以下、図1〜図12を用いて、本発明の実施形態による電動パワーステアリング用制御装置および電動パワーステアリング装置を説明する。図1〜9は、モータの駆動を制御する電動パワーステアリング用制御装置の構造および動作を説明する図であり、図10は、電動パワーステアリング用制御装置の組立について説明する図であり、図11は、電動パワーステアリング用制御装置をモータに搭載する状態を示す図であり、図12は電動パワーステアリングの装置を説明する図である。
最初に、図1〜図3を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の構造について説明する。図1は本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の構造を示す分解斜視図であり、図2は、電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210とDC導体モジュール230と制御モジュール220の構造を示す側面図であり、図3は、パワーモジュール210の斜視図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング用制御装置(以下、モータ制御装置とも言う)200は、DC導体モジュール230、AC導体モジュール231、パワーモジュール210、制御モジュール220、カバー250、金属製筐体240、とを備えている。
DC導体モジュール230は、電力線となるバスバ230B、バッテリBA(図4)から電力が供給される電源端子台230PC、信号線となるリードフレーム230LFが樹脂によりモールド成形されており、バスバ230Bおよび電源端子台230PCは一体成形されている。また、DC導体モジュール230には、ノーマルフィルタNFや電解コンデンサC1などのフィルタ素子や、回路保護用のリレーRY1や、モータ100の駆動電力を授受する電解コンデンサC2、C3、C4が取り付けられている。これらの素子とバスバ230Bは、TIG溶接(アーク溶接)により固定される。
AC導体モジュール231は、電力線となるバスバ231Bが、モータ100へ電力を供給するモータ端子台231SCと一体成形されている。
パワーモジュール210は、金属ベース上に絶縁層を介して配線パターンが形成され、その上に、MOSFETなどの半導体スイッチング素子SSWや抵抗体からなるインバータが取り付けられている。パワーモジュール210には、複数の信号用リードフレームSLFおよびパワーリードフレーム230BDC(図4の230BP、230BN)、230BAC(図4の230BU、230BV、230BW)を取り付ける信号用端子、直流入力用端子、交流出力用端子が設けられ、各リードフレームの一端が半田付けにより固定されている。
信号用リードフレームSLFは、パワーモジュール210と制御モジュール220を電気的に接続するために用いられる。パワーリードフレーム230BDC、230BACは、それぞれ、パワーモジュール210とDC導体モジュール230のバスバ230Bおよびパワーモジュール210とAC導体モジュール231のバスバ231Bを電気的に接続するために用いられる。
制御モジュール220は、プリント基板上にCPUや、ドライバ回路や昇圧回路などの複数の機能を集積したカスタムIC(ASIC)などが取り付けられている。図1の状態では、基板の下側の面に、CPUやカスタムIC(ASIC)などが取り付けられている。また、制御モジュール220には、信号コネクタ220Cが取り付けられている。
金属製筐体240は、パワーモジュールを接続するための放熱面240Pと、支柱240Tにより構成されている。パワーモジュール210で発生した熱は、パワーモジュール210の下面に接する放熱面240Pを介して金属製筐体240に蓄えられ、放熱される。支柱240Tは、モータ制御装置200とモータ100をネジ等によって機械的、電気的に接続する固定部であり、且つ、金属製筐体240の熱を、モータ100を介して搭載車両に放熱する熱伝達経路である。
カバー250および金属製筐体240は、アルミ製である。組立時には、金属製筐体240にパワーモジュール210がネジ止めされる。次に、DC導体モジュール230およびAC導体モジュール231がパワーモジュール210の上部に配置され、金属製筐体240にそれぞれネジ止めされる。また、パワーリードフレーム230BDC、230BACの他端がDC導体モジュール230およびAC導体モジュール231の各バスバにTIG溶接される。
次に、DC導体モジュール230およびAC導体モジュール231の上部に、制御モジュール220が配置され、同じく金属製筐体240にネジ止めされる。そして、信号用リードフレームSLFの他端が制御モジュール220の端子と半田付けされる。最後に、カバー250を金属製筐体240にかしめることにより、モータ制御装置200が製造される。
図2は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210とDC導体モジュール230と制御モジュール220の構造を示す側面図である。また、図3は、本発明の一実施形態によるパワーモジュール210の斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部品を示している。
パワーモジュール210は、半導体スイッチング素子SSWやシャント抵抗など、背丈の低い部品と、リレー(継電器)RY2、RY3やジャンパリードJLなど、背丈の高い部品が実装されている。また、DC導体モジュール230は、電解コンデンサC1、C2、C3、C4やリレーRY1、ノーマルフィルタNFなど、大型で背丈の高い部品が実装されている。モータ制御装置200の高さ寸法を低くするため、パワーモジュール210とDC導体モジュール230の、上述した背丈の高い部品同士は、お互いが干渉しないように配置されている。
すなわち、パワーモジュール210は、DC導体モジュール230と干渉しないエリアA1に、リレーRY2、RY3やジャンパリードJLなど、上述した背丈の高い部品を実装している。また、DC導体モジュール230は、パワーモジュール210の背丈の低い部品が実装されたエリアA2の上部に位置しており、パワーモジュール210と制御モジュール220の間にロフト状に配置されている。エリアA2には、背丈の高い部品は実装されていない。これらにより、部品間の干渉を避けることにより、モータ制御装置200の高さ寸法を低くしている。
