次に本発明の各実施の形態および変形例を説明する。
<発明の第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態におけるセキュリティシステムの構成の概要を表わしたものである。家屋111のドア112にはドアノブ113が取り付けられており、その下のドア部分にはキーホール114が設けられている。ドアノブ113の上側のドア部分には撮像用孔115と照明用孔116が開けられている。このセキュリティシステムでは、来訪者117がドア112のところまで来て、ドアノブ113に手を触れると、照明用孔116に内部から埋め込まれた赤外線LED(発光ダイオード)ランプ118が発光して、撮像用孔115の内部に配置された撮像素子(2次元CCD)が来訪者117を撮影するようになっている。本実施の形態ではキーホール114が施錠用に使用される。
図2は、ドアの要部を断面で示したものである。この実施の形態のドア112の外側に取り付けられているドアノブ113と内側に取り付けられているドアノブ121とは機構的に連動していない比較的簡易なタイプのものである。撮像用孔115はドア112の内側まで貫通しており、内側から画像ユニット122の筒状部122Aが嵌入されるようになっている。筒状部122Aは、ドア112の外側に面した箇所に単一あるいは複数枚のレンズから構成される光学レンズ123を配置しており、その焦点位置にデジタルカメラ等に広く使用されている2次元イメージセンサとしてのCCD(Charge Connected Diode:電荷結合素子)124を配置している。
画像ユニット122の筒状部122Aには画像出力部122Bが取り付けられており、この部分はドア122の内側の面に接着されている。画像ユニット122は一体構造となっているので、ドア112の外側からこれを取り外すことができないようになっている。CCD124と画像出力部122Bの間の空間には、CCD124から出力される画像を処理する画像処理回路125と、画像データを蓄積するメモリ126が収容されている。画像出力部122Bは、ドア112の内側から所望の時点で撮影を行うためのスイッチ127と、画像データを読み出すための画像データ出力端子128と、外側の画像あるいは蓄積された画像を表示する液晶ディスプレイ129から成っている。
このうちCCD124には、たとえば640×480ピクセルのカラー画像を記録することができるものが使用されている。用途によっては更に高解像度のものを用意することもできる。画像処理回路125はCCD124から得られた画像データをメモリ126に記録するための画像処理を行うが、これと共に画像ユニット122全体の制御も行うようになっている。すなわち、画像ユニット122はドアノブ113および赤外線LEDランプ118と接続されており、ドアノブ113の電位変化を検出して、来訪者117がドアを開けようとこれに触れたときに赤外線LEDランプ118を発光させる。これと共にCCD124は被写体の画像を1枚あるいは予め定めた時間間隔で所定枚数撮影するようになっている。撮影によって得られた画像データはメモリ126に記憶される。赤外線LEDランプ118の発光に気がついて来訪者117がこれに目を向けるようなことがあれば、本人を特定するのに特に好都合な画像を取得することができる。
メモリ126はたとえば16メガバイト〜128メガバイトの容量を持っいる。たとえば16メガバイトのメモリ容量の場合には、640×480ピクセルのカラー画像を撮影日時を合成して150枚程度記憶することができる。メモリ126は画像処理回路125の制御の下で規定枚の画像データを記憶していき、これを超える画像データが入力される時点から古いものを1枚ずつ消去して、新しい画像データに置き換えるようにしている。
画像ユニット122には、図示しない電源回路から電源が供給されるようになっている。電源回路はドア112に直接、商用電源あるいはこれを直流に変換した後の電源を引き込むようにしてもよいが、ドア112は開け閉めが行われるので、ヒンジ部分の電線の耐久性が問題となる。そこで本実施の形態のセキュリティシステムではドア112が閉まっている状態でドア112の内側表面に配置された図示しない受け側器具と接触する屋内電源側器具とが電磁結合を行って、電気エネルギをドア112内部の電源回路に供給するようになっている。この電源回路の内部には同じく図示しない容量の比較的大きなコンデンサあるいは二次電池が配置されており、画像ユニット122や赤外線LEDランプ118等の各部を駆動するための電源を供給するようになっている。もちろん、ドア112の内側から乾電池をセットしておくことも可能である。
画像出力部122Bにはスイッチ127が付属しており、これを押すことによりCCD124を起動して、これによって得られた画像を表示すると共に、その画像をドアノブ113による検知の場合と同様にメモリ126に書き込むようになっている。画像データ出力端子128は、必要に応じてメモリ126内に格納されている画像データの読み出しを行う際に使用する出力端子である。この出力端子あるいはスイッチ127を操作しても、メモリ126の内容を消去することはできない。これは、家屋111(図1)に無断で侵入した者が画像を勝手に消去する事態の発生を防止するためである。したがって、スイッチ127が短時間内に押される回数を制限したり、1日に押される回数の上限を設けるようにすることも、一度撮影された画像を侵入者が勝手に上書きして消去する事態を防止するためには有効である。
もっとも、このセキュリティシステムの最大の効果は、画像が撮像されて記録されることに気がついた侵入者等が、家屋への侵入等の所期の目的を達成することを断念して早期に立ち去るという犯罪の抑止効果にある。キーホール114に鍵を開ける道具を差し込んだ後、あるいは差し込む前にドアノブ113に手を触れたとき、赤外線LEDランプ118が発光するが、これに気づいた段階でその来訪者117の画像はすでに撮影されており、鍵を苦労して開ける前にその場から早々と立ち去らざるを得なくなるからである。夏等に風通しを良くするために、ドア112を少し開けているような場合にも、これを押し開けて入ろうとする時点ですでに撮影が行われてしまう。
