次に、本発明の多数個取り配線基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、図1(b)は(a)のP1部分を拡大して示す要部拡大断面図であり、図1(c)は(a)に示す多数個取り配線基板を平面視したときの要部を示す要部拡大平面図である。これらの図において、11は母基板、12は配線基板領域、13は配線導体、14はめっき用接続導体、15は母基板11を分割するための分割溝、16は電子部品(図示せず)を搭載し収容するための凹部、17は配線基板領域12の境界である。なお、図1(c)においては、配線導体13およびめっき用接続導体14の要部を見やすくするために、これらを覆う母基板11の一部をカットして示している。
母基板11は、例えば酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミック材料からなる複数のセラミック絶縁層(符号なし)が積層されて形成されている。また、母基板11には、それぞれが個片の配線基板(図示せず)となる配線基板領域12が縦横の並びに配列されている。図1に示す例において、配線基板領域12の上面には、電子部品を収容するための凹部16が形成されている。
この凹部16は、凹部16の底面(符合なし)となる部分が上面に縦横の並びに配列された平板状の基部19と、この基部19の上面に積層された、それぞれが凹部16の底面を取り囲む側壁部分(符号なし)となる複数の枠状部が縦横の並びに配列されてなる枠部18とにより形成されている。
母基板11は、例えば、各セラミック絶縁層が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化カルシウム等の原料粉末を有機溶剤,バインダ等とともにシート状に成形して複数のセラミックグリーンシート(グリーンシート)を得て、このグリーンシートの所定位置に凹部16となるような打ち抜き加工を施した後、打ち抜き加工を施したグリーンシートが上層になるように上下に積層し、焼成することにより作製される。積層されたグリーンシートのそれぞれが、焼成後に、母基板11のセラミック絶縁層になる。
なお、グリーンシートを焼成して得られる、母基板11を構成するセラミック絶縁層の厚みは、例えば酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミックスの場合において50〜300μm程度である。
母基板11には、それぞれが個片の配線基板となる配線基板領域12が縦横の並びに配列されている。また、この図1に示す例においては、母基板11の外周部に、配線基板領域12を取り囲む枠状の捨て代領域(符号なし)が設けられている。捨て代領域は、例えば多数個取り配線基板の取り扱いを容易とすること等のために設けられている。
各々の配線基板領域12の表面(図1に示す例では上面および下面)には配線導体13が形成されている。この配線導体13は、配線基板領域12の上面の一部である凹部16の内側から配線基板領域12の下面にかけて電気的に導出するように形成されており、凹部16の内側に形成された部位に、電子部品がボンディングワイヤやはんだ等の導電性の接続材(図示せず)を介して電気的に接続される。
なお、配線導体13のうち配線基板領域12の上面に形成された部分と下面に形成された部分との間には、両者を電気的に接続するために、配線導体13の一部としてセラミック絶縁層を厚み方向に貫通する貫通導体(図示せず)等が配置されている。
配線導体13は、個片の配線基板において、凹部16に収容される電子部品と電気的に接続され、この電子部品を外部電気回路(図示せず)に電気的に接続する導電路として機能する。配線導体13の外部電気回路に対する電気的な接続は、例えば、電子部品と電気的に接続された配線導体13のうち配線基板(配線基板領域12)の下面に形成された部分を、外部電気回路に錫−鉛系はんだや錫−銀系はんだ等のはんだを介して接合することにより行なわれる。
配線導体13の露出する表面には、酸化腐食の防止や、ボンディングワイヤのボンディング性,はんだの濡れ性等の特性の向上のために、ニッケルや金,パラジウム,銅等のめっき金属層(図示せず)が被着される。めっき金属層の被着は、めっき金属層としての特性を安定させることが容易であることや、生産性,経済性が良好であることから、電解めっき法により行なわれる。
