JP5247293B2 - 鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造およびろう付け方法 - Google Patents

鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造およびろう付け方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材とアルミニウム材料とをろう付けすることによって得られるろう付け接合構造、およびそのろう付け方法に関する。
鋼材とアルミニウム材料を接合する方法としては、ボルト/ナットやかしめなどにより機械的に締結する方法、接着剤による方法、ろう付けによる方法がある。このうち、ろう付けによる接合方法は、例えば自動車のラジエーター部材など、鋼材とアルミニウム材料との間の熱伝導を重視する用途において特に有効である。鋼材とアルミニウム材料のろう付けは、従来、主としてAl−Si系合金のろう材(例えばAl:88原子%、Si:12原子%)を用いて行われている。
しかし、従来のろう付けでは、鋼材と、ろう材の溶融凝固層との界面に脆いAl−Fe系合金層(反応層)が成長しやすく、必ずしも十分な接合強度が得られないという問題があった。特許文献1には、より融点の低いAl−Si−高Zn系のろう材を用いてろう付け温度を低くすることにより、脆い反応層の成長を抑制する手法が記載されている。
一方、一般的な鋼材はアルミニウム材料に比べ耐食性に劣ることなどから、鋼材としてAlめっき鋼板を使用し、これをアルミニウム材料とろう付けする手法が試みられてきた。特許文献2には、溶融Alめっき鋼板とアルミニウム合金とをろう付けする際に、Alめっき鋼板の原板としてNを添加した鋼を使用することが開示されている。鋼中のNは鋼素地とAlめっき層との間にN濃化層を形成し、これがバリアーとなって、ろう付け時に鋼中のFeがろう材側に拡散するのを阻害し、その結果、脆いAl−Fe系合金層(反応層)の成長が抑制される。
特公平7−29202号公報 特開平9−220692号公報
鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合は、アルミニウム材料の高い熱伝導性を利用して鋼材側を冷却する目的で利用されることが多い。アルミニウム材料は鋼材に比べ熱膨張率が大きいことから、両者間のろう付け接合部には、部材として使用されるときの昇温・降温によって、熱膨張率の差に起因した応力が付与される。鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合部には前述のように脆い合金層が形成され、ろう付け接合界面での耐久性が問題となることがある。このような合金層の問題は特許文献1、2の技術によりある程度改善することができる。
しかしながら、用途によっては耐食性の観点から鋼材としてステンレス鋼を使用することが想定される。ステンレス鋼の場合は特にろう付け温度が約580℃を超えると脆いAl−Fe−Si系合金層が発達しやすい。このため例えば、従来一般的なAl−Si系のろう材を用いて、従来と同様に高温でのろう付けを行った場合、脆いAl−Fe−Si系合金層の厚さが増大し、高い接合強度を安定して得ることが難しい。
また、ステンレス鋼の場合には特許文献1に開示されるような低融点のろう材を用いて、低温でのろう付けを試みても、接合自体が不可能であるという問題がある。これは、ステンレス鋼に特有の不動態皮膜が何らかの影響を及ぼしているものと考えられる。さらに、特許文献2に示されるようなN添加の手法はステンレス鋼に対して有効でないことがわかった。すなわち、N含有量の高いステンレス鋼にAlめっきを施す手法を採用しても、脆い合金層の成長を抑制することは困難である。これは、ステンレス鋼にはNとの親和力の大きいCrが多量に含有されているので、溶融Alめっき層の下にバリアーとなるN濃化層を形成することが困難となるからではないかと推察される。
したがって、鋼材としてステンレス鋼を使用した場合でも、鋼材とアルミニウム材料の間のろう付け接合界面における耐久性を十分に確保できるろう付け技術の確立が強く求められている。
一方、最近ではパワーモジュールなどの半導体基板の放熱板として、安価かつ薄肉の鋼板素材を適用しようという試みがなされている。
図1に一般的なパワーモジュールの構成例を模式的に示す。半導体素子1を搭載する半導体基板2は、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスからなる絶縁基板4の表面に銅またはアルミニウムの導体層3が接合されており、その上に半導体素子1が取り付けられる。絶縁基板4の裏面(半導体素子1と反対側の面)には熱伝導性の良好な銅またはアルミニウムからなる裏面導体層5が接合されている。半導体基板2の裏面導体層5は、ろう付けにより放熱板6と接合される。放熱板6は例えばヒートシンク7に取り付けられる。
