JP5224177B2 - 工作機械の熱変位補正方法及び熱変位補正装置 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法及び熱変位補正装置 Download PDF

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Description

本発明は、工作機械の熱変位補正方法及び熱変位補正装置に関し、特に工作機械の運転中に生じるボールねじシャフトとコラムの熱変位による主軸ヘッドの位置決め誤差を補正するように構成したものに関する。
ボールねじ機構は、位置決め機構として工作機械に広く使用されている。ボールねじ機構はボールねじシャフトとナット及び各軸受部との摩擦抵抗やサーボモータの発熱のために温度上昇による熱膨張を起こし、熱変位を生じる。現在のNC工作機械ではセミクローズドループ型が一般的であるが、この方式のNC工作機械ではボールねじシャフトの熱変位が、そのまま位置決め誤差となって現れる。そのため、ボールねじシャフトに予張力を与え、熱膨張を吸収する方式が対策として使用されてきた。
ところが最近では、太いボールねじシャフトを使用する上に送り速度が非常に速くなっているので発熱量が増大し、予張力方式で対応しようとすると、非常に大きな引張力を加えなければならない。そのため、ボールねじ機構の構造体が変形したり、スラスト軸受に無理な力が加わって焼き付く等の問題があった。
そこで、ボールねじシャフトに無理な予張力を与えず、しかも、特別な測定装置を必要としないボールねじシャフトの熱変位補正方法が開発されており、特許文献1にその方法が提案されている。先ず、サーボモータの電子電流と電圧との積から求めたボールねじシャフトの発熱量からボールねじシャフトを複数の区間に分割したモデルを使用して温度分布を求める。次に、ボールねじシャフトの熱変位量を時々刻々に予想し、この熱変位量をNC装置にピッチエラー補正として与えることにより、インプロセスで補正する方法である。
特許文献1では、テーブルをX軸方向又はY軸方向に移動駆動する為のボールねじ機構に対して熱変位補正を行っている。この方法を、主軸ヘッドを昇降駆動する為のボールねじ機構に適用した場合、ボールねじシャフトをコラムに支持する軸受部によるボールねじシャフトの固定位置を基準位置として、そこから下側に伸びるボールねじシャフトの熱変位量を演算する。この熱変位量に基づいて主軸ヘッドの位置補正を行う。
特開昭63−256336号公報
しかし、特許文献1の方法では、ボールねじシャフトの熱変位量を推定しているのみであり、サーボモータの発熱によってコラムが熱膨張し軸受部が上方へ変位する点については考慮していない。そのため、主軸ヘッドを正確に位置決めする為の補正量を求めることができない虞がある。そこで、熱変位による主軸ヘッドの実際の変位量(実験値)と、特許文献1の方法で計算した主軸ヘッドの変位量(計算値)との比較実験を行った。
図3に示すように、工作機械は、コラム4と、Z軸モータ73(サーボモータ)と、このZ軸モータ73とカップリング80を介して接続したボールねじシャフト81と、コラム4の側面に設けたモータ取付台78にボールねじシャフト81を支持する軸受部82と、ボールねじシャフト81の回転により上下移動可能なナット部5aと、ナット部5aに支持した主軸ヘッド5とを有する。
本入熱実験の条件は以下のように設定した。
作動中のZ軸モータ73に流れる平均電流及び平均回転数を一定に保ち、固定位置における温度測定値が安定するまで、主軸ヘッド5を移動範囲に亙って繰返し一定速度の往復移動を行う。Z軸モータ73の作動中において、所定時間毎に加工データ上の同じ位置で主軸ヘッド下端の位置を夫々測定し、作動前に測定した主軸ヘッド下端の位置と作動中の位置との差から主軸ヘッド5の変位量を求める。さらに、特許文献1の方法で主軸ヘッド5の変位量を計算したところ図15に示す結果を得た。
図15に示すように、縦軸は主軸ヘッド5の変位量、横軸は経過時間、実線は実験値、破線は計算値である。この結果から、所定時間に到達するまでは計算値が実験値にほぼ一致するが、主軸ヘッド5を所定時間以上昇降駆動した場合は、計算値が実験値と異なることを確認した。そのため、特許文献1の方法では、熱変位による主軸ヘッド5の変位量を正確に計算することができず精度の良い補正量を得ることができないため、高精度な加工を行えないという問題がある。
本発明の目的は、補正量を熱変位による主軸ヘッドの実際の変位量に近似させることができる工作機械の熱変位補正方法及び熱変位補正装置を提供することである。
請求項1の工作機械の熱変位補正方法は、ベース上に固定され且つ鉛直上方に延びるコラムと、このコラムの上部に設けられたモータ取付台と、このモータ取付台に固定されたサーボモータと、前記モータ取付台の下端部分に設けられた固定側軸受部と、前記コラムの下部に設けられた可動側軸受部と、前記サーボモータにより回転駆動され且つ前記固定側軸受部と前記可動側軸受部とによって上下両端部を回転可能に支持されたボールねじシャフトと、前記ボールねじシャフトに螺合し且つボールねじシャフトに沿って上下方向へ移動可能な主軸ヘッドと、前記サーボモータの回転速度を加工データに基づき制御するための速度制御手段とを有する工作機械の熱変位補正方法であって、前記サーボモータの回転速度に基づき前記ボールねじシャフトに発生する第1発熱量を求める第1ステップと、前記サーボモータの上昇温度を検出し、この上昇温度に基づきサーボモータから前記ボールねじシャフトに発生する第2発熱量を求める第2ステップと、前記第1発熱量,第2発熱量に基づき前記ボールねじシャフトを長さ方向に分割した複数区間の温度分布を演算する第3ステップと、前記温度分布から前記ボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって前記固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算する第4ステップと、前記サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて、前記コラムの熱膨張により発生する前記固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算する第5ステップと、前記第2熱変位量から前記第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する第6ステップとを備えたことを特徴としている。
