JP5104538B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子ならびにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用や真空紫外光の照射等により親液性領域および撥液性領域を形成することができる層を有し、発光層等のパターニングを行うことが可能な有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。)素子用基板および有機EL素子、ならびにそれらの製造方法に関するものである。
一般に、EL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、発光層等のパターニングがなされている。発光層のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗り分け方法、紫外光照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等の種々のパターニング方法が提案されている。また、インクジェットによる塗り分け方法では、高精細な微細パターンを得るために、隔壁(バンク)を形成して、隔壁表面を撥インク処理することが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。さらに、発光層のパターニング方法として、高精細なパターンの形成を可能とする、光触媒を用いる方法(例えば、特許文献3および特許文献4参照)や、真空紫外光を用いる方法(例えば、特許文献5参照)も提案されている。
上記の光触媒を用いる発光層のパターニング方法は、例えば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体の接触角が低下するように濡れ性が変化する電荷注入輸送層を用いるものである(特許文献3参照)。この場合、光触媒含有層と電荷注入輸送層とを所定の間隙をおいて配置して、電荷注入輸送層にエネルギーを照射すると、エネルギー照射に伴う光触媒の作用から、電荷注入輸送層の濡れ性が変化する。この電荷注入輸送層表面に形成された濡れ性の違いによるパターンを利用することにより、発光層をパターン状に形成することができる。このように光触媒を用いる発光層のパターニング方法は、エネルギーの照射のみで濡れ性の違いによるパターンを形成することができることから、発光層のパターニングに要する手間を大幅に省略することができる点で有用な方法である。
また、上記の真空紫外光を用いる発光層のパターニング方法は、真空紫外光の照射によって層表面の濡れ性が変化することを利用するものである。すなわち、この濡れ性の違いによるパターンを利用することにより、発光層をパターン状に形成するのである。このように真空紫外光を用いる発光層のパターニング方法は、真空紫外光の照射のみで濡れ性の違いによるパターンを形成することができることから、上記の方法と同様に、発光層のパターニングに要する手間を大幅に省略することができる点で有用な方法である。
上記の光触媒を用いる方法および真空紫外光を用いる方法では、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分にて、液体の接触角が低下するように濡れ性が変化することを利用している。すなわち、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分が親液性領域となり、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及ばない部分または真空紫外光が照射されない部分が撥液性領域となることを利用している。そのため、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分の上に発光層等が形成されることになる。しかしながら、濡れ性が変化する層が正孔輸送性等を有する場合には、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分にて正孔輸送性等が損なわれるおそれがある。
上記の問題を解決することを目的とするものではないが、上記の光触媒を用いる発光層のパターニング方法として、正孔注入層のパターニングが困難であり、基板上の全面に形成する必要がある正孔注入層を用いる必要がある場合に、効率的にEL素子を製造することを目的として、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去され得る正孔注入層を用いたEL素子の製造方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法によれば、撥液性凸部がパターン状に形成された基板上に正孔注入層を形成し、正孔注入層をパターン状に分解除去して、正孔注入層表面の液体の接触角が、正孔注入層が分解除去されて露出した撥液性凸部表面の液体の接触角よりも小さいことを利用することにより、正孔注入層のパターニングだけでなく、正孔注入層上に形成される発光層等のパターニングも可能となる。なお、上記の撥液性凸部は、発光に寄与しない部材である。
また、親液性領域(wetting area)および非親液性領域(non-wetting area)からなるパターンの形成が可能な正孔輸送層を用いたEL素子の製造方法も提案されている(非特許文献1参照)。
特許第3951445号公報 特許第3328297号公報 特開2004−71286号公報 特開2004−111220号公報 特開2007−178783号公報 William F. Feehery, "Solution Processing of Small-Molecule OLEDs" SID 07 DIGEST p. 1834-1836 (2007)
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、親液性領域および撥液性領域を形成するための層が正孔輸送性等を有する場合にその正孔輸送性等を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能な有機EL素子用基板およびその製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、撥液性を有する第1正孔注入輸送層と、上記第1正孔注入輸送層上に形成され、親液性を有する第2正孔注入輸送層と、上記第2正孔注入輸送層側の表面に配置され、上記第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、上記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンとを有することを特徴とする有機EL素子用基板を提供する。
本発明によれば、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域を撥液性領域とし、この撥液性領域以外の領域であり、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解等されない領域を親液性領域とする。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能な有機EL素子用基板とすることができる。
上記発明においては、上記第2正孔注入輸送層が、光触媒機能をもつ材料を含有していてもよい。さらに、上記第1正孔注入輸送層が、上記光触媒機能をもつ材料を含有していてもよい。本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際に、第2正孔注入輸送層、または、第1正孔注入輸送層および第2正孔注入輸送層に光触媒機能をもつ材料が含有されていることにより、撥液性領域では第2正孔注入輸送層の構成材料の分解を促進できるからである。分解速度が速いことは、製造上タクトを向上させることができるために有利であり、例えば、第2正孔注入輸送層の膜厚を厚くすることができるため、第2正孔注入輸送層の膜厚を最適値に調整して親液性領域に作製する素子の性能を最適化することが可能となる。
上記の場合、上記光触媒機能をもつ材料が、金属酸化物または無機半導体であることが好ましい。
さらに、上記の場合、上記金属酸化物が、有機金属錯体の少なくとも一部が酸化されたものであってもよい。有機金属錯体は、金属酸化物と異なり、金属の価数や配位子により、正孔注入性や正孔輸送性をコントロールできる。また、有機金属錯体は、無機化合物の金属酸化物と異なり、配位子中に有機部分を含み得るため、第2正孔注入輸送層や第1正孔注入輸送層に含まれる有機物との相溶性が良好となり、かつ、隣接する発光層等の有機層との界面の密着性も良好となる。そのため、長寿命化に寄与することが可能である。
この場合、上記有機金属錯体が、モリブデン錯体、チタン錯体、またはモリブデン錯体およびチタン錯体の混合物であることが好ましい。モリブデン錯体およびチタン錯体は、反応性が比較的高く、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、素子寿命をさらに向上させることが可能である。
また、上記の場合、上記金属酸化物または無機半導体が、ナノ粒子であってもよい。
さらに、上記の場合、上記金属酸化物が、金属含有ナノ粒子の少なくとも一部が酸化されたものであってもよい。
この場合、上記金属含有ナノ粒子が、モリブデン含有ナノ粒子、チタン含有ナノ粒子、またはモリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子の混合物であることが好ましい。モリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子は、反応性が比較的高く、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、素子寿命をさらに向上させることが可能である。
上記発明においては、上記第1電極層が形成された基板上に、親液性を有する仕切部がパターン状に形成されており、上記仕切部の頂部上に上記撥液性領域が配置され、上記仕切部の側部上および上記仕切部の開口部上に上記親液性領域が配置されていてもよい。本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する際に、仕切部の頂部上に配置された撥液性領域上には発光層等が形成されないので、発光層等を精度良くパターニングすることができるからである。さらに、仕切部の側部上には親液性領域が配置されているので、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する際に、発光層等の厚みの薄い箇所や発光層等が形成されない箇所が発生したり、仕切り部の側部にて発光層が物理的に剥離したりするのを抑制することもできるからである。
上記の場合、上記親液性領域および上記撥液性領域での液体の接触角が、上記仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなっていてもよい。本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する際に、平坦性の良好な発光層等を形成することができるからである。
また本発明は、上述の有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に形成され、少なくとも発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機EL素子を提供する。
本発明によれば、上述の有機EL素子用基板を用いるので、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等がパターニングされた有機EL素子とすることができる。
さらに本発明は、第1電極層が形成された基板上に、撥液性を有する第1正孔注入輸送層を形成する第1正孔注入輸送層形成工程と、上記第1正孔注入輸送層上に、親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成する第2正孔注入輸送層形成工程と、上記第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、上記第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された撥液性領域、および、上記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成するパターン形成工程とを有することを特徴とする有機EL素子用基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解することにより、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、この撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成することができる。この親液性領域は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解等されていない領域である。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能な有機EL素子用基板を得ることができる。
上記発明においては、上記第2正孔注入輸送層、または、上記第1正孔注入輸送層および上記第2正孔注入輸送層が、有機金属錯体または金属含有ナノ粒子を含有しており、上記パターン形成工程にて、上記有機金属錯体または金属含有ナノ粒子の少なくとも一部を金属酸化物としてもよい。この金属酸化物の光触媒作用により、パターン形成工程にて、第2正孔注入輸送層に含まれる材料の分解が促進されるからである。
また本発明においては、上記パターン形成工程にて、上記マスクとして、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層が形成されている光触媒含有層基板を用い、上記光触媒含有層基板を、上記第2正孔注入輸送層に対して、エネルギーの照射に伴う光触媒の作用がおよび得る間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射してもよい。また、上記パターン形成工程にて、上記エネルギーとして真空紫外光を照射してもよい。これらの方法によれば、第2正孔注入輸送層に含有される材料を精度良く分解することができるからである。さらに、上記のように、パターン形成工程にて、第2正孔注入輸送層や第1正孔注入輸送層に含有される有機金属錯体または金属含有ナノ粒子の少なくとも一部を金属酸化物とする場合には、第2正孔注入輸送層に含有される材料の分解をさらに促進することもできるからである。
さらに発明においては、上記第1正孔注入輸送層形成工程前に、上記第1電極層が形成された基板上に、親液性を有する仕切部をパターン状に形成する仕切部形成工程を有し、上記パターン形成工程にて、上記仕切部の頂部上に位置する上記第2正孔注入輸送層の部分にエネルギーを照射してもよい。これにより、仕切部の頂部上に撥液性領域を形成することができ、発光層等を精度良くパターニングすることができるからである。
この場合、上記マスクが透過領域と遮光領域とを有するものであり、上記パターン形成工程にてエネルギーを照射する際に、上記仕切部の頂部の面積に対する上記マスクの透過領域の面積の比率、および、上記第2正孔注入輸送層および上記マスク間の距離の少なくともいずれか一方を調整して、上記第2正孔注入輸送層側の表面での液体の接触角が上記仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなるように、上記撥液性領域を形成してもよい。平坦性の良好な発光層等を形成することができるからである。
また本発明は、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、有機EL素子用基板を調製する有機EL素子用基板調製工程と、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、上記発光層上に、第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とする有機EL素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、有機EL素子用基板を調製するので、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能である。
本発明においては、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域を撥液性領域とし、この撥液性領域以外の領域であり、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解等されない領域を親液性領域とするので、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能であるという効果を奏する。
以下、本発明の有機EL素子用基板および有機EL素子ならびにそれらの製造方法について詳細に説明する。
A.有機EL素子用基板
まず、本発明の有機EL素子用基板について説明する。本発明の有機EL素子用基板は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、撥液性を有する第1正孔注入輸送層と、上記第1正孔注入輸送層上に形成され、親液性を有する第2正孔注入輸送層と、上記第2正孔注入輸送層側の表面に配置され、上記第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、上記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンとを有することを特徴とするものである。
本発明の有機EL素子用基板について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示する有機EL素子用基板1においては、基板2上に第1電極層3がパターン状に形成され、この第1電極層3上に第1正孔注入輸送層4が形成され、この第1正孔注入輸送層4上に第2正孔注入輸送層5が形成され、第2正孔注入輸送層5側の表面に親液性領域11および撥液性領域12からなるパターンが形成されている。第1正孔注入輸送層4は撥液性を有し、第2正孔注入輸送層5は親液性を有している。また、撥液性領域12は、第2正孔注入輸送層5の構成材料が分解された領域である。
図2は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板2上に第1電極層3をパターン状に形成し、この第1電極層3上に撥液性を有する第1正孔注入輸送層4を形成する。次に、図2(b)に示すように、第1正孔注入輸送層4上に親液性を有する第2正孔注入輸送層5aを形成する。次いで、図2(c)に示すように、基体22と、この基体22上にパターン状に形成された遮光部23と、遮光部23を覆うように基体22上に形成され、光触媒を含有する光触媒含有層24とを有する光触媒含有層基板21を準備する。次いで、光触媒含有層基板21を、光触媒含有層24と第2正孔注入輸送層5aとが向かい合うように配置し、光触媒含有層基板21を介して第2正孔注入輸送層5aに対して紫外光27を照射する。紫外光27の照射により、図2(d)に示すように、光触媒含有層24に含有される光触媒の作用から、第2正孔注入輸送層5aの露光部では、第2正孔注入輸送層5aに含有される材料が分解される。一方、第2正孔注入輸送層5aの未露光部では、第2正孔注入輸送層5bがそのまま残る。
図3は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図3(a)に示すように、基板2上に第1電極層3をパターン状に形成し、第1電極層3のパターンの開口部に隔壁6aを形成し、第1電極層3および隔壁6aの上に撥液性を有する第1正孔注入輸送層4を形成する。次に、図3(b)に示すように、第1正孔注入輸送層4上に親液性を有する第2正孔注入輸送層5aを形成する。次いで、図3(c)に示すように、メタルマスク31を第2正孔注入輸送層5aの表面に配置し、メタルマスク31を介して第2正孔注入輸送層5aに対して真空紫外光37を照射する。真空紫外光37の照射により、図3(d)に示すように、第2正孔注入輸送層5aの露光部では、第2正孔注入輸送層5aに含有される材料が分解される。一方、第2正孔注入輸送層5aの未露光部では、第2正孔注入輸送層5bがそのまま残る。
このように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分では、第2正孔注入輸送層に含有される材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されることで、撥液性を有する領域とすることができる。