なお、このようなめっき金属層は、例えば、配線導体13がタングステンやモリブデン,マンガンまたは銅からなる場合に、順次被着された、厚さが約2〜12μmのニッケルめっき層と、厚さが約0.5〜2μmの金めっき層とにより構成される。また、これらのめっき層に加えてパラジウムめっき層や銅めっき層等をニッケルめっき層と金めっき層との間に介在させたり、ニッケルめっき層等に熱処理を施したりする場合もある。
また、多数個取り配線基板は、配線基板領域12の境界17を越えて配線導体13同士を接続するめっき用接続導体14を備えている。めっき用接続導体14は、複数の配線基板領域12の配線導体13同士を互いに電気的に接続させて、複数の配線基板領域12の配線導体13にまとめて電解めっき法によりめっき金属層を被着させるためのものである。
すなわち、めっき用接続導体14を介して、複数の配線基板領域12の間で配線導体13同士が互いに電気的に接続されているので、例えば、めっき用接続導体14の一部を多数個取り配線基板の外周部分(捨て代領域)等に引き出して、この引き出した部分に外部の電源からめっき用の治具(いわゆるラック等)を介して電流を供給することにより、複数の配線基板領域12の配線導体13にまとめてめっき用の電流を供給することができる。
めっき用接続導体14は、セラミック絶縁層の層間において配線導体13との接続が容易にできるように、また、分割後の個片の配線基板において不要となるめっき用接続導体14にめっきが被着されないようにすること等のために、母基板11の内部(母基板11を構成するセラミック絶縁層の層間)に形成されている。
これらの配線導体13およびめっき用接続導体14は、タングステンやモリブデン,銅,銀等の金属材料からなり、例えば、あらかじめ母基板11となるグリーンシートの各配線基板領域12の所定位置に複数の貫通孔を形成しておき、タングステン等の金属ペーストをグリーンシートの表面および貫通孔内にスクリーン印刷法等で印刷塗布または充填することにより形成される。
金属ペーストは、金属(例えばタングステン)の微粒子とバインダとの混合物を混練することにより作製される。この金属ペーストをセラミック絶縁層となるグリーンシートに印刷塗布または充填した後、高温で焼成することにより配線導体13やめっき用接続導体14が形成される。なお、金属微粒子は、例えば、形状が、球状,フレーク状,突起状または不定形であり、平均粒径が数μm程度である。
また、母基板11は、各配線基板領域12の境界17(配線基板領域12同士の間および配線基板領域12と捨て代領域との間)に沿って分割溝15が形成されており、この分割溝15に沿って母基板11を分割することにより、各配線基板領域12が個片の配線基板となる。
分割溝15は、図1に示す例においては、母基板11の上下面に、それぞれ平面視で同じ位置となるように(上下で向かい合って)形成されて、母基板11の分割溝15部分における分割(破断)をより容易なものとしている。また、この分割溝15は、母基板11を分割するための応力を効果的にその先端部に集中させて亀裂の発生を容易とするために、V字状の縦断面形状である。このような分割溝15は、母基板11となるグリーンシートの積層体の上面および下面に、配線基板領域12の境界17に沿って、縦断面形状がV字状のカッター刃を切り込ませること等により形成される。この場合、分割溝15の深さは、カッター刃の切り込み深さにより調整することができる。また、分割溝15の先端部(底部)の角度は、カッター刃の先端部の角度(カッター刃の両側面のなす角度)により調整することができる。
本発明の多数個取り配線基板において、めっき用接続導体14は、配線基板領域12の境界17における厚みが、配線基板領域12内における厚みよりも薄い。これにより、母基板11が分割される分割溝15部分において、母基板11の厚みに対してめっき用接続導体14の厚みが大きくなることが抑制される。つまり、母基板11を分割溝15に沿って分割する際に、めっき用接続導体14は、比較的薄く形成された部分において破断されることになる。
そのため、母基板11を分割する(破断させる)際に、めっき用接続導体14に作用する応力が抑制され、めっき用接続導体14のうち配線基板領域12の境界17から配線基板領域12内に入り込んだ部分において破断が生るようなことが抑制される。よって、めっき用接続導体14にえぐれが発生することを抑制して分割することが可能な多数個取り配線基板を提供することができる。