もちろん、家人も出入りの度に撮影される訳であるが、当人の場合には、撮られた画像が他人に利用される訳でもないので、何ら問題とならない。それどころか、子供が学校から一度帰って遊びに行ったのか、まだ全然帰って来ないのかというようなチェックが可能になる。また、留守をしているときに友人が訪ねてきたような場合にも、これを確認することができる。
なお、本実施の形態では来訪者117の検出をドア112の電位変化によって行っているが、光の反射あるいは遮断を検出する等の慣用の手法を用いて来訪者117を検出するようにしてもよい。また、呼び鈴やインターホン(ドアホン)が押されたときこれによって来訪者が来たことを判別して撮影を行うようにしてもよい。また、実施の形態では撮像用孔115と照明用孔116を設けたが、キーホールに似せた孔を設け、これらの内部にこのような部品をセットしてもよい。マイクロフォンやスピーカを配置する場合についても同様である。
以上説明した本実施の形態では、既存のアパート等の家屋に家主等が僅かの費用をかけるだけで、高価な特殊な鍵を取り付ける以上の防犯効果を得ることができる。また、実施の形態では赤外線LEDランプ118を撮影に使用しているが、通常のLED等の照明手段でもよい。また、周囲が明るい場所では照明用のランプを使用せずに撮影を行うことができる。また、長期に不在になるような場合には、通常のストロボのような発光がより明瞭に外部から分かる照明手段を使用することも有効である。
<第1の実施の形態の変形例>
図3は、本発明の第1の実施の形態の変形例としてのセキュリティシステムを屋内から見たものである。第1の実施の形態の図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この変形例のセキュリティシステムでは、図示しないコンセントに接続された電源送信装置142がドア112側に取り付けられた電源受信装置141に電磁結合によって電源を供給している。電源受信装置141に接続された画像記録ユニット123A内には先の実施の形態のような大容量のメモリは内蔵されておらず、撮影した画像は、画像記録ユニット123Aに取り付けられたアンテナ143から屋内の所定の箇所に隠された受信装置144で受信され、ここで比較的大容量のメモリに順次格納されるようになっている。
したがって、撮像装置に気がついた侵入者がドア112の全部または一部を壊すことによって画像記録ユニット123Aを破損させたり、これを持ち去ることがあっても、その者の画像を安全に退避させることができる。また、受信側が比較的大容量のメモリを備えていれば、動画や高解像度の画像を充分な量、通信によって蓄えることができる。
なお、画像記録ユニット123A自体が携帯電話機等の無線端末に画像等のデータを直接配信することも可能であるし、受信装置144に所定のモード設定を行ったときにはこれが中継する形で携帯電話機等の無線端末に画像等のデータを配信するようにしてもよい。これにより、留守中の自宅に誰かが訪問するたびに、携帯電話機等でこれを把握することができる。したがって、画像記録ユニット123A側にマイクロフォンやスピーカを配置しておけば、その者と必要な会話を行うことも可能になる。
<発明の第2の実施の形態>
図4は、本発明の第2の実施の形態におけるセキュリティシステムの構成の概要を表わしたものである。本実施の形態で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
本実施の形態ではドア112に改造を行うことが困難な者を対象にして、その付近の物品に来訪者の画像を撮影する装置を組み込むことにしている。この例では郵便ポスト161をそのための装置としているが、新聞入れ、呼び鈴あるいはドアホンのような物であってもよい。
図5は、この例の郵便ポストの構成を示したものである。郵便ポスト161は郵便投函口162をその上部に有し、下部には郵便回収口163を有している。郵便回収口163には、必要に応じてキー164が取り付けられている。郵便ポスト161の郵便投函口162と郵便回収口163の間には、第1〜第3の孔166〜168が穿たれている。第1の孔166には赤外線LEDランプ118が取り付けられている。第2の孔167の内部には受光素子169が配置されている。第3孔168の内部には、図示しないがレンズと撮像素子が組み込まれている。これらは郵便ポスト161内部の画像処理ユニット171に接続されている。画像処理ユニット171は、郵便ポスト161内部の電池172から電源の供給を受けるようになっているが、可能であれば商用電源から電源を供給することもできる。画像処理ユニット171には送信アンテナ173が付属している。
このような第2の実施の形態のセキュリティシステムでは、赤外線LEDランプ118が常時、あるいは間欠的に点灯し、受光素子169が受光レベルを検出することで郵便ポスト161の前に物体が現われたことを検出する。来訪者117があったような場合には、受光素子169がこれを検出し、画像処理ユニット171は前記した撮像素子を駆動して郵便ポスト161の前の画像を1枚ないし所定の時間間隔で複数枚取り込む。そして画像を1枚ずつ送信アンテナ173から送信する。
送信された画像は、第1の実施の形態の変形例として図3で説明したと同様に家屋111内の受信装置144で受信され、ここで比較的大容量のメモリに順次格納されるようになっている。このとき、受信の日付も記録される。したがって、来訪者117が悪意を持った者のような場合で、何らかの異変に気付いて郵便ポスト161を破壊したり、あるいはこれを持ち去るようなことがあっても、来訪者117の画像が記録されているので、これに迅速に対処することができる。
<発明の第3の実施の形態>
図6は、本発明の第3の実施の形態におけるセキュリティシステムの構成の概要を表わしたものである。この第3の実施の形態では金庫のセキュリティシステムを扱っている。金庫181はその扉182あるいはその周囲に第1および第2の孔183、184が穿たれている。また、金庫181の背後の部分には送信アンテナ185が取り付けられている。送信アンテナ185は金庫の外側のパネルを一部領域だけ非金属部分としてこの内部に組み込んでおいてもよい。これにより、送信アンテナ185を事前に破壊するという行為を防止させることができる。
