JP5191997B2 - アークスタート制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、消耗電極アーク溶接を開始するに際し、溶接ワイヤを母材に一旦接触させた後に引き上げて初期アークを発生させ、初期アークを維持しつつ溶接ワイヤの引き上げを継続した後、初期アークから定常状態のアークへと移行させるリトラクトアークスタート制御方法の改善に関する。
図5に示すように、溶接電源PSの外部には、溶接開始回路STが設けられている。溶接開始回路STから溶接開始信号Stが入力されると、溶接電源PSは、アークを発生させるための溶接電圧Vw及び溶接電流Iwと、溶接ワイヤ1の送給を制御するための送給制御信号Fcとをそれぞれ出力する。溶接開始回路STとしては、溶接工程を制御するプログラム・ロジック・コントローラ(PLC)、ロボット制御装置等がある。ワイヤ送給モータWMは送給ロール5に接続されている。溶接ワイヤ1は、送給ロール5の回転により溶接トーチ4内を通って母材2へと送給される。また、溶接ワイヤ1及び母材2間には、アーク3がシールドガス6によりシールドされた状態で発生する。ワイヤ送給モータWMが正回転すると、溶接ワイヤ1は、母材2へ近づく方向に送給されて、前進させられる。一方、ワイヤ送給モータWMが逆回転すると、溶接ワイヤ1は、母材2から離れる方向に送給されて、後退させられる。溶接トーチ4は、ロボット本体(図示せず)、自動台車(図示せず)等に搭載されている。溶接トーチ4を3次元方向に移動させることで、溶接が行われる。
溶接ワイヤ1と母材2とが接触(短絡)又はアークが発生しているときは、溶接ワイヤ1と母材2との間に溶接電流Iwが流れている。他方、溶接ワイヤ1と母材2とが離れておりアーク3も発生していない無負荷状態のときは、溶接電圧Vwが最大値(無負荷電圧)となり、溶接ワイヤ1と母材2との間に溶接電流Iwが流れない。また、溶接ワイヤ1の先端と母材2との間の距離は、ワイヤ先端・母材間距離Lw[mm]である。従って、アーク発生中のワイヤ先端・母材間距離Lwはアーク長と略等しくなる。以下の説明において、溶接ワイヤ1の先端が母材2と物理的に接触している状態を接触とし、溶接ワイヤ1の先端と母材2とが電気的に接続されている状態を短絡としてそれぞれ記載する。従って、接触状態は、短絡して接触している状態と、短絡せずに接触している状態とを含む。溶接ワイヤ1の先端に絶縁物(スラグ等)が付着している場合、溶接ワイヤ1の先端が母材2と接触しても短絡しない。溶接ワイヤ1の先端から絶縁物が除去されている場合、溶接ワイヤ1の先端が母材2に接触すれば短絡する。
図6は、図5の溶接装置によって従来のリトラクトアークスタート制御方法を行ったときのタイミングチャートである。図6(A)は溶接開始信号Stを示し、図6(B)は送給制御信号Fcを示し、図6(C)は溶接電圧Vwを示し、図6(D)は溶接電流Iwを示し、図6(E)はワイヤ先端・母材間距離Lwを示す。以下、リトラクトアークスタート制御方法について図6(A)〜図6(E)を参照して説明する。
(1)時刻t1〜t2のワイヤスローダウン期間
時刻t1において、図6(A)に示すように、溶接開始信号Stが入力されてHighレベルになると、図6(B)に示すように、送給制御信号Fcの値はスローダウン送給速度設定値Firとなり、溶接ワイヤの前進が開始される。スローダウン送給速度設定値Firは、通常は、1〜2m/min程度の遅い速度に設定される。これは、スローダウン送給速度を速くすると、溶接ワイヤが母材と物理的に接触したときに溶接ワイヤが母材に強く押し付けられて変形したり、溶接トーチ4が持ち上げられたりして、アークスタート性が悪くなる虞があるためである。同時に、溶接電源PSの出力が開始されて、図6(C)に示すように、溶接電圧Vwが印加される。時刻t1時点では無負荷状態であるため、溶接電圧Vwは最大出力電圧値(70〜100V程度)の無負荷電圧Vnlとなる。時刻t1以降、溶接ワイヤは前進させられるため、図6(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは次第に短くなる。
(2)時刻t2〜t3の接触期間
時刻t2において、溶接ワイヤの先端が母材に接触して短絡すると、図6(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは0となり、図6(C)に示すように、溶接電圧Vwは数V程度の短絡電圧値を示し、図6(D)に示すように、溶接電流Iwは低電流値(10〜100A程度)の初期電流設定値Iirを示す。このときに、図6(C)に示すように、溶接電圧Vwが予め定めた電圧基準値Vth未満になったことを検出して、溶接ワイヤと母材との短絡が判別される。またこのとき、図6(B)に示すように、送給制御信号Fcの値は負の値を示す後退送給速度設定値Fbrとなり、溶接ワイヤの後退が開始される。しかし、時刻t2〜t3の短絡期間中は、ワイヤ送給モータが正回転から逆回転へと反転するときに生じる遅れ時間や、溶接トーチ内において溶接ワイヤの遊びに相当する長さを後退させるのに要する遅れ時間によって、図6(E)に示すように、溶接ワイヤの先端と母材との接触が維持されている。この短絡期間は、ワイヤ送給モータの種類、溶接トーチの長さ等によって変化するものの、通常は、10〜100ms程度である。
(3)時刻t3〜t4の初期アーク引き上げ期間Td
