以下に、本発明の形態を詳細に述べる。
本発明の電子写真感光体用塗布液の調製方法は、以下の点を特徴とする。まず、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに溶解させN−アルコキシアルキル化ナイロン液を得る。次いで、このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を一定の保管温度及び保管時間で保管することでゲル化させる。更に、ゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンに有機顔料を分散させる、又は溶剤にゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンと有機顔料とを分散させることによって、電子写真感光体用塗布液を調製することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体用塗布液の調製方法は、以下の工程を含む。
まず、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに溶解させN−アルコキシアルキル化ナイロン液を得る工程を含む。次いで、このN−アルコキシアルキル化ナイロン液の液温度を−80℃以上15℃以下、かつ保管時間を少なくとも1時間とし、ゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンを得る工程を含む。更に、第3の工程として、このゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンと有機顔料とを溶剤に分散させる工程を含む。
ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンは、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに加熱溶解させた後、次の条件を組み合わせて調製する事ができる。
ここで、所望のゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンを調製させる事ができればN−アルコキシアルキル化ナイロンの種類は特に限定されない。例えば、N−アルコキシアルキル化ナイロンのアルコキシアルキルの種類としては、メトキシメチル、エトキシメチル、エトキシエチルやブトキシメチル等従来公知のものを用いることができる。また、N−アルコキシアルキル化ナイロンのナイロンの種類としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610等従来公知のものを組み合わせて用いることが出来る。
N−アルコキシアルキル化ナイロンの種類はポリアミド樹脂をゲル化させるアルコールへの溶解性、N−アルコキシアルキル化ナイロンのゲル化のしやすさを考慮して決定される。1種類又は2種類以上のN−アルコキシアルキル化ナイロンを組み合わせて用いることもできる。
使用するポリアミド樹脂には、少なくともN−アルコキシアルキル化率が20%以上45%以下のN−アルコキシアルキル化ナイロンが含まれることが好ましい。又は、少なくともN−アルコキシアルキル化率が20%以上45%以下のN−メトキシメチル化6ナイロンが含まれることが更に好ましい。なお、N−アルコキシアルキル化率はNMRにて以下に示す方法にて測定した。
N−アルコキシアルキル化ナイロンは、主鎖に複数の種類のナイロンを化学的に結合したものである共重合ナイロンと比較して、ナイロン主鎖の繰り返し単位が一定であることから結晶性に優れ、ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンを調製し易い。また、N−アルコキシアルキル化ナイロンはN−アルコキシアルキル化率が20%より低いと溶剤への溶解性が低下し、ゲル化したポリアミド樹脂の調製が難しくなることがある。N−アルコキシアルキル化率が45%より高いとアルコールへの溶解性が上がり、電子写真感光体用塗布液の安定性が悪化することがある。
以下にN−メトキシメチル化率の測定方法を述べる。
<N−アルコキシアルキル化率の測定方法>
装置:
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μS
データポイント:32768
周波数範囲:10500Hz
積算回数:32回
測定温度:25℃
試料:
N−アルコキシアルキル化ナイロン 25mg
メタノール−D4(99.8atom%D) アルドリッチ製 0.75ml
テトラメチルシラン(内部標準物質) メタノール−D4に対し0.05重量%
計算方法:
A:N−アルコキシアルキル化されているアミド基のカルボニル部分隣のメチレンプロトン(ca.2.4ppm)の積分値
B:N−アルコキシアルキル化されていないアミド基のカルボニル部分隣のメチレンプロトン(ca.2.2ppm)の積分値
N−アルコキシアルキル化率(%)= A/(A+B)×100
所望のゲル化したポリアミド樹脂を得る為に、ポリアミド樹脂をゲル化させる温度は、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに溶解させたN−アルコキシアルキル化ナイロン液を−80℃以上15℃以下に冷却することが好ましい。より好ましくは、−80℃以上5℃未満に冷却する場合であり、−80℃以上0℃以下に冷却することが更に好ましく、−80℃以上−10℃以下に冷却することが特に好ましい。
また、所望のゲル化したポリアミド樹脂を得る為に、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに溶解させたN−アルコキシアルキル化ナイロン液の保管時間を少なくとも1時間にすることが好ましい。より好ましくは、保管時間を少なくとも6時間にする場合であり、少なくとも24時間にすることが更に好ましく、少なくとも72時間にすることが特に好ましい。
ポリアミド樹脂をゲル化させるアルコールは、所望のゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンを調製する事ができればアルコールの種類は特に限定されない。しかしながら、少なくともエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール又はn−ブタノールのいずれかを含有することが好ましく、エタノールを含有することがより好ましい。また、アルコールはN−アルコキシアルキル化ナイロンの溶解性とゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンの調製のしやすさを加味して、1種類又は2種類以上のアルコールを組み合わせても良い。
ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンにおけるN−アルコキシアルキル化ナイロン固形分は、所望のゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンを調製することができれば特に限定されない。ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンの安定性を考慮すれば、N−アルコキシアルキル化ナイロンの固形分は好ましくは質量%で2.0%以上であり、更に好ましくは5.0%以上であり、最も好ましくは5.0%以上30.0%以下の範囲である。N−アルコキシアルキル化ナイロンの固形分が低すぎるとゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンが調製できないことがある。
ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンの形状は、所望の電子写真感光体用塗布液を調製することができれば特に限定されない。分散操作における作業性を考慮すれば、分散を行う前にゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンを0.5mm〜10mmの大きさに破砕しておくことが好ましい。ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンが0.5mmより小さいと破砕したゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロン同士が付着しやすくなり、作業性が悪化する事がある。ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンが10mmより大きいと、分散終了後にゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンの未分散分が残ることがある。ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンの破砕には、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、スターラー、ミキサー、撹拌機、ロールミル、乳化分散機、メッシュ、篩又はミンサー等を用いる。
ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンと有機顔料を分散する場合は、希釈用溶剤を加えても加えなくてもよい。ただし、電子写真感光体用塗布液の分散性を考慮すれば、希釈用溶剤を加えて、分散中の電子写真感光体用塗布液の流動性を上げることが好ましい。
分散方法としては、既知の方法、例えばペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、スターラー、ミキサー、撹拌機、ロールミル又は乳化分散機等の分散装置を用いて分散する方法を用いることができる。前述の希釈用溶剤としては、少なくともメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのいずれかを含有することが好ましい。
電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料とN−アルコキシアルキル化ナイロンの質量比は電子写真感光体用塗布液の液安定性と該電子写真感光体用塗布液を用いた電子写真感光体の出力画像の濃度ムラを考慮して決定される。好ましくは電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料とN−アルコキシアルキル化ナイロンの質量比が1:100以上2:1以下である。電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料とN−アルコキシアルキル化ナイロンの質量比が2:1よりも高い場合、顔料の分散性が悪化して電子写真感光体用塗布液の液安定性が劣ることがある。また、電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料とN−アルコキシアルキル化ナイロンの質量比が1:100よりも低いと連続プリント時における電子写真感光体用塗布液を用いた電子写真感光体の出力画像の濃度ムラが悪化することもある。
N−アルコキシアルキル化ナイロン液や電子写真感光体用塗布液は、フィルターを用いてろ過することが電子写真感光体用塗布液の塗膜欠陥の原因となるゴミ等を除去する上で好ましい。このフィルターは、N−アルコキシアルキル化ナイロン液に含まれるN−アルコキシアルキル化ナイロン量や電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料とN−アルコキシアルキル化ナイロンの質量比に影響を与えない孔径を有することが好ましい。
電子写真感光体用塗布液の固形分は電子写真感光体用塗布液の安定性、塗工性を考慮して決定され、好ましくは質量%で0.5%以上15%以下であり、更に好ましくは1%以上10%以下である。電子写真感光体用塗布液の固形分が15%より高いと電子写真感光体用塗布液の流動性が失われたり、分散性が悪くなり分散液の液安定性が低下したりすることがある。また、電子写真感光体用塗布液の固形分が0.5%より低いと電子写真感光体用塗布液を用いた電子写真感光体の塗布ムラ、膜ダレ等による画像濃度ムラや画像欠陥が発生することもある。
ここで、ゲル化したN−アルコキシアルキル化ナイロンとは、ASTM D 4359−90に従って固体−液体判定試験を行い、固体状態と判定できるN−アルコキシアルキル化ナイロンとアルコールから成るN−アルコキシアルキル化ナイロン試料を意味する。ゲル化していないN−アルコキシアルキル化ナイロンとは、ASTM D 4359−90に従って固体−液体判定試験を行い、液体状態であると判定できるN−アルコキシアルキル化ナイロンとアルコールから成るN−アルコキシアルキル化ナイロン試料を意味する。また、安定性が高いか否かは、該電子写真感光体用塗布液を有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、23℃の環境及び42℃の環境にてそれぞれ1ヵ月静置して判断される。1ヵ月静置後に、該電子写真感光体用塗布液の上澄みに有機顔料の分離がないか、又は有機顔料の分離が1mm以下であれば、該電子写真感光体用塗布液は安定性が高いと判断できる。
