JP5207922B2 - 表面硬装用バインダレス粉末 - Google Patents

表面硬装用バインダレス粉末 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、肉盛、溶射等に好適な、優れた耐酸化性を備えるとともに高硬度・高分散性を有する、WとTiの複合炭化物粒子あるいはWとTiと副金属成分Mの複合炭化物粒子からなる表面硬装用バインダレス粉末に関するものである。
従来、炭化物粒子の製造法としては、
(イ)金属と炭素の金属浴中拡散による合成法(いわゆる、メンストラム法)、
(ロ)金属粉末と炭素粉末の固相・気相拡散による熱合成法、
(ハ)金属酸化物粉末と炭素粉末の還元炭化法、金属粉末の気相炭化法、
(ニ)金属ハロゲン化物と炭化水素の反応を利用した製法、
(ホ)メカニカルアロイング等、
種々の方法が知られている。
しかしながら、これらの炭化物粒子を、表面硬装用に用いようとした場合、硬質粉末粒子の粒径は数十μm以上、かつ、高密度であることが好ましいが、上記(ロ)〜(ホ)の製造法により得たものは微細粒子であるため、バインダ金属を添加して粉末冶金法による焼結をしなければならない。
例えば、特許文献1として示す従来技術においては、上記硬質粒子にCo、NiあるいはFe等のバインダ成分を添加混合し、所定粒径に造粒・焼結した粒子、あるいは、焼結・粉砕・整粒した粒子を、プラズマガスを利用したPTA(Plasma Transferred Arc)溶接で肉盛溶接することにより、母材表面に硬質粒子が分散分布する肉盛部を形成していた。
また、他の従来技術として、例えば、アーク熱で母材表面に形成した溶融池に、上記造粒複合粉末を添加することにより、肉盛部を形成することも行なわれていた。
ところで、上記の各従来技術においては、肉盛用粉末としては、WC、TiC等の硬質粒子にCo、Ni、Feからなるバインダ成分を加えた混合粉末を使用することが必要とされるとともに、形成された肉盛部においては、WC、TiC等の硬質粒子がその比重差(例えば、WCの比重は約15.7、一方、TiCの比重は約4.9)により肉盛時に沈み込みや浮き上がり現象を生じ、硬質粒子の均一分散が行なわれないため、肉盛部の組織、硬さ分布が不均一になりやすいという欠点があった。
また、ステンレス鋼等のマトリックス材を用いて肉盛を行ったような場合には、マトリックス材への硬質粒子の溶け込みが生じ肉盛部の硬質粒子含有割合が減少することにより、肉盛部全体としての硬さ上昇が十分でないという問題点があった。
特開平7−32189号公報
そこで、本発明は、表面硬装用の硬質粉末として、肉盛時に沈み込みや浮き上がりを生じることなく、また、マトリックス材への硬質粒子の溶け込み量が少なく、さらに、Co、Ni、Fe等のバインダ成分を用いる必要がない、優れた耐酸化性を備え、高硬度かつ硬質粒子が均一に分散する硬装肉盛を形成することができる表面硬装用バインダレス粉末を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、硬質粉末の種類とその製法の関連について、鋭意研究を行ない、以下の知見を得た。
表面硬装用粉末としてのWC粒子、TiC粒子あるいはNbC粒子それぞれ単独の粒子については、例えば、図1に示す概略工程からなる金属と炭素の金属浴中拡散による合成法(以下、メンストラム法と略称する。)等により従来から製造されてきており、これらを硬装用粉末として用いて肉盛した場合、所定の硬さの肉盛部が形成されることが知られている。
ところで、本発明者らは、WC粒子単独あるいはTiC粒子単独ではなく、WとTiの複合炭化物(以下、(W,Ti)Cで示す)粒子を、上記メンストラム法で製造したところ、硬装用粉末として極めて優れた特性を有する(W,Ti)C粒子が得られることを見出した。
