JP5212268B2 - 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法 - Google Patents

多孔質バルブ金属陽極体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5212268B2
JP5212268B2 JP2009146900A JP2009146900A JP5212268B2 JP 5212268 B2 JP5212268 B2 JP 5212268B2 JP 2009146900 A JP2009146900 A JP 2009146900A JP 2009146900 A JP2009146900 A JP 2009146900A JP 5212268 B2 JP5212268 B2 JP 5212268B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrolysis
valve metal
porous
anode body
voltage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009146900A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011003804A (ja
Inventor
敏行 大迫
勲雄 安東
哲史 小向
有香 滝田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2009146900A priority Critical patent/JP5212268B2/ja
Publication of JP2011003804A publication Critical patent/JP2011003804A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5212268B2 publication Critical patent/JP5212268B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、固体電解コンデンサの陽極体などに用いられる多孔質バルブ金属陽極体、特に、タンタルまたはニオブからなる箔状の多孔質バルブ金属陽極体の製造方法に関する。
タンタル電解コンデンサおよびニオブ電解コンデンサは、小型、大容量、および高信頼性という特徴を有し、携帯電話、ノートパソコンに代表される小型電子機器に必要不可欠な電子部品である。近年の電子機器の低背化、高機能化に伴い、これらの電解コンデンサにも、低背化と高容量化が強く求められている。
従来のタンタル電解コンデンサおよびニオブ電解コンデンサでは、タンタルやニオブ粉末を圧粉および焼結することにより作製した多孔質ペレットを陽極体として用いているが、製法の本質上、陽極体の低背化には限界があり、得られる電解コンデンサの低背化にも、おのずと限界が生じている。また、陽極酸化の前工程となる多孔質ペレットの焼結は真空で行われ、焼結終了後に多孔質自体が空気雰囲気に晒されるため、陽極酸化前に多孔質ペレットに大気酸化皮膜がすでに形成されてしまっている。このため、処理後の誘電体皮膜が均質なものとならないという問題がある。
これに対して、タンタル箔やニオブ箔の上に、バルブ金属と該バルブ金属と相溶性を持たない異相成分とからなる混合膜を、スパッタリングなどで成膜し、真空中または不活性ガス中で熱処理をして、その後、硝酸で溶解することにより異相成分のみを選択的に除去し、引き続いて電解により陽極酸化を行うことで、バルブ金属多孔質層を有する箔状のバルブ金属陽極体を製造する方法が特許文献1に記載されている。
この方法により得られる箔状の多孔質バルブ金属陽極体により、電解コンデンサのさらなる低背化と高容量化が可能となり、電解コンデンサ用陽極体を製造するための有力な手段となるものである。
タンタル電解コンデンサおよびニオブ電解コンデンサにおいては、不純物の存在が陽極酸化皮膜の絶縁信頼性を損ねるため、従来の多孔質ペレットの場合、高純度タンタル粉末を用いている。同様の理由から、従来、バルブ金属多孔質層を有する箔状のバルブ金属陽極体の製造においても、異相成分を選択的に除去する工程において、硝酸を用いた酸洗浄という手段を採用している。
ただし、硝酸による異相成分の除去の際に、窒素酸化物のガスが発生するため、廃ガス処理設備が必要となり、硝酸中に異相成分が溶解した廃液が発生するため、硝酸廃液の処理設備も必要となる。かかる廃ガス設備や廃液設備の必要性は、製造コストを上昇させる要因となっている。
特開2006−49816号公報
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、電解コンデンサの低背化と高容量化を可能とする箔状の多孔質バルブ金属陽極体を、より低コストで作製するための手段を提供することを目的とする。