時刻t3において、図6(E)に示すように、溶接ワイヤの先端が母材から離れると、初期電流設定値Iirに相当する電流が流れて初期アークが発生する。初期アークが発生すると、図6(C)に示すように、溶接電圧Vwは、数十Vのアーク電圧値を示し、電圧基準値Vth以上の値となる。予め定めた初期アーク引き上げ期間Td(時刻t3〜t4)は、図6(B)に示すように、溶接ワイヤの後退が継続される。これは、初期アーク発生直後に溶接ワイヤを後退から前進に切り換えると、アーク長が非常に短いために再び接触状態になる虞があるためである。これを防止すると共に定常アーク状態へと円滑に移行させるため、この期間中は、初期アークを維持しつつ溶接ワイヤの後退を継続して、アーク長を増大させる。そして、アーク長が定常アーク長と略等しくなるまで、溶接ワイヤの後退を継続させる。初期アークに低電流値の初期電流を流す目的は、初期アークによって溶接ワイヤの先端が溶融してアークが燃え上がるのを抑制するためである。溶接ワイヤの後退にアークの燃え上がりが付加されると、アークを所望値まで正確に引き上げることが困難になる。このため、初期電流の電流値を低く抑えることで、アークの燃え上がりを抑制している。また、再短絡を防止するため、時刻t3において初期アークが発生したときに、短時間パルス電流である再短絡防止電流を流すこともある。この方法によれば、高電流値のパルス電流を流すことによって、アークを瞬時に長くすることができ、再短絡が防止される。
(4)時刻t4以降の定常アーク状態の期間
時刻t4において、初期アーク引き上げ期間Tdが経過すると、図6(B)に示すように、送給制御信号Fcの値は定常送給速度設定値Fcrとなり、再び溶接ワイヤの前進が開始される。同時に、図6(C)に示すように、溶接電圧Vwが予め定めた電圧設定値Vrと等しくなるように定電圧制御されて、図6(D)に示すように、定常送給速度に応じた定常の溶接電流Icが流れるようになる。こうして、図6(E)に示すように、初期アーク発生状態から定常アーク状態へと円滑に移行する。なお、定常アーク状態では、アークが定常アーク長Lcを示す。
上記の制御方法において、電流値を正確に制御するため、初期電流は、溶接電源PSにより定電流制御される。図6(D)に示すように、初期電流は一定値を示すが、時刻t2において溶接ワイヤが母材と接触した時点では、電流値を小さく抑えて、短絡期間中に増大させることもある。これは、接触時にアークが発生して溶着するのを防止するためである。この場合、溶接ワイヤを前進又は後退させて、溶接ワイヤの先端を前進又は後退させていたが、これに代えて、溶接トーチを前進又は後退させて、溶接ワイヤの先端を前進又は後退させてもよい。従って、溶接ワイヤの先端を前進又は後退させる手段としては、溶接ワイヤの前進又は後退に加え、溶接トーチの前進又は後退によるものもある。当然ながら、時刻t4以降においては、溶接ワイヤを再び前進させるのに、溶接ワイヤの送給が行われる。上述した従来技術は、例えば、特許文献1、2に開示されている。
図6に示す制御方法によれば、時刻t2において溶接ワイヤの先端が母材に対して物理的に接触し、それと同時に短絡状態になる。このとき、溶接ワイヤの前進が直ぐに停止されて、後退に切り換えられる。このため、溶接ワイヤは母材に強く押し付けられることはない。しかし、直前の溶接の影響を受けて溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着していることがある。このため、絶縁物によって、溶接ワイヤの先端と母材とが物理的に接触しても直ぐには短絡しないこともある。このような場合、溶接ワイヤは、その先端を母材に押し付けるために、スローダウン送給速度で前進され続ける。溶接ワイヤの押付力によって溶接ワイヤの先端に付着した絶縁物が破壊されると、溶接ワイヤの先端と母材とが接触して短絡する。このとき、溶接ワイヤを強い圧力で母材に押し付けた状態で初期電流を流してから溶接ワイヤを後退させて初期アークを発生させた場合に、以下のような問題が発生する。
(1)母材及び送給ロール間の溶接ワイヤの送給経路上で撓んでいた溶接ワイヤが母材に向けて一気に飛び出すため、再短絡が発生する。
(2)溶接ワイヤの押付力の反力によって持ち上げられていた溶接トーチが一気に元の位置に戻ろうとするため、再短絡が発生する。
初期アーク発生時に再短絡が発生すると、初期アークによって溶接ワイヤの先端が溶融しているため、溶接ワイヤの先端が母材に溶着されてしまう。一旦溶着が生じると、溶着を解除するために数百Aの高電流を流す必要がある。この場合、スパッタが多く発生するアークスタートが生じる。この現象は、ステンレス鋼の場合に顕著となる。以下の説明において、このような現象を、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡と称す。
また、上述したように、初期アーク発生時に再短絡防止電流を流したとしても、再短絡防止電流による溶接ワイヤ溶融速度よりも速い速度で、撓んでいた溶接ワイヤが一気に被溶接物に向けて飛び出したり、或いは押し上げられていたトーチが一気に元の位置に戻ろうとしたりするため、再短絡が発生する。このように、従来技術では、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡を防止することは困難であった。
特開2006−231414号公報 特開2007−30018号公報
