以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンをその表面シート側からみた平面図が示されている。図2は、図1におけるI−I線断面を模式的に示した図である。
本実施形態のナプキン1は、図1に示すように、平面視して縦長の形状のものである。ナプキン1は、肌当接面側に位置する表面シート10、非肌当接面側に位置する裏面シート11、該両シート間10,11に介在配置された吸収体12を備えている。吸収体12は平面視して縦長の形状をしている。表面シート10及び裏面シート11は、吸収体12の前後端縁及び左右側縁から外方にそれぞれ延出しており、延出した両シート10,11は、接着剤やヒートシール等の接合手段によって互いに接合固定されている。また、ナプキン1の幅方向中央域における非肌当接面、即ち裏面シート11の表面には、ナプキン1を下着に固定するための粘着部(図示せず)が、ナプキン1の長手方向に延びるように形成されている。
ナプキン1は、着用時に着用者の***部に対向配置される***部対向部Aを有している。更に***部対向部Aから前後方向に延びる前方部B及び後方部Cを有している。前方部Bは、***部対向部Aよりも着用者の腹側(前方)に配される。後方部Cは、***部対向部Aよりも着用者の背側(後方)に配される。本実施形態における***部対向部Aは、ナプキン1の長手方向中央部に位置している。
本明細書において、「長手方向」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材の長辺に沿う方向(図1では上下方向)であり、「幅方向」は、該長手方向と直交する方向(図1では左右方向)である。また、「肌当接面」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に下着側(着用者の肌側とは反対側)に向けられる面である。
図5には、表面シート10の要部拡大図が示されている。図6は、図5におけるII−II線断面図である。図5中、Yで示す方向がナプキン1の長手方向であり、Xで示す方向がナプキン1の幅方向である。図5及び図6に示す表面シート10は、第1の面10aと、これに対向する第2の面10bとを有する。第1の面10aは、表面シート10が、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれたときに、着用者の肌側を向く面である。第2の面10bは、吸収性物品の吸収体側を向く面である。表面シート10は、ナプキン1の長手方向Yに延びる畝部20及び溝部30を交互に有する不織布からなる。畝部20及び溝部30は、それらの延びる方向Yと直交する方向Xに亘って交互に配列されている。
畝部20は、表面シート10の構成繊維で満たされている。つまり畝部20内には空洞は存在していない。同様に、溝部30のうち、後述する開孔31が形成されていない部位は、表面シート10の構成繊維で満たされている。但し、後述するように、畝部20の繊維量と、溝部30の繊維量とは相違しており、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなされている。
畝部20は、表面シート10における相対的に厚みの大きな部位から構成されており、溝部30は、表面シート10における相対的に厚みの小さな部位から構成されている。その結果、畝部20の実質厚みは、溝部30の厚みよりも大きい。ここで実質厚みとは、表面シート10の裏面から各々の最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、表面シート10の繊維が存在する部分の長さを意味する。
図6に示すように、畝部20は、その延びる方向と直交する方向(図中、Xで示す方向)での断面において、第1の面10aの側は、上に凸の滑らかな曲線を描く輪郭となっている。畝部20における第1の面10aの側は、第2の面10bの側よりも高く盛り上がっており、これが周期的に連続している。これによって第1の面10aの側は、X方向に沿って波形形状になっている。従って、表面シート10の第1の面10a側が着用者の肌と接する場合には、畝部20の頂部及びその近傍の領域が部分的に接触することになり、全面接触に起因する蒸れによるべたつき感や、こすれに起因する刺激感が低減される。また、着用者から***された液が、着用者の肌に付着しづらくなる。
一方、第2の面10bの側は、下に凸の滑らかで且つ緩やかな曲線を描く輪郭となっている。したがって表面シート10の吸収体対向面のうち、畝部20に位置する部位は、表面シート10の下側に配される吸収体12と、面で以て接触するようになる。これによって、表面シート10に***された液は、該表面シート10における畝部20を透過して、円滑に吸収体12へと移行することが可能になる。その結果、表面シート10の第1の面10aは、さらっとしたドライ感の高いものとなる。
畝部20の形状は上述の形状に限られず、例えば図7(a)に示すように、第2の面10bの側が、上に凸の滑らかでかつ緩やかな曲線を描く輪郭となっている場合や、図7(b)に示すように、第2の面10bの側が平坦である場合もある。このような形状の相違は、主として表面シート10の製造条件に依存する。
図6に示すように、畝部20は、X方向での断面において、第1の面10a側に頂部21を有し、この部位において実質厚みが最も大きくなっている。そして、X方向に関し、頂部21から離れるに連れ実質厚みが漸減している。したがって、表面シート10は、そのX方向に沿ってみたときに、実質厚みが周期的に変化したものとなっている。図には示していないが、畝部20は、その延びる方向(図6中、紙面と直交する方向)において、頂部21における実質厚みが何れの位置においてもほぼ同じになっている。本実施形態の表面シート10において、畝部20と溝部30との間に明確な境界部は存在せず、一般に、X方向に関して隣り合う2つの頂部21間に位置する最も実質厚みの小さい部位及びその近傍の部位が溝部30となる。畝部20と溝部30との間に明確な境界部が存在する場合、例えば図6に示す如き、畝部20の延びる方向と直交する方向での断面視において、畝部20での断面曲線形状が溝部30では断面直線形状になるなど、断面形状の変化が明確な場合はその変化点をもって畝部20と溝部30との境界部とすることができるが、畝部20と溝部30との境界をより明確に定義する場合には、畝部20の頂部21における見掛け厚みの1/2の厚みの位置を、畝部20と溝部30との境界部とする。
畝部20の見掛け厚みは、表面シート10の肌触りを良好にする観点から、好ましくは0.3〜5mmであり、更に好ましくは0.5〜2.5mmである。畝部20と溝部30との高低差D(図6参照)は、表面シート10のクッション性及び通気性を高め、更に液の拡散を制御する観点から、0.1〜3mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。畝部20及び溝部30の厚みや高低差Dは、マイクロスコープVH‐8000(キーエンス製)を用い、表面シート10の断面を50倍〜200倍に拡大観察して測定する。断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、表面シート10を切断して得る。