本発明のバルブ金属陽極体の製造方法は、バルブ金属箔集電体の少なくとも一方の面に、バルブ金属と該バルブ金属と相溶性を持たない異相成分とからなる混合膜を形成し、得られた混合膜を熱処理し、該混合膜の異相成分を選択的に除去し、得られたバルブ金属多孔質層を陽極酸化して多孔質バルブ金属陽極体を得る工程からなる。
特に、本発明では、前記異相成分の除去および前記バルブ金属多孔質層の陽極酸化をいずれも電解で行うことを特徴とする。
なお、本発明は、特に、前記バルブ金属およびバルブ金属箔集電体が、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、タンタル合金、およびニオブ合金のうちのいずれか一つから形成される、箔状の多孔質バルブ金属陽極体の製造に適用される。なお、バルブ金属とバルブ金属箔集電体は、上記材料から異なる材料を選択してもよいが、同じ材料を選択することが好ましい。
また、前記異相成分としては、銅を用いることが好ましい。
前記電解において、電解液として、リン酸水溶液、シュウ酸水溶液、および硫酸水溶液のうちのいずれか一つを用い、電気伝導度を、3mS/cm以上50mS/cm以下とすることが好ましい。
前記電解において、前記異相成分の除去のための電解を行った後、引き続き、前記バルブ金属多孔質層の陽極酸化のための電解を行ってもよい。
この場合、0.1V以上10V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行った後、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行うことが好ましい。
もしくは、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の中から選ばれる電流密度で定電流電解を行った後、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行うことが好ましい。
また、前記電解において、前記異相成分の除去のための電解と前記バルブ金属多孔質層の陽極酸化のための電解を同一工程で行ってもよい。
この場合、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行うことが好ましい。
本発明により、多孔質バルブ金属陽極体の製造において、低コストで多孔質バルブ金属陽極体を安定的に提供することが可能となる。よって、低背かつ高容量の電解コンデンサを低コストで供給することが可能となる。
箔状の多孔質バルブ金属陽極体は、バルブ金属と該バルブ金属と相溶性を持たない異相成分とからなる混合膜を形成し、得られた混合膜を熱処理し、該混合膜の異相成分を除去し、得られたバルブ金属多孔質層を陽極酸化する工程を経て得られる。前述の通り、従来、陽極酸化皮膜の絶縁信頼性の観点より、異相成分を選択的に除去する工程において、硝酸を用いた酸洗浄という手段を採用している。
本発明者らは、鋭意検討の結果、バルブ金属多孔質層の形成を、電解により混合膜から異相成分を除去することにより行うことで、陽極酸化皮膜の絶縁信頼性を損なうことなく、連続的若しくは同時的な電解工程により、異相成分の除去と得られたバルブ金属多孔質層の陽極酸化を実現でき、また、電解を所定条件に規制することで、バルブ金属多孔質層を損傷することなく多孔質バルブ金属陽極体を得ることができるとの知見を得て、本発明を完成したものである。
以下、バルブ金属としてタンタル(Ta)を用いる場合について、熱処理された混合膜から異相成分を除去して多孔質膜を形成し、該多孔質膜を陽極酸化処理して誘電体皮膜を形成する工程について詳細に説明する。なお、ニオブ(Nb)、タンタル合金、ニオブ合金をバルブ金属として用いた場合も、同様の操作および処理を行うため、これらについては説明を省略する。
(1)タンタルと異相成分とを混合成膜する工程
まず、タンタルと混じり合わない異相成分とを混合成膜する。混合成膜する手段としては、種々の手法が考えられるが、同時スパッタリング法または同時蒸着法を用いて、タンタルと異相成分を同時に混合成膜することが好ましい。これらの薄膜形成プロセスにおいては、原子あるいはクラスターレベルで飛来した物質が基材に付着することで薄膜が形成される。このため、タンタルと異相成分がナノオーダーで微細に混合された薄膜を、再現性よく容易に得ることができるためである。
成膜時の膜厚は、得ようとする多孔質層の厚さや表面積、すなわち目的とする静電容量を考慮して、任意に調節することが可能である。同じ成膜条件の場合、成膜面積に対する実際の表面積は、膜厚に比例して増加するため、膜厚を厚くすることにより、より大きな静電容量を得ることができる。
