先ず、本発明の概略を説明すると、本発明において使用するパネルの素材は、木質、窯業、合成樹脂等で製作される。適材は、高い断熱性能があり、細菌や水分で変化、腐食しない、無害、無臭、軽量、形状や仕口加工が容易で、量産が可能という条件に合致するものが望ましい。例えば、安価な硬質スチレンフォーム(通称、発泡スチロール)類が好適である。また、シロアリ対策として、硼酸を加える場合もある。さらに、本発明に用いるパネルは、表面に異種類の資材を張り合わせた複合パネルを使用することも可能である。そして、本発明に用いるパネルは、後述する筒状空洞を備えている。
本発明で用いるパネルは、建築資材として通常の形状である方形を標準形とするが、異形であってもよく、壁面を構成できるものは全てを適用できる。この標準パネルは、上下左右に同一面で組立が可能である。なお、柱、梁、窓マグサ、コーナー、端部、交差部分には、標準パネルと組み合わせが可能な異形専用パネルも存在する。
標準パネルにおける上下左右の四面は、突き合わせ接着用の無加工のものから、連結用に仕口加工が用途に応じてなされたものまで、種々の形式を有している。そして、通常は、パネルの容易な組立と自立性維持のために、上下面には規則的な間隔で凹凸仕口パターンが繰り返し成型されている。
また、標準パネルの正面側には、塗り仕上げのために表面を平滑面か粗面に形成する。一方、標準パネルの背面側には、コンクリートやモルタルが対象の場合に、付着力を得るため帯状の溝を彫り込む場合もある。
一般に、パネルの製造工程では、パネルの短辺が上下方向とすると、金型の分離を上下方向に行なう。この場合、上下面に複雑な仕口加工が可能なので、各パネルの長手方向における上下の連結を正確且つ堅牢に行なうことができて都合がよい。一方、パネルの左右側面においては、金型による成型では簡単な形状にしか成型できない。このため、成型は、無加工か、上下に伸びる帯状の単純な、例えば、はぎ・欠き仕口になることが多い。しかし、このような単純な仕口であっても、組み立てや施工強度においては、全く問題はない。
そこで、図示の実施例においては、パネルの上面に凸条を、下面に凹条が設けてある。一方、図示の実施例におけるパネルの左右側面には、後述する筒状空洞の片半部分を形成する半円溝が、それぞれ形成されているもの、筒状空洞がパネル内のみにあるものを代表して示している。
壁工事においては、幾多の部品が用いられている。すなわち、パネル間の相互連結、パネルの躯体への取付、関連工事に関与する各種の部品等が必要である。この部品には、例えば、パネル面の姿勢支持、内側パネルと外側パネルの平行間隔の維持、パネルで形成する断熱補助パネル壁の躯体への固定、関連下地工事における胴縁や資材の固定、などに用いる部品がある。
パネルやフォームパネル自身は、一般に長期に渡るビスや釘類による固定が利かない。このため、これらの部品は、後述する筒状空洞や型棒に関連して、その効果を発揮することになる。なお、これらの部品を、以後「連結部品」と総称する。
連結部品は、ヒートブリッジが起きることがないように、熱伝導率が小さく、耐久性の良い材質が好ましい。一般には、合成樹脂製が適しているが、ステンレスや鋼材等の金属製部品も採用可能である。なお、合成樹脂製の連結部品は、直接外部からビスや釘止めができるプレート面を持たせることができる。
本発明におけるパネルは、上辺と下辺とを規則的な間隔で、貫通または一部を閉塞する隔壁付きの筒状空洞を備えている。この筒状空洞の断面形状は、円形、四辺形、H形など、適宜な形状を採用可能であって、形状を問うものではない。また、筒状空洞の配列は、同一形状に限らず、異種断面形状を有する筒状空洞を、混在させて配列することも可能である。
そして、この筒状空洞は、パネルを面体に組み上げたときに、必要な箇所に必要な数だけ上下垂直方向に当該筒状空洞が連通可能なこと特徴としている。すなわち、筒状空洞を全長(全高)に渡って連通させるか、薄い隔壁(遮蔽片とうこともある)により分断された筒状空洞とするかは、工事現場において適宜選択される。なお、この隔壁は、簡単に破壊して連通可能な構成となっている。
また、未使用時に一時通気を封印する隔壁つきの筒状空洞では、この隔壁に漏水が溜まることも考えられるので、隔壁をパネルの上辺に設けたり、あるいは、隔壁に直径数ミリ程度の穴を開けたりするとよい。通常、同一断面では、筒状空洞が一列に並ぶが、この筒状空洞を空気断熱部として利用するため、また、材料倹約の立場から、この筒状空洞を複数列で設けるようにしてもよい。この場合であっても、筒状空洞の断面形状は、円形、四辺形、H形等、形状を問うものではない。また、同一形状の筒状空洞に限らず、異種断面を有する筒状空洞が混合する配列とすることも可能である。
パネル内に筒状空洞を設けるという、本発明における技術思想の大きな効果の一つに、従来の製品と製造コストは同じであるが、原材料を節約できるという利点がある。すなわち、本発明によれば、従来工法の致命的な欠陥であるコンクリート打設時の変形膨張に起因する不都合を解決するばかりではなく、原油高が叫ばれる時代、多数の筒状空洞による原材料の節減は、コストの削減にきわめて有効である。しかも、筒状空洞は、密封された空部を形成するので、この密閉空部内の空気による断熱性能の向上と、密閉空部によりパネルの共鳴を抑えて遮音性能を向上させることができる。このように、本発明によれば、コストの上昇を伴うことなく、断熱効果および遮音効果を向上させることができる。
ところで、筒状空洞内に設けた厚さ数ミリの隔壁は、型棒を通すと容易に破壊される。一方、この筒状空洞を、配線用の管やダクト等として活用する時は、上部より例えば鋼球を落下させることで、最下部の隔壁まで容易に破壊することができる。なお、筒状空洞の底に該当する床下や基礎の位置に、隔壁の破片が溜まっても、実際に配線する位置、言い換えると、例えば床の巾木の位置は、破片が停留している位置よりも上方であるので、破片による不都合は全く生じない。また、破片を取り除くことも、従来の通常技術で容易に可能である。
