JP5305033B2 - ハイブリッド電気自動車の変速制御装置 - Google Patents
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Description
そこで、このような問題点を解決するため、第1入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第1歯車機構を設けると共に、第2入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第2歯車機構を設け、第1クラッチを介して動力源からの駆動力を第1入力軸に伝達可能とする一方、第2クラッチを介して上記駆動力を第2入力軸に伝達可能とした、いわゆるデュアルクラッチ式変速機が開発されている。
一方、車両減速時には、電動機が発生する回生トルクやエンジンが発生するエンジンブレーキを駆動輪側に伝達して減速抵抗を作用させることにより、アクセル操作に応じた運転者の要求トルクを達成している。電動機の回生トルクを利用すれば、発電された回生電力をバッテリに充電して燃費向上に貢献できることから、基本的には可能な限り電動機の回生トルクを用い、不足分があればエンジンブレーキで補うように電動機及びエンジンの駆動力の配分が決定される。
そして、このように第2駆動状態に移行して現在の変速段が選択された当初から回生トルクが緩やかに減少することから、エンジンブレーキと回生トルクとの総和であるシステムトルクの減少も緩やかなものとなり、駆動輪に作用する減速抵抗の急減が抑制される。
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド電気自動車の変速制御装置を示す概略構成図である。
全体として駆動装置は、走行用動力源であるエンジン1及び電動機2をクラッチユニット3を介して変速機4に接続して構成され、これらのエンジン1や電動機2からの駆動力をクラッチユニット3及び変速機4を経て左右の駆動輪5(後輪)に伝達することによりハイブリッド電気自動車を走行させるようになっている。以下の説明では、車両の前後に倣って図1の左方を前方とし、図1の右方を後方として表現する。
ロータはクラッチユニット3の外周に固定され、ステータは変速機4のケーシングに固定され、ロータとステータとの間に磁界が発生すると、エンジン1と同方向の駆動トルク或いは逆方向の回生トルクが駆動力として変速機4に入力されるようになっている。
エンジンECU12は、車両ECU11からの情報に基づきエンジン1のアイドル運転制御や図示しない排ガス浄化装置の再生制御など、エンジン1自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU11から指令される運転者の要求トルクを達成すべく、エンジン1の燃料噴射量や噴射時期などを制御する。
具体的には、車両ECU11は、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ15や、車両の走行速度を検出する車速センサ16及び電動機2(クラッチユニット3の出力側)の回転速度を検出する回転速度センサ17の検出結果などに基づき、上記運転者の要求トルクを車両加速時や定常走行時には正の値として、減速時には負の値として算出する。そして、車両の運転状態やエンジン1及び電動機2の運転状態、或いは図示しないバッテリECUにより逐次算出される走行用バッテリの充電率(SOC:State Of Charge)などに基づき走行用動力源を選択して制御する。
また、車両減速時において、電動機2が発生する回生トルクのみで負側に設定された要求トルクを達成可能なときには、走行用動力源として電動機2を単独で用い、電動機2の回生トルクのみでは負側の要求トルクを達成不能なときには、走行用動力源としてエンジン1及び電動機2を併用する。
図1に示すように、クラッチユニット3はアウタクラッチ21(第1クラッチ)及びインナクラッチ22(第2クラッチ)からなり、クラッチユニット3の入力側が、アウタクラッチ21及びインナクラッチ22の入力側として共用されている。アウタクラッチ21及びインナクラッチ22は、内蔵した湿式多板クラッチ21a,22aをクラッチアクチュエータ23,24により駆動操作されることにより相互に独立して接続・切断され、それぞれ接続に伴ってエンジン1からの駆動力がクラッチ出力側に伝達されるようになっている。
アウタクラッチ21の出力側には管状をなすアウタ入力軸25(第1入力軸)が連結され、アウタ入力軸25はベアリング27により回転可能に支持されている。インナクラッチ22の出力側にはインナ入力軸26(第2入力軸)が連結され、このインナ入力軸26はアウタ入力軸25内に回転可能に嵌入されている。
