JP5268715B2 - コンロッドの製造方法及びこれに用いるコイニング型装置 - Google Patents
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Description
同図において10はコンロッドで、このコンロッド10は、中心部に大端孔14を有する大端部12,中心部に小端孔18を有する小端部16、及び大端部12と小端部16とを連結する桿部20とを有している。
図11はその粗形状出しのための熱間鍛造の工程の一例を示している。
ここでは先ず加熱した棒状の素材(鋼材)1の長手方向中間部を潰す加工が工程(I)にて行われ、次いで工程(II)において更に全体が扁平形状に変形せしめられる(工程(II))。
その後潰しの工程(III)、荒打の工程(IV)に続いて本成形の工程(V)が行われ、ここにおいてコンロッドの粗形状出しが行われる。
続いて工程(VI)で大端孔14,小端孔18の孔抜加工が行われ、更にバリ抜きの工程(VII)が行われて、バリ2が除去され、熱間鍛造材10Bを得る。
尚、工程(V)の本成形では上成形型と下成形型とでワークを上下に挟圧してプレスし、成形を行う。
この熱間鍛造において、バリ抜き後のワークの温度は約1000℃である。
鍛造加工による従来のコンロッドの製造方法では、この熱間鍛造後の冷却過程においてコイニング加工が行われる。
コンロッド10は、桿部20に強い座屈強度が求められ、そのため従来にあっては桿部20が断面略I字形状に形成され、その形状による効果によって桿部20に座屈強度が付与されている。
コイニング加工では、更に歪み付与による加工硬化によって桿部20の強化が図られる。
図12(A)は熱間鍛造後の粗形材、即ち熱間鍛造材10Bにおける桿部20Bの横断面形状を示している。
図に示しているように熱間鍛造材10Bは、図11の工程(V)の本成形が、上成形型と下成形型とでワークを上下に挟圧し成形するものであることから、上成形型,下成形型の抜け勾配に起因して、リブ22Bの外側面に上下両端から中央に向うにつれて左右外方への突出量が増大する形状の膨出部26Bを有している。
図中28Bはその膨出部26Bの傾斜形状をなす傾斜面を示している。
図中32Bはその湾曲部30Bの曲面を表している。
ここで傾斜面28Bの角度θは例えば7〜10°,曲面32Bは例えば半径が5mmの曲面である。
またこのコイニング加工においても、上成形型34と下成形型36の脱型のために、コイニング加工後においてリブ22Aの外側面に図12(C)中斜線で示す膨出部26Aを有し、またリブ22Aの内側に湾曲部30Aを有する。
またその他に、このようなバリ3の発生及び膨出部26Aや湾曲部30Aによって、桿部20に付与される歪みが少なくなり、従ってその歪みによる加工硬化の程度が小となり、桿部20を十分に強化することができない。
但しこれら特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示のものでは本発明の課題を解決することはできず、これら特許文献に開示のものは本発明とは別異のものである。
そしてそのことにより材料の使用量を少なくでき、コストを低減することができるとともに、桿部の小型化によってコンロッドの軽量化を図ることができる。
また横断面の断面積を同一とする場合において、用いる材料としてより強度の小さい安価な材料を用いることが可能となり、材料に要するコストを低減することができる。
そのことによって、桿部の断面2次モーメントを効果的に増大させることができ、また加工による歪みを効果的に且つ均等に桿部に付与することができる。
また加工による歪みを均等に且つ多く付与し得て、加工硬化による強度向上をより一層高めることができる。
図1において、10は本実施形態の製造方法にて得られるコンロッドの形状を示している。
図において10はコンロッドで、12は中心部に円形の大端孔14を有する大端部、16は中心部に円形の小端孔18を有する小端部、20は大端部12と小端部16とを連結する桿部である。
またその付根部は、リブ22の上下両端から連結部24に向けて左右内方へ湾曲形状をなしている。但しこの湾曲部30は形状の小さいもので、表面の曲面29は半径Rの小さな(ここでは3mm)円弧形状をなしている。
