以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態が適用された内燃機関10を示す概略構成図である。同図に示される内燃機関10は、シリンダブロック12に形成された燃焼室14の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、気筒16内でピストン18を往復移動させることにより動力を発生する。ただし、内燃機関10は、4サイクル機関(4ストローク機関)である。なお、内燃機関10は、直列4気筒機関として構成されている。
各燃焼室14に臨む吸気ポートは、吸気弁Viにより開閉され、吸気マニホールド20に接続されている。この吸気マニホールド20上流側には、順に、サージタンク22および吸気管24が接続されている。吸気管24は、エアクリーナ26を介して図示されない空気取入口に接続されている。そして、吸気管24の中途(サージタンク22とエアクリーナ26との間)には、電子制御式スロットルバルブ28が組み込まれている。それら、例えば、吸気ポート、吸気マニホールド20、サージタンク22、吸気管24のそれぞれは、吸気通路30の一部を区画形成する。
他方、各燃焼室14に臨む排気ポートは、排気弁Veにより開閉され、排気マニホールド32に接続され、この排気マニホールド32には下流側に排気管34が接続されている。排気管34には、三元触媒を含む前段触媒装置36およびNOx吸蔵還元触媒を含む後段触媒装置38が接続されている。それら、例えば、排気ポート、排気マニホールド32、排気管34のそれぞれは、排気通路40の一部を区画形成する。
上記吸気弁Viおよび上記排気弁Veは、それぞれ、可変バルブタイミング機能を有する動弁機構41によって開閉させられる。上記吸気弁Viの駆動機構42および上記排気弁Veの駆動機構44を含む動弁機構41は、吸気弁Viおよび排気弁Veを、コンロッドを介してピストン18が連結されているクランクシャフトの回転に同期して、個別に任意の開度およびタイミングで制御することが可能な機構である。具体的には、吸気弁Viの駆動機構42および排気弁Veの駆動機構44は、それぞれ、個別に設けられたソレノイドを含んでいる。つまり、吸気弁Viおよび排気弁Veはそれぞれ電磁駆動弁とされている。そして、吸気弁Viと排気弁Veとが同時に開く正のバルブオーバーラップや、吸気弁Viと排気弁Veとが同時に閉じる負のバルブオーバーラップを可能にしている。ただし、このような構成に代えて、例えば単一の弁に適用される複数種類のカムを油圧によって切り替えることによってバルブタイミングおよびカムプロフィールを任意に変更できる可変バルブタイミング機構(VVT; Variable Valve Timing mechanism)を用いることもできる。このような可変バルブタイミング機構は、吸気弁Viのみ、排気弁Veのみ、あるいは吸排気弁Vi、Veに対して適用することができる。
更に、内燃機関10の各気筒16は、点火プラグ46を有する。点火プラグ46は、対応する燃焼室14に臨むようにシリンダヘッドに配設されている。
更に、内燃機関10は、図1に示されるように、筒内噴射弁であるインジェクタ48を有する。つまり、各インジェクタ48は、対応する燃焼室14に臨むように配設されている。そして、内燃機関10では、各インジェクタ48から各燃焼室14に向けてガソリン等の燃料が直接噴射される。
上述のスロットルバルブ28、動弁機構41に含まれる各駆動機構42、44、各点火プラグ46、各インジェクタ48等は、ECU50に電気的に接続されている。ECU50は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート等を含む。ECU50には、各種センサ類がA/D変換器等を介して電気的に接続されていて、例えば吸入空気量を検出するためのエアフローメータ52が接続されている。ECU50は、ROM等の記憶装置に記憶されている各種マップ等を用いると共に各種センサ類を用いて得られる検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、スロットルバルブ28、各駆動機構42、44、各点火プラグ46、各インジェクタ48等の作動を制御する。なお、ECU50の一部を含んで燃料噴射制御手段が構成され、またECU50の一部を含んで負のバルブオーバーラップ期間中のインジェクタ48からの燃料噴射を禁止する禁止手段が構成される。
ECU50に接続されるセンサ類には、次のようなセンサが含まれる。例えば、クランクポジションセンサ54が設けられている。クランクポジションセンサ54は、クランクシャフトに固定されるロータプレート(シグナルプレート)等を含む磁気センサまたは光電式センサ等であり、クランクシャフトの回転角度を示すパルス信号を微小時間ごとにECU50に与える。また、内燃機関10は、筒内圧センサ56を気筒数に応じた数だけ有している。各筒内圧センサ56は、対応する燃焼室14に受圧面が臨むようにシリンダヘッドに配設されており、それぞれ、ECU50に電気的に接続されている。さらに、吸気通路30の圧力すなわち吸気圧を検出するために吸気圧センサ58が設けられている。さらに、内燃機関10でのノッキング発生を検出するためのノックセンサ60や、アクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するためのアクセルポジションセンサ(不図示)が設けられている。また、内燃機関10が搭載された車両の速度(車速)を検出するための車速センサも設けられている。さらに、空燃比センサ(A/Fセンサ)62が排気通路40に設けられている。A/Fセンサ62は、排気通路の排気ガス中の空燃比に応じた電気信号をECU50に出力する。また、排気通路40に、O2センサ64が設けられている。O2センサ64は、排気ガス中の酸素濃度に応じた電気信号をECU50に出力する。
