JP5212600B2 - ゲート絶縁膜および有機トランジスタ - Google Patents
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Description
低温でゲート絶縁膜を形成する方法としては、ゲート電極表面を陽極酸化する方法(特許文献1参照)。化学気相堆積法による方法(特許文献2参照)などが提案されているが、これらはプロセスが煩雑であり、スピンコートや印刷法のように塗布で容易に成膜できる材料が望まれている。
また、150℃〜180℃といった低温工程で有機トランジスタを作製することを目的として、特定の可溶性ポリイミド樹脂とポリアミック酸との混合組成物を有機トランジスタの絶縁膜とした例もあるが、実際に作製された絶縁膜は最終的に200〜300℃で加熱処理されており、150℃〜180℃といった低温工程に適応させるための示唆はない(特許文献3参照)。
1. ポリイミド膜からなるゲート絶縁膜であって、このポリイミド膜は有機溶媒可溶性ポリイミドの溶液を、塗布し、180℃以下で焼成して得られた膜であり、かつ、この有機溶媒可溶性ポリイミドは、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を脱水閉環して得られたポリイミドであることを特徴とするゲート絶縁膜。
3. 上記1または2に記載のゲート絶縁膜が使用された有機トランジスタ。
式(1)のAは、下記(2)〜(6)から選ばれる少なくとも1種の4価の有機基である。
式(2)中、R1、R2、R3、R4、はそれぞれ独立に水素、フッ素または炭素数1〜4の有機基を表す。
式(1)のBにおける式(7)〜(16)の構造は、極性が低く適度な分子鎖長を有するなどの理由から、式(17)〜(19)の構造と組み合わせてポリイミドとしたときの溶解性のバランスが良く、また、ゲート絶縁膜としたときに有機トランジスタのゲートリーク電流を低減し、高電界を印加したときの絶縁性の劣化を抑制することができるという特徴を有する。
より具体的には、有機トランジスタにおける、オフ電流が小さい、ドレイン電流とゲート電圧のヒステリシスが小さい、閾値電圧の変動が小さいなどの特徴を改善することができる。
(上記において、AおよびBは式(1)の定義と同じである。)
また、重合反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘度が高くなり過ぎて均一な拡販が困難となるので、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。重合反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加しても構わない。
ポリアミド酸の重合反応に用いるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分の比率は通常モル比で1:0.5〜1:1.5であり、このモル比が1:1に近いほど得られるポリアミド酸の分子量は大きくなる。
触媒イミド化させるときの反応温度は−20〜250℃が好ましく、より好ましくは0〜180℃である。反応温度が高い方がイミド化は早く進行するが、高すぎるとポリイミドの分子量が低下する場合がある。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍が好ましく、より好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍が好ましく、より好ましくは3〜30モル倍である。反応温度及び触媒量を調整することで、得られるポリイミドのイミド化率を制御することができる。
ポリイミドの回収は、攪拌させている貧溶媒に反応液を投入してポリイミドを沈殿させ、これを濾過する方法が簡便である。この際に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、ヘキサン、ヘプタン、エタノール、トルエン、水などが例示できる。沈殿を濾過して回収した後は、上記貧溶媒で洗浄することが好ましい。回収したポリイミドは常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してポリイミド粉末とすることができる。このポリイミド粉末をさらに良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリマー中の不純物を更に少なくすることもできる。また、この際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がる。
イミド化率は、ポリイミドをd6−DMSO(ジメチルスルホキシド−d6)に溶解させ、1H−NMRを測定し、イミド化せずに残存しているアミド酸基の比率をプロトンピークの積算の比から求め算出したものである。
