JP5314867B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
この問題に対して、樹脂に対してより高い機械的特性を付与する観点から、下記特許文献1及び下記特許文献2に開示されるように、植物性材料等を含有させる技術が知られている。
更に、上記特許文献2の熱可塑性樹脂組成物の製造には、ケナフを10分間かけて徐々に混練機に投入した上で20分間混練を行い、更に、添加剤を添加した上で20分間混練を継続することが記載されている。このように、従来、植物性材料は数度に分けて投入し、更に、混練を繰り返すことが必要であり、熱可塑性樹脂組成物の製造には煩雑な工程と長時間を要している。このため、より簡便で短時間での製造が求められる。
(1)植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
粒径が2mm以上の粒状物のケナフコアである第1の植物性材料と、粒径が1mm以下の粒状物のケナフコアである第2の植物性材料と、熱可塑性樹脂と、を撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記第1の植物性材料は、該第1の植物性材料及び上記第2の植物性材料の合計を100質量%とした場合に1〜40質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程では、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記第1の植物性材料及び上記第2の植物性材料と、を混合する上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
混合工程では、混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性樹脂と、第1の植物性材料及び第2の植物性材料と、を混合することで、特に短時間で混合を行うことができ、また、外部からの加熱を要することなく熱可塑性樹脂組成物を製造できる。更に、外部からの加熱を要しないために別途の加熱手段等が不必要であり、低コストで熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
第2の植物性材料がケナフコアであるので、より軽く且つ特に機械的特性に優れた成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を製造できる。また、ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。
熱可塑性樹脂が生分解性樹脂である場合、生合成可能であり、また、非石油系樹脂である樹脂を用いることとなり、高い機械的特性を得ながら、石油資源の使用を抑制できる。
本発明の成形体の製造方法によれば、熱可塑性樹脂に対して多量の植物性材料が含有された機械的特性に優れた成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
粒径が2mm以上の粒状物のケナフコアである第1の植物性材料(以下、単に「第1植物性材料」ともいう)と、粒径が1mm以下の粒状物のケナフコアである第2の植物性材料(以下、単に「第2植物性材料」ともいう)と、熱可塑性樹脂と、を撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記第1植物性材料は、該第1植物性材料及び上記第2植物性材料の合計を100質量%とした場合に1〜40質量%であることを特徴とする。
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キュウバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
尚、第1植物性材料の粒径は、後述する実施例における測定法(JIS Z8801に準拠)を用いて得られる。従って、本発明において第1植物性材料の粒径が「X〜Ymm」であるとは、目開きXmmの円孔板篩を通過せず且つ目開きYmmの円孔板篩を通過するものを意味する。更に、本発明における植物性材料、第1植物性材料及び第2植物性材料の「質量」は、平衡水分率(10%)における値であるとする。
第1植物性材料の割合が1質量%未満であると、第1植物性材料を用いたことによる混合時間の短縮と機械的特性向上とを両立させる効果を得ることが困難となり、特に混合時間の短縮効果が得られ難い。一方、第1植物性材料の割合が40質量%を超えて多くなるに従って、得られる成形体の機械的特性の低下が大きくなる傾向にあり好ましくない。この第1植物性材料の割合は、2〜40質量%(より好ましくは3〜40質量%)であることが好ましい。この範囲では特に高い曲げ弾性率(例えば、9000MPa以上)が得られる。また、この割合は5〜35質量%(より更に好ましくは7〜35質量%)であることが特に好ましい。この範囲では特に混合時間を短縮(例えば、150秒以下)できる。更に、この割合は10〜32質量%であることがとりわけ好ましい。この範囲では格別顕著に混合時間が短縮され且つ格別顕著に大きな曲げ弾性率を得ることができる。
植物性材料と熱可塑性樹脂との比重差は特に限定されないが、第2植物性材料の見掛け比重をAとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、A/Cは通常0.05〜1であり、A/Cは0.6以下(通常、0.05以上)とすることができ、更に0.05≦A/C≦0.5とすることができ、特に0.07≦A/C≦0.4とすることができる。特に0.07≦A/C≦0.4の範囲では本発明の製造方法を用いることによる混合時間の短縮と機械的特性向上の効果とを効果的に得ることができる。
尚、上記A、上記B及び上記Cの各々の範囲は特に限定されないものの、Aは0.1〜0.5が好ましく、Bは0.1〜0.5が好ましく、Cは0.89〜1.5が好ましい。また、発明にいう比重(見掛け比重)は、JIS Z8807{熱可塑性重合体性は液中ひょう量方法、植物性材料(水分率10%)は体積からの測定方法、にて各々測定}に準じて測定した場合の比重値である。