本発明の目的は、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡を防止でき、良好なアークスタート性を得ることのできるアークスタート制御方法を提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、溶接ワイヤの前進により溶接ワイヤの先端が母材と接触して溶接ワイヤ及び母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、短絡判別時においてワイヤ送給モータの送給トルク値を短絡判別時トルク値として検出し、短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるときにステップ4に移行させ、短絡判別時トルク値が基準トルク値未満であるときにステップ5に移行させるステップ3と、溶接ワイヤの後退を開始すると共にアークを発生させない状態で溶接ワイヤの先端を母材から引き離してステップ1に戻すステップ4と、溶接ワイヤの後退を開始して溶接ワイヤの先端を母材から引き離すことにより、溶接ワイヤ及び母材間に初期アークを発生させるステップ5と、初期アークを維持したまま溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、溶接ワイヤの後退を停止し、溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を初期アークから定常アークへと移行させるステップ7とを備えたことを特徴とするアークスタート制御方法が提供される。
その制御方法によれば、溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着している場合であっても、短絡判別時においてワイヤ送給モータのトルク値が基準トルク値以上であるとき、溶接ワイヤを後退させることによって、溶接ワイヤを張りつめた状態から解消したり、溶接トーチの持ち上がり状態を解消したりすることができる。このため、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡の発生を防止でき、良好なアークスタート性を確保できる。
上述した課題を解決するため、本発明の第二の態様によれば、ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、溶接ワイヤの前進により溶接ワイヤの先端が母材と接触して溶接ワイヤ及び母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、短絡判別時においてワイヤ送給モータの送給トルク値を短絡判別時トルク値として検出し、溶接ワイヤの前進時の短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるときにステップ4に移行させ、溶接ワイヤの前進時の短絡判別時トルク値が基準トルク値未満であるときにステップ5に移行させるステップ3と、溶接ワイヤの先端が母材に接触した状態を保持できる低後退送給速度で溶接ワイヤの後進を開始し溶接ワイヤの後進時の送給トルク値が低基準トルク値に減少するまで溶接ワイヤを後退させてからステップ5に移行させるステップ4と、溶接ワイヤの後退を開始して溶接ワイヤの先端を母材から引き離すことにより、溶接ワイヤ及び母材間に初期アークを発生させるステップ5と、初期アークを維持したまま溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、溶接ワイヤの後退を停止し、溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を初期アークから定常アークへと移行させるステップ7とを備えたアークスタート制御方法が提供される。
この場合、溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着している場合であっても、短絡判別時においてワイヤ送給モータのトルク値が基準トルク値以上であるとき、溶接ワイヤの先端を母材と接触させた状態で送給トルク値が低トルク値に減少するまで溶接ワイヤを後退させることによって、溶接ワイヤを張りつめた状態から解消したり、溶接トーチの持ち上がり状態を解消したりすることができる。このため、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡の発生を防止でき、良好なアークスタート性を確保できる。
上述した課題を解決するため、本発明の第三の態様によれば、ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、溶接ワイヤの前進により溶接ワイヤの先端が母材と接触して溶接ワイヤ及び母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、短絡判別時以前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続したときにステップ2からステップ4に移行させ、短絡判別時以前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続しないときはステップ2からステップ5に移行させるステップ3と、溶接ワイヤの後退を開始すると共にアークを発生させない状態で溶接ワイヤの先端を母材から引き離してステップ1に戻すステップ4と、溶接ワイヤの後退を開始して溶接ワイヤの先端を母材から引き離すことにより、溶接ワイヤ及び母材間に初期アークを発生させるステップ5と、初期アークを維持したまま溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、溶接ワイヤの後退を停止し、溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を初期アークから定常アークへと移行させるステップ7とを備えたアークスタート制御方法が提供される。
この場合、短絡判別時以前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続したか否かに基づいて、溶接ワイヤや溶接トーチの状態を判別できる。つまり、ワイヤ送給モータの送給トルクを検出しなくても、第一の態様に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。また、ワイヤ送給モータの送給トルクを検出する必要がないため、回路全体の構成が簡素化され、コストも低減される。