本実施の形態では第1および第2の孔183、184の一方に赤外線LEDランプ等の発光手段を配置し、他方の孔の内部に光学系と撮像素子を配置している。また、金庫181の内部には第2の実施の形態で説明したと同様の画像処理ユニット186が内蔵されている。本実施の形態の画像処理ユニット186の場合には、電源供給用のコンセント187が備えられているが、金庫181の内部に充電池188が備えられているので、停電あるいはコンセント187が引き抜かれた場合にも所定時間の間は画像処理ユニット185に電源が供給されるようになっている。
本実施の形態のセキュリティシステムの場合にも、所定の安全な場所(複数箇所であってもよい。)に配置された受信装置144(図3参照)が画像データを受信するようになっている。先の実施の形態と異なるのは、画像処理ユニット186は被写体を検知することなく、たとえば1分間隔で画像データを撮影している。これにより、1日の間に1500枚ほどの画像が撮られて送信アンテナ185から順次受信装置144に送られることになるが、解像度を高くしてもこれらを格納する記憶媒体の容量はごく僅かで足りる。したがって、簡易な受信装置144で画像の管理を充分行うことができる。もちろん、コンピュータを使用して画像データを取り込むようにすれば、画像処理結果と連動した更に高度のセキュリティシステムを構築することができる。
<発明の第3の実施の形態の第1の変形例>
図7は第3の実施の形態の第1の変形例として公衆トイレの防犯用のセキュリティシステムを表わしたものである。公衆トイレ201の男女別の入り口202、203の上には蛍光灯等の照明装置204、205が点灯しており、入り口202、203の複数箇所には撮影用の孔206〜209が開けられている。これらの孔206〜209の内部には前記したようなレンズと撮像素子が配置されている。また、公衆トイレ201の屋上等の所定の位置には送信アンテナ211が配置されていて、その電波が携帯電話機の無線基地局で逐次受信されるようになっている。役所等の公衆トイレ201の管理者側に備えられた記憶装置には、各所に配置された公衆トイレ201の画像データが逐次格納されている。
もちろん、公衆トイレ201側に比較的大きなメモリ容量の記憶装置を配置して、これに画像データを順次蓄積するようにしたり、30分とか1時間おきにこれらの画像データを無線基地局経由で公衆トイレ201の管理者側にまとめて送信することも可能である。
<発明の第3の実施の形態の第2の変形例>
図8は第3の実施の形態の第2の変形例としてエレベータの防犯用のセキュリティシステムを表わしたものである。エレベータ231の出入り口あるいはその近傍に撮影用の孔232、233を開けておき、その内部にレンズと撮像素子等を配置しておくことで、無断侵入者を撮影し、間接的に無断侵入を防止することができる。画像の撮影は昇降用のボタン234の押下によって準備段階に移行し、ドアが開いて閉まるまでの時間について所定間隔で撮影を行うようにすればよい。エレベータ231の出入り口と対向する壁等にも撮像素子等を配置しておけば、事件があったような場合にどのような人物が何階から乗り込んで何階で降りたという事実を特定することができる可能性が高くなる。
<発明の第4の実施の形態>
図9はドアノブを使用したセキュリティシステムの要部を表わしたものである。第1の実施の形態のセキュリティシステムと異なるのは、ドア112の外側と内側でノブ251、252が連動したドアノブ253に本発明を適用している点にある。ドアノブ253はドア112と接触する部分に、押さえプレート255、256という金属板(台座)を取り付けるようになっている。したがって、押さえプレート255、256で隠れるだけの大きさの比較的大きな穴をドア112に開け、ドア112の外側に対応した押さえプレート255の背後に取り付けられた画像撮影処理ユニット257をドア112の内部空間に配置するようにする。画像撮影処理ユニット257は、キーロック機構260の存在しない空間を利用して配置されている。
画像撮影処理ユニット257の取り付けられた押さえプレート255には第1および第2の孔258、259が開けられている。第1の孔258には赤外線LEDランプ等の発光手段が組み込まれており、第2の孔259の背後の画像撮影処理ユニット257内には、図示しないレンズと撮像素子が組み込まれている。もう一方の押さえプレート256には、画像データ出力端子261が埋め込まれている。このような端子の代わりに画像撮影処理ユニット257内に画像データ送信用のアンテナが付属していてもよい。画像データ出力端子261を画像データの出力用に使用する画像撮影処理ユニット257は、画像データをある程度蓄積する必要があるので、その内部に比較的大容量の不揮発性のメモリが配置されている。この点は第1の実施の形態と同様である。
画像撮影処理ユニット257の電源は、前記した実施の形態と同様に電磁誘導によって外部の電源からエネルギを受け取る電源受信装置262から得ることができる。もちろん、ドア112に何らかの用途で電源が供給されている場合にはこれを使用することも可能である。
本実施の形態のセキュリティシステムの最大の特徴は、通常の家屋あるいはマンション等に多用されている形式のドアノブを用いるので、新築の際にこれを使用して簡易にセキュリティシステムを実現することができるだけでなく、本実施の形態のドアノブ253を購入して、今まで使用していたドアノブと交換するだけでセキュリティシステムを導入することができる点にある。特に無線で画像データを送信するタイプのものでは、携帯電話機等の通信端末に来訪者の画像を送信することができる。また、すでに説明したようにマイクロフォンやスピーカを配置しておけば、その者と必要な会話を行うことも可能になる。
しかも、鉄等の金属で作られた通常のドアは防犯用に加工すること自体が困難であり、また美観を損ねる結果を招来することが多いが、本実施の形態のセキュリティシステムでは、ドアノブ253を交換するので、美観を損ねるおそれがない。
