般的なスプリングバック変形の説明図であり、(A)は成形品の湾曲部での変形状態を示す断面説明図、(B)は同長手方向の残留応力状態を仮想円で示す図、(C)は同長手方向に直交する面での変形状態を示す断面説明図、(D)は同長手方向に直交する方向の残留応力状態を仮想円で示す図である。 本発明に係るスプリングバック変形の解消原理の説明図であり、(A)は成形品の湾曲部での変形状態を示す断面説明図、(B)は同長手方向の残留応力状態を仮想円で示す図、(C)は同長手方向に直交する面での変形状態を示す断面説明図、(D)は同長手方向に直交する方向の残留応力状態を仮想円で示す図である。 本発明の実施形態1に係るプレス成形装置の概略断面図である。 図4の5−5線に沿う矢視概略断面図である。 残留応力を低減させる範囲の押し潰し量の説明図で、(A)は長手方向断面の説明図、(B)は長手方向に直交する方向の説明図ある。 凹部と凸部を決定するフローチャートである。 ポンチの底部での残留応力とストロークとの関係を示すグラフである。 凹部深さと残留応力低減効果の関係を示すグラフである。 本発明の実施形態2に係るプレス成形装置の断面図である。 スプリングバック変形量を種々比較した棒グラフである。
<スプリングバック>
まず、図1を参照して、スプリングバック変形のメカニズムを説明する。成形品Sは、例えば、図1(A)に示す自動車のセンターピラーであり、長手方向断面では、図1(B)に示すように、略直状の平坦部S1と円弧状の湾曲部S2とを有し、軸直角断面は、図1(C)に示すようにハットチャンネル断面を有している。
このような成形品Sは、プレス成形したプレス型を離反させ、徐荷すると、湾曲部S2が、図1(B)に示すように、成形時に生じた引張り残留応力σ1(破線矢印)が開放されることにより成形品内部に曲げモーメントMが発生し、破線で示す状態から実線で示す状態に変形する、いわゆるスプリングバック変形やキャンバー変形と称される成形品形状の変形が生じる。
このような成形品Sの湾曲部S2は、長手方向の変形状態は、図2(A)に示すように、円弧状に成形されているのみである。ここにおいて、湾曲部S2の応力状態を解析すれば、下記のようになっている。仮に、この湾曲部S2の一部を抽出し、長手方向の応力状態を仮想円で示すと、図2(B)に矢印で示すように、長手方向では比較的大きな引張り残留応力σ1が生じており、長手方向に直交する方向では小さな引張り残留応力σ2となっている。
また、長手方向に直交する面の中央部での変形状態は、図2(C)に示すような平坦なものである。長手方向に直交する方向の残留応力状態を仮想円で示すと、図2(D)に矢印で示すように、長手方向では比較的大きな引張り残留応力σ1が生じており、長手方向に直交する方向では小さな引張り残留応力σ2となっている。
したがって、プレス成形した後にプレス型を離反させ、徐荷すると、比較的大きな長手方向の引張り残留応力σ1によりスプリングバック変形が生じる。
この変形は、湾曲部S2に生じる引張り残留応力σ1を低減すればかなり抑制できることから、本発明者らは、引張り残留応力σ1の逆作用となる圧縮応力を湾曲部S2に加えることに着目した。つまり、本発明に係る成形品Sは、図3(A)に示すように、湾曲部S2を成形するとき生じる引張り残留応力σ1を、この成形時に解消する圧縮応力を生じさせるように、湾曲部S2の一部に、長手方向に所定長Lだけ伸延しかつ長手方向に直交する方向にはある程度の幅Wを有する凹溝部Omを形成することにより前記圧縮応力を生じさせることに着目した。
このような凹溝部Omを形成したときの底部に関して、前述と同様の長手方向の残留応力状態を仮想円で示せば、図3(B)に矢印で示すように、比較的大きな引張り残留応力σ1に対向する圧縮応力σ3が生じており、大きな引張り残留応力σ1が圧縮応力σ3により抑制されている。また、長手方向に直交する面の中央部での変形状態は、図3(C)に示すように、凹溝部Omの形成により凹形状となっている。長手方向に直交する方向の残留応力状態を仮想円で示すと、図3(D)に矢印で示すように、長手方向では比較的小さな引張り残留応力σ1が生じており、長手方向に直交する方向では大きな引張り残留応力σ2となっているが、ここでも引張り残留応力σ1に対向する圧縮応力σ3が生じており、引張り残留応力σ1が圧縮応力σ3により抑制されている。
