JP5302486B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物とその成形品に関する。さらに詳しくは、流動性、耐溶剤性、難燃性に優れ、かつ帯電防止性能の持続性に優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃特性や耐熱性、電気的特性、寸法安定性などに優れていることから、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器分野、自動車分野、建築分野など様々な分野において幅広く利用されている。このポリカーボネート樹脂は、それ自体が自己消火性樹脂ではあるが、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などの素材として使用する場合、安全性のさらなる向上のために、難燃性の程度をより高めることが要請されている。
ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させる方法として、ハロゲン化ビスフェノールAやハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率が高いことから、酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかしながら、近年、安全性や廃棄物の焼却時に環境への影響が大きいことから、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が要請されている。そこで、非ハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合すると、難燃性に優れると同時に可塑剤としての作用もあることから、この有機リン酸エステル化合物を用いた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
ところで、この有機リン酸エステル化合物を用いてポリカーボネート樹脂を難燃化するためには、有機リン酸エステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。また、ポリカーボネート樹脂は、成形温度が高くかつ溶融粘度も高いため、成形品の薄肉化、大型化に対応するためには、ますます成形温度を高くして流動性を上げることが必要になる。したがって、この有機リン酸エステル化合物は、難燃性に寄与するが、ポリカーボネート樹脂の成形加工時に、金型に付着したり、ガスの発生を招くなど、成形環境や成形品の外観上必ずしも十分でない場合がある。また、この有機リン酸エステル化合物を用いた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の成形品は、高温履歴や高温高湿履歴に伴って衝撃強度の低下を招いたり、変色するという問題がある。
そこで、このような課題の解決のため、特開昭50−98546号公報では、少量の重合体状芳香族スルホン酸の金属塩、例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩を配合することによりポリカーボネート樹脂を難燃化することを提案している。しかしながら、ポリスチレンを通常の手法でスルホン化し、さらに水酸化ナトリウムで中和して得られるポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩を用いてポリカーボネート樹脂の難燃化をはかると、難燃性に優れたものが得られるが、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩の分散性が劣ることに起因して成形品の外観不良を招くという難点がある。
また、このような難燃性ポリカーボネート樹脂組成物においては、ポリカーボネート樹脂の特性を維持した難燃性成形材料の開発が要請されており、このような要請に応えるため、例えば、特開平8−176425号公報では、ポリカーボネート樹脂に、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩およびオルガノポリシロキサンを配合した樹脂組成物を提案している。この樹脂組成物は、難燃性と機械的強度に優れているが、これを成形してなる成形品には、その表面に埃が付着しやすいという難点がある。
さらに、特開平11−172063号公報においては、ポリスチレンスルホン酸金属塩と各種の熱可塑性樹脂を配合してなる難燃性樹脂組成物を提案しているが、熱可塑性樹脂としてポリスチレンやポリフェニレンエーテルを主体とする樹脂組成物については、難燃性に優れた樹脂組成物が示されているが、ポリカーボネート樹脂が本来的に有している特性を維持したポリカーボネート樹脂を主体とする難燃性樹脂組成物については示されていない。
このようなことから、ポリカーボネート樹脂が有する優れた特性を維持し、かつ流動性や耐溶剤性と難燃性に優れると共に、埃が付着することのない帯電防止性能の持続性に優れた成形品を得ることのできる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の開発が要請されている。
発明が解決しようとする課題
本発明は、流動性、耐溶剤性、難燃性に優れ、かつ埃が付着することのない帯電防止性能の持続性に優れた成形品を得ることのできる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物と、その成形品の提供を目的とするものである。
課題を解決するための手段
本発明者らは、上記の課題解決のために種々検討した結果、(A)ポリカーボネート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂および(C)酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を特定の組成割合で配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物によれば、上記目的を達成することができることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
