JP5194593B2 - 耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ - Google Patents

耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ

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Description

本発明は、建築や橋梁等の各種構造物に用いる耐火性に優れた鋼(以下、耐火鋼、または、耐火構造用鋼ともいう。)のガスシールドアーク溶接に用いるフラックス入り溶接ワイヤに関するものであり、特に、溶接金属の700〜800℃での耐力、伸び(耐高温脆化特性)、低温靭性に優れた耐火構造物を得ることのできる、Ar+CO2溶接やCO2溶接に供される、耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤに関するものである。なお、本発明が対象とする、ガスシールドアーク溶接は、作業性が良好で、かつ全姿勢溶接も可能なことから、汎用性の高いものである。
例えば、建築物には火災時の安全性を確保するために、火災時における鋼材表面温度が350℃以下で使用するように耐火基準が定められており、ロックウールなどの耐火被覆が必要となる。しかし、耐火被覆施工費用は高額であり、工程も余分にかかること、さらには景観上からも、耐火被覆を完全に省略したいという要求は非常に高まっている。
昭和57年から61年にかけて、旧建設省の総合プロジェクトとして「建築物の防火設計法の開発」が実施され、その成果を受けて、旧建築基準法第38条による建設大臣認定により性能型の設計が可能となった。その結果、鋼材の高温強度と建物に実際に加わっている荷重によってどの程度の耐火被覆が必要かを決定できるようになり、場合によっては無耐火被覆で鋼材を使用することも可能になった。その後、平成5年から9年にかけて、再度、旧建設省の総合プロジェクトとして「防・耐火性能評価技術の開発」が実施され(非特許文献1参照。)、その成果を受けて、平成10年に公布され平成12年に施行された改正建築基準法で、普通鋼を用いた部分にも耐火設計が利用できるようになった。しかし、立体駐車場などへ適用するには高温強度が不足するため、無被覆での普通鋼の使用は、コンクリート充填鋼管柱(CFT(Concrete Filled Steel Tube)柱)を除き限定的なものに留まっている。
必要な耐火性能は、火災に対して常時荷重を支持する柱、梁等の部材が崩壊しないことである。火災時に鋼部材が加熱されると、部材温度が上昇して降伏強度が低下する。耐火設計においては、部材へ流入する熱量(以下、熱入力ともいう。)をもとに鋼材温度を算定し、必要な高温強度を確保できるように鋼素材や部材断面の選定を行うことになる。鋼材に耐火被覆がなければ、鋼材は火災加熱を直接受けるので大幅な強度低下は免れないことから、通常は、認定された耐火被覆(吹付けロックウール、ケイ酸カルシウム板など)を施して、鋼材への熱入力を減じてやる処置を採る。しかし、高温強度に優れた耐火鋼を使用すると、可燃物が少なく火災が比較的弱い立体駐車場や駅ビル、学校などでの無耐火被覆の可能性が広がると考えられる。
こうした状況から、短時間の高温強度を高めたいわゆる耐火鋼が多く開発された。最初は、600℃での高温降伏強度が常温時の2/3以上となる鋼材、すなわち600℃耐火鋼が開発され、直近においては、700℃あるいはさらに800℃での高温降伏強度を保証する700℃耐火鋼、800℃耐火鋼に関する技術も開示されつつある。
耐火鋼を用いた構造物においても、溶接構造が主であり、各々の耐火鋼部材の耐火強度に応じて溶接金属においても同等以上の特性を有する溶接継手が必要であり、そのための溶接材料、溶接方法が必要となる。
例えば、特許文献1では、800℃までの高温耐火構造用鋼に適用するサブマージアーク溶接方法が提案されている。また、特許文献2、特許文献3ではガスシールドアーク溶接用の700〜800℃耐火鋼用の溶接ワイヤが開示されている。
特開2003−311477号公報 特開2005−305460号公報 特開2006−289405号公報 建設省建築研究所、(財)日本建築センター:建設省総合技術開発プロジェクト「防・耐火性能評価技術の開発」報告書、平成10年3月
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、700〜800℃耐火鋼用という点では本発明と同じであるが、溶接方法の全く異なるサブマージアーク溶接に関わるものである。サブマージアーク溶接では、フラックスを予め散布する必要性等から、一般的には下向き溶接専用となり、特に全姿勢のガスシールアーク溶接の代替手段とはならない。
また、特許文献2、特許文献3に示されている溶接ワイヤは、実質的に鋼製中実ワイヤである、いわゆるソリッドワイヤに関するものであり、本発明が対象とするフラックス入りワイヤに関するものではない。
ところで、ガスシールドアーク溶接用としては、鋼製外皮の中に成分原料や脱酸剤を充填したフラックス入りワイヤも使用される場合が多い。フラックス入りワイヤは、ワイヤの成分調整がソリッドワイヤに比べて容易であるため、製造の容易さの観点からは好ましく、また、作業性が良好でビード形状も好ましいため、ソリッドワイヤとは別にフラックス入りワイヤが望まれる。一方で、フラックス入りワイヤは、充填剤の選択によって、溶接ワイヤからの溶接金属への歩留まりが変化したり、酸素(O)含有量が高くなったりするなど、特有の問題があり、ソリッドワイヤとは全く異なった技術を必要とする。そのため、ソリッドワイヤの知見がそのままフラックス入りワイヤに適用できる訳ではない。このように、現在までのところ、700〜800℃用で溶接金属の高温強度と靭性が良好な耐火構造用鋼用のフラックス入りワイヤは提案されておらず、その開発が望まれている。
700〜800℃用耐火構造用鋼用の溶接ワイヤおよび溶接材料では、溶接金属の耐火特性、すなわち、700〜800℃における高温強度を一定以上確保するために、いずれも高温強度を発現する元素、代表的にはMo、Nb、V等の析出強化元素を溶接金属中に比較的多量に含有させる必要がある。このような高温強度発現元素は、室温でも当然ながら固溶強化、析出強化に寄与し、その分、靭性を大きく劣化させるため、700〜800℃用耐火構造用鋼用の溶接ワイヤおよび溶接材料においては、靭性を確保することが困難であるという問題がある。特に、フラックス入りワイヤの場合、充填剤中の不純物がソリッドワイヤに比べて多く、溶接ワイヤ全体としての酸素(O)量も高くなるため、他の溶接材料、溶接ワイヤに比べて高温強度と靭性との両立が一層難しい。
そこで、本発明は、上記の問題点を有利に解決して、高温強度が母材と同等以上であり、同時に靭性も良好な溶接金属を得ることが可能であり、700〜800℃における耐火性に優れた耐火構造用鋼の溶接に使用することができる、耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤを提供することを目的とするものである。より具体的な溶接金属の目標としては、700℃における0.2%耐力が約220MPa以上、かつ、800℃における0.2%耐力が70MPa以上で、さらに0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが27J以上を目標とする。
本発明は、上記課題を解決するものであって、その発明の要旨は以下の通りである。
(1) 鋼製外皮内にフラックスを充填してなる耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤにおいて、
