JP5227922B2 - 鞍乗り型車両のトルクダンパ装置 - Google Patents
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Description
また、上記構成において、前記歯車は、前記出力軸(31)に前記後輪(15)から前記出力軸(31)を逆回転するトルクが入力されたときに前記第2伝達部材(98)の方向への軸方向荷重が発生するヘリカルギアとし、前記軸方向荷重は前記弾性部材(99)の付勢力と同方向であるようにしてもよい。
また、変速機は、Vベルト式無段変速機であり、Vベルト式無段変速機の出力側には、遠心式クラッチからなる発進クラッチが配置されるようにすれば、Vベルト式無段変速機の急激なトルク変動をその出力側に配置されたトルクダンパで緩和することができ、変速機に急激な高トルクが発生することを抑制できる。また、発進クラッチを遠心式クラッチとすれば、取り回し時の後輪の引きずりを防止できる。
また、トルクダンパを変速機の出力軸上に支持すれば、後輪から伝達されるバックトルクの影響によるギアの摩耗を極力少なくすることができる。
また、トルクダンパを変速機の出力軸上に支持される皿ばねと、変速機の出力軸上に支持され、皿ばねの付勢力で摩擦係合する第1伝達部材および第2伝達部材とで構成すれば、部品点数が少なく、かつ、軸方向および径方向へ小さいトルクダンパを構成することができる。
また、歯車をヘリカルギアとし、出力軸に後輪からのバックトルクが入力された場合には歯車に軸方向荷重を発生させ、該軸方向荷重が皿ばねの付勢力をアシストすることで、皿ばねの荷重を低く設定することができ、皿ばねを小型化しトルクダンパの軸方向長さをコンパクトにすることができる。
また、トルクダンパを出力スプロケットに一体に形成すれば、メンテナンス性が向上し、また、出力スプロケット周辺の空きスペースを有効利用してトルクダンパを配置でき、エンジンの小型化が可能である。
なお、以下の説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印Fは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印Uは車体上方をそれぞれ示す。
図1は、本発明の実施形態を適用した自動二輪車1の側面図である。
この自動二輪車1の車体フレーム2は、車体前部のヘッドパイプ3と、同ヘッドパイプ3から後方へ斜め下向きに傾斜して延出する1本のメインフレーム4と、同メインフレーム4の後部に下方へ向けて延出固着される左右一対のピボットブラケット5と、メインフレーム4の後部でピボットブラケット5の固着位置の前付近から後方へ斜め上向きに延出して途中で屈曲して後端に至る左右一対のシートレール6と、ピボットブラケット5と上記シートレール6の中央部との間を補強する左右一対の補強フレーム7とを備えている。
また、クランクケース24の左側面後部には、エンジン20の出力軸31がその先端を露出させて軸支されている。この出力軸31の先端には、出力スプロケット(駆動スプロケットとも言う)32が取り付けられ、この出力スプロケット32と、後輪15に一体に設けられた従動スプロケット33との間にドライブチェーン34(図1参照)が巻回されてチェーン伝動機構が構成される。
つまり、この自動二輪車1は、チェーンドライブ式車両に構成され、このエンジン20の出力軸31の回転は、チェーン伝動機構を介して後輪15へ伝達される。なお、このチェーン伝動機構は、各スプロケット32、33の歯数比によって出力軸31と後輪軸との間の減速比(二次減速比)を設定する二次減速機構としても機能する。また、図中、符号35はチェーン伝動機構を覆うカバーである。
また、この自動二輪車1には、エンジン20を始動するキック式始動装置の一部を構成するキック部材(始動系部材)37がクランクケース24左側方に配設されている。すなわち、このキック部材37は、クランクケース24に先端を露出させて軸支されたキック軸38に取り付けられたキックアーム39と、このキックアーム39の先端部に回動自在に取り付けられたキックペダル40とを備え、運転者がキックペダル40を踏むことによってキック軸38を回転させてエンジン20を始動できる。
さらに、この自動二輪車1には、上記キック部材37によるキック式始動装置に加えて、エンジン始動用のスタータモータ41も配設されている。このスタータモータ41は、クランクケース24上面前部に取り付けられており、このスタータモータ41を作動させることでエンジン20を始動できる。すなわち、この自動二輪車1では、キック式およびスタータモータ式のいずれの方法でもエンジン20を始動することが可能に構成されている。
