JP5196940B2 - ケーキ類製造用澱粉組成物およびケーキ類 - Google Patents

ケーキ類製造用澱粉組成物およびケーキ類 Download PDF

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Description

本発明はケーキ類製造用澱粉組成物およびケーキ類に関する。
ケーキ類は、穀粉、糖類、卵、油脂などを主成分とした生地を使用し、焼く、蒸す等の加熱処理をして製造される食品であり、加熱過程において、ゾル(ケーキ生地)からゲル(ケーキ)への物理化学的変化を伴う、複雑な食品の一つである。そして、ケーキ類としては、例えば、スポンジケーキ、バタースポンジ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、ワッフル、蒸しケーキ等がある。
ケーキ類に求められる重要な食感は、「ソフト」で「弾力」があり、「口溶け」が良く且つ「しっとり」していることである。食感の改善には種々の方法がある。しかしながら、ソフトで口溶けを良くするために卵や油脂量を多くした場合は弾力がなくなったり、反対に弾力を出すために水分を減じた場合はぱさついて口溶けが悪くなる等の問題がある。また、食感をソフトにするために生地比重を下げ、ケーキ類の比容積を大きくした場合は、ソフト感は良いが、一般に、しっとり感がなくなり、ぱさつき易い等の問題を生じる。また、卵や油脂量を多くした場合や生地比重を下げた場合は、一般に、ケーキ類製造上の大きな問題である釜落ちや生焼けという現象が起こり易い。以上の理由より、ケーキ類の主成分の配合比率を単純に変えるだけでは望み通りの食感が得られないのが現状である。
また、食感を改善する他の方法として、各種の澱粉を使用する方法や、各種の澱粉組成物が提案され、澱粉の使用は、近年、食感改良に止まらず、「もちもち」食感のような新ジャンルの食感を有するケーキ類の開発や市場化に寄与している(特許文献1〜3)。
また、ケーキ類の主原料の一つである小麦粉は、グルテンを含み、焼成前の生地の保形性や泡の保持、焼成後のケーキセルの構造形成を担うため、非常に重要な成分と位置づけられている。一方、このグルテンは、生地のミキシング工程などのシェアにより強固な3次元構造を形成し、ケーキ類のソフト感や口溶けを損なう負の側面も有する。そこで、小麦粉の代替として澱粉を一部または全量使用するケーキ類の開発が行われている(特許文献4及び5)。
しかしながら、小麦粉の代替として澱粉を使用した場合、澱粉はグルテンを含まないため、ミキシングに対する生地のシェア耐性が全くなく、安定なケーキ生地の形成が困難である。ハンドメイドの起泡操作により、かろうじて生地を作製することが出来ても、生地の加熱工程で澱粉糊化に伴う気泡の不安定化が起こり易く、スポンジ状の良好なケーキセルの形成が困難であり、生焼けや釜落ち等の問題も非常に起き易い。更に、澱粉を使用した生地は、工業化において大量生産に適した連続起泡化装置などでは、上述の理由から、泡沫安定性が極端に低くなり、ケーキ類を全く製造できない等の問題が起こる。
一方、例えば、しっとり感を向上させるためにα化澱粉を配合する製造法が提案されている(特許文献6及び7)。しかしながら、常温から糊化するα化澱粉を直接あるいは水中油型乳化物として生地に使用した場合、生地中で急激に膨潤するために、均一に分散されない現象を生じたり、その急激な膨潤により生地の起泡性を低下させる等の問題を生じる。また、焼成中にα化澱粉が早期に崩壊し、生地粘度を急激に低下させて生地中の気泡保持が不安定化し、生焼けや製品のボリューム不足の問題を起こす。更には、非常にシェア耐性のない生地にα化澱粉を直接加え、連続式起泡化装置などで起泡させた場合は、その起泡化工程中のシェアにより、膨潤したα化澱粉が生地中で崩壊し、糊液となり、粘りのある食感を生じたりする。
上記のような不安定化した生地に安定性を付与する目的で、生地に増粘多糖類などの安定化剤を配合することが提案されている(特許文献8)。しかしながら、増粘多糖類に代表されるような安定化剤を加えた場合、一般に、最終製品の「口溶け」を損ない、粘りの有る食感となってしまう。