混合膜におけるタンタルに対する異相成分の添加量は、体積比で30%〜70%の範囲となるようにすることが望ましい。異相成分を選択的に除去し、タンタルからなる多孔質層を得るためには、異相成分とタンタルがそれぞれ構造的につながっている必要がある。異相成分が体積比で30%未満の場合、異相成分の構造的なつながりが悪くなり、引き続き行なわれる異相成分の除去工程で、異相成分が完全に除去されきれず、表面積の大きな多孔質構造が得られなくなる。一方、逆に、異相成分が体積比で70%を超える場合、タンタルの構造的なつながりが悪くなり、得られる多孔質構造の強度が弱くなる。
ただし、これはあくまでも目安であり、異相成分の添加量を制限するものではない。成膜方法によって異なる膜の配向の程度や、多孔質層の設計によっては、この範囲外の添加量を採用してもよい。
成膜時のタンタルと異相成分の組成比は、最終的に得られる多孔質層の空隙率を考慮して決定する。本発明においては、選択的に除去可能な異相成分を用いているため、最終的に得られる多孔質層内部には異相成分は残留しない。したがって、異相成分が多いほど、空隙率の大きい多孔質電極箔が得られることになる。
異相成分としては、タンタルに実質的に溶解しない金属成分、または、タンタルに対して熱力学的に安定な酸化物などから選択する。金属成分としては、マグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属のほか、銅、銀などの金属を用いることができる。ただし、後述する電解工程において、電解による異相成分の除去を行うには実質上銅または銀であることが好ましく、さらには経済性から銅を用いることが好ましい。
(2)真空熱処理することによりタンタルと異相成分とをそれぞれ粒成長させる工程
前記工程で得られた混合膜を真空中で熱処理することにより、タンタルと異相成分を粒成長させる。粒成長させることにより、タンタルと異相成分のそれぞれが構造的につながり、異相成分の完全な選択的除去、および、多孔質層の安定的な構造を得ることが可能となる。
(3)溶接工程
電解による異相成分の除去を行うために、熱処理された混合膜にリード線を溶接する。
(4)電解工程
本発明では、異相成分が酸化皮膜中に取り込まれる可能性のために採用され難いと考えられていた、異相成分の除去と多孔質バルブ層の陽極酸化を一つの連続した、あるいは同時的な電解によって行う点に特徴がある。
本発明の主眼は、多孔質バルブ陽極体の製造におけるコスト削減にあることから、電解液の種類は、異相成分除去用の電解液と陽極酸化用の電解液を同一にすることが好ましい。陽極酸化で使用できる電解液であるリン酸水溶液、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液は、異相成分の除去でも使用できることから、電解工程の電解液としては、これらのうちいずれか一つを採用することが好ましい。
電解液の温度に関して、異相成分の除去の観点からは、異相成分である銅(Cu)の溶解速度を大きくすることで、溶解時間の短縮化が図られるため、室温より高い40℃以上とすることが好ましい。一方、95℃を超えると、電解液の流動状態が激しくなり、異相成分の除去により生成される多孔質バルブ層を損傷させるおそれがあることから、95℃以下とすることが好ましい。
陽極酸化の観点からも、陽極酸化時間の短縮のために、室温より高い40℃以上とすることが好ましい。一方、95℃を超えると、電解液の流動状態が激しくなり、陽極酸化皮膜を損傷させるおそれがあることから、95℃以下とすることが好ましい。
以上のように、連続する、または同時的に行われる電解工程を通じて、電解液の温度を、40℃以上95℃以下に規制することが好ましいといえる。さらに好ましくは、60℃以上90℃以下の範囲とする。
上記の電解液の種類と電解液温度の範囲において、電解液の電気伝導度に関して、異相成分除去の観点からは、電気伝導度が3mS/cm未満の場合には、異相成分である銅(Cu)の溶解速度が小さくなるため、実際的ではない。一方、50mS/cmを超えると、銅の溶解が急激に進み、得られる多孔質バルブ層を損傷させる可能性があるので好ましくない。また、陽極酸化の観点からも、電気伝導度が3mS/cm未満の場合には、均一な陽極酸化皮膜が形成されないおそれがあり、漏れ電流の増加を招く可能性がある。一方、電気伝導度が高ければ陽極酸化の効率は上がるものの50mS/cm程度で十分な効率が達成されるため、電気伝導度を50mS/cm以下とすることが好ましい。
以上のように、連続する、または同時的に行われる電解工程を通じて、上記の電解液の種類と電解液温度の範囲において、電解液の電気伝導度を3mS/cm以上50mS/cm以下に規制することが好ましいといえる。さらに好ましくは、5mS/cm以上20mS/cm以下の範囲とする。
電解の制御方法としては、一般に用いられる定電流電解と定電圧電解を用いることができる。