図2〜図4に示すように、エンジン20のシリンダ部22は、クランクケース24前面に連結されるシリンダブロック22Aと、シリンダブロック22A前面に連結されるシリンダヘッド22Bと、シリンダヘッド22Bの前面を覆うヘッドカバー22Cとを備えている。シリンダブロック22Aは、シリンダ本体(シリンダ主部)を構成する部分であり、ピストン21Aを摺動可能に保持するシリンダスリーブ22S(図3参照)と、このシリンダスリーブ22Sの外周を覆うシリンダ冷却機構を構成する冷却フィン(放熱フィン)22Fとを備えている。
同図に示すように、複数の冷却フィン22Fの外周面は、シリンダ側面視および平面視で締結ボルト42間を直線で結びシリンダ軸線L1方向に延伸する平面HL、HU、HB(図3、図2参照)に各々沿うように形成される。このため、複数の冷却フィン22Fからなるシリンダ冷却機構は、締結ボルト42間を直線で結びシリンダ軸線L1方向に延伸する略平面状に形成され、シリンダ側面(シリンダブロック22A側面)を平面形状にしている。
ここで、図1に示すように、この自動二輪車1の車体カバー18は、車体前部から後下方に延びるレッグシールド18Aを備えているため、車体前方からの走行風は、レッグシールド18Aに沿って下向きに流れてシリンダ部22周囲を流れる。上記冷却フィン24Fは、シリンダ側面では上下方向に延びるフィンのため、レッグシールド18Aに沿った下向きの走行風の流れを妨げず、冷却フィン22F周囲に走行風を流しやすくして放熱効率を十分に確保することができる。
図3に示すように、エンジン20のクランクケース24は、左クランクケース24Aと右クランクケース24Bとからなる左右2分割構造で形成される。クランクケース24前部には、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)45、45を介してクランク軸51が軸心C1を車両進行方向と直交させて横向きに軸支される。
クランク軸51は、回転中心となるクランクジャーナル51Aと、クランクジャーナル51Aよりも大径に形成されるクランクウェブ51Bと、このクランクウェブ51Bを介して支持されるクランクピン(偏心軸)51Cとを備え、クランクウェブ51Bおよびクランクピン51Cが、左右一対の軸受45、45間に位置する。また、クランクウェブ51Bには、回転バランスをとるためのバランスウエイト(以下、ウエイトという)51Dが設けられている。なお、図3中、符号は、クランク軸51と発電機カバー25との間に配置される軸受(転がり軸受)46である。
詳述すると、クランク軸51の左端は、左クランクケース24A内を左方に延出し、この左クランクケース24Aの左側開口(外側開口)を覆うように取り付けられた発電機カバー25近傍まで延出し、軸受(転がり軸受)46を介して発電機カバー25に回転自在に支持される。つまり、発電機180は、発電機カバー25と左クランクケース24Aとによって囲まれる空間内に収容される。発電機180は、クランク軸51に固定されるロータ181と、ロータ181内に配置されるステータ182とを備え、ステータ182は発電機カバー25に固定される。
詳述すると、クランク軸51の右端は、右クランクケース24Bを貫通して更に右方へ延出し、この右クランクケース24Bの右側にボルト連結された変速機ケース61Aを貫通し、変速機ケース61Aに連設される変速機カバー61B近傍まで延出し、この右端部が、Vベルト式無段変速機60の駆動プーリ軸(駆動軸)51Rとして使用され、この駆動プーリ軸51Rに駆動プーリ63が取り付けられる。
この従動プーリ軸64には、従動プーリ67が取り付けられ、駆動プーリ63と従動プーリ67との間にVベルト68が掛け回され、駆動プーリ63の回転が従動プーリ67へと伝達される。なお、変速機収容部61と各プーリ軸51R、64との間には、クランクケース24側のエンジンオイルが変速機収容部61内に侵入するのを阻止するためのシール部材69A、69Bが介挿されており、変速機収容部61がクランクケース24との間でシールされる。
Vベルト式無段変速機60の従動プーリ67は、従動プーリ軸64とともに回転する固定半体67Aと可動半体67Bとを有し、固定半体67Aが可動半体67Bよりも左側に固定される。可動半体67Bは、従動プーリ軸64の右端部に環状スライダ71を介して軸方向に移動自在に配置され、コイルばねである付勢部材72により左方(固定半体67A側)に付勢されている。このため、駆動プーリ63の両半体63A、63B間に挟まれたVベルト68の巻き掛け径が大きくなると、反対に従動プーリ67の両半体67A、67Bの間隔がコイルばね72の付勢力に抗して拡がり、Vベルト68の巻き掛け径を小さくし、自動的に無段変速が行われる。
