以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1および図2は本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の断面構成を表しており、図2では図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して示している。ここで説明する二次電池は、例えば、負極22の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
この二次電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。この円柱状の電池缶11を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金などの金属材料によって構成されている。なお、電池缶11が鉄によって構成される場合には、例えば、ニッケルなどの鍍金が施されてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、その内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることによって取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の金属材料によって構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより、電流を制限して大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料によって構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には、センターピン24が挿入されていてもよい。この巻回電極体20では、アルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード25が正極21に接続されていると共に、ニッケルなどの金属材料によって構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされて電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接などされて電気的に接続されている。
正極21は、例えば、一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、セレン化ニオブなどのカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
なお、正極活物質層21Bは、必要に応じて、上記した正極活物質と共に、正極結着剤や正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
正極結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
正極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
負極22は、例えば、一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されているのが好ましい。いわゆるアンカー効果によって負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理によって微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法によって負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法を使用して作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。この際、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量は、正極21の放電容量よりも大きくなっているのが好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)あるいはLiSiOなどが挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnSiO3 、LiSnOあるいはMg2 Snなどが挙げられる。
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として有する負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2および第3の構成元素を有することにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を有していてもよい。より高い効果が得られるからである。
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質との反応性が低減されるからである。
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性あるいは非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素などと結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタするのが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料が負極22中に存在する場合には、二次電池を解体して負極22を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極22の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが望ましい。
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させることによって形成可能である。また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性あるいは非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミル装置やアトライタなどの製造装置を用いることができる。
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いるのが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮されるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるのが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下であるのが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散していてもよいし、負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、それらの構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の電子伝導性が向上するからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても、公知の手法を使用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されもよい。
上記した負極活物質は、複数の粒子状をなしている。すなわち、負極活物質層22Bは、複数の粒子状の負極活物質(以下、単に「負極活物質粒子」という。)を有しており、その負極活物質粒子は、例えば、上記した気相法などによって形成されている。ただし、負極活物質粒子は、気相法以外の方法によって形成されていてもよい。
負極活物質粒子が気相法などの堆積法によって形成される場合には、その負極活物質粒子が単一の堆積工程を経て形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程を経て形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う蒸着法などによって負極活物質粒子を形成する場合には、その負極活物質粒子が多層構造を有しているのが好ましい。負極材料の堆積工程を複数回に分割して行う(負極材料を順次薄く形成して堆積させる)ことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して負極集電体22Aが高熱に晒される時間が短くなり、熱的ダメージを受けにくくなるからである。
この負極活物質粒子は、例えば、負極集電体22Aの表面から負極活物質層22Bの厚さ方向に成長しており、その根元において負極集電体22Aに連結されているのが好ましい。充放電時において負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるからである。この場合には、負極活物質粒子が気相法などによって形成されており、上記したように、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質粒子に拡散していてもよいし、負極活物質粒子の構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散しあっていてもよい。
特に、負極活物質層22Bは、複数の負極活物質粒子と共に、負極活物質粒子の表面を被覆する酸化物含有膜および負極活物質層22B内の隙間に設けられたリチウムと合金化しない金属材料のうちの少なくとも一方を含んでいる。
