以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1には、本発明の吸収性物品の第1実施形態であるおりものシートをその表面シート側からみた平面図が示されている。図2は、図1におけるI−I線断面を模式的に示した図である。
第1実施形態のおりものシート1は、図1に示すように、平面視して縦長の形状を有し、全体として長手方向中央部が内方に括れている。おりものシート1は、肌当接面側に位置する表面シート10、及び非肌当接面側に位置する裏面シート11を備えている。表面シート10及び裏面シート11はそれらの外周縁部において熱処理によって互いに接合され、これによりシール部15が形成されている。シール部15は、おりものシート1の外周縁全体に亘って形成されている。おりものシート1の幅方向中央域における非肌当接面(裏面シート11の外面)には、おりものシート1を下着に固定するための粘着部(図示せず)が、おりものシート1の長手方向に延びるように形成されている。
本明細書において、「長手方向」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材の長辺に沿う方向(図1では上下方向)であり、「幅方向」は、該長手方向と直交する方向(図1では左右方向)である。また、「肌当接面」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」は、吸収性物品又は吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に下着側(着用者の肌側とは反対側)に向けられる面である。
図3には、図1及び図2における表面シート10の斜視図が示されている。図4は、図3におけるII−II線断面図である。図3中、Yで示す方向がおりものシート1の長手方向であり、Xで示す方向がおりものシート1の幅方向である。第1実施形態の表面シート10は、第1の面10aと、これに対向する第2の面10bとを有する。第1の面10aは、表面シート10が、おりものシートや生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれたときに、着用者の肌側を向く面である。第2の面10bは、裏面シート11側を向く面である。表面シート10は、おりものシート1の長手方向Yに延びる畝部20及び溝部30を交互に有し且つ溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多い不織布からなる。畝部20及び溝部30は、それらの延びる方向Yと直交する方向Xに亘って交互に配列されている。また、表面シート10は、肌当接面を構成する表面層10Aと裏面シート11に最も近接して配されている裏面層10Bとを備える多層構造を有している。第1実施形態における表面シート10は、図3及び図4に示すように、表面層10Aと裏面層10Bとの間に配された中間層10Cを備え、全体として3層構造を有している。
畝部20は、表面シート10の構成繊維で満たされている。つまり畝部20内には空洞は存在していない。同様に、溝部30は、表面シート10の構成繊維で満たされている。但し、畝部20の繊維量と、溝部30の繊維量とは相違しており、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなされている。
畝部20は、表面シート10における相対的に厚みの大きな部位から構成されており、溝部30は、表面シート10における相対的に厚みの小さな部位から構成されている。その結果、畝部20の実質厚みは、溝部30の厚みよりも大きい。ここで実質厚みとは、表面シート10の裏面から各々の最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、表面シート10の繊維が存在する部分の長さを意味する。
図4に示すように、畝部20は、その延びる方向と直交する方向(図中、Xで示す方向)での断面において、第1の面10aの側は、上に凸の滑らかな曲線を描く輪郭となっている。畝部20における第1の面10aの側は、第2の面10bの側よりも高く盛り上がっており、これが周期的に連続している。これによって第1の面10aの側は、X方向に沿って波形形状になっている。従って、表面シート10の第1の面10a側が着用者の肌と接する場合には、畝部20の頂部及びその近傍の領域が部分的に接触することになり、全面接触に起因する蒸れによるべたつき感や、こすれに起因する刺激感が低減される。また、着用者から***された液が、着用者の肌に付着しづらくなる。
図4に示すように、畝部20は、X方向での断面において、第1の面10a側に頂部21を有し、この部位において実質厚みが最も大きくなっている。そして、X方向に関し、頂部21から離れるに連れ実質厚みが漸減している。したがって、表面シート10は、そのX方向に沿ってみたときに、実質厚みが周期的に変化したものとなっている。図には示していないが、畝部20は、その延びる方向(図4中、紙面と直交する方向)において、頂部21における実質厚みが何れの位置においてもほぼ同じになっている。第1実施形態の表面シート10において、畝部20と溝部30との間に明確な境界部は存在せず、一般に、X方向に関して隣り合う2つの頂部21間に位置する最も実質厚みの小さい部位及びその近傍の部位が溝部30となる。畝部20と溝部30との境界を明確に定義する場合には、畝部20の頂部21における見掛け厚みの1/2の厚みの位置を、畝部20と溝部30との境界部とする。
畝部20の見掛け厚みは、表面シート10の肌触りを良好にする観点から、好ましくは0.3〜5mmであり、更に好ましくは0.5〜2.5mmである。畝部20と溝部30との高低差D(図4参照)は、表面シート10のクッション性及び通気性を高め、更に液の拡散を制御する観点から、0.1〜3mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。畝部20及び溝部30の厚みや高低差Dは、マイクロスコープVH‐8000(キーエンス製)を用い、表面シート10の断面を50倍〜200倍に拡大観察して測定する。断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、表面シート10を切断して得る。
表面シート10のX方向における畝部20の幅は、肌触りと吸収性の観点から、1〜10mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。同様の観点から、表面シート10のX方向における溝部30の幅は、0.5〜7mmが好ましく、1〜3mmが好ましい。第1実施形態においては、畝部20と溝部30は同じ幅で形成されているが、これに限られず例えば表面シート10のX方向の中央域における畝部20の幅を、側部域における畝部20の幅よりも広くしてもよい。あるいは、畝部20及び溝部30の幅をランダムにするなど、所望の形態とすることができる。
