本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
電子写真方式・静電記録方式等の画像形成プロセスを利用した画像形成装置(画像記録装置)では、次のようにして、画像形成動作が行われる。まず、像担持体としての感光ドラム等の上に静電潜像が形成され、潜像が現像剤(トナー)で現像されてトナー像として可視化され、このトナー像が用紙などの記録材上に転写される。その後、トナー像が転写された記録材が、定着装置に設けられた定着ローラと加圧ローラとで形成されるニップ部を通過することにより、トナー像が記録材に永久画像として加熱定着される。
図10は、このような画像形成装置の典型的な一例を示す要部の概略側面図である。
図10に示す図面(紙面)に垂直方向に延在配置され、矢印方向に回転する感光ドラム101の表面が、高圧電源に接続された帯電ローラ102によって一様に帯電される。そして、感光ドラム101の帯電された表面に、画像信号によって変調されたレーザビームLがレーザスキャナ3により付与されて静電潜像が形成される。この潜像に現像装置104からトナーが供給されてトナー像となって転写ニップ部NTに到来する。
転写ニップ部NTは感光ドラム101とこれに当接する導電性転写ローラ105とのニップ部からなり、感光ドラム101上のトナー像部分がこの転写ニップ部NTに到来するタイミングと合わせて、記録材Pが供給されて前記ニップ部を通過する。この時、転写ローラ105には高圧電源106によって転写バイアスが印加され、感光ドラム101側のトナー像は記録材Pに転移する。その後、トナー像を担持した記録材Pは転写ニップ部NTを離れて定着装置109に搬送される。
近年、特にスタンバイ時に定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力抑えた定着方法を用いたフィルム加熱方式の定着装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
このような定着装置109は、定着体として、ヒータ(加熱体)122と、このヒータ122と摺動する耐熱性フィルム(定着フィルム)123を有している。また、定着装置109は、加圧体として、このフィルム123を介してヒータ122と圧接して定着ニップ部NFを形成する加圧部材(加圧ローラ)124を有している。そして、定着装置109は、定着ニップ部NFのフィルム123と加圧部材124との間で、未定着画像が形成された記録材を挟持搬送する。このことで、定着装置109は、フィルム123を介して付与されるヒータ122からの熱と定着ニップ部NFの加圧力によって、未定着画像を記録材上に永久画像として定着させる。
このようなフィルム加熱方式の定着装置は、ヒータとして低熱容量線状加熱体を、フィルムとして薄膜の低熱容量のものを用いることができるため、省電力・ウエイトタイム短縮化(クイックスタート)が可能である。
また、この種のフィルム定着加熱方式の定着装置においては、定着フィルムの駆動方式として、次のようなものが知られている。すなわち、フィルムの搬送に専用の搬送用のローラと従動ローラとを用いてテンションを加えながら、加圧部材として加圧ローラとヒー
タとの間で定着フィルムを搬送する方式が知られている。また、円筒型定着フィルムを、加圧部材としての加圧ローラを回転駆動させることで加圧ローラの搬送力で駆動させるテンションレス方式が知られている。
前者は定着フィルムの搬送性を高くできる利点を有し、後者は装置構成を簡略化して低コストの装置が実現できる利点がある。
特開昭63−313182号公報
特開平2−157878号公報
特開平4−44075号公報
特開平4−204980号公報
特開平9−274343号公報
定着における問題の一つにオフセット現象が挙げられる。これは、トナーの一部が定着時に接触する定着体に付着して画像欠陥を生じる現象である。
これらの理由は様々であるが、最も大きい原因の一つに回転体からトナーに及ぼす静電気力が挙げられる。未定着トナー像を表面に担持した記録材の裏面と接触する加圧体が、記録材を連続的に搬送することによりマイナス側の高電位に帯電する場合がある。このような場合には、加圧体とマイナスに帯電したトナーとが静電的に反発するためにオフセット現象が生じてしまうことが懸念される。
このオフセット現象を防止するためには、定着体がトナーと同極性を有し、加圧体がトナーと異極性を有することが好ましい。
しかしながら、例えば、低温低湿環境下などに放置された紙や、もともと抵抗が高い紙を通紙した場合、定着体がプラスに、加圧体がマイナスに帯電してしまう場合がある。この状況は、トナーがマイナスに帯電している場合には上記オフセット現象に対して不利である。
