以下、図面を参照して、本発明の画像形成装置の一実施形態を説明する。
図1により、本実施形態の画像形成装置としてのプリンタ1における全体構造を説明する。図1は、本発明の一実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための正面図である。
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、所定の画像情報に基づいて被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2a、2b、2c、2dと、帯電部10a、10b、10c、10dと、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dと、現像器16a、16b、16c、16dと、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dと、トナー供給部6a、6b、6c、6dと、ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dと、除電器12a、12b、12c、12dと、中間転写ベルト7と、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dと、2次転写ローラ8と、対向ローラ18と、定着装置9と、を備える。
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、複数のローラ又はローラ対と、排紙部50と、を備える。なお、搬送路Lは、後述するように、第1搬送路L1と、第2搬送路L2と、第3搬送路L3と、手差し搬送路Laと、戻り搬送路Lbとの集合体である。
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に沿って順に、上流側から下流側に順に、帯電部10a、10b、10c、10dによる帯電、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dによる露光、現像器16a、16b、16c、16dによる現像、中間転写ベルト7及び1次転写ローラ37a、37b、37c、37dによる1次転写、除電器12a、12b、12c、12dによる除電、及びドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dによるクリーニングが行われる。
また、画像形成部GKにおいては、中間転写ベルト7、2次転写ローラ8及び対向ローラ18による2次転写、並びに定着装置9による定着が行われる。
感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、中間転写ベルト7の進行方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面には、静電潜像が形成され得る。
帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dは、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれは、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれは、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれにより走査露光されることで、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に静電潜像が形成される。
現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dにそれぞれ対応して設けられ、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に対向して配置される。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成された静電潜像に各色のトナーを付着させて、カラーのトナー画像を感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成する。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの色に対応する。現像器16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に対向配置された現像ローラ、トナー攪拌用の攪拌ローラ等を有して構成される。
トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対応して設けられており、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給される各色のトナーを収容する。トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、イエローのトナー、シアンのトナー、マゼンタのトナー、ブラックのトナーを収容する。
トナー供給部6a、6b、6c、6dそれぞれは、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5d及び現像器16a、16b、16c、16dにそれぞれ対応して設けられており、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれに収容された各色のトナーを、現像器16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給する。トナー供給部6a、6b、6c、6dそれぞれと現像器16a、16b、16c、16dそれぞれとは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
中間転写ベルト7には、感光体ドラム2a、2b、2c、2dに形成された各色のトナー画像が順次1次転写される。中間転写ベルト7は、従動ローラ35、駆動ローラからなる対向ローラ18、テンションローラ36等に掛け渡される。テンションローラ36が中間転写ベルト7を内側から外側に付勢するため、中間転写ベルト7には所定の張力が与えられる。
中間転写ベルト7を挟んで感光体ドラム2a、2b、2c、2dと反対の側には、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれが対向して配置される。
中間転写ベルト7における所定部分は、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれと、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれとにより挟み込まれる。この挟み込まれた所定部分は、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面に押し当てられる。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれと1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれとの間で、それぞれ1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dが形成される。1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dそれぞれにおいて、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれに現像された各色のトナー画像が中間転写ベルト7に順次1次転写される。これにより、中間転写ベルト7には、フルカラーのトナー画像が形成される。
1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれには、不図示の1次転写バイアス印加部により、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれに形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト7に転写させるための1次転写バイアスが印加される。
除電器12a、12b、12c、12dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。除電器12a、12b、12c、12dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に光を照射することにより、1次転写が行われた後の感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を除電する(電荷を除去する)。
ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構へ搬送して、回収させる。
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに2次転写させる。2次転写ローラ8には、不図示の2次転写バイアス印加部により、中間転写ベルト7に形成されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに転写させるための2次転写バイアスが印加される。
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に対して当接したり離間したりする。具体的には、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に当接される当接位置と中間転写ベルト7から離間する離間位置とに移動可能に構成される。詳細には、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7の表面に1次転写されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに2次転写させる場合には当接位置に配置され、他の場合には離間位置に配置される。
中間転写ベルト7における2次転写ローラ8とは反対側には、対向ローラ18が配置される。中間転写ベルト7における所定部分は、2次転写ローラ8と対向ローラ18とによって挟み込まれる。そして、用紙Tは中間転写ベルト7の外面(トナー画像が1次転写された面)に押し当てられる。中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間で2次転写ニップN2が形成される。2次転写ニップN2において、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像が用紙Tに2次転写される。
定着装置9は、用紙Tに2次転写されたトナー画像を構成する各色のトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着装置9は、後述するヒータ913、913(図4参照)により加熱される第1回転体としての加熱ローラ9aと、第2回転体としての加圧ローラ920と、第3回転体としてのテンションローラ930と、加圧ローラ920とテンションローラ930とに掛け渡される回転ベルト9bと、ガイド部材960と、を備える。加熱ローラ9aと加圧ローラ920とは、回転ベルト9bを介して、トナー画像が2次転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱ローラ9aと回転ベルト9bとの間に挟み込まれた状態で用紙Tが搬送されることで、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。
定着装置9の構成の詳細については後述する。
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの筐体から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において左側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対81とからなる重送防止機構を備える。
装置本体Mの左側面(図1において左側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの左側面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から2次転写ニップN2までの第1搬送路L1と、2次転写ニップN2から定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙Tを第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を下流側から上流側へ搬送する用紙Tを、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbと、を備える。
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、戻し搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部である。
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と2次転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するための被転写材検出センサ(図示せず)と、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80とが配置される。前記被転写材検出センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、前記被転写材検出センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
第1搬送路L1における第1合流部P1と第2合流部P2との間には、中間ローラ対82が配置される。中間ローラ対82は、給紙ローラ対81の下流側に配置され、給紙ローラ対81より搬送される用紙Tを挟持して、レジストローラ対80へ搬送する。
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(非印刷面)を中間転写ベルト7に対向させるために設けられる搬送路である。戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第1搬送路L1に戻して、2次転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、2次転写ニップN2において非印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
第1分岐部Q1には、整流部材58が設けられている。整流部材58は、定着装置9から搬出され第3搬送路L3を上流側から下流側に向けて搬送する用紙Tの搬送方向を、排紙部50に向かう方向に整流すると共に、排紙部50から第3搬送路L3を下流側から上流側に向けて搬送する用紙Tの搬送方向を、戻し搬送路Lbに向かう方向に整流する。
第3搬送路L3における端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mにおける上方側に配置される。排紙部50は、装置本体Mの右側面側(図1において右側)に向けて開口している。排紙部50は、用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50は、排出ローラ対53を有している。排出ローラ対53によれば、第3搬送路L3を上流側から下流側に搬送される用紙Tを装置本体Mの外部に排紙すると共に、排紙部50において用紙Tの搬送方向を反転させて用紙Tを第3搬送路L3の上流側に向けて搬送することができる。
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。
なお、各搬送路の所定位置には被転写材検出用のセンサが配置される。
次に、本実施形態のプリンタ1における特徴部分である定着装置9に係る構成について詳細に説明する。図2Aは、通常定着モードにおける定着装置9を示す斜視図である。図2Bは、減圧モードにおける定着装置9を示す斜視図である。図3Aは、通常定着モードにおける定着装置9を図2Aに示すA−A切断線で切断した断面図である。図3Bは、減圧モードにおける定着装置9の図2Bに示すB−B切断線で切断した断面図である。図4は、定着装置9の機能を示す機能ブロック図である。
なお、本実施形態のプリンタ1の説明において、感光体ドラム2aから2d、定着装置9等における各種回転体(ローラ、ベルト等)の回転軸方向を「Y方向」(図1を貫く方向、図2A等参照)という。Y方向は、用紙Tの搬送方向D1に直交する方向でもある(図4参照)。Y方向において、図1における前側を「+(プラス)側」ともいい、図1における後側を「−(マイナス)側」ともいう。水平方向で且つY方向に直交する方向を「X方向」という。X方向において、図1における右側を「+側」ともいい、図1における左側を「−(マイナス)側」ともいう。垂直方向をZ方向(X方向及びY方向と直交する方向でもある)という。Z方向において、上側を「+側」ともいい、下側を「−(マイナス)側」ともいう。
また、図2Aから図4に示すように、定着装置9等の具体的な説明においては、図1におけるY方向の「−(マイナス)側」から視た図により説明する。