<発明の第4の実施の形態の変形例>
図10は、本実施の形態を自動車に応用したセキュリティシステムの概要を表わしたものである。自動車281もその外部が金属で作られており、防犯用に特別に加工すると美観を損ねるおそれがある。しかしながら、ドア282、283を開けるときに必要なドアの把手284、285自体に直接、あるいはドアの把手284、285の付属装置286、287にすでに説明したような孔を開けておき、この部分を使用してドア282、283を開ける人を撮影するようにすれば、ドアの把手284、285あるいはその付属装置286、287を交換することでセキュリティシステムを導入することができる。
この変形例の場合にも、自動車281に近接し、あるいはドアの把手284、285等に接触した時点で、あるいは所定の時間間隔でドアの把手284、285の近傍の画像が1枚ずつ撮られるので、自動車281の盗難は事実上困難になる。画像データを自動車281内部に蓄積するか、図7で説明したような無線を使用して所定箇所に送信するかは自由であるが、自動車281自体を盗まれる場合を想定すると、無線を使用して画像を携帯電話機や所定の管理サーバ上に送信しておく方が有効である。
またこの変形例ではドアの把手284、285あるいはこれらの付属装置286、287の内部に撮像素子等を配置することにしたが、バックミラー等の他の部品の内部に撮像素子等を配置することができれば、同様に本発明を適用することができる。また、鍵自体がドアの把手284、285自体に取り付けられていないような場合には、その鍵と一体的に撮像素子等を配置することも可能である。
<発明の第5の実施の形態>
図11は本発明の第5の実施の形態のセキュリティシステムの概要を表わしたものである。このシステムは、自転車301、自動車302、バイク303等の各種交通機関を駐車する駐車場(もちろん、自動車302とか自転車301のいずれか1種類の交通機関のみを駐車あるいは駐輪するものであっても可能。)で使用されるものである。この例で自転車301、自動車302、バイク303は、それぞれ先の実施の形態の変形例で説明したドアの把手やボディの所定箇所あるいはハンドル、外付けのスピードメータ等に人の接近や接触を検知する検知手段と撮像装置を備えている。駐車場304には、これらの交通機関で共通使用される受信装置305が設置されている。駐車あるいは駐輪している自転車301、自動車302、バイク303等の各種交通機関は人の接近や接触を検知すると、自己のIDと共に撮影した画像データを受信装置305に送信するようにしている。受信装置305は比較的大容量のメモリを備えており、受信した画像データをID別に区分けして記憶するようにしている。
したがって、盗難やいたずらが発生すると、駐車場304の管理者に通知して画像を読み出してもらうことにより、事故の発生日時とこれに係わった可能性のある人物の画像を入手することができる。もちろん、受信装置305を介して所有者の通信端末に必要な画像を中継する契約を行うことも可能である。
同様のシステムは、ボート等の船舶や集合住宅を管理する場所でも適用することができる。また、インターネットを利用してウェブ・サーバで一括管理することもできる。
<発明の第6の実施の形態>
図12は本発明の第6の実施の形態のセキュリティシステムの概要を表わしたものである。ここでは、絵画の展示場で適用されるシステムを表わしている。それぞれの絵画321、322の前には鑑賞者323の接近を検知してその画像を撮影し送信する撮像送信ユニット324が取り付けられている。撮像送信ユニット324は、壁に直接埋め込まれていてもよい。各撮像送信ユニット324の送信した画像データは館内の受信装置325が受信して、その比較的大容量のメモリにサイクリックに書き込んで、容量が越えた時点で古い画像を上書きするようになっている。入場者が多い場合には、30秒おきというように所定の時間間隔で画像データを読み込んで送信するモードに設定しておいてもよい。また、異常な行動(画像の動き)が管理者側あるいは画像の差分データをとる装置等で察知された場合には、画像を高解像度に切り替えたり、動画モードに切り替えるようにしてもよい。
このように本発明はドアあるいは扉に用途が限定されるものではなく、動産全体、不動産の一部としての所定の空間あるいは通路に対しても適用することができる。撮像された画像は順次格納しておき、メモリ容量が少ないときには古い画像データに上書きしていくようにすることで、システムの実効性を高めることができる。しかも悪意の者が撮影に気付いたときにはすでにその画像が安全な場所に格納されていたり、遠隔地等に送信されているので、所期の目的を達成させることなく退散させるといった効果がある。
<発明の第7の実施の形態>
図13は本発明の第7の実施の形態のセキュリティシステムの概要を表わしたものである。この図で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施の形態では、ドア112に電子式錠装置401が取り付けられており、その上部にセキュリティ装置402が取り付けられている。電子式錠装置401にはドアノブ403とキー溝404が取り付けられている。電子式錠装置401はキー溝404に差し込む図示しないキーによって開錠することができる他、セキュリティ装置402の指示によっても開錠することができるようになっている。
本実施の形態のセキュリティ装置402は後に説明するように独自のアドレスを有する無線端末としての機能を有しており、最寄の基地局411に対して発呼できるようになっている。ただし、基地局411を介して他の無線端末あるいは固定式電話等の端末から発呼することはできない。すなわち、セキュリティ装置402は自ら発呼して接続した端末との間でのみ通話やデータの交換を行うことができる。これは、セキュリティ装置402が悪意の第三者の指示によって電子式錠装置401に開錠の指示を与えることを防止するためである。
基地局411は通信網412を介して他の基地局413(図では代表的に1つのみを表示している。)やセキュリティ管理会社414と接続されている。図ではセキュリティ管理会社414が通信網と有線で接続されている形を示しているが、無線で接続されていてもよいし、インターネット網等の他の通信網を介して接続されていてもよい。ここで携帯電話端末415はセキュリティ装置402の所持者の端末であるとする。