これは、第2正孔注入輸送層に含有される材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されることで、第1正孔注入輸送層が露出し、この第1正孔注入輸送層が備える撥液性により、撥液性を有する領域となるためであると考えられる。第2正孔注入輸送層のエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分は、例えば、第2正孔注入輸送層の構成材料を含有しない部分、第2正孔注入輸送層に含有される材料の量と比較して、その材料を少ない量含有する部分、または、第2正孔注入輸送層の構成材料の分解物等を含有する部分となる。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分では、第1正孔注入輸送層が完全もしくは部分的に露出する、または、第2正孔注入輸送層の厚みが非常に薄くなるものと思料される。
また、第2正孔注入輸送層に含有される材料が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により変性されることも考えられる。この場合、第2正孔注入輸送層のエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分は、例えば、第2正孔注入輸送層の構成材料の変性物等を含有する部分となる。これによっても、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分では、第1正孔注入輸送層が部分的に露出する、または、第2正孔注入輸送層の厚みが非常に薄くなるものと思料される。
したがって、図2(d)および図3(d)に例示するように、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域12と、第2正孔注入輸送層5aの構成材料が分解等されず、撥液性領域12以外の領域である親液性領域11とを有する有機EL素子用基板1とすることができる。
本発明によれば、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域を撥液性領域とし、この撥液性領域以外の領域であり、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解、変性等されない領域を親液性領域とする。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能な有機EL素子用基板とすることができる。
また、撥液性領域は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域であるので、第2正孔注入輸送層の備える正孔輸送性等は低下もしくは消失していると考えられる。そのため、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域は、発光には寄与しない部分となるものと思料される。一方、親液性領域は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解、変性等されない領域であるので、第2正孔注入輸送層の備える正孔輸送性等は維持されており、発光に寄与し得る部分となる。したがって、撥液性領域と親液性領域とからなるパターンは、第2正孔注入輸送層の備える正孔輸送性等が低下もしくは消失された撥液性領域と、第2正孔注入輸送層の備える正孔輸送性等をそのまま有する親液性領域とからなるパターンであるともいうことができる。
以下、本発明の有機EL素子用基板の各構成について説明する。
1.第1正孔注入輸送層
本発明における第1正孔注入輸送層は、第1電極層上に形成され、撥液性を有するものである。
第1正孔注入輸送層の有する撥液性としては、第1正孔注入輸送層表面の液体の接触角が、第2正孔注入輸送層表面の液体の接触角よりも相対的に高く、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性が悪ければよい。なお、第1正孔注入輸送層の有する撥液性について液体の接触角を評価する「液体」とは、インクジェット法等の方法で塗り分けする発光層形成用塗工液をいう。第1正孔注入輸送層に求められる液体の接触角は、用いる発光層形成用塗工液の表面張力に依存する。第1正孔注入輸送層表面は、発光層形成用塗工液に対して撥液性を有していればよく、第2正孔注入輸送層形成用塗工液に対しては親液性であっても撥液性であってもよい。
具体的には、発光層形成用塗工液の表面張力が28.5mN/mである場合には、表面張力28.5mN/mの液体を用いた場合に、第1正孔注入輸送層表面の液体の接触角は、第2正孔注入輸送層表面の液体の接触角よりも、10°以上高いことが好ましく、中でも20°以上高いことが好ましく、特に40°以上高いことが好ましい。
なお、表面張力が28.5mN/mの液体としては、22℃におけるm−キシレンを例示することができる。
また、発光層形成用塗工液は、溶剤の種類を変えたり、温度を変化させたりすることにより、表面張力を10mN/m〜100mN/mの範囲内で調整することができる。よって、表面張力が28.5mN/mの液体を用いた場合に限定されるものではなく、表面張力が10mN/m〜100mN/mの範囲内のいずれの液体を用いた場合であっても、その液体を用いた場合に、上記のような液体の接触角に相対的な差が得られればよい。
また、第1正孔注入輸送層表面では、例えば、表面張力28.5mN/mの液体の接触角が25°以上であることが好ましく、より好ましくは45°以上、さらに好ましくは55°以上である。第2正孔注入輸送層の構成材料が分解されて、第1正孔注入輸送層が露出した場合に、上記液体の接触角が上記範囲であることにより、発光層等を精度良くパターニングすることができるからである。
なお、液体の接触角は、種々の表面張力を有する液体の接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして求めることができる。この測定に際しては、種々の表面張力を有する液体として、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いることとする。
第1正孔注入輸送層に用いられる材料は、有機材料を含むものであり、撥液性を有し、陽極(第1電極層)から正孔を注入できるものであれば特に限定されるものではないが、中でも、エネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されないもしくは分解され難いものであることが好ましい。このような材料としては、重量平均分子量が2000以上の高分子材料、重合性の低分子材料が挙げられる。これらの材料としては、正孔注入性を有する材料および正孔注入性を有さない材料のいずれも用いることができる。
正孔注入性を有する材料としては、例えば、撥液性を有する正孔注入材料、正孔注入材料および撥液材料を含む材料を挙げることができる。
撥液性を有する正孔注入材料は、フッ素を含有することが好ましい。このような撥液性を有する正孔注入材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンからなる群から選択される少なくとも1種にパーフルオロスルホン酸等がドーピングされている導電性ポリマーを挙げることができる。
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンとしては、例えば、特表2007−532758号公報に記載のものを用いることができる。
上記導電性ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、2つ以上のそれぞれのモノマーの共重合体であってもよい。
中でも、導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、非置換ポリピロールおよび非置換ポリアニリンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。特に、導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含有することが好ましい。
また、撥液性を有する正孔注入材料としては、一般的に用いられる正孔輸送性高分子化合物がフッ素化された高分子材料を用いることができる。
正孔輸送性高分子化合物がフッ素化された高分子材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を繰り返し単位に含む重合体がフッ素化された材料を挙げることができる。なお、上記重合体については、後述の第2正孔注入輸送層の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
また、第1正孔注入輸送層として、一般的に用いられる正孔輸送性高分子化合物からなる膜をフッ素プラズマ処理したものを用いることも可能である。
また、第1正孔注入輸送層は、上記の高分子材料に加えて、後述の第2正孔注入輸送層に用いられる低分子材料を含有していてもよい。
また、撥液性を有する正孔注入材料としては、上記フッ素化されたアリールアミン誘導体等を繰り返し単位に含む重合体に、ルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、塩化鉄、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、電荷移動錯体を形成させて、導電性を高くした材料を用いることもできる。
正孔注入材料および撥液材料を含む材料の場合、正孔注入材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンからなる群から選択される少なくとも1種の導電性ポリマーを挙げることができる。
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンとしては、例えば、特表2007−532758号公報に記載のものを用いることができる。
上記導電性ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、2つ以上のそれぞれのモノマーの共重合体であってもよい。
中でも、導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、非置換ポリピロールおよび非置換ポリアニリンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。特に、導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることが好ましい。
また、上記撥液性材料としては、例えば、少なくとも1種の非ポリマーフッ素化有機酸を挙げることができる。
なお、「非ポリマー」とは、約2000未満の分子量を有する化合物を意味する。また、「フッ素化有機酸」とは、少なくとも1つの酸基と炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素とを有する有機化合物を意味する。
非ポリマーフッ素化有機酸としては、水性溶媒または非水性溶媒に可溶または分散するものを用いることができ、例えば、非ポリマーフッ素化スルホン酸、非ポリマーフッ素化リン酸、非ポリマーフッ素化ホスホン酸、非ポリマーフッ素化カルボン酸、非ポリマーフッ素化アクリル酸等が挙げられる。
非ポリマーフッ素化有機酸は、高度にフッ素化されていてもよい。なお、「高度にフッ素化されている」とは、炭素原子に結合した水素の少なくとも50%がフッ素で置換されていることをいう。また、非ポリマーフッ素化有機酸は、過フッ素化されていてもよい。このような非ポリマーフッ素化有機酸としては、例えば、フルオロエーテル有機酸、フルオロアミド有機酸、フルオロアミドエーテル有機酸等が挙げられる。
また、非ポリマーフッ素化有機酸としては、下記式
7−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR´fSO3
(上記式中、R7はフルオロアルキル基であり、RfおよびR´fは独立してF、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2である。)
で表されるフルオロエーテルスルホン酸を挙げることができる。R7は、過フッ素化アルキル基であってもよく、ジフルオロメチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル等が例示される。
上記式で表されるフルオロエーテルスルホン酸としては、例えば、2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(パーフルオロエトキシ)プロパン−2−イルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホン酸、2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸等が挙げられる。
なお、導電性ポリマーの合成方法および非ポリマーフッ素化有機酸の合成方法等については、特表2007−532758号公報に詳しく記載されている。
また、正孔注入性を有さない材料としては、例えば、オルガノポリシロキサンなどに、長鎖アルキル基やフッ素含有基を持つシランカップリング剤を混合させた材料等を用いることができる。シランカップリング剤として、例えば、γ-グリシドキシトリメトキシシラン(TSL8350、東芝シリコーン社製)やトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(TSL8257、GE東芝シリコーン社製)を用いることができる。また、フッ素系あるいはシリコン系ブロックコポリマーであるモディパー(日油株式会社)を用いることもできる。これらの材料は、一般的に正孔注入の効果は小さいと言われているが、薄く形成すればトンネル効果により正孔が第1正孔注入輸送層を突き抜けて第2正孔注入輸送層に注入されるため、素子性能に与える影響は小さい。
本発明においては、後述の第2正孔注入輸送層が光触媒機能をもつ材料を含有する場合、第1正孔注入輸送層は、上記の材料に加えて、光触媒機能をもつ材料を含有していてもよい。本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際に、第1正孔注入輸送層および第2正孔注入輸送層に光触媒機能をもつ材料が含有されていることにより、撥液性領域では第2正孔注入輸送層の構成材料の分解を促進できるからである。分解速度が速いことは、製造上タクトを向上させることができるために有利であり、例えば、第2正孔注入輸送層の膜厚を厚くすることができるため、第2正孔注入輸送層の膜厚を最適値に調整して親液性領域に作製する素子の性能を最適化することが可能となる。
なお、光触媒機能をもつ材料については、後述の第2正孔注入輸送層の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
第1正孔注入輸送層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜500nmの範囲内である。中でも、第1正孔注入輸送層に正孔注入性を有さない材料を用いる場合、膜厚は上記範囲内のうち、5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。一方、第1正孔注入輸送層に正孔注入性を有する材料を用いる場合、膜厚は上記範囲内であればよい。
なお、第1正孔注入輸送層の形成方法については、後述する「C.有機EL素子用基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
2.第2正孔注入輸送層
本発明における第2正孔注入輸送層は、上記第1正孔注入輸送層上に形成され、親液性を有するものである。
第2正孔注入輸送層の有する親液性としては、第2正孔注入輸送層表面の液体の接触角が、第1正孔注入輸送層表面の液体の接触角よりも相対的に低く、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性が良好であればければよい。第2正孔注入輸送層に求められる液体の接触角は、用いる発光層形成用塗工液の表面張力に依存する。なお、第2正孔注入輸送層表面の液体の接触角と、第1正孔注入輸送層表面の液体の接触角との差については、上記第1正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、第2正孔注入輸送層表面では、例えば、表面張力28.5mN/mの液体の接触角が20°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下である。上記液体の接触角が上記範囲であることにより、発光層等を精度良くパターニングすることができるからである。
なお、液体の接触角の測定方法については、上記第1正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
第2正孔注入輸送層に用いられる材料としては、有機材料を含むものであり、親液性を有し、陽極(第1電極層)から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではないが、中でも、エネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されうるもしくは分解されやすいものであることが好ましい。このような材料としては、正孔輸送性を有する材料および正孔輸送性を有さない材料のいずれも用いることができる。
また、上記の材料は、高分子材料であってもよく、低分子材料であってもよい。高分子材料を用いた場合には、膜強度を高めることができる。一方、低分子材料を用いた場合には、エネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射によって、分解されやすいものとすることができる。
なお、本明細書において、高分子材料とは、重量平均分子量が2000以上であるものをいう。また、低分子材料とは、分子量が2000未満であるものをいう。
正孔輸送性を有する高分子材料としては、例えば、後述の「B.有機EL素子」の項に記載の発光層に用いられる発光材料に例示する化合物の他、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を繰り返し単位に含む重合体を挙げることができる。
アリールアミン誘導体を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、非共役系の高分子としてコポリ[3,3’−ヒドロキシ−テトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネート(PC−TPD−DEG)、下記構造で表されるPTPDESおよびEt-PTPDEK等、共役系の高分子としてポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン]を挙げることができる。
Figure 0005104538
アントラセン誘導体類を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(9,10−アントラセン)]等を挙げることができる。
カルバゾール類を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)等を挙げることができる。チオフェン誘導体類を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(ビチオフェン)]等を挙げることができる。
フルオレン誘導体を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)等を挙げることができる。
スピロ化合物を繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(9,9’−スピロ−ビフルオレン−2,7−ジイル)]等を挙げることができる。これらの正孔輸送性高分子化合物は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、正孔輸送性を有する低分子材料としては、特に限定されることなく、例えば、後述の「B.有機EL素子」の項に記載の発光層に用いられる発光材料に例示する化合物の他、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を挙げることができる。
アリールアミン誘導体の具体例としては、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)、4,4',4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4',4”-トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)などが挙げられる。
カルバゾール誘導体の具体例としては、4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)などが挙げられる。
フルオレン誘導体の具体例としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン(DMFL−TPD)などが挙げられる。