〔1〕(A)成分としてポリカーボネート樹脂50〜97.95質量%、(B)成分としてポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂2〜47質量%および(C)成分として酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂0.05〜3質量%からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔2〕(A)成分のポリカーボネート樹脂が、オルガノシロキサンに由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合樹脂である、前記〔1〕に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔3〕(B)成分の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂またはポリエステル系樹脂である前記〔1〕または〔2〕に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔4〕(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂が、ポリスチレンスルホン酸金属塩である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔5〕(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(D)成分としてドリップ抑制剤0.02〜5質量部を配合してなる、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔6〕(D)成分のドリップ抑制剤が、フッ素系樹脂である、前記〔5〕に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔7〕(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(E)成分として官能基含有シリコーン化合物0.1〜10質量部を配合してなる、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔8〕(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(F)成分としてコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体0.5〜10質量部を配合してなる、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔9〕(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(G)成分として難燃剤0.1〜30質量部を配合してなる、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる電気・電子機器部品。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)成分のポリカーボネート樹脂50〜97.95質量%、(B)成分のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂2〜47質量%および(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂0.05〜3質量%からなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物である。また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、これら基本的な(A)、(B)、(C)各成分に、必要に応じて、さらに(D)成分としてドリップ抑制剤、(E)成分として官能基含有シリコーン化合物、(F)成分としてコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体、または(G)成分として難燃剤をそれぞれ特定の割合で添加してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物である。
つぎに、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(A)成分のポリカーボネート樹脂、(B)成分のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂、(D)成分のドリップ抑制剤、(E)成分の官能基含有シリコーン化合物、(F)成分のコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体および(G)成分の難燃剤については、以下に詳細に説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料として用いる(A)成分のポリカーボネート樹脂としては、特に制約はなく、種々の構造単位を有するポリカーボネート樹脂が挙げられる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法により反応させて製造したポリカーボネート樹脂が好適に用いられる。
この二価フェノールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコールなどが挙げられる。これら2価フェノールの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料としたものが特に好ましい。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライドやカルボニルエステル、ハロホルメートなどが挙げられる。具体的には、ホスゲン、二価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。
また、このポリカーボネート樹脂は、その重合体鎖の分子構造が直鎖構造であるもののほか、分岐構造を有していてもよい。このような分岐構造を導入するための分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などを用いることができる。また、分子量調節剤として、フェノールやp−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどを用いることができる。
さらに、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、上記の二価フェノールのみを用いて製造された単独重合体のほか、ポリカーボネート構造単位とポリオルガノシロキサン構造単位を有する共重合体、あるいはこれら単独重合体と共重合体からなる樹脂組成物であってもよい。また、テレフタル酸などの二官能性カルボン酸やそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下にポリカーボネートの重合反応を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。さらに、種々の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を溶融混練して得られる樹脂組成物を用いることもできる。なお、本発明における(A)成分のポリカーボネート樹脂としては、その構造単位中に実質的にハロゲン原子が含まれないものが好適に用いられる。
