JP5320045B2 - 流体動圧軸受の製造方法、流体動圧軸受及びそれを用いたディスク駆動装置 - Google Patents

流体動圧軸受の製造方法、流体動圧軸受及びそれを用いたディスク駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、流体動圧軸受の製造方法、流体動圧軸受及びその流体動圧軸受を備えたディスク駆動装置に関する。
近年、HDDなどのディスク駆動装置は、流体動圧軸受を備えることにより回転精度が飛躍的に向上して高密度・大容量化が可能になっている。そのため流体動圧軸受やこれを備えたディスク駆動装置は、あらゆる機器に搭載されるようになった。そのため、使用環境が広範囲になり、小型・軽量・低電流・高剛性など特性向上が求められるようになったと共に、より安価での提供が求められている。
このようなニーズの多様化に伴いディスク駆動装置の仕様が多様化して、これに搭載される流体動圧軸受においても様々な仕様が要求されるようになった。そのため多品種を効率的に生産することが求められている。
ディスク駆動装置が安定して駆動するためには、内蔵される流体動圧軸受が所定の性能を発揮して回転シャフトをスムーズに回転させる必要がある。そのためにはディスク駆動装置の使用に適した流体動圧軸受が必要になる。一般的なディスク駆動装置は、回転シャフトがスリーブやその他の部材に囲まれた空間に収納され、その収納空間が潤滑剤で満たされている。また、スリーブの内周で軸方向に離れた複数部分にはヘリングボーン形状の動圧溝が設けられている。回転シャフトが回転してヘリングボーン形状の動圧溝に潤滑剤が流れ込むことにより潤滑剤に圧力の高い部分が生る。その圧力により回転シャフトを周囲の壁面から離反させて、当該回転シャフトを実質的に非接触で回転する状態にしている。その結果、回転シャフトにより回転する記録ディスクの安定的な高速回転が実現され、安定したデータの書き込みまたは読み出しを実行させる。
このような動圧溝を有するスリーブは、例えば転造ボールを有する溝加工ツールにより加工される。つまり、溝加工ツールをスリーブとなる軸受母材の円筒部内部に侵入させて、溝加工ツールの先端に埋め込まれた複数の転造ボールを軸受母材の内周面に押し当てながら加工を行うこことによりヘリングボーン形状の動圧溝を順次形成していく(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特開平10−76411号公報 特開平11−19804号公報
上述したようなボール転造加工では、動圧溝の底の形状寸法は溝加工ツールのボールの外周先端の中心からの距離によって決定される。このため、軸受母材のシャフト収納孔部の半径が変化するような場合、その半径の変化がそのまま動圧溝深さの変化になってしまう。その結果、そのような動圧溝により発生する動圧も変化してしまい動圧バランスが設計通りに成らないという問題があった。
また、シャフト収納孔部の端からの距離に応じて動圧溝深さを調整したい場合に対応できない問題もあった。また、ボール転造加工は高速加工ができないため加工に時間がかかると共に、加工時に軸受母材にかかる応力が大きく軸受母材の変形を招き易く加工後のスリーブの寸法精度低下を生じ易いという問題もあった。
さらに、一般的なボール転造加工のボール半径はR0.3mm以下にはすることが難しかった。このため、動圧溝形状としてR0.3mm以下の細かい形状を作り出すことができなかった。また、溝加工ツールは加工径によって専用となるので、加工径が1μmでも異なれば別の溝加工ツールを作らなければならない。例えば2.5インチハードディスク駆動装置用の軸受では円筒部の内径は2.5mmであり、3.5インチインチハードディスク駆動装置用の円筒部の内径は4.0mmである。したがって、それぞれに専用の溝加工ツールやそれを使うために設備を準備する必要があった。そのため費用的にも資源的にも不経済であり大きな問題となっていた。さらに、何らかの都合により円筒部の内径を僅か1μmでも変更しようとすると、溝加工ツールを新造し設備を改造しなければならないという問題もあった。
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、種々の寸法要求に対応できる流体動圧軸受の製造方法を提供することにある。また、その流体動圧軸受の製造方法を用いて製造した流体動圧軸受及びその流体動圧軸受を備えたディスク駆動装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、中心に回転シャフトの収納孔部を有する軸受母材を支持すると共に当該軸受母材をその中心軸を中心として回転させることによって、前記収納孔部の内面を切削ツールにより切削して動圧溝を形成する流体動圧軸受の製造方法であって、前記軸受母材の中心軸に沿う第1加工方向と直交する第2加工方向に微小交番駆動する前記切削ツールにより前記収納孔部の内周面に形成する前記動圧溝の周方向幅に相当する長さの線条溝を前記第1加工方向と直交する面の周方向に沿って形成する線条溝形成工程と、前記軸受母材と前記切削ツールの相対位置を前記第1加工方向に変位させて前記線条溝を前記第1加工方向に連続形成して当該第1加工方向に延びる動圧溝を延設する延設工程と、を含むことを特徴とする。
