JP5186794B2 - 燃料電池システムおよび燃料電池システムにおけるガス圧力調節方法 - Google Patents

燃料電池システムおよび燃料電池システムにおけるガス圧力調節方法 Download PDF

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Description

この発明は、固体高分子型燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池では、燃料電池の運転中に、燃料電池内の種々の状態変化によって、電池性能が低下することが考えられる。
例えば、燃料電池の中には、水素極の排気(以下、アノード排ガスと呼ぶ)を循環させて、再び水素極に供給する循環流路を設けて、アノード排ガスに含まれる残留水素を有効活用するようにしているものがある。このような燃料電池の場合、アノード排ガス中には、例えば、水蒸気、窒素なども含まれるため、アノード排ガスを長期間に亘って循環させ続けると、これらの成分濃度が高くなり、相対的に水素濃度が低減して、電池性能が低下するおそれがある。そのため、従来は、循環流路に、アノード排ガスの一部を外気へ排出するためのパージバルブを設け、パージバルブを定期的に開くことにより、窒素および水蒸気の濃度を低減させて、水素濃度の低下に起因する電池性能の低下を回避する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、固体高分子型燃料電池では、電解質膜の含水量が低下すると、電解質膜におけるプロトン伝導性が低下して膜抵抗が増大し、その結果、出力電圧が低下して電池性能が低下する。このような不都合を抑制するために、電解質膜の含水量低下時における対策としては、カソード側におけるガス圧力を、より高める制御を行なう構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2003−151592号公報 特開2002−175821号公報
カソード側におけるガス圧力を高めると、アノード側に対してカソード側のガス圧が相対的に高くなるため、カソード側で生成される水が、アノード側に移動する。そのため、電解質膜の含水量を増加させることができるようになる。しかしながら、カソード側へのガス供給は、通常、ポンプ等を用いて空気を加圧供給することによって行なわれるため、カソード側のガス圧力を高めると、ポンプ等の消費電力、すなわち、補機損が増大することになる。このように補機損が増大すると、システム全体のエネルギ効率が低下する。
そこで、本発明は、補機損の増大等に起因するエネルギ効率の低下を伴うことなく、電解質膜の含水量の低下に起因する燃料電池の性能低下を抑制すると共に、水素濃度の低下に起因する燃料電池の性能低下を抑制することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 固体高分子電解質膜を有する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
前記燃料電池のアノード側におけるガス圧を調節するアノードガス圧調節部と、
アノードガス中の不純物を排出させる不純物排出部と、
前記アノードガス圧調節部および前記不純物排出部を制御する制御部と、
を、さらに備え、
前記制御部は、
前記アノード側におけるガス圧を正圧から負圧に低下させる場合に、前記不純物排出部を制御して、前記アノードガス中の不純物を排出させ、その後、前記アノードガス圧調節部を制御して、前記ガス圧を正圧から負圧に低下させることを要旨とする。
本発明の燃料電池システムでは、アノード側におけるガス圧(以下、アノード内圧ともいう。)を正圧から負圧に低下させる場合には、まず、アノードガス中の不純物を燃料電池システム外へ排出させる。例えば、アノード内圧を負圧まで低下させた後に、アノードガス中の不純物を大気中へ排出しようとしても、圧力差により、不純物を大気中に排出することができない。本発明の燃料電池システムによれば、アノード内圧を低くするに先立って、アノードガス中の不純物を大気中へ排出しているため、良好に不純物を大気中へ排出することができる。従って、アノードガス中の不純物を大気中に排出して、アノードガス中の水素濃度を高めることによって、電池性能の低下を抑制することができる。
そして、例えば、フラッディングが原因で燃料電池の出力が低下する場合に、アノード内圧を負圧まで低下させると、アノードガスの流速が大きくなり、アノードガスの流れによって、燃料電池内のアノード側に滞留している液体の水を燃料電池外へ排出し易くなるため、アノード側におけるフラッディングを抑制することができる。したがって、アノードガスの流通が改善されるため、燃料電池の性能低下を抑制することができる。すなわち、本発明の燃料電池システムによれば、総合的に、電池性能の低下を抑制することができる。
さらに、アノード内圧を低下させる際にはエネルギ消費の増大を伴う必要がないため、エネルギ効率を低下させることなく、電池性能の低下を抑制することができる。
[適用例2] 適用例1記載の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池内部の温度が、所定の温度以上であるか否かを判定し、前記燃料電池内部の前記温度が、前記所定の温度以上であると判定したときに、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させるようにしてもよい。
燃料電池内部の温度が上昇すると、例えば、電解質膜の含水量が低下すること等により、燃料電池性能が低下するおそれがある。適用例2のように、燃料電池内部の温度が所定の温度以上である場合に、アノード側におけるガス圧を低下させると、カソード側におけるガス圧(以下、カソード内圧ともいう。)に対して相対的にアノードガス圧が低くなるため、カソードからアノードへの水の移動が促進されて、電解質膜の含水量の低下を抑制することができる。したがって、電解質膜の含水量の低下に基づく燃料電池性能の低下を抑制することができるため、結果として、燃料電池内部の温度上昇時における燃料電池性能の低下を抑制することができる。
[適用例3] 適用例1記載の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池が備える電解質膜における含水量が低下した状態であるか否かを判定し、前記含水量が低下した状態であると判定したときに、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させるようにしてもよい。
このようにすると、電解質膜の含水量が低下したときには、上記したように、カソード内圧に対して相対的にアノードガス圧が低くなるため、カソードからアノードへの水の移動が促進されて、電解質膜の含水量の低下を抑制することができる。すなわち、水素濃度の低下に伴う燃料電池の性能低下を抑制すると共に、電解質膜の含水量低下に伴う燃料電池の性能低下を抑制することができる。
[適用例4] 適用例2記載の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池内部の温度に基づいて、前記含水量が低下した状態であるか否かを判定するようにしても良い。
このようにすると、燃料電池の内部温度あるいは燃料電池の内部温度を反映する値を計測することにより、電解質膜の含水量低下状態を容易に判定することができる。
[適用例5] 適用例1ないし4のいずれか一つに記載の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記燃料電池のアノードに対して、水素ガスを供給する水素ガス供給路と、
前記燃料電池のアノードから排出されたガスを前記水素ガス供給路へと導くアノード排ガス路と
を備え、
前記水素ガス供給路の一部と、前記アノード排ガス路とは、前記燃料電池の内部との間で水素を循環させる循環流路を形成し、
前記アノードガス圧調節部は、前記アノード側におけるガス圧力として、前記循環流路内の圧力を設定することとしても良い。
このような構成とすれば、燃料ガスとして水素ガスを用いる燃料電池システムにおいて、水素ガスを効率良く利用しつつ、電池性能の低下を抑制することができる。
[適用例6] 適用例5記載の燃料電池システムにおいて、
前記アノードガス圧調節部は、
前記水素ガス供給路において前記循環流路よりも上流に設けられ、前記水素ガスを前記循環流路側へと吐出する吐出口と、該吐出口を開閉するバルブと、を有するインジェクタを備え、
前記制御部は、
前記インジェクタの前記バルブによる前記吐出口の開閉状態を調節させることによって、前記アノード側におけるガス圧を正圧から負圧に低下させるように前記アノードガス調節部を制御するようにしても良い。
このような構成とすれば、バルブによる吐出口の開閉状態を調節することにより、アノード側におけるガス圧力を、容易に所望の圧力へと調節することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、固体高分子電解質膜を備える燃料電池におけるアノード側におけるガス圧力の調節方法などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の全体構成:
B.アノード内圧と膜抵抗との関係:
C.膜含水量低下時における制御:
D.実施例の効果:
E.変形例:
A.装置の全体構成:
図1は、本発明の好適な一実施例としての燃料電池システム10の構成を示す説明図である。図1に示すように、燃料電池システム20は、燃料電池スタック22と、燃料ガスとしての水素を燃料電池スタック22に供給して、燃料電池スタック22から排出された排ガス(以下、アノード排ガスともいう。)を大気へ排出する水素給排系と、酸化剤ガスとしての空気を燃料電池スタック22に供給して、燃料電池スタック22から排出された排気ガスを大気へ排出する空気給排系と、燃料電池システム10の各部の動きを制御する制御部70と、を備える。
燃料電池スタック22は、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池であり、燃料ガスとしての純水素と、酸化剤ガスとしての空気中の酸素が、各電極において電気化学反応を起こすことによって起電力を得るものである。
水素供給系は、水素タンク23と、水素供給路60と、アノード排ガス路63と、排ガス排出路64と、から主に構成される。
水素タンク23は、例えば、高圧水素を貯蔵する水素ボンベである。あるいは、代わりに、水素吸蔵合金を内部に備え、水素吸蔵合金に吸蔵させることによって水素を貯蔵するタンクを用いても良い。
水素供給路60には、圧力調整弁61と、インジェクタ62とが設けられている。水素タンク23に貯蔵される水素ガスは、水素タンク23に接続する水素供給路60に放出された後、圧力調整弁61によって所定の圧力に調整(減圧)され、インジェクタ62を介して、燃料電池スタック22を構成する各単セルのアノードに燃料ガスとして供給される。なお、圧力調整弁61は、図1では単一の弁として記載されているが、水素タンク23から供給される高圧の水素ガスを、所望の圧力に減圧してインジェクタ62に供給できれば良く、必要な数の圧力調整弁を設けたものを用いてもよい。
インジェクタ62は、吐出口と、吐出口を開閉する電磁弁であるバルブとを備え、バルブの開放時に、インジェクタ62の前後にかかる差圧に応じた水素ガスを吐出口から噴射する装置である。そのため、インジェクタ62が備えるバルブの開弁時間によって、アノード側に供給する水素ガス量を調節することができる。具体的には、後述する制御部70からインジェクタ62に対して駆動信号(パルス信号)が送出され、インジェクタ62に入力された駆動信号がONのときにインジェクタ62のバルブが開弁され、OFFのときにバルブが閉弁される。この駆動信号のパルス幅(すなわちデューティー比)を調節することによって、インジェクタ62から噴射される水素ガス量を調節して、アノードに供給する水素ガス量を調節している。
また、インジェクタ62のバルブの開閉状態を制御することにより、アノード内圧を制御することができる。図2は、アノード内圧とインジェクタ62の動作との関係を表わす説明図である。インジェクタ62におけるバルブの開閉制御は、例えば、インジェクタ62に入力される駆動信号において、一定の周波数fでパルス幅を変更することによって行なうことができる。図2に示すように、バルブによって吐出口が開放状態になる間は、アノード内圧は上昇し、閉鎖状態になる間は、循環流路内の水素が発電のために消費されることによってアノード内圧は低下する。そのため、バルブを開閉することによって、アノード内圧は、図2に示すΔPの圧力差の範囲で脈動する。したがって、インジェクタ62におけるデューティー比を制御することで、アノード内圧は、微細に脈動しつつ、全体として所望の圧力に維持される。なお、本実施例におけるインジェクタ62が、請求項におけるアノードガス圧調節部に相当する。
アノード排ガス路63には、水素ポンプ65が設けられており、燃料電池スタック22のアノードから排出されるアノード排ガスを、水素供給路60においてインジェクタ62が配置される位置の下流側に再び流入させる。したがって、アノード排ガス中の残余の水素は、アノード排ガス路63と、水素供給路60の一部と、燃料電池スタック22内の流路と、から成る流路(以下、循環流路と呼ぶ)内を循環して再度電気化学反応に供される。このとき、電極反応による水素消費量(発電量や負荷要求に基づいて求められる)に応じて、インジェクタ62におけるデューティー比が調節され、水素消費量に相当する水素が、インジェクタ62を介して水素タンク23から循環流路へと補充される。また、アノード内圧に基づいて、インジェクタ62におけるデューティー比がフィードバック制御され、アノード内圧は、所定の略一定値に保たれている。なお、循環流路を構成する水素供給路60には、アノード内圧を計測するアノード内圧センサ50が設けられている。
排ガス排出路64は、アノード排ガス路63から分岐して、設けられている。排ガス排出路64にはパージバルブ27が設けられており、パージバルブ27が開弁されると、アノード排ガス路63内を流れるアノード排ガスの一部が排ガス排出路64を介して、外部に排出される。これにより、循環する水素含有ガスの一部を外部に排出して、水素含有ガス中の不純物濃度(電解質膜を介してアノード側に移動した、酸化ガスである空気中の窒素等の濃度)の上昇を抑えることができる。なお、本実施例におけるパージバルブ27および排ガス排出路64が、請求項における不純物排出部に相当する。
通常は、アノード排ガス路63内のアノード排ガス中の窒素濃度に基づいてパージバルブ27の開閉が制御されている。アノード排ガス中の窒素濃度は、例えば、以下のように求める。燃料電池スタック22内を流通する冷却水(後述する)の水温と、燃料電池スタック22の出力に応じた窒素濃度を予め測定して、その関係をマップとして制御部70(後述する)に記憶しておく。そして、燃料電池スタック22の運転中に上記水温および出力を計測して、上記マップを参照することにより、そのときの窒素濃度を求めることができる。
また、排ガス排出路64は、希釈器26に接続されている。この希釈器26は、アノード排ガスを外部に排出する際に、排出に先立って、アノード排ガス中の水素をカソード排ガスによって希釈するために設けられている。
空気給排系は、エアコンプレッサ24と、酸化ガス供給路67と、カソード排ガス路68と、から主に構成されている。
エアコンプレッサ24は、エアクリーナ28を介して外部から取り込んだ空気を加圧して、この加圧空気を、酸化ガス供給路67を介して酸化ガスとして燃料電池スタック22のカソードに供給する。
カソード排ガス路68は、カソードから排出されたカソード排ガスを外部に排出させる。カソード排ガス路68および酸化ガス供給路67は、加湿モジュール25を経由している。加湿モジュール25では、水蒸気透過性を有する膜によって酸化ガス供給路67とカソード排ガス路68とが隔てられており、水蒸気を含有するカソード排ガスを用いて、カソードに供給する加圧空気の加湿を行なっている。また、カソード排ガス路68は、上記した希釈器26に接続されている。したがって、希釈器26において、アノード排ガスと、カソード排ガスとが混合され、アノード排ガスが希釈されて、外部に排出される。
制御部70は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成されている。詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU74と、CPU74で各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM75と、同じくCPU74で各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM76と、各種の信号を入出力する入出力ポート78等を備える。この制御部70は、燃料電池システム10に設けた各種センサ(例えば、アノード内圧センサ50や温度センサ52や電圧センサ54)の計測信号や、燃料電池スタック22に対する負荷要求に関する情報などを取得する。また、燃料電池システム10が備えるインジェクタ62、エアコンプレッサ24、水素ポンプ65、あるいはパージバルブ27など、燃料電池スタック22の発電に関わる各部に駆動信号を出力する。
また、燃料電池スタック22は、その内部に、冷却水が循環する冷却水流路を備えている(図示せず)。燃料電池スタック22内部に形成される冷却水流路と、図示しないラジエータとの間で冷却水を循環させることによって、燃料電池スタック22の内部温度は、所定の温度範囲に保たれる。ここで、上記冷却水流路における燃料電池スタック22からの出口部近傍には、燃料電池スタック22の内部温度を計測するための温度センサとして、冷却水の出口温度を計測する温度センサ52が設けられている。なお、燃料電池スタック22の内部温度を計測する温度センサとしては、冷却水の出口温度を計測するセンサ以外のセンサを設けても良く、例えば、燃料電池スタック22の温度を直接計測する熱電対としても良い。また、燃料電池システム10には、燃料電池スタック22からの出力電圧を計測するための電圧センサ54が設けられている。
本実施例の燃料電池システム10におけるアノード内圧は、燃料電池スタック22が定常運転を行なっているときには、燃料電池スタック22に対する負荷要求が変動して水素消費量が最大となる場合にも充分な水素量が確保できる値であって、カソード側のガス圧との釣り合いを考慮した正圧値として設定されている。ここで、燃料電池スタック22が定常運転を行なっているときとは、燃料電池スタック22の温度が充分に昇温しており、電解質膜の含水量が充分であって、負荷要求に応じて必要な電力を燃料電池スタック22によって支障なく発電可能な状態をいう。
B.アノード内圧と膜抵抗との関係:
本実施例の燃料電池システム10は、固体高分子電解質膜における含水量の低下時には、含水量の低下に起因する電池性能の低下を抑制するために、アノード内圧を、定常運転時とは異なる、大気圧より低い値(負圧)に設定する制御を行なうことを特徴としている。このような本実施例の燃料電池システム10における制御の説明に先立って、燃料電池における内部抵抗(セル抵抗)とアノード内圧との関係について、以下に説明する。
図3は、アノード内圧と、セル抵抗およびセル電圧との関係を調べた結果を示す図である。ここでは、燃料電池として単セル(1対のセパレータで、MEA(膜電極接合体:Membrane‐Electrode Assembly)を挟持したもの)を用いており、燃料ガスである水素ガスの循環は行なっていない。そして、単セルを一定の負荷に接続しつつ、すなわち、出力電流値を一定値に保ちつつ、アノード側に供給する水素ガスの圧力(アノード内圧)を次第に変化させて、セル抵抗およびセル電圧を測定した。また、カソードに供給する酸化ガスとしては空気を用いており、単セル内の酸化ガス流路を流れる空気の圧力、すなわちカソード内圧は一定とした。また、単セル内には冷却水が流れる冷却水流路を設け、冷却水の出口温度を調節することによって、単セル内の温度を略一定に維持した。また、燃料ガスおよび酸化ガスの加湿条件としては、アノード内圧をカソード内圧と釣り合う圧力に設定する場合に、電解質膜の含水量が低下するような条件として設定した。
ここで、燃料電池における内部抵抗としては、燃料電池の構成部材間における接触抵抗に起因するものと、燃料電池の各構成部材そのものが有する抵抗とがある。これら個々の抵抗を計測することは困難であるが、これらの抵抗の内、燃料電池の発電中に燃料電池の発電条件に応じて大きく変化し得るのは、含水量が変化することで値が変動する電解質膜の抵抗、すなわち膜抵抗である。そして、この膜抵抗は、電解質膜の含水量が低下して、電解質膜におけるプロトン伝導性が低下することによって値が上昇する。そのため、図3に示す結果においては、電解質膜の含水量の低下に起因する膜抵抗の増大を、燃料電池スタック22の内部抵抗の増加として計測している。
燃料電池の内部抵抗であるセル抵抗は、交流インピーダンス法により求めた。すなわち、単セルに対して、比較的周波数の高い(例えば10kHz)微弱な交流定電流を印加し、出力電圧から、フィルタ(コンデンサ)を用いて上記交流電流に起因する交流成分を分離して、交流成分の電圧値である交流インピーダンスを、セル抵抗として求めた。
図3に示すように、アノード内圧を低くすれば低くするほど、単セルにおけるセル抵抗が低下すると共に、セル電圧が上昇する結果が得られた。
このように、アノード内圧を低下させるほど、セル抵抗が低下するのは、アノード内圧を低下させることにより、カソード内圧に対してアノード内圧が相対的に低くなって、両者間の差圧が大きくなるためであると考えられる。アノード内圧とカソード内圧との差圧が大きくなると、カソード側からアノード側へと向かう電解質膜内における水の移動が促進され、結果的に電解質膜の含水量が増加して、膜抵抗が低下するためであると考えられる。
以上のように、図3の結果から、電解質膜の含水量が低下した場合に、アノード内圧を低下させると、低下させるほどに、セル抵抗を低下させることができ、その結果、セル電圧を上昇させることができるという知見が得られた。そこで、本実施例の燃料電池システム10では、以上の知見を利用して、電解質膜の含水量の低下時に、アノード内圧を負圧まで低下させる制御を行なうことで、電池性能の維持を図っている。
なお、一般的に、燃料ガスとして水素ガスを用い、酸化ガスとして酸素濃度が比較的低い空気を用いて燃料電池を運転する際には、アノード内圧は、カソード内圧との釣り合いを考慮して設定されるため、所望の電力を得るために必要な値に比べて過剰となっている。したがって、負荷要求に応じた発電を行なうためには充分な範囲でアノード内圧を負圧まで低下させることにより、所望の電力を得つつ、セル抵抗の低下およびセル電圧の上昇を図ることができる。
C.膜含水量低下時における制御:
図4は、燃料電池システム10が備える制御部70のCPU74において実行される膜含水量低下時処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池スタック22の発電中に、所定の間隔で繰り返し実行される。
本ルーチンが起動されると、CPU74は、まず、フラグを下げて(ステップS100)、燃料電池スタック22が所定の高温条件に該当するか否かを判定する(ステップS110)。本実施例では、燃料電池スタック22の内部温度として温度センサ52の計測温度を用い、内部温度が90℃以上の場合には、燃料電池スタック22が所定の高温条件に該当すると判定している。高温条件の判定基準を90℃としているのは、飽和蒸気圧が高くなることにより電解質膜の含水量が低下した状態になると考えられるからである。ステップS110では、燃料電池スタック22の内部温度に基づいて、電解質膜の含水量の低下状態を判断している。このように、ステップS110の処理を実行する際には、CPU74は、請求項における制御部として機能している。
ステップS110において、所定の高温条件に該当すると判定したときには、CPU74は、フラグが下がっているか否かを判断し(ステップS120)、フラグが下がっている場合は、アノード排ガス中の不純物を排出させるように制御する(ステップS130)。具体的には、CPU74からパージバルブ27へ駆動信号を出力することによって、パージバルブ27を開弁して、アノード排ガスの一部を排出させ、所定の時間経過した後、パージバルブ27を閉弁する。このように、ステップS130の処理を実行する際には、CPU74は、請求項における制御部として機能する。
「B.アノード内圧と膜抵抗との関係」の項で述べたように、電解質膜の含水量が低下した状態の場合には、アノード内圧を低下させることによって、電解質膜の含水量を増加させることができ、結果として、燃料電池性能の低下を抑制することができる。そこで、ステップS110において、所定の高温条件に該当する(すなわち、電解質膜の含水量が低下している)と判定された場合は、後述するアノード内圧を低下させる制御(ステップS140)を行なうが、本実施例においては、ステップS140に先立って、アノード排ガスを排気させる制御を行なっている(ステップS130)。これは、アノード内圧を負圧まで低下させると、その後に、アノード排ガスを排気しようとしても、循環路内の圧力が、外気圧より低いため、逆に、外気が循環路内に流入してしまい、アノード排ガスを排気することができないからである。
従来、アノード排ガスの排気は、アノードガス中の不純物濃度(例えば、窒素濃度)に基づいて、制御されている。しかしながら、アノード内圧を負圧にする場合は、上記したような問題があるため、本実施例においては、アノード内圧を正圧から負圧に低下させる場合には、そのタイミングに関連付けて、アノード内圧を低下させる前に、アノード排ガスの排出を行なっている。
ステップS130において、パージバルブ27を閉弁したら、続いて、CPU74は、アノード内圧の設定値を負圧まで低下させる制御を行なう(ステップS140)。そして、ステップS150で、フラグを上げて、再び、ステップS110に戻る。上記したように、アノード内圧は、燃料電池スタック22が定常運転を行なっているとき(すなわち、ステップS140の処理が実行されるまで)は、カソード側のガス圧との釣り合いを考慮した一定の正圧値として設定されている。アノード内圧を負圧に設定する制御は、具体的には、制御部70からインジェクタ62へと駆動信号を出力することによって、アノード内圧センサ50における計測値が大気圧よりも低い所定の値となるように、インジェクタ62におけるデューティー比を調節することによって行なう。このように、ステップS140の処理を実行する際には、CPU74は、請求項における制御部として機能する。
そして、ステップS110に戻った際に、燃料電池スタック22が所定の高温条件に該当しないと判定されたときには、CPU74は、ステップS160に移行して、アノード内圧の制御として、定常運転時の制御(すなわち、所定の正圧値に制御される)を行ない、フラグを下げる(ステップS170)。そして、再び、ステップS110へ戻る。このように、ステップS110において、燃料電池スタック22が所定の高温条件に該当しないと判定されたときには、燃料電池内のガス流路における飽和蒸気圧がそれほど高くなく、電解質膜から燃料ガスおよび酸化ガスへの水分の気化が抑えられるため、電解質膜の含水量低下状態が許容範囲内であると考えられる。そのため、アノード内圧を負圧に制御する必要がないため、定常運転時の制御に戻すものである。
一方、ステップS140において、アノード内圧を負圧に制御した後、ステップS110に戻った際に、燃料電池スタック22が所定の高温条件に該当すると判定されたときには、ステップS120に進むが、既に、アノード内圧が負圧に制御され、フラグが上がっているため、アノード排ガスの排気を行なうことなく、ステップS110に戻る。
このように、アノード内圧が、正圧値から負圧値に低下制御される場合には、負圧に制御するに先立って、アノード排ガスを排気させる制御を行なう。一方、アノード内圧が定常運転時の制御の場合(すなわち、所定の正圧値に制御されている場合)や、一定の負圧値に制御されている場合には、アノード排ガスの排気は、本ルーチンとは関係なく、アノードガス中の窒素濃度に基づいて、制御されている。
D.実施例の効果:
図5は、膜含水量低下時処理ルーチンによる制御の影響を示すグラフである。図5(a)は燃料電池スタック22の内部温度、(b)はパージバルブ27の開閉状態、(c)はアノード排ガス中の窒素濃度、(d)はアノード内圧、(e)は燃料電池スタック22の出力電力(電流×電圧)を、それぞれ示す。なお、図5では、(a)〜(e)全てのグラフについて、横軸に時間を取って、同じ時間軸で示している。図5では、燃料電池システム10を搭載した車両が、坂道を登り続ける状態を模擬して、一定の高負荷で、燃料電池システム10を運転させた状態を示している。
図5(a)に示す、燃料電池スタック22の内部温度が高温判定基準(例えば、90℃)を超えたとき(すなわち、上記のステップS110において、所定の高温条件に該当すると判定されたとき)、図5(b)に示すように、パージバルブ27が開状態になる。すると、アノード排ガス路63内のアノード排ガスの一部が、排ガス排出路64を介して、外部へ排出される。アノード排ガスの一部が排出されると、その分、水素タンク23から純水素が供給されるため、図5(c)に示すように、アノードガス中の窒素濃度が低下する。このとき、燃料電池スタック22のアノード内圧は定常運転時の制御をされている(図5(d))。そして、パージバルブ27を開けてから所定の時間が経過した後、閉弁され、続いて、インジェクタ62のバルブの開閉状態が調節されて、アノード内圧が大気圧より低い一定の負圧値になるように制御される(図5(d))。なお、パージバルブ27が閉弁された後は、アノードガス中の窒素濃度は、徐々に増加する(図5(c))。
一般的に、燃料電池が運転を開始して、燃料電池の内部温度が上昇すると、燃料電池の内部温度の上昇に伴い、電解質膜は徐々に乾燥して、電解質膜の抵抗は徐々に大きくなるため、一定の出力電流に対する出力電圧は小さくなる。したがって、負荷要求が一定の場合に、出力電流を一定にしていると、出力が小さくなってしまう。しかしながら、電解質膜の含水量が許容範囲内である場合は、出力電流を増やす等の制御を行なうことにより、燃料電池から一定の出力を得ることができる。
本実施例における燃料電池システム10では、高温条件に該当すると判定されたとき、電解質膜の含水量が許容範囲よりも低下しているものと判断している。図5に示す燃料電池スタック22の運転状況では、高負荷運転を続けることにより、高温条件に該当すると判定された後も、徐々に燃料電池スタック22の内部温度が上昇し続けるため、アノード内圧を調整しなければ、電解質膜の含水量は、さらに低下していく。
そこで、高温条件に該当すると判定された後、アノード内圧を低下させることにより、カソード側に対してアノード側の圧力を相対的に低下させることによって、アノード側からの水の移動を促進させ、電解質膜の含水量が低下するのを抑制する(すなわち、電解質膜の含水量を維持する。)。これによって、燃料電池スタック22の出力を一定の高出力に維持している(図5(e))。
本実施例の効果をより明確にするために、本実施例に対する比較例として、アノード内圧を負圧まで低下させた後に、アノード排ガスの排気を行なう制御について、説明する。図6は、比較例のアノード内圧の制御による出力への影響を示すグラフである。図6でも、図5と同様の一定の高負荷状態で、燃料電池スタック22を運転している。
まず、燃料電池スタック22の内部温度が所定の基準値を上回ると(図6(a))、アノード内圧を大気圧より低い所定の負圧値にする制御がなされる(図6(d))。その後、アノードガス中の窒素濃度が所定の高濃度判定基準値に到達すると(図6(c))、パージバルブ27が開弁され、所定の時間経過後、閉弁される(図6(b))。パージバルブ27が開弁される際に、アノード内圧が大気圧より低い状態のままであると、パージバルブ27を開弁しても、アノード排ガスは圧力差により大気中へ排出されないため、パージバルブ27を開弁するタイミングに合わせて、一旦、アノード内圧を通常運転制御時の圧力(正圧)まで戻し、パージバルブ27を閉弁するタイミングに合わせて、アノード内圧を低下させる制御を行なっている。
高温条件に該当すると判定された後、アノード内圧を負圧に設定することにより、燃料電池スタック22の電解質膜の含水量は、さらに低下することなく維持されているため、図6(e)に示すように、出力も維持されている。しかしながら、上記したように、パージバルブ27を開けるタイミングに合わせて、アノード内圧を正圧に戻す制御を行なうと、カソード側の水がアノード側へ移動しにくくなるため、電解質膜の含水量が低下して、膜抵抗が増大し、その結果、出力電圧が低下して、燃料電池スタック22の出力が低下してしまう(図6(e))。
本実施例の燃料電池システム10では、電解質膜の含水量が低下していると判断された場合に、アノード内圧を負圧まで低下させるに先立って、パージバルブ27を開弁して、アノード排ガスの排気を行なっている。そのため、比較例のように出力低下を生じさせずに、アノード排ガス中の窒素濃度を低減させると共に、電解質膜の含水量の低下を抑制して、総合的に電池性能が低下するのを抑制することができる。
さらに、インジェクタ62のバルブの開閉時間を調節することによってアノード内圧を低下させているため、エネルギ消費の増大を伴う必要がない。そのため、エネルギ効率を低下させることなく、電解質膜の含水量低下に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
また、本実施例では、インジェクタ62のバルブの開閉制御という簡便な動作により、アノード内圧を容易に所望の値へと制御することができる。なお、インジェクタ62のバルブの開閉時間を調節する方法以外の方法によって、アノード内圧を調節してもよい。例えば、バルブの開度を調節することで、アノード内圧を調節しても良い。
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(1)上記した実施例では、燃料電池スタック22の電池性能を低下させる要因の一つとして、電解質膜の含水量の低下を例に挙げて説明したが、その他の種々の要因で電池性能が低下する場合に、アノード内圧を負圧まで低下させるようにしてもよい。
例えば、アノード側でフラッディングを起こしていると考えられる場合に、アノード内圧を負圧まで低下させる制御をするようにしてもよい。具体的には、ステップS110において、フラッディングの状態になりうる低温条件(例えば、80℃以下)か否かを判定し、低温条件に該当した場合には、出力電圧の低下状態を判定して、所定の割合以上低下している場合には、フラッディングの状態になっていると判定する。
出力電圧の低下状態を判定する方法としては、例えば、以下のように判定することができる。電圧センサ54が計測した燃料電池スタック22の出力電圧値を取得すると共に、図示しない電流センサが計測した燃料電池スタック22の出力電流値を取得する。一般に、定常運転を行なっている燃料電池は、出力電流値に応じて出力電圧値が一義的に定まる性質を有しており、出力電流値と出力電圧値との間には、一定の関係が成立する(電流―電圧特性)。CPU74は、取得した出力電流値と、制御部70に予め記憶されている燃料電池スタック22の電流―電圧特性と、に基づいて、定常運転時における出力電圧値の基準値である基準電圧値を求める。そして、求めた基準電圧値と、電圧センサ54から取得した出力電圧値の計測値とを比較して、出力電圧の低下状態を判定する。
そして、ステップS110において、フラッディングの状態と判定された場合には、アノード排ガスの排気制御を行い(ステップS130)、その後に、アノード内圧の低下制御を行なう(ステップS140)。
アノード内圧を負圧まで低下させると、アノードガスの流速が速くなるため、燃料電池スタック22内に滞留している水を排出し易くなり、フラッディングを抑制することができる。
(2)上記した実施例では、図4のステップS110において燃料電池スタック22の内部温度に基づいて、電解質膜の含水量低下状態を判定しているが、異なる基準に基づいて電解質膜の含水量低下状態を判定しても良い。
例えば、燃料電池スタック22の出力電圧に基づいて、電解質膜の含水量が低下しているか否かを判定してもよい。例えば、(1)に述べたように、基準電圧値と、電圧センサ54から取得した出力電圧値の計測値とを比較して、基準電圧値に比べて実際の計測値が所定の割合以上低下している場合には、電解質膜の含水量が低下した状態であると判定してもよい。
あるいは、電解質膜の膜抵抗に基づいて、電解質膜の含水量低下状態を判定しても良い。上記したように、電解質膜の含水量が低下すると電解質膜の膜抵抗が上昇するため、膜抵抗が所定値以上に上昇しているときには、含水量低下状態であると判定することができる。
また、カソードに供給される酸化ガスにおける圧損(カソード圧損)に基づいて、電解質膜の含水量低下状態を判定することとしても良い。膜含水量が少ないときには、酸化ガスの流路内においても水が少ない状態となり、液水による酸化ガス流れの阻害が少なくなって圧損が小さくなるため、カソード圧損が小さい場合には、含水量低下状態と判定することができる。同様に、アノードに供給される燃料ガスにおける圧損(アノード圧損)に基づいて、電解質膜の含水量低下状態を判定することとしてもよい。
また、排ガス(カソード排ガスあるいはアノード排ガス)の湿度に基づいて、電解質膜の含水量低下状態を判定しても良い。燃料電池においては、温度が比較的低いときには、排ガスにおける水蒸気圧は飽和蒸気圧となっている。しかしながら、燃料電池の温度が上昇して、電解質膜が含水量低下状態となり得るときには、排ガス中の水蒸気圧は飽和蒸気圧よりも低下する。そこで、含水量低下状態を判定するための基準となる排ガス湿度を予め定めておき、この基準となる排ガス湿度よりも、計測値に基づいて求めた排ガス湿度が下回るとき、電解質膜が含水量低下状態であると判定することができる。
(3)上記した実施例では、循環流路に水素ガスを補充するためにインジェクタ62を用いたが、異なる構成としても良い。例えば、インジェクタ62に代えて減圧弁を設け、減圧弁により、燃料電池スタック22に供給する燃料ガス圧を調節して、アノード内圧を低下させる制御を行なっても良い。
(4)上記した実施例では、水素給排系では、循環流路を構成して、アノード排ガスを水素供給路60に戻す構成を示したが、アノード排ガスを循環させない構成としてもよい。例えば、アノード排ガス路63を設けず、排ガス排出路64が、燃料電池スタック22に直接接続される構成としてもよい。このような構成とした場合も、パージバルブ27を開弁することによって、燃料電池スタック22内のアノードガス中の不純物を排出することができる。このような構成にすると、例えば、供給された水素が、全て電極反応に用いられる場合等に、好適である。
(5)上記した実施例では、水素を含有する燃料ガスとして、水素タンク23に貯蔵した水素ガスを用いたが、異なる構成としても良い。例えば、アルコールや炭化水素などの燃料から、水蒸気改質反応のような改質反応を利用して得られる水素リッチな改質ガスを、燃料ガスとして用いることとしても良い。この場合にも、電解質膜の含水量低下時には、アノード内圧を低下させる制御を行なうことによって電解質膜における抵抗の上昇を抑え、出力電圧を確保することにより、同様の効果を得ることができる。
燃料電池システム10の構成の概略を表わす説明図である。 アノード内圧とインジェクタ62の動作との関係を表わす説明図である。 アノード内圧とセル抵抗およびセル電圧との関係を調べた結果を示す図である。 燃料電池システム10において実行される膜含水量低下時処理ルーチンを表わすフローチャートである。 膜含水量低下時処理ルーチンによる制御の影響を示すグラフである。 比較例のアノード内圧の制御による出力への影響を示すグラフである。
符号の説明
10…燃料電池システム
22…燃料電池スタック
23…水素タンク
24…エアコンプレッサ
25…加湿モジュール
26…希釈器
27…パージバルブ
28…エアクリーナ
50…アノード内圧センサ
52…温度センサ
54…電圧センサ
60…水素供給路
61…圧力調整弁
62…インジェクタ
63…アノード排ガス路
64…排ガス排出路
65…水素ポンプ
67…酸化ガス供給路
68…カソード排ガス路
70…制御部
74…CPU
78…入出力ポート

Claims (7)

  1. 固体高分子電解質膜を有する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
    前記燃料電池のアノード側におけるガス圧を調節するアノードガス圧調節部と、
    アノードガス中の不純物を排出させる不純物排出部と、
    前記アノードガス圧調節部および前記不純物排出部を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、通常は前記アノード側を正圧にして前記燃料電池に発電させ、前記燃料電池が所定の条件下にあるときに前記アノード側を正圧から負圧にして前記燃料電池に発電させ、
    前記制御部は、前記アノード側が正圧である場合には、前記不純物排出部を制御して、所定のタイミングでの前記アノードガス中の不純物の排出を繰り返し実行させ、
    前記アノード側におけるガス圧を正圧から負圧に低下させる場合に、前記不純物排出部を制御して、前記アノードガス中の不純物を排出させ、その後、前記アノードガス圧調節部を制御して、前記ガス圧を正圧から負圧に低下させ、前記アノード側を負圧にしている間には前記不純物排出部に前記アノードガス中の不純物の排出を行わせないことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、
    前記燃料電池内部の温度が、所定の温度以上であるか否かを判定し、前記燃料電池内部の前記温度が、前記所定の温度以上であると判定したときに、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させることを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、
    前記燃料電池が備える電解質膜における含水量が低下した状態であるか否かを判定し、前記含水量が低下した状態であると判定したときに、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させることを特徴とする燃料電池システム。
  4. 請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
    前記制御部は、
    前記燃料電池内部の温度に基づいて、前記含水量が低下した状態であるか否かを判定することを特徴とする燃料電池システム。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、さらに、
    前記燃料電池のアノードに対して、水素ガスを供給する水素ガス供給路と、
    前記燃料電池のアノードから排出されたガスを前記水素ガス供給路へと導くアノード排ガス路と、
    を備え、
    前記水素ガス供給路の一部と、前記アノード排ガス路とは、前記燃料電池の内部との間で水素を循環させる循環流路を形成し、
    前記アノードガス圧調節部は、前記アノード側におけるガス圧力として、前記循環流路内の圧力を設定することを特徴とする燃料電池システム。
  6. 請求項5に記載の燃料電池システムであって、
    前記アノードガス圧調節部は、
    前記水素ガス供給路において前記循環流路よりも上流に設けられ、前記水素ガスを前記循環流路側へと吐出する吐出口と、該吐出口を開閉するバルブと、を有するインジェクタを備え、
    前記制御部は、
    前記インジェクタの前記バルブによる前記吐出口の開閉状態を調節させることによって、前記アノード側におけるガス圧を正圧から負圧に低下させるように前記アノードガス調節部を制御することを特徴とする燃料電池システム。
  7. 固体高分子電解質膜を有する燃料電池を備えた燃料電池システムにおける前記燃料電池のアノード側におけるガス圧力を調節するガス圧力調節方法であって、
    前記燃料電池のアノード側を正圧にして前記燃料電池に発電させつつ、所定のタイミングでのアノードガス中の不純物の排出を繰り返し実行させ、前記燃料電池のアノード側におけるガス圧が正圧であり、前記燃料電池が所定の条件下にある場合に、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させると判断する第1の工程と、
    前記第1の工程において、前記アノード側におけるガス圧を負圧まで低下させると判断されたときに、アノードガス中の不純物を前記燃料電池外へ排出させる第2の工程と、
    前記第2の工程の後に、前記アノード側におけるガス圧力を、負圧に設定し、前記アノード側が負圧の間には前記アノードガス中の不純物の排出を行わない第3の工程と、
    を備えるガス圧力調節方法。
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