溶媒可溶性ポリイミドの溶液を基板に塗布した後の焼成方法としては特に限定されるものでないが、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で行う方法を例示することができる。焼成温度は180℃以下であるが、塗膜中の残存溶媒を少なくするという観点から40℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。焼成は2段階以上の温度変化をつけてもよい。段階的に焼成することでポリイミド膜の均一性をより高めることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、例えば、金、銀、胴、アルミニウム、カルシウムなどの金属や、カーボンブラック、フラーレン類、カーボンナノチューブなどの無機材料など、さらには、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレンおよびこれらの誘導体などの有機π共役ポリマーなどが挙げられる。
これらの電極材料は1種類で用いてもよいが、有機トランジスタの電界効果移動、オン/オフ比(以下On/Off比ともいう)の向上のため、もしくは閾値電圧の制御のために、複数の材料を組み合わせて用いてもよく、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極でそれぞれ異なる材料を用いてもよい。
これら電極の形成方法としては、真空蒸着、スパッタなどを用いるのが一般的である。ナノ金属インクや有機π共役ポリマーの場合は、スピンコート、スプレーコート、印刷、インクジェットなど、塗布型で電極形成できるので好ましい。
・GPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィ)装置{SSC−7200、センシュー科学社製}
・GPCカラム{KD−803/KD−805、昭和電工社製}
・カラム温度:50℃
・溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O)を30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)を10ml/L含有するもの)
・流速:1.0ml/分
・検量線作成用標準サンプル:東ソー社製のTSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)
窒素気流下中、200mLの4つ口フラスコに、p-フェニレンジアミン(以下p−PDAと略す) 4.86g(0.045mol)、4−ヘキサデシルオキシ−1、3−ジアミノベンゼン(以下APC18と略す) 1.74g(0.005mol)を入れ、NMP 122.5gに溶解させた後、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(以下TDAと略す) 15.01g(0.050mol)を加え、これを室温で10時間攪拌して重合反応を行った。得られたポリアミド酸の溶液をNMPで8重量%に希釈した。この溶液50gにイミド化触媒として無水酢酸10.8g、ピリジン5.0gを加え、50℃で3時間反応させポリイミド溶液を得た。この溶液を大量のメタノール中に投入し、得られた白色沈殿をろ別、乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は1H−NMRより90%イミド化されていることが確認された。この粉末4gをγ-ブチロラクトン 52.67gとブチルセロソルブ 10gの混合溶媒に溶解させて、ポリイミド(PI−1)の6重量%溶液を得た。得られたポリイミド(PI−1)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はそれぞれMn=18,000、Mw=54,000であった。
窒素気流下中、200mLの4つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下DDEと略す) 8.01g(0.040mol)を入れ、NMP 91.9gに溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(以下PMDAと略す) 8.20g(0.038mol)を加え、これを23℃で2時間攪拌して重合反応を行いさらにNMPで希釈することで、ポリアミド酸(PI−2)の6重量%溶液を得た。得られたポリアミド酸(PI−2)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はそれぞれMn=11,500、Mw=25,200であった。
窒素気流下中、100mLの4つ口フラスコに、p−PDA 2.53g(0.0234mol)、APC18 0.906g(0.0026mol)を入れ、NMP 83.62gに溶解させた後、4、4‘−[2、2、2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ジフタル酸無水物(以下6FDAと略す) 11.32g(0.0257mol)を加え、これを室温で4時間攪拌して重合反応を行った。得られたポリアミド酸の溶液をNMPで6重量%に希釈した。この溶液50gにイミド化触媒として無水酢酸2.66g、ピリジン2.06gを加え、50℃で2時間反応させポリイミド溶液を得た。この溶液を大量の純水中に投入し、得られた黄色沈殿をろ別、乾燥し、黄色のポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は1H−NMRより97%イミド化されていることが確認された。この粉末0.5gをNMP 5.5gとブチルセロソルブ 4.0gの混合溶媒に溶解させて、ポリイミド(PI−3)の6重量%溶液を得た。得られたポリイミド(PI−3)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はそれぞれMn=20,900、Mw=47,900であった。