ECU50のROMは、燃料噴射制御用のルーチン、吸気弁Viや排気弁Veの開閉タイミングを決定してそれらを制御するためのルーチン、点火時期制御用のルーチン、スロットルバルブ制御用のルーチン等やそれらに用いられるマップ等のデータを記憶している。そして、ECU50は、ROM等に記憶された上記種々のルーチン等のアプリケーションプログラムに従って、燃料噴射制御、点火制御、吸気弁開閉制御、排気弁開閉制御、スロットル制御等を実行する。
ECU50は、機関負荷(例えば、吸気圧、アクセル開度)および機関回転速度に基づく運転状態に応じて、吸気弁Viの開閉や排気弁Veの開閉を制御する。具体的には、運転状態が所定の運転領域である軽中負荷運転領域に属するとき、吸気弁Viや排気弁Veが同時に閉じる負のバルブオーバーラップが生じるように、吸気弁Viおよび排気弁Veの作動が制御される。これは、例えば、内部EGR率を高めて、NOx低減を図るためである。なお、負のバルブオーバーラップが、他の運転領域で生じさせられてもよい。
そして、ECU50は、運転状態が負のバルブオーバーラップを実現する上記所定の運転領域にあるとき、負のバルブオーバーラップ期間中に、インジェクタ48から燃料を噴射させることができる。具体的には、1燃焼サイクルあたりインジェクタ48から噴射供給される全燃料あるいはその全燃料の一部が、負のバルブオーバーラップ期間の間、好ましくは、その期間の間であってピストン18が上死点に至る前に噴射され得る。そして、全燃料に対する残りの燃料が、吸気行程あるいは圧縮行程中に、インジェクタ48から噴射され得る。このようなインジェクタ48からの燃料の噴射供給は、機関負荷や機関回転速度、つまり機関運転状態に基づいて制御される。
ところで、インジェクタ48は、その先端部が燃焼室14に露出していることから、燃焼室の燃焼ガスに曝される。したがって、インジェクタ48に燃料が付着していたり、インジェクタ48周囲に未燃燃料があったりすると、それら燃料に由来するデポジットがインジェクタ48に形成され得る。このようなデポジットは、インジェクタ48の噴射孔の開口面積の縮小をもたらしたり、燃料噴射方向をずらしたりするなど、インジェクタ48からの燃料噴射に悪影響を与えることがある。そこで、そのようなデポジットの量がその燃料噴射に確実に悪影響を及ぼす量に達する前に、そのようなデポジットの除去を実行することが望まれる。そこで、ここでは、インジェクタ48のデポジットの量がその燃料噴射に確実に悪影響を及ぼす量未満の所定デポジット量に達したとき、インジェクタ48のデポジットを除去するために、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射を禁止する。以下に、これを、図2のフローチャートに基づいて説明する。
なお、図2のフローは、所定時期に行われ、繰り返される(必要に応じて繰り返される)。この所定時期は、ここでは、内燃機関10の運転状態が負のバルブオーバーラップを実現する上記所定の運転領域に移った(入った)ときである。ECU50は、メインルーチンにしたがって機関制御を行っているときに、当該所定時期になったことを検知あるいは判断すると、図2のルーチンに進むことができる。しかし、図2のフローが、他の時期に行われたり、種々の期間の間、繰り返されたりしてもよい。
ステップS201で、ECU50は、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射を禁止しているときか否かを判定する。ここでは、ステップS201での判定が図2のルーチンに進んで初めて実行されるので、そのような燃料噴射禁止は実行されていない。そこで、ここでは、否定判定される。
ステップS201で否定判定されると、ステップS203が実行される。ステップS203では、インジェクタ48に付着したデポジットの量が、所定デポジット量以上か否かが判定される。インジェクタ48に付着したデポジットの量は、ここでは、燃料噴射量の学習値履歴に基づいて評価される。この学習値履歴とは、例えば、最終的に算出される目標燃料噴射量と基本燃料噴射量との差分の履歴であり、排気ガス中のNOx濃度等に基づいて変化する燃料噴射補正量の変動履歴である。例えば、所定時間の間、継続して、燃料噴射補正量が正の値である場合(燃料噴射量がリッチ側に補正される場合)、インジェクタ48にデポジットが付着してインジェクタ48からの燃料噴射が妨げられているとみなすことができる。そこで、そのようなとき、インジェクタ48に付着したデポジットの量が、所定デポジット量以上であると判定される、すなわち肯定判定される。ただし、所定時間は、ECU50が内蔵するタイマ手段により計測され得、所定デポジット量と対応付けられている。なお、ステップS203で否定判定されるとき、該ルーチンは終了する。