溶接ワイヤ中に金属として含有する成分は、溶接ワイヤ全体として、質量%で、C:0.002〜0.2%、Si:0.005〜1%(充填フラックス中のSiO2を除く。)、Mn:0.1〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.2%(充填フラックス中のAl23を除く。)、N:0.001〜0.015%を含有し、さらに、Mo:0.01〜2%、W:0.01〜2%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.5%、Ta:0.005〜0.5%、Ti:0.005〜0.5%(充填フラックス中のTiO2を除く。)の1種または2種以上を含有し、さらに、下記(1)式で示されるNb当量(Nbeq.)が0.084〜0.2%であり、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、
かつ、前記鋼製外皮は、外皮全質量に対する質量%で、C:0.002〜0.2%、Si:0.005〜1%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.015%、Mo:2%以下(0%を含む。)、W:2%以下(0%を含む。)、Nb:0.1%以下(0%を含む。)、V:0.5%以下(0%を含む。)、Ta:0.5%以下(0%を含む。)、Ti:0.2%以下(0%を含む。)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、
前記充填フラックスは、ワイヤ全質量に対する質量%で、CaF2:5%以下(0%を含む。)、TiO2:15%以下(0%を含む。)、SiO2:2%以下(0%を含む。)、ZrO2:2%以下(0%を含む。)、Al23:2%以下(0%を含む。)を含有し、さらに、上記、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計が、0.5〜20%であり、残部が金属粉および不可避不純物からなる成分組成を有することを特徴とする、耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
Nbeq.=Nb%+V%/5+Mo%/10+W%/10+Ta%/5
+Ti%/5 ・・・・・・・・・・・・・・(1)
ただし、Nb%、Mo%、W%、Ta%、Ti%は、それぞれ、溶接ワイヤ中に含有する各成分の質量%を示す。
(2) 溶接ワイヤ中に金属として含有する成分はさらに、ワイヤ全体として、質量%で、Cr:0.01〜3%、Ni:0.01〜3%、Cu:0.01〜1.5%、Co:0.01〜6%、B:0.0005〜0.015%の1種または2種以上を、鋼製外皮と充填フラックスの一方または両方に含有することを特徴とする、上記(1)に記載の耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
(3) 溶接ワイヤ中に金属として含有する成分はさらに、ワイヤ全体として、質量%で、Ca:0.0002〜0.1%(充填フラックス中のCaF2を除く。)、Mg:0.0002〜1%、REM:0.0002〜1%の1種または2種以上を、鋼製外皮と充填フラックスの一方または両方に含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
本発明によれば、700〜800℃での耐火性に優れた耐火構造用鋼の、Ar+CO2溶接やCO2溶接などのガスシールドアーク溶接において、高温強度だけでなく、極めて良好な靭性に優れた溶接金属を得ることが可能な、耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤを提供することが可能となるため、その産業上の効果は極めて大きい。
建築鋼構造物の耐火設計では、火災継続時間内で高い高温強度を維持すればよく、従来のボイラなど圧力容器用の耐熱鋼のように500〜600℃程度の高温、高圧環境下で長時間使用する際の高温強度を考慮する必要はなく、比較的短時間の高温での降伏強度が維持できればよい。例えば、800℃で保持時間が30分程度の短時間での高温降伏強度が確保できれば800℃耐火鋼として十分利用できる。
従来の600℃耐火鋼では、高温時の降伏強度が常温時の2/3以上となるように性能を定めていたが、鉄骨構造物の実設計範囲が常温降伏強度下限の0.2〜0.4倍であることを勘案し、常温降伏強度下限比0.4以上であれば使用できるとの考えに基づき、800℃高温強度の目安としては常温降伏強度に対する下限比が0.4以上とされている。すなわち800℃降伏強度の目標値は400MPa級鋼で94MPa以上、490MPa級鋼で130MPa以上である。
一方、建築構造物における鉄骨柱製作時の溶接部は作用応力が小さい位置に設けられるため、その溶接部の800℃降伏強度の目標値は、母材の800℃降伏強度の目標の1/2、すなわち490MPa級鋼として使用することを仮定しても、800℃の降伏強度の目標で70MPa以上が得られれば十分であることを発明者らは確認している。また、同様の根拠により700℃の降伏強度目標は220MPa以上となる。
そこで、発明者らは、800℃までの高温耐火構造用鋼用の溶接材料として、700℃および800℃の降伏強度が各々220MPa以上、70MPa以上で、かつ、靭性に関しては、安全性をより重視して、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが27J以上を有する溶接金属が得られるガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤについて詳細な実験に基づいて検討した。
本検討に先立ち、発明者らは、ソリッドワイヤによる溶接部の700℃、800℃における高温強度は、溶接金属中にMo、Nb、さらに、W、V、Taのいずれかを適正量含有させることで向上させることが可能であり、各々の元素は高温強度に対してほぼ同様の効果を発揮するが、その程度は元素により異なり、これらの元素の高温強度に対する効果は下記(2)式で定義されるNb当量(Nbeq.)で統一的に整理されることを、既に、特許文献3で開示した。
Nbeq.=Nb%+V%/5+Mo%/10+W%/10+Ta%/5・・・(2)
ただし、Nb%、Mo%、W%、Ta%は、それぞれ、溶接ワイヤ中に含有する各成分の質量%を示す。
発明者らは、後述するように、フラックス入り溶接ワイヤについても同様の検討を進め、フラックス入り溶接ワイヤにおいても特許文献3で開示したNb当量と同様のNb当量(Nbeq.)で統一的に整理されることを見出した。ただし、特に全姿勢性を重視した場合にはフラックスにTiO2を添加することが多いフラックス入りワイヤでは溶接金属中のTi量も多くなり、Tiの高温強度への影響を無視できないことを新たに知見し、上記(2)式をベースにTiの効果も加味した(1)式のフラックス入り溶接ワイヤ用のNb当量を得た。
Nbeq.=Nb%+V%/5+Mo%/10+W%/10+Ta%/5
+Ti%/5 ・・・・・・・・・・・・・・(1)
ただし、Nb%、Mo%、W%、Ta%、Ti%は、それぞれ、溶接ワイヤ中に含有する各成分の質量%を示す。