この工作機械の熱変位補正方法では、次の手順で加工データの補正量を求める。
先ず、サーボモータの回転速度に基づきボールねじシャフトに発生する第1発熱量を求める。サーボモータの上昇温度を検出し、この上昇温度に基づきサーボモータからボールねじシャフトに発生する第2発熱量を求める。第1発熱量と第2発熱量に基づきボールねじシャフトを長さ方向に分割した複数区間の温度分布を演算する。温度分布からボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算し、サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて、コラムの熱膨張により発生する固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算する。最後に、第2熱変位量から第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する。
このように、コラムの熱膨張により発生する、ボールねじシャフトをコラムに支持する軸受部の上方への熱変位量を加味して加工データの補正量を演算するので、精度の良い補正量を得ることができる。
請求項の工作機械の熱変位装置は、ベース上に固定され且つ鉛直上方に延びるコラムと、このコラムの上部に設けられたモータ取付台と、このモータ取付台に固定されたサーボモータと、前記モータ取付台の下端部分に設けられた固定側軸受部と、前記コラムの下部に設けられた可動側軸受部と、前記サーボモータにより回転駆動され且つ前記固定側軸受部と前記可動側軸受部とによって上下両端部を回転可能に支持されたボールねじシャフトと、前記ボールねじシャフトに螺合し且つボールねじシャフトに沿って上下方向へ移動可能な主軸ヘッドと、前記サーボモータの回転速度を加工データに基づき制御するための速度制御手段とを有する工作機械の熱変位補正装置において、前記サーボモータの回転速度を検出する速度検出手段と、前記サーボモータの上昇温度を検出する温度検出手段と、前記サーボモータの駆動電流値を検出する電流値検出手段と、前記速度検出手段によって検出した前記サーボモータの回転速度に基づき前記ボールねじシャフトに発生する第1発熱量を演算する第1発熱量演算手段と、前記温度検出手段によって検出した前記サーボモータの上昇温度に基づき該サーボモータから前記ボールねじシャフトに発生する第2発熱量を演算する第2発熱量演算手段と、前記第1発熱量演算手段によって演算した第1発熱量と、前記第2発熱量演算手段によって演算した第2発熱量とに基づいて、前記ボールねじシャフトを長さ方向に複数分割した複数の区間の温度分布を演算する温度分布演算手段と、前記温度分布演算手段によって演算した前記温度分布に基づいて前記ボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって前記固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算する第1熱変位量演算手段と、前記速度検出手段によって検出された前記サーボモータの回転速度と前記電流値検出手段によって検出された前記サーボモータの駆動電流値とに基づいて前記コラムの熱膨張により発生する前記固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算する第2熱変位量演算手段と、前記第2熱変位量演算手段によって演算された第2熱変位量から前記第1熱変位量演算手段によって演算された前記第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する補正量演算手段とを備えたことを特徴としている。
この工作機械の熱変位量補正装置では、第1発熱量演算手段が、サーボモータの回転速度に基づきボールねじシャフトに発生する第1発熱量を演算する。第2発熱量演算手段が、サーボモータの上昇温度に基づきサーボモータからボールねじシャフトに発生する第2発熱量を演算する。温度分布演算手段が、第1発熱量と第2発熱量に基づいて、ボールねじシャフトを長さ方向に複数分割した複数の区間の温度分布を演算する。次に、第1熱変位量演算手段が、温度分布に基づいてボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって前記固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算し、第2熱変位量演算手段が、サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいてコラムの熱膨張により発生する固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算する。最後に、補正量演算手段が、第2熱変位量から第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する。これにより、請求項1と同様の作用を奏する。
請求項1の発明によれば、第1発熱量と第2発熱量に基づきボールねじシャフトを長さ方向に分割した複数区間の温度分布を演算し、温度分布からボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算すると共に、コラムの熱膨張により発生する固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算し、第2熱変位量から第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算するので、ボールねじシャフトの熱変位だけでなくコラムの熱変位を加味した補正量を得ることができる。そのため、熱変位による主軸ヘッドの実際の変位量に近似させた精度の良い補正量を得ることができるので、高精度な加工を行うことができる。