異相成分の除去を定電圧電解で行う場合、0.1V以上10V以下の範囲から選ばれる電圧で定電圧電解を行うことが好ましい。0.1V未満の場合には、異相成分である銅(Cu)の溶解速度が小さくなって、その除去に多くの時間を要するため適切ではない。一方、10Vを超えると、銅の溶解と同時に実質的な陽極酸化が始まる。したがって、異相成分の除去を優先的に行わせる場合には、電圧を10V以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.5V以上2V以下の範囲から電圧を選択する。
異相成分の除去を定電流電解で行う場合、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の範囲から選ばれる電流密度で定電流電解を行うことが好ましい。0.001mA/μFV未満の場合には、異相成分である銅(Cu)の溶解速度が小さくなって、その除去に多くの時間を要するため適切ではない。一方、0.1mA/μFVを超える場合には、電圧上昇を招き、銅の溶解と同時に実質的な陽極酸化が始まる。したがって、異相成分の除去を優先的に行わせる場合には、0.1mA/μFV以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.005mA/μFV以上0.05mA/μFV以下の範囲から電流密度を選択する。
陽極酸化のための電解については、陽極酸化皮膜の厚みが電圧に比例するため、定電圧電解とすることが好ましく、電圧を3V以上100V以下の範囲から電圧を選択的に設定することが好ましい。陽極酸化において、酸化皮膜(誘電体)の厚さは印可する電圧に比例する(以下、このときの比例定数を「化成定数」と記す)。したがって、酸化皮膜(誘電体)の厚さは、化成定数と陽極酸化電圧の積で表すことができる。
タンタル(Ta)の場合、化成定数は1.7nm/Vである。
陽極酸化皮膜が生成される多孔質の粒径は、一般的に20nm〜30nmから最大300nm程度である。これらの粒径における酸化皮膜の厚みとしては、10nm以上で最大値としては150nm程度が想定される。
したがって、この陽極酸化皮膜に対応する電圧としては、3V以上100V以下とすることが好ましい。
また、3V未満の場合には、皮膜が薄すぎて不均一となり、漏れ電流を増加させる原因となるため好ましくない。100Vを超える場合には、皮膜が厚すぎるため割れが発生する可能性があり、漏れ電流を増加させる原因となるため好ましくない。
実際の電解における制御条件としては、次の3パターンがある。
電解パターンA:
ステップ1として、最初に異相成分の除去を目的とした電解を定電圧電解で行い、次にステップ2として、陽極酸化を目的とした電解を定電圧電解で連続的に行うパターンである。
ステップ1の電解は、0.1V以上10V以下の範囲から選ばれる電圧で定電圧電解を所定時間行い、ステップ2の電解は、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を所定時間行う。
ステップ1において、電解開始から所定電圧に到達するまでの期間、およびステップ2において所定電圧に到達するまでの期間においては、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の範囲から選ばれる電流密度で定電流を供給する。
電解パターンB:
ステップ1として、最初に異相成分の除去を目的とした電解を定電流電解で行い、次にステップ2として、陽極酸化を目的とした電解を定電圧電解で連続的に行うパターンである。
ステップ1の電解は、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の範囲から選ばれる電流密度で定電流電解を所定時間行い、ステップ2の電解は、3V以上100V以下の範囲から選ばれる電圧で定電圧電解を所定時間行う。
ステップ2において、所定電圧に到達するまでの期間は、ステップ1の電解で設定した電流密度で定電流を供給する。
電解パターンC:
異相成分の除去を目的とした電解と陽極酸化を目的とした電解を定電圧電解で同時に行うパターンである。
この場合についても、3V以上100V以下の範囲から選ばれる電圧で定電圧電解を所定時間行う。電解開始から所定電圧に到達するまでの電解は0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の範囲から選ばれる電流密度で定電流を供給する。
このように、電解パターンAのステップ1において電解開始から所定電圧に到達するまでの期間、ステップ2において所定電圧に到達するまでの期間、電解パターンBにおける所定電圧に到達するまでの期間、および電解パターンCにおける電解開始から所定電圧に到達するまでの期間において、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の範囲から選ばれる電流密度で定電流を供給する。これは、0.001mA/μFV未満の場合には、所定の電圧に到達するまでの期間が長く必要となり、実際的ではなく、0.1mA/μFVを超える場合には、所定の電圧に到達する期間は短くなるものの、全体の電解時間を考慮すると、その効果は小さいためエネルギー効率の観点より得策ではないためである。