ケーキ類製造用穀粉としての澱粉の利用は、ケーキ類の食感改善や小麦粉アレルギー対策などの種々用途面で検討されているが、上記の実情より、小麦粉の一部を澱粉で置換するに止まるのが大半の技術であり、ましてや小麦粉を澱粉に全量置換したケーキ類は殆ど生産されておらず、工業化も困難であるとされている。
特開平6−237682号公報 特開平8−38028号公報 特開平11−113478号公報 特開平10−276660号公報 特開2000−63401号公報 特開平11−155482号公報 特開平8−224057号公報 特開平5−23097号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、穀粉として小麦粉を澱粉に全量置換した際にも、安定なケーキ生地を形成し、加熱工程における生地の泡沫安定性に優れて工業的にも安定生産可能であり、しかも、小麦粉のみでは達成が困難な、ソフト感、弾力、口溶け、しっとり感などの食感に優れた、ケーキ類製造用澱粉組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、天然澱粉と化工澱粉と加工澱粉とを特定の配合重量比で使用することにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得た。
本発明は、上記の知見を基に更に検討を重ねて完成されたものであり、関連する一群の発明からなり、各発明は次の(1)〜(6)に記載の通りである。
(1)天然澱粉(A)、化工澱粉(B)及び加工澱粉(C)を含み、天然澱粉(A)、化工澱粉(B)及び加工澱粉(C)の合計含有量が全穀粉量の80〜100重量%であり、各澱粉の配合重量比が(A):(B)+(C)として、95〜75:5〜25の範囲であることを特徴とするケーキ類製造用澱粉組成物。
(2)澱粉組成物と水の重量比が40:60の澱粉組成物含有液を調製し、これについて、昇温速度2℃/minで20℃から95℃まで加熱した場合の動的粘弾性率が次の(a)〜(c)に記載の範囲である上記(1)に記載のケーキ類製造用澱粉組成物。
(a)20〜30℃:200,000〜300,000(dyn/cm
(b)50〜55℃:8,000〜16,000(dyn/cm
(c)65〜68℃:20,000〜30,000(dyn/cm
(3)上記の(1)又は(2)に記載の澱粉組成物を使用して製造されたことを特徴とするケーキ類。
(4)減圧圧縮率50%の条件下、25℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、かつ、減圧圧縮率70%の条件下、25℃で3日間保存した後の、復元率が90%以上であることを特徴とする、上記の(3)に記載のケーキ類。
(5)減圧圧縮率50%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、減圧圧縮率70%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が90%以上であることを特徴とする、上記の(3)に記載のケーキ類。
本発明によれば、穀粉として澱粉を100重量%使用しても、安定生産が可能で工業化に優れ、しかも、ケーキ類に求められるソフト感、弾力、口溶け、しっとり感などの食感が非常に優れたケーキ類製造用澱粉組成物が提供される。
本発明のケーキ類製造用澱粉組成物は、澱粉の含有量が全穀粉量の80〜100重量%である。澱粉としては、天然澱粉、化工澱粉、加工澱粉の何れであってもよい。