図4に示すように、本実施形態の定着装置9は、加熱された加熱ローラ9aの周面に、未定着のトナー画像(トナーTN)が転写(形成)された用紙Tを、回転ベルト9bによって押圧しつつ、搬送方向D1に搬送する。これにより、定着装置9は、トナー画像を加熱及び加圧をしながら溶融させて、トナー画像を用紙Tの表面に定着(固定)させる。
また、定着装置9は、通常の用紙Tに定着動作を行う通常定着モード(図3Aなど参照)と、定着ニップのニップ圧が減圧状態である減圧モード(図3Bなど参照)との2つのニップ圧に関するモードを切り換え可能となっている。詳細については後述するが、このニップ圧に関するモードの切り換えは、図4に示すように、定着ニップ圧変更制御部971が、定着ニップ圧変更部511の駆動を制御することにより行われる。
図2Aから図4に示すように、定着装置9は、定着フレーム(図示せず)と、加熱ローラ9aと、ヒータ913と、温度検出部材980と、加圧ローラ920と、テンションローラ930と、加圧ローラ920とテンションローラ930とに掛け渡される回転ベルト9bと、ガイド部材960と、定着ニップ圧変更部511と、ガイド部材駆動部512と、ベルト位置変更部513と、定着ニップ圧変更制御部971、ガイド部材駆動制御部972及びベルト位置変更制御部973を有する制御部970(図4参照)と、を備える。
定着ニップ圧変更部511は、通常定着モードと減圧モードとを切り換える。
定着ニップ圧変更部511は、通常定着モード及び減圧モードにおいては、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるように駆動する。これにより、図4に示す定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)のニップ圧を変更させる。
定着ニップ圧変更制御部971は、定着ニップ圧変更部511の駆動を制御する。
定着装置9を構成する各構成要素について詳細に説明する。定着フレーム(図示せず)は、定着装置9の筐体を構成するものである。定着フレームには、加熱ローラ9a、加圧ローラ920、テンションローラ930等が回転可能に連結されている。定着装置9は、これらの構成要素から、一つのアッセンブリを構成している。そして、定着装置9は、このようにアッセンブリされた状態で、プリンタ1(図1参照)におけるケース体BD(図1参照)に装着される。
加熱ローラ9aについて説明する。図2A及び図2Bに示すように、加熱ローラ9aは、Y方向に延びる第1回転軸J1を中心に回転可能に構成される。加熱ローラ9aは、加熱ローラ本体911と、第1回転軸J1と同軸の第1軸部材912と、を有する。加熱ローラ本体911は、円筒状の金属部材と、金属部材の外周面に形成される離型層と、を有する。例えば、加熱ローラ本体911は、直径が40mm程度のアルミニウムや鉄等の金属管の外周面に、ニッケル等のメッキの磁性金属層を設け、その磁性金属層の外周面に、厚み20μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂からなる離型層を設けることで形成される。
第1軸部材912は、加熱ローラ本体911の両端部からY方向外側それぞれに突出して形成されている。第1軸部材912は、ケース体BDなどにおける軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。第1回転軸J1には、加熱ローラ9aを回転駆動させる電動モータ等の第1回転体駆動部513A(図4参照)が連結されている。加熱ローラ9aは、第1軸部材912を介して、第1回転体駆動部513Aによって回転駆動されるように構成される。
第1回転体駆動制御部973Aは、第1回転体駆動部513Aの駆動を制御する。
これにより、加熱ローラ9aは、Y方向に延びる第1回転軸J1を中心に回転可能となっている。加熱ローラ9aは、プリンタ1におけるケース体BDに対して相対的に移動しない。
図4に示すように、加熱ローラ9aの内部には、2個のヒータ913が配置されている。2個のヒータ913は、その軸方向が加熱ローラ9aの第1回転軸J1(Y方向)と平行な状態で並列して配置されている。ヒータ913は、通電によって発熱し、加熱ローラ9aを内部から加熱する。ヒータ913は、例えば、ハロゲンヒータやセラミックヒータから構成されている。ヒータ913は、加熱ローラ9aを介して、定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)を加熱する。
温度検出部材980について説明する。図4に示すように、温度検出部材980は、非接触式の温度検出センサである。温度検出部材980は、加熱ローラ9aの外周面に対向して配置される。温度検出部材980は、加熱ローラ9aの外周面に接触せずに加熱ローラ9aの外周面の温度を検出する。温度検出部材980は、例えば、サーミスタから構成される。
加圧ローラ920について説明する。図2A及び図2Bに示すように、加圧ローラ920は、第1回転軸J1に平行でY方向に延びる第2回転軸J2を中心に回転可能に構成される。加圧ローラ920は、加圧ローラ本体921と、第2回転軸J2と同軸の第2軸部材922と、を有する。加圧ローラ本体921は、金属製の円柱状部材の外周に、シリコンゴム等による所定厚さの弾性層を有して構成され、所定の外径の円柱状に形成されている。弾性層の表面には、フッ素系の剥離層が形成されている。
第2軸部材922は、加圧ローラ本体921の両端部からY方向外側それぞれに突出して形成されている。第2軸部材922は、定着フレームなどにおける軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。
加圧ローラ920は、加熱ローラ9aに対して、定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)を挟んで反対側に配置されている。これにより、加圧ローラ920は、第2回転軸J2を中心に回転可能に且つ加熱ローラ9aに対向して配置される。加圧ローラ920は、加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動されるようにして、定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)におけるニップ圧を変更する。加圧ローラ920は、実質的にはプリンタ1におけるケース体BDに対して相対的に移動しないが、定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)におけるニップ圧を変更させるための微小な移動が許容される。
詳細については後述するが、定着ニップ圧変更部511は、加圧ローラ920を加熱ローラ9a側に向けて押圧可能な操作アーム524を有して構成される。操作アーム524は、定着フレームに対して揺動する。この操作アーム524の揺動によって、操作アーム524は、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるように押圧し、又は押圧を解除して、定着ニップN9(主定着ニップMN及び補助定着ニップHN)におけるニップ圧を変更させる。
詳述すると、図2A及び図2Bに示すように、操作アーム524は、加圧ローラ920の第2軸部材922の外周面に当接する位置(図2A参照)又は加圧ローラ920の第2軸部材922の外周面から離間する位置(図2B参照)に位置するように構成されている。これにより、加圧ローラ920は、加熱ローラ9aに対して2段階の異なる押圧状態となる。加圧ローラ920の2段階の押圧状態は、加圧ローラ920が回転ベルト9bを介して加熱ローラ9aの外周面を強く押圧する「通常定着ニップ圧状態」と、加熱ローラ9aに対する加圧ローラ920の押圧する力が通常定着ニップ状態における押圧する力よりも小さい「減圧ニップ圧状態」と、である。
通常定着モードの場合には、加圧ローラ920が回転ベルト9bを介して加熱ローラ9aを押圧する押圧状態は、通常定着ニップ圧状態にある。また、減圧モードの場合には、加圧ローラ920が加熱ローラ9aを押圧する押圧状態は、減圧ニップ圧状態にある。
テンションローラ930について説明する。図2A及び図2Bに示すように、テンションローラ930は、第1回転軸J1に平行でY方向に延びる第3回転軸J3を中心に回転可能に構成される。テンションローラ930は、テンションローラ本体931と、第3回転軸J3と同軸の第3軸部材932と、を有する。テンションローラ本体931は、円柱状の金属素材等によって形成され、所定の外径を有する。第3軸部材932は、テンションローラ本体931の両端部からY方向外側それぞれに突出して形成されている。第3軸部材932は、定着フレームなどにおける軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。これにより、テンションローラ930は、Y方向に延びる第3回転軸J3を中心に回転可能となっている。テンションローラ930は、コピー機1におけるケース体BDに対して相対的に移動しない。
