図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着している不要物を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、基板表面Wfに対してフッ酸などの薬液による薬液処理および純水やDIW(脱イオン水:deionized water)などのリンス液によるリンス処理を施した後、リンス液で濡れた基板表面Wfを乾燥させる装置である。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはpoly−Si等からなるデバイスパターンが形成されたパターン形成面をいう。
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液を吐出する薬液吐出ノズル3と、スピンチャック1の上方位置に配置に配置された遮断部材9とを備えている。
スピンチャック1は、回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転軸J(鉛直軸)回りに回転可能となっている。これら回転支軸11、チャック回転機構13は、円筒状のケーシング2内に収容されている。回転支軸11の上端部には、円盤状のスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転軸J回りに回転する。このように、この実施形態では、チャック回転機構13が本発明の「基板回転手段」として機能する。また、制御ユニット4はチャック回転機構13を制御して回転速度を調整する。
スピンベース15の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン17が立設されている。チャックピン17は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース15の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン17のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン17は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
スピンベース15に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン17を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン17を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン17は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース15から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で支持される。このように、この実施形態では、チャックピン17が本発明の「基板保持手段」として機能する。なお、基板保持手段としてはチャックピン17に限らず、基板裏面Wbを吸引して基板Wを支持する真空チャックを用いてもよい。
薬液吐出ノズル3は、薬液バルブ31を介して薬液供給源と接続されている。このため、制御ユニット4からの制御指令に基づいて薬液バルブ31が開閉されると、薬液供給源から薬液が薬液吐出ノズル3に向けて圧送され、薬液吐出ノズル3から薬液が吐出される。なお、薬液にはフッ酸またはBHF(バッファードフッ酸)などが用いられる。また、薬液吐出ノズル3にはノズル移動機構33(図2)が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてノズル移動機構33が駆動されることで、薬液吐出ノズル3を基板Wの回転中心の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。
遮断部材9は、板状部材90と、内部が中空に仕上げられ、板状部材90を支持する回転支軸91と、回転支軸91の中空部に挿通された内挿軸95とを有している。板状部材90は、中心部に開口部を有する円盤状の部材であって、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置されている。板状部材90は、その下面(底面)90aが基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。板状部材90は略円筒形状を有する回転支軸91の下端部に略水平に取り付けられ、回転支軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る回転軸J回りに回転可能に保持されている。内挿軸95の外周面と回転支軸91の内周面との間にはベアリング(図示せず)が介在して取り付けられている。アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転支軸91を回転軸J回りに回転させる。回転支軸91が回転させられると、板状部材90が回転支軸91とともに一体的に回転する。遮断部材回転機構93は、スピンチャック1に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で板状部材90(下面90a)を回転させるように構成されている。