特に、基層に絶縁シリコーンゴム、表層にフッ素樹脂と絶縁材質で構成されている加圧体では記録材との摩擦帯電によって−数kV程度まで上昇することがある。このような場合に、上記のように未定着トナーがマイナスに帯電しているトナーであると、マイナスに帯電した加圧体表面と反発しあって定着体にトナーが移動する、いわゆる静電オフセットが発生しやすくなってしまうことが懸念されていた。
そこで、トナーの記録材に対する静電的な付着力をアップさせる方法が提案されている。
一つは加圧体である加圧ローラ芯金に高圧電源によりバイアス電圧を印加し、トナーと逆極性の電荷を誘起させトナーを記録材に引き付け固定する方式がある。
しかしながら、この方法ではローラ層が厚く、シリコーンゴムなどの高抵抗材料であると加圧ローラ表面での帯電を打ち消す効果が低く、効率が悪いことが懸念され、そして高圧電源を用いることによるコストアップ、回路の複雑化が懸念されていた。
また、定着体側に高圧電源によりバイアス電圧を印加し、トナーと同極性の電荷を誘起させトナーを反発電界によって押さえ込む方式も提案されているが、前述の方法と同様に高圧電源を用いることによるコストアップ、回路の複雑化が懸念される。
そこで、除電手段として除電ブラシ、除電針などを加圧体である加圧ローラの表面に対向させ、表面電荷を除電することにより、オフセットの生じない所定の低電位まで加圧ローラの表面電位を低下させる手法が提案されている。しかしながら、この手法をもってしても加圧ローラ部材、記録材の種類によっては完全には記録材上での画像欠陥を生じる現象を防止しきれない場合が存在する。
更には特許文献5のように、記録材搬送路を導電部材にし、前記搬送路と加圧ローラ除電針とを接続して、記録材と同極性に保持する方向で整流素子を介して接地されるタイプも紹介されている。
しかし、この構成の場合、記録材が搬送路に到達するときには記録材裏面に過剰帯電された電荷はほとんど存在しない。このため、搬送路に流れ込む電荷が少なく、記録材と逆極性に大きな電位を持って帯電した加圧ローラに対して、マイナス電荷を除去し、プラス電荷を帯電させ、記録材と同極性にするまで電位を変化させることが困難である。
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、記録材に転写された未定着の現像剤の一部が、定着時に定着体に付着して画像欠陥を生じる現象を、簡易な構成で安価に、かつ、より効果的に防止することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明にあっては、
未定着トナー像を担持する像担持体と、記録材をトナーと逆極性に帯電し、前記像担持体上の未定着トナー像を記録材に転写する転写部材と、を有する画像形成部と、
定着時に未定着トナー像と接触する第1の定着部材と、前記第1の定着部材と共にニップ部を形成し、記録材と接触する表面が記録材との摩擦でトナーと同極性に帯電する第2の定着部材と、を有し、前記ニップ部で未定着トナー像が形成された記録材を搬送しながら加熱し記録材に未定着トナー像を定着する定着部と、
未定着トナー像が転写された記録材が前記ニップ部に至るまでの間で、前記転写部材によって帯電した記録材を除電する第1の除電部材と、
前記第2の定着部材の表面を除電する第2の除電部材と、
を有する画像形成装置において、
前記第1の除電部材と前記第2の除電部材とを電気的に接続する導電経路を有し、トナーと逆極性に帯電した記録材の電位と、トナーと同極性に帯電した前記第2の定着部材の表面の電位と、の間の電位差によって前記導通経路に電流が流れることで、前記第2の定着部材の表面を除電することを特徴とする。
本発明によれば、記録材に転写された未定着の現像剤の一部が、定着時に定着体に付着して画像欠陥を生じる現象を、簡易な構成で安価に、かつ、より効果的に防止することが可能となる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
まず、図1を参照して、本発明の実施例1に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置として、電子写真方式のレーザビームプリンタAの概略構成を示す断面図である。
図1において、3はレーザスキャナであり、像担持体としての感光ドラム1に照射するレーザ光Lの強度は外部装置からレーザビームプリンタに送られた画像信号に基づき変調
される。
また、レーザ光Lを露光する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により一様にマイナス帯電されており、感光ドラム1上にレーザ光Lを照射された部分はマイナスの電荷が消え、画像の形に電位差が生じ、静電潜像が形成される。