ジスチリルベンゼン誘導体の具体例としては、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)などが挙げられる。
スピロ化合物の具体例としては、2,7−ビス(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−NPB)、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−TAD)などが挙げられる。
一方、正孔輸送性を有さない材料としては、第1正孔注入輸送層との密着性や、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する際に親液性領域上に発光層や第4正孔注入輸送層等を形成する場合には発光層や第4正孔注入輸送層等との密着性を高めるための、接着材料が挙げられる。接着材料としては、親液性を有し、陽極(第1電極層)から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではない。
第2正孔注入輸送層は、必要に応じてバインダー樹脂や硬化性樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。
また、第2正孔注入輸送層は、さらに、熱および/または光硬化性材料を含有することが好ましい。あるいは、第2正孔注入輸送層に含まれる正孔輸送性を有する材料が、熱および/または光硬化性官能基を有することが好ましい。熱および/または光硬化性を有することにより、第2正孔注入輸送層を硬化させることが可能になるため、隣接する発光層を塗布により形成した場合であっても、発光層形成用塗工液を塗布する際に第2正孔注入輸送層の構成成分の溶出を低減することができる。第2正孔注入輸送層に含まれる正孔輸送性を有する材料に導入されている熱および/または光硬化性官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基などのアクリル系の官能基、またはビニル基、ビニレン基、エポキシ基、イソシアネート基、シンナメート基、シンナモイル基、クマリン基、カルバゾール基等を挙げることができる。
第2正孔注入輸送層は、上記の材料に加えて、光触媒機能をもつ材料を含有していてもよい。本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際に、第2正孔注入輸送層に光触媒機能をもつ材料が含有されていることにより、撥液性領域では第2正孔注入輸送層の構成材料の分解を促進できるからである。分解速度が速いことは、製造上タクトを向上させることができるために有利であり、例えば、第2正孔注入輸送層の膜厚を厚くすることができるため、第2正孔注入輸送層の膜厚を最適値に調整して親液性領域に作製する素子の性能を最適化することが可能となる。
上記光触媒機能をもつ材料としては、金属酸化物または無機半導体であることが好ましい。
上記の金属酸化物および無機半導体は、ナノ粒子であってもよい。すなわち、光触媒機能をもつ材料は、金属酸化物ナノ粒子または無機半導体ナノ粒子であってもよい。
なお、ナノ粒子とは、直径がnm(ナノメートル)オーダー、すなわち1μm未満の粒子をいう。
上記金属酸化物ナノ粒子は、金属含有ナノ粒子の少なくとも一部が酸化されたものであることが好ましい。金属含有ナノ粒子は、金属および/または金属化合物を含むものである。すなわち、第2正孔注入輸送層は、金属および/または金属化合物を含む金属含有ナノ粒子を含有していてもよい。金属含有ナノ粒子中に含まれる金属および金属化合物は、無機化合物の金属酸化物と比べて反応性が高く、金属含有ナノ粒子は、第2正孔注入輸送層中の有機材料との間で、または金属含有ナノ粒子同士で、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、素子寿命を向上させることが可能である。
なお、電荷移動錯体を形成していることは、例えば、1H NMR測定により、金属含有ナノ粒子を第2正孔注入輸送層に用いられる有機材料の溶液へ混合した場合、有機材料の6〜10ppm付近に観測される芳香環に由来するプロトンシグナルの形状やケミカルシフト値が、金属含有ナノ粒子を混合する前と比較して変化する現象が観測されることによって示唆される。
上記金属含有ナノ粒子としては、例えば、モリブデン含有ナノ粒子、チタン含有ナノ粒子、白金含有ナノ粒子、パラジウム含有ナノ粒子、ニッケル含有ナノ粒子などが挙げられる。
中でも、上記金属含有ナノ粒子は、モリブデン含有ナノ粒子、チタン含有ナノ粒子、またはモリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子の混合物であることが好ましい。モリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子は、反応性が比較的高く、第2正孔注入輸送層中の有機材料との間で、またはナノ粒子同士で、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、素子寿命をさらに向上させることが可能である。また、モリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子は、酸素や水が存在する大気中で紫外光や真空紫外光等のエネルギーの照射により、光触媒活性な金属酸化物となる。そのため、本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際には、第2正孔注入輸送層の内部から第2正孔注入輸送層の構成材料を分解することができる。
上記金属含有ナノ粒子は、金属および/または金属化合物を含むものであり、通常、金属および/または金属化合物の粒子を含有するものである。
金属および/または金属化合物の粒子は、単一構造であっても複合構造であってもよく、コア・シェル構造、合金、島構造等であってもよい。
例えば、モリブデン含有ナノ粒子に含まれるモリブデン化合物としては、モリブデン酸化物(MoO2、MoO3)、MoS2、MoB2、MoSe2,MoClx(x=3,4,5)等が挙げられる。ただし、ここで例示した価数のモリブデン化合物のみが含まれるわけではなく、ナノ粒子内には処理条件によって様々な価数のMo原子や化合物、例えば酸化物とホウ化物が混在していてもよい。
また、上記金属含有ナノ粒子は、保護剤を含んでいてもよい。この場合、無機化合物の金属酸化物と異なり、ナノ粒子中に保護剤として有機部分を含むため、第2正孔注入輸送層中の有機材料との相溶性が良好となり、かつ、隣接する発光層等の有機層との界面の密着性も良好となる。そのため、長寿命化に寄与することが可能である。
上記保護剤の種類は適宜選択され、特に限定されないが、金属および/または金属化合物の粒子の表面保護と分散安定性の点から、金属および/または金属化合物と連結する作用を生ずる連結基と、疎水性を有する有機基とが含まれることが好ましい。保護剤としては、例えば、疎水性を有する有機基の末端に連結基として親水性基を有する構造が挙げられる。保護剤は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
連結基としては、金属および/または金属化合物と連結する作用を有すれば、特に限定されない。連結には、吸着や配位も含まれるが、イオン結合、共有結合等の化学結合であることが好ましい。保護剤中の連結基の数は分子内に1つ以上であればいくつであってもよい。第2正孔注入輸送層に用いられる有機材料に金属含有ナノ粒子を分散させる場合に、上記連結基が保護剤1分子内に2つ以上存在すると、保護剤同士が重合して上記有機材料と相溶性の悪い連結基部分がバインダー成分である有機材料側に露出して、有機材料と金属含有ナノ粒子の相溶性を阻害する可能性がある。したがって、このような場合には、連結基は保護剤の1分子内に1つであることが好ましい。連結基の数が1分子内に1つの場合は、保護剤は粒子と結合するか、2分子反応で二量体を形成して反応が停止する。この二量体については、粒子との密着性が弱いため、洗い流す工程を付与すると膜中から容易に取り除くことができる。
連結基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸基、ホスフィン酸基、P=O基などの親水性基が挙げられる。連結基としては、以下の一般式(1a)〜(1l)で示される官能基より選択される1種以上であることが好ましい。
Figure 0005104538
(式中、Z、ZおよびZは、各々独立にハロゲン原子、またはアルコキシ基を表す。)
保護剤に含まれる有機基としては、炭素数が4以上、好ましくは炭素数が6〜30、より好ましくは8〜20の直鎖または分岐の飽和または不飽和アルキル基や、芳香族炭化水素および/または複素環等が挙げられる。中でも、保護剤が、金属および/または金属化合物と連結する作用を生ずる連結基と、芳香族炭化水素および/または複素環とを含むことが、有機材料との相溶性の向上、隣接する有機層との密着性向上などにより、膜の分散安定性が向上し、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
芳香族炭化水素および/または複素環としては、具体的には、ベンゼン、トリフェニルアミン、フルオレン、ビフェニル、ピレン、アントラセン、カルバゾール、フェニルピリジン、トリチオフェン、フェニルオキサジアゾール、フェニルトリアゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルトリアジン、ベンゾジアチアジン、フェニルキノキサリン、フェニレンビニレン、フェニルシロール、およびこれらの構造の組み合わせ等が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない限り、芳香族炭化水素および/または複素環を含む構造に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基の中では、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
保護剤は、正孔輸送性基を有することが、有機材料との相溶性や正孔輸送性の向上により、長駆動寿命化に寄与する点から、好ましい。正孔輸送性基とは、その化学構造基が正孔のドリフト移動度を有する性質を示す基であり、また別の定義としてはTime−Of−Flight法などの正孔輸送性能を検知できる既知の方法により正孔輸送に起因する検出電流が得られる基として定義できる。正孔輸送性基がそれ自身単独で存在しえない場合は、この正孔輸送性基に水素原子を付加した化合物が正孔輸送性化合物であればよい。正孔輸送性基としては、例えば、上記有機材料(アリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体等)において、水素原子を除いた残基が挙げられる。
金属含有ナノ粒子において、金属および/または金属化合物と保護剤との含有比率は、適宜選択され、特に限定されないが、金属および/または金属化合物100重量部に対して、保護剤が10〜20重量部であることが好ましい。
金属含有ナノ粒子の平均粒径は、特に限定されるものではなく、例えば0.5nm〜100nmの範囲内とすることができ、中でも0.5nm〜20nmの範囲内、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。粒子径が小さすぎるものは、製造が困難であるからである。一方、粒子径が大きすぎると、単位重量当たりの表面積(比表面積)が小さくなり、所望の効果が得られない可能性があり、さらに薄膜の表面粗さが大きくなりショートが多発する恐れがあるからである。
なお、平均粒径は、動的光散乱法により測定される体積平均粒径または個数平均粒径であるが、第2正孔注入輸送層に分散された状態においては、平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた画像から、金属含有ナノ粒子が20個以上存在していることが確認される領域を選択し、この領域中の全ての金属含有ナノ粒子について粒径を測定し、平均値を求めることにより得られる値とする。
金属含有ナノ粒子の製造方法は、上述した金属含有ナノ粒子を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、液相法等が挙げられる。
上記有機材料の含有量は、金属含有ナノ粒子100重量部に対して、10〜10000重量部であることが、正孔注入輸送性を高くし、かつ、膜の安定性が高く長寿命を達成する点から好ましい。上記有機材料の含有量が少なすぎると、有機材料による効果が得られ難い。一方、上記有機材料の含有量が多すぎると、金属含有ナノ粒子を用いる効果が得られ難くなる。
また、上記金属酸化物は、有機金属錯体の少なくとも一部が酸化されたものであってもよい。すなわち、第2正孔注入輸送層は、有機金属錯体および/またはその反応物を含有していてもよい。有機金属錯体は、金属酸化物と異なり、金属の価数や配位子により、正孔注入性や正孔輸送性をコントロールできる。また、有機金属錯体は、無機化合物の金属酸化物と異なり、配位子中に有機部分を含み得るため、第2正孔注入輸送層に含まれる有機材料との相溶性が良好となり、かつ、隣接する発光層等の有機層との界面の密着性も良好となる。さらに、有機金属錯体は、無機化合物の金属酸化物と比べて反応性が高く、第2正孔注入輸送層中の有機材料との間で、または有機金属錯体同士で、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、長寿命化に寄与することが可能である。
なお、第2正孔注入輸送層に含まれていてもよい有機金属錯体の反応物とは、第2正孔注入輸送層を形成する過程、例えば、第2正孔注入輸送層形成用塗工液中、加熱時、エネルギー照射時、素子駆動時等に行われる、有機金属錯体の反応によって生成される反応生成物のことをいう。
上記金属錯体としては、例えば、モリブデン錯体、チタン錯体、パラジウム錯体、白金錯体、ニッケル錯体などを挙げることができる。
中でも、上記有機金属錯体は、モリブデン錯体、チタン錯体、またはモリブデン錯体およびチタン錯体の混合物であることが好ましい。モリブデン錯体およびチタン錯体は、反応性が比較的高く、第2正孔注入輸送層中の有機材料との間で、または錯体同士で、電荷移動錯体を形成しやすいと考えられる。そのため、素子寿命をさらに向上させることが可能である。また、モリブデン錯体およびチタン錯体は、紫外光や真空紫外光等のエネルギーの照射により、光触媒活性な金属酸化物となる。そのため、本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際には、第2正孔注入輸送層の内部から第2正孔注入輸送層の構成材料を分解することができる。
なお、電荷移動錯体を形成していることは、例えば、1H NMR測定により、有機金属錯体を第2正孔注入輸送層に用いられる有機材料の溶液へ混合した場合、有機材料の6〜10ppm付近に観測される芳香環に由来するプロトンシグナルの形状やケミカルシフト値が、有機金属錯体を混合する前と比較して変化する現象が観測されることによって示唆される。
本発明において、有機金属錯体とは、金属を含む配位化合物であって、金属の他に配位子を含む。配位子の種類は適宜選択され、特に限定されないが、溶剤溶解性や隣接する有機層との密着性から有機部分(炭素原子)を含むことが好ましい。中でも、有機金属錯体に含まれる配位子中には、芳香環および/または複素環を含むことが、溶剤溶解性の向上、有機材料との相溶性の向上、隣接する有機層との密着性向上などにより、膜の分散安定性が向上し、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
芳香環および/または複素環を含む構造としては、具体的には、ベンゼン、トリフェニルアミン、フルオレン、ビフェニル、ピレン、アントラセン、カルバゾール、フェニルピリジン、トリチオフェン、フェニルオキサジアゾール、フェニルトリアゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルトリアジン、ベンゾジアチアジン、フェニルキノキサリン、フェニレンビニレン、フェニルシロール、およびこれらの構造の組み合わせ等が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない限り、芳香環および/または複素環を含む構造に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基の中では、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
また、配位子としては、単座配位子または二座配位子が、有機金属錯体の反応性が高くなる点から好ましい。錯体自身が安定になりすぎると反応性が劣る場合がある。
例えば、モリブデン錯体としては、酸化数−2から+6までの錯体がある。
酸化数0以下のモリブデン錯体としては、例えば、金属カルボニル[Mo-II(CO)5]2-、[(CO)5Mo-IMo-I(CO)5]2-、[Mo(CO)6]等が挙げられる。
また、酸化数が+1のモリブデン(I)錯体としては、ジホスファンやη5−シクロペンタジエニドを含む非ウェルナー型錯体が挙げられ、具体的には、MoI6-C66)2]+,[MoCl(N2)(diphos)2](diphosは、2座配位子(C652PCH2CH2P(C652)が挙げられる。
酸化数が+2のモリブデン(II)錯体としては、モリブデンが2核錯体となって、(Mo24+イオンの状態で存在するMo2化合物が挙げられ、例えば、[Mo2(RCOO)4]や[Mo222(RCOO)4]などが挙げられる。ここで、RCOOのうちのRは、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、各種カルボン酸を用いることができる。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸や酪酸、吉草酸などの脂肪酸、トリフルオロメタンカルボン酸などのハロゲン化アルキルカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、2−フェニルプロパン酸、ケイ皮酸、フルオレンカルボン酸などの炭化水素芳香族カルボン酸、フランカルボン酸やチオフェンカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの複素環カルボン酸等が挙げられる。また、上記有機材料(アリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体等)においてカルボキシル基を有するカルボン酸であってもよい。中でも、カルボン酸に、上述のような芳香環および/または複素環を含む構造が好適に用いられる。カルボン酸は選択肢が多く、混合する有機材料との相互作用を最適化したり、正孔注入輸送機能を最適化したり、隣接する層との密着性を最適化するのに適した配位子である。また、Xはハロゲンやアルコキシドであり、塩素、臭素、ヨウ素やメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、sec−ブチトキシド、tert−ブチトキシドを用いることができる。また、Lは中性の配位子であり、P(n−C493やP(CH33などのトリアルキルホスフィンやトリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンを用いることができる。
酸化数が+2のモリブデン(II)錯体としては、その他、[MoII 244]、[MoII24]などのハロゲン錯体を用いることができ、例えば、[MoIIBr4(P(n−C4934]や[MoII2(diars)2](diarsは、ジアルシン(CH3)2As−C64−As(CH3)2)などが挙げられる。
酸化数が+3のモリブデン(III)錯体としては、例えば、[(RO)3Mo≡Mo(OR)3]や、[Mo(CN)7(H2O)]4-などが挙げられる。Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基である。炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基の中では、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
また、酸化数が+4のモリブデン(IV)錯体としては、例えば、[Mo{N(CH3)2}4]、[Mo(CN)8]4-、それにオキソ配位子をもつMoO2+の錯体や、O2-で2重架橋したMo22 4+の錯体が挙げられる。
酸化数が+5のモリブデン(V)錯体としては、例えば、[Mo(CN)8]3-や、Mo=Oがトランス位でO2-で架橋された2核のMo23 4+を有するオキソ錯体としては例えばキサントゲン酸錯体Mo23(S2COC254、Mo=Oがシス位でO2-で2重架橋された2核のMo24 2+を有するオキソ錯体としては例えばヒスチジン錯体[Mo24(L−histidine)2]・3H2Oなどが挙げられる。
また、酸化数が+6のモリブデン(VI)錯体としては、例えば、MoO2(acetylacetonate)2]が挙げられる。なお、2核以上の錯体の場合には、混合原子価錯体もある。