この態様によれば、軸受母材の中心軸に沿う第1加工方向と直交する第2加工方向に微小交番駆動する切削ツールにより収納孔部の内周面に形成する動圧溝の周方向幅に相当する長さの線条溝を第1加工方向と直交する面の周方向に沿って形成する。そして、この線条溝を第1加工方向に連続形成して当該第1加工方向に延びる動圧溝を延設する。このとき、第2加工方向に微小交番駆動する切削ツールの駆動量を制御することにより溝深さを変化することができる。つまり、収納孔部の半径が変化する場合でもその変化に容易に追従可能となり一定深さまたは所望の深さの動圧溝を形成することができる。また、切削ツールによる切削加工であるため加工抵抗の増大を抑制できると共に、必要に応じて切り込み深さの調整を行うことで加工抵抗をさらに調整できるので軸受母材の変形を抑制できる。さらに、第1加工方向と直交する面の周方向に沿って形成する線条溝の長さは、軸受母材と切削ツールの第1加工方向の相対位置を変化させることなく決定可能であり動圧溝の幅を容易に変更することができる。したがって、収納孔部の半径が変化する場合でも、また動圧溝の幅や深さが変更される場合でも同じ切削ツールを用いて動圧溝の加工ができる。また、切削ツールの先端形状の半径はボール転造加工のボール半径より十分小さくできるので、ボール転造加工より細かい形状の動圧溝を容易に形成することができる。
上記態様において、前記収納孔部は、前記軸受母材の両端側が内部側より小径のテーパー形状であり、前記切削ツールは前記第1加工方向の変位量とテーパー角度に応じて前記第2加工方向への交番駆動時の振幅量を変化させて延設する動圧溝の深さを調整するようにしてもよい。
円筒状の流体動圧軸受は、中間部が大気圧以下とならないようにする目的で軸受母材の収納孔部の内周面は、両端が狭く中央に向かってその半径が増大するテーパーを有することが望ましい。この態様によれば、収納孔部の内周面がテーパーの場合でも交番駆動時の振幅量を変化させることでテーパー形状に追従して動圧溝の深さを容易に調整できる。
上記態様において、前記収納孔部は、前記軸受母材の両端側が内部側より小径のテーパー形状であり、前記切削ツールは、前記第2加工方向に移動可能なツールテーブルに載置され、当該ツールテーブルは、前記第1加工方向の移動量とテーパー角度に応じて前記第2加工方向へ前記切削ツールを移動させて延設する動圧溝の深さを調整するようにしてもよい。
切削ツールが第2加工方向に移動可能なツールテーブルに載置されているので、テーパー角度が大きい場合でも迅速に切削ツールを収納孔部の内径に対応させて移動可能であり加工効率の向上に寄与できる。また、収納孔部の内径が大きく変化する場合でも切削ツールを迅速に移動できるので種々の寸法の収納孔部の加工に容易に対応することができる。
上記態様において、前記切削ツールの先端の半径は0.02mm〜0.1mmであってもよい。また、前記ツールテーブルの前記第2加工方向の変位量は1.0mm以上であってもよい。このような設定値で加工を行うことにより高精度の流体動圧軸受を効率的に加工製造することができる。
上記課題を解決するために、本発明の他の態様では、回転シャフトと、前記回転シャフトを回転自在に収納するシャフト収納部材と、前記シャフト収納部材の内周面に軸方向に離隔して配設される第1ラジアル動圧溝と第2ラジアル動圧溝と、前記第1ラジアル動圧溝と前記第2ラジアル動圧溝の間に配設される円周凹条部と、前記回転シャフトの外周面と前記シャフト収納部材の内周面との間隙に充填される潤滑剤と、を備えた流体動圧軸受であって、前記第1ラジアル動圧溝と第2ラジアル動圧溝は、前記シャフト収納部材の内周面に動圧溝の周方向幅に相当する長さで前記軸方向と直交する面の周方向に沿って形成される線条溝が前記軸方向に連続配置されてなることを特徴とする。
この態様によれば、第1ラジアル動圧溝と第2ラジアル動圧溝は、シャフト収納部材の内周面に動圧溝の周方向幅に相当する長さで軸方向と直交する面の周方向に沿って形成される線条溝が軸方向に連続配置されているので、動圧溝の幅寸法の設定を線条溝の長さ設定で行うことができる流体動圧軸受を提供できる。また、線条溝の深さ設定が容易にできる流体動圧軸受を提供できる。
上記態様において、前記第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝の深さは、3μm〜8μmのヘリングボーン形状であってもよい。また、前記ヘリングボーン形状の前記第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝の屈曲部の曲率半径が0.02mm〜0.1mmであってもよい。また、前記シャフト収納部材の内周面の内径は2mm〜4mmであってもよい。また、前記シャフト収納部材の動圧溝を形成する部位の厚みが0.2mm〜0.6mmであってもよい。また、前記シャフト収納部材の内周面に、端部から中間部に向けて直径が拡径するテーパーが形成されていてもよい。また、前記第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝は、ヘリングボーン形状であり、その屈曲部の動圧溝深さが他の部分の動圧溝深さより浅くてもよい。
上記態様において、前記動圧溝の底面には前記シャフト収納部材の周方向に沿って整流翼が形成されていてもよい。ボール転造で形成した動圧溝面の底面は、その表面が平滑であり、その表面の潤滑剤に対する接触角が小さく。その結果、潤滑剤の粘性による抵抗が増大して回転負荷増大を招き、回転シャフトを回転させるために電流増大につながる問題があった。シャフト収納部材の周方向に沿って整流翼を形成することにより、動圧溝の底面の潤滑剤に対する接触角を大きくすることが可能になる。その結果、動圧溝底面における潤滑剤の実質的な粘性を低下させることができるので、回転負荷を低減させると共に電流低減が可能となる。なお、整流翼は、専用に削りだしてもよいし、切削バイトの先端の半径と送りピッチとを調整することで形成されるいわゆる引目(刃物痕)で代用してもよい。