ここで、めっき用接続導体14となる金属ペーストは、内部に金属微粒子の凝集や分散不良が生じる可能性があるため、高温で焼成した際に金属微粒子の焼結密度が低い部分が生じる可能性がある。金属微粒子の焼結密度が低い部分は、応力が作用したときに破断の起点となりやすいので、このような部分がめっき用接続導体14のうち配線基板領域12の境界17から配線基板領域12内に入り込んだ部分に存在し、これに大きな応力が作用したときに、めっき用接続導体14にえぐれが発生しやすくなる。これに対して、めっき用接続導体14の配線基板領域12の境界17における厚みが、配線基板領域12内における厚みよりも薄いことにより、めっき用接続導体14について、分割溝15が形成された部分である配線基板領域12の境界17において破断されやすくなる。そのため、配線基板領域12内においてめっき用接続導体14に大きな応力が作用することが抑制され、この応力によるめっき用接続導体14のえぐれの発生が抑制される。
なお、めっき用接続導体14の厚みは、ちょうど配線基板領域12の境界17に相当する線状の部分だけではなく、この境界17からそれに隣接する部分にかけて、一定の幅(例えば、分割溝15の開口面の幅程度)で薄くなるようにしている。このようにしておけば、母基板11の実際に破断される部位が配線基板領域12の境界17から配線基板領域12内に多少ずれたとしても、母基板11の分割時にめっき用接続導体14にえぐれが発生することを効果的に防止することができる。
配線基板領域12の境界17におけるめっき用接続導体14の厚みを配線基板領域12内における厚みよりも薄くするには、例えば、グリーンシートの配線基板領域12内に配線導体13およびめっき用接続導体14の一部となる金属ペーストを、境界17を除く位置にスクリーン印刷法等で印刷塗布しておき、その後、境界17に、配線基板領域12に印刷した金属ペーストよりも厚みが薄くなるように、めっき用接続導体14となる金属ペーストを印刷するようにすればよい。
この他の方法としては、配線基板領域12の境界17を含めて同じ程度の厚みでめっき用接続導体14となる金属ペーストを印刷しておき、境界17においてその金属ペーストを局所的に加圧して厚みを薄くする等の方法を挙げることができる。
なお、配線導体13の厚みは、例えば、図1に示したように、母基板11が酸化アルミニウム質焼結体からなる3層のセラミック絶縁層が積層されてなり、配線導体13がタングステンまたはモリブデンからなる場合であれば、電子部品と外部電気回路との間の電気的な接続における抵抗を低く抑えること等のために、15〜25μm程度とされている。また、これに合わせて、めっき用接続導体14の配線基板領域12内における厚みも15〜25μm程度である。
これに対して、めっき用接続導体14の配線基板領域12の境界17における厚みは、配線基板領域12内における厚みの1/3またはそれよりも少し厚い程度とすればよく、例えば、上記のような多数個取り配線基板の場合であれば約5〜10μm程度とすればよい。このようにめっき用接続導体14の厚みを比較的薄くすることにより、例えばセラミック絶縁層の厚みが約50μm程度と薄いような場合でも、母基板11の厚みに対してめっき用接続導体14の厚みの割合が大きくなることが抑制され、めっき用接続導体14にえぐれが発生することを効果的に抑制することができる。
具体的に一例を挙げると、母基板11が、酸化アルミニウム質焼結体からなる厚みが50μmのセラミック絶縁層が5層積層されてなり、平面視したときの外形寸法が約45mm×45mmの正方形状である場合に、これに、外辺の寸法が約2.5mm×2mmである長方形状の配線基板領域12が15個×19個の縦横の並びに配列されているとき、タングステン(微粒子の焼結体)からなるめっき用接続導体14の厚みを、配線基板領域12内において約18〜22μm,配線基板領域12の境界17において約6〜10μmとした多数個取り配線基板では、100個(個片の配線基板として28500個)の検査においてめっき用接続導体14にえぐれの発生が認められなかった。なお、母基板11の外周部には、配線基板領域12を取り囲む枠状の捨て代領域を設け、捨て代領域と配線基板領域12との間にも分割溝15を設けておいた。また、えぐれの有無は、めっき用接続導体14の破断して露出した部分を倍率20倍に拡大して目視で確認した。
これに対して、他の条件が同じで、配線基板領域12の境界17におけるめっき用接続導体14の厚みを約18〜22μmとした従来技術の多数個取り配線基板では、約2%の個片の配線基板において、めっき用接続導体14にえぐれの発生が認められていた。
