JP5277641B2 - 加熱炉の温度制御方法 - Google Patents

加熱炉の温度制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、連続焼鈍炉の加熱炉内で、溶接点を介して厚みが異なる鋼板を連続して加熱する際に生じる鋼板温度(板温)外れと鋼板の形状不良を回避する加熱炉の温度制御方法に関する。
連続焼鈍炉においては、効率的な多品種生産要求に応えるために、板幅、板厚、成分の異なる複数の鋼板コイルを溶接して連結し、連続的に焼鈍処理を施している。このように、異なる複数の鋼板コイルを連結し、連続的に焼鈍処理を施すことを、「コイル移行」と称している。しかし、鋼板コイルごとに処理条件が異なるので、コイル移行時に炉内の処理環境が一時的に不安定になり、板温外れ(鋼板温度が設定した焼鈍温度となっていない状態)や形状不良(ヒートバックルと呼ばれる鋼板の変形)が発生することがあった。かかる問題を解決するために、これまでも多くの試行がなされてきている。
例えば、以下の特許文献1、特許文献2および特許文献3には、板温を検出し、コイル移行時であっても、目標板温に近づくように焼鈍炉の炉温を制御する技術が開示されている。また、特許文献4および特許文献5には、通板速度も考慮して焼鈍炉の炉温を制御する技術が開示されている。さらに特許文献1および特許文献6には、コイル移行時にゾーンごとに炉温を制御する技術が開示されている。
特開平5−279753号公報 特開平7−54055号公報 特開平9−125153号公報 特開平5−214448号公報 特開2005−213624号公報 特開昭52−29410号公報
上記のような従来の焼鈍炉の温度制御方法においては、全体として、あるいはゾーンごとに炉温や通板速度を制御して、コイル移行時の炉内の不安定状態を均衡させようとするものであったが、未だコイル移行時に発生するおそれのある形状不良を十分に改善するには至っていない。また、上記の特許文献4に開示されているような記憶テーブルを利用する方式では、記憶テーブルに格納されていないようなケースには対応できないという課題もあった。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、連続焼鈍炉の加熱炉内で、溶接点を介して厚みが異なる鋼板を連続して加熱する際に生じる鋼板温度(板温)外れと鋼板の形状不良を回避することが可能な、新規かつ改良された加熱炉の温度制御方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本願発明者が鋭意研究を行なった結果、加熱炉中の鋼板温度は、加熱炉中に設けられたハースロールと鋼板との接触伝熱により決定されることを見いだし、加熱炉中に設けられたハースロールからの接触伝熱を利用することで、鋼板温度(板温)と鋼板形状を同時に満足できることに想到した。
本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、本発明がその要旨とするところは、以下の通りである。
(1)連続焼鈍炉においてN個(N≧2)の加熱ゾーンを含む加熱炉により板厚が先行材と後行材とで異なり、当該先行材と後行材とを溶接点で接合した鋼板を加熱する場合の加熱炉の温度制御方法であって、前記加熱炉の最後段に位置するN番目の加熱ゾーンの炉温を全ての前記加熱ゾーンの最初に設定し、逐次前段に位置する前記加熱ゾーンへと遡るに際して、前記加熱炉入側からJ(J=2〜N)番目の加熱ゾーンの炉温を前記後行材の標準値に設定して温度制御し、前記J番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に到達してから、J−1番目の加熱ゾーンの炉温を前記後行材の標準値に設定して温度制御し、以下同様に、前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンに至る各加熱ゾーンの炉温を順次温度制御することを特徴とする、加熱炉の温度制御方法。
(2)遅くとも前記先行材と前記後行材との溶接点が前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンのハースロールに達するまでに、当該加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に達するように、N番目の加熱ゾーンの炉温の温度制御が開始されることを特徴とする、(1)に記載の加熱炉の温度制御方法。
(3)遅くとも前記先行材と前記後行材との溶接点が前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンのハースロールに達するまでに、当該加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に達するように、前記後行材の通板速度が制御されることを特徴とする、(1)に記載の加熱炉の温度制御方法。
(4)前記後行材の板厚は、前記先行材の板厚よりも相対的に薄いことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(5)前記炉温の温度制御は、昇温制御であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(6)前記後行材の通板速度は、前記先行材の通板速度よりも相対的に遅いことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(7)前記加熱炉の上流側に前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置が設けられ、前記溶接点検出装置により前記先行材と後行材との溶接点が検出されるタイミングに基づいてN番目の加熱ゾーンの炉温の温度制御が開始されることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(8)前記加熱炉の上流側に設けられた前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置は、少なくとも上流側検出