JP5127235B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体装置とその製造方法に関する。特に、結晶欠陥を意図的に形成することによって、キャリアのライフタイムを調整した半導体装置とその製造方法に関する。
半導体装置のキャリア(電子と正孔)のライフタイムを制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、プロトンを打ち込むことによって、pn接合界面の近傍に結晶欠陥を形成したPNダイオードが開示されている。結晶欠陥は、キャリアの再結合中心として働く。したがって、PNダイオード中に結晶欠陥を形成すると、キャリアのライフタイムが短くなる。PNダイオード中に形成する結晶欠陥の量を制御することによって、PNダイオードのターンオフ後に現れる逆回復時にPNダイオードを流れる電流の時間に対する変化パターンを制御することができる。
また、バイポーラトランジスタであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)においても、荷電粒子を打ち込むことによってドリフト領域内に結晶欠陥を形成し、それによってターンオフ時間を短縮化する技術が知られている。
上記に例示したように、半導体装置(例えば、PNダイオードやIGBT等)を構成する半導体結晶中に意図的に結晶欠陥を形成することによって、半導体装置の特性を調節する技術が知られている。
なお半導体の結晶中には、結晶の成長時(結晶のインゴット製造時)等に意図せずに形成された結晶欠陥が存在している。意図せず形成された結晶欠陥と、荷電粒子等を打ち込むことによって意図的に形成した結晶欠陥とを区別するため、以下の説明では、意図的に形成した結晶欠陥のことを形成欠陥という。
特開平8−102545号公報
半導体装置を構成するシリコンの結晶中には、意図的に導入した不純物と、結晶の成長時等に意図せずに混入した不純物が含まれている。両者を区別するために、以下の説明では、前者の不純物をドーパント不純物といい、後者の不純物を混入不純物という。
混入不純物が含まれているシリコン結晶中に荷電粒子を打ち込むと、概して2種類の形成欠陥が形成される。すなわち、シリコン結晶中の格子点(サイト)に原子が存在しない空孔型の欠陥と、シリコン結晶中の混入不純物により形成される格子間型の欠陥が形成される。
例えば、炭素と酸素が含まれているシリコン結晶中に荷電粒子を打ち込むと、以下の反応が起こる。まず、荷電粒子の打ち込みにより、格子点に存在していたシリコンが格子間位置にはじき出され、格子点に空孔が形成される。これによって、結晶中に多数の空孔型欠陥と格子間シリコンが生成される。生成された空孔型欠陥は、他の空孔型欠陥と所定の位置関係をとると安定な状態となる。これにより、2つの空孔型欠陥により構成されるVV欠陥が形成される。また、格子間位置にはじき出されたシリコンは、結晶中の格子点に存在していた炭素と位置が入れ替わる。すなわち、格子点にあった炭素が格子間位置に移動し、格子間位置にあったシリコンが格子点に移動する。格子間位置に移動した炭素は、結晶中の格子間位置に存在している酸素と所定の位置関係をとると安定な状態となる。これにより、格子間位置の炭素と格子間位置の酸素によって構成されるC欠陥が形成される。
このように、シリコン結晶中に荷電粒子を打ち込むと、VV欠陥と、混入不純物による欠陥(例えば、炭素と酸素により形成されるC欠陥)が形成される。これらの欠陥は、何れもキャリアの再結合中心として働く。したがって、VV欠陥と混入不純物による欠陥をシリコン結晶中に形成することで、キャリアのライフタイムを変化させることができる。すなわち、VV欠陥と混入不純物による欠陥の形成量を適切に制御することで、半導体装置の特性を適切な特性に調節することができる。
荷電粒子を打ち込む際にシリコン結晶中に形成されるVV欠陥の量は、打ち込む荷電粒子の量によって制御することができる。一方、混入不純物による欠陥の量は、荷電粒子を打ち込む対象であるシリコン結晶中の混入不純物の量によっても左右される。すなわち、混入不純物の濃度が高いシリコン結晶では混入不純物による欠陥が形成され易く、混入不純物の濃度が低いシリコン結晶では混入不純物による欠陥が形成され難い。シリコン結晶中の混入不純物の濃度は、シリコン結晶のインゴット毎に大きくばらつく。同一インゴットでも、部位によって混入不純物の濃度がばらつく。したがって、荷電粒子を打ち込むことで形成される混入不純物による欠陥の形成量は、シリコン基板毎に大きくばらつく。この結果、シリコン結晶中に形成される形成欠陥の量(VV欠陥と混入不純物による欠陥の総量)も、シリコン基板毎にばらつくこととなる。形成欠陥の量がばらつくと、製造した半導体装置の特性がばらついてしまう。従来の技術では、製造した半導体装置の特性のばらつきが大きいという問題があった。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、シリコン結晶中に形成欠陥を形成して半導体装置の特性を調節するにあたって、半導体装置間のばらつきが少ない半導体装置群を量産する製造方法を提供することを目的とする。
本発明の製造方法では、所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えている半導体装置を製造する。この製造方法は、シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
格子間シリコン生成工程で前記所定範囲にシリコンイオンを打ち込むと、前記所定範囲内に存在するシリコンの数が増加する。このとき、格子点に存在することができるシリコンの数は決まっているので、増加したシリコンの大部分は、格子間シリコンとなる。格子間シリコンは、単独ではエネルギー的に不安定である。しかし、複数の格子間シリコンが集合すると安定となる。したがって、格子間シリコン生成工程を実施した後の前記所定範囲内には、格子間シリコンのクラスタ(集合体)が多数、存在することとなる。
格子間シリコン生成工程の実施後に、結晶欠陥形成工程を実施する。結晶欠陥形成工程では、格子間シリコンのクラスタが多数存在している範囲に荷電粒子を打ち込む。荷電粒子を打ち込むと、シリコン結晶中の格子点に存在していたシリコンが格子間位置にはじき出され、格子間シリコンとなる。この反応によって、格子点に空孔が形成され、シリコン結晶中にVV欠陥が形成される。また、この反応によって生成された格子間シリコンは、シリコン結晶中に多数存在している格子間シリコンのクラスタの一部となって安定な状態となる。したがって、格子間シリコンは、混入不純物と反応(位置が入れ替わる等)し難い。このため、混入不純物による欠陥が形成され難い。例えば、混入不純物として炭素と酸素が存在しているシリコン結晶では、荷電粒子が打ち込まれることによって生成された格子間シリコンと格子点に存在する炭素の位置が入れ替わる反応が起こり難くなるので、C欠陥が形成され難くなる。
以上のように、この製造方法によると、形成される結晶欠陥(形成欠陥)の大部分がVV欠陥となる。上述したように、VV欠陥の形成量は、荷電粒子を打ち込む量によって正確に制御することができる。したがって、この製造方法によれば、シリコン基板に含まれていた混入不純物の濃度のばらつきにもかかわらず、形成される結晶欠陥(形成欠陥)の量を安定化することができる。半導体装置毎の特性のばらつきが少ない半導体装置群を量産することができる。
本発明は、上記の課題を解決することができる他の製造方法をも提供する。この製造方法は、インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えている半導体装置を製造する。この製造方法は、前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分には、多数の格子間シリコンのクラスタが存在している。結晶欠陥形成工程では、荷電粒子を打ち込むことにより、シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に結晶欠陥を形成する。したがって、その表面部分に形成される形成欠陥の大部分がVV欠陥となる。この製造方法によっても、形成欠陥の量を正確に制御することができ、ばらつきの少ない半導体装置群を量産することができる。