前記有機顔料は、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ及びテトラキスアゾ等のアゾ顔料、ガリウムフタロシアニン及びチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等の従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。中でも、フタロシアニン顔料及びアゾ顔料が好ましい。また、有機顔料はこれらを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用する事が出来る。
前述のフタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、ガリウムフタロシアニン顔料等の従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。
また、アゾ顔料としては、下記一般式(1)で示されるビスアゾ顔料が好ましい。
電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)は動的光散乱法を測定原理とする「MICROTRAC PARTICLE−SIZE ANALYZER 9340 UPA」(Leeds&Northrup社製)を用いて測定される。具体的な測定条件は以下の通りである。
<マイクロトラックUPA測定条件>
演算用及び制御用プログラムバージョン : 4.53E
Mode : FullRange
Transparent Particles : No
Spherical Particles : No
Particle Refractive Index : 1.51
Particle Density : ビスアゾ顔料1.20g/cc、フタロシアニン顔料1.50g/cc
Fluid : Ethanol
Fluid Refractive Index : 1.33
Fluid High Temp : 30.0℃ Viscosity 1.003mPa・s
Fluid Low Temp : 20.0℃ Viscosity 1.200mPa・s
Run Time : 180sec
また、本発明の調製方法により得られた電子写真感光体用塗布液を用いて形成された電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも下引き層と感光層を積層して製造される。この感光層は、電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型感光層(図1(a))であっても、電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層(図1(b))であってもよい。ただし、電子写真特性の観点からは積層型感光層であることが好ましい。なお、図1(a)及び(b)中、101は支持体、102は下引き層、103は感光層、104は電荷発生層、105は電荷輸送層を示す。以下では、積層型(機能分離型)感光層を含有する電子写真感光体について詳細に述べる。
導電性支持体は導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレス及びニッケル等の金属、又は導電層を設けた金属、プラスチック及び紙等が挙げられ、形状としては円筒状及びフィルム状等が挙げられる。特に円筒状のアルミニウムが機械強度、電子写真特性及びコストの点で優れている。これらの導電性支持体は素管のまま用いても良いが、切削及びホーニング等の物理処理、陽極酸化処理又は酸等を用いた化学処理を施した物を用いてよい。その中でも切削又はホーニング等の物理処理を行うことにより、表面粗さをRz値で0.1μm以上3.0μm以下に処理することで、干渉縞防止機能を持たせることができる。
導電性支持体と下引き層との間に干渉縞防止層(図1中不図示)を設けることもできる。干渉縞防止層は、支持体自身に干渉縞防止機能を持たせた場合は必要ないが、導電性支持体を素管のまま用い、これに塗工により干渉縞防止層を形成することにより、簡便な方法により導電性支持体に干渉縞防止機能を付与できる。このため、生産性、コストの面から非常に有用である。干渉縞防止層を形成する好ましい方法としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機粒子をフェノール樹脂等の硬化性樹脂と共に適当な溶剤に分散して塗布液を調製し、導電性支持体に塗工、乾燥する方法が挙げられる。干渉縞防止層の膜厚は1μm以上40μm以下であることが好ましい。
支持体上又は干渉縞防止層の上には、支持体との密着性確保、感光層の電気的破壊の保護、感光層のキャリア注入性の改良等のために下引き層が必要である。
下引き層は、有機顔料とポリアミド樹脂からなる前述の分散液を導電性支持体又は干渉縞防止層上に塗工することにより形成される。その膜厚は好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。有機顔料を下引き層に含有させることにより、連続プリント時における電子写真感光体用塗布液を用いた電子写真感光体の出力画像の濃度ムラを抑制することができる。
電荷発生材料としては、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ及びテトラキスアゾ等のアゾ顔料、ガリウムフタロシアニン及びチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等を用いることができる。好ましくは環境変動による特性安定性の観点から、ガリウムフタロシアニン顔料である。更に好ましくは、高感度、光メモリー特性の観点から、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ=7.4°±0.3°及び2θ=28.2°±0.3°の位置に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶である。