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて遮断部材9をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック1の上方の離間位置に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された所定の対向位置(図1に示す位置)まで遮断部材9を下降させる。この実施形態では、リンス処理が開始されてから遮断部材9を離間位置から対向位置に下降させ、乾燥処理が完了するまで継続して遮断部材9を対向位置に位置させる。
図3は図1の基板処理装置に装備された遮断部材の要部を示す縦断面図である。また、図4は図3のA―A’線断面図(横断面図)である。回転支軸91の中空部に内挿された内挿軸95は、横断面が円形に形成されている。これは、内挿軸95(非回転側部材)と回転支軸91(回転側部材)との隙間の間隔を全周にわたって均等にするためであり、該隙間にシールガスを導入することで内挿軸95と回転支軸91との隙間を外部からシールされた状態としている。内挿軸95には3本の流体供給路が鉛直軸方向に延びるように形成されている。すなわち、リンス液の通路となるリンス液供給路96、リンス液に溶解して表面張力を低下させる有機溶媒成分を有する低表面張力溶剤の通路となる溶剤供給路97および窒素ガス等の不活性ガスの通路となるガス供給路98が内挿軸95に形成されている。リンス液供給路96、溶剤供給路97およびガス供給路98はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)からなる内挿軸95にそれぞれ、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂:polymer of tetrafluoroethylene and perfluoroalkylvinylether)製のチューブ96b,97b,98bを軸方向に挿入することによって形成されている。
そして、リンス液供給路96、溶剤供給路97およびガス供給路98の下端がそれぞれ、リンス液吐出口96a、溶剤吐出口97aおよびガス吐出口98aとなってスピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfと対向している。この実施形態では、内挿軸の直径が18〜20mmに形成されている。また、リンス液吐出口96a、溶剤吐出口97aおよびガス吐出口98aの口径がそれぞれ、4mm、1〜2mm、4mmに形成されている。このように、この実施形態では、溶剤吐出口97aの口径がリンス液吐出口96aの口径よりも小さくなっている。これにより、以下に示す不具合を防止できる。すなわち、低表面張力溶剤はリンス液(DIW)に比較して表面張力が低くなっている。このため、リンス液吐出用に形成された口径と同一口径の溶剤吐出口から低表面張力溶剤を吐出させた場合には、低表面張力溶剤の吐出停止後、低表面張力溶剤が溶剤吐出口から落下するおそれがある。一方で、溶剤吐出用に形成された口径と同一口径のリンス液吐出口からリンス液を吐出させた場合には、リンス液の吐出速度が速くなってしまう。その結果、電気的絶縁体であるリンス液(DIW)が基板表面Wfに比較的高速で衝突することにより、リンス液が直接に供給された基板表面Wfの供給部位が帯電して酸化するおそれがある。
これに対して、この実施形態では、低表面張力溶剤とリンス液の吐出口を個別に設けるとともに、溶剤吐出口97aの口径をリンス液吐出口96aの口径よりも小さく形成している。このため、溶剤吐出口から低表面張力溶剤が落下するのを防止するとともに、リンス液吐出口からのリンス液の吐出速度が速くなるのを抑え、基板表面Wfの帯電による酸化を抑制することができる。
また、この実施形態では、リンス液吐出口96aが遮断部材9の中心軸、つまり基板Wの回転軸Jから径方向外側にずれた位置に設けられている。これにより、リンス液吐出口96aから吐出されたリンス液が基板表面Wfの一点(基板Wの回転中心W0)に集中して供給されるのが回避される。その結果、基板表面Wfの帯電部位を分散させることができ、基板Wの帯電による酸化を低減することができる。その一方で、リンス液吐出口96aが回転軸Jから離れ過ぎると、基板表面Wf上の回転中心W0にリンス液を到達させることが困難となってしまう。そこで、この実施形態では、水平方向における回転軸Jからリンス液吐出口96a(吐出口中心)までの距離Lを4mm程度に設定している。ここで、基板表面Wf上の回転中心W0にリンス液(DIW)を供給し得る距離Lの上限値としては、以下に示す条件で20mmとなっている。
DIWの流量:2L/min
基板回転数:1500rpm
基板表面の状態:表面中央部が疎水面