そして、この(A)成分として用いるポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が10,000〜100,000であるものが好ましい。それは、この粘度平均分子量が10,000未満であると、得られる樹脂組成物の熱的性質や機械的性質が充分でなく、またこの粘度平均分子量が100,000を超えるものでは、得られる樹脂組成物の成形加工性が低下するからである。このポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、より好ましくは11,000〜40,000であり、さらに好ましくは12,000〜30,000である。
(B)ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料として用いる(B)成分のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用ポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン、シンジオタクチック・ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ナイロン6やナイロン66、ナイロン12などのポリアミド樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレン系エラストマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン系エラストマー、エチレン−プロピレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリメチルメタクリレート樹脂やアクリル酸−オレフィン共重合体などのアクリル系樹脂などが挙げられる。
これら(B)成分の熱可塑性樹脂の中でも、スチレン系樹脂は、これを(B)成分として用いた場合に得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の流動性の向上効果が特に優れることから、(B)成分として用いるのに好ましい熱可塑性樹脂である。また、ポリエステル系樹脂は、これを(B)成分として用いた場合に得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐溶剤性の向上効果が特に優れることから、耐溶剤性の要求される成形品を製造する際には特に好ましい熱可塑性樹脂である。
(C)酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料として用いる(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂は、芳香族ビニル系樹脂の重合体鎖における芳香環の水素原子の一部を酸塩基で置換した構造を有する芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。この芳香族ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂などの重合体鎖中に少なくともスチレンに由来する構造単位を有する芳香族ビニル系樹脂を用いることができる。これらの中でも、特にポリスチレン樹脂が好ましい。
そして、この芳香族ビニル系樹脂における芳香環の水素原子に置換される酸塩基としては、例えば、スルホン酸塩基、ホウ酸塩基、リン酸塩基などのアルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩などが挙げられる。また、これら酸塩基の置換比率については、特に制約はなく、例えば、10〜100%の範囲内で適宜選択することができる。
つぎに、この酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂として好適な酸塩基含有ポリスチレン樹脂については、下記一般式(1)
Figure 0005302486
〔式(1)中、Xは酸塩基を示し、Yは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。また、mは1〜5の整数を示し、nは酸塩基で置換されたスチレンに由来する構造単位のモル分率を表し、0<n≦1である。〕で表される酸塩基含有ポリスチレン樹脂が好適に用いられる。
この一般式(1)において、Xが表わす酸塩基としては、スルホン酸塩基、ホウ酸塩基、リン酸塩基が好ましく、これら酸のナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アンモニウム塩などが好適なものとして挙げられる。また、一般式(1)におけるYとしては、水素原子が好ましいが、炭化水素基としてはメチル基が特に好ましい。
つぎに、この(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の製造方法については、単量体としてスルホン基などを有する芳香族ビニル系単量体またはこれらと共重合可能な他の単量体とを重合または共重合した後、塩基性物質で中和する方法によることができる。また、芳香族ビニル系重合体または芳香族ビニル系共重合体、あるいはそれらの混合物をスルホン化し、塩基性物質で中和する方法によることもできる。この芳香族ビニル系重合体をスルホン化した後に中和する方法による場合には、例えば、ポリスチレン樹脂の1,2−ジクロロエタン溶液に無水硫酸を加えて反応させることによりポリスチレンスルホン酸を製造し、ついで、これを水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基性物質で中和し、精製することにより酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を得ることができる。
ここで、上記(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂としては、酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂中に含有される無機金属塩を5質量%未満、好ましくは3質量%未満に減少させたものがより好適に用いられる。それは、この芳香族ビニル系樹脂、例えばポリスチレンをスルホン化した後に水酸化ナトリウムにより中和したのみでは、副生した硫酸ナトリウムが、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム中に残存し、その硫酸ナトリウムの含有率が5質量%を超えると、これを用いて得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の機械的性質や熱的性質、電気的性質が低下したり、成形品の外観不良を招くようになるからである。このポリスチレンスルホン酸ナトリウムの精製は、溶媒を用いて再結晶する方法や、副生した硫酸ナトリウムを濾別する方法、あるいはイオン交換剤、キレート剤、吸着剤による処理などにより行うことができる。