表面シート10のX方向における畝部20の幅は、肌触りと吸収性の観点から、1〜10mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。同様の観点から、表面シート10のX方向における溝部30の幅は、0.5〜7mmが好ましく、1〜3mmが好ましい。本実施形態においては、畝部20と溝部30は同じ幅で形成されているが、これに限られず例えば表面シート10のX方向の中央域における畝部20の幅を、側部域における畝部20の幅よりも広くしてもよい。あるいは、畝部20及び溝部30の幅をランダムにするなど、所望の形態とすることができる。
畝部20の実質厚みは、見掛け厚みの60〜100%、特に70〜100%であることが好ましい。畝部20の実質厚みそれ自体は、最も大きい部位(頂部21)において0.2〜4mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。畝部20がこのような厚みであると、畝部20が倒れにくくなり、表面シート10のクッション性が良くなり、更に液の吸収性(液通過性)が良好となる。また、畝部20の実質厚みが、見掛け厚みより薄い場合、具体的には90%以下の場合には、ナプキン1の使用時に、該ナプキン1が湾曲形状に変形しても、表面シート10と吸収体12との間に生じる隙間が大きくなることが防止される。また表面シート10が着用者の肌に柔軟にフィットする。なお、溝部30の実質厚みは、0.1〜1mmである。
畝部20と溝部30では、実質的な坪量が異なっている。換言すれば、畝部20と溝部30では繊維量が異なっている。具体的には、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなっている。畝部20及び溝部30がこのように形成されていることで、畝部20を潰れにくくしつつ、柔軟に変形させることが可能となっている。即ち、ナプキン1の着用時においては、着用者の大腿部によって幅方向から加わる外力によって吸収体12の一部(幅方向中央部)が***し、これによって表面シート10の変形が起こる。このとき表面シート10は、繊維量が相対的に少ない(坪量が相対的に小さい)個々の溝部30を若干幅方向に伸ばしながら、該表面シート10の両側に位置する畝部20が外方に開くように変形する。このように変形する表面シート10は、溝部30における後述する開孔31を閉塞することなく、むしろ開孔31を若干広げ、また畝部20を変形させることなく、吸収体12の***に追従することができる。従って、表面シート10は、溝部30による吸収性を維持・向上しつつ、畝部20を極力潰さずに、柔軟に変形することができる。
畝部20及び溝部30の繊維量を坪量で表すと、畝部20の坪量は、30〜150g/m2、特に40〜100g/m2であることが好ましい。一方、溝部30の坪量(但し後述する開孔31は除く)は、10〜70g/m2、特に15〜50g/m2であることが好ましい。表面シート10の全体としての坪量(開孔31も含む)は、20〜80g/m2、特に30〜80g/m2であることが柔軟性と不織布強度の観点から好ましい。畝部20の坪量は、溝部30を除去した畝部20の重量と面積から求める。畝部20と溝部30との境界は、開孔31の幅と溝部30の幅が同程度のときは、開孔31の幅方向端部を複数連ねて見たときの位置で判断する。溝部30の幅が開孔31の幅より広い場合は、見掛け厚みの測定の場合と同様に、測定する表面シート10の断面形状に基づき、変曲点を基準点(優先)とするか、45°の傾き位置を基準点とする。この上下2点の基準点を結ぶ直線で表面シート10を切断し、畝部20を得てその重量を測定する。溝部30の重量は、切断前の表面シート10の重量と、畝部20の重量との差を求め、開孔31に相当する面積を更に差し引いて求める。溝部30の坪量の算出には、開孔31を含めた溝部30の面積と開孔31の面積が必要となるため、後述する画像解析装置等を使用して計測しておく。
また、畝部20は、その頂部21における繊維密度が、溝部30の繊維密度、特に開孔31の端部の繊維密度と異なっている。詳細には、畝部20の頂部21に比較すると、溝部30、特に開孔31の端部の方が繊維密度が高くなされている。その結果、着用者から液は、畝部20の頂部21から溝部30の開孔31の端部へと導かれ易くなっている。畝部20の頂部21における繊維密度は0.01〜0.1g/cm3であることが好ましく、開孔31の端部の繊維密度は0.05〜0.5g/cm3であることが好ましい。それぞれの部位の繊維密度は次の方法で測定する。先ず、畝部20の密度を見掛け厚み及び坪量から算出する。次に表面シート10の切断面を電子顕微鏡を用いて拡大観察(150〜500倍)し、繊維の断面10個が含まれる部分の面積(最外繊維の外面を直線で結んだ面積)を、後述する画像解析装置を使用して、畝部20及び開孔31の端部で計測する。これらの計測値と、先に算出された畝部20の繊維密度の値を用い、比例計算によって開孔31の端部の繊維密度を算出する。繊維の断面10個が含まれる部分の面積の占める面積が低いほど繊維密度は高いことになる。
図5に示すように、溝部30には開孔31が多数形成されている。開孔31は溝部30の延びる方向に沿って一定の間隔をおいて規則的に形成されている。したがって、表面シート10には、そのY方向(ナプキン1の長手方向)に沿って一定の間隔をおいて配置された多数の開孔31からなる開孔列が、表面シート10のX方向(ナプキン1の幅方向)に亘って多列に形成された状態になっている。すべての開孔列における開孔31の配置のピッチは同じになっている。隣り合う2つの開孔列においては、表面シート10のX方向に関して開孔31が同位置に位置している。そして、シート10のX方向に沿ってシート全域を見たときに、必ず開孔31が形成されていない部位が存在するように該開孔31は配置されている。更に、表面シート10全体で見ると、開孔31は、シート10のX方向において多列の列をなし、かつY方向においても多列の列をなすように分散配置されている。開孔31がこのように配置されていることで、開孔31が例えば千鳥格子状に配置されている場合に比較して、繊維のより分けによる開孔31の形成を効率的に行うことができる。
開孔31は、表面シート10の構成繊維がより分けられて形成されている。そして、開孔31の端部付近においては、繊維の熱変形に起因する膜状構造が形成されていない。これに起因して、開孔31の端部付近は、剛性が低く、変形に対する柔軟性及び形状復元性に優れている。また、液が通過する構造になっているので、開孔31の端部付近に液が溜まることがない。尚、表面シート全体として見ると、その構成繊維は、基本的に繊維どうしが交絡しているか、又は繊維どうしが融着している。これによって不織布の形態が維持されている。
開孔31は、表面シート10の平面視において種々の形状をとり得る。例えば円形、長円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の形状、又はこれらの組み合わせの形状が挙げられる。開孔31の形状や大きさは、吸収性物品の具体的な用途に応じて適宜決定すればよい。開孔31の大きさは、表面シート10の平面視における投影面積で表して、0.5〜5mm2程度であることが、液の透過性及び表面シート10の強度維持の観点から好ましい。開孔31の大きさは、画像解析装置を使用して計測する。具体的には、光源〔サンライト SL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5;LPL(株)社製〕、レンズ〔24mm/F2.8Dニッコールレンズ〕、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノープス(株)社製〕を用いて、表面シート10の裏面1B側の画像を取り込む。取り込まれた画像をNEXUS社製の画像解析ソフトNEW QUBE(ver.4.20)によって開孔31の部分を二値化処理する。二値化処理された画像から得られる個々の面積の平均値を開孔の大きさとする。
