JP5260963B2 - 粉体を用いて形質転換効率を向上させる方法 - Google Patents

粉体を用いて形質転換効率を向上させる方法 Download PDF

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本発明は、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を効率よく行う方法に関する。
主要穀類であるトウモロコシ、イネなどの単子葉植物の形質転換方法としては、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などが知られている。しかし、これらの物理的遺伝子導入方法は多コピーの遺伝子が導入されてしまう、遺伝子の挿入がインタクトな形でなされない、形質転換植物に奇形や不稔が多くみられるなどの問題を有する。
アグロバクテリウム法による遺伝子導入は、アグロバクテリウムの機能を利用した植物の形質転換方法である。土壌細菌アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)は、植物に感染すると、アグロバクテリウムの病原性に関与しているTi(tumor-inducing)プラスミドの一部であるT−DNAが植物ゲノムに組み込まれる機能を有している。アグロバクテリウム法による植物の形質転換方法は、TiプラスミドのT−DNA領域を植物ゲノムに導入を所望する遺伝子に置き換えた形質転換用プラスミドを調製し、当該形質転換用プラスミドをTiプラスミドの代わりに有するように調製したアグロバクテリウムを用いて、上記のアグロバクテリウムの機能を利用することにより当該植物ゲノムに導入を所望する遺伝子を植物ゲノム中に導入する方法である。
アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導入法は、双子葉植物の形質転換法として普遍的に用いられている。アグロバクテリウム属細菌の宿主は双子葉植物のみに限られ、単子葉植物には寄生しないとされていた(De Cleene, M. and De Ley, J., (1976) Bot. Rev., 42: 389-466)が、アグロバクテリウムにより単子葉植物を形質転換する試みがなされてきた(Grimsley, N., et al., (1987) Nature, 325: 177-179; Gould, J., et al., (1991) Plant Physiol., 95: 426-434; Mooney, P.A., et al., (1991) Plant Cell, Tissues and Organ Culture, 25: 209-218; Raineri, D. M., et al., (1990) Bio/technology, 8: 33-38)。これらの研究報告はイネ、トウモロコシ、コムギ等のイネ科の作物でもアグロバクテリウムによる遺伝子導入が可能であることを示唆していたが、何れも再現性に問題があるほか、導入した遺伝子の確認についても不完全で、説得できる結果が示されていなかった(Potrycus, I., (1990) Bio/technology, 8: 535-542)。
Chanらは、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)共存下で2日間培養したイネ未熟胚に付傷後、ジャガイモ懸濁培養細胞を含む培地中でnptII遺伝子とGUS遺伝子を持ったアグロバクテリウムを接種した。処理した未熟胚をG418添加培地上で培養したところ、誘導されたカルスから再分化植物体が得られた。再分化植物体およびその後代の植物体でのGUS遺伝子の所在をサザン分析で確認したところ、再分化当代、後代いずれの植物体でも導入遺伝子の存在が認められたことを報告している(Chan, M-T., et al., (1993) Plant Mol. Biol., 22: 491-506)。この結果は、アグロバクテリウムによるイネの形質転換を支持するものであるが、形質転換効率は1.6%と非常に低く、供試した未熟胚数250に対し、正常な生長を示した再生植物体は1個体にすぎなかった。イネの未熟胚を摘出するには多大な労力を要するため、このように低い形質転換効率では実用的なレベルにあるとは言い難い。
近年、強病原性アグロバクテリウムの病原性遺伝子の一部を有するスーパーバイナリーベクターの利用により、イネ、トウモロコシなどの単子葉植物においても、安定して、高効率で形質転換のなされることが報告された(Hiei, Y., et al., (1994) The Plant Journal, 6: 271-282; Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750)。これらの報告では、アグロバクテリウムによる形質転換は、安定して、高効率で形質転換がなされる他に、得られた形質転換植物に変異が少なく、導入された遺伝子はコピー数が少なく、かつインタクトな形のものが多いという利点をもつとしている。イネ、トウモロコシでの成功に続いて、主要な穀類であるコムギ(Cheng, M., et al., (1997) Plant Physiol., 115: 971-980)、オオムギ(Tingay, S., et al.,(1997) Plant J., 11: 1369-1376)およびソルガム(Zhao, Z.-Y., et al., (2000) Plant Mol. Biol., 44: 789-798)でのアグロバクテリウムによる形質転換の報告がなされた。
Ishidaらは、トウモロコシインブレッドA188およびA188に関連したインブレッドを材料にアグロバクテリウムによる形質転換を行った(Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750)。その後、アグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換の報告がなされたが、いずれもA188およびA188に関連したハイブリッドを用いたものであった(Deji, A., et al., (2000) Biochim. et Biophys. Acta, 1492: 216-220; Negrotto, D., et al., (2000) Plant Cell Reports, 19: 798-803; Nomura, M., et al., (2000) Plant J., 22: 211-221; Nomura, M., et al., (2000) Plant Mol. Biol., 44: 99-106; Taniguchi, M., et al., (2000) Plant Cell Physiol., 41: 42-48; Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8: 323-333; Frame, B. R., et al., (2002) Plant Physiol., 129: 13-22)。アグロバクテリウムによるトウモロコシ形質転換の効率を改善する試みとしては、N6基本培地での形質転換細胞の選抜(Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8: 323-333)、培地へのAgNO3およびカルベニシリンの添加(Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8: 323-333; Ishida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20: 57-66)、共存培地へのシステインの添加(Frame, B. R., et al., (2002) Plant Physiol., 129: 13-22)などがなされてきた。Ishidaらは、共存培養後のトウモロコシ未熟胚をAgNO3およびカルベニシリンを含む培地で選抜することによりA188以外の公的インブレッドであるH99およびW117の形質転換植物の作出をするとともに、同方法によりA188の形質転換効率が向上することを報告した(Ishida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20: 57-66)。
SinghおよびChawlaは、シリコンカーバイドファイバー(SCF)の懸濁液中でコムギの未熟胚をボルテックスミキサーで2〜3分間撹拌した後、アグロバクテリウムを接種することにより、GUS遺伝子を発現する未熟胚の数が増すことを報告した(Singh, N. and Chawla, S., (1999) Current Science, 76: 1483-1485)。これはSCFにより未熟胚が付傷されたことによるもので、アグロバクテリウム接種前に組織を付傷する試みは、他にパーティクルガンによる付傷(Bidney et al., 1992)や超音波処理による付傷(Trick, H. N. and Finer, J. J., (1997) Transgenic Res., 6:329-336)などがある。
アグロバクテリウムによるトウモロコシの形質転換において形質転換効率を向上させるために種々の試みがなされてきた(Negrotto, D., et al., (2000) Plant Cell Reports, 19: 798-803; Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8: 323-333; Frame, B. R., et al., (2002) Plant Physiol., 129: 13-22; Ishida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20: 57-66)。しかし、その効果は同じ単子葉植物であるイネに比べまだ低く、実用的な形質転換トウモロコシを作出する場合のみならず新規な遺伝子の効果をトウモロコシで確認する場合にもさらなる形質転換効率の向上が望まれている。さらに近年のゲノミクス研究の進展にともない遺伝子の機能解明のための形質転換の必要性は高まることから、効率のよい形質転換系が求められるであろう。
また、他の単子葉植物および双子葉植物においても現行の手法による形質転換効率を上回る方法の開発は形質転換体を利用する種々の場面で有用である。
本明細書に引用される文献は、いずれも本明細書に引用により完全に援用される。
特許第2,649,287号公報 特許第3,329,819号公報 特開2000−342256号公報 国際公開第95/06722号パンフレット Bidney, D., et al., (1992) Plant Mol. Biol., 18: 301-313. Chan, M-T., et al., (1993) Plant Mol. Biol., 22: 491-506. Cheng, M., et al., (1997) Plant Physiol., 115: 971-980. De Cleene, M. and De Ley, J., (1976) Bot. Rev., 42: 389-466. Deji, A., et al., (2000) Biochim. et Biophys. Acta, 1492: 216-220. Frame, B. R., et al., (2002) Plant Physiol., 129: 13-22. Gould, J., et al., (1991) Plant Physiol., 95: 426-434. Grimsley, N., et al., (1987) Nature, 325: 177-179. Hiei, Y., et al., (1994) The Plant Journal, 6: 271-282. Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750. Ishida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20: 57-66. Mooney, P.A., et al., (1991) Plant Cell, Tissues and Organ Culture, 25: 209-218. Negrotto, D., et al., (2000) Plant Cell Reports, 19: 798-803. Nomura, M., et al., (2000) Plant J., 22: 211-221. Nomura, M., et al., (2000) Plant Mol. Biol., 44: 99-106. Potrycus, I., (1990) Bio/technology, 8: 535-542. Raineri, D. M., et al., (1990) Bio/technology, 8: 33-38. Singh, N. and Chawla, S., (1999) Current Science, 76: 1483-1485. Taniguchi, M., et al., (2000) Plant Cell Physiol., 41: 42-48. Trick, H. N. and Finer, J. J., (1997) Transgenic Res., 6:329-336. Tingay, S., et al.,(1997) Plant J., 11: 1369-1376. Zhao, Z.-Y., et al., (2000) Plant Mol. Biol., 44: 789-798. Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8: 323-333. Hoekema, A., et al., (1983) Nature, 303: 179-180 Komari, T. and Kubo, T., (1999) Methods of Genetic Transformation: Agrobacterium tumefaciens. In Vasil, I. K. (ed.), Molecular improvement of cereal crops, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, p.43-82.