即ち、メンストラム法により得られた(W,Ti)C粒子は、その結晶構造が立方晶構造であって、ほぼ球状に近い形状を有するとともに、粗大な粒径(20〜200μm)を有する粒子であって、これを硬装用粉末として使用する場合にも、Co、Ni、Fe等のバインダ成分を添加混合する必要はなく、さらに、例えばPTA溶接によって形成した肉盛部には、(W,Ti)C粒子の沈み込みや浮き上がりが極めて少なく、また、ステンレス鋼等のマトリックス材への硬質成分の溶け込みも少ない。
したがって、本発明(請求項1)の表面硬装用粉末によれば、バインダ成分の使用を不要とするばかりか、従来の肉盛部の特性と比較して、優れた耐酸化性を備えるとともに、肉盛部の硬質粒子が均一に分散する高硬度な硬装肉盛を得ることができる。
また、本発明者らは、前記同様、WとTiとM(但し、Mは、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上)の複合炭化物(以下、(W,Ti,M)Cで示す。なお、(W,Ti)Cおよび(W,Ti,M)Cの両者を総称して、(W,Ti(M))Cで示す)粒子について、メンストラム法により製造したところ、硬装用粉末として、前記(W,Ti)C粒子と比較してさらに一段と優れる特性を有する(W,Ti,M)C粒子が得られることを見出した。
即ち、前記(W,Ti)C粒子の場合と同様、得られた(W,Ti,M)C粒子は、立方晶構造であって、ほぼ球形状かつ粗大粒径を有する粒子であり、これを硬装用粉末として使用する場合には、Co、Ni、Fe等のバインダ成分の添加混合は不要であり、また、肉盛部に、(W,Ti,M)C粒子の沈み込み、浮き上がりはなく、マトリックス材への溶け込みも少ないことを確認するとともに、さらに、副金属成分Mを、含有量合計で20質量%以下、好ましくは10〜20質量%、添加含有することによって以下のごとき優れた作用効果が奏されることも確認した。
副金属成分Mは、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上からなるが、Nb成分あるいはTa成分はマトリックス成分との濡れ性改善、Zr成分あるいはV成分は高硬度化、マトリックスの強化という作用効果を奏し、(W,Ti,M)C粒子の靭性、硬度等をさらに向上させる。
したがって、本発明(請求項2)の表面硬装用粉末によれば、バインダ成分の使用不要、肉盛部の良耐酸化性、高硬度、高分散に加え、靭性、硬度等の点で、より一段と優れた特性を有する硬装肉盛を形成することができるのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 金属と炭素の金属浴中拡散で合成されたWとTi複合炭化物粒子からなり、原料からの持ち込みにより含有されるCo、NiおよびFeからなる金属成分を含有量合計で3質量%以下に抑え、かつ、平均粒径が20〜200μmである、耐酸化性と高硬度・高分散性を有する表面硬装用バインダレス粒子粉末。
(2) 金属と炭素の金属浴中拡散で合成されたWとTiと副金属成分M(但し、Mは、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上)複合炭化物粒子からなり、原料からの持ち込みにより含有されるCo、NiおよびFeからなる金属成分を含有量合計で3質量%以下に抑え、また、副金属成分Mを含有量合計で20質量%以下含有し、かつ、平均粒径が20〜200μmである、耐酸化性と高硬度・高分散性を有する表面硬装用バインダレス粒子粉末。」
に特徴を有するものである。
以下に、本発明について、より具体的かつ詳細に説明する。