また、第2熱変位量は、サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて演算されるので、別途センサなどを設けることなく既存のセンサを活用して精度の良い補正量を得ることができる。
請求項の発明によれば、速度検出手段と、温度検出手段と、第1発熱量演算手段と、第2発熱量演算手段と、温度分布演算手段と、第1熱変位量演算手段と、第2熱変位量演算手段と、補正量演算手段とを備えたので、請求項1と同様の効果を奏する。
また、サーボモータの駆動電流値を検出する電流値検出手段を更に備え、第2熱変位量演算手段は、速度検出手段によって検出されたサーボモータの回転速度と電流値検出手段によって検出されたサーボモータの駆動電流値とに基づいて第2熱変位量を演算するので、請求項と同様の効果を奏する。
以下、本発明を実施する為の最良の形態について説明する。
図1〜図4に基づいて工作機械の構成について説明する。
工作機械は、ワークと工具とをXYZ直交座標系における各軸方向へ独立に相対移動させることによって、ワークに所望の機械加工(例えば、「中ぐり」、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことができる。図1に示すように、工作機械は、鋳鉄製の基台であるベース1と、ベース1の上部に設けて、ワークの切削加工を行う機械本体2と、ベース1の上部に固定した、機械本体2とベース1の上部を覆う箱状の図示しないスプラッシュカバーとを主体に構成してある。
ベース1はY軸方向(図1において右下が工作機械の前方であり、Y軸方向は、工作機械の前後方向である)に長い略直方体状の鋳造品である。ベース1の下部の四隅には高さ調節が可能な脚部を夫々設け、工作機械は、これらの脚部を工場等の床面に設置することで設置してある。
次に、機械本体2について説明する。
機械本体2は、ベース1の後部上のコラム座部3の上面に固定され且つ鉛直上方に延びるコラム4と、このコラム4の前面に沿って昇降可能な主軸ヘッド5と、この主軸ヘッド5の内部に回転可能に支持された主軸5Aと、主軸ヘッド5の右側に設け且つ主軸5Aの先端に工具6の工具ホルダを取り付けて交換する工具交換装置(ATC)7と、ベース1の上部に設け且つワークを着脱可能に固定するテーブル8とを主体に構成してある。コラム4の背面側には、箱状の制御ボックス9を設け、この制御ボックス9の内側には、工作機械の動作を制御する制御装置50(図4参照)を設けてある。
次に、テーブル8をX軸方向とY軸方向に移動させる移動機構について説明する。
図1、図4に示すように、サーボモータからなるX軸モータ71及びY軸モータ72は、X軸方向(図1の機械本体2の左右方向)及びY軸方向(機械本体2の奥行き方向)にテーブル8を移動制御する。この移動機構は以下の構成からなる。まず、テーブル8の下側には直方体状の支持台10を設けてある。その支持台10にはX軸方向に沿って延びる1対のX軸送りガイドを設け、1対のX軸送りガイド上にテーブル8を移動可能に支持している。
ベース1の上側に支持台10を配置し、そのベース1の長手方向に沿って延びる1対のY軸送りガイド上に支持台10を移動可能に支持している。支持台10上に設けたX軸モータ71がX軸送りガイドに沿ってX軸方向にテーブル8を移動駆動し、ベース1上に設けたY軸モータ72がY軸送りガイドに沿ってY軸方向に支持台10を移動駆動する。
X軸送りガイドには、テレスコピック式に収縮するテレスコピックカバー11,12がテーブル8の左右両側に設けてある。Y軸送りガイドには、テレスコピックカバー13とY軸後カバーとが、支持台10の前後に夫々設けてある。これら複数のカバーによって、テーブル8がX軸方向とY軸方向の何れの方向に移動した場合でも、テレスコピックカバー11,12,13とY軸後カバーが、常にX軸送りガイドとY軸送りガイドを覆っている。つまり、加工領域から飛散する切粉や、クーラント液の飛沫等が各レール上に落下するのを防止できる。
次に、主軸ヘッド5の昇降機構について説明する。
図1〜図3に示すように、サーボモータからなるZ軸モータ73は、Z軸方向(図1の機械本体2の上下方向)に主軸ヘッド5を昇降駆動する。Z軸モータ73はコラム4の前面側に設けたモータ取付台78の上面に固定してある。モータ取付台78の内部においてZ軸モータ73の出力軸73aには、カップリング80を介してボールねじシャフト81を接続している。
モータ取付台78の下端部分には固定側の軸受部82を設けてあり、コラム4の下部には可動側の軸受部83を設けてあり、これら軸受部82,83がコラム4にボールねじシャフト81を回転可能に支持している。主軸ヘッド5は、コラム4の前面側で上下方向に延びるボールねじシャフト81に螺合されたナット部5aに支持されている。このナット部5aは、Z軸モータ73から下方に延びるボールねじシャフト81と協働してボールねじ機構を構成している。
Z軸モータ73がボールねじシャフト81を正逆方向に回転駆動することで、主軸ヘッド5を上下方向に昇降駆動する。従って、制御装置50のCPU51(図4参照)からの制御信号に基づいて、Z軸駆動回路63によりZ軸モータ73が主軸ヘッド7を昇降駆動するようになっている。
図1,図2に示すように、工具交換装置7は、工具6を支持する工具ホルダを複数格納する工具マガジン14と、前記主軸に取付けた工具ホルダと他の工具ホルダとを把持して搬送するための工具交換アーム15等を有する。図1,図2に示す工具マガジン14の内側には、工具ホルダを支持する複数の工具ポットと、それら工具ポットを工具マガジン14内で搬送する搬送機構とを設けてある。
次に、制御装置50の電気的構成について説明する。
図4に示すように、制御装置50は、マイクロコンピュータを含んで構成してあり、入出力インタフェース54と、CPU51と、ROM52と、RAM53と、軸制御回路61a〜64a,75aと、サーボアンプ61〜64と、微分器71b〜74bなどを備えている。軸制御回路61a〜64aは、夫々サーボアンプ61〜64に接続している。サーボアンプ61〜64は、夫々X軸モータ71、Y軸モータ72、Z軸モータ73、主軸モータ74に接続している。軸制御回路75aはマガジンモータ75に接続している。