部と下流側検出部とを備え、前記加熱炉の昇温制御を行う場合には、前記先行材と後行材との溶接点が前記上流側検出部を通過し前記下流側検出部を通過する前に、前記加熱炉の昇温制御が開始されることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(9)前記加熱炉の上流側に設けられた前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置は、少なくとも上流側検出部と下流側検出部とを備え、前記加熱炉の降温制御を行う場合には、前記先行材と後行材との溶接点が前記下流側検出部を通過した後に、前記加熱炉の降温制御が開始されることを特徴とする、(1)〜(4)、(6)、(7)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(10)前記温度制御は、各ゾーンに設けられた加熱装置の発熱量の多寡により行われることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
(11)後行材を処理する炉温の標準値は、前記先行材および前記後行材の板幅、板厚、成分、板温の比較により決定されることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
本発明によれば、加熱炉内に設けられたハースロールから鋼板への接触伝熱を利用して連続焼鈍炉の加熱炉内の温度制御を行なうことにより、溶接点を介して厚みが異なる鋼板を連続して加熱する際に生じる鋼板温度(板温)外れと鋼板の形状不良を回避することが可能である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<従来の温度制御方法の検討>
本発明の第1の実施形態に係る温度制御方法を説明するに先立ち、本願発明者は、従来の温度制御方法とその問題点について、詳細に検討を行なった。以下では、検討の結果得られた知見について、詳細に説明する。
連続焼鈍炉内の加熱炉は、鋼板を焼鈍温度まで加熱する役割を果たす。この加熱炉には、鋼板を加熱する加熱装置の一例であるラジアントチューブと、鋼板を搬送するハースロールと、加熱炉の炉温を検出する温度計とが備えられる。
鋼板への伝熱機構の主なものは、ラジアントチューブや加熱炉の炉壁からの輻射伝熱、炉内を流れる高温の不活性ガスからの対流伝熱、および、ハースロールからの接触伝熱等であり、これらの組み合わせによって鋼板が焼鈍温度まで加熱される。
鋼板の加熱に際して、鋼板の幅方向の温度分布が不均一な場合には、ヒートバックリングと呼ばれる鋼板の変形が生じて、鋼板形状が不良となる。このヒートバックリングには、鋼板の縁部に発生するエッジバックリングと、鋼板の中央部に発生するセンターバックリングの2種類がある。エッジバックリングは、鋼板の縁部が中央部よりも先に冷却される場合に生じ、センターバックリングは、鋼板の中央部が縁部よりも先に冷却される場合に生じる。
連続焼鈍炉においては、ロット変更に対応するために、板厚や板幅等が異なるコイルを溶接により連結して連続焼鈍に供することが行なわれる。板厚や板幅等が異なるコイルを溶接により連結して連続焼鈍を行なう際には、溶接点とその近傍で板温外れや形状不良が発生することが知られており、これらの板温外れや形状不良を解決するために、炉温制御とそれに伴う通板速度制御が行なわれてきた。これは、「鋼板温度は、連続焼鈍炉内の加熱炉の炉温により決定されるものであり、加熱炉内に設けられるハースロールの温度やサーマルクラウンも炉温により決定される」と考えられてきたからである。
本願発明者は、板厚や板幅等が異なるコイルを溶接により連結しなければならない状況について検討したところ、上記のような状況は、以下の表1に示す10通り存在することがわかった。ここで、以下の表1において、先行材とは、コイル移行前に連続焼鈍炉において焼鈍処理が行なわれている鋼材を意味し、後行材とは、コイル移行後に連続焼鈍炉において焼鈍処理が行なわれる鋼材を意味する。
Figure 0005277641
まず、先行材の板厚が厚く後行材の板厚が薄い場合(ケース1〜ケース5)について検討を行なった。ケース1は、加熱炉の炉温および先行材および後行材の通板速度をそれぞれ一定に保った場合である。この場合には、後行材の板温は上昇し、加熱炉中に設けられたハースロールのクラウンは少し変化するものの、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。
炉温を一定に保ち後行材の通板速度を増加させると(表1のケース2)、後行材の板温変化は無く、ハースロールのクラウンにも変化が見られず、後行材にヒートバックリングも発生しなかった。
後行材の通板速度を減少させると(表1のケース3)、加熱炉の炉温は上昇し、後行材の板温も上昇することがわかった。その結果、ハースロールクラウンは増加し、後行材にヒートバックリングが発生した。
炉温を増加させ鋼板の通板速度を一定に保つと(表1のケース4)、後行材の板温は上昇するとともにハースロールクラウンは増加し、後行材にヒートバックリングが発生した。逆に、炉温を減少させ鋼板の通板速度を一定に保つと(表1のケース5)、後行材の板温は低下し、ハースロールクラウンにも変化が見られず、後行材にもヒートバックリングは発生しなかった。
続いて、ケース1〜ケース5の場合とは逆に、先行材の板厚が薄く後行材の板厚が厚い場合(表1のケース6〜ケース10)について検討を行なった。ケース6は、加熱炉の炉温および先行材および後行材の通板速度をそれぞれ一定に保った場合である。この場合には、後行材の板温は低下するとともに、加熱炉中に設けられたハースロールのクラウンは減少し、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。
通板速度を増加させた場合(表1のケース7)には、炉温および後行材の板温が低下するとともに、ハースロールクラウンは減少し、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。また、通板速度を減少させた場合(表1のケース8)には、後行材の板温は変化しなかったものの、炉温は上昇した。また、ハースロールクラウンは減少し、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。
