始めに、実施例1の車両用シートの連結装置の構成について、図1〜図17を用いて説明する。ここで、図12〜図17は、それぞれ、図11のXII-XII線或いはXV-XV線で切断して見た断面図であるが、描線が煩雑とならないように、ハッチングを施さずに描かれている。本実施例の車両用シートの連結装置は、図2に示されるように、右ハンドル車の助手席用シートとして配設された車両用シート1に採用されており、背凭れとなるシートバック2を着座部となるシートクッション3に対して背凭れ角度調整可能に連結するリクライニング装置4,4として構成されている。
詳しくは、リクライニング装置4,4は、車両用シート1の両サイド部に配設されており、シートバック2の左右両サイドの下端部とシートクッション3の左右両サイドの後端部とをそれぞれ同軸回りに回転可能となるように連結する回転留め可能な回転軸装置として構成されている。これにより、シートバック2は、各リクライニング装置4,4の作動状態を切換えることによって、シートクッション3に対する背凭れ角度が固定された状態と、背凭れ角度が調整可能な状態とに切換えられるようになっている。
上記した各リクライニング装置4,4は、それぞれ、常時は附勢によってシートバック2の背凭れ角度を固定した状態(ロック状態)に保持されている。そして、各リクライニング装置4,4は、シートクッション3の図示向かって右側(着座乗員から見て左側)の側部に設けられた操作レバー5を引き上げる操作によって、それらのロック状態が一斉に解除操作されるようになっている。また、各リクライニング装置4,4は、上記した操作レバー5の引き上げ操作をやめることにより、附勢によって、再びロックした作動状態に戻されるようになっている。
詳しくは、上記した各リクライニング装置4,4には、それらの中心部に、各リクライニング装置4,4のロック・アンロックの切換え操作を行うための操作軸4c,4cが挿通されている。これら操作軸4c,4cのうち、図示右方側の操作軸4cは、操作レバー5と直結されており、図示左方側の操作軸4cは、図示しないケーブルを介して操作レバー5と連結されている。これにより、各操作軸4c,4cは、操作レバー5の引き上げ操作に伴って、一斉に軸回転操作されるようになっている。
ここで、各リクライニング装置4,4は、常時は附勢によってロックした作動状態に保持されている。そして、各リクライニング装置4,4は、上述した操作レバー5の引き上げ操作によって、各操作軸4c,4cが一斉に軸回転操作されることにより、それらのロック状態が一斉に解除操作されるようになっている。そしてこれにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれるため、シートバック2が背凭れ角度の調整操作を行うことのできる状態となる。
そして、シートバック2の背凭れ角度を所望の角度位置に調整し、操作レバー5の解除操作をやめることにより、各リクライニング装置4,4が再び附勢によってロック状態に戻されて、シートバック2がその調整された背凭れ角度位置にて固定される。ここで、シートバック2は、常時は、シートクッション3との間に掛着された図示しない附勢バネの附勢力によって、前倒れする回転方向に附勢されている。
これにより、シートバック2は、上述したように各リクライニング装置4,4のロック状態が解除されることにより、附勢によって前倒れ回転するようになっている。ここで、上記した各リクライニング装置4,4は、通常、シートバック2が背凭れとして使用される回転角度領域にある時には、操作レバー5の解除操作をやめることによって、附勢によってロックした作動状態に戻されるようになっている。
しかし、各リクライニング装置4,4の回転角度領域には、図3に示されるように、上記した操作レバー5の解除操作をやめることで、附勢によってロック状態に戻されるロックゾーンLOの角度領域と、解除操作をやめてもロック状態には戻されないフリーゾーンFR1の角度領域とが設定されている。前者のロックゾーンLOは、通常、シートバック2が背凭れとして使用される回転角度領域、具体的には、シートバック2が直立姿勢となる角度位置と後倒し姿勢となる角度位置との間の領域に設定されている。
そして、後者のフリーゾーンFR1は、シートバック2が背凭れとして使用されることのない前倒れの回転角度領域、具体的には、上記したシートバック2が直立姿勢となる角度位置と前傾姿勢となる角度位置との間の領域に設定されている。なお、シートバック2の前倒れ回転は、シートバック2とシートクッション3との間に形成された図示しないストッパ構造によって、シートバック2が図3に示される前傾姿勢となる角度位置にて係止されるようになっている。これにより、シートバック2を前倒しする操作時には、各リクライニング装置4,4のロック状態を解除して、シートバック2が直立姿勢から少しでも前に傾けば、あとは解除操作をやめてしまっても、シートバック2が前傾姿勢となる角度位置まで自然と前倒しされるようになっている。
ところで、図4に示されるように、本実施例の車両用シート1には、シートバック2を前傾姿勢に切り換えると共に、車両用シート1全体を車両前方側にスライドさせることにより、その後側の乗降ドアのない後席シートへの乗降スペースを広げられるようにするウォークイン機能が備えられている。このウォークイン機能は、シートクッション3の後面部に設けられたウォークインレバー6の引き上げ操作によって作動するようになっている。
具体的には、ウォークインレバー6が操作されることにより、前述した各リクライニング装置4,4のロック状態が解除されて、シートバック2が前傾姿勢まで倒し込まれると共に、車両用シート1をフロアに対してスライド可能に連結しているスライダ装置(図示省略)のスライドロック状態も解除される。これにより、車両用シート1全体を、シートバック2を前傾姿勢に切り換えた状態として車両前方側にスライド移動させることができる。