開孔31はその端部が、表面シート10の第2の面10b側に突出して、突出部からなる導液管を形成していてもよい。上述のとおり、開孔31の端部は剛性が低いので、かかる突出部を形成することで、表面シート10のクッション性が一層高くなる。また、突出部を形成することで、表面シート10の下側に位置する吸収体12の構造によらず、表面シート10と吸収体12との接触を維持できることから、着用者から***された液が、表面シート10から吸収体12へ効率よく伝達される。
表面シート10の肌当接面側には、図1及び図2に示すように、表面シート10と吸収体12とが圧着によって一体化して形成された一対の線状溝60,60が形成されている。線状溝60は、ナプキン1の長手方向に延びるように、ナプキン1の幅方向の左右の側部域に形成されている。一対の線状溝60,60は、ナプキン1を幅方向に二分する仮想中心線(図示せず)を挟んで左右対称位置に形成されている。線状溝60は、***部対向部Aに存し、更に、該***部対向部Aの前後に位置する前方部B及び後方部Cそれぞれの一部に延在している。線状溝60は、表面シート10及び吸収体12を、熱を伴うか又は伴わずに肌当接面側から圧縮することによって形成されている。この圧縮は、当該技術分野において公知のエンボス装置を用いて行なうことができる。一対の線状溝60,60は、***された体液のナプキン1の長手方向への拡散を誘導し且つ該体液の幅方向への拡散を抑制することによる横漏れ防止効果に加えて、後述する***部の形成を促す効果を奏する。
一対の線状溝60,60それぞれは、ナプキン1の長手方向に延びる中央部60Aと、該中央部60Aの長手方向前後端それぞれから該ナプキン1の内方に向かう前端部60B及び後端部60Cとを有している。本実施形態においては、中央部60Aは、少なくとも***部対向部Aに存し、ナプキン1の平面視でナプキン1の長手方向と略平行な直線形状を有している。中央部60Aは、表面シート10の畝部20と略平行な位置関係になっている。前端部60Bは、図1に示すように、中央部60Aの長手方向前端を起点としてナプキン1の内方側の斜め前方に向かって延びており、平面視においてナプキン1の外方に向けて凸に湾曲する円弧状を有している。後端部60Cは、中央部60Aの長手方向後端を起点としてナプキン1の内方側の斜め後方に向かって延びており、平面視においてナプキン1の外方に向けて凸に湾曲する円弧状を有している。中央部60Aの長手方向前端部と前端部60Bとの間、及び中央部60Aの長手方向後端部と後端部60Cとの間はそれぞれ連結しており、線状溝60は連続した一条の溝になっている。線状溝60は全体として略コ字状に形成されている。
前端部60B及び後端部60Cの平面視における形状は、図1に示す如き円弧状に限られず、例えば図4(a)に示すように、ナプキン1の幅方向と略平行な直線状であっても良い。図4(a)に示す線状溝60は、直線のみから形成されている点で、曲線を含んで形成されている図1に示す線状溝60と異なるが、両者とも平面視して略コ字状に形成されている点では同じである。
このように平面視して略コ字状の一対の線状溝60,60が形成されていることにより、ナプキン1の着用時に着用者の大腿部による圧縮力等を受けたときに、ナプキン1の中央領域における吸収体12の***が促進され且つその***状態を維持することが可能となる。このような線状溝60と吸収体12の***との特定の関係は、主として、以下に説明する2つの要因1)及び2)によるものと推察される。尚、以下では、この2つの要因を説明するにあたり、説明容易の目的で、図4(a)に示す直線のみから形成されている線状溝60を例にとって説明しているが、以下の図4を用いた説明は、図1に示す線状溝60の如き、直線及び曲線を含んで構成される線状溝についても当てはまる。
前記要因1)は、線状溝60の前端部60B及び後端部60Cそれぞれに***誘起モーメントが働くためである。図4(b)には、***誘起モーメントとその発生に伴って生じる現象の説明図が示されている。図4(b)中、符号F1は、ナプキンにおける着用者の大腿部等から受ける圧縮力を示している。圧縮力F1は、ナプキンの幅方向両端から内方に向かい且つナプキンの肌当接面に略平行に作用する。この圧縮力F1に対し、ある程度剛性を有している線状溝前後端部60B及び60Cには、それぞれ、吸収体12が起立状態に向かうような回転しようとする力、即ちモーメントF2が生じる。モーメントF2は、一対の線状溝60、60に挟まれたナプキン1の中央領域、特に一対の中央部60A,60Aに挟まれたナプキン1の中央領域の***を促進するモーメントとして働くものであり、その作用効果の点から***誘起モーメントとも言うべきものである。この***誘起モーメントF2の発生は、圧縮力F1が***を促進するために利用されるという観点からはもちろんのこと、吸収体12がいわゆるヨレのような形で潰されるが如く変形することを緩和するという観点からも好ましい。
前記要因2)は、線状溝60の前端部60B及び後端部60Cに***保持力が働くためである。図4(c)には、***保持力とその発生に伴って生じる現象の説明図が示されている。上述した***誘起モーメントによって一度***した一対の線状溝60,60に挟まれたナプキン1の中央領域には、装着圧や着用者の座動作等によって、その***を潰そうとする力(***阻止力)F3が、ナプキン1の肌当接面に対し垂直な方向に下向きに働く。この***阻止力F3に対し、ある程度剛性を有している線状溝前後端部60B及び60Cには、それぞれ、ナプキン1の肌当接面に対し垂直な方向に上向きに働く抗力F4が生じる。この抗力F4が***阻止力F3と同じか又はF3よりも大きい場合は、***の潰れを完全に抑制することできる。また、抗力F4が***阻止力F3に比べて小さい場合は、***の潰れを完全に抑制することはできないが、潰れを緩和することはできる。このように、抗力F4は***状態を保持し得る力であり、その作用効果の点から***保持力とも言うべきものである。この***保持力F4により、一度***した一対の線状溝60,60に挟まれたナプキン1の中央領域が、安定的に***状態を保つことが可能となる。
上述の***誘起モーメントや***保持力は、前端部60B及び後端部60Cの平面視における形状の影響をあまり受けず、該形状が図1に示す如き円弧状であっても、上述の該形状が図4(a)に示す如き直線状の場合と同様に生じる。但し、線状溝60は、図1に示すように、ナプキン1の平面視においてその長手方向の前後端部(60B,60C)それぞれが湾曲した曲線形状を有していることが好ましい。これは主として次の理由によるものである。即ち、線状溝60の長手方向の前後端部が湾曲した曲線形状を有していると、ナプキン1の着用時に幅方向からの圧力によって吸収体12が変形してその一部が***したときに、***した部分と***しない部分との境界に極端な段差が形成され難くその形状は緩やかなものとなり、装着感の向上及びナプキンと肌との間の隙間発生防止に寄与するためである。
線状溝60は、表面シート10と吸収体12との圧着部が該線状溝60の全体に亘って連続しているものに限られず、該圧着部が不連続に配置されているものであっても良く、該圧着部が実質的に連続し、全体として一条の溝となっていれば良い。前記圧着部が不連続に配置されてなる線状溝60においては、隣接する圧着部間に、表面シート10と吸収体12とが圧着されていない非圧着部が存在する。圧着部が不連続に配置されてなる線状溝60において、隣接する圧着部間の間隔(非圧着部の線状溝60の長さ方向に沿った長さ)は、好ましくは0.5〜3.0mmである。