また、回転軸Jから溶剤吐出口97a(吐出口中心)までの距離の上限値についても、基板回転数を1500rpmに設定する限り、上記した回転軸Jからリンス液吐出口96a(吐出口中心)までの距離Lの上限値(20mm)と基本的に同じである。
一方で、回転軸Jからガス吐出口98a(吐出口中心)までの距離については、対向位置に位置決めされた遮断部材9(板状部材90)と基板表面Wfとの間に形成される間隙空間SPに窒素ガスを供給し得る限り、特に限定されず任意である。しかしながら、後述するようにして基板表面Wf上に形成された低表面張力溶剤による溶剤層に窒素ガスを吹付けて該溶剤層を基板Wから排出させる観点からは、ガス吐出口98aは回転軸J上あるいはその近傍位置に設けることが好ましい。
また、回転支軸91の内壁面と内挿軸95の外壁面との間に形成される空間部分が外側ガス供給路99を構成しており、外側ガス供給路99の下端が環状の外側ガス吐出口99aとなっている。つまり、遮断部材9には、基板表面Wfの中央部に向けて窒素ガスを吐出するガス吐出口98aのほかに外側ガス吐出口99aが、リンス液吐出口96a、溶剤吐出口97aおよびガス吐出口98aに対して径方向外側に、しかもリンス液吐出口96a、溶剤吐出口97aおよびガス吐出口98aを取り囲むようにして設けられている。この外側ガス吐出口99aの開口面積はガス吐出口98aの開口面積に比較して遥かに大きく形成されている。このように、2種類のガス吐出口が遮断部材9に設けられているので、互いに流量および流速が異なる窒素ガスを各吐出口から吐出させることができる。例えば(1)基板表面Wfの周囲雰囲気を不活性ガス雰囲気に保つには、基板表面Wf上の液体を吹き飛ばすことのないように比較的大流量かつ低速で窒素ガスを供給することが望まれる。その一方で、(2)基板表面Wf上の低表面張力溶剤による溶剤層を基板表面Wfから除去する際には、基板Wの表面中央部に比較的小流量かつ高速で窒素ガスを供給することが望まれる。したがって、上記(1)の場合には、主として外側ガス吐出口99aから窒素ガスを吐出させることにより、上記(2)の場合には、主としてガス吐出口98aから窒素ガスを吐出させることにより、窒素ガスの用途に応じて適切な流量および流速で窒素ガスを基板表面Wfに向けて供給することができる。
また、内挿軸95の先端(下端)は板状部材90の下面90aと面一になっておらず、下面90aを含む同一平面から上方側に退避している(図3)。このような構成によれば、ガス吐出口98aから吐出された窒素ガスが基板表面Wfに到達するまでに該窒素ガスを拡散させ、窒素ガスの流速をある程度減少させることができる。すなわち、ガス吐出口98aからの窒素ガスの流速が速すぎると、外側ガス吐出口99aからの窒素ガスと互いに干渉して基板表面Wf上の低表面張力溶剤による溶剤層を基板Wから排出することが困難となる。その結果、基板表面Wf上に液滴が残ってしまう。これに対して、上記構成によれば、ガス吐出口98aからの窒素ガスの流速が緩和され、基板表面Wf上の低表面張力溶剤による溶剤層を確実に基板Wから排出することができる。
図1に戻って説明を続ける。リンス液供給路96の上端部は、リンス液供給ユニット8に接続されている。リンス液供給ユニット8は、その一端が工場のユーティリティ等で構成されるDIW供給源(図示省略)に接続されたリンス液供給管85を備えており、リンス液供給管85の他端はリンス液バルブ83に接続されている。このような構成を有するリンス液供給ユニット8は、リンス液バルブ83が開かれることによりリンス液吐出口96aからDIWをリンス液として吐出可能となっている。この実施形態では、リンス液たるDIWが本発明の「処理液」に相当しており、リンス液供給ユニット8が本発明の「処理液供給手段」として機能している。
また、溶剤供給路97の上端部は、本発明の「溶剤供給手段」として機能する溶剤供給ユニット7に接続されている。溶剤供給ユニット7は、低表面張力溶剤を生成するためのキャビネット部70を備え、キャビネット部70にて生成された低表面張力溶剤を溶剤供給路97に圧送可能となっている。有機溶媒成分としては、DIW(表面張力:72mN/m)に溶解して表面張力を低下させる物質、例えばイソプロピルアルコール(表面張力:21〜23mN/m)が用いられる。なお、有機溶媒成分はイソプロピルアルコールに限定されず、エチルアルコール、メチルアルコールの各種有機溶媒成分を用いるようにしてもよい。また、有機溶媒成分は液体に限らず、各種アルコールの蒸気を有機溶媒成分としてDIWに溶解させて低表面張力溶剤を生成するようにしてもよい。
キャビネット部70は、低表面張力溶剤を貯留する貯留タンク72を備えている。この貯留タンク72には貯留タンク72内にDIWを供給するためのDIW導入管73の一端が取り込まれており、その他方端が開閉バルブ73aを介してDIW供給源に接続されている。さらに、DIW導入管73の経路途中には流量計73bが介装されており、流量計73bがDIW供給源から貯留タンク72に導入されるDIWの流量を計測する。そして、制御ユニット4は、流量計73bで計測される流量に基づき、DIW導入管73を流通するDIWの流量を目標の流量(目標値)にするように、開閉バルブ73aを開閉制御する。