なお、筒状空洞が上下に長く連結されると、この筒状空洞内で空気の対流が発生し、この対流により熱が伝達されて、断熱効果が下がる場合がある。また、防音、遮音効果も下がる虞れがあるので、パネル毎に隔壁を設けておくことが、断熱効果および防音効果の点で有益となる。
前記したパネルの筒状空洞には、当該空洞の断面形状に対応する形状のパイプ、型材、棒などを挿通する。例えば、円形のパイプや、角形の型材、丸棒、或いはC型やH型の鋼材など、を挿通するのである。なお、以下、これらのパイプ、型材、棒などを、「型棒」と総称する。この型棒の材質は、合成樹脂、木材、金属などを制限なく利用できる。何れの型棒であっても、前記した薄い隔壁を容易に破壊することができ、筒状空洞へ容易に挿入可能である。
この型棒の役割すなわち機能は、先ず、パネルの面強度を補強することである。次いで、組み立てられた壁面が、垂直で正しい位置にあるようにする支保の役割がある。一方、型棒は、筒状空洞に挿通したまま永続的に使用される場合や、部分的にあるいは全部引き抜かれる場合がある。しかしながら、タイルや石張り等の重量級の外装仕上げが付加される工事では、パネル自身の支持力が弱いので、型棒を構造材として残すとよい。
建設時並びに既存建物の内外装用の壁体となる「補助パネル壁」では、型棒が例えば串刺状にパネルの筒状空洞に挿入されて、壁面を維持し、型棒や連結部品が主に壁構造躯体に固定される。このため、補助パネル壁は、壁構造躯体と一体となり、充分な強度を得ることが可能である。
パネルは、組立時に仕口結合のみで自立可能であり、上下左右の各パネルが相互に正確な連結がなされる。このため、型棒の挿入は、パネル組立の最初から、或いは途中から、さらに最終段階に入ってからなど、施工中何時でも可能である。一方、既に、型棒が挿入されている施工では、上端部よりパネルを通すことになり、型棒が余り長いと作業が困難になる。そこで、施工の前半用に、例えば約2m程度の型棒を、施工の後半用に、例えば約3m程度の型棒を、それぞれ用意し、途中で交換するとよい。このように型棒を交換すると、作業がし易く、作業効率が著しく向上する。また、型棒の上に型棒を継いで、延長して使用することも可能である。
コンクリート造では、型棒を硬化初期に引き抜くことが可能である。コンクリートは、通常一階分を一度に打設するので、半日後には型棒を抜き、一階分のコンクリート打設は、一両日中に完了する。当然、抜かれた型棒は、繰り返し使用可能である。
本発明におけるパネルには、規則的な間隔で配置された筒状空洞があり、その筒状空洞には、着脱自在の型棒を挿入可能である。筒状空洞が型棒と連携して、施工時に、パネル連結、壁面支持、変形防止等で有効に機能する。また、この筒状空洞は、壁体に関連する電気、配線、電話、設備、配管、空調、防音、防水、下地工事等、多種多様な場面で活用される。さらに、これらの工事をパネル厚み内の筒状空洞に吸収できることから、施工を集約できかつシンプルになり、壁厚を増加させることなく施工できる効果がある。そして、完成後の将来においても、壁に関連する諸工事を、仕上がった壁面を破壊することのない最小限の加工と、前記した筒状空洞をダクト等として活用することにより、容易に達成することができる。
次に、パネルを断熱パネルとした場合について説明する。本発明は、内壁側の断熱パネルと、外壁側の断熱パネルとを、別々に施工することも、並列して同時に施工することもできる。なお、鉄筋コンクリート造では、断熱パネルによる内側型枠と外側型枠との間の狭い空間で、配筋するのは非常に困難が伴う。
そこで、本発明は、内側か外側か、何れか一方の壁を先に数段または一階分を組み上げ、この状態で配筋や躯体工事を行ない、その後に、他方の壁を組み上げることができる。内側および外側に用いる断熱パネルを、ブロック形状に組み上げ、あるいは一体成型のブロックで壁体を組み上げ、当該ブロックが形成する空間にコンクリート造を構築することもできる。
一般に、電気、電話、光ファイバー敷設等の配線工事は、新築工事においては施工が容易である。一方、後日の配線工事では、壁表面を切り刻んだり配線の痕跡を残したりすることを、極力避けたい。
そこで、本発明では、筒状空洞を縦方向の配管或いは配線スペースとして活用するのである。必要な水平配線は、屋外の場合、庇の下や基礎部を容易に利用できる。また、室内の場合は、天井裏や天井の回り縁、床下や床の巾木を形成する部材の内部に空間を設け、この空間に配線を収納可能にする。この方法により、壁面において、何時でも、縦横自在に配線を敷設することが可能となる。
従来の空調工事や水道工事における配管は、壁体の内部に施工できないので、露出形になってしまっている。そこで、可能なら大掛かりな施工を行なうことなく、この配管を壁体の内部に埋め込んで隠したい。また、空調設備の送風管や、冷・暖媒管のダクトや、今後普及するであろう未来機器に対応するためのダクトも必要である。さらに、将来に備え、各部屋において、天井の回り縁や床の巾木の内部に、電源等を確保しておきたい。
これらの要望は、本発明によれば、壁に電機ボックス程度の穴を開けることで、上下方向の配線が容易に配線できる。また、新築時に、先立って筒状空洞に通線した事前の捨て配線によっても可能である。これらにより、種々の配線、配管等の修復が容易になり、「数百年住宅」対応の修復工事に合致する断熱壁体を構築することができる。
一般に、断熱パネルに用いられる硬質スチレンフォームの欠点として、特定の周波数に対して共鳴するため、遮音効果が落ちることが知られている。このため、隣室の声が大きく聞こえたり、屋外の音を拾ったりする現象が発生している。この現象は、特に500〜1,000ヘルツ(人の声)範囲で、多く発生する。