畝部20の実質厚みは、見掛け厚みの60〜100%、特に70〜100%であることが好ましい。畝部20の実質厚みそれ自体は、最も大きい部位(頂部21)において0.2〜4mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。畝部20がこのような厚みであると、畝部20が倒れにくくなり、表面シート10のクッション性が良くなり、更に液の吸収性(液通過性)が良好となる。また、畝部20の実質厚みが、見掛け厚みより薄い場合、具体的には90%以下の場合には、おりものシート1の使用時に、該おりものシート1が湾曲形状に変形しても、表面シート10と低密度シート12との間に生じる隙間が大きくなることが防止される。また表面シート10が着用者の肌に柔軟にフィットする。なお、溝部30の実質厚みは、0.1〜1mmである。
畝部20と溝部30では、実質的な坪量が異なっている。換言すれば、畝部20と溝部30では繊維量が異なっている。具体的には、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなっている。畝部20及び溝部30がこのように形成されていることで、装着圧のような厚み方向の圧縮挙動に対して畝部20を潰れにくくしつつ、着用者の大腿部による圧縮圧のような幅方向の湾曲挙動に対しては溝部30の可撓性によって柔軟に変形させることが可能となっている。
畝部20及び溝部30の繊維量を坪量で表すと、畝部20の坪量は、30〜180g/m2、特に40〜130g/m2であることが好ましい。一方、溝部30の坪量は、10〜70g/m2、特に15〜50g/m2であることが好ましい。表面シート10の全体としての坪量は、30〜120g/m2、特に30〜100g/m2であることが柔軟性と不織布強度の観点から好ましい。畝部20の坪量は、溝部30を除去した畝部20の重量と面積から求める。畝部20と溝部30との境界は、見掛け厚みの測定の場合と同様に、測定する表面シート10の断面形状に基づき、変曲点を基準点(優先)とするか、45°の傾き位置を基準点とする。この上下2点の基準点を結ぶ直線で表面シート10を切断し、畝部20を得てその重量を測定する。溝部30の重量は、切断前の表面シート10の重量と畝部20の重量との差から求められる。溝部30の坪量の算出には、溝部30の面積が必要となるため、後述する画像解析装置等を使用して計測しておく。
表面層10Aは、裏面層10Bよりも親水性が低い。より具体的には、表面層10Aの構成繊維の接触角度は、裏面層10Bの構成繊維の接触角度に比してその値が大きい(90°に近い)。ここで、接触角度は、繊維の親水性の高低を示す指標となるもので、後述する測定方法により測定される、繊維上の水滴と繊維表面との角度であり、この接触角度が小さいほど繊維の親水性が高いと判断することができる。通常、この種の吸収性物品の表面シートの構成繊維の接触角度は50°以下であり、接触角度が30°以下である繊維は親水性が高いと言える。接触角度60〜85°の繊維は親水性が低い繊維であり、斯かる低親水性繊維を含んで構成される表面シート10は、表面親水性が低い。
表面層10Aは、畝部20において肌当接面側に凸状に湾曲し、溝部30において肌当接面側に凹状に湾曲している。即ち、表面層10Aは、畝部20において肌当接面側がおりものシート1の着用者の肌側に突出し非肌当接面側が凹状をなしていると共に、溝部30において肌当接面側が凹状をなし非肌当接面側が前記裏面層側に突出しており、これによってX方向に沿って波形形状になっている。
表面層10Aにおいては、構成繊維が均一には分布しておらず(実質厚みが均一にはなっておらず)、構成繊維の量(繊維量)が相対的に多い部位と少ない部位(実質厚みが相対的に厚い部位と薄い部位)とが存在する。第1実施形態における表面層10Aは、畝部20の頂部21において最も繊維量が多く、溝部30において最も繊維量が少ない。表面層10Aにおける繊維量は、頂部21から溝部30に向かうにつれて減少している。表面層10Aにおける各部の繊維量を坪量で表すと、頂部21における坪量は、15〜40g/m2、特に20〜35g/m2であることが好ましく、頂部21と溝部30との間の中間部(図4中、符号bが付されている部分)における坪量は、10〜40g/m2、特に15〜30g/m2であることが好ましく、溝部30における坪量は、10〜35g/m2、特に12〜30g/m2であることが好ましい。
また、第1実施形態における表面層10Aは厚み(実質厚み)も均一ではなく、畝部20の頂部21における厚みaが最も大きく、頂部21と溝部30との中間部における厚みb、溝部30における厚みcの順で厚みが小さくなっている(厚みa>厚みb>厚みc)。厚みaは、0.6〜5mm、特に1.0〜4mmであることが好ましく、厚みbは、0.4〜4mm、特に0.5〜3mmであることが好ましく、厚みcは、0.2〜3mm、特に0.3〜2mmであることが好ましい。
中間層10Cについては、肌当接面側(表面層10Aとの対向面側)は、表面層10Aと同様に、凹凸が形成されてX方向に沿って波形形状になっているが、非肌当接面側(裏面層10Bとの対向面側)は、実質的に凹凸が形成されておらず平坦になっている。
中間層10Cは、表面層10Aと同様に構成繊維が均一には分布しておらず、構成繊維の量(繊維量)が相対的に多い箇所と少ない箇所とが存在する。第1実施形態における中間層10Cは、畝部20の頂部21において最も繊維量が多く、溝部30において最も繊維量が少ない。中間層10Cにおける繊維量は、頂部21から溝部30に向かうにつれて減少している。中間層10Cにおける各部の繊維量を坪量で表すと、頂部21における坪量は、10〜100g/m2、特に15〜80g/m2であることが好ましく、頂部21と溝部30との中間部(図4中、符号bが付されている部分)における坪量は、5〜70g/m2、特に10〜60g/m2であることが好ましく、溝部30における坪量は、0〜30g/m2、特に5〜25g/m2であることが好ましい。
裏面層10Bは、肌当接面側及び非肌当接面側共に平坦な平板状の層である。裏面層10Bにおいては、構成繊維は層全体に略均一に分布しており、厚みも略均一になっている。裏面層10Bは、後述するように液の保持層としての役割を果たすものであり、その内部に一定量以上の液を収容し得る空間(繊維間の空隙)が形成されていることが好ましい。斯かる観点から、裏面層10Bは、坪量が15〜40g/m2、特に20〜35g/m2であり、密度が0.01〜0.1g/m3、特に0.02〜0.06g/m3であることが好ましい。また、裏面層10Bの実質厚みは、液保持性の観点から、好ましくは0.2〜6mm、更に好ましくは0.5〜3mmである。
裏面層10Bの構成繊維は主として該裏面層10Bの厚み方向(Z軸方向)に配向している。つまり、裏面層10Bの構成繊維はZ軸配向性が高い。このように裏面層10Bの構成繊維がその長さ方向をZ軸方向に略一致させて存在していることにより、裏面層10Bの内部の空間量が増大し、液の保持量が増大する。ここで、「構成繊維が主としてZ軸方向に配向している」とは、下記(繊維配向の評価方法)において、配向角度が40〜140°、好ましくは60〜120°の場合を意味する。