酸化物含有膜は、負極活物質粒子の表面、すなわち酸化物含有膜を設けないとしたならば電解液と接することとなる負極活物質粒子の表面を被覆している。負極活物質層22Bが酸化物含有膜を含んでいるのは、その酸化物含有膜が電解液に対する保護膜として機能し、充放電を繰り返しても電解液の分解反応が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。なお、酸化物含有膜は、負極活物質粒子の表面の全部を被覆していてもよいし、一部だけを被覆していてもよいが、中でも、全部を被覆しているのが好ましい。電解液の分解反応が効果的に抑制されるからである。
この酸化物含有膜は、例えば、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群のうちの少なくとも1種の酸化物を含有しており、中でも、ケイ素の酸化物を含有しているのが好ましい。負極活物質粒子の表面を全体に渡って容易に被覆しやすいと共に、優れた保護作用が得られるからである。もちろん、酸化物含有膜は、上記以外の他の酸化物を含有していてもよい。
酸化物含有膜は、例えば、気相法あるいは液相法によって形成されており、中でも、液相法によって形成されているのが好ましい。負極活物質粒子の表面を広い範囲に渡って容易に被覆しやすいからである。液相法としては、液相析出法、ゾルゲル法、塗布法あるいはディップコーティング法などが挙げられ、中でも、液相析出法、ゾルゲル法あるいはディップコーティング法が好ましく、液相析出法がより好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、酸化物含有膜は、上記した一連の形成方法のうち、単独の形成方法によって形成されていてもよいし、2種以上の形成方法によって形成されていてもよい。
液相析出法によって酸化物含有膜を形成すれば、酸化物を容易に制御しながら、酸化物含有膜を析出させることができる。この液相析出法は、例えば、ケイ素、スズあるいはゲルマニウムのフッ化物錯体の溶液に、アニオン捕捉剤としてフッ素(F)を配位しやすい溶存種を添加して混合したのち、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを浸漬させて、フッ化物錯体から生じるフッ素アニオンを溶存種に捕捉させることにより、負極活物質層22Bの表面に酸化物を析出させて酸化物含有膜を形成する方法である。なお、フッ化物錯体に代えて、例えば、硫酸イオンなどの他のアニオンを生じるケイ素の化合物、スズの化合物あるいはゲルマニウムの化合物を用いてもよい。
ゾルゲル法によって酸化物含有膜を形成する場合には、フッ素アニオン、または、フッ素と長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素のうちの1種との化合物(具体的には、フッ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオンあるいはヘキサフルオロリン酸イオンなど)を反応促進物質として含む処理液を用いるのが好ましい。この処理液を用いて形成された酸化物含有膜では、アルコキシ基の含有量が低いため、その酸化物含有膜を負極22に用いた場合に、ガス発生量が減少するからである。
酸化物含有膜の厚さは、特に限定されないが、中でも、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましい。負極活物質粒子の表面を広い範囲に渡って被覆しやすいからである。詳細には、酸化物含有膜の厚さが0.1nmよりも薄いと、負極活物質粒子の表面を広範囲に渡って被覆しにくくなる可能性があり、厚さが500nmよりも厚いと、酸化物含有膜の形成量が多くなりすぎて、エネルギー密度が低下する可能性がある。この酸化物含有膜の厚さは、1nm以上200nm以下であるのがより好ましく、10nm以上150nm以下であるのがさらに好ましく、20nm以上100nm以下であればより一層好ましい。より高い効果が得られるからである。
リチウムと合金化しない金属材料(以下、単に「金属材料」という。)は、負極活物質層22B内の隙間、すなわち後述する負極活物質粒子間の隙間や負極活物質粒子内の隙間に設けられている。負極活物質層22Bが金属材料を含んでいるのは、金属材料を介して複数の負極活物質粒子が結着されると共に、上記した隙間に金属材料が存在することによって負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。
この金属材料は、例えば、リチウムと合金化しない金属元素を構成元素として有している。このような金属元素としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛および銅からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられ、中でも、コバルトが好ましい。上記した隙間に金属材料が容易に入り込みやすいと共に、優れた結着作用が得られるからである。もちろん、金属材料は、上記以外の他の金属元素を有していてもよい。ただし、ここで言う「金属材料」とは、単体に限らず、合金や金属化合物まで含む広い概念である。
金属材料は、例えば、気相法あるいは液相法によって形成されており、中でも、液相法によって形成されているのが好ましい。負極活物質層22B内の隙間に金属材料が入り込みやすいからである。液相法としては、例えば、電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などが挙げられ、中でも、電解鍍金法が好ましい。上記した隙間に金属材料がより入り込みやすいと共に、その形成時間が短くて済むからである。なお、金属材料は、上記した一連の形成方法のうち、単独の形成方法によって形成されていてもよいし、2種以上の形成方法によって形成されていてもよい。
負極活物質層22Bは、「酸化物含有膜および金属材料のうちの少なくとも一方を含んでいる」と説明していることから明らかなように、酸化物含有膜あるいは金属材料のいずれか一方だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。ただし、サイクル特性をより向上させるためには、双方を含んでいるのが好ましい。また、酸化物含有膜および金属材料の双方を含む場合には、どちらを先に形成してもよいが、サイクル特性をより向上させるためには、酸化物含有膜を先に形成するのが好ましい。
なお、負極活物質層22Bは、必要に応じて、上記した負極活物質等と共に、負極結着剤や負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、それぞれ正極結着剤および正極導電剤と同様である。
ここで、図3〜図6を参照して、負極22の詳細な構成について説明する。
まず、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を含む場合について説明する。図3は本発明の負極22の断面構造を模式的に表しており、図4は参考例の負極の断面構造を模式的に表している。図3および図4では、負極活物質粒子が単層構造を有している場合を示している。
本発明の負極では、図3に示したように、例えば、蒸着法などの気相法によって負極集電体22A上に負極材料が堆積されると、その負極集電体22A上に複数の負極活物質粒子221が形成される。この場合には、負極集電体22Aの表面が粗面化され、その表面に複数の突起部(例えば、電解処理によって形成された微粒子)が存在すると、負極活物質粒子221が上記した突起部ごとに厚さ方向に成長するため、複数の負極活物質粒子221が負極集電体22A上において配列されると共に根元において負極集電体22Aの表面に連結される。こののち、例えば、液相析出法などの液相法によって負極活物質粒子221の表面に酸化物含有膜222が形成されると、その酸化物含有膜222は負極活物質粒子221の表面をほぼ全体に渡って被覆し、特に、負極活物質粒子221の頭頂部から根元に至る広い範囲を被覆する。この酸化物含有膜222による広範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜222が液相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、液相法によって酸化物含有膜222を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部だけでなく根元まで広く及ぶため、その根元まで酸化物含有膜222によって被覆される。
これに対して、参考例の負極では、図4に示したように、例えば、気相法によって複数の負極活物質粒子221が形成されたのち、同様に気相法によって酸化物含有膜223が形成されると、その酸化物含有膜223は負極活物質粒子221の頭頂部だけを被覆する。この酸化物含有膜223による狭範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜223が気相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、気相法によって酸化物含有膜223を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部に及ぶものの根元まで及ばないため、その根元までは酸化物含有膜223によって被覆されない。
なお、図3では、気相法によって負極活物質層22Bが形成される場合について説明したが、塗布法や焼結法などの他の形成方法によって負極活物質層22Bが形成される場合においても同様に、複数の負極活物質粒子の表面をほぼ全体に渡って被覆するように酸化物含有膜が形成される。
