JP5352007B2 - シールリング - Google Patents

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Description

本発明は、シールリングに関し、特に、自動車の自動変速機等の油圧機器に用いられるシールリングに関する。
近年、自動車の燃費向上を図るため、自動変速機の駆動損失の低減が求められている。自動変速機には、油圧シールを目的としてシールリングが装着されるが、シールリングのフリクションロスは自動変速機の駆動損失につながる。そのため、シールリングのフリクションの低減が重要な課題となっている。また、自動変速機のオイルポンプの容量は、駆動損失の中で大きなウエイトを占めるため、シールリングからのオイル漏れ量を低減し、オイルポンプを小容量化することが望まれている。このように、自動変速機の駆動損失を低減し、自動車の燃費を向上させるため、シールリングには低フリクション及び低リーク機能が要求されている。
図1にシールリングを用いた油圧回路の基本構造を示す。シールリング1は、軸2の外周面の油圧通路3の軸方向両側に形成された軸溝(リング溝)4に装着される。油圧通路3から供給される作動油をシールリングの受圧側面11と内周面12で受け、シールリングの外周面13がハウジング5の内面と接触し、シールリングの接触側面14が軸溝4の側面と接触することにより、油圧をシールする。一般的には軸2が回転し、ハウジング5が固定されるが、その逆の組み合わせもある。
シールリングのフリクション(フリクションロス)を低減するためには、通常、摺動主体面となるシールリングの接触側面をリング溝に押し付ける受圧荷重を低減する手法が採用されている。具体的には、シールリングの接触側面とリング溝との間に供給油圧が作用する断面形状を有するシールリングを採用して、キャンセル荷重の作用により受圧荷重を低減させている。
特許文献1には、シールリングの側面を、外周側から内周側に向かって軸方向幅が小さくなるようなテーパ形状とすることにより、シールリング側面とリング溝との間にキャンセル荷重を発生させて、受圧荷重の低減を図る方法が記載されている。側面テーパ形状は、受圧荷重を大幅に低減することができ、現状で最もフリクションが小さいシールリングの形状として知られている。
また、特許文献2には、図2(A)に示すように、少なくとも接触側面の内周側に周方向に離間して形成された凹部(ポケット)6と凹部6間に配置された柱部7を有するシールリングが記載されている。図2(B)及び(C)に示すように、凹部6は、内周方向に向かいシールリングの軸方向幅(厚さ)が薄くなるように設けられた最深傾斜部51と、最深傾斜部51の周方向両側に位置し、隣接する柱部7の最も内周側の点に向かって収束する収束部52からなる。この構成では、シールリングの回転により、凹部6内に満たされた油を収束部52の斜面で絞り込むことにより発生する揚力60と、接触側面の凹部6に油圧が作用し、押し付け荷重を低減させる効果(キャンセル圧61)によりフリクションが低減する。さらに、特許文献2のシールリングでは、図2(D)に示すように、シールリングの側面がリング溝と面で摺接するため、合口隙間の漏れ流路が形成されず、低リーク特性が得られる。
特許文献1のシールリングでは、シールリングの側面とリング溝の摺接が線接触となり、摺動径がシールリングの合口隙間上に位置するため、合口隙間から油の漏れ(リーク)が発生するという問題がある。一方、特許文献2の凹部を採用することにより、フリクションは低減するが、特許文献1のシールリングには及ばす、さらなるフリクションの低減が求められている。
特許第3437312号公報 WO2004/090390
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低フリクション特性と低リーク特性を併せもち、自動変速機の駆動損失を低減し、自動車の燃費向上に貢献し得るシールリングを提供することを目的とする。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、接触側面の内周側に周方向に離間して凹部が形成され、その間に柱部が配置されたシールリングにおいて、凹部の内周側に内壁、及び内周面に向かって開口する油導入孔を設けることにより、フリクションが低減することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明のシールリングは、軸の外周面に形成された軸溝に装着されるシールリングであって、少なくともシールリングの接触側面の内周側に、周方向に離間して複数の凹部が形成され、凹部の内周側には、内壁、及び内周面に向かって開口する油導入孔が備えられ、内壁の径方向幅が、凹部の周方向先端に向かって大きくなることを特徴とする。