図4は本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の回路構成を示す回路図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
モータ制御装置200は、パワーモジュール210と、制御モジュール220と、DC導体モジュール230と、AC導体モジュール231とを備えている。
DC導体モジュール230は、電力線となるバスバ230Bが樹脂モールドにより一体成形されている。図中、太い実線部分はバスバを示している。DC導体モジュール230においては、ノーマルフィルタ(コイル)NF、電解コンデンサC1、C2、C3、C4、リレーRY1が、電源であるバッテリBAと接続されるとともに、パワーモジュール210のMOSFETなどの半導体スイッチング素子SSWのドレイン端子とソース端子を接続するバスバすなわち板状の導体に、パワーリードフレーム230BP、230BNを介して図示のように接続されている。
リレーRY1は電源電流の過電流保護用である。また、いずれのリレーも過電流の状態で回路を遮断する。リレーRY1は、電解コンデンサへの突入電流を防止するため、電解コンデンサC1、C2、C3、C4よりもバッテリBA側に実装されている。即ち、電解コンデンサC1、C2、C3、C4はDC導体モジュールに実装可能となり、パワーモジュールからの熱を受けにくくなり、長寿命化がなされる。
電解コンデンサC2、C3、C4はバッテリBAから供給される電流を蓄電すると共に、半導体スイッチング素子SSWの動作に応じてモータ100に電力を供給する平滑用コンデンサである。ノーマルフィルタNFとコンデンサC1はフィルタを構成し、ノイズの放出や進入、特に半導体スイッチング素子SSWの動作による電源ラインの電圧脈動の影響を抑え、ラジオノイズの影響を低減する働きをする。ラジオノイズ低減構成に関しては図9に後述する。さらにセラミックコンデンサCC1、CC2、CC3は半導体スイッチング素子SSWのスパイクノイズを抑え、半導体スイッチング素子SSWのサージ電圧を吸収する働きをする。スパイクノイズ低減構成に関しては図8に後述する。
また、図4中、二重丸で示す部分は、溶接接続部を示している。たとえば、ノーマルフィルタNFの2個の端子は、バスバの端子に溶接により接続されている。また、電解コンデンサC1、C2、C3、C4のそれぞれ2個の端子、リレーRY1の2個の端子、パワーリードフレーム230BP、230BNのバスバ230B側の端子も、それぞれ、バスバ端子に溶接により接続されている。
また、図4中バツ印を丸で囲った部分は、ネジ止め箇所を示している。たとえば、バッテリBAの電源配線とDC導体モジュール230のバスバ230Bはネジ止めによって電気的に接続されている。また、バッテリBAのマイナス側配線と接続されるバスバ230Bのマイナス側配線は、モータ制御装置200の金属製筐体240とネジ止めによって電気的に接続されている。
AC導体モジュール231は、モータ100にモータ電流を供給する電力線となるバスバ231Bが樹脂モールドにより一体成形されている。AC導体モジュール231は、パワーリードフレーム231BU、231BV、231BWを介してパワーモジュール210と図示のように接続されている。また、DC導体モジュール230と同様に、パワーリードフレーム231BU、231BV、231BWのバスバ231B側の端子も、それぞれバスバ端子に溶接により接続されている。また、バスバ231Bはモータの三相電力線とネジによって接続されている。また金属製のモータ筐体とモータ制御装置200の金属製筐体240もネジによって接続されている。
制御モジュール220は、CPU222およびドライバ回路224を備えている。CPU222は、トルクセンサTSによって検出されたトルクや、レゾルバ156によって検出されたモータ100の回転位置に基づいて、パワーモジュール210の半導体スイッチング素子SSWを制御する。すなわち導通や遮断を行う制御信号を、ドライバ回路224に出力する。ドライバ回路224は、CPU222から供給される制御信号に基づいて、パワーモジュール210の半導体スイッチング素子SSWを制御する。
パワーモジュール210からモータ100に供給されるモータ電流は、モータ電流の検出素子である抵抗(シャント抵抗)DR1、DR2、DR3によって検出され、増幅器AP1、AP2、AP3によってそれぞれ増幅された上、CPU222に入力する。CPU222は、モータ電流が目標値となるようにフィードバック制御する。また、モータ100に供給される全相電流は、検出素子である抵抗(シャント抵抗)DR4によって検出され、増幅器AP4によって増幅された上、CPU222に入力する。
CPU222は外部のエンジンコントロールユニットECU等とCAN等により接続されており、情報の授受を行える構成となっている。また、ドライバ回路224を含むカスタムIC(ASIC)224Aは、昇圧回路、マイコン電源回路、電流センス用アンプ、CAN通信回路等を1つのICに集積する事で、制御モジュール220の小型化がなされている。
ここで、図4中、△印は、リードフレームを用いて半田付けにより接続された部分を示している。リードフレームを用いる事により、応力を緩和する構造としている。リードフレームの形状等については、図10を用いて後述する。制御モジュール220と、パワーモジュール210若しくは導体モジュール230との電気的接続部には、リードフレームを用いた半田付け接続が用いられている。
パワーモジュール210は、MOSFETなどの6個の半導体スイッチング素子SSWを備えている。半導体スイッチング素子SSWは、3相(U相、V相、W相)の各相毎に、上アームと下アームにそれぞれ直列接続されている。ここで、パワーリードフレーム230BP、230BN、231BU、231BV、231BWとパワーモジュール210は半田付けにより電気的に接続されている。すなわち、DC導体モジュール230からパワーモジュール210とAC導体モジュール231を介して、モータ100にモータ電流が供給されるが、この電流は、たとえば、100Aの大電流である。
そこで、大電流を流す事ができ、しかも、応力を緩和できる構造として、たとえば銅の焼きなまし材により接続している。この詳細については、図7を用いて後述する。また、パワーモジュール210はリレーRY2、RY3を備えている。リレーRY2、RY3は、たとえば100Aの大電流が流れるため、発熱量が大きい。パワーモジュール210は放熱性に優れた基板を使用しており、リレーRY2、RY3の高放熱化がなされ、小型のリレーを実装することができる。