(繊維配向の評価方法)
構成繊維の配向角度の測定には、顕微鏡による断面観察を行うところ、繊維が延びる形状を捉えて測定する必要があること、及び表面シートにおける畝部と溝部構造の配向性を評価する必要があることから、表面層10A及び中間層10CにおいてはMD方向から45度傾斜した断面を観察し、裏面層10Bにおいては、後述する接触角度の測定方法と同様に、MD方向断面をCD方向側から観察した。測定用サンプルの奥行きは、キーエンス製マイクロスコープVH−8000に中倍率ズームレンズの場合、2mm以内とするが、一般に焦点深度が深い電子顕微鏡(SEM)を使用した場合、5mm以内で可能である。本発明では、日本電子(株)製JCM−5100を使用した。顕微鏡による断面観察で撮影した断面写真を、画像処理ソフトウエア〔(株)日本ローパーメディアサイバネティックス製、Image−PRO PLUS Ver.6.2(日本語版)〕を使用して解析し、繊維を二値化し、離散二次元フーリエ変換し、X−Yグラフ化を行ってパワースペクトルを得る。このパワースペクトルは、繊維の配向がある場合には楕円となり、繊維の配向が強い場合には扁平率の大きい楕円となり、繊維の配向がランダム化されているほど真円に近づく。ここで、繊維の配向角度は、X軸における楕円形の長軸の傾きであり、長軸と短軸の比が配向強度となる。尚、上述したフーリエ変換によるX−Yグラフ化の後、「文化財保存修復学会第26回大会研究発表要旨集,44−45(2004)」記載の方法を行っても良く、あるいは該方法を用いて画像処理から配向角度及び配向強度を求めても良い。また、表面層10A及び中間層10Cにおける構成繊維の配向角度及び配向強度は、これらの層が凹凸形状(畝溝構造)を有していることから、畝部20の頂部21から溝部30を幅方向に3〜4分割して畝部20及び溝部30を含まない部分で測定する。
繊維層の構成繊維をその厚み方向に配向させる方法としては、例えばエアレイド法による繊維層の作製が挙げられる。エアレイド法は、周知の通り、気流にのせた繊維をネット上に落下堆積させることによりウエブ形成を行う工程を含む不織布の製造方法である。また、後述する製造方法のように、カードウエブ等の繊維の絡合や結合が生じていない未結合ウエブに対して、該ウエブの一面側から厚み方向に空気流等の流体を吹き付けることにより、構成繊維が主としてZ軸方向に配向している繊維層(裏面層)を作製することができる。このようにウエブの一面側から厚み方向に流体を吹き付けることによって得られた裏面層10Bは、その肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、該裏面層10Bの厚み方向に配向している繊維の割合が増大している構成となる。
また、第1実施形態における中間層10Cは、その肌当接面側(表面層10A側)から非肌当接面側(裏面層10B側)に向かうにつれて、該中間層10Cの厚み方向(Z軸方向)に配向している繊維の割合(繊維の配向角度)が増大している。斯かる構成により、畝部20が潰れにくくなる。
また、第1実施形態における表面シート10においては、その畝部において表面層10Aが最も構成繊維のZ軸配向性が低く、中間層10C、裏面層10Bの順で構成繊維のZ軸配向性が高くなる。つまり、多層構造の表面シート10を構成する層の中で、裏面層10Bが最も構成繊維のZ軸配向性が高い。従って、表面シート10全体として、肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、該表面シート10の厚み方向(Z軸方向)に配向している繊維の割合が増大している。斯かる構成により、表面シート10の表面における繊維の毛羽立ちを抑えながら液の通過性を高めること、及び畝部20から溝部30への表面シート10の表面における液の流れを促進することが可能となる。裏面層10Bの構成繊維の配向角度は上述したように60〜120°であり、表面層10A及び中間層10Cそれぞれの該配向角度は好ましくは、表面層10Aが0〜30°、中間層10Cが5〜110°である。尚、構成繊維の配向角度に関し、180〜360°については、0〜180°までの範囲に換算する。また、表面層10Aにおける構成繊維の配向角度は、表面シート10の傾斜を基準としている。
第1実施形態のおりものシート1は、上述の如き3層構造の表面シート10を備えていることにより、特に経血等の粘性が比較的高い液に対して優れた吸収性を示す。即ち、身体から***された液は、先ず表面層10Aの畝溝構造(畝部20及び溝部30)に付着することになるところ、上述したように表面層10Aは低親水性であるため、畝部20の頂部21やその近傍に付着した液は、これらの部位では吸収(浸透)されず、畝部20の傾斜面を伝って溝部30へ移動する。尚、このような畝部20から溝部30への液の移動が生じるのは、主として表面層10Aと着用者の肌との密着性が悪く両者間に隙間が生じている場合であり、該密着性が良好で隙間がほとんど無い場合は、***された液の多くは直接溝部30に付着する。溝部30の表面上に付着した液は、着用時におりものシート1の肌当接面側から厚み方向にかかる着用者の体圧等により、溝部30の内部に押し込まれ、表面層10Aや中間層10Cを介して、更にその直下に配されている裏面層10Bに押し込まれて吸収される。
溝部30の表面(表面層10Aの表面)から内部への液の押し込みの際には、畝部20及び溝部30がおりものシート1の長手方向に延びて形成されていることにより、該液のおりものシート1の幅方向への拡散が抑制され、これにより横漏れの防止が図られる。このような液の吸収挙動は、特に液の粘度が中程度(液温25℃での粘度が50〜300mPa・s程度)の場合に発現しやすい。***された液が粘度の高い高粘性(液温25℃での粘度がおよそ300mPa・s以上)である場合、その吸収挙動は上述した中粘性の場合と略同じであるが、高粘性の液は中粘性の液に比べて表面シート10の表面に長時間残留する傾向があり、このため、高粘性の液は溝部30の表面上に付着後、該溝部30に沿っておりものシート1の長手方向に拡散しつつ裏面層10Bへ移動する。また、***された液が粘度の低い低粘性(液温25℃での粘度がおよそ50mPa・s未満)である場合は、該液が付着した部位で速やかに吸収される傾向が強く、溝部30のみならず畝部20でも液の吸収が起こる。経血は、通常、中粘性〜高粘性の液である。尚、前記粘度はブルックフィールド型粘度計を用いて測定される。