以下に、発明者らが、高温強度と溶接金属中の高温強度発現元素含有量との関係を詳細に調べ、上記(1)式を得るに至った実験について説明する。すなわち、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、0.04%C−0.05%Si(フラックスとしてのSiO2を除く。)−0.25%Mn−0.012%P−0.006%S−0.008%Al(フラックスとしてのAl23を除く。)−0.15%Cu−0.0035%N−2.5%CaF2−0.2%TiO2−0.35%SiO2をベースとして、Moを0〜2%、Wを0〜2%、Nbを0〜0.1%、Taを0〜0.5%、Vを0〜0.5%、Ti(フラックスとしてのTiO2を除く。)を0〜0.5%の範囲で、種々の添加量、組み合わせで添加したフラックス入り溶接ワイヤを小型実験室設備を用いて試作した。溶接ワイヤ径は1.4mmで、充填フラックス全体の充填率は12%としている。Mo、W、Nb、Ta、V、Tiは純金属または母合金の粉末からなる充填剤として添加量を調整した。
後述の実施例に用いた、表1に示す板厚25mmの、700℃から800℃での耐火特性を有する鋼板のうち、鋼板P3について、図1に示すような開先2を加工し、上記試作溶接ワイヤを用いて溶接継手を作製した。裏当金3も鋼板1と同じ鋼板を使用した。溶接は入熱3kJ/mmの多層盛CO2溶接とし、溶接後の試験体から図2に示す位置で高温引張試験片4を採取し、700℃における高温引張特性を調べた。この調査結果に基づき、700℃における0.2%耐力に及ぼす各合金成分の影響を、重回帰分析手法を用いて算出した。そして、算出した各成分の影響を、Nbの影響しろで規格化した結果が、上記(1)式である。Ti以外の成分の係数が(2)式と同等となる結果とともに、Tiの係数が1/5であることが判明した。
図3は、上記調査結果のうち、Nb当量に関わる元素を全く含まない溶接ワイヤにより作製した溶接継手の溶接金属の700℃における0.2%耐力に対する、溶接ワイヤ中にNbあるいはTi(フラックスとしてのTiO2は除外。)を各々単独に添加した溶接ワイヤにより作製した溶接継手の溶接金属の700℃における0.2%耐力の向上しろと、各元素の溶接ワイヤ中含有量との関係を示した図である。Nb、Tiとも含有量に応じて700℃における0.2%耐力は向上するが、同一質量%あたりの向上しろはNbに比べてTiの方が約1/5程度小さいことが分かり、上記重回帰分析結果と同等の値が得られた。以上のような知見から、上記(1)式のようにNb当量式におけるTiの係数を1/5とした。
本実験における全ての溶接継手について、溶接金属の700℃における0.2%耐力と新たなNb当量との関係を整理すると図4に示すようになる。図4から、本Nb当量と溶接金属の0.2%耐力とは明確な相関を有し、本Nb当量が0.05%以上であれば、溶接金属の700℃における0.2%耐力を220MPa以上とすることが可能であることが分かる。
溶接金属の靱性についても、本Nb当量を適正化することにより所望のレベルを得ることが可能であるが、ソリッドワイヤによる溶接金属よりもフラックス入りワイヤによる溶接金属の方が、不純物元素や酸素(O)量の不可避的な多さの故に、同じ高温強度でも、すなわち、高温強度発現元素の量が同じでも靱性は低くならざるを得ず、高温強度を確保できる程度には含有させる必要はある一方で、必要最低限の量に止める必要がある、すなわち、含有量の範囲をより厳密に制限する必要があることも知見した。
また、溶接金属の靱性を安定的に向上させるためには、強度を発現するための基本元素である一方、炭化物や島状マルテンサイトを形成して靱性を阻害するCや、溶接金属のミクロ組織を規定するベースとなるSi、Mn、Al、Ti等の合金元素を適正化する必要があるが、これらの元素の溶接金属中での含有量を安定的に制御するためには、充填剤の成分によるだけでなく、鋼製外皮の化学組成を適正化する必要があることも知見した。従来、フラックス入りワイヤにおける成分調整は充填剤から行われており、鋼製外皮には軟鋼等の一般鋼が用いられ、その組成には特別の配慮はなされていなかった。
発明者らは、さらに、フラックス入りワイヤによる溶接金属靱性の影響因子を詳細に検討した結果、フラックス充填剤についても、特に靱性確保の観点、スパッタ、ビード形状の観点での作業性制御のために、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23を選択的に用い、かつ、各々適正量含有させる必要があることも見出した。
本発明は、上記の新たな知見に基づいてなされたものであり、鋼製外皮の組成、充填剤の組成を各々定め、かつ、厳密に制御する必要のある重要な元素については、充填剤と鋼製外皮との合計量についても規定することにより、溶接金属が所望の特性を得るようにするものである。
先ず、鋼製外皮の化学組成の限定理由を示す。なお、鋼製外皮中の各元素の含有量は、鋼製外皮全体の質量に対する質量%で規定する。
[鋼製外皮のC:0.002〜0.2%]
Cは、溶接金属中に適正量含有させることにより、焼入性向上による組織微細化や炭化物の形成効果を通して、室温および高温での強度確保に有効な元素であるが、溶接金属の靭性を劣化させる元素でもあり、溶接金属中の含有量を厳密に制御する必要性があるため、鋼製外皮における含有量を限定する。鋼製外皮中のC含有量が0.002%未満では溶接金属中のC量が過小となり、室温強度、高温強度の確保が困難となる。一方、鋼製外皮中のC含有量が0.2%超になると、溶接金属の靭性が大きく劣化するため、本発明においては、鋼製外皮中のC含有量は、0.0002〜0.2%とする。
[鋼製外皮のSi:0.005〜1%]
Siは、溶接金属中に適正量含有させることにより、焼入性向上による組織微細化や固溶強化効果を通して、室温および高温での強度確保に有効な元素であるが、適正量を確実に溶接金属中に含有させる必要がある元素であるために、鋼製外皮中の含有量を限定する。鋼製外皮中のSi量が0.005%未満では上記効果が十分発現されず、また、1%超では溶接金属が過度に硬化したり、靭性を劣化させる島状マルテンサイトを過度に生成する等により、溶接金属の靭性を著しく損ねるため、本発明においては、鋼製外皮中のSi含有量を0.005〜1%に限定する。
[鋼製外皮のMn:0.1〜2.5%]
Mnは、溶接金属中に適正量含有させることにより、焼入性向上による組織微細化や固溶強化効果を通して、室温および高温での強度確保に有効な元素であるが、適正量を確実に溶接金属中に含有させる必要がある元素であるために、鋼製外皮中の含有量を限定する。鋼製外皮中のMn量が0.1%未満では上記効果が十分発現されず、また、2.5%超では溶接金属が過度に硬化したり、靭性を劣化させる島状マルテンサイトを過度に生成する等により、溶接金属の靭性を著しく損ねるため、本発明においては、鋼製外皮中のMn含有量を0.1〜2.5%に限定する。
[鋼製外皮のP:0.02%以下]
Pは、不純物元素であり、溶接金属の靭性や高温割れ性を劣化させるため、溶接金属中の含有量を極力低減することが好ましい。鋼製外皮中の含有量を規制することが溶接金属中のP含有量低減に確実であるため、本発明においては、鋼製外皮中のP含有量を限定する。鋼製外皮中のP含有量が0.02%以下であれば、溶接金属の靭性や耐高温割れ性に対する悪影響が許容できるものとなるため、本発明においては、鋼製外皮中のP含有量を0.02%以下とする。
[鋼製外皮のS:0.01%以下]
Sも、不純物元素であり、溶接金属の延性や靭性、さらには高温割れ性を劣化させるため、溶接金属中の含有量を極力低減することが好ましい。鋼製外皮中の含有量を規制することが溶接金属中のS含有量低減に確実であるため、本発明においては、鋼製外皮中のS含有量を限定する。鋼製外皮中のS含有量が0.01%以下であれば、溶接金属の靭性や耐高温割れ性に対する悪影響が許容できるものとなるため、本発明においては、鋼製外皮中のS含有量を0.01%以下とする。
[鋼製外皮のAl:0.001〜0.1%]