絶縁基板4のセラミックスは放熱板6の金属材料に比べ熱膨張率が小さいため、絶縁基板4に拘束されている裏面導体層5の見かけの熱膨張率は放熱板6よりも小さい状態となっている。したがって、電子部品として使用されるときの繰り返しの昇温・降温によって接合界面10には双方の熱膨張率の差に起因した応力が繰り返し付与され、接合界面10での耐久性が問題となることがある。接合界面10に生じるこのような応力を緩和するためには、放熱板6をできるだけ熱膨張率の小さい金属材料で構成することが有利となる。このため、例えば熱膨張率が小さく熱伝導性も比較的良好なCu−Mo合金板を2枚の銅板の間に挟んだ構造の放熱板材料が採用されることもある。しかし、この種の放熱板材料は非常に高価であるという欠点がある。
安価で、かつ熱膨張率の小さい金属材料として、マトリクスがフェライト相である鋼材を挙げることができる。鋼材は銅やアルミニウムと比べ熱伝導性には劣るが、発明者らの検討によれば板厚を薄くすることで放熱板に要求される熱伝導特性を満たすことが可能であると考えられる。しかしながら、例えば裏面導体層5がアルミニウム材料である場合、放熱板6に鋼材を用いると、接合界面10に生じる脆い合金層によって接合界面10での耐久性が不十分となることが懸念される。放熱板用途に鋼材を適用する場合、耐食性の良好なステンレス鋼を採用することが想定される。ステンレス鋼を用いるとアルミニウム材料とのろう付け接合界面における耐久性を改善することが一層難しくなることは前述の通りである。
本発明はこのような現状に鑑み、鋼材とアルミニウム材料とのろう付けにおいて、たとえ鋼材がステンレス鋼であっても、昇温・降温を繰り返した場合の接合界面での耐久性を安定して顕著に向上させることができる手法を提供しようというものである。
上記目的は、Alめっき鋼材とアルミニウム材料を、Mg含有量が0.3〜4質量%であり融点が550℃未満であるAl−Cu−Si系合金組成のろう材を用いてろう付けした接合構造であって、鋼材側から順に、鋼素地、Al−Fe−Si系合金層、Al素地により構成され、前記Al素地中にはCu−Al合金の晶出相またはそれに由来するCu濃化相、Si濃化相、およびMg濃化相が存在し、前記Al−Fe−Si系合金層は下記(1)および(2)の条件を満たすものである鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造によって達成される。
(1)Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下であること
(2)Al−Fe−Si系合金層は、Cu濃度が異なる2種類のAl−Fe−Si系合金の相が混在した構成を有するものであること
上記のろう付け接合構造は、例えば半導体基板と放熱板との接合に適用できる。すなわち本発明では、前記アルミニウム材料が半導体基板の素子搭載面と反対側の面を構成する部材であり、前記鋼材が半導体基板と接合される放熱板である前記のろう付け接合構造が提供される。
このようなろう付け接合構造を構築するために手法として、本発明では、Si:5〜13質量%を含有する溶融Alめっき層を表面に有する鋼材と、アルミニウム材料を、それら双方の材料間にMgを0.3〜4質量%の範囲で含有する融点550℃未満のAl−Cu−Si系ろう材が介在する状態で、530℃以上かつろう材の融点以上、580℃以下の温度の炉中に装入してろう材を溶融させ、ろう付け接合部の鋼素地表面に成長するAl−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下となるように上記温度範囲における保持を終了し冷却過程に移行させる、鋼材とアルミニウム材料の真空ろう付け方法が提供される。ここでいう「真空ろう付け」は上記保持温度における雰囲気の圧力を1×10-2Pa以下として行うろう付けである。「Al−Fe−Si系合金層の平均厚さ」は、ろう付け熱処理終了後(上記保持温度から常温まで冷却された時点)におけるAl−Fe−Si系合金層の平均厚さ、すなわち、ろう付け後の材料で観察されるAl−Fe−Si系合金層の平均厚さである。
前記の鋼材としてはステンレス鋼を採用することができる。
本発明によれば、鋼材とアルミニウム材料のろう付けにおいて、その接合界面に両材料の熱膨張率の相違に起因した応力が繰り返し付与された場合でも高い耐久性を示す接合構造が安定して得られるようになった。鋼材としてはステンレス鋼を使用することもでき、また真空ろう付けにも対応可能である。したがって本発明は、鋼材とアルミニウム材料との間で熱伝達を行う各種部材に広く適用できるものである。
〔鋼材〕