同様にして、貯留タンク72には貯留タンク72内にIPA液体を供給するためのIPA導入管74の一端が取り込まれており、その他方端が開閉バルブ74aを介してIPA供給源に接続されている。さらに、IPA導入管74の経路途中には流量計74bが介装されており、流量計74bがIPA供給源から貯留タンク72に導入されるIPA液体の流量を計測する。そして、制御ユニット4は流量計74bで計測される流量に基づき、IPA導入管74を流通するIPA液体の流量を目標の流量(目標値)にするように開閉バルブ74aを開閉制御する。
この実施形態では、低表面張力溶剤中のIPAの体積百分率(以下「IPA濃度」という)を調整可能となっている、つまり100%のIPAを低表面張力溶剤として供給することも、あるいはIPAとDIWを混合した混合液を低表面張力溶剤として供給することも可能となっている。なお、常に100%のIPAを低表面張力溶剤として用いる場合には、次に説明する溶剤バルブ76を介してIPAを直接供給するように構成してもよい。
貯留タンク72には、その一端が溶剤供給路97に接続された溶剤供給管75の他端が挿入され、貯留タンク72に貯留されている低表面張力溶剤を溶剤バルブ76を介して溶剤供給路97に供給可能に構成されている。溶剤供給管75には、貯留タンク72に貯留されている低表面張力溶剤を溶剤供給管75に送り出す定量ポンプ77や、定量ポンプ77により溶剤供給管75に送り出される低表面張力溶剤の温度を調整する温調器78、低表面張力溶剤中の異物を除去するフィルタ79が設けられている。さらに、溶剤供給管75にはIPA濃度を監視するための濃度計80が介装されている。
また、溶剤供給管75には、溶剤バルブ76と濃度計80との間に溶剤循環管81の一端が分岐接続される一方、溶剤循環管81の他端が貯留タンク72に接続されている。この溶剤循環管81には循環用バルブ82が介装されている。そして、装置の稼動中は、定量ポンプ77および温調器78が常に駆動され、基板Wに低表面張力溶剤を供給しない間は、溶剤バルブ76が閉じられる一方、循環用バルブ82が開かれる。これにより、貯留タンク72から定量ポンプ77により送り出される低表面張力溶剤が溶剤循環管81を通じて貯留タンク72に戻される。つまり、基板Wに低表面張力溶剤を供給しない間は、貯留タンク72、溶剤供給管75および溶剤循環管81からなる循環経路を低表面張力溶剤が循環する。その一方で、基板Wに低表面張力溶剤を供給するタイミングになると、溶剤バルブ76が開かれる一方、循環用バルブ82が閉じられる。これにより、貯留タンク72から送り出される低表面張力溶剤が溶剤供給路97に供給される。このように、基板Wに低表面張力溶剤を供給しない間は、低表面張力溶剤を循環させておくことによって、DIWとIPAとが攪拌され、DIWとIPAとを十分に混ざり合った状態とすることができる。また、溶剤バルブ76の開成後、所定の温度に調整されるとともに、異物が除去された低表面張力溶剤を速やかに溶剤供給路97に供給することができる。
ガス供給路98および外側ガス供給路99の上端部はそれぞれ、ガス供給ユニット18(図2)と接続されており、制御ユニット4の動作指令に応じてガス供給ユニット18からガス供給路98および外側ガス供給路99に個別に窒素ガスを圧送可能となっている。これにより、対向位置に位置決めされた遮断部材9(板状部材90)と基板表面Wfとの間に形成される間隙空間SPに窒素ガスを供給することができる。
ケーシング2の周囲には、受け部材21が固定的に取り付けられている。受け部材21には、円筒状の仕切り部材23a,23b,23cが立設されている。ケーシング2の外壁と仕切り部材23aの内壁との間の空間が第1排液槽25aを形成し、仕切り部材23aの外壁と仕切り部材23bの内壁との間の空間が第2排液槽25bを形成し、仕切り部材23bの外壁と仕切り部材23cの内壁との間の空間が第3排液槽25cを形成している。
第1排液槽25a、第2排液槽25bおよび第3排液槽25cの底部にはそれぞれ、排出口27a,27b,27cが形成されており、各排出口は相互に異なるドレインに接続されている。例えばこの実施形態では、第1排液槽25aは使用済みの薬液を回収するための槽であり、薬液を回収して再利用するための回収ドレインに連通されている。また、第2排液槽25bは使用済みのリンス液を排液するための槽であり、廃棄処理のための廃棄ドレインに連通されている。さらに、第3排液槽25cは使用済みの低表面張力溶剤を排液するための槽であり、廃棄処理のための廃棄ドレインに連通されている。
各排液槽25a〜25cの上方にはスプラッシュガード6が設けられている。スプラッシュガード6はスピンチャック1に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック1の回転軸Jに対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード6は回転軸Jに対して略回転対称な形状を有しており、スピンチャック1と同心円状に径方向内側から外側に向かって配置された3つのガード61,62,63を備えている。3つのガード61,62,63は、最外部のガード63から最内部のガード61に向かって、順に高さが低くなるように設けられるとともに、各ガード61,62,63の上端部が鉛直方向に延びる面内に収まるように配置されている。