Alは、脱酸元素として溶接金属中のO量が過度に多くならないために必要な元素であり、適正量を確実に溶接金属中に含有させる必要がある元素であるために、鋼製外皮中の含有量を限定する。鋼製外皮中のAl含有量が0.001%未満であると効果が明確でないため好ましくない。一方、鋼製外皮中のAl含有量が0.1%超であると、鋼製外皮中に粗大な酸化物を形成して鋼製外皮の靭性や延性を阻害して、ワイヤ製造性を阻害するため好ましくない。そのため、本発明においては、鋼製外皮中のAl含有量を0.001〜0.1%に限定する。
[鋼製外皮のN:0.001〜0.015%]
Nも、溶接金属中では不純物元素で、主として固溶状態で靭性に悪影響を及ぼすため、溶接金属中に過度に含有されないよう注意する必要がある。そのためには鋼製外皮中の含有量を制限することが好ましい。ただし、鋼中のN含有量を0.001%未満まで低減することは工業的に容易でなく、また、この程度であれば溶接金属特性への悪影響も無視できる程度であるため、本発明においては、鋼製外皮中のN含有量の下限を0.001%とする。一方、鋼製外皮中のN含有量の上限は、溶接金属での悪影響が許容できる範囲として決定され、本発明においては種々実験結果に基づいて、鋼製外皮中のN含有量の上限を0.015%と定める。
以上の鋼製外皮中に含有することが必須である元素あるいは不純物元素の他、溶接ワイヤ全体としては必須であるが、鋼製外皮中と充填フラックス中との合計量で適正範囲を満足すればよい元素として、Mo、W、Nb、V、Ta、Tiがある。ただし、これらの元素については、鋼製外皮に含有する場合、下記の理由により、鋼製外皮中の含有量も限定する。なお、Mo、W、Nb、V、Ta、Tiの各元素を溶接ワイヤ全体として含有させる必要性と適正範囲については、別途、鋼製外皮中と充填フラックス中との合計量となる溶接ワイヤ全体の含有量としての限定理由の中で詳述する。
[鋼製外皮のMo:2%以下(0%を含む。)]
Moを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を2%とする。これは、鋼製外皮に2%を超えてMoを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、鋼製外皮の強度が過度に高くなって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
[鋼製外皮のW:2%以下(0%を含む。)]
Wを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を2%とする。これは、Moと同様、鋼製外皮に2%を超えてWを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、鋼製外皮の強度が過度に高くなって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
[鋼製外皮のNb:0.1%以下(0%を含む。)]
Nbを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を0.1%とする。これは、鋼製外皮に0.1%を超えてNbを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、鋼製外皮の強度が過度に高くなって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
[鋼製外皮のV:0.5%以下(0%を含む。)]
Vを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を0.5%とする。これは、鋼製外皮に0.5%を超えてVを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、鋼製外皮の強度が過度に高くなって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
[鋼製外皮のTa:0.5%以下(0%を含む。)]
Taを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を0.5%とする。これは、鋼製外皮に0.5%を超えてTaを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、鋼製外皮の強度が過度に高くなって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
[鋼製外皮のTi:0.2%以下(0%を含む。)]
Tiを鋼製外皮に含有させる場合、その上限を0.2%とする。これは、鋼製外皮に0.2%を超えてTiを含有させると、鋼製外皮の製造性が劣化するとともに、粗大介在物を形成する、あるいは、鋼製外皮の強度が過度に高くなる、等の理由によって、ワイヤ製造性や、溶接時のワイヤ送給性も阻害されるためである。
以上が、鋼製外皮にMo、W、Nb、V、Ta、Tiを含有させる場合の限定理由であるが、Mo、W、Nb、V、Ta、Tiは、固溶強化や析出強化によって700〜800℃での高温強度を発現する重要な元素である。高温強度に対する効果は類似であるため、1種または2種以上をワイヤとして含有する必要があり、かつ、高温強度の確保、靭性との両立等の観点から、各々その含有量を、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量となる溶接ワイヤ全体の含有量として限定する必要がある。
[溶接ワイヤ全体のMo:0.01〜2%]
Moは、固溶状態および析出状態で溶接金属の高温強度を高める基本元素であり、耐火特性向上に有効な元素である。このような効果を明確に発揮させるためにワイヤ中に含有させる場合、Moは鋼製外皮中と充填フラックス中の合計として0.01%以上必要であるが、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計が2%を超えると常温強度が高くなりすぎ、また、溶接金属靭性も低下する可能性が大きいため、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計でMoは0.01〜2%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のW:0.01〜2%]
Wも、Moと同様、固溶強化および析出強化により高温強度を高めることが可能な元素である。高温強度に対する効果、靭性への悪影響の程度もMoとほぼ同程度であるため、本発明において、溶接ワイヤにWを含有させる場合には、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.01〜2%の範囲とする。
[溶接ワイヤ全体のNb:0.005〜0.1%]
Nbは、主としてNbの炭窒化物が分散することによる析出強化あるいは分散強化機構により高温強度を高め、700℃を超える高温での耐火特性確保に有効である。Nbを高温強度向上のために溶接ワイヤ中に含有させる場合には、確実に高温強度向上効果を発揮するために、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005%以上含有させる必要がある。ただし、Nbは靭性を顕著に劣化させる元素でもあり、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.1%を超えて過剰に溶接ワイヤに含有させると、溶接金属の靭性劣化が許容できなくなるため、好ましくない。また、高温脆化も助長するようになるため、本発明においては、溶接ワイヤにNbを含有させる場合には、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005〜0.1%の範囲とする。