図14は、本実施の形態のドアの要部の断面構造を表わしたものである。ドア112に組み込まれたセキュリティ装置402は、図2で示した実施の形態のように単一あるいは複数枚のレンズから構成される光学レンズ123と、2次元イメージセンサとしてのCCD124を備えている。また、光学レンズ123の上方にはスピーカ部421が配置され、下方にはマイク部422と赤外線LEDランプ118が配置されている。スピーカ部421、マイク部422および赤外線LEDランプ118の後ろ側のスペースには制御部423が配置されている。制御部423は画像処理だけでなく、通信制御や音声の入出力および電子式錠装置401の制御も行うようになっている。セキュリティ装置402の背後には無線アンテナ425が取り付けられており、また電子式錠装置401との間には制御信号線426が取り付けられている。セキュリティ装置402の電源は、図3に示した第1の実施の形態の変形例のようにして取得してもよいし、電子式錠装置401から図示しない電源ラインを使用して取得してもよい。なお、無線アンテナ425は図14に示したようにドア112内部に配置してもよいし、他の場所まで無線用の信号線を延長して、電波の送受信に良好な場所に配置するようにしてもよい。
図15は、本実施の形態における電子式錠装置の開錠制御の様子を表わしたものである。本実施の形態では、たとえば幼少の子供が家に帰ってきたときに親等がこれを確認して、家の内部に入るための鍵を開けることができる。店の従業員を確認後に店内に入れたり、来客が来る予定のときに突然外出してしまい、とりあえずその来客を家または事務所の内部に通すような場合にも本実施の形態が有効である。本実施の形態ではこれらの者を他の実施の形態と同様に来訪者117と総称する。
図13または図14に示したセキュリティ装置402あるいは他の周知の装置がドア112の付近に現われた来訪者117を検知すると(ステップS451:Y)、撮影を行った後、「撮影を行わせていただきました」等の音声がスピーカ部421から流れて(ステップS452)、悪意の来訪者を立ち退かせる処理が行われる。この後に再度、来訪者117がドア112の前にいるかどうかを検知して(ステップS453)、いなくなれば(Y)、処理を終了させる(エンド)。
この状態でも来訪者117が依然として検知されていれば(ステップS453:N)、図14に示した制御部423は予め指定したその家の主人等の携帯電話機等の携帯電話端末415へ発呼する(ステップS454)。その後、時間t1以内に指定端末としての携帯電話端末415との通話が可能になれば(ステップS455:N、S456:Y)、その携帯電話端末415から開錠を指示する信号が到来した時点で(ステップS457:Y)、制御部423は開錠指示信号を制御信号線426を介して電子式錠装置401に送り、開錠処理を行う(ステップS458)。この場合、電子式錠装置401は所定時間経過後に再び自動的に施錠する。その携帯電話端末415が開錠を指示するには、所定のパスワードを入力することを条件にしてもよい。開錠指示信号が到来することなく通信が終了した場合には(ステップS459:Y)、一連の処理が終了する(エンド)。
なお、携帯電話端末415の所有者は、開錠指示信号を送信する前にCCD124の画像を受信しており、またスピーカ部421やマイク部422を通じて来訪者117と会話して、開錠を行う必要のある者であるかどうかを十分確認することができる。また、単なるセールスマン等の開錠を行う必要のない者に対しては、通話によって必要な処理を行うことができる。
一方、子供が家に帰ってきて鍵を開けてもらうような場合に、携帯電話端末415の所有者がたまたま通話を行えないエリアにいるような場合も考えられる。そこで、本実施の形態ではステップS455で時間t1が経過しても携帯電話端末415の所有者と通信ができないとき(着呼できないときも含む)、その所有者が転送モードを設定しているかどうかを確認する(ステップS460)。転送モードに設定されていない場合には(N)、一連の処理が終了する(エンド)が、設定されている場合には(Y)、図13に示したセキュリティ管理会社414へその通話先が変更される。なお、セキュリティ管理会社414への転送の前に、母親の代わりに父親の携帯電話機というように他の者に転送が行われるようにしてもよい。
セキュリティ管理会社414が着呼すると(ステップS461)、先の携帯電話端末415の所有者と同様に専門のスタッフが来訪者117と通話を行ったり、画像を確認して、予め指定された子供のように確かな者に対しては開錠信号を代行して発信する。セキュリティ装置402は、開錠信号が到来したら(ステップS462:Y)、すでに説明したように開錠処理に進み(ステップS458)、通信が終了したら(ステップS463:Y)、すべての処理を終了させることになる(エンド)。
なお、セキュリティ管理会社414は開錠の処理を行ったり、来訪者と話をしたような場合には、これを電話で携帯電話端末415の所有者に通知したり、その内容のメールを出すことも有効である。
このように本実施の形態ではセキュリティ装置402が発呼したその通信中に開錠信号が到来したときのみ、このセキュリティ装置402から電子式錠装置401に対して開錠の指示がでる。したがって、他の場所から開錠を指示する信号を送ってきて開錠を行う場合と異なり、セキュリティが極めて高くなる。しかも来訪者117は撮影されるので、この点でも悪意の来訪者に対するセキュリティが高い。
図16は、悪意の来訪者が撮影を妨害する場合の対策としての処理の流れを表わしたものである。この処理は、本実施の形態に限らず先の各実施の形態でハードウェアを工夫することで同様に実行することができる。図14に示したCCD124は時間t2ごとにドア112の前を撮影している(ステップS471、S472)。そして、撮影が行われるたびに特定の複数の画素から得られる画像の明るさ、あるいは全体の画像の明るさを前回のもの、あるいは前回の複数回分のものと比較するようにしている(ステップS473)。比較された結果、明るさの差が予め定めた許容値以内の場合には(ステップS474:Y)、特に異常が発生していないものとしてステップS471の処理に戻る。