なお、インジェクタ48に付着したデポジットの量が所定デポジット量以上か否かを判定するために、吸入空気量が用いられてもよい。燃焼室14内の空燃比は、燃料噴射量や吸入空気量を用いて目標空燃比に設定される。このため、インジェクタ48にデポジットが生成して、実燃料噴射量と目標燃料噴射量との間に差が生じると、空燃比を目標空燃比に合わせるために吸入空気量もそれに合わせて減少する。したがって、この減少量に基づいて、例えば、その減少量が所定量以上になったとき、デポジットの量が所定デポジット量以上になったと判断することができる。
ステップS203で肯定判定されると、ステップS205で負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。これにより、1燃焼サイクルあたりの全燃料は、その全部あるいは一部が負のバルブオーバーラップ期間中に噴射されることなく、負のバルブオーバーラップ期間経過後の吸気行程中あるいは圧縮行程中に噴射供給されるようになる。
負のバルブオーバーラップにより、残留ガスつまり内部EGRガスが気筒16内に閉じ込められる。その内部EGRガスは、高温であり、負のバルブオーバーラップ期間中のピストンの上昇により圧縮されてさらに高温になる。また、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射がない(禁止される)ので、そのEGRガスの温度上昇が妨げられることはない。それ故、燃焼室14の温度はデポジットを焼き切ることを可能にする温度にまで適切に達することができる。したがって、インジェクタ48のデポジットの除去が可能になる。
ステップS205を経たルーチンの次のルーチンのステップS201では、肯定判定される。ステップS201で肯定判定されると、ステップS207で、インジェクタ48に付着したデポジットの量が、所定デポジット量未満か否かが判定される。これは、インジェクタ48に付着したデポジットの量が減少したか否かを判定するものである。ここでの、所定デポジット量は、上記ステップS203での所定デポジット量と同じであるが、ステップS203での所定デポジット量よりも少ない量であってもよい。インジェクタ48に付着したデポジットの量は、上記ステップS203に関して述べたように燃料噴射量の学習値履歴に基づいて評価される。そして、上記ステップS203と同様にして、インジェクタ48に付着したデポジットの量が、所定デポジット量未満か否かが判定される。ただし、好ましくは、機関回転速度、機関負荷、負のバルブオーバーラップ量に基づいて、気筒16内の温度を推定し、その温度履歴にも基づいて、インジェクタ48に付着したデポジットの減少が評価されるとよい。なお、気筒16内の温度は、筒内圧センサ56からの出力信号に基づいて検出される筒内圧に基づいて推定されてもよい。
そして、インジェクタ48に付着したデポジットの量が所定デポジット量未満であるとしてステップS207で肯定判定されると、ステップS209が実行される。ステップS209では、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射の禁止が解除される。
なお、図2のフローチャートが繰り返されている間、具体的には、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止されている間に、運転状態が、負のバルブオーバーラップを実行する運転領域から逸脱した場合にも、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射の禁止が解除される。しかし、このような解除は行われなくてもよい。
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態が適用された内燃機関の構成は、上記第1実施形態が適用された内燃機関10の構成と概ね同じであるので、その重複説明は省略される。以下では、本第2実施形態の内燃機関の制御に関して、上記第1実施形態のそれとの相違点を主として説明する。
本第2実施形態では、インジェクタ48のデポジットの量が上記所定デポジット量に達したとき、インジェクタ48のデポジットを除去するように、負のバルブオーバーラップ期間を長くすると共に、その負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射を禁止する。以下に、これを、図3のフローチャートに基づいて説明する。図3のフローの実行時期等は、上記図2のフローのそれらと同じであり、同様の変更が適用され得る。
図3のステップS301〜S303、S315〜S319は、図2のステップS201〜S203、S205〜S209に対応する。それ故、それらの重複説明を省略する。
ステップS303でインジェクタ48に形成されたデポジットの量が所定デポジット量以上であるとして肯定判定されると、ステップS305が実行される。ステップS305では、インジェクタ48のデポジットを除去するために要求される負のバルブオーバーラップ量(要求オーバーラップ量)N1が算出される。要求オーバーラップ量N1は、燃料噴射量の学習値履歴に基づいて、予め実験に基づいて定められているデータを検索したり、所定の演算を行ったりすることで、算出される(推定される)。