本発明は、所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているPNダイオードの製造方法をも提供する。この製造方法は、シリコン基板にドーパント不純物を導入して、前記所定範囲内にpn接合を形成するpn接合形成工程と、シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
この製造方法によれば、形成欠陥の量を正確に制御することができ、ばらつきの少ないPNダイオード群を量産することができる。
本発明は、更なるPNダイオードの製造方法をも提供する。この製造方法では、インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているPNダイオードを製造する。この製造方法は、前記シリコン基板にドーパント不純物を導入して、前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分にpn接合を形成するpn接合形成工程と、前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
この製造方法によっても、形成欠陥の量を正確に制御することができ、ばらつきの少ないPNダイオード群を量産することができる。
本発明は、所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているIGBTの製造方法をも提供する。この製造方法は、シリコン基板の上面側からドーパント不純物を導入してボディ領域とエミッタ領域を形成する上面側導入工程と、前記シリコン基板の下面側からドーパント不純物を導入してコレクタ領域を形成することによって、下面側の表面部分にコレクタ領域とドリフト領域の界面を形成する下面側導入工程と、シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
この製造方法によれば、形成欠陥の量を正確に制御することができ、ばらつきの少ないIGBT群を量産することができる。
本発明は、更なるIGBTの製造方法をも提供する。この製造方法では、インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が上面から下面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているIGBTを製造する。この製造方法は、前記シリコン基板の上面側からドーパント不純物を導入してボディ領域とエミッタ領域を形成する上面側導入工程と、前記シリコン基板の下面側からドーパント不純物を導入してコレクタ領域を形成することによって、下面側の表面部分にコレクタ領域とドリフト領域の界面を形成する下面側導入工程と、前記シリコン基板の下面側からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている。
この製造方法によっても、形成欠陥の量を正確に制御することができ、ばらつきの少ないIGBT群を量産することができる。
本明細書で開示される半導体装置の一実施形態は、荷電粒子を打ち込んで形成した結晶欠陥領域を備えている。この半導体装置のシリコン基板の所定範囲は、その所定範囲外よりも格子間シリコンの濃度が高くなっており、前記結晶欠陥領域のうち結晶欠陥の濃度が最も高い領域が、前記所定範囲に形成されている。
この半導体装置では、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥が形成されている。したがって、その範囲に形成されている形成欠陥の多くはVV欠陥である。したがって、ばらつきの少ない半導体装置群が提供される。
本明細書で開示される半導体装置の他の一実施形態は、格子間シリコンの濃度がシリコン基板の一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルを備えており、結晶欠陥領域がシリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されていることを特徴とする。
この半導体装置では、結晶欠陥領域が、シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されている。したがって、その表面部分に形成されている形成欠陥の多くはVV欠陥である。したがって、ばらつきの少ない半導体装置群が提供される。
本明細書で開示されるPNダイオードの一実施形態は、アノード領域と、アノード領域と接しているドリフト領域と、ドリフト領域と接しているカソード領域を備えており、ドリフト領域のドーパント不純物濃度はアノード領域とカソード領域のドーパント不純物濃度よりも低く、荷電粒子を打ち込んで形成した結晶欠陥領域を備えている。そして、シリコン基板の所定範囲内はその所定範囲外よりも格子間シリコンの濃度が高くなっており、pn接合が前記所定範囲内に形成されており、前記結晶欠陥領域のうち結晶欠陥の濃度が最も高い領域が前記所定範囲に形成されていることを特徴とする。
このPNダイオードでは、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥が形成されている。したがって、ばらつきの少ないPNダイオード群が提供される。
本明細書で開示されるPNダイオードの他の一実施形態は、アノード領域と、アノード領域と接しているドリフト領域と、ドリフト領域と接しているカソード領域を備えており、ドリフト領域のドーパント不純物濃度はアノード領域とカソード領域のドーパント不純物濃度よりも低く、荷電粒子を打ち込んで形成した結晶欠陥領域を備えている。そして、格子間シリコンの濃度がシリコン基板の一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されており、pn接合がシリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されており、前記結晶欠陥領域がシリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されていることを特徴とする。
このPNダイオードでは、結晶欠陥領域がシリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されている。したがって、ばらつきの少ないPNダイオード群が提供される。
本明細書で開示されるIGBTの一実施形態は、荷電粒子を打ち込んで形成した結晶欠陥領域を備えている。そして、第1導電型のコレクタ領域と、コレクタ領域に接している第2導電型のドリフト領域と、ドリフト領域に接している第1導電型のボディ領域と、ボディ領域によってドリフト領域から離間されている第2導電型のエミッタ領域と、エミッタ領域とドリフト領域を離間させているボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極を備えており、ドリフト領域の所定範囲内は、その所定範囲外のシリコン基板よりも格子間シリコンの濃度が高くなっており、前記所定範囲内に、コレクタ領域とドリフト領域の積層構造が形成されており、前記結晶欠陥領域のうち結晶欠陥の濃度が最も高い領域が、前記所定範囲に形成されていることを特徴とする。
このIGBTでは、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥が形成されている。したがって、ばらつきの少ないIGBT群が提供される。