この静電潜像は、感光ドラム1の回転(図1に矢印で示す方向の回転)により、現像装置4と感光ドラム1との対向部へと搬送され、現像装置4によって静電潜像が現像剤としてのマイナスに帯電されたトナーで順次現像される。
現像装置4により現像されたトナー像(像担持体上に形成された現像剤像)は、記録材供給手段としての給送装置10から転写ニップ部NTに送られてきた記録材Pに転写ローラ5によって順次転写される。
6は、転写ローラ5に印加するプラスの転写電圧を発生させる転写電圧印加部としての直流高電圧発生装置であり、7はこの直流高電圧発生装置6を制御する転写電圧制御部である。転写時に、転写ニップ部NTでトナー像が転写された記録材Pは、記録材除電手段としての転写除電針(除電部材)11によって紙裏に帯電した過剰なプラス電荷が除去されつつ感光ドラム1の回転に伴って分離される。ここで、紙裏とは、記録材Pにおいてトナー像が転写された面の裏面(裏側)をいう。そして、搬送路12を通って定着装置(定着器)9へと送り出される。転写除電針11は、記録材が搬送される搬送経路に設けられ、搬送経路を搬送される記録材Pの除電を行う。
搬送路12は、全面樹脂、又は、例えば記録材が接触するような部分を搬送方向に延びた凸リブとし、凸リブの一部を金属にすることにより構成される。本実施例においては、搬送路が帯電し、記録材の搬送が静電気力により不安定になったり、トナー像が静電気力により乱れるのを防止するために金属の凸リブ(金属部、板金部)が備わる搬送路を設けている。
次に、定着装置9の構成について説明する。
図2は、レーザビームプリンタAの要部(感光ドラム1、転写ローラ5、転写除電針11、定着装置9等)の概略構成を示す断面図である。定着装置9はフィルム加熱方式、加圧体駆動方式の所謂テンションレスタイプである。
定着装置9には、フィルム内面ガイド部材21と、ヒータ22とを有する。ここで、フィルム内面ガイド部材21は耐熱性及び剛性を備えている。ヒータ22は、フィルム内面ガイド部材21の図2に示す下面に、フィルム内面ガイド部材21の長手方向に沿って設けた凹溝部に嵌め入れて固定されており、通電により発熱する。そして、ヒータ22が嵌め込まれたフィルム内面ガイド部材21には、定着体として、外周長が約57mmで円筒型の耐熱樹脂製の定着フィルム23がルーズに外側から嵌め込まれている。ここで、長手方向とは、記録材が搬送される記録材搬送方向に対して直交する方向をいい、短手方向とは、記録材搬送方向をいう。
ヒータ22は例えば、基板、抵抗発熱体、耐熱性のオーバーコート層、抵抗発熱体の長手方向端部の給電用電極、及び線状加熱体を基板構成体としたものである。ここで、基板は、長手方向に沿って細長に設けられた(定着フィルム23の母線方向を長手方向とする細長の)耐熱性、絶縁性、良熱伝導性の基板である。また、抵抗発熱体は、この基板の表面側の短手方向中央部に基板の長手方向に沿って形成具備されている。また、オーバーコート層は、この抵抗発熱体が形成された加熱体表面を保護するための耐熱性の層である。
また、線状加熱体は、基板の裏面側に配設され加熱体の温度を検知するサーミスタなどの検温素子などからなる。
図3は、定着フィルム23の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
定着フィルム23は、例えば3層から構成され、図3に示すようにベース層31に厚さ50ミクロンのポリイミド層、その上に数ミクロンの導電接着層32、そして厚さ数ミクロンのフッ素樹脂のトップ層33が施されたものである。定着フィルム23の内周長は、ヒータ22を含むフィルム内面ガイド部材21の外周長よりも3mm大きくしてあり、定着フィルム23はヒータ22を含むフィルム内面ガイド部材21に対して周長に余裕をもたせてルーズに外嵌されている。
定着フィルム23はマイナスに帯電されたトナーの静電的付着を防止するためにトナーと同極性になるように整流素子としてのダイオードD1を介して接地されている。ダイオードD1はアノード側を定着フィルム側、カソード側をアース側としている。
また、定着装置9は加圧体(加圧回転体)としての加圧ローラ(圧接ローラ、駆動ローラ)24を有する。そして、この加圧ローラ24と、ヒータ22を含むフィルム内面ガイド部材21との間に定着フィルム23が挟まれている。
加圧ローラ24は、芯金25と、芯金25上に同心的に一体に形成されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性ゴム、あるいはシリコーンゴム等を発泡して形成された弾性層26とにより構成され、表層はフッ素樹脂であるPFAからなる回転体である。ここで、PFAはテトラフルオロエチレン パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である。