パワーモジュール210の基板は放熱性に優れており、たとえばDC導体モジュール230に実装されたリレーRY1をパワーモジュール210に実装するなどが考えられる。しかしながら、リレーRY1をパワーモジュール210に実装した場合には、上述するように、電解コンデンサC1、C2、C3、C4およびノーマルフィルタNFもパワーモジュール210に実装することとなる。その結果、パワーモジュール210は、実装部品のリフロー半田付けの際に高温環境下にさらされる。
電解コンデンサC1、C2、C3、C4は、高温環境下にさらされると、寿命が著しく低下する事が知られている。そのため、本実施形態のリレーRY1は、DC導体モジュール230に実装し、電解コンデンサC1、C2、C3、C4およびリレーRY1もDC導体モジュール230に実装する事で、リフロー半田付けによる寿命劣化を防ぐことができる。
次に、図5〜図6を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のDC導体モジュール230の構造について説明する。図5は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のDC導体モジュール230の構造を示す斜視図であり、図6は、DC導体モジュール230のバスバ230Bと実装部品を上から見た図である。なお、図1および図4と同一符号は、同一部分を示している。
図5に示すように、DC導体モジュール230は、モールド成形されており、予め、ノーマルフィルタNF、電解コンデンサC1、C2、C3、C4、リレーRY1などの電気部品の端子を挿入するための孔が形成されている。それらの位置に電気部品を配置し、図示の上面側において、電気部品の端子とバスバ230Bの端子を溶接接続する。
また、信号用リードフレーム230LFと第二樹脂材230PDは、DC導体モジュール230の図示の上面に積層される。第二樹脂材230PDは、バスバ230Bと信号用リードフレーム230LFの電気的絶縁をとっている。DC導体モジュール230は凸状モールド部230Tが形成されている。また、第二樹脂材230PDおよび信号用リードフレーム230LFは、凸状モールド部230Tを挿入するための孔が形成されており、凸状モールド部230Tにはめ込むことで、DC導体モジュール230に固定される。電源端子台230PCは車載電源であるバッテリBAから電流の供給を受ける。
図6に示すように、電解コンデンサC2、C3、C4は、バッテリBAから供給される電流を蓄電すると共に、図1に示す半導体スイッチング素子SSWの動作に応じてモータに電力を供給する。電解コンデンサC2、C3、C4は、端子を図示の面側にあるとして、C2、C3、C4の順に、P側バスバ230BPPと略並行に配置される。P側バスバ230BPPと図4に示すパワーリードフレーム230BPとの接続は、P側接続部(直流出力端子)230BPTでなされ、N側バスバ230BNNと図4に示すパワーリードフレーム230BNとの接続は、N側接続部(直流出力端子)230BNTでなされる。
N側バスバ230BNNは、電解コンデンサC2の位置で、コンデンサ接続配線とN側接続部230BNTへの配線に分岐されている。すなわち、各電解コンデンサの正極側端子からP側接続部230BPTまでのインダクタンスは、電解コンデンサがP側接続部230BPTに近いほど小さいのに対し、各電解コンデンサの負極側端子からN側接続部230BNTまでのインダクタンスは、電解コンデンサがN側接続部230BNTに近いほど大きくなっている。
この構造により、各電解コンデンサに接続されるバスバの長さは略等しくなり、各電解コンデンサは、正負極端子間のインダクタンスばらつきが小さくなり、各電解コンデンサの出力電流のばらつきも少なくなる。従って、各電解コンデンサの温度上昇量は均一化され、特定の電解コンデンサの寿命劣化を防ぐ。なお、上述の分岐されたN側バスバ230BNNのバスバ間距離は、インダクタンスのバランスを揃えるため、相互インダクタンスを下げるように、離して配置する事が望ましい。
次に、図3および図7を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210の構造について説明する。図3は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210の構造を示す斜視図であり、図7は、パワーモジュール210とDC導体モジュール230およびAC導体モジュール231との接続を示す断面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
図3および図7に示すように、パワーモジュール210は、半導体スイッチング素子SSWやシャント抵抗DR1、DR2、DR3、DR4などが実装されており、その放熱のためにアルミや銅などの金属ベースMP(図7)を用いている。図7に示すように、金属ベースMPと金属製筐体240の間には、熱伝導グリースHCGを介在させ、半導体スイッチング素子SSWなどの発熱体から発生する熱を、金属ベースMP―熱伝導グリースHCGを介して、金属製筐体240から放熱する構造としている。
金属ベースMPの上には、絶縁層IMを介して配線パターンWPが形成されている。配線パターンWPは、厚さ105μmの銅箔をエッチングによりパターニングしている。さらに、配線パターンWP上面には半導体スイッチング素子SSWや抵抗体等の他に、配線パターン間を跨ぐジャンパーリードJLが備えられている。パワーモジュール210は、ジャンパリードJLを用いることにより配線パターンWPの自由度が向上する。すなわち、パワーモジュール210を小型化し、モータ制御装置200が小型化される。
次に、パワーモジュール210とDC導体モジュール230、AC導体モジュール231との接続部の詳細構造を示す。図7は、上記接続の一部である、パワーモジュール210とP側バスバ230BPPとの接続を示している。P側バスバ230BPPとパワーリードフレーム230BPは、TIG溶接で接続され、パワーモジュール210とパワーリードフレーム230BPは、半田付けで接続される。
上述したように、パワーモジュール210およびDC導体モジュール230は金属製筐体240に接続される。ここで、パワーモジュール210およびDC導体モジュール230では搭載されている部品、流れる電流が異なるため発熱量、放熱経路も異なる。そのため、パワーモジュール210とDC導体モジュール230の間には温度差が発生し、パワーリードフレーム230BPの半田接合部には、熱膨張差よる応力が加わる。