本明細書で開示されるIGBTの他の一実施形態は、荷電粒子を打ち込んで形成した結晶欠陥領域を備えている。そして、第1導電型のコレクタ領域と、コレクタ領域に接している第2導電型のドリフト領域と、ドリフト領域に接している第1導電型のボディ領域と、ボディ領域によってドリフト領域から離間されている第2導電型のエミッタ領域と、エミッタ領域とドリフト領域を離間させているボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極を備えており、格子間シリコンの濃度がシリコン基板の一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されており、シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に、コレクタ領域とドリフト領域の積層構造が形成されており、コレクタ領域は格子間シリコンの濃度が高い方の表面側に配置され、ドリフト領域は深部側に配置されており、前記結晶欠陥領域のうち結晶欠陥の濃度が最も高い領域が、コレクタ領域とドリフト領域の界面近傍のドリフト領域に形成されていることを特徴とする。
このIGBTでは、結晶欠陥がシリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分に形成されている。したがって、ばらつきの少ないIGBT群が提供される。
上述したIGBTは、ドリフト領域のうちコレクタ領域と接する領域に、その領域外のドリフト領域よりも第2導電型の不純物の濃度が高いバッファ領域が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、IGBTの耐圧特性を向上させることができる。
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(特徴1)格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板を熱処理することによって、格子間シリコンを安定化させる格子間シリコン安定化工程をさらに備えている。
(特徴2)結晶欠陥形成工程を実施したシリコン基板を熱処理することによって、不安定な結晶欠陥を除去する不安定欠陥除去工程をさらに備えている。
(特徴3)格子間シリコン安定化工程の熱処理は、不安定欠陥除去工程の熱処理よりも高温で行う。
(特徴4)格子間シリコン安定化工程は、不安定欠陥除去工程よりも前に実施する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施例のPNダイオード10aの概略構成を示している。
図示するように、PNダイオード10aは、シリコン基板12と、シリコン基板12の上面12aに形成されたアノード電極20と、下面12bに形成されたカソード電極22により構成されている。シリコン基板12は、主にシリコンからなっている。シリコン基板12の、上面12a側には、p型不純物(本実施例ではボロン)を含有するp型拡散層(アノード層:p層)14が形成されている。p型拡散層14は、アノード電極20とオーミック接触している。p型拡散層14の下面側には、n型不純物(本実施例ではリン)を含有するn型ドリフト層(n層)16が形成されている。したがって、p型拡散層14とn型ドリフト層16の界面がpn接合界面30となっている。n型ドリフト層16の下面12b側には、n型不純物を高濃度に含有するn型拡散層(カソード層:n層)18が形成されている。n型拡散層18は、カソード電極22とオーミック接触している。
シリコン結晶中には、格子点(サイト)に存在するシリコンの他に、格子間位置に存在する格子間シリコンがある。格子間シリコンは、単独では不安定である。しかし、複数の格子間シリコンが集合すると安定となる。したがって、シリコン結晶中では、格子間シリコンは、複数の格子間シリコンが集合したクラスタ(集合体)として存在している。
シリコン基板12には、局所的に格子間シリコンの濃度が高くなっている高濃度化フィールド26が形成されている。図2(a)は、シリコン基板12中の厚み方向(図1の矢印V1の方向)における格子間シリコンの濃度N1の分布を示している。図2(a)の横軸は、シリコン基板12aの厚み方向の位置(深さ)を示しており、原点はシリコン基板12の上面12aの位置、横軸の右端はシリコン基板12の下面12bの位置を示している。また、図2(a)の位置A1は、pn接合界面30の位置を示している。
図示するように、位置A2と位置A3の間の領域の格子間シリコンの濃度は約1014atoms/cmであり、その領域外よりも格子間シリコンの濃度が高くなっている(領域外の格子間シリコンの濃度は、約1013atoms/cm)。すなわち、位置A2と位置A3の間の領域は、格子間シリコンの濃度が高い高濃度化フィールド26となっている。高濃度化フィールド26はpn接合界面30近傍のn型ドリフト層16に形成されている。
シリコン基板12中には、製造工程で意図的に生成された結晶欠陥(以下では、形成欠陥という)が多数存在している。以下では、結晶欠陥が存在している領域を、結晶欠陥領域という。図2(b)は、シリコン基板12中の厚み方向(図1の矢印V1の方向)における形成欠陥の濃度N2の分布を示している。図2(b)の横軸は、図2(a)の横軸に対応している。図示するように、形成欠陥はシリコン基板12の上面12a側の表面部分に存在している。すなわち、結晶欠陥領域が、シリコン基板12の上面12a側に形成されている。また、形成欠陥の大部分が高濃度化フィールド26内に形成されており、結晶欠陥領域のうち最も結晶欠陥の濃度が高い領域も高濃度化フィールド26内に形成されている。
後述するが、これらの形成欠陥は、ヘリウムイオンをシリコン基板12中に打ち込むことにより生成される。ヘリウムイオンを打ち込むことにより結晶中に生成される形成欠陥には、概して2種類の欠陥がある。
第1の欠陥は、C欠陥である。C欠陥は、結晶中の格子間位置に存在する酸素(以下では、格子間酸素Oという)と、格子間位置に存在する炭素(以下では、格子間炭素Cという)によって構成される。格子間酸素Oと格子間炭素Cが特定の位置関係となっているとC欠陥となる。C欠陥は、キャリアの再結合中心となる性質を有する。また、C欠陥は、シリコン基板12中のホールをトラップする性質を有する。
第2の欠陥は、VV欠陥である。VV欠陥は、結晶中の格子点(サイト)の空孔により構成される。2つの空孔が特定の位置関係となっているとVV欠陥となる。VV欠陥は、キャリアの再結合中心となる性質を有する。しかしながら、VV欠陥は、シリコン基板12中の電子をトラップし、ホールをトラップしない性質を有する。
本実施例のPNダイオード10aでは、高濃度化フィールド26に存在する形成欠陥の大部分は、VV欠陥である。高濃度化フィールド26に存在する形成欠陥の量は、適切な量に調整されている。また、PNダイオード10aでは、図2に示すように大部分の形成欠陥が高濃度化フィールド26内に存在しており、高濃度化フィールド26外に存在する形成欠陥は非常に少ない。
一般に、シリコン基板12中に存在している形成欠陥の量は、PNダイオードの特性に影響を与える。図3は、PNダイオード10aと同じ構造であり、形成欠陥の量が異なる2つのPNダイオードのターンオフ時の特性を示している。より詳細には、アノード電極−カソード電極間に所定の電圧(順方向電圧)を印加しておき、時刻t0において所定の逆方向電圧を印加したときに、PNダイオードを流れる電流I1の時間tに対する変化パターンを示している。図3のグラフC1は高濃度化フィールド26に存在する形成欠陥の量が多いPNダイオードの特性を示しており、グラフC2は高濃度化フィールド26に存在する形成欠陥の量が少ないPNダイオードの特性を示している。