本発明では鋼材としては「Alめっき鋼材」を使用する。鋼材の表面にAlめっき層が存在することにより、ろう材との反応性が向上し、ろう付け温度の低減が可能となる。
Alめっき層は、Siを5〜13質量%含有するAl−Si合金浴に鋼材を浸漬することによって得られる溶融Alめっき層とすることが好ましい。
図2に、溶融Alめっき鋼材のめっき層を含む断面のSEM写真を例示する。この例は母材として板厚0.8mmのSUH409を用いたものである。めっき浴組成はAl−9質量%Siであり、Siの残部はAlと不可避的不純物である。めっき層の鋼素地近傍には反応層が形成されている。この反応層はめっき浴のAlおよびSiと母材のFeが反応して形成されたものであり、母材がステンレス鋼の場合はこの反応層が成長しやすい傾向にある。ただし、めっき層の組成は浴組成とほぼ同じになることが確認されている。ろう付けを行うと、Alめっき層および反応層は溶融したろう材と反応し、鋼素地近傍には新たな反応層(後述のAl−Fe−Si系合金層)が形成されることになる。
溶融Alめっき浴中にSiを含有させることにより融点が低下し、めっき浴温を下げることができる。また形成されるAlめっき層の融点も低下することから、ろう付け時にろう材との反応性も良好となる。このような効果を十分に得るためにはAlめっき層中のSi含有量を5〜13質量%とすることが好ましく、7〜11質量%の範囲に管理しても構わない。母材として「鋼板」を使用する場合、一般的な連続溶融めっきラインを用いて製造される溶融Alめっき鋼板が好適な対象となる。Alめっき付着量は鋼板片面あたり例えば15〜150g/m2とすれば良く、30〜100g/m2とすることがより好ましい。
母材の鋼は、溶融Alめっきを施すことが可能な種々の鋼種を適用することができ、用途に応じて選択すればよい。耐食性が要求される用途に対してはステンレス鋼を採用することが望ましい。「ステンレス鋼」はJIS G0203:2000の番号4201に示されるようにCr含有量10.5質量%以上の鋼であるが、製造性やコストを考慮するとCr含有量は32質量%以下の範囲とすることが望ましい。フェライト系鋼種はオーステナイト系鋼種よりも熱膨張率が小さいことから、例えば半導体基板を接合する放熱板の用途ではフェライト系ステンレス鋼を適用することが望ましい。アルミニウム材料自体の熱膨張率にできるだけ近い鋼材を適用したい場合はオーステナイト系ステンレス鋼が有利となる。
フェライト系ステンレス鋼の成分組成を例示すると、C:0.12%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10.5〜32%とくに11〜20%であり、必要に応じてMo:3%以下、Cu:1%以下、Ti+Nb+Zrの合計:0.8%以下、Ni:0.6%以下、B:0.1%以下、V:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を挙げることができる。既存の規格鋼種としては、例えばJIS 4305:2005の表4や、JIS G4312−1991の表3に記載されるフェライト系鋼種を採用することができる。
オーステナイト系ステンレス鋼の成分組成を例示すると、質量%で、C:0.12%以下、Si:4%以下とくに1%以下、Mn:5%以下とくに2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜28%とくに8〜14%、Cr:15〜32%とくに16〜26%、N:0.3%以下であり、必要に応じてMo:7%以下とくに3%以下、Cu:4%以下とくに2%以下、Ti+Nb+Zrの合計:0.8%以下、B:0.1%以下、V:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を挙げることができる。既存の規格鋼種としては、例えばJIS 4305:2005の表2や、JIS G4312−1991の表2に記載されるオーステナイト系鋼種を採用することができる。
〔アルミニウム材料〕
アルミニウム材料は、純Alや、マトリクスがAl相である種々のAl合金(Al含有量80質量%以上、好ましくは85質量%以上)が適用対象となる。既存の規格材料としては、JIS H4000に規定される種々のもの(1000系〜8000系)が採用できる。
〔ろう材〕
ろう材は、融点が550℃未満のものを使用する。540℃未満のものがより好ましい。アルミニウム合金用の従来一般的なろう材としてはAl−Si系のものが知られており、例えばSi:約12原子%を含む組成のものが主流である。しかし、Al−Si系は融点が570℃を超えて高く、Al−Fe−Si系合金層の厚さをできるだけ薄くすることが重要となる本発明では使用できない。