また、図5に示されるように、本実施例の車両用シート1には、上記したウォークイン動作させたシートバック2を前傾させた位置から起こし上げるに際して、シートバック2を予め記憶させておいた前傾前の背凭れ角度位置まで戻せるようにするメモリ機能が備えられている。このメモリ機能は、上述した各リクライニング装置4,4に備えられており、シートバック2を操作レバー5の操作によって前傾させる時には機能しないが、シートバック2をウォークインレバー6の操作によって前傾させる時には機能する構成となっている。
以下、上記した各リクライニング装置4,4の構成について詳しく説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いに左右対称の構成となっており、実質的に同じ構成となっている。したがって、以下ではこれらを代表して、図2の紙面向かって右側に示されているアウター側のリクライニング装置4の構成についてのみ説明することとする。
ここで、図1には、リクライニング装置4の分解斜視図が示されている。このリクライニング装置4は、前述したシートバック2の背凭れ角度の調整機能をするリクライニング機構部4Aと、シートバック2の前傾前の背凭れ角度位置の記憶機能をするメモリ機構部4Bと、から構成されており、これらが円筒型形状の保持部材70によって外れ止めされた状態に組み付けられて構成されている。以下、これらリクライニング機構部4Aとメモリ機構部4Bの構成について、説明を分けて行うこととする。
ここで、リクライニング機構部4Aは、第1のガイド10と、第1のラチェット20と、第1のポール30,30と、第1のスライドカム40と、第1のヒンジカム50と、第1の渦巻きバネ60と、によって構成されている。先に、これらの構成について簡単に説明すると、第1のガイド10は、図9や図11に示されるように、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fに一体的に連結される連結部材として構成されている。ここで、クッションフレーム3fが本発明の他方側の連結対象部材に相当する。
また、図1に戻って、第1のポール30,30は、一対で構成されており、第1のガイド10に軸線方向に組み付けられることにより、第1のガイド10に円周方向に支えられた状態として設けられるようになっている。また、第1のラチェット20は、第1のガイド10に対して互いに回転可能に支え合った状態となって組み付けられるようになっており、各第1のポール30,30が第1のスライドカム40によって半径方向の外方側に押し動かされることにより、第1のポール30,30に形成された外周歯面30a,30aと噛合して回転留めされる構成となっている。
一方、メモリ機構部4Bは、上述した第1のラチェット20と、第2のラチェット110と、第2のポール130,130と、第2のスライドカム140と、第2のヒンジカム150と、第2の渦巻きバネ160と、によって構成されている。これらの構成について簡単に説明すると、第1のラチェット20は、上述した第1のポール30,30と噛合する図示奥側の面部とは反対側の面部において、第2のポール130,130を円周方向に支えることのできる構成となっている。
また、第2のポール130,130は、一対で構成されており、第1のラチェット20に軸線方向に組み付けられることにより、第1のラチェット20に円周方向に支えられた状態として設けられるようになっている。また、第2のラチェット110は、図8や図11に示されるように、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fに一体的に連結される連結部材として構成されている。ここで、バックフレーム2fが本発明の一方側の連結対象部材に相当する。
この第2のラチェット110は、図1に示されるように、第1のラチェット20に対して互いに回転可能に支え合った状態となって組み付けられるようになっており、第2のポール130,130が第2のスライドカム140によって半径方向の外方側に押し動かされることにより、第2のポール130,130に形成された外周歯面130a,130aと噛合して回転留めされる構成となっている。
以下、リクライニング機構部4Aとメモリ機構部4Bの構成について説明する。なお、以下の説明において、リクライニング機構部4Aの構成について説明するときには、メモリ機構部4Bを構成する第1のラチェット20と第2のラチェット110との間の相対回転はロックされているものとし、メモリ機構部4Bの構成について説明するときには、リクライニング機構部4Aを構成する第1のガイド10と第1のラチェット20との間の相対回転はロックされているものとする。
先ず、リクライニング機構部4Aの構成について説明する。このリクライニング機構部4Aを構成する第1のラチェット20は、円盤型形状に形成されており、その円盤部21の外周縁部に、第1のガイド10への組み付け方向となる軸線方向側に円筒形状に突出する円筒部22が形成されている。この円筒部22は、円盤部21の外周縁部が板厚方向(軸線方向)に半抜き加工されることによって形成されている。
そして、この円筒部22の内周面には、内歯の形成された内周歯面22a,22aと、内歯のない突出した円滑な乗り上げ面22b,22bとが円周方向に並んで形成されている。ここで、乗り上げ面22b,22bは、円筒部22の軸対称となる二箇所の位置に形成されており、それぞれ、内周面が各内周歯面22a,22aよりも半径方向の内方側に突出した円滑な湾曲面とされて形成されている。上記した各乗り上げ面22b,22bは、図12に示されるように、各第1のポール30,30と干渉しない円周方向位置に配置されている時には、各第1のポール30,30が第1のラチェット20の内周歯面22a,22aと噛合する半径方向外方側への噛合移動を許容する。
