JP5313129B2 - 非天然アミノ酸置換ポリペプチド - Google Patents

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Description

関連出願への相互参照
本願は、2006年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/796,752号、2006年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/796,907号、および2006年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/796,701号の出願日の利益を請求する。これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される。
発明の分野
タンパク質などの分子は、構造特性、触媒特性および/または結合特性の変更によって、ならびに人工分子のデノボ設計のために操作され得る。分子またはタンパク質の操作は、所望のアミノ酸残基を、タンパク質の配列または構造領域の具体的に選択した位置に組み込むための効率的な認識機構に依存する。このプロセスは、組成および構成の正確な制御を伴う新規な巨大分子を設計するのに非常に有用であるが、変異誘発が20個の天然に存在するアミノ酸に限定される場合、大きな制限が存在する。この理由のため、非天然アミノ酸の組込みにより、分子およびタンパク質の操作法の範囲および影響が拡張され得ることが、次第に明白になってきている。したがって、設計された巨大分子の多くの適用用途では、天然に存在するタンパク質に一般に見られる20個のアミノ酸がもたない新規な化学官能基を有するアミノ酸の組込み方法を開発すること、またはさらなる化学的もしくは生物学的修飾のための係留位置に非天然アミノ酸残基を利用することが望ましいであろう。
例えば、タンパク質または他の分子において、目的の特定の構造的または機能的特性を満たすために一定の変化が所望される場合(例えば、大きさ、酸性度、求核性、水素結合もしくは疎水特性など、または他のアミノ酸特性)、非天然アミノ酸残基を分子内に組み込むことが好都合であり得る。かかる利点により、タンパク質機能をプローブ検索するため、既存のタンパク質を修飾するため、および新規な特性を有する人工タンパク質を作出するために、タンパク質の構造を合理的かつ系統的に操作できる可能性が大きく拡張され得る。
関連技術の記載
タンパク質は、細胞内でDNAからのRNA転写で始まり、その後、タンパク質の翻訳が続くプロセスにより合成される。翻訳が行なわれるには、リボソームが、DNAから転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)に結合する。翻訳中、各トランスファーRNA(tRNA)が、その対応するアミノ酸と、アミノアシル−tRNAシンテターゼ(AARS)と呼ばれる一群の酵素によってマッチングされる。AARSは、各tRNAに適切なアミノ酸を負荷(charge)し、それによりmRNAの翻訳が促進される。該プロセスが継続されるにつれて、AARSによるアミノ酸の付加によってタンパク質が伸張される。
ほとんどの細胞は、各々、20種類の天然に存在するアミノ酸の1つに対応する20種の異なるAARSを生成する。AARS酵素は、それ自身の対応するアミノ酸および該アミノ酸に適切なtRNA分子の組と最適に機能を果たす。
タンパク質は、タンパク質操作手法によって修飾またはデノボ合成され得る。特に、タンパク質は、アミノ酸を欠失、置換もしくは付加するため、または既存のアミノ酸を修飾するために、改変または修飾され得る。例えば、新規な化学官能基を開発するため、タンパク質の少なくとも1つの特定の特性を変化させることが望ましい場合があり得る。かかる特性としては、タンパク質の特定のアミノ酸の大きさ、酸性度、求核性、水素結合または親水特性が挙げられる。
タンパク質などの分子の修飾は、現在、たいていは非効率的で効果的でなく、生成される質および量のバッチ間変動が大きい。これに関連して、改善された特性を有し、化学物質部分が結合されたタンパク質などの分子を設計するための効率的な方法を開発することが有益であり得る。本発明は、かかる利点ならびに本開示によって明示または暗示される多くの他の利点を提供する。
(項目1)
修飾標的ポリペプチドの作製方法であって
(a)該標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を供給すること、
(b)1つ以上の非天然アミノ酸コドンを該ポリヌクレオチド内に部位特異的に組み込むこと、ここで、少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンが該標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する、
(c)該標的ポリペプチドが発現されるような条件下で該宿主細胞を培養すること、ここで、標的分子は該非天然アミノ酸残基を該アミノ末端の1位に保持しており、該アミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基は、アジド、アルキン、ビニルまたはアリールハライド基を含んでおり、それにより修飾標的ポリペプチドが生成される、
を含む、。
(項目2)
1つ以上の非天然アミノ酸コドンが、前記標的ポリペプチドのアミノ末端の最後から2番目の位置をコードしている、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記1つ以上の非天然アミノ酸が、アジドノルロイシン、3−(1−ナフチル)アラニン、3−(2−ナフチル)アラニン、p−エチニル−フェニルアラニン、p−プロパルギル(propargly)−オキシ−フェニルアラニン、m−エチニル−フェニルアラニン、6−エチニル−トリプトファン、5−エチニル−トリプトファン、(R)−2−アミノ−3−(4−エチニル−1H−ピロル−3−イル)プロパン酸(propanic acid)、p−ブロモフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、p−アジドフェニルアラニン、3−(6−クロロインドリル)アラニン、3−(6−ブロモインドリル)アラニン、3−(5−ブロモインドリル)アラニン、アジドホモアラニン、およびp−クロロフェニルアラニンからなる群より選択される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
化学物質部分を前記標的ポリペプチドの非天然アミノ酸残基の1つ以上に結合させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
化学物質部分を、前記標的ポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基に結合させる、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記非天然アミノ酸が、フッ素化されたもの、電気活性のもの、または不飽和のものである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記化学物質部分を前記非天然アミノ酸残基に、該非天然アミノ酸と該化学物質部分間の炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、またはトリアゾール結合によって結合させる、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記化学物質部分を前記非天然アミノ酸残基に、共有結合性相互作用によって結合させる、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記化学物質部分を前記非天然アミノ酸残基に、銅触媒型[3+2]付加環化、鈴木カップリング、檜山カップリング、熊田カップリング、ヘック反応、Cadiot−Chodkiewiczカップリング、および薗頭カップリングからなる群より選択される化学反応によって結合させる、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記化学物質部分が、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形(photocaged)基、タグ、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴ糖、ポリエチレングリコール(任意の分子量を有し、任意のジオメトリーのもの)、ポリビニルアルコール、金属、金属錯体、ポリアミン、イミダゾール、炭水化物、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体、ポリマー、標的化剤、親和性基、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ、アイソタイプ標識プローブ、スピン標識アミノ酸、フルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物からなる群より選択される、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記標的ポリペプチドが、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディ、サイトカイン、細胞の成長、分化または調節をモジュレートする転写モジュレーター、発現活性化因子、炎症関連分子、増殖因子、増殖因子受容体、および癌遺伝子産物からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記標的ポリペプチドが、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ホリトロピン、トロンボポエチン(thrombopoeitin)、エリスロポイエチン、ヒト成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、およびGLP−1からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
1つ以上のアミノ酸コドンの前記部位特異的組込みが、部位特異的変異誘発、エラープローンPCR、遺伝子シャッフリング、相同組換え、アンバー終止コドンの組込み、ウォッブルコドンの組込み、末端変異型アミノアシル−tRNAシンテターゼの使用、およびバイアスコドンの組込みからなる群より選択される手法によって行なわれる、項目1に記載の方法。
(項目14)
標的ポリペプチドをコードする修飾標的ポリヌクレオチドを含む組成物であって、該標的ポリヌクレオチドが1つ以上の非天然アミノ酸コドンを含み、少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンが、アジド、アルキン、ビニル、またはアリールハライド基を含んでおり、該標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応している、組成物。
(項目15)
宿主細胞をさらに含む、項目14に記載の組成物。
(項目16)
少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンが、前記標的ポリペプチドのアミノ末端の最後から2番目の位置に対応している、項目14に記載の組成物。
(項目17)
前記標的ポリペプチドの1つ以上の非天然アミノ酸残基に結合された化学物質部分をさらに含む、項目14に記載の組成物。
(項目18)
前記化学物質部分が、少なくとも前記標的ポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基に結合されている、項目14に記載の組成物。
(項目19)
前記化学物質部分が、前記標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する非天然アミノ酸に共有結合により結合されている、項目18に記載の組成物。
(項目20)
前記化学物質部分が、前記標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する非天然アミノ酸に、該化学物質部分と該非天然アミノ酸間の炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、またはトリアゾール結合によって結合されている、項目18に記載の組成物。
(項目21)
前記化学物質部分が、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形基、タグ、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴ糖、ポリエチレングリコール(任意の分子量を有し、任意のジオメトリーのもの)、ポリビニルアルコール、金属、金属錯体、ポリアミン、イミダゾール類、炭水化物、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体、ポリマー、標的化剤、親和性基、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ、アイソタイプ標識プローブ、スピン標識アミノ酸、フルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物からなる群より選択される、項目19に記載の組成物。
(項目22)
前記修飾標的ポリペプチドが、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディ、サイトカイン、細胞の成長、分化または調節をモジュレートする転写モジュレーター、発現活性化因子、炎症関連分子、増殖因子、増殖因子受容体、および癌遺伝子産物からなる群より選択される、項目20に記載の組成物。
(項目23)
前記修飾標的ポリペプチドが、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ホリトロピン、トロンボポエチン、エリスロポイエチン、ヒト成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、およびGLP−1からなる群より選択される、項目21に記載の組成物。
(項目24)
前記修飾標的ポリペプチドがインターフェロン−βを含む、項目22に記載の組成物。
(項目25)
前記非天然アミノ酸コドンの少なくとも1つが、前記修飾標的ポリペプチドの2、17、36、40、44、62および117位からなる群より選択される位置に対応している、項目23に記載の組成物。
(項目26)
1つ以上の非天然アミノ酸残基が組み込まれた標的ポリペプチドを含む修飾標的ポリペプチドを含む医薬組成物であって、該非天然アミノ酸残基の少なくとも1つが、標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応している、医薬組成物。
発明の簡単な概要
本発明は、本明細書に開示した種々の実施形態の方法、組成物(医薬組成物など)ならびにキットに関する。より詳しくは、本発明は、天然に存在するアミノ酸(一般的に、天然ポリペプチド配列に存在するものとは異なるアミノ酸)による1つ以上のアミノ酸置換または付加、天然に存在しないアミノ酸による1つ以上のアミノ酸置換、および前記非天然アミノ酸残基に付加された化学物質部分を含む修飾分子に関する方法、組成物およびキットに関する。
本開示の一部のある態様は、(a)前記分子の1つ以上のアミノ酸残基を、天然に存在する異なるアミノ酸残基で置換する工程、および(b)1つ以上のアミノ酸残基を非天然アミノ酸残基で置換する工程を1ラウンド以上含み、ここで、前記分子は天然の機能を保持している、分子を修飾するための方法に関する。非天然アミノ酸で置換され得るアミノ酸残基の位置または場所としては、該分子のアミノ末端が挙げられる。非天然アミノ酸が組み込まれ得る(may be have)他の位置としては、標的分子の天然構造内の表面に露出した場所または溶媒に曝露される場所であって、機能の低下がもたらされない場所が挙げられる。特定のある態様において、前記分子への1つ以上の天然に存在するアミノ酸残基付加は、前記1つ以上の天然に存在するアミノ酸残基を非天然アミノ酸残基で置換する前に行なわれる。特定のある態様において、工程(a)で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、工程(b)で置換される該分子内の1つ以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸位置に存在するものである。他の態様において、工程(a)で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、工程(b)で置換される該分子内の1つ以上のアミノ酸残基と異なるアミノ酸位置に存在するものである。
特定のある実施形態において、化学物質部分は、前記1つ以上の非天然アミノ酸残基に付加される。他の実施形態において、該分子の天然機能は、対応する野生型分子の機能と比べて、大きさが等しいかより大きい。
特定のある実施形態において、工程(a)で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、およそ15個以下、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下のアミノ酸残基を含む。特定のある実施形態において、工程(b)で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、およそ15個以下、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下のアミノ酸残基を含む。特定のある態様において、工程(a)または(b)で置換される1つ以上の残基は、単一のアミノ酸ファミリーまたは異なるアミノ酸ファミリーに由来するアミノ酸残基を含む。一部のある実施形態において、工程(a)または(b)で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、同じアミノ酸ファミリー由来のおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
特定のある態様において、前記1つ以上のアミノ酸残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン(praline)、セリン、ロイシン、システイン、バリン、リシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アルギニン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、ヒスチジン、リシンおよびアスパラギンからなる群より選択される。一部のある態様は、さらに、化学物質部分を前記非天然アミノ酸残基に付加することを含む。一部のある態様において、化学物質部分は、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形(photocaged)基、タグ、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴ糖、ポリ(エチレン)グリコール(任意の分子量を有し、任意のジオメトリーのもの)、ポリビニルアルコール、金属、金属錯体、ポリアミン、イミダゾール類、炭水化物、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体、ポリマー、標的化剤、親和性基、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ、アイソタイプ標識プローブ、スピン標識アミノ酸、フルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物からなる群より選択される。一部のある場合では、非天然アミノ酸残基は、フッ素化されたもの、電気活性のもの、または不飽和のものである。
一部のある実施形態において、非天然アミノ酸は、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p−ブロモフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニンおよびエチニル(ethynyle)フェニルアラニンからなる群より選択される。
一部のある実施形態において、該分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、デオキシリボ核酸、リボ核酸、脂質、生体ポリマーまたは他の分子からなる群より選択される。
他の実施形態において、該分子は、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディ、サイトカイン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ホリトロピン、G−CSF、GM−CSF、GLP−1、ヒト成長ホルモン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、細胞の成長、分化または調節をモジュレートする転写モジュレーター、発現活性化因子、炎症関連分子、増殖因子、増殖因子受容体、および癌遺伝子産物からなる群より選択される治療用、診断用または他の分子であり得る。
一部のある態様において、1つ以上のアミノ酸残基は、化学的変異誘発、部位特異的変異誘発、エラープローンPCR、相同組換え、遺伝子シャッフリングからなる群より選択される手法によって、コンピュータ使用による方法によって、または関連する遺伝子配列の比較によって置換される。非天然アミノ酸はタンパク質内に、宿主細胞による多重部位または部位特異的組込みを用いて組み込まれ得る。さらに、非天然アミノ酸が組み込まれるアミノ酸位置は、天然に存在するアミノ酸を指定するために典型的に使用されるコドン(ウォッブルコドン、バイアスコドン、第6ボックス(sixth box)コドン、第4ボックスコドンなど、または宿主細胞もしくはインビトロ翻訳系が、非天然アミノ酸組込み部位の指定に使用され得る任意の他のセンスコドン)によって指定され得るか、あるいは典型的には終止コドン(アンバー、オーカーもしくはオパール、またはフレームシフトコドン)であるコドンによって指定され得る。他の態様において、該方法は、さらに、前記分子をコードするポリヌクレオチドの修飾を含むものであり得る。
一部のある実施形態において、該方法は、さらに、インビボまたはインビトロ翻訳系を含むものであり得る。一部のある態様において、翻訳系は、原核生物細胞、真核生物細胞および昆虫細胞からなる群より選択される宿主細胞を含む。
一部のある態様は、さらに、1つ以上のどのアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基での置換にエネルギー的に有利であるかを調べるために、前記分子の構造座標を用いて1つ以上のエネルギー計算値を誘導することを含む。利用され得る一部のエネルギー(energey)計算値としては、回転異性体ライブラリー、分子のリガンドもしくは受容体結合部位、1つ以上の救済(salvation)計算値、1つ以上の結合エネルギー、またはHierDockコンピュータスクリーニングから誘導される力場の計算値、オリジナルDEEまたはGoldstein DEE、Monte Carloサーチが挙げられる。
一部のある実施形態において、該方法は、さらに、1つ以上のどのアミノ酸残基がアミノ末端で効率的に置換され得るかを調べるため、分子の最後から2番目のアミノ酸残基の実体(identity)の使用を含むものであり得る。特定のある実施形態において、最後から2番目のアミノ酸残基は、非天然アミノ酸であり、プロセッシング(転写、翻訳および/または翻訳後修飾)中、ポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基を保持するか、除去するかのいずれかのため、置換されているか、標的分子に付加されているかのいずれかである。
本開示の他の態様は、該分子の天然配列と異なる配列が作製されるように天然に存在する異なるアミノ酸残基で置換された1つ以上のアミノ酸残基、1つ以上の非天然アミノ酸残基および化学物質部分を含む修飾分子を含み、該非天然アミノ酸残基の少なくとも1つはアミノ末端に存在し、前記修飾分子が天然の機能を保持している組成物(compositon)に関する。一部のある実施形態には、天然の機能の大きさが、対応する野生型分子の機能と比べて等しいかより大きい組成物が含まれる。
一部のある実施形態において、該分子は、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形基、タグ、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴ糖、ポリエチレングリコール(任意の分子量を有し、任意のジオメトリーのもの)、ポリビニルアルコール、金属、金属錯体、ポリアミン、イミダゾール類、炭水化物、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体、ポリマー、標的化剤、親和性基、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ、アイソタイプ標識プローブ、スピン標識アミノ酸、フルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物からなる群より選択される化学物質部分を含む。
修飾分子は、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディ、サイトカイン、第VII因子、第VIII因子、ホリトロピン、G−CSF、GM−CSF,成長ホルモン、エリスロポイエチン、トロンボポエチン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、GLP−1、細胞の成長、分化または調節をモジュレートする転写モジュレーター、発現活性化因子、炎症関連分子、増殖因子、増殖因子受容体、および癌遺伝子産物からなる群より選択される治療用、診断用または他の分子であり得る。
一部のある実施形態において、該分子は、インターフェロン−βを含む。一部のある実施形態において、インターフェロン−βの天然に存在する残基1、2、36、40、44、62もしくは117、または任意のその組合せが、別のアミノ酸残基に改変される。特定のある実施形態において、該残基の任意の1つ以上が、アジドホモアラニン、パラ−ブロモフェニルアラニン、ホモプロパルギルグリシン、エチニルフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、またはパラ−ヨードフェニルアラニンで置き換えられ得る。特定のある実施形態において、非天然アミノ酸残基は、分子の末端に存在する。一部のある場合では、該末端はアミノ末端を含む。一部のある場合では、該末端はカルボキシル末端を含む。
特定のある実施形態において、天然に存在する別のアミノ酸残基で置換される1つ以上のアミノ酸残基は、ヒトインターフェロンβの残基62のメチオニンをイソロイシンに、および/またはヒトインターフェロンβの残基40のイソロイシンをフェニルアラニンに、および/またはヒトインターフェロンβの残基44位のイソロイシンをロイシンに置換することを含む。一部のある実施形態において、ヒトインターフェロンβの117位のメチオニンが置換される。一部のある場合では、117位のメチオニンは、セリンまたはトレオニンで置換される。一部のある実施形態では、36位のメチオニンが、トレオニン、イソロイシンまたはアラニンで置換される。任意のこれらの実施形態において、前述の位置の天然に存在するアミノ酸残基は、非天然アミノ酸、例えば、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p−ブロモフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニン、エチニルフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、またはp−ヨードフェニルアラニンで置換され得る。また、任意の非天然アミノ酸は、さらに、化学物質部分(例えば、ポリエチレングリコール)を含むものであり得る。
別の実施形態において、修飾分子はヒト成長ホルモンを含み、置換される1つ以上のアミノ酸残基は、トリプトファン、フェニルアラニンまたはメチオニンを含む。別の実施形態において、該分子は、G−CSF、エリスロポイエチン(erthyropoietin)、GLP−1、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ウリカーゼ、第VII因子、またはホリトロピンを含む。
さらに他の態様は、天然に存在するアミノ酸残基で置換された1つ以上のアミノ酸残基、および1つ以上の非天然アミノ酸残基で置換された1つ以上の残基、および1つ以上の化学物質部分を含む修飾分子を含む医薬組成物に関する。
特定のある実施形態において、該分子の1つ以上の特性が改変されており、前記特性は、毒性、生体分布、構造特性、分光学的特性、化学的または光化学的特性、触媒能、血清半減期、貯蔵(shelf)半減期、共有結合または非共有結合により他の(toher)分子と反応する能力、安定性、活性、コンホメーション、基質特異性、標的結合親和性、抗原結合能、熱安定性、少なくとも1種類のプロテアーゼに対する抵抗性、少なくとも1つの非水性環境に対する耐容性、グリコシル化パターン、リン酸化パターン、ジスルフィド結合、プロテアーゼ切断部位の場所、金属結合能、補因子結合能、架橋能、可溶性、システイニル化、脱アミド化、アセチル化、ビオチン化、酸化、グルタチオニル化、スルホン化、免疫原性、組織浸透、蛍光ペグ化、多量体化能、精製の容易性、触媒活性、ワクチン安定性、ワクチンとして機能を果たす能力、酸化還元電位、タンパク質に対する患者の耐容性、患者におけるタンパク質の有効性の増大、および患者におけるタンパク質またはタンパク質産物の送達の改善からなる群より選択される。
したがって、本発明の特定のある実施形態は、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を供給すること、1つ以上の非天然アミノ酸コドンを該ポリヌクレオチド内に部位特異的に組み込むこと(ここで、少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンが標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する)、(a)標的ポリペプチドが発現されるような条件下で該宿主細胞を培養すること(ここで、標的分子は該非天然アミノ酸残基を該アミノ末端の1位に保持しており、該アミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基は、アジド、アルキン、ビニルまたはアリールハライド基を含んでおり、それにより修飾標的ポリペプチドが生成される)を含む、修飾標的ポリペプチドの作製方法に関する。
特定のある実施形態において、1つ以上の非天然アミノ酸コドンは、標的ポリペプチドのアミノ末端の最後から2番目の位置をコードしている。該方法は、アジドノルロイシン、3−(1−ナフチル)アラニン、3−(2−ナフチル)アラニン、p−エチニル−フェニルアラニン、p−プロパルギルオキシ−フェニルアラニン、m−エチニル−フェニルアラニン、6−エチニル−トリプトファン、5−エチニル−トリプトファン、(R)−2−アミノ−3−(4−エチニル−1H−ピロル−3−イル)プロパン酸、p−ブロモフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、p−アジドフェニルアラニン、3−(6−クロロインドリル)アラニン、3−(6−ブロモインドイル)アラニン、3−(5−ブロモインドリル)アラニン、アジドホモアラニン、およびp−クロロフェニルアラニンからなる群より選択される(is selected from)1つ以上の非天然アミノ酸を含むものであり得る。
特定のある実施形態において、標的ポリペプチドは、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ホリトロピン、トロンボポエチン、エリスロポイエチン、ヒト成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、およびGLP−1からなる群より選択される。
特定のある実施形態において、1つ以上のアミノ酸コドンの部位特異的組込みは、部位特異的変異誘発、エラープローンPCR、遺伝子シャッフリング、相同組換え、アンバー終止コドンの組込み、ウォッブルコドンの組込み、外部変異型アミノアシル−tRNAシンテターゼの使用、およびバイアスコドンの組込みからなる群より選択される手法によって行なわれる。
また、本発明は、標的ポリペプチドをコードする修飾標的ポリヌクレオチドを含む組成物であって、該標的ポリヌクレオチドが1つ以上の非天然アミノ酸コドンを含み、少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンが、アジド、アルキン、ビニル、またはアリールハライド基を含んでおり、該標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応している組成物に関する。特定のある実施形態において、該組成物は、さらに宿主細胞を含む。さらに他の実施形態において、該組成物は、標的ポリペプチドのアミノ末端の最後から2番目の位置に対応する(corresponds to)少なくとも1つの非天然アミノ酸コドンを含む。さらに他の実施形態において、該組成物は、さらに、標的ポリペプチドの1つ以上の非天然アミノ酸残基に結合された化学物質部分を含む。さらに他の実施形態において、該組成物は、少なくとも標的ポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基に結合された化学物質部分を含む。一部の場合では、化学物質部分は、共有結合により、標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する非天然アミノ酸に結合される。他の実施形態において、化学物質部分は、標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応する非天然アミノ酸に、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、または化学物質部分と非天然アミノ酸間のトリアゾール結合によって結合されている。さらに他の実施形態において、化学物質部分は、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形基、タグ、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴ糖、ポリエチレングリコール(任意の分子量を有し、任意のジオメトリーのもの)、ポリビニルアルコール、金属、金属錯体、ポリアミン、イミダゾール類、炭水化物、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体、ポリマー、標的化剤、親和性基、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ、アイソタイプ標識プローブ、スピン標識アミノ酸、フルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物からなる群より選択される。
該組成物は、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディ、サイトカイン、細胞の成長、分化または調節をモジュレートする転写モジュレーター、発現活性化因子、炎症関連分子、増殖因子、増殖因子受容体、および癌遺伝子産物からなる群より選択される修飾標的ポリペプチドを含むものであり得る。該組成物は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ホリトロピン、トロンボポエチン、エリスロポイエチン、ヒト成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−Ω、インターフェロン−τ、およびGLP−1からなる群より選択されるものであり得る。好ましくは、該組成物はインターフェロン−βを含む。特定のある実施形態において、非天然アミノ酸コドンの少なくとも1つは、修飾標的ポリペプチドの2、17、36、40、44、62および117位からなる群より選択される位置に対応している。
さらに他の実施形態には、1つ以上の非天然アミノ酸残基が組み込まれた標的ポリペプチドを含む修飾標的ポリペプチドを含む医薬組成物であって、該非天然アミノ酸残基の少なくとも1つが、標的ポリペプチドのアミノ末端の1位に対応している医薬組成物が含まれる。
発明の詳細な説明
概論
本発明には、分子を同定および/または修飾するため、任意選択で、分子の活性を試験するため、および/または分子を精製するための方法、組成物およびキットが包含される。
具体的には、一部のある実施形態は、アミノ酸の欠失および/または分子内への1つ以上の非天然アミノ酸残基の組込みによる分子の修飾を提供する。特定のある実施形態において、少なくともN末端のアミノ酸(典型的には、メチオニン)が、非天然アミノ酸で置き換えられる。特定のある他の実施形態において、非天然アミノ酸は、非天然アミノ酸で置き換えられるN末端アミノ酸に加えて、最後から2番目の位置に組み込まれ、おそらく、他の非天然アミノ酸が分子内に組み込まれる。特定のある実施形態では、栄養素要求性宿主細胞が、分子内への非天然アミノ酸の組込みの補助のために利用される。特定のある他の実施形態では、非天然アミノ酸の組込みに、変異型転写または翻訳機構が利用され得るが、一部のある実施形態では、栄養素要求性宿主細胞と変異型転写または翻訳機構の両方が利用される。変異型転写機構の例示的な手段としては、変異型tRNAおよび/または変異型アミノ−アシルtRNAシンテターゼ(1種類もしくは複数種)が挙げられる。一部のある実施形態においては、化学物質部分を、修飾分子の非天然アミノ酸の1つ以上に結合させる。
タンパク質などの分子を改変するためのいくつかの詳細な方法が、米国特許出願第09/620691号(現在は、放棄);同第10/851,564号(米国特許出願公開公報第20040219488号として係属中);同第10/612,713号(米国特許出願公開公報第20040058415号として係属中);同第10/015,956号(係属中だがまだ公開されていない);同第11/094,625号(米国特許出願公開公報第20050260711号として係属中);同第11/130,583号(米国特許出願公開公報第20050287639号として係属中);米国特許第7,139,665号;および米国特許第6,586,207号(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されている。さらに、いくつかの発行済みの米国特許には、タンパク質などの分子における点変異のエネルギー解析のための計算方法が論考されている(例えば、米国特許第6,188,965号;同第6,269,312号;同第6,708,120号;同第6,792,356号;同第6,801,861号および同第6,804,611号、これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。引用したこれらのいずれか、または任意の他の分子の改変、修飾もしくは同定方法が、本発明で使用され得る。
定義
特定のある実施形態を詳細に記載する前に、本発明は、特定の組成物または生物学的系に限定されず、もちろん種々であり得ることを理解されたい。また、本明細書で用いる専門用語は、特定の例示的な実施形態を記載する目的のためにすぎず、限定することを意図するものでないことを理解されたい。本明細書で用いる用語は、一般的に、当該技術分野、本発明の状況および各用語が使用されている具体的な文脈におけるその通常の意味を有する。一部の用語は、本明細書において以下および他の箇所において論考し、本発明の組成物および方法ならびにこれらをどのようにして作製および使用するかの記載において、実行者にさらなる手引きを示す。用語の任意の使用の範囲および意味は、該用語が使用されている具体的な文脈から自明であろう。そのため、本明細書に示す定義は、本発明の特定の実施形態の確認における例示的な手引きを示すことが意図され、特定の組成物または生物学的系に限定されない。本開示および特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈にそうでないことが明白に示されていない限り、複数形を含む。
「約」および「およそ」は、本明細書で用いる場合、一般的に、測定の性質または精度を考慮し、測定された量に対して許容され得る誤差の程度をいう。典型的には(Typical)、例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20%以内、10%または5%であり得る。あるいはまた、特に生物学的系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の次数の大きさの範囲内、場合によっては5倍または2倍以内の値を意味することがあり得る。本明細書に示す数値による量は、特に記載のない限り近似値であり、用語「約」または「およそ」は、明白に記載されていない場合も暗示され得ることを意味する。
「改変された」は、本明細書で用いる場合、「変更された」、「修飾された」、および特定のある実施形態では「変異された」と同義語として使用され得る(例えば、変異されたポリヌクレオチドはまた、改変または修飾されたとも記載する)。「変異」または「修飾」は、一般的に、標的分子、tRNA、またはアミノ酸レベル(すなわち、発酵中)ではなく核酸レベルで存在するAARSの改変(すなわち、ポリヌクレオチドの改変)をいう。例えば、変異または修飾としては、標的分子に対する任意の物理的、化学的または生物学的な改変または変化、典型的には、遺伝子レベルまたは核酸レベルのものが挙げられ得る。
「組込み」は、本明細書で用いる場合、任意の付加、置換、置き換え、変異をいうか、または1つ以上の天然に存在するアミノ酸もしくは非天然アミノ酸が、別の天然に存在するアミノ酸もしくは非天然アミノ酸に加えて、またはその代わりとして標的分子内に入り込む他の修飾をいう。本明細書で用いる場合、「置換する」およびその任意のあらゆる語尾変化は、「置き換える」およびその任意のあらゆる語尾変化と同義的(synonomous)である。
当業者には、標的分子が、標的分子内の任意のアミノ酸残基、アミノ酸基もしくは成分(例えば、アミノ酸側鎖)、またはアミノ酸残基をコードする核酸に対する付加、欠失、置換、変異または化学的修飾によって改変され得ることが理解されよう。本明細書に記載の特定のある実施形態において、非天然または他のアミノ酸残基は標的分子内に、種々の方法によって、例えば、限定されないが、天然に存在するアミノ酸を別の天然に存在するアミノ酸に改変するためのポリヌクレオチドのコドンの修飾、天然に存在するコードアミノ酸から非天然アミノ酸へのポリヌクレオチドの改変、またはタンパク質翻訳(発酵)中の宿主細胞の培地中への非天然アミノ酸の添加(この場合、非天然アミノ酸は、特定のアミノ酸を指定するコドンに対応する位置に利用される)によって組み込まれ得る。
「アミノ酸類縁体」、「非基準(canonical)アミノ酸」、「非天然(unnatural)アミノ酸」、「修飾アミノ酸」、「非天然(unnatural)AARS 基質」、「非天然(non−natural)AARS 基質」、「非標準アミノ酸」、「非天然(un−natural)アミノ酸」、「非天然(unnatural)アミノ酸」などはすべて、互換的に使用され得、構造および/または全体的な形状が、天然に存在するタンパク質に一般に見られる20種類のL−アミノ酸の1つ以上(AlaすなわちA、CysすなわちC、AspすなわちD、GluすなわちE、PheすなわちF、GlyすなわちG、HisすなわちH、IleすなわちI、LysすなわちK、LeuすなわちL、MetすなわちM、AsnすなわちN、ProすなわちP、GlnすなわちQ、ArgすなわちR、SerすなわちS、ThrすなわちT、ValすなわちV、TrpすなわちW、TyrすなわちY(WIPO Standard ST.25(1998)、別表2、表3に定義および列挙)と類似するあらゆるアミノ酸様化合物を包含することが意図される。また、アミノ酸類縁体は、修飾された側鎖または主鎖を有する天然アミノ酸であり得る。また、アミノ酸は、L−型ではなくD−型の天然に存在するアミノ酸であり得る。好ましくは、このような類縁体は、AARSの特異性が通常高いため、通常、アミノアシルtRNAシンテターゼ(AARS)の「基質」ではない。随時ではあるが、天然アミノ酸のものと充分に近い構造または形状を有するある種の類縁体は、穏やかな基質特異性を有するAARS、特に修飾AARSによって、タンパク質内に誤って組み込まれ得る。好ましい一実施形態において、該類縁体は、1つ以上の天然アミノ酸の主鎖構造および/または側鎖構造の大部分さえ共有し、唯一の違い(1つまたは複数)は、1つ以上の修飾基を分子内に含むことである。かかる修飾としては、限定されないが、関連原子(Sなど)での原子(Nなど)の置換、基(メチルもしくはヒドロキシル基など)あるいは原子(ClもしくはBrなど)の付加、基(上記)の欠失、共有結合の置換(単結合を二重結合など)、またはその組合せが挙げられ得る。アミノ酸類縁体には、α−ヒドロキシ酸およびα−アミノ酸も含まれ得、「修飾アミノ酸」または「非天然AARS基質」と称することもあり得る。
アミノ酸類縁体は、天然に存在するもの、または非天然のもの(例えば、合成されたもの)のいずれかであり得る。当業者には認識されるように、一組の回転異性体が知られているか、または生成され得る任意の構造が、アミノ酸類縁体として使用され得る。側鎖は、(R)配置または(S)配置 (あるいはD−またはL−配置)のいずれかであり得る。好ましい一実施形態において、アミノ酸は、(S)またはL−配置である。
好ましくは、アミノ酸類縁体の全体的な形状および大きさは、(天然または再設計された)AARSによって(天然または修飾もしくは再設計された)tRNAに負荷されると、該類縁体−tRNAが、リボソームに受容される複合体となる、すなわち、tRNA−類縁体複合体が、インビボまたはインビトロ翻訳系において原核生物または真核生物のリボソームによって受容され得るようなものである。
「主骨」または「鋳型」には、タンパク質(例えば、AARS)の主鎖の原子群および任意の固定側鎖(例えば、係留残基側鎖)が包含される。
「タンパク質主鎖構造」または文法的相当語句は、本明細書において一般的に、特定のあるタンパク質3次元構造を画定する3次元座標をいう。(天然に存在するタンパク質)のタンパク質主鎖構造を構成する構造には、α−炭素からβ−炭素のへのベクトル方向に沿って窒素、カルボニル炭素、α−炭素およびカルボニル酸素が含まれる。
タンパク質主鎖構造をコンピュータに入力する際、これは、主鎖とアミノ酸側鎖の両方の座標、または主鎖のみ(すなわち、アミノ酸側鎖が除かれた座標)の座標のいずれかを含むものであり得る。前者が行なわれる場合、タンパク質構造の各アミノ酸の側鎖の原子は、タンパク質の構造から「ストリッピング」される、すなわち除かれ、当該技術分野で知られているように、「主鎖」の原子(窒素、カルボニル炭素および酸素、ならびにα−炭素、ならびに窒素およびα−炭素に結合された水素)の座標のみが残り得る。
任意選択で、タンパク質主鎖構造は、以下に概要を示す解析前に改変され得る。この実施形態では、出発タンパク質主鎖構造の表示が、その二次構造の構成要素の空間的配置の表示に単純化される。二次構造の構成要素の相対位置は、超二次構造パラメータと呼ばれる一組のパラメータによって規定される。このようなパラメータは、二次構造の構成要素の配置を改変して明白な主鎖の柔軟性が導入されるように系統的または無作為に変更され得る選定値である。次いで、主鎖の原子座標が変更されて超二次構造パラメータの改変が反映され、この新たな座標が、その後のタンパク質設計の自動化における使用のためのシステムに入力される。例えば、米国特許第6,269,312号(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
「コンホメーションエネルギー」は、一般的に、巨大分子の特定の「コンホメーション」または3次元構造に伴うエネルギー(例えば、特定のタンパク質のコンホメーションに伴うエネルギーなど)をいう。タンパク質を安定化させる傾向にある相互作用は、負のエネルギー値で表されるエネルギーを有するが、タンパク質を不安定化させる相互作用は、正のエネルギー値を有する。したがって、任意の安定なタンパク質のコンホメーションエネルギーは、負のコンホメーションエネルギー値で定量的に表される。一般的に、特定のタンパク質のコンホメーションエネルギーは、そのタンパク質の安定性と関連する。特に、低い(すなわち、負が大きい)コンホメーションエネルギーを有する分子ほど、典型的には、例えば高温でより安定である(すなわち、より大きな「熱安定性」を有する)。したがって、タンパク質のコンホメーションエネルギーはまた、「安定化エネルギー」と称されることがあり得る。
典型的には、コンホメーションエネルギーは、分子のコンホメーションに依存する種々の相互作用によるエネルギー寄与を計算または推定することが可能であるエネルギーの「分子力場(force−field)」を用いて計算される。分子力場は、α−炭素主鎖、側鎖−主鎖相互作用および側鎖−側鎖相互作用のコンホメーションエネルギーを含む項で構成される。典型的には、主鎖または側鎖との相互作用は、結合の回転、結合のねじれ、および結合の長さの項を含む。主鎖−側鎖および側鎖−側鎖相互作用としては、ファン・デル・ワールス相互作用、水素結合、静電気的作用および溶媒和の項が挙げられる。静電気的相互作用としては、クーロン相互作用、双極子相互作用および四極(quadrapole)相互作用、ならびに他の同様の項が挙げられ得る。
ポリマーのコンホメーションエネルギーを測定するために使用され得る分子力場は、
当該技術分野でよく知られており、CHARMM(Brooksら、J.Comp.Chem.1983,4:187−217;MacKerellら,in The Encyclopedia of Computational Chemistry,第1巻:271−277,John Wiley & Sons,Chichester,1998を参照)、AMBER(Cornellら,J.Amer.Chem.Soc.1995,117:5179;Woodsら,J.Phys.Chem.1995,99:3832−3846;Weinerら,J.Comp.Chem.1986,7:230;およびWeinerら,J.Amer.Chem.Soc.1984,106:765を参照)ならびにDREIDING(Mayoら,J.Phys.Chem.1990,94−:8897)分子力場など(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
少なくとも1つの実施形態において、水素結合および静電気作用の項は、Dahiyat & Mayo(Science 1997 278:82)に記載されており、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、分子力場は、他の参考文献のように、原子コンホメーションの項(結合角、結合の長さ、ねじれ)を含めるために記載されていることがあり得る。例えば、Nielsen J E,Andersen K V,Honig B,Hooft R W W,Klebe G,Vriend G,& Wade R C,Protein Engineering,12:657−662(1999);Stikoff D,Lockhart D J,Sharp K A & Honig B,Biophys.J.,67:2251−2260(1994);Hendscb Z S,Tidor B,Protein Science,3:211−226(1994);Schneider J P,Lear J D,DeGrado W F,J.Am.Chem.Soc,119:5742−5743(1997);Sidelar C V,Hendsch Z S,Tidor B,Protein Science,7:1898−1914(1998)、Jackson S E,Moracci M,Mastry N,Johnson C M,Fersht A R,Biochem.,32:11259−11269(1993);Eisenberg,D & McLachlan A D,Nature,319:199−203(1986);Street A G & Mayo S L,Folding & Design,3:253−258(1998);Eisenberg D & Wesson L,Protein Science,1:227−235(1992)(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
「カップリングされた残基」は、一般的に、任意の機構を介して相互作用する分子内の残基をいう。したがって、2つの残基間の相互作用は、「カップリング相互作用」と称される。カップリングされた残基は、一般的に、カップリング相互作用によるポリマー適合性に寄与する。典型的には、カップリング相互作用は、物理的または化学的相互作用、例えば、静電気的相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、水素結合相互作用など、またはその組合せである。カップリング相互作用の結果、いずれかの残基の実体が変化することにより、特に、この変化によって2つの残基間のカップリング相互作用が崩壊する場合は、分子の「適合性」が影響される。カップリング相互作用はまた、分子内の残基間の間隔のパラメータによっても示され得る。残基が一定のカットオフ間隔内に存在する場合、これらは相互性とみなされる。