発進クラッチ80は、オイルにより各部の潤滑および冷却が行われる湿式の遠心式クラッチであり、従動プーリ軸64にスプライン嵌合されるクラッチインナ83と、従動プーリ軸64の左端部に相対回転自在に設けられたクラッチ出力ギア84に連結された大径のクラッチアウタ85とを備えており、クラッチインナ83の外周端側に突設された複数の支軸86にクラッチウエイト87が設けられている。このため、従動プーリ軸64の回転速度が所定速度を超えた場合に、遠心力により遠心方向に移動するクラッチウエイト87がクラッチアウタ85に係合し、従動プーリ軸64と一体にクラッチアウタ85を回転させてクラッチ出力ギア84を回転させる。
なお、図中、符号88は、クラッチアウタ85が遠心方向へ拡がるのを抑えるためのクラッチ補強用プレートであり、符号90は、クラッチ出力ギア84と従動プーリ軸64との間に配置されるリテーナである。このリテーナ90は、周方向に間隔を空けて配置される軸受用ローラのローラ列を、軸方向に2列有しており、この2列のローラ列によってクラッチ出力ギア84を従動プーリ軸64に対して相対回転させる。
すなわち、本エンジン20では、Vベルト式無段変速機60から一次減速機構となる動力伝達機構81までがエンジン20側の変速機(エンジン側変速機)を構成しており、つまり、Vベルト式無段変速機60、発進クラッチ80および動力伝達機構81が、エンジン20の動力を変速するエンジン側変速機を構成している。また、二次減速機構を構成するチェーン伝動機構がエンジン20外の変速機(エンジン外変速機構)を構成している。
出力軸31は、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)96、96に支持される。この出力軸31には、ファイナルギア95が回転自在に設けられ、このファイナルギア95の回転がトルクダンパ(ギアダンパ)97を介して当該出力軸31に伝達されるようになっている。
そして、このクランク室R0とクラッチ室R1とが、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われる室とされており、クランクケース24下部と変速機ケース61A下部とにオイル溜まり部(オイルパン114に相当)が形成される。
また、このクラッチ室R1の右隣には、変速機ケース61Aと変速機カバー61Bとで囲まれる空間(以下、変速機室R2という)が形成され、この変速機室R2は、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われない室とされる。つまり、このエンジン20では、エンジンオイルが介在する室と介在しない室とが車幅方向で明確に区画されている。なお、図2中、符号R2Aは、変速機室R2の底面である。
第1キック中間軸151は、従動プーリ軸64とクランク軸51との中間位置下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重なる位置に横置き配置され、第2キック中間軸155は、クランク軸51の後下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重ならない位置に横置き配置され、クランク軸51に設けられたキック始動用従動ギア172(図3参照)と噛み合い可能に構成されている。ここで、図2には、キック軸38の軸心を符号K1で示し、第1キック中間軸151の軸心を符号K2で示し、第2キック中間軸155の軸心を符号K3で示している。
変速機室R2、つまり、変速機収容部61内には、外気が導入され、この導入した外気でVベルト式無段変速機60を冷却するように構成されている。
図2に示すように、駆動プーリ63の上方に相当する変速機ケース61Aの前上部には、外気吸気口115が設けられ、従動プーリ67の上方に相当する変速機ケース61Aの後上部には、外気排気口116が設けられる。これら外気吸気口115および外気排気口116は、前後に間隔を空けて設けられ、後上がりに上方へ平行に延びるダクト部115A、116Aを有しており、変速機ケース61Aに一体に形成されている。そして、これら外気吸気口115および外気排気口116の上端部には、図示せぬダクトが接続され、このダクトを介して外気が流通自在に構成される。なお、図2中、符号62は、変速機ケース61A内(変速機室R2内)の水を排出するための水抜き部である。