そのため、パワーモジュール210とパワーリードフレーム230BPの半田接合部には剥離が生じる恐れがある。また、パワーリードフレーム230BPは、例えば100Aの大電流が流れるため、導電性が良い太い金属の使用が望まれるが、太い金属は硬く曲がりにくいため、熱ストレスの応力を緩和する効果が低い。
そこで、本実施形態のパワーリードフレーム230BPは、予め焼鈍しを施した銅材を使用し、下部にベンド構造を採用することで半田付け部に加わる応力を緩和している。また、大電流を流すことができるようにするため、パワーリードフレーム230BPの断面積は2mm2以上にしている。なお、ここではパワーリードフレーム230BPを例にとって説明したが、本実施形態で使用する全てのパワーリードフレームは、同様の処置が実施されている。
次に、図8を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210の配線パターンWPのレイアウト構造について説明する。図8は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のパワーモジュール210の配線パターンWPのレイアウト構造を示す上面図である。なお、図3および図7と同一符号は、同一部分を示している。
パワーモジュール210は、MOSFETなどの6個の半導体スイッチング素子SSWを備えている。半導体スイッチング素子SSWは、三相(U相、V相、W相)の各相毎に、上アームと下アームにそれぞれ直列接続されている。セラミックコンデンサCC1、CC2、CC3は、上アームと下アームに直列接続された半導体スイッチング素子SSWに、並列に接続されている。
半導体スイッチング素子SSWは、制御信号によって制御される導通や遮断の高速動作によって、スパイクノイズが発生する。スパイクノイズの増大は、半導体スイッチング素子SSWのサージ電圧増大を引き起こす。セラミックコンデンサCC1、CC2、CC3は、三相(U相、V相、W相)の各相で発生したスパイクノイズを吸収し、サージ電圧を抑制する効果がある。サージ電圧は、L(di/dt)によって求められる。
ここで、W相を例に説明すると、Lは、上アーム側の半導体スイッチング素子SSWWPのドレインから、下アーム側の半導体スイッチング素子SSWWNのソースを経由し、セラミックコンデンサCC3を介して、再び上アーム側の半導体スイッチング素子SSWWPのドレインに戻る閉ループのインダクタンスである。また、(di/dt)は、半導体スイッチング素子SSWWP、SSWWNの導通や遮断時の電流変化の速度である。すなわち、サージ電圧は、閉ループインダクタンスLを低減する事でなされる。
閉ループがパワーモジュール210の配線パターンWPで形成されると、パワーモジュール210の金属ベースに閉ループとは逆向きの渦電流が誘起される。金属ベースに発生した渦電流は、閉ループの磁場をキャンセルする効果が働き、閉ループのインダクタンスLを低減する効果がある。パワーモジュール210の配線パターンWPは、金属ベース上に薄い絶縁層を介して密着するように形成されており、大きな渦電流が得られ、インダクタンスLの低減効果が得られる。
一方、パワーモジュール210の電気配線は、配線パターンWPと配線パターン間を跨ぐジャンパリードJLによって形成されている。ジャンパリードJLは、金属ベースから浮くように離れている。そのため、前述の閉ループにジャンパリードJLを含む構成は、渦電流が小さくなり、インダクタンスLの低減効果は低くなる。本実施形態では、ジャンパリードJLを介さずに閉ループを形成するため、セラミックコンデンサCC3の接続に、図8の斜線で示す専用の配線パターンWPWCが設けられている。以下、V相、W相に関して記載は省くが、同じ構造とすることで同様の効果を得られる。
次に、図9を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のラジオノイズ低減構成について説明する。図9は本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の回路構成を示す回路図である。なお、図1および図4と同一符号は、同一部分を示している。
図9に示すハーネスBANの長さは、約1メートルである。このハーネスBANに、後述するノイズ電流が流れることで、当該ハーネスBANからラジオノイズが放射される。すなわち、ハーネスBANはノイズを放射するアンテナの役割を果たしてしまう。そこで、本実施形態は、ラジオノイズ対策として、ハーネスBANに流れるノイズ電流を低減するための種々の手段を講じている。
まず、ラジオノイズ源となるノイズ電流の経路、及びノイズ電流の低減方法を説明する。図9に示された半導体スイッチング素子SSWのスイッチング動作によって、電源ライン上には電圧脈動が発生する。この電圧脈動により、図9の(A)に示されたノーマルモードノイズ電流(A)が発生する。ノーマルモードノイズ電流(A)は、半導体スイッチング素子SSWのドレイン側から、P側バスバ230BPP、P側ハーネスBAPを流れ、N側ハーネスBAN、バスバ230BのN側バスバ230BNNを経由して半導体スイッチング素子SSWのソース側に戻る経路を辿る。ノーマルモードノイズ電流(A)が、P側ハーネスBAP及びN側ハーネスBANを流れることで、前述のラジオノイズを発生させる。
そこで、本実施形態では、P側バスバ230BPPにノーマルフィルタNFを挿入させ、さらにP側バスバ230BPPとN側ハーネスBANとの間に電解コンデンサC1を接続させた。これにより、ノーマルモードノイズ電流(A)をP側バスバ230BPPからN側バスバ230BNNに抜けさせることができるので、P側ハーネスBAP及びN側ハーネスBANにノイズ電流が流れるのを防ぐことができる(図9の(A´))。すなわち、ノーマルフィルタ(コイル)NFと電解コンデンサC1とで、ノーマルモードノイズ電流(A)をバッテリのハーネスBAP、BAN側に流さないようにするフィルタを形成するようにした。このように形成されたフィルタによりノーマルモードノイズがハーネスBAP、BAN側へ流出することが遮断される。
また、半導体スイッチング素子SSWのスイッチング動作によって発生する電圧脈動によってコモンモードノイズ電流(B)が発生する。コモンモードノイズ電流(B)は、2つの経路を辿るノイズ電流となる。一方は、半導体スイッチング素子SSWの下アーム側ソース端子LSの電位脈動に起因するコモンモードノイズ電流(B−1)であり、他方は、半導体スイッチング素子SSWの上アーム側ソース端子HSの電位脈動に起因するコモンモードノイズ電流(B−2)である(図9の(B−1)及び(B−2)参照)。いずれのコモンモードノイズ電流(B−1)(B−2)がN側ハーネスBANを流れることで、前述のラジオノイズが発生する。