また、この(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂としては、その重量平均分子量が1,000〜300,000であるものが好適に用いられる。それは、この酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の重量平均分子量が1,000未満であると、これを配合成分として用いた樹脂組成物の物理的性質の低下を招き、また、この酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の重量平均分子量が300,000を超えると、これを配合成分として用いた樹脂組成物の流動性が悪くなって生産性の低下を招くようになるからである。
(D)ドリップ抑制剤
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料として用いる(D)成分のドリップ抑制剤としては、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂が好適に用いられる。そして、このフッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系樹脂が好ましく、重合体鎖がフルオロエチレン構造単位により構成された重合体や共重合体がより好ましい。このようなフルオロオレフィン系樹脂としては、例えば、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレンとフッ素原子を含まないエチレン系モノマーとの共重合樹脂が挙げられる。これらフッ素樹脂の中でも、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂が特に好適に用いられる。また、これらフッ素樹脂は、1種単独で(D)成分として用いてもよいし、2種以上のものを組合せて(D)成分に用いてもよい。また、これらフッ素樹脂は、その平均分子量が500,000以上であるもの、さらに500,000〜10,000,000であるものが好ましい。
そして、上記のポリテトラフルオロエチレン系樹脂の中でも、フィブリル形成能を有するものを用いると、より高い溶融滴下抑制効果が得られる。このようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン系樹脂としては、例えば、ASTM規格においてタイプ3に分類されているものが挙げられる。そして、このポリテトラフルオロエチレン系樹脂は、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下に、0.01〜1MPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られたものが好適に用いられる。
このようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン系樹脂としては、市販品として、ASTM規格のタイプ3に分類されているものでは、テフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業社製)、CD076(旭硝子フロロポリマーズ社製)などがある。また、ASTM規格のタイプ3に分類されるもの以外では、アルゴフロンF5(モンテフルオス社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業社製)などがある。
また、シリコーン系樹脂としては、ポリオルガノシロキサン樹脂が好適であり、具体的には、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリメチルフェニルシロキサン樹脂、ポリジフェニルシロキサン樹脂、ポリメチルエチルシロキサン樹脂、さらにこれらの混合物が挙げられる。これらシリコーン系樹脂は、その数平均分子量が200以上、好ましくは500〜5,000,000であり、その形態についてはオイル状、ワニス状、ガム状、粉末状、ペレット状のいずれでもよい。
さらに、フェノール系樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキルフェノールなどのフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類とを、触媒の存在下に反応させて得られるものが好適に用いられる。そして、このフェノール系樹脂は、レゾール型であっても、ノボラック型であってもよい。
(E)官能基含有シリコーン化合物
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料に用いる(E)成分としては、官能基含有シリコーン化合物が用いられる。この官能基含有シリコーン化合物は、(R1a (R2b SiO(4-a-b)/2 〔式中、R1 は官能基を示し、R2 は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。また、a,bは、それぞれ0<a≦3、0≦b<3、0<a+b≦3を満足する整数である。〕で表される構造単位からなる重合体または共重合体である。そして、このR1 が表わす官能基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、ビニル基などが挙げられるが、これらの中ではアルコキシ基、水素基、水酸基、エポキシ基、ビニル基が好ましく、メトキシ基、ビニル基がより好ましい。また、R2 が表わす炭化水素基としては、メチル基、エチル基、フェニル基などが挙げられる。
そして、この官能基含有シリコーン化合物の中でも、本発明における(E)成分として用いるのに特に有用性の高いのは、上記式におけるR2 が表わす炭化水素基としてフェニル基を含む構造単位からなる官能基含有シリコーン化合物である。また、上記式においてR1 が表わす官能基としては、1種の官能基を含有しているものでも、異種の複数の官能基を含有しているものであってもよく、それらの混合物であってもよい。そして、上記式における官能基(R1 )/炭化水素基(R2 )の値が、0.1〜3、好ましくは0.3〜2であるものが好適に用いられる。さらに、この官能基を含有するシリコーン化合物は、液状であっても、粉末状であってもよい。液状のものでは、その室温における粘度が10〜500,000cst程度であるものが好ましい。