図3に示すように、何れのPNダイオードも、順方向電圧を印加されている間は、順方向に電流IFが流れる。時刻t0においてPNダイオードに逆方向電圧が印加されると、電流I1は減少し、その後は逆電流が流れる。逆電流は、一旦増大し、その後はシリコン基板12中に残留しているキャリアの減少に伴って減少する。その後、逆電流はゼロとなる。
図3から分かるように、形成欠陥の量によって逆電流の変化特性は影響を受ける。上述したように、形成欠陥はキャリアの再結合中心となる。したがって、形成欠陥の量が多いとキャリアが再結合して消滅しやすい。一方、形成欠陥の量が少ないと、キャリアが再結合し難い。したがって、図2のグラフC2に示すように、形成欠陥の量が少ないPNダイオードは、逆電流が減衰し難い。
PNダイオードの特性は、逆電流のピーク値が低く、逆電流回復時の電流変化率が小さいことが好ましい。逆電流のピーク値が低いと、PNダイオードのターンオフ時の損失を低減させることができる。逆電流回復時の電流変化率が小さいと、その電流変化率と寄生インダクタンスの影響によってpn接合界面30に印加されるサージ電圧を低減させることができる。本実施例のPNダイオード10aは、製造時に適切な量の形成欠陥が形成されている。したがって、逆電流のピーク値は適切な値に抑えられており、逆電流回復時の電流変化率も適切な変化率となっている。したがって、逆電流による損失がそれほど大きくならず、逆電流回復時にpn接合界面30に過大なサージ電圧が印加されることも抑制されている。
上述したように、形成欠陥には、C欠陥とVV欠陥の2種類の欠陥がある。C欠陥は、ホールをトラップする性質を有している。PNダイオードのpn接合界面30の近傍にC欠陥が存在していると、順方向に電流が流れるときに、C欠陥によってホールがトラップされる。したがって、pn接合界面30の近傍に多数のホールが存在する状態となる。この状態において、PNダイオードに印加する電圧をオフすると、上述したようにpn接合界面30に逆電圧が印加される。pn接合界面30に逆電圧が印加されると、空乏層がpn接合界面30からアノード電極側及びカソード電極側に向かって広がろうとする。しかし、空乏層の広がりは、pn接合界面30の近傍でC欠陥によりトラップされているホールによって抑制されてしまう。すると、pn接合界面30の近傍に強い電界集中が発生し、アバランシェ降伏が生じやすい。すなわち、C欠陥が多数存在しているPNダイオードは、アバランシェ耐圧が低いという欠点がある。
第1実施例のPNダイオード10aでは、高濃度化フィールド26に大部分の形成欠陥が形成されており、高濃度化フィールド26に形成されている形成欠陥の大部分がVV欠陥である。すなわち、C欠陥が非常に少ない。したがって、PNダイオード10aは、ターンオフ時にアバランシェ降伏し難い。
次に、PNダイオード10aの製造方法について、図4のフローチャートに基づいて説明する。PNダイオード10aは、n型シリコンからなるシリコンウエハから製造される。このシリコンウエハの下面12b側の表面部分には、リンを高濃度に含む層(すなわち、n型拡散層18)が予め形成されている。シリコンウエハの上面12aおよび下面12bは鏡面状に研磨されており、これによってシリコンウエハの厚さはシリコン基板12と略同じ厚さとされている。また、シリコンウエハ中には、炭素及び酸素が存在している。シリコンウエハ中の炭素及び酸素の濃度は、シリコンウエハにより大きく異なる。
ステップS2では、シリコンウエハの上面12a側からp型不純物であるボロンを注入し、シリコンウエハの上面12aから所定深さまでの領域(p型拡散層14に対応する領域)のボロンの濃度を上昇させる。なお、ステップS2でボロンを注入すると、シリコンウエハ中に結晶欠陥が形成される。
ステップS4では、シリコンウエハを熱処理する。これによって、シリコンウエハ中に注入されたボロンが拡散し、活性化する。すなわち、ステップS2でボロンを注入した領域近傍にボロンが拡散し、活性化する。これによって、ボロンが拡散した領域がp型拡散層14となる。また、p型拡散層14とn型拡散層18の間の領域はn型ドリフト層16となる。なお、ステップS4を実行することによって、ステップS2でシリコンウエハ中に形成された結晶欠陥がほぼ消滅する。
ステップS6では、シリコンウエハに上面12a側からシリコンイオンを打ち込む。このとき、打ち込むシリコンイオンがpn接合界面30近傍のn型ドリフト層16(すなわち、高濃度化フィールド26に対応する範囲)に留まるエネルギーでシリコンイオンを打ち込む。これによって、その範囲のシリコンの濃度が上昇し、その範囲に多数の格子間シリコンが生成される。なお、ステップS6でシリコンイオンを打ち込むと、シリコンウエハ中に結晶欠陥が形成される。
ステップS8では、シリコンウエハを熱処理する。具体的には、シリコンウエハを600℃の温度に約1時間保持する。これによって、ステップS6で生成された格子間シリコンが拡散し、格子間シリコンのクラスタが分散して存在する状態となる。これによって、格子間シリコンがより安定した状態となる。格子間シリコンが拡散した範囲は、高濃度化フィールド26となる。また、この熱処理によって、ステップS6でシリコンウエハ中に形成された結晶欠陥がほぼ消滅する。
ステップS10では、蒸着により、シリコンウエハの上面12aにアノード電極20を形成する。
ステップS12では、シリコンウエハの上面12a側から、ヘリウムイオンを打ち込む。これによって、シリコンウエハ中に結晶欠陥(形成欠陥)を形成する。ステップS12では、大部分の形成欠陥が高濃度化フィールド26内に形成されるようにヘリウムイオンを打ち込むエネルギーを調整して実施する。これによって、図2(b)に示す濃度分布でシリコンウエハ中に形成欠陥が形成される。
ヘリウムイオンをシリコンウエハに打ち込むと、シリコンウエハ中で以下の反応が起きる。
(反応1) Si → V+Si
(反応2) V+V → VV欠陥
(反応3) Si+Sii n → Sii n+1
(反応4) Si+C → C
(反応5) C+O → C欠陥
(反応1)では、結晶格子中の格子点に存在するシリコン(Si)がヘリウムイオンの打ち込みにより格子点から格子間位置にはじき出される。これによって、格子間シリコン(Si)が生成されるとともに、シリコンがはじき出された後の格子点が空孔(V)となる。シリコンウエハ中で(反応1)が多発することによって、シリコンウエハ中に多数の格子間シリコン(Si)と多数の空孔(V)が生成される。格子間位置のシリコン(Si)と空孔(V)は、エネルギー状態が不安定であるので、(反応2)〜(反応5)が起こる。
(反応2)では、(反応1)によって生成された2つの空孔(V)が結晶格子内で所定の位置関係となり、安定した状態となる。すなわち、VV欠陥が形成される。
(反応3)では、(反応1)によって生成された格子間シリコン(Si)が、シリコンウエハ中に存在している格子間シリコンのクラスタ(Sii n)に取り込まれ、安定した状態となる。すなわち、格子間シリコンのクラスタ(Sii n)に新たに1つの格子間シリコン(Si)が加わって、より大きい格子間シリコンのクラスタ(Sii n+1)となる。
(反応4)では、結晶格子中の格子点に不純物として存在する炭素(C)と(反応1)で生成された格子間位置のシリコン(Si)との位置が入れ替わる。これによって、格子間位置に存在する炭素(C)が生成される。格子間位置の炭素(C)は、エネルギー状態が不安定であるので、(反応5)が起こる。
(反応5)では、(反応4)で生成された格子間位置の炭素(C)と、結晶格子中の格子間位置に混合不純物として存在する酸素(O)とが所定の位置関係となり、安定した状態となる。すなわち、C欠陥が形成される。
以上に説明したように、シリコンウエハにヘリウムイオンを打ち込むと、シリコンウエハ中にVV欠陥とC欠陥が形成される。
上記の反応式から分かるように、(反応1)及び(反応2)は、ヘリウムイオンを打ち込む量に応じて起こる。したがって、VV欠陥が形成される量は、ヘリウムイオンを打ち込む量によって調整することができる。