従来は、コモンモードノイズ電流(B−1)がN側ハーネスBANに流れないように、図9のCFで示された位置に、コモンフィルタが実装されていた。しかし、このコモンフィルタは比較的大型電子部品であるため、小型化を求められる電動パワーステアリング装置にとっては課題となっていた。
そこで、本実施形態では、(1)N側バスバ230BNNとPCB制御グラウンド225GS(制御モジュール220に実装)とをN側電源配線225Nで電気的に接続する。このN側電源配線225Nのインピーダンスは、N側ハーネスBANより小さい。そのためコモンモードノイズ電流(B−1)は、N側電源配線225N側に流れ込む。また、(2)PCB制御グラウンド225GSとPCBパワーグラウンド225GPとをダイオード226Dを介して電気的に接続する。ダイオード226Dは、PCB制御グラウンド225GSからPCBパワーグラウンド225GPの方向を順方向として接続される。さらに、(3)PCBパワーグラウンド225GPと下アーム側ソース端子LSとをゲート戻り線GPで電気的に接続する。
上記(1)〜(3)の接続関係によって、コモンモードノイズ電流(B−1)は、図9に示される電流経路(B´−1)を辿ることになる。すなわち、N側バスバ230BNN、PCB制御グラウンド225GS、ダイオード226D、PCBパワーグラウンド225GP、下アーム側ソース端子LS、N側バスバ230BNNの電流経路を辿る。これによって、大型電子部品であるコモンフィルタをCFの位置に実装することなく、コモンモードノイズ電流(B−1)をN側ハーネスBANに流れないようにすることができる。すなわち制御装置全体を小型化させるとともに、コモンモードノイズ電流(B−1)を金属筐体内に閉じ込めてノイズを低減させることができる。
なお、上記(2)のPCB制御グラウンド225GSとPCBパワーグラウンド225GPの間にダイオード226Dを(順方向を図示の方向として)介することで、下アーム側ソース端子LS側から制御モジュール220に侵入するノイズ電流を低減させることができる。また、P側電源配線225PとN側電源配線225Nとの間には、コモンフィルタやノーマルフィルタ等のノイズ対策部品を実装しないことが望ましい。なぜなら、ノイズ対策部品によってコモンモードノイズ経路のインピーダンスが増加し、ノイズを閉じ込める事ができなくなるためである。
さらに、本実施形態は、ノイズ電流の発生原因となる電圧脈動を低減させるための種々の手段を講じている。
主な電圧脈動の一つ目は、半導体スイッチング素子SSWのスイッチング動作による電圧脈動がPCBパワーグラウンド225GPを介してPCB制御グラウンド225GSに伝わる電圧脈動である。本実施形態では、この電圧脈動を低減させるために、短絡用ネジ225GGによって、PCB制御グラウンド225Gと金属製筐体240を短絡させている。主な電圧脈動の二つ目は、半導体スイッチング素子SSWのスイッチング動作による電圧脈動が、直接N側バスバ230BNNに伝わる電圧脈動である。本実施形態では、この電圧脈動を低減させるために、短絡用ネジ230BCによって、N側バスバ230BNNと金属製筐体240を短絡させている。
これらの電圧脈動への対策に加えて、(1)イグニションラインIGNとP側電源配線225Pとの合流前にノーマルコイルNF2を実装し、また(2)モータ100の金属製筐体と金属製筐体240とを、例えばネジ等100Bによって電気的に接続する。これにより、前述のコモンモードノイズ電流(B−2)は、モータ100の寄生容量100Cを抜けた後、電気的接続100Bを介して金属製筐体240に流れ、短絡用ネジ230BCや短絡用ネジ225GGを介して、制御モジュール220のPCB制御グラウンド225GSとPCBパワーグラウンド225GPに抜ける、または、N側バスバ230BNNに抜ける(B´−2)。
これは、モータ100の金属製筐体からDC導体モジュール230のN側バスバ230BNNや制御モジュール220のPCB制御グラウンド225GSまでのインピーダンスが、シャーシCSおよびハーネスBANを介した経路より電気的接続100Bと金属製筐体240とを介した経路の方において低くなるためである。すなわち、電気的接続100B、金属製筐体240、短絡用ネジ230BC、短絡用ネジ225GG、PCB制御グラウンド225GS、ダイオード226D、PCBパワーグラウンド225GPとで、コモンモードノイズ電流(B−2)が流れやすい経路が形成される。その結果、コモンモードノイズ電流(B−2)がハーネスBANに流れることが防止され、ハーネスBANからのラジオノイズの放射が防止される。
なお、ノーマルコイルNF2は、イグニションラインIGNより高インピーダンス化することで、シャーシCSからイグニションラインIGNを経由して、制御モジュール220にノイズが侵入する事を抑制することができる。
次に、図1および図10を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の制御モジュール220とリードフレーム230LF、リードフレームSLFの接続時の組立について説明する。図10は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置の制御モジュール220とリードフレーム230LF、リードフレームSLFの接続時の組立構造を示す斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
パワーモジュール210の信号用リードフレームSLFとDC導体モジュールのリードフレーム230LFは、制御モジュール220の端子に接続される。また、制御モジュール220は金属製筐体240にネジ止めされる。信号用リードフレームSLFおよびリードフレーム230LFは、制御モジュール220の両端に、それぞれの辺に沿って一列に配置される。一列に配置されたリードフレームは、制御モジュール220の端子孔にリードフレームを入れる際、位置決めが容易であり、組立性を容易にすることができる。また、本実施形態による構造は、制御モジュール220とリードフレームを半田付けで接続する際の接続作業を効率的に行える。
制御モジュール220は、金属製筐体240の支柱240Tにネジ止めにより接続されている。また、制御モジュール220に半田付けされた信号用リードフレームSLFを介してパワーモジュール210にも半田で接続されている。信号用リードフレームSLFの半田付け部には、制御装置全体と制御モジュール220の熱膨張による応力が加わる。そこで、信号用リードフレームSLFをベンド構造(図7)とすることで、信号用リードフレームSLFの半田付け部の応力を緩和することができる。