線状溝60の幅は、吸収体12の***のしやすさ、***状態の保持性、また防漏性の観点から、好ましくは0.5〜6.0mm、更に好ましくは0.8〜4.0mmである。中央部60A、前端部60B及び後端部60Cは、幅が同一でも良く、それぞれ異なっていても良い。また、線状溝60の幅、特に中央部60Aの幅は、畝部20の幅と略等しいことが好ましく、あるいはそれよりも狭いことが好ましい。これによって、線状溝60あるいはその中央部60Aを形成することに起因して畝部20を潰すことの影響を極力少なくすることができる。
吸収体12は、図1及び図2に示すように、ナプキン1の幅方向中央部に位置する低剛性領域12Aと該低剛性領域12Aに比べて剛性の高い高剛性領域12Bとを有している。本実施形態における吸収体12は、その幅方向中央部の全域が低剛性領域12Aであり、該幅方向中央部の左右両側それぞれに位置する側部域の全域が高剛性領域12Bである。尚、本発明でいう剛性は、物体(吸収体の所定領域)の硬さを意味し、当該物体に所定の曲げやねじれ等の変位を発生させるために必要な外力の大きさと捉えることができる。対比される2つの領域の剛性の高低は、後述の剛軟性測定法等の測定値をもって判定することができる。
本発明でいう剛性は、次のようにして測定される。本明細書において剛性を数値で示すときは、特に断らない限り、次の方法で測定された剛性値を示す。温度23℃、湿度50%の試験室にて、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定された剛軟性測定法に適合した(株)大栄科学精器製作所製:ハンドロメーター試験機を使用する。スロット間を20mmに調整した試料台上に、試験片を、該試験片の測定部位がスロット間の中心に位置するように且つ吸収体の長手方向に沿う該試験片の長さがスロットと平行となる方向と一致するようにして、水平に配置する。尚、試験片の幅方向における両端は5mm以上試験台に載っているように配置する。試験片は試料台に固定しない。試料台の表面から8mm下方の位置(最下位置)まで下降するように調整したブレードを、試験片の上方から一定速度(200mm/min)で下降させる。そして、該試験片を長さ方向前後に押圧したときの指示計(荷重計)が示す最高値(cN)を読み取る。測定は5回行い、その平均値を算出して剛性値とする。
尚、試験片については、特に予備乾燥をせずに室温にて放置された吸収性物品から吸収体を破損しないように取り出し、幅(製品長手方向と直交する方向)30mm以上、長さ(製品長手方向)150mmに切断し、これを試験片とする。この場合、なるべく吸収体以外の材料を排除することが好ましいが、吸収体を破損させないために吸収体は表面シートの一部、裏面シートの一部又は表面シートと裏面シートとの接合用の接着剤が一部付着した状態であっても良い。また吸収体は、その長さが30mm(スロット間:20mm+両端:各5mm)以上あれば測定可能である。従って、試験片を製品そのままの形態で用いることも可能である。但し、測定するサンプルによって異なる剛性を有する表面シートが付着していると、測定値の信頼性を損なうおそれもある。ゆえに、表面シートを取り除いて測定を行うことが好ましい。
吸収体12においては、低剛性領域12Aにおける剛性は、好ましくは5〜100gf、更に好ましくは10〜50gfであり、高剛性領域12Bにおける剛性は、好ましくは15〜200gf、更に好ましくは30〜100gfである。また、両者の剛性の比(低剛性領域の剛性値/高剛性領域の剛性値)は、好ましくは0.1〜0.9、更に好ましくは0.2〜0.8である。低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとの間に剛性差が存在すると、ナプキン1の着用時に吸収体12が幅方向から圧力を受けた場合、後述するように、吸収体12の変形は低剛性領域12Aから優先的に開始されるため本発明の所定の効果が得られ、この剛性差が大きければより好ましい効果が得られるようになる。
尚、一般的に同一の材料における密度(例えばパルプ繊維の繊維密度や見掛け密度)と剛性との間に相関関係が見られることから、本発明においては、吸収体における異なる部位間の剛性の高低を判定する方法の一つとして、密度対剛性の較正曲線を決定し、密度による剛性の推定を利用することもできる。例えば、吸収体の断面を撮影した顕微鏡写真から測定した対比される2つの部位の厚みの違い、即ち密度の違いにより剛性の高低を判断することができる。通常、相対的に密度の高い部位は剛性の低い低剛性領域であり、相対的に密度の低い部位は剛性の高い高剛性領域である。従って、本発明に係る低剛性領域は低密度領域、本発明に係る高剛性領域は高密度領域と捉えることもできる。
吸収体における各部位の密度は、当該部位の見掛け厚み及び坪量から算出される見掛け密度の値をもって示される。当該部位に均一にエンボス等が施されている等、切断することで当該部位の構造が破壊し構成繊維の厚みが変化することが原因で測定が困難となる場合は、電子顕微鏡の拡大観察と画像解析装置を使用した、比例計算による数値を用いることもできる。
このような剛性(密度)分布を有する吸収体12は、例えば、剛性が実質的に均一な該吸収体12の前駆体の一部にエンボス処理を均一に施すことにより形成することができる。ここでいう「吸収体の前駆体」は、全体に亘って剛性が実質的に均一で、上述した高剛性領域や低剛性領域を含まない点以外は吸収体12と実質的に同じである。即ち、吸収体12の前駆体に、所定の手段により剛性(密度)分布を付与することで吸収体12が得られる。通常、この種の吸収性物品における吸収体は剛性が実質的に均一であり、「吸収体の前駆体」は、この種の吸収性物品における吸収体と同様の方法で製造することができる。
吸収体12の前駆体においてエンボス処理が均一に施された部位は高剛性領域12Bであり、該エンボス処理が施されていない部位は低剛性領域12Aである。斯かるエンボス処理は、例えば次のようにして行うことができる。先ず、吸収体の原材料を積層して積層体を形成し、次に該積層体を、その非肌当接面側がエンボス処理を受けるように、周面にエンボス用凸部が規則的に配置されたエンボスロール及びそれに対向配置されたアンビルロールを備えたエンボス装置に送り、エンボス処理を施す。該エンボス処理においては、剛性を制御するという目的でエンボスロールとアンビルロールとの間隔、すなわちエンボス用凸部の高さ等を調節することが好ましい。
上述した一対の線状溝60,60は、図1に示すように低剛性領域12Aに形成されている。線状溝60における中央部60Aは、低剛性領域12Aの側縁と略同位置に位置していることが好ましく、具体的には、低剛性領域12Aの長手方向に沿った側縁から10mm以内の領域に位置していることが、着用時に吸収体12が幅方向から圧力を受けた場合における吸収体12の***形状を保持する観点から好ましい。
本実施形態においては、一対の線状溝60,60の間に低剛性領域12Aが存し、一対の該線状溝60,60における中央部60Aよりもナプキン1の幅方向外方に高剛性領域12Bが存している。このように、吸収体12の低剛性領域12Aに形成された一対の線状溝60,60の中央部60A,60A(線状溝60におけるナプキン1の長手方向に延びる部分)を境界として、一対の中央部60A,60Aよりもナプキン1の幅方向外方に位置する吸収体12の一部(両側部)を高剛性領域12Bとし、一対の中央部60A,60Aよりもナプキン1の幅方向内方に位置する吸収体12の一部(幅方向中央部)を低剛性領域12Aとすることにより、ナプキン1の着用時に、着用者の大腿部によりナプキン1が幅方向から圧縮力F1(図4(b)参照)を受けた場合、図3に示すように、一対の線状溝60,60の間に挟まれた低剛性領域12A(***部対向部Aの幅方向中央部)が着用者の肌側に向かって***し、この***部と身体の***部との密着性が高まる。
