JP5185032B2 - 切削工具 - Google Patents
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Description
<積層構造>
本発明工具は、超硬合金層とサーメット層とが積層されて一体化された積層体(複合材料)で構成される基材を具える。本発明工具は、この基材そのもの、或いは後述するように更に、被覆膜を具えていてもよい。この基材の表面側の少なくとも一部、特に、切刃と、切刃に繋がるすくい面の少なくとも一部とには、超硬合金層を具える。すくい面の全面が実質的に超硬合金層により形成されていてもよい。本発明工具は、一般にサーメットよりも靭性の高い超硬合金層を、切屑が接触し易いすくい面側に具えることで、サーメット工具と比較して耐衝撃性に優れ、切屑との接触による欠損を効果的に抑制できる。特に、切刃部分に超硬合金層を具えることで耐欠損性を向上できる。本発明工具は、部分的に積層構造でもよいが、全体が積層構造であると、製造性がよい。具体的な形態は、一つのサーメット層と一つの超硬合金層とが積層された二層構造、一つのサーメット層を内部層とし、内部層の両側を挟むように一対の超硬合金層を配置した三層構造、一つのサーメット層を内部層とし、その外表面全面を覆うように超硬合金層を配置した内包構造(断面二層)、一つのサーメット層を中心層とし、その外表面の一部を囲むように超硬合金層を配置して、サーメット層の一部を露出させた同心状構造(断面二層)などが挙げられる。内包構造や同心状構造の成形体は、例えば、同心状の金型、具体的には、柱状の内側金型と、内側金型の外周に配される枠状の外側金型と、外側金型の外周に配される枠状の金型本体とを具えるものを用いることで形成可能である。内包構造や同心状構造の場合、ワークに接触する部分は、サーメット層が露出するようにする。上記二層構造や三層構造は、ワークに接触する部分にサーメット層を存在させ易く、好ましい。なお、切刃とは、すくい面と逃げ面との交線(稜線)を言う。
上記超硬合金層とサーメット層とは、各層を構成する原料粉末を混合後、造粒装置などにより造粒粉末とし、この造粒粉末を金型に順に供給して積層させ、この状態で加圧して積層プレス成形体を作製し、この成形体を焼結することで、一体に接合する。即ち、従来のように焼結体やプレス成形体を積層するのではなく、成形前の原料粉末の段階で積層状態として本発明工具を製造する。特許文献2,3に開示される製造方法は、焼結体を一旦製造してから表面研削を行った後加熱接合したり、別々にプレス成形体や焼結体を製造して接合するため、工程が多い。また、特に、本発明工具における超硬合金層のような薄いプレス成形体や焼結体を作製して、成形体同士、焼結体同士を隙間無く密着させることは難しいと考えられる。そのため、特許文献2,3に開示される接合材は、表面研削を行ったり、金型成形を経ることで、超硬合金とサーメットとの境界(接合界面)を平坦にしていると考えられるが、このような形状では、両者の熱膨張係数といった特性の差などによる剥離が生じ易い。両者が剥離すると、超硬合金の特性及びサーメットの特性の双方を十分に活用できない。なお、焼結体同士間や成形体同士間に隙間が存在するとその隙間に結合相プールが生じ易いことから、上記結合相プールを防止するために、上記従来の技術では、接合面を平坦化していると考えられる。これに対し、本発明工具は、通常の超硬合金やサーメットの製造プロセスに対して一つの金型における給粉回数を増加することで製造できるため、通常行われている粉末冶金の一連の製法から大きく逸脱することなく、簡単に生産性よく製造することができる。また、本発明工具の製造にあたり、プレス工程以外のプロセスコストの増加もほとんどなく、経済的にも好ましい。更に、原料粉末を積層させた成形体を焼結することで、両層が剥離し難く、接合性に優れる複合材料(基材)が得られる。
本発明工具は、上述のように原料粉末(造粒粉末)を積層させて成形した後、焼結することで、超硬合金層とサーメット層との境界(接合界面)に、原料粉末に起因すると考えられる微小な凹凸が生じる。この凹凸により両層が互いに係合することで剥離し難いと考えられる。また、本発明工具は、超硬合金層が薄いため、超硬合金層の形状がパンチの形状に倣い易い(転写され易い)。従って、押圧面にチップブレーカー用突起や溝といった凹凸を有する凹凸付きパンチを用いると、境界がパンチに沿って凹凸を有することで両層をより係合し易くして、両層の接合性が高められると考えられる。
本発明工具は、超硬合金層が薄く、サーメット層の体積割合が多い(50%超である)ことを最大の特徴とする。具体的には、本発明工具の両層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh1、切刃部分に存在する超硬合金層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たす。特に、h2/h1は、0.002以上0.01以下を満たすことが好ましい。切刃部分に存在する超硬合金層が薄いことで、切刃及びその近傍においてワークとの接触面に占めるサーメット層の割合が高くなるため、本発明工具は、鋼の切削であっても、サーメット工具と同等程度の仕上げ面光沢を得ることができる。また、工具表面に存在する超硬合金層は、超硬合金とサーメットとの熱膨張係数の差に基づく圧縮応力が存在するが、超硬合金層の厚さが薄いことで、この圧縮応力が大きくなる傾向にある。ある程度の圧縮応力は、耐欠損性の向上に寄与すると期待される。本発明工具はこのように靭性や耐欠損性に優れることで、耐欠損性や靭性が低かった従来のサーメット工具よりも適用範囲が広がり、例えば、従来、超硬合金工具を使用していた分野にもサーメット層を主体とする本発明工具を使用可能である。このような本発明工具を利用することで、供給リスクが生じている希少金属(クラーク数:0.006)であるWの使用量を低減し、性能の劣化が生じない範囲で、クラーク数:0.46のTiの化合物を主成分とするサーメット層を多くすることにより、省資源化に寄与することができる。Wは、近年価格が高騰しているため、その使用量の低減は、経済的にも好ましい。
《硬質相》
超硬合金層は、WC粒子を主たる硬質相とし、Coといった鉄族金属を主たる結合相とするWC基超硬合金から構成される。この超硬合金層は、硬質相となるWC粒子をサーメット層よりも多く含むものとする。特に、超硬合金層は、W及びWCを合計で65質量%超含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。また、WC粒子は、特に、0.1μm以上1.0μm以下が好ましい。上記範囲において、平均粒径が小さいと、高硬度で耐摩耗性に優れる超硬合金層が得られ、大きいと、耐熱亀裂性といった靭性に優れる超硬合金層が得られる。また、WC粒子が上記範囲であると、刃先処理幅が0.05mm以下という小さな刃先処理が可能であり、切刃稜線をシャープにできる。更に、WC粒子が上記範囲である場合、本発明工具の表面に存在する超硬合金層の上に、PVD法により被覆膜を形成すると、被覆膜において超硬合金層との界面付近で膜の結晶粒が微粒のWC粒子に倣って微細化し、膜の密着力を高められるといった効果が得られる。所望の特性に応じてWC粒子の大きさを選択することができる。超硬合金層中のWC粒子の大きさは、概ね原料粉末に依存するため、原料粉末の大きさにより調整するとよい。後述するサーメット層中の硬質相粒子の大きさも同様に原料粉末の大きさにより調整できる。
結合相は、主として鉄族金属からなり(80質量%以上が鉄族金属)、鉄族金属の他に原料粉末に起因すると考えられる元素が含有(固溶)されることを許容する。鉄族金属は、Coの他、FeやNiを含有していてもよいが、Coのみが好ましい。超硬合金層中の結合相の含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましい。20質量%超であると、靭性が高くなる反面、強度や耐摩耗性が低下し易く、3質量%未満であると、靭性が低下し易い。特に、5質量%以上15質量%以下であると、靭性に優れるため、好ましい。
超硬合金層は、WC粒子や鉄族金属の他、更に、周期律表IVa,Va,VIa族の金属元素群から選択される1種以上の元素や、同金属元素群から選択される1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群から選択される1種以上の元素とからなる化合物や固溶体を含有していてもよい。具体的な元素は、Cr,Ta,Ti,Nb,Zr,V、化合物は、(Ta,Nb)C,VC,Cr2C3,NbC,TiCNなどが挙げられる。これらの元素や化合物は、結合相に含有(固溶)されて存在したり、粒子で存在して硬質相として機能したりする。これらの元素や化合物は、焼結中においてWC粒子の粒成長を抑制する作用を有するものが多い。超硬合金層がこれらの元素や化合物を含有する場合、その含有量は、合計40質量%以下(但し0質量%を含む)が好ましい。なお、WC粒子は、これらの元素や化合物、結合相及び不純物を除く残部を構成する。
《硬質相》
サーメット層は、少なくとも硬質相としてTi化合物を含有し、Co,Niといった鉄族金属を主たる結合相とする硬質材料から構成される。Ti化合物は、代表的には、Tiの炭化物(TiC)、Tiの窒化物(TiN)及びTiの炭窒化物(TiCN)から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。その他、Ti化合物は、Ti及び周期律表IVa,Va,VIa族の金属元素(Tiを除く)と、C及びNの少なくとも1種とを含む複合化合物、即ち、Tiを含む複合炭化物、Tiを含む複合窒化物、Tiを含む複合炭窒化物が挙げられる。具体的な複合化合物は、(Ti,W,Mo,Ta,Nb)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Mo,Ta)(C,N)、(Ti,W,Mo,Zr)(C,N)などが挙げられる。硬質相を構成するTi化合物からなる粒子は、単一の組成から構成されるものでも(例えば、TiCN)、中心部とその周辺部とでTi濃度が異なる有芯構造であってもよい。SEM観察によれば、有芯構造の粒子のうち、中心部にTiを多く含む粒子は、黒っぽく見え(黒芯粒子)、中心部にWを多く含む粒子は、白っぽく見える(白芯粒子)。これら硬質相粒子(有芯構造の粒子の場合、周辺部を含む大きさ)の平均粒径は、0.5〜5.0μm、特に1.0〜3.0μmが好ましい。また、サーメット層は、少なくともWを含有させると、超硬合金層との熱膨張係数の差を小さくして、変形や剥離を抑制し易く好ましい。サーメット層中にWを存在させるには、原料にWCを用いることが挙げられる。原料のWCは、焼結後、Wとなって結合相などに含有(固溶)されて存在し、原料の添加量の増加に伴ってWCやWを多く含む複合化合物が析出する傾向にある。析出されたWCや複合化合物は硬質相として機能する。また、原料のWCの添加量の増加に伴って、白芯粒子が増加する傾向にある。サーメット層を100質量%とするとき、WC及びWを合計15質量%以上含有していれば、上記効果を期待できる。W及びWCの合計含有量の増加に伴い、熱膨張係数の差を小さくし易いが、多過ぎると、超硬合金層に圧縮応力が存在することによる靭性の向上効果が得られ難くなることから、合計含有量は65質量%以下が好ましい。より好ましいWC及びWの合計含有量は、15質量%以上40質量%以下である。サーメット層中のWC及びW量は、原料粉末のWC添加量に概ね依存するため、原料のWC添加量を調整することで、上記所定の範囲とすることができる。また、原料のWCは、平均粒径が1〜8μm、特に3〜5μmと比較的粗大なものを用いると、サーメット層に析出されたWCなどが比較的粗粒となり、亀裂進展の抵抗の向上といった効果が得られる。サーメット層中のWC量の測定は、例えば、XRDなどで化合物の同定を行い、EDX,EPMA,蛍光X線,IPC-AESなどを用いて組成を分析することで行え、W量の測定は、上記EDXなどで組成を分析することで行える。
サーメット層中の結合相の含有量は、8質量%以上20質量%以下が好ましい。20質量%超であると、靭性が高くなる反面、強度や耐摩耗性が低下し、8質量%未満であると、焼結性、靭性が低下する。また、この結合相は、主として鉄族金属からなり(80質量%以上が鉄族金属)、鉄族金属の他に原料粉末に起因すると考えられる元素が含有(固溶)されることを許容する。鉄族金属は、Coの他、Niを含有していてもよいが、Niを多く含有すると、焼結中などでNiが超硬合金層に移動する液相移動が生じ易い。液相移動量が多いと、特に、超硬合金層の組成が変化して硬度の低下といった性能低下や本発明工具の変形などを生じる恐れがある。従って、サーメット層の結合相は、Coが多い方が好ましく、サーメット層の結合相中の鉄族金属を100質量%とするとき、80質量%以上、特に90質量%以上がCoであることが好ましく、Coのみとすることが最適である。このように結合相中にCoを多く含有することで、変形の抑制、性能低下の抑制といった効果を奏することができる。
サーメット層も上記超硬合金と同様に、Cr,Ta,Nb,Zr,V,Moといった元素や(Ta,Nb)C,VC,Cr2C3,NbCといった化合物を更に含有していてもよく、その含有量は、合計で5〜50質量%が好ましい。なお、サーメット層において、結合相及び不純物を除く残部が硬質相を構成する。サーメット層が所望の組成となるように、原料粉末の組成設計を行う。
本発明工具において表面の稜線の少なくとも一部は、切刃になる。切刃は、焼結したままの状態でもよいが、ホーニングといった刃先処理を行うことで、耐チッピング性を向上できることに加えて、ワーク(被削材)の加工面粗さをより小さくして良好な加工面が得られる。ここで、サーメットからなる基材は、焼結したままではシャープな刃先であるものの、靭性が低いためチッピングが生じ易く、刃先処理をしようとしても、靭性が低いため、シャープな刃先処理が難しく、加工面粗さが大きくなり易い。これに対し、本発明工具は、切刃となる部分の少なくとも一部に靭性が高い超硬合金層を具えるため、刃先処理を行わなくても、耐チッピング性に優れる。また、刃先処理を行う場合でも、本発明工具は、刃先処理を施す部分に靭性が高い超硬合金層を具えるため、上記刃先処理により、シャープな刃先が得られることから、加工面粗さをより小さくすることができる。更に、加工精度の向上に加えて、バリの発生も抑制することができる。刃先処理量は、刃先処理幅が0mm超0.05mm以下であることが好ましい。0.05mm超では、刃先が鋭くないため、加工面粗さが小さくならず、加工精度を十分に向上できない。
超硬合金層及びサーメット層について、熱膨張係数及び収縮率を調整することにより、上述のように超硬合金層に圧縮応力を存在させることができる。熱膨張係数の異なる材料を積層すると、熱膨張係数の小さい側に圧縮応力が生じ、この圧縮応力が原因で層間剥離が生じることがある。これに対し、本発明工具は、上述のように両層が微視的に係合することで、上記圧縮応力に起因する層間剥離が生じ難く、圧縮応力による靭性の向上効果が期待できる。但し、圧縮応力が大き過ぎると層間剥離が生じるため、剥離が生じない範囲で圧縮応力を存在させることが好ましい。圧縮応力の調整は、上述のように熱膨張係数及び収縮率を調整する、具体的には、原料粉末の組成などを調整することが挙げられる。圧縮応力の大きさは、例えば、超硬合金層の表面をラッピングした後、その表面の中心付近をXRDにより測定することで求められる。好適な圧縮応力の大きさは、0.1〜3.0GPa程度である。
本発明工具は、上述のように造粒粉末を準備して、所望の積層構造となるように順次金型に供給し、全ての粉末を金型に充填した後プレスして、積層構造のプレス成形体を形成し、この成形体を焼結することで製造できる。得られた焼結体(本発明工具)は、超硬合金層とサーメット層との境界に、造粒の大きさや形状に概ね対応した凹凸形状を有する。凹凸形状は、造粒径を例えば、10〜200μmに調整したり、造粒径や造粒粉末の硬さ、密度、形状といった造粒粉末の性状、プレス圧力などを調整することで変化できる。これらの要因を制御することで、超硬合金層とサーメット層との接合性に優れる本発明工具が得られる。押圧時の圧力は、0.5t/cm2以上2.5t/cm2以下が好ましい。0.5t/cm2未満では、プレス成形体の密度が低く、焼結時の収縮量が大きくなって寸法精度が低下し易く、2.5t/cm2超では、プレス成形体が緻密化し過ぎて、亀裂が生じ易く、特に複雑な形状の成形体の場合、亀裂の発生がより多くなる。本発明工具の表面側に具える超硬合金層は、比較的薄いため、押圧に用いるパンチの形状に倣い易く、工具外形と、表面側の超硬合金層とサーメット層との境界の形状とが概ね相似形状となる。
本発明工具は、超硬合金層とサーメット層との双方の特性を兼ね備え、高靭性で、仕上げ面精度に優れる。従って、本発明工具は、特に、仕上げ加工に好適に利用することができる。本発明工具の代表的な形態としては、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップが挙げられる。その他、ドリル、エンドミル、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの利用が期待できる。
超硬合金層とサーメット層とが積層された複合材料からなる切削工具を作製して、切削性能を調べた。この試験では、切刃部分の超硬合金層の厚さが異なる試料、及び比較としてサーメットのみからなる試料を用いた。
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、超硬合金層の剥離状態、及び切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具のサーメット層に対して組成(W及びWCの合計含有量)を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(超硬合金層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のCo割合:88.9質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。原料に用いたWCの添加量を変化させることで、表4に示すようにサーメット層のW及びWCの合計含有量を変化させた。上記原料のWCの添加量の増減した分に対して、原料のTiCNの添加量を増減させ、TiCNとWCとの合計量が試験例1と同様になるようにした。サーメット層中のW量及びWC量の測定は、試験例1と同様に行った。また、工具の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料もy1/y2:0.8〜1.2を満たしていた。
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に被覆膜を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップに対して、サーメット層のCo割合を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(超硬合金層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。Coの含有量の増減した分に対して、Niの含有量を増減させ、結合相の合計量が試験例1と同様になるようにした。そして、原料に用いたCo量を変化させることで、表7に示すようにサーメット層の結合相中のCo量を変化させた。表7中のCo割合は、結合相中の鉄族金属量を100質量%とする。鉄族金属量及びCo量は、試験例1の結合相量の測定と同様にEPMAで同様にして測定した。また、基材の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料も0.8〜1.2を満たしていた。
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に被覆膜を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップにおいて、刃先処理幅を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(基材の組成:同様(両層の結合相量比y1/y2:1.0)、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具に対して、超硬合金層におけるCrの含有量を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(サーメット層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%)。原料に用いたCrの添加量を変化させることで、表12に示すように超硬合金層のCrの含有量を変化させた。原料のCrの添加量の増減した分に対して、原料のWCの添加量を増減させ、Coの含有量は一定にした(Co:10質量%)。また、基材の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料もy1/y2:0.8〜1.2を満たしていた。
サーメット層における結合相量(体積%)を一定として、超硬合金層における結合相量(体積%)を変化させた切削工具を作製し、焼結後における変形状態を調べた。ここでは、超硬合金層の厚さが均一的な二層構造で、表面が平面的な四角柱状のもの(図1(I)参照)、即ち、ブレーカーが無いものを作製した(厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01))。両層の結合相量を変えた点以外は試験例1と同様の原料粉末を用い、所定形状の金型に、サーメット用粉末、超硬合金用粉末を順に給粉した後、1.0t/cm2で押圧して作製した積層プレス成形体を試験例1と同様の条件で焼結して切削工具を得た。超硬合金層の結合相を増減した分に対して、WCを増減させた。なお、粉末の給粉順序は上記と逆でもよい。
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に試験例4と同様にして被覆膜(PVD膜)を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップにおいて、超硬合金層に用いたWC粉末の大きさを変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(基材の組成:試験例1と同様(両層の結合相量比y1/y2:1.0)、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%)。
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具に対して、サーメット層の組成を異ならせた点以外の点は、試験例1と概ね同様とし、超硬合金層の厚さが異なる試料を複数作製した。
14 取付穴 100 切削工具(基材) 100c 切刃部分 101 超硬合金層
101f 表面 102 サーメット層 103 境界 S 基準面
200 稜線 201 逃げ面 202 すくい面 203 交点
Claims (12)
- 超硬合金層とサーメット層とが積層されてなる基材を具え、
前記基材の切刃及び切刃に繋がるすくい面側の少なくとも一部に前記超硬合金層が配置されており、
前記基材は、積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh1、切刃部分に存在する超硬合金層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たすことを特徴とする切削工具。 - 前記超硬合金層の厚さh2が10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
- 前記超硬合金層の厚さh2が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
- 前記サーメット層は、WC及びWを合計で15質量%以上65質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削工具。
- 前記超硬合金層は、鉄族金属を含む結合相と、Crとを含んでおり、前記結合相量をx1(質量%)とし、Crの含有量をx2(質量%)とするとき、x2/x1が0.02以上0.2以下を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の切削工具。
- 前記超硬合金層及びサーメット層は、鉄族金属を含む結合相を具え、超硬合金層の結合相の含有量をy1(体積%)とし、サーメット層の結合相の含有量をy2(体積%)とするとき、y1/y2が0.8以上1.2以下を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削工具。
- 前記基材は、
多角柱状の刃先交換型チップであり、その角部に切刃が形成されており、
前記切刃に繋がるすくい面にチップブレーカーを具え、このブレーカー部分に超硬合金層が存在しており、
前記チップブレーカーにおいてすくい面から最も突出した部分の超硬合金層の厚さをhbとするとき、h2/hbが0.5以上1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。 - 前記サーメット層は、鉄族金属を含む結合相を具え、結合相中の鉄族金属の80質量%以上がCoであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の切削工具。
- 前記切削工具は、更に、前記基材表面に形成された被覆膜を具え、
前記被覆膜は、CVD法により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具。 - 前記切削工具は、更に、前記基材表面に形成された被覆膜を具え、
前記被覆膜は、PVD法により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具。 - 前記基材において、前記超硬合金層中の硬質相粒子の平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
- 前記基材は、刃先処理部を有しており、その刃先処理幅が0.05mm以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の切削工具。
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