(F)コア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料に用いる(F)成分としては、コア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体が好適に用いられる。コア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体は、コア(芯)と、シェル(殻)から構成される2層構造を有している。そして、このコア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、ゴム状弾性体自体は粉末状(粒子状態)であるグラフトゴム状弾性体が好適に用いられる。このコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分が元の形態を保っている。したがって、このグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂中に均一に分散して、表層剥離を起こすことが少ない。
そして、このコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体は、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られる1種または2種以上のゴム状重合体の存在下に、スチレンなどのビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが好適に用いられる。これらアルキルアクリレートやアルキルメタクリレートとしては、炭素数2〜10のアルキル基を有するもの、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレートなどを用いて得られたものが好ましい。これらアルキルアクリレートを主体とする単量体を用いて得られるエラストマーとしては、アルキルアクリレート70重量%以上と、これと共重合可能なビニル系単量体、例えば、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどを30重量%以下の割合で反応させて得られる共重合体が好適に用いられる。さらに、ジビニルベンゼンや、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多官能性化合物により架橋化させたものであってもよい。
また、ゴム状重合体の存在下に、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステルなどを重合あるいは共重合させて得られるものを用いてもよい。さらに、これら単量体と共に他のビニル系単量体、例えば、アクリロニトリルや、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル化合物などを共重合させて得られたものであってもよい。そして、これら重合体や共重合体は、塊状重合法や懸濁重合法、乳化重合法などの各種方法によって得られたものが用いられるが、それらの中でも、乳化重合法によって得られたものが特に好適に用いられる。
さらに、このコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体として、n−ブチルアクリレート60〜80質量%に、スチレンとメタクリル酸メチルを20〜40質量%の割合でグラフト共重合させたMAS樹脂弾性体が用いられる。また、ポリシロキサンゴム成分5〜95質量%とポリ(メタ)アクリレートゴム成分5〜95質量%とが分離できないように相互に絡み合った構造を有する平均粒子径0.01〜1μm程度の複合ゴムに、少なくとも1種のビニル系単量体をグラフト共重合させて得られる複合ゴム系グラフト共重合体を用いることもできる。
これら種々の形態を有するコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体は、市販品としては、ハイブレンB621(日本ゼオン社製)、KM−357P(呉羽化学工業社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223(三菱レイヨン社製)などがある。
(G)難燃剤
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の原料に用いる(G)成分としては、例えば、有機リン系化合物、シリコーン系化合物、含窒素化合物、金属水酸化物、ハロゲン系化合物、赤リン、酸化アンチモン、膨張性黒鉛などの公知の難燃剤を単独で、あるいは複数のものを適宜組合わせて用いることができる。ここで、含窒素化合物としては、メラミンや、アルキル基または芳香族基を置換基として有するメラミン化合物が挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどが好ましいものとして挙げられる。
そして、ハロゲン系化合物としては、テトラブロモビスフェノールAや、ハロゲン化ポリカーボネート、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールエポキシオリゴマー、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ポリオレフィンなどが難燃化効率に優れたものではあるが、これらは、樹脂組成物の成形時に金型の腐食のおそれがあり、また自然環境に悪影響を及ぼすおそれが大きいことから、ハロゲン非含有難燃剤の使用が好ましい。
ハロゲン非含有難燃剤の中では、難燃化効率に優れたものとして、有機リン系化合物が挙げられ、その中でもリン酸エステル系難燃剤が好適なものとして挙げられる。このリン酸エステル系難燃剤としては、リン原子に直接結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するリン酸エステル化合物が好適に用いられる。このようなリン酸エステル化合物は、例えば、下記一般式(2)
Figure 0005302486
〔式(2)中、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立に水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表す。また、pは0または1を表し、qは1以上の整数を表し、rは0以上の整数を表す。〕で示されるリン酸エステル化合物やその混合物が好適に用いられる。