ところで、悪意の者が自分が撮影されるのを嫌って、図14に示す光学レンズ123にガムテープのようなものを貼り付けて撮影ができないようにすることが考えられる。このような場合には、CCD124に到達する画像の明るさが急激に減少する。また、人によっては懐中電灯等の光の出るものをCCD124の前に配置して、明るさを維持しながら犯行を企む場合がある。更に光学レンズ123を破壊するようなこともある。このような場合には、いずれにせよCCD124が得る画像の明るさが変化する。
このように明るさの差が予め定めた許容値を越えるような場合には(ステップS474:N)、制御部423はスピーカ部421を制御して警報音を所定時間、たとえば10秒間出力する(ステップS475)。この後に、再度、CCD124による撮影が行われて(ステップS476)、その画像の明るさが基準値の範囲内であるかどうかのチェックが行われる(ステップS477)。ここでの基準値の範囲はステップS474の範囲であってもよいし、ステップS474の処理による誤動作を防止するために予め設定されている値の範囲内であってもよい。基準値の範囲内であれば(Y)、悪意による撮影の妨害が解消したものとして、ステップS471の処理に戻る。ただし、装置によっては撮影した画像を解析し、ドア112の前の通常得られる画像と異なる場合には「基準値の範囲」外としてもよい。
ステップS477で基準値の範囲外とされた場合には(N)、セキュリティ装置402が指定端末としての携帯電話端末415に発呼する(ステップS478)。これにより、携帯電話端末415側では音声で通話する等により状況を確かめ、必要に応じて警察に通報する等の処置を採ることができる。携帯電話端末415側が通話をすることができないような場合等にはセキュリティ管理会社414に転送され、あるいはこれを宛先として発呼が行われることも可能である。
<発明の第8の実施の形態>
図17は本発明の第8の実施の形態のセキュリティシステムの概要を表わしたものである。このセキュリティシステムは、自動車401の運転席の上方に配置された広角の撮像装置402と、後部座席の上方に配置された温度検出器403、マイクロフォン404、スピーカ405、非常ボタン406および無線送受信器付制御装置407とにより構成されている。このうち、温度検出器403、マイクロフォン404、スピーカ405、非常ボタン406および無線送受信器付制御装置407は1つの筐体内に納められていてもよい。もちろん、撮像装置402も含めて全体を一つの比較的小さな筐体内に格納することも可能である。この場合、携帯電話機にCCD撮像装置と温度検出器が組み込まれたようなものを想定すればよい。
図18は無線送受信器付制御装置の制御の概要を表わしたものである。無線送受信器付制御装置407は予め定められた1または複数の携帯電話機等の通信端末の受信端末として動作すると共に、特定の場合にはこれら1または複数の携帯電話機等の通信端末に対して所定の優先度をもって発呼できるようになっている。
前記した1または複数の携帯電話機等の通信端末が発呼して、所定の操作によってモニタオン信号を送信してくると(ステップS421:Y)、CPU(中央処理装置)を内蔵した無線送受信器付制御装置407は画像・音声通信モードに移行し(ステップS422)、撮像装置402で静止画あるいは動画を撮影してこの通信端末に送信すると共にマイクロフォン404およびスピーカ405を動作状態にして、音声あるいは車内の音を送信状態にすると共に、通信中の通信端末から送られてきた音声信号による音声をスピーカ405から出力する。したがって、その通信端末は車内の者と通話を行うことができる。画像・音声通信モードの解除は、その通信端末がモニタオフ信号を送信してこれが無線送受信器付制御装置407側で受信されることによって行われる(ステップS423)。
一方、車内の温度が予め設定した温度よりも高い異常な状態になったとき(ステップS424:Y)、あるいは非常ボタン406が押されたとき(ステップS425:Y)、無線送受信器付制御装置407は前記した通信端末に発呼する(ステップS426)。このような通信端末が複数存在する場合には最優先のものに発呼し、これが応答しないときには次の優先順位の通信端末に対する発呼に切り替わる。予め定められた通信端末が3つ以上存在する場合には、接続が行われないたびに順次下位の通信端末に切り替わる。通信端末の中には先の実施の形態の図13で示したようなセキュリティ管理会社が含まれていても良い。
相手の通信端末と通信できる状態になったら、ステップ422に移行して画像が送信され、音声で通話ができる状態になる。この画像・音声通信モードの解除は、通信中のその通信端末がモニタオフ信号を送信することで行われるが、車内の者が図示しないリセットボタンを押せば通信が強制終了する。
この第8の実施の形態のセキュリティシステムによれば、たとえば車内に子供が取り残されたり、うっかり置き忘れたような場合で温度が異常に上昇したとき、親等の通信端末が自動的に呼び出され、車内の様子が伝達される。また、車内で何らかの異常が発生したような場合には、非常ボタン406を押すことで車外の者にこれを通知することができる。たとえば強盗が車内に押し入ったような場合には、自分の携帯電話機をオフにして非常ボタン406を押せば、自分の携帯電話機よりも下位の優先順位の親元等に車内の状況を把握させることができ、救助を求めることができる。また、先の実施の形態でも説明した自動車内の不法侵入に対しても、ドアの外を撮影するだけでなく本実施の形態によって車内の撮影を開始させることで、その者の特定に貢献することができる。この意味では特に撮像装置402は車内の目立たない位置に最初から組み込まれていることが望ましい。このような場所のとしては、エアーコンディショナの送風口やスピーカの孔を一例として挙げることができる。