そして、次のステップS307では、内燃機関10の作動安定性と燃費性能とから、運転可能な最大の負のバルブオーバーラップ量(運転可能最大オーバーラップ量)N2が算出される。運転可能最大オーバーラップ量N2は、内燃機関10の作動安定性と燃費性能とに基づいて予め実験により定められたデータを、機関回転速度と機関負荷とで検索することで、算出される。なお、運転可能最大オーバーラップ量N2は、機関回転速度や機関負荷に基づいて所定の演算を行うことで算出されてもよい。
そして、次ぐ、ステップS309で、ステップS305で算出された要求オーバーラップ量N1と、ステップS307で算出された運転可能最大オーバーラップ量N2とが比較される。ステップS309で要求オーバーラップ量N1が運転可能最大オーバーラップ量N2よりも大きいので肯定判定されると、ステップS311で運転可能最大オーバーラップ量N2が負のバルブオーバーラップ量として設定される。他方、ステップS309で要求オーバーラップ量N1が運転可能最大オーバーラップ量N2よりも大きくないので否定判定されると、ステップS313で要求オーバーラップ量N1が負のバルブオーバーラップ量として設定される。そして、ステップS311あるいはステップS313で設定された負のオーバーラップ量になるように、駆動機構42、44が制御される。なお、このように設定された負のオーバーラップ量は、排気弁Veの閉弁タイミングと吸気弁Viの開弁タイミングとの中間のタイミングがピストン18が上死点に位置するタイミングに一致するようにしつつ、実現されるとよい。なお、通常、要求オーバーラップ量N1および運転可能最大オーバーラップ量N2のそれぞれは、運転状態に基づいて定められる負のオーバーラップ量よりも大きい。
ステップS311あるいはステップS313を経て至ったステップS315で、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。
他方、ステップS317でインジェクタ48のデポジットの量が、所定デポジット量未満であるとして肯定判定されると、ステップS319で負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射の禁止が解除される。そして、ステップS321で、ステップS311あるいはステップS313での負のバルブオーバーラップの設定が解除されて、通常の吸排気弁Vi、Veの制御が実行されるようになる。
このように、インジェクタ48のデポジットの量が所定デポジット量以上になったときであって、運転状態が負のバルブオーバーラップを実行する運転領域にあるとき、負のバルブオーバーラップ量が大きくされて、かつ、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。したがって、負のバルブオーバーラップ期間中の燃焼室14の温度を非常に高温にでき、インジェクタ48のデポジットをより確実にかつ短期間のうちに除去することが可能になる。また、負のバルブオーバーラップ期間を長くするために、要求オーバーラップ量N1と、運転可能最大オーバーラップ量N2とのうちで最小のバルブオーバーラップ量が用いられる。したがって、負のバルブオーバーラップ期間の拡大により、内燃機関10の運転が悪影響を受けることを防ぐことが可能になる。
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態が適用された内燃機関の構成は、上記第1実施形態が適用された内燃機関10の構成と概ね同じであるので、その重複説明は省略される。以下では、本第3実施形態の内燃機関の制御に関して、上記第1実施形態および上記第2実施形態でのそれらとの相違点を主として説明する。
本第3実施形態でも、インジェクタ48のデポジットの量が上記所定デポジット量に達したとき、インジェクタ48のデポジットを除去するように、負のバルブオーバーラップ期間を長くすると共に、その負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射を禁止する。以下に、これを、図4のフローチャートに基づいて説明する。図4のフローの実行時期等は、上記図2のフローのそれらと同じであり、同様の変更が適用され得る。
図4のステップS401〜S403、S415〜S419は、図2のステップS201〜S203、S205〜S209に対応する。また、ステップS421は、上記ステップS321に対応する。それ故、それらの重複説明を省略する。
ステップS403でインジェクタ48のデポジットの量が所定デポジット量以上であるとして肯定判定されると、ステップS405が実行される。ステップS405では、上記ステップS307と同様にして、内燃機関10の作動安定性と燃費性能とから、運転可能な最大の負のバルブオーバーラップ量である、運転可能最大オーバーラップ量N2が算出される。