「金属と炭素の金属浴中拡散で合成された」とは、要するに、「金属浴中で炭化物を析出、酸処理により金属分を分解し余剰な炭素を選鉱により取り除き、目的とする炭化物を得る製法(メンストラム法)により得られた」という技術的意味であるが、メンストラム法による炭化物の製造を、まず説明すると次のとおりである。
図1に工程図を示すように、メンストラム法は、Fe−炭化物生成金属(またはFe+炭化物生成金属)+Cからなる原料を、2000℃以上の溶融金属浴(浴は、Feのほか、Mn,Co,Ni,Cu,Al等を含んでいてもよい)からなる熱処理炉中で炭化物を合成し、ついで、酸処理し、Feの他、目的物以外の炭化物を分解し、ついで、選鉱工程で水洗・篩分・比重選鉱を行って、高品位目的炭化物を得ると同時に不純物を分離除去し、その後さらに、乾燥・篩分を行って、所望の炭化物を得る製法である。
本発明では、上記メンストラム法において、配合原料の種類・組成を種々変更し、各種の炭化物を製造したところ、WとTiを主要金属成分とし、質量比で、WC/TiC=60/40〜70/30の組成割合に相当する(W,Ti)C粒子、さらに、これに副金属成分M(但し、Mは、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上)を含有量合計で20質量%以下(好ましくは、10〜20質量%)含有する(W,Ti,M)C粒子を得ることができた。
上記メンストラム法で得られたこれらの炭化物粒子は、いずれも粒子形状がほぼ球状で、かつ、平均粒径は20〜200μmの粗大粒径を有していた。
そして、W,Ti,Mの配合割合によって多少の変化はあるものの、得られた上記(W,Ti(,M))C粒子の硬度(Hv)はほぼ2600、また、組成・配合による狙い比重の均一硬質粒子であるため、上記(W,Ti(,M))C粒子を表面硬装用粒子粉末として用いた場合に、肉盛部において硬質粒子の沈み込みや浮き上がりが生じることはなく、肉盛部全体にわたって均一な硬質粒子の分布が形成され、その結果、均一な硬度分布、均質な肉盛組織を有する肉盛部が形成される。
また、上記(W,Ti(,M))C粒子は、Co、Ni、Fe等のバインダ成分を添加混合しないで肉盛部を形成することができるため、Co、Ni、Fe等のバインダ成分を使用した従来の肉盛部に比して、バインダ使用による硬度低下はなく、より高硬度の肉盛部を形成し得る。なお、主として原料からの持ち込みにより、(W,Ti(,M))C粒子に微量のCo、Ni、Feが含有される場合があるが、その含有量合計が3質量%以下であれば、肉盛部特性への大きな影響はないことから、これらの金属成分は合計含有量が3質量%以下の範囲内で含有することが許容されるものの、その含有量が3質量%を超えるようになると、肉盛部における軟質成分(Co、Ni、Fe)の増加によって肉盛部の硬度低下が生じるようになることから、(W,Ti(,M))C粒子におけるCo、Ni、Feからなる金属成分の含有量は、合計量で3質量%以下(即ち、質量で、(Co+Ni+Fe)/(Co+Ni+Fe+W+Ti(+Nb+Ta+Zr+V))≦0.03)に抑えなければならない。
さらに、上記(W,Ti(,M))C粒子は、ほぼ球状かつ大粒径の硬質粒子であるため、肉盛に際し、ステンレス鋼等のマトリックス材を使用した場合にも、マトリックス材への(W,Ti(,M))C粒子の溶け込みが少ないため、硬質成分の溶け込みによる硬度低下を生じることがなく、その結果、肉盛部全体にわたって、高硬度を維持することができる。
また、硬質成分の溶け込みが少ないということは、硬質成分の存在によって肉盛部のマトリックス硬度に大きな変化は生じないということであるから、使用するマトリックス材の硬度を適宜選択することにより、肉盛部のマトリックス硬度を所望硬度範囲内に、容易にかつ幅広く調整することが可能である。