特に、着用者の大腿部による圧縮力を直接受ける部位である、吸収体12の両側部が、上記のように高剛性(高密度)であると、該圧縮力によって該両側部が変形し難いため、該圧縮力がほとんど緩和されずに一対の線状溝60,60に伝わるようになる。前記両側部(高剛性領域12B)を介して一対の線状溝60,60に伝わってきた前記圧縮力は、上述したように一対の線状溝60,60がそれぞれ平面視して略コ字状に形成されていることで低剛性領域12Aが***するための力(***誘起モーメント)として優先的に利用され、低剛性領域12Aのいわゆるヨレる形で潰されるような変形を緩和する。主に使用者の脚によって発生する圧縮力は、身体形状に沿うように扇状に広がる形で分散しながら高剛性領域12Bを通して、より内方に位置する低剛性領域12Aへ伝わる。仮に、高剛性領域12Bに線状溝60の中央部60Aが配置されていると、該中央部60Aは直接この圧縮力を受けることになるため、該中央部60Aには部分的に異なる圧縮力が加わり、これによって線状溝60が湾曲する。線状溝の太さ等により線状溝60を湾曲させずにすることは可能であるが、前述した有利な点を消失しやすくなる。一方、本実施形態のように低剛性領域12Aに線状溝60の中央部60Aが形成されている場合には、高剛性領域12Bと線状溝60との間に位置する低剛性領域12Aが圧縮力の均一化の緩衝域として働くため、前記圧縮力を受けた場合に線状溝60の中央部60Aを湾曲させにくくでき、該低剛性領域12Aの変形を極力抑えることができる。また、線状溝60は、上記のように低剛性(低密度)領域12Aに形成されているため、線状溝60自体が低剛性領域12Aに比べて高密度で変形しにくい領域として存在し、これにより、前記圧縮力を受けた場合に線状溝60自体がほとんど変形せずにそのまま***するようになる。斯かる線状溝60の***により、線状溝60,60に囲まれた部分の***が一層促進されるようになる。
低剛性領域12Aの吸収体12(ナプキン1)の長手方向に沿った長さは、吸収体12の長手方向の長さに対して、好ましくは20〜100%、更に好ましくは30〜70%である(本実施形態では100%)。また、低剛性領域12Aは、少なくとも***部対向部Aに存していることが好ましい。また、低剛性領域12Aの吸収体12(ナプキン1)の幅方向に沿った長さW1(図2参照)は、吸収体12の幅方向の長さ(吸収体12の幅が一定でない場合は最大幅を有する部分の幅)に対して、好ましくは10〜80%、更に好ましくは20〜60%である。
一対の中央部60A,60Aよりもナプキン1の幅方向外方に位置する高剛性領域12Bの、吸収体12(ナプキン1)の幅方向に沿った長さW2(図2参照)は、吸収体12の幅方向の長さに対して、好ましくは左右それぞれ10〜45%、更に好ましくは左右それぞれ20〜40%である。吸収体12における低剛性領域12A以外の領域は、高剛性領域12Bとされることが好ましい。また、低剛性領域12Aは吸収体12(ナプキン1)の幅方向に沿った方向での中央に位置していた方が好ましく、即ちW2の値は左右略同一であることが好ましい。
吸収体12の坪量は、好ましくは100〜600g/cm2、更に好ましくは150〜400g/cm2である。低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとは坪量が同一であっても良く、それぞれ異なっていても良い。低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとで坪量が異なっている場合の一例として、低剛性領域12Aの一部あるいは全域の坪量が高剛性領域12Bの坪量よりも小さくされて、低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとの密度差が付与された形態が挙げられる。このような坪量の制御により吸収体12における異なる部位間の剛性の差をより大きくすることは、前記***部(***部対向部Aの幅方向中央部に位置する***した低剛性領域12A)の形成促進に有効である。
また、低剛性領域12Aの無荷重下における厚み(線状溝60が形成されていない部分の厚み)は、好ましくは1.5〜15.0mm、更に好ましくは3.0〜10.0mmであり、高剛性領域12Bの無荷重下における厚みは、好ましくは1.0〜8.0mm、更に好ましくは1.0〜5.0mmである。
低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとは、厚みが同一であっても良く、それぞれ異なっていても良い。低剛性領域12Aと高剛性領域12Bとで厚みが異なっている場合の一例として、低剛性領域12Aの一部あるいは全域の厚みを高剛性領域12Bの厚みよりも大きくして、該低剛性領域12Aの一部あるいは全域をナプキン1の肌当接面側(表面シート10側)に突出させることにより、吸収体12の幅方向中央部(一対の線状溝60,60の間)に中高部を形成した形態が挙げられる。上述した坪量の制御同様、厚みの制御による斯かる中高部の形成は、前記***部の形成促進に有効である。
また、前記***部の形成を容易にし、更に、横漏れを確実に防止する観点から、線状溝60の吸収体12(ナプキン1)の長手方向に沿った長さL1(図1参照)は、吸収体12の長手方向の長さに対して、好ましくは10〜90%、更に好ましくは20〜80%である。また、同様の観点から、前端部60B及び後端部60Cそれぞれの吸収体12(ナプキン1)の幅方向に沿った長さL2(図1参照)は、吸収体12の幅方向の長さ(吸収体12の幅が一定でない場合は最大幅を有する部分の幅)に対して、好ましくは2〜30%、更に好ましくは5〜15%である。
一対の線状溝60,60の間においては、裏面シート11と吸収体12とは接合されていないことが好ましい。斯かる構成により、低剛性領域12Aが裏面シート11に拘束されることなく変形が容易なものとなり、これにより前記***部の形成が一層容易になる。ここで、「接合されていない」とは、一対の線状溝60,60に挟まれた領域(以下、線状溝間領域ともいう)の全域において裏面シート11と吸収体12との間が全く接合されていない場合のみならず、例えばナプキンの製造時における意図しない接着剤の付着等により、該線状溝間領域の一部(好ましくは線状溝間領域の全面積の5%以下)で裏面シート11と吸収体12との間が接合されている場合を含む。前記線状溝間領域における裏面シート11と吸収体12との間を接合しない場合、該線状溝間領域以外の領域における裏面シート11と吸収体12との間は、接着剤等の各種接合手段を介して接合されていても良く、接合されていなくても良い。
また、一対の線状溝60,60の間においては、表面シート10と吸収体12とは接着剤を介して接合されていることが好ましい。斯かる構成により、線状溝60を構成している表面シート10と吸収体12との圧着部が水分の濡れなどによって解離し、線状溝60の剛性が低くなることを防ぐことができる。線状溝60の剛性が高く維持されることは、ナプキン着用時において前記***部が形成されたときに該***部全体を支持する効果が継続し、これにより前記***部の形成が一層容易になるため好ましい。ここで、「接合されている」とは、前記線状溝間領域の全域に塗布(ベタ塗り)された接着剤によって表面シート10と吸収体12との間が接合されている場合のみならず、前記線状溝間領域の略全域(好ましくは線状溝間領域の全面積の5%以上)に塗布された接着剤によって表面シート10と吸収体12との間が接合されている場合を含む。前記線状溝間領域における表面シート10と吸収体12との間を接着剤を介して接合する場合、該線状溝間領域以外の領域における表面シート10と吸収体12との間は、接着剤を介して接合されていても良く、接合されていなくても良い。