次に、図1および図11を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のモータ制御装置200とモータ100の組立てについて説明する。図11は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置のモータ制御装置200とモータ100を示す斜視図である。モータ制御装置200はモータ100を一体に保持するように構成されている。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
モータ制御装置200の金属製筐体240は、モータ100とネジにより電気的かつ機械的に接続される。次に、モータ制御装置200のAC導体モジュール231のバスバ231Bは、モータ100の三相入力部にネジにより電気的に接続される。次に、バスバ231Bの接続部は、金属製のシールドカバー250Mで閉じる。最後に、シールドカバー250Mは、金属製筐体240に、少なくとも1個のネジで固定される。以上により、モータ制御装置200とモータ100は組み立てられる。
この場合、モータ100の回転軸はパワーモジュールのスイッチング素子の実装面と略平行となるように組み立てられる。また、モータ100の円筒側部はパワーモジュールに隣接して配置されるようにする。ただし、モータ100の円筒側部は必ずしもパワーモジュールに接するように配置される必要はなく、若干の隙間をもたせて配置するようにしてもよい。そして、電動パワーステアリング用制御装置のモータの回転軸方向と直交する方向の幅は、本実施の形態の構成を採用することによって小型化された結果、モータの円筒外径より小さいくするとことろまで可能となった。
金属製のシールドカバー250Mは、モータ100の三相入力部から発生する輻射ノイズを吸収する静電シールドを果たす。本シールドカバー250Mは、1MHz以下の輻射ノイズを吸収し、主にスマート帯域(135kHz)の輻射ノイズを低減することができる。
次に、図12を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング用制御装置を用いたシステム構成について説明する。図12は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング用制御装置を用いた電動パワーステアリングの構成を示すシステム構成図である。電動パワーステアリングは車両に搭載される。この車両は、乗用車やトラックや作業用車両など、ステアリングを有するすべての車両が含まれる。
ステアリングSTを回転させると、その回転駆動力は、ロッドROを介して、マニュアルステアリングギアSTGにより減速して、左右のタイロッドTR1、TR2に伝達し、左右の車輪WH1、WH2に伝達され、左右の車輪WH1、WH2を舵取りする。
本実施形態によるモータ100は、ロッドROの近傍に取り付けられており、ギアGEを介して、その駆動力をマニュアルステアリングギアSTGに伝達する。ロッドROには、トルクセンサTSが取り付けられており、ステアリングSTに与えられた回転駆動力(トルク)を検出する。
制御装置200は、トルクセンサTSの出力および図示していないが車両の車速センサの出力に基づいてモータ100の目標トルクを算出する。この算出において、モータ100の回転速度や回転加速度をさらに考慮してモータ100の目標トルクを算出しても良く、この方がより最適なあるいはフィーリングの優れた制御が可能となる。また安全面からモータ100の温度や電流値を検出し、モータ100の出力トルクである電流値が目標トルクに相当する電流値となるようにモータ100への通電電流を制御する。制御装置200およびモータ100の電源は、バッテリBAから供給される。
なお、以上の構成は、ステアリングホイールの直ぐ下のステアリングコラムの部分にトルクセンサとトルクをアシストするモータ100を置くものであるが、モータ100をラック&ピニオンギアの近傍に備えるラック型のパワーステアリングに対しても、本実施形態のモータ100および前述のインバータを含むモータ制御装置200をそのまま使用できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施の形態においては、図6に示すように、N側バスバ230BNNを電解コンデンサC2の位置で、コンデンサ接続配線とN側接続部230BNTへの配線に分岐し、各電解コンデンサの正負極端子間のインダクタンスばらつきを小さくしたが、図13に示すように、P側バスバ230BPPを電解コンデンサC2の位置で分岐しても良い。
次に、図14〜図17を用いて、本実施形態による電動パワーステアリング制御装置のラジオノイズ低減の他の構成について説明する。なお、図9と同一符号は同一部分を示している。図14は、例えばトルクセンサなどに代表される、センサ起因で起こるラジオノイズ対策の構成を示している。
トルクセンサTSは、ノイズによるセンサ誤動作を防止するため、センサ内部回路とトルクセンサTSの金属製筐体を容量TCCで接続し、ノイズをシャーシCSに落とす構成をとっている。しかしながら、容量TCCは、トルクセンサTSの信号線やグラウンド線TSLのインダクタンス等により、特定の周波数で共振するため、共振周波数のノイズ電流がシャーシCSに抜ける。上述したように、シャーシCSに抜けたノイズ電流は、他のハーネスに回り込む事で、強いノイズを放射する。
図14は、シールドケーブルTSCを用いたトルクセンサTSの共振ノイズ対策の構成を示している。シールドケーブルTSCは、トルクセンサの信号線やグラウンド線TSLを金属メッシュで覆う構造であり、金属メッシュは図示するように、トルクセンサTSの金属製筐体と、モータ制御装置200の金属製筐体に電気的に接続されている。以上の構成により、容量TCCを抜けた共振ノイズは、シャーシCSに抜けるよりも低いインピーダンス経路であるシールドケーブルTSCの金属メッシュを介してモータ制御装置200に戻るため、他のハーネスへのノイズ電流の回り込みを抑制する。
また、金属製メッシュの静電シールド効果により、トルクセンサTSの信号線やグラウンド線TSLに発生する電位脈動による輻射ノイズも抑制できる。本実施形態では、シールドケーブルTSCを例に説明したが、低インピーダンス経路となれば他の構成でも良い。例えば、シールドケーブルTSCの代わりに、トルクセンサTSの金属製筐体とモータ制御装置200の金属製筐体を電気的に接続するハーネスを使用しても良い。また、同軸線を用いても良い。