上記態様における流体動圧軸受を用いれば、種々の仕様のディスク駆動装置を容易に提供することができる。
本発明によれば、動圧溝形状を従来にない細かな形状で自由に作り出すことができると共に、動圧溝の精度向上・性能向上に寄与できる。また、仕様の異なる流体動圧軸受を効率的に生産できる。
図1は本発明の一実施例の流体動圧軸受製造方法に用いられる製造装置10の説明図である。基台12上に回転駆動部14が配設される。回転駆動部14は、流体動圧軸受の回転シャフトを収納するシャフト収納部材として機能するスリーブを形成する軸受母材(以下「ワーク16」と呼ぶ。)をチャック18で保持して回転させる。回転駆動部14の回転数は例えば毎分3000回転程度が選ばれる。これは、毎分1000回転以下とすると加工時間が長くなる問題があり、毎分5000回転を超えると加工精度が低下する問題があるという試験結果に基づき選ばれた値である。ただし、ワークの材質やサイズ、加工条件の変更等により回転数は適宜変更することが望ましい。
図2は、ワーク16と切削ツールであるバイト20を保持するバイト載置部22を中心に説明する上面視図である。ワーク16の回転中心の延長上にバイト20が位置するようにバイト載置部22が配置される。このとき、ワーク16の回転中心をZ軸方向(第1加工方向ともいう)とし、当該Z軸方向と直交する方向をX軸方向(第2加工方向ともいう)とする。
製造装置10においては、回転駆動部14またはバイト載置部22の少なくとも一方がZ軸方向に移動するようになっている。またバイト20の先端をX軸方向(第2加工方向)に微細移動させるための第1X軸駆動部24および、これを載置してX軸方向(第2加工方向)移動させる第2X軸駆動部26が設けられている。第2X軸駆動部26はサーボモータなどをその駆動源とすることができる。
本実施例においては、図2に示すよう第1X軸駆動部24は駆動源に圧電素子28を用いている。そして、第1X軸駆動部24の最大応答速度は例えば1kHz、分解能は0.1μm、振幅は10μmとしている。また、第1X軸駆動部24は、圧電素子28の駆動変位を検出する静電容量型の変位センサ30を備えている。この変位センサ30の出力をフィードバックすることにより、圧電素子28を正確に駆動すると共に、圧電素子28の温度特性を改善して応答性能と変位精度を高めて高精度の加工を可能にしている。
本実施例では、ワーク16の回転基準位置を検出する回転基準位置検出部(不図示)と、ワーク16の回転角を検出するエンコーダ(不図示)と、バイトの位置を検出するバイト位置検出部(不図示)と、回転基準位置検出部とエンコーダとバイト位置検出部との出力に応じて、圧電素子28の交番の周期や位相を制御する制御部(不図示)とを備えている。なお、回転基準位置検出部としてエンコーダの出力信号をカウントして1回転毎にワーク16の回転基準位置を検出するように構成しても良い。
第1X軸駆動部24の駆動電圧波形は略矩形波状や略正弦波状など種々の駆動波形が試されたが、略正弦波状または略台形波状の駆動波形が好ましい加工精度を提供する試験結果が得られた。例えば、図3に示すような略正弦波状の駆動電圧波形の場合は、概ね一方の半サイクルはバイト20の先端がワーク16表面から離れて切削せず、他方の半サイクルで切削するようになる。このように構成される第1X軸駆動部24は、第2X軸駆動部26によりその位置が調整される。その結果、ワーク16の内面の全周を切削せずに、動圧溝の部分のみを切削することが可能になり好ましい加工精度を提供できる。また、ワーク16に対するバイト20の接触状態を最適化することができるのでバイト摩耗特性を改善することができる。なお、製造装置10には、圧電素子28を駆動するためにパルス発信器32や圧電素子駆動電源34が接続されていると共に、圧電素子28を最適な状態で駆動するためのフィードバック制御を実行する変位センサコントローラ36等が接続されている。
本実施例のワーク16のシャフト収納孔部の内周面は、両端が狭く中央に向かって半径が増大するテーパーを有している。このテーパーは流体動圧軸受が機能した場合に中間部が大気圧以下とならないようにする目的などのために設けたもので、本実施例では両端部に対して中央では略0.6μm拡径するようなテーパーを形成している。
本実施例では前述したように、第1X軸駆動部24とは別に第2X軸駆動部26を設けている。第2X軸駆動部26は、前述のテーパー形状に対応させてバイト20の先端をワーク16の内周面に対してX軸方向に駆動させるときの駆動位置を調整する。このように、第1X軸駆動部24とは別に第2X軸駆動部26を設けて流体動圧軸受を製造することにより、前述のテーパーの存在に関わらず一定の深さの動圧溝を形成できて、発生する動圧のバランスを安定させることができる。また、シャフト収納孔部の端からの距離に応じて動圧溝深さを調整することも容易である。例えば、スリーブの軸方向(Z軸方向)に沿ってヘリングボーン形状の動圧溝が2つ形成される場合、それぞれの動圧溝について、スリーブの収納孔の端に近い部分より中央側が浅くなるようにすれば、端に近い側の吸入圧力が相対的に高くなる。結果としてスリーブの中間部に圧力が集中し大気圧以上を維持することもがきる。
図4はワーク16とバイト20の関係を模式的に示す説明図である。圧電素子28の交番制御によりバイト20の先端は、回転するワーク16の円筒部の内周面16aに接触して所定深さの切り込み量で切削するように動作する。このとき、ワーク16は高速で回転しており、バイト20は圧電素子28の微細交番駆動により振動しているので、切削は実質的に点形状となる。