本発明は、従来のアグロバクテリウム属細菌を介した植物への遺伝子導入方法における植物への遺伝子導入効率よりも高い効率で遺伝子導入がなされ、従って、従来の形質転換効率よりも高い効率で形質転換のなされる方法を開発し、提供することを目的とする。また、本発明は、前記方法を使用した形質転換植物の製造方法を開発し、提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題解決のため鋭意研究に努めた結果、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を介した植物材料への遺伝子導入を行うことにより、粉体が存在しない場合と比較して、高い効率で遺伝子導入のなされることを見いだした。また、遺伝子導入された植物材料について、さらに形質転換体の選抜を行ったところ、粉体の存在下で遺伝子導入を行った植物材料は、粉体が存在しない場合と比較して、形質転換効率が向上することを見いだした。よって、本発明は、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することにより、遺伝子導入効率および/または形質転換効率を向上させる方法を提供する。
粉体を用いる遺伝子導入方法
本発明は、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することを特徴とする方法に関する。
本発明の方法において、粉体の存在下、とはアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する際に粉体が存在している状態を意味する。したがって、アグロバクテリウム属細菌懸濁液をあらかじめ粉体と混合した後、その混合物を植物材料に接種してもよく;植物材料をあらかじめ粉体と混合した後、その混合物にアグロバクテリウム属細菌を接種してもよく;または、アグロバクテリウム属細菌懸濁液、粉体、および植物材料を同時に混合することによりアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種してもよい。なお、本発明において、混合は、適度に均質になるように混ぜれば十分であり、強く撹拌する必要はない。例えば、ボルテックスミキサーなど比較的強い力で撹拌する機器を用いて混合する場合は、短い混合時間、例えば1分以下、好ましくは45秒以下、さらに好ましくは30秒以下の時間で行う。
したがって、本発明の方法の一態様は、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する工程を含むことを特徴とし、当該工程は:
(1)アグロバクテリウム属細菌懸濁液と粉体を混合する工程;および、
(2)(1)の混合物を植物材料に接種する工程;
を含む、前記方法である。
また、別の態様において本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する工程を含むことを特徴とし、当該工程は:
(1)植物材料と粉体を混合する工程;および、
(2)(1)の混合物にアグロバクテリウム属細菌懸濁液を接種する工程;
を含む、前記方法である。
また、さらに別の態様において本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する工程を含むことを特徴とし、ここで当該工程は、アグロバクテリウム属細菌懸濁液、粉体および植物材料を同時に混合することによりアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することを含む、前記方法である。
本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する際に添加した粉体の表面が、アグロバクテリウム属細菌の植物材料への感染のための反応場を提供することにより、感染の効率が向上し、その結果遺伝子導入効率および形質転換効率が向上するという技術思想に基づく。したがって、本発明の方法において、粉体は、少なくとも生体組織に対し悪影響を及ぼさず、かつ以下の特性:水に不溶性である;生体組織に対する親和性を有する;吸着特性を有する;および、表面極性を有する;から成る群より選択される1またはそれより多くの特性を有する粉体である。好ましくは、本発明の方法に用いる粉体は、上記の4つの特性の2以上を有している。より好ましくは、本発明の方法に用いる粉体は、生体組織に対し悪影響を及ぼさず、かつ、水に不溶性である粉体であり、所望によりさらに以下の特性:生体組織に対する親和性を有する;吸着特性を有する;および表面極性を有する;からなる群より選択される1またはそれより多くの特性を有する粉体である。
生体組織に対し悪影響を及ぼさないとは、植物やアグロバクテリウムの生命活動を阻害しないことをいう。本発明の方法においては、粉体が、形質転換や形質転換後の再分化、再分化後の成長等に実質的に悪影響を及ぼすような毒性等を有していなければ、使用することが可能である。
水に不溶性であるとは、水系の溶媒に不溶性または難溶性であることをいう。より具体的には、本発明の方法に用いるバッファー、培地等に不溶性または難溶性であることをいう。さらに具体的には、アグロバクテリウム属細菌懸濁液および植物材料調製の際の条件、ならびに接種の条件において、不溶性または難溶性であることをいう。本発明の方法に用いる粉体が水に不溶性であることにより、本発明の方法のいずれの工程においても溶解することなく、粉体として存在することができる。
生体組織に対する親和性を有するとは、生体組織への吸着性を有することをいう。生体組織に対する親和性を有する粒子は、アグロバクテリウム属細菌および/または植物材料を吸着することができるので、そのような粒子表面は効率のよい感染の反応場を提供し得るであろう。
吸着特性を有するとは、物質を吸着することができる特性をいう。本発明の方法においてはアグロバクテリウム属細菌および/または植物材料が、添加した粉体に吸着することにより、粉体表面が感染の反応場を提供してもよい。吸着特性を有する粉体の例には多孔質の粉体が挙げられる。
表面極性を有するとは、粉体表面が極性を有する、すなわち、粉体表面が比較的親水性であることをいう。表面極性を有する粉体は、粉体表面に水膜を作ることができ、その水膜中にアグロバクテリウム属細菌および/または植物材料を含むことができる。
本発明の方法に使用可能な粉体は、例えば、多孔性セラミックス、グラスウール、および活性炭、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される粉体であるが、これらに限定されない。多孔性セラミックスには、例えば、ハイドロキシアパタイト、シリカゲルおよびゼオライトがあるが、これらに限定されない。
本発明の方法に使用可能な粉体の粒径は、限定するわけではないが、1〜150μmであり、好ましくは5〜75μmである。これらの粒径の粉体は、例えば篩や様々な分級機で分級することにより得ることができ、また一般にも市販されている。なお、粒径の測定は、レーザー回折法や光学顕微鏡などを利用して行うことができる。
本発明の方法に用いる粉体の量は、限定するわけではないが、アグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する際の濃度が30mg/ml以上、好ましくは60mg/ml以上となる量である。本発明の方法に用いる粉体の量の上限は、限定するわけではないが、アグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種する際の濃度が240mg/ml以下となる量である。
本発明の方法において、アグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することは、植物材料をアグロバクテリウム属細菌と単に接触させることにより行うことができる。接種は、通常接種により行ってもよく、また、滴下接種により行ってもよい。通常接種は、植物材料とアグロバクテリウム属細菌懸濁液(接種源)を混合して植物材料を当該懸濁液に浸漬し、浸漬した植物材料を取り出して、培地上に着床させて共存培養を行うことにより接種を行う方法である。滴下接種は、培地上に着床させた植物材料上にアグロバクテリウム属細菌懸濁液を滴下し、滴下した懸濁液が乾いた後、植物材料を培地の別の場所あるいは別の培地上に着床させて共存培養を行うことにより接種を行う方法である。
共存培養の時間は、限定されるわけではないが、1時間以上、好ましくは1日以上、3日以上、または7日以上である。共存培養時間の上限は、限定されるわけではないが、7日以下、10日以下、または14日以下であることが好ましい。
また、本発明の方法において、粉体と、アグロバクテリウム属細菌懸濁液、植物材料、または、アグロバクテリウム属細菌懸濁液および植物材料とを混合する時間は、これらが十分に混合する限りにおいて特に限定はない。好ましい例として、3分、5分、10分、または30分の混合時間を挙げることができる。
本発明の方法に供される植物は、単子葉植物および双子葉植物のいずれをも含む。単子葉植物には、限定されるわけではないが、イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、アスパラガス、ソルガム、サトウキビなどが含まれる。双子葉植物には、限定されるわけではないが、タバコ、ダイズ、ミヤコグサ、ジャガイモ、ワタ、ヒマワリなどが含まれる。好ましくは、本発明の方法に供される植物は単子葉植物であり、最も好ましいのはイネまたはトウモロコシである。
また、本発明の方法において、植物材料とは、アグロバクテリウム法による植物の形質転換に供試するための当該植物の細胞、葉、根、茎、芽、花(雄蕊、雌蕊等含む)、実、種子、発芽種子もしくはその他いずれかの部位の植物組織、成長点、外植片、未熟胚、カルスもしくは不定胚様組織(以下、本明細書においてカルス等、または単にカルスという)、または完全な植物体、などの植物のあらゆる態様を包含する。本発明の方法に用いる植物材料として好ましいのは未熟胚またはカルスであり、最も好ましいのは未熟胚である。