そこで、本発明における筒状空洞が、特定周波数帯における共鳴を抑制し、遮音の役割を果たす。また、パネルに、可能な限り遮音専用のスリット状空洞、或いは他の形状の密閉された空洞を加えれば、約20デシベル減の改良が期待できる。さらに、多数の筒状空洞は、密封された空気により断熱性能を向上させるばかりではなく、原材料の削減を可能にしてコストダウンに寄与する。
ところで、一般住宅において、開口部や上階で漏水事故が発生した場合には、階下や壁面が水浸しになる虞れがある。そこで、本発明においては、漏水が下部の壁表面に出ないように、適所で集水を行い、前記した筒状空洞を通して排水可能なように構成してある。なお、このために、後述する隔壁(遮蔽片)には、小孔が開設してある。
本発明によれば、何十年か先に起こり得る不慮の事故に付いても対処可能である。すなわち、前記した筒状空洞は長期間に渡って待機できるので、建物の長期使用が可能になる。例えば、サッシ開口部の下、庇の下、各階の床下や天井裏に、漏水を集める防水層や横樋部材を設け、パネルに設けた筒状空洞からなる水路に誘導するとよい。また、この用途では、パネルの筒状空洞の連結部仕口は、水平に漏れることなく上部から下部へ流れるように在来技術で工夫する。筒状空洞の内部に、排水専用の配管を設けるとさらに排水機能が向上するし、電線等を濡らすこともない。なお、筒状空洞は、上階から下階まで外壁側では容易に連続させることが可能である。一方、内壁側は、天井や床と連結されるので、寸断されがちであるが、工夫により連通させることも可能である。
近年、我が国では外断熱工法のみが強調され、非常に注目されているが、実際には、壁体の内外両面での断熱がきわめて有効である。そして、その断熱比率が1対2の割合のときが、最も効果があるとされている。そこで、温暖地域においては、断熱材を、屋内側が50mm厚以上、屋外側は100mm厚以上が望まれている。また、寒冷地域においては、屋外側に150mm〜200mm厚の断熱材が望まれている。さらに、小規模建築のコンクリート厚は、150〜200mmであるので、熱貫流率U=0.5ワット(W/m2K)以下が可能となる。この場合の全壁厚は、350〜450mm前後となる。
耐震性、防火性、断熱性、耐久性の4大性能に全て対応可能なのが、断熱鉄筋コンクリート造である。先行した鉄筋コンクリート造の壁に、屋内外側から後付けで断熱材を付着した方法では、断熱性能を充分に満たせない。すなわち、コンクリートと断熱材とが隙間なく密着していないと、結露や湿気を起こし、コンクリート自身の耐用年数も短くなってしまう。コンクリートを断熱パネルからなる型枠に直接打設し、両者が完全に密着可能な断熱パネル型枠工法のみが、前記要求を満たすことのできる現状では唯一の工法である。
欧州におけるフォームパネル工法では、室内側パネル50mm、コンクリート150mm、屋外側パネル200mm、高断熱サッシ類の採用で、熱貫流率U=0.11w/(m2K)が可能である。例えば、2階建て建築面積130平方メートル、4人家族(100W/人)、台所の発熱利用、トースター火力以下の発熱量300W暖房機器の発熱で、冬季も暖房機器不要に近い高い断熱性能が得られる。
次に、本発明を図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明におけるパネルおよび周辺部品の一例を示す斜視図である。図2は、パネルの一例を示し、(a)は一部を欠截した平面図、(b)は一部を欠截した正面図、(c)は縦断面図である。図3は、パネルの他の一例を示す斜視図である。図4は、種々の連結部品の斜視図である。
本発明におけるパネル100は、例えば、ほゞ直方体に成形された建築用の資材であり、断熱機能を有する断熱パネル100である。この断熱パネル100(以下、単にパネル100ということがある)は、例えば、硬質スチレンフォーム、いわゆる発泡スチロールからなり、高さ30cm、長さ60〜150cm程度の大きさである。なお、本発明におけるパネル100は、以下に説明する大きさや構造、或いは材質や機能等に限定されるものではない。
この断熱パネル100を積み上げて壁体1を形成する。そこで、このパネル100の上面110には、凸条111が、下面120には凹条121が、長手方向に設けてある。なお、下面側を凸条とし、上面側を凹条としてもよいが、この場合には、最下段となるパネル100の凸条は、取り除いておくとよい。これは、座りをよくするための配慮であるが、土台に、対応する凹条を形成しておけば、断熱パネル100の凸条を削除する必要はなく、凹条を位置決めや排水溝として利用することも可能である。
断熱パネル100には、上下方向、言い換えると短辺方向に、複数の筒状空洞200を設ける。この筒状空洞200は、例えば図1や図2に示すように、4本の筒状空洞200を所定の間隔で設ける。この間隔は、例えば幅方向に1/2ずらして布積みした場合に、上下の各パネル100の筒状空洞200が互いに連通する間隔である。
なお、図示の断熱パネル100における筒状空洞200には、高さのほゞ中央部分で最も細くなるようなテーパー201が設けてあり、この最も細い部分には、薄い蓋あるは底状の隔壁(遮蔽片)210が設けてある。そして、この隔壁210は、後述する型棒300を挿入することにより容易に破壊され、当該型棒300を挿通することができる。なお、筒状空洞200のテーパー201は、金型の抜き代であるが、型棒300の挿入を容易にする効果もある。さらに、このテーパー201の小径部分において、型棒300が密着し、後述する連結部品400とともに、3点で型棒300を保持することになる。
筒状空洞200に設けた隔壁210には、この筒状空洞200を排水用の縦樋として利用可能なように、排水用の小孔211が設けてある。