表面シート10(不織布)におけるこのような現象は、液体の多孔材料への浸透の解析に用いられる下記のルーカス−ウォッシュバーン(Lucas-Washburn)の式を用いて説明することができる。下記式中、lは浸透深さ(拡散距離)、rは毛管半径、γは液体の表面張力、θは接触角度、ηは粘度、tは時間である。ルーカス−ウォッシュバーンの式によれば、不織布(毛管構造体)における液の移動の制御因子は、毛管構造体の構造に由来するr、毛管構造体の表面と液体との接触状態を示すθであり、毛管半径が大きいほど、表面の濡れ性が高いほど、拡散距離が長くなる。ここで、低粘性液では、分母成分である粘性項(η)は小さく、繊維表面(不織布表面)との濡れ性項(cosθ)や不織布の繊維空間の大きさ項(r)による毛管力因子(分子成分)の影響が大きい。このため低粘性液は、毛管力によって、毛管構造体内を拡散する。一方、高粘性液では、粘性項(η)による影響が強くなり、毛管力因子のひとつである濡れ性項(cosθ)の影響が小さくなるため、低粘性液に比して拡散距離(l)が小さくなり、毛管構造体内での拡散が生じ難くなる。しかし、不織布の繊維空間の大きさ項(r)の影響は大きく、rの大きな繊維粗部(溝部30)や開孔31から液が移動しやすい。即ち、本実施形態に係る表面シート10は、本来、低粘性液に比してその内部を高粘性液が拡散し難いが、溝部30や開孔31等の繊維粗部を通って高粘性液は流れやすい構造であるといえる。
上述した第1実施形態のおりものシート1における液の吸収システムにおいては、表面層10A及び中間層10Cにおける液通過性が高いほど、即ち、表面層10A及び中間層10Cを通過する液の速度が速いほど、おりものシート全体としての液吸収性が向上する。この表面層10A及び中間層10Cにおける液通過性は、主として両層10A及び10Cそれぞれの、1)おりものシートの幅方向(図4のX方向)の断面形状、及び2)繊維量分布によって制御される。第1実施形態においては、上述したように表面層10A及び中間層10C共に、肌当接面側がX方向に沿って波形形状をなし且つ溝部30において繊維量が最も少なくなっているため、溝部30において液の引き込み性が最も高く、これにより液は、溝部30における両層10A及び10Cを通じて速やかに裏面層10Bへ移動する。
表面層10Aは、上述したように裏面層10Bよりも親水性が低く(構成繊維の接触角度が大きく)、その構成繊維の接触角度は、好ましくは40〜88°、より好ましくは60〜85°であり、更に好ましくは70〜80°である。該接触角度が40°未満では、親水性が高くなることにより、繊維表面が濡れ易くなり着用者に不快な感覚を与えるおそれがあり、該接触角度が88°を越えると、疎水性が高くなることにより、表面層10Aに隣接する中間層10Cあるいはその下方に位置する裏面層10Bに液が移動し難くなり漏れが生じるおそれがある。ここで、「層の構成繊維の接触角度」とは、層の構成繊維が複数種存在する場合は、それらのうちで最も接触角度が低い構成繊維の該接触角度を意味する。繊維の接触角度のコントロールは、界面活性剤等や繊維を構成する樹脂を選択する等で行うことができる。界面活性剤等は、通常、繊維に練りこんだり、繊維表面に塗布したりして使用される。接触角度は次のようにして測定される。下記測定方法による接触角度が40°未満の場合は親水性、40°以上90°未満の場合は低親水性、90°以上の場合は疎水性である。
(繊維の接触角度の測定方法)
繊維の接触角度は、本出願人の先の出願に係る特開2006−183168号公報に記載の接触角度の測定方法と同様に行う。具体的には、キーエンス製マイクロスコープVH−8000に中倍率ズームレンズ(照明リング付)を90°に倒した状態で使用し、500倍の条件に設定して行った。測定用サンプルは、表面シート(ウエブ)を長手方向70mm×幅方向40mmの大きさにカットしたものを用いた。測定用サンプルにおいては、長手方向がウエブのMD方向/幅方向がCD方向であり、測定環境は、20℃/50%RHであり、測定用サンプルは、測定面を上向きにした状態として、ウエブのCD方向から観察できるように測定ステージにセットした。測定用サンプルにおいては、焦点外の繊維を極力少なくするため、その奥行きは0.5〜2mm程度とすることが好ましい。CD方向からウエブを観察する理由は、一般的にウエブの繊維はMD方向に配向されていることが多く、繊維が測定画面の幅方向に配列する可能性が高くなるためである。このようにセットすることによって、繊維の長さ方向に対して垂直な方向からレンズで観察する。
次いで、セットされた測定用サンプルに、イオン交換水を充填した霧吹き(なるべく霧の状態が細かくなるような道具を使用する)にて水滴を繊維表面に付着させ、付着5秒以内(なるべく2〜3秒)に画像を取り込む。付着後短時間で画像取り込みが必要な理由は、付着した水滴がマイクロスコープの測定部から出る光によって蒸発してしまうことと、油剤による接触角度変化をおこさないようにするためである。水滴の両端もしくは片端の焦点が鮮明な観察結果5点の接触角度を計測し、それらの平均値を「接触角度」とした。接触角度は、画像又は印刷した写真に対して、図14のように、水滴の繊維との接線を引き、画像解析又は分度器等によって、計測を行う。尚、接触角度の測定は、表面シートのままではなく、構成繊維を取り出して計測することも可能である。
また、第1実施形態のおりものシート1においては、表面層10Aの親水性と中間層10Cの親水性とが略同じ、即ち両層10A,10C共に低親水性であることが、表面シート10における液による濡れを防ぎ、べたつき感を低減する観点から好ましい。ここで、「親水性が略同じ」とは、両層10A及び10Cそれぞれについての上述した測定方法による構成繊維の接触角度の差が、±5°の範囲にある場合を意味する。
一方、第1実施形態のおりものシート1においては、裏面層10Bは、表面層10A及び中間層10Cよりも親水性が高いことが、導液性と液の保持性の点から好ましい。表面層10Aと裏面層10B(中間層10C)との上述した測定方法による構成繊維の接触角度の差は、20°以上、特に30〜50°であることが好ましい。また、裏面層10Bの構成繊維の接触角度は、好ましくは20°以下〜50°、更に好ましくは20〜40°である。ここで、20°以下とは、液の親水性が高く繊維上に留まらずに流れてしまう現象がおこった時の便宜的な表現であり、20°と記載した場合は接触角度が測定によって確定できている。
上述した本発明に係る液の吸収システムを確実に作用させる観点から、裏面層10Bは、表面層10A及び中間層10Cに比べて繊維密度が高いことが好ましい。斯かる構成により、経血のような粘性のある液が表面層10Aやその直下にある中間層10Cにて吸収されることが防止されると共に、体圧等による溝部30から裏面層10Bへの通液性が一層向上し、優れた液吸収性が得られる。表面層10Aや中間層10Cにて経血のような粘性のある液が吸収されると、べたつきの原因となるおそれがある。繊維密度のコントロールは、繊維の太さ、形状、捲縮形状、繊維樹脂等により行うことができる。
裏面層10Bの繊維密度は、好ましくは0.005〜0.08g/cm3、更に好ましくは0.01〜0.05g/cm3である。表面層10A(中間層10C)の繊維密度は、好ましくは0.02〜0.1g/cm3、更に好ましくは0.04〜0.08g/cm3である。また、表面層10A(中間層10C)の繊維密度と裏面層10Bの繊維密度との比〔表面層(中間層)/裏面層〕は、好ましくは1.2〜10、更に好ましくは1.5〜5である。表面層10A、中間層10C、裏面層10B各層の繊維密度は次の方法で測定される。