本実施例の加圧ローラ24は、外径φ18mm、芯金の材質は鉄、芯金径をφ11mmとする。弾性層26としてはシリコーンゴム発泡体を使用し、弾性層の厚さをt=3.5mm、表層はPFAチューブを被覆した構成である。加圧ローラ24は、芯金25の両端部を装置シャーシの手前側と奥側の側板間に軸受け部材を介して回転可能(回転自在)に軸受け保持させて配設してある。そして、加圧ローラ24とフィルム内面ガイド部材21は、お互いが圧接されるように固定されており、定着ニップ部NFを形成している。
加圧ローラ24は、回転制御部8により所定の周速度で回転駆動される。
この加圧ローラ24の回転駆動による加圧ローラ24の外周面と定着フィルム23との、定着ニップNFにおける圧接摩擦力により、円筒状の定着フィルム23に回転力が作用する。このことで、定着フィルム23が、その内面側がヒータ22の接触面(図2では下向きの面)に密着して摺動しながらフィルム内面ガイド部材21の外周を従動回転する。
また、ヒータ22が通電されることで昇温して所定の温度に立ち上がり温調された状態において、記録材Pは、未定着トナー像Tを担持させた状態で、定着ニップ部NFの定着フィルム23と加圧ローラ24との間に導入される。
そして、定着ニップ部NFにおいて、記録材Pのトナー像担持面側が定着フィルム23の外面に密着され、記録材Pは、定着フィルム23と一緒に定着ニップ部NFを挟持搬送される。この挟持搬送過程において、ヒータ22の熱が定着フィルム23を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像Tが記録材P上に加熱および加圧されることで溶融定着される。なお、定着ニップ部NFを通過した記録材Pは定着フィルム23から
曲率分離される。
ここで、上述した動作を行うレーザビームプリンタAにおいては、以下のような問題が生じることが懸念される。
未定着トナー像Tを表面に担持した記録材Pを連続的に搬送すると、記録材Pと加圧ローラ24が摩擦を起こすことにより加圧ローラ24がマイナスに帯電することがある。特に、低温低湿環境下に放置された紙や抵抗の高い紙を通紙すると顕著である。この現象により、未定着トナー像Tを表面に担持した記録材Pが定着ニップ部NFを通過するとき、マイナスに帯電したトナーTが加圧ローラ24のマイナス電荷と静電的に反発し、トナーTは記録材P上には定着せず定着フィルム23上に付着する場合がある。このような場合、定着フィルム23が一周し、付着したトナーTが再び定着ニップNFに入ったときにこのトナーTが記録材P上に付着し、オフセット現象が生じる可能性がある。
本実施例においては、加圧ローラ24の表面がフッ素樹脂であるPFAで構成されている。このため、マイナスに帯電した未定着トナー像Tを表面に担持した記録材Pが、加圧ローラ24と定着フィルム23との定着ニップ部NFを通過すると、加圧ローラ24の表面電位は特に大きくマイナスに帯電する。
例えば、プロセススピードを毎秒100ミリメートルとし、記録材としてLTRサイズ紙を用い、毎分16枚の速さで処理すると記録材の種類によっては50枚程度連続で通紙すると、−3kVから−6kV程度まで加圧ローラ24は帯電する。
そこで、本実施例では、以下に示すような構成を採用している。
図4は、本実施例の特徴的な構成を説明するための図であって、本実施例のレーザビームプリンタAの要部(感光ドラム1、転写ローラ5、転写除電針11、定着装置9等)の概略構成を示す断面図である。
加圧体除電手段としての加圧ローラ除電針(除電部材)14が給送ガイド27に固定されており、加圧ローラ除電針14の先端が加圧ローラ24の表面と一定の距離をもつように配置されている。本実施例においては、加圧ローラ24の表面と加圧ローラ除電針14の先端との距離を1mmとした。
そして、本実施例においては、本実施例の特徴的な構成として、加圧ローラ除電針14と転写除電針11とを電気的に接続する導通経路(第1導通経路)13が設けられている。
記録材Pはプラスに帯電、加圧ローラ24はマイナスに帯電しているため、転写直後にプラスに過剰帯電された記録材Pは転写除電針11により、加圧ローラ24のマイナス極性に引きつけられプラス電荷は除去される。除去されたプラス電荷は、導通経路13を通って、加圧ローラ除電針14から加圧ローラ24表面上に放電され加圧ローラ24表面上にプラス電荷が帯電する。
加圧ローラ24の表面上のマイナス電荷は、記録材Pがプラスに帯電しているためプラス極性に引きつけられることで除去される。
除去されたマイナス電荷は導通経路13を通って、転写除電針11から記録材Pに放電される。
通常、加圧ローラ24の表面電位と、転写除電針11を通過する前の記録材Pの電位の絶対値とを比較すると、記録材Pの方が大きいため、加圧ローラ24の表面はプラス極性になる或いは限りなく近づくが、記録材P上はプラス電位を保つことが可能となる。