通板速度を一定に保ったまま炉温を増加させた場合(表1のケース9)には、後行材の板温が上昇するとともにハースロールクラウンは減少し、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。逆に、通板速度を一定に保ったまま炉温を減少させた場合(表1のケース10)には、後行材の板温が低下するとともにハースロールクラウンは減少し、後行材にヒートバックリングは発生しなかった。
上記の検討の結果から、板厚の厚いものから薄いものへとコイルを移行した上で、炉温を増加させるか、または、通板速度を減少させる場合に、ハースロールクラウンが増加して、後行材におけるヒートバックリングの発生が顕著であることがわかった。
また、コイルの移行に際して、炉温の増減とハースロールクラウンの変化は必ずしも1対1対応してはおらず、板温の変化や板厚の変化に左右されることがわかった。換言すれば、コイルの移行に際しては、炉温および板温を制御しても、必ずしもヒートバックリングを制御できる訳でもないことがわかった。
従って、従来の炉温制御を行なう方法では、ヒートバックリングの制御は困難であり、特に、板厚の厚い先行材から板厚の薄い後行材へとコイルを移行し、炉温を増加させるか、通板速度を減少させる場合には、ヒートバックリングの抑制は極めて困難であることがわかった。
しかしながら、本願発明者は、表1に示した結果を改めて検討したところ、鋼板の板厚の影響はあるものの、板温とハースロールのサーマルクラウンには、関連性があることがわかった。すなわち、ケース1、ケース3およびケース4では、板温が上昇すると、ハースロールクラウンが増加していることがわかった。
しかし、ケース9においては、板温が上昇しているにもかかわらず、ハースロールクラウンは増加せず、逆に減少している。この現象を説明するために、本願発明者が鋭意検討を行なった結果、従来から考えられてきたような「加熱炉の炉温により鋼板が加熱され、鋼板からハースロールに熱が伝わる」という理解ではなく、「加熱炉の炉温によりハースロールが加熱され、加熱されたハースロールから鋼板に熱が伝わる」と考えるほうが、表1に示した現象をうまく説明できることに想到した。
すなわち、コイルを移行した際に、加熱炉の炉温が上昇した場合には、炉温によりハースロールが加熱され、ハースロールの温度が上昇する。そのため、ハースロールの温度が鋼板温度より高くなっていると、ハースロールから鋼板に熱が伝わる。一方、板厚の薄い鋼板は、単位長さあたりの鋼板の熱容量が小さい。そこで、ハースロールから鋼板へ熱が伝わる際には、ハースロールの温度低下が小さいと同時に鋼板温度の上昇は大きくなる。表1のケース3の場合のように、熱容量が小さい薄い鋼板に移行して、かつ、通板速度が減少すると、加熱炉に入る単位時間あたりの鋼板の熱量が減少するので、炉温を一定にしていても、コイル移行時には炉温が上昇する。また、表1のケース4の場合には、コイル移行に伴って炉温が増加すると、通板速度を一定にしても炉温が上昇する。従って、この両ケースの場合が、上記の現象に相当する。
また、板厚の厚い鋼板は、単位長さあたりの鋼板の熱容量が大きい。そのため、コイル移行後の鋼板の板厚が厚い場合にハースロールから鋼板へと熱が伝わると、ハースロールの温度低下が大きいと同時に、鋼板温度は僅かに上昇するか、もしくは、ほとんど変化しない(表1のケース8およびケース9)。
続いて、図6を参照しながら、表1のケース3およびケース4の場合に発生するヒートバックリングについて説明する。図6は、コイル移行時におけるヒートバックリングを説明するための説明図である。
図6(a)は、板厚の厚い鋼板SがハースロールH上を搬送されている場合の鋼板SとハースロールHの正面図であり、図6(b)は、搬送されている鋼板Sの上面図である。図6(c)は、板厚の厚い鋼板Sの端部に溶接された板厚の薄い鋼板Sが、ハースロールH上を搬送されている場合の鋼板SとハースロールHの正面図であり、図6(d)は、搬送されている鋼板Sの上面図である。
図6(a)および図6(b)に示したように、先行材として板厚の厚い鋼板Sが搬送されている場合には、ハースロールHの表面は平坦になっており、搬送されている鋼板Sにも、形状の変化は見られない。しかしながら、後行材として板厚の薄い鋼板Sが搬送されると、ハースロールHのクラウンは熱により変化し(サーマルクラウン)、ハースロールHは、図6(c)に示したような形状へと変化する。板厚が薄い鋼板Sの場合には、ハースロールHに巻きつく際の鋼板Sの幅方向の変形は、溶接部分Wにより溶接された先行材である鋼板Sに拘束されるため、図6(c)に示したように鋼板Sの幅方向中央部のみがハースロールHと接触することとなり、縁部はハースロールHとは接触することなく搬送される。
その結果、板厚の薄い鋼板Sでは、鋼板の幅方向縁部におけるハースロールHから鋼板への伝熱が、幅方向中央部における伝熱よりも小さくなり、幅方向中央部の板温上昇が幅方向縁部の板温上昇よりも大きくなる。そのため、図6(d)に示したように、幅方向中央部Aの方が幅方向縁部Bよりも熱により伸びやすくなり、センターバックリングが発生しやすくなる。
なお、コイル移行が終了し、後行材が先行材によって幅方向の拘束を受けなくなった状態(定常状態)では、ハースロールの温度と加熱炉の炉温が平衡となっていることが好ましい。ハースロール温度と炉温が平衡となっていない場合には、鋼板温度(板温)が一定とはならないため、幅方向の鋼板温度差が生じやすくなり、バックリング等の形状不良を起こしやすい。しかしながら、定常状態においてハースロール温度と炉温が平衡に達していると、ハースロールクラウンが大きくなったとしても、先行材による幅方向の拘束が無いために薄手の後行材はハースロールクラウンに倣うように変形しやすくなり、幅方向の温度差を生じにくくなる。その結果、バックリングなどの形状不良は生じにくくなる。
以上説明したような検討結果に基づいて本願発明者が鋭意研究を行なった結果、以下に説明するような加熱炉の温度制御方法を完成するに至った。