筒状空洞200には、パイプ状或いは棒状の型棒300を挿通する。すなわち、パネル100を布積みして上下に連通している筒状空洞200に対して、型棒300を一連に挿通するのである。この型棒300の挿通は、全ての筒状空洞200に対して挿通してもよいが、必要に応じて所定の間隔で挿通するようにしてもよい。なお、型棒300と筒状空洞200とは、あまり隙間が生じない大きさに設定するのが、型棒300がガタ付くことがなく、好適である。
型棒300の挿通は、パネル100を積み上げて形成した壁体1に対して挿通するようにしてもよいし、土台に予め型棒300を起立させておき、この型棒300の上端から,パネル100を被せるようにして、筒状空洞200に挿通するようにしてもよい。この場合、型棒300の高さが高いと作業性が悪いので、最初は適宜な高さの型棒300を用い、作業の進行に伴って、長い型棒300に交換したり、型棒300を継ぎ足すようにしてもよい。
筒状空洞200の開口部分、言い換えると、入口220および出口230には、連結部品400を介在させている。この連結部品400は、図示の実施例よれば、平板状の基板部410と、かまぼこ状の筒部420とからなっている。また、この連結部品400は、例えば、合成樹脂により一体成形されている。さらに、この連結部品400は、上下に隣接する断熱パネル100に掛け渡され、両断熱パネル100に対して、全長のほゞ1/2づつが嵌入している。
一方、断熱パネル100には、前記したように、筒状空洞200が設けてあるが、この筒状空洞200の入口220および出口230は、連結部品400に対応して、平孔部221と長孔部222とが設けてある。すなわち、連結部品400の基板部410が嵌入する平孔部221と、連結部品400の筒部420が嵌入する長孔部222とが、複合した形状に設けてある。なお、出口230においては、平孔部231および長孔部232となる。
連結部品400には、後述する第2の壁体12に挿通した型棒300に連絡する腕片430を設けることができる。この腕片430は、先端に型棒300を挿通可能な孔部430aを備え、腕片430の長さは、第1の壁体11と第2の壁体12との間隔に対応させる。
また、この腕片430が通る位置には、溝部112を設けることができ、この腕片430によって、上下のパネル100の間に隙間が生じないようになっている。すなわち、図1に示すように、パネル100の上面110において、筒状空洞200を形成している長孔部222の先端に遮蔽部222aを設け、この遮蔽部222aの前側に腕片430の横幅および厚みに対応する溝部112が設けてある。そこで、施工現場において、この遮蔽部222aを取り去れは、腕片430が溝部112に入り込むので、上下のパネル100間に腕片430によって、隙間が生じることがない。
連結部品400は、板状の基板部410を備えている。そこで、この基板部410に対して、ねじ止めや釘止めが可能である。例えば、図1に示すように、胴縁910或いは中桟を木ねじ990で止着することが可能である。釘やねじが効くと、仕上げや化粧、付帯工事等における制約が少なく、作業を容易に行なうことができる。
新築の場合は、第1の壁体11に加えて、第2の壁体12を設けることができる。すなわち、図5に示すように、第1の壁体11の外側に、所定の間隔を開けて第2の壁体12を立上げ、両壁体11、12の間に配筋すると共に、コンクリートを打設して、一体化した躯体を構築するのである。
第2の壁体12も、断熱パネル100を布積みして立ち上げるが、図5に示す実施例における断熱パネル100は、第1の壁体11に使用した標準的な40〜60mmの断熱パネル100に比べて厚みが厚く、例えば60〜250mm程度の厚みを有している。また、この断熱パネル100は、形状の異なる複数の筒状空洞200を備えている。さらに、一端面に複数条の凹溝113を備えると共に、他端面に前記凹溝113に対応する凸条123を複数備えている。
そして、図5に示す実施例における筒状空洞200の形状は、角形および円形の2種類である。なお、角形の筒状空洞200は、連結部品400または型棒300によって隠れている。この実施例における断熱パネル100は、上側の端面に2条の凹溝113を備えており、内側の凹溝113内に、前記した角形の筒状空洞200と、円形の筒状空洞200とが配置してある。なお、型棒300を挿通していない筒状空洞200は、空間となるので、パネル100の共振周波数をシフトさせて、遮音効果を高めたり、原材料の消費を抑制する。
第1の壁体11と第2の壁体12との間には、適宜、縦筋510および横筋520を配筋する。この配筋は、地震国である我が国においては重要であり、必然的に配筋量が増えている。そこで、従来は、この鉄筋の重量、またコンクリート打設時におけるバイブレーション或いは加圧によって、壁体1が膨らんでしまうことがあったが、この実施例においては、後述する型棒300や連結部品400によって、それらの不都合を防いでいる。
第1の壁体11と第2の壁体12との間には、横筋520を支持するための鉄筋支持部品530を配置する。この鉄筋支持部品530は、鋼材を屈曲形成した部品であって、一方の先端を第1の壁体11を形成する断熱パネル100の上端面から差し込む。一方、他端は、第2の壁体12を形成する断熱パネル100上端面に載置する。このようにして、鉄筋支持部品530を配置すれば、作業中に位置がずれることがない。従来のフォームパネル工法の連結金物と同様に、連結部品自身に横筋520を載せてもよい。
連結部品400または鉄筋支持部品530の上には、横筋520を載置することができる。したがって、横筋520を所望の高さに維持することが可能になる。また、横筋520の間隔を所望の幅に維持することが可能である。なお、横筋520を、縦筋510に直接固定すると、強度が増すことが知られている。前記した鉄筋支持部品530は、必ずしも必要なものではないが、有れば配筋作業が容易になる。