次に、本実施形態のナプキン1の構成材料等について説明する。裏面シート11としては、それぞれ、従来のこの種の吸収性物品において用いられているものを特に制限なく用いることができる。裏面シート11としては、液不透過性ないし撥水性の材料、例えば熱可塑性樹脂製のフィルムや、これに不織布をラミネートしたものを用いることができる。また、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布や、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布を用いることもできる。裏面シート11は透湿性を有していてもよい。透湿性を有する裏面シートとしては、熱可塑性樹脂及びそれと相溶性のない微粒子を含む樹脂組成物をフィルム状に押し出し、一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムや、上述のSMS不織布が挙げられる。
吸収体12は、好適には木材フラッフパルプと超吸収性ヒドロゲル粒子との混合物からなる。この混合物はその全体がティッシュペーパによって被覆され、所要の厚みに圧縮されていてもよい。また、この構成の吸収体の中央部に、パルプ又はパルプとヒドロゲル粒子との混合物を更に重ね、前記中高部を形成しても良い。また、表面シート10と吸収体12との間には、中間シートとして繊維表面が界面活性剤によって親水化された合成繊維によるエアスルー不織布やスパンボンド不織布を用いることもできる。
表面シート10(不織布)の構成繊維としては、天然繊維、半天然繊維、合成繊維等、当該技術分野において従来用いられている繊維を特に制限なく用いることができる。繊維間の詰まりすぎを起こさず、表面シート10に柔軟性を付与する観点から、合成繊維を用いることが好ましい。合成繊維の配合量は、表面シート全体の50重量%以上が好ましく、70%重量以上がより好ましい。もちろん、合成繊維100%から表面シート10を構成してもよい。表面シート10が合成繊維100%からなる場合、着用者の体圧が加わった状態下でも畝溝構造が潰れ難くなるので、溝部30に沿った通気性が良好となる。
表面シート10に使用する合成繊維としては、例えば自己融着性繊維である芯鞘構造繊維やサイドバイサイド型繊維が挙げられる。この他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の単繊維や複合繊維を用いることができる。畝溝構造及び開孔形状の成形性の観点から、ポリエチレンを鞘成分に有する芯鞘構造繊維や、ポリエチレン部分を有するサイドバイサイド型繊維を用いることが好ましい。繊維の(平均)繊度は、1〜6dtexの範囲が好ましい。
表面シート10に使用する合成繊維として捲縮繊維を用いると、表面シート10のクッション性が一層向上するので好ましい。捲縮繊維としては、二次元に捲縮した繊維及びコイル状の三次元に捲縮した繊維のいずれも用いることができる。特に熱の付与によってコイル状に三次元捲縮した繊維を表面シート10に含まれていることが好ましい。このような繊維は、潜在捲縮繊維を原料として用いることで、表面シート10に含ませることができる。潜在捲縮繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイドバイサイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
表面シート10に使用する合成繊維として、熱の付与によって伸長する繊維を用いても表面シート10のクッション性が一層高まるので好ましい。この理由は、表面シート10の製造中に付与された熱に起因する繊維間の詰まりが防止されるからである。そのような繊維としては、例えば本出願人の先の出願に係るWO2007/66599が挙げられる。
上述の捲縮繊維及び熱伸長性繊維のいずれを用いる場合にも、それらの繊維は、表面シート10中に合計で30〜70重量%配合されていることが好ましい。
表面シート10は親水化されていることが好ましい。親水化の方法としては、例えば疎水性不織布を親水化剤で処理する方法が挙げられる。また、親水化剤を練り込んだ繊維から不織布を製造する方法が挙げられる。さらに、本来的に親水性を有する繊維、例えば天然系や半天然系の繊維を使用する方法が挙げられる。不織布の製造後に、界面活性剤を塗工することでも親水化を行うことができる。
本実施形態のナプキン1は、裏面シート11の表面に配された粘着部(図示せず)を介して下着の内面に固定されて使用される。本実施形態のナプキン1は、上述した吸収体12の剛性(密度)分布及び一対の線状溝60,60を採用したことにより、着用時に着用者の大腿部により左右から幅方向内方へ圧縮力を受けた場合に、一対の線状溝60,60の間に挟まれた柔軟な低剛性領域12A(***部対向部Aの幅方向中央部)が着用者の肌側に向かって***し、この***部が身体の***部に柔らかく密着するため、優れた着用感が得られる。更に、表面シート11の肌当接面側には畝部20と溝部30とからなる畝溝構造が形成されており、該畝溝構造はクッション性及び肌触りに優れているため、着用感の一層の向上が図られている。また、前記***部の肌当接面側に畝溝構造が存在することにより、着用時に該***部が左右に動くことで該畝溝構造(畝部20の頂部)と肌とが擦れ合う、いわゆるワイピング効果が発現する。このワイピング効果の発現により、肌に残る経血を擦り取り、吸収することができる。
また、本実施形態のように溝部30に開孔31が形成されている場合には、ナプキン1の変形により前記***部が形成された時に、該***部に存する開孔31が開き易くなるため、座圧等の圧力がナプキン1にかかっても、該開孔31による液の導通路が安定して確保され、体液の吸収速度の低下が効果的に防止される。
次に、本実施形態のナプキン1の好適な製造方法について説明する。先ず、図5に示す表面シート10の製造方法について説明する。表面シート10は、図8に示す装置を用い、流体交絡法によって製造される。この装置を用いた製造方法は、(イ)繊維集合体を供給し、該繊維集合体の供給方向と直交する方向に波状構造を形成するための流体透過性支持体上に該繊維集合体を導く工程、(ロ)該支持体上に位置する該繊維集合体に流体を吹き付けて、その構成繊維を寄り分け畝溝構造と開孔を形成する工程、及び(ハ)引き続き該支持体上に位置する該繊維集合体に再び流体を吹き付けて、畝溝構造と開孔が形成された該繊維集合体を不織布化する工程を有する。
図8に示す装置40は、流体透過性支持体50及び第1噴射ノズル51及び第2噴射ノズル52を備えている。図9に示すように、流体透過性支持体50はロール状のものであり、その周面はメッシュ等の流体透過性材料で構成されている。支持体50の周面には、ロールの回転方向に沿って延びる凸部と凹部とが、ロールの軸方向に交互に形成されている。これによって、表面シート10の原料である繊維集合体53に、その供給方向と直交する方向に波状構造を形成することができる。凸部の頂部には、ロールの回転方向に沿って断続的に形成された突起部54が位置している。突起部54は、ロールの回転方向に沿って一定間隔をおいて配置されている。かつロールの軸方向に沿ってみたときに、突起部54は一直線上に位置するように配置されている。