[溶接ワイヤ全体のV:0.005〜0.5%]
Vも、Nbと同様、主として析出物の分散により高温強度を発現する元素である。Vを高温強度向上のために溶接ワイヤ中に含有させる場合には、確実に高温強度向上効果を発揮するために、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005%以上含有させる必要がある。ただし、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.5%を超えて過剰に溶接ワイヤに含有させると、溶接金属の靭性劣化が大きくなるため、本発明においては、溶接ワイヤにVを含有させる場合には、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005〜0.5%の範囲とする。
[溶接ワイヤ全体のTa:0.005〜0.5%]
Taも、Nb、Vと同様、主として析出物の分散により高温強度を発現する元素である。Taを高温強度向上のために溶接ワイヤ中に含有させる場合には、確実に高温強度向上効果を発揮するために、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005%以上含有させる必要がある。ただし、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.5%を超えて過剰に溶接ワイヤに含有させると、溶接金属の靭性劣化が大きくなるため、本発明においては、溶接ワイヤにTaを含有させる場合には、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005〜0.5%の範囲とする。
[溶接ワイヤ全体のTi:0.005〜0.5%(充填フラックス中のTiO2を除く。)]
Tiは、組織微細化効果により靭性向上にも寄与するが、安定なTiNを形成して固溶Nを固定することで、他の析出強化元素が粗大な窒化物を形成して高温強度に対する寄与が減ずることを防止したり、自身が微細化炭化物を形成して析出強化することにより高温強度向上に効果を発揮する。そのためには、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005%以上含有させる必要がある。ただし、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.5%を超えて過剰に溶接ワイヤに含有させると、溶接金属の靭性劣化が大きくなるため、本発明においては、溶接ワイヤにTiを含有させる場合には、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量で、0.005〜0.5%の範囲とする。なお、ここで言うところのTiは、炭窒化物を形成し得るTiの意であり、従って、後述するスラグ形成剤として添加するTiO2はここに含まない。
以上、高温強度発現に重要なMo、W、Nb、V、Ta、Tiについては、鋼製外皮中含有量および鋼製外皮中と充填フラックス中の合計量となる溶接ワイヤ全体の含有量のいずれについても、個々に限定範囲を定めるが、さらに、溶接金属において所望の高温強度を確実に達成するために、本発明においては、高温強度に対する各元素の寄与率に基づいて求めた(1)式のNb当量(Nbeq.)も適正範囲内とする必要がある。
Nbeq.=Nb%+V%/5+Mo%/10+W%/10+Ta%/5
+Ti%/5 ・・・・・・・・・・・・・・(1)
ただし、Nb%、Mo%、W%、Ta%、Ti%は、それぞれ、溶接ワイヤ中に含有する各成分の質量%を示す。
(1)式のNb当量(Nbeq.)と溶接金属の機械的性質との関係を詳細な実験により検討した結果、溶接金属において、700℃での0.2%耐力を確実に220MPa以上、800℃における0.2%耐力を確実に70MPa以上とするためには、他の溶接ワイヤ組成を適正化する前提の上で、(1)式のNb当量(Nbeq.)を最低限0.05%とする必要がある。Nbeq.が0.05%未満では、700℃、800℃における0.2%耐力が各々220MPa、70MPaを下回る恐れがあり、耐火用途の溶接金属として好ましくない。Nbeq.が高いほど高温強度は向上するが、0.2%を超えると、室温強度が過度に高くなって、耐溶接割れ性を劣化させる上、靭性にも悪影響を及ぼすため、好ましくない。以上の理由及び実施例の記載に基づき、本発明においては、(1)式のNb当量(Nbeq.)を0.084〜0.2%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のC、Si、Mn、P、S、Al、N量]
前記のように、本発明においては、鋼の組織、特性を決定する基本元素であるC、Si、Mn、P、S、Al、Nについては鋼製外皮組成として規定するが、これらの元素については、充填フラックス中に添加することも可能であり、また、不純物として含有される場合もあるため、本発明においては、これらの元素のワイヤ全体における含有量も合わせて限定する。
すなわち、C、Si、Mn、P、S、Nについては、前記鋼製外皮における限定理由と全く同じ理由から、ワイヤ全体としての含有量は、C:0.002〜0.2%、Si:0.005〜1%(充填フラックス中のSiO2を除く。)、Mn:0.1〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.2%(充填フラックス中のAl23を除く。)、N:0.001〜0.015%とする。
ただしAlについては、鋼製外皮では鋼の製造性から上限を低めの0.1%としているが、脱酸元素としては有効であり、溶接金属中のO量を低減する等の好ましい効果を発揮するため、充填フラックスにさらに含有させることが可能であり、鋼製外皮中と充填フラックス中との合計量の上限を0.2%とする。鋼製外皮中と充填フラックス中との合計量で0.2%を超えて過剰に含有すると、ワイヤ製造性を損ね、溶接金属の特性にも悪影響を及ぼすため、好ましくない。なお、ここでの充填フラックス中のAl含有量としては、効果が異なるため、Al23は除く。
[充填フラックス]
以上が、溶接金属の化学組成を主として規定する溶接ワイヤにおける化学組成の限定理由である。本発明はフラックス入り溶接ワイヤに関するものであり、フラックス入り溶接ワイヤとしての特徴である良好な作業性やビード形状を発現するためには、必要に応じて充填剤中に、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、CaF2:5%以下(0%を含む。)、TiO2:15%以下(0%を含む。)、SiO2:2%以下(0%を含む。)、ZrO2:2%以下(0%を含む。)、Al23:2%以下(0%を含む。)を含有する必要がある。なお、スラグ形成を極力嫌うような用途で、ビード形状や作業性の多少の劣化を許容する場合には、上記酸化物のいずれも含まなくとも構わない。
[充填フラックスのCaF2:5%以下(0%を含む。)]
CaF2は、スラグ形成剤さらに脱酸剤としての性質を有する。特に、溶接金属中のO量を低減して、靭性を向上させるのに有効である。従って、溶接金属の靭性確保を重視する用途の場合には、添加することが好ましい。ただし、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、5%超含有させると、スラグ剥離性、ビード形状および作業性が悪くなるため、本発明においてはその上限を5%とする。なお、CaF2は、0.5%未満では脱酸剤としての効果がなくなって靭性向上効果が明確でなくなるため、溶接金属の靭性を向上させる効果を期待する場合には、0.5%以上含有させることが好ましい。