X軸モータ71、Y軸モータ72は、夫々、テーブル8をX軸方向、Y軸方向に移動させるものである。Z軸モータ73は、主軸ヘッド5をZ軸方向に昇降駆動させるものである。マガジンモータ75は工具マガジン14を回転移動させる為のものである。主軸モータ74は、前記主軸5Aを回転させる為のものである。尚、前記X軸モータ71、Y軸モータ72、Z軸モータ73、主軸モータ74は、夫々エンコーダ71a〜74aを備えている。
軸制御回路61a〜64aは、CPU51からの移動指令量を受けて、電流指令量(モータトルク指令値)をサーボアンプ61〜64に出力する。サーボアンプ61〜64は、この指令を受けてモータ71〜74に駆動電流を出力する。軸制御回路61a〜64aは、エンコーダ71a〜74aから位置フィードバック信号を受けて、位置のフィードバック制御を行う。微分器71b〜74bは、エンコーダ71a〜74aから入力した位置フィードバック信号を微分して速度フィードバック信号に変換し、軸制御回路61a〜64aに速度フィードバック信号を出力する。
軸制御回路61a〜64aは、微分器71b〜74bから速度フィードバック信号を受けて、速度フィードバックの制御を行う。電流検出器61b〜64bが、サーボアンプ61〜64からモータ71〜74に出力した駆動電流を検出する。電流検出器61b〜64bで検出した駆動電流を、軸制御回路61a〜64aにフィードバックする。軸制御回路61a〜64aはフィードバックされた駆動電流に基づいて電流(トルク)制御を行う。
一般的に、モータ71〜74に流れる駆動電流はモータ71〜74にかかる負荷トルクに比例するので、モータ71〜74に流れる駆動電流を検出する電流検出器61b〜64bによって、モータ71〜74にかかる負荷トルクを検出することができる。軸制御回路75aは、CPU51からの移動指令量を受けて、マガジンモータ75を駆動する。
熱変位補正装置60は、制御装置50、Z軸モータ73、エンコーダ73aとを有する。その具体的な構成については、図9に基づいて後述する。
次に、熱変位補正装置60で用いる熱変位量の算出方法について説明する。
本算出方法では、ボールねじシャフト81の上端部と、ナット部5aの移動区間と、ボールねじシャフト81の下端部の3領域の発熱量を求める。ナット部5aの移動区間については複数の区間に分割して区間毎の発熱量を求める。
(合計熱量の算出)
図5に示すように、ボールねじシャフト81における固定側軸受部82から可動側軸受部83まで(長さをLで示す)の区間を、n分割する。一定時間(例えば、50ms)毎に、加工プログラムのZ軸送りデータに基づいて、ナット部5aがどの区間に存在するかを判別し、Z軸モータ73の実回転数から発生熱量を求め、後述する温度分布演算回路19のデータエリアに格納する。発生熱量を次式により求める。
(数1)
Q=K1 ×FT (1)
ここで、Q:発生熱量、F:主軸ヘッド5の昇降速度、K1 ,T:所定の定数である。
図6に示すように、各区間でのナット部5aの移動による発熱量を、50ms毎に一定時間(例えば、6400ms)、すなわち128回算出する。これらの熱量を区間毎に合計し、この合計値を各区間1〜nに対応したデータエリアに格納する。6400msの間に発生した各区間1〜nの熱量1〜nの合計熱量QTTL 及び各区間1〜nでのZ軸モータの回転数の合計回転数NTTL を夫々データエリアに格納する。
(合計熱量の分配1)
以下に示す合計熱量QTTL の分配方法は、ボールねじシャフト81のナット部移動区間と上端部と下端部において互いに他の部分への熱伝導が生じず、熱的には近似的に独立しているとみなすことができること、合計発熱量に対する各発熱部の比率は昇降速度の如何に関わらずほぼ一定であるという知見に基づいている。
合計発熱量QTTL 、ナット部移動区間発熱量QN 、軸受部83により発熱した下端部発熱量QL とすると、各発熱部の発熱量は、次式から算出する。
(数2)
N =ηN ×QTTL
L =ηL ×QTTL
ここで比率ηN ,ηL は前記知見により一定であり、実機によりQN ,QL を測定し、比率ηN ,ηL を予め求めておく。
(ナット部移動区間の各区間への熱量の分配)
次に、ナット部移動区間の各区間の熱量を求める。前記データエリアに格納されている熱量は50ms毎に算出した合計値であるため、区間毎に50ms毎の平均熱量を求めた後、平均熱量と合計熱量から各区間について、次式からナット部5aの存在確率X1 …Xi …Xn (1,i,nは、区間を示す)を求める。
(数3)
1 =区間1についての平均熱量/ QTTL

i =区間iについての平均熱量/ QTTL

n =区間nについての平均熱量/ QTTL
こうして、各区間についての存在確率X1 …Xi …Xn を求めてから、この存在確率と前記ナット部移動区間発熱量QN とから、次式により各区間についての分配熱量QN1…QNi…QNnを求める。
(数4)
N1=X1 ×QN

Ni=Xi ×QN

Nn=Xn ×QN
(合計熱量の分配2)
次に、ボールねじシャフト81の上端部発熱量QU を算出する。上端部発熱量QU はZ軸モータ73の上昇温度による入熱に起因するものであるから、Z軸モータ本体温度ΘM (以降、単にモータ本体温度ΘMと称す)を算出し、このモータ本体温度ΘM とボールねじシャフト81の上端部温度との差異からボールねじシャフト81の上端部発熱量QU を求めることができる。
図7に例示するように、最大飽和温度がL1aであった場合、工作機械駆動中のモータ本体温度ΘM は、直線l52に対する漸近線150を描く。モータ本体温度ΘM が最大飽和温度L1aに達した後(図7ではt=8hourの時点)、工作機械を停止すると、モータ本体温度ΘM は直線153に対する漸近線151を描く。漸近線150は、次式で表すことができ、
(数5)
1a=K2 ・ω+K3 ・i2 (2)
ΘM =L1a・(1 −exp(−γ・t)) (3)
漸近線151は、次式で表すことができる。
(数6)
ΘM =L1a・exp(−γ・t) (4)