<本実施形態に係る温度制御方法>
以下に、図1〜図5を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉の温度制御方法について、詳細に説明する。
(連続焼鈍炉10の構成について)
まず、図1を参照しながら、連続焼鈍炉10の構成について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る連続焼鈍炉10を説明するための説明図である。図1に示したように、本実施形態に係る連続焼鈍炉10は、例えば、ペイオフリール12と、加熱炉20と、均熱炉22と、冷却炉24と、過時効炉26と、冷却装置28と、テンションリール32と、を備える。
連続焼鈍処理が施される鋼板Sは、図1に示したように、ペイオフリール12によりコイルから巻き解かれた後に、加熱炉20による加熱処理、均熱炉22による均熱処理、冷却炉24による冷却処理、過時効炉26による過時効処理、および、冷却装置28による冷却処理が施され、テンションリール32により再びコイルとして巻き取られる。なお、図1における矢印は、鋼板Sの搬送方向を表している。
ペイオフリール12は、焼鈍処理が行なわれる鋼板Sからなるコイルが装着されるリールであり、コイルから巻き解かれた鋼板Sは、ルーパー34を経由して後述する加熱炉20へと搬送される。なお、図1においては、ペイオフリール12は1つしか図示されていないが、コイル移行に要する時間のロスを無くすために、ペイオフリール12を更に1つ設けてもよい。
また、先行材として搬送されているコイルから後行材として搬送されるコイルへとコイル移行が行われた際には、先行材の終端と後行材の先端とが、ペイオフリール12と加熱炉20との間に設けられた溶接機14により溶接される。コイル移行が行われた場合であっても、溶接機14により先行材と後行材とが溶接されることで、連続的に焼鈍処理を行なうことが可能となる。
溶接機14の下流側には、先行材と後行材との溶接部分を検出する第1溶接点検出機16および第2溶接点検出機18とが設けられる。第1溶接点検出機16および第2溶接点検出機18は、例えば、鋼板Sを光学的に検査したり鋼板Sの温度を測定したりすることで、先行材と後行材との溶接部分を検出することが可能である。第1溶接点検出機16および第2溶接点検出機18は、溶接部分を検出すると、溶接部分を検出した時刻等を記憶することが可能である。
加熱炉20は、鋼板Sを焼鈍温度まで加熱する炉である。加熱炉20については、以下で詳細に説明する。
均熱炉22は、炉内の温度を所定の均熱温度域に保つことで、加熱炉20により加熱された鋼板Sの内部と表面との温度差を無くし、均等にする均熱処理を行なう炉である。均熱温度域は、処理を行なう鋼板Sの材質等に応じて決定することが可能である。均熱炉22の種類は特に限定されるものではなく、例えば、上部二方向焚式や上部一方向焚式や底部燃焼式等を用いた均熱炉を使用することが可能である。
冷却炉24は、以下で説明する過時効炉26における過時効処理に適した温度となるまで、鋼板Sを冷却する。鋼板Sを過時効処理に適した温度まで冷却することにより、鋼板Sに固溶している炭素が過飽和状態となる。冷却炉24の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ガスジェット方式、高速ガスジェット方式、ロール冷却方式、気水冷却方式または水焼入れ方式等を用いた冷却炉24を適宜選択することが可能である。
過時効炉26は、冷却炉24により所定の板温まで冷却された鋼板Sを、板温近傍の温度で保持することで過時効処理を行なう。この過時効処理により、鋼板S中に固溶している炭素が、例えばセメンタイト(FeC)として析出することとなる。
冷却装置28は、過時効炉26から送出された鋼板Sを、所定の温度(例えば、調質圧延を行なうために必要な温度等)まで冷却する。冷却装置28の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ガスジェット方式、ロール冷却方式、水冷方式またはこれらの方式を組み合わせた冷却装置28を利用することが可能である。
冷却装置28により冷却された鋼板Sは、ルーパー34を経由してテンションリール32まで搬送され、再びコイルとして巻き取られる。なお、先行材と後行材との溶接部分は、テンションリール32の上流側に設けられた切断機30により切断され、先行材と後行材とは、別個のコイルとして巻き取られることとなる。
(加熱炉20の構成について)
続いて、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る加熱炉20の構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る加熱炉20を概略的に説明するための説明図であり、図3は、本実施形態に係る加熱炉20の内部を説明するための説明図である。なお、図2および図3中の矢印は、鋼板Sの搬送方向を示している。
本実施形態に係る加熱炉20は、ペイオフリール12側(加熱炉20の入側)に設けられる予備加熱ゾーン201と、予備加熱ゾーン201に連続して設けられる加熱ゾーン203とを備える。加熱ゾーン203は、図2に示したように、予備加熱ゾーン201側の第1加熱ゾーンから、加熱炉20の出側に位置する第N加熱ゾーンまでのN個(N≧2)に分かれている。なお、予備加熱ゾーン201および加熱ゾーン203は、壁等により物理的に区画されているわけではなく、第1加熱ゾーンから第N加熱ゾーンまでの加熱ゾーン203も、物理的に区画されているわけではない。予備加熱ゾーン201ならびに第1加熱ゾーンから第N加熱ゾーンまでの加熱ゾーン203は、例えば、それぞれ約10m程度の長さとしてもよい。また、図2に示した加熱炉20では予備加熱ゾーン201が設けられる場合について図示しているが、予備加熱ゾーン201は設けられなくてもよい。