スプラッシュガード6は、ガード昇降機構65と接続され、制御ユニット4からの動作指令に応じてガード昇降機構65の昇降駆動用アクチェータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、スプラッシュガード6をスピンチャック1に対して昇降させることが可能となっている。この実施形態では、ガード昇降機構65の駆動によりスプラッシュガード6を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する処理液を第1〜第3排液槽25a〜25cに分別して排液させることが可能となっている。
ガード61の上部には、断面くの字形で内方に開いた溝状の第1案内部61aが形成されている。そして、薬液処理時にスプラッシュガード6を最も高い位置(以下「第1高さ位置」という)に位置させることで、回転する基板Wから飛散する薬液が第1案内部61aで受け止められ、第1排液槽25aに案内される。具体的には、第1高さ位置として、第1案内部61aがスピンチャック1に保持された基板Wの周囲を取り囲むようにスプラッシュガード6を配置させることで、回転する基板Wから飛散する薬液がガード61を介して第1排液槽25aに案内される。
また、ガード62の上部には、径方向外側から内側に向かって斜め上方に傾斜した傾斜部62aが形成されている。そして、リンス処理時にスプラッシュガード6を第1高さ位置よりも低い位置(以下「第2高さ位置」という)に位置させることで、回転する基板Wから飛散するリンス液が傾斜部62aで受け止められ、第3排液槽25bに案内される。具体的には、第2高さ位置として、傾斜部62aがスピンチャック1に保持された基板Wの周囲を取り囲むようにスプラッシュガード6を配置させることで、回転する基板Wから飛散するリンス液がガード61の上端部とガード62の上端部との間を通り抜けて第2排液槽25bに案内される。
同様にして、ガード63の上部には、径方向外側から内側に向かって斜め上方に傾斜した傾斜部63aが形成されている。そして、置換処理時にスプラッシュガード6を第2高さ位置よりも低い位置(以下「第3高さ位置」という)に位置させることで、回転する基板Wから飛散する低表面張力溶剤が傾斜部63aで受け止められ、第2排液槽25cに案内される。具体的には、第3高さ位置として、傾斜部63aがスピンチャック1に保持された基板Wの周囲を取り囲むようにスプラッシュガード6を配置させることで、回転する基板Wから飛散する低表面張力溶剤がガード62の上端部とガード63の上端部との間を通り抜けて第3排液槽25cに案内される。
さらに、第3高さ位置よりも低い位置(以下「退避位置」という)に位置させて、スピンチャック1をスプラッシュガード6の上端部から突出させることで、基板搬送手段(図示せず)が未処理の基板Wをスピンチャック1に載置したり、処理済の基板Wをスピンチャック1から受け取ることが可能となっている。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図5ないし図7を参照しつつ詳述する。図5は基板処理装置の動作を示すフローチャートである。図6は図1の基板処理装置の動作を示すタイミングチャートである。また、図7は図1の基板処理装置の動作を示す模式図である。
この装置では、本発明の「制御手段」として機能する制御ユニット4が、メモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、基板Wに対し図5に示す一連の処理を施す。すなわち、制御ユニット4はスプラッシュガード6を退避位置に位置させて、スピンチャック1をスプラッシュガード6の上端部から突出させる。そして、この状態で基板搬送手段(図示せず)により未処理の基板Wが装置内に搬入されると、基板Wに対して、薬液処理、リンス処理、パドル形成処理、溶剤供給処理、攪拌処理、置換処理および乾燥処理の各工程を含む洗浄処理を実行する。基板表面Wfには例えばpoly−Siからなる微細パターンが形成されている。この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック1に保持される(ステップS101)。なお、遮断部材9はスピンチャック1の上方の離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
基板搬入後、制御ユニット4はスプラッシュガード6を第1高さ位置(図1に示す位置)に配置して、基板Wに対して薬液処理を実行する。すなわち、薬液吐出ノズル3を吐出位置に移動させるとともに、チャック回転機構13の駆動によりスピンチャック1に保持された基板Wを200〜1200rpmの範囲内で定められる所定の回転速度(例えば800rpm)で回転させる(ステップS102)。そして、薬液バルブ31を開いて薬液吐出ノズル3から基板表面Wfに薬液としてフッ酸を供給する(HF供給)。基板表面Wfに供給されたフッ酸は遠心力により広げられ、基板表面Wf全体がフッ酸により薬液処理される(ステップS103)。基板Wから振り切られたフッ酸は第1排液槽25aに案内され、適宜再利用される。