ここで、i はZ軸モータ73に流れる電流、ωはZ軸モータ回転数、L1aは飽和温度であり、γ,K2 ,K3 はZ軸モータ固有の定数である。工作機械の駆動開始後a分後のモータ本体温度ΘM1a は、
ΘM1a =L1a・{1−exp(−γ・a/60)}
工作機械停止後a分後のモータ本体温度ΘM-1aは、次式で表すことができる。
ΘM-1a=L1a・exp(−γ・a/60)
尚、以下の説明では、工作機械の駆動後、時刻t1,t2,……(分)と時間が経過したものとして説明する。つまり、時刻t1,t2,……の間隔がそれぞれの処理における経過時間である。
本実施例では、上記経過時間に基づいてモータ本体温度ΘM を算出した場合、モータ本体温度ΘM はその後式(4)に従って低下するものと考える。図8(A)に曲線301で例示するように、時刻0から時刻t1までの間の経過時間に基づいて算出したモータ本体温度ΘMt1 の時刻t1における値ΘMt1-1 は、前述のようになる。
ΘMt1-1 =Lt1・{1−exp(−γ・t1/60)}
但し、Lt1は時刻0から時刻t1までの経過時間に基づいて算出した最大飽和温度である。時刻t2におけるモータ本体温度の値ΘMt1-2 は、式(4)より次式となる。
ΘMt1-2 =ΘMt1-1 ・exp{−γ・(t2−t1)/60}
同様に、時刻t3,t4におけるモータ本体温度の値ΘMt1-3 ,ΘMt1-4 は、次式となる。
ΘMt1-3 =ΘMt1-1 ・exp{−γ・(t3−t1)/60}
ΘMt1-4 =ΘMt1-1 ・exp{−γ・(t4−t1)/60}
同様に、時刻t1から時刻t2までの間の経過時間に基づいて最大飽和温度Lt2が算出されたとすると、それに対応するモータ本体温度ΘMt2 は図8(B)に曲線302で例示するように変化し、その時刻t2,t3,t4におけるモータ本体温度の値ΘMt2-1 ,ΘMt2-2 ,ΘMt2-3 は、夫々次式のようになる。
ΘMt2-1 =Lt2・[1−exp{−γ・(t2−t1)/60}]
ΘMt2-2 =ΘMt2-1 ・exp{−γ・(t3−t2)/60}
ΘMt2-3 =ΘMt2-1 ・exp{−γ・(t4−t2)/60}
図8(C)はモータ本体温度ΘMt3の温度変化を示している。前述と同様にモータ本体温度の値ΘMt3-1 ,ΘMt3-2 ,ΘMt3-3 を求めることができる。
図8(D)では、このようにして算出したモータ本体温度ΘMt1 ,ΘMt2 ……のその時刻における値を加算して算出したモータ本体温度を示す。例えば、時刻t1,t2,t3,……の間の経過時間に基づいて、図8(D)に曲線301,302,303……で例示するモータ本体温度ΘM を算出したとすると、モータ本体温度Θは、図8(D)の曲線304で例示するように変化する。以下、モータ本体温度をΘとして説明する。
前記モータ本体温度Θを用いて、上端部発熱量QU を次式により算出する。
(数7)
U =K4 (Θ−ΘS ) (5)
ここで、K4 :定数、ΘS :ボールねじシャフトの上端部温度である。
(温度分布の算出)
以上のようにして各発熱部の発熱量を求めてから、この熱量から温度分布を算出する。温度分布は次の非定常熱伝導方程式を、初期条件{θ}t=0 、d{θ}/ dtt=0 の下に解けば求めることができる。
(数8)
[C]d{θ}/ dt+[H]{θ}+{Q}=0 (6)
ここで、[C]:熱容量マトリックス、[H]:熱伝導マトリックス、{θ}:温度分布、{Q}:発熱量、t:時間である。
(第1熱変位量の算出)
ボールねじシャフト81の各発熱部の温度分布を求めてから、この温度分布から第1熱変位量、つまり、ボールねじシャフト81の各区間の熱変位量であって固定側の軸受部82に対する各区間の熱変位量を算出する。各区間の熱変位量は、次式から求めることができる。
(数9)
ΔL=∫L 0 β×θ(L)dL (7)
ここで、ΔL:第1熱変位量、β:ボールねじシャフト材料の線膨張係数である。
Lは、区間の長さを示す。
(第2熱変位量の算出)
第2熱変位量、つまり、コラム4の熱膨張により発生する軸受部82の上方への熱変位量ΔFを算出する。熱変位量ΔFは、離散化した1次遅れ系の挙動を示す次式から求めることができる。
(数10)
ΔFn =ΔFn-1 +K7 (K5 ・ωn +K6 ・in 2 −K8 ・ΔFn-1 ) (8)
ここで、n:n回目の入力、ΔFn :n回目の第2熱変位量、i:Z軸モータ73に流れる電流、ω:Z軸モータの回転速度、K5 ,K6 ,K7 ,K8 :機械固有の定数である。
次に、熱変位補正装置60の構成について、図9の機能ブロック図に基づいて説明する。補間制御回路16は、RAM53に格納されている加工データに基づきボールねじ機構の昇降駆動量を計算するための回路である。信号分配手段17は各軸のボールねじ機構の送り駆動量に応じた信号を各軸に分けて分配し、その信号を軸制御回路63aに与える。この信号をRAM53に格納される位置レジスタ18にも与えて、ナット部5aの位置データを格納する。Z軸モータ73の回転速度はエンコーダ73aで常時検出し、検出信号を軸制御回路63a及び温度分布演算回路19に入力する。尚、軸制御回路63aが速度制御手段に相当し、エンコーダ73aが速度検出手段に相当する。
RAM53に設けたパラメータメモリ20は、ボールねじシャフト81の長さ、径等の機械構造に関するパラメータ、密度、比熱、式(3)及び式(4)で用いるγ等の物理的性質に関するパラメータ及び前記熱分配係数(比率)ηN ,ηB 等を格納している。
温度分布演算回路19はZ軸モータ73の回転速度検出信号から式(1)に基づきボールねじシャフト81のナット部移動区間発熱量QN を50ms毎に算出し、6400ms後、合計発熱量から各発熱部の発熱量の分配計算を行う。
また、上端部発熱量QU に関して、温度分布演算回路19は電流検出器63bからの電流とZ軸モータ73の回転数から式(2)に基づきZ軸モータ73の飽和温度を算出し、式(3)と式(4)に基づいてZ軸モータ73の温度Θを計算する。この温度Θと式(6)から求まるボールネジシャフト81の上端部温度ΘS から式(5)に基づき上端部発熱量QU の計算を行う。尚、電流検出器63bが電流値検出手段に相当する。