従って、アウタクラッチ21の接続によりエンジン1からの駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたとき、或いはエンジン1からの駆動力に加えて電動機2の駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたり、単独で電動機2からの駆動力がアウタ入力軸25に伝達されたりしたときには、アウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36を介してインナカウンタ軸32が回転駆動される。
出力軸38上の第4速ドリブンギヤ42の後方にはリバースドリブンギヤ44が相対回転可能に配設され、このリバースドリブンギヤ44と対応するようにインナカウンタ軸32にはリバースドライブギヤ45が固定されている。図では、リバースドリブンギヤ44とリバースドライブギヤ45とが直接的に噛み合うように示されているが、実際には両ギヤ44,45はリバース中間ギヤ46を介して常時噛み合っており、車両後退のために他のドリブンギヤとは逆方向にリバースドリブンギヤ44を回転駆動するようになっている。
一方、インナクラッチ側ドライブギヤ29と第3速ドリブンギヤ40との間には、これらのギヤ29,40を出力軸38に結合するために第1同期装置51が設けられている。第1同期装置51は、インナクラッチ側ドライブギヤ29の後面に設けられた第5・6速クラッチギヤ51a、第3速ドリブンギヤ40の前面に設けられた第3速クラッチギヤ51b、及び出力軸38と一体で回転しながら、中立位置から前後に移動して第5・6速クラッチギヤ51aまたは第3速クラッチギヤ51bに選択的に係合し得る第1スリーブ51cから構成されている。
車両の走行中において、変速機4の変速段は図示しない制御マップに基づき設定される一方、運転者がリバースを選択したときには変速段としてリバースが設定され、設定された変速段を達成すべく、車両ECU11によりクラッチユニット3の接続・切断制御及び変速機4の変速切換制御が実行される。これらのクラッチユニット3及び変速機4の制御は、走行用動力源としてエンジン1を単独で用いているときには表1に従って行われる。
従って、エンジン1からの駆動力は第2速と同じくアウタクラッチ21、アウタ入力軸25、アウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36を介してインナカウンタ軸32に伝達される。
その後に駆動力は第2同期装置52の第2スリーブ52cから第4速クラッチギヤ52bを介して第4速ドライブギヤ43に伝達され、第4速ドライブギヤ43及び第4速ドリブンギヤ42を介して出力軸38に伝達される。即ち、エンジン1の回転速度に対してアウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36のギヤ比と第4速ドライブギヤ43及び第4速ドリブンギヤ42のギヤ比とを乗じた回転速度で出力軸38が回転駆動される。
従って、エンジン1からの駆動力はインナクラッチ22を介してインナ入力軸26に伝達され、第1同期装置51の第5・6速クラッチギヤ51aから第1スリーブ51cを介して出力軸38に伝達される。即ち、エンジン1の回転速度は直結で出力軸38に伝達されて出力軸38が回転駆動される。
第6速を選択するには、アウタクラッチ21、インナクラッチ22及び、同期装置51〜53の各スリーブ51c〜53cが表1に示した位置に切り換えられることにより達成される。
さらに駆動力はインナクラッチ側ドリブンギヤ35及びインナクラッチ側ドライブギヤ29を介して第1同期装置51の第5・6速クラッチギヤ51aに伝達され、第5・6速クラッチギヤ51aから第1スリーブ51cを介して出力軸38に伝達される。即ち、エンジン1の回転速度に対してアウタクラッチ側ドライブギヤ28及びアウタクラッチ側ドリブンギヤ36のギヤ比とインナクラッチ側ドリブンギヤ35及びインナクラッチ側ドライブギヤ29のギヤ比とを乗じた回転速度で出力軸38が回転駆動される。
ところで、本実施形態のハイブリッド電気自動車は第2速発進を前提として制御マップが設定されているため、車両の加速時や減速時には第2〜6速間で変速段がシフトアップ側或いはシフトダウン側に切り換えられる。
例えば第5速から第4速への切換時には、それに先行して第4速へのプリセレクトが実行される。第5速の選択時には、インナクラッチ22、インナ入力軸26、第1同期装置51、出力軸38の順にエンジン1の駆動力が伝達されている。
なお、図1から明らかなように、偶数変速段を達成するギヤ列と奇数変速段を達成するギヤ列とは一部を兼用しているが、図2,3はエンジン及び電動機からの動力伝達経路の理解を容易にするために、双方のギヤ列を独立して表している。