薬液処理が終了すると、薬液吐出ノズル3が待機位置に移動される。そして、スプラッシュガード6が第2高さ位置に配置され、基板Wに対して本発明の「湿式処理」としてリンス処理が実行される。すなわち、基板Wの回転速度を第1速度、例えば600rpmとし(ステップS104)、リンス液バルブ83を開いて、離間位置に位置する遮断部材9のリンス液吐出口96aからリンス液を吐出させる(ステップS105;図7(a);DIW供給)。また、リンス液の吐出と同時に遮断部材9を対向位置に向けて下降させ、該対向位置に位置決めする。このように、薬液処理後、すぐに基板表面Wfにリンス液を供給することで基板表面Wfを継続して濡れた状態としておく。これは次のような理由による。
すなわち、薬液処理後、フッ酸が基板Wから振り切られると、基板表面Wfの乾燥がはじまる。その結果、基板表面Wfが部分的に乾燥し、基板表面Wfにシミ等が発生することがある。したがって、このような基板表面Wfの部分的な乾燥を防止するため、基板表面Wfを濡れた状態としておくことが重要となっている。また、遮断部材9のガス吐出口98aおよび外側ガス吐出口99aから窒素ガスを吐出させる。ここでは、主として外側ガス吐出口99aから窒素ガスを吐出させる。つまり、外側ガス吐出口99aから比較的大流量の窒素ガスを吐出させる一方、ガス吐出口98aから吐出させる窒素ガスの流量が微小量となるように、両吐出口から吐出させる窒素ガスの流量バランスを調整する。
リンス液吐出口96aから基板表面Wfに供給されたリンス液は基板Wの回転に伴う遠心力により広げられ、基板表面Wf全体がリンス処理される(湿式処理工程)。つまり、基板表面Wfに残留付着するフッ酸が本発明の処理液に相当するリンス液によって洗い流され基板表面Wfから除去される。基板Wから振り切られた使用済みのリンス液は第2排液槽25bに案内され、廃棄される。また、間隙空間SPに窒素ガスが供給されることで基板表面Wfの周囲雰囲気が低酸素濃度雰囲気に保たれている。このため、リンス液の溶存酸素濃度の上昇を抑制することができる。
また、上記したリンス処理および後述の処理(パドル形成処理、溶剤供給処理、攪拌処理、置換処理および乾燥処理)を実行する際には、遮断部材9の板状部材90を基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で回転させる。これにより、板状部材90の下面90aと基板表面Wfとの間に相対的な回転速度差が発生するのを防止して、間隙空間SPに巻き込み気流が発生するのを抑制することができる。このため、ミスト状のリンス液および低表面張力溶剤が間隙空間SPに侵入して基板表面Wfに付着するのを防止できる。また、板状部材90を回転させることで下面90aに付着するリンス液や低表面張力溶剤を振り切り、下面90aにリンス液や低表面張力溶剤が滞留するのを防止できる。
所定時間のリンス処理が終了すると、次にパドル形成処理が実行される。すなわち、制御ユニット4は、基板Wの回転速度を第1速度よりも遅い第2速度に減速する(ステップS106)。これによって、リンス液吐出口96aから吐出されるリンス液が基板表面Wfに溜められてDIW液膜がパドル状に形成される(パドル形成処理)。この実施形態では、制御ユニット4は第2速度を10rpmに設定し、9秒間だけリンス液の供給を継続させた後、リンス液バルブ83を閉じてリンス液吐出口96aからのリンス液の吐出を停止させる(ステップS107)。これによって、図7(b)に示すように、DIW液膜が形成される。なお、第2速度は10rpmに限定されるものではないが、リンス液に作用する遠心力がリンス液と基板表面Wfとの間で作用する表面張力よりも小さくなるという条件が満足する範囲で第2速度を設定する必要がある。というのも、リンス液の液膜をパドル状に形成するためには、上記条件の充足が必須だからである。
そして、DIW供給停止後、パドル状DIW液膜の膜厚T1が基板Wの全面でほぼ均一になるまでの所定時間が経過するのを待って、制御ユニット4はスプラッシュガード6を第3高さ位置に配置するとともに、溶剤バルブ76を開いて溶剤吐出口97aから低表面張力溶剤を吐出させる(溶剤供給処理)。IPAの流量は、例えば100(mL/min)程度の低流量とする。溶剤バルブ76を開いて所定時間t1を経過すると溶剤バルブ76はいったん閉じられる(ステップS108)。これにより、図7(c)に示すように、基板Wの表面中央部ではDIW液膜の中央部がIPAに置換されて置換領域SRが液膜に形成される。溶剤バルブ76を開く時間t1については、例えば基板W上に供給されるIPAの総量が基板表面Wf上に溜められたDIW量と同程度となるまでの時間とすることができるが、これに限定されるものではない。
IPAの供給停止後、または停止とほぼ同時に、制御ユニット4は基板の回転を加速させて回転速度を第2速度よりも高速の第3速度に変更する(ステップS109)。第3速度は、例えば40rpmに設定される。これによって、基板W上の液膜が大きく流動してIPAが基板W全面に行き渡り、基板W上においてDIWとIPAとが攪拌・混合される(攪拌処理)。その結果、図7(d)に示すように、基板表面Wfの液膜はDIWとIPAとが混じり合ったものとなる。また、表面張力の低いIPAが添加されたことおよび回転速度が上昇したことにより、基板W上のDIW液膜の厚さは当初の膜厚T1よりも小さな値T2に変化する。