触媒イミド化の温度を室温にした以外は、比較合成例2と同様の手順で、ポリイミド粉末(PI−4)を得た。このポリイミド粉末は1H−NMRより80%イミド化されていることが確認された。この粉末0.5gをNMP 5.5gとブチルセロソルブ4.0gの混合溶媒に溶解させて、PI−4の6重量%溶液を得た。
窒素気流下中、50mLの4つ口フラスコに、m−フェニレンジアミン(以下m−PDAと略す) 1.2652g(0.0117mol)、4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]−1,3−ジアミノベンゼン(以下PCH7ABと略す) 0.4947g(0.0013mol)を入れ、NMP 19.44gに溶解させた後、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物(以下CBDAと略す) 1.198g(0.00611mol)、TDA 1.9518g(0.0065mol)を加え、これを室温で24時間攪拌して重合反応を行った。得られたポリアミド酸の溶液をNMPで8重量%に希釈した。この溶液50gにイミド化触媒として無水酢酸10.8g、ピリジン5.0gを加え、50℃で3時間反応させポリイミド溶液を得た。この溶液を大量のメタノール中に投入し、得られた白色沈殿をろ別、乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は1H−NMRより90%イミド化されていることが確認された。この粉末2.34gをγ-ブチロラクトン 22.5gと ジプロピレングリコールメチルエーテル 4.4gの混合溶媒に溶解させて、ポリイミド(PI−5)の8重量%溶液を得た。得られたポリイミド(PI−5)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はそれぞれMn=10,900、Mw=18,500であった。
窒素気流下中、50mLの4つ口フラスコに、3,5‐ジアミノ安息香酸(以下DBAと略す) 1.5215g(0.01mol)、を入れ、NMP 18.1gに溶解させた後、TDA 3.0027g(0.01mol) を加え、これを50℃で24時間攪拌して重合反応を行った。得られたポリアミド酸の溶液をNMPで8重量%に希釈した。この溶液50gにイミド化触媒として無水酢酸9.2g、ピリジン4.3gを加え、50℃で3時間反応させポリイミド溶液を得た。この溶液を大量のメタノール中に投入し、得られた白色沈殿をろ別、乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は1H−NMRより90%イミド化されていることが確認された。この粉末3.22gをγ-ブチロラクトン 31.0gとジプロピレングリコールメチルエーテル 6.0gの混合溶媒に溶解させて、ポリイミド(PI−6)の8重量%溶液を得た。得られたポリイミド(PI−6)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はそれぞれMn=12,200、Mw=27,900であった。
Siウエハ上(厚み0.5mm)に、合成例1で調製したPI−1の溶液を、0.2μm孔フィルタを付けたシリンジで滴下し、スピンコート法により塗布した。その後大気下で、80℃のホットプレートで5分間加熱を行って有機溶剤を揮発させ、次いでSiウエハを1cm角に劈開したのち、180℃のホットプレートで60分焼成する事で、膜厚約200nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜からの脱ガス量をMw=16、18、44で測定した。測定結果を図3〜5に示す。ポリイミド膜からの脱ガスはほとんどみられておらず、PI−1の溶液を塗布し180℃で焼成して得られたポリイミド膜をゲート絶縁膜として用いた場合は、脱ガスによる有機トランジスタの性能劣化を引き起こす可能性が極めて低いと考えられる。
比較合成例1で合成したPI−2の溶液を用い、膜厚が約220nmであった以外は実施例1と同様にポリイミド膜を作製して脱ガス量を測定した。測定結果を図3〜5に示す。PI−2の溶液を用いた場合には、ポリイミド膜から極めて大量の脱ガスがMw=16、18、44の全てで観測された。即ち、上記の実施例1の結果と比べて、多くの脱ガスが見られ、特にMw=18で示されるH2Oは有機半導体層の劣化を促すと考えられる事から、脱ガスによる有機トランジスタの性能劣化が引き起こされる可能性が高いと考えられる。