天然澱粉としては、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、さご澱粉、馬鈴薯澱粉、葛澱粉、甘藷澱粉などが挙げられ、これらは複数を同時に使用してもよい。化工澱粉としては、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、過ヨウ素酸酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉などが挙げられ、これらは複数を同時に使用してもよい。加工澱粉としては、粒状化澱粉、α化澱粉、湿熱処理澱粉などが挙げられ、これらは複数を同時に使用してもよい。
上記の架橋澱粉は、架橋剤により架橋処理したものであり、架橋処理と共にエステル化処理及び/又はエーテル化処理したものであってもよい。架橋剤としては、例えば、オキシ塩化リン、アクロレイン、エピクロルヒドリン、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、アジピン酸などから選ばれた一種または二種以上が好ましい。また、エステル化剤としては、例えば、無水酢酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、無水コハク酸、1−オクテニル無水コハク酸、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩などから選ばれた一種または二種以上が好ましい。更に、エーテル化剤としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドや、モノクロロ酢酸などから選ばれた一種または二種以上が好ましい。
タピオカ澱粉などのエステル化架橋澱粉を使用する場合、そのエステル化度は、置換率として、通常0.01〜0.15、好ましくは0.03〜0.05である。また、エーテル化架橋澱粉を使用する場合、そのエーテル化度は、モル置換率として、通常0.01〜0.50、好ましくは0.05〜0.40である。
上記の湿熱処理澱粉における「湿熱処理」とは、澱粉を糊化するには不十分な水分の存在下で加熱処理することを意味し、好適な方法としては、例えば、減圧ラインと加圧蒸気ラインとの両方を付設し、内圧および外圧共に耐圧性の密封できる容器内に澱粉を入れ、減圧した後、蒸気導入による加圧加熱を行い、あるいは、この操作を繰り返すことにより、澱粉を所定時間加熱した後、冷却する方法が挙げられる。湿熱処理は、100〜140℃の温度で10〜180分間程度行うのが好ましい。
澱粉を架橋処理または湿熱処理した澱粉としては、ワキシースターチ、もち米澱粉、もち種小麦澱粉、もち種ソルガム澱粉を架橋処理または湿熱処理した澱粉が挙げられるが、特に架橋処理したワキシーコーンスターチが好ましい。
本発明の澱粉組成物は、天然澱粉(A)、化工澱粉(B)及び加工澱粉(C)の合計含有量が全穀粉量の80〜100重量%であり、各澱粉の配合重量比が(A):(B)+(C)として、95:5〜25:75の範囲であることを特徴とする。
上記の配合重量比は、好ましくは95〜60:5〜40の範囲であり、更に好ましくは90〜70:10〜30の範囲である。(A)が95重量%以上の場合は、ケーキ類の泡沫安定性が不良で生焼けや釜落ちを発生し易く、(A)が5%以下の場合は、ケーキ組織を形成し難く弾力や口溶けの不良なケーキ類となる。また、本発明の澱粉組成物は公知のケーキ類製造原料とプレミクスして使用してもよい。
上記の澱粉の配合重量比は、ケーキ生地の焼成や蒸す等の加熱工程を想定した条件下での熱力学的な物性変化を粘度計、ラピッドビスコアナライザー(RVA)、アミログラフ、ダイナミックアナライザ等で分析することで規定できる。本発明では、例えば、脱気条件下において澱粉組成物と水の重量比が40:60の澱粉組成物含有液を調製し、これについて、昇温速度2℃/minで20℃から95℃まで加熱した場合の動的粘弾性率(dyn/cm)を測定し、その物性範囲を規定することが出来る。動的粘弾性の分析条件を以下に記載する。
澱粉組成物:水の配合比は、実際の一般的なケーキ類の配合を考慮した際の「澱粉組成物(穀粉):水分(卵、砂糖、加水などに由来)」比を表している。また、澱粉組成物含溶液中に気泡が混入すると、気泡による溶液粘度の変化をきたすため、一定条件下にて測定できるよう脱気条件下としている。すなわち、温度変化に対して動的粘弾性率を対数プロットした際、動的粘弾性の変化量は溶液内気泡量が一定であれば、その気泡量に応じて一定の対数変化割合を示す。
