JP5282501B2 - 高強度非調質鍛造部品の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながらこの場合調質処理のためにコストがかかることから、近年にあってはこのような調質処理を省略し、鍛造加工のままで所要の強度を発現させることのできる非調質鋼が使用されるに到っている。
その際、従来の非調質鍛造部品の製造方法では添加したVを鋼の強化のために十分に活用できておらず、強化が不十分であるといった問題があった。
またこの特許文献2の製造方法は、熱間鍛造後において2回目の鍛造加工を行っておらず、製造方法において本発明とは基本的に異なったものである。
この1回目の熱間での鍛造加工は、鍛造部品の大まかな全体形状を形成する加工としての意味を持つ。
このときの加工は熱間での加工であるため変形抵抗は小さく、鍛造金型への負荷を可及的に小さくすることができ、鍛造設備への負荷を抑えることができる。
そして更に引き続いて600〜540℃の温度に600秒以上保持する保持処理を行い、その後に室温までの冷却を行う。
尚、図1(B)のSは本発明に従って鍛造部品を製造したときのフェライト変態開始ノーズ(フェライト変態開始曲線)を表しており、S′は従来の製造方法に従って鍛造部品を製造したときのフェライト変態開始ノーズを表している。本発明では1回目の鍛造加工に続く急速冷却及び2回目の鍛造加工によってフェライト変態開始ノーズがS′→Sへと短時間側に移行している。
またFはフェライト変態終了ノーズ(フェライト変態終了曲線)を表しており、加工によりF´→Fへと短時間側に移行する。
尚、図1(B)中のBはベイナイト変態開始ノーズ(ベイナイト変態開始曲線)を表している。
また図1(B)の2点鎖線は、熱間での鍛造加工の後、そのまま室温まで空冷にて冷却する従来の製造方法の鍛造加工後のプロセスを模式的に表している。
即ちその変形帯16にて分断されたサイズが、パーライト粒14のサイズとなる。
因みにこの2回目の鍛造加工を高温度で行うと、オーステナイト粒12が直ぐに再結晶してしまい、変形帯16が直ぐに消えてしまうため高温度での鍛造加工は意味をなさない。
また本発明では、その後に600〜540℃の低い温度で所定時間保持する工程で、V炭窒化物が微細に析出し(低い温度での析出であるためV炭窒化物がフェライト素地中微細に析出する)、加えて本発明では、その所定温度での保持をフェライト変態が完了するまで行うため、鋼に固溶していたVがその添加量に見合った量でV炭窒化物として多量にフェライト素地中に析出する。
即ち本発明によればV添加量に見合った量でV炭窒化物が多量に析出し、しかもそのV炭窒化物が微細に析出する。またこれと併せてマトリックス組織の微細化により鍛造部品の強度が高強度化する。
即ち本発明では、全体として鍛造設備への負荷は小さく、既存の鍛造設備をそのまま用いることが可能で、鍛造部品製造のためのコストを安価に抑えることができる。
また2回目の鍛造加工後の600〜540℃の温度での保持の時間は600秒以上,1500秒以下とすることが望ましい。
C:0.35〜0.55%
Cは強度向上のための重要な元素であって、0.35%未満では強度不足となる。しかしながら0.55%を越えると引張強度が高くなり、切削性を損なう。
Siはフェライトに固溶して耐力向上に寄与する。但し含有量が0.20%未満では強度不足となる。一方1.20%を越えて添加すると切削性の低下や熱間鍛造性の劣化を招く。
Mnは鋼の焼入性を高めて強度向上に有効である。但し0.50%未満では強度不足となる。一方1.30%を越えるとベイナイト組織を生じ易くなり、切削性の悪化を招く。
Cuは析出強化による強度向上に寄与する。但し0.5%を超えると熱間加工性が悪化するため0.5%を上限とする。
Niは鋼の焼入性を高めて強度向上に有効な元素である。但しあまり多量に添加すると焼入性が過剰となり、ベイナイト組織を形成することと、経済性を損ねるため、0.5%以下とする。
Crは鋼の焼入性を高めて強度向上に有効である。但し0.50%未満では強度不足となる。一方1.30%を越えるとベイナイト組織を生じ易くなり、切削性の悪化を招く。
Vはフェライト中に炭化物あるいは炭窒化物として析出して強度を向上させる重要な元素である。0.20%未満ではこの効果が十分に得られない。但し0.5%を越えると鋼の経済性が損なわれる。