(繊維密度の測定方法)
測定用サンプルとして、測定対象の表面シートが組み込まれ且つ荷重がかかっていない状態の吸収性物品を用いる。画像解析装置等を用いて、大きさ(寸法)及び重量を測定した測定用サンプルのMD方向断面を観察し、各層及び測定用サンプル全体のMD方向断面の断面積を算出する。該画像解析装置としては、後述する開孔31の大きさの計測に使用した画像解析装置と同様のものを用いることができる。表面シートを構成する各層を分離し、各層の重量を求める。また別途、各層の断面積と測定用サンプルのCD方向長さとから各層の体積を求め、各層について、重量を体積で除することで目的とする各層の繊維密度を算出する。
また、上述した本発明に係る液の吸収システムを確実に作用させる観点から、畝部20は、図2及び図4に示すように、おりものシート1の幅方向Xでの断面において、その頂部21が上に向かって凸に湾曲し且つ該頂部21から下部に向かうにつれて幅が増大していることが好ましい。より具体的には、畝部20の断面形状は、三角形形状、山型形状、半円形状等であることが好ましい。畝部20がこのような断面形状を有していることにより、畝部20の頂部21やその近傍に付着した粘性のある液が、該畝部20の傾斜した表面を伝って溝部30へ移動し易くなり、上述した本発明に係る液の吸収システムがより確実に作用するようになる。また、体圧等の圧力がかかることにより表面シート10の表面上に液が付着して残るという不都合も抑えられる。更に、畝部20の断面形状が上記のようになっていることに加えて、その頂部21(凸部)が図3に示すようにおりものシート1の長手方向Yに連続的に形成されている、即ち、上述したように畝部20がおりものシート1の長手方向に延びていることが好ましく、この場合、方向Yに連続的に形成されている頂部21の高さは、一定であっても良く、変動していても良い。
これに対し、図5に示すように、畝部20の頂部21が平坦となっており、図2及び図4に示すように上に向かって凸に湾曲していない場合には、平坦な頂部21に液が付着したままで上述した液の溝部30への移動が起こりにくい。従って、図5に示す如き断面形状(おりものシートの幅方向の断面形状)、具体的には台形形状、凸型形状、四角型形形状、矩形形状等の断面形状を有する畝部は、図2及び図4に示す如き断面形状を有する畝部に比べて液の吸収性に劣り、表面シート上に液が付着したまま残留し易い。
上述したように、第1実施形態においては、おりものシート1の外周縁全体に亘って、表面シート10及び裏面シート11が熱処理によって互いに接合されてなるシール部15が形成されている。上述したように、表面シート10は長手方向に延びる畝溝からなる畝溝構造を有しているため、該畝溝構造を熱処理して厚みの均一なシール部とした場合、該シール部の近傍に位置する畝溝構造と該シール部との間に大きな段差が生じ、着用時の不快感につながるおそれがある。特に、図1に示すように、おりものシートの長手方向中央部に括れ部が存在する場合、該括れ部に位置するシール部においては、このような問題が生じ易い。そこで、このような畝溝構造の採用に起因する段差の減少を図り、より良好な着用感を得る観点から、シール部15、特におりものシート1の長手方向中央部あるいは着用者の***部に対向する***部対向部に存する括れ部に位置する、シール部15は、その内周縁から外周縁に向かうにつれて厚みが減少していることが好ましい。このような厚み分布を有するシール部15は、表面シート10と裏面シート11とを常法通り熱処理する際に、両シート10,11におけるシール部15の内周縁となる部位から外周縁となる部位に向かって多段階で圧力をかけ、且つ各段階における圧力を、外周縁となる部位に向かうにつれて増大させることにより得られる。
上記観点から、シール部15は、おりものシート1の外観形状と概ね沿う方向に線状に形成されることが好ましい。また、おりものシート1の可撓性を良好にしながらシール部15が安定するようにする観点から、シール部15は図1に示す如き平面視(上面視)において、互いに交差していない複数本の短い線(好ましくは長さが5mm以下)を含んで構成されていることが好ましく、また漏れ難くする観点から、シール部を構成する線(表面シートの圧縮部分)が平面視において表面シート10の畝部20と重なる部分を有することが好ましい。また、シール部15が接着剤を含んで構成されていることがシール部15の強度の観点から好ましい。
次に、第1実施形態のおりものシート1の構成材料等について説明する。裏面シート11としては、それぞれ、従来のこの種の吸収性物品において用いられているものを特に制限なく用いることができる。裏面シート11としては、液不透過性ないし撥水性の材料、例えば熱可塑性樹脂製のフィルムや、これに不織布をラミネートしたものを用いることができる。また、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布や、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布を用いることもできる。裏面シート11は透湿性を有していてもよい。透湿性を有する裏面シートとしては、熱可塑性樹脂及びそれと相溶性のない微粒子を含む樹脂組成物をフィルム状に押し出し、一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムや、上述のSMS不織布が挙げられる。
表面シート10(表面層10A、中間層10C、裏面層10B)の構成繊維としては、天然繊維、半天然繊維、合成繊維等、当該技術分野において従来用いられている繊維を特に制限なく用いることができる。繊維間の詰まりすぎを起こさず、表面シート10に柔軟性を付与する観点から、合成繊維を用いることが好ましい。合成繊維の配合量は、表面シート全体の50重量%以上が好ましく、70%重量以上がより好ましい。もちろん、合成繊維100%から表面シート10を構成してもよい。表面シート10が合成繊維100%からなる場合、着用者の体圧が加わった状態下でも畝溝構造が潰れ難くなるので、溝部30に沿った通気性が良好となる。
表面シート10に使用する合成繊維としては、例えば自己融着性繊維である芯鞘構造繊維やサイドバイサイド型繊維が挙げられる。この他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の単繊維や複合繊維を用いることができる。畝溝構造及び開孔形状の成形性の観点から、ポリエチレンを鞘成分に有する芯鞘構造繊維や、ポリエチレン部分を有するサイドバイサイド型繊維を用いることが好ましい。繊維の(平均)繊度は、1〜6dtexの範囲が好ましい。
表面シート10に使用する合成繊維として捲縮繊維を用いると、表面シート10のクッション性が一層向上するので好ましい。捲縮繊維としては、二次元に捲縮した繊維及びコイル状の三次元に捲縮した繊維のいずれも用いることができる。