図5(a)は本実施例において、ヘリングボーン形状の動圧溝38を形成する過程を説明するためにワーク16の内周面6aを平面に展開して模式的に示したものである。図5(a)において、バイト20の先端の軌跡が円で示されている。バイト20の先端位置はワーク16のZ軸方向(第1加工方向)に対して固定した状態で1条の線条溝を形成する。つまり、ワーク16を回転させると共に圧電素子28の微小交番駆動させて、ワーク16のX軸方向の同一内周面上で切削を行い、動圧溝38の周方向幅tに相当する長さの線条溝40を形成する。例えば、内周面16aに4本の動圧溝38を形成する場合、前述したように、ワーク16の1回転で4箇所に点形状の切削を行う。そして、ワーク16とバイト20のZ軸方向の相対位置を維持したままワーク16の回転周期と圧電素子28の交番周期を微妙にずらすことにより、点形状の切削がワーク16の軸方向(Z軸方向)と直交する面の周方向に沿って連続した周方向幅tの線条溝40となる。また、他の方法としては、圧電素子28の微小交番駆動の周期を調整して、周方向幅tに相当する長さの線条溝40をワーク16とバイト20の一度の接触で形成してもよい。また、この一度の接触で形成する動圧溝38の深さに対応する深さの線条溝40を形成してもよいし、同じ位置でX軸方向に徐々に掘り進みながら動圧溝38の深さに対応する深さの線条溝40を形成してもよい。ワーク16のZ軸方向に直交する面の同一内周面上に線条溝40が形成できたら、ワーク16とバイト20のZ軸方向(第1加工方向)の相対位置を変化させて円筒部の内周面16aに線条溝40がZ軸方向に連続して並ぶように形成して、動圧溝38を形成していく。
図5(a)において、丸実線で示す部分はバイト20をX軸方向であるワーク16の半径方向外側に駆動して内壁を削りだし、丸破線で示す部分では切削がなされないようにバイト20をワーク16の半径方向内側に駆動している。本実施例の切削方法では、ワーク16の回転方向に沿った内周面に切削と非切削のサイクル動作を交番して繰り返す。この切削と非切削のサイクル動作の駆動は第1X軸駆動部24で行われる。この工程を線条溝形成工程と呼ぶ。この線条溝形成工程は、圧電素子28に代えてボイスコイルなどの電磁的駆動原理やカムや油圧などによる機械的駆動原理によっても実現可能であるが、これらに限定されるものではない。なお、単に交番駆動させるのではなく、ワーク16の回転位置やバイト20の位置などと交番の周期や位相を同期させて制御することで精度の高い動圧溝を形成できる。
図5(b)は、バイト20の切削と非切削のサイクル動作を交番して行う線条溝形成工程により軸方向と直交する面の周方向に沿って線条溝40を形成すると共に、Z軸方向(第1加工方向)に線条溝40を連続して形成することで動圧溝38が形成される様子を示す斜視図である。この工程を動圧溝38の連続形成により第1加工方向に延びる動圧溝を延設する延設工程と呼ぶ。
上述した流体動圧軸受の製造方法は、従来のボール転造による流体動圧軸受の製造方法に比べ種々の利点を有する。以下に本実施例の流体動圧軸受の製造方法を従来の方法と比較しながら説明する。
前述したように、流体動圧軸受とした場合に中間部が大気圧以下とならないようにワーク16の内径を加工する場合にテーパーを付けることが望ましい。そこで、本実施例の場合、図6に示すように、始めに点線で示すように端部側に対して中央部側の直径の大きいテーパー状に加工しておく。その次に、バイト20で動圧溝38を削る。その時、第1X軸駆動部24は、圧電素子28の振幅の大きさをワーク16の端部で小さく中央部側に行くに従い徐々に大きくする。その振幅の差をテーパーの最小直径と最大直径の差と等しくすることにより、バイト20の先端の軌跡が図6中の実線で示すようになる。つまり、テーパー角程度の僅かなX方向の移動であれば、動圧溝加工中に第2X軸駆動部26を動かさなくとも、圧電素子28の振幅の調整によりワーク16のどの位置においても動圧溝38の深さを均一にすることができる。このような第1X軸駆動部24の制御により動圧溝38の形状を細密かつ任意の形状に加工することが可能となる。また、動圧溝38の任意の位置で深さを変化させることも容易であり、動圧性能の微調整を行うことができる。
ところで、従来のボール転造による動圧溝加工では、転造するための大きな加工抵抗を発生するためと動圧溝を溝方向に延設するため、ボール半径は動圧溝の幅より小さくできず、実用的にはR0.3mm以下にはすることができなかった。このため、動圧溝形状はR0.3mm以下の細かい形状にすることができなかった。本実施例では、図5(a)、図5(b)で示すように、動圧溝38の幅方向に線条溝40を形成して、これを連続させているので、動圧溝38の幅に関わらず、バイト20の先端の半径を小さくできる。このバイト20の先端の半径を例えばR0.1mm以下にすると、動圧溝38はR0.1mm以下の細かな形状で自由に作ることができる。また、バイト20の先端の半径を小さくすると切削抵抗を下げることができるので、薄肉のワーク16でも形状変形を生じさせることなく容易に加工できる。なお、バイト20の先端の半径をR0.02mmより小さくするとバイト20の耐久性が低下するという試験結果が得られているので、バイト20の先端の半径Rは、0.02〜0.1mmの間で選択することが望ましい。