したがって、これら乗り上げ面22b,22bと各第1のポール30,30との干渉が起こらない円周方向の回転角度領域が、各第1のポール30,30と第1のラチェット20の内周歯面22a,22aとの噛合が許容されるロックゾーンLOとして設定される。しかし、図14に示されるように、各乗り上げ面22b,22bは、各第1のポール30,30の移動先となる円周方向領域に入り込むことにより、各第1のポール30,30を乗り上げさせて各第1のポール30,30の半径方向外方側への噛合移動を阻止するようになっている。
この各第1のポール30,30が各乗り上げ面22b,22bに乗り上げた状態では、各第1のポール30,30は、単に、内歯のない各乗り上げ面22b,22bに押し当てられているにすぎない状態であるため、第1のラチェット20は第1のガイド10に対して回転移動することのできる状態、すなわちアンロック状態を維持する。したがって、上記した各第1のポール30,30が各乗り上げ面22b,22bに乗り上げる円周方向の回転角度領域が、各第1のポール30,30と第1のラチェット20の内周歯面22a,22aとの噛合が阻止されて、リクライニング機構部4Aがアンロック状態に保たれるフリーゾーンFR1として設定される。
また、図1に戻って、第1のラチェット20の円盤部21の図示されている側の盤面上には、同盤面上から突出する立壁部23a〜23dが円周方向の四箇所に形成されている。これら立壁部23a〜23dは、後述する一対の第2のポール130,130を円周方向に支持する構成であると共に、これら第2のポール130,130を半径方向の内外方に移動操作する第2のスライドカム140の円周方向の支持もする構成となっている。
そして、この第1のラチェット20の中心部には、後述する第2の渦巻きバネ160を内部に収容することのできる大きさの貫通孔25が板厚方向に貫通して形成されている。そして、この貫通孔25の上下箇所には、第2の渦巻きバネ160の外端162を嵌め込んで回り止めすることのできるキー孔25aが形成されている。
次に、図1に戻って、第1のガイド10の構成について説明する。この第1のガイド10は、前述した第1のラチェット20よりもひとまわり大きな外径を有した円盤型形状に形成されている。この第1のガイド10の円盤部11には、その外周縁部に、第1のラチェット20への組み付け方向となる軸線方向側に円筒形状に突出する円筒部12が形成されている。この円筒部12は、円盤部11の外周縁部が板厚方向(軸線方向)に半抜き加工されることによって形成されている。
この円筒部12は、図11に示されるように、第1のラチェット20の円筒部22を外周側から囲い込んだ状態に嵌め込むことのできる大きさに形成されている。これにより、この円筒部12の筒内に第1のラチェット20の円筒部22を嵌め込むことにより、第1のガイド10の円筒部12と第1のラチェット20の円筒部22とが互いに内外に嵌合し合って互いに相対回転に支え合った状態となって組み付けられるようになっている。
ここで、上記した第1のガイド10は、図9や図11に示されるように、その円盤部11の外側盤面が、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fの板面と接合されることにより、クッションフレーム3fに対して一体的に連結されている。詳しくは、第1のガイド10の円盤部11には、その外側盤面から円筒形状に突出する複数のダボ15a・・やDダボ15bが形成されている。これらダボ15a・・やDダボ15bは、図6に示されるように、円盤部11のより外周縁に近い位置で、互いに円周方向に90度間隔で離間した位置に等間隔に配置形成されている。
このうち、Dダボ15bは、その突出した円筒形状の一部が断面D字状に切り欠かれて形成されており、円筒形状に突出したダボ15a・・とは形状が区別されて形成されている。一方、図9に示されるように、クッションフレーム3fには、上述したダボ15a・・やDダボ15bを嵌合させることのできるダボ孔3a・・やDダボ孔3bが貫通形成されている。そして、第1のガイド10は、上記した各ダボ15a・・やDダボ15bをクッションフレーム3fに形成されたダボ孔3a・・やDダボ孔3bにそれぞれ嵌合させて、各嵌合部を溶着して接合することにより、クッションフレーム3fに対して強固に一体的に連結されている。
そして、第1のガイド10の円盤部11の中心部には、後述するリクライニング機構部4Aのロック解除の切り換え操作を行う第1のヒンジカム50を挿通するための貫通孔16が貫通形成されている(図1参照)。そして、図9に示されるように、クッションフレーム3fにも、この貫通孔16と同軸線上の位置に、同じ目的の貫通孔3cが貫通形成されている。この貫通孔3cは、後述する第1の渦巻きバネ60もその孔内に収め入れられるように大きな形状に形成されている。
そして、図1に戻って、第1のガイド10の円盤部11には、その内側盤面が「十」符号状に板厚方向(軸線方向)に凹んだガイド溝14が形成されている。このガイド溝14は、円盤部11が板厚方向(軸線方向)に半抜き加工されることによって形成されている。ここで、前述したダボ15a・・やDダボ15bは、このガイド溝14が形成された外側盤面上の形成領域から更に軸線方向に突出する形で配置形成されている。
このガイド溝14は、その図示向かって上側と下側の溝部が、後述する各第1のポール30,30をそれぞれ半径方向の内外方にのみスライド移動可能となるように内部に収め入れることのできるポール溝14a,14aとして形成されている。ここで、上記したガイド溝14の「十」符号形状によって区画された四箇所の角部箇所には、ガイド溝14の凹み方向とは逆の軸線方向に突出する立壁部13a〜13dが形成されている。
これにより、各ポール溝14a,14aの内部に収容された第1のポール30,30は、その左右両サイドに側壁となって形成された立壁部13a,13bや立壁部13c,13dによって、それぞれ第1のガイド10に対して半径方向の内外方にしかスライドすることができない状態として円周方向に支持されるようになっている。一方、ガイド溝14の図示向かって右側と左側とその間の溝部は、後述する第1のスライドカム40を、上述した各第1のポール30,30のスライド方向とは垂直な方向、すなわち図示向かって左右方向にのみスライドさせられる状態に収容することのできるスライドカム溝14bとして形成されている。
これにより、上記したスライドカム溝14bに収容された第1のスライドカム40は、その上下両サイドに側壁となって形成された立壁部13a,13cや立壁部13b,13dによって、それぞれ第1のガイド10に対して図示向かって左右方向(半径方向)にしかスライドすることができない状態として円周方向に支持されるようになっている。ところで、図7や図9に示されるように、第1のガイド10の円盤部11には、その外側盤面上にピン形状に突出する二つのバネ掛部17,17が形成されている。これらバネ掛部17,17は、後述する第1の渦巻きバネ60の外端62を掛着させるための機能部品となっており、その掛着位置を選択できるように二箇所の位置に形成されている。
次に、図1に戻って、第1のポール30,30の構成について説明する。これら第1のポール30,30は、前述もしたように、第1のガイド10に形成された各ポール溝14a,14aに対してそれぞれ半径方向の内外方にのみスライド可能な状態となるように組み付けられるようになっている。これら第1のポール30,30は、互いに上下対称な形状に形成されている。具体的には、第1のポール30,30は、それらの半径方向の外方側となる外周面が、前述した第1のラチェット20の内周歯面22a,22aと噛合する外歯を有した湾曲した外周歯面30a,30aとして形成されている。
これにより、各第1のポール30,30は、図12に示されるように、後述する第1のスライドカム40によってそれぞれ半径方向の外方側に押し出されることにより、それらの外周歯面30a,30aが第1のラチェット20の内周歯面22a,22aに押し付けられて噛合するようになっている。そして、この噛合によって、各第1のポール30,30と第1のラチェット20とが互いに円周方向に一体的に結合された状態となり、これら第1のポール30,30を介して、第1のガイド10と第1のラチェット20との間の相対回転がロックされた状態となる。
すなわち、各第1のポール30,30は、第1のガイド10との間の関係においては、円周方向に支持された状態として半径方向の内外方にしか移動できないようになっている。したがって、これら第1のポール30,30と第1のラチェット20とが円周方向に一体的に結合された状態となることにより、第1のガイド10と第1のラチェット20との間の相対回転がロックされた状態となる。すなわち、リクライニング機構部4Aの相対回転がロックされた状態となる。
このリクライニング機構部4Aの回転ロック状態は、図13に示されるように、後述する第1のスライドカム40によって、各第1のポール30,30が噛合状態から半径方向の内方側に引き込まれることによって解除されるようになっている。次に、図1に戻って、第1のスライドカム40の構成について説明する。この第1のスライドカム40は、前述もしたように、第1のガイド10に形成されたスライドカム溝14bに対して図示左右方向(半径方向)にのみスライド可能とされた状態に組み付けられる。
この第1のスライドカム40は、上下対称な形状に形成されており、その図示上下側の縁部箇所に、各第1のポール30,30の両脚部32,32を乗り上げさせて半径方向の外方側に押し出す肩部42,42(図12参照)と、各第1のポール30,30が半径方向の内方側に引き込まれる際に、これらの両脚部32,32を受け入れる凹状の溝部43,43(図13参照)とが形成されている。そして、更に、第1のスライドカム40の図示上下側の縁部には、それぞれ、各第1のポール30,30の内周側部に形成された引掛部31,31に引掛けられて、各第1のポール30,30を半径方向の内方側に引き込み操作するフック44,44がアーム状に延出して形成されている。
上記構成の第1のスライドカム40は、図12〜図13に示されるように、後述する第1のヒンジカム50の軸回転操作方向によって、図示左方側にスライド操作されたり図示右方側にスライド操作されたりする。具体的には、第1のスライドカム40が図13の状態から図12の状態に向けて図示左方側にスライドすることにより、各第1のポール30,30の脚部32,32が第1のスライドカム40の各溝部43,43から各肩部42,42に乗り上がる格好で半径方向の外方側に押し出される。
これにより、各第1のポール30,30は、それらの外周歯面30a,30aが第1のラチェット20の内周歯面22a,22aに押し付けられて噛合した状態として、第1のスライドカム40によって内周側から支えられて保持される。そして、第1のスライドカム40がこの図12の状態から図13の状態に向けて図示右方側にスライドすることにより、各第1のポール30,30の脚部32,32が第1のスライドカム40の各溝部43,43内に受け入れられる状態となると共に、各第1のポール30,30の引掛部31,31が第1のスライドカム40の各フック44,44によって引掛けられて、各第1のポール30,30が半径方向の内方側に引き込まれる。
次に、図1に戻って、第1のヒンジカム50の構成について説明する。この第1のヒンジカム50は、前述した第1のガイド10の中心部に貫通形成された貫通孔16内に嵌め込まれることで、第1のガイド10に対して回転可能に軸支持されており、更に、前述した第1のスライドカム40の中心部に貫通形成されたカム孔41内にも挿通されることで、その軸回転移動に伴って第1のスライドカム40をスライド操作することができるように組み付けられるようになっている。
具体的には、第1のヒンジカム50には、上述した第1のスライドカム40のカム孔41への挿通に伴って、その一部に凹み形成されたキー孔41a内に嵌め込むことのできる操作突起52が突出形成されている。これにより、第1のヒンジカム50は、その軸回転移動に伴って、操作突起52によってキー孔41aの内周面を押圧して、第1のスライドカム40をその回転操作された方向に押し動かせるようになっている。
ところで、この第1のヒンジカム50は、上述した第1のガイド10の貫通孔16に差し込まれることにより、その先に、角筒形状のバネ掛部51が露呈して、このバネ掛部51に第1の渦巻きバネ60の内端61が掛着されるようになっている。この第1の渦巻きバネ60は、前述もしたように、その外端62が第1のガイド10のバネ掛部17に掛着されて設けられ、常時、第1のヒンジカム50を図1では向かって反時計回り方向、図12では向かって時計回り方向に回転附勢するようになっている。
これにより、第1のヒンジカム50は、図12に示されるように、常時は第1のスライドカム40を図示左方側にスライド操作して、各第1のポール30,30を第1のラチェット20の内周歯面22a,22aに噛合ロックさせた状態に保持するようになっている。ここで、第1のヒンジカム50には、図2において前述した操作レバー5に連結された操作軸4cが軸線方向に挿通されて一体的に軸連結されている。
これにより、第1のヒンジカム50は、図13に示されるように、操作レバー5(図2参照)の引き上げ操作に伴って、図示反時計回り方向に軸回転操作されて、第1のスライドカム40を図示右方側に押し動かして、各第1のポール30,30の噛合ロック状態を解除するようになっている。
続いて、図1に戻って、メモリ機構部4Bの構成について説明する。このメモリ機構部4Bを構成する第1のラチェット20は、前述したリクライニング機構部4Aの構成部材であり、その詳細は前述した通りである。次に、第2のラチェット110の構成について説明する。この第2のラチェット110は、第1のラチェット20よりもひとまわり小さな円盤型形状に形成されており、その円盤部11の外周縁部には、第1のラチェット20への組み付け方向となる軸線方向側に円筒形状に突出する円筒部112が形成されている。この円筒部112は、円盤部11の外周縁部が板厚方向(軸線方向)に半抜き加工されることによって形成されている。
そして、この円筒部112の内周面には、内歯の形成された内周歯面112a,112aと、内歯のない突出した円滑な乗り上げ面112b,112bとが円周方向に並んで形成されている。ここで、各内周歯面112a,112aは、図15に示されるように、後述する各第2のポール130,130の外周歯面130a,130aと噛合する噛合面となっており、それぞれ、各第2のポール130,130の外周歯面130a,130aと同じ歯数で構成されている。また、各乗り上げ面112b,112bは、各内周歯面112a,112aが形成された領域を除く全周領域にわたって形成されている。
これにより、第2のラチェット110は、その内周歯面112a,112aが上述した第2のポール130,130の外周歯面130a,130aと円周方向に完全一致した配置状態となった時にのみ、互いに噛合可能な状態となり、この配置状態から、図17に示されるように、第2のラチェット110が少しでも相対回転して、各乗り上げ面112b,112bが各第2のポール130,130の移動先となる円周方向領域に入り込んだ状態となることにより、各第2のポール130,130の内周歯面112a,112aへの噛合移動を阻止する構成となっている。
ここで、各第2のポール130,130が各乗り上げ面112b,112bに乗り上げた状態では、各第2のポール130,130は、単に、内歯のない各乗り上げ面112b,112bに押し当てられているにすぎない状態であるため、第2のラチェット110は第1のラチェット20に対して回転移動することのできる状態、すなわちアンロック状態を維持する。したがって、上記した各第2のポール130,130が各乗り上げ面112b,112bに乗り上げる円周方向の回転角度領域が、各第2のポール130,130と第2のラチェット110の内周歯面112a,112aとの噛合が阻止されて、メモリ機構部4Bがアンロック状態に保たれるフリーゾーンFR2として設定される。
ここで、図1に戻って、上述した第2のラチェット110は、前述した第1のラチェット20に対して軸線方向に組み付けられることにより、その円筒部112が第1のラチェット20の円盤部21に形成された各立壁部23a〜23dの外周面によって内周側から当てがわれて支持されるようになっている。詳しくは、図15に示されるように、各立壁部23a〜23dは、第2のラチェット110が組み付けられることにより、それらの外周面が、第2のラチェット110の乗り上げ面112b,112bに対して僅かな隙間を有して内周側から当てがわれる湾曲した形状に形成されている。
これにより、第2のラチェット110は、その円筒部112と第1のラチェット20の各立壁部23a〜23dとが互いに内外に嵌合し合った状態として、第1のラチェット20に対して互いに相対回転に支え合った状態となって組み付けられるようになっている。
ここで、上記した第2のラチェット110は、図8や図11に示されるように、その円盤部111の外側盤面が、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fの板面と接合されることにより、バックフレーム2fに対して一体的に連結されている。詳しくは、第2のラチェット110の円盤部111には、その外側盤面から円筒形状に突出する複数のダボ113・・が形成されている。これらダボ113・・は、円盤部111のより外周縁に近い位置で、互いに円周方向に90度間隔で離間した位置に等間隔に配置形成されている。
一方、バックフレーム2fには、上述したダボ113・・を嵌合させることのできるダボ孔2a・・が貫通形成されている。そして、第2のラチェット110は、上記した各ダボ113・・をバックフレーム2fに形成された各ダボ孔2a・・にそれぞれ嵌合させて、各嵌合部を溶着して接合することにより、バックフレーム2fに対して強固に一体的に連結されている。
そして、図1に戻って、第2のラチェット110の円盤部111の中心部には、メモリ機構部4Bのロック解除の切り換え操作を行う図示しない操作軸を挿通するための貫通孔114が貫通形成されている(図1参照)。ここで、上記した図示しない操作軸は、図4において前述したウォークインレバー6とケーブルを介して連結されており、ウォークインレバー6の操作によって軸回転操作されるようになっている。そして、図8に示されるように、バックフレーム2fにも、この貫通孔114と同軸線上の位置に、同じ目的の貫通孔2cが貫通形成されている。
ところで、図1に戻って、第1のラチェット20の円盤部21には、上述した立壁部23a〜23dが形成されていることによって、これらの配置間に「十」符号状に板厚方向(軸線方向)に凹んだガイド溝24が形成されている。このガイド溝24は、その図示向かって上側と下側の溝部が、後述する各第2のポール130,130をそれぞれ半径方向の内外方にのみスライド移動可能となるように内部に収め入れることのできるポール溝24a,24aとして形成されている。
また、ガイド溝24の図示向かって右側と左側とその間の溝部は、後述する第2のスライドカム140を、上述した各第2のポール130,130のスライド方向とは垂直な方向、すなわち図示向かって左右方向にのみスライドさせられる状態に収容することのできるスライドカム溝24bとして形成されている。
次に、第2のポール130,130の構成について説明する。これら第2のポール130,130は、前述もしたように、第1のラチェット20に形成された各ポール溝24a,24aに対してそれぞれ半径方向の内外方にのみスライド可能な状態となるように組み付けられるようになっている。これら第2のポール130,130は、互いに上下対称な形状に形成されている。具体的には、第2のポール130,130は、それらの半径方向の外方側となる外周面が、前述した第2のラチェット110の内周歯面112a,112aと噛合する外歯を有した湾曲した外周歯面130a,130aとして形成されている。
これにより、各第2のポール130,130は、図15に示されるように、後述する第2のスライドカム140によってそれぞれ半径方向の外方側に押し出されることにより、それらの外周歯面130a,130aが第2のラチェット110の内周歯面112a,112aに押し付けられて噛合するようになっている。そして、この噛合によって、各第2のポール130,130と第2のラチェット110とが互いに円周方向に一体的に結合された状態となり、これら第2のポール130,130を介して、第1のラチェット20と第2のラチェット110との間の相対回転がロックされた状態となる。
すなわち、各第2のポール130,130は、第1のラチェット20との間の関係においては、円周方向に支持された状態として半径方向の内外方にしか移動できないようになっている。したがって、これら第2のポール130,130と第2のラチェット110とが円周方向に一体的に結合された状態となることにより、第1のラチェット20と第2のラチェット110との間の相対回転がロックされた状態となる。すなわち、メモリ機構部4Bの相対回転がロックされた状態となる。
このメモリ機構部4Bの回転ロック状態は、図16に示されるように、後述する第2のスライドカム140によって、各第2のポール130,130が噛合状態から半径方向の内方側に引き込まれることによって解除されるようになっている。次に、図1に戻って、第2のスライドカム140の構成について説明する。この第2のスライドカム140は、前述もしたように、第1のラチェット20に形成されたスライドカム溝24bに対して図示左右方向(半径方向)にのみスライド可能とされた状態に組み付けられる。
この第2のスライドカム140は、上下対称な形状に形成されており、その図示上下側の縁部箇所に、各第2のポール130,130の両脚部132,132を乗り上げさせて半径方向の外方側に押し出す肩部142,142(図15参照)と、各第2のポール130,130が半径方向の内方側に引き込まれる際に、これらの両脚部132,132を受け入れる凹状の溝部143,143(図16参照)とが形成されている。そして、更に、第2のスライドカム140の図示上下側の縁部には、それぞれ、各第2のポール130,130の内周側部に形成された引掛部131,131に引掛けられて、各第2のポール130,130を半径方向の内方側に引き込み操作するフック144,144がアーム状に延出して形成されている。
上記構成の第2のスライドカム140は、図15〜図16に示されるように、後述する第2のヒンジカム150の軸回転操作方向によって、図示左方側にスライド操作されたり図示右方側にスライド操作されたりする。具体的には、第2のスライドカム140が図16の状態から図15の状態に向けて図示左方側にスライドすることにより、各第2のポール130,130の脚部132,132が第2のスライドカム140の各溝部143,143から各肩部142,142に乗り上がる格好で半径方向の外方側に押し出される。
これにより、各第2のポール130,130は、それらの外周歯面130a,130aが第2のラチェット110の内周歯面112a,112aに押し付けられて噛合した状態として、第2のスライドカム140によって内周側から支えられて保持される。そして、第2のスライドカム140がこの図15の状態から図16の状態に向けて図示右方側にスライドすることにより、各第2のポール130,130の脚部132,132が第2のスライドカム140の各溝部143,143内に受け入れられる状態となると共に、各第2のポール130,130の引掛部131,131が第2のスライドカム140の各フック144,144によって引掛けられて、各第2のポール130,130が半径方向の内方側に引き込まれる。
次に、図1に戻って、第2のヒンジカム150の構成について説明する。この第2のヒンジカム150は、前述した第2のスライドカム140の中心部に貫通形成されたカム孔141内に挿通されることにより、その軸回転移動に伴って第2のスライドカム140をスライド操作することができるように組み付けられるようになっている。具体的には、第2のヒンジカム150には、上述した第2のスライドカム140のカム孔141への挿通に伴って、その一部に凹み形成されたキー孔141a内に嵌め込むことのできる操作突起152が突出形成されている。
これにより、第2のヒンジカム150は、その軸回転移動に伴って、操作突起152によってキー孔141aの内周面を押圧して、第2のスライドカム140をその回転操作された方向に押し動かせるようになっている。ここで、第2のヒンジカム150は、上述した第1のラチェット20の貫通孔内に入り込んだ状態となって組み付けられ、同孔内に角筒形状のバネ掛部151を露呈させて、このバネ掛部151に第2の渦巻きバネ160の内端161が掛着されるようになっている。
この第2の渦巻きバネ160は、前述もしたように、その外端162が第1のラチェット20の貫通孔の一部に形成されたキー孔25aに掛着されて設けられ、常時、第2のヒンジカム150を図1では向かって反時計回り方向、図15では向かって時計回り方向に回転附勢するようになっている。これにより、第2のヒンジカム150は、図15に示されるように、常時は第2のスライドカム140を図示左方側にスライド操作して、各第2のポール130,130を第2のラチェット110の内周歯面112a,112aに噛合ロックさせた状態に保持するようになっている。
ここで、第2のヒンジカム150には、図4において前述したウォークインレバー6に連結された操作軸(図示省略)が軸線方向に挿通されて一体的に軸連結されている。これにより、第2のヒンジカム150は、図16に示されるように、ウォークインレバー6(図4参照)の操作に伴って、図示反時計回り方向に軸回転操作されて、第2のスライドカム140を図示右方側に押し動かして、各第2のポール130,130の噛合ロック状態を解除するようになっている。
続いて、図1に戻って、保持部材70について説明する。この保持部材70は、薄い鋼板がリング状に打ち抜かれると共に、軸線方向に半抜き加工されることにより、図示左方側の一端部に、軸線方向に面を向けたフランジ状の第1座面部71と第2座面部72と第3座面部73とが順に半径方向の外方側に向かって段差状に形成された段付き円筒型形状に形成されている。また、保持部材70の図示右方側の他端部は、上記のような軸線方向に面を向けたフランジ面を有さずに、軸線方向に真っ直ぐに延出した円筒型形状に形成されている。
上記した保持部材70は、図1に示されるように、フランジ面のない図示右端側の開口内に第2のラチェット110や第1のラチェット20や第1のガイド10をそれぞれ収め入れるかたちでこれらに組み付けられる。これにより、図11に示されるように、保持部材70は、第1座面部71が第2のラチェット110の円筒部112の外側盤面に軸線方向に当てがわれ、第2座面部72が第1のラチェット20の円筒部22の同側の盤面に軸線方向に当てがわれ、第3座面部73が第1のガイド10の円筒部12の同側の盤面に軸線方向に当てがわれた状態として、これらを円筒内部に収容した状態となって組み付けられる。
そして、保持部材70は、上記の組み付けによって第1のガイド10の円筒部12の外側盤面側(図11の右方側)に張り出した端部(折曲面部74)を、半径方向の内方側に折り曲げて、第1のガイド10の円筒部12を第3座面部73との間に挟み込むようにかしめることにより、同円筒部12に一体的に結合された状態となって組み付けられる。これにより、円盤形状の第2のラチェット110と第1のラチェット20と第1のガイド10とが、保持部材70によって互いに板厚方向(軸線方向)に組み付けられて外れ止めされた状態となって保持される。
ところで、図1に戻って、上記したリクライニング装置4は、次のように重力方向に各部品を順にセットしていくことによって組み付けを行えるようになっている。具体的には、先ず、ガイドを図示しない治具にセットして、その内側盤面(図1において示されている左方側の盤面)が上方側に向けられるようにセットする。次に、第1のガイド10のガイド溝14内に第1のポール30,30や第1のスライドカム40や第1のヒンジカム50をセットして、その上に第1のラチェット20を組み付ける。
次に、第1のラチェット20の貫通孔内に第1の渦巻きバネ60をセットして、ガイド溝24内に第2のポール130,130や第2のスライドカム140や第2のヒンジカム150をセットして、更にその上に第2のラチェット110を組み付ける。そして、最後にその上に保持部材70をセットして、セットした先の折曲端部を折り曲げてかしめ処理する。これにより、リクライニング装置4の各部品が一つに組み付けられて外れない状態となる(図10参照)。なお、第1の渦巻きバネ60は、予め第1のガイド10の外側盤面にセットされても良いし、上記のように保持部材70が組み付けられて外れ止めされた後にセットされても良い。
続いて、本実施例の車両用シート1の使用方法について説明する。本実施例の車両用シート1は、図2に示されるように、常時は、各リクライニング装置4,4のリクライニング機構部4A,4A及びメモリ機構部4B,4Bがそれぞれロック状態となっていることにより、シートバック2の背凭れ角度が固定された状態となって保持されている。そして、車両用シート1は、着座乗員が操作レバー5を引き上げ操作して、各リクライニング装置4,4のリクライニング機構部4A,4Aのロック状態を解除することにより、シートバック2の背凭れ角度を調整することのできる状態となる。
そして、車両用シート1は、シートバック2の背凭れ角度を調整し、操作レバー5の引き上げ操作をやめることにより、各リクライニング装置4,4のリクライニング機構部4A,4Aが再びロック状態に戻されるため、シートバック2の背凭れ角度がその調整された角度位置に固定されることとなる。次に、上記のようにシートバック2の背凭れ角度が調整された状態から、後席シートへの乗降スペースを空けるために、ウォークインレバー6の操作が行われた場合の動作について説明する。
すなわち、図4に示されるように、ウォークインレバー6の操作が行われることにより、各リクライニング装置4,4のメモリ機構部4B,4Bのロック状態が解除される。これにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれるため、シートバック2が附勢によって前傾姿勢位置まで倒し込まれる。また、これに併せて、車両用シート1をフロアに対してスライド可能に連結しているスライダ装置(図示省略)のスライドロック状態も解除される。これにより、車両用シート1全体を、シートバック2を前傾姿勢に切り換えた状態として車両前方側にスライド移動させることができる。
そして、上記のようにウォークイン動作させた車両用シート1を元の着座使用可能な状態に戻す際には、先ず、車両用シート1のスライド位置を後方側に戻して、スライダ装置(図示省略)をスライドロック状態に戻し、次に、シートバック2を後方側に倒し込むように操作すればよい。これにより、シートバック2は、各メモリ機構部4B,4Bがシートバック2の前傾前の角度位置まで戻されたところでロック状態となるため、この前傾前の角度位置に戻されたところで背凭れ角度が固定された状態となって保持される。
すなわち、メモリ機構部4Bは、図15〜図17で示したように、シートバック2の全回転角度領域内において、一の回転角度位置でしかロックしない構成となっているからである。なお、本実施例のリクライニング装置4は、図1を参照して分かるように、前述したように第1のヒンジカム50は、固定体となるシートクッション3に連結される第1のガイド10によって支持される構成となっている。これにより、第1のヒンジカム50は、シートクッション3に設けられた操作レバー5(図2参照)の引き上げ操作によって、第1のラチェット20が第2のラチェット110と一体的となってシートバック2と一体に回転運動しても、この動きには追従しないようになっている。
したがって、シートバック2の背凭れ角度が変化しても、操作レバー5がこれに釣られて回転移動してしまうことがないため、操作レバー5を常に安定した操作性の良い位置状態に保持しておくことができる。また、同じように、第2のヒンジカム150は、メモリ機構部4Bの動作時に、第1のガイド10と一体的な固定体となる第1のラチェット20によって支持される構成となっている。
これにより、第2のヒンジカム150は、シートクッション3に設けられたウォークインレバー6(図4参照)の操作によって、第2のラチェット110がシートバック2と一体的となって回転運動しても、この動きには追従しないようになっている。したがって、シートバック2の背凭れ角度が変化しても、ウォークインレバー6がこれに釣られて回転移動してしまうことがないため、ウォークインレバー6を常に安定した操作性の良い位置状態に保持しておくことができる。
このように、本実施例のリクライニング装置4は、第1のポール30,30は、第1のガイド10に軸線方向に組み付けられることにより、第1のガイド10に円周方向に支えられた状態としてセットされる。また、第2のポール130,130は、第1のラチェット20に軸線方向に組み付けられることにより、第1のラチェット20に円周方向に支えられた状態としてセットされる。このように、リクライニング装置4は、第1のポール30,30を第1のガイド10に組み付ける方向(軸線方向)に順に組み付けていくことのできる構成となっているため、組み付け途中で部品全体を裏返す操作が不要であり、組み付け性を向上させることができる。また、保持部材70も第1のポール30,30を第1のガイド10に組み付ける方向(軸線方向)に組み付けられる構成となっていることにより、リクライニング装置4の組み付け性をより一層向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、本発明の車両用シートの連結装置を、シートバックをシートクッションに対して背凭れ角度調整可能に連結するリクライニング装置として適用したものを示した。しかし、この連結装置は、傾動式シートバックを車体フロアに対して連結する用途にも適用することができる。
また、連結装置を、車両用シートを車体フロアに対して旋回方向に回転させられるように連結する用途にも適用することができる。また、連結装置を、着座乗員の下腿部を下方側から持ち上げて支持するいわゆるオットマン装置をシートクッションや車体フロアに対して傾動回転可能に連結する用途にも適用することができる。
また、第1のポールや第2のポールのロック・アンロックの作動が、半径方向への真っ直ぐなスライド運動によって行われるようになっているものを例示したが、円周方向への移動を伴って行われるような他の運動形態で動作する構成のものであってもよい。また、これらポールの配される個数は、いくつであっても構わない。なお、ポールが三個以上配設されるタイプの場合には、上記実施例で示したスライドカムに代えて、特開2007−301077号公報に開示されているような回転タイプのカムを適用することもできる。
また、上記実施例では、連結対象となるシートバックやシートクッションのフレームと連結される第2のラチェットや第1のガイドが、どちらも円盤型形状に形成されたものを示したが、例えばこれらの円盤型形状から径方向や軸線方向に延び出した延長部分が、シートバックやシートクッションのフレームと連結されるような構成であってもよい。