また、(反応1)によって生成された格子間シリコン(Si)は、(反応3)によって格子間シリコンのクラスタ(Sii n)に取り込まれるもとの、(反応4)及び(反応5)を引き起こすものがある。
上述したように、高濃度化フィールド26内には、格子間シリコンのクラスタが多数、存在している。したがって、(反応3)は非常に起こりやすい。すなわち、(反応1)で生成された格子間シリコンの大部分は、(反応3)によって格子間シリコンのクラスタに取り込まれる。したがって、高濃度化フィールド26では、(反応4)及び(反応5)が起こり難い。すなわち、高濃度化フィールド26内では、C欠陥が形成され難い。したがって、シリコンウエハ中に、C欠陥があまり形成されることなく、多数のVV欠陥が形成される。
なお、シリコンウエハにヘリウムイオンを打ち込むと、VV欠陥及びC欠陥が形成されると共に、エネルギー状態が不安定な種々の形成欠陥も形成される。
ステップS14では、シリコンウエハを熱処理する。具体的には、シリコンウエハを400℃の温度に約1時間保持する。この条件でシリコンウエハを熱処理すると、シリコンウエハ中に存在しているエネルギー状態が不安定な形成欠陥が消滅し、エネルギー状態が安定しているVV欠陥がシリコンウエハ中に残る。すなわち、シリコンウエハ中の形成欠陥の大部分がVV欠陥となる。
ステップS16では、蒸着により、シリコンウエハの下面12bにカソード電極22を形成する。
ステップS18では、シリコンウエハをダイシングによって複数に分割する。これによって複数のPNダイオード10aが製造される。
以上に説明したように、この製造方法では、シリコンイオンを打ち込むことにより、シリコンウエハに高濃度化フィールド26を形成する。そして、ヘリウムイオンを打ち込むことにより、高濃度化フィールド26内に形成欠陥を形成する。高濃度化フィールド26では、格子間シリコンの集合体が多数、形成されているので、C欠陥が形成され難い。したがって、形成欠陥の大部分がVV欠陥となる。VV欠陥の量は、ヘリウムイオンを打ち込む量によって正確に制御することができる。したがって、シリコンウエハ中の炭素と酸素の濃度に左右されることなく、形成欠陥の量(VV欠陥とC欠陥の総量)を正確に制御することができる。すなわち、この製造方法によれば、製造するPNダイオード10aの逆電流回復時の特性を正確に制御することができ、製造するPNダイオード10aの逆電流回復時の特性のばらつきを少なくすることができる。
また、この製造方法によれば、C欠陥をあまり形成することなく、VV欠陥を形成することができる。したがって、逆電流回復時の特性が適切な特性に調整されているとともに、ターンオフ時にアバランシェ降伏し難いPNダイオード10aを製造することができる。
また、この製造方法では、ステップS8の熱処理により、ステップS6で生成させた格子間シリコンを安定化させる。ステップS8の熱処理は、ステップS14の熱処理よりも高温で実施される。したがって、ステップS14の熱処理により、格子間シリコンの状態が変化することが抑制されている。したがって、この製造方法によれば、より正確にPNダイオード10aの逆電流回復時の特性を制御することができる。
また、ステップS8は、ステップS14よりも前に実施される。したがって、ステップS14の実施後に、ステップS14よりも高温の熱処理が実行され、ステップS14後にシリコンウエハに残っているVV欠陥が消滅することが防止されている。
なお、第1実施例の製造方法では、n型ドリフト層16の一部に高濃度化フィールド26を形成したが、他の部分に高濃度化フィールドを形成してもよい。また、シリコンウエハの全体の格子間シリコンの濃度を上昇させてもよい。このような構成によっても、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥を形成することで、PNダイオード10aの逆電流回復時の特性のばらつきを抑制することができる。
また、第1実施例の製造方法では、ステップS14の熱処理の条件を調節することにより、シリコンウエハに残るVV欠陥の量をさらに調節してもよい。このようにステップS14を行うことにより、より正確にVV欠陥の量を調節することができる。
(第2実施例)
次に、第2実施例のPNダイオード10b及びその製造方法について説明する。なお、PNダイオード10bの各部の説明においては、第1実施例のPNダイオード10aと同様の構成を有するものについては、同じ参照番号を用いて説明する。
第2実施例のPNダイオード10bは、第1実施例のPNダイオード10aと略同じ構成である。但し、シリコン基板12中の格子間シリコンの濃度分布がPNダイオード10aとは異なる。図5(a)は、第2実施例のPNダイオード10bのシリコン基板12中の厚み方向における格子間シリコンの濃度N3の分布を示している。図示するように、下面12b側の表面部分では、格子間シリコンの濃度が約1×1013atoms/cmとなっている。格子間シリコンの濃度は、下面12bから上面12aに向かうにつれて増加しており、上面12a側の表面部分では、格子間シリコンの濃度が約1×1014atoms/cmとなっている。
図5(b)は、シリコン基板12中の厚み方向における形成欠陥の濃度N4の分布を示している。図示するように、第2実施例のPNダイオード10bのシリコン基板12中にも、第1実施例のPNダイオード10aと同様の分布で形成欠陥が存在している。すなわち、結晶欠陥領域が、シリコン基板12の上面12a側の表面部分に形成されている。より詳細には、pn接合界面30近傍のn型ドリフト層16に多くの結晶欠陥が形成されている。PNダイオード10bに形成されている形成欠陥は、大部分がVV欠陥であり、C欠陥は非常に少ない。
以上に説明したように、第2実施例のPNダイオード10bは、第1実施例のPNダイオード10aと略同じ特徴を有している。すなわち、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥が形成されており、形成欠陥の量は適切に調整されている。したがって、PNダイオード10bは、逆電流回復時の特性が適切な特性となっており、また、アバランシェ降伏し難い。
次に、PNダイオード10bの製造方法について説明する。第2実施例の製造方法でも、n型シリコンからなるシリコンウエハからPNダイオード10bを製造する。このシリコンウエハは、第1実施例と同様に、下面12b側の表面部分にn型拡散層18が形成されており、上面12aおよび下面12bは鏡面状に研磨されている。
但し、第1実施例とは異なり、このシリコンウエハには、格子間シリコンの濃度が下面12bから上面12aに向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されている。このシリコンウエハは、引き上げ速度を変化させながらシリコンのインゴットを成長させ、そのインゴットから切り出されることにより製造される。すなわち、速い引き上げ速度でインゴットを成長させると、格子間シリコンが少ないシリコン結晶が成長する。遅い引き上げ速度でインゴットを成長させると、格子間シリコンが多いシリコン結晶が成長する。したがって、引き上げ速度を変化させながらインゴットを成長させると、格子間シリコンの濃度が引き上げ方向における位置によって変化しているインゴットができる。このインゴットからシリコンウエハを切り出すことで、上記のシリコンウエハを製造することができる。このシリコンウエハ中の格子間シリコンの厚み方向における濃度プロファイルは、図5(a)に示すシリコン基板12の濃度プロファイルと略同じとなっている。
PNダイオード10bは、図4に示す第1実施例の製造方法と略同様に製造される。すなわち、ステップS2、S4を実施することによって、シリコンウエハの上面12a側の表面部分にp型拡散層14を形成する。PNダイオード10bの製造工程では、ステップS6、S8は実施しない。したがって、p型拡散層14を形成したら、ステップS10を実施することによってアノード電極20を形成する。