電荷発生層の塗工液は、前述の電荷発生材料を適当な溶剤を溶媒として上述の既知の分散方法にて調製される。適当な溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、メチルセルソルブ、アセトン、ジオキサン及びN,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。この時に結着剤として高分子物質を一緒に加えても良いし、顔料と溶媒だけであらかじめ分散した後、結着剤を加えても良い。
結着剤としては広範な絶縁性樹脂から選択でき、またポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリビニルポレン等の有機光導電性ポリマーからも選択できる。好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリアリレート(ビスフェノールAとフタル酸との縮重合体等)、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂及びポリアクリルアミド樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができる。また、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等の絶縁性樹脂を挙げることができる。
また、電荷発生層は上記の様な物質を含有する分散液を下引き層上に塗布することによって形成され、その膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05μm以上1μm以下が好ましい。
電荷輸送層は主として電荷輸送材料と結着剤とを溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。
用いられる電荷輸送材料としては各種のトリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物及びトリアリルメタン系化合物等が挙げられる。電荷輸送材料と溶媒だけであらかじめ分散溶解した後、結着剤を加えても良い。また、結着剤としては上述したものを用いることができる。
電荷輸送層の膜厚は好ましくは5μm以上40μm以下であり、更に好ましくは10μm以上30μm以下である。
電荷輸送層が単一層の場合も上述したような物質を用いて同様に形成することができ、その膜厚は5μm以上40μm以下が好ましく、特には10μm以上30μm以下が好ましい。
また、本発明においては電荷輸送層上には耐久性、転写性及びクリーニング性の向上を目的として、保護層を設けてもよい。
保護層は、樹脂を有機溶剤によって溶解して得られる保護層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。樹脂としてはポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー等が挙げられる。
また、保護層に電荷輸送能を併せ持たせるために、電荷輸送能を有するモノマー材料や高分子型の電荷輸送材料を種々の架橋反応を用いて硬化させることによって保護層を形成してもよい。硬化させる反応としては、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法及び光CVD法等が挙げられる。
さらに、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤、及び耐摩耗性改良剤等を含ませてもよい。導電性粒子としては、例えば、酸化錫粒子等の金属酸化物が好ましい。耐摩耗性改良剤としてはフッ素系樹脂微粉末、アルミナ及びシリカ等が好ましい。
保護層の膜厚は0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、特には1μm以上10μm以下であることが好ましい。
これら各種層の塗布方法としては、ディッピング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法及びビームコーティング法等を用いることができる。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明の実施の形態は、これらにのみ限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、それぞれ「質量部」を意味する。
本実施例では、エタノール及びイソプロパノールはキシダ化学製、特級を使用しており、n−プロパノール、n−ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルはキシダ化学製、1級を使用している。また、式(2)のフタロシアニン顔料は、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2゜の9.0゜、14.2゜、23.9゜及び27.1゜に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶を使用した。
まず、本発明の電子写真感光体用塗布液の調製方法に使用したN−アルコキシアルキル化ナイロン試料の調製法について述べる。
<実施例1〜40、比較例3、4、7、8>
N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 15部
表1に対応したアルコール 85部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表1に示す保管温度において表1に示す保管時間で保管した。その後、ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、固体であるゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成としたものを篩(篩目開き1.0mm)に通した。
前記ゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロン 10部
表1に対応したアルコール 18部
φ1.0ガラスビーズ 22部
前記式(1)ビスアゾ顔料 0.5部
その篩に通したものを、ペイントシェーカーを用い24時間分散し、希釈用溶剤として、表1に対応したアルコールを25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを13部加えて混合し、電子写真感光体用塗布液を得た。