次に、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共にリチウムと合金化しない金属材料を含む場合について説明する。図5は負極22の断面構造を拡大して表しており、(A)は走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真(二次電子像)、(B)は(A)に示したSEM像の模式絵である。図5では、複数の負極活物質粒子221がその粒子内に多層構造を有している場合を示している。
負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、その複数の負極活物質粒子221の配列構造、多層構造および表面構造に起因して、負極活物質層22B中に複数の隙間224が生じている。この隙間224は、主に、発生原因に応じて分類された2種類の隙間224A,224Bを含んでいる。隙間224Aは、隣り合う負極活物質粒子221間に生じるものであり、隙間224Bは、負極活物質粒子221内の各階層間に生じるものである。
なお、負極活物質粒子221の露出面(最表面)には、空隙225が生じる場合がある。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面にひげ状の微細な突起部(図示せず)が生じることに伴い、その突起部間に生じるものである。この空隙225は、負極活物質粒子221の露出面において、全体に渡って生じる場合もあれば、一部だけに生じる場合もある。ただし、上記したひげ状の突起部は、負極活物質粒子221の形成時ごとにその表面に生じるため、空隙225は、負極活物質粒子221の露出面だけでなく、各階層間にも生じる場合がある。
図6は負極22の他の断面構造を表しており、図5に対応している。負極活物質層22Bは、隙間224A,224Bに、リチウムと合金化しない金属材料226を有している。この場合には、隙間224A,224Bのうちのいずれか一方だけに金属材料226を有していてもよいが、双方に金属材料226を有しているのが好ましい。より高い効果が得られるからである。
この金属材料226は、隣り合う負極活物質粒子221間の隙間224Aに入り込んでいる。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子221が形成される場合には、上記したように、負極集電体22Aの表面に存在する突起部ごとに負極活物質粒子221が成長するため、隣り合う負極活物質粒子221間に隙間224Aが生じる。この隙間224Aは、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間224Aに金属材料226が充填されている。この場合には、隙間224Aの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。金属材料226の充填量は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
また、金属材料226は、負極活物質粒子221内の隙間224Bに入り込んでいる。詳細には、負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、各階層間に隙間224Bが生じる。この隙間224Bは、上記した隙間224Aと同様に、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間224Bに金属材料226が充填されている。この場合には、隙間224Bの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。
なお、負極活物質層22Bは、最上層の負極活物質粒子221の露出面に生じるひげ状の微細な突起部(図示せず)が二次電池の性能に悪影響を及ぼすことを抑えるために、空隙225に金属材料226を有していてもよい。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子221が形成される場合には、その表面にひげ状の微細な突起部が生じるため、その突起部間に空隙225が生じる。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面積の増加を招き、その表面に形成される不可逆性の被膜の量も増加させるため、電極反応(充放電反応)の進行度を低下させる原因となる可能性がある。したがって、電極反応の進行度の低下を抑えるために、上記した空隙225に金属材料226が埋め込まれている。この場合には、空隙225の一部でも埋め込まれていればよいが、その埋め込む量が多いほど好ましい。電極反応の進行度の低下がより抑えられるからである。図6において、最上層の負極活物質粒子221の表面に金属材料226が点在していることは、その点在箇所に上記した微細な突起部が存在していること表している。もちろん、金属材料226は、必ずしも負極活物質粒子221の表面に点在していなければならないわけではなく、その表面全体を被覆していてもよい。
特に、隙間224Bに入り込んだ金属材料226は、各階層における空隙225を埋め込む機能も果たしている。詳細には、負極材料が複数回に渡って堆積される場合には、その堆積時ごとに負極活物質粒子221の表面に上記した微細な突起部が生じる。このことから、金属材料226は、各階層における隙間224Bに充填されているだけでなく、各階層における空隙225も埋め込んでいる。
なお、図5および図6では、負極活物質粒子221が多層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224A,224Bの双方が存在している場合について説明したため、負極活物質層22Bが隙間224A,224Bに金属材料226を有している。これに対して、負極活物質粒子221が単層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224Aだけが存在する場合には、負極活物質層22Bが隙間224Aだけに金属材料226を有することとなる。もちろん、空隙225は両者の場合において生じるため、いずれの場合においても空隙225に金属材料226を有することとなる。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などによって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
このセパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、それに溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、化2で表される有機酸のうちの少なくとも1種を含有している。電解液の化学的安定性が向上するからである。化2に示した有機酸は、中央にカルボニル基(−C(=O)−)やスルホニル基(−S(=O)2 −)などの電子吸引性基を含む部位を有すると共に両末端に水酸基(−OH)を有する化合物である。
(Xは、−(O=)C−(C(R1)
2 )
a −C(=O)−、−(R2)
2 C−(C(R1)
2 )
b −C(=O)−、−(O=)
2 S−(C(R3)
2 )
c −S(=O)
2 −、−(R4)
2 C−(C(R3)
2 )
d −S(=O)
2 −、あるいは−(O=)C−(C(R5)
2 )
e −S(=O)
2 −である。ただし、R1〜R5は、水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。a〜eは、0〜4の整数である。)
なお、上記した「ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基」とは、アルキル基あるいはアリール基のうちの少なくとも一部の水素がハロゲンによって置換された基である。
化2中のハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素が好ましい。他のハロゲンと比較して、電解液の化学的安定性が高くなるからである。すなわち、化2中のハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基としては、フッ素基、フッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基が好ましい。
化2中のa〜eは、0〜4の整数であれば特に限定されないが、中でも、0であるのが好ましい。0以外である場合と比較して、電解液の化学的安定性が高くなるからである。
溶媒中における化2に示した有機酸の含有量は、任意に設定可能であるが、できるだけ少ないのが好ましい。有機酸の含有量が多すぎると、かえって電解液の化学的安定性が低下する可能性があるからである。電解液の化学的安定性を高くし、優れた電池容量およびサイクル特性を得るためには、有機酸の含有量が0.01重量%以上3重量%以下であるのが好ましく、0.01重量%以上1重量%以下であるのがより好ましい。含有量が0.01重量%よりも少ないと、電解液の化学的安定性が十分かつ安定に得られない可能性があるからである。また、含有量が3重量%よりも多いと、上記したように電解液の化学的安定性が低下する可能性があると共に、電池容量が低下する可能性もあるからである。
化2に示した有機酸の具体例としては、化3〜化12で表される化合物が挙げられる。確認までに、Xの種類について説明しておくと、そのXは、化3および化4において−(O=)C−(C(R1)2 )a −C(=O)−であり、化5および化6において−(R2)2 C−(C(R1)2 )b −C(=O)−であり、化7および化8において−(O=)2 S−(C(R3)2 )c −S(=O)2 −であり、化9および化10において−(R4)2 C−(C(R3)2 )d −S(=O)2 −であり、化11および化12において−(O=)C−(C(R5)2 )e −S(=O)2 −である。