また、従来のボール転造の溝加工ツールは、ワーク16の内周面の径によって専用となるので、内周面の径が1μmでも異なれば別の溝加工ツールを作らなければならない。例えば2.5インチHDD用の軸受では円筒部の直径は2.5mmであり、3.5インチHDDディスク駆動装置の円筒部の直径は4.0mmである。その結果、溝加工ツールの共用化は不可能で、別々の設備や溝加工ツールを準備する必要がある。つまり、費用的にも資源的にも非効率であり大きな問題となっていた。また、何らかの都合により円筒部の内径を僅かでも変更しようとすると、溝加工ツールを新造して設備を改造する必要が生じた。一方、本実施例においては、第1X軸駆動部24を載置してX軸方向に駆動する第2X軸駆動部26の駆動距離を1mm以上できるようにしている。したがって、ワーク16の内周面の直径の差で2mm以上でも同一の加工装置で加工できる。2.5インチ及び3.5インチHDD用の軸受の内周面の直径差は1.5mmなので、部品等の誤差を考慮しても同一の加工装置で加工できる。このため、設備や溝加工ツールを複数種類準備する必要がない。また、設計変更により円筒部の内径を変更しても、第2X軸駆動部26の制御により容易に対応できるので、各種寸法に対して容易に対応できるという優位性がある。
このような流体動圧軸受の製造方法により製造した流体動圧軸受は、要求される動圧特性に適合すように動圧溝38の形状を、バイト20の形状や設備を変更することなく容易に変更できる。そのため、動圧溝の加工精度を従来のボール転造によって形成した動圧溝の加工精度に比べて向上することができる。したがって、軸受としての特性にばらつきが少ない流体動圧軸受を提供することができる。また、切削加工により線条溝を複数形成して動圧溝を形成するため加工応力が少なく薄肉のワークでも内周の変形を生じない。したがって、小型で軽量な流体動圧軸受を提供することができる。さらに、ワークを高速回転させて切削加工することができるので、加工時間を従来のボール転造加工の約60%に短くできる。その結果、製造効率が向上できて安価な流体動圧軸受を提供することができる。
従来の流体動圧軸受の場合、図7に示すように中間部42を挟んで軸方向に2セットのヘリングボーン形状の動圧溝38が形成されている。そして、動圧溝38による流体動圧発生部における潤滑剤の排出圧力と吸入圧力が釣り合うように設計されている。そして、これらの流体動圧発生部の間に形成される中間部42は大気圧よりやや高い圧力となるようにされる。しかしながら、従来のボール転造方法で作成する流体動圧軸受の場合、ワークの内周の寸法や動圧溝加工のばらつきにより、排出圧力と吸入圧力のバランスが崩れ易く、その結果中間部の圧力のばらつきを招く原因になっていた。このようなばらつきにより中間部の圧力が大気圧以下になってしまう場合、潤滑剤に溶け込んでいた空気が減圧により気化して内周面と回転シャフトの間に介在してしまい、軸受性能のばらつきを生じる原因の一つになっていた。
一方、本実施例においては、シャフト収納部となる軸受母材を例えば銅系材料で形成し、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いて、その円筒部の内径2〜4mmで、深さ略5μmのヘリングボーン形状の動圧溝38を2つ形成している。図7は、ワーク16の断面の一部を示しており、シャフト収納孔部44の内周面には両端部からそれぞれ中間部42に向けて直径で略0.6μm拡がるようなテーパーを設けている。このテーパーを設けたことにより、中間部42を挟んで2セットある動圧溝38のそれぞれについて、回転シャフトとの隙間はシャフト収納孔部44の端に近い部分より中央側が広くなる。この場合、動圧はシャフトとの隙間が狭い端に近い側の吸入圧力が中央側に比べ相対的に高くなり中間部42に圧力が集中する。その結果、中間部42で大気圧以下となる問題が回避される。なお、試験では、テーパーによる直径の差が0.2μmより小さいと前述した圧力集中による効果が十分に期待できず、逆に直径の差が2.0μmより大きいと軸受特性に問題を生じる可能性があるとの結果を得た。したがって、テーパーによる直径の差は、0.2μm〜2.0μmの間で選択することが望ましい。
従来の流体動圧軸受において、円筒部の内径が2〜4mmの場合、軸受の軽量小型化のために当該円筒部の動圧溝を形成する部分の肉厚を薄くしたいという要請がある。そのため、この部分の肉厚を例えば1.0mm以下にしてボール転造加工を施すことが試みられた。しかし、ボール転造加工は加工抵抗が大きいため円筒部が変形し易かった。そのため動圧溝の深さは3μmを超えない浅いものとしていた。また、ボール転造加工では動圧溝の深さのばらつきが大きかった。動圧溝が浅いとそのばらつきに起因する動圧のばらつきが顕著に現れる。このように、ボール転造により作成した流体動圧軸受は、軸受剛性の低下や回転精度の不均一などが生じ易く、この流体動圧軸受を搭載する機器の性能低下の要因となっていた。
一方、本実施例においては、シャフト収納孔部44となる軸受母材を例えば銅系材料で形成している。そして、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いることにより、その円筒部を内径2〜4mmとし、動圧溝38を形成する部分の円筒部の肉厚を略0.6mmとしても、切削抵抗の低いバイト切削により深さ略5μmの動圧溝を形成することができる。その結果、動圧溝の深さのばらつきによる発生動圧への影響を小さくしつつ、必要な軸受剛性を確保することができる。したがって、流体動圧軸受を搭載する機器の性能低下を抑制できる。なお、動圧溝を形成する部分の円筒部の肉厚は薄い方が好ましいが、肉厚が0.2mmより薄くなると組立時の取り扱いで変形してしまう可能性が高くなる。そのため、0.2〜0.6mmとすることが望ましい。また、本実施例の加工方法と同条件で動圧溝38の深さを略8μmを超えて作成しようとすると、加工時の回転数を下げて加工する必要が生じて加工時間が増える。また、流体動圧軸受として機能させるときに動圧溝に流れ込む潤滑剤の量が増加して流動負荷が増えてしまう。その結果、回転シャフトを回転させる電流の増大を招く原因になるので、動圧溝38の深さは3μm〜8μmの範囲とすることが望ましい。