「適合性」は、本明細書において、分子(タンパク質など)の特定の特性または特性の組合せが最適化されるレベルまたは程度を一般的に表すために用いる。本発明の特定のある実施形態において、タンパク質の適合性は、ユーザーが改善したいと望む特定の特性によって測定され得る。したがって、例えば、タンパク質の適合性は、タンパク質の熱安定性、構造安定性、製剤可能性、触媒活性、ワクチンとして機能を果たす能力、結合親和性、可溶性(例えば、水性または有機溶媒中)、基質特異性、少なくとも1種類のプロテアーゼに対する抵抗性、少なくとも1つの非水性環境に対する耐容性および他の活性をいうことがあり得る。適合特性他の例としては、エナンチオ選択性、非天然の基質に対する活性、および代替触媒機構が挙げられる。カップリング相互作用は、適合性の評価または予測方法としてモデル設計され得る。適合性は、実験的または理論的に、例えば、コンピュータ使用により測定または評価され得る。
好ましくは、適合性は、各分子(例えば、各アミノ酸)が具体的な「適合性値」を有するように定量される。例えば、タンパク質の適合性は、タンパク質が特定の化学反応を触媒する速度であり得、あるいは適合性は、リガンドに対するタンパク質の結合親和性であり得る。特に好ましい一実施形態において、タンパク質の適合性は、ポリマーのコンホメーションエネルギーをいい、当該技術分野で知られた任意の方法を用いて計算される(例えば、Brooks B.R.,Bruccoleri R E,Olafson,B D,States D J,Swaminathan S & Karplus M,J.Comp.Chem.,4:187−217(1983);Mayo S L,Olafson B D & Goddard W A G,J.Phys.Chem.,94:8897−8909(1990);Pabo C O & Suchanek E G,Biochemistry,25:5987−5991(1986)、Lazar G A,Desjarlais J R & Handel T M,Protein Science,6:1167−1178(1997);Lee C & Levitt M,Nature,352:448−451(1991);Colombo G & Merz K M,J.Am.Chem.Soc,121:6895−6903(1999);Weiner S J,Kollman P A,Case D A,Singh U C,Ghio C,Alagona G,Profeta S J,Weiner P,J.Am.Chem.Soc,106:765−784(1984)、Dattaら、Protein Science 13:2693−2705(2004)(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
少なくとも1つの実施形態において、タンパク質の適合性は、特性または特性の組合せが最適化されると適合性値が増加するように定量される。例えば、タンパク質の熱安定性が最適化される(コンホメーションエネルギーは、好ましくは減少する)実施形態では、適合性値は、負のコンホメーションエネルギー;すなわち、F=−Eであり得る。
タンパク質残基の「適合性寄与」は、実体(a)を有する残基iがタンパク質の適合性全体に寄与するレベルまたは程度f(i)をいう。したがって、例えば、特定のアミノ酸残基の変化または変異によってタンパク質の適合性が大きく減少する場合、その残基は、タンパク質に対して高い適合性寄与を有すると言える。対照的に、典型的には、タンパク質内の一部の残基iは、タンパク質の適合性に影響しない考えられ得るさまざまな実体(a)を有し得る。かかる残基は、タンパク質適合性に対する寄与は低い。
「デッドエンド消去(Dead−end elimination)」(DEE)は、単一の解が残るまで不良な回転異性体および回転異性体の組合せを系統的に消去することを目的とする決定論的検索アルゴリズムである。例えば、アミノ酸残基は、固定された主鎖と相互作用する回転異性体としてモデル設計され得る。DEEの理論的基礎により、DEEサーチが収束した場合、解が、不確定性なく全体(global)最小エネルギーコンホメーション(GMEC)であることが示される(Desmetら,1992)。
デッドエンド消去は、以下の概念に基づいている。残基iにおいて2つの回転異性体iおよびiを想定し、残基i(その回転異性体jは一構成員である)を除く他のすべての回転異性体の組の配置が{S}であるとする。すべての{S}について、iとj間に寄与するペアワイズエネルギーがiとj間のペアワイズエネルギーよりも大きいならば、回転異性体iは、全体最小エネルギーコンホメーションには存在し得ず、消去され得る。この概念は、等式
Figure 0005313129
によって数学的に示される。
この数式が真であるならば、単一の回転異性体iは消去され得る(Desmetら、1992)。
この形態では、等式Aは、消去を行なうためには、全配列(回転異性体)空間が列挙される必要があるため、コンピュータ使用に適さない。この問題を単純にするため、等式Aによって示される境界が利用され得る:
Figure 0005313129
同様の論拠を使用し、等式Bは、GMECと整合しない回転異性体ペアの消去に拡張され得る。これは、残基iの回転異性体iと残基jのjのペアが、常に考えられ得るすべての回転異性体組合せ{L}で回転異性体iとjよりも高いエネルギーに寄与していることを決定することにより行なわれる。等式Bと同様に、この記載に対する厳格な境界は:
Figure 0005313129
(式中、εは、回転異性体ペアの総合エネルギーである)
Figure 0005313129
および
Figure 0005313129
によって示される。
これにより、回転異性体iとjのペアのダブルス消去がもたらされるが、個々の回転異性体は、いずれかが独立してGMEC内に存在することがあり得るため、完全には消去されない。ダブルス消去工程により、等式6の右側において評価が必要な考えられ得るペアの数が減少(Sが減少)し、より多くの回転異性体が個々に消去されることが可能になる。
Desmetらによって示されたシングルスおよびダブルス基準では、よりデッドエンドな回転異性体の決定がもたらされる特別な条件を見出すことができない。例えば、iの最大値がiの最小値より小さい場合を伴わず、回転異性体iのエネルギー寄与が、常にiよりも低いことが起こり得る。2つの回転異性体のエネルギープロフィールが交差するか否かを調べるような基準の変更が行なわれ得る。交差しない場合、高エネルギー回転異性体が、デッドエンドであると決定され得る。ダブルス計算は、シングルス計算よりも有意に多くのコンピュータ処理時間がかかり得る。プロセスを高速化させるため、最も生産性の高くなるダブルス計算を予測するための他のコンピュータ処理方法が開発された。例えば、Gordon&Mayo,1998(引用によりその全体(it its entirety)が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。この種の変形型は、集合的に、高速ダブルスといわれ、DEEの速度と有効性が有意に改善された。
いくつかの他の変形型もまたDEEを向上させている。多数の残基からの回転異性体を、いわゆる超回転異性体に合わせると、消去がさらに高速化され得る(Desmetら,1994;Goldstein,1994)。
これらの方法のさらなる論考については、例えば、Goldstein,R.F.(1994)、Biophys.J.66,1335−1340;Desmet,J.,De Maeyer,M.,Hazes,B.& Lasters,.I.(1992)、Nature 356,539−542;Desmet,J.,De Maeyer,M.& Lasters,I.(1994)、In The Protein Folding Problem and Tertiary Structure Prediction(Jr.,K.M.& Grand,S.L.編)、pp.307−337(Birkhauser,Boston);De Maeyer,M.,Desmet,J.& Lasters,I.(1997)、Folding&Design 2,53−66,Gordon,D.B.& Mayo,S.L.(1998)、J.of Comp.Chem.19,1505−1514;Pierce,N.A.,Spriet,J.A.,Desmet,J.,Mayo,S.L.,(2000)、J.of Comp.Chem.21,999−1009(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
「発現系」は、本明細書において、宿主細胞および適当な条件下(例えば、ベクターに担持され、宿主細胞に導入される外来DNAにコードされたタンパク質の発現に)の適合性のベクターをいう。一般的な発現系としては、大腸菌宿主細胞、シュードモナス属または他の細菌細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞(Sf9、Hi5またはS2細胞など)とバキュロウイルスベクター、ショウジョウバエ細胞(シュナイダー細胞)と発現系、および哺乳動物宿主細胞(例えば、酵母)とベクターが挙げられ、後生動物細胞もまた使用され得る。大腸菌のほか、他の具体的な宿主細胞としては、酵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、線維芽細胞(例えば、BHKもしくはVero)、幹細胞(例えば、胚性幹細胞)、網膜芽細胞(PerC.6細胞など)、ハイブリドーマ細胞、ニューロン細胞、血液細胞、骨髄細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、任意の起源の哺乳動物の(例えば、ヒト)胚性細胞、プラスマ細胞腫細胞(NS1細胞など)、任意の起源の細胞株およびハイブリッド異種交配細胞(例えば、混合型哺乳動物細胞、または異種交配種起源由来の細胞)が挙げられる。
「賦形剤」は、一般的に、特定の化合物の製剤化に適したものであり得る任意の薬剤、ビヒクル、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、抗凝集剤、着色剤、安定剤、可溶化剤、保存剤などをいう。特定のある態様において、賦形剤は、錠剤を投与に実用的な大きさにするために、製剤に嵩高さを付与するものであり得る。他の態様において、賦形剤は、錠剤が圧縮後にそのままの状態で維持されることが確実となるような粘着凝集性を付与する薬剤であり得る。さらに他の態様において、賦形剤は、投与後に固形投薬形態の崩壊または分解を助長するために添加され得る。特定のある実施形態において、賦形剤は、安定性、可溶性を付与するもの、またはタンパク質の液状もしくは凍結乾燥製剤の凝集を抑制するものであり得る。賦形剤の一例としては、水、生理食塩水、セルロース系物質、デンプン、クレイ、アルギン(align)、ガム類、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトースおよび他の糖類、ポリマー、ならびにこれらまたはその他の種々の組合せが挙げられる。賦形剤は、所望の作用を損なわない活性物質を含むもの、または所望の作用を補う、もしくは別の作用を有する物質を含むものであり得る。また、医薬用または治療用の担体またはビヒクルは、賦形剤を含むことがあり得る。
「宿主細胞」は、細胞による物質の産生のために、任意の様式で選択、修飾、形質転換、培養、使用または操作される任意の生物体の任意の細胞を意味する。宿主細胞は栄養素要求性であり得、これは、その維持または成長に必要とされる少なくとも1種類の特定の有機化合物を合成することができないか、または該化合物を欠損しており、該化合物を別の供給源(その環境もしくは培養培地など)から取得しなければならない。また、栄養素要求性宿主細胞は、1倍、2倍、3倍、4倍またはそれ以上のレベルの栄養要求性を有し、そのため、それぞれ、その成長または維持に必要な1、2、3、4種類以上の有機化合物を合成することができないものであり得る。例えば、宿主細胞は、特定の遺伝子、DNAもしくはRNA配列、タンパク質または酵素が発現されるように操作されたものであり得る。宿主細胞は、インビトロまたはインビボで、非ヒト動物(例えば、トランスジェニック動物または一過的にトランスフェクトされた動物)の1つ以上の細胞において培養され得る。
本発明の方法は、配列を互いに(例えば、野生型(「天然」とも記載する)配列と1つ以上の変異型、あるいは異なる種に由来する同じ遺伝子または同じもしくは異なる種の関連遺伝子の野生型配列同士)比較する工程を含むものであってもよい。かかる比較は、典型的には、例えば、当該技術分野でよく知られた配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、2〜3例を挙げると、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を使用する遺伝子またはポリペプチド(タンパク質)の配列のアラインメントを含む。当業者には、かかるアラインメントにおいて、変異が残基の挿入または欠失を含む場合、配列アラインメントでは、挿入残基または欠失残基を含まないポリマー配列に「ギャップ」(典型的には、ダッシュ「−」または「Δ」で表す)が導入されることは容易に認識され得よう。
「相同な」は、その文法形態およびスペル上の語尾変化のすべてにおいて、「共通の進化上の起源」を有する2つの分子(例えば、タンパク質、tRNA、核酸)、例えば、同じ種の生物体のスーパーファミリー由来のタンパク質、ならびに生物体の異なる種由来の相同タンパク質間の関係をいう。かかるタンパク質(およびそのコード核酸)は、その配列類似性(同一性パーセントとして、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在のいずれか)によって反映される配列相同性および/または構造的相同性を有する。相同な分子はまた、多くの場合、類似した機能を共有し、または同一の機能を共有していることすらある。
用語「配列類似性」は、その文法的形態すべてにおいて、核酸またはアミノ酸(共通の進化上の起源を共有するものまたは共有しないものであり得る)の配列間の同一性または一致の程度をいう。しかしながら、一般的な用法および本出願において、用語「相同な」は、「高度に」などの副詞で修飾されている場合、配列類似性に言及している場合があり、共通の進化上の起源に関連している場合もあり、関連していない場合もある。
例えば、任意の天然に存在する核酸は、1つ以上のセレクターコドンが含まれるように任意の利用可能な変異誘発法によって修飾されたものであり得る。発現の際、この変異誘発された核酸は、1つ以上の非天然アミノ酸を含むポリペプチドをコードしている。該変異プロセスは、もちろん、1つ以上の標準コドンをさらに改変するものであってもよく、それにより、得られる変異型タンパク質の1つ以上の標準アミノ酸も同様に変更される。相同性は、一般的に、2つ以上の核酸またはタンパク質(またはその配列)間の配列類似性から推測される。相同性の確立に有用な配列間の類似性の正確なパーセンテージは、対象の核酸およびタンパク質によって異なるが、25%程度の小さい配列類似性が、相同性の確立に常套的に使用される。高レベルの配列類似性、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%またはそれ以上もまた、相同性の確立に使用され得る。1つ以上の特定のアミノ酸または核酸の位置が他よりも高いレベルの配列類似性を示すならば(異なる供給源から選択した類似配列(1つまたは複数)の群間で)、高い配列類似性を有する位置は、「高度に保存されている」とみなされる。典型的には(常にそうではないが)、核酸またはアミノ酸配列の高度に保存された領域は、分子の構造および/または機能に重要な役割を果たしている。配列類似性のパーセンテージの測定方法(例えば、BLASTPおよびBLASTN、デフォルトパラメータを使用)が一般的に利用可能である。
核酸分子は、単鎖形態の核酸分子が、適切な温度および溶液イオン強度条件下で、他方の核酸分子にアニーリング可能である場合、別の核酸分子(例えば、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAなど)に「ハイブリダイズ可能」である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。温度およびイオン強度の条件により、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」が決定される。相同な核酸の予備スクリーニングでは、T(融解温度)55℃に相当する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件が使用され得る(例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%乳汁、およびホルムアミドなし;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS)。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、高T(例えば、40%ホルムアミド、5×または6×SSCを含む)に相当する。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、最高T(例えば、50%ホルムアミド、5×または6×SSCに相当する。SSCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム)。
ハイブリダイゼーションでは、2つの核酸が相補配列を含むことが必要とされるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間にミスマッチが起こり得る。核酸がハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、当該技術分野でよく知られた可変量である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。したがって、2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、該配列を有する核酸のハイブリッドのTの値が大きい。核酸ハイブリダイゼーションの相対安定性(高Tに相当)は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAの順に小さくなる。100ヌクレオチド長より大きいハイブリッドでは、Tを算出するための等式が誘導されている(Sambrookら(前掲)、9.50−9.51(引用により本明細書に組み込まれる)を参照)。短鎖の核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド)を用いるハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さによって特異性が決定される(Sambrookら(前掲)、11.7−11.8(引用により本明細書に組み込まれる)を参照)。ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、少なくとも約10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは、長さは、少なくとも約20ヌクレオチドである。
特に記載のない限り、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、約55℃のTをいい、上記の条件が使用される。少なくとも1つの実施形態において、Tは60℃であり、少なくとも1つの実施形態では、Tが65℃である。具体的なある実施形態において、「高ストリンジェンシー」は、68℃で0.2×SSC中、42℃で50%ホルムアミド、4×SSC中のハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件、あるいは、これらの2つの条件のいずれかの下で観察されるものと同等なハイブリダイゼーションレベルがもたらされる条件下をいう。
オリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)に好適なハイブリダイゼーション条件は、オリゴヌクレオチドの融解温度の方が低いため、典型的には、完全長の核酸(例えば、完全長cDNA)に対するものといくぶん異なる。オリゴヌクレオチドの融解温度は、関与するオリゴヌクレオチド配列の長さに依存し、適当なハイブリダイゼーション温度は、使用されるオリゴヌクレオチド分子に応じて種々である。例示的な温度は、37℃(14塩基オリゴヌクレオチドの場合)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチドの場合)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチドの場合)および60℃(23塩基オリゴヌクレオチドの場合)であり得る。オリゴヌクレオチドに対する例示的な適当なハイブリダイゼーション条件としては、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中での洗浄、または同等レベルのハイブリダイゼーションをもたらす他の条件が挙げられる。
「標的分子」は、本明細書で用いる場合、化学的または生物学的機能または活性を発揮し得る化学的または生物学的存在体をいう。「標的分子」には、核酸(DNA、RNAなど)、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、生体ポリマー、炭水化物、糖タンパク質、糖脂質、脂質など、および任意のその組合せが包含される。本発明の方法には、単一の標的分子または多数の標的分子の修飾が含まれる。多数の標的分子が修飾される場合、逐次、同時または別の方法で修飾され得る。さらにまた、本明細書でいう化学的または生物学的機能または活性としては、対応する天然(野生型)標的分子(1つまたは複数)と類似した機能または活性が挙げられ得、または他の機能、例えば、対応する天然(野生型)標的分子(1つもしくは複数)または別の標的分子の阻害、対応する天然(野生型)標的分子(1つもしくは複数)または別の標的分子の機能の増大もしくは低減、あるいは化学的または生物学的環境(mileu)、細胞、組織、器官または系への影響(インビトロ、インビボまたはエキソビボのいずれの場合も)などが挙げられ得る。
「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、互換的に使用され、化学結合によってともに連結されたアミノ酸の鎖を示す。タンパク質またはポリペプチド(例えば、酵素)などの分子は、「天然」または「野生型」(天然に存在することを意味する)であり得るか、または「変異型」、「バリアント」、「誘導体」もしくは「修飾」(天然分子もしくは別の変異型から作製、改変、誘導されているか、あるいは、なんらかの様式で異なるか、変更されていることを意味する)であり得る。本明細書で用いる場合、「野生型」アミノ酸残基は、特定のある分子内に天然に存在する天然アミノ酸残基を表すが、「天然に存在する」アミノ酸残基は、野生型アミノ酸残基である場合と、そうでない場合があり得る。本文中で一緒に使用されている場合、「野生型」アミノ酸残基は、別の「天然に存在する」アミノ酸残基に改変されたものであり得る。かかる文脈では、語句「天然に存在する」アミノ酸残基は、任意の非天然アミノ酸ではなく、任意の20種類の天然に存在するアミノ酸残基をいう。したがって、ポリペプチド内に存在する「野生型」アミノ酸残基は、野生型アミノ酸残基とは異なる別の「天然に存在する」アミノ酸残基、または
「非天然」アミノ酸残基に改変されたものであり得る。
当該技術分野では、ポリペプチドの転写では、遺伝子またはポリヌクレオチドは3’→5’方向に読まれ、ポリペプチドは5’→3’方向に生成されることが認識されている。本明細書で用いる場合、1位は、ポリペプチドの5’、(N)またはアミノ末端のアミノ酸(天然に存在するもの、または非天然いずれの場合も)をいい、2位は、ポリペプチド鎖の2番目または最後から2番目の位置のアミノ酸をいい、3位はその次の位置をいうなど、3’、(C)またはカルボキシル末端に向かう。さらに、ポリペプチド発現中(転写、翻訳など)、細胞機構によっていくつかの「プルーフリーディング」機能が存在し、遺伝子またはポリヌクレオチドの配列が改変され得ることは理解されよう。したがって、本明細書の一実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、1つ以上の非天然アミノ酸コドンを含むように改変される(置換または付加のいずれかによって)。特定のある実施形態において、ポリヌクレオチドの改変は、宿主細胞が目的のポリペプチドを発現したとき、少なくとも1つの非天然アミノ酸残基が該遺伝子またはポリヌクレオチドの改変を保持するように行なわれる。好ましい一実施形態において、非天然アミノ酸残基は、ポリペプチドの1位(アミノ末端)のものであり、プロセッシング中、保持される。一部のある実施形態において、ポリペプチドのN末端の1位の非天然アミノ酸残基の保持効率は、該ポリペプチドの最後から2番目のまたは2位もまた改変することにより増大される。最後から2番目の残基は、別の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸に改変されたものであり得る。好ましい実施形態において、修飾ポリペプチド内に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖は不飽和であり、それにより、該ポリペプチド内の他のアミノ酸との側鎖の反応または相互作用が低減される。一部のある実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞なし(インビトロ、インシリコなど)で作製され、非天然アミノ酸残基は、デノボタンパク質合成中に組み込まれる。
タンパク質またはポリペプチドなどの標的分子はまた、「人工の」と称されることもあり得、該用語には、「変異型」、「バリアント」、「誘導体」または「修飾」が包含されるが、さらに少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むものである。本明細書で用いる場合、「人工のポリペプチド」としては、例えば、(a)本発明の人工のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;(b)(a)のポリヌクレオチド配列に相補的な、または該配列をコードするポリヌクレオチド;(c)核酸の実質的な全長において、ストリンジェントな条件下で(a)または(b)のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸;(d)(a)、(b)または(c)のポリヌクレオチドに少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約98%同一であるポリヌクレオチド;および(e)(a)、(b)、(c)または(d)の保存的変異を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
「生体ポリマー」は、本明細書で用いる場合、付加性の高分子特性または修飾を有する任意の天然または人工の生物学的または化学的分子、例えば、タンパク質、脂質または炭水化物をいう。生体ポリマーは、ポリマーが連結、コンジュゲートまたは混合されたグリコシル化もしくはペグ化、ミリスチル化、脱アミド化された、またはその他の方法による修飾分子をさすことがあり得る。
「回転異性体」は、各アミノ酸または類縁体に対する一組の考えられ得る配座異性体をいう。例えば、Ponderら,Acad.Press Inc.(London)Ltd.pp.775−791(1987);Dunbrackら,Struc.Biol.1(5):334−340(1994);Desmetら,Nature 356:539−542(1992)(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
「回転異性体ライブラリー」は、所与の組のアミノ酸または類縁体に対する一組の考えられ得る/許容され得る回転異性コンホメーションの集合体である。回転異性体ライブラリーには、「主鎖依存性」および「主鎖非依存性」の2つの一般的な型が存在する。主鎖依存性の回転異性体ライブラリーでは、主鎖の残基の位置に応じて種々の回転異性体が許容される。したがって、例えば、ある種のロイシン回転異性体は、その位置がαらせん内である場合に許容され、その位置がα−らせん内でない場合は、異なるロイシン回転異性体が許容される。主鎖非依存性の回転異性体ライブラリーには、あらゆる位置のアミノ酸のあらゆる回転異性体が利用される。一般に、主鎖非依存性ライブラリーはコア残基を考慮する際に好ましく、それは、コアの柔軟性が重要なためである。しかしながら、主鎖非依存性ライブラリーは、コンピュータを使用するのでより高価であり、したがって、表面および境界の位置には、主鎖依存性ライブラリーが好ましい。しかしながら、いずれの型のライブラリーも、任意の位置に使用され得る。
「可変残基位置」は、本明細書において、特定の残基または回転異性体(一般的には、野生型の残基または回転異性体)として設計法で固定されていない設計対象のタンパク質のアミノ酸位置をいう。位置が可変位置として選択された場合であっても、本発明の方法により、可変位置に野生型残基が選択されるような様式で配列が最適化されることが可能であることに注意されたい。これは、一般的に、コア残基の場合でより高頻度に起こり、表面残基では、あまり規則的でない。また、残基を非野生型アミノ酸として同様に固定することが可能である。
「固定残基位置」は、一般的に、3次元構造において、設定されたコンホメーションの状態であると同定された残基をいう。一部のある実施形態において、固定された位置は、その元のコンホメーションのままの位置である(これは、使用される回転異性体ライブラリーの特定の回転異性体と相関している場合もあり、していない場合もある)。あるいはまた、残基は、設計の必要に応じて非野生型残基として固定され得る。例えば、既知の部位特異的変異誘発手法によって特定の残基が望ましいことが示された場合、該残基は、特定のアミノ酸として固定され得る。固定され得る残基としては、限定されないが、構造的または生物学的に機能性の残基が挙げられる。
特定のある実施形態において、固定された位置は、「浮いた状態(floated)」であり得、該位置のアミノ酸または類縁体は固定されているが、該アミノ酸または類縁体の異なる回転異性体が試験される。この実施形態において、可変残基は、少なくとも1つ、あるいは残基または総数の0.1%〜99.9%の任意の個数の残基であり得る。したがって、例えば、2〜3つのみ(または1つ)の残基、または大部分の残基を変更することが可能であり得、これらの間のすべてが可能である。
本明細書で用いる場合、用語「変異型tRNA」または「変異型AARS」は、天然アミノ酸または内因性の非修飾転写もしくは翻訳機構との相互作用または反応が低減されているか、または全くもたず、代わりに、非天然アミノ酸および/または修飾転写もしくは翻訳機構と相互作用または反応し得るtRNAまたはAARS分子、例えば、他のtRNA分子および/またはアミノアシルtRNAシンテターゼをいう。特定のある実施形態において、変異型分子は他の変異型分子および/または非天然アミノ酸と、天然に存在するアミノ酸または分子よりもずっと高い効率で反応または相互作用する。特定のある実施形態において、変異型分子は、他の変異型分子および/または非天然アミノ酸と優先的に、特定のある実施形態ではほぼ排他的に反応または相互作用する。例えば、変異型tRNA(M−tRNA)および/または変異型アミノアシルtRNAシンテターゼ(M−RS)は、対象の系(例えば、翻訳系、例えば、細胞)によって、低効率(野生型または内因性tRNAおよび/またはAARSと比べて)で使用され得る。M−tRNAおよび/またはM−RSはまた、分子が、これがタンパク質翻訳に使用されている宿主細胞以外の供給源に由来する場合、「末端枝変異型」と称されることもあり得る。換言すると、特定のある実施形態において、M−tRNAおよび/またはM−RS分子は、翻訳系に対して異種であり得る。
本明細書で用いる場合、用語「末端枝変異型」は、対応する野生型アミノ酸によるアミノアシル化に対して低効率(野生型または内因性と比べて)を示す修飾分子(例えば、末端枝変異型tRNAおよび/または末端枝変異型アミノアシルtRNAシンテターゼ)をいう。「末端枝変異」は、対象の翻訳系において対応の天然に存在するアミノ酸と作用することができないか、または低効率で作用する(例えば、tRNAおよび/またはRSの効率が20%未満、10%未満効、5%未満、または例えば1%未満である)ことをいう。例えば、対象の翻訳系における末端枝変異型RSにより、対象の翻訳系の任意の内因性tRNAが野生型アミノ酸によって、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比べて低効率で(ゼロ効率の場合すらある)アミノアシル化される。
しかしながら、末端枝変異型RSは、内因性tRNAを代替アミノ酸(天然に存在するもの、または非天然のものいずれの場合も)で、内因性RSが内因性tRNAを代替アミノ酸でアミノアシル化する能力と比べて高効率でアミノアシル化するることに注意されたい。同様に、末端枝変異型tRNAは、代替アミノ酸コドン(代替アミノ酸が非天然アミノ酸を含む場合、または他の天然に存在するアミノ酸を含む場合いずれの場合も)に対して、対応する野生型アミノ酸に対してよりも高効率で機能を果たす。さらにまた、末端枝変異型tRNAは、特定の代替アミノ酸コドン(代替アミノ酸が非天然アミノ酸を含む場合、または他の天然に存在するアミノ酸を含む場合いずれの場合も)に対して、内因性tRNAに対してと同等、またはより高い効率で機能を果たし得る。
低効率で反応する変異型tRNAおよび/または変異型AARSは、天然アミノ酸残基と相互作用もしくは反応できないこと、または低効率、例えば、20%未満、10%未満、5%未満、もしくは例えば、1%未満の効率で相互作用もしくは反応することをいう。
また、「外来」tRNAおよび/またはAARS分子が、本明細書に開示した特定のある実施形態において使用され得る。一部のある実施形態において、「外来」は、別の生物体に由来するtRNAおよび/またはAARS分子をいい、野生型または変異型であり得る。したがって、外来tRNAまたは外来AARSはまた、それぞれ、末端枝変異型tRNAまたは末端枝変異型AARSであり得る。
「ウォッブル縮重コドン」は、本明細書で用いる場合、天然に存在するアミノ酸をコードするコドンであって、mRNA内に存在する場合、少なくとも1つの非ワトソン‐クリックまたはウォッブル塩基対合(例えば、A−C or G−U 塩基対合)によって天然のtRNAアンチコドンにより認識されるコドンをいう。ワトソン‐クリック塩基対合は、G−CもしくはA−U(RNAもしくはDNA/RNAハイブリッド)またはA−T(DNA)塩基対合のいずれかをいう。mRNAコドン−tRNAアンチコドン塩基対合に関連して使用される場合、ワトソン‐クリック塩基対合は、あらゆるコドン−アンチコドン塩基対合が、G−CまたはA−Uのいずれかによって媒介されていることを意味する。「ウォッブルデコード」は、したがって、一般的に、特定のtRNAが非ワトソン‐クリック塩基対合によって読み取り可能であることをいう。
「バイアスコドン」は、本明細書で用いる場合、天然に存在するアミノ酸をコードする縮重コドンであって、tRNA(「バイアスコドンtRNA」)によって使用されるものであるコドンをいい、バイアスコドンtRNAは特定の宿主細胞内に、同じ天然に存在するアミノ酸に使用される他のtRNA分子と比べて低濃度で存在する。特定のある実施形態において、バイアスコドンtRNAの低頻度は、細胞内のバイアスコドンtRNAのレベルまたは利用可能性を低減させるための宿主細胞の修飾の結果であり得る。これは、例えば、宿主細胞のゲノムからの特定のバイアスコドンtRNA遺伝子(1ふまたは複数)の欠失または不活化によって達成され得る。特定のある実施形態において、バイアスコドンtRNAは、約25%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.01%未満の頻度で、または翻訳系内の同じコドンに利用される最も一般的なtRNAの頻度未満で存在する。
「第6ボックスコドン」は、本明細書で用いる場合、同じ天然または非天然アミノ酸(例えば、限定されないが、アルギニン、ロイシン、またはセリン)をコードする6コドンの任意の1つをいう。第6ボックスコドンによって非天然アミノ酸が指定される実施形態では、該第6ボックスコドンは、同じアミノ酸残基をコードするその他の5つのコドンをデコードする少なくとも1つのtRNAによって認識されない。この第6ボックスコドンtRNAによる認識の欠如によって、第6ボックスコドンが、天然に存在するアミノ酸に対応する非天然アミノ酸の組込みの位置を指定することが可能になる。この場合、該天然に存在するアミノ酸は、第6ボックスコドンtRNAによって認識されないコドンにコードされているため、標的分子内において、同じ標的分子内の他の位置に組み込まれ得る。第6ボックスコドンの例としては、アルギニンのCGA、AGGおよびAGAコドン、またはロイシンのCTAが挙げられる。他の縮重コドンを、とりわけ本明細書において、「遺伝コード」および「大腸菌の縮重コドン」というタイトルの表に示す。
第6ボックスコドンと同様、同じアミノ酸に対する別の縮重コドンをウォッブルデコードしないtRNAが存在する2つまたは4つのボックス縮重コドンがある。
本発明のさらに他の実施形態において、人工のアンチコドンは、ウォッブルコドンでワトソン‐クリック塩基対合が形成されるように創製され得る。当業者には、アンチコドンが一般的に、対応するメッセンジャーRNA分子上に存在するヌクレオチドコドンに相補的な(ワトソン‐クリック塩基対合またはウォッブル対合のいずれかによって)ヌクレオチド配列(典型的には、3ヌクレオチド長であるが、2、3、4、5ヌクレオチド長、または他の大きさであってもよい)をいうことが理解されよう。タンパク質の翻訳中、tRNA分子上のアンチコドンは、特定のアミノ酸とマッチし、次いで、共有結合により該tRNAに結合される。特定のある実施形態において、アンチコドンは、終止コドンを含む対応するコドン(例えば、非センスコドンまたはミスセンスコドン)とマッチする。このように、アンチコドンの改変により、標的分子への非天然アミノ酸の特異的組込みが可能となり得る。したがって、人工のアンチコドンは、標的分子へのアミノ酸(天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸いずれの場合も)の組込みが可能となるように改変された(核酸レベルまたはアミノ酸レベルで)任意のコドンであり得る。
「ボロー(borrowed)コドン」は、本明細書で用いる場合、一般的に、第1の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸コドンであって、内因性もしくは外来tRNAまたは該第1のアミノ酸の対応するAARSによってアミノアシル化され得るM−tRNAによって認識されるが、実際にはキメラM−RSアミノアシル化されるコドンをいう。「キメラM−RS」は、tRNA実体エレメントに結合する第1のアミノ酸のAARSに由来する構造を含み、第2のアミノ酸のAARS由来のアミノ酸結合ドメインと、該第2のアミノ酸が標的分子内のボローコドン部位に組み込まれるように結合されたAARSをいう。特定のある実施形態において、キメラM−RSは非天然アミノ酸と結合するように修飾されており、そのため、該非天然アミノ酸がボローコドン部位に組み込まれるようになったものであり得る。ボローコドンとしては、天然に存在するアンチコドンまたは人工のアンチコドンにデコードされ得るコドンが挙げられ得る。人工のアンチコドンが利用される特定のある実施形態では、アンチコドンは、特定のアミノ酸のウォッブルコドンでワトソン‐クリック塩基対合が形成されるように創製され得る。
用語「優先的にアミノアシル化する」は、例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約85%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上効率的な効率をいう。該効率は、具体的なtRNA、AARSまたは両方に割り当てられる対応天然アミノ酸と比較した場合、どれだけ修飾型または末端枝変異型アミノアシルtRNAシンテターゼがtRNAを代替アミノ酸(非天然アミノ酸または別の天然に存在するアミノ酸いずれの場合も)でアミノアシル化するかによって測定され得る。
さらに、用語「優先的にアミノアシル化する」は、修飾型または末端枝変異型アミノアシルtRNAシンテターゼがtRNAを、具体的なtRNA、AARSまたは両方に割り当てられる対応天然アミノ酸以外の任意のアミノ酸でアミノアシル化するか、または変化させる効率をいう場合があり得る。さらに、用語「優先的にアミノアシル化する」は、非修飾型または天然に存在するAARSと比べた場合の、修飾型または末端枝変異型アミノアシルtRNAシンテターゼがtRNAを非天然アミノ酸でアミノアシル化する効率をいう場合があり得る。特定のある実施形態において、「優先的にアミノアシル化する」は、さらに、修飾型または末端枝変異型AARSがtRNAを別のアミノ酸でアミノアシル化する反応速度論によって測定される効率に関する(Km、kcat、kcat/KmまたはATP−PPi交換速度で示される)。
AARSによるtRNAのアミノアシル化の効率は、標的ポリペプチドもしくはタンパク質内への非天然アミノ酸の組込みの特異性の効率、または忠実度と相関し得ることに注意されたい。これは、tRNAがアミノ酸(野生型アミノ酸または非天然アミノ酸いずれの場合も)でアミノアシル化されると、この変化したtRNAがAARS酵素から放出され、該アミノ酸が標的ポリペプチド内に組み込まれるという点で、タンパク質合成機構の機能のためである。AARSのプルーフリーディング能が改変されると、該酵素により、代替アミノ酸がtRNAを変化させ、標的タンパク質内への組込みのために放出されることが可能になる。したがって、AARSによるアミノアシル化の効率は、標的ポリペプチド内への非天然アミノ酸の組込みの忠実度または特異性と直接相関する。
次いで、代替(非天然または天然いずれの場合も)アミノ酸が、伸長中のポリペプチド鎖内に高忠実度で、例えば、特定のコドンでは、約20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%より大きい、または約99%より大きい効率で組み込まれる。
修飾AARSは、非天然アミノ酸または別の選択された天然に存在するアミノ酸に対する結合効率が、対応の天然に存在するアミノ酸に対する修飾AARSの結合効率大よりきくなるように改変されたものであり得る。このように、修飾AARSは、その非修飾状態のAARSに対応する天然に存在するアミノ酸の存在下であってもtRNAを変化させるように、非天然アミノ酸に優先的に結合するものであり得る。このアミノアシルtRNAシンテターゼの「再プログラミング」により、他のアミノ酸の所望の部位内への誤組込みは低レベルで、ポリペプチド内への非天然アミノ酸の組込みが可能になる。
さらに、「再プログラミング」により、標準的な宿主細胞内への組込みが高レベルで、栄養素要求性宿主細胞の必要性を伴わず、対応する天然に存在するアミノ酸の培地の枯渇ありまたはなしで、修飾型または末端枝変異型シンテターゼの使用が可能となり得る。したがって、本明細書に開示した特定のある実施形態は、栄養素要求性宿主細胞を使用することによって実施され得、一方、特定のある他の実施形態は、栄養素要求性宿主細胞を使用することなく実施され得る。栄養素要求性宿主細胞を使用せずに特定のある実施形態を実施する場合、別の宿主細胞が使用され得るか、細胞成分が使用され得るか、または完全に無細胞系が使用され得る。
用語「相補的な」は、末端枝変異型対合の成分であって、該末端枝変異型tRNAと末端枝変異型シンテターゼが一緒に機能を果たし得る(例えば、末端枝変異型シンテターゼが末端枝変異型tRNAををアミノアシル化する)ことをいう。
用語「〜に由来」は、生物体から単離された成分、もしくは単離および修飾された成分、または生物体の成分の情報を用いて作製された(例えば、化学合成された)成分をいう。
用語「翻訳系」は、天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸が伸長中のポリペプチド鎖(タンパク質)に組み込まれるのに必要な成分をいう。例えば、該成分としては、リボソーム、tRNA(1種類または複数種)、シンテターゼ(1種類または複数種)、mRNAなどが挙げられ得る。本明細書に開示した該成分は、翻訳系にインビボまたはインビトロで添加され得る。インビボ翻訳系は、細胞(真核生物または原核生物の細胞)であり得る。インビトロ翻訳系は、無細胞系、例えば、異なる生物体由来の成分で再構成(精製または組換え作製)されたものなどであり得る。特定のある実施形態において、翻訳系は細胞を含まないものである。特定のある実施形態において、翻訳系は、栄養素要求性細胞を含まないものである。翻訳系は、栄養素要求性細胞を含まないものである場合、別の細胞または細胞成分を含むものであり得る。
用語「不活性RS」は、もはや、その対応するtRNAを任意のアミノ酸(天然に存在するもの、または非天然のものいずれの場合も)でアミノアシル化できないように変異されたシンテターゼをいう。用語「修飾RS」は、もはや、その対応するtRNAを対応の天然に存在するアミノ酸でアミノアシル化できないが、その対応するtRNAを別のアミノ酸(好ましくは、非天然アミノ酸)ではアミノアシル化できるように変異されたシンテターゼをいう。
用語「効率的に認識されない」は、ある生物体に由来にするRSが末端枝変異型tRNAをアミノアシル化するとき、例えば、約10%未満、約5%未満または約1%未満の効率をいう。特定のある実施形態において、RSは、末端枝変異型tRNAと同じ生物体または異なる生物体に由来のものであり得る。一部のある実施形態において、RSは、tRNAを特定のアミノ酸(好ましくは、非天然のアミノ酸)でアミノアシル化するように修飾されたものである。
用語「選択剤」は、存在させると、集団、例えば、抗生物質、光の波長、抗体、栄養分などからのある種の成分の選択が可能になる薬剤をいう。選択剤は、例えば、濃度、強度などが種々であり得る。
用語「陽性選択マーカー」は、存在させると(than when present)(例えば、発現させる、活性化させるなど)、陽性選択マーカーをもたない生物体から陽性選択マーカーを有する生物体の同定がもたらされるマーカーをいう。
用語「陰性選択マーカー」は、存在させると(例えば、発現させる、活性化させるなど)、所望の特性をもたない(例えば、所望の特性を有する生物体と比較した場合)生物体の同定がもたらされるマーカーをいう。
用語「レポーター」は、本明細書に記載の成分を選択するために使用され得る成分をいう。例えば、レポーターとしては、緑色蛍光タンパク質、ホタルルシフェラーゼタンパク質、またはβ−gal/lacZ(β−ガラクトシダーゼ)、Adh(アルコールデヒドロゲナーゼ)などの遺伝子が挙げられる。
用語「真核生物」は、真核生物(Eucarya)系統発生的ドメインに属する生物体、例えば、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類など)、繊毛虫類、植物、真菌(例えば、酵母など)、鞭毛虫、微胞子虫類、原生生物などをいう。さらに、用語「原核生物」は、真正細菌目(例えば、大腸菌、Thermus thermophilusなど)および始原菌(Archaea)(例えば、Methanococcus jannaschii、Methano細菌 thermoautotrophicum、Halo細菌、例えば、Haloferax volcaniiおよびHalo細菌種NRC−1、A.fulgidus、P.firiosus、P.horikoshii、A.pernixなど)系統発生的ドメインに属する非真核生物生物体をいう。
用語「医薬用」または「医薬用薬物」は、本明細書で用いる場合、被検体に投与され得る任意の薬理学的、治療用または活性な生物学的薬剤をいう。特定のある実施形態において、被検体は、動物、例えば脊椎動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。特定のある実施形態において、動物は脊椎動物である。特定のある実施形態では、動物は哺乳動物である。特定のある実施形態では、動物はヒトである。
用語「薬学的に許容され得る担体」は、本明細書で用いる場合、一般的に、医薬用薬物に付随され得るものであるが、該医薬用薬物の活性を妨げず、被検体の免疫系に有害な反応を引き起こさない任意の物質をいう。
本明細書で用いる場合、用語「投与すること」は、医薬用薬物または他の薬剤を被検体に移送、送達、導入または輸送する任意の様式をいう。かかる様式としては、経口投与、経表面接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、鼻腔内、皮下または髄腔内投与が挙げられる。また、本発明では、薬剤の投与において、デバイスまたは器具の利用が想定される。かかるデバイスは、能動または輸送輸送を利用するものであり得、低速または高速放出送達デバイスであり得る。
本明細書で用いる場合、用語「糖部分」は、天然の糖部分および非天然の糖部分(すなわち、天然に存在しない糖部分、例えば、1つ以上のヒドロキシル位置またはアミノ位置が修飾(例えば、脱ヒドロキシル化、脱アミン化、エステル化など)されたものであり、例えば、2−デオキシGalは、非天然の糖部分の一例である)をいう。
用語「炭水化物」は、一般式(CHO)を有し、限定されないが、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類が挙げられる。オリゴ糖類は、複数の糖単位で構成された鎖であり、代わりに砂糖(sugar)としても知られる。糖単位は、任意の順に配列されたものであり得、2つの糖単位間の結合は、およそ10種類の任意の異なる様式で行なわれたものであり得る。本明細書では、以下の略号:Ara=アラビノシル;Fru=フルクトシル;Fuc=フコシル;Gal=ガラクトシル;GalNAc=N−アセチルガラクトサミニル;Glc=グルコシル;GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;Man=マンノシル;およびNeuAc=シアリル(典型的には、N−アセチルneuraminイル) を使用する。
オリゴ糖は、その還元性末端の糖が実際に還元糖であろうとなかろうと、還元性末端および非還元性末端を有するとみなす。一般に認められた命名法に従い、本明細書では、オリゴ糖類を、左側を非還元性末端であり、右側を還元性末端で示す。本明細書に記載のオリゴ糖類はすべて、非還元糖名称または略号(例えば、Gal)、続いてグリコシド結合の配置(αまたはβ)、環結合、結合に関与している還元糖の環の位置、次いで、還元糖の名称または略号(例えば、GlcNAc)で記載する。2つの糖間の結合は、例えば、2,3;2→3;2−3;または(2,3)と表示され得る。2つの糖間の中性および非天然の結合(例えば、1−2;1−3;1−4;1−6;2−3;2−4;2−6;など)も本発明に含まれる。各糖はピラノースである。
用語「シアリン酸」(略号は「Sia」)は、9−炭素カルボキシル化糖類のファミリーの任意の構成員をいう。シアリン酸ファミリーの最も一般的な構成員は、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド(acetamindo)−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸)(しばしば、Neu5Ac、NeuAcまたはNANAと略記される)である。ファミリーの第2の構成員は、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、これは、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されている。第3のシアリン酸ファミリー構成員は、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadanoら、J.Biol.Chem.261:11550−11557,1986;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:21811−21819,1990)。また、9−置換シアリン酸、例えば、9−O−C1−C6アシル−Neu5Ac(9−O−ラクチル−Neu5Acもしくは9−O−アセチル−Neu5Acなど)、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acなども含まれる。シアリン酸ファミリーの概説については、例えば、Varki,Glycobiology 2:25−40,1992;Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer編(Springer−Verlag,New York(1992))を参照のこと。シアリル化手順におけるシアリン酸化合物合成および使用は、例えば、国際出願公開公報WO92/16640(全内容が引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