上記の昇温速度は、分析に要する時間と溶液内の温度変化の追随の面から選定されている。加熱温度範囲は、ケーキ生地を焼成または蒸す等の加熱処理した際の生地内温度実測値が20〜95℃範囲として得られることより規定されている。前記の動的粘弾性率が次の(a)〜(c)に記載の範囲であることが好ましい。
(a)20〜30℃では、通常200,000〜300,000(dyn/cm)、好ましくは220,000〜270,000(dyn/cm)の範囲である。
(b)50〜55℃では、通常8,000〜16,000(dyn/cm)、好ましくは10,000〜13,000(dyn/cm)の範囲である。
(c)65〜68℃では、通常20,000〜30,000(dyn/cm)、好ましくは23,000〜27,000(dyn/cm)の範囲である。
前述の澱粉の配合重量比は、特に、穀粉として澱粉のみを使用してケーキ類を焼成する場合において、澱粉糊化前後の温度帯における溶液の粘弾性が前述条件の組成物を使用するにらば、良好なケーキセルを形成することが出来るとの知見を基に決定されたものである。
澱粉含有液の加熱工程における粘弾性の調節は、前述の種々澱粉の組み合わせにより調節することが出来る。天然澱粉の場合、例えば、コーンスターチや小麦澱粉のような穀類澱粉は一般に膨潤し難く溶液の粘度上昇が起こり難い。また、加工澱粉の場合、例えば、架橋澱粉では、澱粉の膨潤および糊化を抑制し、架橋度により粘弾性の調製が可能である。更に、リン酸架橋澱粉は、他のエステル、エーテル化澱粉と比較し、糊化の際の粘度低下がシャープであり、常温で膨潤するようになり、粘度は基の澱粉よりも高くなる。これら澱粉の性質を組み合わせることにより、目的とする澱粉組成物レオロジー特性を得ることが出来る。
澱粉組成物含有液の動的粘弾性率が前記の範囲より高すぎる場合、ケーキ生地が気泡を含み難く比重の大きいケーキ生地となり、また、焼成後に充分なボリュームが出ずにソフトな食感のケーキ類とならない等の問題が起こる。一方、澱粉組成物含有液の動的粘弾性率が前記の範囲より低すぎる場合、ケーキ生地より気泡が逸脱し易く安定なケーキ生地を形成できず、焼成中に気泡が逸脱して生焼けや釜落ち等の問題が起こる。
本発明の澱粉組成物を使用したケーキ生地は、常温での生地粘度が起泡化に好適であり、連続式起泡装置を使用しても起泡させることが出来、焼成に際しても泡沫安定性に優れるため、生焼け、釜落ちのないケーキを製造することが出来る。また、グルテンを含まず且つ生地内の気泡の安定性に優れるため、加熱工程においてケーキ生地が大きく膨らみ、比容積のより大きいボリュームのあるケーキ類を製造することが出来る。比容積の向上はケーキ類の製造の歩留にも影響を与える。
また、ケーキ類の食感においては、穀粉として小麦粉を使用した場合と比較し、グルテンを含まないため、ソフト感、口溶けが優れている。更に、加工澱粉などの各種澱粉を使用することにより、弾力性やしっとり感にも優れている。
上記の生産性と食感改良の点で非常に優れることから、従来のケーキ類よりも新たな付加価値の創造が可能となり、その一部を以下に記載する。
(1)風味:
ケーキ類に美味しさを付与する風味の一つとして小麦蛋白の焼成過程におけるメイラード反応やストレッカー反応などにより得られる「ベークド臭(香ばしさ)」がある。このベークド臭はケーキ類に好ましい風味を与える反面、例えば、蒸しケーキ類のような卵の風味を美味しさとして味わうケーキ類にとっては卵の風味を阻害する要因に成り得る。本発明の澱粉組成物を使用してケーキ類を製造した場合、小麦粉に起因するベークド臭を伴わないため、卵やバターや香料などの原料の風味がより際立ったケーキ類を製造することが出来る。
(2)シフォンケーキの工業化:
例えば、ソフトで口溶けの良いケーキ類として代表的なシフォンケーキは、卵白の起泡性を使用してメレンゲを作り生地を軽くするものであり、卵の卵黄と卵白を別々に起泡させた後に両者を合せる別立て法という煩雑な工程が必要であり、しかも、起泡操作に卵の品質の影響を受け易いこともあり、一般的に連続的な大量生産には適さない。しかも、シフォンケーキであっても、生地比重が低いものほど加熱過程において不安定であり、生焼けや釜落ちを起こし易く、かつ、ぱさつき易いという問題がある。
これに対し、本発明の澱粉組成物を使用してケーキ類を製造すると、ケーキセルがシフォンケーキに近似した非常に大きな多孔質となり、シフォンケーキ様のソフト感や口溶け等の食感を呈する。すなわち、従来のシフォンケーキ製造と異なり、現在一般化されている起泡剤を使用したオールインミックス法でのシフォンケーキ製造が可能となり、別立て法に起因する煩雑さを伴わないため従来不可能であった連続起泡化装置によるシフォンケーキの大量生産を可能にする。
(3)復元性:
本発明のケーキ類は弾力性に優れ且つグルテンの粘着性を有さないために、加重による圧縮や内相の気泡を強制的に減圧吸引する等してケーキ類を圧縮変形させた後、加重や減圧を解除した際の復元力に優れる。ケーキ類は物理的に脆い性質を有するため流通中に破損し易いが、本発明のケーキ類は圧縮包装によりケーキ類の破損を低減した流通を可能にする。
(4)小麦アレルギー対策:
本発明の澱粉ケーキは小麦粉を含有しないため、小麦粉(由来の蛋白質)アレルギー疾患を有したアレルギー患者もアレルギー発症の心配なく摂食可能である。従来、小麦アレルギー患者用のケーキ類として発明されているものは米粉が多い(特開2005−341845号公報参照)。ところが、米粉を使用した場合、満足なスポンジ状のケーキセル構造を形成し難いばかりでなく、米粉中澱粉の急速な老化により、製造後の食感に優れないというのが現状であった。これに対し、本発明のケーキ類は、スポンジ状のケーキセルの形成や、製造後の食感の点で米粉の従来品よりも優れており、小麦アレルギー患者に対しても満足なケーキ類を提供することが出来る。
本発明の澱粉組成物を使用したケーキ類の製法を以下に示す。ケーキ類の原料は、穀粉、卵、糖類、食用油脂、水および水溶性成分、乳化剤、増粘安定剤、各種トッピング材などより構成され、これら原料の種類と量は、特に限定されず、常法に従って選択することが出来る。
本発明の澱粉組成物を使用したケーキ類としては、例えば、スポンジケーキ、バタースポンジ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、ワッフル、蒸しケーキ等が挙げられる。更に、本発明の澱粉組成物は電子レンジ加熱調理用の冷凍または冷蔵用ケーキにも好適である。
本発明の澱粉組成物は、上記のケーキ類の製造原料の穀粉として使用することが出来、他の穀粉の一部または全量と置き換えることが可能である。ケーキ類の全穀粉量に対する本発明の澱粉組成物の占める割合は、通常5〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%である。澱粉組成物が5重量%未満の場合は、他の穀粉原料がケーキ類の食感に影響し、ソフト感、弾力、口溶け、しっとり感などが不足する。
本発明の澱粉組成物を使用したケーキ生地の起泡化は、バッチ式縦型ミキサーや連続式起泡化装置など従来の起泡化装置が適用できる。連続式起泡化装置は、ケーキ生地を連続的に起泡させてケーキ生地を製造するものであり、例えば、「オークスミキサー」(米国E.T.Oakes.Corporation社製)、「モンドミキサー」(MONDMIX−HOLLAND B.V.社製)等が市販されている。
本発明の澱粉組成物を使用してケーキ類を製造した場合、グルテンを含まず、しかも、澱粉糊化温度近辺の加熱工程中における粘弾性が低いため、ケーキ生地内の気泡が粘性に妨げられることなく素直に膨張し、ケーキセルがシフォンケーキに近似した非常に大きな多孔質となる。その結果、得られたケーキ類はシフォンケーキ様のソフト感や口溶け等の食感を呈する。