本発明者の知見によれば、これらのパターンにおいて、得られる箔状の多孔質バルブ金属陽極体の特性には変化はなく、いずれのパターンも効率やコストの観点から適宜選択しうる。ただし、最終製品となる電解コンデンサに要求される性能とパターンが相関する場合には、より適切なパターンを適宜選択しうる。
[実施例1]
スパッタリングターゲットとして、純度99.99%のタンタル(Ta)ターゲットおよび銅(Cu)ターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)と、基材として、50mm×50mm、厚み50μmのTa箔(東京電解株式会社製)とを、多元スパッタリング装置(株式会社アルバック製、SBH−2206RDE)に設置し、1.0Paのアルゴン(Ar)雰囲気中、Ta−60vol%Cuの混合膜となるように電力比を調整し、TaターゲットおよびCuターゲットを同時にスパッタリングし、基材上にTa−60vol%Cuからなる厚み10μmの混合膜を基材の両面に形成した。得られた成膜材料を、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)中で、真空度5×10-3Pa以下の真空雰囲気で加熱を開始し、700℃×60minの条件で熱処理を行った。
熱処理後の成膜材料を10mm角に切断し、この切断片に直径0.2mmのニオブ(Nb)ワイヤー(東京電解株式会社製)を抵抗溶接した。
続いて、電気伝導度10mS/cm、80℃のリン酸水溶液中で、電解パターンAの電解を行った。
ステップ1の電解では、電圧0.5V、時間3hの定電圧電解を行って、異相成分であるCuをリン酸水溶液中に選択的に溶解除去させることで、バルブ金属多孔質層を形成した。このステップ1において電圧が0.5Vに到達するまでの電解初期においては、電流密度が0.01mA/μFVとなるように10mm角の成膜材料1個あたり25mAの定電流を供給した。
ステップ2の電解では、電圧10Vに到達するまでの期間においては、電流密度が0.01mA/μFVとなるように定電流を供給し、電圧10Vに到達後、時間6hの定電圧電解を行って、バルブ金属多孔質層の表面に酸化皮膜を形成した。
このようにして得られた多孔質バルブ金属陽極体を、イオン交換水で洗浄した後、40℃で12時間乾燥したのち30vol%の硫酸水溶液中に浸漬し、白金黒付き白金箔電極を対極として、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製、4263B)を用い、120Hz、DC1.5V、1.0Vrmsの条件で、静電容量を測定した。また、超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト製、R8340)を用い、7Vを印加して、5min後の漏れ電流を測定した。測定した漏れ電流(nA)を、静電容量(μF)と測定時の印加電圧(Vm)で割り、LC(nA/μFVm)を算出して得た。
その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例2]
熱処理工程において、1000℃×60minの条件で熱処理を行ったこと、ステップ1の電解工程において、電圧5V、時間0.5hの定電圧電解を行ったこと(なお、電圧が5Vに到達するまでの電解初期は、電流密度が0.01mA/μFVとなるように、10mm角の成膜材料1個あたり10mAの定電流を供給した)、ステップ2の電解工程において、電圧70Vに到達するまでの期間において、電流密度が0.01mA/μFVで定電流を供給し、電圧70Vに到達後、時間6hの定電圧電解を行ったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質バルブ金属陽極体を得て、その静電容量および漏れ電流を測定した。
その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例3]
電解工程においてパターンBの電解を行ったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質バルブ金属陽極体を得た。
具体的には、ステップ1の電解では、電流密度が0.01mA/μFV、時間0.5hの定電流電解を行って、Cuをリン酸水溶液中に選択的に溶解除去させることでバルブ金属多孔質層を形成した。この電流密度を得るためには、10mm角の成膜材料1個あたり25mAの電流を供給した。
ステップ2の電解では、実施例1と同様に、電圧10Vに到達するまでの期間においては、電流密度が0.01mA/μFVで定電流を供給し、電圧10Vに到達後、時間6hの定電圧電解を行って、バルブ金属多孔質層の表面に酸化皮膜を形成した。