グリコシルトランスフェラーゼのドナー基質は、活性化されたヌクレオチド糖類である。かかる活性化糖類は、一般的に、ウリジンおよびグアノシン二リン酸、およびシチジン一リン酸、ヌクレオシド二リン酸または一リン酸が脱離基としての機能を果たす糖類の誘導体からなる。時として、細菌、植物および真菌系には、他の活性化ヌクレオチド糖類が使用され得る。
遺伝コードおよび縮重コドン
ほとんどの細胞で使用される標準的な遺伝コードを以下の一覧に示す。
Figure 0005313129
遺伝コードは、タンパク質生合成機構で20種類の天然アミノ酸単量体の鋳型による重合を指向するのに61種類のmRNAセンスコドンが利用されるため、縮重している(例えば、Crickら,Nature 192:1227,1961(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。2つのアミノ酸(メチオニンおよびトリプトファン)は、特殊なmRNAトリプレットにコードされている。
標準的な遺伝コードが、ほとんどの場合(すべての場合ではないが)に適用される。例外は、多くの生物体のミトコンドリアDNAおよびいくつかの下等生物体の核DNAに見られる。一例を以下の表に示す。
Figure 0005313129
植物細胞では、ミトコンドリアと核の両方で標準的な遺伝コードが使用される。
NCBI(National Center for Biotechnology Information)には、標準的な遺伝コードおよび種々の生物体に使用されている遺伝コードの詳細なリスト、例えば、脊椎動物のミトコンドリアコード;酵母のミトコンドリアコード;かび、原生動物および腔腸動物のミトコンドリアコードならびにマイコプラズマ/スピロプラズマのコード;無脊椎動物のミトコンドリアコード;繊毛虫類、緑藻類(dasycladacean)およびヘキサミタ属の核コード;棘皮動物および扁虫のミトコンドリアコード;euplotidの核コード;細菌および植物のプラスチドコード;代替酵母核コード;ホヤ類のミトコンドリアコード;代替扁虫ミトコンドリアコード;ブレファリスマの核コード;chlorophyceanミトコンドリアコード;吸虫綱のミトコンドリアコード;緑藻(scenedesmus obliquus)のミトコンドリアコード;トラウストキトリウム属のミトコンドリアコード(すべて、引用により本明細書に組み込まれる)が維持されている。これらは、主に、Osawaら、Microbiol.Rev.56:229−264,1992、ならびにJukesおよびOsawa,Comp.Biochem.Physiol.106B:489−494,1993(すべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)による概説に基づくものである。
縮重コドンの選択
上記のように、すべてのアミノ酸は、メチオニンとトリプトファンを除き、1つより多くのコドンにコードされている。本発明の方法によれば、天然アミノ酸をコードするのに通常使用されるコドンは、アミノ酸類縁体をコードするように再プログラミングされる。アミノ酸類縁体は、天然に存在するアミノ酸類縁体または基準アミノ酸類縁体であり得る。好ましい一実施形態において、アミノ酸類縁体は、基準コードアミノ酸ではない。
以下の表は、大腸菌の既知のアンチコドン配列のいくつかの一覧である。一般に、任意の生物体について、tRNAアンチコドン配列は、当該技術分野で認識された手法を用いて常套的に決定され得る。例えば、任意のtRNA遺伝子が、例えばPCRによって増幅され得る。配列決定を行なうと、アンチコドンループの正確な配列が決定され得る。あるいはまた、生化学的得都合アッセイを用いて、可能な2−6コドンの1つに対する精製tRNAの結合親和性が決定され得る。tRNAに最も高い特異性/親和性で結合するコドンは、おそらく、3つのすべてのコドン位置で純粋なワトソン‐クリックマッチを有し、したがって、アンチコドンループの配列を決定する。
一般に、アンチコドンループ内のウォッブル塩基は、GまたはU(AまたはCではなく)である傾向にあるが、かかる場合に限定されない。
Figure 0005313129
Figure 0005313129
ワトソン‐クリック塩基対合
ウォッブル塩基対合。
細胞が、tRNAのアンチコドンと1つのコドン間の完全な相補的相互作用によってコドンを認識し、かつウォッブルまたは他の非標準的な塩基対合相互作用によって第2の縮重コドンを認識する単一のtRNAを有する場合、該縮重コドンに完全に相補的なアンチコドン配列を有する新たなtRNAが構築され得る。
該細胞が特定の1つのアミノ酸に対して多重tRNA分子を有し、1つのtRNAが、選択した縮重コドンに完全に相補的なアンチコドン配列を有する場合、該tRNAをコードする遺伝子は、当業者に利用可能な任意の手段によって障害され得る。例示的なかかる手段としては、化学的変異誘発、DNAシャッフリングまたは遺伝子シャッフリング(例えば、遺伝子組換え)、遺伝子または遺伝子のプロモーター配列いずれかの無作為化遺伝子変異誘発、部位特異的変異誘発または欠失が挙げられる。遺伝子の発現はまた、任意のアンチセンスまたはRNA干渉手法によっても障害され得る。
tRNAの欠失または障害により、対応するコドンの障害がもたらされ、これは、宿主細胞に致命的である場合があり得る。宿主細胞を救済するため、かかるtRNA障害に、その発現が調節されるtRNA遺伝子の導入を付随させ得る。tRNA発現の調節は、抑制プロモーター(例えば、酵母における銅イオン誘導および抑制プロモーター系)を使用することによりなされ得る。例えば、Meth.Enzymol.306:145−153(1999)(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。調節されたtRNAは、目的の遺伝子が誘導される前に宿主細胞の増殖を支持するように機能を果たし、tRNAは、非天然アミノ酸の存在下で目的の遺伝子が誘導される前、または誘導時に抑制される。非天然アミノ酸は、同じコドンをデコードし得るが、その対応するM−RSと非天然アミノ酸の存在下でのみ機能を果たす外来tRNAまたはM−tRNAによって組み込まれる。
あるいはまた、tRNAの障害は、干渉RNA(iRNA)またはアンチセンスによりなされ得、これらの発現はともに、調節され得る。この場合、iRNAまたはアンチセンス発現は、同じ薬剤(例えば、IPTG)であって、標的分子の発現を誘導するための薬剤によって誘導され得る。非天然アミノ酸の付加により、外来またはM−tRNAおよびM−RSが、内因性tRNAの欠失または障害によって障害された同じコドンを使用することが可能になる。
非天然(unnatural/non−natural)アミノ酸
タンパク質工学プロセスの第1の工程は、通常、所望の化学的特性を有する一組の非天然アミノ酸を選択することである。非天然アミノ酸の選択は、事前に測定された化学的特性および標的分子または標的タンパク質において意図される修飾に依存する。非天然アミノ酸は、選択する際、販売元から購入したもの、または化学合成されたもののいずれかであり得る。任意の数の非天然アミノ酸が標的分子内に組み込まれ得、その数は結合される所望の化学物質部分の数に応じて種々であり得る。化学物質部分は、全部または一部だけの非天然アミノ酸に結合され得る。さらに、所望される結果に応じて、同じまたは異なる非天然アミノ酸が分子内に組み込まれ得る。特定のある実施形態では、少なくとも2つの異なる非天然アミノ酸が分子内に組み込まれ、1つの化学物質部分(例えば、PEGなど)が一方の非天然アミノ酸残基に結合され、一方、別の化学物質部分(例えば、細胞傷害剤など)が他方の非天然アミノ酸に結合される。
多種多様な非天然アミノ酸が本発明の方法において使用され得る。典型的には、本発明の非天然アミノ酸は、20種類の天然アミノ酸では得られ得ない付加的特性がもたらされるように選択または設計される。例えば、非天然アミノ酸は、任意選択で、分子、例えば、タンパク質(例えば、組み込み対象のもの)の生物学的特性が変更されるように設計または選択される。例えば、以下の特性、すなわち毒性、生体分布、可溶性、安定性(例えば、熱、加水分解、酸化に対する安定性、酵素的分解に対する抵抗性など)、精製および加工処理の容易性、構造特性、分光学的特性、化学的および/または光化学的特性、触媒活性、ワクチンとして機能を果たす能力、酸化還元電位、半減期、他の分子と反応する能力(例えば、共有結合もしくは非共有結合により)などが、分子(タンパク質など)に非天然アミノ酸を含めることによって任意選択的に修飾される。
本明細書で用いる場合、「非天然アミノ酸」は、セレノシステインおよび以下の遺伝子にコードされた20種類のα−アミノ酸、すなわちアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを除く任意のアミノ酸、修飾アミノ酸またはアミノ酸類縁体をいう。α−アミノ酸の一般構造は、式I:
Figure 0005313129
で表される。
非天然アミノ酸は、典型的には、式I(式中、R基は、20種類の天然アミノ酸に使用されているもの以外の任意の置換基である)を有する任意の構造である。20種類の天然アミノ酸の構造については、任意の生化学の教科書、例えば、Biochemistry by L.Stryer,第3版 1988,Freeman and Company,New Yorkなどを参照のこと。本明細書に開示した非天然アミノ酸は、上記の20種類のα−アミノ酸以外の天然に存在する化合物であってもよいことに注意されたい。本明細書に開示した非天然アミノ酸は、典型的には、側鎖のみが天然アミノ酸と異なるため、非天然アミノ酸は、他のアミノ酸(例えば、天然または非天然のもの)と、天然に存在するタンパク質で形成されるものと同じ様式でアミド結合を形成する。しかしながら、非天然アミノ酸は、天然アミノ酸と区別される側鎖基を有する。例えば、式IのRは、任意選択で、アルキル−、アリール−、アリールハライド、ビニルハライド、アルキルハライド、アセチル、ケトン、アジリジン、ニトリル、ニトロ、ハライド、アシル−、ケト−、アジド−、ヒドロキシル−、ヒドラジン、シアノ−、ハロ−、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、エポキシド、スルホン、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、フェニルボロン酸、チオール、セレノ−、スルホニル−、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式−、ピリジル、ナフチル、ベンゾフェノン、拘束された環(シクロオクチンなど)、チオエステル、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ、カルボン酸、α−ケトカルボン酸、αもしくはβ不飽和酸およびアミド、グリオキシルアミド、もしくはオルガノシラン基など、または任意のその組合せを含むものである。
非天然アミノ酸の具体例としては、限定されないが、p−アセチル−L−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−トレオニン、α−GalNAc−L−トレオニン、L−ドパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、後述または本明細書の他の箇所に記載したものなどが挙げられる。
アリール置換は、種々の位置、例えば、オルト、メタ、パラで行なわれたものであり得、1つ以上の官能基がアリール環上に配置され得る。対象となる他の非天然アミノ酸としては、限定されないが、光活性化可能な架橋体を含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、色素標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規な官能基を有するアミノ酸、親水性、疎水性、極性もしくは水素結合に対する能力が改変されたアミノ酸、共有結合もしくは非共有結合により他の分子と相互作用するアミノ酸、フォトケージ形および/または光異性化可能なアミノ酸、ビオチンもしくはビオチン類縁体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸(糖置換されたセリンなど)、他の炭水化物修飾アミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコールもしくはポリエーテル、多価アルコールもしくは多糖を含むアミノ酸、メタセシスを行ない得るアミノ酸、付加環化を行ない得るアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なおよび/または光切断可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比べて伸張された側鎖(例えば、ポリエーテルもしくは長鎖炭化水素、例えば、炭素数が約5より多い、もしくは約10より多い)を有するアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、レドックス活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、薬物部分を含むアミノ酸、ならびに1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸が挙げられる。
新規な側鎖を含む非天然アミノ酸に加え、非天然アミノ酸はまた、任意選択で、例えば式IIおよびIII;
Figure 0005313129
(式中、Zは、典型的には、OH、NH、SH、NHO−、NH−R’、R’NH−、R’S−またはS−R’−を含み、XおよびYは、同じであっても異なっていてもよく、典型的には、S、NまたはOを含み、RおよびR’は、任意選択で同じまたは異なっており、典型的には、式Iを有する非天然アミノ酸について上記のR基の構成要素の同じリストならびに水素または(CHまたは天然アミノ酸側鎖から選択される)
の構造で示されるような修飾主鎖構造を含むものである。例えば、本明細書に開示した非天然アミノ酸は、任意選択で、式IIおよびIIIで示すアミノまたはカルボキシル基に置換を含むものである。この型の非天然アミノ酸としては、限定されないが、α−ヒドロキシ酸、α−チオ酸α−アミノチオカルボキシレート、またはα−α−二置換アミノ酸(側鎖は、例えば、20種類の天然アミノ酸もしくは非天然の側鎖に対応している)が挙げられる。また、このようなものとしては、限定されないが、β−アミノ酸またはγ−アミノ酸、例えば、置換されたβ−アラニンおよびγ−アミノ酪酸が挙げられる。また、α−炭素における置換または修飾には、任意選択で、LまたはD 異性体、例えば、D−グルタメート、D−アラニン、D−メチル−O−チロシン、アミノ酪酸などが含まれる。他の構造的代替物としては、環状アミノ酸、例えば、プロリン類縁体ならびに3−、4−、6−、7−、8−および9−員環プロリン類縁体が挙げられる。一部の非天然アミノ酸(例えば、アリールハライド(p−ブロモ−フェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニンなど)は、エチンとの多目的なパラジウム触媒型クロスカップリング反応、またはアリールハライドと多種多様なカップリングパートナー間の炭素−炭素、炭素−窒素および炭素−酸素結合の形成を可能にするアセチレン反応を提供する。
例えば、多くの非天然アミノ酸は、天然アミノ酸(例えば、チロシン、グルタミン、フェニルアラニンなど)を基礎としたものである。チロシン類縁体としては、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、およびメタ置換チロシンが挙げられ、ここで、該置換チロシンは、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C6〜C20直鎖または分枝鎖炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含むものである。また、多重置換アリール環もまた想定される。グルタミン類縁体としては、限定されないが、α−ヒドロキシ誘導体、β置換誘導体、環状誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体が挙げられる。例示的なフェニルアラニン類縁体としては、限定されないが、メタ置換フェニルアラニンが挙げられ、ここで、その置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アセチル基などを含むものである。
非天然アミノ酸の具体例としては、限定されないが、アミノ酸またはアミノ酸類縁体(非天然アミノ酸)のo、mおよび/またはp形態、例えば、ホモアリルグリシン、シス−またはトランス−クロチルグリシン、6,6,6−トリフルオロ2−アミノヘキサン酸、2−アミノヘプタン(pheptanoic acidpheptanoic)酸、ノルバリン、ノルロイシン、O−メチル−L−チロシン、o−、m−またはp−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジドフェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨードフェニルアラニン、o−、m−またはp−ブロモフェニルアラニン、2−、3−または4−ピリジルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、ジアミノ酪酸、アミノ酪酸、ベンゾフラニルアラニン、3−ブロモ−チロシン、3−(6−クロロインドリル)アラニン、3−(6−ブロモインドリル)アラニン、3−(5−ブロモインドリル)アラニン、p−クロロフェニルアラニン、p−エチニル−フェニルアラニン、p−プロパルギルオキシ−フェニルアラニン、m−エチニル−フェニルアラニン、6−エチニル−トリプトファン、5−エチニル−トリプトファン、(R)−2−アミノ−3−(4−エチニル−1H−ピロル−3−イル)プロパン酸、アジドノルロイシン、アジドホモアラニン、p−アセチルフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p−エチル−フェニルアラニン、p−エチニル−フェニルアラニン、p−プロパルギルオキシ−フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、3−(2−ナフチル)アラニン、3−(1−ナフチル)アラニン、3−イディオ−チロシン、O−プロパルギル−チロシン、ホモグルタミン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、3−ニトロ−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−アセチル−L−フェニルアラニン、m−アセチル−L−フェニルアラニン、セレノメチオニン、テルロメチオニン、セレノシステイン、アルキンフェニルアラニン、O−アリル−L−チロシン、O−(2−プロピニル)−L−チロシン、p−エチルチオカルボニル−L−フェニルアラニン、p−(3−オキソブタノイル)−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、ホモプロパルギルグリシン、アジドホモアラニン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモ− L−フェニルアラニン、ジヒドロキシ−フェニルアラニン、ジヒドロキシル−L−フェニルアラニン、p−ニトロ−L−フェニルアラニン、m−メトキシ−L−フェニルアラニン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、およびイソプロピル−L−フェニルアラニン、トリフルオロロイシン、ノルロイシン、4−、5−または6−フルオロ−トリプトファン、4−アミノトリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン、ビオシチン、アミノオキシ酢酸、m−ヒドロキシフェニルアラニン、m−アリルフェニルアラニン、m−メトキシフェニルアラニン基、β−GlcNAc−セリン、α−GalNAc−トレオニン、p−アセトアセチルフェニルアラニン、パラ−ハロ−フェニルアラニン、セレノ−メチオニン、エチオニン、S−ニトロソ−ホモシステイン、チア−プロリン、3−チエニル−アラニン、ホモアリルグリシン、トリフルオロイソロイシン、トランスおよびシス−2−アミノ−4−ヘキセン酸、2−ブチニル−グリシン、アリル−グリシン、パラ−アジド−フェニルアラニン、パラ−シアノ−フェニルアラニン、パラ−エチニル−フェニルアラニン、ヘキサフルオロロイシン、1,2,4−トリアゾール−3−アラニン、2−フルオロ−ヒスチジン、L−メチルヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、β−2−チエニル−L−アラニン、β−(2−チアゾリル)−DL−アラニン、ホモプロパルギルグリシン(HPG)ならびにアジドホモアラニン(AHA)などが挙げられる。さまざまな非限定的な非天然アミノ酸の構造は、US 2003/0108885 A1(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる)の図(例えば、図29、30および31)に示されている。
チロシン類縁体としては、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、およびメタ置換チロシンが挙げられ、ここで、該置換チロシンは、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C6〜C20直鎖または分枝鎖炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含むものである。また、多重置換アリール環もまた想定される。本発明のグルタミン類縁体としては、限定されないが、α−ヒドロキシ誘導体、β置換誘導体、環状誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体が挙げられる。フェニルアラニン類縁体の例としては、限定されないが、メタ置換フェニルアラニンが挙げられ、ここでその置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アセチル基などを含むものである。
さらに、他の例としては、任意選択で(限定されないが)、チロシンアミノ酸の非天然の類縁体;グルタミンアミノ酸の非天然の類縁体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然の類縁体;セリンアミノ酸の非天然の類縁体;トレオニンアミノ酸の非天然の類縁体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケトもしくはアミノ置換アミノ酸、またはその任意の組合せ;光活性化可能な架橋体を有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規な官能基を有するアミノ酸;共有結合または非共有結合により別の分子と相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;フォトケージ形アミノ酸;光異性化可能なアミノ酸;ビオチンまたはビオチン類縁体含有アミノ酸;グリコシル化または炭水化物修飾されたアミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールを含むアミノ酸;ポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的に切断可能または光切断可能なアミノ酸;伸張された側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換アミノ酸、例えば、糖置換セリンなど;炭素結合糖含有アミノ酸;レドックス活性アミノ酸;α−ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,α二置換アミノ酸;β−アミノ酸;ならびに環状アミノ酸が挙げられる。
典型的には、本明細書において特定のある実施形態に使用される非天然アミノ酸は、20種類の天然アミノ酸では得られ得ない付加的特性がもたらされるように選択または設計され得る。例えば、非天然アミノ酸は、任意選択で、タンパク質(例えば、組み込み対象のもの)の生物学的特性が変更されるように設計または選択される。例えば、以下の特性、すなわち毒性、生体分布、可溶性、安定性(例えば、熱、加水分解、酸化に対する安定性、酵素的分解に対する抵抗性など)、精製および加工処理の容易性、構造特性、分光学的特性、化学的および/または光化学的特性、触媒活性、酸化還元電位、半減期、他の分子と反応する能力(例えば、共有結合もしくは非共有結合により)などが、タンパク質に非天然アミノ酸を含めることによって任意選択的に修飾される。
アミノ酸類縁体の他の例としては、任意選択で(限定されないが)、チロシンアミノ酸の非天然の類縁体;グルタミンアミノ酸の非天然の類縁体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然の類縁体;セリンアミノ酸の非天然の類縁体;トレオニンアミノ酸の非天然の類縁体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシ、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケトもしくはアミノ置換アミノ酸、または任意のその組合せ;光活性化可能な架橋体を有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規な官能基を有するアミノ酸;共有結合または非共有結合により別の分子と相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;フォトケージ形アミノ酸;光異性化可能なアミノ酸;ビオチンまたはビオチン類縁体含有アミノ酸;グリコシル化または炭水化物修飾されたアミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールを含むアミノ酸;ポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的に切断可能または光切断可能なアミノ酸;伸張された側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換アミノ酸、例えば、糖置換セリンなど;炭素結合糖含有アミノ酸;レドックス活性アミノ酸;α−ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,α二置換アミノ酸;β−アミノ酸;ならびにプロリン以外の環状アミノ酸が挙げられる。
また、本発明の方法における使用に適した非天然アミノ酸としては、アミノ酸側鎖に結合された糖部分を有するものが挙げられる。一実施形態において、糖部分を有する非天然アミノ酸としては、Man、GalNAc、Glc、FucまたはGal部分を有するセリンまたはトレオニンアミノ酸が挙げられる。糖部分を含む非天然アミノ酸の例としては、限定されないが、例えば、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−トレオニン、α−GalNAc−L−トレオニン、O−Man−L−セリン、テトラ−アセチル−O−Man−L−セリン、O−GalNAc−L−セリン、トリ−アセチル−O−GalNAc−L−セリン、Glc−L−セリン、テトラアセチル−Glc−L−セリン、fuc−L−セリン、トリ−アセチル−fuc−L−セリン、O−Gal−L−セリン、テトラ−アセチル−O−Gal−L−セリン、β−O−GlcNAc−L−トレオニン、トリ−アセチル−β− GlcNAc−L−トレオニン、O−Man−L−トレオニン、テトラ−アセチル−O−Man−L−トレオニン、O−GalNAc−L−トレオニン、トリ−アセチル−O−GalNAc−L−トレオニン、Glc−L−トレオニン、テトラアセチル−Glc−L−トレオニン、fuc−L−トレオニン、トリ−アセチル−fuc−L−トレオニン、O−Gal−L−トレオニン、テトラ−アセチル−O−Gal−L−セリン、β−N−アセチルグルコサミン−O−セリン、α−N−アセチルガラクトサミン−O−トレオニン、蛍光アミノ酸(ナフチルもしくはダンシルもしくは7−アミノクマリンもしくは7−ヒドロキシクマリン側鎖を含むものなど)、光切断可能または光異性化可能なアミノ酸(アゾベンゼンもしくはニトロベンジルCys、SerもしくはTyr側鎖を含むものなど)、p−カルボキシ−メチル−L−フェニルアラニン、ホモグルタミン、2−アミノオクタン酸、p−アジドフェニルアラニン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、p−アセチルフェニルアラニン、m−アセチルフェニルアラニン、2,4−ジアミノ酪酸(DAB)などが挙げられる。本発明には、上記のものの非保護形態およびアセチル化形態が含まれる(例えば、WO03/031464 A2、発明の名称「ペプチドのリモデリングおよび糖コンジュゲーション」;および米国特許第6,331,418号、発明の名称「糖の組成物、方法およびその合成のための装置」;TangおよびTirrell、J.Am.Chem.Soc.(2001)123:11089−11090;ならびにTangら、Angew.Chem.Int.編(2001)40:8(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照のこと)。
上記で示した多くの非天然アミノ酸は、例えば、Sigma Aldrich (USA)から市販されている。市販されていないものは、任意選択で、US 2004/138106 A1(引用により本明細書に組み込まれる)の実施例に示されているようにして、または当業者に知られた標準的な方法を用いて合成される。有機合成手法については、例えば、Organic Chemistry by Fessendon and Fessendon(1982,第2版,Willard Grant Press,Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March (第3版,1985,Wiley and Sons,New York);ならびにAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg (第3版,パートAおよびB,1990,Plenum Press,New York)、ならびにWO02/085923(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
例えば、メタ置換フェニルアラニンは、WO02/085923(例えば、該公報の図14を参照)に概要が示された手順にて合成される。典型的には、NBS(N−ブロモスクシンイミド)をメタ置換メチルベンゼン化合物に添加してメタ置換臭化ベンジルを得、次いで、これをマロネート化合物と反応させ、メタ置換フェニルアラニンを得る。メタ位に使用される典型的な置換基としては、限定されないが、ケトン、メトキシ基、アルキル、アセチルなどが挙げられる。例えば、3−アセチル−フェニルアラニンは、NBSを3−メチルアセトフェノン溶液と反応させることにより作製される。さらなる詳細については、以下の実施例を参照のこと。同様の合成を用いて、3−メトキシフェニルアラニンが作製される。その場合の臭化ベンジルのメタ位のR基は−OCHである(例えば、Matsoukasら,J.Med.Chem.,1995,38,4660−4669(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
一部のある実施形態において、非天然アミノ酸の設計は、末端枝変異型tRNAをアミノアシル化するために使用されるシンテターゼ(例えば、末端枝変異型tRNAシンテターゼ)の活性部位に関する既知情報によって偏る。例えば、グルタミン類縁体には、アミドの窒素が置換された誘導体(1)、γ位のメチル基が置換された誘導体(2)およびN−Cy−環状誘導体(3)を含む3つの類型が示される。重要な結合部位の残基が酵母GlnRSと相同である大腸菌GlnRSのx線結晶構造に基づいて類縁体を設計し、グルタミンの側鎖の10Åシェル以内の残基の側鎖変異のアレイを補足した(例えば、活性部位Phe233の疎水性の小アミノ酸への変異は、GlnのCyの位置の立体的バルキーさの増大によって補足され得る)。
例えば、N−フタロイル−L−グルタミン酸1,5−無水物(WO02/085923の図23の化合物番号4)を任意選択で使用し、アミドの窒素に置換基を有するグルタミン類縁体が合成される(例えば、King & Kidd,J.Chem.Soc,3315−3319,1949;Friedman & Chatterrji,J.Am.Chem.Soc.81,3750−3752,1959;Craigら,J.Org.Chem.53,1167−1170,1988;およびAzoulayら,Eur.J.Med.Chem.26,201−5,1991(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。該無水物は、典型的には、グルタミン酸から、まずアミンをフタルイミドとして保護した後、酢酸中で還流することにより調製される。次いで、該無水物をいくつかのアミンで開裂させると、一連の置換基が該アミドにもたらされる。ヒドラジンでのフタロイル基の脱保護により、WO 2002/085923の図23に示す遊離アミノ酸が得られる。
γ−位置における置換は、典型的には、グルタミン酸のアルキル化によって行なわれる(例えば、Koskinen & Rapoport,J.Org.Chem.54,1859−1866,1989(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。保護アミノ酸(例えば、WO02/085923の図24の化合物番号5で示されるもの)を、任意選択で、まず、アミノ部分を9−ブロモ−9−フェニルフルオレン(PhflBr)でアルキル化し(例えば、Christie & Rapoport,J.Org.Chem.1989,1859−1866,1985(引用により本明細書に組み込まれる)参照のこと)、次いで、酸部分を、O−tert−ブチル−N,N’−ジイソプロピルイソウレアを用いてエステル化することによって調製する。KN(Si(CHを添加すると、メチルエステルのα位が位置選択的に脱プロトン化されてエノラートが形成され、次いで、これを、任意選択で一連のアルキルヨウ化物でアルキル化する。該t−ブチルエステルおよびPhfl基を加水分解すると、所望のγ−メチルグルタミン類縁体(WO02/085923(引用により本明細書に組み込まれる)の図24化合物番号2)が得られた。
WO02/085923の図25に示された化合物番号3のようなN−Cγ環状類縁体を、任意選択で、既報のようにしてBoc−Asp−Ot−Buから4工程で調製する(例えば、Bartonら,Tetrahedron Lett.43,4297−4308,1987、およびSubasingheら,J.Med.Chem.35 4602−7,1992(各々、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。N−t−Boc−ピロリジノン、ピロリジノンまたはオキサゾリドンのアニオンを作製した後、図25に示す化合物7を添加すると、マイケル付加生成物が得られる。次いで、TFAで脱保護すると遊離アミノ酸が得られる。
トリフルオロロイシン(Tfl)およびヘキサフルオロロイシン(Hfl)は、当該技術分野で知られた種々の方法によって合成され得る。例えば、5’,5’,5’−トリフルオロ−DL−ロイシンは、まず、市販のトリフルオロメチルクロトン酸をエタノールで希釈し、これを触媒の存在下で水素化することにより段階的に合成され得る。次に、混合物を還流し、エステルを蒸留し得る。次に、α−オキシミノ−5’,5’,5’−トリフルオロイソカプロン酸を、還流および蒸留によって誘導した後、5’,5’,5−トリフルオロ−DL−ロイシンを再結晶化させ得る。同様に、(S)−5,5,5,5,5,5−ヘキサフルオロロイシンは、ヘキサフルオロアセトンおよびブロモピルビン酸エチルから、多工程(パン酵母による、またはオキサザボロリジン触媒を用いたカテコールボランによるα−ケトエステルのカルボニル基の高度エナンチオ選択性還元を含む)で調製され得る(さらなる詳細については、例えば、Rennert,Anker,Biochem.1963,2,471;Zhangら,Helv.Chim.Acta 1998,81,174−181,R.,Prot.ScL 7:419−426(1998);Hendricksonら,Annual Rev.Biochem.73:147−176(2004);米国特許出願公開公報第20030108885号および同第20030082575号、ならびに係属中の米国特許仮出願第60/571,810号(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本開示の新規な点の1つは、非天然フッ素化アミノ酸(1つまたは複数)が組み込まれたロイシン−ジッパードメイン高含有分子の熱安定性および化学的安定性の増大に関する。
同様に、ホモプロパルギルグリシン(HPG)およびアジドホモアラニン(AHA)は、公開された方法によって、例えば、Mangoldら,Mutat.Res.,1989,216,27(これは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って合成され得る。
上記の非天然アミノ酸に加え、チロシン類縁体のライブラリーもまた設計した。B.stearothermophilusの結晶構造TyrRS(その活性部位は、M.jannashiiシンテターゼのものに高度に相同性である)に基づき、チロシンの芳香族側鎖の10Åシェル以内の残基を変異させた(Y32、G34、L65、Q155、D158、A167、Y32およびD158)。WO02/085923の図26に示されたチロシン類縁体のライブラリーを設計し、これらの活性部位アミノ酸に対する置換のアレイを補足した。これらには、さまざまなフェニル置換パターンが含まれ、それにより、種々の疎水特性および水素結合特性が提供される。チロシン類縁体は、任意選択で、WO02/085923(例えば、該公報の図27を参照)に示された一般的なストラテジーを用いて調製される。例えば、ジエチルアセトアミドマロネートのエノラートを、任意選択で、ナトリウムエトキシドを用いて作製する。所望のチロシン類縁体は、次いで、適切な臭化ベンジルを添加した後、加水分解することによって調製され得る。
例示的な分子
非天然アミノ酸、例えば、化学物質部分が結合された部分を含む非天然アミノ酸(アルデヒド−もしくはケト−誘導型アミノ酸など)、または化学物質部分を含む非天然アミノ酸(および任意の対応するコード核酸、例えば、1つ以上のセレクターコドンが挙げられる)を含む本質的に任意のタンパク質(またはその一部分)が、本明細書に記載の組成物および方法を用いて作製され得る。数十万の既知タンパク質を同定する試みは行わないが、その任意のものが1つ以上の非天然アミノ酸を含むように修飾され得、例えば、任意の利用可能な変異方法を、1つ以上の適切な縮重コドンが関連する翻訳系内に含まれるように調整することにより修飾され得る。既知タンパク質の一般的な配列収蔵機関としては、GenBank EMBL、DDBJおよびNCBIが挙げられる。他の収蔵機関は、インターネットでの検索によって容易に確認され得る。
典型的には、該タンパク質は、任意の利用可能なタンパク質(例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質、工業用酵素、またはその一部分など)と、例えば、少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%もしくは少なくとも約99%以上同一であり、1つ以上の非天然アミノ酸を含むものである。
一態様において、組成物は、少なくとも1個、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9個、もしくは少なくとも約10個またはそれ以上の非天然アミノ酸、例えば、糖部分が結合されたものであり得る部分を含む非天然アミノ酸、もしくは糖部分を含む非天然アミノ酸、および/または別の非天然アミノ酸を有する少なくとも1種類のタンパク質を含む。非天然アミノ酸は同じであっても異なっていてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個またはそれ以上の異なる部位が、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個またはそれ以上の異なる非天然アミノ酸を含むタンパク質内に存在し得る。別の態様において、組成物は、非天然アミノ酸(例えば、糖部分が結合されたものであり得る部分を含む非天然アミノ酸、または糖部分を含む非天然アミノ酸)で置換されたタンパク質に存在する少なくとも1つだが、全部よりは少ない特定のアミノ酸を有するタンパク質を含む。1つより多くの非天然アミノ酸を有する所与のタンパク質では、非天然アミノ酸は同一であっても異なっていてもよい(例えば、タンパク質は、2種類以上の異なる型の非天然アミノ酸を含むものであってもよく、2つの同じ非天然アミノ酸を含むものであってもよい)。2つより多くの非天然アミノ酸を有する所与のタンパク質では、非天然アミノ酸は、同じであるか、異なるか、または同じ種類の多数の非天然アミノ酸と少なくとも1つの異なる非天然アミノ酸の組合せであり得る。
「標的分子」、「標的タンパク質」または「標的ポリペプチド」などは、本明細書で用いる場合、一般的に、任意の天然に存在する、または合成(人工)の治療用、診断用、生体分子、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をいい、これらは、本発明で論考したような修飾されたものであってもよい。標的分子の一例としては、限定されないが、例えば、α−1抗トリプシン、アンギオスタチン、抗溶血因子、抗体(例えば、抗体またはFab、Fab’、F(ab)2、Fd、Fv、ScFv、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ダイマー、トリマーまたはミニボディから選択されるその機能性の断片もしくは誘導体)、血管形成分子、血管形成阻害分子、アポリポタンパク質、アポタンパク質、アスパラギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、アンギオテンシンファミリー構成員、骨形成タンパク質(BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8a、BMP−8b、BMP−10、BMP−15など);C−X−Cケモカイン(例えば、T39765、NAP−2、ENA−78、Gro−a、Gro−b、Gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG)、カルシトニン、CCケモカイン(例えば、単球化学誘引タンパク質−1、単球化学誘引タンパク質−2、単球化学誘引タンパク質−3、単球炎症タンパク質−1α、単球炎症タンパク質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262)、CD40リガンド、C−キットリガンド、線毛神経栄養因子、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害因子、補体受容体1、サイトカイン、(例えば、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα/MGSA、GROβ、GROγ、MIP−1α、MIP−15、MCP−1)、デオキシリボ核酸、上皮増殖因子(EGF)、エリトロポイエチン(「EPO」、1つ以上の非天然アミノ酸の組込みによる修飾に好ましい標的である)、剥脱性(Exfoliating)毒素AおよびB、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)、フィブリノゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、グルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン、増殖因子、ヘッジホッグタンパク質(例えば、Sonic、Indian、Desert)、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、肝炎ウイルス、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、ヒアルリン−CD44、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF−I、IGF−II)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターフェロン−ε、インターフェロン−ζ、インターフェロン−η、インターフェロン−κ、インターフェロン−λ、インターフェロン−τ、
Figure 0005313129
インターフェロン−ω)、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−2、GLP受容体、グルカゴン、GLP−1Rの他のアゴニスト、ナトリウム***増加性ペプチド(ANP、BNPおよびCNP)、フゼオンおよびHIV融合の他の阻害因子、フルジンおよび関連抗凝固ペプチド、プロキネチシンおよび関連アゴニスト、例えば、black mamba snake venomの類縁体、TRAIL、RANKリガンドおよびそのアンタゴニスト、カルシトニン、アミリンおよび他の糖調節ペプチドホルモン、ならびにFc断片、エキセンジン(例えば、エキセンジン−4)、エキセンジン受容体インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12など)、I−CAM−1/LFA−1、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病抑制、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球抑制因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成性タンパク質、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、癌遺伝子産物(Mos、ReI、Ras、Raf、Metなど)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱性体外毒素A、BおよびC、レラキシン、レニン、リボ核酸、SCF/c−キット、シグナル転写活性化因子および抑制因子(p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Mybなど)、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM 1、可溶性インターロイキン受容体(IL−1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15)、可溶性接着分子、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、すなわち、ブドウ球菌エンテロトキシン(SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE)、ステロイドホルモン受容体(recetor(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アルドステロン、LDL受容体リガンドおよびコルチコステロンのものなど)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、Toll様受容体(フラゲリンなど)、トキシックショック症候群毒素(TSST−1)、サイモシンα1、組織プラスミノゲン活性化因子、トランスホーミング増殖因子(TGF−α、TGF−β)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、転写モジュレーター(例えば、細胞の増殖、分化および/または細胞調節を調節する遺伝子および転写分子タンパク質)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ウイルス様粒子、VLA−4/VCAM−1、ウロキナーゼ、シグナル伝達分子、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アルドステロン、LDL、コルチコステロンアミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、CD40L/CD40、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、サブチリシン、トランスアミナーゼ(trnasaminase)、ヌクレアーゼ、ならびに他の多くが挙げられる。
標的分子としては、原核生物、ウイルスおよび真核生物、例えば、真菌、植物、酵母、昆虫および動物(例えば哺乳動物)に見られ得る転写モジュレーター、シグナル伝達分子および癌遺伝子産物であって、広範な治療標的を提供するものが挙げられる。多くの機構、例えば、受容体への結合、シグナル伝達カスケードの刺激、転写因子の発現の調節、プロモーターおよびエンハンサーへの結合、プロモーターおよびエンハンサーに結合するタンパク質への結合、DNAの巻き戻し、プレ−mRNAのスプライシング、RNAのポリアデニル化、ならびにRNAの分解によって、発現および転写活性化因子が転写を調節することは認識されよう。
転写モジュレーターまたは発現活性化因子の一例としては、限定されないが、サイトカイン、炎症関連分子、増殖因子、その受容体、および癌遺伝子産物、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−8など)、インターフェロン、FGF、IGF−I、IGF−II、FGF、PDGF、TNF、TGF−α、TGF−β、EGF、KGF、SCF/c−Kit、CD40L/CD40、VLA−4Λ/CAM−1、ICAM−1/LFA−1、およびヒアルリン/CD44;シグナル伝達分子および対応する癌遺伝子産物、例えば、Mos、Ras、RafおよびMet;ならびに転写活性化因子および抑制因子、例えば、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、ReI、ならびにステロイドホルモン受容体(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アルドステロン、the LDL受容体リガンドおよびコルチコステロンなどに対するもの)が挙げられる。
抗体の修飾では、非天然アミノ酸残基(1つまたは複数)が、所望される目的に応じて、抗体構造内の任意の場所または位置に配置され得る。例えば、非天然アミノ酸残基は、抗体のFab可変領域、Fc領域、または該Fc領域と相互作用する別の場所に配置され得る。他の実施形態において、非天然アミノ酸残基は、抗体の結合界面、またはV領域に配置され得る。特定のある実施形態において、該修飾抗体は、その1つ以上の標的の殺傷能力の増大または減少を示す。特に、1つ以上の標的の殺傷能力が増大した抗体、または副作用が低減される抗体が所望され得る。
他の実施形態において、非天然アミノ酸(1つまたは複数)は、Fc−受容体および/または補体系のC1qに対して結合親和性の向上を付与する。特に、修飾抗体は、抗原またはタンパク質結合パートナー(例えば、補体のC1qおよび/またはマクロファージ上のFc受容体など)に対する改変された(例えば、向上した)親和性および/または特異性を有するものであり得る。例えば、分子の修飾により、その抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)機能、または補体結合活性が増大または低減され得る。他の例では、特定の分子の修飾により、その天然の反対(counter)構造の別の分子(抗体など)に結合する能力が増大または低減され得る。
本明細書に開示したようにして修飾され得る別の類型のタンパク質としては、酵素(例えば、工業用酵素)またはその一部分が挙げられる。酵素の例としては、限定されないが、例えば、アミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ(例えば、p450s)、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、サブチリシン、トランスアミナーゼ、およびヌクレアーゼが挙げられる。