一方連結部24は、上面及び下面が左右方向にストレート形状をなす板状をなしている。
尚コイニング加工は、熱間鍛造後の冷却過程において行う。特にコイニング加工により強度を効果的に高強度とできる温度は350℃〜600℃の範囲内である。
図2〜図6に、そのコイニング加工に際して用いられるコイニング型装置の構成が示されている。
上保持型42には、桿部20の成形用の上成形型46と、大端孔14内に下向きに嵌入して大端孔14を位置決めし拘束する上ホールドピン48,小端孔18内に下向きに嵌入して小端孔18を位置決めし拘束する上ホールドピン50が、それぞれ下向きに保持されている。
一対の側方成形型58,60は、桿部20成形のための上成形型46,下成形型52とともに、型締めによって桿部20の横断面において内側を密閉閉塞する。
更に側方成形型58,60,端部成形型62,64,上成形型46,下成形型52は、型締状態で全体が内側に密閉閉塞された成形空間70(図2参照)を形成する。
尚、熱間鍛造材10Bの形状は図12(A)に示したものと同様の形状である。
このとき、上保持型42に保持された上成形型46及び上ホールドピン48,50がともに下降する。
この図7(B)に示した桿部20の横断面形状は、図1の部分拡大図に示した桿部20の横断面形状と同形状である。
またリブ22における連結部24の付根部が、内表面が部分的に所定曲率の円弧形状の曲面29をなす湾曲部30として成形される。
上成形型46,下成形型52及び一対の側方成形型58,60のそれぞれの成形面の形状がそのような形状とされている。
その後、上成形型46及び上ホールドピン48,50が上保持型42とともに上昇せしめられることで、加工後のコンロッド10が取り出される(図6参照)。
例えばその際の桿部20の横断面の加工率は約10%程度である。
尚このとき、従来の加工方法と異なって桿部20にはバリを発生させることはない。
同様に下ホールドピン56,上ホールドピン50も、それぞれが半分づつ小端孔18内に嵌入し、小端孔18の上下中央位置でそれぞれが互いに当接する。
詳しくは、1200℃で図11の工程(I)〜(V)までの熱間鍛造加工及びその後の工程(VI),(VII)の穴抜き,バリ抜きを行った。
その後自然放冷による冷却過程において、600℃で且つ桿部20に対する加工率10%でコイニング加工を行い、その後室温まで自然放冷した。
また比較として、上成形型34と下成形型36とだけを用いて桿部20を成形する、従来のコイニング型装置を用いたコイニング加工も実施した。
また本実施例のコンロッド10,比較例のコンロッド10Aの何れも大端部12,小端部16の形状等、桿部以外の断面形状は同じである。
結果が表1に示してある。
尚表1中の断面2次モーメントの値は、比較例のコンロッド10Aの値を1としたときの相対値で示している。
表1に示しているように、本実施例のコンロッド10は、比較例のコンロッド10Aに対して座屈強度の値が50MPa程度上昇している。
尚、ここでは成形型の変更に基づく形状の違いによる効果をより明確化するために、加工硬化の影響が少ない600℃で上記のコイニング加工を行っている。
図9(A)に示しているように大端孔14,小端孔18のそれぞれに固定ピン72,74を嵌合状態に取り付け、そして固定ピン72,74を一定の速度で接近移動させて桿部20,20Aを圧縮変形させ、その際に出力される荷重と変位の値から、図9(B)の変位−荷重曲線が屈曲する点での荷重を求めてこれを座屈荷重とし、その荷重を桿部20,20Aの断面積で除した値を座屈強度(応力)として求めた。
例えば上記実施形態ではリブ22の外側面の形状を上下方向にストレート形状となしているが、場合によって上下方向の中間部が左右方向の内方に窪んだ形状にコイニング加工を施すことも可能である。或いはその他様々な形状で上記の上,下成形型及び一対の左右側方成形型にて桿部20をコイニング加工することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様,形態で実施,構成可能である。
10B 熱間鍛造材
12 大端部
14 大端孔
16 小端部
18 小端孔
20 桿部
22 リブ
24 連結部
40 コイニング型装置
46 上成形型
52 下成形型
58,60 側方成形型
70 成形空間
Claims (5)
- 大端部と小端部及びそれら大端部と小端部とを連結する桿部を有するコンロッドの粗形状を先ず熱間鍛造により形成した後、該粗形状をなす熱間鍛造材にコイニング加工を施してコンロッドを製造するコンロッドの製造方法において、
上保持型と、下保持型とを有し、
該上保持型には、前記桿部成形用の上成形型を備え、
また該下保持型には、該上成形型に対して前記大端部,小端部の各孔の軸線方向に相対移動可能に上下に対向して配置された前記桿部成形用の下成形型、該桿部と該大端部及び該小端部とをそれぞれ成形するための、左右に対向して相対移動可能に配置された左,右一対の側方成形型、該大端部の前後方向端部成形用の端部成形型、及び該小端部の前後方向端部成形用の端部成形型を備え、
該側方成形型及び該端部成形型の外面に形成した雄テーパ面と、同じ傾斜角度で前記上保持型に形成した雌テーパ面とによる案内作用で、該一対の側方成形型及び該端部成形型を該上保持型の下降運動に連動してそれぞれ内方に同時に移動させるコイニング型装置を用いて、
前記上成形型,下成形型、及び左,右一対の前記側方成形型で、全体が閉状態で内側を密閉閉塞する前記桿部のコイニング型を構成し、
前記コイニング加工に際して前記上,下成形型により前記粗形状をなす熱間鍛造材の前記桿部を上下に挟圧するとともに、該上下の挟圧に連動して、前記一対の側方成形型にて該桿部を左右に挟圧して該桿部の外側面を左右方向の内方に加圧変形させ、該桿部を上下及び左右の4面から同時に加圧して、該加圧に伴う変形により該桿部の形状矯正及び歪み付与による加工硬化を行うことを特徴とするコンロッドの製造方法。 - 請求項1において、前記熱間鍛造材における粗形状が、左右端部で上下に突出した左右一対のリブと、該リブを上下中間部で左右方向に連結する連結部とを有し、且つ該リブの左右の外側面が上下両端から上下中間部に向うにつれて左右外方向への突出量を増大する形状の膨出形状をなしており、
前記コイニング加工に際して、前記一対の側方成形型が該膨出部を左右方向内方に加圧し、成形することを特徴とするコンロッドの製造方法。 - 請求項2において、前記一対の側方成形型は、前記膨出部を有する前記リブの外側面を上下方向のストレート形状に成形することを特徴とするコンロッドの製造方法。
- 請求項2,3の何れかにおいて、前記熱間鍛造材の粗形状が、前記リブの上下両端から前記連結部に向けて左右内方へ湾曲形状をなしており、前記コイニング加工に際して、前記上成形型と下成形型とが該リブの上下両端部を上下方向に圧縮変形させるとともに、前記湾曲形状の湾曲部を加圧し変形させて前記連結部を左右方向の板状に、該リブの内側面を該連結部への付根部を除いて上下方向のストレート形状に成形することを特徴とするコンロッドの製造方法。
- 請求項1〜4の何れかの前記コイニング加工に際して用いられるコイニング型装置であって、
上保持型と、下保持型とを有し、
該上保持型には、前記桿部成形用の上成形型を備え、
また該下保持型には、該上成形型に対して前記大端部,小端部の各孔の軸線方向に相対移動可能に上下に対向して配置された前記桿部成形用の下成形型、該桿部と該大端部及び該小端部とをそれぞれ成形するための、左右に対向して相対移動可能に配置された左,右一対の側方成形型、該大端部の前後方向端部成形用の端部成形型、及び該小端部の前後方向端部成形用の端部成形型を備え、
該側方成形型及び該端部成形型の外面に形成した雄テーパ面と、同じ傾斜角度で前記上保持型に形成した雌テーパ面とによる案内作用で、該一対の側方成形型及び該端部成形型を該上保持型の下降運動に連動してそれぞれ内方に同時に移動させるものとなしてあって、
前記上成形型,下成形型、及び左,右一対の前記側方成形型で、全体が閉状態で内側を密閉閉塞する前記桿部のコイニング型を構成しており、
前記コイニング加工に際して前記上,下成形型により前記粗形状をなす熱間鍛造材の前記桿部を上下に挟圧するとともに、該上下の挟圧に連動して、前記一対の側方成形型にて該桿部を左右に挟圧して該桿部の外側面を左右方向の内方に加圧変形させ、該桿部を上下及び左右の4面から同時に加圧して、該加圧に伴う変形により該桿部の形状矯正及び歪み付与による加工硬化を行うようになしてあることを特徴とするコイニング型装置。
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