[充填フラックスのTiO2:15%以下(0%を含む。)]
TiO2は、スラグ形成剤、アーク安定剤としての働きを有し、良好な作業性を確保し、ビード形状を良好する必要がある場合には有用である。また、TiO2は溶接金属の金属組織中の粒内フェライトを形成する生成核となる効果がある。ただし、溶接ワイヤ全質量に対する質量%が15%を超えると、フラックス充填剤の比率(充填率)が一定の場合は他の充填剤を含有できなくなって、成分調整が困難となり、他の充填剤の量をそのままで、TiO2の量を15%超とすると、充填剤の充填率が過大となってワイヤ製造性が悪化するため、好ましくない。また、溶接金属中のO量や粗大な酸化物が増加して溶接金属の靭性に悪影響を及ぼす。よって、本発明においてはフラックス充填剤中にTiO2を含有させる場合、その上限を、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、15%とする。なお、TiO2はアークの安定性を保ち、被包性が良好なスラグを形成するに有効であるため、下向きだけでなく、立向上進等を含んだ全姿勢用のワイヤを目的とする場合には、TiO2は0.5%以上添加することが好ましい。
[充填フラックスのSiO2:2%以下(0%を含む。)]
[充填フラックスのZrO2:2%以下(0%を含む。)]
SiO2およびZrO2はともに、TiO2と類似の作用を有する。ただし、各々、溶接ワイヤ全質量に対する質量%が2%を超えると、溶接金属中に粗大な酸化物を形成して靭性を劣化させる恐れがあるため、本発明においては、その上限を、各々、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で2%に限定する。
[充填フラックスのAl23:2%以下(0%を含む。)]
Al23は、脱酸作用が強く、溶接金属中のOを低減して靭性向上に寄与し得る。ただし、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で2%を超えて充填フラックス中に含有させると、O低減効果が飽和する一方、粗大なAl23が形成されて逆に溶接金属の靭性を劣化させる恐れがあるため、本発明においては、Al23を充填フラックス中に含有させる場合は、その上限を、溶接ワイヤ全質量に対する質量%で2%とする。
[CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計]
なお、上記、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23は、個別には上記理由により含有範囲を規定した上で、選択的に用いることができるが、フラックス入り溶接ワイヤとしての特長である、良好な作業性、良好なビード形状、さらには全姿勢性を確保するためのスラグ確保等々のためには、全含有量の上限、下限を規定する必要はある。すなわち、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計が溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、0.5%未満であると、溶接中に溶鋼を支持し、外気から保護してくれるスラグの形成量が十分でないため、特性劣化、ビード形状劣化、作業性の劣化を生じる恐れがある。一方、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計が溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、20%超であると、スラグ形成量が過大となって、作業性を阻害したり、ワイヤ製造性を劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計を溶接ワイヤ全質量に対する質量%で、0.5〜20%に限定する。
また、本発明が目的とする溶接金属の高温強度と靭性の確保の観点からは、上記フッ化物や酸化物、さらに成分調整用の金属、合金を合わせた充填フラックスの割合、すなわち、ワイヤ全質量に対する充填フラックスの質量%(以降、充填率)は特に限定する必要はないが、成分調整の自由度を確保する観点からは下限を2%、ワイヤの製造性の観点からは上限を25%とすることが好ましい。
以上が、本発明の耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤにおける必須要件に関する限定理由である。なお、本発明においては、溶接金属の室温強度や高温強度の調整、靭性の安定確保や延性向上等の目的のために、必要に応じて、Cr、Ni、Cu、Co、Bの1種または2種以上、さらには、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を、鋼製外皮および/または充填フラックス中に含有させることが可能である。上記選択元素は、全て、鋼製外皮と充填フラックスとの合計量で限定すればよい。
[溶接ワイヤ全体のCr:0.01〜3%]
Crは、室温強度を高めるのに有効な元素である。一般的には高温強度も高める元素であるが、700℃以上の高温強度に対しては効果が小さい。その一方で溶接金属中に過剰に含有すると、靭性を大きく劣化させる悪影響も有する。溶接金属の室温強度調整等のために、ワイヤ中に含有させる場合、効果を明確に発揮するためには、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01%以上必要である。一方、鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量で3%を超えると、溶接金属の靭性を劣化させるため、好ましくない。そこで、本発明においては、ワイヤ中にCrを含有させる場合、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01〜3%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のNi:0.01〜3%]
Niは、一般的に鋼の靭性向上に極めて有効な元素である。本発明においても、必要に応じて溶接ワイヤ中にNiを含有させることが可能である。Niによる高靭化効果を明確に享受するためには、Niはワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01%以上含有させる必要がある。一方、3%を超えて含有させると、加熱変態点(Ac1変態点)の低下が顕著となって、700℃でオーステナイトが生成するため、700℃以上の高温強度を大きく低減する恐れがある。そのため、本発明においては、ワイヤ中にNiを含有させる場合、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01〜3%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のCu:0.01〜1.5%]
Cuは、室温強度向上に有効な元素である。本発明においても、必要に応じて溶接ワイヤ中にCuを含有させることが可能である。Cuの効果を明確に発揮するためには、Cuはワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01%以上含有させる必要がある。一方、1.5%を超えて含有させると、溶接金属の靭性や耐高温割れ性を劣化させる恐れがあるため、本発明においては、ワイヤ中にCuを含有させる場合、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01〜1.5%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のCo:0.01〜6%]