もちろん、有機酸が化2に示した構造を有していれば、化3〜化12に示した構造を有するものに限定されないことは言うまでもない。この場合には、幾何異性体が存在する化合物については、その幾何異性体も含まれる。
この溶媒は、化2に示した有機酸と共に、他の有機溶媒などの非水溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含有していてもよい。以下で説明する一連の溶媒は、任意に組み合わせてもよい。
非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、あるいはジメチルスルホキシドなどが挙げられる。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。この場合には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
特に、溶媒は、化13で表されるハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルおよび化14で表されるハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。
(R11〜R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
(R17〜R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
化13中のR11〜R16は、同一でもよいし、異なってもよい。すなわち、R11〜R16の種類については、上記した一連の基の範囲内において個別に設定可能である。化14中のR17〜R20についても、同様である。
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素あるいは臭素が好ましく、フッ素がより好ましい。高い効果が得られるからである。他のハロゲンと比較して、高い効果が得られるからである。
ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上であってもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、炭酸ビス(フルオロメチル)が好ましい。高い効果が得られるからである。
化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルとしては、例えば、化15および化16で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、化15に示した(1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)のテトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4−クロロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)のテトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(10)の4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(11)の4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(12)の4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。また、化16に示した(1)の4−フルオロ−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−メチル−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)の5−(1,1−ジフルオロエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)の4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
また、溶媒は、化17〜化19で表される不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有しているのが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)
(R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
化17に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、あるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられ、中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
化18に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられ、中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R23〜R26としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在していてもよい。
化19に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(化19に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものであってもよい。
なお、不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、化17〜化19に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などであってもよい。
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)や酸無水物を含有しているのが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。
スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられ、中でも、プロペンスルトンが好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物あるいはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物あるいはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物あるいはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられ、中でも、コハク酸無水物あるいはスルホ安息香酸無水物が好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種あるいは2種以上を含有している。以下で説明する一連の電解質塩は、任意に組み合わせてもよい。
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。優れた電池容量が得られるからである。
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
特に、電解質塩は、化20〜化22で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウム等と一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。なお、化20中のR31およびR33は、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、化21中のR41〜R43および化22中のR51およびR52についても同様である。
(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−(O=)C−R32−C(=O)−、−(O=)C−C(R33)
2 −あるいは−(O=)C−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−(O=)C−(C(R41)
2 )
b4−C(=O)−、−(R43)
2 C−(C(R42)
2 )
c4−C(=O)−、−(R43)
2 C−(C(R42)
2 )
c4−C(R43)
2 −、−(R43)
2 C−(C(R42)
2 )
c4−S(=O)
2 −、−(O=)
2 S−(C(R42)
2 )
d4−S(=O)
2 −あるいは−(O=)C−(C(R42)
2 )
d4−S(=O)
2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−(O=)C−(C(R51)
2 )
d5−C(=O)−、−(R52)
2 C−(C(R51)
2 )
d5−C(=O)−、−(R52)
2 C−(C(R51)
2 )
d5−C(R52)
2 −、−(R52)
2 C−(C(R51)
2 )
d5−S(=O)
2 −、−(O=)
2 S−(C(R51)
2 )
e5−S(=O)
2 −あるいは−(O=)C−(C(R51)
2 )
