JP5194807B2 - 高降伏強度・高靭性厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高降伏強度・高靭性厚鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、優れた、脆性き裂伝播停止性能および溶接熱影響部靭性を備えた高降伏強度・高靭性厚鋼板の製造方法に関し、特に天然ガスや原油の輸送用ラインパイプ素材として好適なものに関する。
天然ガスや原油の輸送に用いられるラインパイプは、高圧化や輸送効率の向上のため、年々高強度、厚肉化されているが、敷設環境や用途に応じた特性を満足することが要求される。
天然ガスを輸送する海底パイプラインシステムでは、敷設深度が深くなる程、敷設時の耐座屈強度、操業時の耐水圧強度および潮流に対する安全性の観点から、特に厚肉のラインパイプを使用することが求められる。
また、ガス田および油田の開発は、対象がロシアやアラスカなどの酷寒地域や北海などの寒冷海域にまで拡大する傾向があり、敷設されるラインパイプには母材、溶接熱影響部の低温靭性や母材の脆性き裂伝播特性に優れることが要求される。
このような要望に対して種々の先行技術が開示され、例えば、特許文献1には、地盤変動などによるパイプラインの変形許容度が大きい鋼管およびその素材の製造方法が記載されている。
高変形能を実現するため複相組織とし、複相組織化によるシャルピー吸収エネルギの低下と、生産性の低下を補うため、熱間圧延後2段の加速冷却を行い、2段目の冷却停止温度を300℃以下とすることで、ベイナイト相を主体とした低温変態組織中にフェライト相を微細分散させた組織とした、高強度化と高変形能を達成したAPIX60〜100級高強度鋼板が開示されている。
また、特許文献2には、天然ガス等の気体の輸送用ラインパイプに必要とされる不安定延性破壊伝播停止特性に優れたAPIX70級高強度高靭性ラインパイプ用鋼板の製造方法として、Ar点以上で熱間圧延を終了後、ただちに400℃以下まで加速冷却し、主要組織を高強度なベイナイト組織とすることが開示されている。
特許第3869747号公報 特開昭62−4826号公報
ところで、ラインパイプの高強度化は進展し、寒冷地域に敷設されるラインパイプの場合、パイプラインとしての変形性能、優れた脆性き裂伝播特性や母材・溶接熱影響部の低温靭性を損なわずに必要な強度を確保することが要求される。特に、天然ガスパイプラインなどでは、降伏強度を基準に操業圧力を決定するため、輸送効率を高めるためには引張強度だけでなく降伏強度も十分に確保する必要がある。
しかしながら、特許文献1記載のように弱加速冷却から得られる軟質なフェライト組織と強加速冷却の停止温度を低くすることにより得られる硬質なベイナイトあるいはマルテンサイト組織からなる複相組織鋼は、引張強度に比べ降伏強度が著しく低下する現象がみられる。
十分な降伏強度を確保するため、母材を高成分組成化した場合、合金コストの増大のみならず母材および溶接熱影響部靭性の劣化が懸念されるようになる。
また、特許文献2記載の、Ar点以上から強冷却することで得られる硬質なベイナイト組織からなる単相組織は、特許文献1記載の複相組織にみられる降伏強度の低下は生じないが、Ar点近傍での熱間圧延の実施が困難なため、集合組織が発達しない。
そのため、各種脆性き裂伝播停止性能評価試験でもセパレーションが十分に発生せず、優れた脆性破壊伝播停止性能を確保することが困難である。
そこで、本発明は、パイプラインとしての変形性能を損なわずに、優れた脆性き裂伝播停止性能および溶接熱影響部靭性を備えた、寒冷地での使用に好適な、降伏強度が470Mpa以上、引張強度が600MPa以上で板厚6mm以上の高張力厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、セパレーションにより、優れた脆性き裂伝播停止性能が得られる複相組織鋼について、引張強度:600MPa以上を得ることを前提に、1.溶接熱影響部の靭性向上、2.高降伏点化について鋭意検討を行い、以下の知見を得た。
[溶接熱影響部の靭性向上]
1.引張強度600MPa以上が得られる組成のラインパイプ用厚鋼板を内外面2層から溶接した場合、溶融線近傍の溶接熱影響部は、硬質第2相として島状マルテンサイトを含む粗い上部ベイナイト組織で、島状マルテンサイト量を減少させることが靭性向上に有効である。
2.島状マルテンサイトの生成は、鋼材のSi、Nb、Vを低減することで抑制でき、Siを実質的に含有しないレベルまで低減することで、上部ベイナイトに含まれる島状マルテンサイトの割合を大幅に低減することが可能である。
3.溶接熱影響部の上部ベイナイト組織に含まれる島状マルテンサイトの割合を3%以下にすることで、溶接熱影響部靭性は大幅に向上する。
4.また、鋼中のP量を低減することで溶接熱影響部の硬さが低減し、溶接熱影響部靭性が向上する。特に、P量を0.006mass%以下にすると溶接熱影響部靭性は著しく改善される。
[高降伏点化]
5.二相域圧延後、加速冷却を低温で停止して得られる硬質な第2相と軟質なフェライトからなる複相組織鋼は、降伏挙動がリューダース型からラウンドハウス型に移行し、引張強度に比べて降伏強度が低下する。