ここで、一般式(2)においてR1 〜R4 が表わす有機基としては、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。また、置換基を有する場合、その置換基は、アルキル基やアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などが好ましい。さらに、これら置換基を組合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基などであってもよいし、これら置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合したアリールスルホニルアリール基などであってもよい。また、一般式(2)においてXが表わす2価以上の有機基としては、上記の有機基から炭素原子に結合している水素原子を1個以上除いた2価以上の基を意味する。例えば、それぞれ置換基を有していてもよいアルキレン基やフェニレン基、あるいは多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導される基であってもよい。
つぎに、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物における各成分の組成割合については、(A)成分のポリカーボネート樹脂は、その組成割合を50〜97.95質量%とする。この(A)成分の組成割合は、50質量%未満であると、得られる樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた物理的性質を維持することが困難になり、またこの組成割合が97.95質量%を超えるものでは、得られる樹脂組成物の流動性や耐溶剤性が充分でなくなるからである。また、(B)成分のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂は、その組成割合を2〜47質量%とする。それは、この熱可塑性樹脂の組成割合が2質量%未満であると、この(B)成分を配合することにより得られる樹脂組成物の流動性や耐溶剤性の向上効果の発現が充分でなく、また、この組成割合が47質量%を超えると、得られる樹脂組成物の難燃性の程度において、UL規格におけるV−2以上の高い難燃性が得られなくなるからである。さらに、(C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂は、その組成割合を0.05〜3質量%とする。それは、この酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の組成割合が0.05質量%未満であると、この(C)成分を配合することにより得られる樹脂組成物の難燃性や帯電防止性能の持続性についての向上効果の発現が充分でなく、また、この組成割合が3質量%を超えると、得られる樹脂組成物の衝撃強度などの物理的特性の低下を招くようになるからである。そして、この(C)成分のより好ましい配合割合は、0.1〜2質量%であり、さらに好ましい配合割合は、0.5〜2質量%である。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の(A)〜(C)の各成分からなる基本的な構成の組成物において、実用上充分に高い難燃性と帯電防止性能の持続性が得られるのであるが、さらに高い難燃性の要請される使途においては、この基本的な構成成分の合計100質量部に対して、(D)成分のドリップ抑制剤を0.02〜5質量部配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる。この(D)成分の配合割合が0.02質量部未満では、その配合効果に発現が充分でなく、また、5質量部を超えて配合量を増やしてもそれに見合うだけの効果は得られないからである。この(D)成分のより好ましい配合割合は、0.1〜1質量部である。
また、この難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のさらなる難燃性の向上のために、上記の基本的な構成成分の合計100質量部に対して、(E)成分の官能基含有シリコーン化合物を0.1〜10質量部配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる。この(E)成分の配合割合が0.1質量部未満では、その配合効果に発現が充分でなく、また、10質量部を超えて配合量を増やしてもそれに見合う効果は得られず、かえって得られる樹脂組成物の機械的強度の低下を招くことになるからである。この(E)成分のより好ましい配合割合は、0.1〜5質量部である。
さらに、この難燃性ポリカーボネート樹脂組成物として、さらに高い耐衝撃性と難燃性が要請される使途においては、上記の基本的な構成成分の合計100質量部に対して、(F)成分のコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体を0.5〜10質量部配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる。この(E)成分の配合割合が0.5質量部未満では、その配合効果に発現が充分でなく、また、10質量部を超えて配合量を増やしてもそれに見合うだけの効果は得られないからである。この(F)成分のより好ましい配合割合は、0.5〜5質量部である。
また、この難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のさらなる難燃性の向上のために、上記の基本的な構成成分の合計100質量部に対して、(G)成分の難燃剤を0.1〜30質量部配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる。この(G)成分の配合割合が0.1質量部未満では、その配合効果に発現が充分でなく、また、30質量部を超えて配合量を増やしてもそれに見合う効果は得られないからである。
つぎに、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法については、上記(A)〜(C)の各成分を上記の配合割合で、さらに必要に応じて(D)〜(G)成分を適宜配合し、混合および溶融混練すればよい。ここでの各成分の配合や混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダーやドラムタンブラーなどで予備混合し、ついで、バンバリーミキサーや単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダなどにより、溶融混練する方法によることができる。溶融混練時温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択すればよい。この溶融混練物の成形は、押出成形機、特にベント式の押出成形機によりストランド状に押出した後、冷却し切断してペレット化する方法によるのが好ましい。
そして、このようにして得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを用いて射出成形法や、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法などにより各種成形品を製造することができる。