予備加熱ゾーン201および加熱ゾーン203には、ハースロール205と、ラジアントチューブ207と、ハースロール205とラジアントチューブ207との間を仕切る仕切板209とが配設される。図3は、加熱ゾーン203内に配設されたハースロール205、ラジアントチューブ207および仕切板209の例を図示したものであるが、図3から明らかなように、J番目の加熱ゾーンと(J+1)番目の加熱ゾーンとを区画する壁のようなものは、設けられてはいない。また、加熱炉20の内部には、不活性ガス(図示せず。)が充填されている。
ハースロール205は、鋼板Sを搬送する搬送装置である。ハースロール205は、鋼板Sが加熱炉20内を上下に蛇行しながら搬送されるように、加熱炉20内の上部および下部近傍に複数設けられる。ハースロール205には、所定高さのクラウンが設けられており、鋼板Sの厚みを均一に保つことが可能となっている。
ラジアントチューブ207は、加熱装置の一例であって、輻射伝熱により鋼板Sを加熱するとともに、加熱炉20内に充填された不活性ガスを加熱して、加熱炉20内の炉温を上昇させる。ラジアントチューブ207は、図3に示したように、上下に設けられたハースロール205の間に配設される。炉内に充填された不活性ガスは、ラジアントチューブ207により加熱されるが、図3に示したように、本実施形態に係る加熱炉20には、各ゾーンを区画する壁が設けられていないために、定常時においては、加熱炉20内に充填された不活性ガスの対流により加熱炉20の炉温(炉の雰囲気温度)は一定となる。
また、各加熱ゾーンの温度設定(炉温設定)は、加熱ゾーン毎にラジアントチューブ207の温度設定を変更することで、必要に応じて調整することが可能である。換言すれば、第1加熱ゾーンから第N加熱ゾーンまでの各加熱ゾーンは、複数のラジアントチューブ207の温度設定を同じ温度としておく範囲を表している。例えば図3を参照すると、色付きで表されたハースロール205およびラジアントチューブ207がJ番目の加熱ゾーンに属していることを表しており、色付きで表されたラジアントチューブ207は、同じ温度に設定されており、同時に制御される。
仕切板209は、ラジアントチューブ207によるハースロール205の直接加熱を防止するために設けられる板であって、ハースロール205とラジアントチューブ207との間に設けられる。しかしながら、仕切板209はラジアントチューブ207の熱輻射を受けるために、仕切板209の温度は上昇することとなり、温度が上昇した仕切板209の熱輻射により、結果的にハースロール205は加熱される。
また、鋼板Sは、ラジアントチューブ207からの輻射伝熱と、ハースロール205からの接触伝熱と、炉内に充填された不活性ガスからの対流伝熱と、加熱炉20の炉壁からの輻射伝熱により加熱される。
以上、本実施形態に係る連続焼鈍炉10の構成について説明したが、本実施形態に係る連続焼鈍炉10の構成は、上記のものに限定されるわけではなく、例えば、ある特定の種類の鋼板のみを処理することを目的として、過時効炉を備えない連続焼鈍炉とすることも可能である。また、加熱炉20の上流側に鋼板の洗浄設備を設けることも可能である。
(コイル移行時における加熱炉の温度制御方法について)
続いて、図4を参照しながら、コイル移行時における加熱炉の温度制御方法について、詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る加熱炉の温度制御方法を説明するための説明図である。
加熱炉20の炉温は、例えば、コイルに巻かれている鋼板のヒートサイクル、成分値、板厚、板幅、通板速度等を基に決定される。上記のヒートサイクル、成分値、板厚、板幅、通板速度等のパラメータの標準値は、例えば炉温標準値テーブル等に記録されており、炉温標準値テーブルは、加熱炉20の制御部(図示せず。)や連続焼鈍炉10の制御部(図示せず。)等に記憶されている。なお、上記の加熱炉20の制御部や連続焼鈍炉10の制御部等は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータ等で構成されていてもよい。これらの制御部は、加熱炉20や連続焼鈍炉10全体を統括制御するように構成されており、未図示のROMや記憶部等に格納された基本プログラムや温度制御プログラム等の各種プログラムを読み出し、これらのプログラムを未図示のRAM等に展開することで、加熱炉の温度制御を行うことが可能である。
コイルを移行して焼鈍を行う鋼板の種類を変更する際には、上記の炉温標準値テーブルを参照して、交換前のコイル(先行材)のヒートサイクル、成分値、板厚、板幅、通板速度等と、交換後のコイル(後行材)のヒートサイクル、成分値、板厚、板幅、通板速度等とを比較して、加熱炉内の炉温設定値を決定する。なお、この炉温設定値は、加熱炉20全体に共通して設定される設定値であって、加熱ゾーン毎に設定温度を変更することはない。
決定した炉温設定値が現在の炉温よりも高い場合、すなわち、熱量が不足している場合には、加熱炉20の制御部(図示せず。)は、熱量増加量Qを決定し、ラジアントチューブ207を制御することで加熱炉20内に充填された不活性ガスを加熱する。逆に、決定した炉温設定値が現在の炉温よりも低い場合、すなわち、熱量過多の場合には、加熱炉20の制御部(図示せず。)は、熱量減少量Qを決定し、ハースロール205等を制御することにより鋼板Sの通板速度等を調整することで加熱炉20内の炉温が決定した炉温設定値まで冷却されるようにする。
決定した炉温設定値まで現在の炉温(炉の雰囲気温度)を上昇させる場合には、まず、ラジアントチューブ207の温度を上昇させるが、この時点では、炉温(炉の雰囲気温度)や炉壁の温度は低く、時間遅れを伴って上昇していくために、鋼板Sの加熱への寄与は小さい。これは、上記の検討からも明らかなように、加熱炉20内の鋼板Sは、主にラジアントチューブ207からの輻射伝熱と、ハースロール205からの接触伝熱により加熱されるからである。