上述したようなヘリングボーン形状の動圧溝38は略V形状である。動圧溝38はV字形状の直線部分において、その淵に沿って潤滑剤を掻き集め、折り返し部に潤滑剤を集中させて動圧を発生させる。従来のボール転造により形成した動圧溝の折り返部の半径はR0.3mm程度である。図8(a)はボール転造により形成した動圧溝38であり、折り返部46の半径R1が大きい場合を示す模式図である。この場合、直線部48が短くなり潤滑剤の掻き集めの効率が悪く、圧力の逃げも大きくなる。その結果、発生する動圧P1も低くなり、回転方向の抵抗が増大する問題があった。
一方、本実施例においては、シャフト収納部となる軸受母材を例えば銅系材料で形成している。そして、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いて、その円筒部の内径を2〜4mmとし、先端の半径が0.05mmの切削バイトを用いた切削加工により深さ略5μmの動圧溝38を形成する。その結果、図8(b)に示すように、ヘリングボーン形状の動圧溝38の折り返部46の半径R2を0.05mmまで小さくできる。その結果、直線部48が長くなり潤滑剤の掻き集めの効率を高くすることができる。このため、折り返部46での圧力の逃げを減少させることが可能となり、発生する動圧P2を高めることができる。つまり、回転負荷が軽減され回転シャフトの駆動に必要な電流を減少させることができる。また、軸受部を相対的に小型化できるので、この流体動圧軸受を備えた機器の小型化や駆動に必要な電流の低減に寄与できる。なお、折り返部46の半径Rは小さい方が好ましいが、Rが0.02mmより小さくすると、切削に使用するバイトの摩耗が大きくなりバイト寿命が短くなる上、切削ピッチが細かくなることで加工時間が長くなる問題が生じる。逆に、折り返部46の半径Rが0.1mmより大きくなると前述の効果が期待できないとの試験結果を得ている。したがって、折り返部46の曲率半径Rは、0.02〜0.1mmとすることが望ましい。
ところで、ヘリングボーン形状の動圧溝38について、折り返部46の角部の動圧溝深さが深いと、この角部内側の壁面が潤滑剤の流れの障害となりシャフト収納孔部44の半径方向の効率的な動圧発生の妨げになる場合がある。また、効率的に動圧を発生できないと、回転シャフトの回転負荷となり回転させるための電流増大の原因になる。図9(a)は、動圧溝38の折り返部46の拡大図であり、矢印は潤滑剤の流れを表している。図9(b)は、折り返部46の角部の動圧溝深さが直線部48の深さと同じ深さである場合の動圧溝38の折り返部46の拡大図が示されている。このような形状の場合、動圧溝38の加工は容易であるが、動圧溝38に流れ込む潤滑剤が矢印で示すように、折り返部46の角部の内側の壁面で跳ね返される比率が高くなり、回転シャフトを半径方向に支持する動圧に寄与しない方向の圧力成分が多くなってしまう場合がある。
一方、本実施例においては、シャフト収納孔部44となる軸受母材を例えば銅系材料で形成している。そして、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いることにより、その円筒部を内径2〜4mmとして、切削抵抗の低いバイト切削により動圧溝38を形成している。このとき、第1X軸駆動部24の圧電素子28の振幅調整によりバイト20の切り込み量を調整して、折り返部46の角部の動圧溝深さを略2μmとする。一方、その他の直線部48の動圧溝深さは略5μmとして、図9(c)に示すように、折り返部46と直線部48とがテーパーで接続されるようにする。このように折り返部46の角部の動圧溝深さを他の部分より浅く形成することにより、折り返部46の角部の内側の壁面で潤滑剤が跳ね返される比率を低くしている。その結果、回転シャフトを半径方向に支持する動圧に寄与する方向の圧力成分が多くなる。このように、部分的に動圧溝38の深さを浅くすることで、十分な動圧を発生させて回転精度を向上させることができると共に、軸受剛性を高めることができる。また、回転負荷が低減できるので回転シャフトを回転させる電流も低減できる。上述したように、折り返部46の角部の動圧溝深さが他の部分の動圧溝深さより浅いことにより上述した効果を得ることが可能であり、その深さ設定は上述の数値に限られない。本実施例のようにバイト20により動圧溝38の切削加工を行う場合、図9(b)のように動圧溝38の深さを一定にして加工効率を優先させることもできるし、図9(c)のように動圧溝38に傾斜を設けて動圧溝38の性能向上を優先させることもできる。