粉体を用いる遺伝子導入方法を利用した、形質転換植物の製造方法
また、本発明は、前記遺伝子導入方法を使用した形質転換植物の製造方法をも提供する。
本発明は、アグロバクテリウム属細菌を介した植物材料の形質転換による形質転換植物の製造方法であって、以下の工程:
(1)粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌懸濁液を植物材料に接種し;
(2)形質転換された植物材料を選抜し;そして、
(3)選抜された形質転換体を再分化する;
を含むことを特徴とする方法に関する。
本発明の一態様において、上記工程(1)は、
(i)アグロバクテリウム属細菌懸濁液と粉体を混合し;そして、
(ii)(i)の混合物を植物材料に接種する;
ことにより達成される。
本発明の別の態様において、上記工程(1)は、
(i)植物材料と粉体を混合し;そして、
(ii)(i)の混合物にアグロバクテリウム属細菌懸濁液を接種する;
ことにより達成される。
また、本発明のさらに別の態様において、上記工程(1)は、アグロバクテリウム属細菌懸濁液、粉体、および植物材料を同時に混合することによりアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することにより達成される。
本発明の形質転換植物の製造方法において用いることができる粉体の、特質、材料、粒径、および量は、本発明の植物の遺伝子導入方法について上述したものと同様である。
また、本発明の形質転換植物の製造方法において、アグロバクテリウム属細菌懸濁液による植物細胞への接種は、上述した方法、混合時間、および共存培養時間で行ってもよい。
さらに、本発明の形質転換植物の製造方法において、製造される形質転換植物は、本発明の遺伝子導入方法に供される植物と同様である。
アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導入および形質転換方法
アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導入は、一般的には以下の工程を含む:
(a)植物材料を調製する工程;
(b)所望の導入遺伝子を含むベクターを含むアグロバクテリウム属細菌を調製する工程;
(c)工程(a)で調製した植物材料を(b)で調製したアグロバクテリウム属細菌に感染させる工程。
さらに、形質転換体を得るために、上記工程(c)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程
を施してもよい。
具体的には、単子葉植物においては、文献(特許第2,649,287号公報)に記載されているように、上記(a)の工程でオーキシン(例えば、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸))またはサイトカイニン等を含む培地で培養して植物材料を脱分化の状態または脱分化過程にある状態にし、上記(c)の工程でアグロバクテリウム属細菌に感染させることを特徴とする方法;または、文献(特許第3,329,819号公報)に記載されているように、植物材料として当該植物の未熟胚を用い、上記(a)の工程では未熟胚を脱分化処理せず、上記(c)の工程においてオーキシン(例えば、2,4−D)またはサイトカイニン等を含む培地で培養することを特徴とする方法を用いることができる。
工程(a)について
本明細書において、遺伝子導入に供される「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。本発明の方法に供される単子葉植物には、イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、アスパラガス、ソルガムその他が含まれるがこれらに限定されるものではない。本発明の方法に供される双子葉植物にはタバコ、ダイズ、ミヤコグサ、ジャガイモ、ワタ、ヒマワリ、その他が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法に供される好ましい植物は、単子葉植物であり、最も好ましくはイネまたはトウモロコシである。
また、「植物材料」とは、非限定的に、アグロバクテリウム法による植物の形質転換に供するための当該植物の細胞、葉、根、茎、芽、花(雄蕊、雌蕊等含む)、実、種子、発芽種子、もしくはその他いずれかの部位の植物組織、成長点、外植片、未熟胚、カルス、または完全な植物体、など植物のあらゆる態様を包含する。
本発明の方法に用いる植物の形態として好ましいのは未熟胚またはカルスであり、最も好ましいのは未熟胚である。本明細書において、植物の細胞、組織、完全な植物体という表現は、技術分野において一般的に用いられる意味で用いられる。本明細書において、未熟胚とは、受粉後の登熟過程にある未熟種子の胚をいう。また、本発明の方法に供される未熟胚のステージ(熟期)は特に限定されるものではなく、受粉後いかなる時期に採取されたものであってもよい。もっとも、受粉後2日以降のものが好ましい。後述の形質転換後、後述の方法により、脱分化し、正常な個体を再生する能力を有するカルスを誘導できる未熟胚胚盤を用いることが好ましい。また、未熟胚はインブレッド、インブレッド間のF1、インブレッドと自然受粉品種間のF1、市販F1品種の未熟胚であることが好ましい。本明細書において、カルスとは、無秩序に増殖する未分化状態の細胞塊をいう。カルスを得るためには、植物組織の分化した細胞をオーキシン(例えば、2,4−D)またはサイトカイニン等の植物成長調節物質を含む培地(脱分化培地という)において培養して得ることができる。このカルスを得るための処理を脱分化処理といい、またこの過程を脱分化過程という。
工程(a)において、必要に応じ、植物組織、未熟胚などを植物体、種子などから取り出し、形質転換に好適な材料を調製する。また、所望により植物材料をアグロバクテリウムに感染させる前に培養してもよい。
工程(b)について
土壌細菌アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)が多くの双子葉植物に根頭癌腫病(crown gall disease)を引き起こすことは古くから知られており、1970年代には、Tiプラスミドが病原性に関与すること、さらにTiプラスミドの一部であるT−DNAが植物ゲノムに組み込まれることが発見された。その後このT−DNAには癌腫の誘発に必要なホルモン(サイトカイニンとオーキシン)の合成に関与する遺伝子が存在し、細菌遺伝子でありながら植物中で発現することが明らかにされた。T−DNAの切り出しと植物への伝達にはTiプラスミド上のヴィルレンス領域(vir領域)に存在する遺伝子群が必要であり、またT−DNAが切り出されるためにはT−DNAの両端に存在するボーダー配列が必要である。他のアグロバクテリウム属細菌であるAgrobacterium rhizogenesもRiプラスミドによる同様なシステムを有している(例えば、特開2000−342256の図3および図4)。
アグロバクテリウムの感染によってT−DNAが植物ゲノムに組み込まれるので、T−DNA上に所望の遺伝子を挿入するとこの遺伝子も植物ゲノムに組み込まれることが期待された。しかしながら、Tiプラスミドは190kb以上と巨大であるため、標準的な遺伝子工学的手法ではプラスミド上のT−DNA上に遺伝子を挿入することは困難であった。そのため、T−DNA上に外来遺伝子を挿入するための方法が開発された。
まず、腫瘍性のTiプラスミドのT−DNAからホルモン合成遺伝子が除去されたディスアーム型の菌系(disarmed strains)であるLBA4404(Hoekema, A., et al., (1983), Nature, Vol.303, p.179-180参照)、C58C1(pGV3850)、GV3Ti11SEなどが作製された。これらを用いることにより、所望の遺伝子をアグロバクテリウムのTiプラスミドのT−DNA中に、あるいは所望の遺伝子を有するT−DNAをアグロバクテリウムに導入する2種類の方法が開発された。このうちの一つは、遺伝子操作が容易で所望の遺伝子の挿入が可能であり、大腸菌で複製ができる中間ベクターを、アグロバクテリウムのディスアーム型TiプラスミドのT−DNA領域中に、三系交雑法(triparental mating)を介して相同組換えにより導入する方法であり、中間ベクター法と呼ばれる。
もう一つは、バイナリーベクター(binary vector)法とよばれるもので、T−DNAの植物への組み込みにvir領域が必要であるが、機能するために同じプラスミド上に存在する必要はないという結果に基づいている。このvir領域にはvirA、virB、virC、virD、virEおよびvirGが存在し、(植物バイオテクノロジー事典(エンタプライズ株式会社発行(1989)))、vir領域とはこのvirA、virB、virC、virD、virEおよびvirGの全てを含むものをいう。バイナリーベクターは、T−DNAをアグロバクテリウムと大腸菌の両方で複製可能な小さなプラスミドに組み込んだものであり、これをディスアーム型Tiプラスミドを有するアグロバクテリウムに導入して用いる。
アグロバクテリウムへのバイナリーベクターの導入は、エレクトロポレーション法や三系交雑法などの、公知の方法により行うことができる。バイナリーベクターには、pBIN19、pBI121、pGA482などがあり、これらをもとに数多くの新たなバイナリーベクターが構築され、形質転換に用いられている。また、Riプラスミドのシステムにおいても、同様なベクターが構築され形質転換に用いられている。