上記有機材料の含有量は、有機金属錯体100重量部に対して、10〜10000重量部であることが、正孔注入輸送性を高くし、かつ、膜の安定性が高く長寿命を達成する点から好ましい。上記有機材料の含有量が少なすぎると、有機材料による効果が得られ難い。一方、上記有機材料の含有量が多すぎると、有機金属錯体を用いる効果が得られ難くなる。
また、上記無機半導体としては、例えば、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)等が挙げられる。
無機半導体が、無機半導体ナノ粒子である場合、無機半導体ナノ粒子の平均粒径、製造方法、含有量等については、上記金属含有ナノ粒子と同様とすることができる。
第2正孔注入輸送層の膜厚としては、親液性領域および撥液性領域からなるパターンの形成が可能であり、かつ、正孔の輸送を阻害しないような膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的には、第2正孔注入輸送層の膜厚は、0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは5nm〜10nmの範囲内である。中でも、材料の分解に必要なプロセス時間を考慮すると、膜厚は上記範囲内のうち比較的薄いことが好ましいが、膜厚が薄すぎると素子特性が低下するおそれがある。
なお、第2正孔注入輸送層の形成方法については、後述する「C.有機EL素子用基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
3.親液性領域および撥液性領域
本発明の有機EL素子用基板は、上記第2正孔注入輸送層側の表面に、上記第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域と、この撥液性領域以外の領域である親液性領域とからなるパターンを有している。
なお、「親液性領域」とは、撥液性領域よりも液体の接触角が小さい領域をいい、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性の良好な領域である。また、「撥液性領域」とは、親液性領域よりも液体の接触角が大きい領域をいい、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性が悪い領域である。
撥液性領域の液体の接触角は、親液性領域の液体の接触角よりも、表面張力28.5mN/mの液体を用いた場合に、10°以上高いことが好ましく、中でも20°以上高いことが好ましく、特に40°以上高いことが好ましい。
また、撥液性領域では、表面張力28.5mN/mの液体の接触角が25°以上であることが好ましく、より好ましくは45°以上、さらに好ましくは55°以上である。撥液性領域は撥液性が要求される部分であるため、上記液体の接触角が小さすぎると、撥液性が十分でなく、撥液性領域にも発光層形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
一方、親液性領域では、表面張力28.5mN/mの液体の接触角が20°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下である。上記液体の接触角が高すぎると、発光層形成用塗工液等が濡れ広がりにくくなる可能性があり、発光層等が欠ける等の可能性があるからである。
なお、液体の接触角の測定方法については、上記第1正孔注入輸送層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、図4および図5に例示するように、第1電極層3が形成された基板2上に仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)が形成され、仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の頂部P1上に撥液性領域12が配置され、仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の側部P2上および開口部P3上に親液性領域12が配置されている場合には、親液性領域11および撥液性領域12での液体の接触角が、仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の側部P2側から頂部P1側に向かって高くなっていてもよい。親液性領域および撥液性領域での液体の接触角が、仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなる場合には、第2正孔注入輸送層上に発光層形成用塗工液等を均一な厚みで塗布することができるからである。すなわち、均一な厚みで、平坦性良く、発光層等を形成することができるからである。
上記の場合、親液性領域および撥液性領域での液体の接触角は、仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなっていれば特に限定されるものではなく、連続的に高くなっていてもよく、段階的に高くなっていてもよい。
また、親液性領域および撥液性領域の全体において、液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなっていてもよく、親液性領域の一部分および撥液性領域において、液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなっていてもよい。液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなる場合、通常、少なくとも親液性領域および撥液性領域の境界付近において、液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなることになる。
親液性領域は、通常、上記第2正孔注入輸送層と同様の構成になる。すなわち、第2正孔注入輸送層の表面が親液性領域となる。
一方、撥液性領域は、上記第2正孔注入輸送層の構成材料が分解されたものである。
なお、「撥液性領域が、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解されたものである」とは、撥液性領域に第2正孔注入輸送層の構成材料が含有されていない、または、第2正孔注入輸送層に含有される材料の量と比較して、撥液性領域にその材料が少ない量含有されている、または、撥液性領域に第2正孔注入輸送層の構成材料の分解物等が含有されていることをいう。例えば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により、第2正孔注入輸送層のエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分が完全または部分的に分解除去されて、第1正孔注入輸送層が完全にまたは部分的に露出すること等となる。
また、撥液性領域が、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解されたものであることは、例えば第2正孔注入輸送層の構成材料が蛍光性の材料である場合には、蛍光顕微鏡で確認することができる。また、第2正孔注入輸送層の構成材料が蛍光性の材料でない場合は、第2正孔注入輸送層を適当な溶剤で洗浄した後に段差が形成されていることを測ることにより、確認することができる。
親液性領域および撥液性領域の形成位置としては、所望のパターンに発光層等をパターニング可能であれば特に限定されるものではない。例えば第1電極層がパターン状に形成されている場合には、親液性領域が第1電極層のパターン上に配置され、撥液性領域が第1電極層のパターンの開口部上に配置されていることが好ましい。
また、例えば図4および図5に示すように、第1電極層3が形成された基板2上に仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)が形成されている場合には、仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の頂部P1上に撥液性領域12が配置され、仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の側部P2上および仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)の開口部P3上に親液性領域12が配置されていることが好ましい。本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する際に、仕切部の頂部上に配置された撥液性領域上には発光層等が形成されないので、発光層等を精度良くパターニングすることができるからである。
さらに、従来のような撥液性材料を用いた隔壁や撥液化処理された隔壁では、隔壁の頂部だけでなく側部も撥液性を有するものとなるため、仕切り部の側部から発光層が物理的に剥離したり、発光層等の厚みの薄い箇所や発光層等が形成されない箇所が発生したりするという不具合があった。これに対し、本発明においては、隔壁の側部上には親液性領域が配置されているので、仕切り部の側部から発光層が物理的に剥離したり、発光層等の厚みの薄い箇所や発光層等が形成されない箇所が発生したりするのを抑制することができる。
上記仕切部が形成されている場合、撥液性領域の形成位置としては、仕切部の頂部上であればよく、図4に例示するように、仕切部(隔壁6a)の頂部P1のみに撥液性領域12が配置されていてもよく、図6(a)および(b)に例示するように、仕切部(隔壁6a)の頂部P1および側部P2の一部分に撥液性領域12が配置されていてもよい。前者の場合、撥液性領域は、仕切部の頂部の全体に形成されていてもよく、仕切部の頂部の一部分に形成されていてもよい。また、後者の場合、図6(a)に例示するように、発光層形成用塗工液等の表面が平坦となった場合に想定される高さである平坦時塗工液高さHより低い位置まで撥液性領域12が形成されていてもよく、また図6(b)に例示するように、平坦時塗工液高さH以上の位置まで撥液性領域12が形成されていてもよい。
また、親液性領域および撥液性領域のパターン形状としては、所望のパターンに発光層等をパターニング可能であれば特に限定されるものではない。例えば第1電極層がパターン状に形成されている場合、親液性領域および撥液性領域のパターン形状は、第1電極層のパターン形状に応じて適宜選択される。具体的には、第1電極層がストライプ状に形成されている場合、この第1電極層のストライプパターンに対応して、親液性領域もストライプ状に形成される。また、画素に対応して第1電極層がモザイク状に形成されている場合、親液性領域はストライプ状に形成されていてもよくモザイク状に形成されていてもよい。
なお、親液性領域および撥液性領域の形成方法については、後述する「C.有機EL素子用基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
4.仕切部
本発明においては、図4および図5に例示するように、第1電極層3が形成された基板2上に、親液性を有する仕切部(隔壁6aまたは絶縁層6b)がパターン状に形成されていてもよい。親液性を有する仕切部が形成されていることにより、仕切部が形成された基板上に第1正孔注入輸送層を均一に形成しやすくなるからである。
仕切部としては、例えば、隔壁および絶縁層が挙げられる。通常、図7(a)、(b)に例示するように、隔壁6aおよび絶縁層6bの両方が形成され、絶縁層6b上に隔壁6aが形成される。以下、隔壁および絶縁層に分けて説明する。
(1)隔壁
本発明においては、図4に例示するように、第1電極層3が形成された基板2上に、親液性を有する隔壁6aがパターン状に形成されていてもよい。通常、第1電極層がパターン状に形成されている場合には、隔壁6aは第1電極層3のパターンの開口部に形成される。
隔壁は、発光層等を塗り分けるために設けられるものである。本発明の有機EL用基板を用いた有機EL素子において、この隔壁が形成された部分は、非発光領域となる。
隔壁は、親液性を有するものである。隔壁の有する親液性としては、第1正孔注入輸送層形成用塗工液に対する濡れ性が良好であればよい。隔壁に求められる液体の接触角は、用いる第1正孔注入輸送層形成用塗工液の表面張力に依存する。
隔壁では、例えば、第1正孔注入輸送層形成用塗工液の表面張力が28.5mN/mである場合には、表面張力28.5mN/mの液体の接触角が20°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下である。これにより、隔壁が形成された基板上に第1正孔注入輸送層を欠陥なく均一に形成しやすくなるからである。
隔壁の形成材料としては、親液性を有するものであれば特に限定されるものではなく、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、一般的に有機EL素子における隔壁に用いられる材料を使用することができる。
有機材料としては、例えば、親液性を有する樹脂を挙げることができ、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
無機材料としては、例えば、SiO2などを挙げることができる。
隔壁の高さとしては、0.01μm〜50μm程度とすることができる。
また、絶縁層上に隔壁が形成されている場合、隔壁の幅としては、図7(a)に例示するように、隔壁6aの幅が第1電極層3のパターン間の幅よりも狭くてもよく、図7(b)に例示するように、隔壁6aの幅が第1電極層3のパターン間の幅よりも広くてもよい。
また、隔壁の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
(2)絶縁層
本発明においては、図5に例示するように、第1電極層3が形成された基板2上に、親液性を有する絶縁層6bがパターン状に形成されていてもよい。通常、第1電極層がパターン状に形成されている場合には、絶縁層6bは第1電極層3のパターンの開口部に形成され、かつ、第1電極層のパターンの端部を覆うように形成される。
絶縁層は、隣接する第1電極層のパターン間での導通や、第1電極層および第2電極層間での導通を防ぐために設けられるものである。本発明の有機EL用基板を用いた有機EL素子において、この絶縁層が形成された部分は、非発光領域となる。
絶縁層の形成材料としては、親液性を有し、かつ、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、一般的に有機EL素子における絶縁層に用いられる材料を使用することができる。
また、絶縁層の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
絶縁層の膜厚としては、10nm〜50μm程度とすることができる。
5.第1電極層
本発明に用いられる第1電極層は、陽極であり、基板上に形成されるものである。
第1電極層を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。
また、第1電極層を形成する材料としては、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。例えば、本発明の有機EL素子用基板を用いた有機EL素子において、基板側から光を取り出す場合や、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する過程において、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを形成する際に基板側からエネルギーを照射する場合には、第1電極層は透明性を有することが好ましい。導電性および透明性を有する材料としては、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を好ましいものとして例示することができる。一方、例えば、本発明の有機EL素子用基板を用いた有機EL素子において、基板の反対側から光を取り出す場合には、第1電極層に透明性は要求されない。この場合、導電性を有する材料として、金属を用いることができ、具体的には、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、あるいは、Al合金、Ni合金、Cr合金等を挙げることができる。
第1電極層はパターン状に形成されていてもよい。
第1電極層の成膜方法としては、一般的な電極の成膜方法を用いることができ、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等を挙げることができる。また、第1電極層のパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法を挙げることができる。
6.基板
本発明における基板は、第1電極層、第1正孔注入輸送層、第2正孔注入輸送層等を支持するものである。
基板は、透明であってもよく、透明でなくてもよい。例えば、本発明の有機EL素子用基板を用いた有機EL素子において、基板側から光を取り出す場合や、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を作製する過程において、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを形成する際に基板側からエネルギーを照射する場合には、基板は透明であることが好ましい。透明な基板としては、例えば、石英、ガラス等を挙げることができる。一方、例えば、本発明の有機EL素子用基板を用いた有機EL素子において、基板の反対側から光を取り出す場合には、基板に透明性は要求されない。この場合、基板には、上記材料の他にも、アルミニウムおよびその合金等の金属、プラスチック、織物、不織布等を用いることができる。
7.その他の構成
本発明の有機EL素子用基板は、基板、第1電極層、第1正孔注入輸送層、第2正孔注入輸送層、ならびに、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを有するものであればよく、必要に応じて、隔壁、絶縁層、その他の構成を有していてもよい。
本発明においては、第1正孔注入輸送層と第2正孔注入輸送層との間に、第3正孔注入輸送層がさらに形成されていてもよい。この場合、撥液性領域は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域、かつ、第3正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域となる。
第3正孔注入輸送層は、親液性を有していてもよく、撥液性を有していてもよいが、通常は、親液性を有するものとされる。
第3正孔注入輸送層が親液性を有する場合、この第3正孔注入輸送層の有する親液性としては、上記第2正孔注入輸送層の有する親液性と同程度であることが好ましい。
なお、第3正孔注入輸送層の形成材料、膜厚、形成方法等については、上記第2正孔注入輸送層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、上記第2正孔注入輸送層が光触媒機能をもつ材料を含有する場合、第3正孔注入輸送層も、光触媒機能をもつ材料を含有していてもよい。本発明の有機EL素子用基板を製造する過程において、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成する際に、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層に光触媒機能をもつ材料が含有されていることにより、撥液性領域では第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の構成材料の分解を促進できるからである。これにより、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の2層でも、容易にそれらの構成材料を分解することが可能である。
また、第1電極層および第1正孔注入輸送層の間に、正孔の注入を阻害しない層がさらに形成されていてもよい。
B.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上述の有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に形成され、少なくとも発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とするものである。
本発明の有機EL素子について、図面を参照しながら説明する。
図8は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図8に例示する有機EL素子41は、基板2上に第1電極層3がパターン状に形成され、この第1電極層3上に第1正孔注入輸送層4が形成され、この第1正孔注入輸送層4上に第2正孔注入輸送層5が形成され、第2正孔注入輸送層5側の表面に親液性領域11および撥液性領域12からなるパターンが形成された有機EL素子用基板を有するものであり、さらに、親液性領域11上に形成された発光層42と、この発光層42上に形成された電子注入輸送層43と、電子注入輸送層43上に形成された第2電極層44とを有している。第1正孔注入輸送層4は撥液性を有し、第2正孔注入輸送層5は親液性を有している。また、撥液性領域12は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域である。