6.しかし、ラウンドハウス型の降伏挙動を示す複相組織鋼であっても、低温再加熱などのひずみ時効処理により、リューダース型の降伏挙動を示すようになり、降伏強度が向上する。
7.加速冷却後ただちに急速加熱により再加熱処理を行うと、同様の現象が起こり、特に150℃以上に昇温するとリューダース型に移行し、降伏強度が向上する。
8.加速冷却後ただちに急速加熱により再加熱処理を行って得られる複相組織鋼の場合、再加熱処理後は、リューダース型の降伏挙動を示すが、UOEラインパイプ作製の際に塑性加工が加わることにより、ラインパイプの耐座屈性能を向上させる、ラウンドハウス型の降伏挙動となる。
9.但し、加速冷却後の再加熱処理をUOEプロセス後に行った場合には、高降伏強度は達成されるものの、降伏挙動がリューダース型であるために耐座屈性能が十分に得られない。なおラインパイプ母材の降伏強度は、鋼板段階での降伏挙動の相違に関わらず鋼板の公称ひずみ0.5%時の公称応力(0.5%YS)と高い相関があることが知られている。
本発明は、以上の知見をもとにさらに検討を加えてなされたものであり、すなわち本発明は、
(1) 成分組成が、質量%で
C:0.03〜0.08%
Si:0.05%以下
Mn:1.0〜2.0%
P:0.006%以下
S:0.005%以下
Al:0.02〜0.05%
Nb:0.005〜0.025%
Ti:0.005〜0.030%
N:0.001〜0.010%
さらに
Cu:0.10〜0.60%
Ni:0.10〜1.20%
Cr:0.05〜0.40%
Mo:0.05〜0.40%
の1種または2種以上を含有し、
0.30≦Ceq≦0.45
を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、1000〜1200℃に加熱後、900℃以下のオーステナイト未再結晶温度域で累積圧下率が50%以上、二相域で累積圧下率が10〜50%で圧延終了温度が660℃以上となる熱間圧延を行った後、ただちに冷却速度10〜80℃/sで、冷却停止温度400℃以下の冷却を開始し、冷却停止後、ただちに冷却停止温度超え、かつ150℃以上450℃未満の温度範囲に再加熱することを特徴とする高降伏強度・高靱性厚鋼板の製造方法。
但し、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14、
各元素は含有量(質量%)で、含有しない元素は0とする。
(2)成分組成にさらに、質量%で
Zr:0.0005〜0.0300%
Ca:0.0005〜0.0100%
Mg:0.0005〜0.0100%
REM:0.0005〜0.0200%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)記載の高降伏強度・高靱性厚
鋼板の製造方法。
本発明によれば、天然ガスや原油の輸送用として好適な、脆性き裂伝播停止性能および低温での母材、溶接熱影響部靭性に優れる引張強さが600MPa以上、降伏強さが470MPa以上の高強度・高靭性のラインパイプ用厚鋼板の製造が可能となり産業上極めて有効である。
本発明は、鋼板の成分組成と製造条件を規定する。以下、限定理由を説明する。
[成分組成]以下の説明において%は質量%とする。
C:0.03〜0.08%
Cは低温変態組織においては、過飽和に固溶することで強度上昇に寄与する。この効果を得るためには、0.03%以上の添加が必要であるが、0.08%を超えて添加すると大入熱溶接熱影響部の硬度上昇や組織中に島状マルテンサイトを生成し靭性が劣化するため、上限を0.08%とする。
Si:0.05%以下
Siは脱酸材として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、溶接熱影響部の組織が上部ベイナイトであるときは、島状マルテンサイトの生成を助長し、溶接熱影響部靭性を著しく劣化させる。本発明では、Siを実質的に含まないようにすることで、溶接熱影響部が上部ベイナイトである場合の溶接熱影響部靭性が著しく向上するという知見を得た。従って、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容する。好ましくは0.04%未満とする。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、1.0%以上の添加によりその効果が得られるが、連続鋳造プロセスを適用した場合、中心偏析部の濃度上昇が著しく、2.0%を超える添加を行うと偏析部の靭性が劣化するため、上限を2.0%とする。
P:0.006%以下
Pは固溶強化により強度を増加させる元素であるが、母材および溶接熱影響部の靭性や溶接性を劣化させるため、一般的にその含有量を低減することが望まれる。本発明では、Pを低減することにより溶接熱影響部の硬さを低減させ、溶接熱影響部靭性を向上させる。特に、0.006%以下にすることで溶接熱影響部靭性を著しく改善するため、Pは0.006%以下とした。
S:0.005%以下
Sは鋼中に不可避的不純物として存在する。特に、中心偏析部での偏析が著しい元素であり、母材の偏析部起因の靱性劣化を助長する。従って、Sはできるだけ低減することが望ましいが、製鋼プロセス上の制約から0.005%までは許容する。