第1噴射ノズル51及び第2噴射ノズル52は、支持体50の周面に対向するように配置されている。各ノズル51,52は、支持体50の全幅にわたり流体を噴射できるような構造になっている。ノズル51,52は、表面シート10の原料である繊維集合体53の供給方向に関し、第1噴射ノズル51が上流側に位置し、第2噴射ノズル52が下流側に位置している。
(イ)の工程においては、繊維集合体53は、図8中、矢印の方向に回転している流体透過性支持体50へ供給され、該支持体50の周面に抱かれた状態で搬送される。次いで(ロ)の工程において、支持体50の周面上で、第1噴射ノズル51から噴射された流体が繊維集合体53に吹き付けられる。この流体の吹き付けによる圧力で、繊維集合体53は、図10(a)及び(b)に示すように、支持体50の周面に形成されている凸部55の位置において、構成繊維の寄り分けが生じる。この寄り分けによって、構成繊維は、凸部55間に位置する凹部56内へ移動していく。つまり、繊維の分配が起こる。
また、凸部55の頂部に突起部54が形成されている場合には、図10(c)に示すように、構成繊維の寄り分けが一層促進され、突起部55上に位置する繊維集合体54に孔が生じる。この孔が、表面シート10における開孔31となる。
繊維集合体としては、カードウエブ等の繊維の結合や絡合が生じていないか、又はその程度が低いものや、不織布等の繊維の結合や絡合が生じているものを用いることができる。特に、不織布としては、繊維長が30mm以下であり、かつバインダー成分をそれ自体が有しない繊維を含む不織布、具体的には、パルプ繊維の繊維間がバインダー(接着成分)によって固定されている乾式パルプシートを用いることが好ましい。
この工程で用いられる流体としては、水等の液体及び空気等の気体を使用することが可能である。流体の種類は、支持体50上に導く繊維集合体によって選択する。例えば、カードウエブのように結合又は交絡のない繊維集合体を用いる場合には、空気流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用することが好ましい。エアスルー不織布のように、繊維交点で結合を有する繊維集合体を用いる場合には、水流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用することが好ましい。後者の場合、繊維交点での結合を部分的に剥離し、繊維交絡の程度を低く抑えつつ、繊維の移動によって畝溝構造及び開孔を形成することができる。また、繊維間を詰まらせすぎないようにすることができる。このように、本工程は、繊維の移動による畝溝構造及び開孔の形成が主たるものであり、繊維の交絡の程度は低く抑えられている。
上述の水流とは、水等の完全な液体流を意味する。水蒸気流(スチームジェット)とは、液体状態でない水の流体流をいう。液体水流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用した場合、繊維交絡は突起部55の近傍に位置する繊維ほど進行し、その部分の繊維密度が高める傾向にある。特に、繊維集合体として不織布を用いた場合(すなわち再不織布化)、凸部55では繊維交絡がほとんど行われないので、不織布が本来的に有するクッション感が維持される。一方、凹部56及び突起部55の近傍に位置する繊維には交絡が生じ、凸部55に位置する繊維に対して相対的に毛管勾配(密度勾配)が大きくなる。
(ロ)の工程である第1噴射ノズル51からの流体の吹き付けによって畝溝構造及び開孔が形成されたら、次いで(ハ)の工程である第2噴射ノズル52からの流体の吹き付けによって繊維交絡が生じ、繊維集合体が不織布化(繊維集合体として不織布を用いた場合には再不織布化)される。この場合に使用する流体としては、液体水流又は水蒸気流を用いることが好ましい。これらの流体を用いることで、繊維交絡を効率的に行うことができる。なお、上述の再不織布化とは、繊維集合体として不織布を用いた場合に、前工程である畝溝構造及び開孔の形成工程において、繊維の切断又は融着部分が剥離した繊維を再度融着又は再度交絡させて不織布としての形態を維持させることを言う。
(ロ)の工程及び(ハ)の工程で繊維集合体53に吹き付ける流体を、支持体50の凸部55に集中すると、支持体50の凹部56に比べて凸部55の流体圧を高めることができるので、開孔性が良好となるので好ましい。また開孔の端部付近の繊維密度をより高くすることができる点で好ましい。
(ハ)の工程において流体として水蒸気流を使用した場合、第2噴射ノズル52からの水蒸気流を比較的低い温度である100〜150℃(ウエブ上で繊維融着温度よりも低い温度)とすることで、繊維交絡のみが行われる。水蒸気流は液体水流に比べるとエネルギー(噴射圧)が低い(流体流の分散が大きい)ので、繊維集合体として不織布を用いる場合よりも、ウエブへ吹き付けるときに用いることが好ましい。ウエブの方が不織布よりも繊維の移動が容易だからである。しかしながら、繊維集合体として不織布を用いた場合であっても、(ロ)の工程によって形成された畝溝構造及び開孔の形状が回復しない程度の弱い繊維交絡状態となる噴射圧を水蒸気流によって与えることができる。さらに、水蒸気流の温度が、ウエブ上で繊維融着温度よりも高くなる160〜200℃程度の場合、仮に繊維融着温度より20℃以上高い温度であっても、繊維集合体中の繊維に加わる熱量は、繊維を構成する樹脂が溶融して甚だしく流動するほどではなく、またすべての繊維の交点で樹脂の流動がおこり融着が生じるとは限らない程度であるので、繊維集合体全体を固化させるものではない。したがって水蒸気流の噴射圧が高い状態にあり、繊維同士がかなり接近した状態であっても、繊維の目詰まりを起こさせずに、繊維交点で融着を行うことができる。
この融着は、第2噴射ノズル52から吹き付けられた水蒸気流によって行われるので、公知の不織布製造技術であるエアスルー法に比べると、短時間で強い圧力が繊維集合体に加わっている。そのため、繊維交点での融着が安定する前、すなわち互いの繊維の表面で広がって強固な融着点となる繊維鞘成分樹脂の流れ出しが固定化する前に圧力が取り除かれる。その結果、繊維が離間して、橋渡し構造が形成される。このような橋渡し構造は、2本の繊維のうち一方の繊維の鞘成分樹脂が溶融によって引き伸ばされ固化されて形成されていると推定される。なぜならば、この融着工程は、繊維融着を起こす状態ではあっても、熱の付与は比較的短時間で終了するので、繊維融着を起こす各繊維を構成する樹脂どうしが融合して樹脂間の界面が消失する状態ではなく、繊維融着を起こす各繊維を構成する樹脂の界面が存在する状態と考えられるからである。また、繊維融着を起こした融着部分である樹脂間の界面近くで伸長が起こると、該界面が引っ張られて融着部分が減少して、該界面で樹脂どうしが剥離してしまうと考えられるからである。このため、橋渡し構造は接合部分の面積は大きいものの、樹脂が伸ばされて細くなった部分を有している。その結果、得られた表面シート10は、その構成繊維の自由度が向上し、柔軟性及びクッション性が良好になる。一方、エアスルー法よりも強い圧力を受けて製造されるので、2本より多い繊維の多交点が一層作られやすくなっている。このような構造によって、表面シート10の強度が向上する。