本明細書に開示したようにして修飾され得るタンパク質のさらに別の類型としては、ワクチンタンパク質、例えば、感染性真菌、例えば、Aspergillus、Candida種;細菌、特に、大腸菌(これは、病原性細菌のモデルとして供される)ならびに医学的に重要な細菌、例えば、Staphylococci(例えば、aureus)、またはStreptococci(例えば、pneumoniae);原生動物、例えば、胞子虫(例えば、Plasmodia)、根足虫(例えば、Entamoeba)および鞭毛虫(Trypanosoma、Leishmania、Trichomonas、Giardiaなど);ウイルス、例えば、(+)RNAウイルス(例としては、ポックスウイルス、例えば、ワクシニア;ピコルナウイルス、例えば、ポリオ;トガウイルス、例えば、風疹;フラビウイルス、例えば、HCV;およびコロナウイルスが挙げられる)、(−)RNAウイルス(例えば、ラブドウイルス、例えば、VSV;パラミクソウイルス(Paramyxovimses)、例えば、RSV;オルトミクソウイルス(Orthomyxovimses)、例えば、インフルエンザ;ブンヤウイルス;およびアレナウイルス)、dsDNAウイルス(例えば、レオウイルス)、RNA→DNAウイルス、すなわち、レトロウイルス、例えば、HIVおよびHTLV、ならびにある種のDNA→RNAウイルス(B型肝炎ウイルスなど)由来のタンパク質のものが挙げられる。
農業に関連するタンパク質、例えば、害虫抵抗性のタンパク質(例えば、Cryタンパク質)、デンプンおよび脂質生成酵素、植物および昆虫毒素、毒素抵抗性タンパク質、マイコトキシン解毒タンパク質、植物生長酵素(例えば、リブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、「RUBISCO」)、リポキシゲナーゼ(LOX)、およびホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシラーゼもまた、適当な標的分子である。
本明細書に開示したようにして修飾され得る一部の標的分子は、市販されており(例えば、Sigma BioSciencesのカタログおよび価格表参照)、対応するタンパク質配列および遺伝子、または典型的には多くのそのバリアントは、よく知られている(例えば、Genbank参照)。
典型的には、標的分子は、任意の利用可能なタンパク質(例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質、工業用酵素,またはその一部分など)と、例えば、少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%もしくは少なくとも約99%以上同一であるタンパク質であり、1つ以上の非天然アミノ酸を含む。
本明細書またはその他に開示された任意の例示的な標的分子は、本明細書に記載の方法に従って修飾され得、標的タンパク質の1つ以上の治療特性、診断特性または酵素特性の改変がもたらされ得る。治療に関連性のある特性の例としては、血清半減期、貯蔵半減期、安定性、免疫原性、治療用性、非天然アミノ酸における検出可能性(例えば、レポーター基(例えば、標識または標識結合部位)を含めることによる)、特異性、LD50または他の副作用の低減、胃腸管を経由する体内への侵入可能性(例えば、経口アベイラビリティ)などが挙げられる。関連性のある診断特性の例としては、貯蔵半減期、安定性(例えば、熱安定性)、診断活性、検出可能性、特異性などが挙げられる。関連性のある酵素特性の例としては、貯蔵半減期、安定性、特異性、酵素活性、産生能、少なくとも1種類のプロテアーゼに対する抵抗性、少なくとも1種類の非水性溶媒に対する耐容性などが挙げられる。
多タンパク質複合体
本発明の別の態様は、抗体(またはその機能性の断片/誘導体)および1つ以上の治療用部分を含む免疫コンジュゲート標的分子の作製方法であって、(1)1つ以上の非天然アミノ酸を、抗体の指定の位置(1つまたは複数)に、任意の適当な主題の方法を用いて組み込むこと;(2)該抗体を1つ以上の治療用部分と接触させ、該1つ以上の治療用部分が抗体の該非天然アミノ酸(1つまたは複数)に結合されたコンジュゲートを形成させることを含む方法を提供する。
治療用部分は、同じであっても異なっていてもよく、同じまたは異なる非天然アミノ酸にコンジュゲートさせ得、弱(mild/weak)酸性条件(例えば、pH約4〜6、例えばpH約5)、還元性環境(例えば、還元剤の存在)、二価カチオン、または任意選択で加熱から選択される1つ以上の条件下で切断可能であり得る。本発明のさらなる態様は、任意の適当な主題の方法によって作製される免疫コンジュゲート標的分子を提供する。また、非天然アミノ酸を用いて、独自の官能基を有する2つ以上の標的分子または標的分子サブユニットを連結させ得る。例えば、二重特異性抗体は、2つの標的分子抗体(またはその機能性部分もしくはその誘導体、例えば、Fab、Fab、Fd、Fv、ScFv断片など)を、内部に組み込まれた非天然アミノ酸によって連結することにより作製され得る。
糖または他の化学物質部分をタンパク質に結合させる状況において、本明細書に記載の求電子性部分(例えば、ケト部分、アルデヒド部分など)および求核性部分だが(Although)、同じ組の求電子性部分と求核性部分を用いて、2つのタンパク質分子(2つの抗体分子など)を連結させ得る。
したがって、本発明は、標的分子を含む多タンパク質コンジュゲートの合成方法を提供する。このような方法は、一部のある実施形態において、第1の標的タンパク質(例えば、第1の抗体)内に、第1の反応基を含む第1の非天然アミノ酸を組み込むこと、および該第1の標的タンパク質を、第2の反応性基を含む第2の非天然アミノ酸を含む第2の標的タンパク質(例えば、第2の抗体)と接触させることを伴い、ここで、第1の反応基は第2の反応性基と反応し、それにより、第2の標的タンパク質を第1の標的タンパク質に結合させる共有結合が形成される。
第1の反応基は、一部のある実施形態において、求電子性部分(例えば、ケト部分、アルデヒド部分など)を含むものであり、第2の反応基は求核性部分を含むものである。一部のある実施形態では、第1の反応基が求核性部分を含むものであり、第2の反応基が求電子性部分(例えば、ケト部分、アルデヒド部分など)を含むものである。例えば、求電子性部分は、第1の抗体の非天然アミノ酸に結合されており、求核性部分は、第2の抗体の非天然アミノ酸に結合されている。
種々の標的タンパク質の種々の機能性ドメインを同様にして一緒に連結させ、新規な機能を有するタンパク質(例えば、DNA結合ドメインと転写活性化ドメインの特殊な組合せを有する新規な転写因子;新規な調節ドメインを有する新規な酵素など)を作製し得る。
分子改変の例示的な方法
アミノ酸残基を欠失、置換、付加する、あるいは組み込みを行うための他の手段が、各回の変異または修飾の所望の結果ならびに標的分子の修飾に関する全体的な目的に応じて非天然アミノ酸残基または天然に存在するアミノ酸残基とともに使用され得る。非天然アミノ酸は、具体的なアミノ酸残基に従って(例えば、ポリペプチド内の特定のアミノ酸の全部もしくはほぼ全部の位置を置き換えることにより)、または部位特異的に所望のアミノ酸位置に組み込まれ得る。
アミノ酸残基特異的組込みに関して、標的分子の修飾に対する一般的なアプローチの一例は、標的分子内の選択した特定のアミノ酸残基のいくつかまたは1つを除く全部を置き換えることを含む。特定のある実施形態において、選択されるアミノ酸残基はメチオニンである。少なくとも1つの実施形態において、標的分子内のどのメチオニンアミノ酸残基も、遺伝子変異によって別の天然に存在するアミノ酸残基または非天然アミノ酸残基で置き換える。したがって、特定のある実施形態において、ポリヌクレオチドは、標的分子内の選択した場所への非天然アミノ酸の組込みを可能にするために、特定の天然に存在するアミノ酸コドンの核酸配列を非天然アミノ酸コドンまたは終止コドン(もしくは他の非センスコドン)に変更するために改変または修飾される。次に、残りのアミノ酸残基(1つまたは複数)を、発酵中に、非天然アミノ酸で置き換える。発酵により、分子の化学的合成と比べて、製造コストの削減が可能になる。
特定のある実施形態において、非天然アミノ酸は、標的分子において置き換えられている天然に存在するアミノ酸に対応する。他の実施形態において、非天然アミノ酸コドンは、化学的構造において、標的分子において置き換えられている天然に存在するアミノ酸コドンに対応しない。特定のある実施形態において、特に、非天然アミノ酸が、標的分子において置き換えられる天然に存在するアミノ酸に対応しない場合、内因性tRNAおよび/またはアミノアシルtRNAシンテターゼ機構が、標的分子内への非天然アミノ酸の組込みに使用され得る。一部のある実施形態において、この方法は、不能性または置き換えられた天然に存在するアミノ酸を欠損した細胞(例えば、栄養素要求性宿主細胞)内での生成に依存することがあり得る。したがって、タンパク質翻訳中、対応する非天然アミノ酸を、培養培地(置き換えのために選択した対応の天然に存在するアミノ酸とともに、またはなしで)中に存在させると、非天然アミノ酸が置き換えの標的として意図される天然に存在するアミノ酸位置に組み込まれる。
一部の他の方法では、非天然アミノ酸は、代替アミノ酸としてではなく、付加アミノ酸として標的分子内に組み込まれ得る。
特定のある実施形態において、選択されるアミノ酸残基がメチオニンである場合、アジドホモアラニンもしくはホモプロパルギルグリシン、または他の非天然アミノ酸で、標的分子内の残りのメチオニンが置換され得る。好ましくは、標的分子は、適正なフォールディング能を保持したものである。
この具体的な残基特異的組込み法を使用し、多数の異なる標的分子が好成績で利用され得る。最終的には、特定のアミノ酸ファミリーまたは型のどの特定の天然に存在するアミノ酸残基も、別のアミノ酸(天然に存在するもの、または非天然のものいずれの場合も)で置換または置き換えられるため、置換のために選択される好ましいアミノ酸残基ファミリーとしては、標的分子内に天然に存在するアミノ酸がほとんど存在しないものが挙げられる。例えば、最も好ましい標的分子は、メチオニンまたはトリプトファン残基がほとんど存在していないものであり、かかるアミノ酸型は、非天然アミノ酸または他の天然に存在するアミノ酸で容易に置換または置き換えられ得、該標的分子の構造または機能が破壊される尤度は低い。
例示的な一実施形態において、標的分子は、標的分子の構造または機能を破壊することなく、約10まで、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2または約1つの置換を有するものであり得る。特定のある実施形態において、このような置換の場所もまた考慮され得る。例えば、該置換(1つまたは複数)は、好ましくは、受容体結合または標的分子に対する他の分子間作用のための活性部位内の位置を占めていないのがよい。同様に、該置換(1つまたは複数)は、好ましくは、非天然アミノ酸または天然に存在する代替アミノ酸が該機能特性と化学的または構造的に適合性でない限り、重要な構造的位置を占めていないのがよい。非天然または代替の天然に存在するアミノ酸が適合性でない場合は、別のアミノ酸(天然に存在するもの、または非天然のもののいずれか)をコードさせるために、標的分子のコドンがポリヌクレオチドレベルで修飾され得る。好ましくは、該置換は保存的である、すなわち、標的分子の適正な構造および機能が保持される。したがって、残りのいずれのメチオニン残基も非天然アミノ酸で置き換える前に、メチオニン残基は、好ましくは、トレオニン、イソロイシンまたはロイシンで置き換えられ得る。
非天然アミノ酸が1つだけ標的分子に所望される特定のある実施形態では、すべてのメチオニン(または選択した他のアミノ酸型)が、他の天然に存在するアミノ酸で置換され、1つのメチオニンアミノ酸残基が、標的分子内の所望の非天然の位置に保持される(または、既に存在しない場合は、導入される)。
その後、非天然または他の代替アミノ酸が、単一のメチオニンアミノ酸残基位置に組み込まれる。当業者には認識され得るように、この方法は、メチオニン以外の任意の特定のアミノ酸型に使用され得る。
非天然アミノ酸で置き換えられる残りの1つの天然アミノ酸残基の場所は非天然アミノ酸の特性が有益となる任意の所望の場所(例えば、アミノ末端)であり得る。
特定のある実施形態において、標的分子の適正な構造および/または機能を維持するため、特定のアミノ酸型(メチオニンなど)の置換はまた、置換アミノ酸と相互作用する(特に、フォールディングのために)他のアミノ酸の置換によっても行なわれ得る。
標的分子内への非天然アミノ酸の組込み後、化学物質部分が該分子に結合され得、それにより、コンジュゲートが形成される。かかる非天然アミノ酸での標的分子の修飾方法により、高度に特異的な組込み、高度に効率的な組込みが可能になり、高収率の(if)修飾標的分子がもたらされる。
部位特異的非天然アミノ酸の組込みに関して、転写機構および/または翻訳機構の操作が、非天然アミノ酸の組込み効率の増大に必要とされることがあり得る。例えば、アミノアシル−tRNAシンテターゼおよび/またはアミノアシル−tRNAの操作は、部位特異的な非天然アミノ酸の組込みを達成するために必要であり得る。また、アミノアシルtRNAシンテターゼのエディティング機能の変更によっても、特定の非天然アミノ酸の組込みの効率増大および/または特異性増大が提供され得る。
したがって、一部のアミノアシル−tRNAシンテターゼ(野生型または変異型いずれの場合も)の混乱が、その特定の天然アミノ酸対応物(1つまたは複数)と構造的類似性を有するある種の非天然アミノ酸に対して利用され得る。
さらにまた、栄養素要求性宿主細胞が、非天然アミノ酸の組込み効率を増大させるために利用され得る(部位特異的組込みまたは残基特異的組込みいずれの場合も)。栄養素要求性宿主細胞は、その増殖に必要とされる特定の有機化合物を合成することができず、該化合物が増殖培地から摂取される場合のみ、増殖することができる変異型細胞である。培地が非天然アミノ酸を含有している場合(天然に存在するアミノ酸対応物の代わりに、または付加的に)、栄養素要求性宿主細胞は、非天然アミノ酸を利用し、これをそのポリペプチド鎖内に組み込む。栄養素要求性宿主細胞は、機構の操作(例えば、変異型アミノアシルtRNAおよび/または変異型アミノアシルtRNAシンテターゼなど)と合わせて、非天然アミノ酸の組込み効率の増大のために使用され得る。
報告によると、100を充分超える非コードアミノ酸(すべて、リボソームにより許容され得る)が、他の方法を用いてタンパク質内に導入されており(例えば、Schultzら,J.Am.Chem.Soc,103:1563−1567,1981;Hinsbergら,J.Am.Chem.Soc,104:766−773,1982;Pollackら,Science,242:1038−1040,1988;Nowakら,Science,268:439−442,1995(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)参照のこと)、これらの参考文献に記載の類縁体のいずれか、またはずべてが、タンパク質産物内への該類縁体の効率的な組込みのために主題の方法に使用され得る。一般に、本発明の方法を使用すると、アミノ酸類縁体は、タンパク質産物内にインビトロまたはインビボのいずれかで組み込まれ得る。
さらにまた、標的分子は、1つ以上の非天然アミノ酸残基を、タンパク質内の任意の特定の位置に有するものであってもよく、非天然アミノ酸残基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。特定のある態様において、本発明の組成物は、1個以上の非天然アミノ酸、例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、もしくは少なくとも10個またはそれ以上の非天然アミノ酸残基(これらは、互いに同じ(seame)または異なる任意の組合せであり得る)を有する少なくとも1種類のタンパク質を含む。典型的には、標的分子(例えば、タンパク質)は、任意の利用可能な標的タンパク質(例えば、治療用タンパク質、診断用タンパク質など)と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%またはそれ以上同一であり得る。
本発明の驚くべき結果の1つに、異なる最後から2番目のN末端(アミノ末端)の非天然アミノ酸残基が、N末端アミノ酸が非天然アミノ酸である分子の細胞のプロセッシングに影響を及ぼすという所見が挙げられる。この効果の例を本明細書に示す。例えば、一実施形態において、ポリペプチドのアミノ末端に存在するアミノ酸をコードする非天然アミノ酸コドンは、おそらくペプチダーゼ活性のため、翻訳処理中に切断される。したがって、特定のある実施形態において、アミノ末端の非天然アミノ酸コドンは、2位すなわち最後から2番目のアミノ酸残基位置もまた、非天然アミノ酸をコードするコドンに改変されている場合、より高い効率で保持される。このような変化は、本明細書で概要を示した任意の様式で、核酸レベルまたはアミノ酸レベルのいずれの場合でも行なわれ得る。
N−末端(アミノ末端)は、非天然アミノ酸を付加すること、または天然アミノ酸残基(典型的には、メチオニン)を非天然アミノ酸で置き換えることにより改変され得る。特に、とりわけ図に示すように、最後から2番目のN末端位置の特定のアミノ酸残基によって、N末端非天然アミノ酸残基の効率的な保持または除去が補助され得る。さらにまた、一部の非天然アミノ酸(アジドホモアラニンおよびホモプロパルギルグリシンなど)に見られる不飽和側鎖は、天然アミノ酸との副反応をほとんど、または全く伴うことなく組み込まれ得る(Kiickら,PNAS USA 99:19−24(2002);Wuら,Angew.Chem.Int.Ed.Eng.43:3928−3932(2004))。
例示的な一実施形態において、本明細書に開示した方法を使用し、アジドホモアラニン(AHA)またはホモプロパルギルグリシン(HPG)がアミノ末端に組み込まれているとともに、以下のアミノ酸変異または置換、すなわちS2E、C17S、M36I、I40F、I44L、M62I、M117Tを有する変異型インターフェロン−βコンジュゲートを作製した。したがって、標的分子インターフェロン−βは、開始メチオニン残基がAHAに改変されている以外は、いずれも天然に存在する別のアミノ酸残基に改変されたメチオニンアミノ酸残基を有した。また、他のアミノ酸位置も、他の天然に存在するアミノ酸に改変した。多数の天然に存在するアミノ酸残基を、インターフェロン−β標的分子の野生型配列の改変のために選択した。
標的インターフェロン−β分子に対する他のアミノ酸の変異または置換を、個々に、および/またはインターフェロン−βおよび/またはインターフェロン−α分子の種々の種配列比較に基づいてコンビナトリアル形式で行なった。ヒトインターフェロン−β分子は、野生型配列において4つしかメチオニン残基を含まなかったため(1、36、62および117位)、および化学物質部分(PEG)が分子のアミノ末端に結合されることが所望されたため、置き換え対象のアミノ酸としてメチオニンを選択した。インターフェロン分子の配列を調べると、ヒトインターフェロン−βの36位のメチオニンは、対応するイヌ配列ではイソロイシン;対応するマウス配列ではアラニン;対応するラット配列ではトレオニン;およびヒトインターフェロン−α配列ではヒスチジンであった。同様に、ヒトインターフェロン−β配列のアミノ酸62位に存在するメチオニンについて、対応するニワトリ配列の62位にはイソロイシンが存在し、対応するオーストラリアハリモグラ配列の62位にはロイシンが存在し、対応するヒトインターフェロン−α−1配列(13)にはロイシンが存在し、対応するヒトインターフェロン−α−1配列(6)にはバリンが存在した。最後に、ヒトインターフェロン−β分子のアミノ酸117位に存在するメチオニンについて、対応するサル配列の117位にはバリンが存在し、他の種の117位にはトレオニンおよびセリンが存在し、他のヒトインターフェロン配列の117位にはアスパラギン酸、アスパラギンおよびセリンが存在した。したがって、これらのアミノ酸を、まず、ヒトインターフェロン−β分子の対応するメチオニン残基における変異および/または置換の第1候補として選択した。
さらに、配列比較に基づいて一定の所望のアミノ酸残基またはアミノ酸位置が同定されたら、該部位に対する種々のアミノ酸改変についてエネルギー計算を行なった。
このような解析に鑑み、多重インターフェロン−β変異および/または置換を、以下のアミノ酸位置(アミノ末端を1位とし、そのため、M1AHAは、1位のメチオニンがAHAすなわちアジドホモアラニンに改変されていることを示し、他すべて同じ形式に従う)、すなわちM1AHA、M1HPG、S2H、S2E、S2Q、S2Y、S2F、S2K、M36T、M36A、M36I、M36V、M62Q、M62S、M62T、M62H、M62N、M62Y、M62F、M62I、M62A、M62L、M62G、M117any、M117S、M117T、M117Y、M117G、M62L−I40L、M62I−I40F−I44L(「ニワトリ三重」または「三重」)、M62I−I40F−I44L−M117T、M62I−I40F−I44L−M117S、M36A−M62I−I40F−I44L、M36T−M62I−I40F−I44L、M36T−M62I−I40F−I44L−M117T、M36T−M62I−I40F−I44L−M117S、M62L−I40L、M36T−M117I (「TI」、ここで、TIは、さらなる変異および/または置換を含んでいてもよい)、M36T−M117T(「TT」、ここで、TTは、さらなる変異および/または置換を含んでいてもよい)、TI−S2K、TI−S2Q、TI− S2Y、TI−S2F、TI−S2E、TI−S2H、TT−S2K、TT−S2Y、TT−S2F、TT−S2E、TT−S2H、TT−S2Qにおいて行なった。
これらのアミノ酸置換を含むM1AHA、S2E、C17S、M36I、I40F、I44L、M62I、M117T変異型インターフェロン−β分子は、アミノ末端のAHAを保持し、容易に精製され、適正にリフォールディングされた(ジスルフィド結合形成を含む)。さらに、変異型インターフェロン−β分子は、ポリ(エチレン)グリコール(10K)およびポリ(エチレン)グリコール(20K)で効率的にペグ化された。また、アジド部分とアルキン部分間の[3+2]銅触媒型付加環化を使用すると、ポリ(エチレン)グリコール(40K)でペグ化される。変異型インターフェロン−βペグ化コンジュゲートは、構造的に安定であり、インビトロおよびインビボの両方で完全な生物学的機能活性を保持していた。変異型インターフェロン−βコンジュゲートの詳細を、本明細書の実施例に示す。
インビトロ組み込み
一般に、アミノ酸類縁体または天然に存在するアミノ酸残基を有するタンパク質の合成には、当該技術分野で知られた任意の転写物作製手段が使用され得る。例えば、任意のインビトロ転写系または転写/翻訳系の組を用いて目的の転写物が作製され得、次いで、これはタンパク質合成のための鋳型に供する。あるいはまた、核酸物質からタンパク質を発現させ得る任意の細胞、操作細胞/細胞株、または機能性成分(ライセート、膜画分など)を用いて転写物を作製してもよい。このような転写物作製手段は、典型的には、RNAポリメラーゼ(T7、SP6など)および補因子、ヌクレオチド(ATP、CTP、GTP、UTP)、必要な転写因子などの成分、および適切なバッファー条件、ならびに少なくとも1種類の適当なDNA鋳型を含むが、反応条件の最適化のために、他の成分が添加されることもあり得る。
本発明の特定のある態様において、標的分子は、「DNAシャッフリング」または「遺伝子シャッフリング」(これは、点変異、遺伝子重複および/または遺伝子組換え
を含み得る)によって同定および/または修飾され得る。遺伝子シャッフリングは、ある程度、自然状態でも起こり得るが、インビトロまたはインビボで使用される奏功的な研究用手順であって、変異および組換えの天然の進化的プロセスを加速させた度合いで模倣するものであり得る。該手法を用いて、標的タンパク質(特に、酵素または抗体)などの分子を、新規な特異性、特性または活性を有するように進化させ得る。
例えば、遺伝子シャッフリングは、1回目のエラープローンPCR、発現ライブラリーの作製、または宿主細胞株への特定の非天然もしくは天然に存在するアミノ酸残基の導入によって起こり得、ランダムな変異または選択した変異がもたらされる。変異したバリアントのプールまたはライブラリーは、次いで、ランダム断片化およびPCR系再合成に供され、完全長再結合バリアントの集団が作製され得る。追加的または択一的に、変異PCR産物のプールまたはライブラリーを、特定のアミノ酸残基が組み込まれる宿主細胞内で、無作為または選択的のいずれかで特定の場所において発現させ、それにより、目的の標的分子の1回目の修飾が行なわれ得る。次に、該バリアント集団のスクリーニングまたは試験を行なうと、改善された機能または特性を有する特定の変異型クローンの同定および単離がもたらされる。選択されたクローンは、その後、任意の回数のさらなる「遺伝子シャッフリング」に供され得る。少なくとも一部の場合では、該特定の選択される特性が、連続する各回ごとに向上され得るため、複数回で十分最適なバリアントを得られる。少なくとも一部の場合では、コード遺伝子および非コード遺伝子または遺伝子断片の両方が特性または活性の向上を担う。
他の場合において、非天然アミノ酸を含むライブラリーの発現のためのバクテリオファージであって、該バクテリオファージのゲノムが、該ファージライブラリーが発現される細菌の宿主細胞内への非天然アミノ酸の組込みに使用される特定のコドンが排除されるようにコドン最適化されているバクテリオファージが創製され得る。少なくとも1つの実施形態において、変異型またはバリアント分子のライブラリーは、非天然アミノ酸をコードするコドンが導入された宿主細胞株内で発現され得る。さらなる詳細については、例えば、Stemmer,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,91:10747−10751(1994)(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
別の例示的な実施形態では、非天然アミノ酸を含むライブラリーを発現させるためのバクテリオファージであって、該バクテリオファージのゲノムが、該ファージを発現する細菌の宿主細胞内への非天然アミノ酸の組込みに使用される特定のコドンが排除されるように最適化されているバクテリオファージが創製される。
別の例示的な実施形態では、ScFvなどの標的分子のライブラリー、例えば、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の任意のコンビナトリアルライブラリーなど、または無作為化抗原結合ライブラリー(例えば、ファージライブラリー)などを、特定のコドンの非天然アミノ酸が組み込まれる宿主細胞において発現させ得、その後、該コドンが、該分子のライブラリー内に無作為または特定の場所のいずれかで導入され得る。したがって、宿主細胞内でライブラリーを発現させることにより、非天然アミノ酸が組み込まれ得る。次に、ライブラリーを抗原結合選択に供すると、特定の標的分子が同定または単離され得る。
本発明の特定のある態様では、標的分子は、化学的および/または部位特異的変異誘発による特定の特性の選択のため、および/または多重部位組込みのために改変または修飾され得る。化学的変異誘発としては、標的分子を変異促進剤に供すること、または該薬剤で処理することが挙げられ得る。変異促進剤は、さまざまな様式で機能を果たし得、例えば、「誤対合」能の増大、フレームシフト変異の増大、または塩基の障害もしくは改変などが挙げられる。変異促進剤は、当該技術分野でよく知られており、塩基アナログ変異原(5−ブロモ−デオキシウリジンなど)、アルキル化剤(メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、硫酸ジエチルおよびニトロソグアニジンなど)、酸化的脱アミノ化を引き起こす化学薬品(亜硝酸など)ならびに紫外(UV)光が挙げられ得る。
部位特異的変異誘発は、PCRまたは非PCRに基づく修飾を伴うものであり得る。部位特異的変異誘発により、特定のコドンの置換、欠失または付加による特定のアミノ酸残基の変異が可能となり得る。また、ある遺伝子領域または全遺伝子における一組のランダム変異は、ランダムで広域(extensive)の変異誘発(標的化ランダム領域特異的、またはライブラリー変異誘発とも呼ばれる) によって行われ得る。部位特異的変異誘発は、インビトロであってもインビボであってもよい。
部位特異的変異誘発は、いくつかのアプローチによって行われ得る。特に、アプローチの一例では、単鎖DNA鋳型に相補的であるが、変異を指令する内部ミスマッチを含むオリゴヌクレオチドの使用を伴う。このアプローチは、単一ならびに多重部位の変異、挿入および欠失のために使用され得る。別のアプローチでは、いくつかの合成オリゴヌクレオチドのライゲーションによって事前に得た標的分子内の変異対象の領域置き換えを伴う。これらのいずれかのアプローチの後、変異型または修飾標的分子の配列決定を行ない、所望の変異が起こっているかが確認され得る。
部位特異的変異誘発は、単一の変異促進性プライマー、または複数の変異促進性プライマー(単鎖の鋳型にアニーリングされ、クレノウ断片により短時間で伸張され、宿主(細菌または酵母の細胞など)をトランスフェクトするのに使用される)を使用することにより行なわれ得る。特定の方法の一例では、変異促進性プライマー(1種類または複数種)が、変異対象の所望の配列を含む完全長プラスミド全体(around)に伸張され得る。この「完全長全体(all the way around)」手法の後、新しい鎖がライゲートされ得る。多種類のプライマーが使用される場合、少なくとも1種類のプライマーは、典型的には、伸張およびライゲーション後のミスマッチ変異を保護するために使用される。単一のプライマーを伴う別の手法は、「ギャップ含有二本鎖(gapped duplex)」手法であり、これは、鋳型とベクター自体に由来する制限断片とのアニーリングによって形成される単鎖領域を利用するものである。これにより、伸張およびライゲーション後、オリゴヌクレオチドの5末端が保護されることが可能になる。部位特異的変異誘発に使用される鋳型は、二本鎖もしくは単鎖、環状もしくは線状、またはこれらの任意の組合せであり得る。具体的な手法に関するさらなる詳細については、例えば、Carter,Biochem.J.,237:1−7(1986);Bainら J.Am.Chem.Soc.111:8013−8014(1989);Wangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 100:1(2003);LingおよびRobinson,Analy.Biochem.254:157−178(1997)(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
また、点ミスマッチ修復、または修復血管宿主株を使用する変異誘発は、本発明により示されるさらなる実施形態である。欠失変異誘発、制限選択および制限精製、全遺伝子合成による変異誘発、二本鎖破断修復、ならびに当該技術分野で知られた他の方法が使用され得る。
本明細書でさらに記載しているように、エラープローンPCRを用いて、タンパク質などの標的分子が遺伝子レベルで改変または修飾され得る。例えば、PCRは、DNAポリメラーゼの低コピー忠実度を可能にする条件下で行なわれ得、高率の点変異により、完全長PCR産物がもたらされる。さらに、再帰的アンサンブル(recursive ensemble)変異誘発が使用され得、これは、タンパク質変異誘発のためのアルゴリズムが使用され、表現型が関連している変異型の多様な集団であって、その構成員はアミノ酸配列が異なる集団が作製されるものである。
該実施形態の一例では、非天然アミノ酸を含む抗体および/または抗体断片などの標的分子は、固相合成およびライゲーション手法を用いて、またはインビトロ翻訳/発現を用いて直接化学合成されたものであり得る。例えば、完全な抗体またはその断片は、充分に確立されたさまざまなタンパク質発現系、例えば、大腸菌、酵母、昆虫(例えば、バキュロウイルス系)、および哺乳動物の細胞を用いて発現させたものであり得る。
別の好ましい実施形態では、2種類以上の類縁体が、同じインビトロまたはインビボ翻訳系において、O−tRNA/O−RS対の利用を伴って、または伴わずに使用され得る。O−tRNA/O−RS対の利用は、天然アミノ酸が4つ以上のコドンにコードされている場合、より容易になされ得る。しかしながら、2つだけのコドンにコードされたアミノ酸では、一方は天然アミノ酸用に保存され得、他方は、1種類以上のアミノ酸類縁体に「共有」される。このような類縁体は、唯一の天然アミノ酸が類似したもの(例えば、異なるフェニルアラニン類縁体)、または異なるアミノ酸が類似したもの(例えば、フェニルアラニンとチロシンの類縁体)であり得る。
インビトロ使用では、1つ以上の本発明のO−RSが組換え作製され得、任意の利用可能なインビトロ翻訳系(例えば、市販のWheat Germ Lysate系PROTEINSCRIPT−PROTM、インビトロ転写/翻訳の組のためのAmbion製の大腸菌系;またはウサギ網状赤血球ライセート系RETIC LYSATE IVTTM Kit(Ambion製)など)に供給され得る。任意選択で、インビトロ翻訳系は、1種類以上の天然AARSを選択的に枯渇(例えば、天然AARSに対する固定化抗体を使用する免疫枯渇により)および/または天然アミノ酸(1つまたは複数)を選択的に枯渇させ、該類縁体の組込みの向上がなされ得るようにしたものであり得る。あるいはまた、再設計M−RSをコードする核酸が、組換え作製AARSの代わりに供給され得る。また、インビトロ翻訳系には、成熟タンパク質産物内に組み込まれる類縁体が供給され得る。
インビトロタンパク質合成は、通常、インビボ合成と同じ規模では行なわれ得ないが、インビトロ方法により、数百マイクログラムのアミノ酸類縁体含有精製タンパク質が得られ得る。かかるタンパク質は、円偏光二色性(CD)、核磁気共鳴(NMR)分光測定法、およびX線結晶学を用いて、そのキャラクタライゼーションに充分な量で作製された。また、この方法論を用いて、タンパク質の安定性およびフォールディングの測定における疎水性、充填性、側鎖エントロピーおよび水素結合の役割を調べることができる。また、これは、タンパク質の触媒機構、シグナル伝達および電子移動をプローブ検索するためにも使用され得る。また、この方法論を用いて、標的分子の特性が修飾され得る。例えば、光分解によって活性化され得るフォトケージ形タンパク質が作製され得、光学的および他の分光学的プローブの部位特異的組込みのための新規な化学的ハンドルが標的分子内に導入された。
インビボ組込み
増殖培地から直接インビボで標的分子内に非天然アミノ酸を組み込むための一般的なアプローチの開発により、非天然アミノ酸変異誘発力は大きく向上するであろう。例えば、重原子を含有するタンパク質を大量に合成できるようになると、タンパク質構造の決定が容易になるであろうし、生体細胞内のタンパク質においてフルオロフォアまたは光切断可能な基を部位特異的に置換することができるようになると、タンパク質機能をインビボで試験するための協力なツールが提供されることになろう。あるいはまた、新たな官能基を有する構成ブロック(例えば、ケト含有アミノ酸など)を提供することにより、タンパク質の特性を向上させることができるようになろう。
本明細書の特定のある実施形態において、1種類以上の本発明のAARSが宿主細胞(原核生物または真核生物のもの)に、核酸物質(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター上のコード配列)として供給され得、該核酸物質は、任意選択で、宿主ゲノム内に組み込まれ、再設計AARSが構成的または誘導的に発現され得る。異種または内因性の標的分子は、宿主細胞において、供給される非天然アミノ酸の存在下で発現され得る。次いで、タンパク質産物は、当該技術分野で認識された任意のタンパク質精製手法、または標的分子に対して特別に設計された手法を用いて精製され得る。
特別な一実施形態において、部位特異的および/または多重部位非天然アミノ酸の組込みには、米国特許第6,586,207号に記載の手順が使用され得る(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる)。簡単には、米国特許第6,586,207号には、選択したアミノ酸を所望の非天然アミノ酸で置き換えることにより標的分子を修飾する修飾標的分子の一般的な作製方法が示されている。特定のある実施形態において、該方法は、
a.宿主細胞を培地に供給すること、該宿主細胞は、
i.アミノ酸類縁体のためのアミノアシル−tRNAシンテターゼをコードするポリヌクレオチド配列を有するベクター;および
ii.宿主ベクター系が得られるように目的のポリペプチド分子をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクター
を含む;ここで、(i)および(ii)のベクターは、同じであっても異なっていてもよい、
b.該培地を、所望のアミノ酸類縁体を有する培地に交換すること、または所望のアミノ酸類縁体を該培地に添加すること、ここで、該所望のアミノ酸類縁体は、その対応する天然アミノ酸と異なる側鎖官能基を含む類縁体、対応する天然アミノ酸の光学異性体である類縁体、疎水性アミノ酸類縁体である類縁体、およびフッ素化された、電気活性の、コンジュゲートされた、アジド、カルボニル、アルキルまたは不飽和の側鎖官能基を含む類縁体;ならびに該ポリヌクレオチドにコードされたAARSによって効率的に利用され得る任意のアミノ酸からなる群より選択される、
c.宿主細胞を、所望のアミノ酸類縁体を有する培地中、該宿主細胞が目的のポリペプチド分子を発現し、かつ所望のアミノ酸類縁体が該目的のポリペプチド分子内に組み込まれ、それにより修飾ポリペプチドが産生されるような条件下で培養すること、
を含む、修飾ポリペプチドの作製に関する。
この方法によれば、アミノアシル−tRNAシンテターゼの発現により、アミノアシル−tRNAシンテターゼの活性の増大がもたらされる。この方法は一部、ポリペプチドへの非天然の非天然アミノ酸の組込みが、かかる非天然アミノ酸を基質と認識するアミノアシル−tRNAシンテターゼ(AARS)を発現または過剰発現する細胞において改善され得るという知見に基づいている。「改善」は、本明細書でいう場合、組み込まれ得る非天然アミノ酸の範囲(すなわち、非天然アミノ酸の種類)が増加すること、または修飾標的分子の収量が増加すること(by increasing)のいずれかが包含される。アミノアシル−tRNAシンテターゼの発現により、該細胞内でのアミノアシル−tRNAシンテターゼ活性のレベルが増大する。該活性が増大すると、伸張中のペプチド内への非天然アミノ酸の組込み割合が増大し、それにより、標的分子の合成割合が増大し、それにより、かかる非天然アミノ酸を含有するポリペプチドの量が増加する。
アミノアシル−tRNAシンテターゼをコードする核酸、および/またはtRNA分子をコードする核酸、および/または目的のポリペプチド(抗体またはその断片)をコードする核酸は、同じベクターまたは異なるベクターに存在させ得る。該ベクターは、AARS、tRNAおよび標的分子の産生を指令する発現制御エレメントを含むものであり得る。発現制御エレメント(すなわち、調節配列)としては、誘導プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、転写ターミネーター、および他の転写調節エレメントが挙げられ得る。
インビボおよびインビトロでの標的分子内への非天然アミノ酸の組込みではどちらも、多重部位および/または部位特異的組込み(例えば、付加もしくは置換)の任意の組合せが、修飾標的分子の作製において利用され得る。特定の方法の一例では、特定のアミノ酸ファミリーの複数のアミノ酸残基または位置を選択し、天然に存在する代替アミノ酸(好ましくは、標的分子の機能の保持を可能にするもの)で置き換える。次に、これらの選択されたアミノ酸残基の一部または全部を、1つ以上の非天然アミノ酸で置き換える。別の特別な方法において、天然に存在するアミノ酸残基を特定のタンパク質に、これが、該特定のファミリーの唯一のアミノ酸残基、または標的分子内のいくつかのうちの唯一のものとなるように付加してもよい。その後、付加したアミノ酸残基を、1つ以上の非天然アミノ酸残基で置き換える。特定のある実施形態において、非天然アミノ酸は、置き換えられる天然に存在するアミノ酸と同じアミノ酸ファミリーに対応するか、または同じアミノ酸ファミリーのものである。
宿主細胞および翻訳系
本明細書に開示した特定のある実施形態は細胞内で行なわれ得、これにより、標的分子の産生レベルを実用的な目的のためのものにすることが可能になる。好ましい実施形態において、使用される細胞は、培養可能な細胞(すなわち、研究室条件下で増殖され得る細胞)である。好適な細胞としては、哺乳動物細胞(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)、細菌細胞、昆虫細胞などが挙げられる。
一例として、PFENEXTM手法が挙げられ、これは、大腸菌と比べて、ある種の糖類の代謝において異なる経路が使用されることによる特定の可溶性や活性の特性を維持しつつ細胞内発現を増大させるPseudomonas fluorescens系の細胞株が使用された細胞株である。
また、他の栄養素要求性宿主細胞株としては、K10系Phe栄養素要求性系統(AF)、DH10B系Phe栄養素要求性系統(AF)、Phe/Trp二重栄養素要求性系統(AFW)、Phe/Trp/Lys三重栄養素要求性系統(AFWK)、およびMet栄養素要求株(M15バックグラウンドに対するM15MA)が挙げられる。
本明細書に開示した特定のある実施形態を実施するために使用され得る細胞としては、栄養素要求性宿主細胞(原核生物真核生物のものいずれの場合も)が挙げられる。栄養素要求性細胞は、1倍、2倍、3倍、4倍またはそれ以上の栄養要求レベルを示すものであり得る(各栄養要求レベルは、その生物体が合成できないか、あるいは欠損し、細胞に供給されなければならない特定の有機化合物を示す)。本明細書に開示した特定のある実施形態は、栄養素要求性宿主細胞を利用しないことが明白である。栄養素要求性宿主細胞が使用されない限り、別の細胞または細胞成分を用いて、本明細書に開示した特定のある実施形態が実施され得る。他の実施形態では、1、2、3種類またはそれ以上の異なる栄養素要求性宿主細胞(同じまたは異なる系統または生物体に由来するものであり得る)が使用され得る。
宿主細胞は、本開示のベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る)で遺伝子操作(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)されたものであってもよい。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、コンジュゲートされたポリヌクレオチドの形態であり得る。ベクターは、細胞および/または微生物内に、標準的な方法、例えば、エレクトロポレーション(Fromら,PNAS.USA 82,5824(1985))、ウイルスベクターによる感染、小ビーズもしくは粒子のマトリックスまたは表面上いずれかでの該核酸を有する小粒子による高速バリスティック浸透(Kleinら,Nature 327,70−73(1987))によって導入される。Berger,SambrookおよびAusubelには、さまざまな適切な形質転換方法が示されている。
操作した宿主細胞は、例えば、スクリーニング工程、プロモーターの活性化または形質転換体(transfonnant)の選択などの作業のために適宜改変された慣用的な栄養培地中で培養され得る。このような細胞は、任意選択で、トランスジェニック生物体内で培養され得る。
有用であり得る宿主細胞の一例としては、限定されないが、(例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、真菌細胞、始原細菌細胞、昆虫細胞など)が挙げられる。具体的な宿主細胞の一例としては、大腸菌、シュードモナス属、S.cerivisiaeなどが挙げられる。
特定のある実施形態において、非天然アミノ酸は、非天然アミノ酸の生合成に必要とされる1種類以上のタンパク質をコードするさらなる核酸構築物(1つまたは複数)を翻訳系内に導入することにより適用される。
一実施形態において、翻訳系は細胞であり、該方法は、さらに、指定の位置(1つまたは複数)のコドン(1つまたは複数)とワトソン‐クリック塩基対合を形成する任意の内因性tRNAをコードする1つ以上の遺伝子を障害することを含むものであり得る。一実施形態において、翻訳系は細胞であり、該方法は、さらに、指定の位置(1つまたは複数)のコドン(1つまたは複数)とワトソン‐クリック塩基対合を形成するtRNAに負荷する1種類以上の内因性のAARSを阻害することを含むものであり得る。
また、本発明により、翻訳系を含む組成物が提供される。翻訳系は、末端枝変異型もしくは修飾型tRNA(M−tRNA)および/または末端枝変異型もしくは修飾型アミノアシルtRNAシンテターゼ(M−RS)の一方または両方を含むものであり得る。M−tRNAおよび/またはM−RSが利用される実施形態において、該細胞のものと異なる種に由来するものであり得る。
特定のある実施形態において、翻訳系は、2つより多くの異なる被検体ポリヌクレオチドまたは核酸構築物を含む。該ポリヌクレオチドまたは核酸構築物は各々、異なる非天然アミノ酸を担持し得るものである。特定のある実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、さらに、M−tRNAの発現を制御する第1のプロモーター配列を含む。特定のある実施形態において、第2のポリヌクレオチドは、さらに、修飾AARSの発現を制御する第2のプロモーター配列を含む。M−RSは、穏やかな基質特異性を有するものであり得るか、またはM−RSは、M−tRNAに非天然アミノ酸を負荷し得るものであり得る。
特定のある実施形態において、M−tRNAは酵母由来のものであり、細胞は大腸菌である。特定のある実施形態において、M−RSおよびM−tRNAは、同じ生物体由来のものであり、その生物体は、該細胞のものとは異なる。特定のある実施形態において、M−RSおよびM−tRNAは酵母由来のものであり、細胞は大腸菌である。
特定のある実施形態において、tRNAに相同な内因性tRNAの発現および/または機能を障害または廃絶させる。特定のある実施形態において、内因性tRNAの発現は、内因性tRNAの対応するAARSの機能を阻害することにより障害/廃絶され、それにより、内因性tRNAの負荷が障害/廃絶される。特定のある実施形態において、内因性tRNAの発現は、内因性tRNAをコードする遺伝子を欠失させることにより廃絶される。
特定の状況下では、修飾tRNAはウォッブル縮重コドンと、37℃において少なくとも約1.0kcal/モル、または1.5kcal/モル、さらには2.0kcal/モルの親和性で、非修飾型とウォッブル縮重コドン間の相互作用よりも有利に相互作用する。
酵素反応速度論において、kcatは一次速度定数であり、触媒経路全体で最も遅い工程(1つまたは複数)に相当する。kcatは、酵素標的1分子あたり単位時間に生成物に変換され得る基質の標的分子の最大数(これは、酵素が基質で「飽和された」場合に起こる)を表し、したがって、しばしば、代謝回転数といわれる。Kは、見かけ上の解離定数であり、基質に対する酵素の親和性と関連している。これは、その経路の最初の不可逆工程前のすべての解離定数と平衡定数の積である。これは、しばしば、酵素−基質解離定数に近い測定値である。kcat/Kは二次速度定数であり、遊離酵素(酵素−基質複合体でない)に関連しており、酵素触媒作用の効率全体の尺度でもあり、特異性定数ともいわれる。
特定のある実施形態において、末端枝変異型シンテターゼは、改善または向上した酵素特性を有し、例えば、天然に存在するアミノ酸(例えば、20種類の既知アミノ酸の1つ)と比べると非天然アミノ酸の場合で、Kは大きいか小さい、kcatは大きいか小さい、kcat/Kは大きいか小さいなどである。M−RSのKmは、好ましくは、対応する野生型天然アミノ酸の場合よりも非天然アミノ酸で低いかまたは同等である。
特定のある実施形態において、M−RSまたは外来AARSのkcat/K値は、天然に存在するアミノ酸の場合よりも3倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、385倍、400倍大きい範囲であり得る。
一部のある例示的な実施形態において、M−RSでの種々のアミノ酸の典型的なKm値は、およそ15mM、20mM、30mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、300mM、400mM、440mM、500mM、1000mM、1500mM、2000mM、3000mM、4000mM、5000mM、6000mMもしくはそれ以上大きい範囲またはこれらの間の任意の値であり得る。
同様に、M−RSまたは外来AARS のkcat値は、好ましくは、天然アミノ酸の場合よりも非天然アミノ酸の場合で大きいか、等しい。例えば、対応するM−RSでの種々のアミノ酸のkcat値は、およそ0.002秒−1、0.0018秒−1、0.0015秒−1、0.014秒−1、0.1秒−1、0.3秒−1、1秒−1、3秒−1、5秒−1、8秒−1、10秒−1、13.3秒−1、15秒−1またはそれより大きい範囲であり得る。
したがって、M−RSまたは外来AARSのkcat/Kmは、最適には、天然の野生型アミノ酸の場合よりも非天然アミノ酸の場合で大きいか、等しい。典型的なkcat/Km値は、およそ.0001M−1−1、.0003M−1−1、.005M−1−1、.05M−1−1、.5M−1−1、.547M−1−1、1M−1−1、5M−1−1、10M−1−1、20M−1−1、30M−1−1、32M−1−1、500M−1−1、600M−1−1、1000M−1−1、5000M−1−1、11000M−1−1の範囲であり得る。
特定のある実施形態において、アミノ酸の存在下でAARSによって触媒されるATP−PPi交換反応の速度が、本発明の分子について測定され得る。一般的に、アミノアシル−tRNAは、2つの工程プロセスを通して形成されると考えられている。第1の工程では、アミノ酸が該シンテターゼによって受容され、アデニル化され、それにより、ピロリン酸基(PPi)の放出がもたらされる。第2工程では、適正なtRNAが該シンテターゼによって受容され、アミノ酸残基が、該tRNAの3’末端の残基の2’または3’OHに転移される。したがって、ATP−PPi交換速度の測定は、所望の目的に応じて、特定のアミノ酸、特定のtRNAまたは特定のAARSのアミノアシル−tRNAに対する形成を示す。
特定のある実施形態において、M−tRNAはウォッブル縮重コドンと、37℃において少なくとも約1.0kcal/モル、1.5kcal/モル、2.0kcal/モル、2.5kcal/モル、3.0kcal/モル、3.5kcal/モル、4.0kcal/モル、4.5kcal/モル、5.0kcal/モルまたはそれより大きい(またはこれらの間の任意の値)の親和性で、非修飾型とウォッブル縮重コドン間の相互作用よりも有利に相互作用する。
本発明の方法は細胞内で行なわれ得、これにより、タンパク質の産生レベルを実用的な目的のためのものにすることが可能になる。遺伝コードおよび周辺分子機構の保存の程度が高いため、本発明の方法は、ほとんどの細胞で使用され得る。少なくとも1つの実施形態において、使用される細胞は、培養可能な細胞(すなわち、研究室条件下で増殖され得る細胞)である。
本発明には、既に生成している宿主細胞および細胞株(例えば、栄養素要求性(auxotropic)原核生物系統および/または真核生物系統)が包含される。一実施形態において、宿主細胞は、一般的に、非天然アミノ酸をペプチドまたはポリペプチド鎖内に組み込むことができるものである。少なくとも1つの実施形態において、宿主細胞は、選択的または優先的に非天然アミノ酸をペプチドまたはポリペプチド鎖内に組み込むことができるものである。少なくとも1つの実施形態において、宿主細胞は、非天然アミノ酸をペプチドまたはポリペプチド鎖内に排他的に組み込むことができるものである。
宿主−ベクター系において、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生は、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生を指令する発現制御エレメントを含むベクターによって制御され得る。好ましくは、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生は、標的分子内への特定の非天然アミノ酸の効率的な組込みを可能にする量である。
宿主−ベクター系において、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生は、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生を指令する発現制御エレメントを含むベクターによって制御され得る。好ましくは、アミノアシル−tRNAシンテターゼの産生は、天然に存在するアミノアシル−tRNAシンテターゼのレベルより過剰な量であり、そのため、アミノアシル−tRNAシンテターゼの活性は、天然に存在するレベルより大きくなる。
宿主−ベクター系において、抗体、断片または他の標的分子の産生は、修飾標的分子の産生のための発現制御エレメントを含むベクターによって制御され得る。特定のある態様において、このようにして産生される標的分子は、該標的分子をコードする天然に存在する遺伝子によって生成されるレベルより過剰な量である。
宿主−ベクター系によりAARSが構成的に発現され得、該宿主ベクター系が誘導因子(例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)など)と接触することにより、標的分子(例えば、抗体)の発現が誘導される。また、宿主−ベクター系は、宿主−ベクター系を誘導因子(IPTGなど)と接触させることにより、アミノアシルtRNAシンテターゼおよび/または目的のタンパク質を発現するように誘導され得る。他の誘導因子としては、熱ショックなどの外部刺激による刺激が挙げられる。