従来のボール転造で形成した動圧溝38の底面は平滑である。その結果、底面における潤滑剤に対する接触角(Contact angle)が小さくなり潤滑剤の粘性による抵抗が増大する。つまり、回転負荷が増大して回転シャフトの回転駆動時の電流増大の原因になっていた。一方、本実施例においては、シャフト収納孔部44となる軸受母材を例えば銅系材料で形成している。そして、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いることにより、その円筒部を内径2〜4mmとして、深さ略5μmのヘリングボーン形状の動圧溝38を形成している。そして、本実施例では、図5(b)及び図10に示すように、動圧溝38の底面に回転方向に細長く、高さtwが例えば1μmの整流翼50を設けている。この整流翼50は回転シャフトの回転方向に向く翼であり、回転方向に対する抵抗原因にはならない。一方、動圧溝38の形状に沿って流れる潤滑剤に対しては、整流翼50の存在により接触角が大きくなり動圧溝38の底面での潤滑剤の実質的な粘性が低下させることができる。その結果、回転負荷を減少させて電流低減が可能になる。なお、整流翼50は、専用に削りだしてもよいが、バイト20の先端半径と送りピッチとを調整することで線条溝40をZ軸方向に連続させて形成する過程で形成される引目(刃物痕)で代用してもよい。また、前述したように、ワーク16の内周面が図6に示すようにテーパー形状になっていても圧電素子28の交番駆動の振幅を調整することで線条溝40が形成可能である。そして、線条溝40をZ軸方向に連続させて形成する過程で整流翼50の形成が可能であり、テーパー形状の内周面を有するワーク16においても整流翼50を容易に形成できる。その結果、回転抵抗の少ない高性能の流体動圧軸受を容易に作成することができる。
図11は、本実施例の流体動圧軸受を適用したハードディスクを駆動するディスク駆動装置52の要部断面図である。なお、図11において、便宜上矢印Aで指す側を上方(上)、矢印Bで指す側を下方(下)とする。ディスク駆動装置52は、固定体と、ラジアル流体動圧軸受と、スラスト流体動圧軸受と、回転体とを含んで構成される。回転体の回転数は例えば5400回/分である。
固定体は、ベース部材54と、このベース部材54に設けられた円筒部54aの外周面に固着されたステータコア56と、円筒部54aの内周面に固着された環状のハウジング部材58と、ハウジング部材58の内周面に固着されて円筒部内周60aを有する環状のシャフト収納部材60と、を含んで構成されている。
ステータコア56は、外方向に突出する複数の突極にコイル62が巻回されている。シャフト収納部材60は、回転シャフト66を収納する円筒部60bと、この円筒部60bの一方の端部側で外側に延設されたフランジ部60cとが結合された形状である。ハウジング部材58は、シャフト収納部材60を内周に勘合する円筒部と、円筒部の一方の端部を密閉する底部と、他方の端に設けられアキシャル方向の面を有する上端面部とが結合されたカップ状の部品である。
回転体は、カップ状のハブ64と、このハブ64の中心孔64aに固着された回転シャフト66と、リング状のマグネット68と、スラスト部材70とを含んで構成される。ハブ64は、中心孔64aと同心で径の小さな第1円筒部64cと、外側に配設される第2円筒部64bと、第2円筒部64bの端部に外延するハブ外延部64dとを有して構成されている。この第1円筒部64cの内周面にスラスト部材70が固着され、第2円筒部64bの内周面にリング状のマグネット68が固着されている。
回転シャフト66のハブ64の接続側には段部66aが設けられ、回転シャフト66がハブ64の中心孔64aに圧入されることにより両者が一体化される。スラスト部材70はスラスト上面70aとスラスト下面70bとを有するアキシャル方向に薄い円盤部とその外周側下面にアキシャル方向に長い下垂部70dが結合された形状である。下垂部70dの内周面は、その先端に向かって半径が小さくなるテーパー状で、ハウジング部材58の外周面と協働して毛細管現象により流体動圧軸受の間隙に充填された潤滑剤が外部へ漏出することを防止するキャピラリーシール部を構成している。
スラスト部材70の円盤部は、シャフト収納部材60のフランジ部60cの下面とハウジング部材58の上端面の間にそれぞれ狭い隙間を介して配置され、下垂部70dの外周はハブ64の第1円筒部64cの内周に固着され、スラスト上面70aとスラスト下面70bの両面にスラスト動圧溝を設けスラスト流体動圧軸受を構成している。
ラジアル流体動圧軸受は、回転シャフト66と、当該回転シャフト66を収納して回転自在に支持するシャフト収納部材60とで構成されている。シャフト収納部材60は、その内周面にアキシャル方向に離隔して配設されたヘリングボーン形状の第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝(不図示)と、当該第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝の中間部に配設された円周状凹部60dを有する。そして、回転シャフト66の外周面とシャフト収納部材60の内周面との間隙に潤滑剤が充填されている。
本実施例においては、シャフト収納部材60を銅系材料で形成している。そして、前述した流体動圧軸受の製造方法を用いることにより、円筒部の内径2.5mmとし、動圧溝38を形成する部分の肉厚を略0.6mmとしている。そして、先端の半径Rが略0.05mmの切削バイトを用いた切削加工により深さ略5μmの動圧溝38を形成している。そして、ヘリングボーン形状の動圧溝38の折り返部46の半径Rを0.05mmとしている。そして、回転体は、ラジアル流体動圧軸受とスラスト流体動圧軸受とにより回転自在に支持され、ステータコア56とマグネット68の電磁的作用により、回転駆動される。そして、ハブ64の外周には磁気ディスク(不図示)が装着され、リード/ライト部(不図示)によりデータの記録・読み出しが実行される。