温度分布演算回路19は、ナット部5aの存在確率を算出し、ボールねじシャフト81の各区間の発熱量を算出した後、これら発熱量とパラメータメモリ20に記憶される各種データとから式(6)を解き、各発熱部の温度分布を算出する。具体的には、工作機械の駆動後(t=0)、時刻がt1,t2,‥‥(分)と時間が経過したときの温度分布の算出は次のように行う。
図5から、各部の温度、各区間に入力される熱量を図10のように表すことができる。この図10を用いて式(6)は、次式のように表すことができる。
(数11)
時刻t=0の時のボールネジ各部の温度{θ}及びモータ本体温度Θは既知であるため式(5)よりQU を求めることができる。式(1)からQN1〜QNn,QL も既知となる。これらの値を式(9)の右辺に代入すると図11のように各位置における温度が上昇する速度(d{θ}t=0/dt)すなわち傾きを求めることができる。この傾きより、t=t1における各部の温度{θ}は下式により求めることができる。
{θ}t=t1={θ}t=0 +(d{θ}t=0/dt)×t1
{θ}t=t1のボールねじシャフト81の上端部温度ΘS と式(3)、(4)で求まるモータ本体温度Θよりt=t1におけるQU を式(5)より求めることができる。これらの値を式(9)に代入し、d{θ}t=t1/dtを求めるとt=t2における各部の温度は次式で求めることができる。
{θ}t=t2={θ}t=t1+(d{θ}t=t1/dt)×(t2−t1)
こうして、t=t3,‥‥の温度を同様にして求めることができる。
熱変位量演算回路21は、温度分布演算回路19により算出された温度分布から式(7)に基づき熱変位量ΔLを算出すると共に、式(8)に基づき熱変位量ΔFを算出する。 式(8)によりΔFを求める際には、t=0のときの初期値ΔF0 =0とし、各時刻におけるモータ回転数ωn 、モータ電流in を用いて逐次的に演算することにより、現在の熱変位量ΔFn (つまり、ΔF)を求めることができる。
補正データ演算回路22は、熱変位量演算回路21により算出された熱変位量ΔLと熱変位量ΔFに基づき補正量を算出する。具体的には、補正量は、熱変位量ΔFn から熱変位量ΔLを減算することで算出することができる。尚、ΔFでは上方向きの変位を(+)、ΔLでは下方向きの変位を(+)とする。補正信号発生手段23は、補正データ演算回路22により算出された補正量に応じた補正信号を軸制御回路63aに与える。
次に、制御装置50が実行する熱変位補正制御について、図12のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中Si(i=1,2・・・)は各ステップを示す。
先ず、パラメータ等の設定データから、有限要素法による演算に必要なマトリックスを設定すると共に、図5に示すように対象モデルを有限個数の区間に分割する。この区間の分割によって、熱分布モデルの領域を形成することになる(S1)。尚、各区間に対応して、現在の外気温度θair 、初期位置、現在位置、変位量、線膨張係数、熱容量、熱伝達係数等を記憶したメモリ領域をRAM53に設けてある。
次に、S1で設定した熱分布領域モデルの各区間において、初期温度{θ}t=0 を設定する。この初期温度{θ}t=0 は、区間毎に個別に設定することができるが、工作機械が外気温度θair と一致していると扱うことができる場合には、全ての区間について初期温度{θ}t=0 を外気温度θair に設定することができる。また、工作機械の駆動等によって各区間の間に温度差が生じている場合、各区間に初期温度を夫々設定してもよい。この初期温度{θ}t=0 はRAM53に記憶しておく(S2)。尚、初期温度{θ}t=0 以外の初期位置等の基準値についても、測定を行い記憶しておく。
50ms毎に、ナット部5aの現在位置、昇降速度のデータを温度分布演算回路19に入力し、式(1)に基づきナット部5aの発熱量を求める(S3)。
一定時間(6400ms)経過すると、温度分布演算回路19により合計熱量QTTL からナット部5aの存在確率を算出し、S3で求めた発熱量を用いて分割区間に分配する(S4)。S3の処理を実行するCPU51が第1発熱量演算手段に相当する。
Z軸モータ73に流れる電流とZ軸モータ回転数とを用いて式(2)に基づき飽和温度L1aを求め、この飽和温度L1aと式(3)及び式(4)とによりZ軸モータ本体の温度上昇を求める(S5)。Z軸モータ本体の温度上昇とボールねじシャフト81の上端部温度とからZ軸モータ73と隣接する分割区間への入熱、つまり上端部発熱量QU を式(5)に基づき算出する(S6)。S5の処理を実行するCPU51が温度検出手段に相当する。S6の処理を実行するCPU51が第2発熱量演算手段に相当する。
S4及びS6で求めた区間毎の発熱量と非定常方程式(9)とを用いて各区間の温度分布を求める(S7)。S7で求めた温度分布により各区間の熱変位量を式(7)を用いて算出する(S8)。軸受部82の上方への熱変位量ΔFを式(8)を用いて算出する(S9)。熱変位量ΔFから熱変位量ΔLを減算した結果を用いて、S2で記憶した基準位置(固定側の軸受部82)からの熱変位量を算出して加工制御に用いる補正量を算出する(S10)。
補正信号発生手段23が、S10で求めた補正量に相当する信号を軸制御回路63aに送る(S11)。S1に戻り、制御装置50は定期的(例えば、50ms毎)にこの処理を実行する。S7を実行するCPU51が温度分布演算手段に相当する。S8を実行するCPU51が第1熱変位量演算手段に相当する。S9を実行するCPU51が第2熱変位量演算手段に相当する。S10を実行するCPU51が補正量演算手段に相当する。
次に、以上説明した工作機械の熱変位補正方法の作用、効果について説明する。この熱変位補正方法では、先ず、Z軸モータ73の回転速度に基づきナット部5a及び軸受部83からボールねじシャフト81に発生する発熱量と、Z軸モータ73の上昇温度に基づきZ軸モータ73からボールねじシャフト81に発生する発熱量に基づいて、ボールねじシャフト81を長さ方向に分割した複数区間の温度分布を演算する。温度分布からボールねじシャフト81の各区間の熱変位量ΔLであって軸受部82に対する各区間の熱変位量ΔLを演算すると共に、ボールねじシャフト81をコラム4に支持する軸受部82(サーボモータが配置された側)の上方への熱変位量ΔFを演算する。次に、熱変位量ΔFから熱変位量ΔLを減算することで加工データの補正量を演算する。