アノード電極20を形成したら、ステップS12で、シリコンウエハ中にヘリウムイオンを打ち込む。すなわち、シリコンウエハの上面12a側の表面部分で留まるエネルギーでシリコンウエハにヘリウムイオンを打ち込む。これによって、図5(b)に示す分布でシリコンウエハ中に形成欠陥を形成する。上述したように、シリコンウエハの上面12a側の表面部分は、格子間シリコンの濃度が高い。したがって、シリコンウエハ中にC欠陥が形成され難く、形成欠陥の大部分がVV欠陥となる。すなわち、シリコンウエハ中に形成する形成欠陥の量を、正確に制御することができる。
ステップS12を実施したら、ステップS14の熱処理により、シリコンウエハ中の不安定な形成欠陥を除去する。次に、ステップS16でカソード電極22を形成し、ステップS18でダイシングを実施する。これによって、複数のPNダイオード10bが製造される。
以上に説明したように、この製造方法によっても、シリコンウエハ中に形成する形成欠陥の量を正確に制御することができる。したがって、製造するPNダイオード10bの逆電流回復時の特性のばらつきを少なくすることができる。また、ターンオフ時にアバランシェ降伏し難いPNダイオード10bを製造することができる。
(第3実施例)
次に、第3実施例のトレンチゲート電極を有するIGBT50aについて説明する。図6は、IGBT50aの概略構成を示している。図示するように、IGBT50aは、シリコン基板51と、エミッタ電極70と、コレクタ電極72と、により構成されている。コレクタ電極72は、シリコン基板51の下面51bに形成されている。エミッタ電極70は、シリコン基板51の上面51aに形成されている。
シリコン基板51は、主にシリコンからなっている。シリコン基板51のコレクタ電極72と接する領域には、p型コレクタ層52が形成されている。p型コレクタ層52は、コレクタ電極72とオーミック接触している。p型コレクタ層52の上面側には、n型ドリフト層54が形成されている。n型ドリフト層54は、n型不純物の濃度が高い第1ドリフト層(バッファ層)54aと、n型不純物の濃度が低い第2ドリフト層54bにより形成されている。第1ドリフト層54aは、p型コレクタ層52の上面側に形成されており、第2ドリフト層54bは、その第1ドリフト層54aの上面側に形成されている。n型ドリフト層54の上面側には、p型ボディ層56が形成されている。p型ボディ層56の上面側には、n型エミッタ領域58とp型ボディコンタクト領域60が形成されている。シリコン基板51の上面51aには複数のトレンチが形成されている。各トレンチは、シリコン基板51の上面51aからn型ドリフト層54の上端に接する深さまで伸びている。各トレンチの壁面(側面、底面)には、SiOの絶縁膜が形成されている。各トレンチ内には、ゲート電極74が形成されている。n型エミッタ領域58は、シリコン基板51の上面51a側の表面部分のうち、各トレンチ(トレンチの絶縁膜)と接する領域にそれぞれ形成されている。n型エミッタ領域58は、エミッタ電極70とオーミック接触している。p型ボディコンタクト領域60は、シリコン基板51の上面51a側の表面部分のうち、n型エミッタ領域58が形成されていない領域に形成されている。p型ボディコンタクト領域60は、p型ボディ層56よりもp型不純物の濃度が高い。p型ボディコンタクト領域60は、エミッタ電極70とオーミック接触している。
シリコン基板51中には、局所的に格子間シリコンの濃度が高くなっている高濃度化フィールド66が形成されている。図7(a)は、シリコン基板51の厚み方向(図6の矢印V2の方向)における格子間シリコンの濃度N5の分布を示している。図7(a)の横軸は、シリコン基板51の厚み方向の位置(深さ)を示しており、原点はシリコン基板51の上面51aの位置、横軸の右端はシリコン基板51の下面51bの位置を示している。また、図7(a)の位置A4はp型コレクタ層52とn型ドリフト層54との界面53の位置、位置A5は第1ドリフト層54aと第2ドリフト層54bとの界面55の位置、位置A6はn型ドリフト層54とp型ボディ層56との界面57の位置を示している。
図示するように、位置A7と位置A8の間の領域の格子間シリコンの濃度は約1014atoms/cmであり、その領域外よりも格子間シリコンの濃度が高くなっている。すなわち、位置A2と位置A3の間の領域が高濃度化フィールド26となっている。高濃度化フィールド26は界面53近傍のn型ドリフト層54内に形成されている。より詳細には、界面55近傍の第1ドリフト層54aから界面55近傍の第2ドリフト層54bにわたって形成されている。
シリコン基板51中には、ヘリウムイオンを打ち込むことにより形成された多数の形成欠陥が存在している。図7(b)は、シリコン基板12中の厚み方向(図6の矢印V2の方向)における形成欠陥の濃度N6の分布を示している。図示するように、形成欠陥はシリコン基板51の下面51b側の表面部分に存在している。すなわち、結晶欠陥領域が、シリコン基板51の下面51b側の表面部分に形成されている。また、形成欠陥の大部分が、高濃度化フィールド66内に形成されている。結晶欠陥領域のうち最も結晶欠陥の濃度が高い領域も、高濃度化フィールド66内に形成されている。シリコン基板51中に存在している形成欠陥の大部分は、VV欠陥である。シリコン基板51中に存在する形成欠陥の量は、適切な量に調整されている。
一般に、シリコン基板51中に存在している形成欠陥の量は、IGBTの特性に影響を与える。図8は、IGBT50aと同じ構造であり、形成欠陥の量が異なる2つのIGBTのターンオフ時の特性(電流I1の時間tに対する変化)を示している。より詳細には、エミッタ−コレクタ間に順方向に電圧を印加しておき、時刻t1においてゲート電圧をONからOFFに切り替えたときの、エミッタ−コレクタ間を流れる電流I1の時間tに対する変化パターンを示している。図8のグラフC4は、存在している形成欠陥の量が多いIGBTの特性を示しており、グラフC5は存在している形成欠陥の量が少ないIGBTの特性を示している。上述したように、形成欠陥はキャリアの再結合中心として作用する。したがって、形成欠陥の量が多いと、IGBTのターンオフ時にシリコン基板51中に残っているキャリアが再結合により消滅しやすい。すなわち、形成欠陥の量が多いと、グラフC4に示すように、IGBTのターンオフ時間(電流が0になるまでの時間)が短くなる。しかしながら、形成欠陥の量が多すぎると、ON抵抗が高くなり、ON時の損失が増えるという問題がある。一方、形成欠陥の量が少ないと、ターンオフ時間が長くなってしまう。したがって、シリコン基板51中に存在する形成欠陥の量は、適切な量に調節されていることが好ましい。
本実施例のIGBT50aでは、製造時に、下面51b側の表面部分に形成する形成欠陥の量が適切な量に調節されている。したがって、ターンオフ時の特性が適切な特性となっている。
また、上述したように、C欠陥は、ホールをトラップする性質を有する。IGBTのn型ドリフト層54中にC欠陥が形成されていると、n型ドリフト層54中のホールの濃度が高くなる。すると、IGBTがターンオフするときに、空乏層がn型ドリフト層54とp型ボディ層56の界面からn型ドリフト層54中に広がることが、n型ドリフト層54中のホールにより抑制される。したがって、n型ドリフト層54とp型ボディ層56の界面に高い電界が発生し、アバランシェ降伏しやすい。
本実施例のIGBT50aでは、高濃度化フィールド66内の形成欠陥は大部分がVV欠陥であり、C欠陥が非常に少ない。したがって、IGBT50aは、アバランシェ降伏し難い。
図9は、IGBT50aを製造するときのフローチャートを示している。IGBT50aは、n型シリコンからなるシリコンウエハから製造される。シリコンウエハの上面51aおよび下面51bは鏡面状に研磨されており、これによってシリコンウエハの厚さはシリコン基板51と略同じ厚さとされている。また、シリコンウエハ中には、炭素及び酸素が存在している。シリコンウエハ中の炭素及び酸素の濃度は、シリコンウエハにより大きく異なる。