エンジン・電動機併用走行時には、選択されている変速段が奇数段であるか偶数段であるかに応じて変速機4の作動状態を異にしている。
電動機2側の偶数変速段については何れを選択してもよいが、本実施形態では、現在選択されているエンジン1側の奇数変速段と関連付けて、常に1段高速ギヤ側の偶数変速段を選択している。
これらの駆動力は車両減速時には負側に制御され、エンジン1側はスロットルを閉じてエンジンブレーキを発生させ、電動機2側は負の駆動力として回生トルクを発生させる。従って、車両減速時には、エンジンブレーキ及び回生トルクが第1歯車機構G1や第2歯車機構G2を介して伝達されることで駆動輪5に減速抵抗が付与される一方、駆動輪5から逆に伝達される駆動力により電動機2は回生電力を発電してバッテリに充電する所謂回生制動を行う。
ここで、奇数変速段の選択時には、エンジン1側の駆動力と電動機2側の駆動力とが異なるギヤ比で駆動輪5側に伝達されることから、選択している奇数変速段のギヤ比と偶数変速段のギヤ比とを考慮して要求トルクの配分を行う。
例えば図2に示す第1駆動状態で第6速の選択により車両が減速しているとき、車速の低下に伴って第5速への切換条件の成立に先行してプリセレクト要求があると、まず、第2歯車機構G2で第5速へのプリセレクトが実行される。このときインナクラッチ22は切断されているため、第5速へのプリセレクトを何ら支障なく実行できる。
さらに減速が継続されて第4速へのプリセレクト要求があると、まず、第1歯車機構G1で第4速へのプリセレクトが実行され、その後に第4速への切換条件が成立すると、インナクラッチ22の切断及びアウタクラッチ21の接続により第4速への切換が完了し、図2に示す第1駆動状態となる。
車両ECU11の処理は、車両減速時において運転者の要求トルクに基づいて行われるエンジントルク(エンジンブレーキ)及び電動機2の回生トルクの制御に関わるため、まず、基本的な制御状況を説明する。図4は第2駆動状態で車両が減速しているときの要求トルク、エンジントルク、及び回生トルクの推移を示す特性図であり、図中の縦軸は負側に設定された駆動力、横軸はインナクラッチ22の回転速度(以下、単にクラッチ回転速度と称する)であり、クラッチ回転速度は車速に対して所定の相関関係をもって変化する。
車両減速中において、エンジントルクと回生トルクとの総和であるシステムトルクは運転者による要求トルクと一致するように制御され、このシステムトルクが駆動輪5に減速抵抗として作用することによりアクセル操作に応じた減速が行われる。要求トルクはクラッチ回転速度の減少に伴い次第に減少するように設定される。
次変速段へのプリセレクトの開始判定はクラッチ回転速度に基づいて行われ、クラッチ回転速度が予め設定されたプリセレクト開始ポイントまで低下した時点でプリセレクトの開始判定が下され、それに応じて次変速段へのプリセレクトが開始される。なお、上記したように第3速の選択時の回生トルクは一般的な回生制動と同様に制御されるものの、プリセレクトを禁止する点で相違しており、これについては後に詳述する。
車両ECU11は、車両の走行中に図5に示すシステムトルク急減防止ルーチンを所定の制御インターバルで実行している。
ステップS6では現在第2歯車機構G2側で選択されている変速段が第3速か第5速かを判定し、第5速が選択されているときにはステップS8に移行する。ステップS8では要求トルク及びクラッチ回転速度に基づきエンジントルク及び回生トルクを設定し、これらの設定に基づきエンジン1及び電動機2の制御を開始する。
即ち、図6において要求トルクは、第5速が選択された当初は破線で示す図4の特性と同一値に設定されるが、その後にクラッチ回転速度の減少と共に図4の特性から次第に減少補正され、プリセレクト開始ポイントではエンジンブレーキと略一致する。以下、この要求トルクをプリセレクト開始ポイントに向けて減少補正する処理を、要求トルク補正処理と称する。
続いて車両ECU11はステップS10でプリセレクト開始ポイントに到達したか否かを判定し、判定がYesになるとステップS12に移行する。ステップS12では第6速から第4速へのプリセレクトを実行し、その後にステップS14でプリセレクトが完了したか否かを判定し、判定がYesになるとステップS16に移行する。ステップS16では制御マップに基づく第4速への切換条件が成立したときにインナクラッチ22の切断及びアウタクラッチ21の接続を行い、続くステップS18で第4速への切換が完了したか否かを判定する。
この第3速の選択時には、図4に示す特性に従ってエンジントルク及び回生トルクが制御され、一般的な回生制動の場合と同じく、クラッチ回転速度の減少に関わらず回生トルクは略一定値に保持される。
以下、このプリセレクト開始ポイントへの到達時に開始されるべきプリセレクトを禁止する処理を、プリセレクト禁止処理と称する。