鋼板Sは加熱炉内を移動しているために、時間当たりの鋼板への入熱量は限られている。しかしながら、ハースロール205は加熱炉20内に固定されているために時間と共に移動することもなく、ラジアントチューブ207からの輻射熱を、仕切板209を介して受けることとなる。ハースロール205への入熱量は、時間と共に積算され、時間経過に比例して増加する。従って、コイル移行時に炉温を加熱する場合には、ハースロール205の温度は炉温(炉の雰囲気温度)よりも高くなってしまう。コイル移行時には、鋼板Sは温度(板温)が低く、接触伝熱であり伝熱効率が良いハースロール205からより多くの入熱を受けるため、ラジアントチューブ207で加熱された鋼板Sは、ハースロール205により更に加熱される場合があることに、本願発明者は想到した。また、ハースロール205が過剰に加熱されていると、ハースロール205のサーマルクラウンも大きくなり、鋼板Sのヒートバックリングも生じやすくなってしまう。
これらの考察の結果から、コイル移行時には、ハースロール205の表面温度上昇を抑制し、ハースロール205から鋼板Sへの伝熱を極力抑制することが鋼板のサーマルバックリングを防止するために極めて有効であることがわかった。その結果、鋼板厚みが厚い先行材から厚みが薄い後行材へとコイルを移行する場合には、以下に示すような温度制御を行なうことが必要であることに想到した。
すなわち、連続焼鈍炉10内の加熱炉20がN個の加熱ゾーンに分かれている場合に、まず、加熱炉20の出側に位置するN番目の加熱ゾーンの炉温を後行材である板厚の薄い鋼板の標準値に設定して昇温を行い、N番目の加熱ゾーンの炉温が標準値に許容範囲を含む温度になったとき、(N−1)番目の加熱ゾーンの炉温を後行材である板厚の薄い鋼板の標準値に設定して昇温を行なう。このような制御を、加熱炉20の入側に位置する1番目の加熱ゾーンになるまで繰り返していく。
例えば、加熱炉20が5つの加熱ゾーン(第1加熱ゾーンから第5加熱ゾーン)に分かれている場合には、加熱炉20の制御部(図示せず。)は、以下の制御を行なう。
(1)炉温標準値テーブルを参照して、先行材および後行材のヒートサイクル、成分値、板厚、板幅を基にして、炉温設定値を決定する。
(2)第5加熱ゾーンの炉温が(1)で決定した炉温設定値となるように、第5加熱ゾーンの温度設定を設定する。
(3)第5加熱ゾーンの炉温の実績値が、「炉温設定値±許容温度幅」となったら、第4加熱ゾーンの炉温が(1)で決定した炉温設定値となるように、第4加熱ゾーンの温度設定を設定する。
(4)第4加熱ゾーンの炉温の実績値が、「炉温設定値±許容温度幅」となったら、第3加熱ゾーンの炉温が(1)で決定した炉温設定値となるように、第3加熱ゾーンの温度設定を設定する。
(5)第3加熱ゾーンの炉温の実績値が、「炉温設定値±許容温度幅」となったら、第2加熱ゾーンの炉温が(1)で決定した炉温設定値となるように、第2加熱ゾーンの温度設定を設定する。
(6)第2加熱ゾーンの炉温の実績値が、「炉温設定値±許容温度幅」となったら、第1加熱ゾーンの炉温が(1)で決定した炉温設定値となるように、第1加熱ゾーンの温度設定を設定する。
ここで、上記の許容温度幅は、例えば鋼板の通板速度等に基づいて決定される値であり、例えば±5℃のように、任意の値に設定することが可能である。
上記の制御を開始するタイミングは、例えば、「加熱炉20の上流側に設置した溶接点検出機を鋼板の溶接部分が通過した時」を基準とすることが可能である。溶接点検出機から加熱炉20までの距離や加熱炉20内で鋼板が搬送される距離等は、連続焼鈍炉の設置時に決定される事項であるため、制御する加熱ゾーンまでの鋼板の移動距離と、鋼板の通板速度とから、鋼板が制御を行なおうとしている加熱ゾーンまで到達するのに要する時間を算出することが可能である。また、溶接点検出機や加熱炉20の制御部(図示せず。)が例えば溶接部分が通過した時刻を記憶しておくことで、溶接部分が制御を行なおうとしている加熱ゾーンに到達する時刻を算出することが可能となる。
また、上記の温度制御は、鋼板Sが加熱炉20に入る前までに、全ての加熱ゾーンに対して温度制御が終了していることが必要である。
また、上記の溶接点検出機を、図1に示したように、加熱炉20の上流側に2台設けることも可能である。2台の溶接点検出機を設ける場合には、加熱炉20の上流側に第2溶接点検出機18を設置し、溶接機14と第2溶接点検出機18との間に第1溶接点検出機16を設けることが好ましい。2台の溶接点検出機を設ける場合には、溶接部分が第1溶接点検出機16を通過したタイミングで加熱炉の炉温制御を開始してもよく、溶接部分が第2溶接点検出機18を通過したタイミングで加熱炉の炉温制御を開始してもよい。
加熱ゾーンの炉温を上昇させる際に、必要な熱量Qが大きい場合には、早めに制御を開始しないと炉温が所定の温度まで上昇せず、ひいては、鋼板の板温が所定の温度まで上昇しない場合も考えられる。そのために、必要な熱量Qの大きさに応じて制御開始のタイミングを早めることが可能である。同様に、炉温の上昇に要する熱量が小さい場合には、早く制御を開始してしまうと温度が上昇しすぎる場合も考えられるため、必要な熱量Qが小さい場合には、制御開始のタイミングを遅らせることも可能である。
第2溶接点検出機(第2WPD)18を温度制御開始の基準とする場合には、例えば図4に示したように、熱量増加量(熱量減少量)Qの大きさに応じて、Qが大きい場合には第2溶接点検出機18のαm手前から制御を開始するようにし、Qが小さい場合には第2溶接点検出機18の後αmから制御を開始するようにしてもよい。また、修正距離αは、鋼板の通板速度等に応じて決定することが可能である。
上記のような制御を行なうことで、加熱炉の前半部分に位置する加熱ゾーンに比べて後半部分に位置する加熱ゾーンの方が、炉温を上げ始めてからの時間が長くなる。後半部分に位置する加熱ゾーンの炉温を上昇させるタイミングを適切に制御することで、板厚の厚い鋼板から薄い鋼板へと切り替わる溶接点が加熱炉20に入る際の第1加熱ゾーンのハースロール205の温度は相対的に低いままであり、ハースロール205のサーマルクラウンは小さいままである。そのため、鋼板幅方向の温度が不均一になることはなく、後行材におけるセンターバックリングの発生が無くなる。また、鋼板は、鋼板の幅方向の温度は均一なまま、次の加熱ゾーンのハースロール205に接することとなるため、この時点で鋼板にヒートバックリングが生じることはない。更に、第1加熱ゾーンで、鋼板は所定の温度に設定されたラジアントチューブ207により主に輻射伝熱を受けて加熱される。ラジアントチューブ207の温度は、鋼板の目標温度を元に設定されているので、鋼板の加熱速度が著しく遅延することはない。