なお、メンストラム法以外の製法として、例えば、WC+TiCの固溶合成、W+Ti+C、W+酸化Ti+C、酸化W+酸化Ti+Cによる合成等もあるが、これらの方法で(W,Ti(,M))C粒子を製造したところ、いずれの方法によっても、本発明でいう20〜200μmの平均粒径の粗大かつ高密度な粒子を得ることはできなかった。あるいは、20〜200μmの粗大かつ高密度な粒子は、ほとんど形成されなかった。
メンストラム法によって得た(W,Ti(,M))C粒子は、篩分けによって粒径を調整し、全粒子が平均粒径20μm以上の球状粒子となるように調製されるが、平均粒径が20μm未満では、マトリックス材への溶け込み量が増加し、肉盛部全体としての硬度低下をきたし、あるいは、肉盛部の硬度調整が困難になり、一方、平均粒径が200μmを超えると、肉盛部の充填率が低下(密度が低下)し脆化傾向を示すようになるので、(W,Ti(,M))C粒子の平均粒径は20〜200μmと定める。
本発明の表面硬装用粒子粉末は、WとTi(と副金属成分M)複合炭化物粒子からなり、Co、Ni、Feの含有量を低減した平均粒径が20〜200μmの、金属と炭素の金属浴中拡散で合成された(メンストラム法により製造した)耐酸化性と高硬度・高分散性を有する表面硬装用バインダレス粒子粉末であって、これを肉盛に使用した場合に、肉盛部はすぐれた耐酸化性を有し、また、肉盛部には、硬質粒子の浮き上がり、沈み込みを生じることはなく、硬質(W,Ti(,M))C粒子が均一分散しているため均質な肉盛組織を有し、さらに、Co、Ni、Feからなる金属成分をバインダとして使用していないので、粒子の硬度を高めることができ、さらにまた、硬質(W,Ti(,M))C粒子は、球状粗大粒子であってマトリックスに対する溶け込みが少ないことから高硬度を保持し、あるいは、マトリックス材を選択することにより、肉盛部のマトリックス硬さを容易に所望値に調整することができるので、肉盛、溶射等の表面硬装用に非常に好適な(W,Ti(,M))C粒子粉末であるといえる。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明(請求項1)の実施例として、表1に示す(W,Ti)C粒子粉末をメンストラム法により製造した。
即ち、図2において、25質量%Fe−Ti合金(17kg)、W粉(23kg)および炭素粉(5kg)の割合で配合した原料を、直流通電加熱方式のアーク熱処理炉内に装入し、2000℃以上の溶融金属浴中で炭化物を合成し、ついで、80℃の塩酸で酸処理し、Feの他、目的物以外の炭化物を分解し、ついで、選鉱工程で水洗・篩分・比重選鉱を行って、不純物を分離除去し、その後さらに、乾燥・篩分を行って、平均粒径が20〜200μmのWC/TiC=60/40質量%に相当するタングステンとチタンの複合炭化物((W,Ti)C)粒子粉末を得た。
得られた(W,Ti)C粒子粉末(以下、本発明例1という)について測定した、平均粒径(μm)、硬度(Hv)、比重、耐酸化性(酸化開始温度。℃)およびCo、Ni、Feの合計含有量(質量%)の値を表1に示す。
なお、酸化開始温度(℃)は、示差熱天秤による大気中TG−DTA測定によって求めた。
比較のため、メンストラム法でNbC,WC,TiC,超硬,サーメットの粉末粒子についても製造し、その粒子粉末の平均粒径(μm)、硬度(Hv)、比重、耐酸化性(酸化開始温度。℃)およびCo、Ni、Feの合計含有量(質量%)を測定した。その値を、同じく表1に示す。

次に、本発明例1の(W,Ti)C粒子粉末を用いて、プラズマガスを利用したPTA(Plasma Transferred Arc)溶接で肉盛溶接することによりPTA肉盛試験を実施した。