上記構成を用いてオフセットの確認を行うとともに、加圧ローラ24の表面電位、転写除電針11通過前の紙裏電位、転写除電針11通過後の紙裏電位を測定した。
<実験条件>
・環境:温度15℃、湿度10%
・画像形成装置本体:LTRサイズ紙、16ppm(page per minute)、電子写真画像形成装置
・通紙紙:FoxRiverBond 90g/m2 、上記環境に7日間放置した紙
・通紙モード:連続50枚
比較例1は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14は無く、芯金を介して接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
比較例2は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14も接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
比較例3は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14は記録材搬送部下側の搬送リブ部の金属部と接続して接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
表1は、50枚目のオフセットの結果と、加圧ローラ24の表面電位、転写除電針11通過前の紙裏電位、転写除電針11通過後の紙裏電位を測定した結果である。オフセットの結果は、○がOKレベル、△が許容レベル、×がNGレベルである。
比較例1に関しては、オフセットが×でNGレベルである。これは、加圧ローラ24の表面が、紙との摩擦帯電により、−6800Vまで帯電してしまうからである。
また、帯電した電荷を除去する手段が無いため、マイナス電位が非常に高くなってしまう。紙上のマイナスに帯電したトナーは静電気力で反発し、定着フィルム23側に付着してしまい、結果的に悪いオフセット現象になってしまう。
比較例2に関しては、△で許容レベルであるが、軽微にオフセットが発生している。これは、加圧ローラ24の表面電位が、−2800Vまで帯電しているからである。加圧ロ
ーラ除電針14によってマイナス電荷は除去されているが、完全に除去することは、加圧ローラ除電針14の接地タイプではできていないことがわかる。
比較例3に関しては、×でNGレベルである。これは、加圧ローラ24の表面電位が、−4200Vまで帯電しているからである。加圧ローラ除電針14は、搬送路12の金属部と接続されており、搬送路12の金属部に流れ込む微小なプラス電荷が加圧ローラ24表面に帯電され、摩擦帯電で発生したマイナス電荷と打ち消し合いマイナス電位が少し小さくなる。しかし、プラス電荷の供給量が非常に少ないために、加圧ローラ24のマイナスの電荷が除去されずに電位もマイナスに大きいままになってしまう。
また、搬送路12の金属部に記録材が通過するときには、転写除電針11によって上流で過剰電荷は除去されているため、搬送路12の金属部では流れ込むプラス電荷も少ない状態である。このため、加圧ローラ24表面に供給されるプラス電荷も非常に少なくなってしまうのである。
実施例1に関しては、オフセットが○でOKレベルになる。これは、加圧ローラ24の表面電位が、+200Vであり、マイナスに帯電したトナーは加圧ローラ24からも記録材上に静電気力で引きつけられるので定着フィルム23側にトナーが付着することなくオフセットも完全に防止することが可能になる。
また、実施例1では、転写除電針11を加圧ローラ除電針14に接続するのみであるが、転写除電針11通過前から通過後での紙裏電荷は変化しており、紙裏の過剰なプラス電荷もしっかり除電されていることがわかる。これは、転写除電針11で除電されたプラス電荷が導通経路13を伝わって加圧ローラ除電針14から加圧ローラ24に供給帯電されるためである。加圧ローラ24は、大きくマイナスに帯電するが、紙裏電位が更に大きくプラスに帯電しているため、結果的に電位はプラス側に保持することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、転写後の転写除電針11と加圧ローラ除電針14を導通経路13で接続することにより、転写除電針11で除電された過剰なプラス電荷を加圧ローラ除電針14から加圧ローラ24上に積極的に帯電することが可能になる。これにより、加圧ローラ24の電位を記録材Pと同極性に近づけることができるので、記録材上のトナー像が静電的に反発することなくオフセットを防止することが可能となる。
すなわち、トナーの一部が、定着時に、接触する定着フィルム23に付着して画像欠陥を生じるオフセット現象を、より効果的に防止することができる。