こうしてIPAを供給せずに基板を回転させる攪拌処理を所定時間t2行った後、制御ユニット4は供給バルブ76を開いてIPA供給を再開する(ステップS110)。このときのIPA流量は特に限定されないが、前記した溶剤供給処理(ステップS108)と同じ流量とすれば、流量の変更を必要とせず装置構成およびその制御が簡単となる点で好ましい。また、攪拌処理の継続時間t2については、回転により基板W上から液体が流出することに起因して液膜が途切れ基板表面Wfが露出するよりも前にIPAの供給が再開されるような値に設定されることが望ましい。攪拌処理における回転速度を40rpmとした本実施形態の場合、基板表面Wfの状態にも依存するが、攪拌処理の時間t2を例えば5ないし10秒程度とすることができる。
また、パドル状の液膜が基板W上に形成された状態でも、基板Wを回転させることにより基板上の液体は少しずつ流出しているので、DIWの供給を停止してから置換処理を開始するまでの時間t3もできるだけ短くすることが好ましい。例えば第2速度が10rpmのとき、この時間t3を10秒程度とすることが好ましい。
なお、攪拌処理においては、IPAを供給せずに所定時間基板を回転させることが最も重要な事項であって、パドル形成処理時から回転速度を変化させることは必須の事項ではない。したがって、図6のタイミングチャートにおいて点線で示したように、攪拌処理の実行中、パドル形成処理時と同じ回転速度(10rpm)を維持するようにしてもよい。ただし、本実施形態のように回転速度を高くすることは、攪拌の効果を高めたり処理時間の短縮を図れるという点で好ましい。この場合において、基板W上のDIW液膜にIPAを供給する際には回転速度をパドル形成処理時と同じにしておき、IPA供給後に回転速度を上げることがより好ましい。IPA供給前に回転速度を高くすると液膜が途切れ基板表面Wfが部分的に露出するおそれが高まるが、予めIPAを添加し液膜の表面張力を低下させることで、このような問題が起きにくくなるからである。さらに、パドル状の液膜が途切れない範囲で、回転速度を多段階または連続的に変化させたり、加速と減速とを交互に行うようにしてもよい。
IPA供給再開から所定時間、例えば3秒が経過すると、制御ユニット4はIPA供給を継続させたまま基板Wの回転速度を40rpmから300rpmに加速する(ステップS111)。これによって、基板表面Wfの全面が低表面張力溶剤に置換される(置換処理)。この実施形態では、基板Wの回転速度を2段階(40〜100rpm、100〜300rpm)で加速することにより、基板表面Wfに形成されたパターンの奥部に残留するDIWまで確実にIPAに置換し、残留DIWに起因する基板表面Wfにおけるパターン倒壊を確実に防止することができるようにしている。なお、基板Wから振り切られた使用済みのIPAは第3排液槽25cに案内され、廃棄される。
こうして、置換処理が完了すると、制御ユニット4はIPAの供給を停止させ(ステップS112)、チャック回転機構13の回転速度を高めて基板Wを高速回転(例えば1000rpm)させる(ステップS113)。これにより、基板表面Wfに付着するIPAが振り切られ、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行される(乾燥処理)。このとき、パターンの間隙には低表面張力溶剤が入り込んでいるので、パターン倒壊やウォーターマーク発生を防止できる。また、間隙空間SPはガス吐出口98aおよび外側ガス吐出口99aから供給される窒素ガスで満たされていることから、乾燥時間を短縮するとともに基板Wに付着する液体成分(低表面張力溶剤)への被酸化物質の溶出を低減してウォーターマークの発生をさらに効果的に抑制することができる。基板Wの乾燥処理が終了すると、制御ユニット4はチャック回転機構13を制御して基板Wの回転を停止させる。そして、スプラッシュガード6を退避位置に位置させて、スピンチャック1をスプラッシュガード6の上方から突出させる。その後、基板搬送手段が処理済の基板Wを装置から搬出して(ステップS114)、1枚の基板Wに対する一連の洗浄処理が終了する。
上記した一連の処理が有する作用効果について、図8を参照してより詳しく説明する。図8は本実施形態の処理における基板上での現象を示す模式図である。上記処理の処理対象である基板Wがその表面Wfに微細パターンが形成されたものであるとき、リンス処理およびパドル形成処理が終了した時点では、図8(a)に示すように、微細パターンFPの間隙内部にまでリンス液であるDIWが入り込んでいる。続く溶剤供給処理において基板表面WfにIPAを供給した直後では、DIWとIPAとは直ちに混じり合うわけではないので、図8(b)に示すように、微細パターンFPの間隙内部にDIWが残留していることがある。このままIPA供給を継続したとしても、短時間で微細パターンFPの間隙内部にまでIPAを行き渡らせることは難しい。