アグロバクテリウムA281は、強病原性(super-virulent)の菌系であり、その宿主範囲は広く、形質転換効率も他の菌系より高い。この特性は、A281が有するTiプラスミドのpTiBo542によるものである。pTiBo542を用いて、これまでに2つの新しいシステムが開発されている。一つはpTiBo542のディスアーム型のTiプラスミドを有する菌系EHA101およびEHA105を用いたものであり、これらを上述のバイナリーベクターシステムに適用することにより、形質転換能力の高いシステムとして種々の植物の形質転換に利用されている。
もう一つは、スーパーバイナリーベクター('super-binary' vector)(Hiei, Y., et al., (1994), The Plant Journal, Vol.6, p.271-282; Ishida, Y., et al., (1996), Nature Biotechnology, Vol.4, p.745-750; Komari, T. and Kubo T., (1999), Methods of Genetic Transformation: Agrobacterium tumefaciens. In Vasil, I. K. (ed.) Molecular improvement of cereal crops., Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, p.43-82;および国際公開第95/06722号パンフレットを参照)システムである(例:特開2000−342256の図4)。このシステムは、vir領域(virA、virB、virC、virD、virEおよびvirG(以下、これらをそれぞれ「vir断片領域」ということもある。))を持つディスアーム型のTiプラスミドおよびT−DNAを有するプラスミドからなることから、バイナリーベクターシステムの一種である。しかしながら、T−DNAを有する側のプラスミド、即ちバイナリーベクターにvir断片領域のうち、少なくとも一つのvir断片領域を実質的に取除いたvir領域の断片(このうち好ましくは少なくともvirBまたはvirGを含む断片、さらに好ましくはvirBおよびvirGを含む断片)を組み込んだスーパーバイナリーベクターを用いる点で異なる。なお、スーパーバイナリーベクターを有するアグロバクテリウムに、所望の遺伝子を組み込んだT−DNA領域を導入するには、三系交雑法を介した相同組換えが容易な手法として利用できる。
本発明の方法においては、宿主となるアグロバクテリウム属細菌としては、特に限定されないが、Agrobacterium tumefaciens(例えば上述のAgrobacterium tumefaciens LBA4404(Hoekema, A., et al., (1983), Nature, Vol.303, p.179-180を参照)およびEHA101)を好ましく用いることができる。
本発明の方法によれば、アグロバクテリウム属細菌における病原性(vir)領域の遺伝子群の発現に基づく遺伝子導入系であれば、特に限定されることなく有意な効果を得ることができる。したがって、上述の中間ベクター、バイナリーベクター、強病原性のバイナリーベクター、スーパーバイナリーベクターなどいずれのベクターシステムに対しても用いることができ、本発明による効果を得ることができる。これらのベクター類を改変した、異なるベクターシステムを用いた場合においても同様である(例えば、アグロバクテリウム属細菌のvir領域の一部または全部を切り出し付加的にプラスミド中に組み込む、vir領域の一部または全部を切り出し新たなプラスミドの一部としてアグロバクテリウムに導入するなど)。また、本発明の方法によれば、野生型のアグロバクテリウム属細菌においても、植物へ野生型のT−DNA領域の導入効率を高め、事実上感染効率を向上することができる。
植物に導入しようとする所望の遺伝子は、上記プラスミドのT−DNA領域中の制限酵素部位に常法により組み込むことができ、当該プラスミドに同時に若しくは別途組込んだPPT(フォスフィノスライシン)、ハイグロマイシン、カナマイシン、パロモマイシン等の薬剤に対する耐性を有する遺伝子等の適当な選抜マーカーに基づいて選抜することができる。大型で多数の制限部位を持つものは、通常のサブクローニングの手法では所望のDNAをT−DNA領域内に導入することが必ずしも容易でないことがある。このような場合には、三系交雑法により、アグロバクテリウム属細菌の細胞内での相同組換えを利用することで目的のDNAを導入することができる。限定されるわけではないが、導入される遺伝子の大きさは好ましくは約100bpないし200kbpである。
また、プラスミドをAgrobacterium tumefaciens等のアグロバクテリウム属細菌に導入する操作は従来法により行うことができ、例としては、上記した三系交雑法やエレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法などが含まれる。
植物に導入しようとする遺伝子は、従来の技術と同様に基本的にはT−DNAの左右境界配列の間に配置されるものである。しかし、プラスミドが環状であるため、境界配列の数は1つでもよく、複数の遺伝子を異なる部位に配置しようとする場合には、境界配列が3個以上あってもよい。また、アグロバクテリウム属細菌中で、TiまたはRiプラスミド上に配置されてもよく、または他のプラスミド上に配置されてもよい。さらには、複数の種類のプラスミド上に配置されてもよい。
工程(c)について
アグロバクテリウム属細菌を介して遺伝子導入を行う方法は、植物材料をアグロバクテリウム属細菌と単に接触させることにより行うことができる。例えば、106〜1011cfu/ml程度の細胞濃度のアグロバクテリウム属細菌懸濁液を調製し、この懸濁液中に植物材料を3〜10分間程度浸漬後、固体培地上で数日間共存培養することにより行うことができる。
好ましくは、植物材料をアグロバクテリウムに感染させると同時に、あるいは感染後、アグロバクテリウムを除去する前に、植物材料をアグロバクテリウムと共存培養させる。共存培養には公知の培地を使用できる。例えば、実施例で使用したLS−AS培地、nN6−AS培地、あるいはその他、N6S3−AS培地、2N6−AS培地(Hiei, Y., et al., (1994), The Plant Journal, Vol.6, p.271-282を参照)等の培地が知られている。
本発明の方法が、一般的なアグロバクテリウム法による遺伝子導入/形質転換に対して有する特色は、植物材料をアグロバクテリウムに感染させる上記工程(c)を粉体の存在下で行うことである。
工程(d)および(e)について
さらに所望により、形質転換体を得るためには、上記工程(c)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程
が必要である。即ち、一般に植物の形質転換を行うためには、植物細胞に外来遺伝子を導入した後に、外来遺伝子が安定して染色体に組み込まれた植物細胞を選抜することが必要である。
形質転換された細胞を選抜する工程は、表現型のデータおよび/または物理的データにより、目的の形質を有する細胞を選抜することを意味する。
表現型のデータは、例えば、形質転換効率は植物への導入を所望する遺伝子と共に、マーカー遺伝子および/または選抜マーカー遺伝子を導入してその発現を評価することで行うことで得ることができる。マーカー遺伝子および/または選抜マーカー遺伝子としては、例えば、GUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、および/または、抗生物質耐性遺伝子(例えば、PPT(フォスフィノスライシン)耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子)など、を用いることができる。マーカー遺伝子としてGUS遺伝子を用いた場合、形質転換効率の評価はX−Gluc(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸)のGUSによる切断に伴う発色から評価することができる。選抜マーカー遺伝子として抗生物質耐性遺伝子を用いた場合には、形質転換した後、抗生物質を加えた選抜培地上での成長の度合いから評価することができる。
さらに、外来遺伝子が安定して染色体に組み込まれたことを確認するために、サザンブロット等の物理的データを得てもよい。また、有性生殖による子孫への伝達、並びに子孫集団への遺伝的および分子的分析に基づく選抜、の工程を行ってもよい。
所望により選抜された形質転換体の再分化を行い、再分化個体を生育させ、そして完全な植物体を得てもよい。選抜した形質転換細胞から完全な植物体を再生するには、公知の方法(例えば、Hiei, Y., et al., (1994), The Plant Journal, Vol.6, p.271-282; および、Ishida, Y., et al., (1996), Nature Biotechnology, Vol.4, p.745-750)により行うことができる。
本発明の方法は、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を用いる植物材料の遺伝子導入を行った場合に、粉体の非存在下で行った場合と比較して、遺伝子導入効率および/または形質転換効率を向上させる。遺伝子導入効率は、例えば、導入した遺伝子のトランジェント(一過性)な発現の範囲を評価することにより行うことによって評価できる。後述の実施例では、未熟胚でのGUS遺伝子のトランジェントな発現を評価した。
形質転換効率は、例えば、接種した未熟胚から得られた再分化植物のうちGUS遺伝子の発現を示したものを形質転換体として数え、その総数を接種した未熟胚の数で除すことによって算出できる。あるいは、再分化植物のうち、選抜圧に対して抵抗性を示したものを形質転換体として数え、その総数を接種した未熟胚の数で除することにより算出することもできる。
上述のように、本発明の方法は、植物材料をアグロバクテリウムに感染させる上記工程(c)を粉体の存在下で行うことを特色とする。従って、本発明の遺伝子導入および/または形質転換方法は、以下のように記載してもよいことは理解されるであろう。