第2加熱ゾーンのハースロール205の温度は、第1加熱ゾーンのハースロール205の温度よりも高く、ハースロール205のサーマルクラウンも第1加熱ゾーンのサーマルクラウンよりも大きいものの、従来の制御方法のように、全ての加熱ゾーンを同時に上昇させた場合よりも小さい。更に、溶接点の通過時には、第1加熱ゾーンの雰囲気温度およびハースロール温度よりも第2加熱ゾーンの雰囲気温度およびハースロール温度の方が高いために、溶接点の通過時にはハースロール205が鋼板Sに熱を与えることとなり、ハースロール205が鋼板Sにより加熱されることはなく、むしろ、ハースロール205は鋼板Sにより冷却されることとなる。そのため、溶接点通過時において、ハースロール205のサーマルクラウンが大きくなるということも無い。その結果、鋼板の幅方向の温度差は生じるものの、センターバックリングを生じさせるほどの差異ではない。
上記のようなハースロール−鋼板間の熱の授受や、隣接する2つの加熱ゾーン間におけるハースロールのサーマルクラウンの変化が、第N加熱ゾーンまで繰り返されることとなるため、先行材と後行材との溶接点でセンターバックリング等の形状不良が発生することが無く、板厚の厚い先行材から板厚の薄い後行材へのコイル移行を、好適に行なうことが可能となる。また、溶接点通過時における温度変化が非常に小さいために、板温外れを防止することが可能となる。一方、第1加熱ゾーンのハースロール温度を下げる方法としては、ラジアントチューブの温度の設定を低くして、かつ、加熱開始を早める方法も考えられる。しかし、この方法では、ラジアントチューブの温度が低いために鋼板の加熱速度が低下する。このことは、鋼板の加熱速度が著しく遅延することに繋がる恐れがある。
更に、板厚の厚い鋼板(先行材)と薄い鋼板(後行材)との溶接点でセンターバックリングが発生しない場合には、溶接点以降の後行材においても、センターバックリングの発生を促す主要因が取り除かれることとなる。従って、先行材から後行材へとコイル移行を行った場合にも、センターバックリング等の形状不良が発生する可能性が、非常に小さくなる。
以下、実施例および比較例を示しながら、本発明に係る加熱炉の温度制御方法について、詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明のあくまでも一具体例であって、本発明が以下に示す実施例に規制されるわけではない。
(本発明例)
先行材として板厚が1.0mmである鋼板、後行材として板厚が0.8mmである鋼板を溶接して加熱炉に送入した場合について、実際の鋼板の温度推移とサーマルクラウンの変化について測定を行なった。
温度制御は、加熱炉前に設けた第2溶接点検出機18で溶接点を検出した後に、溶接点が100m加熱炉側に移動したタイミングで開始した。また、温度制御開始のタイミングは、先行材と後行材との入熱量の比較により決定した。
本実施例で使用した加熱炉は5つの加熱ゾーンに分けられているため、加熱炉の出側に位置する第5加熱ゾーンから昇温を行い、第5加熱ゾーンの温度が標準値に達してから第4加熱ゾーンの昇温を行ない、順次第1加熱ゾーンまで昇温制御を行った。
なお、先行材の通板速度は180m/分とし、後行材の通板速度は180m/分→200m/分→230m/分とした。また、先行材と後行材の炉温の差は、20℃とした。
(比較例)
第1加熱ゾーンから第5加熱ゾーンまで同時に、本発明例と同じ温度だけ炉温を上昇させ(急速昇温)、後行材の通板速度を180m/分→230m/分とした以外は上記の本発明例と同様にし、実際の鋼板の温度推移とサーマルクラウンの変化について測定を行なった。
測定した結果を、図5に示す。図5は、加熱炉の温度制御結果を説明するためのグラフ図である。なお、図5において、1Z、2Z、・・・、5Zは、それぞれ第1加熱ゾーン、第2加熱ゾーン、・・・、第5加熱ゾーンを表している。
図5において、一番下の実線が昇温前の板温の推移を表しており、一番上の破線が比較例における板温の推移を表している。また、太線が、本発明例における板温の推移を表している。図5を参照すると、昇温前と本発明例における温度とサーマルクラウンの変化は、第1加熱ゾーンおよび第2加熱ゾーンでは同じとなっている。これは、第1加熱ゾーン〜第5加熱ゾーンの炉温は標準値に達しているが、ハースロールの温度上昇には時間がかかるために、第1加熱ゾーンおよび第2加熱ゾーンの炉温は標準値になっているが、第1加熱ゾーンおよび第2加熱ゾーンのハースロール温度がまだ上昇していないことを意味している。
更に、第5加熱ゾーンにおいても、本発明例におけるサーマルクラウンは、比較例におけるサーマルクラウンよりも小さいことがわかる。これは、本発明例において第1加熱ゾーン〜第4加熱ゾーンのハースロール温度が比較例の急速加熱時におけるハースロール温度よりも低いために、第1加熱ゾーン〜第4加熱ゾーンにおいて先行材の板温がハースロールで冷やされて低下し、この低温の先行材によって第5加熱ゾーンのハースロールが冷却されるために第5加熱ゾーンのサーマルクラウンが小さくなったと考えられる。なお、ハースロール−鋼板間での伝熱があるために、定常状態における炉温に対する鋼板温度の関係よりもコイル移行時の鋼板温度が低い場合がある。そのため、本発明例では、通板速度を少し下げることで加熱炉出側の板温を調整した。
また、比較例においては、第1加熱ゾーン〜第5加熱ゾーンの加熱時間は全て同じであるため、第1加熱ゾーン〜第5加熱ゾーンのハースロール温度は、同じ時間に同じ温度だけ上昇する。その結果、ハースロールからの後行材鋼板への入熱は、第1加熱ゾーン〜第5加熱ゾーンまで同じ量だけ増加するために、後行材の板温は、第1加熱ゾーンから上昇することがわかる。
更に、コイル移行時では、定常状態とは異なり、鋼板への輻射伝熱や対流伝熱の影響を大きく受けるために、炉温操作によって実際の板温が大きく異なることが明らかとなった。例えば、温度を150℃上昇させる場合に各加熱ゾーンを30℃ずつ一気に上昇させると、温度が200℃以上上昇してしまう場合があることがわかった。