テンションローラ930は、加圧ローラ920に対してZ方向の−側(マイナス側)に離間した位置に配置されている。
回転ベルト9bについて説明する。図3A及び図3Bに示すように、回転ベルト9bは、所定の幅及び所定の長さを有し、環方向に回転可能な環状(帯状)の無端ベルトからなる。回転ベルト9bは、耐熱性を有する可撓性素材によって、例えば、ポリイミドフィルムの外周面に、肉厚が50μm程度のSUS(ステンレス鋼)のメッキ等の非磁性金属層を設け、この非磁性金属層の外周面に、肉厚が100μmのシリコンゴムの弾性層を設け、更に、弾性層の外周面に、肉厚が50μm程度のPFA等のフッ素樹脂からなる剥離層を設けることで構成される。
回転ベルト9bは、加圧ローラ920とテンションローラ930とに周回可能に掛け渡されている。回転ベルト9bの内周面には、加圧ローラ920の外周面及びテンションローラ930の外周面が当接する。回転ベルト9bは、環状に回転方向(環方向)Rに回転可能に形成される。
図4に示すように、回転ベルト9bは、加熱ローラ9aに当接するように配置される。回転ベルト9bは、加熱ローラ9aと加圧ローラ920とにより挟み込まれる第1部951と、第1部951に連続して形成され加熱ローラ9aに当接する第2部952と、を有する。
テンションローラ930の外周面は、回転ベルト9bの内周面に当接する。テンションローラ930は、回転ベルト9bにおける第1部951よりも用紙Tの搬送方向D1における上流側に配置される。テンションローラ930は、加圧ローラ920に掛けられた回転ベルト9bの内周面を外側に向けて押圧する。これにより、テンションローラ930は、回転方向Rに伸張させるような張力を回転ベルト9bに付与する。
加熱ローラ9a、加圧ローラ920、回転ベルト9b及びテンションローラ930は、次のように回転する。具体的には、加熱ローラ9aが回転することにより、加熱ローラ9aの外周面に当接する回転ベルト9bが従動して回転する。そして、回転ベルト9bが回転することにより、回転ベルト9bの内周面に当接するテンションローラ930及び回転ベルト9bの内周面に当接する加圧ローラ920が、従動して回転する。
ベルト位置変更部513について説明する。
ベルト位置変更部513は、回転ベルト9bを回転方向(環方向)Rに回転させることにより回転ベルト9bを移動させる。ベルト位置変更部513の駆動は、ベルト位置変更制御部973により制御される。本実施形態においては、ベルト位置変更部513は、加熱ローラ9aを回転駆動することにより回転ベルト9bを従動して回転させる第1回転体駆動部513Aから構成される。
回転ベルト9bにおける第1部951及び第2部952について更に説明する。
図4に示すように、回転ベルト9bにおいて、第1部951は、加熱ローラ9aと加圧ローラ920とにより挟み込まれる部分である。回転ベルト9bにおいて、第2部952は、第1部951に連続して形成され、加熱ローラ9aに当接する部分である。
詳述すると、加圧ローラ920は、回転ベルト9bを介して加熱ローラ9aを押圧するように配置される。これにより、加圧ローラ920は、加熱ローラ9aに対向する部分において、回転ベルト9bを介して加熱ローラ9aの表面形状に沿うように弾性変形する。そして、加圧ローラ920は、回転ベルト9bの一部を、加熱ローラ9aとの間に挟み込む。このように、加圧ローラ920は、加熱ローラ9aとの間に回転ベルト9bの一部を挟みこむことにより、回転ベルト9bに、回転ベルト9bにおける挟まれた部分としての第1部951を形成する。
第2部952は、第1部951に連続した部分であり、加熱ローラ9aに当接しているが、加熱ローラ9aと加圧ローラ920とに挟まれていない部分から形成される。
定着ニップN9について説明する。図4に示すように、定着ニップN9は、主定着ニップMN及び補助定着ニップHNからなる。
主定着ニップMNは、回転ベルト9bにおける第1部951と加熱ローラ9aにおける第1部951に向かい合う部分とにより形成されるニップである。
補助定着ニップHNは、回転ベルト9bにおける第2部952と加熱ローラ9aにおける第2部952に向かい合う部分とにより形成され、主定着ニップMNに連続して位置するニップである。
このように、定着ニップN9のニップ長さ(面積)は、主定着ニップMNの他に、主定着ニップMNに連続する補助定着ニップHNが形成されることで増大する。
ガイド部材960について説明する。図4に示すように、ガイド部材960は、第2搬送路L2(図1参照)を搬送される用紙Tを定着ニップN9へ案内するための部材である。ガイド部材960は、回転ベルト9bにおける加圧ローラ920とテンションローラ930との間であって、回転ベルト9bの環方向Rにおいて、定着ニップN9の上流側に位置する上流部分965に対向して配置される。ガイド部材960は、回転ベルト9bから離間して配置されている。
ガイド部材960は、略矩形状の板材により形成される。ガイド部材960は、第2搬送路L2を搬送される用紙Tを定着ニップN9へ案内することができる位置及び角度で配置される。本実施形態においては、ガイド部材960は、Z方向においては、回転ベルト9bにおける上流部分965の外周面に対向する位置からZ方向のマイナス側に延びるように形成される。また、ガイド部材960は、Y方向においては、回転ベルト9bの幅に対応して回転ベルト9bの幅の長さでY方向に延びるように形成される。つまり、ガイド部材960は、一部が回転ベルト9bにおける上流部分965の外周面に対向してZ−Y平面に略平行に配置される。
図3A及び図3Bに示すように、ガイド部材960における定着ニップN9とは反対側の端部は、支持部材963に固定される。支持部材963は、テンションローラ930に対してZ方向の−側(マイナス側)に離間した位置に配置されている。
ガイド部材960は、不図示の第1付勢部材により、定着ニップN9側の端部が回転ベルト9b側に向かう方向に(X方向のマイナス側に向けて)付勢されている。
詳細については後述するが、ガイド部材駆動部512は、X方向のプラス側及びX方向のマイナス側に移動する操作枠部材530を有して構成される。操作枠部材530は、第1付勢部材の付勢力に抗して、ガイド部材960を回転ベルト9bから離れる方向(X方向のプラス側)に押圧する。これにより、定着モード変更機構510における操作枠部材530は、ガイド部材960を回転ベルト9bから離れる方向(X方向のプラス側)又は回転ベルト9bに向かう方向(X方向マイナス側)に移動させる。
詳述すると、図2A及び図2Bに示すように、ガイド部材960は、操作枠部材530の移動により、2段階の異なる位置をとり得るように構成される。
定着ニップ圧変更部511について説明する。
定着ニップ圧変更部511は、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるようにして、定着ニップN9におけるニップ圧を第1ニップ圧と第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更させる。
定着ニップ圧変更部511は、図2Aから図3Bに示すように、加圧ローラ920を押圧する操作アーム524と、操作アーム524を回動可能に支持する操作アーム軸部材525と、操作アーム524の揺動と連動して動作する操作金具521と、操作金具521を押圧操作するモード変更カム515と、操作金具521をモード変更カム515側に向けて(Z方向のマイナス側へ)付勢する第2付勢部材522と、第2付勢部材522を支持するプッシュロッド523と、プッシュロッド523のZ方向のプラス側への移動を規制する規制アーム505と、モード変更カム515を駆動するギア駆動機構(図示せず)と、モード変更カム515とギア駆動機構とを連結するカム軸部材516と、を備える。
定着ニップ圧変更部511における各構成要素は、ギア駆動機構を除いてY方向に一対設けられている。Y方向に一対の構成要素については、特に必要がない限り一方のみ説明する。ギア駆動機構は、Y方向のプラス側のみに設けられている。
図2Aから図3Bに示すように、操作アーム524は、アーム状の部材であり、鋼板等の所定厚さの板材によって形成されている。操作アーム524は、ローラ押圧部524Aと、支点孔部524Bと、延在部524Cとを備えている。
ローラ押圧部524Aは、加圧ローラ920の第2軸部材922のZ方向のプラス側に配置される。ローラ押圧部524Aの下面(厚さ部分により形成される面)は、加圧ローラ920の第2軸部材922の外周面に対向する。ローラ押圧部524Aの下面は、第2軸部材922の外周面に沿うように湾曲している。
ローラ押圧部524Aは、加圧ローラ920の第2軸部材922の外周面をZ方向のプラス側から押圧可能である。ローラ押圧部524Aは、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向に移動させるように押圧する位置(図2A参照)と、加圧ローラ920を加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるように離間する位置(図2B参照)と、に位置される。