図5に示す実施例においては、第1の壁体11に、当該壁体1を支持する支保工を設けている。この支保工は、一般に行なわれている、例えば、鉄パイプによる型枠支柱であり、この支保工を伴う壁体1の施工法については、後程、説明する。
そこで、本発明の基本的な施工の手順を簡単に説明する。通常は、先ず、室外側であるが、本図は室内側となる第1の壁体11を構築する。すなわち、断熱パネル100を積み上げるとともに、筒状空洞200に型棒300を挿通するのである。具体的には、断熱パネル100を横方向に並べると共に、縦方向に積み上げる。このとき、所定の筒状空洞200には、連結部品400を取り付ける。この実施例における連結部品400は、角形の胴部440を備えるとともに、腕片430を備えるものである。また、上下に位置する断熱パネル100を、横方向に横幅の半分程ずらして配置し、上段の接続部分と下段の接続部分が一致しないように配置している。なお、断熱パネル100の積み上げは、一階分を、一気に積み上げてもよいし、適宜な高さ毎に積み上げるようにしてもよい。
積み上げた断熱パネル100の筒状空洞200には、型棒300を挿通する。随時、必要により、挿通または脱棒する場合もある。なお、図示の実施例では、角形の連結部品400に、角形の型棒300を挿通している。丸型の筒状空洞200については後述する。型棒300の先端付近には、横桟610および傾斜柱620を備える支保工を取り付け、第1の壁体11を保持する。したがって、この第1の壁体11は、強固に起立している。また、第1の壁体11を構成する個々の断熱パネル100も、筒状空洞200に挿通した型棒300によって、位置決めされると共に、確実に積み上がっている。
なお、予め型棒300を、例えば土台や基礎上に起立させておき、この型棒300の上端から断熱パネル100の筒状空洞200に挿通することにより、断熱パネル100を積み上げるようにしてもよい。但し、型棒300の高さがあまり高いと、敷設作業がやり難くなって、作業能率が低下する。
このようにして構築した第1の壁体11は、一方の面、すなわち、室外側になる面が開放している。したがって、第1の壁体11の前面側において、作業するには何ら支障がない。そこで、この状態において、配筋作業を済ませてしまう。すなわち、縦筋510を直立させると共に、横筋520を配置するのである。そして、縦筋510と横筋520とを、両者の交点において、互いに固定する。この固定は、例えば、溶接や、番線による結束など、適宜に行なうことができる。
連結部品400は、角形の比較的短尺な、例えば構成樹脂製の部品である。また、この連結部品400は、長い腕片430を備えている。そして、腕片430の先端部分または途中に、第2の壁体12の筒状空洞200に嵌着する角筒部431または角片部432を備えている。また、この角筒部431または角片部432には、第2の壁体12における型棒300が挿通される。なお、角筒部431を第2の壁体12を形成する各断熱パネル100の筒状空洞200に嵌着し難い場合には、断熱パネル100を後方へ少し押して、連結部品400を嵌着させたのち、断熱パネル100を手前側へ少し引き付けて元の位置に戻せばよい。
図5に示す実施例における連結部品400は、第2の壁体12に対応する筒状空洞200のさらに先まで、腕片430が延出している。この長い腕片430は、先端部分を下方へ折り曲げて、この折り曲げ部分を止着片433とすることができる。すなわち、第2の壁体12を形成する断熱パネル100に、中桟920を取り付けるときの止着片433として利用することができる。また、不要ならば切断して除去することも可能である。中桟920が第2の壁体12の前面側に設けてあると、例えば、石膏、セメント、タイルボードなどの化粧板を取り付ける場合に便利である。
そして、第1の壁体11と、第2の壁体12とを、所定の間隔で立上げ、配筋も終了したら、コンクリートを打設する。このとき、図示の実施例では、第1の壁体11および第2の壁体12は、各断熱パネル100の必要な筒状空洞200に型棒300が挿通されている。このため、コンクリートを打設する際の圧力に耐えることができ、またバイブレータによる振動にも耐えることができる。したがって、断熱パネル100が、圧力によって膨らんで、壁体1の表面に不陸が生じることがないので、外観を損なうこともない。
このように、第1の壁体11と第2の壁体12とを備え、両者の間にコンクリートを打設した壁は、コンクリートと壁体とが完全に密着するので、結露が発生する虞れもなく、きわめて高い断熱性を得ることができる。
図3は、断熱パネル100の他の実施例を示す斜視図である。この実施例においては、筒状空洞200のほかに、遮音空洞240を設けている。すなわち、図3に示すように、上端から下端に抜ける円形の筒状空洞200のほかに、薄い板状の空間に形成した遮音空洞240が設けてある。これは、断熱パネル100が特定の周波数に対して共鳴し、例えば、500〜1,000ヘルツ付近で共鳴すると、隣室の声が大きく聞こえたり、屋外の音を拾ったりする現象を、防止するためのものである。また、多数の遮音空洞240は、密封された空気により断熱性能を向上させることができる。さらに、遮音空洞240は、原材料の消費を減少させるので、パネル100製品のコストダウンに寄与する。
また、図3に示す断熱パネル100においては、筒状空洞200を、上端から下端まで、同一径で形成してある。このような筒状空洞200によっても、型棒300を挿通することによって、前記した実施例と同様に、コンクリート注入時の変形等の問題点を解消することができる。なお、本例は、パネル100の左右両端に、筒状空洞200を半分づつ設けた例である。