また、上記構成では高圧電源を用いることなく達成することができるため、安価でかつ回路の単純化(構成の簡易化)を達成することができる。
以下に、本発明の実施例2について説明する。
図5は、本実施例に係る画像形成装置の要部を示す概略断面図であり、定着装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例においては、上述した実施例1に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例では、上記実施例1で説明した、転写除電針11と加圧ローラ除電針14とを接続する導通経路13を、記録材Pと同極性の電位が維持できるように第2整流素子としてのダイオードD2を介して接地する構成としている。
本実施例においては、図5に示すように、導通経路13は耐圧3KVのダイオードD2を介して接地されている。ダイオードD2は、アース側をアノード側、導通経路13側をカソード側とされ、導通経路13側が記録材Pと同極性であるプラス側に保持されるように接続されている。
このような構成にすることにより、実施例1で説明した効果と同様の効果を得ることが可能となる。さらに、導通経路13を、記録材Pと同極性の電位が維持できるようにダイオードD2を介して接地することにより、定着フィルム23はトナーと同極性、加圧ローラ24は記録材Pと同極性の電位を安定して維持することが可能となる。このため、オフセット現象を、より効果的に防止できる。
また、レーザビームプリンタAにおいては、前回転、後回転、紙間等空回転状態等において、転写除電針11からプラス電荷は供給されず、定着フィルム23との摩擦により加圧ローラ24表面がマイナスに帯電してしまう場合がある。本実施例によれば、このような場合にも、マイナス電荷を加圧ローラ24表面から除電針を伝わって除去する効果がある。
更には、ダイオードD2を介して導通経路13を接地するため、導通経路13や除電針(転写除電針11と加圧ローラ除電針14)上に過剰な電荷が溜まることがない。
したがって、除電針上以外の場所での電荷の放電による電気的なノイズの発生、さらには、このノイズの発生による画像形成装置本体の誤作動等の問題の発生を抑制することが可能となる。
以下に、本発明の実施例3について説明する。
図6は、本実施例に係る画像形成装置の要部を示す概略断面図であり、定着装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例においては、上述した実施例1に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例では、上記実施例1で説明した、転写除電針11と加圧ローラ除電針14とを接続する導通経路13を、抵抗を介して接地する構成としている。
本実施例においては、図6に示すように、導通経路13は抵抗R1を介して接地されている。本実施例では、抵抗R1を100MΩの抵抗とした。
このような構成にすることにより、実施例1で説明した効果と同様の効果を得ることが可能となる。
さらに、抵抗R1を介して導通経路13を接地するため、導通経路13や除電針(転写除電針11と加圧ローラ除電針14)上に過剰な電荷が溜まることがない。したがって、除電針上以外の場所での放電による電気的なノイズの発生、さらには、このノイズの発生による画像形成装置本体の誤作動等の問題の発生を抑制することが可能となる。
以下に、本発明の実施例4について説明する。
図7は、本実施例に係る画像形成装置の要部を示す概略断面図であり、定着装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例においては、上述した実施例1に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例では、上記実施例1で説明した、転写除電針11と加圧ローラ除電針14とを接続する導通経路13に、定着フィルム23(表面)をトナーと同極性にするための第1整流素子としてのダイオードD1を接続している。
すなわち、本実施例では、定着フィルム23をトナーと同極性にするために、導通経路13に、第1整流素子としてのダイオードD1を介して定着フィルム23を電気的に接続する導通経路(第2導通経路)K1を備えた構成としている。
本実施例においては、ダイオードD1は耐圧3kVとした。また、ダイオードD1においては、定着フィルム23をトナーと同極性にするために定着フィルム23側をアノード側、導通経路13側をカソード側とした。
このような構成にすることにより、加圧ローラ24表面から除去されたマイナス電荷が記録材Pの裏側か定着フィルム23側に向かうことになり、マイナス電荷をオフセット防止の観点で更に効果的に利用することが可能となる。