支点孔部524Bは、ローラ押圧部524AにおけるX方向のプラス側の端部に形成される。操作アーム524は、支点孔部524Bを中心に回動可能に操作アーム軸部材525に支持される。操作アーム軸部材525は、Y方向に延びるように形成され、プリンタ1のケース体BDなどに支持される。操作アーム軸部材525は、ケース体BDに対して相対的に移動しない。
これにより、操作アーム524は、支点孔部524Bを支点として、X−Z平面内で定着フレームに対して揺動可能となっている。操作アーム524が支点孔部524Bを支点として揺動すると、加圧ローラ920は、加熱ローラ9aに向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるように、回転ベルト9bを介して加熱ローラ9aに押圧又は押圧が解除される。
延在部524Cは、ローラ押圧部524Aから所定長さX方向のマイナス側に延在する部分である。延在部524CのX方向のマイナス側の端部には、後述する操作金具521の縦アーム521Bにおける上端部(Z方向のプラス側の端部)が連結されて固定されている。
操作金具521について説明する。図2Aから図3Bに示すように、操作金具521は、X方向に延びる横アーム521Aと、Z方向に延びる縦アーム521Bと、を有する。操作金具521は、横アーム521Aと縦アーム521BとがL字状に屈曲した形状を有する。即ち、横アーム521Aと縦アーム521Bとが直交する形状となっている。操作金具521は、鋼板等の所定厚さの板材から形成されている。
横アーム521Aは、図3A及び図3Bに示すように、後述するモード変更カム515の上側(Z方向のプラス側)に配置されている。横アーム521Aの下面は、モード変更カム515と対向している。横アーム521Aには、貫通孔521Cが形成されている。貫通孔521Cには、プッシュロッド523が貫通して配設されている。横アーム521Aは、第2付勢部材522により、モード変更カム515に向かう方向に(Z方向のマイナス側に向けて)付勢されている。
前述のように、縦アーム521Bにおける上端部(Z方向のプラス側の端部)には、操作アーム524が連結されて固定されている。そのため、操作金具521は、操作アーム524に対して相対的に移動せずに固定されている。つまり、操作アーム524及び操作金具521は、一体として、支点孔部524Bを支点として、X−Z平面内で定着フレームに対して揺動する。
操作アーム524及び操作金具521は、一体として揺動するため、操作アーム524が加圧ローラ920の第2軸部材922の外周面に当接する位置において、Z方向のマイナス側への移動が規制される。
次に、モード変更カム515について説明する。
図2Aから図3Bに示すように、モード変更カム515は、2枚の所定厚さの同一形状の板材により構成される。モード変更カム515は、複数の曲線と複数の直線とが組み合わされた外縁を有し、一方向に長い部材により形成される。
モード変更カム515は、操作金具521の横アーム521Aの下側(Z方向のマイナス側)に配置される。モード変更カム515は、2枚の板材がプッシュロッド523を挟むように対向して配置されて構成される。モード変更カム515は、カム軸部材516のY方向の端部側において、カム軸部材516に偏心して連結される。
モード変更カム515は、カム軸部材516の軸中心J4を中心として回転することで、偏心した状態で回転する。つまり、モード変更カム515は、いわゆる偏心カムの機能を有する。
モード変更カム515の外周面はカム面となっている。カム面は、第1弧状部515Aと、第1直線部515Bと、第2弧状部515Cとを有している。
第1弧状部515Aは、カム軸部材516の軸中心J4から最も離間する位置において、縁部が弧状に形成される。第1直線部515Bは、第1弧状部515Aに対してカム軸部材516を挟んだ反対側の縁部に形成され、且つカム軸部材516の軸中心J4からの距離が第1弧状部515Aよりも近い位置において直線状に形成される。
第2弧状部515Cは、第1直線部515Bに連続して形成され、カム軸部材516の軸中心J4からの距離が第1直線部515Bよりも近い位置において弧状に形成される。
つまり、モード変更カム515は、カム軸部材516の軸中心J4から遠いカム面から順に、第1弧状部515A、第1直線部515B及び第2弧状部515Cのカム面を有している(第1弧状部515A>第1直線部515B>第2弧状部515C)。
カム軸部材516は、Y方向に延びており、一対のモード変更カム515を連結する。カム軸部材516は、ギア駆動機構(図示せず)によって軸中心J4を中心に回転駆動される。
カム軸部材516の回転によって、モード変更カム515は、図2A及び図3Aに示すように、第1弧状部515Aが操作金具521の横アーム521Aから離間し且つ第1弧状部515AがX方向のマイナス側を向く姿勢(通常姿勢)と、図2B及び図3Bに示すように、通常姿勢から第1弧状部515Aが操作金具521の横アーム521Aの下面に当接して操作金具521を押し上げ且つ第1弧状部515AがZ方向のプラス側を向く姿勢(減圧姿勢)との間で、回転するようになっている。
第2付勢部材522について説明する。図2Aから図3Bに示すように、第2付勢部材522は、所定長さを有するコイルスプリングからなり、後述するプッシュロッド523を内側に配置した状態で配置されている。つまり、第2付勢部材522の内側にプッシュロッド523が挿入されている。第2付勢部材522は、その弾性復帰力により、操作金具521の横アーム521Aを、モード変更カム515に向けて(Z方向のマイナス側に向けて)付勢する。
プッシュロッド523について説明する。図2Aから図3Bに示すように、プッシュロッド523は、所定長さを有する軸状の部材からなり、Z方向に沿って延びている。プッシュロッド523の上端部523Aの上面は、後述する規制アーム505によりZ方向のプラス側への移動が規制されている。
プッシュロッド523は、その外側に、第2付勢部材522が配置されると共に、操作金具521の横アーム521Aの貫通孔521C(図3A及び図3B参照)に挿通される。また、プッシュロッド523の上端部523Aは、第2付勢部材522によりZ方向のプラス側へ移動することが規制される。そのため、第2付勢部材522は、モード変更カム515に向けて移動するように、操作金具521の横アーム521Aを付勢する。
図2Aから図3Bに示すように、規制アーム505は、アーム状の部材からなり、その長手方向の略中央において、定着フレーム等に架設された保持軸506に可能に支持されている。規制アーム505の下端部は、プッシュロッド523の上端部523Aに当接している。
ギア駆動機構は、カム軸部材516に連結された一対のモード変更カム515を回転駆動するようになっている。
このように、定着ニップ圧変更部511は、モード変更カム515を回転させることで、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるようにして、定着ニップN9のニップ圧を変更させる。
定着ニップ圧変更部511においては、操作金具521のZ方向の位置が規定されると共に、操作金具521に係合した操作アーム524の揺動位置も規定される。その結果、加圧ローラ920を加熱ローラ9aに押圧させる力が定まる。
操作金具521は、モード変更カム515の回転によるモード変更カム515のカム面の変位に対応してZ方向に移動する。操作金具521がZ方向に移動することにより、操作アーム524が揺動する。これにより、操作アーム524に押圧される加圧ローラ920は、加熱ローラ9aに向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動するように押圧される。その結果、定着ニップN9のニップ圧が変更される。
図2A及び図3Aに示すように、モード変更カム515は、定着ニップ圧変更部511において第1弧状部515Aが操作金具521の横アーム521Aから離間し且つ第1弧状部515AがX方向のマイナス側を向く姿勢(通常姿勢)となる。
また、図2B及び図3Bに示すように、モード変更カム515は、定着ニップ圧変更部511において第1弧状部515Aが操作金具521の横アーム521Aの下面に当接して操作金具521を押し上げ且つ第1弧状部515AがZ方向のプラス側を向く姿勢(減圧姿勢)となる。
次に、ガイド部材駆動部512について詳細に説明する。ガイド部材駆動部512は、定着ニップ圧変更部511と一部の構成が共通している。例えば、モード変更カム515、ギア駆動機構(図示せず)及びカム軸部材516は、定着ニップ圧変更部511と共通する構成である。
詳述すると、ガイド部材駆動部512は、モード変更カム515と、ギア駆動機構と、カム軸部材516と、操作枠部材530とを備える。