さらに、変速機収容部61内の従動プーリ67の固定半体67Aにも、従動プーリ67を送風ファンとして機能させるための送風用フィン67Cが設けられており、送風用フィン67Cの回転により、外気吸気口115から取り込まれた外気を変速機室R2内で従動プーリ67側へと引き込むことができ、外気排気口116から排気させることができる。これによって、変速機室R2内に駆動プーリ63側から従動プーリ67側へと向かう外気の流れが生じ、Vベルト式無段変速機60が強制空冷されるようになっている。
なお、図2には、駆動プーリ63と従動プーリ67の回転方向(正転方向)を実線矢印で示しており、いずれも右側面視で右回りに回転することによって、外気吸気口115からスムーズに外気を吸い込み、吸い込んだ外気を外気排気口116からスムーズに排気できるようになっている。以上が導風構造の説明である。なお、中間歯車軸91の正転方向は、右側面視で左回りであり(図2中、実線矢印で示す)、出力軸31の正転方向は、右側面視で右回りである(図2中、実線矢印で示す)。
図4に示すように、このエンジン20のクランクケース24内には、エンジンオイルをエンジン20の各部に供給するオイルポンプ120が設けられている。このオイルポンプ120は、クランク軸51の前方斜め下方に設けられており、カムチェーン駆動によりクランク軸51の回転力で駆動されてエンジンオイルを吐出し、このエンジンオイルを、クランク軸51を支持する軸受45、45などの各軸受、シリンダ部22の動弁機構(不図示)、発進クラッチ80および動力伝達機構81などに供給する。
また、このエンジン20は、エンジン20の各部を潤滑するオイルを冷却するエンジン一体型の小型のオイルクーラ105を備えている。このオイルクーラ105は、変速機ケース61Aの鋳造の際に該ケース61Aと一体成形された板状のオイルクーラ本体(延出部)106と、このオイルクーラ本体106にボルト連結されるオイルクーラカバー(油路カバー)107とを備えて構成される。
つまり、この冷却用油路108Aは、略上下方向に長く、前後方向に短くなるように歪んだ略環状に形成され、オイル入口とオイル出口を構成する一対の開口部110、111(図4参照)に接続されている。また、このオイルクーラ本体106の外表面、つまり、シリンダ側の側面には、格子状の冷却フィン(不図示)が一体に形成されており、この冷却フィンによりオイルクーラ本体106の表面積が増えて冷却用油路108Aを通るオイルが効率よく冷却されるとともに、オイルクーラ本体106の剛性が向上する。
このように、オイルクーラ本体106とオイルクーラカバー107との各々に冷却用油路108A、108Bおよびクーラ冷却機構を構成する冷却フィン106A、109を設けたので、冷却用油路108A、108Bを冷却フィン106A、109に近づけることができ、冷却用油路108を通るエンジンオイルの冷却効率を向上することができる。
また、冷却フィン109が上下方向に延びるフィンのため、レッグシールド18Aに沿った下向きの走行風の流れを妨げず、冷却フィン109周囲に走行風を流しやすくして放熱効率を効率よく確保することができる。また、この冷却フィン109によりオイルクーラカバー107を補強することもできる。
また、このエンジン20は、単気筒エンジンであるため、エンジン20の左右方向の最大幅に比してシリンダ部22が幅狭であり、シリンダ部22とエンジン20側方のカバー部材を構成する変速機ケース61Aとの間に段差部X(図2参照)が形成される。図2に示すように、上記オイルクーラ105は、シリンダ部22と変速機ケース61Aとの間の段差部Xに設けられるので、平面視でオイルクーラ105のエンジン20からの突出、つまり、エンジン20の左右方向への突出を抑えることができる。従って、オイルクーラ105のエンジン20からの突出を全て抑えてエンジン20の大型化を回避でき、かつ、オイルクーラ105を突出させずに大型化できるとともに、オイルクーラ105を保護することができる。
このため、本構成のオイルクーラ105は、オイルパン114に貯留されるオイルのアッパーレベルUL(図2参照)よりも確実に高い位置に設けられ、オイルパン114から離間配置される。オイルクーラ105とオイルパン114とが離間配置されると、各部の潤滑や冷却を行ってオイルパン114内に自重落下した高温のオイル温度がオイルクーラ105へ伝わり難くなるので、オイルクーラ105の冷却効率を向上させることができる。