本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を用いた植物の遺伝子導入および/または形質転換方法であって、以下の工程:
(a)植物材料を調製する工程;
(b)所望の導入遺伝子を含むベクターを含むアグロバクテリウム属細菌を調製する工程;および
(c)粉体の存在下で、工程(a)で調製した植物材料を(b)で調製したアグロバクテリウム属細菌に感染させる工程;
を含み、所望により、形質転換体を得るために、上記工程(c)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程;
を含む、前記方法である。
一態様において、本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を用いた植物の遺伝子導入および/または形質転換方法であって、以下の工程:
(a)植物材料を調製する工程;
(b)所望の導入遺伝子を含むベクターを含むアグロバクテリウム属細菌を調製する工程;
(c−1)(b)で調製したアグロバクテリウム属細菌の懸濁液と粉体を混合する工程;および
(c−2)(c−1)の混合物を(a)で調製した植物材料に接種することにより、植物材料をアグロバクテリウム属細菌に感染させる工程;
を含み、所望により、形質転換体を得るために、上記工程(c−2)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程;
を含む、前記方法である。
別の態様において、本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を用いた植物の遺伝子導入および/または形質転換方法であって、以下の工程:
(a)植物材料を調製する工程;
(b)所望の導入遺伝子を含むベクターを含むアグロバクテリウム属細菌を調製する工程;
(c−1)(a)で調製した植物材料と粉体を混合する工程;および
(c−2)(c−1)の混合物に(b)で調製したアグロバクテリウム属細菌の懸濁液を接種することにより、植物材料をアグロバクテリウム属細菌に感染させる工程;
を含み、所望により、形質転換体を得るために、上記工程(c−2)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程;
を含む、前記方法である。
さらに別の態様において、本発明の方法は、アグロバクテリウム属細菌を用いた植物の遺伝子導入および/または形質転換方法であって、以下の工程:
(a)植物材料を調製する工程;
(b)所望の導入遺伝子を含むベクターを含むアグロバクテリウム属細菌を調製する工程;および
(c)(a)で調製した植物材料、(b)で調製したアグロバクテリウム属細菌の懸濁液、および粉体を同時に混合することにより、植物材料をアグロバクテリウム属細菌に感染させる工程;
を含み、所望により、形質転換体を得るために、上記工程(c)に次いで
(d)形質転換細胞を選抜する工程;および
(e)所望により選抜された形質転換体を再分化する工程;
を含む、前記方法である。
本発明の植物の遺伝子導入および/または形質転換方法において用いることができる粉体の、特質、材料、粒径、および量は、本発明の植物の遺伝子導入方法について上述したものと同様である。
また、本発明の植物の遺伝子導入および/または形質転換方法において、アグロバクテリウム属細菌懸濁液による植物細胞への接種は、上述した方法、混合時間、および共存培養時間で行ってもよい。
さらに、本発明の植物の遺伝子導入および/または形質転換方法において、製造される形質転換植物は、本発明の遺伝子導入方法に供される上述した植物と同様である。
粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌(接種源)を植物材料に接種することにより、粉体が存在しない従来の方法よりも高い効率で遺伝子導入のなされることを見出した。また、同方法により形質転換カルスの形成率および形質転換植物の作出される効率が向上することを確認した。よって、本発明は、遺伝子導入効率および形質転換効率の高い、アグロバクテリウム法による植物の遺伝子導入および形質転換方法を提供する。
図1は、イネにおける形質転換効率に及ぼす粉体添加の効果を示すグラフである。各区5未熟胚に接種を行った。縦軸は、接種未熟胚当たり得られたハイグロマイシンマシン抵抗性植物の数を表し、横軸のSGはシリカゲルをHAはハイドロキシアパタイトをそれぞれ表す。 図2は、イネにおける形質転換効率に及ぼす粉体の粒径の効果を示すグラフである。各区9〜12未熟胚に接種を行った。縦軸は、接種未熟胚当たり得られた再分化カルスの数を表し、横軸は、添加した粉体の粒径を表す。Cont.は粉体無添加の対照を表す。 図3は、イネにおける導入遺伝子のトランジェント発現に及ぼす粉体の量の効果を示すグラフである。各区10未熟胚に接種を行った。縦軸は未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を表す。その値は、共存培養後の未熟胚をX−Glucで染色後、胚盤の75%以上の部位でGUS遺伝子の発現を示した未熟胚を3、25〜74%の部位で発現を示したものを2、5〜24%の部位で発現を示したものを1、5%未満の部位で発現を示したものを0.5、発現のみられなかったものを0、として評価した値である。横軸は添加した粉体の量を表す。 図4はイネにおける形質転換効率に及ぼす粉体の量の効果を示すグラフである。各区9〜10未熟胚に接種を行った。縦軸は、接種未熟胚当たり得られた再分化カルスの数を表し、横軸は、添加した粉体の量を表す。 図5はイネにおける導入遺伝子のトランジェント発現に及ぼすゼオライトの効果を示すグラフである。各区14〜15未熟胚に接種を行った。縦軸は未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を表す。その値は、共存培養後の未熟胚をX−Glucで染色後、胚盤の25%以上の部位でGUS遺伝子の発現を示した未熟胚を3、10〜24%の部位で発現を示したものを2、10%未満の部位で発現を示したものを1、発現のみられなかったものを0、として評価した値である。横軸は添加したゼオライトの粒径を表す。無添加は粉体無添加の対照を表す。 図6は導入遺伝子のトランジェント発現に及ぼす接種源への混合した粉体添加の効果を示すグラフである。各区12〜13未熟胚に接種を行った。縦軸は未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を表す。その値は、共存培養後の未熟胚をX−Glucで染色後、胚盤の75%以上の部位でGUS遺伝子の発現を示した未熟胚を3、25〜74%の部位で発現を示したものを2、5〜24%の部位で発現を示したものを1、5%未満の部位で発現を示したものを0.5、発現のみられなかったものを0、として評価した値である。横軸のSGはシリカゲルを、HAはハイドロキシアパタイトを、GWは摩砕グラスウールをそれぞれ表す。無添加は粉体無添加の対照を表す。 図7はイネカルスでの導入遺伝子のトランジェントな発現に及ぼす接種源への粉体添加の効果を示すグラフである。各区6カルスに接種を行った。縦軸は接種カルスにおけるGUS遺伝子の発現を表す。その値は、共存培養後のカルスをX−Glucで染色後、全体の75%以上の部位でGUS遺伝子の発現を示したカルスを3、25〜74%の部位で発現を示したものを2、5〜24%の部位で発現を示したものを1、5%未満の部位で発現を示したものを0.5、発現のみられなかったものを0、として評価した値である。横軸のHAはハイドロキシアパタイトを、無添加は粉体無添加の対照をそれぞれ表す。 図8はイネにおける形質転換効率に及ぼす接種源への粉体添加の効果を示すグラフである。各区6カルスに接種を行った。縦軸は、接種カルス当たり得られた再分化カルスの数を表し、横軸のHAはハイドロキシアパタイトを、無添加は粉体無添加の対照をそれぞれ表す。 図9はノーマルバイナリーベクターを接種したイネ未熟胚での導入遺伝子のトランジェント発現に及ぼす接種源への混合した粉体添加の効果を示すグラフである。各区11−12未熟胚に接種を行った。縦軸は、未熟胚におけるGUS遺伝子の発現を表す。その値は、共存培養後の未熟胚をX−Glucで染色後、胚盤の75%以上の部位でGUS遺伝子の発現を示した未熟胚を3、25〜74%の部位で発現を示したものを2、5〜24%の部位で発現を示したものを1、5%未満の部位で発現を示したものを0.5、発現の見られなかったものを0、として評価した値である。横軸のGWは摩砕グラスウールを、HAはハイドロキシアパタイトをそれぞれ表す。無添加は粉体無添加の対照を表す。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1:粉体存在下でのイネの形質転換
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB134)を用いた。LBA4404(pSB134)は以下のように作成した。pIG221(Ohta, S., et al., (1990) Plant Cell Physiol., 31: 805-813)由来のGUS発現ユニットをpKY205(Kuraya, Y., et al., (2004) Mol. Breed., 14: 309-320)のトウモロコシユビキチンプロモーターで制御されたHPT遺伝子の上流のHindIII制限部位に挿入した。このプラスミドをLBA4404(pSB1)(Komari, T., et al., (1996) Plant J., 10: 165-174)に導入し、LBA4404(pSB134)を得た。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。開花後8〜14日目の未熟種子の穎を除去し、70%エタノールで数秒、ツイーン20(和光純薬工業株式会社)を含む1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で15分間滅菌処理を行った。滅菌水で数回洗浄後、長さ1.5〜2mmの未熟胚を摘出し供試組織とした。