ITO付きガラス基板(2.5cm角、厚み0.7mm)に、合成例1で調製したPI−1の溶液を、0.2μm孔フィルタを付けたシリンジで滴下し、スピンコート法により塗布した。その後、大気下で、80℃のホットプレートで5分間加熱を行って有機溶剤を揮発させ、次いで180℃のホットプレートで60分焼成することで、膜厚約220nmのポリイミド膜を得た。次に、ビーカーにアセトンを20mL入れ、液温を室温にした後、先ほどのポリイミド膜をこのアセトン中へ1分間浸漬させた。その後、ポリイミド膜にエアーを吹き付け乾燥させ、180℃のホットプレートで1分焼成させ、残膜率を評価した。残膜率は溶媒処理をする前の膜厚と、溶媒処理をした後の膜厚の比から計算した。この結果は後述する表1に示す。
比較合成例2で合成したPI−3の溶液を用い、ポリイミドの膜厚を約450nmとした以外は実施例2と同様に評価を行った。この結果は後述する表1に示す。
アセトン溶液に浸漬させることでPI−3の膜は完全に溶解した。即ち、PI−3は溶解性が非常に高く、PI−3を有機トランジスタ向けゲート絶縁膜として用いた場合、有機トランジスタの製造におけるプロセス条件が大幅に制限されることが明らかとなった。
ITO付きガラス基板(2.5cm角、厚み0.7mm)に、合成例1で調製したPI−1の溶液を、0.2μm孔フィルタを付けたシリンジで滴下し、スピンコート法により塗布した。その後大気下で、80℃のホットプレートで5分間加熱を行って有機溶剤を揮発させ、次いで180℃のホットプレートで60分焼成する事で、膜厚約188nmのポリイミド膜を得た。次にITO電極と測定装置の探針との良好なコンタクトを得るため、ポリイミド膜の一部分を削り取りITOを露出させた後、真空蒸着装置を用いてポリイミド膜上およびITO上に直径0.5mm、膜厚100nmのアルミニウム電極を積層させた。このときの真空蒸着条件は、室温、真空度3×10−3Pa以下、アルミニウム蒸着速度0.3nm/sec以下とした。このようにしてポリイミド膜の上下に電極を形成することで、ポリイミド膜の絶縁性評価用のサンプルを作製した。
このポリイミド膜は、2MV/cm以上の高電界を加えても、電流密度は10−9A/cm2以下であり、有機トランジスタ向けゲート絶縁膜として非常に優れた特性を示すことが判った。
比較合成例1で合成したPI−2の溶液を用い、膜厚を約160nmとし、焼成温度を220℃又は300℃とした以外は実施例3と同様にして絶縁性評価用の素子を作成し、電流−電圧特性を測定した。この結果を図6に示す。また、220℃で焼成したポリイミド膜の比誘電率は3.6であった。
このポリイミド膜は、2MV/cm以上の高電界を加えると、220℃焼成の場合は10−8A/cm2以上、300℃焼成の場合は10−4A/cm2以上のリーク電流が流れた。即ち、焼成温度が220℃や300℃といった高温で焼成したとしても、有機トランジスタ向けゲート絶縁膜として用いるのは困難である事が示された。
ITO付きガラス基板(2.5cm角、厚み0.7mm)に、合成例1で調製したPI−1の溶液を、0.2μm孔フィルタを付けたシリンジで滴下し、スピンコート法により塗布した。その後大気下で、80℃のホットプレートで5分間加熱を行って有機溶剤を揮発させ、次いで180℃のホットプレートで60分焼成する事で、膜厚約410nmのポリイミド膜を得た。また、この絶縁膜の静電容量Cは、比誘電率とポリイミドの膜厚から計算したところ、6.87×10−9(F/cm2)となった。次に、シグマ−アルドリッチより購入したHT結合を98.5%以上含むポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(以後、P3HTと略す)を十分に精製した後、Xyleneに1重量%溶解させ、P3HTの塗布溶液を調整した。成膜方法はスピンコート法を用い、酸素濃度0.5ppm以下の窒素雰囲気下で行った。つぎに溶媒を完全に揮発させるため、真空状態で100℃、90分間加熱処理した。つぎに、真空蒸着装置を用いてP3HT膜上に金を約60nm積層させ、チャネル長Lが90μm、チャネル幅Wが2mmのソース・ドレイン電極を形成した。また、真空蒸着時の条件は、室温、真空度3×10−3Pa以下、金の蒸着速度0.1nm/sec以下とした。このように作製した有機トランジスタを酸素濃度0.5ppm以下の窒素雰囲気下で一晩放置したのち、測定直前に一度大気に暴露して電気特性の評価を行った。
ID=WCμ(VG−VT)2/2L
比較合成例1で合成したPI−2の溶液を用い、膜厚を約370nmとした以外は実施例4と同様に有機トランジスタを作製し電気特性を測定した。結果を図7に示す。また、この絶縁膜の静電容量Cは、比誘電率とポリイミドの膜厚から計算したところ、8.85×10−9(F/cm2)となった。P3HTの移動度は1.1×10−3cm2/Vs、オフ電流は47.1nA、オン/オフ比は23となった。また、閾値電圧は有機トランジスタが完全なオフ状態を取る事が無かったので、測定できなかった。このように、PI−2の溶液を180℃で焼成したポリイミド膜をゲート絶縁膜に用いた有機トランジスタは、リーク電流が非常に大きく、また正常なオフ状態を取らなかったことから、有機トランジスタとして用いることは出来ない事が示された。