得られた多孔質バルブ金属陽極体について、実施例1と同様に静電容量および漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例4]
ステップ1の電解において、電流密度が0.002mA/μFV、時間1hの定電流電解を行った(この電流密度を得るためには10mm角の成膜材料1個あたり5mAの電流を供給した)こと以外は、実施例3と同様にして、多孔質バルブ金属陽極体を得て、その静電容量および漏れ電流を測定した。
その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例5]
ステップ1の電解において、電流密度が0.1mA/μFV、時間0.1hの定電流電解を行った(この電流密度を得るためには10mm角の成膜材料1個あたり250mAの電流を供給した)こと以外は、実施例3と同様にして、多孔質バルブ金属陽極体を得て、その静電容量および漏れ電流を測定した。
その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例6]
電解工程においてパターンCの電解を行ったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質バルブ金属陽極体を得た。
具体的には、電流密度が0.1mA/μFVになるように10mm角の成膜材料1個あたり250mAの定電流を供給し、電圧10Vに到達後、時間6hの定電圧電解を行って、バルブ金属多孔質層の形成と酸化皮膜の形成とを同時に行った。
得られた多孔質バルブ金属陽極体について、実施例1と同様に静電容量および漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例7]
基材として50mm×50mm、厚み50μmのNb箔を用い、かかるNb箔の上にNb−60vol%Cuからなる厚み10μmの混合膜を基材の両面に形成し、高温真空炉中で、真空度5×10-3Pa以下の真空雰囲気で加熱を開始して850℃×60minの条件で熱処理を行ったこと、ステップ2における化成電圧を5.0Vとしたこと以外は、実施例1と同様に電解パターンAの電解を行い、多孔質バルブ金属陽極体を得て、その静電容量および漏れ電流を測定した。
その製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例8]
電解工程においてパターンBの電解を行ったこと以外は、実施例7と同様にして多孔質バルブ金属陽極体を得た。
具体的には、実施例3と同様に、ステップ1の電解では、電流密度が0.01mA/μFV、時間0.5hの定電流電解を行い(この電流密度を得るためには、10mm角の成膜材料1個あたり25mAの電流を供給した)、ステップ2の電解では、電圧10Vに到達するまでの期間においては、電流密度が0.01mA/μFVで定電流を供給し、電圧10Vに到達後、時間6hの定電圧電解を行った。
得られた多孔質バルブ金属陽極体について、実施例1と同様に静電容量および漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表1に示す。
[従来例1]
実施例1と同様にして得た成膜材料について、実施例1と同様の熱処理を行った後、得られた熱処理後の成膜材料を2.3mol/L(リットル)の硝酸水溶液に浸漬し、Cuを選択的に溶解除去した。その後、純水洗浄、乾燥を行なって、両面にTa多孔質層が形成された陽極体を作製した。
陽極体を10mm角に切断し、スポットウエルダで直径0.2mmのNbワイヤーをリードとして取り付けた後、陽極酸化処理を行って、誘電体皮膜を形成した。すなわち、電気伝導度10mS/cm、80℃のリン酸水溶液中で、電圧10Vに到達するまでの期間においては、電流密度が0.01mA/μFVで定電流を供給し、電圧10Vに到達後、時間3hの定電圧電解を行って、多孔質層の表面に酸化皮膜を形成した(電解パターンD)。
これをイオン交換水で洗浄した後、40℃で12時間乾燥して多孔質バルブ金属陽極体を得た。以下、実施例1と同様に、静電容量と漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表2に示す。
[従来例2]
電解パターンDにおいて、時間6hの定電圧電解を行ったこと以外は、従来例1と同様にして、多孔質バルブ金属陽極体を得て、静電容量と漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表2に示す。
[従来例3]
実施例7と同様にして得た成膜材料について、実施例7と同様の熱処理を行った後、得られた熱処理後の成膜材料を2.3mol/Lの硝酸に浸漬し、Cuを選択的に溶解除去した。その後、純水洗浄、乾燥を行なって、両面にNb多孔質層が形成された陽極体を作製した。