本実施例の構成を用いてオフセットの確認を行うとともに、加圧ローラ24の表面電位、転写除電針11通過前の紙裏電位、転写除電針11通過後の紙裏電位、更には定着フィルム23上の表面電位を測定した。
<実験条件>
・環境:温度15℃、湿度10%
・画像形成装置本体:LTRサイズ紙、16ppm、電子写真画像形成装置
・通紙紙:FoxRiverBond、90g/m2 、上記環境に7日間放置した紙
・通紙モード:連続50枚
比較例1は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14は無く、芯金を介して接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
比較例2は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14も接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
比較例3は、転写除電針11は接地、加圧ローラ除電針14は記録材搬送部下側の搬送リブ部の金属部と接続して接地されている構成とした。定着フィルム23表面上は整流素子としてのダイオードを介して接地した。ダイオードは定着フィルム23側をアノード側、アース側をカソード側としている。
表2は、50枚目のオフセットの結果と、加圧ローラ24の表面電位、転写除電針11通過前の紙裏電位、転写除電針11通過後の紙裏電位を測定した結果である。オフセットの結果は、○がOKレベル、△が許容レベル、×がNGレベルである。
実施例1、比較例1〜3のオフセットレベル、50枚目の加圧ローラ24の表面電位、50枚目の転写除電針11通過前の紙裏電位、50枚目の転写除電針11通過後の紙裏電位の結果に関しては、上記実施例1で説明した通りである。したがって、ここでは、50枚目の定着フィルム23上の表面電位についてのみ説明する。
実施例1、比較例1〜3に関しては、定着フィルム23の表面電位は0Vになる。これは、定着フィルム23表面は、記録材の表面から流れ込むプラス電荷に帯電するが、ダイオードを介してアースに流れ込むため0Vを保持することが可能になるからである。
本実施例において、50枚目の加圧ローラ24の表面電位、50枚目の転写除電針11通過前の紙裏電位に関しては、実施例1と同じである。50枚目の転写除電針11通過後の紙裏電位に関しては、本実施例では実施例1と比較すると若干高くなっている。
これは、加圧ローラ24表面上のマイナス電荷が定着フィルム23側にも向かうため、紙裏に向かうマイナス電荷が若干少なくなり、除電針通過後の紙裏電位としては若干大きくなるためである。ただし、50枚目の転写除電針11通過後の紙裏電位としては、表2で示される結果程度の大きさでは画像が乱れるようなことはなく、全く問題ないレベルである。
本実施例において、定着フィルム23上の表面電位は、−300Vとなり加圧ローラ24表面上でマイナスに帯電したトナーに対して同極性となり、静電的に反発力が発生し、定着フィルム23側に付着しないようになる。
これは、加圧ローラ24表面上で帯電したマイナス電荷がダイオードD1を介して定着フィルム23上に帯電されるからである。つまり、トナーと同極性の電荷が定着フィルム23上に帯電するので、静電オフセットを防止する側の電位差を大きくすることが可能となるため、静電オフセットマージンが実施例1と比較して更に広がることとなる。
以上説明したように、本実施例では、定着フィルム23と導通経路13とを電気的に接続する導通経路K1(導通経路13から定着フィルム23表面又は近傍までの経路)を設けている。さらに、この導通経路K1に記録材P上のトナーと同極性の電荷を保持させ、また異極性の電荷を保持させないようなダイオードD1を設けている。これにより、摩擦帯電などによって引き起こされる定着フィルム23の表面がトナーと異極性に帯電する現象を、より効果的に抑え、トナーの一部が定着体に付着するオフセット現象をより効果的に防止することができる。
以下に、本発明の実施例5について説明する。
図8は、本実施例に係る画像形成装置の要部を示す概略断面図であり、定着装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例においては、上述した実施例1,2,4に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1,2,4と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例では、定着フィルム23(表面)をトナーと同極性にするために、上記実施例1で説明した導通経路13に、第1整流素子としてのダイオードD1を介して定着フィルム23を電気的に接続する導通経路(第2導通経路)K1を備えた構成としている。そして、更に、この導通経路13を、記録材Pと同極性になるように第2整流素子としてのダイオードD2を介して接地する構成としている。