一実施形態において、宿主−ベクター系は、天然アミノ酸を欠き、非天然の非天然アミノ酸が添加された培地中で培養する。標的ポリペプチドの発現が誘導されるのはこの培地においてであり、それにより、少なくとも1つの非天然アミノ酸が組み込まれた修飾標的分子が生成する。この方法は、標的分子内への非天然アミノ酸の組み込み効率が改善され、このようにして生成される修飾標的分子の量を増加させるため、既存の方法よりも優れている。
別の実施形態において、宿主−ベクター系は、標的分子の発現を調節または誘導するために、かかる誘導が望ましい宿主細胞において使用され得る。特に、標的分子は、誘導プロモーターの制御下、あるいはまた、ポリヌクレオチドが1つ以上の終止コドン、フレームシフトコドンまたはバイアスコドンを、標的分子の効率的な翻訳を妨げる特定の位置に含む場合は、強力なプロモーターの制御下に存在させ得る。
宿主細胞の翻訳機構により、指定されたコドンを通して読み取りが行なわれ、宿主−ベクター系の存在下および非天然アミノ酸の添加時に標的分子の発現が有効に誘導される。この型の誘導発現により、高レベルの毒性タンパク質の製造能が増大され得、誘導タンパク質合成が制限される哺乳動物細胞において特に有用であり得る。したがって、モノクローナル抗体などのタンパク質産物が構成的に発現される。このように、誘導タンパク質合成系により、該系以外の場合では宿主細胞に対して毒性であり得る分子の発現の増大が可能になる。さらに、非天然アミノ酸それ自体が毒性である場合の哺乳動物細胞内への非天然アミノ酸の組込みが助長される。
標的分子の他の修飾方法としては、発現ライブラリーの構築が挙げられる(例えば、米国特許第5,783,431号;同第5,824,485(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる))。ライブラリーは、単一の生物体もしくは種、または多種類の生物体もしくは種に由来するcDNAまたはゲノム配列で構成されたものであり得る。該配列は、発現カセット内で適正な調節配列に作動可能に連結させる。また、該配列は、多様性をさらに向上させるため、一般的には(gerally)任意選択で無作為に連鎖させたものであり得る。発現ライブラリーは、機能性生成物をコードする特定の配列について、予備選択またはプレスクリーニングされ得る。また、特に所望される活性を有する標的分子をコードする特定の配列に偏ったライブラリーを作製してもよい。
1つ以上の非天然アミノ酸残基を組み込むための別の方法は、対応するtRNAのアバンダンスが少ないバイアスコドンを利用することによるものであり、バイアスコドンの存在の結果、タンパク質の翻訳が有意に遅滞される。バイアスコドンは、宿主細胞内に該バイアスコドンをデコードするtRNAが導入されることによって非天然アミノ酸を指定する。その後、tRNAは該非天然アミノ酸に特異的なアミノアシル−tRNAシンテターゼによってアミノアシル化される。
一実施形態において、非天然アミノ酸を指定するコドンは、2ボックスセット(box set)のtRNA、4ボックスセットのtRNA、または6ボックスセットのtRNAによってデコードされるコドンである。このようなものとしては、限定されないが、セリン、アルギニンおよびロイシンが挙げられる。指定コドンは、同じアミノ酸に対するtRNAとワトソン‐クリックまたはウォッブルにより塩基対合しない1ボックスから選択してもよい。例えば、UCU、UCC、UCAおよびUCGコドンをデコードするセリンtRNAは、セリンAGUまたはAGCコドンと塩基対合しない。したがって、修飾SerRSによって使用される非天然アミノ酸は、AGU(ウォッブル)コドンによって指定され得る。目的のタンパク質内の他のすべてのセリン残基は、UCU、UCC、UCAおよびUCGによって指定され得る。このように、非天然アミノ酸は、AGUコドンに特異的に組み込まれ得る。
一実施形態において、tRNAは、通常は異なるアミノアシルtRNAシンテターゼによって使用され、そのアミノアシル化が、有用な実体決定位置のtRNAの修飾または変異によって変化したものであり得る。例えば、特定の修飾(例えば、オパールアンチコドンへの変化)を含むGln tRNAは、TrpRSによってアミノアシル化される。逆に、Trp tRNAは、GlnRSがアンバー終止コドンをデコードするのに使用され得る。
一実施形態において、AARSは、2種類の異なるシンテターゼのキメラ融合体であり、一方のシンテターゼのアミノアシル化機能が他方のtRNA結合および実体エレメント融合されている。これにより、tRNAと不適切なアミノ酸とのアミノアシル化、および通常は別のアミノ酸に保存されるコドンへの該アミノ酸の組込みがもたらされる。キメラAARSは、非天然アミノ酸の組込みのためにさらに修飾してもよい。キメラAARSの誘導には、コンピュータ使用生物学、遺伝子シャッフリングまたは他のドメインシャッフリングストラテジーが利用され得る。
アンバーまたはウォッブル終止コドンを使用する場合、かかるコドンは、所望される目的に応じて、標的分子内の任意の位置に配置され得る。例えば、かかるコドンは、ポリエチレングリコールなどの化学物質部分の結合に好ましい部位に配置され得る。終止コドンの挿入後、非天然アミノ酸残基(例えば、p−ブロモ−フェニルアラニンなど)が該コドン部位に、本明細書に記載または当該技術分野で知られた任意の方法によって組み込まれる。例えば、非天然アミノ酸は、栄養素要求性宿主細胞に、M−RS、M−tRNA分子または任意のその組合せによって組み込まれ得る。栄養素要求性宿主細胞を利用する場合、宿主細胞は、単一栄養素要求株(すなわち、単一の特定のアミノ酸を欠損しているか、それを合成することができず、したがって、培養培地から相当する単一の非天然アミノ酸を取り込むことができるもの)であってもよく、多重栄養素要求株(すなわち、1種類より多くのアミノ酸を合成することができず、それにより、培養培地から1種類より多くの非天然アミノ酸を取り込むことができるもの)であってもよい。したがって、非天然アミノ酸は、他の残基を破壊することなく、かつ、多数の変異型のスクリーニングを必要とすることなく特異的に組み込まれる。
当業者には認識されようが、標的分子を修飾または改変するための前述の任意の方法により、放射性、ドープ型または他のタグまたはマーカーが修飾プロセスにおいて組み込まれ得る。
変異誘発によるAARSの作製および選択/スクリーニング
特定のある実施形態において、特定のM−tRNAに特定の非天然アミノ酸を負荷し得るAARSは、AARSを変異誘発して候補のライブラリーを作製した後、所望の機能を果たし得る候補AARSのスクリーニングおよび/または選択を行なうことによって得られ得る。かかるM−RSおよびM−tRNA分子は、非天然修飾アミノ酸を有する所望の標的分子のインビトロまたはインビボ作製に使用され得る。
M−RSのライブラリーは、当該技術分野で知られた種々の変異誘発手法を用いて作製され得る。例えば、M−RSは、部位特異的変異、ランダム変異、多様性生成組換え変異、キメラ構築物、および本明細書に記載または当該技術分野で知られた他の方法によって作製され得る。
一実施形態において、RS(任意選択で、変異型RS)のライブラリーを、活性な構成員、例えば、非天然アミノ酸および天然アミノ酸の存在下で、変異型tRNA(M−tRNA)をアミノアシル化する構成員について選択(および/またはスクリーニング)することには、陽性選択またはスクリーニングマーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子など)、および(任意選択で変異型)RSのライブラリーを複数の細胞内に導入すること(ここで、該陽性選択および/またはスクリーニングマーカーは、少なくとも1つのコドンを含み、その翻訳(任意選択で、条件付き)は、候補M−RSがM−tRNAに(天然および/または非天然アミノ酸いずれかを)負荷する能力に依存する);該複数の細胞を選択剤の存在下で培養すること;該選択および/またはスクリーニング薬剤の存在下で生存している(または特異的応答を示す)細胞を、該陽性選択またはスクリーニングマーカー内のコドンの成功裡の翻訳によって同定し、それにより、活性な(任意選択で変異型)RSのプールを含む陽性選択された細胞のサブセットを得ることが含まれる。任意選択で、該選択および/またはスクリーニング薬剤の濃度が変更され得る。好ましくは、該細胞には、該コドンの翻訳が補助され得る機能性の内因性tRNA/RS対が含まれない。内因性tRNA/RS対は、遺伝子欠失および/またはRS阻害因子によって障害され得る。
該細胞の多くの必須遺伝子は、おそらく、機能性の内因性翻訳機構が存在しない場合にM−RSがM−tRNAに負荷する能力に依存するコドンもまた含むため、特定のある実施形態では、余分な陽性選択マーカーが陽性選択プロセスに必要とされず、陽性選択の確認時には、該細胞の生存が使用され得る。
他の実施形態では、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子などの陽性選択マーカーが使用され得る。任意選択で、陽性選択マーカーは、β−ラクタマーゼ遺伝子である。別の態様では、陽性スクリーニングマーカーは、蛍光もしくは発光スクリーニングマーカーまたは親和性に基づくスクリーニングマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を含む。
同様の実施形態において、無細胞インビトロ系は、陽性スクリーニングにおいてM−RSがM−tRNAに負荷する能力を試験するために使用され得る。一実施形態において、プールを、非天然アミノ酸の非存在下でM−tRNAを優先的にアミノアシル化する活性RS(任意選択で変異型)について陰性選択またはスクリーニングすることには、陰性選択またはスクリーニングマーカーを、陽性選択またはスクリーニングからの活性な(任意選択で変異型)RSのプールとともに複数の翻訳系に導入すること(ここで、陰性選択またはスクリーニングマーカーは、少なくとも1つのコドン(例えば、毒性のマーカー遺伝子(例えば、リボヌクレアーゼバルナーゼ遺伝子)のコドンを含み、その翻訳は、候補M−RSがM−tRNAに負荷する能力に依存する);および非天然アミノ酸およびスクリーニングまたは選択剤が添加された第1の培地中では特異的なスクリーニング応答を示すが、天然アミノ酸および選択またはスクリーニング薬剤が添加された第2の培地中では特異的応答を示さない翻訳系を同定し、それにより、少なくとも1種類の組換えM−RSを有する生存細胞またはスクリーニング細胞を得ることが含まれる。
一態様において、選択(および/またはスクリーニング)剤の濃度は種々である。一部のある態様において、第1の生物体と第2の生物体は異なる。したがって、第1および/または第2の生物体は、任意選択で、原核生物、真核生物、哺乳動物、大腸菌、真菌、酵母、始原細菌、eu細菌、植物、昆虫、原生生物などを含む。他の実施形態において、スクリーニングマーカーは、蛍光もしくは発光スクリーニングマーカーまたは親和性に基づくスクリーニングマーカーを含む。
関連する態様において、組換え変異型tRNA(M−tRNA)の作製方法は、(a)第1の生物体由来の少なくとも1種類のtRNAに由来する変異型tRNAのライブラリーを作製すること;(b)該ライブラリーを、第2の生物体由来のアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される(任意選択で変異型)tRNAについて、第1の生物体由来のRSの非存在下で選択(例えば、陰性選択)またはスクリーニングし、それにより、tRNA(任意選択で変異型)のプールを得ること;および(c)tRNA(任意選択で変異型)のプールを、導入された変異型RS(M−RS)によってアミノアシル化される構成員について選択またはスクリーニングし、それにより、少なくとも1種類の組換えM−tRNAを得ることを含み、ここで、該少なくとも1種類の組換えM−tRNAは、縮重コドンを認識し、第2の生物体由来のRSによって効率的に(efficiency)認識されず、M−RSによって優先的にアミノアシル化される。
特異的M−tRNA/M−RS対の作製方法が提供される。該方法は、(a)第1の生物体由来の少なくとも1種類のtRNAに由来する変異型tRNAのライブラリーを作製すること;(b)該ライブラリーを、第2の生物体由来のアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される(任意選択で変異型)tRNAについて、第1の生物体由来のRSの非存在下で陰性選択またはスクリーニングし、それにより、(任意選択で変異型)tRNAのプールを得ること;(c)(任意選択で変異型)tRNAのプールを、導入された変異型RS(M−RS)によってアミノアシル化される構成員について選択またはスクリーニングし、それにより、少なくとも1種類の組換えM−tRNAを得ることを含む。該少なくとも1種類の組換えM−tRNAは、縮重コドンを優先的に認識し、第2の生物体由来のRSによって効率的に認識されず、M−RSによって優先的にアミノアシル化される。該方法はまた、(d)第3の生物体由来の少なくとも1種類のアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)に由来する(任意選択で変異型)RSのライブラリーを作製すること;(e)該変異型RSのライブラリーを、該少なくとも1種類の組換えM−tRNAを優先的にアミノアシル化する構成員について、非天然アミノ酸および天然アミノ酸の存在下で選択またはスクリーニングし、それにより、活性な(任意選択で変異型)RSのプールを得ること;ならびに(f)該プールを、該少なくとも1種類の組換えM−tRNAを優先的にアミノアシル化する活性な(任意選択で変異型)RSについて、非天然アミノ酸の非存在下で陰性選択またはスクリーニングし、それにより、少なくとも1つの特異的M−tRNA/M−RS対を得ること、を含み、ここで、該少なくとも1つの特異的M−tRNA/M−RS対は、非天然アミノ酸に特異的な少なくとも1つの組換えM−RSと、少なくとも1つの組換えM−tRNAを含む。該方法によって作製される特異的M−tRNA/M−RS対が包含される。さらに、かかる方法には、第1の生物体と第3の生物体が同じである(例えば、Methanococcus jannaschii)場合が含まれる。
本発明の種々の方法(上記)には、任意選択で、選択またはスクリーニングが1種類以上の陽性または陰性選択またはスクリーニング、例えば、アミノ酸透過性の変化、翻訳効率の変化および翻訳忠実度の変化を含む場合が含まれる。さらに、該1つ以上の変化は、任意選択で、生物体における1つ以上の遺伝子の変異に基づくものであり、その場合、末端枝変異型tRNA−tRNAシンテターゼ対が、かかるタンパク質の作製に使用される。本明細書における選択および/またはスクリーニングには、任意選択で、1つ以上の選択遺伝子内または1つ以上のスクリーニング遺伝子内の少なくとも2コドンが使用される場合が含まれる。かかる多コドンは、任意選択で、同じ遺伝子内のもの、または異なるスクリーニング遺伝子/選択遺伝子内のものである。さらに、該任意選択の多コドンは、任意選択で、異なるコドンであるか、または同じ型のコドンを含む。
アミノアシル−tRNAシンテターゼ
本発明の方法に使用されるアミノアシル−tRNAシンテターゼ(本明細書ではAARSまたは「シンテターゼ」と互換的に用いる)は、異なる生物体に由来する天然に存在するシンテターゼ、変異もしくは修飾されたシンテターゼ、または完全にデノボ設計されたシンテターゼであり得る。
使用されるシンテターゼは、所望の非天然アミノ酸(1つまたは複数)を、細胞に利用可能な他のアミノ酸よりも選択的に認識するものであり得る。例えば、使用される非天然アミノ酸が細胞内に天然に存在するアミノ酸に構造的に関連している場合、シンテターゼは、M−tRNA標的分子に所望の非天然アミノ酸を、天然に存在するアミノ酸と少なくとも実質的に同等の効率で、より好ましくは少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上の効率で負荷するものであるのがよい。しかしながら、充分に規定されたタンパク質産物が必要でない場合、シンテターゼは、負荷アミノ酸に対して穏やかな特異性を有するものであってもよい。かかる実施形態では、種々のアミノ酸または類縁体を用いた末端枝変異型tRNAの混合物が作製され得る。
好ましくは、修飾AARSは、いずれの天然アミノ酸よりも非天然アミノ酸を修飾tRNAに特異的または優先的に負荷するものである。好ましい一実施形態において、修飾AARSによる類縁体の活性化特異性定数(kcat/Kで規定される)は、天然アミノ酸の場合に等しいか、それより少なくとも約2倍大きく、好ましくは、天然アミノ酸の場合より約3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上大きい。
特定のある実施形態において、シンテターゼは、コンピュータ使用による手法、例えば、Dattaら,J.Am.Chem.Soc.124:5652−5653,2002および係属中の米国特許出願第10/375,298号(または米国特許出願公開公報第US20040053390A1号(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる))に記載のものなどを用いて設計され得る。
AARSのドメインシャッフリング設計
ボローコドンによる非天然アミノ酸の組込みに利用されるM−RSまたは外来AARSに関して、M−RSまたは外来AARSは、第1および第2のAARSのアミノ酸結合ドメインおよびtRNA実体決定ドメインを同定することにより合理的に設計され得る。好ましい実施形態において、第1および第2のAARSは、関連した構造または相同な構造のものである。寄与するドメインは、一方のAARSのアミノ酸結合ドメインと他方のtRNA実体エレメントとを含むM−RS分子が創製されるように画定および再分布され得る。
ボローコドンの2つのAARS分子のドメインのシャッフリングは、指向型遺伝子シャッフリングを使用することによりなされ得、これは、ライブラリーを作製するために、少なくとも2種類の異なる特異性のいくつかの関連するAARS分子をPCR媒介型組換えに供するものである。ライブラリーは、その後、好ましい特異性のM−RSまたは外来AARSを選択するために、当該技術分野で知られた方法によってスクリーニングしてもよい。特定のある実施形態において、M−RSは、同じアミノ酸ファミリー内、異なるアミノ酸ファミリー間、および/または異なる供給源の生物体から作製されたものであり得る。
分子のコンピュータ使用による設計
具体的には、一実施形態において、主題の方法は、野生型分子の修飾形態への設計および操作に一部依存する。具体的な方法の一例は、米国特許出願公開公報第US20040053390A1号(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる)に、より詳細に記載されている。
簡単には、そこに記載された方法は、変異または修飾を通して特定の標的分子を修飾するためのコンピュータ使用ツールに関する。
該方法によれば、そのねじれ角を変更して、目的の標的分子内に組み込まれ得る回転異性体を創製することにより、非天然アミノ酸の回転異性体ライブラリーが構築される。非天然アミノ酸の主鎖の幾何学的配向は、結晶構造内の天然の基質の主鎖の結晶学的配向によって指定される。
また、そのプロトコルでは、目的の標的分子のリガンドまたは受容体結合部位間の相互作用を増強するためのコンピュータ使用による方法が使用され得る。これらの相互作用の増強は、リガンドまたは受容体と標的分子上の設計位置に許容されるアミノ酸と間のエネルギー計算値のペアワイズエネルギーをスケールアップすることにより生じ得る。タンパク質内相互作用と比べてタンパク質−リガンド/受容体相互作用がスケールアップされる最適化の計算では、配列の選択は、アミノ酸の選択がリガンド/受容体と有利な相互作用を有するものとなるように偏る。
非天然のアミノ酸の利用可能な配列および構造の情報
本発明の方法では、エネルギー計算が、タンパク質主鎖の結晶構造の詳細に依存するため、標的分子の正確な詳細がコンピュータ使用による設計アプローチに重要である。しかしながら、多くの場合では、相同なタンパク質(例えば、関連種由来の同族体)の既知の結晶構造を使用すること、さらには修飾対象の標的分子および/または組み込み対象の非天然アミノ酸の未知の結晶構造に代用される保存ドメインを使用することが完全に許容され得る。修飾標的分子はその対応するリガンド/受容体に、非修飾標的分子と同じ配向で結合するものであることとが好ましい場合があり得、それは、この配向が、標的分子および/またはそのリガンド/受容体の構造および/または機能に重要であり得るからである。
修飾対象の標的分子は、任意の生物体、例えば、原核生物および真核生物、例えば、細菌、真菌、好極限微生物(extremeophile)例えば、始原細菌(archebacteria)、蠕虫、昆虫、魚類、両生類、鳥類、動物(特に、哺乳動物および特に、ヒト)ならびに植物由来のものであり得る。
修飾対象の標的分子の結晶構造は、既知の構造データベース、例えば、Brookhaven Protein Data Bank(PDB,see Bernsteinら,J.Mol.Biol.112:535−542,1977)から新規に誘導または提供され得る。構造データベースあるいはMolecular Modeling DataBase (MMDB)は、結晶学的およびNMR構造測定による実験的データを含む。MMDBのデータは、Protein Data Bank (PDB)から得られる。NCBI(National Center for Biotechnology Information)は、書誌学的情報、配列データベースおよびNCBI分類学に対する架橋構造的データを有する。NCBI 3D構造ビュワーであるCn3Dは、Entrezによる分子構造の容易な双方向可視化に使用され得る。
Entrez 3D Domainsデータベースは、NCBI Conserved Domain Database(CDD)によるタンパク質ドメインを含む。コンピュータ使用生物学者により、反復配列パターンまたはモチーフに基づいて保存ドメインが規定される。現行のCDDは、2つの一般的な収蔵品SmartおよびPfamならびにNCBIの同僚からの寄贈品(COGなど)に由来するドメインを含む。また、ソースデータベースにも詳細が示されており、引用とリンクしている。保存ドメインは、コンパクトな構造単位に対応しているため、CDは、可能な場合はいつでもCn3D経由で3D構造とのリンクを含む。
タンパク質配列内の保存ドメインを同定するため、CD−Searchサービスでは、リバース位置特異的BLASTアルゴリズムが使用されている。クエリー配列を、潜在性保存ドメインアラインメントから作製された位置特異的スコアマトリックスと比較する。ヒットは、クエリー配列と代表的なドメイン配列とのペアワイズアラインメントとして、または多重アラインメントとして表示され得る。現在、CD−Searchは、タンパク質BLASTサーチと平行してデフォルトによって実行されている。ユーザーが、リクエストのさらなる処理のためにBLASTキューを待つ間、クエリーのドメイン構成が既に検討され得る。また、CDART(Conserved Domain Architecture Retrieval Tool)により、ユーザーが同様のドメイン構成を有するタンパク質を検索することが可能になる。CDARTでは、事前のコンピュータによるCD−検索結果を用いて、クエリーのものと同様の一組のドメインを有するタンパク質が迅速に同定される(さらなる詳細については、Marchler−Bauerら,Nucleic Acids Res.31:383−387,2003;およびMarchler−Bauerら,Nucleic Acids Res.30:281−283,2002(これらはともに、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
あるいはまた、特定のある実施形態においては、特定の標的分子の正確な結晶構造はわかっていないが、そのタンパク質配列は既知の結晶構造を有する既知配列と同様または相同である。かかる場合では、標的分子のコンホメーションが、該相同配列の既知結晶構造と類似していることが予測される。したがって、該既知構造は、標的分子の構造として使用され得るか、または標的分子の構造を予測するために使用され得る(すなわち、「相同性モデル設計」もしくは「分子モデル設計」において)。具体例として、上記のMolecular Modeling Database(MMDB)(Wangら.,Nucl.Acids Res.2000,28:243−245;Marchler−Bauerら,Nucl.Acids Res.1999,27:240−243(これらは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)には、その3次元構造がわかっているタンパク質配列(MMDBにおいて「隣接」配列という)例えば、隣接配列と同様または相同であるタンパク質および/または核酸を同定するのに使用され得る検索エンジンが示されている。該データベースには、さらに、既知構造とのリンクがアラインメントおよび可視化ツール(例えば、Cn3D(NCBIによって開発)RasMolなど)とともに示されており、この場合、該相同な親配列が比較され得、構造は、かかる配列アラインメントおよび既知構造に基づいて、親配列に関して得られ得る。
既知の3D構造を有する相同配列は、目的の標的分子と、少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一であり得る。
特定の標的分子の遺伝子またはタンパク質配列の構造が既知または入手可能となり得ない数少ない場合では、典型的には、常套的な実験手法(例えば、X線結晶学および核磁気共鳴(NMR)分光分析) を用いて過度に実験を行なうことなく、構造を決定することが可能である(例えば、NMR of Macromolecules:A Practical Approach,G.C.K.Roberts,編,Oxford University Press Inc.,New York(1993);lshimaおよびTorchia,Nat.Struct.Biol.7:740−743,2000;GardnerおよびKay,Annu.Rev.Bioph.Biom.27:357−406,1998;Kay,Biochem.Cell.Biol.75:1−15,1997;Dayieら,Annu.Rev.Phys.Chem.47:243−282,1996;Wuthrich,Acta Cyrstallogr.D 51:249−270,1995;Kahnら,J.Synchrotron Radiat 7:131−138,2000;OakleyおよびWilce,Clin.Exp.Pharmacol.P.27:145−151,2000;Fourmeら,J.Synchrotron Radial 6:834−844,1999(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
あるいはまた、他の実施形態では、標的分子の核酸またはアミノ酸配列の3次元構造が、配列自体から、当該技術分野で既に知られているアブイニショ(ab initio)分子モデル設計手法を用いて計算され得る(例えば、Smithら,J.Comput Biol.4:217−225,1997;Eisenhaberら,Proteins 24:169−179,1996;Bohm,Biophys Chem.59:1−32,1996;FetrowおよびBryant,BioTechnol.11:479−484,1993;SwindellsおよびThorton,Curr.Opin.Biotech.2:512−519,1991;Levittら,Annu.Rev.Biochem,66:549−579,1997;Eisenhaberら,Crit.Rev.Biochem.Mol.30:1−94,1995;Xiaら,J.Mol.Biol.300:171−185,2000;Jones,Curr.Opin.Struc.Biol.10:371−379,2000(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。アブイニショモデル設計で得られる3次元構造は、典型的には、実証的(例えば、NMR分光分析もしくはX線結晶学)または半実証的(例えば、相同性モデル設計)手法を用いて得られる構造よりも信頼性が低い。かかる構造は、一般的には充分な質のものであるが、本発明の方法における使用にはあまり好ましいくない。
配列相同性に基づいた3D構造の予測方法
結晶化されていないか、または他の構造決定の焦点となった修飾対象の標的分子には、標的分子およびそのリガンド/受容体結合部位のコンピュータ作製分子モデルが、それでもなお、当該技術分野の利用可能な任意のいくつかの手法を用いて作製され得る。
分子モデルの作製には、エネルギー最小化ルーチンを実行するためののコンピュータプログラムが一般的に使用される。例えば、CHARMM(Brooksら(1983)J Comput Chem 4:187−217)およびAMBER(Weinerら(1981)J.Comput.Chem.106:765)の両アルゴリズムでは、分子系設定、分子力場計算および解析のすべてが処理される(Eisenfieldら(1991)Am J Physiol 261:C376−386;Lybrand(1991)J Pharm BeIg 46:49−54;Froimowitz(1990)Biotechniques 8:640−644;Burbamら(1990)Proteins 7:99−111;Pedersen(1985)Environ Health Perspect 61:185−190;およびKiniら(1991)J Biomol Struct Dyn 9:475−488もまた参照)。また、Hier Dock or Monte Carlo calculationsを使用してもよい(Dattaら,Protein Science,13:2693−2705(2004)。引用したこれらの参考文献はすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
これらのプログラムの心臓部には、モデル内の原子ごとの位置を与えると、系の総合位置エネルギーおよび各原子に対する力の計算を行なう一組のサブルーチンが存在する。これらのプログラムは、1組の開始原子座標、種々の位置エネルギー関数の項のパラメータ、および分子トポロジー(共有構造)の記載を利用するものであり得る。かかる分子モデル設計法の一般的な特徴としては、水素結合および他の拘束力の取り扱いの提供;周期的境界条件の使用;ならびに温度、圧力、容積、拘束力または他の外部から制御される条件を維持または変更するための、位置、速度または他のパラメータの随時の調整の提供が挙げられる。
ほとんどの慣用的なエネルギー最小化法では、入力座標データ、および位置エネルギー関数がデカルト座標の明白な微分可能関数であるという事実を用いて、任意の組の原子の位置の位置エネルギーおよびその勾配(これは、各原子に対する力を示す)が計算される。この情報を使用し、総合位置エネルギーを減少させるための取り組みにおいて、このプロセスを何度も繰り返すことにより新たな組の座標が作成され得、所与の組の外部条件下で分子構造が最適化され得る。
一般に、 エネルギー最小化法は、ドッキングシミュレーション温度Toと異なっていてもよい所与の温度Tiで行なわれ得る。Tiで標的分子がエネルギー最小化されると、系内のすべての原子の座標および速度がコンピュータ計算される。さらに、系の通常様式が計算される。当該技術分野業者には、各通常様式が集団による周期運動であり、系のあらゆる部分が互いに同調して移動していること、および標的分子の動作はあらゆる通常様式の重ね合わせであることが認識されよう。所与の温度では、特定の様式の動作の平均平方の大きさは、該様式の有効力定数に反比例しており、そのため、標的分子の動作は、しばしば、低周波数振動によって支配される。
Tiで分子モデルのエネルギー最小化が行なわれた後、系は、平衡化実験を行なうことにより、シミュレーション温度Toまで「加熱」または「冷却」され、この場合、原子の速度は、所望の温度Toに達するまで段階的に測定(scale)される。系は、系の特定の特性(例えば、平均反応速度論エネルギーなど)が一定になるまで一定時間、さらに平衡化される。次いで、各原子の座標および速度が、平衡化された系から得られる。
また、さらなるエネルギー最小化ルーチンを行なってもよい。例えば、第2の類型の方法は、タンパク質の拘束されたEOMに対する近似解の計算を伴う。このような方法では、ラグランジュ乗数を解くために反復アプローチが使用され、典型的には、必要とされる補正が少ない場合、反復は数回しか必要でない。この型のもっとも一般的な方法であるSHAKE(Ryckaertら(1977)J.Comput.Phys.23:327;およびVan Gunsterenら(1977)Mol.Phys.34:1311(これらはともに、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる))は容易に実施され、拘束増大の数としてO(N)で測定される。択一法であるRATTLE(Anderson(1983)J.Comput.Phys.52:24(引用により本明細書に組み込まれる))は、Verletアルゴリズムの速度版に基づくものである。
他の実施形態では、非天然アミノ酸の実体を一定に保持し、分子の構造を変更する(いくつかの異なる変異型構造のモデル設計により)のではなく、主題の方法は、単一の修飾標的分子(例えば、1つ以上非係留アミノ酸残基が変更される)に対する分子モデル(1つまたは複数)を使用し、さまざまな異なる非天然アミノ酸またはその潜在的な断片をサンプリングし、分子の構造および/または機能を補助していると考えられる類縁体を同定することにより行なわれる。このアプローチでは、非天然アミノ酸(回転異性体バリアントを含む)の座標ライブラリーまたは連結されて非天然アミノ酸の側鎖が形成され得る官能基およびスペーサーのライブラリーが利用され得る。
修飾対象の標的分子への組込みに適した立体特性および電子特性を有するものであり得る非天然アミノ酸の構造の同定に容易に適合させ得る、コンピュータを使用したさまざまな方法が存在する(例えば、Cohenら(1990)J.Med.Cam.33:883−894;Kuntzら(1982)J.Mol.Biol 161:269−288;DesJarlais(1988)J.Med.Cam.31:722−729;Bartlettら(1989)(Spec.Publ.,Roy.Soc.Chem.)78:182−196;Goodfordら(1985)J.Med.Cam.28:849−857;DesJarlaisら J.Med.Cam.29:2149−2153(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。指向される方法は、一般的に、2つのカテゴリー、すなわち(1)類縁性による設計、これは、既知分子(を含有する結晶学的データベースからのもの)の3D構造を修飾標的分子構造にドッキングさせ、適合度をスコア化する、および(2)デノボ設計、これは、修飾標的分子において断片ごとに非天然アミノ酸モデルを構築する。に分類される。
例示的な一実施形態において、特定の修飾標的分子とともに機能を果たし得る潜在的な非天然アミノ酸の設計は、標的分子の構造に相補的(complimentary)な形状の概略的な予測から開始され、基質結合部位内に幾何学的に適合する候補について、既知の3次元構造の標的小分子のデータベースがスキャンされ得る検索アルゴリズムが使用される。かかるライブラリーは、一般的な標的小分子ライブラリーであってもよく、非天然アミノ酸の創製に使用され得る非天然アミノ酸または標的小分子に指向されたライブラリーであってもよい。形状検索で見出された標的分子は、必ずしも最初の検索の際に化学的相互作用の評価が行なわれるわけではないため、必ずしもそれ自体がリード化合物でないことが予測される。むしろ、かかる候補は、さらなる設計のための構造としての機能を果たし、適切な原子の置き換えが行なわれ得る分子骨格を提供するものであり得ることが予測される。もちろん、これらの標的分子の化学的相補性は評価され得るが、リガンド−受容体結合部位との静電気的、水素結合性および疎水性の相互作用が最大限となるように、原子型を変更することが予測される。この型のアルゴリズムのほとんどは、標的分子のリガンド/受容体結合部位の形状に相補的であり得る広範な種類の化学的構造を見出すための方法を提供するものである。
例えば、特定のデータベース(例えば、Cambridge Crystallographic Data Bank(CCDB)など(Allenら(1973)J.Chem.Doc.13:119)からの一組の標的小分子の各々は、いくつかの幾何学的に許容され得る配向で、ドッキングアルゴリズムを使用して個々に修飾標的分子にドッキングさせる。好ましい一実施形態では、DOCKと呼ばれる一組のコンピュータアルゴリズムを用いて、結合部位を形成する陥入部および溝の形状が特性評価され得る。例えば、Kuntzら(1982)J.Mol.Biol 161:269−288を参照のこと。
配向は、適合度について評価され、最良のものが、分子力学プログラム、例えば、AMBERまたはCHARMMなどを使用するさらなる検討のために維持される。かかるアルゴリズムは、いくつかの利点をもたらし得る。第1に、かかるアルゴリズムにより、分子構成の顕著な多様性が検索され得る。第2に、最良の構造は、他のタンパク質に対するこれまでの適用において、広い表面積にわたって印象的な形状相補性が実証されている。第3に、アプローチ全体として、候補原子の配置の不確実性が小さいことに関して非常にしっかりしている(robust)のようである。
特定のある実施形態において、主題の方法では、Goodford(1985,J.Med.Chem.28:849−857)およびBoobbyerら(1989,J.Med.Chem.32:1083−1094)(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)に記載のアルゴリズムが利用され得る。これらの論文には、分子表面上の種々の化学物質基(プローブと称する)に対する高親和性領域を調べることを目的とするコンピュータプログラム(GRID)が記載されている。GRIDにより、結合が増強され得る既知リガンドに対する修飾が示唆されるツールが提供される。GRIDによって高親和性領域と識別された一部の部位は、一連の既知リガンドから推測的に決定された「ファーマコフォア(pharmacophoric)パターン」に対応することが予測され得る。本明細書で用いる場合、ファーマコフォアパターンは、結合のために重要であると考えられる予測非天然アミノ酸特徴の幾何学的配置である。GoodsellおよびOlson(1990,Proteins:Struct Fund Genet 8:195−202)では、Metropolis(シミュレーションのアニーリング)アルゴリズムを用いて単一の既知リガンドを標的タンパク質にドッキングさせた。このアプローチは、適当な非天然アミノ酸を同定するための標的分子とのドッキングに適合させ得る。このアルゴリズムにより、アミノ酸側鎖におけるねじれ柔軟性が許容され、概算相互作用エネルギーをコンピュータ計算するためにGRID相互作用エネルギーマップを迅速な検索(lookup)表として使用することが可能になる。
本発明のまたさらなる実施形態では、CLIXなどのコンピュータアルゴリズムが利用され、これは、標的分子のリガンド/受容体結合部位内に両方が立体的に許容され得る様式で配向され得、かつ、候補標的分子と周囲のアミノ酸残基間に有利な化学的相互作用が得られる尤度が高い標的小分子についてCCDBなどのデータベースを検索するものである。該方法は、基質結合部位を種々の化学物質基に対する有利な結合位置の集合(ensemble)に関して特性評価し、次いで、個々の候補化学物質基と該集合の構成員との空間的合致の最大化をもたらす候補標的分子の配向を検索することを主としたものである。現在のコンピュータ処理能力の利用可能性により、新規なリガンドのコンピュータベースの検索は、横型(breadth−first)ストラテジーに従うことが指示される。横型ストラテジーは、適用する緊縮基準の増大により潜在的な候補検索空間の大きさを進行的に減少させることを目的とし、1つの候補の最大限に詳細な解析を行なった後次に進む、縦型(depth−first)ストラテジーとは反対である。CLIXは、結合の解析が初歩的(rudimentary)であり、有利な結合相互作用が実際に起こるという十分条件を課すことなく、個々の基を結合に「正しい」場所に有することにより立体的適合の必要条件を満たすことを目的とするものであるため、このストラテジーに従う。有利に配向された標的分子のランキングされた「ショートリスト」が作成され、次いで、これは、コンピュータグラフィックスおよびより高度な分子モデル設計手法を用いて標的分子ごとに検討され得る。また、CLIXにより、結合が増強され得る候補標的分子の置換基の化学物質基に対する変更が示唆され得る。この場合も、出発ライブラリーは、非天然アミノ酸の側鎖を作製するために使用され得る非天然アミノ酸または標的分子ものであり得る。CLIXのアルゴリズムの詳細は、Lawerenceら(1992)Proteins 12:31−41(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
所定の修飾標的分子によって利用され得る非天然アミノ酸を同定するためのコンピュータ支援分子設計法のまた別の実施形態は、標的分子のリガンド/受容体結合部位と所望の構造的および静電気的相補性を示す分子の小断片のアルゴリズム的連結による潜在的な阻害因子のデノボ合成を含む。
また別の実施形態において、潜在的な非天然アミノ酸は、修飾対象の標的分子内の官能基のエネルギー的に有利な位置を調べるためのエネルギー最小化クエンチ(quenched)分子力学アルゴリズムに基づく方法を用いて決定され得る。この方法により、かかる官能基が、既知のアミノ酸および非天然アミノ酸の修飾によって、またはデノボ合成によって組み込まれる標的分子の設計が補助され得る。
例えば、Mirankerら(1991)Proteins 11:29−34(引用により本明細書に組み込まれる)に記載された多コピーの同時検索方法(MCSS)は、主題の方法における使用に適合させ得る。タンパク質の分子力場の官能基の極小値を測定および特性評価するため、選択した官能基の多コピーをまず、修飾対象の標的分子上の対象のアミノ酸位置に分布させる。分子力学またはクエンチ力学によるこれらのコピーのエネルギー最小化により、異なる極小値が得られる。次いで、これらの極小値の近傍が、グリッドサーチまたは制約付き最小化によって検討され得る。一実施形態において、MCSS法では、タンパク質の分子力場内の多くの同一の基を同時に最小化またはクエンチするため、古典的な時間依存性のHartee(TDH)近似が使用される。
MCSSアルゴリズムの実施には、官能基および分子力学モデルの各々について選択が必要とされる。基は、容易に特性評価および操作されるのに充分に単純である(3〜6個の原子、わずかな2面体の自由度または自由度なし)が、官能基が修飾対象の標的分子内の選択された位置において有し得る立体的および静電気的相互作用が近似されるのに充分複雑でなければならない。好ましい組は、例えば、ほとんどの有機標的分子がかかる基の集合として報告され得るものである(Patai’s Guide to the Chemistry of Functional Groups編S.Patai(New York:John Wiley,and Sons(1989)、引用により本明細書に組み込まれる)。このようなものには、アセトニトリル、メタノール、アセテート、メチルアンモニウム、ジメチルエーテル、メタンおよびアセトアルデヒドなどの断片が含まれる。
結合部位のエネルギー極小値の測定には、多くの出発位置をサンプリングすることが必要とされる。これは、例えば、1000〜5000個の基をランダムに、結合部位の中心の球状内部に分布させることにより行なわれ得る。タンパク質に占められていない空間のみ、考慮する必要がある。特定の場所の特定の基とタンパク質との相互作用エネルギーが所与のカットオフ値(例えば、5.0kcal/モル)よりも正側である場合、その基は該部位から排除する。ある組の出発位置を考慮した場合、TDH近似の使用により、すべての断片が同時に最小化される(Elberら(1990)J.Am.Chem.Soc.112:9161−9175)(引用により本明細書に組み込まれる)。この方法では、各断片に対する力は、その内部力およびタンパク質によるものからなる。この方法の必須要素は、断片間の相互作用を省略し、タンパク質に対する力を、単一の断片によるものに対して標準化することである。このようにして、単一のタンパク質領域内の任意の数の官能基の同時最小化または力学が行なわれ得る。
最小化は、無作為に配置された基の例えば100のサブセットにおいて連続的に行なわれる。一定回数の工程区間(例えば、1,000回の区間)後、結果を検討し、同じ最小値に収束する基が排除され得る。このプロセスを、最小化が終了するまで(例えば、RMS勾配0.01kcal/モル/Å)まで反復する。したがって、得られる標的分子のエネルギー最小化の組は、非天然アミノ酸の潜在的な側鎖を示す3次元の一組の不連続な断片の量を含む。
次いで、次の工程は、小さな化学的存在体(原子、鎖または環部分)から合成したスペーサーを用いて断片を連結し、非天然アミノ酸を形成することであり、例えば、各不連続断片は、例えば、NEWLEAD(Tschinkeら(1993)J.Med.Chem.36:3863、3870)(引用により本明細書に組み込まれる)などのコンピュータプログラムを用いて、空間を伴って(in space)結合され、単一の標的分子が作製され得る。NEWLEADによって採用される手順は、以下のコマンドシーケンス(1)2つの単離された部分の連結、(2)さらなる処理のために中間の解を保持、(3)上記の工程を、中間の解の各々に対し不連続単位が見られなくなるまで反復、および(4)最終の解(各々、単一の分子である)、の出力を実行する。かかるプログラムでは、例えば、3つの型のスペーサー、すなわちライブラリースペーサー、単一原子スペーサー、および縮合環スペーサーが使用され得る。ライブラリースペーサーは、最適化された構造の小分子、例えば、エチレン、ベンゼンおよびメチルアミドである。NEWLEADなどのプログラムによって得られる出力は、元の断片がスペーサーによって結合されたもの含む一組の分子からなる。入力断片に属する原子は、その元の配向を空間を伴って維持している。該分子は、スペーサーと官能基というシンプルな構成のため化学的に妥当(plausible)であり、また、ファン・デル・ワールス動径妨害(radii violation)による解の却下のためエネルギー的に許容され得る。
また、本発明の方法の工程を行なう順序は、本質的に単なる例示である。実際には、諸工程は、本開示において特に記載のない限り、任意の順序で、または平行して行なわれ得る。
さらにまた、本発明の方法は、ハードウェア、ソフトウェア(該用語は、現在、当該技術分野で知られているものである)、または任意のその組合せのいずれかにおいて行なわれ得る。特に、本発明の方法は、任意の型の1台以上のコンピュータにおいて作動されるソフトウェア、ファームウェアまたはマイクロコードによって行なわれ得る。さらに、本発明の実施形態を示すソフトウェアは、任意のコンピュータ可読媒体(例えば、ROM、RAM、磁気媒体、穿孔テープまたはカード、任意の形態のコンパクトディスク(CD)、DVDなど)に保存された任意の形態のコンピュータの命令(例えば、ソースコード、オブジェクトコード、インタープリタ(interpreted)コードなど)を含むものであってもよい。さらにまた、かかるソフトウェアは、搬送波において具現化されるコンピュータデータシグナルの形態、例えば、インターネットに接続されたデバイス間で転送されるよく知られウェブページに見られるものなどであってもよい。したがって、本発明は、本開示において特に記載のない限り、なんら特定のプラットフォームに限定されない。
本発明を実施するのに適した例示的なコンピュータハードウェア手段は、10 R10000プロセッサ(例えば、平行して実行される)を有するSilicon Graphics Power Challengeサーバーであり得、好適なソフトウェア開発環境としては、例えば、CERIUS2(Biosym/Molecular Simulations(San Diego,CA))または他の同等品が挙げられる。
上記のコンピュータによる方法は、タンパク質合成機構(例えば、AARS)の酵素の修飾に有効に使用され、非天然アミノ酸の組込みを可能とした。コンピュータ使用によるツールに適した同様のものもまた、最終生成物(例えば、モノクローナル抗体または他の治療剤)の設計において、その構造的または機能的特性が増強または変更されるように非天然アミノ酸が組み込まれ得るように利用され得る。
組み込みのための試験
分子の修飾に所望される目的の1つが少なくとも1つの天然機能を保持することである場合、その機能の試験は、各アミノ酸修飾(例えば、1つ以上の特定のアミノ酸残基の置換)後、その都度行なわれ得ることは、さらに認識されよう。非天然アミノ酸の組込みおよび/または化学物質部分の同定方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、フローサイトメトリー、ノザンブロット、ウエスタンブロット、PCR、RNAマイクロシークエンシング、レポーターアッセイ、FLAGエピトープ、他の分子(ストレプトアビジンなど)への結合、放射能標識検出、比色定量アッセイ、RNAse保護アッセイ、質量分析法(例えば、MALDIおよびMALDI−TOF)、クロマトグラフィー(HPLCなど)、NMR、IR、ELISA、蛍光顕微鏡検査、ならびにこれらまたは他の当該技術分野で知られた手法の任意の組合せが実施され得る。
特定のアミノ酸ファミリーの1つ以上の構成員修飾標的分子内への組み込みに加え、適正な分子構造(すなわち、フォールディング)および/または少なくとも1つの天然機能を増進または保持するために、他のアミノ酸残基が物理的または化学的に改変(例えば、置換)され得ることは認識されよう。例えば、標的分子内の既に置換された、または置換のために選択された残基と相互作用するある種の特定のアミノ酸残基を改変することが必要であり得る。別の例として、置換のために選択された他方のアミノ酸残基に加えて、選択された標的分子の対応する結合パートナー(例えば、受容体−リガンド結合部位)と相互作用するある種の特定のアミノ酸残基を改変することが必要であり得る。したがって、選択された標的分子では、修飾の目的ならびに選択された標的分子の天然構造に応じて、多数のアミノ酸ファミリーに由来する多数のアミノ酸残基が(天然に存在する、または非天然のアミノ酸残基に)置換され得る。
該実施形態の一例では、非天然アミノ酸を含むタンパク質(例えば、抗体および/または抗体断片など)は、固相合成およびライゲーション手法を用いて、またはインビトロ翻訳/発現を用いて直接化学合成されたものであり得る。例えば、完全な抗体またはその断片は、充分に確立されたさまざまなタンパク質発現系、例えば、大腸菌、酵母、昆虫(例えば、バキュロウイルス系)、および哺乳動物の細胞を用いて発現させたものであり得る。
特定のある実施形態において、非天然アミノ酸の部位特異的組込み方法としては、細胞の増殖培地に非天然アミノ酸が添加されない限り、機能性の成熟タンパク質産物が発現されないようなタンパク質の翻訳の誘導が挙げられる。一部のある実施形態において、「機能性の成熟タンパク質産物」としては、開始コドンから終止コドンまで翻訳される遺伝子産物が挙げられる。一部のある実施形態において、「機能性の成熟タンパク質産物」としては、翻訳後修飾された(例えば、グリコシル化、リン酸化または他の修飾によって)タンパク質産物が挙げられる。一部のある実施形態では、「機能性の成熟タンパク質産物」として、少なくとも1つの機能;例えば、他の標的分子との相互作用(例えば、1つ以上の受容体との結合、1つ以上の酵素活性における一助、または1つ以上のリガンドとの対合)による機能を可能にする配置でフォールディングされたタンパク質が挙げられる。一部のある実施形態では、「機能性の成熟タンパク質産物」として、前駆体タンパク質産物、例えば、アンギオテンシンペプチドファミリー、インスリンペプチドファミリーの構成員などが挙げられ得る。
核酸構築物
特定のある実施形態において、本発明の方法および/または組成物における標的分子(またはその一部分もしくは断片)は、核酸にコードされている。典型的には、該核酸は、少なくとも1つの縮重コドン、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9ち、または少なくとも約10またはそれ以上の縮重コドンを含む。
一実施形態において、少なくとも1つの修飾核酸構築物(1つまたは複数)をプロモーター、好ましくは誘導プロモーターに作動可能に連結させ、その制御下に供する。一実施形態において、多種類のポリヌクレオチドが、1つまたは複数のプラスミドにコードされる。一実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、さらに、修飾tRNAの発現を制御する第1のプロモーター配列を含む。一実施形態において、第1のプロモーターは誘導プロモーターである。一実施形態において、第2のポリヌクレオチドは、さらに、修飾AARSの発現を制御する第2のプロモーター配列を含む。特定のある実施形態において、第1および第2のポリヌクレオチドは、同じ標的分子に存在している。