Al:0.02〜0.05%
Alは脱酸元素として作用する。0.02%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.05%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性劣化の原因となるため上限を0.05%とする。
Nb:0.005〜0.025%
Nbは、熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果があり、特に900℃まで未再結晶領域とするためには、0.005%以上の添加が必要である。一方で、Nbの添加量を増大させると溶接熱影響部、特に大入熱溶接の溶接熱影響部に島状マルテンサイトを生成し、さらに多層溶接時の再熱溶接熱影響部では析出脆化を引き起こして靭性が著しく劣化するため、上限を0.025%とする。Nbの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましい。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量低減に有効である。析出したTiNはピンニング効果で熱間圧延前のスラブ加熱時の母材および溶接熱影響部、特に大入熱溶接の溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制して、母材および溶接熱影響部の靭性の向上に寄与する。この効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.030%を超えて添加すると、粗大化したTiNや炭化物の析出により母材および溶接熱影響部靭性が劣化するようになるため上限を0.030%とする。
N:0.001〜0.010%
Nは通常鋼中に不可避的不純物として存在するが、前述の通りTi添加を行うことで、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成するため規定する。必要とするピンニング効果を得るためには、0.001%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.010%を超える場合は、固溶Nの増大による母材および溶接熱影響部の靭性劣化が著しいため、上限を0.010%とする。
本発明では、さらに、Cu、Ni、Cr、Moの1種または2種以上を添加する。Cu、Ni、Cr、Moはいずれも焼入れ性向上元素として作用し、これらの元素の1種または2種以上の添加することで板厚6mm以上の厚鋼板において高強度化が可能となる。
Cu:0.10〜0.60%
Cuは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.60%とする。
Ni:0.10〜1.20%
Niは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。特に多量に添加しても他の元素に比べ靭性劣化が小さく、強靭化には有効な元素である。しかし、高価な元素で、1.20%を超えて添加すると焼入れ性が過剰に増加して溶接熱影響部靭性が劣化するので、添加する場合は、上限を1.20%とする。
Cr:0.05〜0.40%
Crは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.40%とする。
Mo:0.05〜0.40%
Moは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、Moの添加量を増大させると大入熱溶接部を靭性を劣化させるようになる。また、多層溶接時の再熱溶接熱影響部で析出脆化を引き起こし靭性が劣化するようになるため、添加する場合は、上限を0.40%とする。Moの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましい。
Ceq:0.30〜0.45
Ceq(=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14.各元素は含有量(質量%)で、含有しない元素は0とする)は、C、Mnなどの焼入れ性元素の効果を見積もる指標として用いることができ、強度確保の観点から0.30以上に制御することが望ましい。一方で、0.45を超えると靭性や溶接性を損なうこととなるので上限を0.45%とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、さらに靭性を向上させる場合、Zr、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を添加することができる。
Zr、Ca、Mg、REMは、いずれも鋼中の非金属介在物であるMnSの形態制御、あるいは酸化物あるいは窒化物を形成し、主に溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化をピンニング効果で抑制する。
Zr:0.0005〜0.0300%