(ロ)の工程及び/又は(ハ)の工程で、液体水流を用いる場合には、親水性を付与するために用いられる界面活性剤が繊維表面から流れ落ちるおそれがあるので、繊維内へ界面活性剤を練り込んだものや、天然系/半天然系の親水性繊維を使用することが好ましい。あるいは、後工程において界面活性剤を塗布することが好ましい。これに対して、水蒸気流を用いると、繊維表面の界面活性剤が流れ落ちにくく、繊維の密度が高い部位に一部界面活性剤を集まりやすくすることができるという利点がある。その結果、水蒸気流を用いると、繊維集合体53における支持体50の凹部56及び突起部54に位置する部位の繊維密度が高められるので、必然的にこれら部位の親水度を高めることができる。この効果の応用例として、繊維表面に塗布する界面活性剤又は繊維に練り込む界面活性剤として2種以上のものを使用し、その界面活性剤の耐水性を異ならせる手法が挙げられる。この手法によれば、親水勾配を一層容易に設計できるので有利である。
得られた表面シート10の繊維密度を一層制御するため、(ハ)の工程の後の不織布を、熱風処理工程に付すことも好ましい。熱風処理には、不織布化の促進(繊維集合体の繊維間を結合)及び/又は繊維間の目詰まり解消の効果がある。すなわち、(ハ)の工程において、目詰まり防止の観点から、流体の吹き付け条件を弱くすることがあるところ、それに起因する繊維交絡又は繊維融着の不足を補うために熱風処理工程に付すことが好ましい。また、(ハ)の工程において目詰まりが生じた不織布の嵩を回復させ、あるいは繊維変形(捲縮又は伸長)を発現させるために熱風処理工程に付すことが好ましい。特に、(ハ)の工程で水蒸気流を用いた場合には第2噴射ノズル52を使用するので、エアスルー法に比べて短時間で熱付与工程が完了してしまう。そこで、熱融着状態の安定化の観点から、(ハ)の工程の後工程として、80〜120℃程度の熱風処理工程を行うことが望ましい。あるいは(ハ)の工程の後工程として、急激な温度低下を起こさないようにする安定化工程を行うことが好ましい。また、熱風処理は1段階で行ってもよいし、不織布化の促進のための熱風処理と不織布の嵩回復のための熱風処理とを複数段階以上に分けて行ってもよい。
本製造方法における繊維集合体としてウエブのみを用いる場合には、(ロ)の工程では、空気流又は水蒸気流を用い、(ハ)の工程では、水蒸気流を用いることが好ましい。この理由は、繊維間の目詰まりを防ぎ、繊維交点の融着による不織布化による柔軟な構造ができること、さらに、開孔31の周辺部の繊維密度を高くしやすくできるからである。さらに(ロ)の工程で空気流を用いると、開孔31に導液管を形成しやすくなり、開孔31以外の部位も、図7(a)の形状となりやすくなり、吸収体との接触性が向上する。一方、(ロ)の工程で水蒸気流を用いると、繊維の飛散等が抑えられ流体圧を空気流より高くすることが容易なため、繊維の寄り分けをしやすく、図6の断面形状を得やすくなり、クッション性等の柔軟性を高め易くなる。なお、(ロ)の工程で水蒸気流を用いても、開孔31では流体圧を調整することで、導液管構造と図6の断面形状を両立することが可能である。
本製造方法においては、(ロ)及び(ハ)の工程で水流を使用する場合には、繊維交点に融着点を有する不織布を用いることが好ましい。この理由は、繊維交点の剥離部分による繊維の移動(密度向上部分の形成)と残存する融着点によって繊維の目詰まりを防ぐことができるからである。この場合、(ロ)の工程では、不織布の全体に略均一となるように水流を施して支持体形状に不織布を適合させ、(ハ)の工程では、開孔31を含む溝部30に、畝部20よりも強い水流を吹き付けることで交絡を行い易くし、(ロ)よりも(ハ)の工程の水圧を高めることが、融着点の剥離を促し再交絡を行い易くする観点から好ましい。また、繊維集合体53として、ウエブと不織布との積層体を用いるか、又はウエブと不織布とを供給しつつ両者を積層して繊維集合体53を供給する方法を採用すると、(ロ)及び(ハ)の工程で両者の一体化を進めることができる。このようにして製造された不織布は、畝部20の頂部21から開孔31の端部まで液を導きやすい構造(一体化構造)となる。この場合、ウエブと不織布のうち、水流が直接吹き付けられるのは、ウエブでの繊維の目詰まりを防ぐ観点から、不織布とすることが好ましい。このように(ロ)及び(ハ)の工程で水流を使用すると、図7(b)のような断面形状を得やすくなる。
繊維集合体53として不織布を用い、該不織布が(ロ)の工程の前で別途支持体上に導かれる場合には、得られる不織布の柔軟性及びクッション性を高めることができる。また、繊維集合体53として不織布を用いる場合、該不織布における繊維間の結合や交絡が強いと、(ロ)の工程における繊維移動が起こりにくいことがあるので、(ロ)の工程の前に、不織布における支持体50の凹部56に位置すべき部位にスリット処理を施すことも好ましい。
このようにして得られたシートを、別途製造した吸収体12の上に載置し、エンボス装置等の圧搾装置を用いて、両者が接合一体化されてなる線状溝60を形成する。これらの溝の形成においては、熱を付与してもよく、あるいは付与しなくてもよい。このようにして、表面シート10と吸収体12に対して加工が施されたら、次に、これら表面シート等を、裏面シート11と共に常法に従い加工して、目的とするナプキン1を得る。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態における吸収体12は、その幅方向中央部の全域が低剛性領域12Aとなっていたが、図11に示すように、吸収体12の幅方向中央部の一部のみが低剛性領域12Aとなっていても良い。このように吸収体12の幅方向中央部の一部のみを低剛性領域12Aとする場合、少なくとも着用者の***部と対向する***部対向部Aに低剛性領域12Aを配することが、前記***部と該***部とを密着させる点で好ましい。
また表面シート10としては、上述したように図6や図7(a)、(b)に記載の如き断面形状を有するものを自由に用いることができるが、図6に記載の形態は、溝部30とその下方に位置する吸収体12との間に空間が形成されやすく、この空間によって液の素早い通過性を目的とする場合に特に優れ、***される液の速度が速い場合や液量が大量な場合に特に有効である。一方、図7(a)、(b)に記載の形態は、何れも溝部30が吸収体12と接しやすく、液を引き込む目的に特に有効である。
また、ナプキン1の肌当接面側には、上述した一対の線状溝60に加えて、防漏性の向上等を目的とした第2の溝が形成されていても良い。図12には、この第2の溝を有する実施形態の要部(吸収体12)が記載されている。尚、図12では説明容易のため、吸収体12及び溝60,70のみを図示し、他のナプキン構成部材の記載を省略しているが、該他のナプキン構成部材については前記実施形態と同様に構成することができる。
図12に示す実施形態においては、第2の溝70は、線状溝60と略同形状を有し且つナプキン1の長手方向に延びている。第2の溝70は、線状溝60の後端部60Cと連結して後方部Cの一部に延在しており、線状溝60と第2の溝70とで連続した一条の溝を形成している。第2の溝70は、線状溝60と同様に、表面シート10と吸収体12とを圧着によって一体化させて形成することができる。
また、ナプキン1の左右の側部域における表面シート10上に、防漏カバーシートが配されていても良い。また、ナプキン1の長手方向両側縁に、幅方向外方に延出する一対のウイング部が設けられていても良い。また、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の適用例の一つとして生理用ナプキンを挙げたが、例えばパンティライナー(おりものシート)等の吸収性物品にも適用できる。前述した各構成は、適宜組み合わせることができる。