ステップS22では、シリコンウエハの上面51a側の各半導体領域(p型ボディ層56、n型エミッタ領域58、p型ボディコンタクト領域60)を形成するために、シリコンウエハの上面51aからリン及びボロンのドーパント不純物を注入する。このドーパント不純物注入工程は、シリコンウエハ上にレジストマスク等を形成することによって、注入する領域を選択して行う。また、注入深さを調整し、各領域に対応する深さにドーパント不純物を注入する。これにより、p型ボディ層56、n型エミッタ領域58、p型ボディコンタクト領域60のそれぞれに対応する領域にドーパント不純物を注入する。
ステップS24では、シリコンウエハを熱処理し、ステップS22で注入したリン及びボロンを拡散、活性化させる。これによって、図6に示すように、シリコンウエハにp型ボディ層56、n型エミッタ領域58、p型ボディコンタクト領域60が形成される。
ステップS26では、シリコンウエハの上面51aにトレンチを形成する。そして、トレンチの壁面に絶縁膜を形成し、トレンチ内にゲート電極74を形成する。トレンチ、絶縁膜及びゲート電極74は、公知の技術を用いて形成することができるが、ここではその詳細についての説明を省略する。
ステップS28では、蒸着により、シリコンウエハの上面51aにエミッタ電極70を形成する。
ステップS30では、シリコンウエハの下面51b側から、注入深さを調整してリンを注入する。これによって、第1ドリフト層54aに対応する領域に、リンが注入される。
ステップS32では、シリコンウエハの下面51b側から、注入深さを調整してボロンを注入する。これによって、p型コレクタ層52に対応する領域に、ボロンが注入される。
ステップS34では、シリコンウエハに下面51b側からシリコンイオンを打ち込む。このとき、打ち込むシリコンイオンが高濃度化フィールド66に対応する範囲に留まるエネルギーでシリコンイオンを打ち込む。これによって、その範囲のシリコンの濃度が上昇し、その範囲に多数の格子間シリコンが生成される。
ステップS36では、レーザアニール装置により、シリコンウエハの下面51b側の表面部分を局所的に加熱する。これによって、ステップS30、S32で注入したリン及びボロンが拡散、活性化する。すなわち、図6に示すように、シリコンウエハにp型コレクタ層52、第1ドリフト層54aが形成される。また、第1ドリフト層54aとp型ボディ層56の間の領域が、第2ドリフト層54bとなる。
また、ステップS36の熱処理を実施すると、ステップS34で生成された格子間シリコンが拡散し、格子間シリコンのクラスタが分散して存在する状態となる。これによって、格子間シリコンがより安定した状態となる。格子間シリコンが拡散した範囲は、高濃度化フィールド66となる。図6に示すように、高濃度化フィールド66は、界面55近傍のn型ドリフト層54に形成される。
ステップS38では、下面51b側からシリコンウエハにヘリウムイオンを打ち込むことにより、シリコンウエハ中に結晶欠陥を形成する。このとき、ヘリウムイオンを打ち込むエネルギーを調整することにより、高濃度化フィールド66内に多くの形成欠陥を形成する。これによって、図7(b)に示す分布で、シリコンウエハ中に形成欠陥が形成される。上述したように、高濃度化フィールド66は格子間シリコンの濃度が高いので、C欠陥をあまり形成することなく、VV欠陥を形成することができる。
ステップS40では、シリコンウエハを熱処理する。具体的には、シリコンウエハを400℃の温度に約1時間保持する。この条件でシリコンウエハを熱処理すると、シリコンウエハ中に存在しているエネルギー状態が不安定な形成欠陥が消滅し、エネルギー状態が安定しているVV欠陥がシリコンウエハ中に残る。すなわち、シリコンウエハ中の形成欠陥の大部分がVV欠陥となる。
ステップS42では、蒸着により、シリコンウエハの下面51bにコレクタ電極72を形成する。
ステップS44では、シリコンウエハをダイシングする。これにより複数のIGBT50aが製造される。
以上に説明したように、第3実施例の製造方法によると、シリコン結晶中にC欠陥が形成されることを抑制しながら、VV欠陥を形成することができる。したがって、製造するIGBT50aの特性を正確に制御することができる。また、アバランシェ降伏し難いIGBT50aを製造することができる。
(第4実施例)
次に、第4実施例のIGBT50b及びその製造方法について説明する。なお、IGBT50bの各部の説明においては、第3実施例のIGBT50aと同様の構成を有するものについては、同じ参照番号を用いて説明する。
第4実施例のIGBT50bは、第3実施例のIGBT50aと略同じ構成である。但し、シリコン基板51中の格子間シリコンの濃度分布がIGBT50aとは異なる。図10(a)は、第4実施例のIGBT50bのシリコン基板51中の厚み方向における格子間シリコンの濃度N7の分布を示している。図示するように、上面51a側の表面部分では、格子間シリコンの濃度が約1×1013atoms/cmとなっている。格子間シリコンの濃度は、上面51aから下面51bに向かうにつれて増加しており、下面51b側の表面部分では、格子間シリコンの濃度が約1×1014atoms/cmとなっている。
図10(b)は、シリコン基板12中の厚み方向における形成欠陥の濃度N8の分布を示している。図示するように、第4実施例のIGBT50bのシリコン基板51中にも、第3実施例のIGBT50aと略同様の分布で形成欠陥が存在している。すなわち、結晶欠陥領域が、シリコン基板51の下面51b側の表面部分に形成されている。また、結晶欠陥の大部分が、界面53近傍のn型ドリフト層54に形成されている。結晶欠陥領域のうち最も結晶欠陥の濃度が高い領域は、第1ドリフト層54aに形成されている。IGBT50bに形成されている形成欠陥は、大部分がVV欠陥であり、C欠陥は非常に少ない。シリコン基板51中に存在する形成欠陥の量は、適切な量に調整されている。
以上に説明したように、第4実施例のIGBT50bは、第3実施例のIGBT50aと略同じ特徴を有している。すなわち、格子間シリコンの濃度が高い範囲に形成欠陥が形成されており、形成欠陥の量は適切に調整されている。したがって、IGBT50bは、逆電流回復時の特性が適切な特性となっており、また、アバランシェ降伏し難い。
次に、IGBT50bの製造方法について説明する。第4実施例の製造方法でも、n型シリコンからなるシリコンウエハからPNダイオード10bを製造する。このシリコンウエハは、第3実施例と同様に、上面51aおよび下面51bが鏡面状に研磨されている。
但し、第3実施例とは異なり、このシリコンウエハには、格子間シリコンの濃度が上面51aから下面51bに向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されている。このシリコンウエハ中の格子間シリコンの厚み方向における濃度プロファイルは、図10(a)に示すシリコン基板51の濃度プロファイルと略同じとなっている。
IGBT50bは、図9に示す第3実施例の製造方法と略同様に製造される。すなわち、ステップS22、S24を実施することによって、p型ボディ層56、n型エミッタ領域58、p型ボディコンタクト領域60を形成する。次に、トレンチ、絶縁膜、ゲート電極74を形成し(ステップS26)、エミッタ電極70を形成する(ステップS28)。エミッタ電極70を形成したら、第1ドリフト層54aに対応する領域にリンを注入する(ステップS30)。リンを注入したら、p型コレクタ層52に対応する領域にボロンを注入する(ステップS32)。第4実施例の製造方法では、ステップ34は実施しない。したがって、次に、ステップS36を実施する。ステップS36では、シリコンウエハの下面51b側の表面部分が熱処理されることにより、ステップS30、S32で注入されたリンおよびボロンが拡散、活性化する。これによって、p型コレクタ層52、第1ドリフト層54aおよび第2ドリフト層54bが形成される。