このようにして得られる本発明の成形品は、難燃性や耐溶剤性に優れ、かつ表面に埃が付着することのない帯電防止性能の持続性に優れることから、このような特性を有することの要請されている電子・電気機器、例えば、複写機、ファクシミリ、テレビジョン、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのハウジングや内部部品のほか、自動車部品などの分野においても有用性の高いものである。
つぎに、実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〜9〕
〔1〕難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造
原料の(A)〜(G)の各成分を、第1表に示す配合割合〔ただし、表中の(A)〜(C)各成分は質量%を示し、(D)〜(G)各成分は、(A)〜(C)成分100質量部に対する各成分の質量部を示す。〕において配合し、ベント式二軸押出成形機(東芝機械社製:TEM35)に供給し、280℃で溶融混練した。そして、この混練物をストランド状に押出した後、冷却して切断することにより、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
つぎに、得られたペレットを、120℃で12時間乾燥した後、成形温度270℃、金型温度80℃において射出成形し、各種試験片とした。
ここでは、原料の(A)〜(G)各成分として、下記のものを用いた。
(A)ポリカーボネート樹脂
(A−1) 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位を有し、直鎖状構造であって、粘度平均分子量が19,500であるポリカーボネート樹脂。
(A−2) ジメチルシロキサンに由来する構造単位が30であるブロックを4質量%含有し、他は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位からなり、直鎖状構造であって、粘度平均分子量が15,000であるポリカーボネート樹脂。
(B)ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂
(B−1) JIS K−7210に準拠し、温度200℃および荷重5kgの条件下に測定したメルトフローレートが8g/10分であり、かつポリブタジエンゴム含有率10質量%である耐衝撃性ポリスチレン樹脂〔出光石油化学社製:IT44〕。
(B−2) アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂〔テクノポリマー社製:DP611〕。
(B−3) アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂〔テクノポリマー社製:290〕。
(B−4) ポリエチレンテレフタレート樹脂〔三菱レイヨン社製:ダイヤナイトMA523〕。
(C)酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂
(C−1) 重量平均分子量が20,000であり、かつスルホン化率が100%であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム。
(C−2) 重量平均分子量が20,000であり、かつスルホン化率が40%であるポリスチレンスルホン酸カリウム。
(D)ドリップ抑制剤
(D−1) ポリテトラフルオロエチレン樹脂〔旭硝子社製:CDO76〕。
(E)官能基含有シリコーン化合物
(E−1) 官能基としてビニル基とメトキシ基を含有するメチルフェニルシリコーン〔信越化学工業社製:KR219〕。
(E−2) 官能基としてメトキシ基を含有するメチルフェニルシリコーン〔東レダウコーニング社製:DC3037〕。
(F)コア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体
(F−1) メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−スチレン共重合樹脂
〔呉羽化学工業社製:KM357P〕。
(G)難燃剤
(G−1) レゾルシノールビス(ジフェニルポスフェート)〔旭電化工業社製:アデカスタブPFR〕。
(G−2) テトラブロモビスフェノールAオリゴマー〔帝人化成社製:FG7500〕。
〔2〕難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の評価
上記〔1〕で得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の試験片を用いて、下記の各項目について性能の評価をした。これら結果を第1表に示す。
(1)溶融流動性
JIS K 7210に準拠して、温度280℃および荷重2.16kgの条件下に、メルトフローレートを測定した。
(2)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し、試験片として肉厚3.18mmのものを用い、23℃において測定した。
(3)耐グリース性
耐薬品性評価法(1/4楕円による限界歪み)に準拠して測定した。すなわち、試験片(厚さ=3mm)を、図1に示す治具の1/4楕円の面に固定し、試験片にはアルバニアグリース(昭和シェル石油社製)を塗布して、48時間保持した。そして、クラックが発生する最小長さ(X)を読み取り、下記の式(1)により限界歪み(%)を求めた。
Figure 0005302486
(4)帯電圧半減期
試験片として、25×35mm、厚さ3mmの角板を用い、これに印加電圧9kvにおいて1分間帯電させ、帯電圧に対して、放電中断後の電位が半分になる時間(秒)を測定した。
(5)水洗い後の帯電圧半減期
上記(4)で用いた試験片を、23℃の水により1分間水洗した後、付着した水を拭きとって、これに印加電圧9kvにおいて1分間帯電させ、帯電圧に対して、放電中断後の電位が半分になる時間(秒)を測定した。
(6)難燃性
試験片として、厚さ1.5mmのものを用い、アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94に従って、垂直燃焼試験を行った。
〔比較例1〜7〕
〔1〕難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造
原料の各成分を、第2表〔表中の各数値は実施例と同様〕に示す配合割合において配合し、ベント式二軸押出成形機(東芝機械社製:TEM35)に供給し、280℃で溶融混練した。ついで、混練物をストランド状に押出し、冷却して切断することにより、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