本明細書に記載のように、本発明は、核酸ポリヌクレオチド配列およびポリペプチドアミノ酸配列を提供する。しかしながら、当業者には、本発明が、本明細書に開示した配列に限定されないことは認識されよう。当業者(one of skill)には、本発明がまた、本明細書に記載の機能を伴う多くの関連配列および非関連配列を提供することが認識されよう。
また、当業者には、開示した配列の多くのバリアントが本発明に包含されることが認識されよう。例えば、機能的に同一の配列をもたらす開示した配列の保存的異形は、本発明に包含される。少なくとも1つの開示した配列にハイブリダイズする該核酸ポリヌクレオチド配列のバリアントは、本発明に包含されるのもとみなす。本明細書に開示した配列の非反復部分配列(例えば、標準配列比較手法によって決定)もまた、本発明に包含される。
細胞には、アミノ酸および他の化合物の産生のための多くの生合成経路が既に存在する。特定の非天然アミノ酸の生合成方法は、自然状態(例えば、大腸菌内)には存在しないことがあり得るが、本発明は、かかる方法を提供する。例えば、非天然アミノ酸の生合成経路を、任意選択で、大腸菌において既存の大腸菌経路に新たな酵素を添加することにより、または該経路を変更することにより生成させる。添加される新たな酵素は、任意選択で、天然に存在する酵素または人工的に進化させた酵素である。例えば、p−アミノフェニルアラニン(例えば、O02/085923(引用により本明細書に組み込まれる)に示されている)の生合成は、他の生物体由来の既知酵素の組合せの添加に依存する。このような酵素の遺伝子は、細胞(例えば、大腸菌細胞など)に、該細胞を、該遺伝子を含むプラスミドで形質転換することにより導入され得る。該遺伝子は、該細胞内で発現されると、所望の化合物を合成する酵素的経路をもたらす。任意選択で添加される酵素の型の例を以下の実施例に示す。さらなる酵素配列は、例えば、Genbankをみるとよい。人工的に進化させた酵素もまた、任意選択で、細胞内に同様にして添加される。このように、細胞機構および資源細胞は、非天然アミノ酸が産生されるように操作される。
さまざまな方法が、生合成経路における使用のため、または既存の経路の進化のための新規な酵素の作製に利用可能である。例えば、再帰的組換え(例えば、Maxygen,Inc.で開発されたもの)が、任意選択で、新規な酵素および経路の開発に使用される(例えば、Stemmer 1994,Nature 370(4):389−391;およびStemmer,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.91:10747−10751(これらは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。同様に、DesignPathTM(Genencorによって開発)が、任意選択で、代謝経路の操作、例えば、大腸菌内の非天然アミノ酸を生成させる経路を操作するために使用される。この手法により、例えば、機能的遺伝学ならびに分子の進化および設計により同定される新たな遺伝子の組合せを用いて、宿主生物体の既存の経路が再構築される。Diversa Corporationはまた、例えば、新たな経路を作出するために遺伝子のライブラリーおよび遺伝子経路を迅速にスクリーニングするための手法をも提供している。生合成経路の一例は、本明細書に開示したAARSの効率が変異型エディティング機能によって増大するようなタンパク質翻訳のエディティング機能を含むものであり得る。
典型的には、本発明の操作された生合成経路によって生成される非天然アミノ酸は、効率的なタンパク質生合成に充分な濃度で、例えば、天然の細胞内量であって、その他のアミノ酸の濃度に影響しない、または細胞資源を消耗させない濃度で生成される。このようにしてインビボで生成される典型的な濃度は、約10mM〜約0.05mMである。細菌を、特定の経路に所望の酵素を産生させるために使用する遺伝子を含むプラスミドで形質転換し、21番目のアミノ酸(例えば、pAF、ドパ、O−メチル−L−チロシンなど)が生成されると、任意選択で、インビボ選択を使用し、リボソームタンパク質合成および細胞増殖の両方について、非天然アミノ酸の産生をさらに最適化する。
一部のある実施形態において、修飾RSを利用すると、非天然アミノ酸の組込み割合は、およそ65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上もしくは99%、または大きくなった。
分子への化学物質部分の付加
タンパク質などの標的分子への1つ以上の化学物質部分の付加により、タンパク質のフォールディング、分泌,生物学的活性,血清半減期、局在および他の特性がモジュレートされる。非天然アミノ酸、例えば、化学物質部分が結合され得る部分を含む非天然アミノ酸、または結合された化学物質部分を含む非天然アミノ酸などの組込みは、例えば、タンパク質構造および/または機能における変化を調整するため、例えば、大きさ、酸性度、求核性、水素結合、疎水性、プロテアーゼ標的部位の到達可能性、タンパク質部分への標的到達などを変更するために行なわれ得る。例えば、非天然アミノ酸、例えば、化学物質部分が結合され得る部分を含む非天然アミノ酸、または化学物質部分を含む非天然アミノ酸を含むタンパク質は、向上した、さらには完全に新しい触媒特性または物性を有するものであり得る。
例えば、以下の特性:毒性、生体分布、構造特性、分光学的特性、化学的および/または光化学的特性、触媒能、半減期(例えば、血清半減期)、他の分子と反応する能力(例えば、共有結合もしくは非共有結合により)、タンパク質安定性、タンパク質活性、タンパク質コンホメーション、タンパク質基質特異性、タンパク質−標的結合親和性、抗原結合能、熱安定性、タンパク質の少なくとも1種類のプロテアーゼに対する抵抗性、タンパク質の少なくとも1つの非水性環境に対する耐容性、グリコシル化パターン、リン酸化パターン、ジスルフィド結合、プロテアーゼ切断部位の場所、金属結合能、補因子結合能、架橋能、可溶性、システイニル化、脱アミド化、アセチル化、ビオチン化、酸化、グルタチオニル化、スルファン化(sulphanation)、血清中半減期、免疫原性、組織浸透、蛍光ペグ化、多量体化能、毒性、生体分布、精製の容易性、プロセッシング構造特性、分光学的特性、化学的および/または光化学的特性、触媒活性、ワクチンとして機能を果たす能力、被検体または患者の身体からの排出遅滞、酸化還元電位、共有結合または非共有結合によりいずれかにより他の分子と反応する能力、前記タンパク質に対する患者の耐容性、患者における前記タンパク質の有効性の増大、患者における前記タンパク質またはタンパク質産物の送達の改善、ペプチダーゼに対する抵抗性の増大、ならびに任意のその組合せが、任意選択で、化学物質部分が連結された非天然アミノ酸を含めることにより修飾される。
腎臓および肝臓を通したクリアランス以外に、有意な割合の生物療法剤が、受容体媒介性分解によってクリアランスされる。サイトカインおよび増殖因子は、その受容体に結合すると、エンドソームとよばれる細胞区画内にインターナリゼーションされ、そこで、受容体リガンド複合体が分解される。しかしながら、エンドソーム内でその受容体から速やかに解離したリガンドは、再循環されて細胞表面に戻り、枯渇が回避され、それにより、半減期の増大が誘導される。
いくつかの化学物質部分、例えばポリ(エチレン)グリコールが、20種類の天然に存在するアミノ酸内に存在する官能基、例えば、リシンアミノ酸残基のεアミノ基、システインアミノ酸残基内に存在するチオール、または他の求核性アミノ酸側鎖と反応する。多数の天然に存在するアミノ酸をタンパク質内で反応させる場合、このような非特異的化学反応基により、タンパク質内の種々の場所で1つ以上のポリ(エチレン)グリコール鎖にコンジュゲートされたタンパク質の多くの異性体を含む最終タンパク質産物がもたらされる。
本発明の特定のある実施形態の利点の1つに、標的分子内に存在する天然に存在するアミノ酸とは非反応性である化学反応によって、活性化ポリ(エチレン)グリコール鎖と反応する固有の官能基を有する非天然アミノ酸を組み込むことにより、1つ以上の化学物質部分(ポリ(エチレン)グリコールなど)を付加できることが挙げられる。例えば、アジド基およびアルキン基は、タンパク質内の天然に存在する官能基すべてと非反応性である。したがって、非天然アミノ酸は、ポリ(エチレン)グリコールまたは他の修飾が所望される標的分子の1つ以上の特定の部位内に、望ましくない非特異的反応なく組み込まれ得る。特定のある実施形態では、該反応に関与する特定の化学反応基により、ポリ(エチレン)グリコール鎖と標的分子との間に安定な共有結合がもたらされる。また、かかる反応は、ほとんどの標的分子に対して障害性でない穏やかな水性条件において行なわれ得る。したがって、高度に反応性の天然に存在するアミノ酸残基を含む標準的なポリペプチドとの反応とは異なり、非天然アミノ酸残基を用いる本明細書に開示した反応は、生物学的機能性基との望ましくない非特異的反応がないため、インビボまたは標的分子の未精製調製物において行なわれ得る。
天然アミノ酸に結合される化学物質部分は、数および範囲が限定されている。対照的に、非天然アミノ酸に結合される化学物質部分には、化学物質部分を標的分子に結合させる有意に広範囲の有用な化学反応基が利用され得る。
非天然アミノ酸(例えば、化学物質部分が結合され得る反応性の部位または側鎖を含む非天然アミノ酸、例えば、アルデヒド−またはケト誘導型アミノ酸など)を含む本質的に任意の標的分子、例えば任意のタンパク質(またはその一部分)が、化学物質部分結合のための基質として供され得る。具体的なタンパク質の一例を、とりわけ本明細書に記載しているが、1つ以上の非天然アミノ酸が含まれるように修飾される(例えば、任意の利用可能な変異方法を調整して1つ以上の適切な縮重コドンを当該翻訳系に含めることにより)既知タンパク質をそれぞれ同定する試みは行なっていない。既知タンパク質の一般的な配列収蔵機関としては、GenBank EMBL、DDBJおよびNCBIが挙げられる。
化学物質部分が付加された標的分子を、本明細書では「コンジュゲート」という。本明細書でいう「化学物質部分」としては、標的分子のアミノ酸残基に対する任意の生物学的または化学的付加もしくは修飾または任意のその組合せが挙げられ得る。化学物質部分は、直接または間接的に(リンカーにより)標的分子内の非天然アミノ酸または天然に存在するアミノ酸にコンジュゲートされ得る。
本発明に包含される化学物質部分の一例としては、限定されないが、細胞毒、医薬用薬物、色素または蛍光標識(例えば、緑色蛍光タンパク質または赤色蛍光タンパク質)、求核性または求電子性の基、ケトンまたはアルデヒド、アジドまたはアルキン化合物、フォトケージ形基(例えば、ニトロベンジルエーテルおよびエステル)、タグ(例えば、ビオチン)、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、グリコシル化基(オリゴ糖など)、任意の分子量を有するポリ(エチレン)グリコール(PEG)(例えば、PEG2000、PEG3350、PEG3500、PEG8000)であって任意のジオメトリー(線状、分枝状、星状、樹状など)を有するもの、他のポリ(アルキレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリ(ビニル)アルコール、金属錯体の金属、ポリアミン、イミダゾール類、炭水化物(例えば、デキストランまたはキトサン)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、生体ポリマー、粒子、固相支持体(例えば、樹脂)、標的分子の薬理作用を改変させる任意のポリマー、標的化剤、親和基(ビオチンもしくはストレプトアビジンなど)、相補的な反応性化学物質基が結合し得る任意の薬剤、生物物理的または生化学的プローブ(例えば、アイソタイプ(isotpically)標識アミノ酸、スピン標識アミノ酸およびフルオロフォア、アリールのヨウ化物および臭化物、ならびにこれらおよび他の任意の組合せが挙げられる。さらなる例については、Magliery,Med.Chem.Rev.2005,2,303−323(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
該部分は、求電子性または求核性が強く、それにより、治療用の標的分子または抗体もしくはその断片との直接反応に利用可能なものであり得る。あるいはまた、該部分は、弱い求電子体または求核体であり、したがって、治療用分子または抗体もしくはその断片とのコンジュゲーション前に活性化が必要とされるものであり得る。この択一性は、薬剤と該部分との反応を抑制するため、該薬剤を標的分子に添加するまで化学的に反応性の部分の活性化を遅延させることが必要な場合、望ましいことがあり得る。いずれの状況も、該部分は化学的に反応性であり、両状況は、薬剤の添加後、該部分が抗体もしくはその断片と直接反応するか、または、まず1つ以上の化学反応基と反応して該部分を抗体もしくはその断片と反応可能にするかのいずれであるかという点が異なる(抗体との反応の状況において)。特定のある実施形態において、化学的に反応性の部分としては、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボニル含有基、またはアルキル脱離基が挙げられる。
本発明のコンジュゲートの調製における使用に特に適したポリアルキレングリコールとしては、限定されないが、ポリ(エチレングリコール)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーが挙げられ、特に好ましいのはPEGであり、さらに特に好ましいのは、単官能性活性化ヒドロキシPEG(例えば、単一の末端が活性化されたヒドロキシPEG、例えば、ヒドロキシPEG−モノカルボン酸の反応性エステル、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、ヒドロキシPEG−モノアミン、ヒドロキシPEG−モノヒドラジド、ヒドロキシPEG−モノカルバゼート(carbazat−e)、ヒドロキシPEG−モノヨードアセトアミド、ヒドロキシPEG−モノマレイミド、ヒドロキシPEG−モノオルトピリジルジスルフィド、ヒドロキシPEG−モノオキシム、ヒドロキシPEG−モノフェニルカーボネート、ヒドロキシPEG−モノフェニルグリオキサール、ヒドロキシPEG−モノチアゾリジン−2−チオン、ヒドロキシPEG−モノチオエステル、ヒドロキシPEG−モノチオール、ヒドロキシPEG−モノトリアジンおよびヒドロキシPEG−モノビニルスルホン)である。
特定のある実施形態において、PEGなどのポリマーが修飾標的分子に結合またはカップリングされて本発明のコンジュゲートが形成される反応中、該ポリマーによる細胞内および分子間架橋の形成を最小限に抑えることが必要または望ましいことがあり得る。架橋、例えば、個々のタンパク質分子との細胞内架橋(「ダンベル」構造)、これは、ポリマーの一方の鎖が2つのタンパク質分子と連結されている)、ならびに大きな凝集体またはゲルとの細胞内架橋を最小限に抑えること。このような、および他の架橋反応を最小限に抑えることは、一方の末端のみが活性化されたポリマー(上記のような単官能性活性化されたもの)、または二官能性活性化(線状PEGの場合は、「ビス−活性化PEGジオール」という)もしくは多官能性活性化ポリマーのパーセンテージが、約50%未満、40%、35%、25%、15%、10%、5%、または2%(w/w)であるポリマー調製物を使用することによりなされ得る。特定のある実施形態において、全体的なPEG化率(すなわち、標的分子に結合されたPEGの少なくとも1つの鎖について)は、およそ50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%であるか、それより大きい。
本発明のコンジュゲートの調製における使用に特に好ましいポリマーは、抗原性が低減されているか、抗原性が実質的に低減されているか、または検出可能な抗原性をもたないものであって、メトキシル基、他のアルコキシル基またはアリールオキシ基を含有しない単官能性活性化PEGである。本発明のコンジュゲートの合成において、単官能性活性化mPEGの代わりの、かかる単官能性活性化PEGの置換により、得られるコンジュゲートに対して、予想外の抗原性の低下、すなわち、同じ生物学的活性成分のmPEGコンジュゲートに対して生成された抗体と相互作用する能力の低下がもたらされる。また、得られるコンジュゲートは、免疫原性が低下、すなわち、免疫応答を惹起する能力が低下している。
特定のあるかかる実施形態において、ポリアルキレングリコールは、約1,000ダルトン〜約100kDa、好ましくは約2kDa〜約60kDa;約2kDa〜約30kDa、約5kDa〜約20kDa;約10kDa〜約40kDa;約10kDa〜約20kDaの分子量を有し、2つの分枝は各々、約2kDa〜約30kDaの分子量を有し、より好ましくは2つの分枝は各々、約18kDa〜約22kDaを有する。特別な一実施形態において、ポリアルキレングリコールは、ポリ(エチレン)グリコールであり、約10kDa;約20kDaまたは約40kDa分子量を有するものである。本発明のこの態様によるコンジュゲートは、1本以上のポリアルキレングリコール鎖を含むものであり得る。特定のある実施形態では、好ましくは、約1〜約10本の鎖、約1〜約5本の鎖、より好ましくは約1〜約3本の鎖、最も好ましくは約1〜約2本の鎖;他の実施形態では、好ましくは約5〜約100本の鎖、約10〜約50本の鎖、より好ましくは約6〜約20本の鎖が、高分子量酵素タンパク質のサブユニット1つあたりに含まれる。特に好ましいかかる一実施形態では、コンジュゲートに使用されるポリアルキレングリコールは、約18kDa〜約22kDaまたは約27kDa〜約33kDaの分子量を有する1本または2本の単官能性活性化ポリ(エチレングリコール)鎖(例えば、ヒドロキシPEG−一酸の反応性のエステル、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、ヒドロキシPEG−モノビニルスルホンまたはヒドロキシPEG−モノフェニルカーボネート誘導体)を含む。多くの研究者らにより、線状または分枝状の「非抗原性」PEGポリマーおよびその誘導体またはコンジュゲートの調製が開示されている(例えば、米国特許第5,428,128号;同第5,621,039号;同第5,622,986号;同第5,643,575号;同第5,728,560号;同第5,730,990号;同第5,738,846号;同第5,811,076号;同第5,824,701号;同第5,840,900号;同第5,880,131号;同第5,900,402号;同第5,902,588号;同第5,919,455号;同第5,951,974号;同第5,965,119号;同第5,965,566号;同第5,969,040号;同第5,981,709号;同第6,011,042号;同第6,042,822号;同第6,113,906号;同第6,127,355号;同第6,132,713号;同第6,177,087、および同第6,180,095号を参照のこと;また、PCT公開公報WO95/13090ならびに米国特許出願公開公報第2002/0052443号、同第2002/0061307号および同第2002/0098192号も参照のこと)。
直鎖または分枝鎖を有する任意の水溶性の単官能性または二官能性ポリ(アルキレンオキシド)が、特定のある実施形態において利用され得る。典型的には、該ポリオールは、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)などのポリ(アルキレングリコール)である。当業者には、他のポリオール、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーなどが好適に使用され得ることが認識されよう。
あるいはまた、化学物質部分は標的分子に、天然に存在するアミノ酸(天然標的分子由来のもの、または修飾によって付加されたものいずれの場合も)によって連結、融合あるいは結合され得る。
特定の標的分子内の化学物質部分の場所は、標的分子の構造および/または機能に影響を及ぼし得る。例えば、化学物質部分が活性な結合部位近傍に存在する場合、該部分は、インビボでタンパク質の所望の相互作用を立体的に妨害し得る。しかしながら、化学物質部分が活性部位から遠くに存在する場合は、標的分子の活性を有意に低下させることなく、標的分子を腎臓への取込みなどから立体的に保護し得る。同様に、化学物質部分が抗原性エピトープの近傍に存在する場合、インビボで標的分子の抗原性が低減され得る。したがって、化学物質部分が標的標的分子に連結される場所(1つまたは複数)を制御できることは重要である。
特定のある実施形態において、非天然アミノ酸は、第1級アミンまたはチオール側鎖基を含有していないものである。一部の実施形態において、非天然アミノ酸は化学物質部分(PEGなど)に、トリアゾール結合によって連結されている。トリアゾール結合は、例えば、アジドとアルキンの銅媒介性Huisgen[3+2]付加環化によって形成され得る。アジド基は、例えば、パラ−アジドフェニルアラニンによって提供され得、アルキン基は、例えば、アルキン誘導体化PEG試薬によって提供され得る。他の実施形態において、アルキンは、エチニルフェニルアラニンまたはエチニルTrpまたはホモプロパルギルグリシンによって提供され得る。さらに他の実施形態において、アジドは、アジド誘導体化PEGによって提供され得る。他の実施形態では、アジドは、アジドホモアラニンによって提供され得、アルキンは、アルキン誘導体化PEGによって提供され得る。
従来、ポリエチレングリコール(PEG)などの一般的な化学物質部分は、天然に存在するアミノ酸(例えば、リシンのεアミノ基またはシステイン残基のチオール基)内に存在する官能基とも反応する。したがって、このような非特異的反応により、タンパク質のアミノ酸含量に応じてタンパク質内の種々の場所で1つ以上の化学物質部分にコンジュゲートされたタンパク質の多くの異性体を含む最終タンパク質調製物がもたらされる。この異性体の範囲は、該最終調製物内に含まれる異性体のばらつきのためタンパク質の全体的な治療有効性に影響を及ぼすか、または単一の所望の異性体もしくは異性体範囲を得るためにさらなる精製を必要とする。このような要件はすべて、タンパク質製造においてコストおよび労力の増大をもたらす。一部のアミノ酸残基に配置される(その後、除去される)保護基により、ある程度の有益性が示されたが、この手法には、タンパク質生成に対する相当な複雑性もまた必要とされ、修飾されたタンパク質を大量に製造する上では非常に非実用的である。
本発明は、活性化PEGまたは他の化学物質部分と反応し得る非天然アミノ酸内の固有の官能基を利用し、天然に存在するアミノ酸とは反応しない化学反応を用いることにより、化学物質部分(例えば、PEG)が標的分子(タンパク質など)に連結されるという利点を有する。したがって、本発明に使用される方法により、タンパク質または他の標的分子内の非天然アミノ酸の場所(これは、タンパク質または他の標的分子の任意の所望される場所であり得る)への化学物質部分の効率的な組み込み様式が提供される。このような反応はまた、タンパク質および安定な共有結合のための化学物質部分の結合を損傷しない穏やかな水溶液中で行なわれ得る。このような反応はまた、生物学的機能性基との副反応がないため、インビボまたはタンパク質の未精製調製物において行なわれ得る。
したがって、本発明の方法のいくつかの利点としては、化学物質部分を本明細書に記載の修飾標的分子に付加できることが挙げられ、これは、水性のバッファー中、広いpH範囲、室温で、および非常に短時間で行なわれ得る。
化学物質部分の結合に加え、官能基近傍の原子は、電子求引基または電子供与基を付加すること、またはメチル基もしくは標的分子に立体障害性を付与する他の基を付加することなどによって改変され得る。これにより、官能基の反応性が改変され得るかまたは出発基もしくは形成された結合の安定性が改変され得る。例えば、反応性を増大させるために、ニトロ基などの電子求引基がブロモフェニルアラニンのフェニル環に付加され得る。また、切断可能な結合、エステル基またはジスルフィド基が化学物質部分と活性な基(例えば、アルキン)の間に近接して配置され得、その結果、化学物質部分が該タンパク質から、エステル加水分解によってゆっくりと、またはジスルフィド還元によって速やかに除去され得る。必要な場合は、イオウ原子と触媒間の相互作用は、過剰の触媒を使用することにより、またはシステイニルチオールを可逆的に保護することにより抑制または低減させ得る。
なんら特定の理論に拘束されることを望まないが、PEG化は、オリゴ糖類と、ポリエチレングリコール(PEG)などの合成ポリマーが、共有結合により、治療用タンパク質標的分子に部位特異的に結合されるプロセスである。PEG化によって、ポリペプチドがタンパク質分解性酵素から遮蔽されることにより、およびタンパク質のみかけの大きさが増大し、したがって、クリアランス速度が低減されることにより、タンパク質半減期が有意に向上され得る。さらに、PEGコンジュゲートは、タンパク質可溶性を増強し、生体分布に対して有益な効果を有する。ペグ化タンパク質の物理的および薬理学的特性は、ポリペプチドに結合されるPEG鎖の数および大きさ、PEG部位の場所、およびPEG化に使用される化学反応基に影響される。タンパク質へのPEGコンジュゲーションの例としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体化PEGとリシンとの反応、マレイミドおよびビニルスルホン誘導体化PEGとシステインとの1,4−付加反応、ならびにヒドラジド含有PEGと糖タンパク質の酸化によって生成されるアルデヒドとの縮合が挙げられる。
PEG化によって、ポリペプチドがタンパク質分解性酵素から遮蔽されることにより、およびタンパク質のみかけの大きさが増大し、したがって、クリアランス速度が低減されることにより、タンパク質半減期が有意に向上され得る。さらに、PEGコンジュゲートは、タンパク質可溶性を増強し、生体分布に対して有益な効果を有する。ペグ化タンパク質の物理的および薬理学的特性は、ポリペプチドに結合されるPEG鎖の数および大きさ、PEG部位の場所、およびPEG化に使用される化学反応基に影響される。「PEG」としては、一般式CHCHO(CHCHO)CHCHの標的分子が挙げられ得る。PEGとしては、ヒドロキシル基をその末端の各々(o ther)に有する線状ポリマー(HO−PEG−OH)が挙げられる。タンパク質へのPEGコンジュゲーションの例としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体化PEGとリシンとの反応、マレイミドおよびビニルスルホン誘導体化PEGとシステインとの1,4−付加反応、ならびにヒドラジド含有PEGと糖タンパク質の酸化によって生成されるアルデヒドとの縮合が挙げられる。
PEG ポリマーの一例としては、メトキシ−PEG−OH(m−PEG)(ここで、一方の末端は、比較的不活性であるが、他方の末端はヒドロキシル基であり、化学的修飾に供される)が挙げられる。分枝状PEG(R−PEG−OH)(式中、Rは、中心コア部分、例えば、ペンタエリスリトール、グリセロールまたはリシンを表し、nは、分枝枝の数を表し、3〜100以上の範囲であり得る)もまた使用され得る。該ヒドロキシル基は、さらに化学的修飾に供される。別の分枝形態は、単一の末端を有するものであり、化学的修飾に供される(例えば、PCT特許出願公開公報WO 96/21469参照のこと)。この型のPEGは、(CHO−PEG)−R−X)(式中、pは2または3であり、Rは、中心コア(リシンまたはグリセロールなど(such that))を表し、Xは、化学的活性化に供される官能基(カルボキシルなど)を表す)で表され得る。別の分枝形態「懸垂PEG」は、カルボキシルなどの反応基を、PEG鎖の末端にではなく、PEG主鎖上に有する。PEG−メチルマレイミド(これは、例えば、抗体、ウイルス、ペプチドおよびタンパク質のチオール特異的ペグ化に使用され得る)、PEGのアルデヒド誘導体(PEG−ブチルアルデヒド、PEG−ペンタアルデヒド、PEG−アミド−プロピオンアルデヒド、PEG−ウレタノ−プロピオアルデヒド)(これは、例えば、タンパク質のN末端特異的ペグ化に使用され得る)、または多分枝PEG(これは、例えば、ヒドロゲル製剤の反応性成分として使用される)。
多くのPEG試薬が、PEGポリマーとタンパク質間の連結基の形成によるPEG標的分子の共有結合を伴うタンパク質の修飾用に開発されている。一部のかかる試薬は、PEG化反応が行なわれる水性媒体中で不安定である。また、一部のタンパク質は、PEGが付加されると、タンパク質の活性部位との立体相互作用のため、インビトロ生物学的活性を失うことがあり得る。
タンパク質の部位特異的ペグ化が行なわれ得る主な方法は、PEG−マレイミド試薬での遊離システイン部分のペグ化である。PEG−スルフヒドリル反応性の誘導体はシステインと、マイケル付加によって反応し、安定な3−チオスクシジミジル(succidimidyl)エーテル結合が形成され得る。
マレイミド特異的スルフヒドリル試薬により、システイン残基との共有結合が、対応するアミンよりも約1000倍速く形成され得、それにより、システイン部分選択的に誘導体化される。得られる化合物は非常に安定であり、生理学的条件下で逆反応は起こり得ない。
ペグ化による別のタンパク質安定化向上方法は、PEGアルデヒド誘導体を用いて行なうものである。これは、例えば、PEGアルデヒドをタンパク質アミンと、タンパク質のN末端の単一の部位で5.5〜7.5のpHにて(中間体のシッフ塩基が形成される)反応させることにより行なわれ得る。アミノ化プロセスがタンパク質上の1つより多くのアミノ部位に所望される場合、反応は、8.0以上、好ましくは8.0〜10.0のpHで行なわれ得る。かかるPEGアルデヒドは、典型的には、水性媒体中で非常に安定であるが、シッフ塩基の形成にはいくぶん反応性が低いことがあり得る。このような試薬は、還元的アミノ化反応のためのより大きな総合選択性、およびどのタンパク質アミンをタンパク質のペグ化に利用するかの選択に使用され得る。
エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーは、その化学反応性においてPEGと密接に関連しており、多くの適用用途においてPEGの代わりに使用され得る。該コポリマーは、以下の一般式:HO−CHCHRO(CHCHRO)CHCHR−OH(式中、Rは、HまたはCH、CHCH、(CH)mCHである)を有する。
PEGは、水溶性ならびに多くの有機溶媒に可溶性であるため、PEGは有用なポリマーである。PEGは、一般的に、無毒性で非免疫原性である。PEGを水不溶性の化合物に化学結合させた場合、得られるコンジュゲートは、一般的に、水溶性ならびに多くの有機溶媒に可溶性となる。したがって、本明細書で用いる場合、「PEG部分」には、限定されないが、任意の重量および/または大きさの線状および分枝状PEG、メトキシPEG、加水分解もしくは酵素により分解性PEG、懸垂PEG、樹状PEG、PEGと1つ以上のポリオールのコポリマー、ならびにPEGとPLGA(ポリ(乳酸/グリコール酸)のコポリマーが包含されることが意図される。
1つより多くの反応性の部位がタンパク質内に存在する場合(例えば、多数のアミノ基もしくはチオール基)または反応性の求電子体が使用される場合、1つまたは多数のPEG分子の非選択的な結合が起こり得、分離が困難な不均一な混合物の生成がもたらされ得る。PEG鎖の結合における選択性および位置制御の欠如により、生物学的活性の有意な低下、およびおそらくコンジュゲートタンパク質の免疫原性の増強がもたらされ得る。アミン反応性PEGでのタンパク質の修飾により、典型的には、生物学的活性に重要なタンパク質領域に存在するリシン残基の修飾による生物学的活性の劇的な低下がもたらされる。特定のある状況では、成長ホルモンの生物学的活性は400倍以上低下し得る。例えば、GCSFの生物学的活性は、該タンパク質を慣用的なアミン−PEG化手法を用いて修飾した場合、1000倍低下する(Clarkら,J.Biol.Chem.271:21969,1996;Bowenら、Exp.Hematol.27,425,1999)。したがって、タンパク質などの分子へのPEG鎖の完全に部位特異的な不可逆結合を可能にする方法の必要性が存在する。
少なくとも1つの非天然アミノ酸、例えば、化学物質部分が結合され得る部分を含む非天然アミノ酸、または化学物質部分を含む非天然アミノ酸を含むタンパク質を含む組成物は、例えば、新規な治療剤、診断剤、触媒用酵素、工業用酵素、タンパク質(例えば、抗体)の結合、ならびに例えば、タンパク質の構造および機能の研究に有用である(例えば、Dougherty,(2000)Curr.Opin.in Chem.Biol.,4:645−652(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)。
また、PEG分子(または他の化学物質部分)は非天然アミノ酸に、アミンPEG化以外の手法によって結合させてもよく、それにより、リシンの第1級アミン基の望ましくないPEG化が抑えられる。かかる分子またはタンパク質の操作手法主な利点としては、均一に修飾された次世代のプロプライエタリ医薬の創製;高い生物学的活性の保持および身体内での長期滞留;効力および安定性の増大ならびに免疫原性の低減;ロットごとの生物学的活性の一貫性が挙げられる。このような手法は、例えば、癌、内分泌学、感染性疾患、免疫学、システム医学および炎症などの具体的な分野のあらゆる領域の生物医薬の半減期、有効性および/または安全性を向上させるために使用され得る。
標的分子内への非天然アミノ酸および/または化学物質部分の組込みの確認方法は、当該技術分野でよく知られており、とりわけ、本明細書に記載に記載した。
例えば、1つ以上の化学物質部分の組込みの試験様式の一例としては、フローサイトメトリー、ノザンブロット、ウエスタンブロット、PCR、RNAマイクロシークエンシング、レポーターアッセイ、FLAGエピトープ、コンジュゲート分子(ストレプトアビジンなど)への結合、放射能標識検出、比色定量アッセイ、RNAse保護アッセイ、質量分析法(例えば、MALDIおよびMALDI−TOF)、NMR、IR、ELISA、蛍光顕微鏡検査、ならびにこれらまたは他の当該技術分野で知られた手法の任意の組合せが挙げられる。
分子のグリコシル化
本発明はまた、糖部分とポリペプチドを含む糖タンパク質を提供する。特定のある実施形態において、本発明の糖タンパク質では、糖部分がポリペプチドに、ポリペプチド内に存在する非天然アミノ酸に結合された第1の反応基と、糖部分に結合された第2の反応基との求核性反応の反応生成物によって結合される。特定のある実施形態において、第1の反応基は求電子性部分(例えば、ケト部分、アルデヒド部分など)であり、第2の反応基は求核性部分である。
多種多様な適当な反応基は当業者には知られている。かかる適当な反応基としては、例えば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸基、カルボニル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、エステル、エーテル(例えば、チオエーテル)、アミド、アミン、ニトリル、ビニル、スルフィド、スルホニル、ホスホリル、または同様に化学反応性の基が挙げられ得る。さらなる適当な反応基としては、限定されないが、マレイミド、N ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトリロ三酢酸、活性化ヒドロキシル、ハロアセチル(例えば、ブロモアセチル、ヨードアセチル)、活性化カルボキシル、ヒドラジド、エポキシ、アジリジン、塩化スルホニル、トリフルオロメチルジアジリジン、ピリジルジスルフィド、N−アシル−イミダゾール、イミダゾールカルバメート、ビニルスルホン、スクシンイミジルカーボネート、アリールアジド、無水物、ジアゾ酢酸基、ベンゾフェノン、イソチオシアネート、イソシアネート、イミドエステル、フルオロベンゼン、ビオチンおよびアビジンが挙げられる。
一部のある実施形態において、反応基の1つは求電子性部分であり、第2の反応基は求核性部分である。求核性部分または求電子性部分のいずれかが非天然アミノ酸の側鎖に結合され得る。次いで、対応する基が糖部分に結合される。
求核性部分と反応して共有結合を形成する好適な求電子性部分は当業者に知られている。特定のある実施形態において、かかる求電子性部分としては、限定されないが、例えば、カルボニル基、スルホニル基、アルデヒド基、ケトン基、ヒンダードエステル基、チオエステル基、安定なイミン基、エポキシド基、アジリジン基などが挙げられる。
求電子性部分と反応し得る好適な求核性部分は当業者にわかる。特定のある実施形態において、かかる求核体としては、例えば、脂肪族または芳香族アミン、例えば、エチレンジアミンなどが挙げられる。特定のある実施形態において、求核性部分としては、限定されないが、例えば、−NR1−NH(ヒドラジド)、−NR1(C=O)NR2NH(セミカルバジド)、−NR1(C=S)NR2NH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NR1NH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NR1NH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NR1NH(スルホニルヒドラジド)、−NR1NR2(C=O)NR3NH(カルバジド)、NR1NR2(C=S)NR3NH(チオカルバジド)、−O−NH(ヒドロキシルアミン)など(式中、各R1、R2およびR3は、独立して、Hまたは1〜6個の炭素を有するアルキル、好ましくはHである)が挙げられる。特定のある実施形態において、反応基は、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、カルボヒドラジド、スルホニルヒドラジドなどである。
求核体と求電子性部分との反応の生成物には、典型的には、最初に求核性部分に存在していた原子が組み鋳込まれる。アルデヒドまたはケトンを求核性部分と反応させることにより得られる典型的な結合としては、使用される求核性部分および求核性部分と反応させる求電子性部分(例えば、アルデヒド、ケトンなど)に応じて、オキシム、アミド、ヒドラゾン、還元ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾンなどの反応生成物、または同様の官能性部分が挙げられる。カルボン酸との連結部は、典型的には、カルボヒドラジドまたはヒドロキサム酸と称される。スルホン酸との連結部は、典型的には、スルホニルヒドラジドまたはN−スルホニルヒドロキシルアミンと称される。得られる結合は、その後、化学的還元によって安定化され得る。
求核性部分と反応して共有結合を形成する好適な求電子性部分は当業者に知られている。特定のある実施形態において、かかる求電子性部分としては、限定されないが、例えば、カルボニル基、スルホニル基、アルデヒド基、ケトン基、ヒンダードエステル基、チオエステル基、安定なイミン基、エポキシド基、アジリジン基などが挙げられる。
求電子性部分と反応し得る好適な求核性部分は当業者にわかる。特定のある実施形態において、かかる求核体としては、例えば、脂肪族または芳香族アミン、例えば、エチレンジアミンなどが挙げられる。特定のある実施形態において、求核性部分としては、限定されないが、例えば、−NR1−NH(ヒドラジド)、−NR1(C=O)NR2NH(セミカルバジド)、−NR1(C=S)NR2NH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NR1NH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NR1NH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NR1NH(スルホニルヒドラジド)、−NR1NR2(C=O)NR3NH(カルバジド)、NR1NR2(C=S)NR3NH(チオカルバジド)、−O−NH(ヒドロキシルアミン)など(式中、各R1、R2およびR3は、独立して、Hまたは1〜6個の炭素を有するアルキル、好ましくはHである)が挙げられる。特定のある実施形態において、反応基は、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、カルボヒドラジド、スルホニルヒドラジドなどである。
求核体と求電子性部分との反応の生成物には、典型的には、最初に求核性部分に存在していた原子が組み鋳込まれる。アルデヒドまたはケトンを求核性部分と反応させることにより得られる典型的な結合としては、使用される求核性部分および求核性部分と反応させる求電子性部分(例えば、アルデヒド、ケトンなど)に応じて、オキシム、アミド、ヒドラゾン、還元ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾンなどの反応生成物、または同様の官能性部分が挙げられる。カルボン酸との連結部は、典型的には、カルボヒドラジドまたはヒドロキサム酸と称される。スルホン酸との連結部は、典型的には、スルホニルヒドラジドまたはN−スルホニルヒドロキシルアミンと称される。得られる結合は、その後、化学的還元によって安定化され得る。
本発明の他の態様には、糖部分を含む非天然アミノ酸をタンパク質内に組み込むことによる糖タンパク質の合成方法が包含される。該方法によって作製される糖タンパク質もまた本発明の特徴である。特定のある実施形態において、組み込み工程には、変異型tRNA/変異型アミノアシル−tRNAシンテターゼ(M−tRNA/M−RS)対の使用が含まれ、ここで、M−tRNAは縮重コドンを認識し、糖部分を含む非天然アミノ酸(例えば、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−トレオニン、α−GalNAc−L−トレオニンなど)をタンパク質内に縮重コドンに応答して組み込み、M−RSは、M−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する。一実施形態において、組み込み工程は、インビボで行なわれる。
このような方法は、さらに、糖部分を、グリコシルトランスフェラーゼ、糖供与部分、およびグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要とされる他の反応体と、糖が糖供与部分から糖部分に転移されるのに充分な時間かつ適切な条件下で接触させることを伴うものであり得る。特定のある実施形態において、該方法は、さらに、グリコシルトランスフェラーゼ反応の生成物を、少なくとも第2のグリコシルトランスフェラーゼおよび第2の糖供与部分と接触させることを含むものであり得る。換言すると、本発明は、アミノ酸連結糖部分または糖部分を含む非天然アミノ酸がさらにグリコシル化される方法を提供する。このようなグリコシル化工程は、好ましくは(必ずしもそうでなくてよいが)、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、または酵素当業者にわかる他のものを用いて酵素的に行なわれる。一部のある実施形態では、複数の酵素的工程が、2種類以上の異なるグリコシルトランスフェラーゼを含む単一の反応混合物において行なわれる。例えば、ガラクトシル化およびシアリル化工程は、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼの両方を反応混合物中に含めることにより、同時に行なわれ得る。
グリコシルトランスフェラーゼ反応を伴う酵素的糖類の合成では、本発明の組換え細胞は、任意選択で、グリコシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの異種遺伝子を含むものである。多くのグリコシルトランスフェラーゼが知られており、ポリヌクレオチド配列も知られている。例えば、「The WWW Guide To Cloned Glycosyl trasnferases」(ワールドワイドウェブにおいて入手可能)を参照のこと。また、グリコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列、および該アミノ酸配列が推定され得るグリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、種々の公に利用可能なデータベース、例えば、GenBank、Swiss−Prot、EMBLなどを見るとよい。
特定のある実施形態において、本発明のグリコシルトランスフェラーゼとしては、限定されないが、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼなどが挙げられる。好適なグリコシルトランスフェラーゼとしては、真核生物または原核生物から得られるものが挙げられる。
グリコシルトランスフェラーゼのアクセプターは、本発明の方法によって修飾される糖タンパク質上に存在している。好適なアクセプターとしては、例えば、ガラクトシルアクセプター、例えば、Galβ1,4GalNAc−;Galβ1,3GalNAc−;ラクト−N−テトラオース−;Galβ1,3GlcNAc−;Galβ1,4GlcNAc−;Galβ1,3Ara−;Galβ1,6GlcNAc−;およびGalβ1,4Glc−(ラクトース)などが挙げられる。他のアクセプターは当業者に知られている(例えば、Paulsonら.,J.Biol.Chem.253:5617−5624,1978参照のこと)。典型的には、アクセプターは、糖タンパク質に結合される糖部分鎖の一部を構成する。
一実施形態において、糖部分は末端GlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼであり、別の実施形態では、糖部分は末端GlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β1−4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。さらなる糖が付加されてもよい。
一実施形態において、糖部分は末端GlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。別の実施形態において、糖部分は末端GlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β1−4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。さらなる糖が付加されてもよい。
一実施形態において、糖部分は末端GlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。
一実施形態において、糖部分は末端のGlcNAcを含むものであり、糖供与部分はUDP−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼは、β1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。
任意選択で、該方法は、さらに、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ反応の生成物を、β1−4マンノシルトランスフェラーゼおよびGDP−マンノースと接触させ、Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成することを含むものであり得る。任意選択で、該方法は、さらに、Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−3マンノシルトランスフェラーゼおよびGDP−マンノースと接触させ、Manα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成することを含むものであり得る。任意選択で、該方法は、さらに、Manα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−6 マンノシルトランスフェラーゼおよびGDP−マンノースと接触させ、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成することを含むものであり得る。任意選択で、該方法は、さらに、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼおよびUDP−GlcNAcと接触させ、Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成することを含むものであり得る。任意選択で、該方法は、さらに、Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼおよびUDP−GlcNAcと接触させ、GlcNAcβ1−2Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成することを含むものであり得る。
第1の反応性基を含む非天然アミノ酸をタンパク質内に組み込む工程は、一部のある実施形態において、変異型tRNA/変異型アミノアシル−tRNAシンテターゼ(M−tRNA/M−RS)対の使用を含み、ここで、M−tRNAは野生型tRNAの縮重コドンを優先的に認識し、非天然アミノ酸をタンパク質内に縮重コドンに応答して組み込み、M−RSは、M−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する。一部のある実施形態において、非天然アミノ酸はポリペプチド内にインビボで組み込まれる。
本発明はまた、糖部分とポリペプチドを含む糖タンパク質を提供する。特定のある実施形態において、本発明の糖タンパク質では、糖部分がポリペプチドに、ポリペプチド内に存在する非天然アミノ酸に結合された第1の反応基と、糖部分に結合された第2の反応基との求核性反応の反応生成物によって結合される。特定のある実施形態において、第1の反応基は求電子性部分(例えば、ケト部分、アルデヒド部分など)であり、第2の反応基は求核性部分である。
多種多様な適当な反応基が当業者には知られている。かかる適当な反応基としては、例えば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸基、カルボニル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、エステル、エーテル(例えば、チオエーテル)、アミド、アミン、ニトリル、ビニル、スルフィド、スルホニル、ホスホリル、または同様に化学反応性の基が挙げられ得る。さらなる適当な反応基としては、限定されないが、マレイミド、Nヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトリロ三酢酸、活性化ヒドロキシル、ハロアセチル(例えば、ブロモアセチル、ヨードアセチル)、活性化カルボキシル、ヒドラジド、エポキシ、アジリジン、塩化スルホニル、トリフルオロメチルジアジリジン、ピリジルジスルフィド、N−アシル−イミダゾール、イミダゾールカルバメート、ビニルスルホン、スクシンイミジルカーボネート、アリールアジド、無水物、ジアゾ酢酸基、ベンゾフェノン、イソチオシアネート、イソシアネート、イミドエステル、フルオロベンゼン、ビオチンおよびアビジンが挙げられる。
グリコシル化反応には、適切なグリコシルトランスフェラーゼとアクセプターに加え、グリコシルトランスフェラーゼの糖供与体としての機能を果たす活性化ヌクレオチド糖が含まれる。また、該反応には、グリコシルトランスフェラーゼ活性を助長する他の成分が含まれる。このような成分としては、二価カチオン(例えば、Mg2+またはMn2+)、ATP再生に必要な物質、リン酸イオンおよび有機溶媒が挙げられ得る。該方法に使用される種々の反応体の濃度または量は、数多くの因子、例えば、反応条件(温度およびpH値など)、ならびにグリコシル化されるアクセプター糖類の選択および量に依存する。また、反応媒体は、必要な場合は、可溶化デタージェント(例えば、TritonまたはSDS)および有機溶媒(メタノールまたはエタノールなど)を含むものであり得る。
本発明の糖ポリペプチドまたはペグ化分子は、さまざまな新たなポリペプチド配列(例えば、糖もしくはPEG部分が連結され得るアミノ酸を含む非天然アミノ酸、または糖もしくはPEG部分を含む非天然アミノ酸(それぞれ、本明細書の翻訳系で合成されるタンパク質の場合、もしくは例えば、新規なシンテターゼ、標準アミノ酸の新規な配列の場合)を含む)を提供するため、該糖ポリペプチドは、新たな構造的特徴もまた提供し、これは、例えば免疫学的アッセイにおいて認識され得る。したがって、本発明の人工ポリペプチドと特異的免疫反応性である抗体および抗血清もまた提供される。換言すると、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗血清ならびにかかる抗血清に結合されるポリペプチドの作製は、本発明の特徴である。
グリコシル化によるタンパク質の翻訳後修飾は、タンパク質のフォールディングおよび安定性に影響を及ぼし、タンパク質の固有の活性を変更し、他の生体分子との相互作用をモジュレートすることがあり得る。例えば、Varki,Glycobiology 3:97−130,1993を参照のこと。天然の糖タンパク質は、多くの場合、多くの異なる糖形態の集団として存在し、このことにより、グリカン構造の解析、ならびにタンパク質構造および機能に対するグリコシル化効果の試験が困難となる。したがって、天然および非天然の均一にグリコシル化されたタンパク質の合成方法が、グリカンの機能の体系的な理解のため、および改善された糖タンパク質治療剤の開発のために必要である。
分子への化学物質部分の付加のための例示的な化学反応