このように構成されるディスク駆動装置52に、本実施例の流体動圧軸受を搭載することにより高精度で小型、軽量化、低電流化が可能なディスク駆動装置52を効率的に低コストで作成することができる。なお、本実施例では、ラジアル流体動圧軸受を構成するシャフト収納部材60の内側に溝を加工する方法について説明した。別の実施例では、本実施例の加工方法は、回転シャフト66側に動圧溝を形成する場合に適用してもよい。またスラスト流体動圧軸受を構成する部材に動圧溝を加工する際にも適用してもよい。そして、何れの場合においても、高精度で小型軽量に寄与できる動圧溝が効率的に作成できる。また、そのように形成した回転シャフトやスラスト流体動圧軸受を用いることによりディスク駆動装置の高性能化を行うことができる。
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
本実施例の流体動圧軸受製造方法に用いられる製造装置の説明図である。 図1において、ワークとバイト載置部を中心に説明する上方図である。 本実施例の圧電素子を駆動する場合に使用する正弦波状の駆動電圧波形を説明する説明図である。 本実施例の製造方法におけるワークとバイトの関係を模式的に示す説明図である。 (a)は、本実施例でヘリングボーン形状の動圧溝を形成する過程を平面に展開して模式的に示したものであり、(b)は、線条溝が連続されて動圧溝を構成している状態を説明する説明図である。 テーパー形状のシャフト収納孔部に対して、圧電素子の交番駆動の振幅をテーパー形状に対応させて変化させながら加工することを説明する説明図である。 シャフト収納孔部に中間部を挟んで軸方向に2セットのヘリングボーン形状の動圧溝が形成されていることを説明する説明図である。 (a)はボール転造により形成した動圧溝であり、折り返部の半径が大きい場合を示す模式図であり、(b)は本実施例の加工方法により形成した動圧溝であり、折り返部の半径が小さい場合を示す模式図である。 (a)は、動圧溝の折り返部の拡大図であり、(b)溝深さが一定の場合の動圧溝の折り返部を示す拡大断面図であり、(c)本実施例の製造方法により形成された動圧溝の折り返部を示す拡大断面図である。 動圧溝に形成される整流翼を説明する説明図ある。 本実施例の流体動圧軸受を適用したハードディスクを駆動するディスク駆動装置の要部断面図である。
符号の説明
1 製造装置、 12 基台、 14 回転駆動部、 16 ワーク、 18 チャック、 20 バイト、 22 バイト載置部、 24 第1X軸駆動部、 26 第2X軸駆動部、 28 圧電素子、 30 変位センサ、 32 パルス発信器、 34 圧電素子駆動電源、 36 変位センサコントローラ、 38 動圧溝、 40 線条溝、 42 中間部、 44 シャフト収納孔部、 46 折り返部、 48 直線部、 50 整流翼、 52 ディスク駆動装置。

Claims (8)

  1. 中心にシャフト収納孔部を有する軸受母材を支持すると共に当該軸受母材をその中心軸を中心として回転させることによって、前記シャフト収納孔部の内面を切削ツールにより切削して動圧溝を形成する流体動圧軸受の製造方法であって、
    前記軸受母材の中心軸に沿う第1加工方向と直交する第2加工方向に微小交番駆動する前記切削ツールにより前記シャフト収納孔部の内周面に形成する前記動圧溝の周方向幅に相当する長さの線条溝を前記第1加工方向と直交する面の周方向に沿って形成する線条溝形成工程と、
    前記軸受母材と前記切削ツールの相対位置を前記第1加工方向に変位させて前記線条溝を前記第1加工方向に連続形成して当該第1加工方向に延びる動圧溝を延設する延設工程と、
    を含み、
    前記シャフト収納孔部は、前記軸受母材の両端側が内部側より小径のテーパー形状であり、前記切削ツールは前記第1加工方向の変位量とテーパー角度に応じて前記第2加工方向への交番駆動時の振幅量を変化させて延設する動圧溝の深さを調整することを特徴とする流体動圧軸受の製造方法。
  2. 前記切削ツールの先端の半径は0.02mm〜0.1mmであることを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の流体動圧軸受の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする流体動圧軸受。
  4. 前記シャフト収納孔部の内周面の内径は2mm〜4mmであることを特徴とする請求項3に記載の流体動圧軸受。
  5. 前記軸受母材の前記シャフト収納孔部前記動圧溝を形成する部位の厚みが0.2mm〜0.6mmであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の流体動圧軸受。
  6. 前記動圧溝は前記シャフト収納孔部の内周面に軸方向に離隔して配設される第1ラジアル動圧溝と第2ラジアル動圧溝とを含み、
    前記第1ラジアル動圧溝及び第2ラジアル動圧溝は、ヘリングボーン形状であり、その屈曲部の動圧溝深さが他の部分の動圧溝深さより浅いことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の流体動圧軸受。
  7. 前記動圧溝の底面には前記シャフト収納孔部の周方向に沿って整流翼が形成されていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の流体動圧軸受。
  8. 請求項から請求項のいずれか1項に記載の流体動圧軸受を備えたことを特徴とするディスク駆動装置。
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