図9は、本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。図9に例示する有機EL素子41は、基板2上に第1電極層3がパターン状に形成され、第1電極層3のパターンの開口部に隔壁6aが形成され、第1電極層3および隔壁6aの上に第1正孔注入輸送層4が形成され、この第1正孔注入輸送層4上に第2正孔注入輸送層5が形成され、第2正孔注入輸送層5側の表面に親液性領域11および撥液性領域12からなるパターンが形成された有機EL素子用基板を有するものであり、さらに、親液性領域11上に形成された発光層42と、発光層42上に形成された電子注入輸送層43と、電子注入輸送層43上に形成された第2電極層44とを有している。第1正孔注入輸送層4は撥液性を有し、第2正孔注入輸送層5は親液性を有している。また、撥液性領域12は、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域である。
本発明によれば、上記「A.有機EL素子用基板」の項に記載したように、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された領域を撥液性領域とし、この撥液性領域以外の領域であり、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解等されない領域を親液性領域とする。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等がパターニングされた有機EL素子とすることができる。
なお、有機EL素子用基板については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明の有機EL素子における他の構成について説明する。
1.EL層
本発明に用いられるEL層は、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に形成され、少なくとも発光層を含むものである。
発光層以外のEL層を構成する層としては、電子注入輸送層や第4正孔注入輸送層が挙げられる。また、キャリアブロック層のような正孔や電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることもできる。
以下、EL層の各構成について説明する。
(1)発光層
本発明における発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。
発光層に用いられる発光材料としては、蛍光または燐光を発するものであれば特に限定されるものではない。また、発光材料は、正孔輸送性や電子輸送性を有していていもよい。発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
色素系材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、フェニルアントラセン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、あるいは、中心金属に、Al、Zn、Be等またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体などを挙げることができる。
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、上記材料の共重合体、上記の色素系材料や金属錯体系材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
また、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で、発光材料にドーパントを添加してもよい。ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(ppy)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層は、親液性領域上にのみ形成されるものである。
なお、発光層の形成方法については、後述する「D.有機EL素子の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
(2)電子注入輸送層
本発明における電子注入輸送層は、陰極(第2電極層)から注入された電子を安定に発光層内へ注入する電子注入機能を有する電子注入層であってもよく、陰極(第2電極層)から注入された電子を発光層内へ輸送する電子輸送機能を有する電子輸送層であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層であってもよい。
電子注入層の形成材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ba、Ca、Li、Cs、Mg、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の単体、アルミリチウム合金等のアルカリ金属の合金、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物、8−ヒドロキシキノリノラトLi(Liq)、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機錯体などを挙げることができる。また、Ca/LiFのように、これらを積層して用いることも可能である。
上記の中でも、アルカリ土類金属のフッ化物が好ましい。アルカリ土類金属のフッ化物は、融点が高く耐熱性を向上させることができるからである。
また、電子輸送層の形成材料としては、陰極(第2電極層)から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)等のフェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)等のアルミキノリノール錯体などを挙げることができる。また、これらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層の形成材料としては、Li、Cs、Ba、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、アルカリ土類金属のフッ化物、8−ヒドロキシキノリノラトLi(Liq)などのアルカリ金属有機錯体やアルカリ土類金属錯体がドープされた電子輸送性材料を挙げることができる。電子輸送性材料としては、上述の発光材料や電子輸送材料が挙げられる。また、電子輸送性材料とドープされる金属とのモル比率は、1:1〜1:3の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:2の範囲内である。アルカリ金属やアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物もしくは有機金属錯体がドープされた電子輸送性材料は、電子移動度が比較的大きく、金属単体に比べて透過率が高い。
また、電子注入輸送層の形成材料は、抵抗が比較的高いものであることが好ましい。抵抗が低すぎると、クロストークが起こるおそれがあるからである。
電子注入層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には0.1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜100nmの範囲内である。
また、電子輸送層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜100nmの範囲内である。
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には0.1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1nm〜100nmの範囲内である。
電子注入輸送層は、親液性領域上にのみ形成されていてもよく、親液性領域上および撥液性領域上のいずれにも形成されていてもよく、電子注入輸送層の形成方法に応じて適宜選択される。例えば、電子注入輸送層をドライプロセスで形成する場合には、電子注入輸送層は、通常、親液性領域上および撥液性領域上のいずれにも形成されるものとなる。一方、電子注入輸送層をウェットプロセスで形成する場合には、電子注入輸送層は、通常、親液性領域上にのみ形成されるものとなる。
なお、電子注入輸送層の形成方法については、後述する「D.有機EL素子の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
(3)第4正孔注入輸送層
本発明においては、図10に例示するように、有機EL素子用基板1の親液性領域11上に第4正孔注入輸送層45が形成され、この第4正孔注入輸送層45上に発光層42が形成されていてもよい。
第4正孔注入輸送層は、親液性を有することが好ましい。この場合、第4正孔注入輸送層表面は親液性であり、第4正孔注入輸送層が形成されていない領域は撥液性領域となるので、この濡れ性の違いにより、発光層も親液性領域上にのみ形成することができるからである。
第4正孔注入輸送層の有する親液性としては、上記第2正孔注入輸送層の有する親液性と同程度であることが好ましい。
第4正孔注入輸送層の形成材料としては、陽極(第1電極層)から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記第2正孔注入輸送層に用いられる材料のいずれも用いることができる。
第4正孔注入輸送層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜20nmの範囲内である。
第4正孔注入輸送層は、親液性領域上にのみ形成されるものである。
なお、第4正孔注入輸送層の形成方法については、後述する「D.有機EL素子の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
2.第2電極層
本発明に用いられる第2電極層は、陰極であり、EL層上に形成されるものである。
第2電極層を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。例えば、図8および図9に示す有機EL素子においてトップエミッション型とする場合には、第2電極層は透明性を有することが好ましい。また例えば、図8および図9に示す有機EL素子においてボトムエミッション型とする場合には、第2極層に透明性は要求されない。なお、導電性を有する材料については、上記「A.有機EL素子用基板」の第1電極層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、第2電極層の形成方法については、上記第1電極層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
C.有機EL素子用基板の製造方法
次に、本発明の有機EL素子用基板の製造方法について説明する。本発明の有機EL素子用基板の製造方法は、第1電極層が形成された基板上に、撥液性を有する第1正孔注入輸送層を形成する第1正孔注入輸送層形成工程と、上記第1正孔注入輸送層上に、親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成する第2正孔注入輸送層形成工程と、上記第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、上記第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された撥液性領域、および、上記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成するパターン形成工程とを有することを特徴とする有機EL素子用基板の製造方法を提供する。
本発明の有機EL素子用基板の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板2上に第1電極層3をパターン状に形成し、この第1電極層3上に撥液性を有する第1正孔注入輸送層4を形成する(第1正孔注入輸送層形成工程)。次に、図2(b)に示すように、第1正孔注入輸送層4上に親液性を有する第2正孔注入輸送層5aを形成する(第2正孔注入輸送層形成工程)。
次いで、図2(c)に示すように、基体22と、この基体22上にパターン状に形成された遮光部23と、遮光部23を覆うように基体22上に形成され、光触媒を含有する光触媒含有層24とを有する光触媒含有層基板21を準備する。次いで、光触媒含有層基板21を、光触媒含有層24と第2正孔注入輸送層5aとが向かい合うように配置し、光触媒含有層基板21を介して第2正孔注入輸送層5aに対して紫外光27を照射する。紫外光27の照射により、図2(d)に示すように、光触媒含有層24に含有される光触媒の作用から、第2正孔注入輸送層5aの露光部では、第2正孔注入輸送層5aに含有される材料が分解され、撥液性領域12が形成される。一方、第2正孔注入輸送層5aの未露光部では、第2正孔注入輸送層5bがそのまま残り、親液性領域11となる(図2(c)〜(d)、パターン形成工程)。
図3は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図3(a)に示すように、基板2上に第1電極層3をパターン状に形成し、第1電極層3のパターンの開口部に隔壁6aを形成し、第1電極層3および隔壁6aの上に撥液性を有する第1正孔注入輸送層4を形成する(第1正孔注入輸送層形成工程)。次に、図3(b)に示すように、第1正孔注入輸送層4上に親液性を有する第2正孔注入輸送層5aを形成する(第2正孔注入輸送層形成工程)。
次いで、図3(c)に示すように、メタルマスク31を第2正孔注入輸送層5aの表面に配置し、メタルマスク31を介して第2正孔注入輸送層5aに対して真空紫外光37を照射する。真空紫外光37の照射により、図3(d)に示すように、第2正孔注入輸送層5aの露光部では、第2正孔注入輸送層5aに含有される材料が分解され、撥液性領域12が形成される。一方、第2正孔注入輸送層5aの未露光部では、第2正孔注入輸送層5bがそのまま残り、親液性領域11となる(図3(c)〜(d)、パターン形成工程)。
このように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及んだ部分または真空紫外光が照射された部分では、第2正孔注入輸送層に含有される材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されることで、撥液性を有する領域を形成することができる。これは、第2正孔注入輸送層に含有される材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用または真空紫外光の照射等により分解されることで、第1正孔注入輸送層が露出し、この第1正孔注入輸送層が備える撥液性により、撥液性を有する領域となるためであると考えられる。したがって、図2(d)および図3(d)に例示するように、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域12と、第2正孔注入輸送層5aの構成材料が分解等されず、撥液性領域12以外の領域である親液性領域11とからなるパターンを形成することができる。
本発明によれば、第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解することにより、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、この撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成することができる。この親液性領域は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及ばない部分または真空紫外光が照射されない部分であり、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解等されていない領域である。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能な有機EL素子用基板を得ることができる。
以下、本発明の有機EL素子用基板の製造方法における各工程について説明する。
1.第1正孔注入輸送層形成工程
本発明における第1正孔注入輸送層形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、撥液性を有する第1正孔注入輸送層を形成する工程である。
第1正孔注入輸送層の形成方法としては、第1電極層が形成された基板上の全面に、上記「A.有機EL素子用基板」の項に記載した第1正孔注入輸送層に用いられる材料を成膜することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、上記の材料等を溶媒に溶解もしくは分散させた第1正孔注入輸送層形成用塗工液を用いるウェットプロセスであってよく、ドライプロセスであってもよい。また、転写法も用いることができる。これらの方法は、第1正孔注入輸送層に用いられる材料の種類、例えば、高分子材料および低分子材料のいずれであるか等に応じて、適宜選択される。第1正孔注入輸送層に高分子材料を用いる場合には、ウェットプロセスが好ましく用いられる。一方、第1正孔注入輸送層に低分子材料を用いる場合には、ウェットプロセスまたはドライプロセスが好ましく用いられる。プロセス優位性の観点からは、発光層をウェットプロセスで形成するので、第1正孔注入輸送層の形成方法はウェットプロセスであることが望ましい。
ウェットプロセスの場合であって、第1正孔注入輸送層に用いられる材料が例えば導電性ポリマーと非ポリマーフッ素化有機酸とを含む材料である場合、第1正孔注入輸送層形成用塗工液は、水性分散系組成物であってもよく、非水性分散系組成物であってもよい。中でも、第1正孔注入輸送層形成用塗工液は、水性分散系組成物であることが好ましい。
また、第1正孔注入輸送層形成用塗工液が水性分散系組成物である場合、溶媒としては、上記の材料を溶解もしくは分散させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水や、水と混和性を有する溶媒を用いることができる。水と混和性を有する溶媒としては、例えば、エーテル、環式エーテル、アルコール、アルコールエーテル、ケトン、ニトリル、スルフィド、スルホキシド、アミド、アミン、カルボン酸等が挙げられる。これらの水と混和性を有する溶媒は、2種以上を併用してもよい。水と混和性を有する溶媒としてさらに具体的には、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール等が挙げられる。
第1正孔注入輸送層形成用塗工液としては、基板の全面に均一に上記の材料を成膜できる方法であればよく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、キャスト法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、エアロゾル法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
また、第1正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布した後は、乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法としては、一般的な乾燥方法を用いることができ、例えば加熱する方法が挙げられる。加熱する方法としては、例えば、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内を通過または静置させる方法、熱風を当てる方法、遠赤外線等により直接的に加熱する方法、あるいはホットプレートで加熱する方法等を用いることができる。
一方、ドライプロセスの場合、第1正孔注入輸送層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等を挙げることができる。
なお、基板、第1電極層および第1正孔注入輸送層については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.第2正孔注入輸送層形成工程
本発明における第2正孔注入輸送層形成工程は、上記第1正孔注入輸送層上に、親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成する工程である。