ここで、図4中、符号135は、クランク軸51の軸受45、45およびクランクピン51Cにオイルを供給するための右クランクケース内第2油路であり、オイルクーラ105を通ったオイルは、油路135Aを経由してクランクピン51Cを潤滑する。また、オイルクーラ105を通ったオイルは、油路135Bに分岐して従動プーリ軸64の軸受(従動軸受)65および発進クラッチ80の順にオイルを供給する従動軸受・クラッチ潤滑油路として機能する。また、符号136A、136Bは、オイルポンプ120とオイルクーラ105との間のメイン油路から各々分岐するサブ油路である。第1サブ油路136Aは、メイン油路から不図示のオリフィス(絞り)を介して分岐し、シリンダブロック22Aを介してシリンダヘッド22Bにオイルを供給する。第2サブ油路136Bは、メイン油路から不図示のオリフィス(絞り)を介して分岐し、ピストンジェットにオイルを供給する。
そこで、本車両1では、図2に示すように、クラッチアウタ85とドライブチェーン34との間にカム式のトルクダンパ97を設け、慣性モーメントの大きいクラッチアウタ85と後輪15との間に発生するドライブチェーン34の引き合いを緩和し、車体振動や音発生を低減するようにしている。以下、トルクダンパ97について詳述する。
出力軸31には、ファイナルギア(第1伝達部材)95の右側に隣接してダンパ保持部材(第2伝達部材)98が設けられ、このダンパ保持部材98は、圧入によって出力軸31に固定されることによって出力軸31と一体に回転する。
また、ファイナルギア95は、出力軸31に回転自在かつ軸方向移動可能に保持されており、出力軸31のファイナルギア95左側には、ばね受け部となる拡径部31Aが一体に設けられ、この拡径部31Aとファイナルギア95の左端面との間には、弾性部材(本例では複数枚の皿ばね)99が介挿される。このため、このばね部材99の弾性力によりファイナルギア95がダンパ保持部材98側へ付勢され、ファイナルギア95とダンパ保持部材98とが摩擦係合する。
これら図に示すように、ファイナルギア95のダンパ保持部材98側の面には、複数(本例では3つ)の凹カム95Aが等角度間隔で形成されており、ダンパ保持部材98のファイナルギア95側の面には、上記凹カム95Aに各々噛み合う凸カム98Aが形成される。このため、エンジン20側から駆動トルクが作用し、駆動輪側(後輪15側)から駆動方向と逆方向のトルク(いわゆるバックトルク)が作用していない場合(正転時の場合)には、ファイナルギア95の凹カム95Aとダンパ保持部材98の凸カム98A(図6(B)中、正転時の凸カム95Aを二点鎖線で示す)とが噛み合い、かつ、ファイナルギア95とダンパ保持部材98とが摩擦係合した状態に保持される。従って、エンジン20側からの駆動トルクにより出力軸31がファイナルギア95と一体で回転駆動し、駆動輪である後輪15が駆動される。
また、Vベルト式無段変速機60出力側の遠心式クラッチからなる発進クラッチ80におけるクラッチアウタ85と、ドライブチェーン34との間にトルクダンパ97が設けられているので、Vベルト式無段変速機60の急激なトルク変動をその出力側に配置されたトルクダンパ97で緩和することができ、エンジン側変速機に急激な高トルクが発生することを抑制できる。また、発進クラッチ80を遠心式クラッチとすることで、取り回し時の後輪15の引きずりを防止できる。
この場合、Vベルト式無段変速機60とドライブチェーン34との間にトルクダンパ97が位置するため、Vベルト68に対する加減速負荷やドライブチェーン34の挙動負荷も低減することができる。また、Vベルト式無段変速機60とドライブチェーン34との間にクラッチアウタ85が位置するので、このクラッチアウタ85の分だけ回転マスが増大して回転変動を緩和することができる。
また、トルクダンパ97は、出力軸31上に支持される皿ばね99、出力軸31上に支持され皿ばね99の付勢力で摩擦係合する凹状部材であるファイナルギア95と凸状部材であるダンパ保持部材98とで構成されるので、部品点数が少なく、かつ、軸方向および径方向へ小さいトルクダンパを構成することができる。
また、トルクダンパ97は、出力軸31上に皿ばね99およびファイナルギア95を順に挿入し、ダンパ保持部材98を圧入して構成されるので、トルクダンパ97の組み付け性が向上する。