e5−S(=O)
2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
なお、長周期型周期表とは、IUPAC(国際純正・応用化学連合)が提唱する無機化学命名法改訂版によって表されるものである。具体的には、1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
化20に示した化合物としては、例えば、化23の(1)〜(6)で表される化合物などが挙げられる。化21に示した化合物としては、例えば、化24の(1)〜(8)で表される化合物などが挙げられる。化22に示した化合物としては、例えば、化25で表される化合物などが挙げられる。なお、化20〜化22に示した構造を有する化合物であれば、化23〜化24に示した化合物に限定されないことは言うまでもない。
また、電解質塩は、化26〜化28で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有していてもよい。上記した六フッ化リン酸リチウム等と一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。なお、化26中のmおよびnは、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、化28中のp、qおよびrについても同様である。
(R61は炭素数が2以上4以下の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
化26に示した鎖状の化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 F5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 F7 SO2 ))、あるいは(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 ))などが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
化27に示した環状の化合物としては、例えば、化29で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、化29に示した(1)の1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、(2)の1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、(3)の1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、(4)の1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムなどである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウムが好ましい。高い効果が得られるからである。
化28に示した鎖状の化合物としては、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。この範囲外では、イオン伝導性が極端に低下する可能性があるからである。
この二次電池は、例えば、以下の手順によって製造される。
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、正極結着剤と、正極導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどによって正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
次に、負極22を作製する。最初に、電解銅箔などからなる負極集電体22Aを準備したのち、蒸着法などの気相法によって負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させて、ケイ素を構成元素として有する複数の負極活物質粒子を形成する。こののち、液相析出法などの液相法によって酸化物含有膜を形成したり、電解鍍金法などの液相法によって金属材料を形成したり、それらの双方を形成することにより、負極活物質層22Bを形成する。
次に、化2に示した有機酸のうちの少なくとも1種と、他の有機溶媒などとを混合して溶媒を準備したのち、その溶媒に電解質塩を溶解させて、電解液を調製する。
二次電池の組み立ては、以下のようにして行う。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら電池缶11の内部に収納すると共に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接し、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。続いて、上記した電解液を電池缶11の内部に注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の負極活物質層22Bが、ケイ素を有する複数の負極活物質粒子を含むと共に、負極活物質粒子の表面を被覆する酸化物含有膜および負極活物質層22B内の隙間に設けられたリチウムと合金化しない金属材料のうちの少なくとも一方を含んでいる。また、電解液の溶媒が、化2に示した有機酸のうちの少なくとも1種を含有している。この場合には、負極活物質層が酸化物含有膜および金属材料を含んでいない場合と比較して、充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されると共に電解液の分解反応が抑制される。また、電解液の溶媒が化2に示した有機酸を含有していない場合と比較して、電解液の化学的安定性が向上するため、充放電時における電解液の分解反応が抑制される。したがって、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性を向上させることができる。この場合には、溶媒中における有機酸の含有量が0.01重量%以上3重量%以下であれば、高い効果を得ることができる。
特に、負極22が負極活物質として高容量化に有利なケイ素を有する場合に、サイクル特性が著しく向上するため、炭素材料などの他の負極材料を含有する場合と比較して、高い効果を得ることができる。
この他、電解液の溶媒が、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルおよび化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種や、化17〜化19に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種や、スルトンや、酸無水物を含有していれば、より高い効果を得ることができる。特に、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルおよび化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を用いる場合には、ハロゲンの数が多いほど、より高い効果を得ることができる。
また、電解液の電解質塩が、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種や、化20〜化22に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種や、化26〜化28に示した化合物からなる群のうちの少なくも1種を含有していれば、より高い効果を得ることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は第2の実施の形態に係る二次電池の分解斜視構成を表しており、図8は図7に示した巻回電極体30のVIII−VIII線に沿った断面を拡大して示している。
この二次電池は、例えば、上記した第1の実施の形態の二次電池と同様にリチウムイオン二次電池であり、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状あるいは網目状になっている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着あるいは接着剤によって互いに接着された構造を有している。
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムによって構成されていてもよい。
電極巻回体30は、セパレータ35および電解質36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。
正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものであり、その負極活物質層34Bが正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上記した第1の実施の形態の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
電解質36は、電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
電解液の組成は、上記した第1の実施の形態の二次電池における電解液の組成と同様である。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、あるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。電気化学的に安定だからである。
ゲル状の電解質である電解質36において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
この二次電池は、例えば、以下の3種類の製造方法によって製造される。
第1の製造方法では、最初に、例えば、上記した第1の実施の形態の二次電池における正極21および負極22の作製手順と同様の手順により、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を作製する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図7および図8に示した二次電池が完成する。
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に負極34に負極リード32を取り付けたのち、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質36が形成されるため、二次電池が完成する。
この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、二次電池の膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒などが電解質36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御されるため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質36との間において十分な密着性が得られる。
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、負極34および電解液が上記した第1の実施の形態の二次電池における負極22および電解液と同様の構成および組成を有しているので、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する上記以外の効果は、第1の実施の形態の二次電池と同様である。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
以下の手順により、図7および図8に示したラミネートフィルム型の二次電池を作製した。この際、負極34の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
まず、正極33を作製した。最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃×5時間の条件で焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部と、正極導電剤としてグラファイト6質量部とを混合して正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、バーコータによって帯状のアルミニウム箔(厚さ=12μm)からなる正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機によって圧縮成形して正極活物質層33Bを形成した。
次に、負極34を作製した。最初に、粗面化された電解銅箔からなる負極集電体34A(厚さ=22μm)を準備したのち、電子ビーム蒸着法によって負極集電体34Aの両面に負極活物質としてケイ素を堆積させることにより、複数の負極活物質粒子を形成した。この負極活物質粒子を形成する場合には、10回の堆積工程を経ることにより、10層構造となるようにした。また、負極集電体34Aの片面側における負極活物質粒子の厚さ(総厚)を6μmとした。続いて、液相析出法によって負極活物質粒子の表面にケイ素の酸化物(SiO2 )を析出させることにより、酸化物含有膜を形成した。この酸化物含有膜を形成する場合には、ケイフッ化水素酸にアニオン補足剤としてホウ素を溶解させた溶液中に、負極活物質粒子が形成された負極集電体34Aを3時間浸積し、その負極活物質粒子の表面にケイ素の酸化物を析出させたのち、水洗して減圧乾燥した。最後に、複数の負極活物質粒子および酸化物含有膜が形成された負極集電体34Aに、電解鍍金法によってコバルト(Co)の鍍金膜を成長させて金属材料を形成することにより、負極活物質層34Bを形成した。この金属材料を形成する場合には、鍍金浴にエアーを供給しながら通電して負極集電体34Aの両面にコバルトを堆積させた。この際、鍍金液として日本高純度化学株式会社製のコバルト鍍金液を用い、電流密度を2A/dm2 〜5A/dm2 とし、鍍金速度を10nm/秒とした。
次に、電解液を調製した。最初に、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを混合させたのち、化2に示した有機酸である化3(1)の化合物を加えて、溶媒を準備した。この際、ECとDECとの混合比を重量比で30:70とし、溶媒中における化3(1)の化合物の含有量を0.01重量%とした。こののち、溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶解させた。この際、六フッ化リン酸リチウムの含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。
最後に、正極33および負極34と共に電解液を用いて二次電池を組み立てた。最初に、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を溶接した。続いて、正極33と、微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ35(厚さ=25μm)と、負極54とを積層および巻回させたのち、粘着テープからなる保護テープ37で巻き終わり部分を固定して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成した。続いて、外側から、ナイロンフィルム(厚さ=30μm)と、アルミニウム箔(厚さ=40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ=30μm)とが積層された3層構造のラミネートフィルム(総厚=100μm)からなる外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺を除く外縁部同士を熱融着して、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納した。続いて、外装部材40の開口部から電解液を注入してセパレータ35に含浸させて巻回電極体30を作製した。最後に、真空雰囲気中において外装部材40の開口部を熱融着して封止することにより、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。この二次電池については、正極活物質層33Bの厚さを調節することにより、満充電時において負極34にリチウム金属が析出しないようにした。
(実施例1−2〜1−5)
化3(1)の化合物の含有量を0.1重量%(実施例1−2)、0.5重量%(実施例1−3)、1重量%(実施例1−4)、あるいは3重量%(実施例1−5)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−1)
酸化物含有膜および金属材料を形成せず、化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−2)
化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−3)
酸化物含有膜および金属材料を形成しなかったことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
これらの実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−3の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
サイクル特性を調べる際には、最初に、23℃の雰囲気中において2サイクル充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同雰囲気中においてサイクル数の合計が100サイクルとなるまで繰り返し充放電させて、100サイクル目の放電容量を測定した。最後に、放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充放電条件としては、0.2Cの電流で上限電圧4.2Vまで定電流定電圧充電したのち、0.2Cの電流で終止電圧2.7Vまで定電流放電した。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。
初回充放電特性を調べる際には、最初に、23℃の雰囲気中において2サイクル充放電させてから充電させて、充電容量を測定した。続いて、同雰囲気中において放電させて、放電容量を測定した。最後に、初回充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100を算出した。充放電条件については、サイクル特性を調べた場合と同様にした。
なお、上記したサイクル特性および初回充放電特性を調べる際の手順および条件は、以降の一連の実施例および比較例についても同様である。
表1に示したように、負極34の負極活物質層34Bが酸化物含有膜および金属材料を含むと共に電解液の溶媒が化3(1)の化合物を含有する実施例1−1〜1−5では、比較例1−1〜1−3と比較して、化3(1)の化合物の含有量に依存せずに、80%以上の高い初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が高くなった。
詳細には、酸化物含有膜および金属材料を含んでいるが化3(1)の化合物を含有してない比較例1−2では、酸化物含有膜および金属材料を含んでいないと共に化3(1)の化合物も含有してない比較例1−1と比較して、80%以上の高い初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が著しく高くなった。この結果は、酸化物含有膜および金属材料が、初回充放電効率を低下させることなく放電容量維持率を増加させることを表している。しかしながら、比較例1−2において得られた放電容量維持率は未だ十分とは言えないことから、酸化物含有膜および金属材料だけでは放電容量維持率を十分に高くすることができない。
また、酸化物含有膜および金属材料を含んでいないが化3(1)の化合物を含有する比較例1−3では、比較例1−1と比較して、放電容量維持率が著しく高くなったが、初回充放電効率が80%を下回った。この結果は、化3(1)の化合物が、放電容量維持率を増加させる一方で初回充放電効率を低下させてしまうことを表している。
これに対して、酸化物含有膜および金属材料を含んでいると共に化3(1)の化合物も含有している実施例1−1〜1−5では、比較例1−1〜1−3とは異なり、80%以上の高い初回充放電効率が得られたと共に、80%以上の高い放電容量維持率も得られた。この結果は、酸化物含有膜および金属材料と化3(1)の化合物とを併用することにより、初回充放電効率の低下が抑えられつつ放電容量維持率が著しく高くなることを表している。
特に、実施例1−1〜1−5では、化3(1)の化合物の含有量が増加するにしたがって、放電容量維持率が増加すると共に初回充放電効率が減少する傾向を示した。この場合には、含有量が0.01重量%よりも小さくなると、放電容量維持率が十分に高くならず、3重量%よりも大きくなると、高い放電容量維持率および初回充放電効率が得られる一方で電池容量が低下しやすくなった。また、含有量が1重量%よりも大きくなると、初回充放電効率が低下しやすくなった。
これらのことから、本発明の二次電池では、負極34の負極活物質層34Bが酸化物含有膜および金属材料を含むと共に、電解液の溶媒が化3(1)の化合物を含有することにより、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。この場合には、溶媒中における化3(1)の化合物の含有量が0.01重量%以上3重量%以下であれば、優れた電池容量、サイクル特性および初回充放電特性が得られることも確認された。
(実施例2−1〜2−6)
化2に示した有機酸として、化3(1)の化合物に代えて、化3(2)の化合物(実施例2−1)、化3(3)の化合物(実施例2−2)、化6(7)の化合物(実施例2−3)、化7(3)の化合物(実施例2−4)、化11(2)の化合物(実施例2−5)、あるいは化12(1)の化合物(実施例2−6)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−6の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、化3(2)の化合物等を用いた実施例2−1〜2−6においても、実施例1−4と同様に、比較例1−1〜1−3と比較して、80%以上の高い初回充放電効率が得られたと共に、ほぼ80%以上の高い放電容量維持率が得られた。
このことから、本発明の二次電池では、負極34の負極活物質層34Bが酸化物含有膜および金属材料を含むと共に、電解液の溶媒が化3(2)の化合物等を含有することにより、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。
なお、表1および表2では、化2に示した有機酸を単独で用いた場合の結果だけを示しており、その有機酸を2種以上混合させた場合の結果を示していない。しかしながら、化2に示した有機酸を単独で用いた場合において効果が得られることは表1および表2の結果から明らかであり、その有機酸を2種以上混合させた場合において効果が喪失する特別な理由も考えられない。よって、化2に示した有機酸を2種以上混合させた場合においても、単独で用いた場合と同様の効果が得られることは、明らかである。
よって、表1および表2に示した結果から、本発明の二次電池では、負極34の負極活物質層34Bが酸化物含有膜および金属材料を含むと共に、電解液の溶媒が化2に示した有機酸を含有することにより、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。この場合には、溶媒中における有機酸の含有量が0.01重量%以上3重量%以下であれば、優れた電池容量、サイクル特性および初回充放電特性が得られることも確認された。
(実施例3−1,3−2)
溶媒としてDECに代えて炭酸ジメチル(DMC:実施例3−1)あるいは炭酸エチルメチル(EMC:実施例3−2)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(実施例3−3)
溶媒として炭酸プロピレン(PC)を加え、溶媒の組成(EC:PC:DEC)を重量比で10:20:70としたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(実施例3−4〜3−7)
溶媒として、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルである炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)(実施例3−4)、または化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC:実施例3−5)あるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC:実施例3−6)、または化17に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC:実施例3−7)を加えたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。この際、溶媒中におけるDFDMC等の含有量を5重量%とした。
(実施例3−8,3−9)
溶媒として、スルトンであるプロペンスルトン(PRS:実施例3−8)、あるいは酸無水物であるスルホ安息香酸無水物(SBAH:実施例3−9)を加えたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。この際、溶媒中におけるPRS等の含有量を1重量%とした。
(比較例2−1〜2−4)
酸化物含有膜および金属材料を形成せず、化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例3−5〜3−7,3−9と同様の手順を経た。
(比較例2−5〜2−8)
化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例3−5〜3−7,3−9と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1〜3−9および比較例2−1〜2−8の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表3および表4に示した結果が得られた。
表3および表4に示したように、溶媒の組成を変更した実施例3−1〜3−9においても、実施例1−4と同様に、比較例1−1,1−2,2−1〜2−8と比較して、80%以上の初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が高くなった。
特に、DECをDMC等に変更したり、PCを加えた実施例3−1〜3−3では、実施例1−4と比較して、同等の初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が高くなった。
また、DFDMC等を加えた実施例3−4〜3−7では、実施例1−4と比較して、80%以上の初回充放電効率を維持したまま、放電容量維持率が高くなった。この場合には、実施例3−5,3−6の比較から明らかなように、ハロゲンの数が多くなると、放電容量維持率がより高くなる傾向を示した。
また、PRSやSBAHを加えた実施例3−8,3−9では、実施例1−4と比較してほぼ同等の放電容量維持率および初回充放電効率が得られた。
なお、ここでは、溶媒として化17に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステル(炭酸ビニレン系化合物)を用いた場合の結果だけを示しており、化18あるいは化19に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステル(炭酸ビニルエチレン系化合物等)を用いた場合の結果を示していない。しかしながら、炭酸ビニルエチレン化合物等は、炭酸ビニレン系化合物と同様に放電容量維持率を増加させる機能を果たすため、前者を用いた場合においても後者を用いた場合と同様の結果が得られることは、明らかである。このことは、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルおよび化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルを任意の組み合わせで2種以上混合した場合や、化17〜化19に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルを任意の組み合わせで2種以上混合した場合についても同様である。
これらのことから、本発明の二次電池では、溶媒の組成を変更した場合においても、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。この場合には、溶媒として、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルおよび化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種や、化17〜化19に示した不飽和結合を有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種や、スルトンや、酸無水物を用いれば、特性がより向上することも確認された。特に、化13に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルや化14に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルを用いる場合には、ハロゲンの数が多くなれば特性がより向上することも確認された。
(実施例4−1〜4−3)
電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 :実施例4−1)、化20に示した化合物である化23(6)の化合物(実施例4−2)、あるいは化26に示した化合物であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI:実施例4−3)を加えたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。この際、六フッ化リン酸リチウムの含有量を溶媒に対して0.9mol/kgとし、四フッ化ホウ酸リチウム等の含有量を溶媒に対して0.1mol/kgとした。
これらの実施例4−1〜4−3の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
表5に示したように、電解質塩として四フッ化ホウ酸リチウム等を加えた実施例4−1〜4−3では、実施例1−4と比較して、80%以上の初回充放電効率を維持したまま、同等以上の放電容量維持率が得られた。
なお、ここでは、電解質塩として四フッ化ホウ酸リチウム、または化20あるいは化26に示した化合物を用いた場合の結果だけを示しており、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、または化21、化22、化27あるいは化28に示した化合物を用いた場合の結果を示していない。しかしながら、過塩素酸リチウム等は、四フッ化ホウ酸リチウム等と同様に放電容量維持率を増加させる機能を果たすため、前者を用いた場合においても後者を用いた場合と同様の結果が得られることは、明らかである。このことは、上記した一連の電解質塩を任意の組み合わせで2種以上混合した場合についても同様である。
これらのことから、本発明の二次電池では、電解質塩の種類を変更した場合においても、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。この場合には、電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、化20〜化22に示した化合物、あるいは化26〜化28に示した化合物を用いれば、特性がより向上することも確認された。
(実施例5)
金属材料を形成せずに酸化物含有膜だけを形成したことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(比較例3)
化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例5と同様の手順を経た。
これらの実施例5および比較例3の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
表6に示したように、酸化物含有膜だけを形成した場合においても、表1に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、酸化物含有膜を形成した実施例5では、それを形成しなかった比較例3と比較して、80%以上の初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が高くなった。
なお、ここでは酸化物含有膜としてケイ素の酸化物を形成した場合の結果だけを示しており、ゲルマニウムやスズの酸化物を形成した場合の結果を示していない。しかしながら、ゲルマニウム等の酸化物は、ケイ素の酸化物と同様に放電容量維持率を増加させる機能を果たすため、前者を用いた場合においても後者を用いた場合と同様の結果が得られることは、明らかである。このことは、上記した一連の酸化物を任意の組み合わせで2種以上混合した場合についても同様である。
これらのことから、本発明の二次電池では、負極34の負極活物質層34Bが酸化物含有膜だけを含む場合においても、電解液の溶媒が化2に示した有機酸を含有することにより、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。
(実施例6)
酸化物含有膜を形成せずに金属材料だけを形成したことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(比較例4)
化3(1)の化合物を用いなかったことを除き、実施例6と同様の手順を経た。
これらの実施例6および比較例4の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
表7に示したように、金属材料だけを形成した場合においても、表1に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、金属材料を形成した実施例6では、それを形成しなかった比較例4と比較して、80%以上の初回充放電効率が得られたと共に、放電容量維持率が高くなった。
なお、ここでは金属材料としてコバルトの鍍金膜を形成した場合の結果だけを示しており、鉄、ニッケル、亜鉛あるいは銅の鍍金膜を形成した場合の結果を示していない。しかしながら、鉄等の鍍金膜は、コバルトの鍍金膜等と同様に放電容量維持率を増加させる機能を果たすため、前者を用いた場合においても後者を用いた場合と同様の結果が得られることは、明らかである。このことは、上記した一連の鍍金膜を任意の組み合わせで2種以上混合した場合についても同様である。
これらのことから、本発明の二次電池では、負極34の負極活物質層34Bが金属材料だけを含む場合においても、電解液の溶媒が化2に示した有機酸を含有することにより、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。
ここで、化3(1)の化合物の含有量が同一である3つの実施例1−4,5,6の間で比較すると、放電容量維持率は、酸化物含有膜あるいは金属材料のいずれか一方だけを形成した場合よりも、酸化物含有膜および金属材料の双方を形成した場合において高くなった。また、放電容量維持率は、金属材料だけを形成した場合よりも、酸化物含有膜だけを形成した場合において高くなった。
これらのことから、本発明の二次電池では、酸化物含有膜および金属材料のうちのいずれか一方だけを形成する場合よりも、それらの双方を形成する場合においてサイクル特性がより向上すると共に、いずれか一方だけを形成する場合には、金属材料よりも酸化物含有膜においてサイクル特性がより向上することが確認された。
上記した表1〜表7の結果から、本発明の二次電池では、負極の負極活物質層がケイ素を有する複数の負極活物質粒子を含む場合に、その負極活物質層が酸化物含有膜および金属材料のうちの少なくとも一方を含むと共に、電解液の溶媒が化2に示した有機酸のうちの少なくとも1種を含有することにより、溶媒の組成や電解質塩の種類などに依存せずに、初回充放電特性を確保しつつサイクル特性が向上することが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施の形態および実施例では、二次電池の種類として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の二次電池は、負極活物質としてリチウムを吸蔵および放出することが可能な材料を用い、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量を正極の放電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に伴う容量とリチウムの析出および溶解に伴う容量とを含み、かつ、それらの容量の和によって表される二次電池についても、同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電池構造が円筒型およびラミネートフィルム型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明の二次電池は、角型、コイン型およびボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。これらの場合においても、負極活物質として、上記した実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の二次電池における化2に示した有機酸の含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、含有量が上記した範囲から多少外れてもよい。
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、221…負極活物質粒子、222…酸化物含有膜、224(224A,224B)…隙間、225…空隙、226…金属材料。