第2正孔注入輸送層の形成方法としては、第1正孔注入輸送層上の全面に、上記「A.有機EL素子用基板」の項に記載した第2正孔注入輸送層に用いられる材料を成膜することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、上記の材料等を溶媒に溶解もしくは分散させた第2正孔注入輸送層形成用塗工液を用いるウェットプロセスであってよく、ドライプロセスであってもよい。また、転写法も用いることができる。これらの方法は、第2正孔注入輸送層に用いられる材料の種類、例えば、高分子材料および低分子材料のいずれであるか等に応じて、適宜選択される。第2正孔注入輸送層に高分子材料を用いる場合には、ウェットプロセスが好ましく用いられる。一方、第2正孔注入輸送層に低分子材料を用いる場合には、ウェットプロセスまたはドライプロセスが好ましく用いられる。プロセス優位性の観点からは、発光層をウェットプロセスで形成するので、第2正孔注入輸送層の形成方法はウェットプロセスであることが望ましい。
ウェットプロセスの場合、第2正孔注入輸送層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記の材料を溶解もしくは分散させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系;酢酸ブチル等のエステル系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の炭化水素系;クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系;水系、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチル−2−ピロリドン;あるいは、上記の一部を水素からフッ素に置換したフッ素系の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、発光層形成用塗工液に対して撥液性を有する第1正孔注入輸送層上の全面に親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成するのであるが、上記溶媒を適宜選択することにより、撥液性を有する第1正孔注入輸送層上に均一に親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成することが可能である。
また、第2正孔注入輸送層形成用塗工液としては、基板の全面に均一に上記の材料を成膜できる方法であればよく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、キャスト法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、エアロゾル法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
さらに、第2正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布した後は、乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法としては、一般的な乾燥方法を用いることができ、例えば加熱する方法が挙げられる。加熱する方法としては、例えば、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内を通過または静置させる方法、熱風を当てる方法、遠赤外線等により直接的に加熱する方法、あるいはホットプレートで加熱する方法等を用いることができる。
一方、ドライプロセスの場合、第2正孔注入輸送層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等を挙げることができる。
なお、第2正孔注入輸送層については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
3.パターン形成工程
本発明におけるパターン形成工程は、上記第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、上記第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された撥液性領域、および、上記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成する工程である。
なお、撥液性領域および親液性領域については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射する方法、および、第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射する態様について説明する。
(1)マスクを用いてエネルギーを照射する方法
第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射する方法としては、第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解できる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、エネルギー照射によって、酸素ラジカルなどの活性酸素種を発生させることができる方法が用いられる。この活性酸素種の強力な酸化・還元力により、第2正孔注入輸送層に含有される材料、特に有機物を分解することができるからである。
このような方法としては、例えば、(i)マスクとして光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層基板を用い、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解する方法、および、(ii)マスクとして真空紫外光用マスクを用い、真空紫外光の照射によって第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解する方法、(iii)第2正孔注入輸送層、または、第2正孔注入輸送層および第1正孔注入輸送層を光触媒機能をもつ材料を含有するものとし、エネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用によって第2正孔注入輸送層に含有される材料を分解する方法、(iv)上記の(i)および(iii)を組み合わせた方法、(v)上記の(ii)および(iii)を組み合わせた方法等を挙げることができる。また、例えば、パターン状の開口部を有するマスクを介して電子線またはプラズマ等を照射する方法や、マスクを介して真空中でOラジカルを吹きつける方法等を用いることもできる。
中でも、上記(i)のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法、上記(ii)の真空紫外光を照射する方法、上記(iii)のエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法、上記(iv)のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法、および上記(v)の真空紫外光を照射する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法が好ましい。これらの方法によれば、第2正孔注入輸送層に含有される材料を精度良く分解することができるからである。特に、上記(iv)のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法が、パターン形成時間を短くできる点から好ましい。
以下、上記(i)〜(v)の方法に分けて説明する。
(i)エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法
エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法は、マスクとして、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層が形成されている光触媒含有層基板を用い、上記光触媒含有層基板を、上記第2正孔注入輸送層に対して、エネルギーの照射に伴う光触媒の作用がおよび得る間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射する方法である。
エネルギー照射に伴う光触媒の作用により第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解除去される機構については、必ずしも明確ではないが、エネルギー照射によって光触媒含有層に含有される光触媒が酸化還元反応を引き起こし、これによって生成されたスーパーオキサイドラジカル(・O2-)やヒドロキシラジカル(・OH)などの活性酸素種が、第2正孔注入輸送層に含有される有機物に作用を及ぼすことにより、有機物が分解物となり、この分解物が揮発除去されることで、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された領域を形成することができると考えられる。
以下、光触媒含有層基板および光触媒含有層基板を用いて第2正孔注入輸送層に光触媒の作用を及ぼす方法について説明する。
(光触媒含有層基板)
本発明に用いられる光触媒含有層基板は、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層が形成されているものである。
光触媒含有層の形成位置としては、図11(a)に例示するように、基体22上の全面に光触媒含有層24が形成されていてもよく、図11(b)に例示するように、基体22上に光触媒含有層24がパターン状に形成されていてもよい。
光触媒含有層がパターン状に形成されている場合には、光触媒含有層を第2正孔注入輸送層に対して所定の間隙をおいて配置し、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射する必要がなく、全面に照射することにより、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された撥液性領域をパターン状に形成することができる。また、この場合、エネルギーの照射方向としては、光触媒含有層と第2正孔注入輸送層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。さらには、照射されるエネルギーも、平行光等の平行なものに限定されない。
また、光触媒含有層基板には、遮光部がパターン状に形成されていてもよい。パターン状の遮光部を有する光触媒含有層基板を用いた場合には、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行ったりする必要がない。したがって、この場合には、光触媒含有層基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることができ、また描画照射に必要な高価な装置も不要であることから、コスト的に有利となる。
遮光部の形成位置としては、図2(c)に例示するように、基体22上に遮光部23がパターン状に形成され、この遮光部23上に光触媒含有層24が形成されていてもよく、図11(c)に例示するように、基体22上に光触媒含有層24が形成され、この光触媒含有層24上に遮光部23がパターン状に形成されていてもよく、図示しないが、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に遮光部がパターン状に形成されていてもよい。
基体上に遮光部が形成されている場合、および、光触媒含有層上に遮光部が形成されている場合は、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層と第2正孔注入輸送層とが間隙をおいて配置される部分の近傍に、遮光部が配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができる。このため、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
また、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に遮光部が形成されている場合は、例えばフォトマスクを遮光部の表面に着脱可能な程度に密着させることができるので、有機EL素子用基板の製造を小ロットで変更するような場合に好適である。
光触媒含有層基板としては、具体的には、特開2000−249821号公報等に記載されている光触媒含有層側基板と同様とすることができる。
エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法においては、マスクとして光触媒含有層基板を用い、パターン状にエネルギーを照射する。図11(a)に例示するように基体22上の全面に光触媒含有層24が形成されている場合であって、光触媒含有層基板およびフォトマスクを介して、パターン状にエネルギーを照射する場合には、マスクとして、光触媒含有層基板およびフォトマスクを組み合わせたものを用いる。一方、図11(a)に例示するように基体22上の全面に光触媒含有層24が形成されている場合であって、レーザを用いてパターン状に描画照射する場合には、マスクとして光触媒含有層基板を用いる。また、図11(b)に例示するように基体22上に光触媒含有層24がパターン状に形成されている場合には、マスクとして光触媒含有層基板を用いる。さらに、図2(c)や図11(c)に例示するように遮光部23がパターン状に形成されている場合には、マスクとして光触媒含有層基板を用いる。
(光触媒含有層基板を用いて第2正孔注入輸送層に光触媒の作用を及ぼす方法)
本発明においては、光触媒含有層基板を、第2正孔注入輸送層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用がおよび得る間隙をおいて配置する。なお、間隙とは、光触媒含有層および第2正孔注入輸送層が接触している状態も含むものとする。
光触媒含有層と第2正孔注入輸送層との間隔は、具体的には、200μm以下であることが好ましい。光触媒含有層と第2正孔注入輸送層とを所定の間隔をおいて配置することにより、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなるからである。光触媒含有層と第2正孔注入輸送層との間隔が上記範囲より広い場合には、光触媒作用により生じた活性酸素種が第2正孔注入輸送層に届き難くなり、分解除去速度を遅くしてしまう可能性がある。逆に、光触媒含有層と第2正孔注入輸送層との間隔を狭くしすぎると、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しにくくなり、結果的に分解除去速度を遅くしてしまう可能性がある。
上記間隔は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、分解除去の効率が良好である点を考慮すると、0.2μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の有機EL素子を製造する場合には、上述したような微細な間隙を光触媒含有層基板と第2正孔注入輸送層との間に設けることは極めて困難である。したがって、比較的大面積の有機EL素子を製造する場合は、上記間隙は、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10μm〜75μmの範囲内である。上記間隙を上記範囲とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下を抑制することができ、また光触媒の感度が悪化して分解除去の効率が悪化するのを抑制することができるからである。
また、上記のような比較的大面積に対してエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層基板と第2正孔注入輸送層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。上記間隙の設定値を上記範囲とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層基板と第2正孔注入輸送層とを接触させずに配置することができるからである。
本発明においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
エネルギー照射方向は、光触媒含有層基板に遮光部が形成されているか否か、あるいは、有機EL素子の光の取り出し方向等により決定される。例えば、光触媒含有層基板に遮光部が形成されており、光触媒含有層基板の基体が透明である場合は、光触媒含有層基板側からエネルギー照射が行なわれる。また例えば、光触媒含有層がパターン状に形成されている場合には、エネルギー照射方向は、上述したように、光触媒含有層と第2正孔注入輸送層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。さらに例えば、フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合、フォトマスクが配置された側が透明である必要がある。
光触媒含有層基板を用いて第2正孔注入輸送層に光触媒の作用を及ぼす方法としては、具体的には、特開2000−249821号公報等に記載されている光触媒含有層側基板を用いて特性変化層に光触媒の作用を及ぼす方法と同様とすることができる。
(ii)真空紫外光を照射する方法
真空紫外光を照射する方法は、マスクとして真空紫外光用マスクを用い、エネルギーとして真空紫外光を照射する方法である。
真空紫外光の照射により第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解除去される機構については、必ずしも明確ではないが、第2正孔注入輸送層に真空紫外光が照射されると、第2正孔注入輸送層に含有される有機物の分子結合が、真空紫外光の作用により切断されたり、また酸素の存在下、酸素が励起されて発生する酸素原子ラジカルが有機物に作用を及ぼすことにより、有機物が分解物となり、この分解物が揮発除去されたりすることで、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された領域を形成することができると考えられる。
真空紫外光の波長は、酸素と作用することにより酸素ラジカルを発生できる範囲内であれば特に限定されるものでないが、通常100nm〜250nmの範囲内であることが好ましく、中でも150nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。波長が上記範囲よりも長いと、酸素ラジカルの発生効率が低くなり、第2正孔注入輸送層に含有される材料の分解除去効率が低下してしまうおそれがあるからである。また、波長が上記範囲よりも短いと、安定した真空紫外光の照射が困難となる可能性があるからである。
上記波長範囲の真空紫外光の照射に用いられる光源としては、例えば、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
また、真空紫外光の照射量としては、上記親液性層形成用層を除去できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、第2正孔注入輸送層に含有される材料の種類や、上記真空紫外光の波長等によって適宜調整すればよい。
真空紫外光の照射の際に用いられる真空紫外光用マスクとしては、真空紫外光をパターン状に透過することができるものであればよく、例えば、パターン状の開口部を有するメタルマスクや、真空紫外光を透過することができる透明基材と、透明基材上にパターン状に形成され、真空紫外光を遮光することができる遮光部とを有するマスクを挙げることができる。
メタルマスクの材料としては、上記真空紫外光を遮光することができるものであればよく、例えば、特開2007−178783号公報等に記載されたものを用いることができる。
一方、透明基材としては、真空紫外光を透過することができるものであればよく、例えば、石英基板等を用いることができる。また、遮光部を構成する遮光材料としては、クロム、酸化クロム等の金属が挙げられる。
真空紫外光は指向性の無い分散光であることから、真空紫外光用マスクを介して真空紫外光を照射する場合は、この真空紫外光用マスクを第2正孔注入輸送層にできるだけ接近させ、真空紫外光が第2正孔注入輸送層と真空紫外光用マスクとの間に回折しないようにすることが好ましい。
中でも、隔壁や絶縁層等の仕切部が形成されていない場合には、真空紫外光用マスクを第2正孔注入輸送層にできるだけ接近させ、かつ、真空紫外光用マスクが第2正孔注入輸送層に接触しないように、真空紫外光用マスクを配置することが好ましい。
一方、隔壁や絶縁層等の仕切部が形成されている場合には、真空紫外光用マスクを第2正孔注入輸送層にできるだけ接近させ、かつ、真空紫外光用マスクが第2正孔注入輸送層に接触するように、真空紫外光用マスクを配置してもよく、また真空紫外光用マスクを第2正孔注入輸送層にできるだけ接近させ、かつ、真空紫外光用マスクが第2正孔注入輸送層に接触しないように、真空紫外光用マスクを配置してもよい。隔壁や絶縁層等の仕切部が形成されている場合であって、透明基材上に遮光部がパターン状に形成された真空紫外光用マスクを用いる場合には、真空紫外光用マスクを第2正孔注入輸送層に密着するように固定することができる。