ステップS38では、シリコンウエハ中にヘリウムイオンを打ち込む。すなわち、シリコンウエハの下面51b側から、その表面部分で留まるエネルギーでシリコンウエハにヘリウムイオンを打ち込む。これによって、図10(b)に示す分布でシリコンウエハ中に形成欠陥を形成する。上述したように、シリコンウエハの下面51b側の表面部分は、格子間シリコンの濃度が高い。したがって、C欠陥をあまり形成することなく、VV欠陥を形成することができる。シリコンウエハ中に形成する形成欠陥の量は、適切な量に調節される。ステップS38を実施したら、ステップS40の熱処理により、シリコンウエハ中の不安定な形成欠陥を除去する。次に、ステップS42でコレクタ電極72を形成し、ステップS44でダイシングを実施する。これによって、複数のPNダイオード10bが製造される。
以上に説明したように、第4実施例の製造方法によっても、シリコン結晶中にC欠陥が形成されることを抑制しながら、VV欠陥を形成することができる。したがって、製造するIGBT50bの特性を正確に制御することができる。また、アバランシェ降伏し難いIGBT50bを製造することができる。
なお、第1〜第4実施例では、PNダイオード及びIGBTの製造方法について説明したが、本発明の製造方法によって他の半導体装置を製造することもできる。例えば、NPN型またはPNP型のバイポーラトランジスタ、サイリスタ等、種々のバイポーラ動作する半導体装置を製造することができる。
また、上述した第1〜第4実施例の製造方法では、ヘリウムイオンを打ち込むことによって形成欠陥を形成したが、他の荷電粒子を打ち込むことによって形成欠陥を形成してもよい。例えば、電子、プロトン等、種々の荷電粒子を打ち込むことによっても形成欠陥を形成することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
PNダイオード10aの概略構成を示す図。 PNダイオード10aのシリコン基板12中の格子間シリコンの濃度分布及び形成欠陥の濃度分布を示す図。 PNダイオードのターンオフ特性を示す図。 PNダイオード10aの製造方法を示すフローチャート。 PNダイオード10bのシリコン基板12中の格子間シリコンの濃度分布及び形成欠陥の濃度分布を示す図。 IGBT50aの概略構成を示す図。 IGBT50aのシリコン基板51中の格子間シリコンの濃度分布及び形成欠陥の濃度分布を示す図。 IGBTのターンオフ特性を示す図。 IGBT50aの製造方法を示すフローチャート。 IGBT50bのシリコン基板12中の格子間シリコンの濃度分布及び形成欠陥の濃度分布を示す図。
符号の説明
10a:PNダイオード
10b:PNダイオード
12:シリコン基板
12a:上面
12b:下面
14:p型拡散層
16:n型ドリフト層
18:n型拡散層
20:アノード電極
22:カソード電極
26:高濃度化フィールド
30:pn接合界面
50a:IGBT
50b:IGBT
51:シリコン基板
51a:上面
51b:下面
52:p型コレクタ層
54:n型ドリフト層
54a:第1ドリフト層
54b:第2ドリフト層
56:p型ボディ層
58:n型エミッタ領域
60:p型ボディコンタクト領域
66:高濃度化フィールド
70:エミッタ電極
72:コレクタ電極
74:ゲート電極

Claims (6)

  1. 所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えている半導体装置を製造する方法であって、
    シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、
    シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程
    を備えている半導体装置の製造方法。
  2. インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えている半導体装置を製造する方法であって、
    前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えている半導体装置の製造方法。
  3. 所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているPNダイオードを製造する方法であって、
    シリコン基板にドーパント不純物を導入して、前記所定範囲内にpn接合を形成するpn接合形成工程と、
    シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、
    格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程
    を備えているPNダイオードの製造方法。
  4. インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が一方の表面から他方の表面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているPNダイオードを製造する方法であって、
    前記シリコン基板にドーパント不純物を導入して、前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面部分にpn接合を形成するpn接合導入工程と、
    前記シリコン基板の格子間シリコンの濃度が高い方の表面からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えているPNダイオードの製造方法。
  5. 所定範囲に結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているIGBTを製造する方法であって、
    シリコン基板の上面側からドーパント不純物を導入してボディ領域とエミッタ領域を形成する上面側導入工程と、
    前記シリコン基板の下面側からドーパント不純物を導入してコレクタ領域を形成することによって、下面側の表面部分にコレクタ領域とドリフト領域の界面を形成する下面側導入工程と、
    シリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーでシリコンイオンを打ち込むことによって前記所定範囲に格子間シリコンを生成させる格子間シリコン生成工程と、
    格子間シリコン生成工程を実施したシリコン基板の表面から前記所定範囲に打ち込まれるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによって前記所定範囲に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程
    を備えているIGBTの製造方法。
  6. インゴット製造時に引き上げ速度を変化させながら結晶成長させることによって、格子間シリコンの濃度が上面から下面に向かうにつれて増加する濃度プロファイルが形成されたシリコン基板を使用して、結晶欠陥を形成した結晶欠陥領域を備えているIGBTを製造する方法であって、
    前記シリコン基板の上面側からドーパント不純物を導入してボディ領域とエミッタ領域を形成する上面側導入工程と、
    前記シリコン基板の下面側からドーパント不純物を導入してコレクタ領域を形成することによって、下面側の表面部分にコレクタ領域とドリフト領域の界面を形成する下面側導入工程と、
    前記シリコン基板の下面側からその表面部分に留まるエネルギーで荷電粒子を打ち込むことによってその表面部分に結晶欠陥を形成する結晶欠陥形成工程を備えているIGBTの製造方法。
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