数多くの化学物質部分が特定の分子に、当該技術分野で種々の知られた方法によって連結または結合され得る。実例の1つとして、アジド部分は、化学物質部分(PEGなどまたは本明細書に記載の他のもの)のコンジュゲーションに有用であり得る。アジド部分は、反応性官能基として供され、ほとんどの天然に存在する化合物には存在しない(したがって、これは、天然に存在する化合物の天然アミノ酸と非反応性である)。また、アジドは、限られた数の反応パートナーとの選択的ライゲーションを行ない、アジドは小型で、分子の大きさを有意に改変することなく生物学的試料に導入され得る。
分子へのアジドの組込みまたは導入を可能にする反応の一例は、銅媒介性Huisgen[3+2]付加環化(Tornoeら,J.Org.Chem.67:3057,2002;Rostovtsevら,Angew.Chem.,Int.Ed.41:596,2002;およびWangら,J.Am.Chem.Soc.125:3192,2003,Speersら,J.Am.Chem.Soc,2003,125,4686;これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)のアジドであり、アルキンは、タンパク質に見られるすべての官能基と非反応性であり、安定なトリアゾール結合を形成し、この反応は、タンパク質の選択的PEG化に使用され得る。銅触媒は、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンまたはアスコルビン酸塩と合わせた高純度CuBr、CuSO、空気曝露を伴う銅ワイヤ、または任意の他の供給源によって提供され得る。該反応は、リガンドの添加(バソフェナントロリンジスルホン酸、トリス−(トリアゾリル)アミン、もしくは他のトリアゾールもしくはホスフィンリガンドなど)、またはパラジウム触媒の添加によって加速され得る。任意選択で、酸素は、収率向上のために、反応物から排除され得る。例えば、Deitersら(Bioorg.Med.Chem.Lett.14(23):5743−5745,2004)には、酵母におけるタンパク質内へのパラ−アジドフェニルアラニンの部位特異的組込みに基づく一般的に適用可能なPEG化方法論が報告されている。アジド基は、アルキン誘導体化PEG試薬を用いた穏やかな[3+2]付加環化反応において使用された、ペグ化タンパク質が選択的に得られた。また、Kiickらには、シュタウディンガーライゲーションによる化学的選択的修飾のための組換えタンパク質内へのアジドの組込みが報告されており、これは、銅触媒を必要としないが、代わりに、アジドとホスファンとの反応を利用してホスファ−アザ−イリドを形成させ、次いで、これを、アシル基に捕捉させて安定なアミド結合の形成を得る。
本発明の他の態様において、非天然アミノ酸は、ハロゲン化アリールまたはビニル基(例えば、パラ−ブロモフェニルアラニンまたはパラ−ヨードフェニルアラニン)を含むものであり得る。クロスカップリング反応、例えば、PEG−フェニルボロン酸を用いるパラジウム触媒型鈴木反応、または本明細書に記載の他の反応を行ない、化学物質部分(PEGなど)と該分子との間に炭素−炭素結合が得られ得る。化学物質部分を分子(例えば、タンパク質)コンジュゲートさせるために従来使用されているいくつかの一般的な手順でもまた、天然に存在するアミノ酸に存在する官能基(例えば、(リシンのεアミノ基またはシステイン残基のチオール基など)を用いて反応を行なう。したがって、非特異的反応により、標的タンパク質のアミノ酸配列に応じて、タンパク質内の異なる場所で1つ以上の化学物質部分にコンジュゲートされたタンパク質の多くの異性体を含む最終タンパク質調製物がもたらされる。
標的分子内の特定の場所における非天然アミノ酸の使用により、PEG化などの化学的修飾が該特定の部位で行なわれることがが可能になる。本明細書に開示しているように、典型的には、分子修飾スキームでは、アミノ酸側鎖の化学反応基を利用して、化学物質部分を標的分子に付加する。特別な一例では、ペグ化ヒトインターフェロン−α−2Bタンパク質産物(PEG−イントロン)は、14個までの異なる修飾位置をもたらし、例えば、分子は多数のPEGが結合される。例えば、PEG−イントロンにより、PEG部分がリシン、チロシン、ヒスチジン、セリンおよびシステイン残基に存在するモノペグ化位置異性体がもたらされる。異性体の混合物であるタンパク質産物は、化学物質部分が結合されている場所が無数にあるため、およびすべての位置異性体が活性であるわけではないか、または活性が低下している場合があり得るため、活性が低い。
例えば、PEG−イントロンは、非修飾インターフェロン−αタンパク質の28%の抗ウイルス活性を有し、個々の異性体種では6〜37%の範囲である。また、製造コストは、望ましくない種の画分の分離除去および変動性の修飾タンパク質バッチのさらなる処理の必要性のため、増大する。したがって、当該技術分野において、一貫して修飾される化学物質部分(例えば、PEG)を有するタンパク質の作製の必要性が存在する。
化学物質部分の結合場所を制御するための一部手法は当該技術分野で知られており、例えば、反応混合物のpHの調整、化学物質部分コンジュゲーション中の一部のアミノ酸残基に対する保護基の使用、特定のタンパク質領域へのより良好な構造的到達を可能にするためのタンパク質のフォールディング状態の改変、および他の望ましくない官能基との反応が起こりにくくなるような活性化化学物質部分種の化学反応基の改変などであるが、これらの手法ではいずれも、望ましくないアミノ酸残基との副反応は排除されない。既知手法の一例は、望ましくないアミノ酸残基との副反応を、化学物質部分コンジュゲーション中、一部のアミノ酸残基に対して保護基を使用した後、保護基を修飾されたタンパク質から除去することにより回避するものである。しかしながら、この手法は、修飾タンパク質産物の製造には煩雑であり、かつ高価で非実用的である。
全体的な修飾タンパク質産物のばらつきを低減し、活性または他の所望の目的を増大させるため、付加される化学物質部分が分子内の目的の場所に特異的に指向され得る分子(例えば、治療用分子)を合成することが望ましい。例えば、化学物質部分がタンパク質の活性な結合部位近傍に存在する場合、該部分は、インビボでタンパク質の所望の相互作用を立体的に妨害し得、化学物質部分が抗原性エピトープの近傍に存在する場合、インビボで分子の抗原性が低減され得る。同様に、化学物質部分が活性部位から遠くに存在する場合、分子の活性を有意に低下させることなく、分子は、インビボで腎臓への取込みまたはクリアランスから立体的に保護され得る。
本発明の特定のある実施形態の利点の1つに、PEG化が所望される特定の位置で非天然アミノ酸を利用されることが挙げられる。特定のある実施形態において、非天然アミノ酸側鎖に特異的なPEG化化学反応基が使用され得、これにより、PEGは、標的分子の所望の場所のみに付加されることになる。この化学反応の効率は、交差反応性または他の望ましくない副反応がないため、従来のPEG化方法よりもずっと高い。例えば、アジドとアルキンとの銅触媒型付加環化は、80%までまたはそれ以上効率であり得る。かかる化学反応基は、該分子の他の成分と反応しない。他の非反応性の化学反応PEG化スキームも同様に利用され得る。
本明細書に記載の化学反応の特定のある実施形態は、非天然アミノ酸残基の固有の官能基とのみ反応する反応を提供するものであるため、該反応により、天然に存在するアミノ酸が非修飾状態に維持することが可能である。例えば、パラジウム触媒型クロスカップリング反応は、天然に存在するアミノ酸残基と広く非反応性であり、したがって、分子内の他の箇所での望ましくないコンジュゲーションのない、化学物質部分と分子との部位特異的な共有結合が可能になる。別の利点は、具体的に開示したこのような化学反応が、タンパク質を損傷しない穏やかな水性条件で行なわれ得ることである。また、コンジュゲーション化学反応は、逆反応が起こり得、そのため、反応基は、標的非天然アミノ酸ではなく活性化された化学物質部分上に存在する。このような状況下では、活性化された化学物質部分は、非天然アミノ酸(1つまたは複数)(例えば、ホモプロパルギルグリシンまたはホモアリルグリシンなど)と反応し得る。
特定のある他の実施形態において、本明細書に記載の手法のいずれかによって多数の異なる非天然アミノ酸残基が標的分子内に組み込まれ得、非天然アミノ酸残基の1つ以上が化学物質部分にコンジュゲートされ得る。
他の多数のよく知られた化学反応(その一部を本明細書に記載している)が、タンパク質または他の分子への化学物質部分の結合に利用され得る。反応基は、標的分子、または標的分子へのコンジュゲーションに選択された化学物質部分のいずれかに存在し得る。鈴木カップリングは、有機ホウ酸(organobornic acid)とアリールまたはビニルハライド、疑似ハライド(pseudo−halide)(例えば、トリフラート)、アルキル、アルケニルおよび/またはアルキニルとのパラジウム触媒型クロスカップリングである。また、トリフルオロホウ酸カリウムと有機ボランまたはボロン酸エステルが、ホウ酸塩の代わりに使用され得る。さらなる詳細については、例えば、Baxterら,J.Am.Chem.Soc,2003,125,7198−7199;Wuら,J.Org.Chem.,2003,68,670−673 and Molanderら,J.Org.Chem.,2002,67,8424−8429を参照のこと。
また、檜山カップリング反応も、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る。檜山カップリングは、当該技術分野でよく知られており、アリール、アルケニルもしくはアルキルハライドまたは疑似ハライドとオルガノシラン間のパラジウム触媒型C−C結合形成を伴う。この反応の成功は、Si−C結合の分極に依存し、したがって、塩基またはフッ化物イオン(TASF,TBAF)によるシランの活性化により、5価のケイ素化合物がもたらされる。別のアプローチとしては、シラシクロブタンの使用が挙げられる。さらなる詳細については、例えば、Leeら,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,5616−5617;Denmarkら,J.Am.Chem.Soc,1999,121,5821−5822;Liら,Synthesis,2005,3039−3044;Murataら,Synthesis,2001,2231−2233;Lee,Org.Lett,2000,2053−2055を参照のこと。
また、熊田カップリング反応も、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る。熊田カップリング反応は、グリニャール試薬と、アルキル、ビニルまたはアリールハライドとのパラジウムまたはニッケル触媒型クロスカップリング反応である。さらなる詳細については、例えば、Frischら,Angew.Chem.,2002,114,4218−4221を参照のこと。また、根岸カップリング反応も、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る。根岸カップリングは、有機亜鉛化合物と種々のハライド(アリール、ビニル、ベンジルまたはアリル)とのニッケルまたはパラジウム触媒型カップリングである。さらなる詳細については、例えば、Hadeiら,Org.Lett,2005,7,3805−3807;Huoら,Org.Lett.,2003,5,423−425;Lutzenら,Eur.J.Org.Chem.,2002,2292−2297を参照のこと。また、Stifleカップリングも、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る。Stilleカップリング反応では、スタンナンとハライドまたは疑似ハライドとの間にC−C結合を形成させる。さらなる詳細については、例えば、Meeら,Angew.Chem.,2004,116,1152−1156;Huangら,Tetrahedron,2003,59,3635−3641;Del Valleら,J.Org.Chem.,1990,55,3019−3023;Lereboursら,J.Org.Chem.2005,70,8601−8604を参照のこと。
また、ヘック反応も、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る。ヘック反応は、塩基のの存在下におけるアリールハライドまたはビニルハライドと活性化アルケンとのパラジウム触媒型C−Cカップリングである。さらなる詳細については、例えば、Chandrasekharら,Org.Lett,2002,4,4399−4401;Masllorensら,Org.Lett.,2003,5,1559−1561;Battistuzziら,Org.Lett.,2003,5,777−780;Moら,J.Am.Chem.Soc,2005,127,751−760;Hansenら,Org.Lett.,2005,7,5585−5587を参照のこと。福山カップリングは、タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る別の反応である。福山カップリングは、有機亜鉛化合物とチオエステルのパラジウム触媒型カップリングであり、ケトンが形成される。チオエステルの酸化的付加の後、亜鉛化合物から金属交換反応を行なう。還元的除去により、カップリング生成物が得られる。さらなる詳細については、例えば、Tokuyamaら,J.Braz.Chem.Soc,1998,9,381−387を参照のこと。タンパク質などの分子への化学物質部分の連結に使用され得る別の反応は、薗頭カップリングである。薗頭カップリング反応では、パラジウム触媒、銅(I)補助触媒およびアミン塩基を使用し、末端アルキンがアリールまたはビニルハライドによりカップリングされる。さらなる詳細については、例えば、Liangら,J.Org.Chem.,2006,71,379−381;Gholapら,J.Org.Chem.,2005,70,4869−4872;Liangら,J.Org.Chem.2005,70,391−393;Elangovanら,Org.Lett.,2003,5,1841−1844;Bateyら,Org.Lett,2002,1411−1414を参照のこと。
また、Cadiot−Chodkiewiczカップリングも、タンパク質または他の分子への化学物質部分の連結に使用され得る。この反応は、末端アルキンおよびアルキニルハライドの銅(I)触媒型カップリングであり、非対称ビスアセチレンの入手をもたらす。さらなる詳細は、例えば、Marinoら,J.Org.Chem.,2002,67,6841−6844を見るとよい。タンパク質または他の分子への化学物質部分の連結に使用され得る別の反応としては、エリントン反応が挙げられる。この反応は、末端アルキンの酸化的カップリングであり、末端アルキンと化学量論量の銅(I)塩含有ピリジンとの反応により、対称または環状ビスアセチレンの合成を可能にする。また、グレーサーカップリングは、末端アルキンのカップリング反応による対称または環状ビスアセチレンの合成である。この反応は、機構的にはエリントン反応と同様であり、違いは、銅(I)触媒を、反応媒体中の酸素により触媒サイクルにおいて再酸化させて使用することである。ヘイカップリングは、銅−TMEDA複合体を利用する銅触媒型反応である。エリントン、グレーサーまたはヘイ反応に関するさらなる詳細については、例えば、Gibtnerら,Chem.Euro.J.,2002,68,408−432を参照のこと。引用したこれらの各参考文献は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
医薬組成物
本発明は、さらに、医薬組成物および使用方法に関する。本発明の医薬組成物は、医薬形態の、すなわち、医薬用の塩、誘導体、担体などでの修飾標的分子を含む。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の方法、または当該技術分野で知られた他の方法によって作製され得る。少なくとも1つの実施形態において、医薬組成物は、タンパク質安定性、タンパク質活性、タンパク質コンホメーション、タンパク質基質特異性、タンパク質−標的結合親和性、抗原結合能、熱安定性、タンパク質の少なくとも1種類のプロテアーゼに対する抵抗性、タンパク質の少なくとも1つの非水性環境に対する耐容性、前記タンパク質に対する患者の耐容性、患者における前記タンパク質の有効性の増大、患者における前記タンパク質またはタンパク質産物の送達の改善、および任意のその組合せからなる群より選択される少なくとも1つの改善された特性を示す。
また、本発明は、本明細書に記載の任意の様式によって本発明の組成物または薬剤を投与することにより、疾患または障害を治療的または予防的に処置または診断する方法に関する。かかる組成物は、インビトロ、インビボ、エキソビボまたは任意のその組合せで投与され得る。
例えば、組成物がエキソビボで投与される場合、細胞または細胞の集団(例えば、組織もしくは器官)を被検体から得、疾患、障害または病状の処置に予防的もしくは治療的に有効な、または診断上有効な量の本発明の組成物と接触させ得る。本発明の組成物と接触させた後、細胞、組織または器官は、次いで、被検体内の同じまたは別の部位に戻され得る。
組成物がインビボで投与される場合、これは、直接または間接的に、被検体の細胞、組織および/または器官に投与され得る。例えば、特定の細胞または細胞群が、医薬用薬剤または薬物投与の標的となり得る。本明細書に記載の任意のかかる投与様式が、かかるインビボ送達に利用され得る。
投与されたタンパク質医薬の大部分は、速やかに体内からクリアランスされ、高頻度の、多くの場合は毎日の注射が必要となる。したがって、体内で長期間、有効レベルが維持され得、患者に大きな治療有益性をもたらす長期作用性のタンパク質治療剤の開発には、相当が関心が寄せられている。例えば、PEG化に基づく薬物送達手法は、タンパク質半減期を増大させるための方法である。
1つより多くの反応性の部位がタンパク質内に存在する場合(例えば、多数のアミノ基もしくはチオール基)または反応性の求電子体が使用される場合、1つまたは多数のPEG分子の非選択的な結合が起こり得、分離が困難な不均一な混合物の生成がもたらされ得る。PEG鎖の結合における選択性および位置制御の欠如により、生物学的活性の有意な低下、およびおそらくコンジュゲートタンパク質の免疫原性の増強がもたらされ得る。アミン反応性PEGでのタンパク質の修飾により、典型的には、生物学的活性に重要なタンパク質領域に存在するリシン残基の修飾により生物学的活性の劇的な低下がもたらされる。特定のある状況では、成長ホルモンの生物学的活性は400倍以上低下し得る。例えば、GCSFの生物学的活性は、該タンパク質を慣用的なアミン−PEG化手法を用いて修飾した場合、1000倍低下する(Clarkら、J.Biol.Chem.271:21969,1996;Bowenら,Exp.Hematol.27,425,1999)。したがって、タンパク質などの分子へのPEG鎖の完全に部位特異的な不可逆結合を可能にする方法の必要性が存在する。
長期作用性の「患者フレンドリー」なヒトタンパク質医薬を創製するために、例えば、医薬用薬物に非天然アミノ酸および/または化学物質部分を組み込むことにより、操作された医薬によって、より長い半減期および/または持続性もしくはさらに向上した生物学的活性が得られ得るような高度なタンパク質操作手法を使用することは好都合であり得る。
多剤免疫コンジュゲート
免疫コンジュゲーションは、抗体の治療有効性を増大させるために使用され得る。しかしながら、現行の手法は、抗体への単一の型の薬物の結合のみを可能にするものである。これは、主に、天然アミノ酸の組に利用可能な化学反応基の範囲の制限のためであり、免疫コンジュゲーションプロセスに対する正確な制御が可能でない。
現行の手法を用いて抗体に多種類の薬物を結合させる試みでは、分子間ごとの有意な不均一性およびロットごとの非一貫性がもたらされる。非天然アミノ酸を使用すると、薬物を部位特異的に結合させるための多種多様な新たな化学反応基がもたらされ得、したがって、腫瘍標的化多剤レジメンを癌患者に提供することが可能になる。例えば、本方法は、不均一性に関連する課題を解決するために、単一の型の薬物を抗体および/または抗体断片に部位特異的に結合させること、あるいは、多数の型の薬物を抗体および/または抗体断片に、化学量論的に制御された様式で部位特異的に結合させることのいずれかにより免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。換言すると、本発明の方法は、特定の標的部位に同時に特異的に送達され得る薬物の組合せを担持する新規な類型の免疫コンジュゲートであって、医薬内の治療用分子が高度に均一であり、ロット間に一貫性がある免疫コンジュゲートを設計するために使用され得る。かかる免疫コンジュゲートの主な利点としては、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の処置および/または死滅において相乗的に作用する多種類の薬物の同時標的化送達;細胞周期の異なる期において作用し、特定の医薬用薬物または効果に曝露される標的細胞の数を増大させる薬物の併用;標的細胞への薬理学的薬剤の集中送達、したがって、医薬の有益性または効果の最大化;非標的細胞、組織または器官の曝露の最小化;均一な最終生成物に負荷される薬物負荷量および薬物比率に対する正確な制御が挙げられる。
特別な一例では、特定のサイトカイン(例えば、インターフェロン−βなど)により腫瘍形成が阻害され得、確立された腫瘍の後退が引き起こされる、および/またはある種の癌の再発が抑制される。例えば、Qinら P.N.A.S.,V.95,No.24,pp.14411−14416,(1998);Ikedaら,HepatoJogy,32(2):228−32,(2000)(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。引用した参考文献に開示されているように、インターフェロンβは、ほとんどのヒト腫瘍細胞に対してインビトロで強力な抗増殖活性を有するが、抗腫瘍効果を得るためには、高濃度のサイトカインに依存する。かかる高濃度は、急速なタンパク質クリアランスおよび全身毒性のため、非経口タンパク質投与には利用することができない。したがって、被検体または患者において、より高い効力および持続的なインビボ保持を示す新規な修飾インターフェロンβが当該技術分野において必要とされている。本発明の一実施形態では、この必要性を満たす新規な修飾インターフェロンβを提供する。
したがって、本発明は、標的(例えば、標的細胞)に特異的な抗体(またはその機能性断片)、特定の所定の位置に2つ以上の治療用分子がコンジュゲートされた抗体(またはその断片もしくは機能性同等物)(この場合、各位置は非天然アミノ酸を含む)を含む免疫コンジュゲートを提供する。特定のある実施形態において、抗体断片は、F(ab’)、Fab’、Fab、ScFvまたはFv断片である。
固相への分子の固定化
本発明の別の態様は、1つ以上の標的タンパク質などの分子、ペプチド、ポリペプチド、生体ポリマーまたは他の標的分子を、固相支持体、例えば、アレイ、精製カラム、顕微鏡スライド、チューブ、マイクロ流体デバイス、クロマトグラフィーカラムまたは任意の他の表面に固定化するための方法を提供し、該方法は、(1)1つ以上の非天然アミノ酸を、ポリペプチド(1つまたは複数)の指定の位置(1つまたは複数)に、任意の適当な主題の方法を用いて組み込むこと;(2)該ポリペプチド(1つまたは複数)を固相支持体と接触させ、該ポリペプチド(1つまたは複数)を非天然アミノ酸(1つまたは複数)によってコンジュゲートさせることを含む。
特定のある実施形態において、該1つ以上の標的分子は固相支持体に、一貫した配向で結合させる。特定のある実施形態では、各標的分子の活性部位(1つまたは複数)は、潜在的に相互作用性の標的分子に到達可能である。特定のある実施形態では、目的の標的分子(または標的分子のライブラリー)を固相支持体に、生物学的または化学的リンカー(例えば、本明細書に開示した任意の化学物質部分)によって結合させる。
固相支持体には、任意の既知の固形または半固形物質、例えば、樹脂、ガラス、金属、シリコン、プラスチック、木材、鉱物、繊維または織物繊維およびこれらの任意の組合せが含まれ得る。また、固相または半固相支持体は、固相支持体への標的分子(1つまたは複数)の付着を促進するため、別の生体物質または化学物質でコーティングされたものであってもよい。あるいはまた、かかるコーティングは、特定の標的分子の選択的付着のため、または特定の標的分子が固相支持体に付着不可能にするためのものであり得る。
本発明の別の態様は、任意の適当な主題の方法によって作製される分子アレイを提供する。
少なくとも1つの実施形態において、本発明の標的分子は、標的標的分子(1つまたは複数)を選択するための生体物質または化学物質(例えば、相補的なアミノ酸タグ)が結合されたカラムの使用によって固定化される。したがって、該カラムにより、化学反応により、マーカーを含有する標的分子が選択的にが固定化される。少なくとも1つの実施形態において、生物学的または化学的マーカーは、化学的または生物学的切断によって(例えば、酵素による、もしくはタンパク質分解性の切断部位の使用により)。残部の標的分子から切断または分離され得る。
少なくとも1つの実施形態では、修飾標的分子内の1つ以上の非天然アミノ酸残基を使用し、標的分子の固定化および/または他のタンパク質からの精製の目的で、マトリックスまたは固相支持体上のタンパク質が捕捉され得る。少なくとも1つの実施形態において、その他のタンパク質には夾雑タンパク質が含まれる。少なくとも1つの実施形態において、混合標的分子の試料(これには、夾雑標的分子が含まれ得る)由来の修飾標的分子を固定化する方法は、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含む修飾標的分子をマトリックスに可逆的に結合させること、およびその後、試料中のその他の標的分子を除去したら、該標的分子をマトリックスから放出させることを含む(that includes)。
キット
本発明は、さらに、任意の本明細書に記載の組成物および/または方法に関するキットを提供する。本発明のキットは、標的分子を同定、修飾または改変する方法、ならびに修飾または改変された標的分子の少なくとも1つの特性を試験するためのアッセイを含み得る。
例えば、キットは、本明細書に記載の1つ以上の翻訳系(例えば、細胞)、1つ以上の非天然アミノ酸を、例えば、キットの成分を収容するための適切なパッケージング材料、容器、本明細書に記載の方法を実施するための指示資料などとともに含むものであり得る。同様に、翻訳系の産物(例えば、非天然アミノ酸を含むEPO類縁体などのタンパク質)がキット形態で、例えば、キットの成分を収容するための容器、本明細書に記載の方法を実施するための指示資料などとともに提供され得る。
本発明のキットは、デバイス、試薬、1つ以上の容器、または他の成分を含むものであり得る。また、本発明のキットは、装置、器具またはデバイス、例えば、コンピュータの使用を必要とするものであり得る。
例示的な一実施形態において、天然に存在するメチオニンアミノ酸残基は、アジド−メチオニンなどの非天然アミノ酸置き換えられる。アジドは、多目的な官能基であり、動物において非生物的であるとともに、酸化に抵抗性であり、相対的に水と非反応性であるため。反応速度論的に安定なアジドは、その固有エネルギー含量が大きいため、独自の反応性様式を示す傾向があるが、これは、アジドと官能性付与されたホスフィンとのシュタウディンガーライゲーション、およびアジドと活性化アルキンとの[3+2]付加環化などの反応の開発に利用された。アジドメチオニンを高度に効率的に標的分子に組み込むことができる栄養素要求性宿主細胞を利用することにより、非天然アミノ酸アジドメチオニンの組込みが行なわれる。
例えば、フェニルアラニン非天然アミノ酸が部位特異的にTTTコドンに組み込まれ得る栄養素要求性宿主細胞を使用すると、フェニルアラニン(TTC)の単一のコドンのみを用いて、標的分子の標的遺伝子配列が設計される。
精製を容易にするため、標的分子は、ポリアジドメチオニンタグを有するものであってもよく、これにより、標的分子がカラム共有結合により結合され得る速度が増大され得る。タグは、標的配列に直接連結させてもよく、あるいは、プロテアーゼ部位を有する標的遺伝子から分離し、それにより、ユーザーがアジドタグのない標的分子を精製するのを可能にしてもよい。
本明細書に記載のすべての実施形態は、1つ以上の他の実施形態との組み合わせが可能である(本発明の異なる態様に記載のものとですら可能である)ことが意図される。
一般的な手法
本発明に適用可能な分子生物学的手法、例えば、クローニング、変異、細胞培養などが記載された一般的な教科書としては、BergerおよびKimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(Berger);Sambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,2000(「Sambrook」)ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols、joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(2002年まで増刊)(「Ausubel」)(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。これらの教科書には、変異誘発、ベクター、プロモーター の使用、ならびに例えば、the generation of 末端枝変異型tRNA、末端枝変異型シンテターゼ、およびその対に関する多くの他の関連トピックスが記載されている。
種々の型の変異誘発が本発明において、例えば、新規なシンテターゼ(sythetase)またはtRNAを作製するために使用される。これらとしては、限定されないが、部位特異的、ランダム点変異誘発、相同組換え(DNAシャッフリング)、ウラシル含有鋳型を用いる変異誘発、オリゴヌクレオチド指向型変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA変異誘発、ギャップ含有二本鎖DNAを用いる変異誘発などが挙げられる。さらなる好適な方法としては、点ミスマッチ修復、修復欠陥宿主株を用いる変異誘発、制限選択および制限精製、欠失変異誘発、全遺伝子合成による変異誘発、二本鎖破断修復などが挙げられる。また、変異誘発も、化学的またはキメラ構築物を伴うものいずれも場合も、本発明に含まれる。一実施形態において、変異誘発は、天然に存在する標的分子または改変もしくは変異された天然に存在する標的分子の既知情報、例えば、配列、配列比較、物性、結晶構造などが指針とされ得る。
上記の教科書およびそれに示された実施例には、このような手順が記載されているとともに、以下の刊行物および参考文献:Sieberら,Nature Biotech.,19:456−460(2001);Lingら,Anal Biochem.254(2):157−178(1997);Daleら,Methods Mol.Biol.57:369−374(1996);I.A.Lorimer,I.Pastan,Nucleic Acids Res.23,3067−8(1995);W.P.C.Stemmer,Nature 370,389−91(1994);Arnold,Curr Opin.in Biotech.4:450−455(1993);Bassら,Science 242:240−245(1988);Fritzら,Nucl.Acids Res.16:6987− 6999(1988);Kramerら,Nucl.Acids Res.16:7207(1988);Sakamar and Khorana,Nucl.Acids Res.14:6361−6372(1988);Sayersら,Nucl.Acids Res.16:791−802(1988);Sayersら,Nucl.Acids Res.16:803−814(1988);Carter,Methods in Enzymol.154:382−403(1987);Kramer&Fritz Methods in Enzymol.154:350−367(1987);Kunkel,The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis,in Nucleic Acids&Molecular Biology(Eckstein,F.およびLilley,D.M.J.編,Springer Verlag,Berlin))(1987);Kunkelら,Methods in Enzymol.154,367−382(1987);Zoller&Smith,Methods in Enzymol.154:329−350(1987);Carter,Biochem.J.237:1−7(1986);Eghtedarzadeh&Henikoff,Nucl.Acids Res.14:5115(1986);Mandecki,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:7177−7181(1986);Nakamaye&Eckstein,Nucl.Acids Res.14:9679−9698(1986);Wellsら,Phil.Trans.R.Soc.Lond.A 317:415−423(1986);Botstein&Shortle,Science 229:1193−1201(1985);Carterら,Nucl.Acids Res.13:4431−4443(1985);Grundstromら,Nucl.Acids Res.13:3305−3316(1985);Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492(1985);Smith,Ann.Rev.Genet.19:423−462(1985);Taylorら,Nucl.Acids Res.13:8749−8764(1985);Taylorら,Nucl.Acids Res.13:8765−8787(1985);Wellsら,Gene 34:315−323(1985);Kramerら、Nucl.Acids Res.12:9441−9456(1984);Kramerら,Ce// 38:879−887(1984);Nambiarら,Science 223:1299−1301(1984);Zoller&Smith,Methods in Enzymol.100:468−500(1983);ならびにZoller&Smith,Nucl.Acids Res.10:6487−6500(1982)(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)が引用されている。上記の方法の多くのに関するさらなる詳細は、Methods in Enzymology 第154巻を見るのがよく、これにはまた、種々の変異誘発方法に伴うトラブルシューティング問題に有用な制御法が記載されている。
オリゴヌクレオチド、例えば、本発明の変異誘発(例えば、シンテターゼのライブラリーの変異、またはtRNAの改変)における使用のためのものは、典型的には、例えば、Beaucage and Caruthers,Tetrahedron Letts.22(20):1859−1862,(1981)に記載の固相ホスホルアミダイトトリエステル法に従って、例えば、自動合成装置(Needham−VanDevanterら,Nucleic Acids Res.,12:6159−6168(1984)に記載、またはTangおよびTirrell J.Am.Chem.Soc.(2001)123:11089−11090ならびにTangら Angew.Chem.Int.Ed.(2001)40:8に記載(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる))を用いて化学合成される。
また、本質的に任意の核酸が、任意のさまざまな市販供給元、例えば、The Midland Certified Reagent Company,The Great American Gene Company,ExpressGen Inc.,Operon Technologies Inc.(Alameda,Calif.)および多くの他の供給元から特注または標準注文できる。
また、本発明は、末端枝変異型tRNA/RS対による非天然アミノ酸のインビボ組込みのための宿主細胞および生物体に関する。宿主細胞は、本発明のベクター(これは、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る)で、遺伝子操作(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)される。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、コンジュゲートされたポリヌクレオチドの形態であり得る。ベクターは、細胞および/または微生物内に、標準的な方法、例えば、エレクトロポレーション、ウイルスベクターによる感染、小ビーズもしくは粒子のマトリックスまたは表面上いずれかでの該核酸を有する小粒子による高速バリスティック浸透によって導入される。
操作した宿主細胞は、例えば、スクリーニング工程、プロモーターの活性化または形質転換体の選択などの作業のために適宜改変された慣用的な栄養培地中で培養され得る。このような細胞は、任意選択で、トランスジェニック生物体内で培養され得る。
例えば、細胞の単離および培養(例えば、その後の核酸単離)に関する他の有用な参考文献としては、Freshney(1994)Culture of Animal Cells、a Manual of Basic Technique,第3版,Wiley−Liss,New Yorkおよびそこに引用された参考文献;Payneら(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley&Sons,Inc.New York,N.Y.;Gamborg and Phillips(編)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)and Atlas and Parks(編)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,Fla(これらはすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
細菌細胞に標的核酸を導入するいくつかのよく知られた方法が利用可能であり、これらの任意のものが本発明に使用され得る。これらとしては、DNA含有細菌プロトプラストとのレシピエント細胞の融合体、エレクトロポレーション、プロジェクタイル・ボンバードメント、およびウイルスベクターでの感染などが挙げられる。細菌細胞は、本発明のDNA構築物を含有するプラスミドの数を増幅させるために使用され得る。例えば、細菌は対数期まで培養し、細菌内のプラスミドは、当該技術分野で知られたさまざまな方法によって単離され得る(例えば、Sambrookを参照)。また、細菌からのプラスミドの精製のための多くのキットが市販されている(例えば、EasyPrepTM,FlexiPrepTM,ともにPharmacia Biotech製;StrataCleanTM,Stratagene製;およびQIAprepTM 、Qiagen製を参照のこと)。単離および精製されたプラスミドは、次いで、他のプラスミドの作製のためにさらに操作され、細胞をトランスフェクトするために使用されるか、または生物体への感染のため関連ベクター内に組み込まれる。
典型的なベクターには、転写および翻訳ターミネーター、転写および翻訳開始配列、ならびに特定の標的核酸の発現の調節に有用なプロモーターが含まれる。ベクターには、任意選択で、少なくとも1つの非依存性ターミネーター配列;真核生物、原核生物または両方におけるカセットの複製を可能にする配列(例えば、シャトルベクター)、ならびに原核生物系および真核生物系両方のための選択マーカーを含む遺伝子発現カセットが含まれる。ベクターは、原核生物、真核生物または両方における複製および組込みに適したものである(例えば、Giliman&Smith,Gene 8:81(1979);Robertsら,Nature,328:731(1987);Schneider,B.ら,Protein Expr.Purif.6435:10(1995)(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。さらに、クローニングに有用な細菌およびバクテリオファージのカタログは、例えば、ATCCにより、例えば、The ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriopharge(1992)Ghernaら(編)(ATCCにより出版)に示されている。また、配列決定、クローニングおよび分子生物学の他の態様のためのさらなる基本手順ならびに基礎となる理論的考慮事項は、Watsonら(1992)Recombinant DNA 第2版 Scientific American Books,NYを見るとよい。
非天然アミノ酸はタンパク質内に、種々の方法を用いて組み込まれ得る。例えば、一実施形態において、非天然アミノ酸が構造的/立体的に20種類の天然アミノ酸の1つと類似している場合、非天然アミノ酸は標的タンパク質内に、競合的生合成同化によって組み込まれ得る(例えば、Budisa 1995,Eur.J.Biochem 230:788−796;Deming 1997,J.Macromol.Sci.Pure Appl.Chem A34;2143−2150;Duewel 1997,Biochemistry 36:3404−3416;van HestおよびTirrell 1998,FEBS Lett 428(1−2):68−70;Sharmaら,2000,FEBS Lett 467(1):37−40(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)参照のこと)。
特定のある実施形態において、非天然アミノ酸の組込みを向上させるため、競合性の天然アミノ酸を選択的に枯渇させ得る。
別の実施形態において、非天然アミノ酸はタンパク質などの標的分子内に、それぞれ、アンバーコドンまたは4塩基コドンに応答するナンセンスサプレッサーまたはフレームシフトサプレッサーtRNAのいずれかを使用することにより組み込まれ得る(Bainら、J.Am.Chem.Soc.111:8013,1989;Norenら.,Science 244:182,1989;さらに、Protein Sci.7:419,1998;Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,100:56,2003;Hohsakaら、FEBS Lett.344:171:1994;KowalおよびOliver,Nucleic Acids Res.25:4685,1997(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。かかる方法により、非基準アミノ酸が通常野生型ペプチド合成を終結させるコドン位置(例えば、終止コドンまたはフレームシフト変異)に挿入される。このような方法は、新規なアミノ酸の単一部位挿入について充分研究されている。これらの方法は、中程度(20〜60%)の抑制効率が許容され得る場合、多重部位組込みに関して中程度に良好に研究しているものがあり得る(Andersonら、J.Am.Chem.Soc.124:9674,2002;Bainら、Nature 356:537,1992;Hohsakaら、Nucleic Acids Res.29:3646,2001(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
また別の実施形態において、効率的な多重部位組込みは、栄養素要求性大腸菌株における天然アミノ酸の置き換えにより、および穏やかな基質特異性もしくは減弱エディティング活性を有するアミノアシル−tRNAシンテターゼを使用することによりなされ得る(例えば、WilsonおよびHatfield,Biochem.Biophys.Acta 781:205,1984;KastおよびHennecke,J.Mol.Biol.222:99,1991;Ibbaら,Biochemistry 33:7107,1994;Sharma ら,FEBS Lett.467:37,2000;TangおよびTirrell,Biochemistry 41:10635,2002;Dattaら、J.Am.Chem.Soc.124:5652,2002;Doringら,Science 292:501,2001(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。この方法は、特に、非天然アミノ酸が天然アミノ酸の1つとコドンを「共有」できることが許容され得る場合、および意図していない部位における組込みによって標的分子の機能が実質的に損なわれない場合に有用であり得る。
以下の実施例は、本発明の限定ではなく、さらなる例示として示す。本発明出願全体において引用したすべての参考文献、特許および公開された特許出願、ならびに図面の教示は、引用により本明細書に組み込まれる。
(実施例1)(机上)
ペグ化GM−CSF、エリトロポイエチン(EPO)、ヒト成長ホルモン、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ウリカーゼ、第VII因子、ホリトロピン、G−CSFまたは他の標的分子の設計は、多工程プロセスを含むものであり得る。野生型配列が2つのメチオニンアミノ酸(アミノ末端に1つを含む)を含むEPOの場合、1つのメチオニンだけに置換が必要とされ得る。G−CSFの場合、野生型配列は、アルギニン残基を含まない。したがって、アルギニン残基は、分子内の任意の望ましい場所に導入され得、その後、非天然アミノ酸での置換または置き換えが行なわれる。同様に、ヒト成長ホルモンでは、野生型配列は、1つのトリプトファン残基を含むだけであり、フェニルアラニンヒドロキシラーゼは、3つのメチオニン残基および3つのトリプトファン残基を含むだけであり、ホリトロピンは5つのメチオニン残基を含むだけである。
任意選択の第1の工程では、既存の特定の標的野生型アミノ酸(例えば、メチオニン残基)が、他の天然に存在するアミノ酸残基に設計される。標的野生型アミノ酸と交換されるアミノ酸残基は、おそらく、分子の天然構造安定性および/または活性を支持しているものであり得る。次に、1つ以上の非天然アミノ酸の組込みのための特定のアミノ酸残基位置を選択する。非天然アミノ酸の組込みのために選択したアミノ酸残基位置は、任意選択の第1の工程で他の天然に存在するアミノ酸残基で置き換えられた同じアミノ酸残基であってもよく、変更されなかった天然に存在するアミノ酸残基であってもよく、なんら天然アミノ酸有効にコードしていない該ヌクレオチド配列内のコドン(例えば、終止コドン、4もしくは5塩基コドンまたはバイアスコドン)に対応するさらに他の位置であってもよい。非天然アミノ酸残基は、任意選択の第1の工程で置き換えられる特定のアミノ酸の対応する類縁体であってもよく、そうでなくてもよい。
他の天然に存在するアミノ酸残基および/または非天然アミノ酸の組込み残基でのアミノ酸残基の置き換えは、既知またはまだ当該技術分野で知られていない任意の方法によって行なわれ得る。例えば、アミノ酸(1つまたは複数)特異的末端枝変異型tRNAシンテターゼ−tRNA対は、置換(例えば、終止コドン、例えば、アンバーコドン、オーカーコドンまたはオパールコドン;縮重コドン、例えば、ウォッブルコドン、バイアスコドン、4もしくは5塩基対コドン、第6ボックスコドンなど、または他の手段)あるいは天然に存在するアミノ酸を典型的に指定するが、タンパク質において該特定の天然に存在するアミノ酸他のコドンをコードするのに使用される他のコドンとは異なるコドンの収率および効率を増大させるために使用され得る。特定のアミノ酸(1種類または複数種)が優先的に組み込まれるように操作される宿主細胞株が利用され得、限定されないが、栄養素要求性宿主細胞株が挙げられる。宿主細胞株は、部位特異的変異誘発(例えば、例えば、PCR、制限消化および再ライゲーション、化学的変異誘発または他の手段)によって修飾され得る。特定のアミノ酸残基の他の改変方法、例えば、特定の非天然アミノ酸の組込みを促進するための対応するtRNAを有する、または有さない外来または末端枝変異型AARSでの宿主細胞の操作も使用され得る。
次の工程では、化学物質部分(ポリエチレングリコールなど)を分子内の非天然アミノ酸残基に付加し、それによりペグ化GM−CSF分子を形成する。
天然に存在するアミノ酸残基および/または非天然アミノ酸残基による置き換えのために選択されるアミノ酸残基は、一部、残基のエネルギー計算値および/または3次元構造上の場所を評価することにより決定され得る。さらに、それぞれ、関連する遺伝子またはタンパク質の核酸またはアミノ酸配列のアラインメントによって代替アミノ酸が選択され得る。かかる配列は、同じ種由来であっても異なる種由来であってもよい。
任意選択で、特定のすべての標的野生型アミノ酸残基を他の天然に存在するアミノ酸残基で置き換えるのではなく、任意選択の第1の工程で記載のように、択一的アプローチが使用され得る。例えば、1つ以上の特定の標的野生型アミノ酸残基(1つまたは複数)が分子内に保持され得、次いで、これらは天然に存在しないアミノ酸残基で置換され得、続いて、天然に存在しないアミノ酸に対して化学物質部分の付加が行なわれる。
(実施例2)(机上)
GM−CSF分子は、36、46、79および80位に4つの野生型メチオニンアミノ酸残基を含む。ペグ化のための係留残基としての使用するためのGM−CSFへの部位特異的メチオニン類縁体の挿入には少なくとも2つの可能性がある。
選択肢の1つは、GM−CSF分子内の4つのメチオニン残基の1つを保持し、他の3つのメチオニン残基を他の天然に存在するアミノ酸残基で置き換えるというものであり得る。どの3つのメチオニン残基を置き換えるかの選択、および/または天然に存在するどのアミノ酸残基で野生型メチオニン残基を置き換えるかの選択は、一部、本明細書に記載のエネルギー計算値を評価することにより決定され得る。さらに、代替アミノ酸は、それぞれ、関連する遺伝子またはタンパク質の核酸またはアミノ酸配列のアラインメントによって代替アミノ酸が選択され得る。該配列は、同じ種由来であっても異なる種由来であってもよい。
第2の選択肢は、GM−CSF分子内の4つすべてのメチオニン残基を置き換え、メチオニン残基を該分子上の別の特定の場所に付加するというものであり得る。次に、付加または保持されたメチオニン残基を非天然アミノ酸残基で置き換える。この場合も、どの3つまたは4つのメチオニン残基を置き換えるかの選択、ならびに新たにメチオニン残基を付加する特定の場所の選択は、一部、エネルギー計算値および関連配列のアラインメントを評価することにより決定され得る。
(実施例3)(机上)
先の実施例に記載した標的分子のエネルギー計算は、任意の既知の方法(その一部を本明細書に記載している)によって行なわれ得る。エネルギー計算のシーケンスおよび回数は、いくつかの様式で行なわれ得る。例えば、点変異の計算は、選択した各メチオニン位置(例えば、36、46、79および80位)に対して行なわれ得る。あるいはまたさらに、組合せ変異計算が、4つすべてのメチオニンに対し、1つのメチオニンはその野生型位置に保持されるが、他の3つのメチオニン残基は、他の天然に存在するアミノ酸に同時に変更されるように行なわれ得る。このようにして、4つすべてのメチオニン残基を他のアミノ酸残基で置き換えるか、またはメチオニン残基は保持するが、他の3つは他の天然に存在するアミノ酸残基で置き換えられるかが決定され得る。
エネルギー計算を制限するため、分子の構造的構成が考慮され得る。例えば、GM−CSF分子のコア部の野生型メチオニン残基の置き換えは、分子の構造的完全性を維持するために疎水性のアミノ酸のみに限定され得る。一方、一部または完全に溶媒に曝露される位置に存在するメチオニン残基は、広範な選択肢のアミノ酸残基で置き換えられ得る。
野生型標的アミノ酸残基(1つまたは複数)(例えば、メチオニン残基)の置き換えのためのエネルギー計算を行なったら、最もエネルギー的に有利なモデルGM−CSF分子(1つまたは複数)が作製され、これを安定性および機能について試験する。安定性および機能について好成績で試験された修飾型GM−CSF分子が、メチオニン残基の挿入および/または非天然アミノ酸残基での置き換えのさらなる設計に使用され得る。
エネルギー計算値に加え、非天然アミノ酸残基(例えば、メチオニン類縁体)を組み込む位置の決定は、GM−CSF分子の全体的な構造および構成に基づく。例えば、メチオニン残基挿入または非天然アミノ酸残基での置き換えに有利な位置としては、表面露出位置、好ましくは、受容体−結合部位から遠位が挙げられ得る。回避すべき位置としては、場合によっては、コアアミノ酸残基および/またはダイマー界面の残基位置あるいはダイマーに対して非対称な位置、ならびに高度に保存された残基であるアミノ酸位置(例えば、表面アミノ酸)が挙げられ得る。
(実施例4)(机上)
標的アミノ酸残基の置き換えのための非天然アミノ酸残基の選択(野生型位置に保持、またはすべての特定の標的アミノ酸残基の置き換え後に付加いずれの場合も)には、タンパク質の構造および/または機能を保持し得る、あるいは、宿主細胞の内因性タンパク質翻訳装置によって利用され得る任意の既知または新たに作製した非天然アミノ酸の選択が含まれ得る。GM−CSF分子の構造的完全性を保持するためには、非天然アミノ酸残基は、標的野生型アミノ酸残基の類縁体であり得る。例えば、メチオニン残基は、GM−CSF分子において、メチオニン類縁体、例えば、ホモプロパルギルグリシン(HPG)またはアジドホモアラニン(AHA)など置き換えられ得る。かかる置換は、メチオニン栄養素要求性細胞株で行なわれ得るか、またはメチオニン位置に非天然アミノ酸を組み込むことができる過剰発現メチオニル−tRNAシンテターゼ、もしくは変異型アミノアシル−tRNAシンテターゼが利用され得る。