Zrは、鋼中で炭窒化物を形成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0300%を超えて添加すると鋼中の清浄度が著しく低下し、靭性が低下するようになるので、添加する場合は0.0005〜0.0300%とする。
Ca:0.0005〜0.0100%
Caは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.0100%を超えて添加するとCaO−CaSのクラスタを形成し、靭性を劣化させるようになるので、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
Mg:0.0005〜0.0100%
Mgは、製鋼過程で鋼中に微細な酸化物として生成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0100%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性が低下するようになるため、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
REM:0.0005〜0.0200%
REMは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素であり、かつ0.0200%を超えて添加しても効果が飽和するため、添加する場合は、0.0005〜0.0200%とする。
本発明に係る鋼は上述した成分組成を含有し、残部Feおよび不可避的不純物とする。尚、本発明ではVを不可避的不純物として扱い、上限を0.005%に管理する。VはNbと同様に添加量が増大すると大入熱溶接熱影響部組織に島状マルテンサイトを生成し、さらに多層溶接時の再熱溶接熱影響部では析出脆化を引き起こすことにより靭性が著しく劣化させるため、不可避的不純物としての上限を0.005%とする。
Vは熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果を有するが、その効果はNbに比べて小さくNbを0.005%以上含有する本発明においては、Vを添加する必要はない。
[製造条件]
製造方法の限定理由について説明する。
スラブ加熱温度:1000〜1200℃
スラブをオーステナイト化しつつ、最低限のNbの固溶量を得るための下限温度は1000℃である。一方で、1200℃を超える温度までスラブを加熱すると、TiNによるピンニングでも、オーステナイト粒成長が著しく、母材靭性が劣化するため、上限を1200℃とする。
900℃以下の温度域での累積圧下率:50%以上
Nb添加によって900℃以下はオーステナイト未再結晶温度領域である。この温度域以下において累積で大圧下を行うことにより、オーステナイト粒を伸展させ、特に板厚方向で細粒とし母材靭性を向上させる。
二相温度域での累積圧下率:10〜50%
Ar点〜Ar点のフェライト−オーステナイト二相温度域で熱間圧延を行うことによってオーステナイト未再結晶域圧延で細粒化したオーステナイトをさらに微細化する。
更に、フェライトに加工を加えることによってフェライト強化による高強度化とDWTTなどの脆性き裂伝播停止性能評価試験で、試験片の破面にセパレーションを発生させ、優れた脆性き裂伝播停止性能とすることが可能となる。
二相域の累積圧下量が10%未満では、セパレーションの発生が十分でなく脆性き裂伝播停止特性の向上が得られない。一方、累積圧下率が50%を超えると、フェライトへの過剰な加工によりフェライトが脆化し、母材靭性が劣化するため、上限を50%とする。
圧延終了温度:660℃以上
圧延終了温度が660℃未満の場合、フェライト変態が進行して加速冷却の効果が小さくなり、かつフェライトが粗大化することにより母材靭性が劣化するため、660℃以上とする。
冷却速度:10〜80℃/s
圧延終了後に生成するフェライトは加工されていないため、強度、靭性確保の観点からは有害である。従って、圧延終了後ただちに10℃/s以上の冷却速度で加速冷却を行い、未変態オーステナイトをベイナイト組織に変態させてフェライトの発生を防止し、母材靭性を損なわずに強度を向上させる。一方で、80℃/sを超える冷却速度では、鋼板表面近傍でマルテンサイト変態が生じ、鋼板の強度は上昇するものの靭性劣化とくにシャルピー吸収エネルギの低下が著しいため、上限を80℃/sとする。
冷却停止温度:400℃以下
引張強さ600MPa以上とするため、冷却停止温度400℃以下として鋼板のミクロ組織をベイナイトやマルテンサイト組織とする。冷却停止温度が400℃を超えると変態温度が高く、十分に鋼板を高強度化できないため、上限を400℃とする。
再加熱処理
本発明において、再加熱処理は、重要な熱処理で、複相組織を有する、加速冷却ままの鋼板から引張強度を大きく低下させず、降伏強度を向上させるために、加速冷却後、直ちに急速加熱により、再加熱する。
二相域圧延した鋼を、加速冷却後、直ちに急速加熱により、再加熱すると、複相組織鋼に低温再加熱などのひずみ時効処理を施した場合と同じ効果が得られ、ラウンドハウス型の降伏挙動から、リューダース型の降伏挙動を示すようになり、降伏強度が向上する。