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いて、この電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はビスアゾ顔料の分離が認められないものを「沈降なし」、液面高さから1mm程度の位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表1に示す。
〈実施例41〜80、比較例11、12、15、16〉
N−メトキシメチル化6ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 10部
表1に対応したアルコール 90部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表1に示す保管温度において表1に示す保管時間で保管した。その後、ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、固体であるゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成としたものを篩(篩目開き1.0mm)に通した。
前記ゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロン 9部
表1に対応したアルコール 8部
φ1.0ガラスビーズ 22部
前記式(1)ビスアゾ顔料 0.3部
その篩に通したものを、ペイントシェーカーを用い24時間分散し、希釈用溶剤として、表1に対応したアルコールを15部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを8部加えて混合し、電子写真感光体用塗布液を得た。
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いて、この電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はビスアゾ顔料の分離が認められないものを「沈降なし」、液面高さから1mm程度の位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表1に示す。
〈比較例1、2、5、6〉
N−メトキシメチル化6ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 15部
表1に対応したアルコール 85部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表1に示す保管温度において表1に示す保管時間で保管した。その後、ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、液体であるゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成とした。
前記ゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロン 10部
表1に対応したアルコール 18部
φ1.0ガラスビーズ 22部
前記式(1)ビスアゾ顔料 0.5部
上記の構成のものを、ペイントシェーカーを用いて24時間分散し、希釈用溶剤として、表1に対応したアルコールを25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを13部加えて混合し、電子写真感光体用塗布液を得た。
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いて、この電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はビスアゾ顔料の分離が認められないものを「沈降なし」、液面高さから1mm程度の位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表1に示す。
〈比較例9、10、13、14〉
N−メトキシメチル化6ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 10部
表1に対応したアルコール 90部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表1に示す保管温度において表1に示す保管時間で保管した。その後、ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、液体であるゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成とした。
前記ゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロン 9部
表1に対応したアルコール 8部
φ1.0ガラスビーズ 22部
前記式(1)ビスアゾ顔料 0.3部
上記の構成のものを、ペイントシェーカーを用いて24時間分散し、希釈用溶剤として、表1に対応したアルコールを15部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを8部加えて混合し、電子写真感光体用塗布液を得た。
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いた前記電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はビスアゾ顔料の分離が認められないものを「沈降なし」、液面高さから1mm程度の位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でビスアゾ顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表1に示す。
〈実施例81〜100、比較例19、20〉
N−メトキシメチル化6ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 15部
エタノール 85部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表2に示す保管温度において表2に示す保管時間で保管した。その後、ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、固体であるゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成としたものを篩(篩目開き1.0mm)に通した。