したがって、湾曲部S2をプレス成形するとき、湾曲部S2の一部に長手方向に、所定長Lだけ伸延しかつ長手方向に直交する方向にはある程度の幅Wを有する凹溝部Omを形成すれば、離型し、徐荷した後であっても、引張り残留応力σ1が圧縮応力σ3により抑制され、スプリングバック変形が低減することになる。
<実施の形態1>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態のプレス成形装置は、図4及び図5に概略的に示すように、ポンチ1(下型)と、ポンチ1に対し近接離間するダイ2(上型)と、ダイ2との間でブランク材3の周縁部を挟持するブランクホルダ4とを有している。
特に、本実施形態では、両型1,2により高強度鋼板などのような比較的成形しにくいブランク材3をスプリングバック変形が低減するように成形するために、前述した引張り残留応力σ1を抑制する圧縮応力σ3を生じさせる加圧変形部材6が両型1,2に設けられている。なお、ここで成形する成形品Sは、例えば、図1(A)に示す自動車のセンターピラーのような、長手方向に沿って略直状の平坦部S1と円弧状の湾曲部S2とを有し、軸直角断面がハットチャンネル断面を有するものであるが、これのみでなく、フロントピラー、各種メンバーなどでもよく、また、形成される湾曲部S2が一部のみでなく長手方向全体に渡るものであってもよい。このため、図1に示す型面は、単純な円弧状で表している。
さらに詳述する。ポンチ1は、ブランク材3を膨出成形し、円弧状の湾曲部S2を形成する凸状部5を有しているが、凸状部5の範囲内であってその頂部には、加圧変形部材6の一方である凹部6aが形成されている。
ダイ2は、凸状部5に対応する凹状部7を有しているが、凹状部7の範囲内であってその頂部には、加圧変形部材6の他方である凸部6bが形成されている。
圧縮応力σ3を有効に生じさせる凹部6aと凸部6bの形状を定める方法、つまりプレス成形装置の製造方法として使用することができるものであるが、下記の方法により行っている。
図6において、
L:FEM解析より決定される、湾曲部S2に生じる引張り残留応力σ1を低減する部分(応力低減部)の円弧状長さ(成形予定品から定められる値で既知である)
Pmax:引張り残留応力σ1のピーク位置(同様に既知の値である)
ρ0:応力低減部の曲率半径(同様に既知の値である)
θ0:応力低減部の中心角(同様に既知の値である)
H:引張り残留応力σ1のピーク位置Pmaxでの凹溝部Omの深さ
とする。
成形品Sの湾曲部S2の形状及び凹溝部Omの底面形状が円弧で近似できると仮定すれば、凹部6aと凸部6bにより成形された凹溝部Omの底部での圧縮量(△L)は、凹溝部Omの形成による長手方向での幾何学的圧縮量(△Lc)から湾曲部S2の形成に伴いブランク材3が引張り応力により成長する伸び量(△Le)を引いたものである。
したがって、
Figure 0005353329
で表される。△Lcは、図6(A)から幾何学的に求められ、△Leは中心線O−Oが凹溝部Omの底面部分と交差する点からPmaxと交差する点まで(深さH)の△Lの積分値から求められる。
△Leを、図6(A)から求めると、
Figure 0005353329
Figure 0005353329
この式1、式2及び式3から凹溝部Omの底部での圧縮量(△L)を最大とする凹溝部Omの深さHを求めると、この深さHと実際に形成すべき成形品Sの形状から最も好ましい引張り残留応力σ1を解消できる凹部6aと凸部6bの形状を特定できることになる。