種々検討の結果、本発明ではCuを含有するAl−Cu−Si系合金で、融点が550℃未満となる組成のろう材を使用する。具体的にはAl−Cu−Si三元共晶点のAl−26.7質量%Cu−5.3質量%Si組成(共晶点温度;約524℃)またはこれに近い組成であって融点が550℃未満好ましくは540℃未満となる範囲の組成を採用する。ただし、フラックスを使用しない真空ろう付けに供する場合は、上記のAl−Cu−Si系合金にMgを4質量%以下の範囲で添加した組成のものを適用することが好ましい。被接合材であるAlめっき鋼材およびアルミニウム材料の表面は安定なAl酸化物に覆われている。ろう材中に配合されるMgはろう材が溶融したときにAl酸化物の還元剤として働き、フラックスを使用しなくてもAlめっき鋼材およびアルミニウム材料との反応性を確保することができる。このような作用を十分に引き出すためにはろう材中のMg含有量を0.3質量%以上とすることが望ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましい。ただし、Mgをあまり多量に含有させる必要はなく、4質量%以下の範囲で調整すればよい。例えば2.5質量%以下の範囲に管理しても構わない。Mgを含有させることにより、ろう材の融点は若干変動することがあるが、Al、Cu、Siの配合比が前記の共晶組成またはそれに近い組成であれば融点が550℃未満好ましくは540℃未満となるMg含有Al−Cu−Si系ろう材を得ることが十分可能である。
〔ろう付け接合構造〕
Alめっき鋼材とアルミニウム材料を上記Al−Cu−Si系ろう材を用いてろう付け接合すると、ろう付け部の構造は、鋼材側から順に、「鋼素地」、「Al−Fe−Si系合金層」、「Al素地」となる。Al素地は、アルミニウム材料が元から存在していた領域と、鋼材のAlめっき層、ろう材およびアルミニウム材料が反応して形成された領域からなるが、それら双方の領域の境界は必ずしも明瞭ではない。本発明のろう付け接合構造においては多くの場合、Al−Fe−Si系合金層に近い部分には通常、Cu−Al合金の晶出相またはそれに由来するCu濃化相が残存している。また、Si濃化相やMg濃化相も存在する。本明細書では、このような「Al相ではなくAl−Fe−Si系合金の相でもない相」を「異相」と呼んでいる。ろう付け接合部において異相が存在する領域、すなわち、ろう付け時に溶融凝固した部分であることが明らかである領域についても、素地はAl相であり、このAl相はアルミニウム材料が元から存在していた部分のAl相と明瞭な境界を有しないことから、本明細書ではこれら異相が存在する領域も「Al素地」に含めている(後述図4〜図6のSEM像参照)。特に、ろう材の使用量が比較的少ない場合やろう付け時間が比較的長い場合には、凝固組織に由来する異相の大部分が拡散により消失しており、溶融凝固した部分を把握することが一層困難となる。なお、Al相に固溶されるろう材由来のCuの濃度は、Al−Fe−Si系合金層から遠ざかるにしたがって徐々に減少する傾向にある。
発明者らの検討によれば、上記のような「鋼素地」、「Al−Fe−Si系合金層」、「Al素地」により構成される鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合部において、Al−Fe−Si系合金層は他の部分と比較して脆く、ろう付け接合部での破断はAl−Fe−Si系合金層の内部に生じるクラックによって引き起こされることがわかった。発明者らはさらに詳細な検討の結果、このAl−Fe−Si系合金層の平均厚さを15μm以下とすることによって昇温・降温を繰り返したときのろう付け接合部における耐久性が顕著に改善されることを見出した。Al−Fe−Si系合金層の平均厚さを10μm以下とすることがより効果的である。
図3に、本発明のろう付け接合構造における断面のSEM写真を例示する。これは後述実施例における試験No.6の例である。鋼素地表面に(A)と表示したA相と(B)と表示したB相(Aよりも黒っぽく見える相)が混在する層が形成されている。分析の結果、A相、B相ともAl−Fe−Si系合金層であるが、A相中にはB相中よりもCuが多く存在する。また、鋼材がステンレス鋼である場合には、A相中にはB相中よりもCrが多く存在する。これらの相の近傍には白っぽく見える相が観察されるが、これはCu−Al合金の晶出相またはそれに由来するCu濃化相である。Al−Fe−Si系合金層の平均厚さは、図3のような断面の組織観察を行い、鋼素地表面に沿う方向(図3の写真では横方向)の一定距離Lの観察領域に観測されるA相とB相の合計面積を算出し、これを距離Lで除することにより求めることができる。この場合、A相またはB相に接しているCu−Al合金の晶出相またはそれに由来するCu濃化相や、その他の異相は、Al−Fe−Si系合金層の構成要素ではないので、Al−Fe−Si系合金層の平均厚さの測定においては無視する。観察される相がA相であるか、B相であるか、あるいはその他の相であるかは、EDX等を用いた微視的分析などによって特定することができる。A相、B相それぞれの面積は画像処理によって定めることが可能である。
Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下と薄い場合には、通常多くの場合、A相とB相が混在する組織状態となる。そして、Al−Fe−Si系合金層とAl素地中のAl相の界面は、主としてB相の晶出形態を反映した凹凸形態を呈している。Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下好ましくは10μm以下と薄いことだけでも、Al−Fe−Si系合金層中での割れの発生および伝播は大幅に軽減されると考えられる。それに加え、Al−Fe−Si系合金層が種類の異なるA相とB相の複相構造を有し、しかもAl相との界面が凹凸形態を呈することによって、Al−Fe−Si系合金層がさらに強化され、昇温・降温の繰り返しに対する耐久性がより向上するものと考えられる。
ろう付け温度での保持中には、溶融したろう材が周囲の固相と反応するので、液相の組成は三元共晶組成からずれて融点が上昇し、ろう付け温度での保持時間がある程度長い場合には、その保持時間中に液相が消失するものと考えられる。そして、保持時間が長いほど原子の拡散が進行し、凝固組織は形を失っていく。発明者らの検討によれば、この原子の拡散に伴ってAl−Fe−Si系合金層の厚さが増大し、Cu濃度が相対的に高いA相がB相を吸収して、やがてAl−Fe−Si系合金層はほとんどA相のみで構成されるようになる。このような状態になると、Al−Fe−Si系合金層の内部で粗大な割れが生じやすい。詳細な検討の結果、Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μmを超えるようになる前にろう付け温度での保持を終了し、冷却過程に移行することによって、粗大な割れが生じやすいAl−Fe−Si系合金層の形成が回避される。Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが10μmを超えるようになる前に冷却過程に移行することがより好ましい。Al−Fe−Si系合金層に占めるB相の割合は3〜70体積%程度であることが好ましい。なお、液相が消失するまでの時間は、保持温度およびろう材の使用量(生成する液相の量)に依存すると考えられるが、予備実験によりろう付け条件に応じたデータを収集しておくことによって、Al−Fe−Si系合金層の平均厚さを15μm以下好ましくは10μm以下にコントロールすることができる。
〔ろう付け方法〕
ろう付けの方法は、
(i)ろう付け温度を530℃以上かつろう材の融点以上、580℃以下の温度範囲とすること、
(ii)前記のAl−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下好ましくは10μm以下となるように短時間でろう付け温度での保持を終了し、冷却過程に移行させること、
を除き、従来一般的な方法に従えばよい。ろう付け温度は570℃以下あるいは570℃未満に管理することが一層好ましい。真空ろう付けの場合は、Mgを含有する前記ろう材を適用し、上記(i)(ii)の条件を採用した上で、従来公知の真空ろう付け技術を利用すればよい。
鋼材として、フェライト系ステンレス鋼SUH409をめっき原板とする溶融Alめっき鋼板を用意した。板厚は0.8mm、片面あたりのめっき付着量は120g/m2、めっき層組成はAl−9質量%Siである。
アルミニウム材料として、JIS H4000、合金番号1050に相当するAl:99.5質量%以上のアルミニウム合金板材を用意した。板厚は5mmである。
ろう材として、Al−27質量%Cu−4.5質量%Si−2質量%Mg組成の合金シートを用意した。シート厚さは0.1mm、融点は約535℃である。
鋼材、アルミニウム材料、ろう材からそれぞれ25mm×25mm寸法の試料を切り出し、ステンレス鋼製の水平なトレイ上に、鋼材(0.8mm厚)、ろう材(0.1mm厚)、アルミニウム材料(5mm厚)の順で積み重ねて積層体とした。この積層体を水平に保った状態でトレイごと550℃の炉中に装入し、雰囲気圧力1×10-3Paで真空ろう付けに供した。積層体表面に取り付けた熱電対により材料温度をモニターし、材料温度が530℃に到達した時点からの在炉時間を「ろう付け保持時間」とした。ろう付け保持時間を2〜20分の種々の段階に設定し、所定のろう付け保持時間が経過した時点で積層体を炉外に出して冷却過程に移行させた。このようにして、ろう付け保持時間の異なる種々の「ろう付け接合体」を得た。