表2に示す溶接条件で、図3に示す寸法・形状の溶接試験片をPTA肉盛溶接で作成した。
また、比較のため、メンストラム法で製造した前記NbC,WC,TiC,超硬,サーメットの各粒子粉末(比較例1〜5)についても、上記本発明例1と同一の条件でPTA肉盛試験を実施した。
本発明例1により形成された肉盛部の断面写真を図4(a)に、また、走査電子顕微鏡による観察された肉盛部の組織状態を図5(a)に示し、さらに、比較例1〜5により形成された肉盛部の断面写真をそれぞれ図4(b)〜(f)に、また、走査電子顕微鏡による観察された肉盛部の組織状態をそれぞれ図5(b)〜(f)に示す。
まず、表1の本発明例1に見られる様に、本発明例1の(W,Ti)C粒子粉末は、硬度、酸化開始温度ともにTiC粉末に次いで高く、また、その比重は8.3と均一(当然のことながら)である。
そして、本発明例1の(W,Ti)C粒子粉末を、硬装用粉末として使用した場合、図4(a)に示されるように、浮き上がり、沈み込みを生じることはなく、肉盛部に硬質粒子が均一に分散する均一組織・高分散組織を有しており、また、図5(a)に占めされるように、マトリックス硬度は400〜600、粒子硬度は2500〜2800であって肉盛部は高硬度であり、かつ、耐酸化性に優れるものである。
一方、表1に比較例3として示されるように、TiC粉末自体は硬度が2900Hv、また、酸化開始温度も840℃と非常に高く、硬度、耐酸化性ともに本発明の(W,Ti)C粒子粉末より優れており、また、図5(d)に示されるように、TiC粒子粉末を用いて、PTA肉盛溶接を行った肉盛部は、マトリックス硬度は300〜550、粒子硬度は2800〜3200であって、肉盛部は高硬度を有する。
しかし、図4(d)に示されるように、TiC粒子粉末を用いて形成した肉盛部には、硬質粒子の浮き上がり現象が生じており、肉盛部上方にはTiC硬質粒子が偏在し、母材近傍にはマトリックス材(SUS316L)が偏在しており、肉盛部全体にわたっての高分散組織・均一組織が得られていない。したがって、TiCを硬装用粒子粉末として用いた場合には、硬質成分の不均質分布により肉盛部硬さが不均一となり、信頼性のある肉盛部を得ることができない。
また、その他の粒子粉末NbC,WC,超硬,サーメット(比較例1、2、4、5)については、表1に示されるとおり、本発明例1の(W,Ti)C粒子に比して、硬度、耐酸化性がいずれも劣るものであった。
さらに、その他の粒子粉末を用いてPTA溶接によって肉盛部を形成した場合、例えば、NbC粒子粉末の場合には、図4(b)に示されるように、肉盛部における硬質粒子の均一分散は図れるものの、図5(b)にも示されるように、肉盛部のマトリックス硬度、粒子硬度ともに低く、また、耐酸化性も低い(表1において、酸化開始温度は580℃)ため、硬装用粒子粉末としては満足できる特性を有するとはいえない。
WC粒子粉末の場合には、図4(c)に示されるように、肉盛部において硬質粒子の偏析が生じるため、不均一肉盛組織を呈し、また、図5(c)に示されるように、粒子硬度が低い一方で、硬質粒子の溶け込みによりマトリックス硬度が上昇しているが、肉盛部全体としての硬さが不足し、また、耐酸化性も低いため、硬装用粒子粉末としては満足できる特性を有するものではない。
超硬粒子粉末の場合には、図4(e)に示されるように、肉盛部においてほとんどの超硬粒子がマトリックスに溶け込んで(溶融して)おり、また、図5(e)に示されるように、超硬粒子の溶け込みによりマトリックス硬度は上昇するものの、肉盛部全体としての硬さが不足し、また、耐酸化性も低いため、硬装用粒子粉末として満足できるものではない。
サーメット粒子粉末の場合には、図4(f)に示されるように、肉盛部においてほとんどのサーメット粒子がマトリックスに溶け込んで(溶融して)おり、また、図5(f)に示されるように、肉盛部全体としての硬さが不足するため、硬装用粒子粉末として満足できるものではない。