Coは、加熱変態点を大きく低下することなく、室温強度を向上できる元素である。本発明においても、必要に応じて溶接ワイヤ中にCoを含有させることが可能である。Coの効果を明確に発揮するためには、Coはワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01%以上含有させる必要がある。一方、6%を超えて含有させると、溶接金属の靭性や耐高温割れ性を劣化させる恐れがあるため、本発明においては、ワイヤ中にCoを含有させる場合、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.01〜6%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のB:0.0005〜0.015%]
Bは、微量で焼入性を高めることで溶接金属組織の微細化に効果があり、室温強度や靭性向上に有効な元素である。本発明においても、必要に応じて、溶接ワイヤ中にBを含有させることが可能である。Bの効果を明確に発揮するためには、Bは、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.0005%以上含有させる必要がある。一方、0.015%を超えて含有させると、溶接金属の靭性や高温延性を劣化させる恐れがあるため、本発明においては、ワイヤ中にBを含有させる場合、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で0.0005〜0.015%に限定する。
[溶接ワイヤ全体のCa、Mg、REM量]
Ca、Mg、REMは、いずれも硫化物の構造を変化させ、また溶接金属中での硫化物、酸化物のサイズを微細化して、延性および靭性向上に有効である。その効果を発揮するための下限の含有量は、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で、いずれも0.0002%である。一方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招くため、また、溶接ビード形状の劣化、溶接性の劣化の可能性も生じるため、上限をワイヤ全質量に対する鋼製外皮中と充填フラックス中の合計質量%で、Caは0.1%、Mg、REMは1%とする。なお、Caについては、充填フラックス中にCaF2として含有するものもあるが、この場合のCaF2はここで述べるCaとは目的、効果が異なるため、除外する。ここでのCaは、純Caあるいは、Caを含有する母合金、Ca酸化物等、CaF2以外であればいずれの形態でも構わない。他の元素も特に断らない限り、存在形態は問わない。
本発明の効果を実施例によりさらに詳細に説明する。
表1に示す化学組成を有する板厚25mmの、700から800℃での耐火特性を有する種々の鋼板1を、図1に示す寸法の開先2に開先加工し、溶接に供した。裏当金3も鋼板1と同じ鋼板を使用した。溶接は入熱3kJ/mmの多層盛CO2溶接とした。
使用した溶接ワイヤは、表2に示す鋼製外皮を用いて、溶接ワイヤ全体の組成が表3に示す組成となるように、充填フラックスの充填率、組成を調整した。溶接ワイヤは全ていわゆるシームレスタイプとしたが、本発明の効果は溶接ワイヤのタイプがシームレスタイプでもかしめタイプであっても何ら変わらない。
Figure 0005194593
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表2のうち、外皮番号HA1〜HA9は本発明を満足している鋼製外皮であり、外皮番号HB1〜HB6は本発明を満足していない比較例としての鋼製外皮である。溶接ワイヤは全て直径1.4mmに伸線して溶接に供した。表3のうち、ワイヤ番号WA3〜WA5、WA11は外皮組成も本発明を満足し、かつ、溶接ワイヤ全体としての要件も満足している溶接ワイヤであり、ワイヤ番号WB1〜WB16は本発明の要件を満足していない比較の溶接ワイヤである。WA1、WA2、WA6〜WA10、WA12〜WA15は参考例である。表3には、溶接ワイヤの明細、すなわち、鋼製外皮の種類、原料、フラックスの充填率、溶接ワイヤ全体の化学組成ならびにワイヤ伸線時の断線有無で評価したワイヤ製造性も併せて示す。
溶接後の試験体から図2に示す位置で高温引張試験片4と2mmVノッチシャルピー衝撃試験片5を採取し、それぞれの試験に供した。試験片採取位置は両試験片とも溶接金属の中央としている。引張試験の試験温度は700℃とし、2mmVノッチシャルピー衝撃試験は0℃で試験を行った。
試験結果を表4に示す。引張試験は繰り返し数2、2mmVノッチシャルピー繰り返し数3で、いずれも平均値を表4に示している。表4には、併せて溶接作業性、ビード形状、等を調査した結果を示す。溶接作業性は溶接中目視により、ビード形状は継手外観の目視ならびに断面マクロ組織観察により評価した。
Figure 0005194593
表4のうち、継手JA3〜JA5、JA11は本発明の溶接ワイヤを用いて作製した継手の溶接金属の例であり、継手JB1〜JB16は本発明を満足していない比較例の溶接ワイヤを用いて作製した継手の例である。JA1、JA2、JA6〜JA10、JA12〜JA15は参考例である。表4から明らかなように、本発明の溶接ワイヤによる継手JA3〜JA5、JA11の溶接金属は、700℃における0.2%耐力が約220MPaよりも十分高く、0℃におけるシャルピー試験の吸収エネルギーも27Jよりも十分高く、700℃における耐火性とともに構造材料として十分な安全性を有することが明らかである。併せて、本発明による溶接金属は、溶接作業性やビード形状も良好で問題ない。
一方、本発明を満足していない比較例の溶接ワイヤを用いて作製した継手JB1〜JB16の溶接金属は、700℃強度、シャルピー衝撃特性、作業性、ビード形状のいずれかが本発明に比べて大きく劣ることが明らかである。
すなわち、継手JB1は、鋼製外皮のC含有量が過大であるために、溶接金属中のC含有量が必要以上に多くなり、溶接金属の靱性(0℃におけるシャルピー吸収エネルギー)が劣る。
継手JB2は、逆に鋼製外皮のC含有量が過小であるために、溶接金属中のC含有量が過小となり、耐火特性に有効な炭化物の析出が不十分となるため、Nb当量は本発明を満足しているものの、高温強度が700℃耐火用としては不十分である。
継手JB3は、鋼製外皮のSi含有量が過大であるために、溶接金属中のSi含有量が必要以上に多くなり、溶接金属の靱性が劣る。
継手JB4は、鋼製外皮のMn含有量が過大であるために、溶接金属中のMn含有量が必要以上に多くなり、溶接金属の靱性が劣る。また、溶接金属中のMn含有量が過大であるため、加熱温度が低くなっていることに起因して、700℃における0.2%耐力が、目標の220MPaは上回っているものの、Nb当量の割には低めとなっている。さらに、Mnが過大に含まれると伸線加工における鋼の硬化が大きく、伸線中に断線が生じやすいため、ワイヤの製造性にも問題がある。
継手JB5は、鋼製外皮のP含有量が過大であるために、溶接金属中のP含有量が必要以上に多くなり、溶接金属の靱性が劣る。
継手JB6は、鋼製外皮のS含有量が過大であるために、溶接金属中のS含有量が必要以上に多くなり、溶接金属の靱性が劣る。また、Sが過大に含まれると鋼の延性を著しく低下させるため、伸線中に断線が生じ、ワイヤの製造性も劣る。