図4は、連結部品400の様々な例を示す斜視図である。(a)は、上下のパネル100を連結するための、基本的な連結部品400の一例である。すなわち、この連結部品400は、釘やねじを打ち込み可能な平板状の基板部410と、型棒300を挿通可能な円筒形の筒部420とからなっている。
図4(b)に示す連結部品400は、上下のパネル100を連結する機能を有するとともに、前後のパネル100を連結する、言い換えると間隔を保持する機能を備えている。このため、図示の実施例では、平板状の帯板434の両端に円形の筒材取付孔434aが開設してあり、この取付孔434aに、フランジ部435aを有する筒材435を装着して使用する。すなわち、図示していないが、前後双方のパネル100の筒状空洞200に、それぞれ筒材435の下半部分を挿着し、次いで、この一対の筒材435に、帯板434の取付孔434aを挿通してフランジ部435aに係止させる。そして、フランジ部435aより上方に起立する筒材435の上半部分に、上段に位置するパネル100を被せて、パネル100を積み上げるのである。
そして、この連結部品400を用いたパネル100においては、筒材435の内部に、型棒300を挿通して、パネル100の自立や前後に位置するパネル100の間隔を維持することができる。また、この実施例によっても、コンクリート注入時の変形等の問題点を解消することが可能である。全ての上下パネル100を筒状空洞200で、過剰に連結部品400を使うのではなく、必要なところに、目的に合ったいろいろな種類のものを使い分けすると、コストが下がる。
図4(c)に示す連結部品400は、帯板434の両端部分に、複数のねじ穴434bを有している。また、この帯板434には、型棒300を挿着するための取付孔434aが開設してある。そして、この実施例では、ねじ穴434bに通したねじ991によって、胴縁910や中桟920、或いは他の構造材に、帯板434を固定することができる。また、型棒300によって、上下のパネル100を連結すると共に、パネル100の位置決めや自立を可能にし、さらに、コンクリート注入時の変形等の諸問題を解決することができる。
図4(d)に示す連結部品400は、帯板434の両端に、釘やねじを打ち込み可能な基板436を備えている。また、帯板434と基板部410との接合部分には、型棒300を挿通可能な挿通孔437が設けてある。この実施例によれば、パネル100の表側および裏側の、双方からねじ止めが可能になる。例えば、一方の基板部410を躯体に固定するために利用し、他方の基板部410を化粧板を取り付けるために利用することが可能である。したがって、このような連結部品400によれば、使い勝手がきわめて良好である。
図4(e)に示す連結部品400は、帯板434の一端に前記(a)に示した基板部410および筒部420を備え、帯板434の途中に筒材435を備え、帯板434の他端にねじ穴434bを備えている。この実施例によっても、上下のパネル100を連結することができると共に、前後のパネル100の間隔を保持することができる。また、基板部410或いはねじ穴434bを利用して、他の構造材等に、ねじ止めすることが可能である。
図4(f)に示す連結部品400は、帯板434の一端に基板部410を備えると共に、帯板434と基板部410との接続部分に、型棒300を挿通可能な挿通孔437を備えている。また、帯板434の他端には、型棒300を挿通するための円形の挿通孔437を備えている。この実施例によっても、上下のパネル100を連結することができると共に、前後のパネル100の間隔を保持することができる。また、基板部410を利用して、他の構造材等に、ねじ止めすることが可能である。さらに、横筋520の位置決めと取付け用に、リブ438を設けている。
図4(g)に示す連結部品400は、一対の平行な帯板434cと、互いに交差する一対の帯板434dとを備え、各帯板434c、434dの各先端に、型棒300を挿通するための挿通孔437をそれぞれ備えている。この実施例による連結部品400を、左右のパネル100を連結する場合に使用すれば、組み立てを正しく、強固に行なうことができる。また、前後に位置するパネル100の中間に使用すれば、両パネル100の平行度を正確に保持することが可能である。同様に、コーナー部専用の連結部品400を作ることも可能である。
図4(h)に示す連結部品400は、帯板434の一端に角形の筒部435−1を備えるとともに、帯板434の途中に角形の筒部435−2を備え、帯板434の他端が、角形の筒部435−2からさらに延出している。また、この延出する帯板434には、ねじ穴434bが設けてあり、ねじ止めが可能なようになっている。この実施例による連結部品400では、角形の型棒300あるいは内接する円形の型棒300を用いることができる。また、上下のパネル100を連結すると共に、前後のパネル100の間隔を保持することが可能である。
図4(i)に示す連結部品400は、帯板434の一端に、基板部410を備えると共に、帯板434の他端にプレート部439を備えている。この実施例による連結部品400によれば、プレート部439に、化粧板等を取り付けることができる。一方、基板部410は、壁躯体に対して固定することができる。そこで、具体的には、後述する図8に示すように、補助パネル壁を固定する際に、利用することができ、好適である。
図5に示す実施例は、前記したように、第1の壁体11と第2の壁体12を備えるとともに、第1の壁体11に支保工を設けたものである。また、この実施例においては、角形の型棒300を使用している。
この実施例では、先ず、室内側となる第1の壁体11を構築し、筒状空洞200に型棒300を挿通する。この型棒300の先端付近には、横桟610および傾斜柱620を備える支保工を取り付け、第1の壁体11を保持する。この第1の壁体11は、一方の面、すなわち、室外側になる面が開放している。したがって、第1の壁体11の前面側において、作業するには何ら支障がないので、配筋作業、すなわち、縦筋510を直立させると共に、横筋520を配置し、縦筋510と横筋520とを、両者の交点において、互いに例えば溶接や番線による結束などで、適宜固定する。