本発明に係る鋼は、再加熱処理後、UOEラインパイプ作製の際に塑性加工が加わるため、ラインパイプとしては好ましいとされるラウンドハウス型の降伏挙動が得られる。そのため、再加熱処理は、省力化、生産性の観点から望ましい、UOEプロセス適用前に行う。尚、加速冷却後の再加熱処理をUOEプロセス後に行った場合には、高降伏強度は達成されるものの、降伏挙動がリューダース型であるためにラインパイプとして耐座屈性能が十分に得られない。
鋼板の降伏強度を向上させるため、ひずみ時効と同等の効果を得るためには、150℃以上に再加熱することが必要である。一方で、板厚中央での再加熱温度が450℃を超えると焼戻し効果により引張強度の低下が顕著になるため、上限を450℃未満とする。板厚中央が430℃以下となる加熱条件がより好ましい。
表1に示す化学成分の溶鋼を真空溶解炉で溶製し、連続鋳造法により250mm厚のスラブとし、再加熱、熱間圧延後、加速冷却を行い、その後直ちに空冷もしくは誘導加熱による再加熱処理を行って33mmの厚鋼板を得た。表2に得られた鋼板の製造条件を示す。
得られた厚鋼板について、鋼板の板厚中央L方向採取の丸棒引張試験を行い、降伏強度、引張強度、降伏比(YR)を測定した。なお、降伏応力は0.5%YSを採用した。
脆性き裂伝播停止特性はDWTT試験で評価した。DWTTの延性破面率は、1/2t位置から採取した19mmに減厚したDWTT試験片を採取し、−47℃で2本試験を行い、得られた延性破面率の平均値を求めた。
また、鋼板にV溝の開先加工を施し、V溝に4電極サブマージアーク溶接で溶接を行い溶接部を作製した。なお、その際の溶接入熱は、すべての鋼板で8.0kJ/mmとした。
得られた溶接部からノッチ底に占める溶接金属と溶接熱影響部の割合が1:1になるようにJIS Z2202規格準拠のVノッチシャルピー試験片を採取し、JIS Z2242規格に準拠したシャルピー試験を実施し、HAZ靱性を求めた。シャルピー試験は、試験温度−30度で3本ずつ行い、その平均値および最低値を求めた。
以上の試験において、本発明範囲を降伏強度:470Mpa以上、引張強度:600MPa以上、DWTT破面率(平均値):80%以上、HAZ靱性の最低値:60J以上とした。
表3に試験結果を示す。本発明例(鋼板No.1、2、7、8、13、14、15、16)は、いずれも降伏強度が470Mpa以上、引張強度が600MPa以上、DWTT破面率が80%以上、HAZ靱性の最低値が60J以上を達成しているのに対し、本発明の範囲を外れる比較例(鋼板No.3〜5、10〜12、18〜22)は、これらのいずれかの特性を満たしていない。
鋼板No.3は、冷却停止温度が高いため引張強度が低い。鋼板No.17は、加速冷却の冷却速度が遅いため、引張強度が低い。鋼板No.6、12は、再加熱処理を実施していないため、降伏強度が低い。
鋼板No.4はスラブ加熱温度が高いため、鋼板No.5は900℃以下での圧下率が十分でないため、鋼板No.11はに相域での圧下率が過剰であるため、DWTT性能が劣化している。鋼板No.18〜22は、母材成分が本発明の範囲から外れるため、HAZ靱性が劣化している。
Figure 0005194807
Figure 0005194807
Figure 0005194807

Claims (2)

  1. 成分組成が、質量%で
    C:0.03〜0.08%
    Si:0.05%以下
    Mn:1.0〜2.0%
    P:0.006%以下
    S:0.005%以下
    Al:0.02〜0.05%
    Nb:0.005〜0.025%
    Ti:0.005〜0.030%
    N:0.001〜0.010%
    さらに
    Cu:0.10〜0.60%
    Ni:0.10〜1.20%
    Cr:0.05〜0.40%
    Mo:0.05〜0.40%
    の1種または2種以上を含有し、
    0.30≦Ceq≦0.45
    を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、1000〜1200℃に加熱後、900℃以下のオーステナイト未再結晶温度域で累積圧下率が50%以上、二相域で累積圧下率が10〜50%で圧延終了温度が660℃以上となる熱間圧延を行った後、ただちに冷却速度10〜80℃/sで、冷却停止温度400℃以下の冷却を開始し、冷却停止後、ただちに冷却停止温度超え、かつ150℃以上450℃未満の温度範囲に再加熱することを特徴とする高降伏強度・高靱性厚鋼板の製造方法。
    但し、Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14、
    各元素は含有量(質量%)で、含有しない元素は0とする。
  2. 成分組成にさらに、質量%で
    Zr:0.0005〜0.0300%
    Ca:0.0005〜0.0100%
    Mg:0.0005〜0.0100%
    REM:0.0005〜0.0200%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の高降伏強度・高靱性厚
    鋼板の製造方法。
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