継手JB7は、溶接ワイヤ中に、高温強度を発現するために必要な、Mo、W、Nb、V、Ta、Ti(TiO2以外)を含有していないため、溶接金属の高温強度が本発明に比べて著しく低いため、700〜800℃耐火用の溶接ワイヤとして好ましくない。
継手JB8は、溶接ワイヤ中に高温強度発現元素は含有されているものの、Nb当量(Nbeq.)が本発明範囲を逸脱して過小であるため、継手JB7と同様、高温強度が不十分である。
継手JB9は、継手JB9とは逆に、溶接金属中のMo、W、Nb、V、Ta、Ti(TiO2以外)各々の含有量は本発明を満足しているものの、Nb当量(Nbeq.)が本発明範囲を逸脱して過大であるため、溶接金属の高温強度は十分高くはあるが、靭性が著しく劣るため、構造用材料の溶接ワイヤとしては好ましくない。
継手JB10は、ワイヤ中の酸化物(TiO2、SiO2、ZrO2、Al23)とCaF2との合計量が過小な例である。この場合、フラックス入りワイヤとしての特長を発現できず、ビード形状が本発明のフラックス入りワイヤに比べて劣るため、好ましくない。
継手JB11は、逆にワイヤ中の酸化物(TiO2、SiO2、ZrO2、Al23)とCaF2との合計量が過大な例である。この場合もビード形状が劣化する上、ワイヤ伸線中に断線を生じるため、好ましくない。
継手JB12は、ワイヤ中のCaF2量が過大であるため、溶接作業性が著しく劣る。すなわち、溶接中はスパッタが多量に生じ、生成したスラグが溶接ビードに固着して剥離が困難となるため、好ましくない。
継手JB13は、ワイヤ中の酸化物の内、TiO2が過大に含有されている例である。この場合、ワイヤの伸線中に断線を生じる頻度が多くなるため、好ましくない。
継手JB14は、ワイヤ中の酸化物の内、SiO2が過大に含有されている例である。この場合、溶接金属中に粗大な酸化物が形成され、これが靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。
継手JB15は、ワイヤ中の酸化物の内、ZrO2が過大に含有されている例である。この場合、溶接金属中に粗大な酸化物が形成され、これが靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。
継手JB16は、ワイヤ中の酸化物の内、Al23が過大に含有されている例である。この場合、溶接金属中に粗大な酸化物が形成され、これが靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。
実施例に用いた溶接継手の開先形状を断面図で模式的に示す図である。 溶接継手からの高温引張試験片および2mmVノッチシャルピー衝撃試験片の採取要領を模式的に示す図である。 溶接金属の700℃における0.2%耐力の向上に対する、溶接ワイヤ中のNbあるいはTi含有量の効果を比較した図である。 (1)式で示されるNb当量と溶接金属の700℃における0.2%耐力との相関を示した図である。
符号の説明
1 鋼板
2 開先
3 裏当金
4 高温引張試験片
5 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片

Claims (3)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填してなる耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤにおいて、
    溶接ワイヤ中に金属として含有する成分は、溶接ワイヤ全体として、質量%で、
    C :0.002〜0.2%、
    Si:0.005〜1%(充填フラックス中のSiO2を除く。)、
    Mn:0.1〜2.5%、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.001〜0.2%(充填フラックス中のAl23を除く。)、
    N :0.001〜0.015%
    を含有し、さらに、
    Mo:0.01〜2%、
    W :0.01〜2%、
    Nb:0.005〜0.1%、
    V :0.005〜0.5%、
    Ta:0.005〜0.5%、
    Ti:0.005〜0.5%(充填フラックス中のTiO2を除く。)
    の1種または2種以上を含有し、さらに、下記(1)式で示されるNb当量(Nbeq.)が0.084〜0.2%であり、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、
    かつ、前記鋼製外皮は、外皮全質量に対する質量%で、
    C :0.002〜0.2%、
    Si:0.005〜1%、
    Mn:0.1〜2.5%、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    N :0.001〜0.015%、
    Mo:2%以下(0%を含む。)、
    W :2%以下(0%を含む。)、
    Nb:0.1%以下(0%を含む。)、
    V :0.5%以下(0%を含む。)、
    Ta:0.5%以下(0%を含む。)、
    Ti:0.2%以下(0%を含む。)
    を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、
    前記充填フラックスは、ワイヤ全質量に対する質量%で、
    CaF2: 5%以下(0%を含む。)、
    TiO2:15%以下(0%を含む。)、
    SiO2: 2%以下(0%を含む。)、
    ZrO2: 2%以下(0%を含む。)、
    Al23:2%以下(0%を含む。)
    を含有し、さらに、上記、CaF2、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23の含有量の合計が、0.5〜20%であり、残部が金属粉および不可避不純物からなる成分組成を有することを特徴とする、耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
    Nbeq.=Nb%+V%/5+Mo%/10+W%/10+Ta%/5
    +Ti%/5 ・・・・・・・・・・(1)
    ただし、Nb%、Mo%、W%、Ta%、Ti%は、それぞれ、溶接ワイヤ中に含有する各成分の質量%を示す。
  2. 溶接ワイヤ中に金属として含有する成分はさらに、ワイヤ全体として、質量%で、
    Cr:0.01〜3%、
    Ni:0.01〜3%、
    Cu:0.01〜1.5%、
    Co:0.01〜6%、
    B :0.0005〜0.015%
    の1種または2種以上を、鋼製外皮と充填フラックスの一方または両方に含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
  3. 溶接ワイヤ中に金属として含有する成分はさらに、ワイヤ全体として、質量%で、
    Ca:0.0002〜0.1%(充填フラックス中のCaF2を除く。)、
    Mg:0.0002〜1%、
    REM:0.0002〜1%
    の1種または2種以上を、鋼製外皮と充填フラックスの一方または両方に含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐火鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ。
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