具体的に凹部6aと凸部6bの形状を定める方法を、図7に示すフローチャートに基づき説明する。まず、湾曲部S2のみが形成され、前述した凹溝部Omが形成されていないブランク材から、スプリングバック量のFEM解析を行う。
FEM解析結果から、湾曲部S2の応力低減部の円弧状長さ(L)と、引張り残留応力σ1のピーク位置(Pmax)を決定する(ステップ1)。次に、応力低減部の曲率半径(ρ0)と中心角(2θ0)を測定する(ステップ2)。
これらデータから数式2に基づき、凹溝部Omの深さ(H)での長手方向の幾何学的圧縮量(△Lc)を計算する(ステップ3)。
一方、湾曲部S2が形成されたブランク材3のFEM解析から、プレス成形時の湾曲部S2の形成に伴うブランク材3の引張り応力成長量(伸び量)(△Le)を求める(ステップ4)。
幾何学的圧縮量(△Lc)から引張り応力成長量(伸び量)(△Le)を減算し、凹溝部Omの底部に生じる正味圧縮量(△L=△Lc−△Le)の最大値を求める(ステップ5)。最大値でなければ、ステップ4に戻り、再度幾何学的圧縮量(△Lc)と引張り応力成長量(伸び量)(△Le)を求める。最大値に達すると、この最大値に対応する深さ(H)の値を凹溝部Omの底部深さ(H)とする。
凹溝部Omの底部深さ(H)に基づき、成形品Sの形状を考慮しつつポンチ1側の凹部5とダイ2側の凸部7の形状を決定する(ステップ6)。
ここにおいて、凹溝部Omの底部深さ(H)に関しては、湾曲部S2の弦に相当する直線T(図6(A)参照)の状態が理論的には最も圧縮効果が高いが、底部深さ(H)が深いと、凸部6bの下端が湾曲部S2の上面に接する時点、つまり、凹溝部Omの成形を開始する時期が早くなるため、ポンチ1の凸状部5がブランク材3を膨出成形するときの引張り残留応力σ1の成長が著しい成形中盤では、凹溝部Omの形成による圧縮効果が相殺されることになる。
この点に関し、ポンチ1とブランク材3が当接するポンチ1の底部において生じる引張り残留応力σ1とプレスのストロークの関係を示す図8を参照して説明する。図8における実線aは、圧縮応力を加えることのない一般的な成形における湾曲部S2が形成されるポンチ1の底部の引張り残留応力σ1を示すもので、次第に成長するのみであり、引張り残留応力σ1を低減させるものはない。
これに対し、凹溝部Omを形成する場合には、プレス成形装置による加圧が下死点に近い位置(凹溝部Omの深さが深い位置)、つまりプレス加工の終期(プレスのストロークを示す横軸における点Bの位置(プレスのストロークに対する引張り残留応力の増加量が減少開始後、著しく減少し始める位置)になると、一点鎖線bで示すように引張り残留応力σ1は、凹溝部Omの形成に伴って生じる圧縮応力により次第に打ち消されて減少し、凹溝部Omによる圧縮効果が向上する。
ところが、プレス成形装置による加圧が下死点より離れた位置(凹溝部Omの深さが浅い位置)、つまりプレス加工の早い段階(プレスのストロークの点Cの位置)で凹溝部Omを形成すると、一点鎖線cで示すように引張り残留応力σ1は次第に増加することになる。急激に増大する引張り残留応力σ1に圧縮応力が吸収されることになるからである。そして、最終的には、前述の加工の終期(プレスのストロークの点B)の場合よりも引張り残留応力σ1は次第に増大し、途中で交差(交点X)することになり、凹溝部Omの形成による圧縮効果が有効に作用しないことになる。
したがって、本実施形態では、プレス成形装置の下死点に近い、加工の終期(プレスのストロークの点B)で、凹溝部Omの形成を開始することとしている。
最後に、この形状でのスプリングバック量のFEM解析を行い(ステップ7)、最大効果であることを確認する(ステップ8)。
効果の確認に当っては、凹溝部Omの底部深さ(H)が深いほど成形品Sの剛性は低下する傾向となるため、剛性低下分の影響を確認する点と、FEM解析の結果から求めた引張り残留応力成長量から、圧縮効果が最も高くなるような凹溝部Omの底部深さ(H)の値かを確認する。
本実施形態に関する引張り残留応力の低減効果と凹溝部Omの底部深さ(H)との関係を調べた実験結果を図9に示す。この実験結果からすれば、凹溝部Omが形成されていない一般的なものの場合は、引張り残留応力値が「e」という高い値を示し、凹溝部Omの底部深さ(H)が、次第に深くなるほど引張り残留応力が低減する。しかし、凹溝部Omの底部深さ(H)が、14mmを超えると、再度引張り残留応力値が高くなることが判明している。したがって、凹溝部Omの底部深さ(H)は、7mm〜13mmの範囲が好ましい。
次に、プレス成形方法を説明する。
図4に示すように、ポンチ1とダイ2の間にブランク材3をセットし、ダイ2を下降すると、まず、ブランクホルダ4がブランク材3の周縁部を挟持する。そして、さらにダイ2が下降すると、ポンチ1との間でブランク材3に対し略直状の平坦部S1と円弧状の湾曲部S2を成形する加工を行う。この成形加工において、加工初期から中期までは、ダイ2の凹状部7がポンチ1の凸状部5と共にブランク材3に作用し、成形品Sを形成する。特に、加工中期では、引張り残留応力σ1の成長が著しく、ブランク材3は激しく引き伸ばされて成形され、湾曲部S2も成形される。なお、この時点では、まだ、凸部6bは、ブランク材3に接しておらず、凹溝部Omは形成されておらず、湾曲部S2では引っ張り応力が生じている。
そして、ダイ2とポンチ1による成形が終期になると、ダイ2の凸部6bが湾曲部S2を加圧し、凹溝部Omの形成を開始する。これにより湾曲部S2が圧縮され、引張り残留応力σ1が徐々に低減され、ダイ2の凸部6bがポンチ1の凹部6aに入り込み、凹溝部Omが形成されると、引張り残留応力σ1を最大限低減することになり、凹溝部Omを有する成形品が1ストロークで成形されることになる。
この結果、ダイ2を上昇してポンチ1から外し、成形品Sから徐荷しても、引張り残留応力が低減されているので、スプリングバック変形が生じることはなく、所望の精度を有する所定形状を持った、形状凍結性に優れた成形品となる。
<実施の形態2>
前述したプレス成形装置の加圧変形部材6は、ポンチ1とダイ2に直接凹部6aと凸部6bを形成したものであるが、本発明は、これのみでなく、図10に示すように、凸部6bに相当するものをダイ2とは別体に形成してもよい。本実施形態の加圧部材6は、ダイ2上にばね20を介して載置された本体21と、本体21からダイ2に開設された通孔22を挿通して垂下された突出部材6cとから構成されている。
このようにすれば、凹溝部Omの形成を加工終期に行う場合に、突出部材6cを独立して動作すればよく、タイミングを取り易く、より精度のよい凹溝部Omを形成することができる。
上述した実施形態は、下記のような効果を奏する。
・本実施形態のプレス成形方法とプレス成形装置では、プレス成形の終期に、成形品の円弧状湾曲部を反膨出方向に向って加圧変形し凹溝部を形成するので、長手方向に湾曲したハットチャンネル断面を有する成形品をプレス成形し徐荷したとき、円弧状に膨出変形された湾曲部はその頂点を中心として押しつぶされる結果、この湾曲部における長手方向の応力状態は、引張り残留応力が除去され、圧縮による残留応力が生じ、また、長手方向に直交する方向の応力状態も引張り残留応力が解消される。したがって、成形される成形品の形状自体でスプリングバック変形の要因である残留応力を低減し、形状凍結性に優れた成形品となる。
図11は、凹溝部を形成していない成形品、従来のビードを形成した成形品、実施形態1に係る成形品、実施形態2に係る成形品のおける各スプリングバック変形量を比較した棒グラフである。このグラフより明らかなように、本発明に係る成形品では、スプリングバック量(mm)が4割〜5割低減することが判明しており、大幅に改善されていることが分かる。
・本実施形態のプレス成形装置では、湾曲部を反膨出方向に向って加圧変形する加圧変形部材を、一方の型の凸状部内に形成された凹部と、他方の型の凹状部内に形成された凸部とから構成したので、1工程のプレス成形で成形品を成形でき、作業性のよいものとなる。
・前記凸部の端面が前記湾曲部の頂点部分を中心とする前記長手方向所定範囲を加圧変形し凹溝部を形成すれば、加圧変形の開始時点の設定が容易になり、さらに作業性が向上する。
・前記加圧変形部材を、前記一方の型に形成された凹部と、他方の型の前記凹状部に開設された通孔に進退可能に設けられた突出部材と、から構成すれば、凹溝部を形成するタイミングが取り易く、より精度のよい凹溝部を形成することができる。
・実施形態のプレス成形装置の製造方法では、前記凹部と凸部の形状を、湾曲部が形成されたブランク材によりスプリングバック量のFEM解析を行い、引張り残留応力が発生している箇所を求め、引張り残留応力のピーク位置に形成した前記凹溝部の底部(深さ:H)における長手方向での幾何学的圧縮量(△Lc)を計算すると共に、前記湾曲部の形成に伴うブランク材の伸び量(△Le)をFEM解析から求め、前記△Lcから△Leを減算することにより正味圧縮量を算出し、この正味圧縮量(△L)が最大となる前記凹溝部の深さ(Hopt)を決定することから定めるようにしたので、形状凍結性に優れた成形品を得るためのプレス型を確実に成形することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、上述した実施形態の型は、上下方向に相対的に移動するダイとポンチであるが、これのみに限定されるものではなく、相対的に移動する一対の型であればどのようなものであってもよい。
本発明は、プレス成形の終期に円弧状湾曲部を加圧変形し凹溝部を形成するのみで形状凍結性に優れた成形品が得られる。
1…ポンチ(他方の型)、
2…ダイ(一方の型)、
5…凸状部、
6…加圧部材、
6a…凹部、
6b…凸部、
6c…突出部材、
7…凹状部、
22…通孔、
H…凹溝部の底部深さ、
L…頂点部分を中心とする前記長手方向所定範囲、
△Lc…長手方向での幾何学的圧縮量、
△Le…ブランク材の伸び量、
△L…正味圧縮量、
Om…凹溝部、
Pmax…湾曲部の頂点、
S…成形品、
S2…湾曲部、
σ1…引張り残留応力、
σ3…圧縮応力。

Claims (4)

  1. 長手方向に湾曲しハット断面を有する成形品を成形するプレス成形方法であって、成形の途中で、前記成形品の円弧状湾曲部を反膨出方向に向って加圧変形し、前記円弧状湾曲部の成形に伴って発生した引張り残留応力を低減する圧縮応力を生じさせる工程を有し、
    前記工程では、ブランク材に円弧状の湾曲部を形成する凸状部が、設けられた一方の型の前記凸状部内に形成された凹部と、前記凸状部に対向し前記湾曲部を形成する凹状部が、設けられた他方の型の前記凹状部に開設された通孔に、前記凹部に向って進退可能に設けられた突出部材と、を用い、前記突出部材を前記凹部に向って前記通孔を通じて移動させることを特徴とするプレス成形方法。
  2. 前記成形の途中とは、成形の完了の前であって、前記引張り残留応力のプレスストロークに対する増加量が減少し始めた後であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。
  3. 前記成形の途中とは、成形の終期であることを特徴とする請求項2に記載のプレス成形方法。
  4. 長手方向に湾曲しハット断面を有する成形品を成形するプレス成形装置であって、相対的に近接離間する一対の型に、成形の途中で、前記成形品の円弧状湾曲部を反膨出方向に向って加圧変形し、前記円弧状湾曲部の成形に伴って発生した引張り残留応力を低減する圧縮応力を生じさせる加圧変形部材を設け
    前記加圧変形部材は、ブランク材に円弧状の湾曲部を形成する凸状部が、設けられた一方の型の前記凸状部内に形成された凹部と、前記凸状部に対向し前記湾曲部を形成する凹状部が、設けられた他方の型の前記凹状部に開設された通孔に、前記凹部に向って進退可能に設けられた突出部材と、から構成したことを特徴とするプレス成形装置。
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