前記ゲル化したN−メトキシメチル化6ナイロン 10部
エタノール 18部
φ1.0ガラスビーズ 22部
下記式(2)フタロシアニン顔料 0.5部
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いて、この電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はフタロシアニン顔料の分離が認められないものを「沈降なし」とした。液面高さから1mm程度の位置でフタロシアニン顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でフタロシアニン顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表2に示す。
〈比較例17、18〉
N−メトキシメチル化6ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス社製、メトキシメチル化率36.1%) 15部
エタノール 85部
上記構成で、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を70℃で加熱溶解し、30℃以上40℃以下の液温度でポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過してN−アルコキシアルキル化ナイロン液を調整した。このN−アルコキシアルキル化ナイロン液を密閉容器中で表2に示す保管温度で表2に示す保管時間を保管した。ASTM D 4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、液体であるゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを調製した。
続いて上述のゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロンを下記の構成とした。
前記ゲル化していないN−メトキシメチル化6ナイロン 10部
エタノール 18部
φ1.0ガラスビーズ 22部
前記式(2)フタロシアニン顔料 0.5部
上記の構成のものを、ペイントシェーカーを用いて24時間分散し、希釈用溶剤として、エタノールを25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを13部加えて混合し、電子写真感光体用塗布液を得た。
この電子写真感光体用塗布液は、上述のように調製した後、有栓メスシリンダー(容量10ml)に液面高さが50mmになる量を入れ、それぞれ23℃及び42℃の環境にて30日静置した。その後、マイクロトラックUPA粒度分布測定器を用いて、この電子写真感光体用塗布液の有機顔料の体積平均粒径(D50)としてUPA粒径を測定した。
また、上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液の液安定性を目視評価した。目視評価結果はフタロシアニン顔料の分離が認められないものを「沈降なし」とした。液面高さから1mm程度の位置でフタロシアニン顔料の分離が認められるものを「僅かに沈降」、液面高さから10mmより低い位置でフタロシアニン顔料の分離が認められるものを「沈降」とした。
上述のように静置した後の電子写真感光体用塗布液を、アルミシート(一辺9cm正方形)にマイヤーバーを用いて、膜厚0.5μmで塗布し、100℃10分間の乾燥を行い、電子写真感光体用塗布液を塗布した塗布済みアルミシートを得た。評価結果は塗布面に異物が認められないものを「ポチレベル5」とした。また、塗布面に異物が1個以上3個以下認められるものを「ポチレベル4」、塗布面に異物が4個以上6個以下認められるものを「ポチレベル3」とした。更に、塗布面に異物が7個以上9個以下認められるものを「ポチレベル2」、塗布面に異物が10個以上認められるものを「ポチレベル1」とした。結果を表2に示す。
表1から以下のことがわかる。保管温度が15℃以下である実施例1〜80では、23℃30日静置の結果では顔料の沈降が無く、ポチランクが4以上である。かつ42℃30日静置の結果においても、僅かに顔料の沈降が見られるだけで、塗工目視の結果も23℃30日の静置より1〜2ランク程度の悪化に留まっている。これに対し、保管温度が23℃である比較例1〜16では、特に液体−固体判定試験で液体と判断された比較例1、2、5、6、9、10、13、14で23℃30日静置及び42℃30日静置の両方において顔料の沈降が観察された。その結果、ポチランク1となっている。
また、液体−固体判定試験で固体と判断された比較例3、4、7、8、11、12、15、16では23℃30日静置結果では僅かに顔料の沈降が見られるだけでポチランク3以上であった。しかしながら、42℃30日静置結果では全ての条件で顔料の沈降が観察され、ポチランク1となっており、塗工目視の結果が3〜4ランクの悪化となっている。このことから、15℃以下の保管温度で調製した実施例1〜80の電子写真感光体用塗布液は、23℃の保管温度で調製した比較例1〜16の電子写真感光体用塗布液と比較して、安定性が高いと言える。
保管温度が低い温度になるほど、電子写真感光体用塗布液の安定性が増す傾向を示している。例えば、保管時間が同じで保管温度違いの実施例1、17を比較すると、23℃30日の静置のUPA粒径は保管温度15℃の時0.38μmであるのに対し、保管温度−72℃の時0.23μmである。また、42℃30日の静置のUPA粒径は保管温度15℃の時0.63μm、保管温度−72℃の時0.26μmと、保管温度が低い方が粒径の増加量も少ない。
保管時間が長いほど、電子写真感光体用塗布液の安定性が増す傾向を示している。例えば、保管温度が同じで保管時間違いの実施例1、4を比較すると、23℃30日の静置のUPA粒径は1時間の時0.38μmであるのに対し、72時間の時0.26μmである。また、42℃30日の静置のUPA粒径は1時間の時0.63μmであるのに対し、72時間の時0.41μmと、保管時間が長い方が粒径の増加量も少ない。