なお、第7の実施の形態等では無線で異常等の通信を行ったが、固定式電話機のように有線でこれらの通信を行うことも可能である。また、各実施の形態ではレンズとCCDを1組配置することにしたが、これらを複数組配置するようにしてもよい。この場合には、他人の悪意あるいは装置の故障によりそのうちの1つの撮影ができないような事態が発生しても、撮影を行うことができる。特に、第7の実施の形態のような構成とすれば、1つの撮像系に異常が検出されたときに残りの撮像系で撮影すると共に、必要に応じて所定の宛先に連絡を行うことができる。したがって、たとえば自動車の盗難や家屋の侵入といった事態の発生時に迅速に対処することができると共に、有力な証拠を取得することも可能になる場合がある。
<発明の第9の実施の形態>
図19は本発明の第9の実施の形態のセキュリティシステムの概要を表わしたものである。本実施の形態のセキュリティシステムでは、自動車の運転席前方のボード501上におけるキー挿入口502のすぐ上にスピーカの音声出力用の複数の孔の集合体503が配置されている。このうちの中央の比較的大きな孔504の内部には、たとえば第7の実施の形態で説明したドア112の光学レンズ123およびCCD124の組み合わせからなる撮像装置505が配置されている。また、ボード501内部で撮像装置505の側方あるいは背後には、音声出力用のスピーカ506が配置されている。更に、キー挿入口502の背後には音声を採取するためのマイクロフォン507およびエンジン始動検出回路508が配置されている。エンジン始動検出回路508は、キーの回転位置を図示しないマイクロスイッチ等の機械的なセンサで検出するようなものであってもよいし、実際にエンジンが始動したことを自動車の制御回路が判別したことによる信号をそのまま利用してもよい。
撮像装置505、スピーカ506、マイクロフォン507およびエンジン始動検出回路508は、同じくボード501の内部に配置された装置内通信端末511と接続されている。装置内通信端末511はカメラ内蔵携帯電話機のカメラを取り除いた本体部分とほぼ同様の構成となっており、車内の図示しない電源装置から電源の供給を受けるようになっている。この装置内通信端末511はこれを搭載した自動車の所有者の携帯電話機512とは異なった電話番号を有しており、単独で最寄りの無線基地局513ならびにその通信ネットワーク514を経由して予め設定した相手にデータの送信を行うことができるようになっている。
携帯電話機512は全く通常の携帯電話機であるが、装置内通信端末511と対の関係を持っている。対の関係は、携帯電話機512側あるいは装置内通信端末511から他方の装置に設定するものであり、設定内容は双方の電話機(通信端末)の図示しないROM(リード・オンリ・メモリ)内に格納される。本実施の形態ではこのように装置内通信端末511と対の関係を持っている携帯電話機512を特定携帯電話機512と呼ぶことにする。
図20は、本実施の形態で自動車の所有者あるいは第三者がこの自動車を運転するためにキーを差し込んだ場合の装置内通信端末の制御の様子を表わしたものである。装置内通信端末511の図示しないCPUは、エンジン始動検出回路508がエンジンの始動を検出すると(ステップS531:Y)、撮像装置505を駆動して運転席でキーを操作した者の画像を記録する(ステップS532)。この画像は比較的短時間の動画であってもよいし、静止画を複数枚撮影するものであってもよい。複数の孔の集合体503に方向を変えて複数の撮像装置505を組み込むことができ、この場合には各種の方向の画像を撮影することができる。したがって、キーを挿入した者を特定する画像をこのうちの幾つかに収めることのできる可能性が高い。この意味では運転席を見渡せる位置であってキー挿入口502から比較的離れた位置に更に撮像装置を配置したり、もともと撮像装置を独自の観点から1または複数組、車内の所望の位置に配置しておくことも有効である。
このようにして画像の撮影および記録が行われたら、CPUはこの自動車の内部または近くに所有者の携帯電話機が存在するかどうかを判別する。この判別のために装置内通信端末511は特定携帯電話機512に対して電話を掛ける。そして特定携帯電話機512が同一の無線基地局513の受信エリアに存在する場合には近くに存在するものと判別して(Y)、その時点で通話を終了させる(リターン)。したがって、特定携帯電話機512によっては着信音が鳴動する。
装置内通信端末511は特定携帯電話機512が同一の受信エリアに存在しないことを判別したら(ステップS533:N)、先に撮影した画像を現在の位置情報と共に特定携帯電話機512に対して送信する(ステップS534)。このとき、撮影日時に関する情報も送られる。ただし、特定携帯電話機512がGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等の位置検出手段を備えていない場合には、撮影した画像とその撮影日時のみが送信されることになる。
したがって、いずれかの者がキーを用いて無断に自動車のエンジンを始動させた場合には、特定携帯電話機512に対してこの画像やその他のデータが送られてくることになる。自動車の所有者は送られてきた画像によって、これが家族等の正当な権限を有する者の乗車であるかどうかを容易に判別することができる。また、場合によってはこの者とスピーカ506およびマイクロフォン507を用いて会話をして確認を行うことができる。
これにより、その自動車の発進に問題がないとされる場合、特定携帯電話機512の所有者は所定のキースイッチを押下して所定の終了通知を装置内通信端末511に対して送出する。装置内通信端末511はこの終了通知を受信すると(ステップS535:Y)、一連の送信処理を終了させる(リターン)。このような終了通知が受信されない場合、装置内通信端末511は時間tが経過するたびに(ステップS536:Y)、同様に運転席の画像を記録して(ステップS537)、ステップS534に戻りこれを特定携帯電話機512に対して送信する処理を繰り返す。したがって、第三者が勝手にその自動車を発進させたような場合には、その第三者が運転を行っている間、その画像を特定携帯電話機512に対して送信することができる。装置によっては、通信状態を継続させて運転席の画像を順次送信するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では撮像装置505、スピーカ506、マイクロフォン507を配置したが、これらの一部または全部を省略しても特定携帯電話機512に対してその者の所有する自動車が無断に発進される事態を迅速に通知することができる。また、実施の形態では装置内通信端末511が特定携帯電話機512に対して通常の発信を行ったが、同一サービスエリア内で内線通話を行える場合には内線通話を試みて、通話が成立したときに特定携帯電話機512が近くに存在するものと判別してもよい。