NはVと炭窒化物を形成し強度向上に寄与する。この作用を有効に利用するためには0.0080%以上含有させることが望ましい。但し0.0200%を越えると熱間鍛造性が悪化するため、これ以下に抑える必要がある。
添加したVを十分に固溶させるため、加熱温度は1100℃以上とする。
鍛造荷重の増大を防止するため、1050℃以上の温度で1回目の鍛造を行う必要がある。
冷却中にフェライト変態を生ぜしめないため、この速度以上の速い速度で冷却を行う必要がある。フェライト変態が発生すると粗大なV炭窒化物が析出し、十分な析出強化が得られなくなる。
但しあまり加工量が大きいと鍛造設備への負荷が大きくなるため、30%以下に抑えることが望ましい。
2回目鍛造後の保持温度:600〜540℃
これらの温度が上記下限値よりも低い温度であると、ベイナイトが析出して耐力が低下する。従って2回目の鍛造加工及びその後の保持については540℃以上とする必要がある。
一方2回目の鍛造加工及びその後の保持の温度が高過ぎると、変態が短時間で完了しなくなるため、2回目の鍛造加工については580℃以下、その後の温度保持は600℃以下とする必要がある。
保持の時間が短か過ぎると変態が完了せず、その後の冷却で急冷を行ったときにマルテンサイト変態が生じてしまう。従って最短でも600秒以上の保持が必要である。
一方保持時間が長過ぎると鋼が軟化し、耐力が低下してしまうため、1500秒以下の保持時間とすることが望ましい。
表1に示す化学組成の鋼(表1中の各成分の数値は質量%で残部はFe。表1ではVが0.45%含有されている)を用いて、図3に示す鍛造部品(ここではテストピース)20を製造した。
詳しくは、表2中のB,C(B,Cは実施例)については、図4(イ)のプロセス(I)に従ってφ26×90mmの素材22(図3参照)を高周波誘導加熱(IH加熱)で1200℃まで加熱して60秒保持し、その後1100℃まで空冷した後、圧下率30%で1回目の鍛造加工を行い、中間加工品24(図3参照)とした後、更に10℃/sの速度で冷却して、表2に示す温度で引続き連続して2回目の鍛造加工(圧下率10%)を行い、引続き連続して同じ温度で600秒保持した後、3℃/sの冷却速度で室温まで冷却した。
例えば図3に示すように中間加工品24の高さをh,鍛造部品20の高さをh′としたとき、中間加工品24から鍛造部品20を加工したときの圧下率は
圧下率=(h−h′)/h×100
で表される。
尚引張試験はJIS Z 2241に準じて行った。試験片はJIS Z 2201に規定する試験片とした。
一方比較例としてのDは、2回目の鍛造加工に先立つ冷却の際の冷却速度が3℃/sと小さいため、冷却途中に粗大なV炭窒化物が析出して、そのため十分な強度向上が得られていない。
また比較例Eについては、2回目の鍛造加工温度及びその後の保持温度が低いため、ベイナイト(B)が析出してしまっている。そのため切削性が悪い。
比較例Gは、2回目の鍛造加工後の保持時間が短か過ぎ、変態が完了しないまま冷却したためにマルテンサイト組織となっている。
これに対し実施例のB,Cは0.2%耐力が高く、強度向上が十分に行われている。
その結果が表4に示してある。
Claims (1)
- 質量%で
C:0.35〜0.55%
Si:0.20〜1.20%
Mn:0.50〜1.30%
Cu:0.5%以下
Ni:0.5%以下
Cr:0.05〜0.5%
V:0.20%〜0.45%
N:0.0080〜0.0200%
を含有し、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する熱間鍛造用非調質鋼を一旦1100℃以上に加熱して1050℃以上の熱間で1回目の鍛造加工を行った後、10℃/s以上の速い冷却速度で冷却を行って、引き続き連続して580〜540℃の温度範囲で2回目の鍛造加工を行い、引き続き連続して600℃〜540℃の温度範囲に600秒以上保持する保持処理を行った後、室温まで冷却することを特徴とするフェライト・パーライト組織を有する高強度非調質鍛造部品の製造方法。
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