以上の車両ECU11の処理により、第3速及び第5速を選択した第2駆動状態での車両減速時には、以下に述べる作用効果が得られる。
しかし、プリセレクト禁止処理により第4速から第2速へのプリセレクト自体が禁止されることから、当然ながらプリセレクトを実行するために回生トルクを0まで急減させる必要がない。よって、減速抵抗の急減に起因する運転者の違和感を未然に防止することができる。
しかしながら、この場合であっても、図4の特性に基づくエンジントルク及び回生トルクの制御により駆動輪5には減速抵抗が作用し続け、一方、第1歯車機構G1の第4速を介して電動機2の回生制動も継続される。このため通常制御において第2速への切換が行われた場合に比較して、車両の減速状態も、電動機2の発電状態も実質的には相違せず、プリセレクトの禁止による実害は発生しない。
しかしながら、第5速選択時には、変速機4の機構上の制限からプリセレクトを禁止する対策を実施できない。
当然ながら、このような機構上の制限がなく、第1歯車機構G1と第2歯車機構G2とで相互制約を受けずに任意に変速段を選択可能な機構の変速機であれば、第5速の選択時にプリセレクト禁止処理を実施してもよい。
なお、逆に第3速の選択時にプリセレクト禁止処理に代えて要求トルク補正処理を実施することは可能である。この場合には電動機2の発電量が若干減少するため、バッテリのSOC面で多少の不利は生じるが、プリセレクトの際の減速抵抗の急減は確実に防止することができる。
また、第1歯車機構C1や第2歯車機構G2に振り分けられる変速段や、各変速段の配列、並びに各変速段における変速段の切換機構など、変速機4の構成についても、上記実施形態のものに限定されるものではなく、ハイブリッド電気自動車に求められる運転性能や商品性などに応じて変更することが可能である。
2 電動機
5 駆動輪
11 車両ECU(変速制御手段)
21 アウタクラッチ(第1クラッチ)
22 インナクラッチ(第2クラッチ)
25 アウタ入力軸(第1入力軸)
26 インナ入力軸(第2入力軸)
38 出力軸
G1 第1歯車機構
G2 第2歯車機構
Claims (2)
- 第1クラッチの接続時にエンジンからの駆動力が伝達され、電動機のロータが機械的に結合された第1入力軸と、
第2クラッチの接続時に上記エンジンからの駆動力が伝達される第2入力軸と、
車両の駆動輪に駆動力を伝達する出力軸と、
上記第1の入力軸から伝達される駆動力を複数の変速段の何れかに変速して上記出力軸に伝達する第1歯車機構と、
上記第2の入力軸から伝達される駆動力を複数の変速段の何れかに変速して上記出力軸に伝達する第2歯車機構と、
車両減速時において運転者による負側の要求トルクに基づきエンジンブレーキ及び上記電動機の回生トルクを制御する一方、上記第1クラッチを接続して上記エンジンブレーキ及び電動機の回生トルクを上記第1入力軸から上記第1歯車機構の何れかの変速段を介して上記出力軸に伝達する第1駆動状態と、上記第2クラッチを接続して上記エンジンブレーキを上記第2入力軸から上記第2歯車機構の何れかの変速段を介して上記出力軸に伝達すると共に、上記電動機の回生トルクを上記第1入力軸から上記第1歯車機構の何れかの変速段を介して上記出力軸に伝達する第2駆動状態とを交互に切り換えながら、上記エンジンフレーキを伝達していない側の歯車機構を低速ギヤ側の変速段に予め切り換えるプリセレクトの実行後に、上記第1クラッチ及び第2クラッチの断接状態を切り換えることでシフトダウン側への変速を実行する変速制御手段と
を備えたハイブリッド電気自動車の変速制御装置において、
上記変速制御手段は、上記第2駆動状態の継続中には、上記要求トルクを車速の低下に応じて次第に減少補正して上記第1歯車機構に対する上記プリセレクトの開始ポイントに到達したときに該要求トルクを上記エンジンブレーキ相当値と略一致させる要求トルク補正処理を実行することを特徴とするハイブリッド電気自動車の変速制御装置。 - 上記変速制御手段は、上記第2駆動状態のときに上記要求トルク補正処理に代えて、上記プリセレクト開始ポイントへの到達時に上記第1歯車機構に対するプリセレクトを禁止して、該第1歯車機構の変速段を現状保持するプリセレクト禁止処理を実行可能であり、
変速機の機構上、上記現状保持した状態で上記第2歯車機構の変速段を順次シフトダウン不能な変速段が上記第1歯車機構で選択されているときには、上記要求トルク補正処理を実行し、上記現状保持した状態で上記第2歯車機構の変速段を順次シフトダウン可能な変速段が上記第1歯車機構で選択されているときには、上記プリセレクト禁止処理を実行することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド電気自動車の変速制御装置。
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