<発明の第9の実施の形態の変形例>
図21は本発明の第9の実施の形態のセキュリティシステムの変形例としての特定携帯電話機のセキュリティシステムの要部を表わしたものである。この変形例の特定携帯電話機512Aは着脱自在の近距離通信カード551をセットしている。この近距離通信カード551は所定のIDの端末から返答要求があると、これに対して返答用の電波を自己のIDと共に一定時間だけ出力するようになっている。もちろん、このような近距離通信カード551と同様の機能を有する回路が予め特定携帯電話機512Aの内部に一体として組み込まれていてもよい。
一方、自動車側にセットされている装置内通信端末511Aは、運転のためのキーが図19に示したキー挿入口502に挿入されてエンジンの始動のための操作が行われたとき、所定時間にわたって自己のIDと返答要求を送出するようになっている。この装置内通信端末511Aおよび特定携帯電話機512Aの送出するこれらの電波は遠くにまで届くことの無い微弱な強さである。
図22は、この変形例における装置内通信端末側の処理の流れを示したものである。装置内通信端末511A内の図示しないCPUは、第9の実施の形態で説明したエンジン始動検出回路508がキーの操作によるエンジンの始動を検出すると(ステップS571:Y)、自己のIDと返答要求信号を送信する(ステップS572)。これらの信号は無線基地局513に送出されるような強い電波ではない。特定携帯電話機512Aがその自動車内あるいはその自動車の近辺に存在する場合にはこれらの電波を受信する。そこで、前記したように特定携帯電話機512AはそのIDをチェックして対応関係にある装置内通信端末511Aのものであれば自己のIDを付した返答信号を出力する。この返答信号も無線基地局513に送出されるような強い電波ではない。
装置内通信端末511Aは、返答信号を受信したら(ステップS573:Y)、これに含まれているIDが装置内通信端末511Aと対の関係にあるものとして予め登録されたIDであるかどうかをチェックし(ステップS574)、登録されたIDであれば一連の処理を終了させる(エンド)。
これに対して、ステップS573で返答信号が送り返されてこなかったり(N)、あるいは返答信号自体は装置内通信端末511で受信されてもそのIDが登録された内容と一致していなかったような場合には(ステップS574:N)、第三者がキーを操作した可能性がある。そこでこの場合には、装置内通信端末511が特定携帯電話機512Aに対して電話を掛けることになる(ステップS575)。この際に、撮影が行われていればその画像を送信してもよいことはもちろんである。
このようにこの変形例では、自動車のエンジンを始動させるときにその近くに所有者の携帯電話機が存在する場合に無線基地局513を介しての所有者への発信を控えるようにした。このため、自動車の所有者がキーを操作してエンジンを始動させるたびに通信費の出費を強いられるということがなくなる。また、変形例では独自の電波を利用して装置内通信端末511Aが特定携帯電話機512Aの存在の有無を判別するので、その電波の強弱や感度を調整することで、装置内通信端末511Aと特定携帯電話機512Aの間の感知できる距離をある程度自在に調整することができる。したがって、実施の形態ではコンビニエンスストアに買い物に立ち寄った場合に自動車の盗難に合う可能性があるが、この変形例では特定携帯電話機512Aを車外に持ち出した状態で特定携帯電話機512Aの検知できる範囲外とすることができる。
<発明の第10の実施の形態>
図23は本発明の第10の実施の形態のセキュリティシステムの要部を表わしたものである。この実施の形態では、先の実施の形態の図1と同様にドア112におけるドアノブ113の上側に撮像用孔115が配置されているだけでなく、集合住宅における部屋番号や居住者を示したプレート591の透明部分あるいは半透明部分の裏側に別の撮像用孔592が設けられている。これにより、来訪者の背が高かったり、ドアノブ113の位置が比較的低い位置であった場合にも、その者の画像を正確に捕らえる確率が高くなる。
このように来訪者の顔または姿を画像として正確に捕らえるためには、撮像用の装置のレンズを比較的広角のものにするか、ドアまたはその近辺だけでなく複数の場所から来訪者を捕らえるようにするか、あるいは1つの場所からのみ画像を捕らえる場合にはレンズを複数の場所を向くように光学機構を回転させるといった手法が有効である。光ファイバを使用して複数箇所で得られた画像を1つのCCDに導いてそれぞれの分担領域に画像を結像させ、分割画像として記録することも可能である。
これに対して、図10に示した自動車のドアの場合には、複数のドアの把手284、285等に対応して撮像装置を配置しておき、1つについて何らかの異変が生じたときに残りの撮像装置も一斉に画像を撮影するようにすると、画像の撮影範囲をある程度重複させておけば、撮影対象をより確実に画像に収めることができる。
なお、第9の実施の形態では自動車を例にして説明したが、船舶、ケーブルカー、飛行機等の交通機関であって、その走行のための動力源のオン・オフをキーによって制御するその他の交通機関についても本発明を同様に適用することができる。また、実施の形態ではキーを用いてエンジンを始動させる場合を説明したが、ボンネットを開けて配線を変える等によってエンジンを始動させるような場合にも、エンジンの始動時に特定通信端末が周囲に存在するかどうかを判別することによって、悪意の第三者による交通機関の盗難等を早期に解決することができる。