陽極体を10mm角に切断し、スポットウエルダで直径0.2mmのNbワイヤーをリードとして取り付けた後、陽極酸化処理を行って、誘電体皮膜を形成した。すなわち、電解パターンDにより、電気伝導度10mS/cm、80℃のリン酸水溶液中で、電圧5.0Vに到達するまでの期間においては、電流密度0.01mA/μFVで定電流を供給し、電圧5.0Vに到達後、時間6Hの定電圧電解を行って、多孔質層の表面に酸化皮膜を形成した。これをイオン交換水で洗浄した後、40℃で12時間乾燥して多孔質バルブ金属陽極体を得た。以下、実施例1と同様に、静電容量と漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表2に示す。
[従来例4]
電解パターンDにおいて、電圧10Vの定電圧電解を行ったこと以外は、従来例3と同様にして、多孔質バルブ金属陽極体を得て、静電容量と漏れ電流を測定した。その製造条件および測定結果を表2に示す。
Figure 0005212268
Figure 0005212268
[評価]
実施例の結果から、熱処理された混合膜から異相成分を除去してバルブ金属多孔質層を形成する工程と陽極酸化処理して酸化(誘電体)皮膜を形成する工程を連続的もしくは同時的に一括に行い工程数を減らしても、従来の特性と同じ多孔質バルブ金属陽極体を作製できることが理解される。わかった。
このため、排気設備なども必要なく、バルブ金属多孔質層や酸化皮膜を損傷することなく、箔状の多孔質バルブ金属陽極体の製造コストを低減できる。
本発明は、低背化と高容量化が求められている固体電解コンデンサに用いられる陽極体として、性能に優れている多孔質バルブ金属陽極体を、低コストでかつ安定して供給可能とするものである。

Claims (5)

  1. バルブ金属箔集電体の少なくとも一方の面に、タンタル、ニオブ、タンタル合金、およびニオブ合金のうちのいずれか一つからなるバルブ金属と、銅からなる混合膜を形成し、得られた混合膜を熱処理し、該混合膜から前記銅を選択的に除去し、得られたバルブ金属多孔質層を陽極酸化して多孔質バルブ金属陽極体を得る工程において、前記の除去および前記バルブ金属多孔質層の陽極酸化を一つの連続した、あるいは同時的な電解によって行うことを特徴とする、多孔質バルブ金属陽極体の製造方法。
  2. 前記電解において、電解液として、リン酸水溶液、シュウ酸水溶液、および硫酸水溶液のうちのいずれか一つを用い、電解液の電気伝導度を、3mS/cm以上50mS/cm以下とすることを特徴とする、請求項に記載の多孔質バルブ金属陽極体の製造方法。
  3. 前記電解において、0.1V以上10V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行って、前記を除去した後、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行って、前記バルブ金属多孔質層を陽極酸化することを特徴とする、請求項に記載の多孔質バルブ金属陽極体の製造方法。
  4. 前記電解において、0.001mA/μFV以上0.1mA/μFV以下の中から選ばれる電流密度で定電流電解を行って、前記を除去した後、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行って、前記バルブ金属多孔質層を陽極酸化することを特徴とする、請求項に記載の多孔質バルブ金属陽極体の製造方法。
  5. 前記電解において、3V以上100V以下の中から選ばれる電圧で定電圧電解を行って、前記の除去と前記バルブ金属多孔質層の陽極酸化とを同一工程で行うことを特徴とする、請求項に記載の多孔質バルブ金属陽極体の製造方法。
JP2009146900A 2009-06-19 2009-06-19 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法 Expired - Fee Related JP5212268B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009146900A JP5212268B2 (ja) 2009-06-19 2009-06-19 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009146900A JP5212268B2 (ja) 2009-06-19 2009-06-19 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011003804A JP2011003804A (ja) 2011-01-06
JP5212268B2 true JP5212268B2 (ja) 2013-06-19

Family

ID=43561507