(iii)エネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法
エネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法は、第2正孔注入輸送層、または、第2正孔注入輸送層および第1正孔注入輸送層を光触媒機能をもつ材料を含有するものとし、マスクを介して第2正孔注入輸送層に対してエネルギーを照射する方法である。
エネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用により第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解除去される機構については、必ずしも明確ではないが、エネルギー照射によって第2正孔注入輸送層や第1正孔注入輸送層に含有される光触媒機能をもつ材料が酸化還元反応を引き起こし、これによって生成されたスーパーオキサイドラジカル(・O2-)やヒドロキシラジカル(・OH)などの活性酸素種が、第2正孔注入輸送層に含有される有機物に作用を及ぼすことにより、有機物が分解物となり、この分解物が揮発除去されることで、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された領域を形成することができると考えられる。
特に、第2正孔注入輸送層や第1正孔注入輸送層が、有機金属錯体または金属含有ナノ粒子を含有する場合には、エネルギー照射によって有機金属錯体または金属含有ナノ粒子が酸化されて金属酸化物が生成する。この金属酸化物が光触媒となり、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解除去されると考えられる。
照射するエネルギーとしては、上記(i)と同様とすることができ、エネルギーの波長は、450nm以下とすることができ、好ましくは380nm以下である。
なお、エネルギー照射等については、具体的には、特開2002−274077号公報等に記載されている方法と同様とすることができる。
この方法の場合、第2正孔注入輸送層、または、第1正孔注入輸送層および第2正孔注入輸送層が、有機金属錯体または金属含有ナノ粒子を含有しているので、パターン形成工程では、有機金属錯体または金属含有ナノ粒子の少なくとも一部を金属酸化物とすることが好ましい。上述したように、この金属酸化物の光触媒作用により、第2正孔注入輸送層に含まれる材料の分解が促進されるからである。
有機金属錯体または金属含有ナノ粒子の少なくとも一部を金属酸化物とするには、例えば、上記のエネルギーを照射するだけでもよく、上記のエネルギーを照射することに加えて、加熱してもよい。
(iv)エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法
エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法は、第2正孔注入輸送層、または、第2正孔注入輸送層および第1正孔注入輸送層を光触媒機能をもつ材料を含有するものとし、マスクとして、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層が形成されている光触媒含有層基板を用い、上記光触媒含有層基板を、上記第2正孔注入輸送層に対して、エネルギーの照射に伴う光触媒の作用がおよび得る間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射する方法である。
なお、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法およびエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法については、それぞれ上記(i)、(iii)に記載したので、ここでの説明は省略する。
(v)真空紫外光を照射する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法
真空紫外光を照射する方法とエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法とを組み合わせた方法は、マスクとして真空紫外光用マスクを用い、第2正孔注入輸送層、または、第2正孔注入輸送層および第1正孔注入輸送層を光触媒機能をもつ材料を含有するものとし、エネルギーとして真空紫外光を照射する方法である。
なお、真空紫外光を照射する方法およびエネルギー照射に伴う光触媒機能をもつ材料の作用を利用する方法については、それぞれ上記(ii)、(iii)に記載したので、ここでの説明は省略する。
(2)マスクを用いてエネルギーを照射する態様
本発明において、後述の仕切部形成工程を行う場合、本工程にて、仕切部の頂部上に位置する第2正孔注入輸送層の部分にエネルギーを照射してもよい。
例えば、上記のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法の場合、図12(c)〜(d)に例示するように、光触媒含有層基板21を介して、仕切部(隔壁6a)の頂部上に位置する第2正孔注入輸送層5aの部分に紫外光27を照射することにより、仕切部の頂部上に撥液性領域12が形成される。これにより、仕切部(隔壁6a)の頂部上に配置された撥液性領域12と、仕切部(隔壁6a)の側部上および開口部上に配置された親液性領域11とからなるパターンが得られる。なお、図12(a)および(b)は、図3(a)および(b)と同様である。
また例えば、上記の真空紫外光を照射する方法の場合、図3(c)〜(d)に例示するように、メタルマスク31を介して、仕切部(隔壁6a)の頂部上に位置する第2正孔注入輸送層5aの部分に真空紫外光37を照射することにより、仕切部の頂部上に撥液性領域12が形成される。これにより、仕切部(隔壁6a)の頂部上に配置された撥液性領域12と、仕切部(隔壁6a)の側部上および開口部上に配置された親液性領域11とからなるパターンが得られる。
このように、仕切部の頂部上に位置する第2正孔注入輸送層の部分にエネルギーを照射することにより、仕切部の頂部上に配置された撥液性領域と、仕切部の側部上および開口部上に配置された親液性領域とからなるパターンを得ることができる。これにより、第1正孔注入輸送層を均一に形成しやすくなる。
なお、撥液性領域および親液性領域の形成位置については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
仕切部の頂部上に位置する第2正孔注入輸送層の部分にエネルギーを照射する場合であって、マスクとして透過領域および遮光領域を有するマスクを用いる場合には、仕切部の頂部の面積に対するマスクの透過領域の面積の比率、および、第2正孔注入輸送層およびマスク間の距離の少なくともいずれか一方を調整して、第2正孔注入輸送層側の表面での液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなるように、撥液性領域を形成してもよい。
例えば、上記のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法の場合であって、光触媒含有基板にて遮光部がパターン状に形成されている場合、図13に例示するような、基体22上に遮光部23が設けられている遮光領域51と、この遮光領域51以外の領域であり、基体22上に光触媒含有層24のみが設けられた透過領域52と有する光触媒含有層基板21を用いることができる。この場合、仕切部(隔壁6a)の頂部の面積S1に対する光触媒含有層基板21の透過領域52の面積S2の比率、および、第2正孔注入輸送層5aおよび光触媒含有層基板21間の距離Dの少なくともいずれか一方を調整することにより、第2正孔注入輸送層5a側の表面での液体の接触角が仕切部(隔壁6a)の側部側から頂部側に向かって高くなるように、撥液性領域12を形成することができる。
また例えば、上記の真空紫外光を照射する方法の場合、図14に例示するような、開口部に相当する透過領域52と、この透過領域52以外の領域である遮光領域51と有するメタルマスク31を用いることができる。この場合、仕切部(隔壁6a)の頂部の面積S1に対するメタルマスク31の透過領域52の面積S2の比率を調整することにより、第2正孔注入輸送層5a側の表面での液体の接触角が仕切部(隔壁6a)の側部側から頂部側に向かって高くなるように、撥液性領域12を形成することができる。
これは、光の回折現象と立体角の効果によるものである。前者は、仕切部の頂部の面積に対するマスクの透過領域の面積の比率、および、第2正孔注入輸送層およびマスク間の距離の少なくともいずれか一方を調整することで、光の回折現象等により、第2正孔注入輸送層に照射されるエネルギーの照射量に勾配が生じ、その結果、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解される量に勾配が生じる。後者に関して、仕切部の頂部では光の入射に対して垂直であるのに対し、仕切部の側部では角度をもつために立体角が小さくなり、光の見かけの照射量が小さくなり、その結果、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解される量に勾配が生じる。これにより、第2正孔注入輸送層側の表面にて、液体の接触角が仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなるように、液体の接触角に傾斜をもたせることができるのである。
また、隔壁のように膜厚が比較的厚い仕切部の場合、仕切部の頂部側から側部側に向かって、第2正孔注入輸送層とマスクとの距離が徐々に広くなることから、この第2正孔注入輸送層とマスクとの距離に応じて、液体の接触角に傾斜をもたせることもできる。
また、上記のエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用する方法の場合であって、光触媒含有基板にて光触媒含有層がパターン状に形成されている場合、図15に例示するような、基体22上に光触媒含有層24が設けられている領域53と、基体22が露出している領域54とを有する光触媒含有層基板21を用いることができる。この場合、仕切部(隔壁6a)の頂部の面積S1に対する光触媒含有層基板21の領域53の面積S3の比率、および、第2正孔注入輸送層5aおよび光触媒含有層基板21間の距離Dの少なくともいずれか一方を調整することにより、上記の場合と同様に、第2正孔注入輸送層5a側の表面での液体の接触角が仕切部(隔壁6a)の側部側から頂部側に向かって高くなるように、撥液性領域12を形成することができる。
なお、この場合、基体上に光触媒含有層が設けられている領域を、上記でいう透過領域とし、基体が露出している領域を、上記でいう遮光領域ということとする。
仕切部の頂部の面積に対するマスクの透過領域の面積の比率を調整することにより、液体の接触角に傾斜を生じさせる場合には、仕切部の頂部の面積よりもマスクの透過領域の面積を同等か大きくすることが好ましい。これにより、仕切部の頂部および側部の境界付近に位置する領域にて、液体の接触角に傾斜をつけやすくなるからである。
また、第2正孔注入輸送層形成工程前に、第1正孔注入輸送層上に第3正孔注入輸送層を形成する第3正孔注入輸送層形成工程を行う場合には、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層に光触媒含有層基板を介して紫外光を照射することにより、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解されるとともに、第3正孔注入輸送層に含有される材料も分解され、第1正孔注入輸送層が露出すると考えられる。
さらに、上記の場合、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層にメタルマスクを介して真空紫外光を照射することにより、第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解されるとともに、第3正孔注入輸送層に含有される材料も分解され、第1正孔注入輸送層が露出すると考えられる。
3.洗浄工程
本発明においては、上記パターン形成工程後に、第2正孔注入輸送層側の表面を洗浄する洗浄工程を行うことができる。洗浄工程により、パターン形成工程後に残存する第2正孔注入輸送層に含有される材料の分解物等を除去することができる。なお、第2正孔注入輸送層に含有される材料は、分解される際に気化等されることもあることから、洗浄工程は行わなくてもかまわない。
第2正孔注入輸送層側の表面の洗浄方法としては、例えば、風圧、吸引、液体等により洗浄する方法が挙げられる。
4.その他の工程
本発明においては、必要に応じて、第1正孔注入輸送層形成工程前に、隔壁や絶縁層を形成する仕切部形成工程等を行ってもよい。
なお、隔壁および絶縁層の形成方法については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
D.有機EL素子の製造方法
次に、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。本発明の有機EL素子の製造方法は、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、有機EL素子用基板を調製する有機EL素子用基板調製工程と、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、上記発光層上に、第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とするものである。
図16は、本発明の有機EL素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図16(a)に示すように、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、基板2と、基板2上にパターン状に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成され、撥液性を有する第1正孔注入輸送層4と、第1正孔注入輸送層4上に形成され、親液性を有する第2正孔注入輸送層5と、第2正孔注入輸送層5側の表面に配置され、親液性領域11および撥液性領域12からなるパターンとを有する有機EL素子用基板1を調製する(有機EL素子用基板調製工程)。次に、図16(b)および(c)に示すように、有機EL素子用基板1の親液性領域11上に、発光層形成用塗工液42aを塗布して、発光層42bを形成する(発光層形成工程)。続いて、図16(d)に示すように、発光層42b上に電子注入輸送層43を形成する。次いで、図16(e)に示すように、電子注入輸送層43上に第2電極層44を形成する(第2電極層形成工程)。
本発明によれば、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、有機EL素子用基板を調製するので、第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、この撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを有する有機EL素子用基板を得ることができる。したがって、正孔輸送性を損なうことなく、発光層等をパターニングすることが可能である。
以下、本発明の有機EL素子の製造方法における各工程について説明する。
1.有機EL素子用基板調製工程
本発明における有機EL素子用基板調製工程は、上述の有機EL素子用基板の製造方法により、有機EL素子用基板を調製する工程である。
有機EL素子用基板を調製する方法については、上記「C.有機EL素子用基板の製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.発光層形成工程
本発明における発光層形成工程は、上記有機EL素子用基板の親液性領域上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する工程である。
発光層形成用塗工液は、上記「B.有機EL素子」の発光層の項に記載した発光材料を溶剤に分散もしくは溶解させることにより調製することができる。赤色、緑色および青色の三原色の発光層を形成する場合は、赤色、緑色および青色の各色発光層形成用塗工液が用いられる。
また、正孔注入輸送層形成用塗工液や電子注入輸送層形成用塗工液は、上記「A.有機EL素子」の電荷注入輸送層の項に記載した各材料を溶剤に分散もしくは溶解させることにより調製することができる。
発光層形成用塗工液に用いられる溶剤としては、発光材料を溶解もしくは分散させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系;酢酸ブチル等のエステル系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の炭化水素系;クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系;あるいは、水系、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチル−2−ピロリドン;上記の一部を水素からフッ素に置換したフッ素系の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、発光層形成用塗工液には、発光材料および溶剤に加えて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、インクジェット法により発光層を形成する場合には、吐出性を向上させる目的で、界面活性剤等を添加してもよい。
発光層形成用塗工液の塗布方法としては、親液性領域および撥液性領域からなるパターン上に発光層形成用塗工液を塗布し、親液性領域および撥液性領域の濡れ性の差を利用して、発光層をパターン状に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような塗布方法としては、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、エアロゾル法、ディスペンサーやインクジェットを用いる吐出法、ノズルプリンティング法などが挙げられる。中でも、赤色、緑色および青色の三原色等の複数色の発光層を形成する場合には、吐出法、ノズルプリンティング法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法が好ましく用いられる。特に吐出法が好ましく、さらにはノズルプリンティング法やインクジェット法が好ましい。これらの方法では、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを利用して、高精細なパターン状に発光層を形成することができるからである。
なお、発光層については、上記「B.有機EL素子」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
3.第2電極層形成工程
本発明における第2電極層形成工程は、上記発光層上に、第2電極層を形成する工程である。
なお、第2電極層の形成方法等については、上記「B.有機EL素子」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
4.その他の工程
本発明においては、上記の有機EL素子用基板調製工程、発光層形成工程および第2電極層形成工程のほかに、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
本発明の有機EL素子の製造方法は、例えば、発光層形成工程前に、有機EL素子用基板の親液性領域上に第4正孔注入輸送層を形成する第4正孔注入輸送層形成工程を有していてもよい。この場合、まず、新液性領域および撥液性領域からなるパターンを利用して、親液性領域上にのみ第4正孔注入輸送層を形成する。第4正孔注入輸送層表面は親液性であり、第4正孔注入輸送層が形成されていない領域は撥液性領域であるので、この濡れ性の違いにより、発光層も親液性領域上にのみ形成することができる。
第4正孔注入輸送層の形成方法としては、上記発光層の形成方法と同様とすることができる。
なお、第4正孔注入輸送層については、上記「B.有機EL素子」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の有機EL素子の製造方法は、例えば、発光層形成工程後に、発光層上に電子注入輸送層を形成する電子注入輸送層形成工程を有していてもよい。
電子注入輸送層の形成方法としては、上記の第1正孔注入輸送層や第2正孔注入輸送層の形成方法と同様とすることができる。
なお、電子注入輸送層については、上記「B.有機EL素子」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