図15は、トルクセンサTSの共振ノイズ対策の他の構成を示している。図示の対策は、図14に示したシールドケーブルTSCの代わりに、例えばフェライトコアにトルクセンサTSの信号線やグラウンド線TSLを巻きつけ、信号線やグラウンド線のインダクタンスを増加させている。インダクタンスは、周波数が高くなるほどに、大きなインピーダンスをもつため、共振ノイズそのものが流れにくくなり、輻射ノイズの低減が可能となる。また、トルクセンサTSのインダクタンスを増加させる方法であれば、フェライトコアによる対策以外にも磁性体を使用したり、インダクタンス素子を使用しても良い。また、モータ制御装置200の制御モジュール220にチップインダクタ等を実装しても良い。
図16は、トルクセンサTSの共振ノイズ対策の他の構成を示している。図示の対策は、共振源である容量TCCに直列に、例えばダンピング抵抗を入れている。共振ノイズは、容量TCCを抜ける際にダンピング抵抗TCRによってエネルギーを消費するため、輻射ノイズが低減される。また、ダンピング抵抗TCR以外にも、インダクタンス素子を使用し、共振ノイズの周波数を低周波側にシフトさせてもよい。
図17は、ノーマルモードノイズを低減可能なフィルタの他の構成を示している。図9に示すフィルタは、ノーマルフィルタNFと電解コンデンサC1によって構成されている。図17に示す構成では、電解コンデンサC1を外し、代わりに制御モジュール220のP側電源配線225PとN側電源配線225Nの間に、セラミックコンデンサ225Cを実装している。セラミックコンデンサ225Cは、十分な大きさの容量が必要となるが、電解コンデンサC1を削減可能となり、DC導体モジュール230の小型化が可能となる。
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)モータを駆動するスイッチング素子を実装するパワーモジュール(パワー基板)と、スイッチング素子に制御信号を伝達しスイッチング素子のスイッチングを制御する制御モジュール(制御基板)とを対向配置する。そして、バスバを有しこのバスバに平滑コンデンサが取り付けられたDC導体モジュールをパワーモジュールと制御モジュールとの間に配置するようにした。これにより、電動パワーステアリング用制御装置の小型化および電動パワーステアリング装置の小型化が実現できる。
(2)パワーモジュールは、一方の端部に直流用パワーリードフレームを取り付ける直流入力端子を備え、他方の端部に交流用パワーリードフレームを取り付ける交流出力端子を備えるようにした。また、DC導体モジュールのバスバは、一方の端部に電源からの入力端子を備え、他方の端部に直流出力端子を備え、平滑用電解コンデンサは、バスバの入力端子と直流出力端子との間に取り付けるようにした。そして、パワーモジュールとDC導体モジュールのバスバは、パワーモジュールの直流入力端子とバスバの直流出力端子とをパワーリードフレームを介して接続することにより、対向するように配置されるようにした。
このような構成により、平滑用の電解コンデンサは、パワーモジュールに設けることなくDC導体モジュールに設けることができる。パワーモジュールは、各種の部品を半田付けリフロー工程で実装する。一方、電解コンデンサは熱に弱い。しかし、本実施の形態では、平滑用電解コンデンサをパワーモジュールに設けることなくDC導体モジュールに設けるようにした。DC導体モジュールの製造では、電解コンデンサの取り付けを溶接で行うなど半田付けリフロー工程を経ない。これにより、電解コンデンサがハンダ付け時のリフロー工程の熱で寿命が劣化することを防ぐことができる。
また、上記のような構成により電解コンデンサをバスバの入力端子から直流出力端子に向けて一列に並べることができる。これにより、パワーモジュールの背の高い部品と干渉しないようにDC導体モジュールを配置することが容易となる。
(3)パワーモジュールは、交流出力端子とスイッチング素子との間に設けられるリレー(継電器)やジャンパリードなどの背の高い部品を実装する領域と、半導体スイッチング素子SSWやシャント抵抗など背の低い部品を実装する領域、すなわち背の高い部品を実装しない領域に分割するようにした。そして、DC導体モジュールのバスバに取り付けられた平滑コンデンサが背の高い部品を実装しない領域側に来るように配置されるようにした。これにより、パワーモジュールとDC導体モジュールの、背の高い部品同士がお互いが干渉しないように配置され、電動パワーステアリング用制御装置の小型化を達成することができる。
(4)上述のように、平滑用電解コンデンサは、DC導体モジュールのバスバーに溶接により固定されるようにした。これにより、平滑用電解コンデンサは半田付けリフロー時の高熱の影響を受けることなく、長寿命を達成することができる。
(5)パワーモジュール上において、3相の各相を構成する上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子を直列に接続し、この直列に接続された2つのスイッチング素子に並列にコンデンサを接続し、小さな閉ループを形成するようにした。このときの配線は、パワーモジュール基板上にプリント配線で行う。このプリント配線は、ジャンパーリードを介することなく、パワーモジュールの基板に密着するようにして閉ループを形成するので、パワーモジュールの金属ベースに閉ループとは逆向きの渦電流が大きく誘起される。金属ベースに発生した渦電流は、閉ループの磁場をキャンセルする効果が働き、閉ループのインダクタンスLを低減する効果がある。これにより、サージ電圧を低減し、スパイクノイズを低減する。
(6)制御モジュールとパワーモジュールとの間で制御信号を授受する複数の信号系リードフレームを、パワーモジュールの一方の辺と対向する他方の辺に沿ってそれぞれ配置された一対のリード群であるようにした。これにより、まず一方の辺に沿って一列に配置されたリードフレームを、制御モジュールの一方の辺に沿って設けられた端子孔に入れるようにし、その後、他方の辺に沿って一列に配置されたリードフレームを、制御モジュールの他方の辺に沿って設けられた端子孔に入れるようにすることができる。その結果、リードフレームと端子孔の位置決めが容易であり、組立性を容易にすることができ、半田付けで接続する際の接続作業を効率的に行える。