第2の壁体12についても、同様に施工する。また、必要に応じて、この第2の壁体12においても、同様に支保する。そして、この実施例では、連結部品400が備える腕片430によって、中桟920を固定している。したがって、この中桟920を利用して、化粧板等を固定することができる。
図6に示す実施例では、室内側の第1の壁体11と、室外側の第2の壁体12とを、パネル100を一段づつ積み上げて構築する工法である。すなわち、第1の壁体11となるパネル100を横方向に並べると共に、所定の間隔を空けて、第2の壁体12となるパネル100を対向状に並べる。このとき、第1の壁体11のパネル100と第2の壁体12のパネル100(以下、前後のパネル100ということがある)の接続部分が重ならないようにすると、コンクリートを注入したときに圧力が、一箇所に集中しないので好適である。もちろん、前後のパネル100の接続箇所が一致する場合であっても、後述する型棒300によって、コンクリートの圧力に充分に耐えることができ、変形や膨張を起こすことはない。
前後のパネル100を組み立てながら、両パネル100の間に、縦筋510および横筋520を配筋する。横筋520は、前後のパネル100の間に架け渡す硬質な鉄筋支持部品530によって支持されている。室内側の第1のパネル100が薄く弱いときには、当該パネル100の全ての筒状空洞200に、型棒300を挿通すればよい。なお、コンクリートが硬化したのちは、適時、型棒300を引き抜いてしまうことができる。
前後のパネル100の上面には、構造が簡単で安価な連結部品400を装着する。この連結部品400は、図6に示すように、平板状の第1連結部品400−1と、額縁状の第2連結部品400−2とを用いている。すなわち、第1連結部品400−1は、帯状の塩化ビニルなどからなり、前後のパネル100の間隔を保持するために、所望の位置で用いている。また、第2連結部品400−2は、帯状の塩化ビニルなどからなり、左右のパネル100を接続する位置に用いることにより、前後のパネル100の間隔を保持するばかりではなく、左右パネル100の位置を保持している。なお、第1連結部品400−1および第2連結部品400−2に対応する前後のパネル100の上面には、両連結部品400−1、400−2の厚さに対応する装着溝115が形成してあるので、両連結部品400−1、400−2が邪魔になって、上下のパネル100の間に隙間が生じることがない。もちろん、この装着溝115を、上段に位置するパネル100の下面に設けてもよい。
この実施例によっても、パネル100に設けた筒状空洞200に、型棒300を挿通することによって、充分な強度を得ることが可能である。このため、コンクリートの注入やバイブレータによる突き固めにおいても、パネル100の変形、膨張を防止することができる。また、このようにパネル100を一段ずつ積み上げてゆく工法は、従来の工法と同様なので、きわめて馴染み易く、導入が簡単である。
図7に示す実施例では、第1の壁体11および第2の壁体12を形成する前後のパネル100を一体のブロック100Bとして扱っている。すなわち、前後のパネル100を一組として、施工現場において組み合わせるか、本図のパネル100のように工場において予め一体型のブロック100Bとして製造するのである。そこで、この実施例におけるパネル100には、仕口となる凸条116および凹状(図示せず)が形成されている。また、横筋520を支える支持部117が、リブ状にパネル100と一体に設けてある。
そして、ブロック状になった一対のパネル100、すなわちブロック100Bを、並べて壁体1を構築するのである。この実施例においても、パネル100に設けた筒状空洞200に、型棒300を挿通することによって、充分な強度を得ることが可能であり、コンクリートの注入やバイブレータによる突き固めによる圧力が加わっても、パネル100が変形したり、膨張することがない。なお、前記した実施例と同じ機能を備える部材には、同一符号を付して説明を省略する。
さらに、本実施例では、支保工を壁体の中段に設けている。すなわち、連結部品400−3の帯板434の先端部分を屈曲させた屈曲片434eによって、横桟610を保持し、この横桟610に傾斜柱620を設けたものである。この実施例によれば、パネル100を積み上げながら支保工を設けることができる。
図8に示す実施例では、パネル100からなる補助パネル壁101を、既存の躯体に取り付けたものである。例えば、新築工事やリフォーム工事において、断熱機能を付加するための補助パネル壁101を、既存住宅の壁に取り付けるものである。
そこで、この実施例における連結部品400は、躯体に取り付けるための基板部410を備えるとともに、中桟などを取り付けることのできる帯板434を備えている。なお、この帯板434を使用しない場合には、切除することが可能である。あるいは、帯板434が付いていない連結部品400を使う。
この実施例においては、補助パネル壁101の型棒300を躯体に固定することで確実な耐久性を得ることが可能である。すなわち、型棒300の上端および下端を、躯体に固定すれば、耐久性が著しく向上する。また、補助パネル壁101の中間部分を、連結部品400によって、既存の壁に固定することもできるので、さらなる強度を得ることができる。
また、この実施例では、サッシ周辺に、5個のプレート部439を備える連結部品400を用いており、基板部410で壁躯体にこの連結部品400を固定するとともに、プレート部439に中桟や化粧板等を取り付けるようになっている。