各保持時間のろう付け接合体について、ろう付け接合部の断面組織を観察し、鋼素地表面に沿う方向の一定距離Lの観察領域に観測される前述のA相とB相の合計面積を算出し、これを距離Lで除することにより、Al−Fe−Si系合金層の平均厚さを求めた。また、Al−Fe−Si系合金層(A相とB相の合計面積)に占めるB相の割合を算出し、B相の割合が3〜70体積%であるものを○、3体積%未満のものを×と評価した。○評価のものは、A相+B相の複相構造によるAl−Fe−Si系合金層の耐久性向上に効果的であると考えられる。
また、各保持時間のろう付け接合体について、「−40℃の気相中で30分保持 → 130℃の気相中で30分保持」を1サイクルとする冷熱衝撃試験を100サイクル実施し、試験後のろう付け接合部の断面組織を観察した。Al−Fe−Si系合金層に生じた割れの程度により、以下の基準で冷熱衝撃特性を評価した。
◎:割れが認められない
○:割れが認められるが、局部的な微小な割れであり、上記冷熱サイクルでの伝播性はほとんどないと考えられる
△:発生した微小割れが伝播して繋がったと考えられる割れが部分的に認められるが、上記冷熱サイクルで連続的な割れに進展する可能性はほとんどないと考えられる
×:発生した割れが伝播して繋がったと考えられる連続的な割れが認められ、この割れは材料破断を招く恐れがある
上記において、△評価以上であれば、昇温・降温の繰り返しを伴う多くの伝熱用途において使用可能であると判断されることから、△評価以上を合格と判定した。○評価以上であれば、昇温・降温の繰り返しを伴う多くの伝熱用途において高い信頼性が得られる。
これらの結果を表1に示す。また参考のため、図4、図5および図6に、それぞれ試験No.6、No.5およびNo.2について、冷熱衝撃試験前のろう付け接合部断面のSEM像およびEPMAによる元素検出結果を示す。
表1からわかるように、Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下となるようにろう付け保持を終了し冷却過程に移行したものは、昇温・降温の繰り返しによる冷熱衝撃特性が良好である。
一般的なパワーモジュールの構成例を模式的に示した図。 溶融Alめっき鋼材のめっき層を含む断面のSEM写真。 本発明のろう付け接合構造における断面組織の一例を示したSEM写真。 試験No.6(本発明例)について、ろう付け接合部断面のSEM像およびEPMAによる元素検出結果を示した図。 試験No.5(本発明例)について、ろう付け接合部断面のSEM像およびEPMAによる元素検出結果を示した図。 試験No.2(比較例)について、ろう付け接合部断面のSEM像およびEPMAによる元素検出結果を示した図。
符号の説明
1 半導体素子
2 半導体基板
3 導体層
4 絶縁基板
5 裏面導体層
6 放熱板
7 ヒートシンク
10 接合界面

Claims (5)

  1. Alめっき鋼材とアルミニウム材料を、Mg含有量が0.3〜4質量%であり融点が550℃未満であるAl−Cu−Si系合金組成のろう材を用いてろう付けした接合構造であって、鋼材側から順に、鋼素地、Al−Fe−Si系合金層、Al素地により構成され、前記Al素地中にはCu−Al合金の晶出相またはそれに由来するCu濃化相、Si濃化相、およびMg濃化相が存在し、前記Al−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下であり、そのAl−Fe−Si系合金層はCu濃度が異なる2種類のAl−Fe−Si系合金の相が混在した構成を有するものである鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造。
  2. 鋼材がステンレス鋼である請求項1に記載の鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造。
  3. 前記アルミニウム材料が半導体基板の素子搭載面と反対側の面を構成する部材であり、前記鋼材が半導体基板と接合される放熱板である請求項1または2に記載の鋼材とアルミニウム材料のろう付け接合構造。
  4. Si:5〜13質量%を含有する溶融Alめっき層を表面に有する鋼材と、アルミニウム材料とを、それら双方の材料間にMgを0.3〜4質量%の範囲で含有する融点550℃未満のAl−Cu−Si系ろう材が介在する状態で、530℃以上かつろう材の融点以上、580℃以下の温度の炉中に装入して真空中でろう材を溶融させ、鋼素地表面に形成されるAl−Fe−Si系合金層の平均厚さが15μm以下となるように上記温度範囲における保持を終了し冷却過程に移行させる、鋼材とアルミニウム材料のろう付け方法。
  5. 鋼材がステンレス鋼である請求項に記載の鋼材とアルミニウム材料のろう付け方法。
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