表面シート10に使用する合成繊維として、熱の付与によって伸長する繊維を用いても表面シート10のクッション性が一層高まるので好ましい。この理由は、表面シート10の製造中に付与された熱に起因する繊維間の詰まりが防止されるからである。そのような繊維としては、例えば本出願人の先の出願に係るWO2007/66599が挙げられる。
上述の捲縮繊維及び熱伸長性繊維のいずれを用いる場合にも、それらの繊維は、表面シート10中に合計で30〜70重量%配合されていることが好ましい。
第1実施形態のおりものシート1は、裏面シート11の表面に配された粘着部(図示せず)を介して下着の内面に固定されて使用される。第1実施形態のおりものシート1は、上述した液の吸収システムの作用により、液吸収性に優れ、尿などの粘性の低い液のみならず、経血等の粘性の比較的高い体液についても、表面シート上に残さずにおりものシート1の内部に吸収保持することができるため、べたつきが発生し難く、着用感等の使用感が良好である。
図6及び図7には、本発明の吸収性物品の第2実施形態であるおりものシートが示されている。第2実施形態については、上述した第1実施形態のおりものシートと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態のおりものシートについての説明が適宜適用される。
第2実施形態のおりものシートは、図6及び図7に示すように、表面シート10が表面層10A及び裏面層10Bからなる2層構造である点で、表面シートが3層構造である第1実施形態のおりものシートと異なる。また、第2実施形態における表面層10Aは、溝部30に開孔31を有しており、この点においても開孔31を有していない第1実施形態のおりものシートと異なる。開孔31の形成は、主として表面シートの層構造に起因している。即ち、第2実施形態の如く表面シートが2層構造の場合には、2層構造の表面シートにおける表面層(着用者の肌と接する層)の直下に位置する層(第2実施形態では裏面層10B)に液保持能が必要とされるため、該表面層には液通過性を高めるための開孔を形成することが望ましい。一方、第1実施形態の如く表面シートが3層以上の多層構造の場合には、上述したように表面層及びその直下に位置する層(第1実施形態では中間層10C)の断面形状及び繊維量分布によって、3層構造の表面シートの表層域における液の通過性が制御されるため、液通過性を確保する目的で表面層に開孔を形成する必要は特に無い。
図6に示すように、開孔31は溝部30の延びる方向に沿って一定の間隔をおいて規則的に形成されている。したがって、第2実施形態における表面層10Aには、そのY方向(おりものシートの長手方向)に沿って一定の間隔をおいて配置された多数の開孔31からなる開孔列が、表面層10AのX方向(おりものシートの幅方向)に亘って多列に形成された状態になっている。すべての開孔列における開孔31の配置のピッチは同じになっている。隣り合う2つの開孔列においては、表面層10AのX方向に関して開孔31が同位置に位置している。そして、表面層10AのX方向に沿ってシート全域を見たときに、必ず開孔31が形成されていない部位が存在するように該開孔31は配置されている。更に、表面層10A全体で見ると、開孔31は、表面層10AのX方向において多列の列をなし、かつY方向においても多列の列をなすように分散配置されている。開孔31がこのように配置されていることで、開孔31が例えば千鳥格子状に配置されている場合に比較して、繊維のより分けによる開孔31の形成を効率的に行うことができる。
開孔31は、表面層10Aの構成繊維がより分けられて形成されている。そして、開孔31の端部付近においては、繊維の熱変形に起因する膜状構造が形成されていない。これに起因して、開孔31の端部付近は、剛性が低く、変形に対する柔軟性及び形状復元性に優れている。また、液が通過する構造になっているので、開孔31の端部付近に液が溜まることがない。尚、表面シート全体として見ると、その構成繊維は、基本的に繊維どうしが交絡しているか、又は繊維どうしが融着している。これによって不織布の形態が維持されている。
開孔31は、表面層10Aの平面視において種々の形状をとり得る。例えば円形、長円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の形状、又はこれらの組み合わせの形状が挙げられる。開孔31の形状や大きさは、吸収性物品の具体的な用途に応じて適宜決定すればよい。開孔31の大きさは、表面層10Aの平面視における投影面積で表して、0.5〜5mm2程度であることが、液の透過性及び表面層10Aの強度維持の観点から好ましい。開孔31の大きさは、画像解析装置を使用して計測する。具体的には、光源〔サンライト SL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5;LPL(株)社製〕、レンズ〔24mm/F2.8Dニッコールレンズ〕、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノープス(株)社製〕を用いて、表面シート10の裏面1B側の画像を取り込む。取り込まれた画像をNEXUS社製の画像解析ソフトNEW QUBE(ver.4.20)によって開孔31の部分を二値化処理する。二値化処理された画像から得られる個々の面積の平均値を開孔の大きさとする。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の観点から、表面層10Aが裏面層10Bよりも親水性が低い(構成繊維の接触角度が大きい)ことが好ましく、また、裏面層10Bは表面層10Aに比べて繊維密度が高いことが好ましい。また、第2実施形態における裏面層10Bは、その構成繊維が主として該裏面層10Bの厚み方向(Z軸方向)に配向しており、且つその肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、該裏面層10Bの厚み方向に配向している繊維の割合が増大している。
第2実施形態のおりものシートによっても、第1実施形態のおりものシートと同様の効果が奏される。特に、上述した第2実施形態のおりものシートの構成は、表面シートが2層構造であるため、厚みの薄いおりものシート(パンティライナー)にも好適である。
次に、本発明の吸収性物品の好適な製造方法について、上述した各実施形態のおりものシートの製造方法を例にとり説明する。
第1実施態様の吸収性物品の製造方法は、上述した第1実施形態のおりものシート(表面シートが3層構造のおりものシート)の製造方法である。先ず、図3及び図4に示す表面シート10の製造方法について説明する。3層構造の表面シート10は、図8に示す装置40を用いて製造される。この装置40を用いた製造方法は、(イ)凹凸賦型ベルト上に表面層前駆体10A’及び中間層前駆体10C’を順次積層して積層体を得、該積層体を該凹凸賦型ベルトと共に押圧する工程、(ロ)該凹凸賦型ベルト上に位置する該積層体に該中間層前駆体10C’側から流体を吹き付ける工程、(ハ)該凹凸賦型ベルト上に位置する該積層体上に裏面層前駆体10B’を積層して3層構造の積層体とし、該3層構造の積層体に裏面層前駆体10B’側から流体を吹き付ける工程、及び(ニ)該3層構造の積層体に熱風処理を施して該積層体を不織布化する工程を有する。