そして、次ぐステップS407で、所定期間内で、インジェクタ48のデポジットが除去可能か否かが判定される。インジェクタ48のデポジットの量は、燃料噴射量の学習値履歴に基づいて、予め実験に基づいて定められているデータを検索したり、所定の演算を行ったりすることで、算出することができる(推定することができる)。それ故、燃料噴射量の学習値履歴に基づいて、予め実験に基づいて定められているデータを検索したり、所定の演算を行ったりすることで、所定期間内で、インジェクタ48上のデポジットが除去可能か否かが判定される。なお、所定期間は、燃焼サイクル数回分程度の時間であるとよい。
そして、ステップS407で肯定判定されると、ステップS409で、運転可能最大オーバーラップ量N2が負のバルブオーバーラップ量として設定される。そして、このように設定された負のオーバーラップ量は、排気弁Veの閉弁タイミングと吸気弁Viの開弁タイミングとの中間のタイミングがピストン18が上死点(TDC)に位置するタイミングに一致するように(TDCに対して負のバルブオーバーラップ期間が略対称に実現されるように)しつつ、吸排気弁Vi、Veを制御することで、実現される。
他方、ステップS407で否定判定されると、ステップS411で排気弁Veの閉弁タイミング(EVC)に要求される進角量(要求EVC進角量)が算出される。要求EVC進角量は、インジェクタ48のデポジットの量と関係付けられている。そこで、要求EVC進角量は、燃料噴射量の学習値履歴に基づいて、予め実験に基づいて定められているデータを検索したり、所定の演算を行ったりすることで、算出される。
そして、次ぐステップS413で、ステップS405で算出された運転可能最大オーバーラップ量N2が負のバルブオーバーラップ量として設定され、このように設定された負のバルブオーバーラップ量(期間)が、ステップS411で算出した要求EVC量を用いて、進角側にずらされる。つまり、このように設定された負のバルブオーバーラップ量は、排気弁Veの閉弁タイミングと吸気弁Viの開弁タイミングとが吸気上死点(TDC)を挟んで略対称である状態から、要求EVC量分、進角側にずれるように、吸排気弁Vi、Veを制御することで、実現される。
ステップS409あるいはステップS413を経て至ったステップS415で、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。
このように、インジェクタ48のデポジットの量が所定デポジット量以上になったときであって、運転状態が負のバルブオーバーラップを実行する所定の運転領域にあるとき、負のバルブオーバーラップ量が大きくされて、かつ、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。したがって、負のバルブオーバーラップ期間中の燃焼室14の温度を非常に高温にでき、インジェクタ48のデポジットをより確実に除去することが可能になる。また、インジェクタ48のデポジットの量が多いとき、負のバルブオーバーラップ期間が進角側に要求EVC量分ずらされるので、燃焼室14の温度をその量に適した所望の温度にまで適切に高めることができる。
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。第4実施形態が適用された内燃機関の構成は、上記第1実施形態が適用された内燃機関の構成と概ね同じであるので、その重複説明は省略される。以下では、本第4実施形態の内燃機関の制御に関して、上記第1から3実施形態でのそれらとの相違点を主として説明する。なお、フローチャートの図示は省略される。
本第4実施形態の内燃機関では、アルコール含有燃料、ここではアルコール含有ガソリン燃料が用いられ得る。アルコール含有ガソリン燃料では、アルコール含有量増大に伴ってその燃焼速度が増し、また、その蒸発潜熱が増す。そこで、ここでは、アルコール含有量に応じて、負のバルブオーバーラップ量を変化させる。具体的には、インジェクタ48のデポジットの量が上記所定デポジット量に達したとき、インジェクタ48上のデポジットを除去するように、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射が禁止される。そして、その負のバルブオーバーラップ期間は、アルコール含有量が零であるガソリン燃料を用いたときの負のバルブオーバーラップ期間を基準に、アルコール含有量が増すほど、負のオーバーラップ期間が長くなるように、補正される。つまり、その補正された負のバルブオーバーラップを実現するように、排気弁Veの閉弁および吸気弁Viの開弁が制御される。なお、燃料のアルコール含有量を検出(推定を含む。)するために、公知の種々のセンサが設けられ得る。
以上、本発明を4つの実施形態およびその変形例に基づいて説明したが、本発明は、他の実施形態を許容する。例えば、上記4つの実施形態の任意の部分的な組み合わせは、許容される。
なお、上記実施形態では、内燃機関は、火花点火形式の内燃機関であったが、圧縮着火形式の内燃機関であってもよい。また、内燃機関の気筒数や気筒配列等は、任意である。
なお、上記実施形態およびその変形例等では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明はこれらに限定されず、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。