本実施例においては、ダイオードD1は耐圧3kVとした。また、定着フィルム23をトナーと同極性にするために、ダイオードD1においては、定着フィルム23側をアノード側、導通経路13側をカソード側とした。また、導通経路13は耐圧3KVのダイオードD2を介して接地される。ダイオードD2は、アース側をアノード側、導通経路13側をカソード側とされ、導通経路13側が記録材Pと同極性であるプラス側に保持するように接続される。
このような構成にすることにより、実施例1,4で説明した効果と同様の効果を得ることが可能となる。さらに、加圧ローラ24表面から除去されたマイナス電荷が記録材Pの裏側か定着フィルム23側に向かうことになり、マイナス電荷をオフセット防止の観点で更に効果的に利用することが可能となる。
また、レーザビームプリンタAにおいては、前回転、後回転、紙間等空回転状態等において、転写除電針11からプラス電荷は供給されず、定着フィルム23との摩擦により加圧ローラ24表面がマイナスに帯電してしまう場合がある。本実施例によれば、このような場合にも、マイナス電荷を加圧ローラ24表面から除電針を伝わって除去する効果がある。
更には、ダイオードD2を介して導通経路13を接地するため、導通経路13や除電針(転写除電針11と加圧ローラ除電針14)上に過剰な電荷が溜まることがない。したがって、除電針上以外の場所での放電による電気的なノイズの発生、さらには、このノイズの発生による画像形成装置本体の誤作動等の問題の発生を抑制することが可能となる。
以下に、本発明の実施例6について説明する。
図9は、本実施例に係る画像形成装置の要部を示す概略断面図であり、定着装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例においては、上述した実施例1,3,4に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1,3,4と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例では、定着フィルム23(表面)をトナーと同極性にするために、上記実施例1で説明した導通経路13に、第1整流素子としてのダイオードD1を介して定着フィルム23を電気的に接続する導通経路(第2導通経路)K1を備えた構成としている。そして、更に、この導通経路13を、抵抗R1を介して接地する構成としている。
本実施例においては、ダイオードD1は耐圧3kVとした。また、定着フィルム23をトナーと同極性にするために定着フィルム23側をアノード側、導通経路13側をカソード側とした。また、導通経路13は100MΩの抵抗R1を介して接地される。
このような構成にすることにより、実施例1,4で説明した効果と同様の効果を得ることが可能となる。さらに、加圧ローラ24表面から除去されたマイナス電荷が記録材Pの裏側か定着フィルム23側に向かうことになり、マイナス電荷をオフセット防止の観点で更に効果的に利用することが可能となる。
更には、抵抗R1を介して接地するため、導通経路13や除電針上に過剰な電荷が溜まることがない。したがって、除電針上以外の場所での放電による電気的なノイズの発生、さらには、このノイズの発生による画像形成装置本体の誤作動等の問題の発生を抑制することが可能となる。
実施例1に係る画像形成装置を示す概略構成図。
実施例1に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例1に係る定着フィルムの概略構成図。
実施例1に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例2に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例3に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例4に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例5に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
実施例6に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図。
従来の画像形成装置の概略構成図。
符号の説明
1 感光ドラム
9 定着装置
11 転写除電針
13 導通経路
14 加圧ローラ除電針
23 定着フィルム
24 加圧ローラ
A レーザビームプリンタ
NF 定着ニップ部
P 記録材
T トナー