すなわち、本発明の澱粉組成物を使用することにより、従来の別立て法によるシフォンケーキ製造と異なり、現在一般化されている起泡剤を使用したオールインミックス法でのシフォンケーキ製造が可能となり、別立て法に起因する煩雑さを伴わないため、従来不可能であった連続起泡化装置によるシフォンケーキの大量生産が可能となる。
本発明の澱粉組成物を使用したケーキ類は、大きな多孔質で弾力性に優れ且つグルテンの粘着性を有さないために、加重による圧縮や内相の気泡を強制的に減圧吸引する等してケーキを圧縮変形させた後、加重や減圧を解除した際の復元力に優れ、その復元性にて本発明を特徴づけることが出来る。
本発明におけるケーキ類の圧縮と復元について以下に示す。ケーキ類の圧縮は、加重による圧縮や内相の気泡を強制的に減圧吸引する等の方法があり、具体例としては、プレス機による加圧圧縮や、包装材料中に密封しておき中を減圧することによる真空パック方式の圧縮が挙げられる。ただし、加重による圧縮の場合は、ケーキ類の上部から下部にかけて荷重の分布が発生してしまうため、ケーキ類の内相より気泡を減圧吸引して均一な荷重をかけることが好ましい。更に、真空パック方式は保存や運搬の面で便利で好ましく、真空圧縮包装によれば、圧縮と同時に包装も可能である。包装は圧縮の後でも可能である。
ケーキ類の圧縮率は、圧縮前後のケーキ類の容積(cm)の測定にて得られ、次の式で算出できる。
Figure 0005196940
しかしながら、圧縮前後でケーキ類の胴周囲長さ(cm)の変化を伴わない場合においては、簡易的にケーキ類の高さ(cm)を測定し圧縮率を測定することが出来る。
ケーキ類を過剰圧縮すると、内相が水分などの影響で物理的に付着し、復元効果を把握し難い。よって、ケーキ類の弾力による復元の効果を把握するためには、ケーキ類の圧縮率は50〜70%が好ましい。また、圧縮後の保存温度は、実際の食品流通温度を考慮に入れ、−20〜25℃が好ましい。更に保存時間については、圧縮保存後の製品内温度が目的温度に十分達する条件とするため3日以上が好ましい。
復元操作は圧縮したケーキを圧縮条件下より開放した後、ケーキ類の復元が平衡に達するまで充分に放置する方法でもよい。しかしながら、より簡便な方法としては再加熱により、嵩を復元させる方法が挙げられる。具体的な再加熱の手段としては、乾式手段である電子レンジやオーブンレンジによるが好ましいが、蒸し器などを使った湿式手段でもよい。また、その他の加熱によるものでもよいが、電子レンジによることが、利便性などの点から好ましい。復元率は次の式で算出できる。
Figure 0005196940
本発明のケーキ類は、後述の実施例に示すように、減圧圧縮率50%の条件下、25℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、かつ、減圧圧縮率70%の条件下、25℃で3日間保存した後の、復元率が90%以上であることによって特徴づけられる。
また、本発明のケーキ類は、後述の実施例に示すように、減圧圧縮率50%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、減圧圧縮率70%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が90%以上であることを特徴づけられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3、参考例1、実施例5及び比較例1〜5:
天然澱粉としては、コーンスターチ(雪和食品社製「コーンスターチホワイト」)、化工澱粉としては、タピオカのヒドロキシプロピル化澱粉をリン酸架橋処理したもの、加工澱粉としては、タピオカの湿熱処理α化澱粉を使用した。
表1及び表2に示す組成物について、以下に記載の方法により、穀粉含有溶液およびケーキの評価を行い、結果を表1及び表2に示す
(1)穀粉含有液の動的粘弾性評価:
減圧条件下にて調製した、穀粉:水=40:60(w/w)の穀粉含有液について、加熱工程における動的粘弾性率(dyn/cm)を測定した。動的粘弾性率は、ダイナミックアナライザ(レオメトリックス ファーイースト社製「RDAII」)を使用し、動的粘弾性測定法により、シェアモードで測定された粘弾性スペクトルから算出した。プローブは半径15mmの平行円板、周波数10Hz、歪み10%、昇温速度2℃/min、加熱温度20℃〜95℃の条件により測定した。
(2)ケーキの製造・評価:
原料の配合は、一般的なスポンジケーキの配合に従い、穀粉100重量部に対し、全卵180重量部、上白糖110重量部、加水20重量部、ベーキングパウダー1重量部、O/W型起泡性乳化油脂15重量部とした。起泡化は、縦型ミキサー(カントーミキサーC型10:関東混合機混合社製)を使用し、オールインミックス製法により行い、最終ケーキ生地比重が0.42〜0.44(g/cm)となるように調節した。焼き型(6号デコ台型、直径18cm、高さ6cm)に350gのケーキ生地を流し込み、180℃にて40分間オーブンで焼成してケーキを製造した。
比容積は、レーザー式容積測定装置で測定した。生焼け及び釜落ちの有無は、ケーキを半分に切り、目視で有無を評価した。風味および食感は、専門パネラー10名が、弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感を次の評価基準に基づいて評価し、美味しさについて総合評価を判定した。評価は、◎:大変よい、○:よい、△:やや悪い、×:悪い、の4段階で行い、全パネラーの平均で表した。
圧縮操作は、真空包装機(シロ産業社製)を使用して真空度の管理により得られたケーキを50%又は70%に減圧圧縮し、シールした。各ケーキサンプルを25℃又は-20℃にて3日間保存した後、電子レンジにて500Wで1分間加熱処理し嵩を復元し、復元率を測定した。
Figure 0005196940
Figure 0005196940
表1及び表2に記載のデータが示すように、穀粉として本発明の澱粉組成物を100重量部使用したケーキは、総合的なケーキ食感だけでなく、ボリュームや圧縮に対する復元性に優れている。また、本発明の澱粉組成物中の天然澱粉、化工澱粉、加工澱粉の配合重量比は、澱粉組成物と水の重量比が40:60の澱粉組成物含有液の熱力学的な物性測定により規定することが出来る。

Claims (5)

  1. 天然澱粉(A)、化工澱粉(B)及び加工澱粉(C)を含み、天然澱粉(A)、化工澱粉(B)及び加工澱粉(C)の合計含有量が全穀粉量の80〜100重量%であり、各澱粉の配合重量比が(A):(B)+(C)として、95〜75:5〜25の範囲であることを特徴とするケーキ類製造用澱粉組成物。
  2. 澱粉組成物と水の重量比が40:60の澱粉組成物含有液を調製し、これについて、昇温速度2℃/minで20℃から95℃まで加熱した場合の動的粘弾性率が次の(a)〜(c)に記載の範囲である請求項1に記載のケーキ類製造用澱粉組成物。
    (a)20〜30℃:200,000〜300,000(dyn/cm
    (b)50〜55℃:8,000〜16,000(dyn/cm
    (c)65〜68℃:20,000〜30,000(dyn/cm
  3. 請求項1又は2に記載の澱粉組成物を使用して製造されたことを特徴とするケーキ類。
  4. 減圧圧縮率50%の条件下、25℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、かつ、減圧圧縮率70%の条件下、25℃で3日間保存した後の、復元率が90%以上であることを特徴とする、請求項3に記載のケーキ類。
  5. 減圧圧縮率50%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が95%以上であり、減圧圧縮率70%の条件下、−20℃で3日間保存した後の復元率が90%以上であることを特徴とする、請求項3に記載のケーキ類。
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