アルコールの種類としては、エタノールを用いると電子写真感光体用塗布液の安定性が増す傾向を示している。例えば、保管温度及び保管時間が同じでアルコール種違いの実施例4、24、44、64を比較すると、23℃30日の静置のUPA粒径はエタノールの場合0.26μmであるのに対し、その他のアルコールの場合0.30〜32μmである。また、42℃30日の静置のUPA粒径においても、エタノールの場合0.41μmであるのに対し、その他のアルコールの場合0.48〜0.49μmと、エタノールの方が粒径の増加量も少ない。
また、表1、2から以下のことがわかる。有機顔料の種類違いとしては、例えば、アルコール種、保管温度及び保管時間が同じ条件で、ビスアゾ顔料の実施例4、8、12、16、20とフタロシアニン顔料の実施例84、88、92、96、100とを比較した。その結果、フタロシアニン顔料はビスアゾ顔料と比較して、電子写真感光体用塗布液に含まれる有機顔料のUPA粒径はやや大きい傾向を示しているが、電子写真感光体用塗布液の安定性はビスアゾ顔料と同等であることがわかる。
次いで、上記で得られた分散液を用い、電子写真感光体を製造し、デジタル複写機を用いた画像評価を行った。
〈実施例101〜124、比較例21〜24〉
酸化スズで被覆した酸化チタン粉体(商品名クロノスECT−62、チタン工業社製) 50部
レゾール型フェノール樹脂 25部
メチルセロソルブ 20部
球状シリコーン樹脂粉末(商品名トスパール120、東芝シリコーン社製) 3.8部
メタノール 5部
シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000) 0.002部
上記構成で、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、干渉縞防止層用塗布液を調製した。導電性支持体としてのアルミニウムシリンダー(直径30mm、引き抜き管)上に、この塗布液を浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥させ、膜厚が15μmの干渉縞防止層を形成した。
得られた干渉縞防止層上に、表3の実施例及び比較例に対応した電子写真感光体用塗布液を浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥して、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°の位置に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部を用いた。これと、下記式(3)で示される化合物0.1部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業社製)5部とをシクロヘキサノン250部に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散した。これに、シクロヘキサノン100部と酢酸エチル450部を更に加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式(4)で示される電荷輸送材料10部、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)10部をモノクロロベンゼン70部に溶解した。得られた溶液を電荷発生層上に浸漬塗布し、110℃で1時間乾燥することにより、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、表3の実施例及び比較例に対応した電子写真感光体を製造した。
画像形成装置として、レーザービームを用いたデジタル複写機(キヤノン社製:GP405)を用いた。該装置は、電子写真感光体の帯電手段として帯電ローラーと、現像手段として現像剤と電子写真感光体が非接触の一成分ジャンピング現像方法を採用した一成分現像器と、転写手段として帯電ローラーと、ブレードクリーニング手段と、帯電前露光手段とを備える。
また、電子写真感光体、帯電器及びクリーニング手段は一体型のユニットとなっている。プロセススピードは210mm/sである。前記デジタル複写機に表3の実施例及び比較例に対応した電子写真感光体を装着し、温度33℃湿度80%の環境でA4サイズのベタ白画像及びA4サイズのベタ白とベタ黒の中間の濃度である中間調ベタ画像を出力し、画像評価を行った。
ベタ白画像の評価は、ベタ白画像上に黒ポチが観察されないものを「黒ポチレベル5」とした。0.1mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル4」、0.2mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル3」、0.3mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル2」とした。更に、0.5mm幅以下の黒ポチが画像の全体に観察されるものを「黒ポチレベル1」とした。中間調ベタ画像の評価は、画像に濃度ムラが目視にて観察されないものを「濃度ムラなし」、画像に濃度ムラが目視にて観察されるものを「濃度ムラあり」とした。結果を表3に示す。
表3から以下のことがわかる。電子写真感光体1〜24では、ベタ白画像の評価において黒ポチレベルが2〜5の範囲であり、これらの評価において、黒ポチは発生したとしても最大で0.3mm幅以下の大きさであり、しかも出力した画像の一部にのみ部分的に発生している。また、電子写真感光体25〜28のベタ白画像の評価では黒ポチレベルが1であり、この場合の黒ポチは0.5mm幅以下の大きさで出力した画像の全体にわたって発生している。更に、中間調ベタ画像の評価では、電子写真感光体1〜24では濃度ムラが観察されていないのに対し、電子写真感光体25〜28は濃度ムラが観察されている。
このことから、N−アルコキシアルキル化ナイロンをアルコールに溶解させN−アルコキシアルキル化ナイロン液を得る。次いで、前記N−アルコキシアルキル化ナイロン液の液温度を−80℃以上15℃以下、かつ保管時間を1時間以上としてゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンを得る。更に前記ゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンに有機顔料を分散させる、又は溶剤にゲル化させたN−アルコキシアルキル化ナイロンと有機顔料を分散させる工程を含む条件で調製した電子写真感光体用塗布液を得る。この電子写真感光体用塗布液を用いて製造した電子写真感光体1〜24は、そうでない電子写真感光体25〜28と比較して、出力画像の欠陥が明らかに少ないと言える。