このように、型棒300によりパネル100の上下を固定する場合も、連結部品400によってパネル100の中間部分を固定する場合も、或いは双方を固定する場合も、主たる構造壁(新築の家、旧築の家)と、断熱パネル100からなる補助パネル壁101と、を分離して結合させることができる。このため、従来、一般に行なわれている、構造材なしの大型断熱ボード類を、安易なダンゴによる接着固定や、大工職人が多量の釘打ちする全面的な固定方法に比べて、長年に渡る固定に有益である。一方、従来の方法では、ボードの継目に隙間が生じてしまい、完全な断熱が得られないし、長期では多数の微震や熱膨張伸縮で取付部が破壊され、耐久性が得られないという問題があった。
さらに、補助パネル壁101が備える連結部品400によって、図示していない中桟などを取り付けることができる。このため、この中桟を利用して、例えばタイル或いは薄い石を張った仕上げボードなどを、取り付けることが可能である。
図9に示す実施例は、漏水が発生しやすい屋根裏や、庇の下、開口部の下に、水平の水を集める横樋を設けた実施例である。この実施例においては、室外側の壁体となる第2の壁体12の上端に、横樋部材130を設けたものである。この横樋部材130には、排水口131を開設するが、水量は僅かであるので、例えば4〜5mに1箇所程度でよい。
そして、この排水口131を、筒状空洞200に連通させて、この筒状空洞200を介して下方へ排水する。同様に、漏水の恐れのある室内側にも横樋部材や水を集める工法で筒状空洞200に導き排水できる。なお、前記したように、筒状空洞200の中間に存在する隔壁210には、小孔211が開設してあるので、排水には何ら支障はない。また、隔壁210を予め取り除いておいてもよい。
図10〜図12に示す実施例は、パネル100が備える筒状空洞200を活用して、新築時に電気、電話、配線、配管、空調、排水等の関連工事を容易に行い、建築後の将来においても、壁の仕上げ面を破壊することなく、施工可能なようにした実施例である。すなわち、図10は、断熱パネル100で壁体1を形成した居室の内観図を示している。図11は、筒状空洞200に配線した状態の拡大図である。図12は、筒状空洞200に配線した状態の断面図である。
この実施例においても、パネル100を用い、筒状空洞200に、適宜型棒300を挿通して壁体1を構築する。そして、型棒300は通常抜かれているので、型棒300を挿通していない筒状空洞200を、縦方向の配線、配管用の空間として利用するのである。一方、水平方向の配線、配管は、天井や天井下に設けた回り縁640の内部や、床上や床下に設けた巾木650の内部を利用する。また、所望の位置には、電気ボックス660を予め配置しておき、点検や施工計画に役立てるとよい。
具体的には、例えば天井下に、内部空間を有する回り縁640を設け、この内部空間に、商用電源供給用の電源ケーブル、テレビ視聴用のケーブル、ネットワーク回線用のケーブル、電話回線用のケーブルなど(以下、これらをケーブルと総称する)、種々のケーブルを挿通する。一方、筒状空洞200に対応する位置には、パネル100の側面に穴118を開ける。なお、この穴118は、回り縁640によって隠れる位置とするとよい。そして、この穴118から、ケーブルを分岐して、或いは直接引き出して、垂直方向へケーブルの配線を行なう。
筒状空洞200の途中には、新しく電気ボックスを掘りこみ、この穴から容易に上下方向の配線を行なう。すなわち、所望の位置に、電気ボックス660を配置し、電源コンセント、電話用ローゼット、同軸端子、ネットワーク端子、或いはスイッチボックス等を、形成する。なお、この電気ボックスは、直ぐに使用する位置ばかりではなく、将来使用する予備として、新築時に配置しておくとよい。予備の電気ボックスは、化粧板や壁紙等で隠しておき、必要に応じて開口させてもよいし、予め開口させて盲板で塞いでおいてもよい。
床面付近には、内部空間を有する巾木650を設ける。この巾木650は、例えば図12に示すように、上下二段に分割した内部空間を備え、前面側の蓋体651が、壁面に固定した基体652に対して着脱自在に構成してある。そこで、蓋体651を外して、電源関係のケーブルと、通信関係のケーブルとを、分けて配線することができる。また、基体652の穴、および、壁体1を形成するパネル100に開設した穴を通して、これらのケーブルを、パネル100の筒状空洞200へ導く、或いは引き出すことができる。
なお、図12において、671は床の構造材、672は床仕上げ材、673は壁仕上げ材、674はRCコンクリートよりなる壁躯体である。
ところで、本発明においては、前記したように、パネルの筒状空洞に型棒を挿通することによって、パネルが形成する壁体の面強度を補強しているが、筒状空洞は、型棒を挿通するためにのみ存在するものではない。すなわち、前記したように、パネルが備える筒状空洞を、壁体に関連する工事、例えば、電気、配線、電話、設備、配管、空調、防音、防水工事等、多種多様な場面で利用することができる。言い換えると、本発明における筒状空洞を備えるパネルは、これらの関連工事を、容易に行なうことができるものである。そして、筒状空洞は、一旦型棒を挿通したのち、適宜引き抜いたものを利用するばかりではなく、初期段階から、関連工事用に予め設けておいたものを利用することもできる。
また、本発明においては、パネルによって、或いはパネルと型棒とによって、壁体を形成することが可能であって、配筋を行なうとともに、コンクリートを打設する工程を必ずしも必要とするものではない。
以上、本発明を図示の各実施例について説明したが、本発明は前記した各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。例えば、パネルを断熱パネルとして説明したが、このパネルは、断熱以外の機能を備えるパネルであってもよく、材質もスチロールに限定されるものではない。