本発明では、シールリングの接触側面に形成された凹部の内周側に内壁を形成し、さらに、内周面に向かって開口する油導入孔を設ける。凹部に内壁を設けることにより、油導入孔から導入された油が凹部の周方向先端に位置する楔形状の斜面に導かれる。これにより、揚力が作用して、柱部に油膜が形成され、柱部が浮き上がるとともに、凹部の外周側に位置する環状のシール面への油の介在が促進され、シール面が流体潤滑状態に近づき、摩擦係数が低減する。さらに、接触側面の凹部に油圧が作用し、押し付け荷重が低減する。この二つの相乗効果により、本発明のシールリングでは、フリクションを効果的に低減することができる。また、本発明のシールリングでは、接触側面とリング溝側面が面で接触するため、油の漏れも抑制できる。このように、本発明のシールリングは、低フリクション及び低リークの両特性を併せもつため、自動変速機の駆動損失を効果的に低減することができる。
シールリングが装着された油圧回路を示す断面図である。 特許文献2に記載のシールリングの構造を示す平面図(A)、斜視図(B)、凹部形状を内周面から見た円周方向の直動展開図(C)、及び特許文献2に記載のシールリングが、リング溝に装着された状態を示す概略図(D)である。 本発明のシールリングの一態様を示す斜視図(A)及び他の態様を示す斜視図(B)である。 本発明のシールリングの他の2態様を示す斜視図(A),(B)、(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像(C)、(A),(B)のシールリングの凹部形状を示す斜視図(D)及び(D)の凹部形状を内周面から見た円周方向の直動展開図(E)である。 本発明のシールリングの他の態様を示す斜視図(A)、(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像(B)、(A)のシールリングの凹部形状を示す斜視図(C)、及び(C)の凹部形状を内周面から見た円周方向の直動展開図(D)である。 本発明のシールリングの合口の一態様を示す斜視図である。 フリクション測定装置を示す概略図である。 実施例1〜3のシールリングのフリクション測定結果を示すグラフである。 実施例3及び比較例1のシールリングの回転数とフリクションとの関係を示すグラフである。 実施例2(A)、4〜6((B)、(C)、(D))及び比較例3(E)のシールリングの接触側面のスキャン画像である。 内壁の長さとフリクションとの関係を示すグラフである。
以下に本発明のシールリングについて図面を参照して詳細に説明する。
図3に、本発明の一態様であるシールリングの斜視図を示す。図3の凹部形状は、特許文献2に記載されている凹部形状、すなわち図2に示す凹部形状と基本的に同様である。凹部6は、シールリングの少なくとも接触側面の内周側に周方向に離間して形成され、凹部6と凹部6間には柱部7が配置される。図2(B)に示すように、凹部6は、内周方向に向かいシールリングの軸方向幅(厚さ)が薄くなるように設けられた最深傾斜部51と、最深傾斜部51の周方向両側に位置し、隣接する柱部7の最も内周側の点に向かって収束する収束部52からなる。このような凹部6形状では、シールリングの回転によって、凹部6内に満たされたオイルが収束部52で絞り込まれ、その楔形状効果により回転方向に垂直な揚力が発生する。さらに、接触側面側の凹部6に油圧が作用し、押し付け荷重を低減するため、フリクションが低減する。
図2(B)の例では、収束部の傾斜面とシールリング側面とのなす角度、すなわち、図2(B)中の斜面角度θは、16°、最深傾斜部52の深さh、すなわち、収束部52の内周端における軸方向深さhは、0.42mmに設定されている。
ここで、凹部6の数(1本のシールリングの片側の側面に形成される凹部の数)は、4個〜16個が好ましく、8個〜12個がより好ましい。また、凹部6の周方向幅は、柱部7の周方向幅の8〜50倍とするのが好ましく、収束部52の周方向幅(片側)は、最深傾斜部51の周方向幅の1/50以上とするのが好ましい。
本発明のシールリングは、凹部6の内周側に内壁8、及び内周面12に向かって開口する油導入孔10を設けたことを特徴とする。図3(A)では、内壁8は、凹部6の周方向の両端から内周端部に沿って延び、中央に油導入孔10となる開口部が設けられている。凹部6の内周側に壁、すなわち、内壁8を設けることにより、凹部6に導入され、絞り込まれた油の楔斜面(収束部)から内周面12への流れが抑制され、楔断面の深さと円周方向の三次元での絞り効果により、さらに大きな揚力が作用する。このため、柱部7に油膜が形成され、柱部7が浮き上がるとともに、凹部6の外周側に位置する環状のシール面への油の介在が促進され、摩擦係数が低減する。また、接触側面の凹部6に油圧が作用し、押し付け荷重が低減する。これらの相乗効果により、フリクションが低減する。ここで、本形態のように内壁8を凹部6の両端、すなわち油導入口10の両側に形成する場合には、一方の内壁8の周方向長さは、凹部6全体(最深傾斜部と収束部の合計)の周方向長さを100として、20〜45とするのが好ましく、両側を合わせた内壁の長さは、凹部6全体の周方向長さを100として、40〜90とするのが好ましい。この範囲では、より優れた楔形状効果が得られ、フリクションがさらに低減する。
本発明の効果は、内壁8及び油導入孔10を備える凹部6をシールリングの接触側面に形成することにより得られる。しかし、本形態の凹部6形状は、周方向中央に対して両側が対称形状であるため、作業性を考慮すると、シールリングの接触側面及び受圧側面の両方に凹部6を設け、両側面とも対称で方向性のない構成とするのが好ましい。
図3(A)では、内壁8を凹部6の両端に設けているが、図3(B)では、回転方向反対側の傾斜面(収束部)の端部にのみ内壁8を設けている。この形態では、シールリングが右回転することにより、回転方向反対側(左側)の収束部先端に油が絞り込まれ、揚力が発生する(楔形状効果)。楔形状効果は回転方向反対側の収束部で発生し、一方、回転方向側では、油膜が形成されにくく、潤滑状態が阻害される傾向にある。このため、回転方向反対側にのみ内壁8を設けた本構成では、より優れたフリクション低減効果が得られる。
ここで、回転方向反対側のみに内壁を設けた場合、内壁の周方向長さは、凹部全体の周方向長さを100として、5〜95とするのが好ましく、50〜95とするのがより好ましい。この範囲では、より優れた楔形状効果が得られ、フリクションがさらに低減する。
図中で、内壁8の軸方向の高さは、シールリング側面の高さとほぼ等しく設定、すなわち、内壁8の先端面と、凹部6が形成されていない側面とが同一平面となるように設定されている。そして、図3(A)では、凹部6の周方向の中央部に、図3(B)では、回転方向の端部に内壁8を設置しない部分を設けることにより、それぞれ、内壁8間、又は内壁8と柱部7との間に、内周面12に向かって開口する油導入孔10を形成している。しかし、油導入孔10の構成は、これに限定されず、例えば、凹部6の周方向全域にわたって内壁8を形成し、その軸方向の高さを部分的にシールリング側面より低く設定することにより、油導入孔10とすることもできる。
内壁8の幅、すなわち、内壁8の径方向の長さは、特に限定されないが、より優れたフリクション低減効果を得るためには、シールリングの径方向幅を100として、5〜20とするのが好ましい。また、凹部6の先端に向かって、内壁8の径方向幅を大きくし、すなわち、凹部6の径方向幅を小さくすることにより、収束部先端が深さ方向、すなわち、軸方向のみならず、径方向でも先細りの形状となるため、三次元の絞り効果がさらに向上する。このため、揚力が増加し、フリクションがさらに低減する。
図4(A)及び(B)に本発明の別の形態のシールリングの斜視図を示し、図4(C)には、図4(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像を示す。本形態は、図3(A)及び(B)のシールリングと凹部形状が異なる。図4(D)及び(E)には、それぞれ、図4(A)のシールリングの内壁がない状態の斜視図及び内周面から見た円周方向の直動展開図を示す。なお、以下の記載において、上記展開図における直線部を平面又は平坦面といい、曲線部を曲面という。本形態では、図4(E)に示すように、凹部6両端が柱部7に向かって凸状の曲面、すなわち、内周面から見た円周方向の直動展開図(図4(E))において、上に凸状の曲面からなる絞り部20で構成され、柱部7と連結している。このように柱部7と凹部6が緩やかな傾斜曲面で繋がれているため、内壁8を設けることにより、図3(A)の凹部6形状よりさらに絞り効果が向上するため、揚力が増加して、フリクションがさらに低減する。また、本形態では、図4(E)に示すように、凹部6の中央に側面に平行な凹部6最深部21が形成され、最深部21の両端から絞り部20に向かい、最深部21に向かって凸状の曲面、すなわち、図4(E)において下に凸状の曲面からなる斜面部22が形成されている。そして、斜面部22と絞り部20との境界も緩やかな曲面で連結されている。斜面部22をこのような構成とすることにより、より優れたフリクション低減効果を得ることができる。しかし、本発明のシールリングの斜面部22は、このような曲面からなる構成に限定されず、平面単独としても、平面と曲面からなる構成としてもよい。
また、図では、最深部21は、所定の周方向長さを有し、側面と平行な平坦面で形成されているが、平坦面を設けない構成とすることもできる。すなわち、凹部6の中央は、最深部21を含み、最深部21に向かって凸形状、すなわち、図4(E)において下に凸状の1つの曲面からなる斜面部22で構成され、この斜面部22の両側から柱部7までを、柱部7に向かって凸状、すなわち、図4(E)において上に凸状の曲面からなる絞り部20で連結した凹部6構成とすることもできる。但し、より優れたフリクション低減効果を得るためには、最深部21は、側面と平行な平坦面で構成されるのが好ましい。この場合、最深部の周方向の幅bは、1個の凹部6の周方向幅aを100として2〜20とするのが好ましく、8〜16とするのがより好ましい。
また、絞り部20のR曲面のダレ長さc、すなわち、凹部6先端から絞り部20と斜面部22との境界までの周方向幅は、凹部6片側の傾斜部の周方向幅、すなわち、絞り部20と斜面部22の周方向の幅の和(c+d)を100として、5〜20とするのが好ましい。また、絞り部20の深さe、すなわち、絞り部20と斜面部22との境界点の軸方向の減退量は、凹部6の最深部の深さh(軸方向の減退量)を100として、0を超え20%以下とするのが好ましい。
凹部6の数(1本のシールリングの片側の側面に形成される凹部の数)は、4個〜16個が好ましく、6個〜10個がより好ましい。また、凹部6の1個あたりの周方向幅aは、柱部7の1個あたりの周方向幅fの5〜20倍とするのが好ましい。凹部6深さh、すなわち、凹部6最深部21の軸方向幅hは、シールリングの軸方向幅を100として、2〜20とするのが好ましく、5〜10とするのがより好ましい。
図4(D)の凹部6に内壁8を設けた本発明のシールリングを図4(A)及び(B)に示す。図4(A)の形態では、内壁8は、内周端部に沿って、凹部6の周方向の両端から凹部6の中央に向かって延び、凹部6の中央には内周面12に向かって開口する油導入孔10が備えられている。凹部6の内周側(端部)に内壁8を設けることにより、絞り込まれた油の楔斜面(絞り部)から内周面12への流れが抑制され、楔断面の深さと円周方向の三次元での絞り効果により、さらに大きな揚力が作用する。このため、柱部に油膜が形成され、柱部が浮き上がると同時に、凹部6の外周側に位置する環状のシール面への油の介在が促進され、摩擦係数が低減する。また、接触側面の凹部6に油圧が作用し、押し付け荷重が低減する。これらの相乗効果により、フリクションがさらに低減する。本形態のシールリングでは、柱部7と凹部6が緩やかな傾斜となるR形状で結ばれているため、内壁8を設けることにより、図3(A)のシールリングよりさらに絞り効果が向上するため、揚力が増加して、フリクションがさらに低減する。ここで、本形態のように内壁8を凹部6の両端、すなわち油導入口10の両側に形成する場合には、一方の内壁8の周方向長さは、1個の凹部6の周方向長さを100として、20〜45とするのが好ましく、両側の内壁8を合わせた長さは、凹部6全体の周方向長さを100として、40〜90とするのが好ましい。この範囲では、より優れた楔形状効果が得られ、フリクションがさらに低減する。
本発明の効果は、内壁8及び油導入孔10を備える凹部6をシールリングの接触側面に形成することにより得られる。しかし、本態様の凹部6形状は、周方向中央に対して両側が対称形状であるため、作業性を考慮すると、シールリングの接触側面及び受圧側面の両方に凹部6を設け、両側面とも対称で方向性のない構成とするのが好ましい。
図4(A)では、内壁8を凹部6の両端に設けているが、図4(B)に示すように回転方向反対側の傾斜面(絞り部20)の端部にのみ内壁8を設けることもできる。このような構成では、シールリングが右回転することにより、回転方向反対側(左側)の絞り部20先端に油が絞り込まれ、揚力が発生する(楔形状効果)。このように楔形状効果は回転方向反対側の絞り部20で発生し、一方、回転方向側では、斜面の油膜が形成されにくく、潤滑状態が阻害される傾向にあるため、回転方向反対側にのみ内壁8を設けた本形態では、フリクションがさらに低減する。
ここで、回転方向反対側のみに内壁を設けた場合、内壁8の周方向長さは、凹部全体の周方向長さを100として、5〜95とするのが好ましく、50〜95とするのがより好ましい。この範囲では、より優れた楔形状効果が得られ、フリクションがさらに低減する。
図4(C)には、図4(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像を示す。ここで、内壁8は、凹部6端部から約4mmの個所から凹部先端に向かって径方向幅が大きくなるように、すなわち、凹部の径方向幅が小さくなるように傾斜角度4°で傾斜している。また、凹部6の外周側のシール面は、凹部6の先端部に向かって、径方向幅が大きくなるように、すなわち、凹部6の径方向幅が小さくなるように傾斜角度3°で傾斜している。このように先端部に向かって径方向幅が小さくなり、さらに軸方向幅が小さく(深さが浅く)なる先細り形状の凹部6を有する本形態のシールリングでは、三次元の絞り効果がさらに向上する。このため、揚力が増加し、フリクションがさらに低減する。なお、本形態では、凹部6の先端は曲面で形成されている。
図4(A)及び(B)では、内壁8の軸方向の高さは、側面の高さとほぼ等しく設定され、すなわち、内壁8の先端面と、凹部6が形成されていない側面とが同一平面となるように設定されている。そして、内壁8を周方向に不連続に配置することにより、図4(A)では、内壁8間に、図4(B)では、内壁8と柱部7との間に、内周面12に向かって開口する油導入孔10が形成されている。しかし、油導入孔10の構成は、これに限定されず、例えば、凹部6の周方向全域にわたって内壁8を形成し、内壁8の軸方向の高さを部分的にシールリング側面より低くなるように設計することにより、油導入孔10を形成することもできる。
図5(A)には、本発明のシールリングのさらに別の形態の斜視図を示し、図5(B)には、図5(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像を示す。また、図5(C)及び(D)には、それぞれ、図5(A)のシールリングの内壁のない構造を示す斜視図、及び内周面から見た円周方向の直動展開図を示す。本形態は、図3及び図4の形態と凹部形状が異なる。本形態では、図5(D)に示すように、凹部6の片側の端部は、柱部7に向かって凸状の曲面、すなわち、内周面から見た円周方向の直動展開図(図5(D))において、上に凸状の曲面からなる絞り部20で構成され、柱部7と連結している。一方、凹部6の他端は、最深部21から柱部7まで急な傾斜面23で連結されている。本形態のシールリングは、絞り部20を有する緩やかな傾斜面が回転方向反対側に配置され、急な傾斜面23が回転方向側に配置される。このため、シールリングが回転することにより、回転方向反対側の絞り部20先端に油が絞り込まれ、揚力が発生し(楔形状効果)、フリクションが低減する。そして、本形態では、凹部6が、柱部7と緩やかな傾斜曲面で連結しているため、図5(A)に示すように内壁8を設けることにより、絞り効果が向上するため、揚力が増加して、フリクションがさらに低減する。また、本形態では、凹部6の回転方向側の端部は、急な傾斜面23により構成されている。すなわち、楔形状効果が期待できない回転方向側の斜面は極力減らし、ほとんどが楔形状効果を有する斜面で構成された凹部6構造とすることにより、さらに楔形状効果を向上させ、フリクションを低減することができる。楔形状効果を奏しない斜面の面積を減少させることによりフリクション低減効果は得られるが、回転方向側の傾斜面23の傾斜角度θ、すなわち、傾斜面23とシールリング側面とのなす角度は、離形性等を考慮すると8°〜45°とするのが好ましい。
図5(D)では、最深部21は、所定の周方向長さbを有し、側面と平行な平坦面で形成されている。そして、回転方向反対側の最深部21の一方の端部から絞り部20に向かい、最深部21に向かって凸形状、すなわち、図5(D)において下に凸状の曲面からなる斜面部22が形成されている。そして、斜面部22と絞り部20との境界も緩やかな曲面で連結されている。斜面部22をこのような構成とすることにより、より優れたフリクション低減効果を得ることができる。しかし、本発明のシールリングの斜面部22は、このような曲面に限定されず、平面単独としても、平面と曲面からなる構成としてもよい。
また、図では、最深部21は、所定の周方向長さbを有し、側面と平行な平坦面で形成されているが、平坦面を設けない構成とすることもできる。例えば、回転方向反対側の凹部6の先端から絞り部20と斜面部22との境界までを、柱部7に向かって凸状、すなわち、図5(D)において上に凸状の曲面で形成し、絞り部20と斜面部22との境界から最深部21までを、最深部21に向かって凸形状、すなわち、図5(D)において下に凸状の1つの曲面からなる斜面部22で形成し、最深部21に到達後、即、急な傾斜面23で柱部7に連結する凹部6構成とすることもできる。但し、より優れたフリクション低減効果を得るためには、最深部21は、側面と平行な平坦面で構成されるのが好ましい。この場合、最深部21の周方向の幅bは、1個の凹部6の周方向幅aを100として2〜20とするのが好ましく、8〜16とするのがより好ましい。
また、絞り部20のR曲面のダレ長さc、すなわち、凹部6先端から絞り部20と斜面部22との境界までの周方向幅は、絞り部20と斜面部22で構成される回転方向反対側の傾斜部の周方向幅の和(c+d)を100として、5〜20とするのが好ましい。また、絞り部20の深さe、すなわち、絞り部20と斜面部22との境界における軸方向の減退量は、凹部6の最深部21の深さh(軸方向の減退量)を100として、0を超え、20以下とするのが好ましい。
凹部6の数(1本のシールリングの片側の側面に形成される凹部の数)は、シールリングのサイズによるが、外径(呼び径)が20〜70mm程度のシールリングでは、4個〜16個が好ましい。また、凹部6の1個あたりの周方向幅aは、柱部7の1個あたりの周方向幅fの5〜20倍とするのが好ましい。凹部6深さh、すなわち、凹部6最深部21の軸方向減退量は、シールリングの軸方向幅を100として、2〜20とするのが好ましく、4〜10とするのがより好ましい。
図5(C)の凹部6に内壁8を設けた本発明のシールリングを図5(A)に示す。図5(A)の形態では、内壁8は、絞り部20と斜面部22から構成される傾斜部側の先端から内周端部に沿って、周方向に延び、凹部6の回転方向側に内周面12に向かって開口する油導入孔10が備えられている。凹部6の内周側(端部)に内壁8を設けることにより、絞り込まれた油の楔斜面(収束部)から内周面12への流れが抑制され、楔断面の深さと円周方向の三次元での絞り効果により、さらに大きな揚力が作用する。このため、柱部7に油膜が形成され、柱部7が浮き上がると同時に、凹部6の外周側に位置する環状のシール面への油の介在が促進され、シール面が流体潤滑状態に移行し、摩擦係数が低減する。また、接触側面の凹部6に油圧が作用し、押し付け荷重が低減する。これらの相乗効果により、フリクションがさらに低減する。本形態のシールリングでは、凹部6の回転方向反対側は、柱部7と凹部6が緩やかな傾斜となるR形状で結ばれているため、内壁8を設けることにより、図3(A)のシールリングよりさらに潤滑化が促進され、摩擦係数が低減するため、フリクションがさらに低減する。
また、本形態では、回転方向反対側の傾斜面にのみ内壁8を設けている。シールリングが右回転することにより、回転方向反対側(左側)の絞り部先端に油が絞り込まれ、揚力が発生する(楔形状効果)。このように楔形状効果は回転方向反対側の絞り部20で発生し、一方、回転方向側では、斜面の油膜が形成されにくく、潤滑状態が阻害される傾向にあるため、回転方向反対側にのみ内壁を設けることにより、さらにフリクションが低減する。さらに、本形態の凹部6は、楔形状効果が期待できない回転方向側の斜面を極力減らし、ほとんどが楔形状効果を有する斜面で構成されているため、内壁8を設けることにより、楔形状効果がさらに向上し、フリクションを低減することができる。
内壁8の周方向長さは、1個の凹部6の周方向長さを100として、5〜95とするのが好ましく、50〜95とするのがより好ましい。この範囲では、より優れた楔形状効果が得られ、フリクションがさらに低減する。
図5(B)には、図5(A)のシールリングの接触側面のスキャン画像を示す。ここで、内壁8は、凹部6の絞り部20及び斜面部22で構成される傾斜部側の先端から約4.5mmの個所から凹部6先端に向かって径方向幅が大きくなるように、すなわち、凹部6の径方向幅が小さくなるように傾斜角度4°で傾斜している。また、凹部6の外周側のシール面は、凹部6の先端部に向かって、径方向幅が大きくなるように、すなわち、凹部6の径方向幅が小さくなるように傾斜角度3°で傾斜している。このように、本形態のシールリングでは、先端部に向かって径方向幅が小さくなり、さらに軸方向幅も小さく(深さが浅く)なる先細り形状の凹部6を有するため、三次元の絞り効果がさらに向上する。このため、揚力が増加し、流体潤滑となり、フリクションがさらに低減する。なお、本形態では、凹部6の先端は曲面で形成されている。
図では、内壁8の軸方向の高さは、側面の高さとほぼ等しく設定され、すなわち、内壁8の先端面と、凹部6が形成されていない側面とが同一平面となるように設定されている。そして、内壁8は、凹部6の周方向の一部(回転方向反対側)に配置され、内壁8と柱部7との間に、内周面12に向かって開口する油導入孔10が形成されている。しかし、油導入孔10の構成は、これに限定されず、凹部6の周方向全体にわたって内壁8を形成し、軸方向の高さを部分的にシールリング側面より低くなるようにすることにより、油導入孔とすることもできる。
本発明のシールリングは、装着性を考慮して合口を設けるが、合口形状は特に限定されず、直角(ストレート)合口、斜め(アングル)合口、段付き(ステップ)合口の他、ダブルアングル合口、ダブルカット合口、及び図6に示すトリプルステップ合口等を採用することができる。合口隙間部への油の流通を遮断し、シール性を向上させるためには、ダブルアングル合口、ダブルカット合口、及びトリプルステップ合口が好ましい。
本発明のシールリングの材料は、特に限定されず、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)等の他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂等が用いられる。一般に、これらの樹脂にカーボン粉末やカーボンファイバー等の添加剤を充填した材料が好ましく用いられる。
本発明のシールリングの製造方法は、特に限定されないが、シールリング材料として、PEEK、PPS、PI等の熱可塑性樹脂を用いる場合は、射出成形で製造するのが好ましい。射出成形用金型を用いることにより、複雑な内壁構造を有するシールリングも容易に製造できる。また、フッ素樹脂を用いる場合には、圧縮成型後、機械加工することにより製造することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
カーボン繊維を添加したPEEK材を用いて、射出成形により、図3(A)に示す構造の凹部形状を有するシールリングを作製した。ここで、凹部の斜面角度θは16°、最深傾斜部52の深さhは、0.42mmとし、接触側面に8個の凹部を形成した。それぞれの凹部の周方向の先端部から中央に向かって内周端に沿って、幅0.3mm、周方向長さが片側10mmの内壁を設け、中央に周方向長さが3mmの油導入孔を形成した。なお、シールリングの外径(呼び径)は67mm、厚み(径方向幅)は、2.3mm、幅(軸方向幅)は、2.32mmとし、合口は、図6に示すトリプルステップ合口とした。
(実施例2)
カーボン繊維を添加したPEEK材を用いて、射出成形により、図4(A)に示す構造の凹部形状を有するシールリングを作製した。ここで、絞り部の曲率がR40、最深部の深さが0.22mmの凹部を8個形成した。それぞれの凹部の両側から中央に向かって内周端に沿って、幅0.3 mm、周方向長さが片側10mmの内壁を設け、中央に周方向長さ3mmの油導入孔を形成した。なお、シールリングの外径(呼び径)は、67mm、厚み(径方向幅)は、2.3mm、幅(軸方向幅)は、2.32mmとし、合口は、図6に示すトリプルステップ合口とした。
(実施例3)
カーボン繊維を添加したPEEK材を用いて、射出成形により、図5(A)に示す構造の凹部形状を有するシールリングを作製した。ここで、絞り部の曲率がR100、最深部の深さが0.15mmの凹部を8個形成した。それぞれの凹部の回転方向反対側から内周端に沿って、幅0.3 mm、周方向長さ20mmの内壁を設け、回転方向側に周方向長さ2mmの油導入孔を形成した。なお、シールリングの外径(呼び径)67mm、厚み(径方向幅)は、2.3mm、幅(軸方向幅)は、2.32mmとし、合口は、図6に示すトリプルステップ合口とした。
(フリクション、及び油漏れ量の測定)
実施例1〜3のシールリングを、図7に示すように、油圧回路を設けた固定軸(S45C製)の外周面に形成された軸溝に装着し、試験装置に設置した。次に、ハウジング(S45C製)を装着し、回転数2000rpmで回転させ、試験装置に取付けたトルク検出器から回転トルク・ロスを検出した。また同時に油の漏れ量を測定した。なお、ここで、油はオートマチックトランスミッションフルード(ATF)を用い、油温80℃、油圧0.8MPaとした。比較として、実施例1と同様の凹部形状で内壁を有しない構成のシールリング(比較例1)、及び外周側から内周側に向かい軸方向幅が小さくなるように両側面を傾斜角度5度で傾斜させた断面台形のシールリング(比較例2)についても同様に、フリクション及び油漏れ量を測定した。
図8に、実施例1〜3のシールリングのフリクションを測定した結果を示す。 ここで、縦軸は、実施例1と同様の凹部形状で内壁を有しない比較例1のシールリングのフリクションを100として、相対値で表した。比較例1に比べ、実施例1では、10%程度フリクションが低減しており、内壁を設けることによるフリクション低減効果が確認された。また、実施例2では、さらにフリクションが低減し、実施例1より優れたフリクション低減効果が得られることがわかった。
これは、実施例2では、凹部の端部が柱部に向かって凸状の曲面で構成され、柱部と凹部が緩やかな傾斜角度で連結されているため、内壁を設けることにより、油がより効果的に凹部の先端に絞り込まれ、揚力が増加し、柱部に油膜が形成されやすくなり、シール面が潤滑化され、摩擦係数が低減したためと考えられる。 実施例3では、比較例1に比べ、40%近くフリクションが低減し、実施例1及び2より、さらに優れたフリクション低減効果が得られた。図9に、実施例3のシールリングについて、1000rpm〜4000rpmの間で回転数を変えてフリクションを測定した結果を示す。比較として、比較例1のシールリングについても同様にフリクションを測定した結果を図9に示す。ここで、縦軸は比較例1のシールリングの1000rpmにおけるフリクションを100として相対値で表した。図9より、従来の比較例1のシールリングでは、回転数の増加とともにフリクションが増加するのに対して、本発明の実施例3のシールリングでは、回転数が増加するとフリクションが低減する傾向があることが確認された。これは、実施例3のシールリングでは、油の絞り効果に優れ、油膜が形成されやすい回転方向反対側にのみ楔形状効果を有する緩やかな斜面を形成し、且つ内壁を設けたため、回転方向側での潤滑阻害の影響を受けることなく、揚力が効果的に作用し、柱部で形成される油膜が厚くなったことにより、流体潤滑に移行したことに起因すると考えられる。流体潤滑状態では、回転数の増加とともに揚力及び油膜厚さが増加するため、フリクションが低減すると推測される。
なお、実施例1〜3のシールリングのフリクションは、断面台形である比較例2のシールリングのフリクション以下の値となった。このことから、本発明により、従来の低フリクション仕様のシールリング以上のフリクション低減が可能であることがわかった。
比較例1のシールリングのキャンセル面積を100とすると、実施例1〜3のシールリングのキャンセル面積は、それぞれ、83.5、78.2、及び80.4であり、比較例1に比べ、20%程度小さい値であった。キャンセル面積とは、油溜り部となる凹部の平面画像による二次面積、すなわち投影面積のことであり、凹部のみ着色し、画像処理することにより算出される。通常、キャンセル面積が大きいほど、すなわち、油圧の作用する面積が大きいほど、反圧として押し返す力が大きくなるため、受圧荷重が低減され、フリクションは低減する。しかし、本発明の内壁を採用することにより、より小さいキャンセル面積でフリクションを低減できることが確認された。これは、本発明のシールリングでは、フリクション低減効果は、押し付け荷重の低減より、摺動面の潤滑化による摩擦係数の低減に大きく依存しているためと考えられる。このように、より小さいキャンセル面積でフリクションを低減できる本発明のシールリングでは、キャンセル面積に大きく依存した従来のシールリングより、限界特性を向上させたり、摩耗量を低減させたりすることが可能となる。
実施例1〜3のシールリングの油漏れ量は、断面台形である比較例2の油漏れ量の1/3程度と大幅に低減し、本発明のシールリングは、優れたリーク特性も有することが確認された。
(実施例4〜6)
図10に示すように回転方向反対側にのみ周方向長さがそれぞれ、10mm(B)、6.6mm(C)、3.3mm(D)の内壁を設けた以外、実施例2と同様の構成のシールリングを作製した(実施例4、5及び6)。なお、ここで凹部の周方向長さは、23mmであるので、実施例4、5及び6の内壁の周方向長さは、それぞれ、凹部の周方向長さの43%、29%及び14%に相当する。それぞれのシールリングについて、実施例1と同様に、フリクションを測定した。また、比較として、実施例2と同様の凹部形状で内壁を設けない構成のシールリングについても同様にフリクションを測定した(比較例3)。
図11に内壁の長さとフリクションの関係を示す。ここで、内壁の長さは、凹部の周方向長さを100として、それぞれの内壁の長さを相対値で表し、フリクションは、内壁のない比較例3のフリクションを100として、それぞれのフリクションを相対値で表した。また、凹部の両側に内壁を設けた実施例2の値も同様に図11に示す。内壁のない比較例3に比べ、両側に内壁を設けた実施例2及び片側(回転方向反対側)にのみ内壁を設けた実施例4〜6のいずれにおいてもフリクション低減効果が認められた。ここで、凹部の両側に内壁を設けた実施例2に比べ、回転方向反対側にのみ内壁を設けた実施例4〜6では、さらにフリクションが低減することが確認された。
これは、楔形状により作用する揚力が大きい回転方向反対側にのみ内壁を設け、楔形状により作用する揚力が小さく、斜面の油膜が形成されにくく、潤滑状態を阻害する傾向にある回転方向側に内壁を設けないことにより、シール面が潤滑化されたためと考えられる。内壁を回転方向反対側にのみ設けた場合、凹部の周方向長さを100として、内壁の周方向長さを、5〜95、好ましくは、50〜95とすることにより、より優れたフリクション低減効果が得られることがわかった。前述のとおり、通常は、キャンセル面積を増加させることにより、キャンセル荷重の増加により、受圧荷重が低減されフリクションは低減する。しかし、本発明のシールリングでは、内壁を長くする、すなわち、キャンセル面積を小さくすることにより、より優れたフリクション低減効果が認められた。これは、内壁を設置したことにより、内周面への油の流出が抑えられ、油が絞り部の傾斜面に効率的に導かれることに起因すると考えられる。そのため、シールリングが回転すると、より大きな揚力が作用し、柱部に油膜が形成されやすくなる。この柱部の油膜形成により、シールリングの内周側が浮き上がり、凹部の外周側に位置する環状のシール面への油の介在も促進され、摺動面が流体潤滑に移行するため、摩擦係数が減少し、大きなフリクション低減効果が得られたと考えられる。
1 シールリング
2 軸
3 油圧通路
4 軸溝
5 ハウジング
6 凹部(ポケット)
7 柱部
8 内壁
10 油導入孔
11 受圧側面
12 内周面
14 接触側面
20 絞り部
21 最深部
22 斜面部
51 最深傾斜部
52 収束部
60 揚力
61 キャンセル圧

Claims (6)

  1. 軸の外周面に形成された軸溝に装着されるシールリングであって、少なくとも前記シールリングの接触側面の内周側に、周方向に離間して複数の凹部が形成され、前記凹部の内周側には、内壁、及び内周面に向かって開口する油導入孔が備えられ、前記内壁の径方向幅が、前記凹部の周方向先端に向かって大きくなることを特徴とするシールリング。
  2. 前記内壁が前記凹部の周方向両側に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
  3. 前記内壁片側の周方向長さが、前記凹部の周方向長さを100として、20〜45であることを特徴とする請求項2に記載のシールリング。
  4. 前記内壁が前記凹部の周方向の一方に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
  5. 前記内壁の周方向長さが、前記凹部の周方向長さを100として、5〜95であることを特徴とする請求項4に記載のシールリング。
  6. 前記内壁が備えられた前記凹部の周方向の一方の端部は、柱部に向かって凸状の曲面からなる絞り部で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシールリング。
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