操作枠部材530は、図2Aから図3Bに示すように、X方向において、ガイド部材960と、カム軸部材516との間に配置される。操作枠部材530は、テンションローラ930に対してY方向の端部の外側に配置される。
操作枠部材530は、全体として枠状に形成される。操作枠部材530は、Z方向に延びる対向する一対の縦部材530Aと、X方向に延びる対向する一対の横部材530Bとを有して構成される。
操作枠部材530は、不図示の操作枠ガイド部材などにより、ガイド部材960が回転ベルト9bの上流部分965に向かう方向又は上流部分965から離間する方向のみの移動が許容されている。本実施形態においては、操作枠部材530は、X方向のみの移動が許容される。
操作枠部材530におけるガイド部材960側の縦部材530Aには、ガイド部材960側(X方向のプラス側)に突出する凸部531が形成されている。凸部531は、ガイド部材960に当接する。これにより、操作枠部材530は、X方向のマイナス側に向けて付勢される。
操作枠部材530におけるカム軸部材516側の縦部材530Aには、モード変更カム515側(X方向のマイナス側)に突出するように突出枠部532が形成されている。突出枠部532は、モード変更カム515の回転により、モード変更カム515の第1直線部515B又は第2弧状部515Cに当接する。これにより、操作枠部材530は、モード変更カム515のカム面の位置に応じて、ガイド部材960の付勢力に抗してX方向に移動可能である。つまり、操作枠部材530は、ガイド部材960をX方向に移動可能である。従って、モード変更カム515が回転することにより、操作枠部材530を介してガイド部材960の位置は変更される。
具体的には、操作枠部材530の突出枠部532に当接するモード変更カム515のカム面の位置により、操作枠部材530のX方向の位置は変更される。詳細には、操作枠部材530は、モード変更カム515におけるカム軸部材516の軸中心J4から離れる位置に形成される第1直線部515Bが突出枠部532に当接する第1位置(図2A及び図3A参照)と、第1直線部515Bよりもカム軸部材516からの距離が短い位置に形成される第2弧状部515Cが突出枠部532に当接する第2位置(図2B及び図3B参照)との2段階の位置に変更される。ガイド部材960は、操作枠部材530のX方向の位置が変更されることにより、X方向の位置を変更する。
次に、制御部970について説明する。図4に示すように、制御部970は、定着ニップ圧変更制御部971と、ガイド部材駆動制御部972と、ベルト位置変更制御部973と、温度判定部974と、経過時間判定部975とを有する。
定着ニップ圧変更制御部971は、用紙Tにトナーを定着させる場合には、ニップ圧を第1ニップ圧にするように定着ニップ圧変更部511を制御する。また、定着ニップ圧変更制御部971は、定着装置9における待機状態から所定時間の経過後において、ニップ圧が第2ニップ圧となるように定着ニップ圧変更部511を制御する。なお、定着装置9における待機状態とは、加熱ローラ9aがヒータ913に加熱されることにより用紙Tにトナーを定着可能な状態で待機する状態である。
定着装置9における待機状態は、温度検出部材980による加熱ローラ9aにおける外周面の検出温度に基づいて、後述する温度判定部974により判定される。
ガイド部材駆動制御部972は、ガイド部材960のX方向の位置を変更するようにガイド部材駆動部512を制御する。
ベルト位置変更制御部973は、定着装置9の待機状態から所定時間の経過後におけるニップ圧が第2ニップ圧の状態において、回転ベルト9bを環方向Rに所定距離移動させるように、ベルト位置変更部513を制御する。
本実施形態においては、ベルト位置変更制御部973は、第1回転体駆動制御部973Aを有して構成される。第1回転体駆動制御部973Aは、ベルト位置変更部513における第1回転体駆動部513Aを制御することにより回転ベルト9bを環方向Rに所定距離移動させる。
温度判定部974は、温度検出部材980による加熱ローラ9aにおける外周面の検出温度に基づいて、定着装置9が待機状態にあるか否かを判定する。温度判定部974は、温度検出部材980により検出された温度が所定温度以上である場合に、定着装置9が待機状態であると判定する。
経過時間判定部975は、定着装置9が待機状態になってから所定時間が経過したか否かを判定する。
次に、本実施形態の定着装置9におけるニップ圧に関するモードについて詳述する。
モード変更カム515は、前述したように、定着ニップ圧変更制御部971により制御される定着ニップ圧変更部511によって回転駆動され、第1弧状部515AがX方向のマイナス側を向いて操作金具521の横アーム521Aから離間する通常姿勢(図2A及び図2A参照)と、通常姿勢から90度回転して第1弧状部515AがZ方向のプラス側を向いて操作金具521の横アーム521Aの下面に当接して操作金具521を押し上げる減圧姿勢(図2B及び図3B参照)とに姿勢を変更することができる。
詳述すると、図2A及び図3Aに示すように、モード変更カム515が通常姿勢(通常定着モード)の場合には、モード変更カム515は、操作金具521の横アーム521Aに当接しない位置にある。この状態では、操作金具521は、Z方向の移動範囲のうちで最もマイナス側に位置する。そして、この状態では、操作アーム524は、その揺動範囲のうちで最もZ方向のマイナス側に揺動する。そして、操作アーム524に支持された加圧ローラ920は、その外周面が加熱ローラ9aの外周面に対して大きく押圧する力を付与する通常定着位置に位置することになる。
通常定着モードにおける定着ニップN9におけるニップ圧を「第1ニップ圧」ともいう。
また、通常定着モードでは、図4に示すように、加圧ローラ920は、加熱ローラ9aの外周面と干渉し、弾性変形する。そして、加圧ローラ920の弾性層の弾性復帰力により、加圧ローラ920は、加圧ローラ920と加熱ローラ9aとの間に介在する回転ベルト9bの表面を加熱ローラ9aの外周面に押圧し、主定着ニップMN(MN1)を形成する。
また、回転ベルト9bにおけるテンションローラ930と加圧ローラ920との間の部分は、加圧ローラ920の外周面に巻回する前に(用紙Tの搬送方向D1の上流側で)、加熱ローラ9aの外周面に所定長さ当接し、その後、加熱ローラ9aと加圧ローラ920との間に導入される。
これにより、主定着ニップMNの上流側に、回転ベルト9bの外面が加熱ローラ9aの外周面に当接する補助定着ニップHN(HN1)が形成される。
通常定着モードにおいて、主定着ニップMNにおける用紙Tの搬送方向D1のニップ長さを「ニップ長さMN1」ともいう。また、補助定着ニップHNのニップ長さを「ニップ長さHN1」ともいう。ニップ長さMN1とニップ長さHN1とを併せて「第1ニップ長さ」ともいう。
つまり、加圧ローラ920に押圧されずに回転ベルト9bのみが加熱ローラ9aの外周面に当接する補助定着ニップHN(HN1)と、加圧ローラ920に押圧されて回転ベルト9bが加熱ローラ9aの外周面に密着する主定着ニップMN(MN1)とが連続する、第1ニップ長さを有する定着ニップN9が形成される。
図4に示すように、定着ニップN9が形成される通常定着モードでは、用紙Tは、補助定着ニップHNに続いて、主定着ニップMNに導入される。これにより、未定着のトナー画像が形成された(トナーTNが転写された)用紙Tは、補助定着ニップHNにおいて予め加圧された後、主定着ニップMNにおいて一層大きな圧力で加圧されると共に加熱されることになる。その結果、定着工程において画像の乱れを抑制して、安定した定着作用を行うことができる。
一方、図2B及び図3Bに示すように、モード変更カム515が通常姿勢から減圧姿勢に回転した減圧モードでは、操作金具521は、モード変更カム515の第1弧状部515AによりZ方向のプラス側に押圧される。そのため、操作金具521は、第2付勢部材522の付勢力に抗してZ方向のプラス側に操作され、その移動範囲のうち最もZ方向のプラス側に位置する。その結果、操作アーム524は、揺動し、加圧ローラ920が回転ベルト9bを介して加熱ローラ9a側へ押圧する力が通常モード時よりも少なくなる。つまり、減圧モードは、通常定着モードのときよりも、加圧ローラ920は、加熱ローラ9a側へ押圧されない。
減圧モードにおける定着ニップN9のニップ圧を「第2ニップ圧」という場合、第2ニップ圧は、通常定着モードにおける第1ニップ圧よりも小さい。なお、主定着ニップMNにおける第2ニップ圧は、圧力がない状態(ゼロ)でもよい。
なお、加圧ローラ920の外周面が加熱ローラ9aの外周面とほとんど又は全く干渉しない「非干渉状態」を、規制アーム505の揺動操作によって、実現することができる。即ち、規制アーム505を、図2Aの矢印D3で示す方向に揺動させることで、第2付勢部材522が略自由状態に伸長して、操作金具521を押圧しない状態となる。
これにより、加圧ローラ920を支持する操作アーム524が自由に揺動可能となって、加圧ローラ920が加熱ローラ9aの外周面を押圧しなくなる。その結果、定着工程の途中で詰まり(JAM)等の搬送不良を生じた用紙Tを容易に除去することができる。これは、モード変更カム515が通常姿勢又は減圧姿勢のいずれであっても同様である。詳細な説明は省略するが、規制アーム505は、図示しないプリンタカバーの開放に連動して揺動されるように構成されている。これによって詰まり等の用紙Tの搬送不良が発生した際にプリンタカバーを開放することで、加圧ローラ920を非干渉状態とすることができる。
次に、図1を参照して、本実施形態のプリンタ1の動作について、簡単に説明する。
まず、給紙カセット52に収容された用紙Tに片面印刷を行う場合について説明する。
給紙カセット52に収容された用紙Tは、前送りコロ61及び給紙ローラ対81によって第1搬送路L1に送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介して、中間ローラ対82により、レジストローラ対80に搬送される。
レジストローラ対80においては、用紙Tのスキュー補正や、トナー画像とのタイミング調整が行われる。
レジストローラ対80から排出された用紙Tは、第1搬送路L1を介して中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間(2次転写ニップN2)に導入される。そして、用紙Tには、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間において、トナー画像が転写される。
その後、用紙Tは、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間から排出され、第2搬送路L2を介して、定着装置9における加熱ローラ9aと回転ベルト9bとの間の定着ニップN9に導入される。そして、定着ニップN9においてトナーが溶融し、トナーが用紙Tに定着される。
次いで、用紙Tは、第3搬送路L3を通して排紙部50に搬送され、排出ローラ対53により排紙部50から排紙集積部M1に排出される。
このようにして、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷が完了する。
手差しトレイ65に載置された用紙Tに片面印刷を行う場合には、手差しトレイ65に載置された用紙Tは、給紙コロ66によって手差し搬送路Laに送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介して、レジストローラ対80に搬送される。それ以降の動作は、前述した、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷の動作と同様であり、説明を省略する。
次に、両面印刷を行う場合のプリンタ1の動作について説明する。
片面印刷の場合には、前述した通り、片面印刷がされた用紙Tが、排紙部50から排紙集積部M1に排出されて印刷動作が完了する。
これに対し、両面印刷を行う場合には、片面印刷がされた用紙Tが、戻し搬送路Lbを介して、片面印刷時とは表裏反転して、レジストローラ対80に再度搬送されることにより、用紙Tに両面印刷が施される。
詳述すると、片面印刷がされた用紙Tが排出ローラ対53により排紙部50から排出されるまでは、前述した片面印刷の動作と同様である。而して、両面印刷の場合には、片面印刷がされた用紙Tが排出ローラ対53により保持されている状態において、排出ローラ対53の回転を停止させ、逆方向に回転させる。このように排出ローラ対53を逆方向に回転させると、排出ローラ対53に保持されている用紙Tは、第3搬送路L3を逆方向(排紙部50から第1分岐部Q1に向かう方向)に搬送される。
前述したように、用紙Tが、第3搬送路L3を逆方向に搬送されると、整流部材58により、用紙Tは、戻し搬送路Lbへ整流され、その後、第2合流部P2を介して、第1搬送路L1に合流する。ここで、用紙Tは、片面印刷時とは表裏反転している。
更に、用紙Tは、レジストローラ対80により前記補正又は前記調整が行われ、第1搬送路L1を介して、感光体ドラム2と2次転写ローラ8との間に導入される。用紙Tは、戻し搬送路Lbを経由することにより、非印刷面が2次転写ローラ8に対向するので、非印刷面にトナー画像が転写され、その結果、両面印刷が施される。
次に、定着装置9の制御フローについて、図5を参照しながら説明する。図5は、定着装置9の制御の一例を示すフローチャートである。
プリンタ1における電源がONにされると、定着装置9において定着動作の準備が行われる。
まず、ステップST1において、定着ニップ圧変更制御部971は、定着ニップ圧変更部511におけるギア駆動機構を駆動又は維持して、定着ニップN9のニップ圧を第1ニップ圧になるように変更又は維持する。これにより、定着装置9は、通常定着モードとなるか、又は通常定着モードを維持する。
ステップST2において、ヒータ913への電力の供給が開始される。これにより、ヒータ913が発熱し、ヒータ913による加熱ローラ9aの加熱が開始される。ヒータ913による加熱ローラ9aの加熱が開始されると、加熱ローラ9aの昇温が開始する。加熱ローラ9aに伝達された熱は、回転ベルト9bを介して加圧ローラ920及びテンションローラ930にも伝達される。
ステップST3において、温度判定部974は、温度検出部材980により検出される加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上である場合には、温度判定部974は、定着装置9が待機状態であると判定し、ステップST4へ進む。加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値未満である場合には、温度判定部974は、定着装置9が待機状態ではないと判定し、ステップST3に戻り、温度検出部材980により検出される加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上であるか否か再度判定する。
ステップST4において、定着装置9は、待機状態となる。定着装置9の待機状態は、用紙Tにトナーを定着可能な状態である。なお、待機状態においては、定着装置9は、加熱ローラ9a、加圧ローラ920及びテンションローラ930を回転させない状態で待機する。
ステップST5において、経過時間判定部975は、定着装置9が待機状態からの経過時間が第1所定時間を経過しているか否かを判定する。第1所定時間は、定着装置9を減圧モードに移行して回転ベルト9bを移動させるための待機状態からの経過時間として設定される。本実施形態においては、例えば、第1所定時間は、45分に設定されている。待機状態からの経過時間が第1所定時間を経過していると判定された場合には、ステップST6に進む。待機状態からの経過時間が第1所定時間を経過していないと判定された場合には、ステップST14に進む。
ステップST6において、定着ニップ圧変更制御部971は、定着ニップ圧変更部511におけるギア駆動機構を駆動して、定着ニップN9のニップ圧を第2ニップ圧になるように変更する。これにより、定着装置9は、減圧モードとなる。なお、主定着ニップMNにおける第2ニップ圧は、圧力がない状態(ゼロ)でもよい。
ステップST7において、ベルト位置変更制御部973は、ベルト位置変更部513を制御して回転ベルト9bを環方向Rに所定距離移動させる。本実施形態においては、ベルト位置変更制御部973における第1回転体駆動制御部973Aが、ベルト位置変更部513における第1回転体駆動部513Aを制御する。
つまり、第1回転体駆動制御部973Aは、加熱ローラ9aを回転駆動させるように第1回転体駆動部513Aを制御する。加熱ローラ9aが回転駆動されると、加熱ローラ9aの回転駆動により、回転ベルト9bは従動回転する。回転ベルト9bの移動は、加熱ローラ及び加圧ローラにより挟まれている回転ベルト9bの部分の位置を加熱ローラ及び加圧ローラに挟み込まれない位置に移動させる程度の移動でもよい。
これにより、ニップ圧が第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧の状態で回転ベルト9bを移動させているため、加熱ローラ9a及び加圧ローラ920により付与される圧力並びにヒータの熱の影響による回転ベルト9bの変形を抑制することができる。また、加熱ローラ9aを回転駆動させているので、加熱ローラ9aにおける回転ベルト9bを挟み込んでいる部分の位置も移動する。これにより、加熱ローラ9a及び加圧ローラ920により付与される圧力並びにヒータの熱の影響による加熱ローラ9aの変形を抑制することができる。
また、定着装置9の減圧モードにおける主定着ニップMNの第1ニップ圧の圧力がない状態(ゼロ)の場合、回転ベルト9bを移動させる際に、一層回転ベルト9bの変形を抑制することができる。また、回転ベルト9bの外周面が加熱ローラ9aの外周面に当接する補助定着ニップHNを主定着ニップMNの上流側に有しているため、回転ベルト9bは、加熱ローラ9aの回転駆動により従動回転される。