どの非天然アミノ酸残をGM−CSF分子に組み込むかの決定は、一部、エネルギー計算値を評価することにより行なわれ得る。例えば、既存の非天然アミノ酸の回転異性体ライブラリーの使用(またはその新たな合成)が用いられ得る。回転異性体ライブラリーは、HPGおよび/またはAHAの正確な回転異性体がわからない場合、他の既知のメチオニン類縁体のねじれ角に基づくものであり得る。回転異性体ライブラリーが得られたら、どの非天然アミノ酸置き換えがエネルギー的に最も有利であるかを決定するため、点変異の計算が、本明細書に記載のようにして行なわれ得る。
(実施例5)(机上)
前述の工程および実施例はまた、他の分子、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、第VII因子、造血成長因子、モノクローナル抗体(例えば、二重特異性抗体および毒素)、インスリン様増殖因子I、インスリン、ヒト成長ホルモン、IL−2、エリスロポイエチン、G−CSF、GM−CSF、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、プロラクチン、黄体形成ホルモン、ホリトロピン、副甲状腺ホルモン、プログルカゴン、グルカゴン、GLP−1、GLP−2、GLP受容体、エキセンジン(例えば、エキセンジン−4)、エキセンジン受容体、または血栓溶解薬にも適用され得る。さらに、特定の標的野生型アミノ酸は種々であり得、任意の天然に存在するアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、メチオニン、プロリン、セリン、ロイシン、システイン、トリプトファン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、ヒスチジン、バリン、およびリシンが挙げられ得る。非天然アミノ酸は、機能的に重要な側鎖、例えば、特定のアミノ酸のアルキンおよびアジド誘導体を含み得る。
(実施例6)(机上)
タンパク質または他の分子は、本明細書において本出願書類の他の箇所に記載の特定のアミノ酸(特に、非天然アミノ酸残基)に結合または縮合された化学物質部分(例えば、ポリエチレングリコール)を有するものであり得る。非天然アミノ酸(ハロゲン化アリールまたはビニル基を含むもの、例えば、パラ−ブロモフェニルアラニンまたはパラ−ヨードフェニルアラニンなどであり得る)を含有するタンパク質は、次いで、コンジュゲーション反応によってペグ化され得、これは、その他の場合では、該タンパク質の内因性の天然に存在するアミノ酸と非反応性である。かかるコンジュゲーション反応は、当該技術分野で知られており、パラジウム触媒型鈴木反応(PEG−フェニルボロン酸を使用)、パラジウム触媒型薗頭カップリング(PEG−アルキンを使用)、パラジウム触媒型ヘックカップリング(PEG−アルケンを使用)またはパラジウム触媒型檜山反応(PEG−シランを使用)が挙げられる。これらのパラジウム触媒型反応ならびに他のものは、本出願書類の他の箇所に詳細に記載している。このような反応により、PEGと標的タンパク質との間に炭素−炭素結合がもたらされる。
本発明の他の態様において、非天然アミノ酸は、ハロゲン化アリールまたはビニル基を含むもの(例えば、パラ−ブロモフェニルアラニンまたはパラ−ヨードフェニルアラニン)であり得る。クロスカップリング反応、例えば、PEG−フェニルボロン酸を使用するパラジウム触媒型鈴木反応(または本明細書に記載の他の反応)を行ない、化学物質部分(PEGなど)と分子との間に炭素−炭素結合が生成させ得る。化学物質部分を分子(例えば、タンパク質)にコンジュゲートするために従来使用されているいくつかの一般的な手順によっても、天然に存在するアミノ酸に存在する官能基(例えば、リシンのεアミノ基またはシステイン残基のチオール基など)との反応が行なわれる。したがって、これらの非特異的反応により、標的タンパク質のアミノ酸配列に応じて、タンパク質内の異なる場所で1つ以上の化学物質部分にコンジュゲートされたタンパク質の多くの異性体を含む最終タンパク質調製物がもたらされる。
特別な一例では、ペグ化ヒトインターフェロン−α−2Bタンパク質産物(PEG−イントロン)は、14個までモノペグ化され、PEG部分はリシン、チロシン、ヒスチジン、セリンおよびシステイン残基に存在する多重ペグ化位置異性体を含む。異性体の混合物であるタンパク質産物は、化学物質部分が結合されている場所が無数にあるため、活性が低い。例えば、PEG−イントロンは、非修飾インターフェロン−αタンパク質の28%の抗ウイルス活性を有し、個々の異性体種では6〜37%の範囲である。また、望ましくない種の画分の分離除去および変動性の修飾タンパク質バッチのさらなる処理の必要性のため、製造コストが増大する。したがって、当該技術分野において、特定の好ましい部位で一貫して修飾される化学物質部分(例えば、PEG)を有するタンパク質の作製の必要性が存在する。
化学物質部分の結合場所を偏らせるための一部の手法は当該技術分野で知られており、例えば、反応混合物のpHの調整、化学物質部分コンジュゲーション中、一部のアミノ酸残基に対する保護基の使用、特定のタンパク質領域へのより良好な構造的到達を可能にするためのタンパク質のフォールディング状態の改変、および他の望ましくない官能基との反応が起こりにくくなるような活性化化学物質部分種の化学反応基の改変などであるが、これらの手法ではいずれも、望ましくないアミノ酸残基との副反応は排除されない。既知手法の一例は、望ましくないアミノ酸残基との副反応を、化学物質部分コンジュゲーション中、一部のアミノ酸残基に対して保護基を使用した後、保護基を修飾されたタンパク質から除去することにより回避するものである。しかしながら、この手法は、修飾タンパク質産物の製造には煩雑であり、かつ高価で非実用的であり、タンパク質を発酵ではなく化学的手段によって合成することが必要とされる。
最終修飾タンパク質産物のばらつきを低減し、活性または他の所望の目的を増大させるため、付加される化学物質部分が分子内の目的の場所に特異的に指向され得る分子(例えば、治療用分子)を合成することが望ましい。例えば、化学物質部分がタンパク質の活性な結合部位近傍に存在する場合、該部分は、インビボでタンパク質の所望の相互作用を立体的に妨害し得、化学物質部分が抗原性エピトープの近傍に存在する場合、インビボで分子の抗原性が低減され得る。同様に、化学物質部分が活性部位から遠くに存在する場合、分子の活性を有意に低下させることなく、分子は、インビボで腎臓への取込みまたはクリアランスから立体的に保護され得る。
本明細書に記載の化学反応の特定のある実施形態は、非天然アミノ酸残基の固有の官能基とのみ反応する反応を提供するものであるため、該反応により、天然に存在するアミノ酸が非修飾状態に維持することが可能である。例えば、パラジウム触媒型クロスカップリング反応は、天然に存在するアミノ酸残基と広く非反応性であり、したがって、分子内の他の箇所での望ましくないコンジュゲーションのない、化学物質部分と分子との部位特異的な共有結合が可能になる。別の利点は、具体的に開示したこのような化学反応が、タンパク質を損傷しない穏やかな水性条件で行なわれ得ることである。また、コンジュゲーション化学反応は、逆反応が起こり得る。例えば、ホモプロパルギルグリシンは、薗頭カップリングによってブロモフェニル−PEGとカップリングされ得る。したがって、一部のある実施形態において、反応基は、標的非天然アミノ酸ではなく活性化された化学物質部分上に存在する。
特定のある他の実施形態において、本明細書に記載の手法のいずれかによって、多数の異なる非天然アミノ酸残基が標的分子内に組み込まれ得、非天然アミノ酸残基の1つ以上が化学物質部分にコンジュゲートされ得る。
他の多数のよく知られた化学反応(その一部を本明細書に記載している)が、タンパク質または他の分子への化学物質部分に利用され得る。反応基は、標的分子、または非天然アミノ酸および結合対象の化学物質部分と反応する二官能性リンカー基のいずれかに存在し得る。鈴木カップリングは、有機ホウ酸とアリールまたはビニルハライド、疑似ハライド(例えば、トリフラート)、アルキル、アルケニルおよび/またはアルキニルとのパラジウム触媒型クロスカップリングである。また、トリフルオロホウ酸カリウムと有機ボランまたはボロン酸エステルが、ホウ酸塩の代わりに使用され得る。さらなる詳細については、例えば、Baxterら,J.Am.Chem.Soc,2003,125,7198−7199;Wuら,J.Org.Chem.,2003,68,670−673およびMolanderら,J.Org.Chem.,200,2,67,8424−8429を参照のこと。
薗頭カップリングでは、プロパルギルアミンをモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−NHS(式中、NHSは、アミンとの反応のために設計されたPEGの任意のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルである)と反応させることによりPEG−アルキンが合成され得る。PEG−アルキンはまた、モノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−アルデヒドおよびプロパルギルアミンと還元剤(ナトリウムシアノボロヒドリドなど)との還元的アミノ化によっても合成され得る。次いで、PEG−アルキンは、p−ブロモフェニルアラニンをその配列内に含むタンパク質にコンジュゲートされ得る。
ヘックカップリングでは、アリルアミンを、上記薗頭カップリングに関して述べたように活性化PEGと反応させることにより、PEG−アルケンが合成され得る。
一般的なパラジウム触媒型反応には、例えば、Pd(Oac)2、NaDClまたはPdClが使用され得る。トリス(3−スルホナト−フェニル)ホスフィン三ナトリウム、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、またはフェニルビス(3−(N,N−ジメチルグアニジノ)フェニル)ホスフィン二塩酸塩などのリガンドは、反応を加速するために添加され得る。トリエチルアミン、ピロリジン、NaCO、ジイソプロピルアミンまたはテトラブチルアンモニウムアセテートなどの塩基は、反応を加速するために添加され得るが、酸性pHの水性のバッファー溶液中に存在させてもよい。薗頭反応の場合、Cu(I)などの銅補助触媒が添加される。活性化PEG種およびアリールハライド含有非天然アミノ酸種を、上記の試薬とともに水の中で合わせ、この2つの種をともにカップリングさせる。
このような反応は水溶中にて、低温(4℃など)、室温、37℃または高温で進行させ得る。酸素の排除により反応速度が補助され得るが、必要ではない。ヨウ化アリール基のほうが活性であるが、臭素化アリール基もまた使用され得る。フェニル環への電子吸引基(ニトロまたはアセチル基)の付加により、特に臭素化種の場合、反応性が改善され得る。この反応は、反応体と触媒が、天然に存在するアミノ酸との副反応(あったとしても)をほとんど行なわないため有益である。また、このような反応により、分子内に組み込まれた非天然アミノ酸残基へのPEGの部位特異的コンジュゲーションがもたらされる。PEGと非天然アミノ酸とのこのコンジュゲーション反応で形成されるC−C結合(単結合、二重結合または三重結合)は、保存条件およびインビボの両方において安定である。
(実施例7)(机上)
別の例では、PEG−アルキンはアジドホモアラニンに、[3+2]銅触媒型付加環化によってコンジュゲートさせると、PEGとタンパク質間にトリアゾール結合がもたらされ得る。この反応では、銅触媒 は、高純度CuBr、CuSOと還元剤(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、アスコルウベート、もしくはジチオトレイトールなど)との組み合わせ、空気曝露を伴う銅ワイヤ、または他の供給源によって提供され得る。また、反応は、バソフェナントロリンジスルホン酸、トリス−(トリアゾリル)アミン、または他のトリアゾールもしくはホスフィンリガンドなどのリガンドを添加すること、あるいはパラジウム触媒を添加することによりさらに加速され得る。さらにまた、反応収率の改善のため、反応の酸素またはレドックス状態への曝露の程度を制御するのがよい。
(実施例8)(机上)
別の例では、標的分子(タンパク質など)の遺伝子を、標的アミノ酸(フェニルアラニン(TTC)など)の単一のコドンのみを用いて設計し、TTTウォッブルフェニルアラニンコドンを含む標的分子に、タグを付加する。反応性の化学物質部分(この場合は、非天然のフェニルアラニン)が連結された非天然アミノ酸は、非天然のフェニルアラニン類縁体がウォッブルTTTコドンに組み込まれるように設計したtRNA−Phe(AAAアンチコドンが外付けされている)を使用すると、タグ領域のみに組み込まれる。分子またはタンパク質は、タンパク質のタグ領域内に特異的に含まれた非天然のフェニルアラニン類縁体の側鎖と反応性の化学物質基を含み、任意選択で、プロテアーゼまたは他の酵素による切断部位を含んでいてもよいカラムに結合され得る。アミノ酸タグおよび/または切断部位は、分子のいずれかの末端(すなわち、N末端またはC末端end)に存在させ得る。アミノ酸タグは、分子またはタンパク質配列に直接連結してもよく、タグは、プロテアーゼまたは他の切断部位によって該分子の残部から分離され得る。
例えば、以下の任意の分子が、当該技術分野で知られた方法によって、例えば、野生型tRNAphe GAAよりも高速にUUUコドンを読み取るAAAアンチコドンが外付けされた真核生物または原核生物供給源由来のtRNA(tRNAPhe AAA)を変異させることにより構築され得る。次いで、tRNAPhe AAAには非天然アミノ酸が選択的に負荷され、タンパク質タグ内への該類縁体の多重部位特異的組込みがもたらされる(さらなる詳細については、例えば、Kwonら,J.Am.Chem.Soc.2003,125,7512−7513を参照のこと):
1.開始コドン−(TTT)−プロテアーゼ部位−標的タンパク質/分子
2.開始コドン−(TTT)−標的タンパク質/分子
3.開始コドン−標的タンパク質/分子−(TTT)
4.開始コドン−標的タンパク質/分子−プロテアーゼ部位−(TTT)
(実施例9)(机上)
この実施例では任意のフェニルアラニン類縁体が使用され得るが、変異型酵母フェニルアラニンtRNAシンテターゼおよび/または修飾型酵母tRNAを有する大腸菌栄養素要求性系統が、フェニルアラニン類縁体(アジド−フェニルアラニン、アルキンフェニルアラニンまたはアセチル−フェニルアラニンなど)を特定のウォッブルコドンに、類縁体を標的タンパク質/分子内の他のフェニルアラニン位置にほとんど誤組込みせずに組み込むことができる。
タグ領域(タグが含まれる場合)への天然のフェニルアラニンの誤組込みは、細胞に対し、培地中に、天然に存在するフェニルアラニン残基と比べて有意に高い濃度のフェニルアラニン類縁体を供給することにより制御され得る。低濃度のフェニル(pheny)アラニンでは、全体的なタンパク質収率が制限されることがあり得るため、ポリ(TTT)タグにより長さを増大させてもよい。
最後に、ポリ(TTT)タグ化分子を固相支持体表面上に、対応するアミノ酸を含むカラムまたは他の表面の調製によって固定化させ得る。
(実施例10)
20kDaの修飾ヒトインターフェロン−βタンパク質をコードし、単一のメチオニンコドン(アミノ末端に)を有する大腸菌合成遺伝子を、オーバーラップするオリゴヌクレオチド(OPERON(登録商標)のキット)を用いたポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって増幅した。該合成遺伝子を、T5−lac−lacプロモーター/調節因子の制御下でpQE30発現ベクター(QIAGEN(登録商標)で入手可能)内にクローニングし(標準的な分子生物学手法を使用)、かくしてインターフェロンβムテインを形成した。
(実施例11)
種々の最後から2番目のアミノ酸残基を、標準的な分子生物学部位特異的変異誘発によってムテイン内に導入した。11アミノ酸のN末端トリプシンペプチドをコードするオリゴヌクレオチド配列を、以下の表1の一覧に示す。クローニングしたすべての遺伝子の配列を、DNA配列決定法により標準的な方法を用いて確認した。
Figure 0005313129
Figure 0005313129
(実施例12)
合成インターフェロン−β遺伝子を含むpQE30発現ベクターで、ヘルパープラスミド(QIAGEN(登録商標)のpREP4)とともにメチオニン栄養素要求性宿主細胞(M15MA)を形質転換した(Link,Tirrell,J.Am.Chem.Soc.125:11164−11165(2003))。2種類の抗生物質(100mg/Lのカルベニシリンおよび50mg/Lのカナマイシン)を、すべての培養培地において、pQE30およびpREP4プラスミド両方の選択のために使用した。
単一のコロニーを選択し、LB培養液にイノキュレーションして37℃で一晩培養するのに使用した。翌朝、一夜培養物を新鮮LB培地中に50倍に希釈し、細胞を、濃度がおよそ1(OD=600)になるまで37℃で培養した。次いで、培養物を遠心分離して細胞ペレットを得、LB培地を除去した。細胞をM9最少培地中に再懸濁し、37℃で半時間培養した。細胞を再度遠心分離し、19種類のアミノ酸(メチオニンなし)を補給したM9最少培地中に再懸濁した。細胞培養物に、50mg/LのL−アジドホモアラニン(AHA)(MEDCHEM(登録商標),WA)またはL−ホモプロパルギルグリシン(HPG)(Tirrell Lab,CalTech)を補給した。25mg/Lのメチオニンを含む、または含まない並行培養物を対照として培養した。 終濃度1MmのIPTGを最後に添加し、組換えタンパク質発現(誘導プロモーターにより)を誘導した。誘導の2時間後、細胞を回収した。
(実施例13)
組換えタンパク質を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALD1−MS)によって解析した。まず、組換えムテインを内因性大腸菌タンパク質から、還元条件下の4〜20%SDS−PAGEにより、標準的な手法を用いて分離した。インターフェロン−βムテインのバンドを、クマシーブルー染色またはSureBlue Safestain (INVITROGEN(登録商標))によって可視化し、ゲルから切り出し、染料の除去およびヨードアセトアミドでの修飾後、37℃で一晩トリプシン消化に供した。試料を乾燥させた後、2%アセトニトリル含有0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中に再溶解させた。次いで、これを、壁面コートC18マイクロピペットチップ(NEW OBJECTIVE(登録商標))を用いることにより脱塩し、10〜20マイクロリットルの60%アセトニトリル(0.1%TFA含有)で溶出した。溶出された試料を、等容量の10mg/mLα−シアノ−ヒドロキシ桂皮酸含有70%アセトニトリル(0.1%TFA+5mM リン酸二水素アンモニウム(ALDRICH(登録商標))を含む)と(sith)混合した。1マイクロリットルを、OPTI−TOF(登録商標)96ウェル挿入部(APPLIED BIOSYSTEMS(登録商標))上にスポットし、4800 MALDI TOF/TOF解析装置(「4700 calibration mix」(APPLIED BIOSYSTEMS(登録商標))で質量範囲を900〜4000Daに較正)を用いて解析した。
質量分析法データ取得のため、100レーザーショットを、試料スポット上の20の異なるランダムな場所に当てた(合計2000レーザーショット/試料)。タンデム質量分析法(MSMS)データ取得のため、前駆体イオン1つあたり、3000までのレーザーショットを蓄積させた。N末端アミノ酸残基は、それぞれのタンデム質量スペクトルにおいて、予測された断片イオンの存在によって確認した。
(実施例14)
大腸菌における組換えタンパク質のN−末端の非天然のアミノ酸のプロセシング
本発明者らは、大腸菌において、タンパク質のアミノ末端の2つの非天然アミノ酸、L−アジドホモアラニン(AHA)およびL−ホモプロパルギルグリシン(HPG)のプロセッシングに対する、最後から2番目のアミノ酸残基(最初のメチオニンに直接続くアミノ酸残基)の効果を示す。本発明者らは、アミノ末端のAHAまたはHPGを効率的に保持または除去するのに使用され得る最後から2番目の位置のいくつかの特定のアミノ酸を同定した。
組換えインターフェロン−βムテインを、宿主細胞封入体を洗浄することにより単離した後、4〜20%SDS−PAGEによって分離した。生成物をPVDF膜に移した後、インターフェロン−βのバンドを切り出し、オンラインHPLCシステムを取り付けた配列決定装置において、5サイクルのエドマン分解により解析した。常套的に、1.0pmolのPTH−標品を較正に使用した。S4溶媒(これにより、PTH−誘導体をHPLCに移送させる)は、1.2pmolのPTH−ノルバリンを含み、したがって、HPLCへの移送を独立してモニターするための内部較正品としての機能を果たす。
遊離の非天然アミノ酸(HPG、AHA、2,4−ジアミノ酪酸)をN末端配列決定に供し、その溶出時間および配列決定条件に対する安定性を調べた。N末端にAHAを含む合成ペプチド(X−SYNLLG、ここで、X=AHA)を、MEDCHEM(登録商標)(Federal Way,WA)によってカスタム合成した。X−SYNLLGを標準として使用し、AHAピーク面積をそのモル量に変換するための相関係数を得た。切断生成物のパーセンテージを、2位で開始されたタンパク質の量を、1位と2位の両方で開始されたタンパク質の総量で除算することにより計算した。切断効率を、2〜4回の配列決定サイクルの平均値として報告する。アミノ末端配列決定解析に基づくアミノ末端プロセッシングタンパク質のパーセンテージを以下の表2に示す。
Figure 0005313129
したがって、N末端のAHAまたはHPGのプロセッシングの程度は、最後から2番目のアミノ酸残基の実体に依存する。N末端メチオニンの除去に有利な3つのアミノ酸(アラニン、グリシンおよびセリン)のうち、アラニンは最も効率的である(90〜100%)。したがって、N末端メチオニンのメチオニンAP切断に不活性な、潜在的にあらゆる最後から2番目の残基によっても、N末端AHAまたはHPGが保持される(ヒスチジン、グルタミンおよびグルタミン酸について示されているように)。さらにまた、MetAP発現レベルまたは基質結合部位の操作は、N末端UAAの所望のプロセッシングの別のストラテジーを提示するものであり得る。
(実施例15)
ヒトインターフェロン−β分子を、本明細書に記載の方法に従って修飾した。アミノ酸残基1位(メチオニン)、2位(セリン)、17位(システイン)、36位(メチオニン)、40位(イソロイシン(isoluecine))、44位(イソロイシン)、62位(メチオニン)、および117位(メチオニン)を、他の天然または非天然アミノ酸に置換した。特に、残基1位のアミノ酸(メチオニン)は、アジドホモアラニンまたはホモプロパルギル(homopropar)グリシンのいずれかに置換した。2位のアミノ酸(セリン)は、アラニン、グリシン、ヒスチジン、グルタミンまたはグルタミン酸に置換した。36位のアミノ酸残基(メチオニン)は、トレオニン、アラニンまたはイソロイシンに置換した。40位のアミノ酸残基(イソロイシン)は、フェニルアラニン(ananine)またはロイシンに置換した。44位のアミノ酸残基(イソロイシン)は、ロイシンに置換した。62位のアミノ酸残基(メチオニン)は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グルタミン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、チロシン、フェニルアラニン、アラニンまたはグリシンに置換した。117位のアミノ酸残基(メチオニン)は、トレオニン、チロシン、セリンまたはグリシンに置換した。得られた修飾ヒトインターフェロンβ分子は、安定にフォールディングされた機能的活性を有するタンパク質をもたらした。
組み込んだ具体的なアミノ酸は、いくつかの基準、例えば、ヒトインターフェロン−β遺伝子と他の種に由来のものとの配列比較に基づいて選択した。変異型インターフェロン−βは、アミノ酸36位のメチオニン残基をトレオニン、アラニンまたはイソロイシンで置き換えた場合、ならびに2位のセリンをセリン、アラニン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン(好ましい)またはグルタミン酸のいずれかで置き換えた場合、遺伝子およびタンパク質機能を保持していた。他のインターフェロン−β変異型も合成し、アミノ酸117位のメチオニン残基をトレオニン、チロシン、セリンまたはグリシンで置き換えた場合、遺伝子およびタンパク質機能を保持していた。
(実施例16)
ヒトインターフェロン−β配列のアミノ酸62位のメチオニン残基を、任意の単一の天然に存在するアミノ酸残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、バリン、グルタミン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、チロシン、フェニルアラニン、アラニンまたはグリシンで置き換えた場合、機能および/または安定性のために、さらなる変異が必要であった。
したがって、アミノ酸40位のイソロイシン残基および/またはアミノ酸44位のイソロイシン残基もまた、他のアミノ酸残基で置換した(これらの位置の残基が、アミノ酸62位の残基と相互作用すると予想されるため)。
配列解析により、ニワトリ(Gallus gallus)インターフェロン−βの配列は、アミノ酸62位にイソロイシン残基、アミノ酸40位にフェニルアラニン残基、合わせてアミノ酸44位にロイシン残基を含むことが示された(「ニワトリ三重」)。結晶構造により、およびコンピュータ使用によるモデル設計によって予測されるように、該インターフェロン−β分子の40位と44位のアミノ酸残基は、非共有結合を形成しているか、あるいは62位のアミノ酸と相互作用している(表3〜5参照)。対応する置換を、ヒトインターフェロン−β変異型において行なった。得られた多置換変異型は、活性の増大を示した(図参照)。
比較により、62位のメチオニン残基をロイシン残基で置換するとともに、40位のイソロイシン残基をロイシン残基で置換すると(オーストラリアハリモグラ種の配列に対応)、安定にフォールディングされた、または機能性のタンパク質を得られなかった。
Figure 0005313129
Figure 0005313129
HEK 293トランスフェクション上清みを再試験し、反復トランスフェクション上清みを試験した。
上清みまたはAvonexのIFNβ活性を、Daudi細胞増殖の阻害として測定した。
単位/100pgは、野生型IFNβ(1単位/100pg)を基準に示している。任意の天然に存在するアミノ酸
Figure 0005313129
Figure 0005313129
(実施例17)
先に開示したペプチド変異に加え、またはその代わりに、ヒトインターフェロン−βを、天然に存在するペプチドの2位のアミノ酸セリンの代わりにグルタメートを、および17位のアミノ酸システインの変わりにセリンを使用することにより修飾した。2位のアミノ酸にもたらした置換は、特に好都合であり、アミノ末端のアミノ酸置換(メチオニン類縁体)(これは、場合によっては、アジドホモアラニンとした)の保持を増大させた。17位のアミノ酸にもたらした置換は、特に好都合であり、宿主細胞、特に、大腸菌で産生させたタンパク質の精製を改善した。
(実施例18)
先の実施例の変異型インターフェロン−β分子における唯一の残留メチオニンは、アミノ酸1位のメチオニンである。このメチオニン残基を、非天然アミノ酸残基(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシン)で置き換えた。メチオニンの置き換えまたは置換を行なう方法の一例は、発酵プロセスによるものであり、この場合、非天然アミノ酸は、対応する天然アミノ酸残基(この場合、メチオニン)の代わりに、または該残基よりずっと高い濃度で供給され、内因性tRNA機構が用いられる。メチオニンを置換する別の方法は、末端枝変異型アミノ酸tRNAシンテターゼおよび/または末端枝変異型tRNA分子の使用によるものである。他の方法を使用してもよい。メチオニンの置換は、大腸菌、シュードモナス属または哺乳動物細胞などの宿主細胞において行なわれ得る。変異型インターフェロン−β分子は、大腸菌宿主細胞において発現させた。
他の場合では、変異型アミノ末端メチオニンアミノペプチダーゼを有する宿主細胞が、非天然アミノ酸のプロセッシングまたは保持に使用され得る。この様式では、最後から2番目のアミノ酸残基に関して特異性が改変された変異型メチオニンアミノペプチダーゼを有する宿主細胞が、タンパク質の発現に使用される。宿主細胞(大腸菌など)における分泌系の使用により、ペリプラズム内に存在するシグナルペプチダーゼおよび/またはプロテアーゼを用いてアミノ末端のアミノ酸の発現およびプロセッシングが制御され得る。
(実施例19)
1位のメチオニンを非天然アミノ酸残基で置換したら、化学物質部分(ポリエチレングリコール)を該残基にコンジュゲートした。アミノ酸1位は末端であるため、結合された化学物質部分は、タンパク質のフォールディング、全体構造および/または機能への干渉は最小限であった。化学物質部分は、アジドとアルキンとの銅触媒型付加環化によって結合させたが、当該技術分野で知られた他の方法および/または他の実施例(実施例6や実施例7など)、もしくは本出願書類の他の箇所に記載の方法によって結合させてもよい。
特定のメチオニンの置換を有するインターフェロン−β構築物を、哺乳動物細胞(HEK293 T細胞)内での一過性トランスフェクションを用いてスクリーニングし、上清みを、例えば、抗ウイルス活性、抗増殖活性および/またはELISAによって測定して解析した。
(実施例20)
本明細書に開示した他のアミノ酸置換に加え、またはその代わりに、天然に存在するヒトインターフェロン−βの2位のセリンアミノ酸をグルタミン酸に修飾し、17位のアミノ酸システインをセリンに修飾した。これらの置換は、驚くべきことに、宿主細胞において、修飾タンパク質の安定化および/または産生の増大をもたらす。
タンパク質のプロセッシング中、アミノ末端における非天然アミノ酸残基(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシングリシンなど)の保持は、化学物質部分の付加(例えば、ペグ化など)のために必要であり、最後から2番目の残基位置のアミノ酸残基の実体に依存する。
他の場合において、例えば、アミノ酸置換の場所の調節を可能にするため、タンパク質のプロセッシング中に非天然アミノ酸残基が除去されるのが望ましい場合があり得る。例えば、非天然アミノ酸残基(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシン)によるヒトインターフェロンβのアミノ末端のメチオニンの置換を効率的に除くと、分子内に少なくとも1つの非天然アミノ酸残基が維持されたまま、分子のアミノ末端以外の位置へのメチオニン類縁体の導入が可能になる。
これに関連して、本発明者らは、最後から2番目のアミノ酸残基を、以下、すなわちグルタミン、グルタミン酸またはヒスチジンから選択した場合、ヒトインターフェロンβのアミノ末端の非天然アミノ酸残基(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシン)が最大に保持されることを見い出した。また、本発明者らは、任意のタンパク質の最後から2番目のアミノ酸残基がフェニルアラニン、メチオニン、リシン、チロシン、トリプトファンまたはアルギニンである場合、高度に保持されるであろうと予測した。本発明者らは、最後から2番目のアミノ酸残基がグリシンまたはセリンである場合、非天然アミノ酸残基(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシンなど)は、ある程度保持され、最後から2番目のアミノ酸がアラニンである場合、非天然アミノ酸残基は低レベルで保持される(高レベルの除去)ことを見出した。
(実施例21)
ヒトインターフェロン−βの特定変異型の一例であるMonoMet(これは、発酵中、AHAで置き換えられたアミノ末端の単一のメチオニンを含み、他のメチオニンはすべて、遺伝子組み換えにより置き換えられた)では、セリン、アラニン、グリシン、グルタミン、ヒスチジンまたはグルタミン酸のいずれかをアミノ酸2位に有する変異型タンパク質が、大腸菌において発現された。2位のアミノ酸がセリンであり、アミノ末端のメチオニンを非天然アミノ酸(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシン)で置換した場合、非天然アミノ酸は、効率的に保持されず一部プロセシングされ、不均一なタンパク質産物が得られる。かかる産物には、アミノ末端に非切断型非天然アミノ酸を有するタンパク質、アミノ末端に切断型非天然アミノ酸を有するタンパク質、およびアミノ末端にホルミル化非天然アミノ酸を有するタンパク質が含まれた。2位のアミノ酸のがヒスチジン、グルタミンまたはグルタミン酸である場合、アミノ末端の非天然アミノ酸は高度に保持される。
アジドホモアラニンがアミノ末端の非天然アミノ酸として使用され、ヒトインターフェロンβの2位のアミノ酸がヒスチジン、グルタミンまたはグルタミン酸である場合、アジドホモアラニンのアジド部分は保持され、Nホルミル基は除去される。
ヒトインターフェロンβの2位のアミノ酸がアラニンであり、アミノ末端のメチオニンを非天然アミノ酸(アジドホモアラニンまたはホモプロパルギルグリシン)で置換する場合、非天然アミノ酸は除去される。
使用した非天然アミノ酸に加え、アジドノルロイシンなどの他の非天然アミノ酸を代わりに組み込んでもよい。
AHAがアミノ末端に組み込まれた変異型インターフェロン−β生成物は、このようにして生成され、他の変異は、S2E、C17S、M36I、I40F、I44L、M62I、M117Tである。このようなアミノ酸置換を含む変異型インターフェロン−βは、アミノ末端のAHAを保持しており、容易に精製され、適正にリフォールディングされた(ジスルフィド結合形成を含む)。さらに、該インターフェロン−β変異型は効率的にペグ化され、最終製剤は安定なであり、インビトロおよびインビボの両方で充分な生物学的活性を保持していた。
(実施例22)
銅触媒型アジド−アルキン付加環化によるタンパク質およびインターフェロン−βの精製およびペグ化
本発明者らは、非天然アミノ酸残基を含むを含む標的分子(例えば、タンパク質またはペプチドなど)のペグ化のための変形型の銅触媒型付加環化方法を示す。該変形法により、標的分子の効率的な精製、フォールディングおよび酸化が可能になる。典型的には、他の銅触媒型付加環化方法では、高純度CuBrまたはCuSOの使用によるCu(I)、および還元剤(TCEPまたはCu(O)など)の存在が必要である。本発明者らの変形法は、DTTの存在下で行なわれる。なんら特定の理論に拘束されることを望まないが、DTTは、生体分子および/または銅種いずれかに対しては還元剤としての機能を果たし得、修飾付加環化反応における銅に対してはリガンドとしての機能を果たし得るであろう。
修飾付加環化反応では、特に、還元剤の存在下では、酸素が必要とされることがあり得、反応容器内に空気を導入すること、または反応容器を周囲大気に開口状態で放置すること、あるいは、酸化剤および/または還元剤を添加して反応混合物の全体的なレドックス状態を制御することのいずれかによって供給され得る。該変形付加環化反応は、非天然アミノ酸含有生体分子を使用すること、例えば、トリアゾール結合を伴う、または伴わない反応、ならびに種々の濃度のいくつかの銅種、SDS(これは、特定のある実施形態において望ましい)、DTT、TCEPおよびPEG−アルキンによって行なわれ得る。
該反応は、標的分子と他の反応体を含む混合ミセル「マイクロリアクター」内で行なわれ得る。該反応は、超音波処理してもよく、これにより、種々の混合ミセル間の物質輸送が改善されて混合が改善され得る、および/または反応混合物への酸素の導入、ならびに銅酸化状態の混合が影響され得る。場合によっては、反応開始前に可溶化標的分子を凍結/解凍サイクルに供することにより、CuBr触媒反応が改善される。凍結/解凍サイクルは、標的分子の混合ミセルに影響すること、あるいは、分子の可溶性に影響することがあり得る。本発明者らの変形法では、付加環化反応は、CuBrではなくCuSOを優先的に使用して行なわれる。アルキン−PEGはPEG−NHSエステルから、有機溶液中または水溶液中のいずれかで作製され得る。
修飾型インターフェロン−βおよびPEG−インターフェロン−βを、まず、ツヴイッター剤を含有し、SDSが添加されていないバッファー中への希釈によるインターフェロン−βのリフォールディングによって精製した。これにより、その後の該溶液のイオン交換クロマトグラフィー解析が可能になる。ペグ化および非ペグ化インターフェロンβの精製には、アニオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーが使用され得る。ツヴイッター剤は、ペグ化インターフェロンβから除去してもよく、そのとき同時に非ペグ化インターフェロンβも除去してもよい。これにより、インビトロもしくはインビボアッセイまたは臨床投与に適した純粋なペグ化インターフェロンβの生成が可能になる。
(実施例23)
PEG−インターフェロン−βは、マウス異種移植モデルにおいて腫瘍の進行を抑制する
本発明者らは、PEG−(20K)インターフェロンβの有効性、および腫瘍増殖の増殖を抑制する能力を、免疫抑制(SCID)マウスの皮下においてBETASERON(登録商標)と比較して試験した。PEG−(20K)インターフェロンβは、腫瘍の進行をインビボで、BETASERON(登録商標)よりも効率的に抑制する。
動物試験
これらの試験に用いたマウスは、雌のC.B−17 SCIDマウス(6〜8週齢)(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)であった。飼料および水は随意に与えた。試験動物は、特定の無菌環境内に収容し、実験手順の開始前に、温度および湿度が制御された環境内で馴化させた。
ヒトBリンパ芽球様細胞株であるDaudi細胞(ATCC,Manassas,VA)を腹部の正中線に皮下注射した。マウスは、腫瘍の移植後、PEG−(20K)−インターフェロン(IFN)(3U)、BETASERON(登録商標)(ヒトインターフェロン−β−1b)(10U)またはビヒクルのいずれかで、週1回または週3回のいずれかで処置した。腫瘍が触知可能になった(約3週間)後、デジタルカリパスを用いて週3回、2次元の腫瘍の測定を行なった。腫瘍体積は、長球の式を用いて求めた。腫瘍の進行を65日間測定した。
活性試験
IFNβをペグ化して精製した。PEG IFNβを、市販のBETASERON(登録商標)(Bayer Corp.)と、抗ウイルス活性について、薬物効力の尺度としてEC50を用いて比較した。結果を図8Aおよび8Bに示す。データを、一元配置反復測定ANOVAをテューキー・クレーマー多重比較事後検定とともに用いて解析した。
(実施例24)(机上)
外因性tRNA発現により、コドンバイアスによる遺伝子の識別的調節がもたらされる
以前に、真核生物細胞において、単一のtRNA発現構築物を提供することにより、特定の標的遺伝子の翻訳レベルが改変され得ることが示された。その著者らは、細胞内のtRNAのレベルまたは量が翻訳レベルでの遺伝子発現レベルと関連していることを示唆し、特定のtRNAのレベルが低いと、おそらく特定のコドンを多数含む宿主細胞内でのmRNAのデコードにおける問題のため、低レベルの翻訳がもたらされることを示唆した。Guら Nuc.Acids Res.32:4448(2004)(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。例えば、特定の宿主細胞が特定のtRNA種を高レベルで含む場合、このtRNAのレベルが高いことによって、その細胞の主要なタンパク質産物のmRNA分子のコドンバイアスがもたらされ得る。したがって、どのようにコドンが使用されるかは、tRNAが、分化上皮および非分化上皮両方において標的遺伝子の発現を調節する能力にほぼ等しい。
このことを考慮すると、本明細書に記載の方法の使用では、とりわけ、バイアスコドンをデコードし、外来または末端枝変異型M−RSによってアミノアシル化される外来または末端枝変異型tRNAを導入することにより、非天然アミノ酸の組込みが指定される細胞のコドンバイアス傾向(すなわち「バイアスコドン」)を用いることが望ましかろう。
均等物
当業者には、本明細書に記載した具体的な方法および試薬に対する数多くの均等物、例えば、代替、バリアント、付加、欠失、修飾および置換が認識され、常套的な実験手法を用いるだけで確認することができよう。かかる均等物は、本発明の範囲に含まれるとみなされ、特許請求の範囲に包含される。
36位のメチオニンがイソロイシン、アルギニンまたはトレオニン残基で置換されたインターフェロン−β変異型のインビトロ生物学的活性を示す。生物学的活性を、インターフェロン−βへの3日間の曝露後、MTS代謝に従ってDaudi細胞増殖に基づいて測定した。 62位のメチオニンがリシン、イソロイシンまたはバリン残基で置換されたインターフェロン−β変異型のインビトロ生物学的活性を示す。生物学的活性を、インターフェロン−βへの3日間の曝露後、MTS代謝に従ってDaudi細胞増殖に基づいて測定した。 117位のメチオニンがトレオニン、チロシン、セリンまたはグリシンで置換されたインターフェロン−β変異型の活性を示す。HEK293細胞をインターフェロンβ変異型でトランスフェクトし、上清みを第3日に回収した。上清みまたはAvonexのインターフェロン−β活性を、Daudi細胞増殖の阻害に基づいて測定した。 117位のメチオニンがトレオニンで置換されたインターフェロン−β変異型、62位のメチオニンがイソロイシンで置換された変異型、40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換された変異型、および44位のイソロイシンがロイシンで置換された変異型の活性を示す。AVONEX(登録商標)(ヒトインターフェロン−β−1a)は、Biogen Idee,Inc.製のものである。HEK293細胞をインターフェロンβ変異型でトランスフェクトし、上清みを回収した。上清みまたはAvonexのインターフェロン−β活性を、Daudi細胞増殖の阻害に基づいて測定した。 インターフェロン−β変異型の活性を示す。三重:62位のメチオニンがイソロイシンで置換されており、アミノ酸40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換されており、アミノ酸44位のイソロイシンがロイシンで置換されている。WT:野生型、変異なし。三重−M117S:62位のメチオニンがイソロイシンで置換されており、アミノ酸40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換されており、アミノ酸44位のイソロイシンがロイシンで置換されており、アミノ酸117位のメチオニンがセリンで置換されている。三重−M117T:62位のメチオニンがイソロイシンで置換されており、アミノ酸40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換されており、アミノ酸44位のイソロイシンがロイシンで置換されており、117位のメチオニンがトレオニンで置換されている。M36A−三重:62位のメチオニンがイソロイシンで置換されており、アミノ酸40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換されており、アミノ酸44位のイソロイシンがロイシンで置換されており、アミノ酸36位のメチオニンがアラニンで置換されている。M36T−三重:62位のメチオニンがイソロイシンで置換されており、アミノ酸40位のイソロイシンがフェニルアラニンで置換されており、アミノ酸44位のイソロイシンがロイシンで置換されており、36位のメチオニンがトレオニンで置換されている。HEK293細胞を各変異型でトランスフェクトした。インターフェロン−β変異型の活性を、Daudi細胞増殖の阻害に基づいて測定した。 分子内に単一のメチオニンが存在し、アミノ酸2位(S2)に種々の変異を有する種々のインターフェロン−beta(β)変異型の抗増殖活性を示す。HEK293細胞を、表示した該変異型(muant)構築物(TTまたはTI)をコードする発現プラスミドでトランスフェクトした。TTは、少なくともM36T−M117T変異または置換を含む変異型を示す。TIは、少なくともM36T−M117I変異または置換を含む変異型を示す。サンドイッチ型ELISAを上清みにおいて行ない、生物学的活性を増殖阻害速度に関して測定した。 分子内に単一のメチオニンが存在し、アミノ酸2位(S2)に種々の変異を有する種々のインターフェロン−beta(β)変異型の抗ウイルス活性を示す。A549細胞を、インターフェロンの非存在下で、細胞の完全な溶解がもたらされるのに充分な力価のEMCウイルスとともにインキュベートした。上清みを除去し、細胞をクリスタルバイオレットおよび緩衝ホルマリン中で染色した。細胞計数を、OD650においてマイクロプレートリーダーによって測定した。 2つのメチオニン類縁体であるアジドホモアラニンおよびホモプロパルギルグリシン、ならびに活性化ポリ(エチレン)グリコール分子を示す。 種々の大きさのPEG分子を有するペグ化インターフェロンβのSDS−PAGEを示す。 10K−PEGインターフェロン−βコンジュゲートTIS2Eに関する抗ウイルス活性を示す。A549細胞を、インターフェロンの非存在下で、細胞の完全な溶解がもたらされるのに充分な力価のEMCウイルスとともにインキュベートした。上清みを除去し、細胞をクリスタルバイオレットおよび緩衝ホルマリン中で染色した。細胞計数を、OD650においてマイクロプレートリーダーによって測定した。 図7Aで記載のような標準的な手順に従って、種々の20K−PEGインターフェロンβコンジュゲート(TIS2E)に関する抗ウイルス活性を示す。 SCIDマウスに移植されたDaudi細胞の腫瘍の大きさによって測定される、10K−PEGインターフェロンβコンジュゲートが腫瘍の進行を抑制する能力を示す。 SCIDマウスに移植されたDaudi細胞の腫瘍の大きさによって測定される、20K−PEGインターフェロンβコンジュゲートが腫瘍の進行を抑制する能力を示す。

Claims (23)

  1. 修飾インターフェロン−βポリペプチドの作製方法であって
    (a)該修飾インターフェロン−βポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を供給すること、および
    )該宿主細胞が該修飾インターフェロン−βポリペプチド発現るような条件下で該宿主細胞を培養すること、
    を包含し、ここで、該修飾インターフェロン−βポリペプチドは、1位に非天然アミノ酸を組み込むように修飾されており、該方法は、
    (i)該ポリペプチド中のメチオニン残基を異なる天然アミノ酸残基に置換するが、1位のメチオニン残基は保持する工程、
    (ii)該保持された1位のメチオニン残基を、非天然アミノ酸の残基に置換する工程、
    (iii)任意選択で、該置換されたメチオニン残基と相互作用する他のアミノ酸を置換する工程、および
    (iv)任意選択で、1位におけるアミノ酸置換の保持を向上させるために、2位を置換する工程
    を包含し、該修飾インターフェロン−βポリペプチドは、その天然機能を保持する、方法
  2. 1位の前記アミノ酸置換の保持を向上させるために2位が置換される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記宿主細胞が、メチオニンについて栄養素要求性である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記非天然アミノ酸が、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p−ブロモフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニン、およびエチニルフェニルアラニンからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記修飾インターフェロン−βポリペプチドの1位のメチオニンが、非天然アミノ酸アジドホモアラニン(AHA)であるように修飾される、請求項4に記載の方法。
  6. インターフェロン−βポリペプチドが、その配列中に行われた以下の修飾:
    S2E、C17S、M36I、I40F、I44L、M62I、M117T
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 化学物質部分を、前記インターフェロン−βポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基に結合させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記化学物質部分を前記非天然アミノ酸残基に、銅触媒型[3+2]付加環化、鈴木カップリング、檜山カップリング、熊田カップリング、ヘック反応、Cadiot−Chodkiewiczカップリング、および薗頭カップリングからなる群より選択される化学反応によって結合させる、請求項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法に従って製造された、修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  11. 前記1位のメチオニンが、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p−ブロモフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニン、およびエチニルフェニルアラニンからなる群より選択される非天然アミノ酸によって置換される、請求項9または10に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  12. 前記修飾インターフェロン−βの1位のメチオニンが、非天然アミノ酸アジドホモアラニン(AHA)であるように修飾される、請求項11に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  13. インターフェロン−βが、その配列中に行われた以下の修飾:
    S2E、C17S、M36I、I40F、I44L、M62I、M117T
    を含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  14. 以下:
    1位のメチオニンからアジドホモアラニンへ、2位のセリンからグルタミン酸へ、17位のシステインからセリンへ、36位のメチオニンからイソロイシンへ、40位のイソロイシンからフェニルアラニンへ、44位のイソロイシンからロイシンへ、62位のメチオニンからイソロイシンへ、および117位のメチオニンからトレオニンへ、
    のアミノ酸の改変からなる、修飾ヒトインターフェロン−βポリペプチド。
  15. 前記インターフェロン−βポリペプチドのアミノ末端の1位の非天然アミノ酸残基に結合された化学物質部分を含む、請求項9〜14のいずれか1項に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  16. 前記化学物質部分は、前記非天然アミノ酸残基に、銅触媒型[3+2]付加環化、鈴木カップリング、檜山カップリング、熊田カップリング、ヘック反応、Cadiot−Chodkiewiczカップリング、および薗頭カップリングからなる群より選択される化学反応によって結合される、請求項15に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチド。
  17. 前記インターフェロン−βポリペプチドは、該修飾インターフェロン−βポリペプチドの1位においてポリエチレングリコール(PEG)に結合される、請求項15または16に記載のポリペプチド。
  18. 前記PEGは分岐または非分岐である、請求項17に記載のポリペプチド。
  19. 前記PEGは、1,000Da〜100kDaの分子量を有する、請求項18に記載のポリペプチド。
  20. 前記PEGは、2kDa〜60kDa、2kDa〜30kDa、5kDa〜20kDa、10kDa〜40kDa、10kDa〜20kDaからなる群より選択される分子量を有する、請求項19に記載のポリペプチド。
  21. 前記PEGは、前記ポリペプチドにトリアゾール結合を介して結合され、該トリアゾール結合は、[3+2]付加環化反応によって形成される、請求項20に記載のポリペプチド。
  22. 請求項9〜21のいずれか1項に記載のポリペプチドと、薬学的に許容され得る希釈剤または賦形剤とを含む、組成物。
  23. ベクターを含む修飾栄養要求性宿主細胞であって、該ベクターは、請求項9〜21のいずれか1項に記載の修飾インターフェロン−βポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、細胞。
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