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009146900A Expired - Fee Related JP5212268B2 (ja) 2009-06-19 2009-06-19 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5212268B2 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004304167A (ja) * 2003-03-20 2004-10-28 Advanced Lcd Technologies Development Center Co Ltd 配線、表示装置及び、これらの形成方法
JP4561428B2 (ja) * 2004-07-05 2010-10-13 住友金属鉱山株式会社 多孔質バルブ金属薄膜、その製造方法および薄膜キャパシタ
JP2007305780A (ja) * 2006-05-11 2007-11-22 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 金属多孔質箔状陽極体およびその製造方法
JP5135749B2 (ja) * 2006-09-28 2013-02-06 栗田工業株式会社 リン酸含有水からリン酸を回収する方法および装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011003804A (ja) 2011-01-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI478185B (zh) 超級電容器及其製造方法
JP5411156B2 (ja) コンデンサ素子の製造方法
JP4561428B2 (ja) 多孔質バルブ金属薄膜、その製造方法および薄膜キャパシタ
MX2009001523A (es) Productos semiacabados con superficie activa sinterizada estructurada y proceso para su produccion.
JP4614269B2 (ja) 固体電解コンデンサ
KR101251101B1 (ko) 다공질 밸브 금속박막, 그 제조방법 및 박막 콘덴서
US9607770B2 (en) Method for producing capacitor
JP4665866B2 (ja) バルブ金属複合電極箔の製造方法
JP5212268B2 (ja) 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法
CN103295783B (zh) 一种电解电容器的制造方法
JP2007305780A (ja) 金属多孔質箔状陽極体およびその製造方法
JP4985582B2 (ja) タンタル多孔質膜の製造方法およびタンタル多孔質電極箔の製造方法
JP2008047755A (ja) バルブ金属複合電極箔の製造方法
JP5223517B2 (ja) 箔状の多孔質バルブ金属陽極体およびその製造方法
JP3959680B2 (ja) アルミニウム電解コンデンサ陽極箔のエッチング方法
JP5201109B2 (ja) 電解コンデンサ用多孔質電極の製造方法
JP2008252019A (ja) 薄膜キャパシタの製造方法
JP2009152273A (ja) 電解コンデンサ用多孔質電極およびその製造方法
JPWO2015166670A1 (ja) タングステン系コンデンサ素子の製造方法
JP2009543369A (ja) 電解コンデンサーの製造における改善
JP2008021761A (ja) バルブ金属複合電極箔およびその製造方法
JP5152065B2 (ja) 多孔質バルブ金属陽極体の製造方法
JP5840821B1 (ja) タングステンコンデンサ素子及びその製造方法
JP2011198873A (ja) 多孔質バルブ金属電極の製造方法
JP5099831B2 (ja) 固体電解コンデンサの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110902

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121030

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121228

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130129

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130211

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5212268

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160308

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees