JP5182484B2 - 楽音合成装置およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、管楽器の楽音を合成する技術に関する。
楽器の発音の原理を模擬することで楽音を合成する物理モデル方式の楽音合成装置(物理モデル音源)が従来から提案されている。例えば、全体が自由に移動する剛体の空気弁としてリードをモデル化したうえでクラリネットの挙動を模擬する技術(非特許文献1)や、ひとつの端部が固定された長板状の振動体(片持ち梁)でリードをモデル化したうえでクラリネットの挙動を模擬する技術(非特許文献2)が提案されている。また、非特許文献3には、吹奏時における演奏者の唇の作用をリードの挙動に反映させる技術が開示されている。
R.T.Schumacher, "Ab Initio Calculations of the Oscillations of a Clarinet", ACUSTICA, 1981, Volume 48 No.2, p.75- p.85 S.D.Sommerfeldt, W.J.Strong, "Simulation of a player-clarinet system", Acoustical Society of America, 1988, 83(5), p.1908- p.1918 宮地勲・高澤嘉光, "クラリネットにおけるリードの振動解析",日本音響学会音楽音響研究会資料,MA00-17,p.3- p.10
ところで、実際の管楽器のリードの弾性値(例えば曲げ剛性やバネ定数)は、唇からリードに作用する外力の強度やリードの長手方向における位置に応じて非線形に変化する。また、演奏者の唇の弾性値は、演奏者の歯やリードから作用する外力の強度や唇における位置に応じて非線形に変化する。しかし、非特許文献1から非特許文献3の何れにおいてもリードや唇における弾性値の非線形な変化は模擬されていない。したがって、リードの挙動は忠実に再現されず、実際の管楽器の楽音に充分に近い楽音を合成することは困難である。以上の事情を背景として、本発明は、管楽器のリードや演奏者の唇における弾性値の非線形な変化を反映した忠実な楽音を合成することを目的としている。
以上の課題を解決するために、本発明に係る楽音合成装置は、管楽器のリードにおける長手方向の位置(例えば図6の位置x)に対して非線形に変化するようにリードの各位置の弾性値(例えばバネ定数や曲げ剛性)を特定する第1特定手段(例えば図6の特定部22Bや図11の特定部22C)と、第1特定手段が特定した弾性値に応じた複数の変数に基づいて管楽器の楽音を合成する楽音合成手段(例えば図1の合成部14)とを具備する。以上の構成においては、楽音の合成に使用されるリードの弾性値がリードにおける長手方向の位置に応じて非線形に変化するように特定されるから、リードの弾性値が固定された構成と比較して、実際の管楽器の楽音を忠実に再現することが可能となる。
本発明の具体的な態様において、第1入力値と第1特定手段が特定する弾性値との関係は実測値に基づいて設定される。以上の態様によれば、第1入力値と弾性値との関係が実測値に基づいて設定されるから、楽音合成手段が合成する楽音を現実の管楽器の楽音に近づけることが可能である。
本発明の好適な態様に係る楽音合成装置は、第1入力値と第1特定手段が特定する弾性値とについて設定された複数種の関係の何れかを選択する選択手段(例えば図13の選択部23)を具備し、第1特定手段は、選択手段が選択した関係において第1入力値に対応するリードの弾性値を特定する。以上の態様によれば、第1入力値と弾性値との関係が複数の候補のなかから選択されたうえで第1特定手段による弾性値の特定に使用されるから、第1入力値と弾性値との関係が固定された構成と比較して多様な楽音を合成することが可能である。
本発明の好適な態様に係る楽音合成装置は、第1入力値と第1特定手段が特定する弾性値との関係を利用者からの指示に応じて可変に制御する制御手段(例えば図14の制御部24)を具備する。以上の態様によれば、第1入力値と弾性値との関係が利用者からの指示に応じて可変に制御されるから、第1入力値と弾性値との関係が固定された構成と比較して、利用者の意図を反映させながら多様な楽音を合成することが可能である。
本発明の好適な態様に係る楽音合成装置は、リードに接触する演奏者の唇における前記リードの長手方向の位置(例えば図6の位置x)に対して非線形に変化するように唇の各位置の弾性値(例えばバネ定数)を特定する第2特定手段(例えば図6の特定部22A)を具備し、楽音合成手段は、第1特定手段が特定したリードの弾性値と第2特定手段が特定した唇の弾性値とに応じた複数の変数に基づいて楽音を合成する。以上の態様によれば、リードにおける長手方向における唇の位置に応じて非線形に変化するように唇の弾性値可変に設定されるから、唇の弾性値が固定された構成と比較して、実際の管楽器の楽音を忠実に再現することが可能である。
なお、第1特定手段について前述した各態様は第2特定手段についても同様に適用される。例えば、本発明の好適な態様において、第2入力値と第2特定手段が特定する弾性値との関係は実測値に基づいて設定される。また、第2入力値と第2特定手段が特定する弾性値とについて設定された複数種の関係の何れかを選択する選択手段を具備する楽音合成装置において、第2特定手段は、選択手段が選択した関係において第2入力値に対応するリードの弾性値を特定する。さらに、第2入力値と第2特定手段が特定する弾性値との関係を利用者からの指示に応じて可変に制御する制御手段を具備する構成も好適である。
本発明の好適な態様において、楽音合成手段は、吹奏時に唇に接触するリードの振動に応じて発音する管楽器の楽音を合成する手段であって、外力が唇に作用した平衡時におけるリードの挙動を表わす第1運動方程式(例えば図4における式A1)と平衡時における唇の挙動を表わす第2運動方程式(例えば図4における式A2)とを解くことで平衡時における唇の変位およびリードの変位を算定する第1演算手段と、第1演算手段による算定の結果を唇の変位およびリードの変位の初期値として唇とリードとの連成振動の運動方程式(例えば図4における式B)を解くことでリードの変位を算定する第2演算手段とを含み、第2演算手段が算定した変位に基づいて楽音を合成する。以上の構成においては、唇とリードとの連成振動の運動方程式に基づいてリードの変位が算定されるから、唇の挙動を反映しない運動方程式に基づいてリードの変位を算定する構成と比較してリードの挙動が正確に模擬される。したがって、実際の管楽器の楽音を忠実に再現することが可能となる。
本発明に係る楽音合成装置は、各処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明に係るプログラムは、管楽器のリードにおける長手方向の位置に対して非線形に変化するようにリードの各位置の弾性値を特定する第1特定処理と、第1特定処理で特定した弾性値に応じた複数の変数に基づいて管楽器の楽音を合成する楽音合成処理とをコンピュータに実行させる。以上のプログラムによっても、本発明に係る楽音合成装置と同様の作用および効果が奏される。なお、本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされる。
本発明の別の態様に係る楽音合成装置は、リードの振動に応じて発音する管楽器の楽音を合成する装置であって、外力が作用した平衡時におけるリードの変位を、リードの弾性値に対して非線形に変化するように特定する第1演算手段と、第1演算手段が特定した変位をリードの変位の初期値としてリードの運動方程式を解くことでリードの変位を算定する第2演算手段とを具備し、第2演算手段が算定した変位に基づいて楽音を合成する。以上の態様によれば、リードが比例限界の範囲外で動作したときにリードの変位が弾性値に対して非線形に変化する様子が模擬されるから、実際の管楽器の楽音を忠実に再現することが可能である。以上の態様に係る楽音合成装置を実現するプログラムは、リードの振動に応じて発音する管楽器の楽音を合成するためのプログラムであって、外力が作用した平衡時におけるリードの変位を、リードの弾性値に対して非線形に変化するように特定する第1演算処理と、第1演算処理で特定した変位をリードの変位の初期値としてリードの運動方程式を解くことでリードの変位を算定する第2演算処理とをコンピュータに実行させる。
本発明の別の態様に係る楽音合成装置は、吹奏時に唇に接触するリードの振動に応じて発音する管楽器の楽音を合成する装置であって、外力が作用した平衡時における唇の変位を、唇の弾性値に対して非線形に変化するように特定する第1演算手段と、第1演算手段が特定した変位を唇の変位の初期値として唇とリードとの連成振動の運動方程式を解くことでリードの変位を算定する第2演算手段とを具備し、第2演算手段が算定した変位に基づいて楽音を合成する。以上の態様によれば、唇が比例限界の範囲外で動作したときに唇の変位が弾性値に対して非線形に変化する様子が模擬されるから、実際の管楽器の楽音を忠実に再現することが可能である。以上の態様に係る楽音合成装置を実現するプログラムは、吹奏時に唇に接触するリードの振動に応じて発音する管楽器の楽音を合成するためのプログラムであって、外力が作用した平衡時における唇の変位を、唇の弾性値に対して非線形に変化するように特定する第1演算処理と、第1演算処理で特定した変位を唇の変位の初期値として唇とリードとの連成振動の運動方程式を解くことでリードの変位を算定する第2演算処理とをコンピュータに実行させる。
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る楽音合成装置の構成を示すブロック図である。本形態の楽音合成装置100は、サックスやクラリネットといったシングルリードの管楽器の発音の原理を演算によって模擬(シミュレート)することで楽音を合成する。図1に示すように、楽音合成装置100は、演算処理装置10と記憶装置42と入力装置44と放音装置46とで構成されるコンピュータシステムで実現される。
演算処理装置(例えばCPU(Central Processing Unit))10は、記憶装置42に格納されたプログラムを実行することで、管楽器の楽音の時間波形(音圧の時間的な変動)を表す楽音データを生成および出力する。記憶装置42は、演算処理装置10が実行するプログラムや演算処理装置10が使用するデータを記憶する。磁気記憶装置や半導体記憶装置など公知の記憶媒体が記憶装置42として任意に採用される。
入力装置44は、利用者が操作する複数の操作子で構成される。利用者は、楽音の合成に使用される様々なパラメータを入力装置44から演算処理装置10に指示することが可能である。キーボードまたはやマウスなどの入力機器や、管楽器の演奏に関する情報を入力するための楽器型の入力機器(例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)コントローラ)が入力装置44として採用される。
放音装置46は、演算処理装置10が出力する楽音データに応じた音波を放射する。なお、実際には楽音データをアナログの楽音信号に変換するD/A変換器や楽音信号を増幅して放音装置46に出力する増幅器が設置されるが、図1においてはD/A変換器や増幅器の図示が省略されている。
図1の演算処理装置10は、設定部12および合成部14として機能する。なお、演算処理装置10の各機能が複数の集積回路で分散的に実現される構成も採用される。また、演算処理装置10の機能の一部は、楽音の合成に専用される電子回路(DSP)によって実現されてもよい。
設定部12は、楽音の合成に必要なパラメータを設定する。合成部14は、設定部12が設定したパラメータに基づいて楽音データを生成する。合成部14はリード模擬部31と管体模擬部33とを含む。リード模擬部31は、演奏者の唇とリードとの連成振動を模擬する。管体模擬部33は、管楽器のうちマウスピースからベルまでの管状の部分(すなわちリード以外の部分である。以下「管体部」という)の作用や、ベルおよび各トーンホールからの放射音に対する伝達特性の付与を模擬する。
図2は、リード模擬部31が模擬する管楽器のリードの近傍を示す概念図である。リードMRは、ひとつの端部がマウスピースMPに固定された長板状の振動体である。図2に示すように、リードMRの先端部における幅方向の中心を原点としてX軸とY軸とZ軸とを想定する。Z軸はリードMRの幅方向に延在する。X軸は、外力が作用しない状態におけるリードMRの上面(マウスピースMPとの対向面)内においてZ軸に直交する。また、Y軸は、X軸およびZ軸に直交する(リードMRに対して上下の方向に延在する)。
図3は、管楽器の吹奏時に演奏者の唇MLがリードMRに接触する様子をZ方向からみた模式図である。図3に示すように、リード模擬部31は、管楽器の吹奏時に演奏者が唇MLを歯MTでリードMRに押付けた状態を模擬する。唇MLは、リードMRのうちX方向における位置xlip1(リードMRの先端側)から位置xlip2(リードMRの根元側)までの区間に接触する。また、演奏者の歯MTは、唇MLの下面のうちX方向における位置xteeth1(リードMRの先端側)から位置xteeth2(リードMRの根元側)までの区間に接触して押圧力flip(x)を均等に作用させる。
図4は、リード模擬部31の機能を示すブロック図である。図4の左側には、設定部12が設定して記憶装置42に格納したパラメータが羅列されている。各パラメータの意味を以下に説明する。
まず、リードMRに関連するパラメータ(Stiff(x),breed(x),A(x),μreed(x),ρreed)を説明する。Stiff(x)は、X方向の位置xにおけるリードMRの曲げ剛性[N・m2]である。すなわち、曲げ剛性Stiff(x)は、リードMRのヤング率Ereed[Pa]と位置xにおけるリードMRの断面二次モーメントI(x)[m4]との乗算値に相当する。図2に示すように、breed(x)は、位置xにおけるリードMRの横幅(Z方向の寸法)[m]であり、A(x)は、位置xにおけるリードMRの断面積(位置xを通過するYZ平面内の面積)[m2]である。本形態ではリードMRの断面の形状がX方向の位置xに応じて変化する。したがって、曲げ剛性Stiff(x)の計算に使用される断面二次モーメントI(x)とリードMRの横幅breed(x)と断面積A(x)とは位置xの関数となる。また、図4のμreed(x)は、リードMRの内部抵抗の分布[(kg/sec)/m]であり、ρreedはリードMRの密度[kg/m3]である。
次に、唇MLに関連するパラメータ(klip(x),dlip(x),μlip(x),mlip(x))を説明する。klip(x)は、唇MLのX方向におけるバネ定数の分布[N/m2](例えばX方向の単位長あたりのバネ定数)である。dlip(x)は、外力が作用しない場合の位置xにおける唇MLのY方向の寸法(厚さ)[m]である。μlip(x)は、位置xにおける唇MLの内部抵抗の分布[(kg/sec)/m]である。mlip(x)は、唇MLのX方向における質量の分布[kg/m](例えばX方向の単位長あたりの質量)である。バネ定数の分布klip(x)と厚さdlip(x)と内部抵抗の分布μlip(x)と質量の分布mlip(x)とは位置xに応じて変化する。
図4のPは演奏者の口腔内の圧力[Pa]であり、ρairは常温(例えば25℃)における空気の密度[kg/m3]である。H(x)は、図2に示すように、マウスピースMPのうちリードMRに対向する表面のY方向における位置(以下「フェーシング位置」という)である。リードMRのY方向の変位y(x,t)がフェーシング位置H(x)に到達するとリードMRの上面はマウスピースMPに接触するから、フェーシング位置H(x)はリードMRの変位の限界値(下限値)に相当する。また、Zcは、マウスピースMPのうち管体とみなせる部分の始点(リードMRの根元)における空気の流動に対する特性インピーダンスである。
図4に示すように、リード模擬部31は、第1演算部311と第2演算部312と第3演算部313と第4演算部314とで構成される。第1演算部311は、唇MLのうちX方向における位置xfに押圧力flip(xf)を静的に作用させて平衡した場合のリードMRの変位y0(xf)と唇MLの底面の変位yb(xf)とを算定する。第2演算部312は、第1演算部311が算定した変位y0(xf)および変位yb(xf)をリードMRおよび唇MLの底面の変位の初期値(t=0における数値)として唇MLとリードMRとの連成振動の運動方程式を解くことで、X方向におけるリードMRの各位置xでの時刻tにおけるY方向の変位y(x,t)を算定する。第3演算部313および第4演算部314は、リードMRから管体部(マウスピースMP側)に出力する音波の圧力POUTをリードMRの変位y(x,t)に基づいて算定する。リード模擬部31による処理の詳細を以下に説明する。
図3に示すように、演奏者の唇MLの位置xf(xteeth1≦xf≦xteeth2)に歯MTから押圧力flip(xf)を作用させて平衡した状態を想定する。押圧力flip(xf)の作用でリードMRがY方向に距離d1だけ変形するとともに唇MLがY方向に距離d2だけ変形したとすると、リードMRから唇MLに作用する弾性力R1と唇MLからリードMRに作用する弾性力R2とは、リードMRの曲げ剛性Stiff(xf)と唇MLのバネ定数klip(xf)とを含む以下の各式で表現される。なお、実際には唇MLの上面はリードMRの下面に接触するが、図3においては唇MLの上面がリードMRの上面に位置するように単純化されている。
Figure 0005182484

リードMRと唇MLとの接触点(位置xf)における力の釣合いから、
R1−R2=0
が成立し、唇MLと歯MTとの接触点(位置xf)における力の釣合いから、
flip(xf)=R2
が成立する。また、リードMRの変形と変位との関係から、
d1=y0(xf)
が成立し、唇MLの変形と変位との関係から、
d2={yb(xf)−dlip(xf)}−y0(xf)
が成立する。
以上の各式から以下の運動方程式A1および運動方程式A2が導出される。
Figure 0005182484
図4の第1演算部311は、設定部12が設定した曲げ剛性Stiff(xf)と押圧力flip(xf)とバネ定数klip(xf)と厚さdlip(xf)とを代入して運動方程式A1と運動方程式A2との連立方程式を解くことで唇MLの底面の変位yb(xf)とリードMRの変位y0(xf)とを算定する。さらに詳述すると、第1演算部311は、差分方程式化やGaussの消去法などを利用して運動方程式A1からリードMRの変位y0(xf)を算定し、当該変位y0(xf)を運動方程式A2に代入することで唇MLの変位yb(xf)を算定する。なお、運動方程式A1の解法については後述する。
演奏者が管楽器を吹奏することで唇MLとリードMRとが連成的に振動したときの動特性は以下の運動方程式Bで表現される。
Figure 0005182484
第2演算部312は、第1演算部311が算定した変位y0(xf)を運動方程式BにおけるリードMRの変位y(x,t)の初期値に設定するとともに第1演算部311が算定した変位yb(xf)を運動方程式Bにおける唇MLの変位yb(x)に代入して運動方程式Bを解くことで、リードMRの変位y(x,t)を算定する。運動方程式Bの右辺はX方向におけるリードMRの位置xに作用する外部力fex(x)に相当する。第2演算部312は、第1に、設定部12が設定した各パラメータ(breed(x),P,klip(x),dlip(x))と第4演算部314が算定した圧力p(t)とを運動方程式Bの右辺に代入するとともに、第1演算部311が算定した変位y0(xf)と変位yb(xf)とを運動方程式Bの右辺における変位y(x,t)および変位yb(x)の初期値として代入することで外部力fex(x)を算定する。圧力p(t)は、リードMRとマウスピースMPとの間隙の空間のうちリードMRの先端の近傍(以下「リード直上部」という)における圧力を意味する。なお、第4演算部314による圧力p(t)の算定については後述する。
第2に、第2演算部312は、設定部12が設定した各パラメータ(mlip(x),A(x),μlip(x),μreed(x),Stiff(x),ρreed)を運動方程式Bの左辺に代入するとともに先に演算した外部力fex(x)を運動方程式Bの右辺に設定することでリードMRの変位y(x,t)を算定する。運動方程式Bを解く具体的な方法を以下に例示する。
運動方程式Bの左辺における第2項は以下のように変形される。
Figure 0005182484
したがって、運動方程式Bは以下の式B1に変形される。
Figure 0005182484
次に、時間tを整数iと所定値Δtとの乗算値として離散化(t=i・Δt)したうえで、時間微分を以下の差分に置換する。
Figure 0005182484

また、図5に示すように、相互に等しい間隔Δxをあけて分布するようにX方向における位置xを離散化する。すなわち、位置xを整数nと所定値Δxとの乗算値として離散化(x=n・Δx)したうえで、位置微分を以下の差分に置換する。
Figure 0005182484

なお、以上におけるy(n,i)は、y(n・Δx,i・Δt)を略記した記号である。
したがって、式B1は以下の式B2のように差分方程式化される。
Figure 0005182484

ただし、式B2においては各項が以下のように置換されている。
Figure 0005182484

また、式B2の各文字に付加された記号(n,i)は(n・Δx,i・Δt)の略記である。
次に、式B2における左辺の第2項目から第4項目までに1/2を乗算した方程式と、式B2のiを(i+1)に置換したうえで左辺の第2項目から第4項目までに1/2を乗算した方程式とを加算することで、式B2を近似的に表現する式B3が導出される。
Figure 0005182484
式B3の各項を変数yの種類毎に整理して変形すると以下の式B4が導出される。
Figure 0005182484

ただし、式B4においては各項が以下のように置換されている。
Figure 0005182484
図5に示すように、リードMRが位置NにてマウスピースMPに固定されるとすれば、y(N,i)やy(N+1,i)は任意の時点iにてゼロとなる。また、図5に示すように、外力が作用しないリードMRの先端(n=0)においては加速度(∂2y(0,i)/∂x2)およびせん断力(∂3y(0,i)/∂x3)がゼロとなるから、以下の式B4_1および式B4_2が成立する。
Figure 0005182484

さらに、式B4_1と式B4_2を加算することで以下の式B4_3が導出され、式B4_3の3倍から式B4_2を減算することで以下の式B4_4が導出される。
0・y(0,i)+y(1,i)−2y(2,i)+y(3,i)=0 ……B4_3
y(0,i)+0・y(1,i)−3y(2,i)+2y(3,i)=0 ……B4_4
また、式B4のnに2を代入すると以下の式B4_5が導出される。
Figure 0005182484

n=3〜N−1を同様に式B4に代入して導出される式と前述の式B4_3および式B4_4とから以下の式B5が導出される。
Figure 0005182484

式B5の解法としてはGaussの消去法が好適である。
第2演算部312は、第1演算部311による算定の結果(y0(xf),yb(xf))を変位y(x,y)および変位yb(x)の初期値として式B5を解くことでリードMRの変位y(x,t)を算定する。さらに詳述すると、第1に、第2演算部312は、式B5の右辺のうち現在の変位に相当する変数y(0,i)〜y(N-1,i)および式B5の右辺のうち過去の変位に相当する変数y(2,i-1)〜y(N-1,i-1)の双方に第1演算部311が算定したy0(0)〜y0(N-1)およびy0(2)〜y0(N-1)を代入するとともに式B5のyb(2)〜yb(N-1)に第1演算部311が算定したyb(xf)を代入して式B5を解くことで、式B5の左辺における未来の変位に相当する変数y(0,i+1)〜y(N-1,i+1)を算定する。第2に、第2演算部312は、時間をΔtだけ進めるために、現在の変位に相当する変数y(2,i)〜y(N-1,i)を式B5の右辺のうち過去の変位に相当する変数y(2,i-1)〜y(N-1,i-1)に代入するとともに、直前に算定した未来の変位に相当する変数y(0,i+1)〜y(N-1,i+1)を式B5の右辺うち現在の変位に相当する変数y(0,i)〜y(N-1,i)に代入して式B5を解くことで、式B5の左辺のうち未来の変位に相当する変数y(0,i+1)〜y(N-1,i+1)を算定する。以上のように時点iでの変位y(0,i)〜y(N-1,i)と時点(i-1)での変位y(2,i-1)〜y(N-1,i-1)を代入したうえで式B5を解いて時点(i+1)での変位y(0,i+1)〜y(N-1,i+1)を算定するという演算を反復することで、第2演算部312は、リードMRの各位置xにおける変位y(x,t)の経時的な変化を算定する。
また、設定部12の設定する押圧力flip(x)が変化するたびに、第1演算部311は、変化後の押圧力flip(x)を運動方程式A1および運動方程式A2における押圧力flip(xf)に代入することで新たなy0(xf)およびyb(xf)を算定する。第2演算部312は、第1演算部311が変位yb(xf)を算定するたびに、式B5のyb(2)〜yb(N-1)に代入する数値を新たな変位yb(xf)に更新する。以上の構成によれば、押圧力flip(x)を任意に変化させる演奏法を忠実に再現した楽音を合成することが可能である。一方、第2演算部312は、押圧力flip(x)の変化時に第1演算部311が新たな変位y0(xf)を算定しても、式B5における変位y(0,i)〜y(N-1,i)については、第1演算部311が算定した変位y0(xf)を反映させない。以上の構成によれば、変位y(x,t)の不連続な変化が回避されるから、聴感上において自然な楽音を生成することが可能である。
図4に示すように、第2演算部312は、リードMRの変位y(x、t)を所定の範囲内に制限する範囲制限部32を含む。範囲制限部32は、式B5から算定されたリードMRの変位y(x,t)を、第1演算部311が算定した唇MLの変位yb(xf)(唇MLのうち歯MTが接触する底面の位置)から、設定部12が設定したフェーシング位置H(x)までの範囲に制限する。すなわち、範囲制限部32は、変位y(x,t)が変位yb(xf)を超える(Y軸を下向きに正として変位yb(xf)を上回る)場合には変位y(x,t)を変位yb(xf)に変更するとともに、変位y(x,t)がフェーシング位置H(x)を超える(下回る)場合には変位y(x,t)をフェーシング位置H(x)に変更する。以上の構成によれば、リードMRが唇MLの底面よりも下やマウスピースMPよりも上に位置するといった不条理な状況が模擬されることは回避される。なお、以上においては変位y(x,t)の限界値(上限値)を唇MLの底面の変位yb(x)としたが、唇MLには実際には厚さがあるから、唇MLの厚さに相当する所定値(唇MLの厚さの最小値に相当する固定値や、押圧力flip(x)に応じて変化する唇MLの厚さの最小値に相当する可変値)だけ変位yb(x)からフェーシング位置H(x)に近い位置を変位y(x,t)の限界値(上限値)としてもよい。
なお、第1演算部311による変位y0(x)の算定(運動方程式A1の解法)には、以下に概説するように、第2演算部312による変位y(x,t)と同様の方法が利用される。まず、式A1は、運動方程式B1から式B2の変形と同様の方法で以下の式A1_1のように差分方程式化される。
Figure 0005182484

式A1_1の各項を変数yの種類毎に整理して変形すると以下の式A1_2が導出される。
Figure 0005182484

ただし、式A1_2においては各項が以下のように置換されている。
Figure 0005182484
式B4から式B5の変形と同様の方法で、式A1_2は以下の式A1_3に変形される。
Figure 0005182484

第1演算部311は、Gaussの消去法などの解法を利用して式A1_3を解くことで変位y0(x)(式A1_3におけるy(0)〜y(N-1))を算定する。以上が運動方程式A1の解法の具体例である。
図4の第3演算部313は、設定部12が設定した各パラメータ(H(x),ρair,breed(x),Zc)と第2演算部312が算定した変位y(x,t)とに基づいてリード直上部における体積流速f(t)を算定する。本形態の第3演算部313は、リードMRの上面と下面との圧力差に起因して発生する体積流速U(t)と、リードMRの各部が変位(y(x,t))することで発生する体積流速u(t)との差分値をリード直上部の体積流速f(t)として算定する(f(t)=U(t)−u(t))。
体積流速u(t)は以下の式C1で表現される。なお、式C1におけるleffは、リードMRの先端から支点までの距離(リードMRの有効長)である。
Figure 0005182484

第3演算部313は、設定部12が設定したリードMRの横幅breed(x)と第2演算部312が算定した変位y(x,t)の時間微分(すなわちリードMRの速度)とを式C1に代入してSimpson法などの数値積分を実行することで体積流速u(t)を算定する。
また、体積流速U(t)は以下の手順で算定される。まず、第3演算部313は、リードMRの先端におけるマウスピースMPとリードMRとの間隔ξ(t)[m]を算定する。間隔ξ(t)は、第2演算部312が算定したリードMRの変位y(x,t)のうちリードMRの先端(x=0)における変位y(0,t)とリードMRの先端(x=0)におけるフェーシング位置H(0)との差分値(ξ(t)=y(0,t)−H(0))として算定される。
次いで、第3演算部313は、リードMRの先端におけるマウスピースMPとリードMRとの間隙を通過する空気の有効質量M(t)[kg]を算定する。有効質量M(t)は以下の式C2で表現される。
Figure 0005182484

式C2のR(t)は、リードMRの先端における横幅breed(0)と間隔ξ(t)との相対比(R(t)=breed(0)/ξ(t))である。第3演算部313は、設定部12が設定したリードMRの横幅breed(0)および空気の密度ρairと相対比R(t)とを式C2に代入することで有効質量M(t)を算定する。
有効質量M(t)と体積流速U(t)とについては以下の式C3が成立する(例えば非特許文献1参照)。第3演算部313は、式C3を解くことで体積流速U(t)を算定する。
Figure 0005182484

式C3のAは、所定の係数(例えばA=0.0797)である。式C3を利用した体積流速U(t)の算定には例えば以下の方法が採用される。
式C3は、後述する式D1および式D2を利用して以下の式C4に変形される。
Figure 0005182484
式C4における微分を後退差分で離散化すると以下の式C5が導出される。第3演算部313は、非線形方程式の数値解法(例えばNewton Raphson法)を利用することで式C5から体積流速U(t)を算定する。
Figure 0005182484

第3演算部313は、図4に示すように、以上の手順で算定した体積流速U(t)と体積流速u(t)との差分値を体積流速f(t)として算定する。
図4の第4演算部314は、出射波圧力POUT(t)とリード直上部の音圧p(t)とを算定する。出射波圧力POUT(t)は、リードMRから管体部内に進行する音波(以下「出射波」という)の圧力である。管体部内を進行した音波の一部(以下「反射波」という)は管楽器の開放端(ベル)にて反射することで逆方向に進行してマウスピースMP内に到達する。したがって、出射波圧力POUT(t)は、体積流速f(t)によって発生する圧力と管体内からリードMR側に進行する反射波の圧力(以下「反射波圧力」という)PIN(t)との加算に相当する。なお、反射波圧力PIN(t)は管体模擬部33が算定する。
体積流速f(t)による圧力は体積流速f(t)と特性インピーダンスZcとの乗算値であるから、出射波圧力POUT(t)は以下の式D1で表現される。
POUT(t)=Zc・f(t)+PIN(t) ……D1
第4演算部314は、設定部12が設定した特性インピーダンスZcと第3演算部313が算定した体積流速f(t)と管体模擬部33が算定した反射波圧力PIN(t)とを式D1に代入することで出射波圧力POUT(t)を算定する。
また、リード直上部には出射波圧力POUT(t)と反射波圧力PIN(t)とが作用するから、リード直上部の圧力p(t)は以下の式D2で表現される。
p(t)=POUT(t)+PIN(t) ……D2
第4演算部314は、式D1に基づいて算定した反射波圧力POUT(t)と管体模擬部33が算定した反射波圧力PIN(t)とを式D2に代入することで圧力p(t)を算定する。第4演算部314が算定した圧力p(t)は、第2演算部312による外部力fex(x)の算定(式B)や第3演算部313による体積流速U(t)の演算(式C3)にフィードバックされる。
管体模擬部33は、管楽器の楽音を示す楽音データ(データの時系列)を出射波圧力POUT(t)に基づいて合成する。管体模擬部33が出射波圧力POUT(t)に応じた楽音データを生成する処理(管体部の内部における音波の挙動の模擬)には、例えば特開平5−61474号公報や特開平6−67675号公報に開示された発明など公知の技術が任意に採用される。
次に、図1の設定部12について説明する。図1に示すように、設定部12は、弾性値特定部20とパラメータ変換部26とを含む。弾性値特定部20は、リードや唇の弾性特性に関する様々なパラメータ(弾性値)を特定する。パラメータ変換部26は、弾性値特定部20や入力装置44から供給される多数のパラメータを楽音の合成に必要なパラメータに変換する。
図6は、弾性値特定部20の機能的な構成を示すブロック図である。図6に示すように、弾性値特定部20は、特定部22Aと特定部22Bとを含む。特定部22Aは、演奏者の唇を模したサンプル(以下「唇サンプル」という)のバネ定数klip_sampleを特定する。唇サンプルは、弾性特性や形態(形状やサイズ)が実際の人間の唇に近い(理想的には合致する)試験片である。唇サンプルのバネ定数klip_sampleは、唇サンプルに作用する外力(押圧力)の強度FAと唇サンプルにおける位置xに依存する(klip_sample(FA,x))。特定部22Aには強度FAが入力される。強度FAは、利用者が入力装置44を適宜に操作することで指示される。また、特定部22Aには、唇サンプル上の位置として予め設定された複数の位置xが指示される。特定部22Aは、強度FAに応じたバネ定数klip_sampleを各位置xについて特定する。なお、位置xは、強度FAと同様に、入力装置44に対する利用者の操作に応じて特定されてもよい。
唇サンプルのバネ定数klip_sampleと強度FAおよび位置xとの関係は実測の結果に応じて決定される。図7は、バネ定数klip_sampleの実測の方法を説明するための概念図である。図7に示すように、作業台80に載置された唇サンプル82の表面を加圧体84で押圧する。演奏者の歯MTによる唇MLの押圧と同様に、加圧体84は、唇サンプル82の表面の一部のみを押圧する。唇サンプル82の複数の位置xにおける変形量を測定して各位置のバネ定数klip_sampleを算定する作業を、押圧力の強度FAを変化させた複数の場合について反復する。以上の試験によって、外力の強度FAとバネ定数klip_sampleとの関係が複数の位置xの各々について実測される。
図8は、以上の試験の結果を示すグラフである。図8においては、唇サンプル82上のひとつの位置xにおけるバネ定数klip_sample(縦軸)と外力の強度FA(横軸)とが図示されている。図8に示すように、唇サンプル82の特定の位置xにおけるバネ定数klip_sampleは外力の強度FAに応じて非線形に変化する。一方、外力の強度FAを固定した場合を想定すると、バネ定数klip_sampleは位置xに応じて非線形に変化する。
以上の試験の結果に基づいて、バネ定数klip_sampleと強度FAおよび位置xとについて実測された関係を近似する関数FNC_A(klip_sample=FNC_A(FA,x))が作成される。図6の特定部22Aは関数FNC_Aを保持する。そして、特定部22Aは、強度FAと位置xとを関数FNC_Aに代入することでバネ定数klip_sampleを算定する。したがって、特定部22Aが特定するバネ定数klip_sampleは、図8から理解されるように強度FAと位置xとに応じて非線形に変化する。
図6の特定部22Bは、リードを模したサンプル(以下「リードサンプル」という)のバネ定数kreed_sampleを特定する。リードサンプルは、弾性特性や形態(形状やサイズ)が実際の管楽器のリードに近い(理想的には合致する)試験片である。リードサンプルのバネ定数kreed_sampleは、リードサンプルに作用する外力の強度FBとリードサンプルにおける位置xに依存する(kreed_sample(FB,x))。特定部22Bには強度FBが入力される。強度FBは、利用者が入力装置44を適宜に操作することで指示される。また、特定部22Bには、図5に図示したようにX方向に離散化された複数の位置x(x=n・Δx)が指示される。特定部22Bは、強度FBに応じたバネ定数kreed_sampleを各位置xについて特定する。なお、なお、リードサンプルにおける位置xは、強度FBと同様に、入力装置44に対する利用者の操作に応じて特定されてもよい。
リードサンプルのバネ定数kreed_sampleと強度FBおよび位置xとの関係は実測の結果に応じて決定される。バネ定数kreed_sampleは、例えば図9に示すように、端部が作業台81に固定されたリードサンプル83の表面を加圧体85で押圧することで実測される。すなわち、リードサンプル83の複数の位置xにおける変形量を測定して各位置のバネ定数kreed_sampleを算定する作業を、押圧力の強度FBを変化させた複数の場合について反復する。以上の試験によって、外力の強度FBとバネ定数kreed_sampleとの関係が複数の位置xの各々(x=1・Δx,2・Δx,3・Δx,……)について実測される。唇サンプル82と同様に、リードサンプル83のバネ定数kreed_sampleは、強度FBと位置xとに応じて非線形に変化する。
以上の試験が完了すると、バネ定数kreed_sampleと強度FBおよび位置xとについて実測された関係を近似する関数FNC_B(kreed_sample=FNC_B(FB,x))が作成される。図6の特定部22Bは、関数FNC_Bを保持し、強度FBと位置xとを関数FNC_Bに代入することでバネ定数kreed_sampleを算定する。特定部22Bが特定するバネ定数kreed_sampleは、強度FBや位置xに応じて非線形に変化する。
次に、図10は、パラメータ変換部26の具体的な構成を示すブロック図である。図10の左側に羅列された様々なパラメータがパラメータ変換部26に入力される。パラメータ変換部26に入力されるパラメータは、空気に関する物性値(cair,ρair)と、唇MLに関する物性値(ρlip,Elip,tanδlip)と、唇サンプルに関する物性値(mlip_sample,klip_sample)と、リードMRに関する物性値(tanδreed)と、リードサンプルに関する物性値(mreed_sample,kreed_sample)と、息圧P0および音高fnとを含む。前述のように唇サンプルのバネ定数klip_sampleとリードサンプルのバネ定数kreed_sampleとは弾性値特定部20が特定する。一方、バネ定数(klip_sample,kreed_sample)以外の各パラメータは、例えば利用者が入力装置44を適宜に操作することで演算処理装置10に指示される。各パラメータの具体的な内容は以下の通りである。
cairは空気中における音速[m/sec]であり、ρairは空気の密度[kg/m3]である。息圧P0は、吹奏時の利用者の口腔内における空気の圧力である。また、音高fnは、演算処理装置10が合成すべき楽音の高低を示す数値である。音高fnを適宜に変化させることで楽曲の演奏音を合成することが可能である。
唇MLに関する物性値は、唇MLの密度ρlip[kg/m3]と唇MLのヤング率Elip[Pa]と唇MLの損失係数tanδlipとを含む。唇サンプルに関する物性値は、特定部22Aが特定したバネ定数klip_sampleに加えて唇サンプルの質量mlip_sample[kg]を含む。リードMRに関する物性値は、リードMRの損失係数tanδreedを含む。リードサンプルの物性値は、特定部22Bが特定したバネ定数kreed_sampleに加えてリードサンプルの質量mreed_sample[kg]を含む。
管楽器のマウスピースMPにおける特性インピーダンスZcは以下の式(a1)で表現される。なお、下式のSinは、マウスピースMPのうち管体とみなせる部分の始点における面積である。
Zc=(ρair・cair)/Sin
=(ρair・cair)/{π・(φin/2)2} ……(a1)
図10に示すように、パラメータ変換部26は、音速cairと密度ρairと直径φinとについて式(a1)の演算を実行することで特性インピーダンスZcを算定する。なお、φinは、リードMRの根元(マウスピースMPに固定された部分)におけるマウスピースMPの内径[m]である。
また、唇MLのバネ定数の分布klip(x)[N/m2]は以下の式(a2)で表現される。
klip(x)={(Elip・blip(x)・llip(x))/dlip(x)}/llip(x)
=Elip・blip(x)/dlip(x) ……(a2)
パラメータ変換部26は、図10に示すように、唇MLの物性値(Elip,blip(x),dlip(x))について式(a2)の演算を実行することで唇MLのバネ定数の分布klip(x)[N/m2]を算定する。式(a2)において、X方向の位置xにおける唇MLの横幅blip(x)および厚さdlip(x)は音高fnから特定される(詳細は後述する)。
唇MLの内部抵抗の分布μlip(x)は以下の式(a3)で表現される。
Figure 0005182484

パラメータ変換部26は、図10に示すように、唇MLの物性値(tanδlip)と唇サンプルの物性値(mlip_sample,klip_sample)とについて式(a3)の演算を実行することで唇MLの内部抵抗の分布μlip(x)を算定する。バネ定数klip_sampleを算定した複数の位置xの各々について内部抵抗の分布μlip(x)が算定される。
一方、リードMRの内部抵抗の分布μreed(x)は以下の式(a4)で表現される。
Figure 0005182484

パラメータ変換部26は、図10に示すように、リードMRの物性値(tanδreed)とリードサンプルの物性値(mreed_sample,kreed_sample)とについて式(a4)の演算を実行することでリードMRの内部抵抗の分布μreed(x)を算定する。バネ定数kreed_sampleを算定した複数の位置xの各々(x=1・Δx,2・Δx,3・Δx,……)について内部抵抗の分布μreed(x)が算定される。
また、図10に示すように、パラメータ変換部26は、アンブシュア(吹奏時の唇MLの状態)に関する複数のパラメータ(blip(x),dlip(x),xteeth1,xteeth2,xlip1,xlip2,Flip(x))と、息圧P0を補正するための係数pmulと、管楽器の運指に関する複数のパラメータrとをキースケール処理(図10の記号“KSC”)で音高fnに基づいて特定する。キースケール処理は、音高fnがとり得る各数値とパラメータの各数値とが対応づけられたテーブルから、実際に指示された音高fnに対応する数値を各パラメータについて特定する処理である。複数のパラメータrは、管楽器のトーンホールやベルの状態を示す係数rであり、管体模擬部33による管体部内の模擬に使用される。
アンブシュアに関する複数のパラメータは、唇MLの横幅(Z方向の寸法)blip(x)[m]と、外力が作用しないときの唇MLの厚さ(Y方向の寸法)dlip(x)[m]と、演奏者の歯MTが唇MLを押圧する力Flip(x)[N]と、リードMRに対する演奏者の唇MLや歯MTの位置に関するパラメータ(xlip1,xlip2,xteeth1,xteeth2)とを含む。
パラメータ変換部26は、音高fnに対応する横幅blip(x)および厚さdlip(x)をキースケール処理で特定するとともに、横幅blip(x)と厚さdlip(x)との乗算値に唇MLの密度ρlipを乗算することで唇MLの質量の分布mlip(x)[kg/m]を算定する。また、横幅blip(x)および厚さdlip(x)は、前述した唇MLのバネ定数の分布klip(x)の算定にも適用される。
図5に示したようにX方向の各位置xを離散化するために、パラメータ変換部26は、唇MLの位置(xlip1,xlip2)を間隔Δxで除算した数値を離散後の位置(nlip1,nlip2)として算定し、歯MTの位置(xteeth1,xteeth2)を間隔Δxで除算した数値を離散後の位置(nteeth1,nteeth2)として算定する。さらに、パラメータ変換部26は、位置xteeth1と位置xteeth2との差分値をX方向における歯MTの長さlteethとして算定し、位置xlip1と位置xlip2との差分値をX方向における唇MLの長さllipとして算定する。そして、パラメータ変換部26は、押圧力Flip(x)を歯MTの長さlteethで除算することで、歯MTから唇MLの単位長あたりに作用する押圧力flip(x)[N/m]を算定する(flip(x)=Flip(x)/lteeth)。
パラメータ変換部26は、音高fnに対応する係数pmulをキースケール処理で特定するとともに息圧P0と係数pmulとを乗算することで演奏者の口腔内の圧力Pを算定する。係数pmulは、音高fnに応じて変化する係数である。管楽器を発音させるための演奏者の息圧の範囲は実際には楽音の音高に応じて相違する(例えば、高音の演奏時の息圧のほうが低音の演奏時と比較して息圧の範囲が広い)という傾向がある。本形態においては、息圧P0に乗算される係数pmulが音高fnに応じた可変値であるから、息圧P0を音高fnとは無関係に選定した場合であっても、管楽器の以上の特性が忠実に模擬されるという利点がある。
以上に説明したように、本形態においては、リードMRと唇MLとの連成振動を表現する運動方程式Bに基づいてリードMRの変位y(x,t)が算定されるから、全体が自由に移動する剛体の空気弁としてリードMRをモデル化する非特許文献1や長板状の振動体でリードMRをモデル化する非特許文献2の技術と比較してリードMRの挙動が忠実に模擬される。したがって、実際の管楽器の楽音に近い特性の楽音を高い精度で合成することが可能である。しかも、運動方程式Bにおける唇MLの変位yb(x)は、唇MLからリードMRに作用する押圧力flip(x)が変化するたびに、変化後の押圧力flip(x)から運動方程式A1および運動方程式A2に基づいて算定された結果に更新されるから、押圧力flip(x)を変化させる奏法を忠実に再現することができる。一方、押圧力flip(x)が変化した場合であっても運動方程式BにおけるリードMRの変位y(x,t)は維持されるから、変位y(x,t)の不連続な変化に起因した楽音の違和感は有効に抑制される。
さらに、本形態においては、唇サンプルに対する外力の強度FAや唇サンプル上の位置xに応じて非線形に変化するようにバネ定数klip_sampleが算定され、リードサンプルに対する外力の強度FBやリードサンプル上の位置xに応じて非線形に変化するようにバネ定数kreed_sampleが算定されるから、唇MLの特性(内部抵抗の分布μlip(x))やリードMRの特性(内部抵抗の分布μreed(x))が位置xや外力の強度(FA,FB)に応じて変化するという現象が忠実に再現される。したがって、唇やリードの弾性値(klip_sample,kreed_sample)が固定された場合と比較して、実際の管楽器の楽音に近い自然な楽音を合成することが可能である。特に、本形態においては、バネ定数klip_sampleと強度FAおよび位置xとの関係や、バネ定数kreed_sampleと強度FBおよび位置xとの関係が実測値に基づいて設定されるから、合成音の特性を実際の管楽器の楽音に近づけることが可能である。
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態におけるリードMRの曲げ剛性Stiff(x)はヤング率Ereedと断面二次モーメントI(x)との乗算値に相当する。本形態においては、リードサンプルを対象とした実測の結果に基づいて曲げ剛性Stiff(x)が特定される。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図11は、本形態における弾性値特定部20の構成を示すブロック図である。図11に示すように、弾性値特定部20は、第1実施形態の特定部22Aおよび特定部22Bに加えて特定部22Cを含む。特定部22Cは、リード模擬部31での演算に使用される曲げ剛性Stiff(x)を特定する。図5に図示したようにX方向に離散化された複数の位置x(x=n・Δx)が特定部22Cに指示される。特定部22Cは、複数の位置xの各々(x=1・Δx,2・Δx,3・Δx,……)における曲げ剛性Stiff(x)を特定してリード模擬部31に出力する。
本形態においては、リードサンプルを対象とした曲げ剛性Stiff(x)の実測値に基づいて、特定部22Cに指示される複数の位置xの各々と特定部22Cが特定する曲げ剛性Stiff(x)との関係が設定される。すなわち、図9に示すように加圧体85から所定の外力FBを作用させたときのリードサンプル83の状態(変形)を観測し、観測の結果から各位置xにおける曲げ剛性Stiff(x)を算定する。図12は、リードサンプル83の位置xと曲げ剛性Stiff(x)とについて実測された結果を示すグラフである。図12に示すように、曲げ剛性Stiff(x)は、位置xに応じたリードサンプル83の横断面の変化に起因して、位置xに対して非線形に変化する。
以上の試験の結果(図12)に基づいて、曲げ剛性Stiff(x)と位置xとについて実測された結果を近似する関数FNC_C(Stiff(x)=FNC_C(x))が作成される。図11の特定部22Cは関数FNC_Cを保持し、入力される位置xを関数FNC_Cに代入することで曲げ剛性Stiff(x)を算定する。したがって、特定部22Cが算定する曲げ剛性Stiff(x)は、図12のように位置xに対して非線形に変化する。以上のように、本形態においては、各位置xにおける曲げ剛性Stiff(x)が実測値に基づいて算定されるから、現実のリードの挙動を忠実に反映した自然な楽音を合成できるという利点がある。
<C:第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態に係る弾性値特定部20の構成を示すブロック図である。図13に示すように、弾性値特定部20は、特定部22と選択部23とを具備する。特定部22は、第1実施形態の特定部22Aや特定部22Bおよび第2実施形態の特定部22Cの何れかに相当し、入力値v(FA,FB,x)に応じた弾性値e(klip_sample,kreed_sample,Stiff(x))を特定して出力する。
特定部22は、入力値vと弾性値eとについて相異なる関係を定義するM個の関数FNC(1)〜FNC(M)を保持する。例えば、図6の特定部22Aを特定部22として本形態を適用した場合、弾性特性や形態が相違するM個の唇サンプルの各々を対象としてバネ定数klip_sampleと強度FAおよび位置xとの関係を実測し、各回の実測の結果を近似するM個の関数FNC_A(1)〜FNC_A(M)が作成される。同様に、図6の特定部22Bを特定部22とした場合、弾性特性や形態が相違するM個のリードサンプルについての各回の実測の結果(バネ定数kreed_sampleと強度FBおよび位置xとの関係)を近似するようにM個の関数FNC_B(1)〜FNC_B(M)が作成される。さらに、図11の特定部22Cを特定部22とした場合、M個のリードサンプルの各々における曲げ剛性Stiff(x)の実測値を近似するようにM個の関数FNC_C(1)〜FNC_C(M)が作成される。
選択部23は、特定部22が保持するM個の関数FNC(1)〜FNC(M)の何れかを選択する。より具体的には、選択部23は、利用者による入力装置44の操作に応じて関数FNC(1)〜FNC(M)の何れかを選択する。例えば、製造者や型式が相違するM個のリードの何れかを利用者が入力装置44から指定すると、選択部23は、M個の関数FNC(1)〜FNC(M)のうち利用者が指定したリードに対応する関数FNC(利用者が指定したリードに特性が近いリードサンプルの実測値から設定された関数)を選択する。特定部22は、選択部23が選択した関数FNCに入力値vを代入することで弾性値eを算定する。
以上に説明したように、本形態においては、入力値vと弾性値eとの関係をM個の候補から可変に選択することでリードMRや唇MLの弾性特性が変更されるから、様々なリードや唇に対応した多様な合成音を生成することが可能となる。
<D:第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態に係る弾性値特定部20の構成を示すブロック図である。図14に示すように、本形態の弾性値特定部20は、特定部22と制御部24とを具備する。特定部22は、第3実施形態と同様に、第1実施形態の特定部22Aや特定部22Bおよび第2実施形態の特定部22Cの何れかに相当し、入力値v(FA,FB,x)に応じた弾性値e(klip_sample,kreed_sample,Stiff(x))を特定して出力する。
制御部24は、入力値vと弾性値eとの関係を可変に制御(すなわち編集)する。例えば、制御部24は、特定部22が保持する関数FNC(FNC_A,FNC_B,FNC_C)の内容を入力装置44に対する操作(利用者からの指示)に応じて変更する。さらに詳述すると以下の通りである。
本形態の演算処理装置10には表示装置48が接続される。制御部24は、入力値vと弾性値eとの関係を示す画像を、特定部22が保持する関数FNCに基づいて表示装置48に表示する。例えば、制御部24は、図8や図12に例示したようなグラフを表示装置48に表示させる。
利用者は、入力装置44を適宜に操作することで、表示装置48に表示されたグラフ(曲線)を編集する。例えば、利用者がマウスやタッチペンなどの入力装置44を操作してグラフ上の点(任意の点または所定の代表点)を移動すると、表示装置48に表示されたグラフは、移動後の点を通過する形状のグラフに変更される。制御部24は、特定部22の保持する関数FNCを、利用者による変更後のグラフに対応した新たな関数FNCに更新する。新たな関数FNCは、例えば、入力値vと弾性値eとの関係を表す演算式の各係数を利用者からの指示に応じて適宜に変更することで作成される。特定部22は、制御部24による更新後の関数FNCを利用して入力値vから弾性値eを特定する。
また、利用者は、入力装置44を操作することで関数FNCを新規に作成することが可能である。例えば、利用者が表示装置48の画面上に複数の点を指定すると、制御部24は、複数の点を通過する関数FNCを作成する。特定部22は、制御部24が作成した新たな関数FNCに基づいて入力値vから弾性値eを特定する。
以上のように本形態においては、入力値vと弾性値eとの関係が利用者からの指示に応じて変更されるから、合成音の特性を利用者が適宜に調整できるという利点がある。また、利用者からの指示に応じて関数FNCが新規に作成されるから、リードサンプルや唇サンプルがなくても多様な合成音を生成できるという利点がある。
なお、入力値vと弾性値eとの関係を利用者に編集させるための構成は任意である。例えば、関数FNCを定義する複数の係数を表示装置48に表示させて利用者に変更させる構成や、関数FNCの複数の係数および関数FNCのグラフの双方を表示装置48に表示させ、利用者が係数を変更すると、表示装置48による表示を変更後の関数FNCのグラフに更新するとった構成も採用される。
<E:変形例>
以上の各形態には以下に例示するような様々な変形を加えることができる。なお、以下の例示から2以上の態様を任意に選択して組合わせてもよい。
(1)変形例1
以上の各形態においては、関数FNCを使用した演算によって入力値vから弾性値eを算定したが、入力値vから弾性値eを特定するための方法は適宜に変更される。例えば、入力値vと弾性値eとを対応付けるテーブルを特定部22に設定した構成も好適である。特定部22は、入力値vに対応する弾性値eをテーブルから探索して出力する。第3実施形態においては、入力値vと弾性値eとの対応が相違するM個のテーブルの何れかを選択部23が選択する。すなわち、選択部23は、入力値vと弾性値eとについて設定された複数種の関係(関数FNCやテーブル)の何れかを選択する手段であればよい。また、第4実施形態においては、利用者からの指示に応じて制御部24はテーブルの内容(各入力値vに対応する弾性値e)を変更する。すなわち、制御部24は、入力値vと弾性値eとの関係を可変に制御(編集)する手段であれば足りる。
(2)変形例2
弾性値eの内容は適宜に変更される。例えば、バネ定数klip_sampleを位置xおよび強度FAの一方のみに依存する変数とした構成や、バネ定数kreed_sampleを位置xおよび強度FBの一方のみに依存する変数とした構成も採用される。また、第2実施形態における曲げ剛性Stiff(x)を、リードに作用する外力に依存する変数とした構成も好適である。以上のように本形態における弾性値eは、リード(またはリードサンプル)や演奏者の唇(または唇サンプル)の弾性特性の指標となる数値であれば足り、具体的な内容は合成部14による演算の内容(物理モデルの構成)に応じて適宜に変更される。
(3)変形例3
以上の各形態においては、弾性値特定部20に指示される強度FAや強度FBを入力装置44から入力したが、強度FAや強度FBを設定する方法は任意である。例えば、パラメータ変換部26が生成した押圧力flp(x)を強度FAとして弾性値特定部20に指示する構成や、リード模擬部31が算定した外部力fex(x)を強度FBとして弾性値特定部20に指示する構成、あるいは、特定部22Aと特定部22Bと特定部22Cとのうちの何れかひとつのみを弾性値特定部20が含む構成も採用される。また、以上の各形態においては唇サンプルやリードサンプルを対象とした実測の結果に基づいて関数FNC(またはテーブル)を設定したが、実際の演奏者の唇や実際の管楽器のリードを対象とした実測の結果に基づいて関数FNC(またはテーブル)を設定してもよい。
(4)変形例4
以上の各形態のようにリードMRが比例限界の範囲外にて変位する場合(すなわち弾性値eが可変値である場合)を想定すると、式A1から算定されるリードMRの変位y0(xf)は弾性値e(例えば曲げ剛性Stiff(x))に対して非線形に変化する。そこで、設定部12の設定した曲げ剛性Stiff(x)に対して非線形に変化するように、図4の第1演算部311が、曲げ剛性Stiff(x)から変位y0(xf)を算定する構成も採用される。さらに詳述すると、第1演算部311は、曲げ剛性Stiff(x)に対して変位y0(xf)が非線形に変化するように曲げ剛性Stiff(x)と変位y0(xf)との関係を定義する関数やテーブルを押圧力flip(x)の数値毎に保持する。そして、第1演算部311は、設定部12が設定した押圧力flip(x)に対応した関係を選択したうえで、設定部12が設定した曲げ剛性Stiff(x)に対して当該関係のもとで対応する変位y0(xf)を特定する。第1演算部311が特定した変位y0(xf)は、第1実施形態と同様に、運動方程式BにおけるリードMRの変位y(x,t)の初期値として第2演算部312にて使用される。
演奏者の唇MLが比例限界の範囲外にて変位する場合(すなわち弾性値eが可変値である場合)にも同様に、式A2から算定される唇MLの変位yb(xf)は弾性値e(例えばバネ定数の分布klip(x))に対して非線形に変化する。したがって、設定部12の設定したバネ定数の分布klip(x)に対して非線形に変化するように、図4の第1演算部311が、バネ定数の分布klip(x)から変位yb(xf)を算定する構成も採用される。例えば、第1演算部311は、バネ定数の分布klip(x)に対して変位yb(xf)が非線形に変化するようにバネ定数の分布klip(x)と変位yb(xf)との関係を定義する関数やテーブルを押圧力flip(x)および唇MLの厚さdlip(x)の各数値の組合せ毎に保持する。そして、第1演算部311は、設定部12が設定した押圧力flip(x)および厚さdlip(x)に対応した関係を選択したうえで、設定部12が設定したバネ定数の分布klip(x)に対して当該関係のもとで対応する変位yb(xf)を特定する。第1演算部311が特定した変位yb(xf)は、第1実施形態と同様に、運動方程式Bにおける唇MLの変位yb(x)の初期値として第2演算部312にて使用される。なお、本変形例においては、弾性値eが入力値vに対して非線形に変化するか否かは不問である。また、第4実施形態と同様に、曲げ剛性Stiff(x)と変位y0(xf)との関係やバネ定数の分布klip(x)と変位yb(xf)との関係が利用者からの指示に応じて編集または作成される構成も好適に採用される。
本発明の実施形態に係る楽音合成装置のブロック図である。 リード模擬部が模擬する管楽器のリードの近傍を示す概念図である。 管楽器の吹奏時における唇とリードとの接触の模式図である。 リード模擬部のブロック図である。 X方向の位置の離散化について説明する概念図である。 弾性値特定部のブロック図である。 唇サンプルの弾性値(バネ定数)を実測する構成の模式図である。 唇サンプルに作用する外力とバネ定数との関係を示すグラフである。 リードサンプルの弾性値(バネ定数)を実測する構成の模式図である。 パラメータ変換部のブロック図である。 第2実施形態における弾性値特定部のブロック図である。 リードサンプルにおける位置と曲げ剛性との関係を示すグラフである。 第3実施形態における弾性値特定部のブロック図である。 第4実施形態における弾性値特定部のブロック図である。
符号の説明
100……楽音合成装置、10……演算処理装置、12……設定部、14……合成部、20……弾性値特定部、22(22A,22B,22C)……特定部、23……選択部、24……制御部、26……パラメータ変換部、31……リード模擬部、311……第1演算部、312……第2演算部、313……第3演算部、314……第4演算部、32……範囲制限部、33……管体模擬部、42……記憶装置、44……入力装置、46……放音装置、48……表示装置。

Claims (8)

  1. 管楽器のリードにおける長手方向の位置に対して非線形に変化するように前記リードの各位置の弾性値を特定する第1特定手段と、
    前記第1特定手段が特定した弾性値に応じた複数の変数に基づいて前記管楽器の楽音を合成する楽音合成手段と
    を具備する楽音合成装置。
  2. 前記第1入力値と前記第1特定手段が特定する弾性値との関係は実測値に基づいて設定される
    請求項1の楽音合成装置。
  3. 前記第1入力値と前記第1特定手段が特定する弾性値とについて設定された複数種の関係の何れかを選択する選択手段を具備し、
    前記第1特定手段は、前記選択手段が選択した関係において前記第1入力値に対応する前記リードの弾性値を特定する
    請求項1または請求項2の楽音合成装置。
  4. 前記第1入力値と前記第1特定手段が特定する弾性値との関係を利用者からの指示に応じて可変に制御する制御手段
    を具備する請求項1から請求項3の何れかの楽音合成装置。
  5. 前記リードに接触する演奏者の唇における前記リードの長手方向の位置に対して非線形に変化するように前記唇の各位置の弾性値を特定する第2特定手段を具備し、
    前記楽音合成手段は、前記第1特定手段が特定した前記リードの弾性値と前記第2特定手段が特定した前記唇の弾性値とに応じた複数の変数に基づいて楽音を合成する
    請求項1から請求項4の何れかの楽音合成装置。
  6. 前記第1特定手段が特定した前記リードの各位置の弾性値から、前記リードの長手方向における内部抵抗の分布を算定するパラメータ変換手段を具備し、
    前記楽音合成手段は、前記パラメータ変換手段が算定した内部抵抗の分布を含む複数の変数に基づいて前記管楽器の楽音を合成する
    請求項1から請求項5の何れかの楽音合成装置。
  7. 前記第2特定手段が特定した前記唇の各位置の弾性値から、前記リードの長手方向における前記唇の内部抵抗の分布を算定するパラメータ変換手段を具備し、
    前記楽音合成手段は、前記パラメータ変換手段が算定した内部抵抗の分布を含む複数の変数に基づいて前記管楽器の楽音を合成する
    請求項5の楽音合成装置。
  8. 管楽器のリードにおける長手方向の位置に対して非線形に変化するように前記リードの各位置の弾性値を特定する第1特定処理と、
    前記第1特定処理で特定した弾性値に応じた複数の変数に基づいて前記管楽器の楽音を合成する楽音合成処理と
    をコンピュータに実行させるプログラム。
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