本発明の第1実施形態に係る溶接電源のブロック図。 本発明の第1実施形態に係るアークスタート制御方法を示すタイミングチャート。 本発明の第2実施形態に係るアークスタート制御方法を示すタイミングチャート。 本発明の第3実施形態に係るアークスタート制御方法を示すタイミングチャート。 従来技術の消耗電極アーク溶接装置を示すブロック図。 従来技術のアークスタート制御方法を示すタイミングチャート。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1に示す溶接電源を含む溶接装置の構成は、この溶接電源PSを含む図5に示す溶接装置の構成と同一である。
図1に示すように、電源主回路PMには、3相200V等の商用電源から電力が入力される。電源主回路PMは、後述する駆動信号Dvに従ってインバータ制御による出力制御を行う。電源主回路PMは、アーク3を発生させるための溶接電圧Vw及び溶接電流Iwをそれぞれ出力する。電源主回路PMは、1次整流回路、コンデンサ、インバータ回路、高周波トランス、2次整流回路、及び直流リアクトルから構成される。1次整流回路は、商用電源を整流する。コンデンサは、整流された直流電圧を平滑にする。インバータ回路は、平滑された直流電圧を高周波交流電圧に変換する。高周波トランスは、高周波電圧を溶接に適した電圧に降圧する。2次整流回路は、降圧された高周波交流を整流する。直流リアクトルは、整流された直流を平滑する。溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータWMに接続された送給ロール5の回転により、溶接トーチ4内を通って母材2へと送給される。そして、溶接トーチ4と母材2との間にアーク3が発生して、溶接が行われる。
電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電流検出回路IDは、溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電圧検出信号Vdの値が電圧基準値Vth未満のとき、短絡判別回路SDは短絡状態であると判別して、Highレベルになる短絡判別信号Sdを出力する。送給トルク検出回路QDにワイヤ送給モータWMからモータ電流Imが入力されると、送給トルク検出回路QDは送給トルクを算出して、送給トルク信号Qdを出力する。
シーケンス制御回路SCに外部からの溶接開始信号St、短絡判別信号Sd、及び送給トルク信号Qdが入力されると、シーケンス制御回路SCは、図2で後述するようにシーケンス制御を行い、送給速度設定信号Fr、電流設定信号Ir、及び外部特性切換信号Spをそれぞれ出力する。送給制御回路FCは、送給速度設定信号Frに基づく送給速度で溶接ワイヤを送給するための送給制御信号Fcを出力する。ワイヤ送給モータWMは、送給制御信号Fcによって制御され、モータ内を流れるモータ電流Imを出力する。送給速度設定信号Frが正の値であるとき、溶接ワイヤは前進し、負の値であるときは後退し、零のときは送給が停止される。
電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、電圧設定信号Vrと電圧検出信号Vdとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。電流誤差増幅回路EIは、電流設定信号Irと電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。外部特性切換信号SpがLowレベルのとき、外部特性切換回路SPは、電流誤差増幅信号Eiを誤差増幅信号Eaとして出力する。また、外部特性切換信号SpがHighレベルのとき、外部特性切換回路SPは、電圧誤差増幅信号Evを誤差増幅信号Eaとして出力する。従って、外部特性切換信号SpがLowレベルのとき、溶接電源の外部特性は定電流特性となる。また、外部特性切換信号SpがHighレベルのとき、溶接電源の外部特性は定電圧特性となる。駆動回路DVに溶接開始信号Stが入力されると、駆動回路DVは、誤差増幅信号Eaを入力としてパルス幅変調制御を行い、電源主回路PM内のインバータ回路を駆動するための駆動信号Dvを出力する。
次に、本発明の第1実施形態に係るアークスタート制御方法について図2を参照して説明する。図2は、図1に示す溶接電源において実施される各種信号のタイミングチャートを示す。図2(A)は溶接開始信号Stを示し、図2(B)は送給速度設定信号Frを示し、図2(C)は溶接電圧Vwを示し、図2(D)は溶接電流Iwを示し、図2(E)はワイヤ先端・母材間距離Lwを示し、図2(F)は送給トルク信号Qdを示し、図2(G)は短絡判別信号Sdを示し、図2(H)は外部特性切換信号Spを示し、図2(I)は電流設定信号Irを示す。図2に示すタイミングチャートは、溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着しているため溶接ワイヤの先端が母材に接触してから遅れて短絡状態になる場合を示す。
(1)時刻t1〜t2のワイヤスローダウン期間
時刻t1において、図2(A)に示すように、溶接開始信号Stが入力されてHighレベルになると、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frの値はスローダウン送給速度設定値Firとなり、溶接ワイヤが前進し始める。同時に、駆動信号Dvの出力が開始され、電源主回路PMの出力が開始されるため、図2(C)に示すように、溶接電圧Vwが印加される。時刻t1時点では無負荷状態であるため、溶接電圧Vwは高電圧値の無負荷電圧となる。時刻t1以降、溶接ワイヤは前進させられるため、図2(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは次第に短くなる。
(2)時刻t2〜t3の短絡状態ではない接触期間
時刻t2において、溶接ワイヤが更に前進すると、溶接ワイヤの先端が母材と物理的に接触する。しかし、溶接ワイヤはその先端に付着した絶縁物を介して母材と接触するため、溶接ワイヤ及び母材間は電気的に接続されず、短絡状態にならない。このため、図2(G)に示すように、短絡判別信号Sdは非短絡状態を示すLowレベルに維持される。よって、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frはスローダウン送給速度設定値Firに維持され、溶接ワイヤの前進が継続される。つまり、溶接ワイヤは、その先端を母材と接触させた状態で更に前進させられる。このため、上述したように、溶接ワイヤは強い押付力によって張りつめた状態になるか、又は溶接トーチが強い押付力の反力によって持ち上げられた状態になる。同時に、図2(F)に示すように、溶接ワイヤの押付力によって送給トルク信号Qdの値は著しく増大する。
(3)時刻t3〜t4の短絡期間
時刻t3において、溶接ワイヤの前進による強い押付力によって、溶接ワイヤの先端に付着した絶縁物の一部が破壊及び除去される。すると、溶接ワイヤ及び母材間が電気的に接続されて、短絡した状態になる。そして、図2(G)に示すように、短絡判別信号Sdは、Lowレベルから短絡状態を示すHighレベルへと変化する。この時点での送給トルク信号Qdの値は、図2(F)に示すように、基準トルク値Qt以上である。このため、図2(I)に示すように、電流設定信号Irは、低電流設定値Ilrに維持される。このとき、図2(H)に示すように、外部特性切換信号SpはLowレベルである。このため、外部特性は定電流特性となり、低電流設定値Ilrに相当する溶接電流Iwが流れる。低電流設定値Ilrは、約1A以下のアークを維持できない程度の値に設定されている。短絡判別時の送給トルク信号Qdの値(以下、短絡判別時トルク値と称す)は、基準トルク値Qt以上である。このため、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frは後退送給速度設定値Fbrになり、溶接ワイヤが後退し始める。しかしながら、送給経路内で張りつめた溶接ワイヤを後退させるのに時間を要するため、この期間中は、図2(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは0に維持される。すなわち、溶接ワイヤの先端は、依然として母材と接触し、短絡し続ける。このような溶接ワイヤの後退により、母材への溶接ワイヤによる押付力は解消される。このため、図2(F)に示すように、送給トルク信号Qdの値は減少して、最終的には負の値を示す。
(4)時刻t4〜t5の溶接ワイヤ引き上げ期間
溶接ワイヤの後退に伴い、時刻t4において、溶接ワイヤの先端が母材から離れる。しかしながら、図2(I)に示すように、電流設定信号Irは、依然として低電流設定値Ilrに維持される。このため、初期アークは発生せず、図2(C)に示すように、無負荷電圧が印加される。このため、図2(G)に示すように、短絡判別信号Sdは、Highレベルから非短絡状態を示すLowレベルへと変化する。短絡判別信号SdがLowレベルになった時点から予め定めた初期遅延期間Tid経過するまでの間は、溶接ワイヤの後退が継続される。この結果、図2(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは次第に増大する。
(5)時刻t5〜t6の再ワイヤスローダウン期間
時刻t5において初期遅延期間Tidが終了すると、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frは、再びスローダウン送給速度設定値Firになる。その結果、溶接ワイヤは、再び前進させられる。よって、図2(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは次第に小さくなる。
(6)時刻t6〜t7の再接触期間
時刻t6において、溶接ワイヤの前進によって、溶接ワイヤの先端が母材と物理的に接触する。このとき、溶接ワイヤの先端から絶縁物が既に除去されているため、溶接ワイヤ及び母材間は瞬時に電気的に接続され、短絡した状態になる。このため、図2(C)に示すように、溶接電圧Vwは低い値の短絡電圧値になり、電圧基準値Vth未満になる。このため、図2(G)に示すように、短絡判別信号Sdは、LowレベルからHighレベルへと変化する。この時点で、溶接ワイヤの先端は、母材に接触した直後であるため、母材に対し押し付けられていない。このため、図2(F)に示すように、送給トルク信号Qdの値は基準トルク値Qt未満である。このため、図2(I)に示すように、電流設定信号Irは、低電流設定値Ilrから予め定めた初期電流設定値Iirへと変化する。そして、図2(D)に示すように、初期電流設定値Iirに相当する溶接電流Iwが流れる。初期電流設定値Iirは、10〜100A程度のアークを維持できる程度の低電流値に設定されている。同時に、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frは、スローダウン送給速度設定値Firから負の値の後退送給速度設定値Fbrへと変化する。このため、溶接ワイヤは後退させられる。しかしながら、ワイヤ送給モータWMの反転遅れ時間が生じたり、送給経路の溶接ワイヤの遊び分の解消に時間を要したりするため、この期間中は、図2(E)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは0に維持される。すなわち、溶接ワイヤの先端は、依然として母材と接触し、短絡し続ける。
(7)時刻t7〜t8の初期アーク引き上げ期間Td
時刻t7において、溶接ワイヤの後退によって、溶接ワイヤの先端が母材から離れる。すると、初期電流設定値Iirに相当する電流が流れて、溶接ワイヤ及び母材間に初期アークが発生する。この時点では、母材への溶接ワイヤによる押付力は弱いため、溶接ワイヤが飛び出して再短絡することはない。また、溶接トーチも持ち上げられていないため、溶接トーチの落下による再短絡も発生しない。すなわち、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡が発生することはない。初期アークが発生すると、図2(C)に示すように、溶接電圧Vwは、数十Vのアーク電圧値に上昇して電圧基準値Vth以上になる。この結果、図2(G)に示すように、短絡判別信号Sdは、HighレベルからLowレベルへと変化する。この時点から予め定めた遅延期間Td経過するまでの間は、溶接ワイヤの後退が継続されて、アーク長が所定の距離にまで増大する。この初期アークが発生した時点で、従来技術のように、パルス状の再短絡防止電流を流してもよい。
(8)時刻t8以降の定常アーク状態の期間
時刻t8において遅延期間Tdが終了すると、図2(B)に示すように、送給速度設定信号Frは、後退送給速度設定値Fbrから予め定めた定常送給速度設定値Fcrへと変化する。そして、溶接ワイヤは、再び前進させられる。同時に、図2(H)に示すように、外部特性切換信号SpがLowレベルからHighレベルへと変化し、外部特性が定電流特性から定電圧特性へと変化する。このため、図2(C)に示すように、溶接電圧Vwは、電圧設定信号Vrに相当する電圧値に基づいて制御される。その結果、定常送給速度設定値Fcrに対応する定常の溶接電流Icが流れる。そして、図2(E)に示すように、アークの状態が、定常アーク長Lcを有する定常アーク状態へと円滑に移行する。
上記の動作において、時刻t2に、母材に溶接ワイヤの先端が接触すると同時に短絡状態が生じ、送給トルク信号Qdの値が基準トルク値Qt未満であるときは、(2)〜(5)項の動作は省略されて、時刻t6以降の動作に移行する。
図1のシーケンス制御回路SCの動作は以下のように整理することができる。
(1)ステップ1
送給速度設定信号Frをスローダウン送給速度設定値Firに設定して出力する。これにより、溶接ワイヤは、スローダウン送給速度設定値Firに基づき前進させられる。同時に、外部特性切換信号SpをLowレベルにして出力する。これにより、溶接電源の外部特性は定電流特性になる。
(2)ステップ2
溶接ワイヤの前進によって、溶接ワイヤの先端が母材と接触する。そして、溶接ワイヤと母材とが電気的に接続して短絡したことを判別し、短絡判別信号SdがHighレベルになる。
(3)ステップ3
短絡判別信号SdがHighレベルになったときの送給トルク信号Qdの値(短絡判別時トルク値)と基準トルク値Qtとを比較する。そして、Qd≧Qtのときはステップ4に進み、Qd<Qtのときはステップ5に進む。
(4)ステップ4
電流設定信号Irを、アークを維持できない微小値の低電流設定値Ilrに設定して出力する。同時に、送給速度設定信号Frを後退送給速度設定値Fbrに設定して出力する。これにより、溶接ワイヤは後退させられて、溶接ワイヤの先端は母材から離れる。このとき、電流設定信号Irの値は小さいため、アークは発生しない。溶接ワイヤの先端が母材から離れたことを短絡判別信号SdがLowレベルになったことで判別した時点から初期遅延期間Tid経過するまでの間、溶接ワイヤの後退が継続される。この後ステップ1に戻る。
(5)ステップ5
送給速度設定信号Frを後退送給速度設定値Fbrに設定して出力する。同時に、電流設定信号Irを、アークを維持できる低電流値の初期電流設定値Iirに設定して出力する。これにより、溶接ワイヤの先端が母材から離れると、初期電流設定値Iirに相当する電流が流れて、溶接ワイヤ及び母材間に初期アークが発生する。
(6)ステップ6
この初期アークを維持しつつ遅延期間Td経過するまでの間、溶接ワイヤの後退を継続して、アークを長くする。
(7)ステップ7
送給速度設定信号Frを定常送給速度設定値Fcrに設定して出力する。同時に、外部特性切換信号SpをHighレベルにして出力し、溶接電源の外部特性を、定電流特性から定電圧特性へと切り換える。これにより、溶接ワイヤは、再び定常送給速度設定値Fcrで前進させられ、対応する定常の溶接電流Icが流れる。このようにして、アークの状態が、定常アーク状態へと円滑に移行する。
上記の短絡判別時トルク値として、送給トルクの瞬時値、平滑値、平均値等を用いることができる。送給トルクの平均値とは、図2の時刻t2〜t3の期間中の平均値である。上記において、時刻t3〜t4の期間及び時刻t6〜t7の期間は、溶接ワイヤの先端を後退させるのに、溶接ワイヤの後退及び溶接トーチの後退のいずれを選択してもよい。ロボットを用いた溶接装置では、スローダウン送給速度設定値Fir、基準トルク値Qt、初期遅延期間Tid、後退送給速度設定値Fbr、遅延期間Td等のパラメータをティーチペンダントから設定してもよい。また、スローダウン送給速度設定値Fir、溶接ワイヤの直径、及び溶接ワイヤの材質のいずれか少なくとも1つに応じて、基準トルク値Qtを適正値に設定してもよい。初期遅延期間Tidは0に設定してもよい。
第1実施形態によれば、溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着している場合であっても、短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるときに溶接ワイヤを後退させることによって、溶接ワイヤを張りつめた状態から解消したり、溶接トーチの持ち上がり状態を解消したりすることができる。よって、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡の発生を防止できる。このために、良好なアークスタート性を確保することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るアークスタート制御方法について図3を参照して説明する。第2実施形態において、図3の時刻t1〜t3までの期間の動作は図2と同一であるため、その説明は省略する。
(3)時刻t3〜t4の短絡期間
時刻t3において、溶接ワイヤの前進による強い押付力によって、溶接ワイヤの先端に付着した絶縁物の一部が破壊及び除去される、すると、溶接ワイヤ及び母材間が電気的に接続されて、短絡した状態になる。そして、図3(G)に示すように、短絡判別信号Sdは、LowレベルからHighレベルへと変化する。この時点での送給トルク信号Qdの値(短絡判別時トルク値)は、図3(F)に示すように、基準トルク値Qt以上である。この時点で、図3(I)に示すように、電流設定信号Irは初期電流設定値Iirである。またこのとき、図3(H)に示すように、外部特性切換信号SpはLowレベルである。このため、外部特性は定電流特性となり、初期電流設定値Iirに相当する溶接電流Iwが流れる。短絡判別時において、送給トルク信号Qdの値は基準トルク値Qt以上である。このため、図3(B)に示すように、送給速度設定信号Frは低後退送給速度設定値Flrになる。その結果、溶接ワイヤの先端が母材から離れないように遅い送給速度で、溶接ワイヤが後退させられる。よって、このような溶接ワイヤの後退によって、溶接ワイヤが張りつめた状態から徐々に解消される。この結果、図3(F)に示すように、送給トルク信号Qdの値は徐々に小さくなる。この場合、送給トルク信号Qdの値が予め定めた低基準トルク値Qlに減少するまで、溶接ワイヤが後退し続ける。この期間中は、溶接ワイヤの先端が母材から離れないように溶接ワイヤを後退させることが重要である。このため、低後退送給速度設定値Flrは、遅い送給速度に設定されている。ワイヤ送給モータWMは速度制御されているが、この期間中は低基準トルク値Qlを目標値とするトルク制御を行ってもよい。
これ以降は、図2の時刻t6以降の動作と同一であるため、その説明は省略する。溶接ワイヤの直径、及び溶接ワイヤの材質の少なくとも1つに応じて、基準トルク値Qt及び低基準トルク値Qlを適正値に設定してもよい。また、時刻t6以前は、図3(I)に示す電流設定信号Irを低電流設定値Ilrに設定し、時刻t6以降は、初期電流設定値Iirに設定してもよい。このようにすれば、時刻t6時点から、初期電流が流れるようになる。これにより、時刻t3〜t4の期間中に溶接ワイヤの先端が母材から離れても、溶接ワイヤ及び母材間にアークは発生しないため、溶着が防止される。
第2実施形態におけるシーケンス制御回路SCの動作は以下のように整理することができる。第2実施形態では、ステップ4以外は、第1実施形態と同じであるため、その説明は省略する。
(4)ステップ4
送給速度設定信号Frを低後退送給速度設定値Flrに設定して出力する。そして、溶接ワイヤの先端が母材に接触した状態を保持できる低後退送給速度で、送給トルク信号Qdの値が低基準トルク値Qlに減少するまで、溶接ワイヤを後退させてから、ステップ5に進む。
上述した第2実施形態によれば、溶接ワイヤの先端に絶縁物が付着している場合であっても、短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるとき、溶接ワイヤの先端を母材と接触させた状態で送給トルク値が低トルク値に減少するまで、溶接ワイヤを後退させる。これにより、溶接ワイヤを張りつめた状態から解消したり、溶接トーチの持ち上がり状態を解消したりすることができる。よって、溶接ワイヤの押付力解除に伴う再短絡の発生を防止できる。このために、良好なアークスタート性を確保することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るアークスタート制御方法について図4を参照して説明する。第3実施形態では、図2とは異なる動作機関について説明する。
時刻t2〜t3の溶接ワイヤが母材に押し付けられる期間、母材への溶接ワイヤによる押付力によって、溶接ワイヤの先端に付着した絶縁物の一部が破壊されて、過渡的に短絡抵抗値よりも大きな抵抗値になることがある。この状態は、時刻t3において完全な短絡状態になるまで継続する。過渡的な状態では、図4(C)に示すように、溶接電圧Vwは無負荷電圧よりも低く、短絡電圧よりも高くなる。第3実施形態では、この中間的な電圧が所定期間以上継続したことを判別して、溶接ワイヤが張りつめた状態又は溶接トーチが持ち上げられた状態にあることを把握する。すなわち、第1実施形態では、短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であることで、溶接ワイヤや溶接トーチなどの状態を判別していたが、これに代えて、第3実施形態では、中間的な電圧を用いて溶接ワイヤや溶接トーチなどの状態を判別する。これ以外の動作は、図2の説明と同一であるので、説明は省略する。
第3実施形態におけるシーケンス制御回路SCの動作は、ステップ3以外は、前記実施形態と同一である。
(3)ステップ3
短絡判別時よりも前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続したときはステップ4に進む。一方、短絡判別時よりも前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続しないときはステップ5に進む。
上記の所定期間は、10〜500ms程度である。また、溶接ワイヤのスローダウン送給速度設定値Fir、溶接ワイヤの直径、及び溶接ワイヤの材質のいずれか少なくとも1つに応じて、この所定期間を適正値に設定してもよい。
第3実施形態によれば、送給トルクを検出しなくても、短絡判別時よりも前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続したことによって判別でき、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、送給トルクの検出が不要であるため、回路全体の構成が簡素化されて、コストも低減される。

Claims (3)

  1. ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、
    前記溶接ワイヤの前進により前記溶接ワイヤの先端が母材と接触して前記溶接ワイヤ及び前記母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、
    前記短絡判別時において前記ワイヤ送給モータの送給トルク値を短絡判別時トルク値として検出し、前記短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるときにステップ4に移行させ、前記短絡判別時トルク値が基準トルク値未満であるときにステップ5に移行させるステップ3と、
    前記溶接ワイヤの後退を開始すると共にアークを発生させない状態で前記溶接ワイヤの先端を前記母材から引き離して前記ステップ1に戻すステップ4と、
    前記溶接ワイヤの後退を開始して前記溶接ワイヤの先端を前記母材から引き離すことにより、前記溶接ワイヤ及び前記母材間に初期アークを発生させるステップ5と、
    前記初期アークを維持したまま前記溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、
    前記溶接ワイヤの後退を停止し、前記溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を前記初期アークから定常アークへと移行させるステップ7と
    を備えたことを特徴とするアークスタート制御方法。
  2. ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、
    前記溶接ワイヤの前進により前記溶接ワイヤの先端が母材と接触して前記溶接ワイヤ及び前記母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、
    前記短絡判別時において前記ワイヤ送給モータの送給トルク値を短絡判別時トルク値として検出し、前記溶接ワイヤの前進時の前記短絡判別時トルク値が基準トルク値以上であるときにステップ4に移行させ、前記溶接ワイヤの前進時の前記短絡判別時トルク値が基準トルク値未満であるときにステップ5に移行させるステップ3と、
    前記溶接ワイヤの先端が前記母材に接触した状態を保持できる低後退送給速度で前記溶接ワイヤの後進を開始し前記溶接ワイヤの後進時の前記送給トルク値が低基準トルク値に減少するまで前記溶接ワイヤを後退させてから前記ステップ5に移行させるステップ4と、
    前記溶接ワイヤの後退を開始して前記溶接ワイヤの先端を前記母材から引き離すことにより、前記溶接ワイヤ及び前記母材間に初期アークを発生させるステップ5と、
    前記初期アークを維持したまま前記溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、
    前記溶接ワイヤの後退を停止し、前記溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を前記初期アークから定常アークへと移行させるステップ7と
    を備えたことを特徴とするアークスタート制御方法。
  3. ワイヤ送給モータを駆動して溶接ワイヤの前進を開始するステップ1と、
    前記溶接ワイヤの前進により前記溶接ワイヤの先端が母材と接触して前記溶接ワイヤ及び前記母材間に短絡が発生したことを判別するステップ2と、
    前記短絡判別時以前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続したときにステップ2からステップ4に移行させ、前記短絡判別時以前の溶接電圧値が無負荷電圧よりも低い状態が所定期間以上継続しないときはステップ2からステップ5に移行させるステップ3と、
    前記溶接ワイヤの後退を開始すると共にアークを発生させない状態で前記溶接ワイヤの先端を前記母材から引き離して前記ステップ1に戻すステップ4と、
    前記溶接ワイヤの後退を開始して前記溶接ワイヤの先端を前記母材から引き離すことにより、前記溶接ワイヤ及び前記母材間に初期アークを発生させるステップ5と、
    前記初期アークを維持したまま前記溶接ワイヤの後退を継続してアーク長を長くするステップ6と、
    前記溶接ワイヤの後退を停止し、前記溶接ワイヤの前進を開始して、アークの状態を前記初期アークから定常アークへと移行させるステップ7と
    を備えたことを特徴とするアークスタート制御方法。
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