このように、ボールねじシャフト81の熱変位量ΔLだけでなく、コラム4の熱膨張により発生する軸受部82の上方への熱変位量ΔFを加味することで、熱変位による主軸ヘッド5の実際の変位量に近似させた精度の良い補正量を得ることができる。これにより、高精度な加工を行うことができる。熱変位量ΔFは、Z軸モータ73の回転速度と駆動電流値とに基づいて演算されるので、別途センサなどを設けることなく、エンコーダや電流検出器などの既存のセンサや機器を活用して精度の良い補正量を得ることができる。
次に、本発明の実施例2について、図13、図14に基づいて説明する。
実施例2においては、ボールねじシャフト81を分割した複数区間のうち、隣接する区間同士に限定して熱量交換を行うことを考慮して温度分布を演算し、ボールねじシャフト81の熱変位量を求めている。
制御装置50が実行する熱変位補正制御について、図13のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中Si(i=20,21・・・)は各ステップを示す。
先ず、パラメータ等の設定データから、必要な計算式を設定すると共に、図5に示すように対象モデルを有限個数の複数区間に分割する(S20)。次に、S20で設定した熱分布領域モデルの各区間において、初期の外気温度との差{θ0 }を設定する(S21)。隣接する区間同士に限定して熱量交換をおこなう時は、式(6)から次のように必要な式を求める。
式(6)の詳細は下記となる。
(数12)
隣接する区間同士に限定して熱量交換をおこなう時は、区間iとその隣接区間i−1,i+1に着目し、式(6)から該当部分を抽出すると次のようになる。
ii・d・θi /dt+hi(i-1)・θi-1 +hii・θi +hi(i+1)・θi+1 +QNi=0
変形すると
ii・d・θi /dt=−(hi(i-1)・θi-1 +hii・θi +hi(i+1)・θi+1 )−QNi
となる。
通常、hi(i-1)=hi(i+1)の関係があるためhi(i-1),hi(i+1)を−hi に置き換える。
また、hii=2hi +fi の関係がある。ここでfi は外気への放熱状態を決める係数である。
よって、これらを代入すると
ii・d・θi /dt=−(hi(i-1)・θi-1 +hii・θi +hi(i+1)・θi+1 )−QNi
=−(−hi ・θi-1 +(2hi +fi )・θi −hi ・θi+1
−QNi
=hi (θi-1 −θi )−hi (θi −θi+1 )−f・θi −QNi
(9)
式(9)から次の手順で外気の温度との差を求める。
式(1)に基づいてナット部5aの発熱量を求める(S22)。Z軸モータ73の1回転当たりのナット部5aの移動量を予め記憶しておき、Z軸モータ73の回転回数に基づいてナット部5aの移動量を求めて、各区間における分配熱量QNiを求める(S23)。
次に、各区間における初期設定からの温度上昇を求める(S24)。具体的には、RAM53から各区間の現在上昇温度θを読み出して、区間iに対して区間(i−1)と区間(i+1)と外気との間で交換する熱量Qi を求める。
図14(A)に示すように、区間iは、区間(i−1)と区間(i+1)に隣接し且つ外気と接している。この場合、区間iに対して区間(i−1)と区間(i+1)と外気との間で交換される熱量Qi は、次式で算出することができる。
(数13)
i =QNL+QNR−Qair
図14(B)に示すように、区間iに熱量分配QNiがある場合は、次式で算出することができる。
(数14)
i =−QNi+QNL+QNR−Qair
尚、QNLは区間iと区間(i−1)との間で交換される熱量、QNRは区間iと区間(i+1)との間で交換される熱量、Qair は区間iと外気との間で交換される熱量である。
ここで、熱量QNL,QNR,Qair は、式(9)と対比すると次のようになる。
(数15)
NL=hi (θi-1 −θi
NR=−hi (θi −θi+1
air =f・θi
尚、hi は熱伝達係数、θi は温度上昇、fは外気への放熱状態を表す係数である。
次に、各区間における熱量の変化Qi を次式により算出する。
(数16)
i =−QNi+QNL+QNR−Qair
各区間の温度変化d・θi /dtは、各区間において熱量の変化Qi を、各区間の熱容量ciiで除することにより求めることができ、各区間の温度上昇θi は図11のように求める。
次に、S24で求めた温度分布により各区間の熱変位量ΔLi を求める(S25)。
具体的には、RAM53から区間iの長さLi 、線膨張率αi 、温度上昇θi を読み出して、熱変位量ΔLi は、次式により算出することができる。
(数17)
ΔLi =Li {1+αi ・θi
軸受部82の上方への熱変位量ΔFn を式(8)を用いて算出する(S26)。熱変位量ΔFn から熱変位量ΔLi を減算した結果を用いて、基準位置からの熱変位量を算出して(S27)、加工制御に用いる補正量を算出する(S28)。S28で求めた補正量に基づいて位置補正を行う(S29)。S20に戻り、数値制御装置50は定期的にこの処理を実行する。
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]前記実施例1において、Z軸モータ73の温度上昇を電流と回転数から求めるのではなく、Z軸モータ73に取付けた温度センサと室温を測定する室温センサとによってZ軸モータ73の温度上昇を求めることも可能である。
2]前記実施例1において、Z軸モータ本体の温度上昇Θを式(3)及び(4)を用いて求める例について説明したが、Z軸モータ本体の温度上昇を離散化した1次遅れ系から、K9 ,K10,K11を係数とすると、次式により求めることも可能である。
(数18)
Tn=K9 ・ω+K10・i2