また、図1に示す例においては、めっき用接続導体14は、配線基板領域12の境界17における幅が、配線基板領域12内における幅よりも広くなるように形成されている。このように、めっき用接続導体14について、配線基板領域12の境界17における幅を、配線基板領域12内における幅よりも広くなるように形成した場合には、めっき用接続導体14の幅を広くした分、めっき用接続導体14の断面積(めっき用の電流が流れる方向である長さ方向に対して直交する縦断面の面積)の減少を抑えることができる。そのため、めっき用接続導体14を介して配線導体13に供給されるめっき用の電流に対する抵抗の増加を抑制することができる。したがって、この場合には、めっき用接続導体14にえぐれが発生することを抑制することができるとともに、配線導体13に所定の厚さでめっき金属層を被着させることがより容易な多数個取り配線基板とすることができる。
なお、配線基板領域12の境界17におけるめっき用接続導体14の幅を広くする場合には、めっき用の電流の確保する上では、めっき用接続導体14の厚みが薄くなる程度に応じて広くして、めっき用接続導体14の断面積がほぼ一定になるようにするのがよい。例えば、めっき用接続導体14について、配線基板領域12内における厚みをaとし、幅をbとしたとき、厚みを配線基板領域12の境界17において1/3(1/3×a)にする場合には、幅を3×bに設定すれば、断面積はa×bで一定に保たれる。この場合、図1に示す例のように、めっき用接続導体14の厚みが、厚い部分から薄い部分にかけて徐々に減少しているような場合には、これに応じて幅を徐々に増加させるようにすればよい。
このようなめっき用接続導体14を形成するためには、例えば、前述しためっき用接続導体14となる金属ペーストの印刷の際に、厚みを薄くする部分におけるパターンの幅が所定の幅に広くなるようにした印刷用の版面を用いて印刷すればよい。
なお、この実施の形態の例において、分割溝15は、母基板11の厚みに対して、母基板11の上面側の分割溝15および下面側の分割溝15の合計の深さが30〜70%程度になるように形成されている。さらに、上面側の分割溝15と下面側の分割溝15とは平面視で同じ位置となる(平面視して重なる)ように形成されている。また、上面側の分割溝15の先端部(底部)における角度が下面側の分割溝15の先端部(底部)における角度よりも小さくなるように形成されている。これは、例えば母基板11を下面側が凹となるようにたわませて、上面側の分割溝15の底部から下面側の分割溝15の底部に向かって亀裂を進行させて母基板11を分割する際に、亀裂の進行方向が下面側の分割溝15から外れることを抑制するためである。このような多数個取り配線基板においては、母基板11の厚み方向におけるめっき用接続導体14の位置は、図1(b)に示したように、上面側の分割溝15に近くなるように形成することが望ましい。これは、亀裂の起点である上面側の分割溝15の底部とめっき用接続導体14との間の距離を近くすることにより、亀裂がめっき用接続導体14の厚みを薄くした部分からずれて進行することを防止する上で有効であるためである。
また、めっき用接続導体14は、図1に示す例では、配線基板領域12内における厚みが比較的厚い部分と、配線基板領域12の境界17における厚みが比較的薄い部分との間で、厚みが一定の割合で徐々に変化しているが、例えば、図2に示すような断面形状で厚みが急に(側面視で段状に)変化しているようなものでもよい。図2は、本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
このように、配線基板領域12の境界17に近い点でめっき用接続導体14の厚みが段状に変化した構造は、例えば、まず厚みが薄い部分に対応する厚みで、めっき用接続導体14の所定パターン全長にわたって金属ペーストを印刷した後、厚みが厚い部分のみに金属ペーストを追加して印刷すれば形成することができるので、印刷工程が容易であり、多数個取り配線基板の生産性を高める上で有効である。
また、本発明の多数個取り配線基板において、隣り合う配線基板領域12の配線導体13同士が、配線基板領域12の境界17において母基板11の厚み方向の異なる位置に配置された複数のめっき用接続導体14により互いに接続されている場合には、次のような効果を得ることができる。