(3)接種源の調製
粉体としてハイドロキシアパタイト(Bio-Rad)およびシリカゲル(ICN Pharmaceuticals)を供試した。80〜100mgの粉体をチューブに入れ、オートクレーブにより滅菌処理を行った。AB培地 (Chilton, M-D, et al., (1974) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71: 3672-3676) 上で3〜5日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを白金耳でかき取り、修正AA培地(AA主要無機塩類、AAアミノ酸およびAAビタミン類 (Toriyama K., et al., (1985) Plant Sci., 41: 179-183) 、MS微量塩類 (Murashige, T. and Skoog, F., (1962) Physiol. Plant, 15: 473-497) 、1.0g/lカザミノ酸、100μMアセトシリンゴン、0.2Mショ糖、0.2Mグルコース)に1x108〜1x109cfu/mlの濃度で懸濁した。粉体を入れたチューブに1mlのアグロバクテリウム懸濁液を加え、接種源とした。
(4)接種および共存培養
無菌的に摘出した未熟胚を2N6−AS培地に置床した。粉体が細菌懸濁液に均等に分散するようにボルテックスミキサーで数秒間撹拌した後、1未熟胚につき、5μlの懸濁液を未熟胚上に滴下した。滴下した接種源が乾いた後、未熟胚を同培地上の別の場所に移動した。培養容器をシールした後、25℃、暗黒下で7日間共存培養を行った。一部の未熟胚についてX−Glucを処理することによるGUS発現を調査した(Hiei et al., 1994)。すなわち、共存培養処理直後、組織を0.1% Triton X-100を含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH6.8) に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液でアグロバクテリウムを除去した後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−Gluc)および20%メタノールを含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、青色の呈色を示す組織を顕微鏡下で観察した。
(5)選抜および再分化
共存培養後の未熟胚をメスで4〜6分割し、nN6CC培地(N6無機塩、N6ビタミン、0.5g/l カザミノ酸、0.5g/l L−プロリン、1mg/l 2,4−D、0.5mg/l NAA、0.1mg/l 6BA、20g/l シュークロース、55g/l ソルビトール、250mg/l セフォタキシム、250mg/l カルベニシリン、5g/l ゲルライト、pH5.8)あるいはNBK4CC(NBK4主要無機塩、B5微量無機塩、B5ビタミン、AAアミノ酸、0.5g/l カザミノ酸、0.5g/l L−プロリン、1mg/l 2,4−D、0.5mg/l NAA、0.1mg/l 6BA、20g/l マルトース、55g/l ソルビトール、250mg/l セフォタキシム、250mg/l カルベニシリン、5g/l ゲルライト、pH5.8)に置床した。照明下28℃で1週間培養後、カルスを5分割し、ハイグロマイシン50mg/lを含むnN6CC培地あるいはNBK4CC培地に置床し、同条件で10日間培養した。増殖した細胞塊をハイグロマイシン50mg/lを含む再分化培地(N6無機塩、N6ビタミン、AAアミノ酸、1g/l カザミノ酸、0.5mg/l カイネチン、20g/l シュークロース、30g/l ソルビトール、4g/l ゲルライト、pH 5.8)あるいは(NBK4主要無機塩、B5微量無機塩、B5ビタミン、AAアミノ酸、1g/l カザミノ酸、2mg/l カイネチン、20g/l マルトース、30g/l ソルビトール、5g/l ゲルライト、pH 5.8)に置床し、同条件で約2週間培養した。
(6)形質転換効率の算出
アグロバクテリウムを接種したイネ未熟胚では、胚盤の広い範囲でGUS遺伝子のトランジェント発現を示すスポットが観察される。1つの胚盤でも離れた部位で観察されるスポットは個々に遺伝子導入のなされた独立の形質転換細胞に由来するものであると考えられる。共存培養後およびレスティング培養後に増殖した未熟胚を4から6の塊に分割した場合、由来は1つの未熟胚であっても分割して得られた20〜30の細胞塊からハイグロマイシン存在下で増殖してきたカルスおよびその再分化植物はそれぞれ独立の形質転換体であると考えられる。
分割して得られた細胞塊から増殖したハイグロマイシン抵抗性カルスを1細胞塊から1カルス選び、ハイグロマイシンを含む再分化培地に置床した。そこから得られたハイグロマイシン抵抗性再分化植物を形質転換体として数え、その総数を接種した未熟胚の数で除し、形質転換効率を算出した。
結果
(7)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。いずれの未熟胚でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、接種源に粉体を添加し、接種した未熟胚では粉体無添加の対照の未熟胚に比べ青色を呈する部位が広範にみられ、粉体の添加により遺伝子導入が促進されていることが示された。
(8)形質転換効率
共存培養後の未熟胚をハイグロマイシンを含む培地で培養し、得られたカルスをハイグロマイシンを含む再分化培地に置床し培養した。ハイグロマイシン抵抗性再分化植物はいずれの未熟胚からも得られたが、接種源に粉体を添加し接種した未熟胚では粉体無添加の対照の未熟胚に比べハイグロマイシン抵抗性再分化植物の数は多く、粉体の添加により形質転換効率の向上がみられた(図1)。
実施例2:粉体存在下でのトウモロコシの形質転換
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB131)(Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、トウモロコシインブレッドA188を用いた。交配後8〜14日目の雌穂から大きさ1.0〜1.2mmの未熟胚を無菌的に取り出し、供試組織とした。
(3)接種源の調製
粉体としてハイドロキシアパタイト(Bio-Rad)、シリカゲル(ICN Pharmaceuticals)および乳鉢で磨砕したグラスウールを供試した。80〜100mgの粉体をチューブに入れ、オートクレーブにより滅菌処理を行った。YP培地(5g/l 酵母エキス、10g/l ペプトン、5g/l NaCl、pH6.8)上で3〜5日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを白金耳でかき取り、LS−inf培地(Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750)に1x108〜1x109cfu/mlの濃度で懸濁した。粉体を入れたチューブに1mlのアグロバクテリウム懸濁液を加え、接種源とした。
(4)接種および共存培養
接種は通常接種と滴下接種の2種類の方法で行った。
通常接種は以下の通り行った。無菌的に摘出した未熟胚を46℃で3分間処理した後、15,000rpm、4℃で10分間遠心処理した。熱および遠心処理した未熟胚を接種源と混合し、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌した。未熟胚を5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地に置床し、培養容器をシールした後、25℃、暗黒下で7日間共存培養を行った。
滴下接種は以下の通り行った。熱および遠心処理した未熟胚を5μM AgNO3および5μM CuSO4を含むLS−AS培地に置床した。粉体が細菌懸濁液に均等に分散するようにボルテックスミキサーで軽く撹拌した後、1未熟胚につき、5μlの懸濁液を未熟胚上に滴下した。滴下した接種源が乾いた後、未熟胚を同培地上の別の場所に移動した。培養容器をシールした後、25℃、暗黒下で7日間共存培養を行った。
一部の未熟胚についてX−Glucを処理することによるGUS発現を調査した(Hiei, Y., et al., (1994) The Plant Journal, 6: 271-282)。すなわち、共存培養処理直後、組織を0.1% Triton X-100を含む0.1M リン酸緩衝液(pH6.8)に浸漬し、37℃で1時間静置した。リン酸緩衝液でアグロバクテリウムを除去した後、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X−Gluc)および20%メタノールを含むリン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、青色の呈色を示す組織を顕微鏡下で観察した。
(5)選抜および再分化
未熟胚を5mg/l フォスフィノスライシン(PPT)を含む改良LSD1.5培地 (Ishida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20: 57-66)に置床した。暗黒下25℃で10〜14日間培養後、10mg/l PPTを含む改良LSD1.5培地で培養した。増殖した細胞塊を5mg/l PPTおよび10μM CuSO4を含むLSZ再分化培地(Ishida, Y., et al., (1996) Nature Biotechnology, 14: 745-750)に置床し、照明下25℃で約2週間培養した。再分化した植物の葉の一部を切り取り、X−Glucを処理することによるGUS発現を調査した。
結果
(6)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。いずれの未熟胚でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、通常接種、滴下接種ともに、接種源に粉体を添加し接種した未熟胚では粉体無添加の対照の未熟胚に比べ青色を呈する部位が広範にみられ、粉体の添加により遺伝子導入が促進されていることが示された。
(7)形質転換効率
共存培養後の未熟胚をPPTを含む培地で培養し、得られたカルスをPPTを含む再分化培地に置床し培養した。再分化のみられたPPT抵抗性植物についてGUS分析を行った。GUS陽性植物はいずれの未熟胚からも得られたが、通常接種、滴下接種ともに、接種源に粉体を添加し接種した未熟胚では粉体無添加の対照の未熟胚に比べGUS陽性植物の数は多く、粉体の添加により形質転換効率の向上することが明らかとなった(表1)。粉体の添加による形質転換効率の向上は、未熟胚をアグロバクテリウムおよび粉体と共存下で撹拌した後、共存培地に置床した場合(通常接種)だけでなく、粉体とアグロバクテリウムの混合液を未熟胚上に滴下した場合(滴下接種)にも見られた。このことは、形質転換効率の向上は粉体による植物組織の付傷によるものではないことを示す。
Figure 0005260963
実施例3:粉体(シリカゲル)の粒径の効果
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB134)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。開花後8〜14日目の未熟種子の穎を除去し、70%エタノールで数秒、ツイーン20を含む1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で15分間滅菌処理を行った。滅菌水で数回洗浄後、長さ1.5〜2mmの未熟胚を摘出し供試組織とした。
(3)接種源の調製
粉体として異なる粒径のシリカゲル5種(粒径:5〜20μm、20〜40μm、45〜75μm、75〜150μm、150〜425μmのもの;和光純薬工業株式会社)を供試した。120mgの粉体をチューブに入れ、オートクレーブにより滅菌処理を行った。AB培地(Chilton, M-D., et al., (1974) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71: 3672-3676)上で3〜5日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを白金耳でかき取り、修正AA培地(AA主要無機塩類、AAアミノ酸およびAAビタミン類(Toriyama, K., et al., (1985) Plant Sci., 41: 179-183)、MS微量塩類(Murashige, T. and Skoog, F., (1962) Physiol. Plant, 15: 473-497)、1.0g/l カザミノ酸、100μM アセトシリンゴン、0.2M ショ糖、0.2M グルコース)に1x108〜1x109cfu/mlの濃度で懸濁した。粉体を入れたチューブに1mlのアグロバクテリウム懸濁液を加え、接種源とした。
(4) 形質転換植物の作出
接種、共存培養、選抜、再分化および形質転換効率の算出は実施例1の方法に従って行った。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。粉体無添加の対照を含め、いずれの処理区でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、粒径150μm以下のシリカゲルを接種源に添加し接種した未熟胚では、粉体無添加の対照および150μm以上の粉体を接種源に添加し接種した未熟胚に比べ、青色を呈する部位が広範にみられ、粉体の粒径により遺伝子導入を促進する程度の異なることが示された
(6)形質転換効率
共存培養後の未熟胚をハイグロマイシンを含む培地で培養し、得られたカルスをハイグロマイシンを含む再分化培地に置床し培養した。ハイグロマイシン抵抗性再分化植物はいずれの未熟胚からも得られたが、粒径150μm以下のシリカゲルを接種源に添加し接種した未熟胚では粉体無添加の対照の未熟胚に比べハイグロマイシン抵抗性再分化植物の数は多く、形質転換効率の向上がみられた(図2)。
実施例4:粉体(活性炭およびシリカゲル)の量の効果
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB134)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。開花後8〜14日目の未熟種子の穎を除去し、70%エタノールで数秒、ツイーン20を含む1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で15分間滅菌処理を行った。滅菌水で数回洗浄後、長さ1.5〜2mmの未熟胚を摘出し供試組織とした。
(3)接種源の調製
粉体として活性炭およびシリカゲル(和光純薬工業株式会社)を供試した。0〜240mgの粉体をチューブに入れ、オートクレーブにより滅菌処理を行った。AB培地(Chilton, M-D., et al., (1974) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71: 3672-3676)上で3〜5日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを白金耳でかき取り、修正AA培地(AA主要無機塩類、AAアミノ酸およびAAビタミン類(Toriyama, K., et al., (1985) Plant Sci., 41: 179-183)、MS微量塩類(Murashige, T. and Skoog, F., (1962) Physiol. Plant, 15: 473-497)、1.0g/lカザミノ酸、100μM アセトシリンゴン、0.2M ショ糖、0.2M グルコース)に1x108〜1x109cfu/mlの濃度で懸濁した。粉体を入れたチューブに1mlのアグロバクテリウム懸濁液を加え、接種源とした。
(4)接種、共存培養および形質転換植物の作出
接種、共存培養、選抜、再分化および形質転換効率の算出は実施例1の方法に従って行った。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。粉体無添加の対照を含め、いずれの処理区でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、接種源1ml当たり60mg以上の活性炭を接種源に添加し接種した未熟胚では、粉体無添加の対照および30mg以下の粉体を接種源に添加し接種した未熟胚に比べ、青色を呈する部位が広範にみられ、接種源に添加する粉体の量により遺伝子導入を促進する程度の異なることが示された(図3)。
(6)形質転換効率
共存培養後の未熟胚をハイグロマイシンを含む培地で培養し、得られたカルスをハイグロマイシンを含む再分化培地に置床し培養した。ハイグロマイシン抵抗性再分化植物はいずれの未熟胚からも得られたが、30mg以上のシリカゲルを接種源に添加し接種した未熟胚では、粉体無添加の対照の未熟胚に比べ、ハイグロマイシン抵抗性再分化植物の数は多く、形質転換効率の向上がみられた(図4)。
実施例5:ゼオライトの効果
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB131)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、トウモロコシインブレッドA188を用いた。交配後8〜14日目の雌穂から大きさ1.0〜1.2mmの未熟胚を無菌的に取り出し、供試組織とした。
(3)接種源の調製
粉体として2種の粒径のゼオライト(5μm、75μm;和光純薬工業株式会社)を供試した。粉体の滅菌および接種源の調製は実施例2に記載の方法に従って行った。
(4)接種および共存培養
接種は実施例2に記載の滴下接種方法で行った。共存培養後の未熟胚でのGUS未熟胚での調査は実施例2に記載の方法により行った。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。いずれの未熟胚でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、ゼオライトを接種源に添加し、接種した未熟胚では対照の未熟胚に比べGUS遺伝子の発現部位が広範囲でみられた。粒径5μmのゼオライトに比べ75μmのゼオライトではより広い範囲でのGUS遺伝子の発現が観察された(図5)。
実施例6:混合した粉体による効果
材料および方法
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB134)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。供試組織の調製は実施例4に記載の方法に従って行った。
(3)接種源の調製
粉体としてシリカゲル、ハイドロキシアパタイトおよび磨砕グラスウールを供試した。総量120mgの粉体をチューブに入れ、オートクレーブにより滅菌処理を行った。2種の粉体を混合した時は各粉体を約60mgずつ、3種の粉体を混合した時は各粉体を約40mgずつチューブに入れ滅菌した。アグロバクテリウム懸濁液の調製は実施例4に記載の方法に従って行った。粉体を入れたチューブに1mlのアグロバクテリウム懸濁液を加え、接種源とした。
(4)接種および共存培養