中間軸駆動ギア94とファイナルギア95とをヘリカルギアとすることで、ファイナルギア95に軸方向荷重が発生する。例えば、正転時にはファイナルギア95にダンパ保持部材98へ向けて軸方向荷重が発生するようにヘリカルギアを形成すると、軸方向荷重で皿ばね99の付勢力をアシストすることとなりファイナルギア95とダンパ保持部材98の摩擦係合を強めることができる。従って、変速機60からの動力伝達を良好とする。一方、後輪15から出力軸31を逆回転するバックトルクが発生した場合には、軸方向荷重で皿ばね99の付勢力をキャンセルすることとなりファイナルギア95とダンパ保持部材98の摩擦係合を弱めることとなり、小さいバックトルクでも滑りを発生させることができる。
また、逆転時(出力軸31に後輪15からのバックトルクが入力された場合)にファイナルギア95にダンパ保持部材98へ向けて軸方向荷重が発生するようにヘリカルギアを形成してもよい。この場合、逆転時に皿ばね99の付勢力をアシストすることとなり、皿ばね99の設定荷重を低く設定することができる。従って、皿ばね99を小型化し、その分、トルクダンパ97の軸方向長さをコンパクトにすることができる。
また、上述の実施形態では、出力軸31におけるエンジン20内(クランクケース24内)にトルクダンパ97を設ける場合を説明したが、これに限らない。
例えば、出力軸31のエンジン20内(クランクケース24内)にトルクダンパ97を備えない代わりに、図8に示すように、出力軸31のエンジン20外(クランクケース24外)の出力スプロケット32にトルクダンパ97を一体に形成してもよい。なお、図8では、ファイナルギア95が出力軸31に圧入等で固定され、ファイナルギア95と出力軸31とが一体に回転するように構成されている。
2 車体フレーム
20 エンジン(パワーユニット)
24 クランクケース
31 出力軸
32 出力スプロケット
33 従動スプロケット
51 クランク軸
60 Vベルト式無段変速機
68 Vベルト
80 発進クラッチ(湿式遠心式クラッチ)
81 動力伝達機構
95 ファイナルギア(凹状部材)
97 トルクダンパ
98 ダンパ保持部材(凸状部材)
99 皿ばね(弾性部材)
105 オイルクーラ
120 オイルポンプ
L1 シリンダ軸線
Claims (5)
- 車体フレーム(2)に内燃機関(20)の動力を変速する変速機(60)を固定し、車体フレーム(2)にピボットを介して揺動可能にスイングアーム(14)を支持し、変速機(60)の出力軸(31)に設けた出力スプロケット(32)と、後輪(15)に設けた従動スプロケット(33)との間にドライブチェーン(34)を架け渡すことで変速機(60)の出力を後輪に伝達する鞍乗り型車両のトルクダンパ装置において、
前記変速機(60)は、慣性モーメントの大きい回転体(85)を備え、この回転体(85)と前記ドライブチェーン(34)との間における前記変速機(60)の出力軸(31)上にトルクダンパ(97)を設け、
前記トルクダンパ(97)は、前記変速機(60)の出力軸(31)上に支持される弾性部材(99)と、前記変速機(60)の出力軸(31)上に支持され、前記弾性部材(99)の付勢力で摩擦係合する第1伝達部材(95)および第2伝達部材(98)とで構成されることを特徴とする鞍乗り型車両のトルクダンパ装置。 - 前記変速機(60)は、Vベルト式無段変速機であり、前記Vベルト式無段変速機の出力側には、遠心式クラッチからなる発進クラッチ(80)が配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のトルクダンパ装置。
- 前記回転体(85)は、前記発進クラッチ(80)のクラッチアウタであることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両のトルクダンパ装置。
- 前記第1伝達部材(95)は、前記出力軸(31)の軸方向に移動可能に支持されつつ前記出力軸(31)に相対回転自在に設けられる歯車であり、
前記トルクダンパ(97)は、前記変速機(60)の出力軸(31)上に前記弾性部材(99)、前記歯車を挿入し、前記第2伝達部材(98)を圧入して構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のトルクダンパ装置。 - 前記歯車は、前記出力軸(31)に前記後輪(15)から前記出力軸(31)を逆回転するトルクが入力されたときに前記第2伝達部材(98)の方向への軸方向荷重が発生するヘリカルギアとし、
前記軸方向荷重は前記弾性部材(99)の付勢力と同方向であることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両のトルクダンパ装置。
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