すなわち、例えば図3に示すように、配線基板領域12の境界17においてめっき用接続導体14の厚みを薄くしたとしても、隣り合う配線基板領域12の配線導体13同士が複数のめっき用接続導体14により接続されているため、めっき用接続導体14の断面積(複数のめっき用接続導体14の合計の断面積)の減少を抑制することができる。そのため、めっき用接続導体14を介して配線導体13に供給されるめっき用の電流に対する抵抗の増加を抑制することができ、十分な電流を配線導体13に供給することができる。なお、図3(a)は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す要部拡大平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線における要部拡大断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。また、図3(a)においても図1(c)と同様に母基板11の一部をカットして示している。
また、この複数のめっき用接続導体14は、母基板11の厚み方向の異なる位置に配置されているので、配線基板領域12の境界17においてめっき用接続導体14が占める幅を小さく抑える上で有効である。そのため、この場合には配線基板領域12(個片の配線基板)の小型化に有効である。例えば、配線基板領域12の境界17において、配線導体13の高密度化や配線基板領域12の小型化によりめっき用接続導体14を配置するスペースが狭く、図1(c)に示した例のように、めっき用接続導体14の幅を広くすることが困難である場合において、上記の構成が有効である。もちろん、境界17に形成できる範囲でめっき用接続導体14の幅を広く形成するとともに、母基板11の厚み方向の異なる高さに設けてもよい。
なお、配線導体13同士を接続する複数のめっき用接続導体14を母基板11の厚み方向の異なる位置に配置するには、例えば、母基板11を構成するセラミック絶縁層に貫通導体20を形成し、この貫通導体20を介して、あるセラミック絶縁層の層間に配置しためっき用接続導体14を、それよりも上または下の層間に電気的に導出させ、この導出部分に他のめっき用接続導体14を接続させて配置するようにすればよい。つまり、上下の複数のめっき用接続導体14同士が、貫通導体20により互いに電気的に接続され、この互いに電気的に接続された複数のめっき用接続導体14が、それぞれ配線基板領域12の境界17を越えて配線導体13同士を電気的に接続する。
また、母基板11の厚み方向の異なる位置に配置されたこれらのめっき用接続導体14は、配線基板領域12の境界17において、平面視で互いに重ならないように設けても構わない。この場合には、めっき用接続導体14の厚みの分、母基板11の厚みが不均一になって母基板11の表面に凹凸を生じる、というような不具合を抑制する上で有効である。
また、例えば図4に示すように、分割後の配線基板において互いに電気的に独立させる必要がある複数の配線導体13にそれぞれ別々にめっき用接続導体14を接続するような場合には、それぞれの配線導体13同士を接続する複数のめっき用接続導体14を、互いに異なる層間に(いわゆる千鳥状に)配置するようにしてもよい。この場合には、隣接する配線導体13同士がめっき用接続導体14を介して短絡するようなことがより効果的に防止されて、個片の配線基板として所定の電気的特性をより確実に得ることができる。なお、図4は、図3に示した本発明の多数個取り配線基板の変形例を示す要部拡大断面図である。図4において図1および図3と同様の部位には同様の符号を付している。
また、本発明の多数個取り配線基板において、例えば図5に示すように、配線基板領域12の主面に凹部16が設けられており、めっき用接続導体14が、側面視で凹部16の底面より下方に配置されている場合には、次のような効果が得られる。
すなわち、めっき用接続導体14が凹部16の底面より下方に配置されているため、母基板11のうち凹部16の側壁部分を構成する枠部18の機械的強度が、セラミック絶縁層に比べて機械的強度の低いめっき用接続導体14の存在によって低下することを抑制することができる。そのため、母基板11を分割溝15に沿って分割する際に、母基板11に機械的な破壊が生じることをより効果的に抑制しながら、めっき用接続導体14にえぐれが発生することを効果的に抑制することができる。なお、図5は、本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。図5において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