しかし、本発明の製造方法によれば、上記ケナフコアのような木質部を用いて、混合時間を効果的に短縮でき、また、前述の如く植物性材料を50質量%以上と多量に含有させることができ、尚かつ高い補強効果を得ることができる。更に、靭皮繊維のような長繊維ではないために高い成形性(特に射出成形及び押出成形における)を得ることができる。
これらのなかでは、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましい。また、上記ポリオレフィンのなかではポリプロピレンがより好ましい。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。
これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
撹拌機を用いて植物性材料と熱可塑性樹脂とを上記混合する際は、混合される材料同士の衝突エネルギー(熱量)により発熱されるものと考えられる。しかし、混合材料(植物性材料、無機材料及び熱可塑性樹脂)が細かいと衝突によるエネルギーは小さくなり、熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させるまで、更には、植物性材料と熱可塑性樹脂とを混合するまで、の時間を要することとなるものと考えられる。このため、撹拌機を用いて混合を行う際に、植物性材料の特定割合の一部を大きさが大きい植物性材料(即ち、第1植物性材料)とすることで、極めて簡便且つ短時間で混合を行うことができるものと考えられる。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性樹脂の分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
その他、本方法では、各種帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等を混合することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本発明の製造方法では、植物性材料と熱可塑性樹脂との混合を促進するための添加剤(各種滑材、可塑剤、及びロジン等)を何ら用いることなく、目的とする熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の成形体の製造方法は、前記製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法である。
前記熱可塑性樹脂の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は、押出成形又は射出成形することで賦形することができる。これらの成形は、撹拌機に押出成形機又は射出成形機を接続して行うことができる。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を冷却した後に破砕機等を用いてチップ化した後、このチップを押出成形機又は射出成形機に投入して成形を行ってもよい。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造及び成形体(試験片)の製造
第1植物性材料として、粒径(粒径範囲)4〜6mmのケナフコアの破砕物(チップ)を用いた。また、第2植物性材料として、粒径(平均粒径)0.2mmのケナフコアの粉砕物(粉末)を用いた。更に、熱可塑性樹脂として、粒径(平均粒径)4mmのポリ乳酸樹脂ペレット(トヨタ自動車株式会社製、品名「U’s S−12」)を用いた。
尚、第1植物性材料は、目開き4mmの円孔板篩を通過せず且つ目開き6mmの円孔板篩を通過した材料である。また、第2植物性材料は、粒度分布測定装置(シスメックス株式会社製、形式「マスターカイザー2000」)によって測定された粒度分布におけるD50(平均粒径)が0.2mmの材料(この第2植物性材料には、目開き4mmの円孔板篩を通過しない粒状の植物性材料は含まれない)である。
また、上記混合においては、撹拌開始(羽根が回転し始めた時点)から上記終点までの経過時間を計測し、この経過時間を混合時間とし、表1に併記した。
実験例1〜6の各試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの板形状)の曲げ弾性率を測定した(JIS K7171に準拠)。この測定に際しては、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い、各試験片の破断直前の最大荷重(曲げ弾性率)を測定し、表1に併記した。
更に、表1に示す混合時間と曲げ弾性率との相関をグラフにして図1に示した。
表1及び図1より、第1植物性材料を用いることによって混合時間を短縮できることが分かる。即ち、図1では、第1植物性材料の割合が0〜10質量%の間で、混合時間が急激に短くなることが見てとれる。この混合時間の短縮の効果は、第1植物性材料の割合は10.2質量%を超えると比較的緩やかになることも分かる。
一方、第1植物性材料を用いると、その量が増加するにつれて曲げ弾性率は低下するが、第1植物性材料の割合が0〜10質量%の間で低下するものの、その後、10〜20質量%の範囲では停滞し、その後、20質量%を超える範囲で更に低下し始めることが分かる。
Claims (4)
- 植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
粒径が2mm以上の粒状物のケナフコアである第1の植物性材料と、粒径が1mm以下の粒状物のケナフコアである第2の植物性材料と、熱可塑性樹脂と、を撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記第1の植物性材料は、該第1の植物性材料及び上記第2の植物性材料の合計を100質量%とした場合に1〜40質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記第1の植物性材料及び上記第2の植物性材料と、を混合する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
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