表面層前駆体10A’は、最終的に上述した第1実施形態の表面シート10を構成する表面層10Aとなるものであり、表面層10Aの構成成分を含む繊維集合体である。中間層前駆体10C’は、最終的に上述した第1実施形態の表面シート10を構成する中間層10Cとなるものであり、中間層10Cの構成成分を含む繊維集合体である。裏面層前駆体10B’は、最終的に上述した第1実施形態の表面シート10を構成する裏面層10Bとなるものであり、裏面層10Bの構成成分を含む繊維集合体である。これらの繊維集合体としては、カードウエブ等の繊維の結合や絡合が生じていないもの(未結合ウエブ)か、又はその程度が低いもの(弱結合ウエブ)や、不織布等の繊維の結合や絡合が生じているもの(結合ウエブ)を用いることができる。中間層前駆体10C’及び裏面層前駆体10B’としては、これら何れのウエブを用いても良く、これらの中で最も引張強度が低い未結合ウエブを用いることも可能である。一方、表面層前駆体10A’は、搬送支持体としての機能が求められるため、ある程度の引張強度を有していることが好ましく、斯かる観点から、表面層前駆体10A’としては、弱結合ウエブや結合ウエブを用いることが好ましい。弱結合ウエブや結合ウエブは、未結合ウエブに公知の不織布化処理(エアスルー処理、スパンレース処理など)を施すことにより得られる。
図8に示す装置40は、凹凸賦型ベルト41及び一対の押圧ロール50,51を備えている。凹凸賦型ベルト41は、前記積層体を搬送する搬送ベルトとして機能するもので、図9に示すように、第1の面41aと、これに対向する第2の面41bとを有する。第1の面41aは、前記積層体が載置される面であり、第2の面41bは、前記積層体が載置されない面である。凹凸賦型ベルト41は、前記積層体の搬送方向〔図8中矢印MDで示す方向、Machine Direction(MD)〕と直交する方向〔CD(Cross Direction)〕に延びる山部42及び谷部43を交互に有している。山部42及び谷部43は、それらの延びる方向(CD)と直交する方向(MD)に亘って交互に配列されている。凹凸賦型ベルト41は、山部42において第1の面41a側に突出しており、谷部43において第1の面41a側に凹状に湾曲している。山部42の頂部44及びその近傍を除く部分には、凹凸賦型ベルト41をその厚み方向に貫通する孔45が多数形成されている。山部42と谷部43との高低差はベルト41の全域において略同一である。また、一対の押圧ロール50,51は、何れもロールの軸方向と直交する方向の断面形状が図8に示すように真円形状をなしており、周面は滑らかで凹凸を有していない。凹凸賦型ベルト41は一対の押圧ロール50,51間を通過するようになされており、押圧ロール50は凹凸賦型ベルト41の第1の面41a側に、押圧ロール51は凹凸賦型ベルト41の第2の面41b側にそれぞれ配されている。
図8に示す装置40は、第1噴射ノズル52及び第2噴射ノズル53を備えている。第1噴射ノズル52及び第2噴射ノズル53は、凹凸賦型ベルト41の第1の面41aに対向するように配置されている。各ノズル52,53は、凹凸賦型ベルト41の全幅にわたり流体を噴射できるような構造になっている。ノズル52,53は、前記積層体の搬送方向MDに関し、第1噴射ノズル52が上流側に位置し、第2噴射ノズル53が下流側に位置している。また、凹凸賦型ベルト41を挟んでノズル52,53それぞれの反対側には、各ノズルから噴射される流体を吸引する吸引ボックス54,55が、各ノズルと対向するように配置されている。
第1噴射ノズル52及び第2噴射ノズル53から噴射される流体としては、水等の液体及び空気等の気体を使用することが可能である。流体の種類は、凹凸賦型ベルト41上に導く繊維集合体(前記各前駆体)によって適宜選択する。第1実施態様では、第1噴射ノズル52及び第2噴射ノズル53共に、水蒸気流を噴射する。
(イ)の工程においては、凹凸賦型ベルト41の第1の面41a上に、表面層前駆体10A’及び中間層前駆体10C’を順次積層して積層体を得、該積層体を凹凸賦型ベルト41と共に、図8中矢印の方向に回転している一対の押圧ロール50,51間を通過させる。このとき、該積層体は、図10(a)に示すように、押圧ロール50と凹凸賦型ベルト41との間においてその厚み方向に押圧され、これにより凹凸賦型ベルト41の第1の面41aに沿うように変形する。凹凸賦型ベルト41の第1の面41aは、変形した該積層体によって完全に被覆される。該積層体において、凹凸賦型ベルト41の山部42の頂部44に当接する部位は、最終的に溝部30となる部位であり、凹凸賦型ベルト41の谷部43に当接する部位は、最終的に畝部20の頂部21となる部位である。
次いで(ロ)の工程において、凹凸賦型ベルト41上で変形した前記積層体に、第1噴射ノズル52から噴射された流体が、中間層前駆体10C’側から吹き付けられる。吹き付けられた流体は、凹凸賦型ベルト41の孔45を介して反対側に吹き抜ける。この流体の吹き付けによる圧力で、中間層前駆体10C’の主として流体の吹き付け面側の構成繊維は、図10(b)に示すように該前駆体10C’の厚み方向に配向する。この結果、中間層10Cの上述した構成(肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、中間層10Cの厚み方向に配向している繊維の割合が増大している)が作られる。
次いで(ハ)の工程において、凹凸賦型ベルト41上に位置する、表面層前駆体10A’及び中間層前駆体10C’からなる前記積層体上に、裏面層前駆体10B’を積層して3層構造の積層体とする。そして、該3層構造の積層体に、第2噴射ノズル53から噴射された流体が、該裏面層前駆体10B’側から吹き付けられる。この流体の吹き付けによる圧力で、裏面層前駆体10B’の構成繊維は、図10(c)に示すように該前駆体10B’の厚み方向に配向する。この結果、裏面層10Bの上述した構成(裏面層10Bの構成繊維が主として該裏面層10Bの厚み方向に配向しており、且つその肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、該裏面層10Bの厚み方向に配向している繊維の割合が増大している)が作られる。
次いで(ニ)の工程において、前記3層構造の積層体に熱風処理を施して該積層体を不織布化する。(ニ)の工程で使用する熱風処理装置56は、該積層体の表面側から裏面側(凹凸賦型ベルト41側)に向けて該積層体の全幅に亘って熱風を吹き付けることができるもので、通常のエアスルー不織布の製造に用いられる公知の熱風処理装置と同様に構成されている。この積層体の熱風処理により、各層が不織布化されると共に各層間が接合されて一体化され、更には目詰まりが生じた不織布の嵩を回復させ、あるいは繊維変形(捲縮又は伸長)を発現させ、長尺の表面シート10が得られる。熱風処理は1段階で行ってもよいし、例えば不織布化の促進のための熱風処理と不織布の嵩回復のための熱風処理とのように、複数段階以上に分けて行ってもよい。