つまり、母基板11のうち枠部18は、基部19に比べて幅が狭く、機械的な強度が低い傾向があるため、配線基板領域12の境界17を越えてめっき用接続導体14を内部に形成した場合には、枠部18としての剛性が低下して母基板11の機械的な破壊が発生しやすくなる可能性がある。特に、配線基板領域12が小型化すると、凹部16を形成する枠部18の枠部分における幅も狭くなって機械的な強度が低下する傾向があるため、上記のような問題が発生しやすくなる可能性がある。そのため、特にこのような小型化の際には、めっき用接続導体14を側面視で凹部16の底面より下方に配置することが好ましい。
また、この場合には、母基板11(枠部18)に上面から分割溝15が形成されているときに、基部19にめっき用接続導体14を形成することによって、めっき用接続導体14を断線しないように分割溝15の深さを基部19の上面(図5に示す例における凹部16の底面)の近くまで深くすることができる。そのため、分割溝15の深さを十分に確保して、母基板11の分割をより容易に行なうことができるという効果もある。なお、このように母基板11の上面側の分割溝15を深くした場合には、上面側の溝15の方が底部により大きな応力を集中させやすいので、母基板11を下面側が凹(上面側が凸)となるようにたわませて、上面側の分割溝15の底部から下面側の分割溝15の底部に向かって亀裂を進行させるようにすることが望ましい。
本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例として、図6に示すように、母基板11を構成する枠部18が1層のセラミック絶縁層からなり、基部19が2層の絶縁層からなる場合に、凹部16内に互いに電気的に独立した配線導体13が4つ(13a、13b、13c、13d)形成されている多数個取り配線基板について説明する。なお、図6(a)は本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す要部拡大平面図であり、図6(b)は(a)のA−A線における要部拡大断面図である。図6(a)および(b)では、母基板11に配列された多数の配線基板領域12のうち1つだけを示している。図6において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
この場合、長方形状の配線基板領域12の一方の短辺側の2つの配線導体13a、13bと接続されためっき用接続導体14は基部19の上側のセラミック絶縁層の層間(基部19と枠部18との間)に配置され、他方の短辺側の2つの配線導体13c、13dと接続されためっき用接続導体14は基部19の下側のセラミック絶縁層の層間に配置されている。ここで、配線導体13a、13b、13c、13dは凹部16の底面(基部19の上面)に配置されているため、この例では配線導体13c、13dが、それぞれ貫通導体20で基部19の下側のセラミック絶縁層の層間に配置されためっき用接続導体14と接続されている。なお、配線導体13a、13b、13c、13dは、それぞれ個片の配線基板に分割したときに互いに電気的に独立したものとする必要があるため、互いに異なるめっき用接続導体14により隣り合う配線基板領域12の間で接続されている。
この場合に、例えば基部19を3層以上のセラミック絶縁層からなるもの(図示せず)としておいて、そのうち2つ以上の層間にめっき用接続導体14を配置すれば、隣り合う配線基板領域12の配線導体13同士が複数のめっき用接続導体14により接続されている場合に、その複数のめっき用接続導体14を凹部16の底面より下方に配置することができる。この場合にも、母基板11のうち枠部18における分割時の機械的な破壊を効果的に抑制することができる。
このように製作された多数個取り配線基板について、個片の配線基板に分割した後、配線基板の凹部16に水晶振動子や半導体素子等の電子部品を収容するとともに、例えば、蓋体(図示せず)をろう付けや溶接(シームウエルド)等の接合方法で配線基板の上面に接合して凹部16を気密封止することにより、多数の配線基板のそれぞれに対応して多数の電子装置が作製される。
また、凹部16への電子部品の収容および気密封止は、個片の配線基板に分割する前に(多数個取り配線基板の状態で)行なうこともできる。この場合には、多数の電子装置が母基板11に形成された多数個取りの電子装置(図示せず)が作製され、この多数個取りの電子装置を分割溝15に沿って分割することにより多数の電子装置が製作される。
なお、本発明は、上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、種々の変形は可能である。例えば、母基板11は、各配線基板領域12に凹部16を有するものを例に挙げて説明したが、このような凹部16を有しない平板状のものであってもよい。