上記PTA試験の結果を踏まえ、硬質粒子硬度、耐酸化性、肉盛部における硬質粒子の残留量(溶け込みやすさに反比例)、分散性(肉盛部における硬質粒子の均一分布)、マトリックスの硬度の観点から、表面硬装用粒子粉末としての適正総合評価を行うと、表3のとおりとなる。
表3によれば、本発明(請求項1)の(W,Ti)C粉末は、粒子自体の硬度が高く、マトリックスへの溶け込みも少なく、肉盛部内での分散性も高く、耐酸化性にも優れるため、表面硬装用粒子粉末として好適であることがわかる。
次に、本発明(請求項2)の実施例として、表4に示される原料を用い、副金属成分Mとして、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上含有する(W,Ti,M)C粒子粉末を、図2に示すメンストラム法により製造した。
得られた(W,Ti,M)C粒子粉末(本発明例2〜6という)について測定した特性値等を表5に示す。
また、上記本発明例2〜6の(W,Ti,M)C粒子粉末を用い、実施例1と同一条件(表2に示す溶接条件、図3に示す寸法・形状の溶接試験片)でPTA肉盛試験を実施した。
実施例1と同様に、粒子硬度、マトリックス硬度を測定するとともに、肉盛部の硬質粒子の残留量、分散性を、肉盛部の断面観察、組織観察により調査した。その結果を、表6に示す。


以上、表3、表6、図4、図5に示される結果から、本発明の(W,Ti)C粒子粉末あるいは(W,Ti,M)C粒子粉末は、これを肉盛に使用した場合に、肉盛部はすぐれた耐酸化性を有し、また、肉盛部には、硬質粒子の浮き上がり、沈み込みを生じることはなく、硬質粒子が均一分散しているため均質な肉盛組織が形成され、さらに、肉盛する際に、Co、Ni、Feからなる金属成分をバインダとして使用する必要がないので、肉盛部の硬度を高めることができ、さらにまた、硬質粒子は、球状粗大粒子であってマトリックスに対する溶け込みが少ないことから高硬度を保持し、あるいは、マトリックス材を選択することにより、肉盛部のマトリックス硬さを容易に所望値に調整することができるので、肉盛、溶射等の表面硬装用粒子粉末として好適な粒子粉末であるといえる。
金属と炭素の金属浴中拡散による合成法(メンストラム法)による炭化物の製造工程の概略図である。 本発明(請求項1)の(W,Ti)C粒子粉末のメンストラム法による製造法を示す。 PTA肉盛試験に使用した試験片の寸法・形状を示す。 (a)〜(f)は、PTA肉盛試験に使用した試験片の肉盛断面図を示す。 (a)〜(f)は、PTA肉盛試験に使用した試験片の肉盛組織およびマトリックス、硬質粒子それぞれの硬度を示す。

Claims (2)

  1. 金属と炭素の金属浴中拡散で合成されたWとTi複合炭化物粒子からなり、原料からの持ち込みにより含有されるCo、NiおよびFeからなる金属成分を含有量合計で3質量%以下に抑え、かつ、平均粒径が20〜200μmである、耐酸化性と高硬度・高分散性を有する表面硬装用バインダレス粒子粉末。
  2. 金属と炭素の金属浴中拡散で合成されたWとTiと副金属成分M(但し、Mは、Nb,Ta,Zr,Vからなる金属成分のいずれか1種または2種以上)複合炭化物粒子からなり、原料からの持ち込みにより含有されるCo、NiおよびFeからなる金属成分を含有量合計で3質量%以下に抑え、また、副金属成分Mを含有量合計で20質量%以下含有し、かつ、平均粒径が20〜200μmである、耐酸化性と高硬度・高分散性を有する表面硬装用バインダレス粒子粉末。
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