JP5344494B2 - 脂質代謝改善剤、機能性食品、食品添加物、抗酸化剤、医薬、動脈硬化予防・改善剤、香粧品、及び脂質代謝改善剤の製造方法 - Google Patents
脂質代謝改善剤、機能性食品、食品添加物、抗酸化剤、医薬、動脈硬化予防・改善剤、香粧品、及び脂質代謝改善剤の製造方法 Download PDFInfo
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Description
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、内臓の周囲に脂肪が蓄積するタイプの内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上が生じている状態である。メタボリックシンドロームは、動脈硬化の進行等により、循環器系の重大疾患の発生頻度が高まることが疑われている。
このうち、脂質異常については、高LDL(Low Density Lipoprotein、低比重リポタンパク)コレステロール血症、低HDL(High Density Lipoprotein、高比重リポタンパク)コレステロール血症、及び高トリグリセリド血症等の種類がある。
ここで、コレステロールは、動物の生体内の代謝過程において主要な役割を果たし、細胞膜の必須成分である。動物の血液中では、コレステロールはリポタンパク質と結びついて輸送される。このため、コレステロールの担体となるリポタンパク質の種類と量(割合)が、脂質異常の指標として重要である。
また、トリグリセリド(triglyceride、TG)は、1分子のグリセロール(glycerol、glycerine)に3分子の脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロールであり、中性脂肪の一種である。血液中のトリグリセリドが高いことにより、後述するリポタンパクのsmall, dense LDLができやすくなるため、動脈硬化への関与が疑われている。
このうち、LDLは、主に、肝臓から体内の各部位へ、コレステロールを運ぶ役割を担う。後述するように、LDLは、血中に増えすぎると、血管壁に沈着して動脈硬化の原因となるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれる。このようにLDLが血液中に多く存在する(140mg/dL以上)脂質異常症が、高LDLコレステロール血症である。
また、近年、このLDLのうち、特に小型で比重の高いsdLDL(small,dense LDL、小粒子LDL)の役割が注目されるようになってきた。sdLDLは、肝臓のLDL受容体と結合しにくいため、通常のLDLより血中での滞在時間が長くなり、血管内皮と長時間接触する。このsdLDLが多いと、動脈硬化が進行しやすいとされ、「動脈硬化惹起性リポタンパク質」であると疑われている。このため、sdLDLコレステロールは「超悪玉コレステロール」とも呼ばれている。
従来技術1のメタボリックシンドローム改善組成物によれば、これを摂取することにより糖質等の消化吸収性が抑制され、血糖値の急激な上昇を抑制できる。その結果、過血糖症状及び過血糖に起因する肥満症、脂肪過多症、糖尿病等のメタボリックシンドローム関連症を効果的に予防ないし治療でき、メタボリックシンドロームの症状を効率よく改善できる。
ジュンサイは、日本及び中国にて、幼葉と、幼葉に隣接する茎が食用に用いられている。ジュンサイの幼葉は、表面が透明なゲル状粘物質で覆われており、独特の食感を有する。このため、日本において、ジュンサイは古代から食されており、水が育む夏の味覚として珍重されてきた。また、中国でも2000年以上前に、歴代帝王への献上品として宮庭宴会の名菜と重宝されていた。
日本では、ジュンサイは澄んだ淡水の池沼に自生するものの、近年は純天然産のものが少なくなっており、栽培によって量産されることが多い。この栽培としては、例えば、ジュンサイ沼に大きなたらいを漕ぎ、晩春〜夏に若芽を摘む方法が用いられている。
日本のジュンサイの主要生産地は秋田県であり、郷土料理として有名である。特に、秋田県山本郡三種町(旧山本町)の収穫・販売量は、日本全国の9割を占め、生産量日本一を誇っている。
ジュンサイそのものは淡白な味のため、お吸い物、酢の物、天ぷらをはじめ、さまざまな料理に応用されており、首都圏や関西圏では高級食材として珍重されている。
従来技術2は、グルコシルトランスフェラーゼの活性阻害作用が極めて強く、歯垢の形成抑制及びう蝕の予防に著しい効果を発揮する。
このため、安全に摂取できて確実に脂肪代謝を改善する食物由来の脂質代謝改善組成物が求められていた。
一方、ジュンサイは、従来より100g当たりのカロリーが6kcalと極めて低く、健康的な自然食品として用いられていた。
しかしながら、ジュンサイの生理活性作用については殆ど知られておらず、従来技術2のグルコシルトランスフェラーゼ活性以外の用途は、あまり分かっていなかった。
本発明の脂質代謝改善剤は、血中中性脂肪値を低下させることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤は、small, dense LDLコレステロール値を低下させることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤は、全LDLに占めるsmall, dense LDLの割合を低下させることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤は、前記LDLの粒子サイズを増加させることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤は、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝関連遺伝子の発現を低下させることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤は、前記ジュンサイが、乾燥加工された植物体であることを特徴とする。
本発明の動脈硬化予防・改善剤は、前記脂質代謝改善剤を含むことを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤の製造方法は、ジュンサイ(Brasenia schreberi)を有機溶媒にて抽出し、前記有機溶媒がエタノールであることを特徴とする。
本発明の脂質代謝改善剤の製造方法は、ジュンサイ(Brasenia schreberi)を乾燥加工し、前記ジュンサイは、有機溶媒にて抽出し、前記有機溶媒がエタノールであることを特徴とする。
〔本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤、脂質代謝改善剤の製造方法〕
以下、本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤、及び脂質代謝改善剤の製造方法の構成例について説明する。
本発明の発明者らは、メタボリックシンドロームを解消するために、従来よりも効果が高い食物由来の脂質代謝改善剤を開発すべく、鋭意、研究・実験を進めた。
そして、ジュンサイ(蓴菜、純菜、Brasenia schreberi)には、従来よりも顕著な脂質代謝改善の作用があることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤は、ジュンサイを加工したものを用いることを特徴とする。
以下で、図1の製造工程図を参照して、本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤の製造方法について説明する。
ここで、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤の原料となるジュンサイについて説明する。
ジュンサイは、表面が透明なゲル状粘物質で覆われた幼葉と、それに隣接する茎が古くから食用に用いられており、その独特の食感から高級食材として珍重されている。
ジュンサイは98%が水分であり、ビタミンや食物繊維を始め、様々な栄養素が含まれている。特に若芽、若葉は栄養価が高く、タンパク質、ビタミン、微量元素などを豊富に含んでいる。また、葉が若く小さいほどゲル状物質が多く、上等品と言われている。
この原料取得処理においては、ジュンサイの若芽・若葉を選別して取得し、乾燥、粉砕、エキス抽出等の加工を行って、本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤として用いることができる。
この際に、生のジュンサイの若芽・若葉は、冷蔵保管で1週間程度日持ちさせることができる。さらに、熱処理(水煮)やpH調整剤の添加により、半年〜1年程日持ちさせることもできる。
また、従来、ジュンサイは、若芽・若葉以外は食用とされておらず、廃棄されていた。この成長芽・葉、茎、根、花等を原材料として用いることもできる。
さらに、栽培中のジュンサイは、気温の高くなる時期に若葉周辺が黒く変色することがある。黒変したジュンサイは、食感や味に変化はないものの、市場で敬遠されるため商品価値がなく、容易に脱色できないため廃棄処分となっていた。
また、ジュンサイはゼラチン質の多い若芽・若葉が最も市場価値が高く、成長した芽や葉は収穫せず廃棄されるのが一般的であった。生産量の50%が廃棄されているとの推測もあり、損失が大きかった。
本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤は、これらの廃棄されるジュンサイを用いることができ、コストを削減できる。
この処理においては、選別されたジュンサイの原料を、通常の温風乾燥、真空凍結乾燥(フリーズドライ)等の手法を用いて乾燥する。この際に、図2のように若芽、若葉のみを乾燥して用いることができる。また、廃棄される部位や、黒変して廃棄されるジュンサイについても、乾燥して用いることができる。
図3(a)は、原材料としてジュンサイの若芽・若葉を100%使用してジュンサイ粉末を得た例である。
生のジュンサイを取得して、例えば納品重量が158.0kg、水切重量が120.0kgであった際に、水分は98.0%、固形分は2.0%程度であった。
このようなジュンサイについて、傷んだ部位や若芽・若葉以外等を除き、75%程度の部位を、例えば60℃〜100℃で温風乾燥させる。この乾燥させる方法としては、ジュンサイを、所定温度の空気流により乾燥する方法等を用いることができる。
具体的には、扇風機を稼動させ、所定温度・湿度に保持された乾燥室内でジュンサイを乾燥させることができる。
また、所定温度・湿度に保持された乾燥室、乾燥箱等内に静置することで乾燥させることもできる。
この際、例えば、乾燥品予定重量が図3の例のように、158.0kgの原料が、2.40kg程度になるように乾燥させる。
まず、上述のステップにて温風乾燥したジュンサイから、さらに食味に影響を及ぼす繊維等を除き、2.08kg程度を回転粉砕機等を用いて粉砕する。
この上で、金属探知機により異物が混入していないか確認する。確認後の製品となる粉末は、図3(a)によると、水分は、5.90%程度になる、
この状態で、食品細菌検査も行うことができる。
図3(b)は、食品細菌検査の結果例である。この検査により、細菌、カビ・酵母、大腸菌群等の菌量の単位で、CFU(Colony Forming Unit)/gは、それぞれ0になるようにする。
上述の乾燥粉末の作成と同様の原料を、水や有機溶媒を用いて抽出してエキスを作成する。この際に、上述の温風乾燥やフリーズドライで乾燥された粉末を用いて抽出を行うことが好適であるが、乾燥を行わずに抽出することもできる。
この際、有機溶媒としては、エタノール等のアルコール類に加え、ヘキサンやアセトンやエステル等の食品加工に用いられる任意の有機溶媒を用いることができる。
具体的には、フリーズドライにより作成したジュンサイ粉末を、1g/50mL程度の割合で蒸留水又はエタノールで抽出することができる。水抽出物及びエタノール抽出物は、凍結乾燥と蒸発により乾燥することができる。
工業的に生産する場合、粉砕され粉末になったジュンサイを、ステンレスの抽出管等に入れて、上部より有機溶媒を滴下して溶出液を回収する。その後、エバポレーター等で濃縮し回収された、有機溶媒を再度抽出用に循環させることもできる。
具体的には、脂質代謝改善剤の用途に合わせて、各種担体や防腐剤等を加えてパッケージングする。
たとえば、ジュンサイ粉末や抽出したエキスを乾燥・固化させて脂質代謝改善剤として用いるための、任意の製剤上許容しうる担体(例えば、生理食塩水、ブドウ糖、その他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50等を挙げることができるが、それらに限定されない)と共に投与することができる。また、適切な賦形剤等を含んでもよい。
なお、抽出した溶媒を乾燥させた粉末、製品についても、金属探知処理により異物の混入を防ぐことができる。
このキャリアとしては、シリコーン、コラーゲン、ゼラチン等の生体親和性材料を含んでもよい。あるいはまた、種々の乳濁液であってもよい。
さらには、例えば、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、可塑剤などから選択される1種又は2種以上の製剤用添加物を含有させてもよい。
脂質代謝改善剤の形態としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、散剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の剤型を用いることができる。
本発明に係る脂質代謝改善剤は、投与経路は特に限定されないが、非経口的に投与する場合、例えば、静脈内、動脈内、皮下、真皮内、筋肉内または腹腔内の投与が挙げられる。
本発明の脂質代謝改善剤は、他の組成物等と併用することも可能である。また、他の組成物と同時に本発明の組成物を投与してもよく、また間隔を空けて投与してもよいが、その投与順序は特に問わない。
本発明の実施の形態に係る脂質代謝改善剤は、抗肥満、血中TG低減、及び血中コレステロール低減の効果を得ることができる。
この効果は、ジュンサイの成分が、脂肪代謝やコレステロール合成酵素である、例えばステロール脂肪酸シンターゼ(sterol fatty acid synthase、FAS)、コレステロール生成のために必要なHMG−CoA合成酵素−1(HMGCS−1)の遺伝子発現を減少させることにより生じると考えられる。また、HMG−CoA合成酵素−1の上流に働く転写制御因子であるSREBP−1c、SREBP−2の遺伝子発現も減少させる。
このため、本実施形態に係る脂質代謝改善剤は、メタボリックシンドローム等の生活習慣病の改善効果が得られ、脂質異常症、動脈硬化症、心疾患などの予防効果を発揮することができる。
また、ジュンサイは、高い抗酸化効果をもつため、動脈硬化性疾患の他にも、肝疾患(NAFLD、NASH等)の予防・改善も期待できる。
本発明者らは、ジュンサイ(Brasenia schreberi)及び他の生薬又は食用植物由来の食物材料を用いて、ヒト肝癌(ヘパトーマ)由来細胞株HepG2から分泌されたTG及びコレステロール複合体のプロファイルの評価による抗脂血剤的な影響をスクリーニングした。
結果として、100mg/mLのジュンサイの水及びエタノール抽出物は、オレイン酸ナトリウムにより刺激されたHepG2細胞からのTGとコレステロールの分泌に対する、非常に強い抑制活性を示した。
この上で、リアルタイムRT−PCR分析を行ったところ、ジュンサイのエタノール抽出物は、肝細胞/肝臓癌細胞の脂質合成に関連する、ステロール脂肪酸シンターゼ(sterol fatty acid synthase、FAS)、及びコレステロール生合成に必要なHMG−CoAシンターゼ−1(HMGCS−1)、SREBP(Sterol Regulatory Element−Binding Proteins)−1c及びSREBP−2の各遺伝子発現を減少させた。
更に、本発明者らは、高脂肪食を与えたマウスの脂肪組織蓄積と血清の状態へのジュンサイの作用を検討した。
高脂肪食を与えられたマウスにおいて、ジュンサイは腸間膜・精巣上体の脂肪組織蓄積を抑えて、血清TG及びグルコースを正常状態にした。このため、血中コレステロールの状態を正常な状態に近づけると考えられる。
このようなスクリーニングでは、通常、脂質異常症マウス/ラット等の実験動物が使用される。しかしながら、実験動物を使用する研究は費用が掛かるのと、多くの試験サンプルを一度に評価することができないため、まずは、細胞系を用いたin vitro(細胞外)のスクリーニングを行った。
ここで、本発明者らは、従来、HepG2ヒト肝臓癌細胞から分泌されたリポタンパク質プロファイルの評価を用いて、抗脂血剤作用薬の作用をスクリーンニングする評価システムを開発した(Mizuho Itoh他、”HPLC analysis of lipoproteins in culture medium of hepatoma cells: an in vitro system for screening antihyperlipidemic drugs”、Biotechnol Lett.、、、Splinger、2009年、31号、、p.953〜957)。この評価システムを使って、本発明者らは、以前、ルペオール、ルパン・トリテルペン、及び米糠発酵エキスの抗脂血剤作用薬の作用をスクリーンニングし、シグナル伝達機構を分析した(Mizuho Itoh他、”Lupeol reduces triglyceride and cholesterol synthesis in human hepatoma cells”、Phytochemistry Letters、、ELESEVIER、2009年、2号、、p.176〜178を参照。)。この評価システムは抗脂血剤を評価する際に、非常に有用な手法であった。
本実施例において、本発明者らは、この評価システムのアッセイ系を使用して、いくつかの食用植物の脂質代謝改善活性をスクリーニングした。
この結果、ジュンサイ(Brasenia schreberi)からのエタノール抽出物は、HepG2細胞からの脂質放出を著しく引き下げると分かった。
また、私たちは、in vivo(生体内)において、高脂肪食を与えたマウスの脂肪組織蓄積と血清パラメーターに対するジュンサイの予防及び正常化の影響を検討した。これによると、実際に、ジュンサイエキスは、高脂肪食を与えたマウスの血清脂質レベルを正常にし、腸間膜の脂肪組織の蓄積を抑えることができた。
以下で、評価の際の各プロトコルと、結果について説明する。
凍結乾燥され、入手可能な食用植物が使用された。
フリーズドライされた植物(1g)は、50mLの蒸留水又はエタノールで抽出された。抽出された抽出物は、遠心分離で収集された。水又はエタノール抽出物は、凍結乾燥と蒸発によりそれぞれ乾燥させた。
HepG2ヒト・ヘパトーマ細胞は、10%ウシ胎児血清、100μg/mLストレプトマイシン及び100Uのペニシリンを含むダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium、DMEM)で維持された。
その後、ヘパトーマ細胞(1×105細胞)は、24−ウェルプレート内の10%FCSを含むDMEM(1mL)に接種され、2日間、あらかじめ培養された。
培養した細胞は、PBSで2度洗浄され、その後4日間、0.1%(w/v)のBSAを含むFCSを含まないDMEM(250μL)を用いて、抽出物あり/なしの状態で培養された。
培養後の培地は5分間15,000×gで遠心分離され、以下のリポタンパク質プロファイルの分析が行われた。
上述のように、トリグリセリド(TG)と主に3つのクラスのリポタンパク質(VLDL、LDL、及びHDL)の分離及び決定が行なわれた。
まず、リポタンパク質が、80mLの培地からゲル浸透HPLC(High performance liquid chromatography)システムを使用して分離された。
この際に、TGの分析用として、Diacolor Liquid TG−S(東洋紡績株式会社製)を使用し、酵素反応させた。また、コレステロールの分析用には、Cholescolor Liquid Kit(東洋紡績株式会社製)を使用し、酵素反応させた。その後、溶出液は、波長550nmについてオンラインで連続的にモニタリンされた。
TGと3つの主なリポタンパク質におけるコレステロールの濃度の値は、発明者らの作成したコンピュータ・プログラムで計算された。この際に、冷凍血清を基にしたスタンダード(協和発酵キリン株式会社製)を使用して、規格化(標準化)された。
12ウェル・プレート(1mL)のHepG2細胞(2.5×105細胞)は、2日間、10%FCSを含んでいるDMEMで培養された。
細胞は、PBSにより2度洗われ、0.75mMオレイン酸ナトリウム又は100μg/mLのジュンサイとオレイン酸ナトリウムがあり/なしの状態で、2日間、0.1%(w/v)のBSAを含むFCSを含まないDMEM(500μL)で培養した。
トータルRNAはQuickGene RNA培養細胞キットS(富士フイルム株式会社製)を使用して単離された。
テンプレート相補的DNA合成はPrimeScript RT試薬キット(タカラバイオ株式会社製)を使用して、トータルRNAを5μg用いて行なわれた。
2.5%(w/v)の各RT反応溶液は、蛍光温度サイクラー(Chromo4、バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)にて、各プライマーを0.2μMを含んでいる、1×SYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)25μLを用いて増幅された。
サンプルは、最初に95℃で10秒間変性させ、続いてサーマルサイクラーで40回のPCRサイクルが実行された。各サイクルは、95℃で5秒、及び60℃で30秒であった。
実験の中で使用されるオリゴヌクレオチド・プライマーは、上述の論文(Mizuho Itoh他、Biotechnol Lett.)と同様のプライマーを用いた。
特異的なトランスクリプトの増幅を確認するため、各PCRの終了時に、サンプルを60℃に冷却し、95℃にゆっくり加熱しつつ、蛍光を連続測定する融解曲線プロファイルを得た。
各mRNAの相対的な発現レベルは、β−アクチンのmRNAの量で正規化された。このβ−アクチンのmRNAは、上述のキットに付属のプライマーを用いて測定された。
C57/BL6マウスに、High Fat DietとジュンサイEtOH抽出エキス1%を混餌し、2週間投与した。
これにより、対照群と比較し、有意に、中性脂肪値の改善と内臓脂肪蓄積抑制効果がみられた。
C57BL/6J系統のマウス(6週、雄)は、日本クレア株式会社から購入された。
それらのマウスは、ポリカーボネート・ケージに収容され、23±2℃に維持された部屋で12時間の明暗サイクル(8:00〜20:00)で飼育された。
マウスは、実験期間において、新鮮な飼料及び飲料水に、制限なしに接近できた。
それらは7日間、High Fat Diet 32(HFD、日本クレア株式会社製)を与えられ、6つのマウス各々の2つのグループへ分割した;
マウスは、HFD(高脂肪食)を与えられた対照(コントロール)群と、ジュンサイ飼料(HFD+BSET)を与えられたジュンサイ飼料群により試験された。
図4に、このHFDと、ジュンサイ試料(HFD+BSET)の組成を示す。ジュンサイ飼料は、HFDに、試験物質であるジュンサイを1%含む飼料である。
コントロール群又はジュンサイ飼料群は、14日連続してHFD又はジュンサイ飼料をそれぞれ与えられた。
マウスの食物摂取量は、毎日記録された。また、体重が2日又は3日に1回測定された。
実験期間の終了時、マウスは16時間絶食させた後に、光ジエチルエーテル麻酔の下で処理された。
血液は、腹大動脈から集められた。また、血清は、分析まで−20℃で保管された。
肝臓、腸間膜・精巣上体の脂肪組織が切除され、計量された。
全実験は、日本の政府立法による委員会で発行されたガイドラインに厳密に従って行われた。
マウスの血清のグルコース、総コレステロール、TG、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、及びアラニン・トランスアミナーゼ(ALT)の血中濃度が、生化学自動分析装置(FUJI DRI−CHEM 3500V、富士フイルム株式会社製)にて測定された。
各測定データは、平均±標準偏差(S.D.)として表現された。
差異の有意性は、スチューデントt検定(図8参照)、又はDunnett(図5参照)及びTukey(図7参照)の多重比較テストを用いた一元配置分散分析を使用して分析された。p<0.05が、有意であるとみなされた。
以下の図5、7、8の各図においては、「*」がp<0.05を示し、「**」がp<0.01を示す。
まず、図5を参照して、ジュンサイ及び他の生薬又は食用植物由来の食物材料による脂質代謝改善効果について、HepG2のリポタンパク質プロファイルにより評価した例について説明する。
本発明者らは、ジュンサイと他の食物材料として、ジュンサイ(Brasenia schreberi、BSET)と、他の5つの食用植物であるミョウガ(Zingiber mioga)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、ウド(Aralia cordata)、トンブリ(ホウキギ、Kochia scoparia)、ネギ(Allium fistulosum)を用いた。そして、これらの水及びエタノール抽出物を100μg/mL加えた際に、HepG2細胞から放出されたTG及び3つの主なリポタンパク質であるVLDL、LDL、HDLのコレステロール値の影響を検討した。
図5は、要約されたデータであり、細胞は0.1%のBSAを含んでいる血清を含まないDMEMで2日間、オレイン酸ナトリウムなし、0.75mMオレイン酸ナトリウム、又は100μg/mLの各食物材料とオレイン酸ナトリウムを用いて培養された。また、培地のTG及びコレステロールのレベルが決定された。データは平均±SD(n=4)を示す。各データは、オレイン酸ナトリウムのみのデータと検定している。
結果として、HepG2の培養液中のTG及びコレステロール値は、脂肪代謝を高めるオレイン酸ナトリウムで上昇した。
また、ポジティブコントロールである脂質異常症治療薬のフェノフィブラート(Fenofibrate)、及び、いくつかの植物の抽出物は、オレイン酸ナトリウムで脂肪代謝が促進された細胞から放出されるTG及び/又はコレステロールを減少させた。
特に、ジュンサイの水及びエタノール抽出物は、TG及び3つのリポタンパク質のコレステロール値を著しく抑えた。
図6は、オレイン酸ナトリウム刺激の下で(ジュンサイ)のエタノール抽出物により未処理/処理されたHepG2細胞のリポタンパク質プロファイルを示す。具体的には、2日間、10%FCSを含むDMEMであらかじめ培養されたHepG2細胞において、HepG2細胞のリポタンパク質プロファイルに対するジュンサイ及び他の生薬又は食用植物由来の食物材料の影響をリポタンパク質プロファイルのグラフとして示している。
各グラフにおいて、縦軸は550nmでの吸収度(mV)、横軸はリテンションタイムを示す。各グラフについて、「系列1」はTGを、「系列2」はコレステロールのプロファイルを示す。
図6に示すように、コントロールに対して、オレイン酸のみを与えた場合、HepG2細胞からTG及び各コレステロール複合体の放出が増えることが分かる。
これに対して、ジュンサイは、オレイン酸ナトリウムで誘発されたHepG2細胞からのTGとコレステロールの放出に対する強い低下活性を示した。
他には、ミョウガの水抽出物は、細胞からのTGとコレステロールの分泌を少しだけ引き下げた。それ以外の食物材料のサンプルは、特にTG及び各コレステロール複合体の放出を低下させる活性は確認できなかった。
なお、図示していないが、コゴミ(クサソテツ、Matteuccia struthiopterisのエタノール抽出物は、HepG2細胞からのコレステロールの放出のみ引き下げ、TGレベルについては有意に減少しなかった。
ここでは、本発明者らは、定量的リアルタイムRT−PCRを用いて、100μg/mLのジュンサイがHepG2細胞のTG及びコレステロール合成のために必要な、各種の遺伝子の発現に影響するかどうか調べた。
具体的には、HepG2細胞は、オレイン酸ナトリウムなし、0.75mMオレイン酸ナトリウム、又は100μg/mLのジュンサイのエタノールエキスとオレイン酸ナトリウムにより、2日間、培養された。
図7の各グラフはリアルタイムRT−PCRで分析された各遺伝子のmRNA発現を示している。縦軸は、コントロールのβアクチンに対する比較発現量(%)を示し、横軸は各遺伝子のグラフを示す。各グラフにおいて、白抜きはオレイン酸ナトリウムなし、斜線は0.75mMオレイン酸ナトリウム、黒塗りは100μg/mLのジュンサイのエタノールエキスとオレイン酸ナトリウムを投入した結果を示す。また、各グラフのデータは未処理のコントロールの細胞に相対的に表現され、平均±SDを示す(n=4)。
結果として、オレイン酸ナトリウムのみを与えた場合、未処理の細胞と比較すると、HepG2細胞は、mRNAレベルで、酵素であるステロール脂肪酸シンターゼ(sterol fatty acid synthase、FAS)及びコレステロール生合成に必要なHMG−CoAシンターゼ−1(HMGCS−1)の発現を著しく上げた。
これに対して、オレイン酸ナトリウムで誘発された細胞と比較した場合、ジュンサイエキスを投入した細胞は、SREBP−1cを51.7%、FASを78.8%、HMGCS−1を45.6%、及びFDFT(farnesyl−diphosphate farnesyltransferase)を56.4%、それぞれ遺伝子発現を減少させた。
なお、コントロールとして、ハウスキーピング遺伝子であるβ−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase、GUS)のみの発現をみたところ、オレイン酸ナトリウムとジュンサイエキスの有無に関わらず発現が変わっていなかった。
図7の各グラフを参照すると、オレイン酸ナトリウムは、HepG2細胞で、2つのアポリポ蛋白質、特にapoB−100の遺伝子発現(ApoB−100)を増やした。
オレイン酸塩処理/未処理のHePG2細胞と比較すると、ジュンサイはapoA−1の量を常態に戻し、ApoB−100遺伝子を抑えた。
したがって、従来から、肝臓及び/又は肝細胞からのMTTP及びリポタンパク質分泌の関係が研究されてきた。すなわち、MTTP阻害剤はTGのin vitro及びin vivoにて、TGのレベルを下げる薬剤として使用されている。
図7によると、本発明の実施例において、オレイン酸塩で処理されたHepG2細胞と比較した場合、ジュンサイはMTTPの遺伝子発現を51.4%低下させた。
発明者らは、ジュンサイのin vivoでの抗脂血剤活性を確認するために、マウスの組織重量及び血清指標に対するジュンサイの影響を調査した。
ここで、図8及び図9を参照して、高脂肪食(HFD)が給餌されたマウスに対して、体重、内臓重量及び脂肪組織の重量、血清指標に対するジュンサイの影響を調べた結果について説明する。図8は、HFDのみを与えたコントロール群と、ジュンサイ飼料(HFD+BSET)を与えられたジュンサイ飼料群の各測定値を示す。各測定値は平均±SD(n=6)で示す。図9は、図8のうち、効果があったデータのグラフである。
結果として、ジュンサイは体重、肝臓、腎臓及び脾臓重量に影響を及ぼさなかった。この結果を体重のグラフ図9(a)に示す。
しかしながら、コントロールと比較した場合、ジュンサイの経口投与は腸間膜及び精巣上体の脂肪組織(内臓脂肪)の蓄積を、それぞれ72.2%及び73.9%と著しく抑えた。この結果を図9(b)に示す。
これらの実験結果は、ジュンサイが身体の重量への影響のない腸間膜と精巣上体の脂肪組織及び組織の蓄積を抑えることを示唆した。
また、図8の血清指標においては、ジュンサイは、HFD食餌されたマウスで、トータル血清トリグリセリド(血中中性脂肪値)及びグルコース・レベルを、それぞれ70.5及び17.5%減少させた。この結果を、図9(c)に示す。
さらに、ジュンサイは血清コレステロールレベル、組織や細胞の傷害を診断するための指標であるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、GOT)レベル、及び肝臓の傷害の指標であるALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ、GPT)レベルに影響しなかった。
ジュンサイは、オレイン酸塩に刺激されたHepG2細胞からのTG及びコレステロール放出を著しく低下させ、細胞のTG及びコレステロール合成のために必要な遺伝子発現を減少させた。
更に、ジュンサイは、血清TGレベルを常態にすることによりHFD飼料マウスの脂肪組織の蓄積を引き下げた。
次に、図10〜13を参照して、ジュンサイの抗酸化活性について検証した結果について説明する。
発明者らは、日研ザイル株式会社、日本老化制御研究所製の抗酸化測定キット「PAO」を用いて、ジュンサイと他のサンプルの抗酸化活性を調べた。PAOの試薬は銅イオンの還元反応(Cu++ −> Cu+)により、サンプルの抗酸化能を測定する試薬である。この試薬による測定値は、血清の酸化ラグタイムと高い相関性があり、食品サンプルの抗酸化能評価にも利用できる。
以下で、この実施例2の詳細について説明する。
ジュンサイと、他の抗酸化活性が知られている食物材料のサンプルとして、トンブリ、ほうれん草(Spinacia oleracea)、モロヘイヤ(Corchorus olitorius)、ネギ、コゴミの各非加熱フリーズドライの粉末(株式会社Harvestech製)をサンプルとして用いた。また、抗酸化活性が知られているアセロラ(Malpighia glabra L.)の市販飲料(「ニチレイ アセロラドリンク」、サントリーホールディングス株式会社製、2010年)も比較用に用いた。さらに、主に植物中に含まれるトリテルペンであり、抗菌作用を持つルペオール(lupeol)についてもコントロールとして用いた。
また、図10を参照すると、コゴミについては、加熱後の粉末、非加熱のフリーズドライ粉末をそれぞれ用いた。また非加熱のフリリーズドライ粉末に関しては、異なる部位を用いてサンプル調整を行った。ここでは、葉の歪曲した先端部位を部位1、茎の地上部の中間程度を部位2、残りを部位3として、部位1と部位2とを用いて測定した。部位3は、木質で硬いため、粉末化できなかったためである。
具体的なサンプルの調整方法としては、32mgの各粉末と蒸留水1mLを十分攪拌し、遠心分離(3000rpm、5分)し、上澄みを取得した。すなわち、基準量となる1倍(×1)のサンプルは32mg/mLである。このサンプルのうち、100μLを100μLの蒸留水で希釈し、2倍希釈(×2)、4倍希釈(×4)、8倍希釈(×8)、16倍希釈(×16)のサンプルをそれぞれ作成した。
さらに、ルペオールに関しては、分子量426.72のエタノール抽出ルペオール(1mM)を用いて、4倍希釈(×4)、16倍希釈(×16)、64倍希釈(×64)のサンプルを作成した。
アセロラ溶液については、商品原液を1倍(×1)とし、4倍希釈(×4)、8倍希釈(×8)、16倍希釈(×16)のサンプルをそれぞれ作成した。
測定は、PAOキットの説明書に従って行った。測定は、サーモサイエンティフィック社製のマイクロプレートリーダー(測定波長480〜492nm)を用いて行った。
ジュンサイは、他のサンプルよりも際だった抗酸化能を示した。すなわち、16倍希釈においても、尿酸相当濃度0.84mmol/L、Cu還元力1835μmol/Lの値を示した。
結果として、抗酸化活性の強さは以下の通りとなった。
ジュンサイ>アセロラ>トンブリ>加熱コゴミ>モロヘイヤ>ネギ>ほうれん草>ルペオール
ジュンサイは、このように非常に強い抗酸化活性を示した。
なお、非常に活性の高いジュンサイ、アセロラ、トンブリを除いて抗酸化活性を評価した場合(図示せず)、十分な直線性が見られ、正しく測定ができているものと考えられる。加熱こごみの抗酸化活性は、次に高い抗酸化活性を示すモロヘイヤに比べ、2倍以上の強さを示していることが確認できた。
上述のように、ジュンサイは、他の抗酸化活性がある他の野菜・山菜等の食物材料に比べて、傑出した抗酸化活性があることが分かった。
次に、ジュンサイ含有サプリメントの生活習慣病改善効果に関する評価試験を行った。この試験の試験分類は、安全性・有効性試験であり、試験タイプは並行群間比較試験である。
具体的には、健常人に対するジュンサイの生活習慣病改善効果を無作為割付試験により評価した。
腹囲90cm以上のメタボリックシンドロームの傾向がある健常男性12名が試験に参加し、全員が試験を完遂した。被験品群は被験品であるジュンサイ含有サプリメントを1日16粒ずつ10週間に渡って摂取し、非摂取群は通常通りの生活を10週間続けた。
摂取前及び摂取10週後に検査を実施し、生活習慣病改善効果及び安全性についての検討を行った。
〈試験群〉
被験品群:ジュンサイ含有サプリメントを摂取する群
非摂取群:試験食品は摂取せず、通常通りの生活をする群
この群分けに際しては、small, dense LDLコレステロール濃度及びLDLコレステロールの粒子サイズが群間で均等になることを条件にした。
この上で、株式会社ユックムス製Excelアドイン「Statlight #11」を用いて、被験者を2つの群に対して無作為に割り付けた。
被験品群 8名 (41.1±7.50歳) エントリー8名/試験完遂8名
非摂取群 4名 (34.8±0.50歳) エントリー4名/試験完遂4名
被験者の選定に際しては、以下a)からc)を遵守し実施した。
a)通常生活を営んでいる年齢30歳以上60歳未満の健常男性
b)腹囲90cm以上
c)下記の被験者除外基準に該当しない者
(a)心不全、心筋梗塞などの治療の既往歴がある者
(b)疾患等による除外(心房細動、不整脈、肝障害、腎障害、脳血管障害、リウマチ、
糖尿病、脂質異常症、高血圧症、その他の慢性疾患等で治療中の者)
(c)(b)の疾患に関わる医薬品(漢方薬を含む)を服用している者
(d)アレルギー(被験品関連食品、医薬品)がある者
(e)スクリーニング検査開始時点を起点として、3ヶ月以内に他の臨床試験に参加
した者、または試験期間中に参加していた者
(f)その他、試験担当医師が本試験の対象として不適当と判断した者
株式会社Harvestech製ジュンサイ含有サプリメント
用法: 1日2回、朝食及び夕食後に水で摂取
1回8粒 (16粒/日)
被験食品の形状:ハードカプセル
原料名:
ジュンサイ 157.5 mg
結晶セルロース 63.0 mg
二酸化ケイ素 4.5 mg
1号透明豚ゼラチンカプセル 77.0 mg
容量 302.0 mg/粒
(a)説明事項
被験者には、事前説明会において、1)モニター試験の内容、実施方法、2)予測しうる有害事象、3)遵守事項の項目について説明した。
これらの説明を受け、試験参加に同意した者のみが試験に参加した。
また、試験参加に対する同意については文書にて記録した。
(b) 遵守事項
被験者に対し、摂取期間中の遵守事項として以下の通り指導した。
1)摂取1週間前より摂取期間中は暴飲暴食を避ける。
2)摂取期間中は、それまでの食生活及び運動などの生活習慣を変えない。
3)試験期間中は、医薬品及びサプリメントの摂取を避ける。
4)検査前日は、飲酒や過度の運動を避ける。
5)検査6時間前から飲食をしない(※但し、水のみは摂取可とした)。
6)摂取期間中は試験日誌を毎日記録する。
記録項目:試験食品摂取の有無、薬物・サプリメント類の服用・摂取状況
食事及び飲酒内容、体重、歩数、体調、便通、特記事項
10週間
(ア)内科的検査
実施内容: 便通・軟便・嘔吐・嘔気・食欲不振及びその他の自覚症状の有無を問診
実施日: 全検査日
(イ)身体測定・理学検査
実施内容: 身長、体重、BMI、腹囲、ヒップ周囲長、体脂肪率、血圧、脈拍
実施日: 身長はスクリーニング検査時のみ。その他は全検査日。
(ウ)尿検査
採取量: 約5mL
検査項目: 蛋白定性、糖定性、ウロビリノーゲン定性、ビリルビン定性、ケトン体、比重、pH、潜血、亜硝酸塩、白血球
実施日: 全検査日
(エ)抹消血液検査
採取量: 約20mL
血液学検査:白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、血小板数、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球色素量)、MCHC(平均赤血球色素濃度)、白血球像
血液生化学検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ−GTP、ALP、LD(LDH)、LAP、総ビリルビン、コリンエステラーゼ、ZTT、総蛋白、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、CK、カルシウム、血清アミラーゼ、グルコース、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、TG(中性脂肪)、遊離脂肪酸
特殊検査1:sd−LDL
特殊検査2:MDA−LDL、遊離コリン
実施日:特殊検査2のみ摂取前及び摂取10週後、それ以外は全検査日
(オ)アンケート調査(VAS法)
実施内容: 被験者の健康状態について、下記7項目に回答を求めた。
調査項目: お腹のでっぱり、肌の状態、胃もたれ、疲れやすさ、むくみ、肌の状態(肌荒れ)、お通じ
測定内容: Visual Analogue Scale(VAS)を用い、上記7項目について測定した。被験者は、上記8項目について想像できる最悪の状態を0(ゼロ)、最良の状態を10として評価した。
実施日: 摂取前及び摂取10週後
血中脂質、遊離コリン、血液検査、身体測定・理学検査、VASについて、被験品群及び非摂取群それぞれに対して、摂取前後で変化があるかどうかを検証するため、対応のあるt検定(paired t−test)を実施した。摂取前後で変化しないという帰無仮説の検証を行い、帰無仮説が棄却された場合に有意差があるとした。
また、血中脂質、遊離コリン、血液検査、身体測定・理学検査、VASについて、摂取前後の変化量が、被験品群と非摂取群とで異なるかどうかを検討するため、対応のないt検定を実施した。群間で変化量が異らないという帰無仮説の検証を行い、帰無仮説が棄却された場合に有意差があるとした。
いずれの検定においても、統計解析はIBM社製SPSS Ver.18.0を用いて行った。有意水準を5%とし、両側検定で有意確率p<0.05を「有意差あり」、p<0.10を「傾向あり」と判定した。以下の図14〜図21の各値において、「*」はp<0.05を、「+」はp<0.10であることを示す。また、「**」は、特に有意差が認められたp<0.01であることを示す。
〈分析対象〉
本実施例の試験では、摂取群8名、非摂取群4名の計12名がエントリーし、全員が試験を完遂した。
血液検査や尿検査、内科的検査の結果、及び日報の記述を考慮したところ、試験参加者として不適当な者や試験を真面目に受けなかった者は認められなかった。
そこで、全ての試験参加者を分析の対象とした。
図14〜図17を参照して、血中脂質詳細検査である「特殊検査1」検査について説明する。ここでは、摂取前及び摂取10週後の、被験品群の摂取前後の検査結果、被験品群及び非摂取群の摂取前後の変化率について説明する。
図14は、被験品群の脂質4分画の検査結果を示す図である。図14の脂質4分画において、摂取前後で有意な変化が認められたのは、LDL中性脂肪濃度 (p=0.004**)およびLDL粒子サイズ (p=0.004**)であった。また、VLDLコレステロール濃度(p=0.089+)、VLDLの粒子サイズ(p=0.096+)であった。各検査項目の平均値は、VLDLコレステロール濃度において22.2%の上昇(33.9mg/dLから41.5mg/dL)、LDL中性脂肪濃度において23.2%の低下(30.6mg/dLから23.5mg/dL)、LDLの粒子サイズにおいて1.2%の上昇(25.1nmから25.4nm)、VLDLの粒子サイズにおいて7.3%の上昇(44.3nmから47.5nm)であった。このように、LDLの粒子サイズが摂取前後で有意に上昇した。
図15は、脂質4分画の変化率の結果を示す図である。図15の脂質4分画において、LDL粒子サイズに有意差が認められた(p=0.012*)。すなわち、非摂取群と比較して、被験品群の変化率が大きかった。被験品群は1.2%の上昇、非摂取群は−0.1%の低下であった。
図16は、コレステロール20分画の結果を示す図である。コレステロール20分画においては、sd LDL−Cho/LDL−Choに群間の有意差が認められ(p=0.043*)、被験品群は非摂取群よりも大きく減少した。被験品群は11.1%の減少、非摂取群は4.5%の減少であった。
図17は、中性脂肪20分画の結果を示す図である。中性脂肪20分画においては、いずれの項目において群間に有意差は認められなかった。また、G11分画TGにおいて両群の間に傾向差が認められ (p=0.057+)、被験品群は非摂取群と比較して大きく減少した。被験品群では53.4%の減少、非摂取群は38.3%の減少であった。
次に、図18を参照して、血中脂質詳細検査である「特殊検査2」検査について説明する。この検査では、摂取前及び摂取10週後において、被験品群及び非摂取群のMDA−LDL及び遊離コリンの摂取前からの変化率を調べた。
図18に示したように、いずれの項目においても、被験品群と非摂取群との間に有意差は認められなかった。
次に、図19を参照して、抹消血液検査の被験品群及び非摂取群の血液検査の各項目における摂取前から摂取10週後までの変化量について説明する。
図19によると、LD(LDH)において、被験品群と非摂取群との間に有意差が認められ(p=0.021*)、非摂取群は被験品群と比較して値が大きく低下した。
また、白血球像(好中球数)において、被験品群と非摂取群との間に傾向差が認められ(p=0.051+)、被験品群では増加したが、非摂取群では低下した。
次に、図20を参照して、被験品群及び非摂取群の身体測定・理学検査の測定値における摂取前から摂取10週後にかけての変化量について説明する。
図20で示したように、ヒップ周囲長において両群の間に有意差が認められた(p=0.043*)。
被験品群では平均値が0.2cm増加したが、非摂取群では1.0cm減少した。
次に、図21を参照して、被験品群及び非摂取群のVAS得点の摂取前から摂取10週後にかけての変化量について説明する。
図21によると、むくみにおいて両群の間に有意差が認められ(p=0.049*)、被験品群の方が値の上昇量が大きかった。また、お通じにおいて両群の間に傾向差が認められ(p=0.062+)、被験品群の方が値の上昇量が大きかった。
摂取前検査終了直後、及び摂取10週後検査終了直後に、先述した血液検査の結果と共に試験責任医師に提出し診断を求めた。
それによると、試験参加に問題のある者、及び被験食品が原因で重篤な体調の変化が生じた者は認められなかった。
被験食品の摂取によって重篤な体調の変化が生じたと考えられる者は認められなかった。
起床時の体重、1日の総歩数、食事によって摂取したカロリー、サプリメントの摂取数、排便回数の5項目について、毎日記録させた。
被験品群における摂取率は99.4%であった。摂取期間中の平均体重は、被験品群において83.1kg、非摂取群において86.0kgであった。1日当たりの歩数の平均値は、被験品群において9213.3歩、非摂取群において10214.6歩であった。1日当たりの食事による摂取カロリーの平均値は、被験品群において1984.0kcal、非摂取群において1964.5kcalであった。1日当たりの排便回数の平均値は、被験品群においては1.27回、非摂取群においては1.30回であった。また、歩数100歩当たりの消費カロリーを3kcalとし、1日あたりの歩行による消費カロリーの平均値を求めたところ、被験品群の消費カロリーは276.4kcal、非摂取群は306.4kcalであった。
被験品群の被験者からは、以下のようなコメントが得られた。
・始めた当初は疲れ気味だったが、疲れが軽減された。
※夏バテだったからかもしれないとの但書あり。
・週休が2日から1日に減ったが、体が軽くなり、ズボンが緩くなってきた。
・一時的に体重が1kgほど減少した。
・最初は量が多くて飲みづらかったが、次第に慣れた。
生活習慣病改善効果を検証するために、血中脂質の分画検査を行った。その結果、被験品群において、G11分画Cho、G12分画Cho、G13分画Cho及びG10−13分画Cho(small, dense LDLコレステロール、sdLDL−Cho)が有意に低下し、sdLDL−Cho/LDL−Cho(全LDLコレステロールに占めるsdLDLの割合)も有意に低下した。非摂取群においてはこれらの有意な変化は認められず、G13分画Cho及びsdLDL−Cho/LDL−Choが低下する傾向を示したのみに留まった。
被験品群と非摂取群とでsdLDL−Cho/LDL−Choの低減率を比較したところ、被験品群の低減率が非摂取群よりも有意に大きかった。また、G13分画Choについても、有意ではないものの、低減率は被験品群の方が大きかった。
以上をまとめると、被験品群において摂取10週後にsdLDL濃度が低下したこと、及び全LDLコレステロールに占めるsdLDLコレステロールの割合(sdLDLコレステロール値)の低下率が、非摂取群よりも被験品群において大きかった。
本試験の被験品群において、sdLDL−Choの濃度が低下したが、LDLコレステロール濃度は変化しなかった。このことから、本試験で観察されたsdLDL−Cho低減のメカニズムは、血中コレステロールの総量の低下によるものではなく、LDLコレステロールの質的変化によるものであると考えられる。すなわち、LDLの粒子サイズが全体的に大きくなったために、sdLDLに分類されるコレステロール粒子の割合が少なくなったと推測できる。
これは、LDLの粒子サイズの平均値が被験品群においてのみ上昇していること、及び、その変化率に群間で有意差が認められたことからも裏付けられる。
図22は、被験品群の被験者(ジュンサイ区)と、非摂取群の被験者(コントロール区)のLDL粒子サイズ減少量(縦軸)と、sdLDLコレステロールの増加量(横軸、超悪玉コレステロール増加量)をプロットした図である。
上述したように、sdLDLコレステロールは、心筋梗塞や脳卒中等、血管と関連のある生活習慣病の危険性を高めることが知られており、「超悪玉コレステロール」とも呼ばれる。
sdLDLコレステロールは通常サイズのLDLコレステロールよりも血中滞在時間が長く、血管内皮と長時間接触する(例えば、平野勉、「リポ蛋白から動脈硬化との関連を探る」、Life Style Medicine、2008、、2、4、p.323−329、及び.平野勉、「TGと動脈硬化.診断と診療」、2008、Life Style Medicine、96、7、p.1225−1231、を参照)。また、sdLDLは酸化を防止する物質に乏しいため、酸化されやすい。これらの結果として、動脈硬化を引き起こしやすくなると考えられている。
つまり、図22においては、LDL粒子サイズが増え、sdLDLコレステロールが増加すると、動脈硬化のリスクが増大する。逆に、LDL粒子サイズが相対的に減らず、sdLDLコレステロールが減少すると、動脈硬化のリスクが軽減されると考えられる。
すなわち、被験品群においては、LDL粒子サイズの減少値が低下し、sdLDLコレステロール値が有意に低下した。
このことから、ジュンサイ含有サプリメントは、動脈硬化をはじめとする生活習慣病を予防する効果が得られる。
両群の変化量に有意差がなく、非摂取群の人数が少ないものの、本試験の結果からジュンサイ含有サプリメントは、中性脂肪量の上昇を抑制する効果があると推測される。
また、ヒップの大きさに有意差が認められたことで、皮下脂肪・内臓脂肪のうち、特定の部位の脂肪を燃焼させることが期待できる。
すなわち、被験品群は非摂取群と比較すると、脂肪低減や生活習慣改善には不利な生活を送っていた。それにもかかわらず、被験品群においてsdLDLコレステロール値(濃度)が低下したことや、中性脂肪濃度の上昇を抑制したことは、本実施例のジュンサイ含有サプリメントの生活習慣病改善効果を考慮する上で注目に値する。ジュンサイ含有サプリメントは、ある程度の範囲であれば、不摂生な生活を補う効果が期待できる。
しかしながら、これは季節性の変動であると考えられる。また、上昇幅も体脂肪率において1.4%、拡張期血圧においては6.2mmHgであり、いずれも重篤なものではないと考えられる。
加えて、血液検査の結果、いくつかの項目において変化が認められたが、いずれも基準値内の変動であった。また、尿検査の結果と併せて試験責任医師の診断を求めたところ、特に問題のある被験者は認められなかった。少なくとも本試験の使用条件下においては、ジュンサイ含有サプリメントは安全であったと考えられる。
また、血中遊離コリンによる肝機能の評価も行ったところ、こちらも変化がなかったため、ジュンサイ含有サプリメントは肝臓障害を引き起こさない。
本実施例に係るジュンサイ含有サプリメントの生活習慣病改善効果として、超悪玉コレステロールであるsdLDLコレステロール濃度が低下し、LDLの粒子サイズの平均値が大型化した。
よって、本実施例に係るジュンサイ含有サプリメントが、動脈硬化や心筋梗塞など、sdLDLコレステロールによってリスクが高まるとされる疾病への予防効果を持つ可能性が示唆された。
なお、本実施例では、ジュンサイのフリーズドライ粉末を用いた。しかしながら、上述の実施例1のin vitro実験で示したように、ジュンサイのエキスを用いることで、よりTG、コレステロール低下の効果を高めることができる。この際に、効果の高いポリフェノール等の成分のみを抽出する抽出方法を用いることができる。
Claims (10)
- ジュンサイ(Brasenia schreberi)を加工してなり、
前記ジュンサイは、有機溶媒にて抽出されたエキスであり、
前記有機溶媒がエタノールである
ことを特徴とする脂質代謝改善剤。 - 血中中性脂肪値を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の脂質代謝改善剤。 - small, dense LDLコレステロール値を低下させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脂質代謝改善剤。 - 全LDLに占めるsmall, dense LDLの割合を低下させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 - 前記LDLの粒子サイズを増加させる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 - 脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝関連遺伝子の発現を低下させる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 - 前記ジュンサイは、乾燥加工された植物体である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤を含む
ことを特徴とする動脈硬化予防・改善剤。 - ジュンサイ(Brasenia schreberi)を有機溶媒にて抽出し、
前記有機溶媒がエタノールである
ことを特徴とする脂質代謝改善剤の製造方法。 - ジュンサイ(Brasenia schreberi)を乾燥加工し、
前記ジュンサイは、有機溶媒にて抽出し、
前記有機溶媒がエタノールである
ことを特徴とする脂質代謝改善剤の製造方法。
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