ステップST8において、定着ニップ圧変更制御部971は、定着ニップ圧変更部511におけるギア駆動機構を駆動又は維持して、定着ニップN9のニップ圧を第1ニップ圧になるように変更する。これにより、定着装置9は、通常定着モードとなる。
ステップST9において、経過時間判定部975は、定着装置9が待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過しているか否かを判定する。第2所定時間は、省電力状態へ移行させるための待機状態からの経過時間として設定される。省電力状態は、省電力のために定着装置9におけるヒータ913の発熱動作が停止される状態である。つまり、定着装置9は、待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過した場合には、省電力のため省電力状態になる。第2所定時間は、第1所定時間よりも長く設定される。
本実施形態においては、例えば、第2所定時間は、60分に設定されている。待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過していないと判定された場合には、ステップST10に進む。待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過していると判定された場合には、ステップST15に進む。
ステップST10において、プリンタ1は画像形成開始情報を受信したか否かを判定する。プリンタ1が画像形成開始情報を受信したと判定された場合には、画像の形成を開始する準備を行う。具体的には、プリンタ1における操作パネル(図示せず)等の画像形成開始ボタン(図示せず)等が操作されることで画像の形成が開始可能である。プリンタ1が画像形成開始情報を受信した場合には、ステップST11に進む。プリンタ1が画像形成開始情報を受信していないと判定された場合には、ステップST9に戻り、経過時間判定部975は、定着装置9が待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過しているか否かを判定する。
ステップST11において、定着装置9は、定着動作のために加熱ローラ9aを回転駆動する。加熱ローラ9aが回転駆動されると、加熱ローラ9aの回転駆動に伴って、回転ベルト9b、加圧ローラ920、テンションローラ930が従動回転する。
ステップST12において、画像の形成が開始される。
ステップST13において、定着装置9により通常定着モードで画像の定着動作が行われる。その後、定着装置9の制御は終了する。本実施形態における定着装置9は、回転ベルト9bの変形を抑制することができるので、用紙Tへの画像の定着を好適に行うことができる。
次に、ステップST5において待機状態からの経過時間が第1所定時間を経過していないと判定された場合(NO)におけるステップST14について説明する。
ステップST14において、プリンタ1は画像形成開始情報を受信したか否かを判定する。プリンタ1が画像形成開始情報を受信したと判定された場合には、画像の形成を開始する準備を行う。プリンタ1が画像形成開始情報を受信した場合には、ステップST11に進む。プリンタ1が画像形成開始情報を受信していないと判定された場合には、ステップST5に戻り、経過時間判定部975は、定着装置9が待機状態からの経過時間が第1所定時間を経過しているか否かを判定する。
次に、ステップST9において待機状態からの経過時間が第2所定時間を経過していると判定された場合(NO)におけるステップST15について説明する。
ステップST15において、定着装置9は、省電力状態になる。
ステップST16において、プリンタ1は画像形成開始情報を受信したか否かを判定する。プリンタ1が画像形成開始情報を受信したと判定された場合には、画像の形成を開始する準備を行う。プリンタ1が画像形成開始情報を受信した場合には、ステップST17に進む。プリンタ1が画像形成開始情報を受信していないと判定された場合には、ステップST16に戻り、画像形成開始情報を受信したか否かを再度判定する。
ステップST17において、定着装置9におけるヒータ913の発熱動作が開始される。これにより、ヒータ913による加熱ローラ9aの加熱が開始される。ヒータ913による加熱ローラ9aの加熱が開始されると、加熱ローラ9aの昇温が開始する。加熱ローラ9aに伝達された熱は、回転ベルト9bを介して加圧ローラ920及びテンションローラ930にも伝達される。
ステップST18において、温度判定部974は、温度検出部材980により検出される加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上である場合には、温度判定部974は、定着装置9が定着可能状態であると判定し、ステップST11へ進む。加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値未満である場合には、定着装置9が定着可能状態ではないと判定し、ステップST18に戻り、温度検出部材980により検出される加熱ローラ9aの外周面の温度が所定の閾値以上であるか否か再度判定する。
本実施形態の定着装置9によれば、例えば、次の効果が奏される。
本実施形態における定着装置9は、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるようにして定着ニップN9におけるニップ圧を第1ニップ圧と第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更させる定着ニップ圧変更部511と、加熱ローラ9aがヒータ913に加熱されることにより用紙Tにトナーを定着可能な状態で待機する待機状態から所定時間の経過後において、ニップ圧が第2ニップ圧となるように定着ニップ圧変更部511を制御する定着ニップ圧変更制御部971と、回転ベルト9bを移動させるベルト位置変更部513と、待機状態から所定時間の経過後におけるニップ圧が第2ニップ圧の状態で、回転ベルト9bを環方向Rに所定距離移動させるようにベルト位置変更部513を制御するベルト位置変更制御部973と、を備える。
そのため、本実施形態の定着装置9においては、用紙Tが定着される場合に比して、定着ニップN9におけるニップ圧が小さくなる。そして、定着ニップN9のニップ圧が小さくなった状態で、回転ベルト9bを所定距離移動させることができる。従って、加熱ローラと加圧ローラとにより付与される圧力及びヒータの熱の影響による回転ベルトの変形を抑制することができる。
また、本実施形態の定着装置9においては、ベルト位置変更部513は、加熱ローラ9aを回転駆動することにより回転ベルト9bを従動回転させる第1回転体駆動部513Aを有して構成され、ベルト位置変更制御部973は、加熱ローラ9aを回転駆動するように第1回転体駆動部513Aを制御する。そのため、簡易な構成により回転ベルト9bを移動させることができる。また、主定着ニップMNにおける第2ニップ圧の圧力がない(ゼロ)場合であっても、加熱ローラ9aは、回転ベルト9bにおける補助定着ニップHNにおいて当接しているため、回転ベルト9bを移動させることができる。
また、本実施形態の定着装置9は、用紙Tにトナーを定着させる場合には、定着ニップ圧変更制御部971は、ニップ圧を第1ニップ圧となるように定着ニップ圧変更部511を制御する。そのため、用紙Tへの画像の定着を好適に行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、加熱ローラ9a(第1回転体)を回転駆動させ、回転ベルト9bを従動回転させることで回転ベルト9bを移動させているが、これに制限されず、加圧ローラ920(第2回転体)を回転駆動させ、回転ベルト9bを従動回転させて回転ベルト9bを移動させてもよい。
また、第1回転体として、加熱ローラ9aを用いたが、これに代えて、無端状に形成されたベルトからなる加熱回転体を用いてもよい。
前記実施形態においては、加圧ローラ920を加熱ローラ9aへ向かう方向又は加熱ローラ9aから離れる方向に移動させるようにして定着ニップN9におけるニップ圧を変更しているが、これに制限されない。加熱ローラ9a(加熱回転体)のみを移動させるようにして、又は加熱ローラ9a(第1回転体)及び加圧ローラ920(第2回転体)の両方を移動させるようにすることにより、定着ニップN9におけるニップ圧を変更してもよい。
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、カラーコピー機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
また、被転写材は、用紙Tに制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。