接種、共存培養方法およびGUS発現の調査は実施例1に記載の方法に従って行った。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。粉体無添加の対照を含め、いずれの処理区でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、粉体を接種源に添加し接種した未熟胚では、粉体未添加の対照に比べ青色を呈する部位が広範に見られた。1種類の粉体と2種類または3種類の混合粉体の間では遺伝子導入を促進する程度に大きな差は見られなかった(図6)。
実施例7:粉体存在下でのイネカルスの形質転換
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pSB134)を用いた。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。開花後8〜14日目の未熟種子の穎を除去し、70%エタノールで数秒、ツイーン20を含む1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で15分間滅菌処理を行った。滅菌水で数回洗浄後、長さ1.5〜2mmの未熟胚を摘出し2N6−AS培地に置床した。暗黒下、25℃で1週間培養し、カルスの増殖した未熟胚を供試材料とした。
(3)接種源の調製
粉体としてハイドロキシアパタイト(Bio-Rad)を供試した。接種源の調製は実施例1の方法に従って行った。
(4)
接種および共存培養
導入遺伝子のトランジェント発現を確認するために、カルスを2N6−AS培地に置床した。粉体が細菌懸濁液に均等に分散するようにボルテックスミキサーで撹拌した後、1カルスにつき、10μlの懸濁液をカルス上に滴下した。滴下した接種源が乾いた後、カルスを同培地上の別の場所に移動した。共存培養方法およびGUS発現の調査は実施例4に記載の方法に従って行った。
形質転換植物の作出
形質転換効率を確認するために、カルスに対する接種、共存培養、選抜、再分化および形質転換効率の算出を、実施例1の方法に従って行った。細菌懸濁液の滴下量は10μlとした。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。粉体無添加の接種源を接種したカルスに比べ、接種源にハイドロキシアパタイトを添加し、接種したカルスでは青色を呈する部位が広範にみられ、カルスを材料とした時にも接種源への粉体の添加により遺伝子導入が促進されることが示された(図7)。
(6)形質転換効率
共存培養後のカルスをハイグロマイシンを含む培地で培養し、増殖したカルスをハイグロマイシンを含む再分化培地に置床し培養した。粉体無添加の接種源を接種したカルスに比べ、接種源にハイドロキシアパタイトを添加し、接種したカルスからは、より多くのハイグロマイシン抵抗性植物の再分化がみられ、形質転換効率の向上が認められた(図8)。
実施例8:粉体存在下でのノーマルバイナリーベクターによる形質転換
(1)アグロバクテリウムの菌系およびプラスミド
アグロバクテリウムおよびそのベクターには、LBA4404(pIG121Hm)(Hiei, et al., 1994, The Plant Journal, 6: 271-282) を用いた。LBA4404(pIG121Hm)はスーパーバイナリーベクターの有する強病原性菌株のvir遺伝子の一部を持たないノーマルバイナリーベクターである。
(2)供試品種および組織
供試品種として、日本稲品種ゆきひかりを用いた。供試組織の調製は実施例4に記載の方法に従って行った。
(3)接種源の調整
粉体として磨砕したグラスウールおよびハイドロキシアパタイトを供試した。接種源の調製は実施例1の方法に従って行った。
(4)接種および共存培養
接種、共存培養方法およびGUS発現の調査は実施例4に記載の方法に従って行った。
結果
(5)導入遺伝子のトランジェント発現
共存培養後の未熟胚をX−Glucにより処理した。粉体無添加の対照を含め、いずれの処理区でもGUS遺伝子のトランジェントな発現を示す青色のスポットがみられたが、紛体無添加の未熟胚に比べ、磨砕グラスウールおよびハイドロキシアパタイトを接種源に添加し接種した未熟胚では青色を呈する部位が広範にみられ、ノーマルバイナリーベクターを接種する場合も、接種源に粉体を添加することにより遺伝子導入が促進されることが示された(図9)。

実施例9:サザン分析
実施例1で得られた形質転換植物および接種源に磨砕グラスウールあるいは活性炭を添加して実施例1と同様の方法で得られた形質転換植物から小鞠らの方法(Komari, et al., 1989; Theor. Appl. Genet., 77: 547-552)に従いDNAを抽出し、抽出したDNAに制限酵素XbaIを処理し、GUS遺伝子をプローブとしたサザン法による導入遺伝子の検出を行った。サザン法はMolecular Cloning (Sambrook, et al., 1989; Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法に従って行った。その結果、ハイブリダイズするバンドはいすれも異なった位置にみられ、導入遺伝子がイネゲノム中にランダムに挿入されていることが証明された。導入遺伝子のコピー数は1から4であった(表2)。
Figure 0005260963
実施例10:後代植物への導入遺伝子の遺伝
実施例1で得られた形質転換植物および接種源に磨砕グラスウールを添加して実施例1と同様の方法で得られた形質転換植物を自殖し、得られたT1種子を播種した。播種後10日目の幼苗から葉の一部を切り取り、実施例1の方法に従い、GUS遺伝子の発現を調査した。
その結果を表3に示す。得られた結果を統計解析(χ二乗検定)すると、いずれの系統でもT1植物でのGUS遺伝子の発現はGUS陽性:陰性の比が3:1、あるいは15:1に適合し、導入遺伝子はメンデルの法則に従い後代植物に遺伝することが明らかとなった。
Figure 0005260963
本発明は、従来のアグロバクテリウム法よりも高い効率で遺伝子導入および形質転換のなされる簡便な方法を提供する。本発明により、植物のアグロバクテリウム法による遺伝子導入効率および形質転換効率が向上したことから、本発明は、多数の形質転換植物を効率よく入手し、実用遺伝子を導入した品種を効率よく育成するのに貢献する。

Claims (13)

  1. アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、以下:
    (1)アグロバクテリウム属細菌懸濁液と粉体を混合し;そして
    (2)(1)の混合物を植物材料に滴下接種する;
    ことを含む工程により、粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌を植物材料に接種することを特徴とし、ここで当該粉体は、1〜150μmの粒径を有し、生体組織に対し悪影響を及ぼさず、かつ、水に不溶性である、前記方法。
  2. 粉体が、さらに以下の特性:生体組織に対する親和性を有する;吸着特性を有する;および表面極性を有する;からなる群より選択される1またそれより多くの特性を有する粉体である、請求項に記載の方法。
  3. 粉体が、多孔質の粉体である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 多孔質の粉体が、多孔性セラミックスの粉体である、請求項に記載の方法。
  5. 粉体が、ハイドロキシアパタイト、シリカゲル、ゼオライト、その他の多孔性セラミックス、グラスウールおよび活性炭、ならびにそれらの混合物、からなる群より選択される粉体である、請求項1に記載の方法。
  6. 粉体が5〜75μmの粒径を有する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  7. 植物材料が、植物細胞、葉、根、茎、芽、花(雄蕊、雌蕊等含む)、実、種子、発芽種子もしくはその他いずれかの部位の植物組織、外植片、成長点、未熟胚、カルスもしくは不定胚様組織、または完全な植物体からなる群より選択される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  8. 植物が単子葉植物である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  9. 単子葉植物が、イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、アスパラガス、サトウキビおよびソルガムからなる群より選択される植物である、請求項に記載の方法。
  10. 植物が双子葉植物である、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  11. 双子葉植物が、タバコ、ダイズ、ミヤコグサ、ジャガイモ、ワタ、およびヒマワリからなる群より選択される植物である、請求項10に記載の方法。
  12. 以下の工程:
    (1)アグロバクテリウム属細菌懸濁液と粉体を混合する工程;および、
    (2)(1)の混合物を植物材料に滴下接種する工程;
    を含む、アグロバクテリウム属細菌を介して植物材料への遺伝子導入を行う方法であって、
    ここで、該粉体は、ハイドロキシアパタイト、シリカゲル、ゼオライト、その他の多孔性セラミックス、グラスウールおよび活性炭、ならびにそれらの混合物、からなる群より選択される粉体であって、粒径が1〜150μmの粉体である、
    前記方法。
  13. アグロバクテリウム属細菌を介した植物材料の形質転換による形質転換植物の製造方法であって、以下の工程:
    (1)(i)アグロバクテリウム属細菌懸濁液と粉体を混合し;そして(ii)(i)の混合物を植物材料に滴下接種する;ことにより粉体の存在下でアグロバクテリウム属細菌懸濁液を植物材料に接種し;
    (2)形質転換された植物材料を選抜し;そして、
    (3)選抜された形質転換体を再分化する;
    を含むことを特徴とし、ここで当該粉体は1〜150μmの粒径を有する、前記方法。
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