そこで、この実施形態では、所定量のIPAを供給した後、IPAの供給を伴わずに一定時間基板の回転を継続する攪拌処理を実行する。攪拌処理を行うことにより、図8(c)に示すように、パターンの間隙内部に残留していたDIWが次第にIPAに溶け込んでゆく。攪拌処理の目的は、IPAとDIWとを馴染ませて後の置換処理をスムーズに行う点にある。したがって、予め基板W上に所定量のIPAを供給しておけば、IPAとDIWとが十分に馴染むまでの間にIPA供給を継続することは無意味であるばかりか、むしろIPAを無駄に消費してしまうという弊害がある。この実施形態では、IPAの供給を停止した状態で攪拌処理を行っているので、このような無駄を抑えてIPAの使用量を少なくすることができる。
続いて行う置換処理では、基板W上に残留していたDIWがIPA内に十分に溶け込んだ状態で、さらにIPAを追加供給しながら基板の回転速度を高める。このため、DIWを含んだIPAは基板の外周部から振り切られて、図8(d)に示すように、最終的には基板表面Wfの全面がIPA液膜によって覆われることとなる。
以上のように、この実施形態によれば、基板Wを回転させながらリンス液であるDIWを供給してリンス処理を行った後、いったん回転速度を低下させて(この実施形態では10rpm)DIWによるパドル状の液膜を形成する。その後、所定量のIPAを液膜に加えた状態で基板を回転させることにより、基板W上でのDIWとIPAとの攪拌・混合を促進させる。こうして十分に攪拌された液膜に対し、さらにIPAを供給して置換処理を行うことにより、IPAによる基板W上のDIWの置換を効率よく、確実に、しかも少ないIPA使用量にて行うことができる。
また、攪拌処理において回転速度を高めることにより、攪拌をより促進させ全体の処理時間を短縮することができる。この場合、基板W上のDIW液膜にIPAを添加してから回転速度を上げることにより、液膜が途切れて基板表面Wfが露出するのを未然に防止することができる。逆に言えば、予めDIW液膜にIPAを添加しておくことにより、液膜が途切れるリスクを増大させることなく回転速度を上げることができる。
また、基板W上の液膜をより確実に低表面張力の低いIPAに置換させて乾燥させることにより、残留DIWによるウォーターマークやシミ、パターン倒壊等の欠陥の発生を確実に防止することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では攪拌処理において基板の回転速度を第2速度(10rpm)から第3速度(40rpm)まで加速しているが、前記したように、基板の回転速度を変化させることは本発明において必須の構成というわけではなく、第2速度で回転させたまま攪拌処理を行ってもよい。
また、上記実施形態では、置換処理において基板Wの回転速度を2段階に分けて加速しているが、このことは本発明において必須ではなく、1段階であるいは3段階以上に分けて加速してもよい。
また、上記実施形態では、IPAを低表面張力溶剤として用いているが、キャビネット部70でIPAとDIWの混合液を作成し、これを低表面張力溶剤として用いてもよい。また、混合液の生成方法はこれに限定されない。例えば、DIWを遮断部材の液供給路(またはノズル)に向けて送液する送液経路上にインラインでIPA等の有機溶媒成分を混合させて混合液を生成してもよい。また、キャビネット部などの混合液生成手段は、基板処理装置内に設ける場合に限らず、基板処理装置とは別個に設けられた他の装置において生成した混合液を基板処理装置内に設けられた遮断部材を介して基板表面Wfに供給させてもよい。さらに、IPAなどの有機溶剤成分を含む溶剤に替えて界面活性剤を必須的に含む溶剤を用いてもよい。
また、上記実施形態では、リンス液としてDIWを用いているが、炭酸水(DIW+CO2)など基板表面Wfに対して化学的洗浄作用を有しない成分を含んだ液体をリンス液として用いるようにしてもよい。この場合、基板表面Wfに付着しているリンス液と同一組成の液体(炭酸水)と有機溶媒成分とを混合したものを混合液として用いてもよい。また、リンス液として炭酸水を用いる一方で、混合液は炭酸水の主成分であるDIWと有機溶媒成分とを混合したものを用いてもよい。さらに、リンス液としてDIWを用いる一方で、混合液は炭酸水と有機溶媒成分とを混合したものを用いてもよい。要は、基板表面Wfに付着している液体と主成分が同一である液体と有機溶媒成分とを混合したものを混合液として用いればよい。また、リンス液としては、DIW、炭酸水の他、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸なども用いることができる。
また、上記実施形態では、フッ酸による薬液処理後の基板をリンスし乾燥させる処理に対して本発明を適用しているが、他の薬液によって処理された基板に対する処理に本発明を適用してもよい。ただし、本実施形態のように基板上にリンス液によるパドル状の液膜を形成して低表面張力溶剤に置換し乾燥させる処理は、特に基板の表面を疎水化する疎水化処理の後に水を主成分とするリンス液を用いてリンス処理を行う場合に有効なものであり、このような処理に本発明を適用することで特に顕著な効果を得ることが可能である。