Θn =(1 −K11)Θn-1 +LTn
本発明の実施例に係るマシニングセンタの機械本体の全体斜視図である。 主軸ヘッド及び自動工具交換装置などの側面図である。 主軸ヘッド用のボールねじ機構の構成図である。 制御装置の電気的構成を示すブロック図である。 ボールねじシャフトを区分して熱量を求める場合の説明図である。 区間iの分配熱量を求める場合のメモリ説明図である。 最大変位に対応した熱変位量の経時変化を説明する説明図である。 モータ本体温度と経過時間との関係を示し、(A)は駆動開始後0からt1までのモータ本体温度と経過時間との関係を示す線図、(B)は駆動開始後t1からt2までのモータ本体温度と経過時間との関係を示す線図、(C)は駆動開始後t2からt3までのモータ本体温度と経過時間との関係を示す線図、(D)は駆動開始後0からt3までのモータ本体温度と経過時間との関係を示す線図である。 熱変位補正装置の機能ブロック図である。 各部の温度と各区間に入力される熱量とを説明する説明図である。 各位置における温度上昇速度を示す図である。 熱変位補正制御プログラムのフローチャートである。 実施例2に係る熱変位補正制御プログラムのフローチャートである。 区間iにおける熱量の移動を説明する説明図であり、(A)はナット部が区間iにない場合の説明図、(B)はナット部が区間iにある場合を示す説明図である。 従来技術の計算結果と実験結果の熱変位量を示す線図である。
4 コラム
5 主軸ヘッド
5a ナット部
51 CPU
60 熱変位補正装置
63b 電流検出器
73 Z軸モータ
81 ボールねじシャフト
82,83 軸受部

Claims (2)

  1. ベース上に固定され且つ鉛直上方に延びるコラムと、このコラムの上部に設けられたモータ取付台と、このモータ取付台に固定されたサーボモータと、前記モータ取付台の下端部分に設けられた固定側軸受部と、前記コラムの下部に設けられた可動側軸受部と、前記サーボモータにより回転駆動され且つ前記固定側軸受部と前記可動側軸受部とによって上下両端部を回転可能に支持されたボールねじシャフトと、前記ボールねじシャフトに螺合し且つボールねじシャフトに沿って上下方向へ移動可能な主軸ヘッドと、前記サーボモータの回転速度を加工データに基づき制御するための速度制御手段とを有する工作機械の熱変位補正方法であって、
    前記サーボモータの回転速度に基づき前記ボールねじシャフトに発生する第1発熱量を求める第1ステップと、
    前記サーボモータの上昇温度を検出し、この上昇温度に基づきサーボモータから前記ボールねじシャフトに発生する第2発熱量を求める第2ステップと、
    前記第1発熱量,第2発熱量に基づき前記ボールねじシャフトを長さ方向に分割した複数区間の温度分布を演算する第3ステップと、
    前記温度分布から前記ボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって前記固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算する第4ステップと、
    前記サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて、前記コラムの熱膨張により発生する前記固定側軸受部上方への第2熱変位量を演算する第5ステップと、
    前記第2熱変位量から前記第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する第6ステップと、
    を備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  2. ベース上に固定され且つ鉛直上方に延びるコラムと、このコラムの上部に設けられたモータ取付台と、このモータ取付台に固定されたサーボモータと、前記モータ取付台の下端部分に設けられた固定側軸受部と、前記コラムの下部に設けられた可動側軸受部と、前記サーボモータにより回転駆動され且つ前記固定側軸受部と前記可動側軸受部とによって上下両端部を回転可能に支持されたボールねじシャフトと、前記ボールねじシャフトに螺合し且つボールねじシャフトに沿って上下方向へ移動可能な主軸ヘッドと、前記サーボモータの回転速度を加工データに基づき制御するための速度制御手段とを有する工作機械の熱変位補正装置において、
    前記サーボモータの回転速度を検出する速度検出手段と、
    前記サーボモータの上昇温度を検出する温度検出手段と、
    前記サーボモータの駆動電流値を検出する電流値検出手段と、
    前記速度検出手段によって検出した前記サーボモータの回転速度に基づき前記ボールねじシャフトに発生する第1発熱量を演算する第1発熱量演算手段と、
    前記温度検出手段によって検出した前記サーボモータの上昇温度に基づき該サーボモータから前記ボールねじシャフトに発生する第2発熱量を演算する第2発熱量演算手段と、
    前記第1発熱量演算手段によって演算した第1発熱量と、前記第2発熱量演算手段によって演算した第2発熱量とに基づいて、前記ボールねじシャフトを長さ方向に複数分割した複数の区間の温度分布を演算する温度分布演算手段と、
    前記温度分布演算手段によって演算した前記温度分布に基づいて前記ボールねじシャフトの各区間の第1熱変位量であって前記固定側軸受部に対する各区間の第1熱変位量を演算する第1熱変位量演算手段と、
    前記速度検出手段によって検出された前記サーボモータの回転速度と前記電流値検出手段によって検出された前記サーボモータの駆動電流値とに基づいて、前記コラムの熱膨張により発生する前記固定側軸受部の上方への第2熱変位量を演算する第2熱変位量演算手段と、
    前記第2熱変位量演算手段によって演算された第2熱変位量から前記第1熱変位量演算手段によって演算された前記第1熱変位量を減算することで加工データの補正量を演算する補正量演算手段とを備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。
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