さらに、本発明においては、上記第2電極層形成工程後に、発光層等を酸素および水蒸気の影響から保護するために、第2電極層上にバリア層を形成するバリア層形成工程や、光取り出し効率を向上させるために第2電極層上に低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程等を行ってもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
図17(a)〜(b)に示すように、ITO透明電極(陽極)(3)が形成されたガラス基板(2)の上に、第1正孔注入輸送層4および第2正孔注入輸送層5aを順に形成し、基体22上に遮光部23と光触媒含有層24とが形成された光触媒含有層基板21(光触媒含有層付きフォトマスク)を用いてパターン露光し、露光部と非露光部の濡れ性を接触角測定により調べた。
まず、透明電極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)を、中性洗剤、超純水の順に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。
次に、上記基板の上に第1正孔注入輸送層として、PEDOT:PSSとナフィオンの混合膜をスピンコート法により塗布形成した。第1正孔注入輸送層形成用塗工液は、PEDOT:PSS溶液(スタルク製)とナフィオン分散液(関東化学製)とを固形分比が10:1になるように混合して調製した。塗膜形成後はホットプレート上で乾燥させた。乾燥後の膜厚は60nmであった。キシレンに対する第1正孔注入輸送層表面の接触角は45°であった。
次に、上記第1正孔注入輸送層の上に第2正孔注入輸送層として、コポリ[3,3’−ヒドロキシ−テトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネート(PC−TPD−DEG)膜をスピンコート法により塗布形成した。第2正孔注入輸送層形成用塗工液は、PC−TPD−DEGを、ジクロロエタンとトルエンの混合溶媒(重量比9:1)中に溶解させて調製した。塗膜形成後はホットプレート上で乾燥させた。乾燥後の膜厚は7nmであった。キシレンに対する第2正孔注入輸送層表面の接触角は5°以下であった。
次に、光触媒含有層付きフォトマスクを調製した。合成石英基板上に透過領域と遮光領域を形成したフォトマスクを用意した。このフォトマスク上に、下記組成の光触媒含有層形成用塗工液をスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の加熱乾燥処理を施し、加水分解・重縮合反応を進行させて硬化させ、光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定された、膜厚200nmの透明な光触媒含有層を形成した。
<光触媒含有層形成用塗工液>
・二酸化チタン(石原産業(株)製、ST−K01) 2重量部
・オルガノアルコキシシラン(東芝シリコーン(株)製、TSL8113) 0.4重量部
・フルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ(株)製、MF−160E) 0.3重量部
・イソプロピルアルコール 3重量部
次に、第2正孔注入輸送層を露光して、新液性領域および撥液性領域からなるパターンを形成した。高圧水銀灯と、光触媒含有層付きフォトマスクおよび基板の位置調整機構とを備える紫外露光装置を用い、光触媒含有層付きフォトマスクの光触媒含有層と第2正孔注入輸送層との間の距離が20μmになるように調整した後、光触媒含有層付きフォトマスクの裏面側から253nmの光の露光量が200mJ/cm2となるように3分間露光した。
続いて、第2正孔注入輸送層上の露光部と非露光部との液体の接触角を接触角計(協和界面科学社製)により測定した。液体にはキシレン(表面張力:28.5mN/m)を使用した。
[実施例2]
実施例1において、露光用光源として253nmの紫外光の代わりに、真空紫外光を用いて2分間露光した以外は、実施例1と同様にパターンを形成し、濡れ性の評価を行った。この際、光触媒含有層付きフォトマスク側から波長172nmの真空紫外光を、10mW/cm2の照度で照射することにより、撥液性領域および親液性領域からなるパターンを形成した。
[実施例3]
実施例1において、第2正孔注入輸送層として、PC−TPD−DEG膜の代わりに、PC−TPD−DEGとモリブデン錯体1の混合膜(膜厚:10nm)を形成した以外は、実施例1と同様にパターンを形成し、濡れ性の評価を行った。
下記式に示したモリブデン錯体1の合成はInorganic Chemistry,13,1974,p.1824 に記載の方法に従い、下記スキームのように行った。日本電子社製核磁気共鳴スペクトルJNM−LA400WBを用いて、1H NMRスペクトルを測定し、合成されたモリブデン錯体1が下記構造を有することを確認した。
Figure 0005104538
第2正孔注入輸送層は、PC−TPD−DEGとモリブデン錯体1を重量比1:1でクロロホルムとトルエンの混合溶媒(重量比9:1)中に溶解させて第2正孔注入輸送層形成用塗工液を調製し、この第2正孔注入輸送層形成用塗工液を、洗浄されたITO付ガラス基板の上にスピンコート法により塗布することにより形成した。塗膜形成後はホットプレート上で乾燥させた。乾燥後の膜厚は10nmであった。キシレンに対する第2正孔注入輸送層表面の接触角は5°以下であった。
[実施例4]
実施例3において、第2正孔注入輸送層として、PC−TPD−DEGとモリブデン錯体の混合膜(膜厚:10nm)の代わりに、PC−TPD−DEGとモリブデン含有ナノ粒子の混合膜(膜厚:10nm)を形成した以外は、実施例1と同様にパターンを形成し、濡れ性の評価を行った。
次の手順で、n−ヘキサデシルアミンで保護されたモリブデン含有ナノ粒子を合成した。25ml三ッ口フラスコ中に、n−ヘキサデシルアミン 0.8g(関東化学株式会社製)、n-オクチルエーテル 12.8g(東京化成工業株式会社製)を量り取り、攪拌しながら減圧し、低揮発成分除去のために室温(24℃)にて1hr放置した。真空下から大気雰囲気へ変更し、モリブデンヘキサカルボニル 0.8g(関東化学株式会社製)を添加した。この混合液をアルゴンガス雰囲気とし、攪拌しながら280℃まで加熱し、その温度を1h維持した。その後、この混合液を室温(24℃)まで冷却し、アルゴンガス雰囲気から大気雰囲気へ変更した後、エタノールを20g滴下した。次いで、遠心分離によって沈殿物を反応液から分離した後、下記に示す手順で再沈殿による精製を行った。
すなわち、沈殿物をクロロホルム3gと混合して分散液とし、この分散液にエタノール6gを滴下することにより精製された沈殿物を得た。
このようにして得られた再沈殿液を遠心分離し沈殿物を反応液から分離した後、乾燥することにより、モリブデン含有ナノ粒子の精製物を得た。
動的光散乱法にてモリブデン含有ナノ粒子の粒子径を測定した。測定には動的光散乱測定装置(日機装株式会社製、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150)を用いた。測定試料として、モリブデン含有ナノ粒子をクロロホルムに分散させた溶液(濃度:4.6mg/ml)を用いた。MV(Mean Volume Diameter)は8.5nm、MN(Mean Number Diameter)は6.2nmであった。測定結果を図18に示す。
X線光電子分光法にてモリブデン含有ナノ粒子の価数を測定した。測定にはKratos社製ESCA-3400型を用いた。測定試料は、アルミホイル上にモリブデン含有ナノ粒子粉末を置き、その上からカーボンテープを貼り付けた試料台を押し付けて作製した。測定に用いたX線源にはAlKα線を用い、モノクロメーターは使用せず、加速電圧10kV、フィラメント電流20mAの条件で測定した。チャージアップによるスペクトルシフトは観察されなかった。MoO2の3d5/2に帰属されるスペクトル(ピーク位置228.6eV)とMoO3の3d5/2帰属されるスペクトルが(ピーク位置232eV)に観測された。Mo金属に由来するピークは観測されなかったが、通常XPSの場合表面1nm程度しか測定できないため、ナノ粒子はMo金属とMoO2とMoO3が混在しているものと考えられる。
第2正孔注入輸送層は、PC−TPD−DEGとモリブデン含有ナノ粒子を重量比1:1でクロロホルムとトルエンの混合溶媒(重量比9:1)中に溶解させて第2正孔注入輸送層形成用塗工液を調製し、この第2正孔注入輸送層形成用塗工液を、洗浄されたITO付ガラス基板の上にスピンコート法により塗布することにより形成した。塗膜形成後はホットプレート上で乾燥させた。乾燥後の膜厚は10nmであった。キシレンに対する第2正孔注入輸送層表面の接触角は5°以下であった。
[比較例1]
実施例1において、第2正孔注入輸送層を形成しない以外は、実施例1と同様にパターン露光し、濡れ性の評価を行った。
[評価]
実施例1〜4および比較例1について、図17(a)および(b)に示す領域I〜IVにおける液体の接触角を下記表1に示す。
Figure 0005104538
実施例1において、領域II(露光部、光触媒の存在下で光の照射)の液体の接触角が38°に上がっている。一方、領域III(未露光部)では液体の接触角が5°以下に保たれていることから、本プロセスにより塗り分けができることがわかる。また、比較例1において、本実験の実験条件では、第1正孔注入輸送層は、その構成材料が完全に分解されずに撥液性を保持していることが分かる。これらの結果は、フォトマスク上で発生したスーパーオキサイドラジカルまたはヒドロキシラジカルにより第2正孔注入輸送層の構成材料が分解され、第1正孔注入輸送層の構成材料による撥液性が発現したものと考えられる。領域IV(露光部、光のみ照射)では液体の接触角に変化がないことから、フォトマスク上の光触媒の効果であることが分かる。
実施例2において、領域II(露光部、光触媒の存在下で光の照射)の液体の接触角が36°に上がっている。一方、領域III(未露光部)では液体の接触角が5°以下に保たれていることから、本プロセスにより塗り分けができることがわかる。領域IV(露光部、光のみ照射)でも液体の接触角が上がっており、これは真空紫外光により発生した酸素ラジカルにより第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された効果であると考えられる。領域IIでは液体の接触角が36°であり、領域IVよりも液体の接触角が高く、光触媒の効果と真空紫外光による酸素ラジカルの両方の相乗効果で、第2正孔注入輸送層の構成材料の分解が促進されたと考えられる。
実施例3、4において、領域II(露光部、光触媒の存在下で光の照射)および領域IV(露光部、光のみ照射)の両方での液体の接触角が上がっている。領域IIの方が、領域IVよりも液体の接触角が高く、第2正孔注入輸送層中に含まれる光触媒の効果とフォトマスクで発生したスーパーオキサイドラジカルまたはヒドロキシラジカルの相乗効果により、第2正孔注入輸送層の構成材料の分解が促進されたと考えられる。
[実施例5]
実施例1において、ITO基板上に高さ1.5μm、ライン/スペースが70μm/70μmのライン状の隔壁を形成した基板を用い、開口部が50μmになるようにライン状の遮光領域が形成されたフォトマスクを用い、開口部がライン状の隔壁上に位置するように調整して露光した以外は、実施例1と同様にパターンを形成した。
次に、親液性領域に下記組成の発光層形成用塗工液をインクジェット法により塗布して発光層を形成した。塗膜形成後、窒素中80℃で30分乾燥させて、蛍光顕微鏡により発光層の観察を行った。発光層は隔壁内で平坦で良好に形成されていた。
<発光層形成用塗工液>
・2-メチル-9、10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン(MADN) 0.99重量部
・9,10-ビス[N,N-ジ-(p-トリル)-アミノ]アントラセン(TTPA) 0.01重量部
・2-メチル-9、10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン 1重量部
・キシレン 99重量部
[実施例6]
実施例5において、開口部が90μmになるようにライン状の遮光領域が形成されたフォトマスクを用いて露光した以外は、実施例1と同様にパターンを形成した。
次に、親液性領域に実施例5で用いた発光層形成用塗工液をインクジェット法により塗布して発光層を形成した。塗膜形成後、窒素中80℃で30分乾燥させて、蛍光顕微鏡により発光層の観察を行った。発光層は隔壁の内壁部に剥がれが観察された。
本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる光触媒含有層基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法におけるパターン形成工程の一例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法におけるパターン形成工程の他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子用基板の製造方法におけるパターン形成工程の他の例を示す模式図である。 本発明の有機EL素子の製造方法の他の例を示す工程図である。 実施例の有機EL素子用基板の製造方法を示す工程図である。 実施例で用いたモリブデン含有ナノ粒子の粒子径を測定した結果を示すグラフである。
符号の説明
1 … 有機EL素子用基板
2 … 基板
3 … 第1電極層
4 … 第1正孔注入輸送層
5、5a、5b … 第2正孔注入輸送層
6a … 隔壁
6b … 絶縁層
11 … 親液性領域
12 … 撥液性領域
41 … 有機EL素子
42、42b … 発光層
43 … 電子注入輸送層
44 … 第2電極層

Claims (19)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された第1電極層と、
    前記第1電極層上に形成され、撥液性を有する第1正孔注入輸送層と、
    前記第1正孔注入輸送層上に形成され、親液性を有する第2正孔注入輸送層と、
    前記第2正孔注入輸送層側の表面に配置され、前記第2正孔注入輸送層の構成材料が分解された撥液性領域、および、前記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンと
    を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  2. 前記第2正孔注入輸送層が、光触媒機能をもつ材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  3. 前記第1正孔注入輸送層が、前記光触媒機能をもつ材料を含有することを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  4. 前記光触媒機能をもつ材料が、金属酸化物または無機半導体であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  5. 前記金属酸化物が、有機金属錯体の少なくとも一部が酸化されたものであることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  6. 前記有機金属錯体が、モリブデン錯体、チタン錯体、またはモリブデン錯体およびチタン錯体の混合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  7. 前記金属酸化物または無機半導体が、ナノ粒子であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  8. 前記金属酸化物が、金属含有ナノ粒子の少なくとも一部が酸化されたものであることを特徴とする請求項4または請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  9. 前記金属含有ナノ粒子が、モリブデン含有ナノ粒子、チタン含有ナノ粒子、またはモリブデン含有ナノ粒子およびチタン含有ナノ粒子の混合物であることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  10. 前記第1電極層が形成された基板上に、親液性を有する仕切部がパターン状に形成されており、前記仕切部の頂部上に前記撥液性領域が配置され、前記仕切部の側部上および前記仕切部の開口部上に前記親液性領域が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  11. 前記親液性領域および前記撥液性領域での液体の接触角が、前記仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなることを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
  12. 請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の親液性領域上に形成され、少なくとも発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、
    前記エレクトロルミネッセンス層上に形成された第2電極層と
    を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 第1電極層が形成された基板上に、撥液性を有する第1正孔注入輸送層を形成する第1正孔注入輸送層形成工程と、
    前記第1正孔注入輸送層上に、親液性を有する第2正孔注入輸送層を形成する第2正孔注入輸送層形成工程と、
    前記第2正孔注入輸送層にマスクを用いてエネルギーを照射し、前記第2正孔注入輸送層に含有される材料が分解された撥液性領域、および、前記撥液性領域以外の領域である親液性領域からなるパターンを形成するパターン形成工程と
    を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  14. 前記第2正孔注入輸送層、または、前記第1正孔注入輸送層および前記第2正孔注入輸送層が、有機金属錯体または金属含有ナノ粒子を含有しており、
    前記パターン形成工程にて、前記有機金属錯体または金属含有ナノ粒子の少なくとも一部を金属酸化物とすることを特徴とする請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  15. 前記パターン形成工程にて、前記マスクとして、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層が形成されている光触媒含有層基板を用い、前記光触媒含有層基板を、前記第2正孔注入輸送層に対して、エネルギーの照射に伴う光触媒の作用がおよび得る間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  16. 前記パターン形成工程にて、前記エネルギーとして真空紫外光を照射することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  17. 前記第1正孔注入輸送層形成工程前に、前記第1電極層が形成された基板上に、親液性を有する仕切部をパターン状に形成する仕切部形成工程を有し、
    前記パターン形成工程にて、前記仕切部の頂部上に位置する前記第2正孔注入輸送層の部分にエネルギーを照射することを特徴とする請求項13から請求項16までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  18. 前記マスクが透過領域と遮光領域とを有するものであり、前記パターン形成工程にてエネルギーを照射する際に、前記仕切部の頂部の面積に対する前記マスクの透過領域の面積の比率、および、前記第2正孔注入輸送層および前記マスク間の距離の少なくともいずれか一方を調整して、前記第2正孔注入輸送層側の表面での液体の接触角が前記仕切部の側部側から頂部側に向かって高くなるように、前記撥液性領域を形成することを特徴とする請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
  19. 請求項13から請求項18までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法により、有機エレクトロルミネッセンス素子用基板を調製する有機エレクトロルミネッセンス素子用基板調製工程と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の親液性領域上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、
    前記発光層上に、第2電極層を形成する第2電極層形成工程と
    を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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