このように、加熱炉出側に位置する加熱ゾーンから温度制御を行なうことによって昇温前の曲線から本発明例の曲線へと板温を適正に移行させることで、溶接点通過時における温度変化を小さくすることが可能となり、板温外れを防止することが可能となる。また、溶接点通過時におけるサーマルクラウンの変化を小さくすることで、ヒートバックリングや鋼板のウォークを防止することが可能となり、鋼板の形状不良を防止することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述の実施形態においては、加熱炉の各加熱ゾーンが壁等で物理的に仕切られていない場合について説明を行なったが、各加熱ゾーンが壁等で物理的に仕切られた加熱炉に対しても、本発明に係る温度制御方法を適用することが可能である。
本発明の一実施形態に係る連続焼鈍炉を説明するための説明図である。 同実施形態に係る加熱炉を説明するための説明図である。 同実施形態に係る加熱炉の内部を説明するための説明図である。 同実施形態に係る加熱炉の温度制御方法を説明するための説明図である。 加熱炉の温度制御結果を説明するためのグラフ図である。 コイル移行時におけるヒートバックリングを説明するための説明図である。
符号の説明
10 連続焼鈍炉
12 ペイオフリール
14 溶接機
16 第1溶接点検出機
18 第2溶接点検出機
20 加熱炉
22 均熱炉
24 冷却炉
26 過時効炉
28 冷却装置
30 切断機
32 テンションリール
34 ルーパー
201 予備加熱ゾーン
203 加熱ゾーン
205 ハースロール
207 ラジアントチューブ
209 仕切板
S 鋼板

Claims (11)

  1. 連続焼鈍炉においてN個(N≧2)の加熱ゾーンを含む加熱炉により板厚が先行材と後行材とで異なり、当該先行材と後行材とを溶接点で接合した鋼板を加熱する場合の加熱炉の温度制御方法であって、
    前記加熱炉の最後段に位置するN番目の加熱ゾーンの炉温を全ての前記加熱ゾーンの最初に設定し、逐次前段に位置する前記加熱ゾーンへと遡るに際して、前記加熱炉入側からJ(J=2〜N)番目の加熱ゾーンの炉温を前記後行材の標準値に設定して温度制御し、前記J番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に到達してから、J−1番目の加熱ゾーンの炉温を前記後行材の標準値に設定して温度制御し、以下同様に、前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンに至る各加熱ゾーンの炉温を順次温度制御することを特徴とする、加熱炉の温度制御方法。
  2. 遅くとも前記先行材と前記後行材との溶接点が前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンのハースロールに達するまでに、当該加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に達するように、N番目の加熱ゾーンの炉温の温度制御が開始されることを特徴とする、請求項1に記載の加熱炉の温度制御方法。
  3. 遅くとも前記先行材と前記後行材との溶接点が前記加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンのハースロールに達するまでに、当該加熱炉入側から1番目の加熱ゾーンの炉温が前記後行材の標準値に許容範囲を含む温度に達するように、前記後行材の通板速度が制御されることを特徴とする、請求項1に記載の加熱炉の温度制御方法。
  4. 前記後行材の板厚は、前記先行材の板厚よりも相対的に薄いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  5. 前記炉温の温度制御は、昇温制御であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  6. 前記後行材の通板速度は、前記先行材の通板速度よりも相対的に遅いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  7. 前記加熱炉の上流側に前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置が設けられ、
    前記溶接点検出装置により前記先行材と後行材との溶接点が検出されるタイミングに基づいてN番目の加熱ゾーンの炉温の温度制御が開始されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  8. 前記加熱炉の上流側に設けられた前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置は、少なくとも上流側検出部と下流側検出部とを備え、
    前記加熱炉の昇温制御を行う場合には、前記先行材と後行材との溶接点が前記上流側検出部を通過し前記下流側検出部を通過する前に、前記加熱炉の昇温制御が開始されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  9. 前記加熱炉の上流側に設けられた前記先行材と前記後行材との前記溶接点を検出する溶接点検出装置は、少なくとも上流側検出部と下流側検出部とを備え、
    前記加熱炉の降温制御を行う場合には、前記先行材と後行材との溶接点が前記下流側検出部を通過した後に、前記加熱炉の降温制御が開始されることを特徴とする、請求項1〜4、6、7のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  10. 前記温度制御は、各ゾーンに設けられた加熱装置の発熱量の多寡により行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
  11. 後行材を処理する炉温の標準値は、前記先行材および前記後行材の板幅、板厚、成分、板温の比較により決定されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の加熱炉の温度制御方法。
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