(7)制御モジュールは、パワーモジュールを保持する金属製筐体から立設した金属製支柱で保持するようにした。制御モジュールとパワーモジュールとの間で信号の授受を行うために接続する信号用リードフレームは金属であり、制御モジュールを保持する部材も同じように金属製の支柱とした。これにより、熱膨張などに大差がなくなり、制御モジュールとパワーモジュールとの間の電気的接続の信頼性を高めることができる。
(8)電源系リードフレーム(端子)や信号系リードフレーム(端子)に、図7に示すようなベンド状(コの字状)の応力緩和部を設けるようにした。制御装置全体や制御モジュールの熱膨張などにより、電源系リードフレーム(端子)や信号系リードフレーム(端子)の半田付け部に応力が加わる。しかし、上記のような構成を取ることにより、その応力を緩和することができ、接続の信頼性を高めることができる。
(9)電源系リード端子は、応力緩和部に加えてさらに焼きなまし材を使用するようにした。これにより、より一層の応力の緩和を実現し、接続部の信頼性を高めている。
(10)モータの回転軸をパワーモジュールのスイッチング素子の実装面と略平行となるように組み立てられている。また、モータの円筒側部がパワーモジュールに隣接して配置されるように組み立てられている。これにより、電動パワーステアリング装置全体としてコンパクトにすることができる。
(11)本実施の形態の電動パワーステアリング用制御装置は、モータの回転軸方向と直交する方向の幅において、モータの円筒外径より小さくすることまで可能になった。
(12)本実施の形態の電動パワーステアリング用制御装置の作用効果を少し表現を変えて説明すると次のようになる。電源から供給された直流電流をスイッチング素子に供給する配線部であって、平滑用コンデンサが設けられたモールドバスバ部を、パワーモジュールとこのパワーモジュールに対向して配置される制御モジュールとの間にロフト状に配置した。これにより、モータ制御装置全体を小型化できる。
モールドバスバ部は、相リレーをパワーモジュールに実装する事で小型化される。また、パワーモジュールはジャンパリードによる中空配線によって、リレー実装による大面積化が緩和される。パワーモジュールに実装されるリレーやジャンパリードと、モールドバスバ部に実装される部品(平滑用コンデンサなど)は大型であるが、モールドバスバ部をロフト状に配置する事でお互いの部品間の干渉を避け、低背化される。ここで言うロフト状とは、パワーモジュールと制御モジュールを2階建て構造にし、モールドバスバ部はその中間の中2階に、全面に設けるのではなく一部に張り出すようにして設けられる構造を意味している。
また、制御モジュールに実装される部品は、カスタムIC化により小型化する事で、制御モジュール実装面積も小型化される。電動パワーステアリングの車両搭載エリアは狭く、且つ幅広い車種の車両搭載位置に柔軟に対応する事が求められるため、小型化する事が重要である。
さらに、上記の実施の形態では、劣化部品である電解コンデンサの長寿命化ができると共に、ラジオノイズに対し低ノイズ化が実現され、信頼性の高い電動パワーステアリングが得られる。
さらに上記の実施の形態では、電動パワーステアリングが製作し易い構造であり、製造作業性に優れている。製造工程において、製造対象の装置内部の電気回路の配線端子を自動的に接続するための機械や器具を使用できる構造を有している事、製造対象製品の回路素子が前記接続作業を考慮した配置である事が必要である。上記の実施の形態では、製造作業の機械化に適した構造や回路素子の配置になっている。
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
100・・・モータ、156・・・レゾルバ、200・・・モータ制御装置、ST・・・ステアリング、RO・・・ロッド、STG・・・マニュアルステアリングギア、TR1・・・タイロッド、TR2・・・タイロッド、WH1・・・車輪、WH2・・・車輪、GE・・・ギア、TS・・・トルクセンサ、BA・・・バッテリ、210・・・パワーモジュール、SSW・・・半導体スイッチング素子、CC1・・・セラミックコンデンサ、CC2・・・セラミックコンデンサ、CC3・・・セラミックコンデンサ、RY2・・・リレー、RY3・・・リレー、DR1・・・シャント抵抗、DR2・・・シャント抵抗、DR3・・・シャント抵抗、DR4 ・・・シャント抵抗、220・・・制御モジュール、220C ・・・信号コネクタ、222・・・CPU、224・・・ドライバ回路、224A・・・カスタムIC(ASIC)、AP1・・・増幅器、AP2・・・増幅器、AP3・・・増幅器、AP4 ・・・増幅器、230・・・DC導体モジュール、230B・・・バスバ、230BP・・・パワーリードフレーム、230BN・・・パワーリードフレーム、231・・・AC導体モジュール、231B・・・バスバ、231BU・・・パワーリードフレーム、231BV・・・パワーリードフレーム、231BW・・・パワーリードフレーム、230PC ・・・電源端子台、230PD ・・・第二樹脂材、230LF ・・・リードフレーム、230T ・・・凸モールド部、231SC・・・モータ端子台、SLF ・・・信号用リードフレーム、230BDC ・・・パワーリードフレーム、230BAC ・・・パワーリードフレーム、C1・・・電解コンデンサ、C2・・・電解コンデンサ、C3・・・電解コンデンサ、C4・・・電解コンデンサ、RY1・・・リレー、NF・・・ノーマルフィルタ、240・・・金属製筐体、230BPP・・・P側バスバ、BAP・・・P側ハーネス、BAN・・・N側ハーネス、230BNN・・・N側バスバ、LS・・・下アーム側ソース端子、HS・・・上アーム側ソース端子、CF・・・コモンフィルタ実装位置、225P・・・P側電源配線、225N・・・N側電源配線、225GS・・・PCB制御グラウンド、GP・・・ゲート戻り線、225GP・・・PCBパワーグラウンド、226D・・・ダイオード、225GG・・・短絡用ネジ、230BC・・・短絡用ネジ、UVW・・・三相線、100C・・・寄生容量、CS・・・シャーシ、IGN・・・イグニションライン、NF2・・・ノーマルコイル、100B・・・電気的接続、250 ・・・カバー、JL ・・・ジャンパリード、MP ・・・金属ベース、HCG ・・・熱伝導グリース、IM ・・・絶縁層、WP ・・・配線パターン、240P ・・・放熱面、240T・・・支柱、240F・・・フィン、230BPT ・・・P側接続部、230BNT ・・・N側接続部、A1・・・エリア、A2・・・エリア、100C・・・寄生容量、TCC・・・容量、TSC・・・シールドケーブル、TSL・・・トルクセンサライン、FC・・・フェライトコア、TCR・・・ダンピング抵抗、225C・・・セラミックコンデンサ