つぎに、得られたペレットを、120℃で12時間乾燥した後、成形温度270℃、金型温度80℃において射出成形し、試験片および成形品とした。
ここでは、原料および添加剤の各成分として、下記のものを用いた。
(A)ポリカーボネート樹脂
実施例1〜9における(A−1)と同一のポリカーボネート樹脂。
(B)ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂
実施例1〜9における(B−1)、(B−3)と同一の熱可塑性樹脂。
(C)酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂
実施例1〜9における(C−1)、(C−2)と同一の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂および下記の金属塩。
(C−3) ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム〔竹本油脂社製:エレカットS412−2〕。
(D)ドリップ抑制剤
実施例1〜9における(D−1)と同一のポリテトラフルオロエチレン樹脂。
(E)官能基含有シリコーン化合物
実施例1〜9における(E−2)と同一のシリコーン化合物および下記のシリコーン化合物。
(E−3) ジメチルシリコーン〔東レダウコーニング社製:SH200〕。
(F)コア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体
実施例1〜9における(F−1)と同一のメタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂。
〔2〕難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の評価
上記〔1〕で得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の試験片を用いて、上記実施例1〜9における各項目について性能の評価をした。これら結果を第2表に示す。
Figure 0005302486
Figure 0005302486
発明の効果
本発明によれば、流動性と耐溶剤性および難燃性に優れ、かつ埃が付着することのない帯電防止性能の持続性に優れた成形品を得ることのできる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物と、その成形品を提供することができる。
は、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐グリース性の評価に用いる試験片を固定する治具の斜視図である。

Claims (9)

  1. (A)成分としてポリカーボネート樹脂50〜97.95質量%、(B)成分としてスチレン系樹脂((C)成分としての酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を除く。)またはポリエステル系樹脂2〜47質量%および(C)成分として酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂0.05〜3質量%からなる構成成分の合計100質量部に対して、
    (D)成分としてドリップ抑制剤0.02〜5質量部、
    (E)成分として官能基含有シリコーン化合物0.1〜5質量部および
    (F)成分としてコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体0.5〜10質量部
    を配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(但し、重量平均分子量100万以上のメタクリル酸メチル系重合体を含有しない。)。
  2. (A)成分としてポリカーボネート樹脂50〜97.95質量%、(B)成分としてスチレン系樹脂((C)成分としての酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を除く。)またはポリエステル系樹脂2〜47質量%および(C)成分として酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂0.05〜3質量%からなる構成成分の合計100質量部に対して、
    (D)成分としてドリップ抑制剤0.02〜5質量部を配合してなり、かつ
    前記(A)成分が、ポリカーボネート構造単位のみからなる単独重合体と、ポリカーボネート構造単位とポリオルガノシロキサン構造単位を有する共重合体からなる樹脂組成物である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(但し、重量平均分子量100万以上のメタクリル酸メチル系重合体を含有しない。)。
  3. (A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(E)成分として官能基含有シリコーン化合物0.1〜10質量部を配合してなる請求項2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. (A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(F)成分としてコア・シェルタイプのグラフトゴム状弾性体0.5〜10質量部を配合してなる請求項2又は3に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. (B)成分のスチレン系樹脂およびポリエステル系樹脂が、いずれも、水酸基を含有する水溶性熱可塑性重合体ではなく、且つ多価アルコール性化合物でもない、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. (C)成分の酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂が、ポリスチレンスルホン酸金属塩である請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. (D)成分のドリップ抑制剤が、フッ素系樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. (A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、(G)成分として難燃剤0.1〜30質量部を配合してなる請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる電気・電子機器部品。
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