このようにして得られた長尺の表面シート10を、別途製造した裏面シート11と共に常法に従い加工して、目的とする第1実施形態のおりものシート1を得る。
次に、第2実施態様の吸収性物品の製造方法について説明する。第2実施態様については、上述した第1実施態様の製造方法と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施態様の製造方法についての説明が適宜適用される。
第2実施態様の吸収性物品の製造方法は、上述した第2実施形態のおりものシート(表面シートが2層構造で且つ開孔が形成されているおりものシート)の製造方法である。先ず、図6及び図7に示す表面シート10の製造方法について説明する。2層構造で且つ開孔が形成されている表面シート10は、図11に示す装置60を用いて製造される。この装置60を用いた製造方法は、(ホ)凹凸賦型ベルト上に表面層前駆体10A’を載置し、該表面層前駆体10A’を該凹凸賦型ベルトと共に押圧する工程、(ヘ)該凹凸賦型ベルト上に位置する該表面層前駆体10A’に直接流体を吹き付けて開孔を形成する工程、(ト)該凹凸賦型ベルト上に位置する該表面層前駆体10A’上に裏面層前駆体10B’を積層して2層構造の積層体とし、該2層構造の積層体に裏面層前駆体10B’側から流体を吹き付ける工程、及び(チ)該2層構造の積層体に熱風処理を施して該積層体を不織布化する工程を有する。
図11に示す装置60は、凹凸賦型ベルト61及び一対の押圧ロール70,51を備えている。凹凸賦型ベルト61は、図12に示すように、第1の面61aと、これに対向する第2の面61bとを有している。凹凸賦型ベルト61は、第1の面61a側に突出する山部42の頂部44に、切り欠き部47が複数形成されている点で、第1実施態様における凹凸賦型ベルト41と異なる。複数の切り欠き部47は、各頂部44において、凹凸賦型ベルト61の搬送方向(MD)と直交する方向(CD)に所定間隔を置いて並列配置されている。各切り欠き部47は、CDから見た場合に略半楕円形状を有している。切り欠き部47は、図6に示す表面シート10において、溝部30における開孔31以外の部分(非開孔部)の形成に利用される。また、押圧ロール70は、図13(a)に示すように周面に凹部71及び凸部72からなる凹凸が形成されている点で、第1実施態様における押圧ロール50と異なる。凹部71及び凸部72は、何れも押圧ロール70のロール軸方向に延びており、且つそれらの延びる方向と直交する方向(押圧ロール70の回転方向)に亘って交互に配列されている。凹部71は、凹凸賦型ベルト61の山部42が挿入可能な幅を有している。
(ホ)の工程においては、凹凸賦型ベルト61の第1の面61a上に、表面層前駆体10A’を載置し、該表面層前駆体10A’を凹凸賦型ベルト61と共に、図11中矢印の方向に回転している一対の押圧ロール70,51間を通過させる。この通過の際に図13(a)に示すように、押圧ロール70の周面に形成されている凹部71に凹凸賦型ベルト61の山部42(頂部44)が挿入されるように、押圧ロールの回転速度及び/又は凹凸賦型ベルト61の搬送速度が調整される。表面層前駆体10A’は、押圧ロール70と凹凸賦型ベルト61との間においてその厚み方向に押圧され、これにより凹凸賦型ベルト61の第1の面61aに沿うように変形する。
次いで(ヘ)の工程において、図13(b)に示すように、凹凸賦型ベルト61上で変形した表面層前駆体10A’に、第1噴射ノズル52から噴射された流体が直接吹き付けられる。この流体の吹き付けによる圧力で、構成繊維の寄り分けが生じる。この寄り分けによって、表面層前駆体10A’の構成繊維は、凹凸賦型ベルト61の山部42間に位置する谷部43内へ移動していく。つまり、繊維の分配が起こる。特に、山部42の頂部44における切り欠き部47以外の部分(非切り欠き部)においては、構成繊維の寄り分けが一層促進され、該非切り欠き部上に位置する表面層前駆体10A’に孔が生じる。この孔が、図6及び図7に示す表面シート10における開孔31となる。一方、切り欠き部47上に位置する表面層前駆体10A’には、孔は生じない。
次いで(ト)の工程において、凹凸賦型ベルト61上に位置する表面層前駆体10A’上に、裏面層前駆体10B’を積層して2層構造の積層体とする。そして、該2層構造の積層体に、第2噴射ノズル53から噴射された流体が、該裏面層前駆体10B’側から吹き付けられる。この流体の吹き付けによる圧力で、裏面層前駆体10B’の構成繊維は、図13(c)に示すように該前駆体10B’の厚み方向に配向する。この結果、裏面層10Bの上述した構成(裏面層10Bの構成繊維が主として該裏面層10Bの厚み方向に配向しており、且つ肌当接面側から非肌当接面側に向かうにつれて、裏面層10Bの厚み方向に配向している繊維の割合が増大している)が作られる。次いで(チ)の工程において、前記2層構造の積層体に熱風処理を施して該積層体を不織布化する。
このようにして得られた長尺の表面シート10を、別途製造した裏面シート11と共に常法に従い加工して、目的とする第2実施形態のおりものシート1を得る。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、本発明に係る表面シートは4層以上の多層構造であっても良い。この場合、第1実施形態における3層構造の表面シート10において、中間層10Cと裏面層10Bとの間に、裏面層と同様にZ軸配向し繊維と繊維の隙間が裏面層より大きな層を配することが、高粘性液を表面で広げずに保持する観点から好ましい。また、第1実施形態における表面層10Aは、溝部30に第2実施形態の如き開孔31を有していても良い。
また、表面シート10と裏面シート11との間に、吸収体を介在配置させても良い。吸収体としては、紙;木材フラッフパルプを含んで構成されるパルプ層;ポリマーシート(例えば、2枚の紙等の繊維シート間に吸収性ポリマーを配したもの)等を用いることができる。パルプ層には、当該技術分野において通常用いられる吸収性ポリマーを含有させても良く、また、パルプ層の全体がティッシュペーパによって被覆されていても良い。吸収体の坪量は、好ましくは50〜300g/m2であり、無荷重下における厚みは、好ましくは0.5〜1.0mmである。
また、おりものシート1の左右の側部域における表面シート10上に、防漏カバーシートが配されていても良い。また、おりものシート1の長手方向両側縁に、幅方向外方に延出する一対のウイング部が設けられていても良い。また、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の適用例の一つとしておりものシート(パンティライナー)を挙げたが、例えば生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品にも適用できる。前述した各構成は、適宜組み合わせることができる。