比較合成例2で合成したPI−3の溶液を用い、膜厚を約400nmとした以外は実施例4と同様に有機トランジスタを作製したが、PI−3の膜の平坦性が悪く有機トランジスタを正常に動作させることが出来なかった。
比較合成例3で合成したPI−4(イミド化率80%)の溶液を用いた以外は、実施例4と同様に有機トランジスタを作製し、電気特性を測定した。結果を図8に示す。PI−4の溶液を180℃で焼成したポリイミド膜をゲート絶縁膜に用いた有機トランジスタは、イミド化率が80%と高いにも関わらず、ドレイン電流は正常なオフ状態を取らなかった。
合成例2で合成したPI−5の溶液を用い、膜厚を200nmとした以外は実施例3と同様にして絶縁性評価用の素子を作成した。完成した素子は速やかに室温、湿度55%の大気雰囲気中に移し、雰囲気が安定するまで1時間放置させた後測定した。電圧は、アルミ電極側に0Vから+48Vまで+4V刻みで加えた。電流は、目的の電圧を印加してから3秒間の保持時間を設け測定した。このようにして測定した電流−電圧特性を電流密度と電界に変換してグラフ化したものを図9に示す。
このポリイミド膜は、2MV/cmで電流密度は4×10−9A/cm2であった。有機トランジスタ向けゲート絶縁膜として非常に優れた特性を示すことが判った。また、このポリイミド膜の比誘電率は3.2であった。
なお、実施例3と同様に窒素雰囲気中で電流−電圧特性を測定したところ、2MV/cmで電流密度は10−9A/cm2以下であった。
比較合成例4で合成したPI−6の溶液を用いた以外は実施例5と同様にして絶縁性評価用の素子を作成し、実施例5と同様の条件で電流−電圧特性を測定した。結果を図9に示す。
このポリイミド膜は、2MV/cmで電流密度は1×10−5A/cm2であった。有機トランジスタ向けゲート絶縁膜として用いた場合、大きなゲートリーク電流が流れると考えられる。また、このポリイミド膜の比誘電率は3.6であった。
なお、実施例3と同様に窒素雰囲気中で電流−電圧特性を測定したところ、2MV/cmで電流密度は10−9A/cm2以下であったことから、大気中の測定では、水分などの影響により大きな電流が流れたものと考えられる。
合成例2で合成したPI−5の溶液を用い、膜厚を400nmとした以外は実施例4と同様に有機トランジスタを作製した。測定雰囲気は大気(室温、湿度55%)、測定電圧はソース・ドレイン電圧を−40V、ゲート電圧を+20Vから−40Vとした。ゲート電圧は、+20Vから−2V刻みで−40Vまで加えた後、−40Vから+2V刻みで+20Vまで加えた。
有機トランジスタの特性を図10に示す。ヒステリシスも無く良好な特性が得られた。
比較合成例4で合成したPI−6の溶液を用い、膜厚を400nmとした以外は実施例4と同様に有機トランジスタを作製した。測定雰囲気は大気(室温、湿度55%)、測定電圧はソース・ドレイン電圧を−40V、ゲート電圧を+30Vから−40Vとした。ゲート電圧は、+30Vから−2V刻みで−40Vまで加えた後、−40Vから+2V刻みで+30Vまで加えた。
有機トランジスタの特性を図11に示す。正バイアス(逆バイアス)側で大きなドレイン電流が流れ、さらに、大きなヒステリシスがみられた。
なお、測定雰囲気を真空(5×10−2Pa以下)にしたところ、ヒステリシスも無く、オフ電流も大幅に低減し、正常な有機トランジスタとして動作したが、移動度が小さかった。
ここまでの有機トランジスタの電気特性の評価結果を表3及び表4にまとめる。
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 ソース電極、ドレイン電極
5 有機半導体層
Claims (3)
- ポリイミド膜からなるゲート絶縁膜であって、このポリイミド膜は有機溶媒可溶性ポリイミドの溶液を、塗布し、180℃以下で焼成して得られた膜であり、かつ、この有機溶媒可溶性ポリイミドは、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を脱水閉環して得られたポリイミドであることを特徴とするゲート絶縁膜。
(式中、Aは下記(2)〜(6)から選ばれる少なくとも1種の4価の有機基であって、Aの50モル%以上が下記(5)で表される構造であり、Bは下記(7)〜(16)から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基と、下記(17)〜(19)から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基とからなり、かつBの1〜30モル%は(17)〜(19)から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基であり、nは正の整数である。)
(式中、R1、R2、R3、R4、はそれぞれ独立に水素、フッ素または炭素数1〜4の有機基を表す。)
- 有機溶剤可溶性ポリイミドのイミド化率が50%以上である請求項1に記載のゲート絶縁膜。
- 請求項1または請求項2に記載のゲート絶縁膜が使用された有機トランジスタ。
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