<第1の実施の形態>
図7は、本発明の一実施形態に係るOFDM受信機の構成例を示すブロック図である。図3の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。
図7のOFDM受信機101は、受信アンテナ1、チューナ2、A/D変換回路3、直交復調回路4、搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、伝送路歪み補償回路8、誤り訂正回路9、遅延プロファイル推定回路10、周波数補間フィルタ選択回路11、および最適周波数補間フィルタ選択回路21から構成される。OFDM受信機101は、最適周波数補間フィルタ選択回路21がさらに設けられている点で図3のOFDM受信機100と異なる。
チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号をIF信号に周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
A/D変換回路3は、チューナ2から供給されたIF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
直交復調回路4は、搬送波生成回路5から供給された搬送波を用いて直交復調を行うことによって、A/D変換回路3から供給されたIF信号からOFDM時間領域信号を取得し、取得したOFDM時間領域信号を出力する。直交復調回路4から出力されたOFDM時間領域信号は、搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、および遅延プロファイル推定回路10に供給される。
搬送波生成回路5は、直交復調回路4から供給されたOFDM時間領域信号に基づいて所定の周波数の搬送波を生成し、生成した搬送波を直交復調回路4に出力する。
FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されたFFTトリガーパルスに基づいて、1つのOFDMシンボルの信号からGIの範囲の信号を除くことによって有効シンボル長の範囲の信号を抜き出す。
また、FFT回路6は、抜き出したOFDM時間領域信号に対してFFT演算を行うことによって、各サブキャリアに直交変調されているデータを抽出し、抽出したデータを表すOFDM周波数領域信号を出力する。FFT回路6から出力されたOFDM周波数領域信号は、伝送路歪み補償回路8のSP抽出回路8−1、除算回路8−4と、最適周波数補間フィルタ選択回路21の除算回路21−4に供給される。
FFT区間制御回路7は、直交復調回路4から供給されたOFDM時間領域信号と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、決定したFFT区間の開始位置を指定するFFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
OFDM時間領域信号を用いてFFT区間を決定する場合、FFT区間制御回路7は、1OFDMシンボルのOFDM時間領域信号においてGIのコピー元として用いられた有効シンボルの後半の一部と各部の相関値を求め、相関値の高い部分をGIとして検出する。FFT区間制御回路7は、検出したGIと、有効シンボルの境界位置をFFT区間の開始位置として決定する。
また、遅延プロファイルを用いてFFT区間を決定する場合、FFT区間制御回路7は、遅延プロファイルにより表される、GIと有効シンボルの境界位置をFFT区間の開始位置として決定する。
伝送路歪み補償回路8は、SP抽出回路8−1、時間方向伝送路特性推定回路8−2、周波数補間回路8−3、および除算回路8−4から構成される。
SP抽出回路8−1は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号からSP信号を抽出し、SP信号の変調成分を除去することによって、SP信号の配置位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−1は、推定した伝送路特性を表す信号を時間方向伝送路特性推定回路8−2に出力する。
時間方向伝送路特性推定回路8−2は、SP抽出回路8−1により推定された伝送路特性に基づいて、SP信号が配置されているサブキャリアの、時間方向に並ぶ各OFDMシンボルの位置における伝送路特性を推定し、推定した3サブキャリア毎の伝送路特性を表す信号を出力する。時間方向伝送路特性推定回路8−2から出力された信号は、周波数補間回路8−3、遅延プロファイル推定回路10、および最適周波数補間フィルタ選択回路21の周波数補間回路21−3に供給される。
周波数補間回路8−3は、周波数方向の伝送路特性を補間することによって、時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。
周波数補間回路8−3は図4に示される構成と同じ構成を有している。周波数補間回路8−3は、図5に示されるようにフィルタ帯域の異なる複数の補間フィルタを用いて得られた補間結果を表す信号の中から、いずれかの信号を制御回路21−2から供給されたフィルタ選択信号に従って選択する。周波数補間回路8−3は、選択した信号を伝送路特性の推定結果を表す信号として除算回路8−4に出力する。
除算回路8−4は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路8−3から供給された全てのサブキャリアの伝送路特性を表す信号の成分を除算し、伝送路による歪みの成分をOFDM周波数領域信号から除去する。除算回路8−4は、歪みの成分を除去した伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号を出力する。除算回路8−4から出力された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号は、最適周波数補間フィルタ選択回路21の選択回路21−1と信号品質検出回路21−5に供給される。
誤り訂正回路9は、最適周波数補間フィルタ選択回路21の選択回路21−1から供給されたOFDM周波数領域信号に対してデインタリーブ処理を施し、さらに、デンパンクチャ、ビタビ復号、拡散信号除去、RS復号などの処理を施す。誤り訂正回路9は、各種の処理を施すことによって得られたデータを復号データとして後段の回路に出力する。
遅延プロファイル推定回路10は、伝送路の時間応答特性を求めることによって伝送路の遅延プロファイルを推定し、推定した遅延プロファイルを表す信号を出力する。遅延プロファイル推定回路10から出力された信号はFFT区間制御回路7と周波数補間フィルタ選択回路11に供給される。
周波数補間フィルタ選択回路11は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて遅延広がりを求め、遅延広がりに応じたフィルタ帯域を表すフィルタ選択信号を最適周波数補間フィルタ選択回路21の制御回路21−2に出力する。
最適周波数補間フィルタ選択回路21は、選択回路21−1、制御回路21−2、周波数補間回路21−3、除算回路21−4、および信号品質検出回路21−5から構成される。最適周波数補間フィルタ選択回路21の構成のうち、周波数補間回路21−3は伝送路歪み補償回路8の周波数補間回路8−3と同じ処理を行う回路であるため1つの回路によってまとめて実現されるようにしてもよい。また、除算回路21−4は伝送路歪み補償回路8の除算回路8−4と同じ処理を行う回路であるため1つの回路によってまとめて実現されるようにしてもよい。
選択回路21−1は、除算回路8−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号と、除算回路21−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号のうちのいずれかを制御回路21−2から供給された選択信号に従って選択し、選択したOFDM周波数領域信号を誤り訂正回路9に出力する。
制御回路21−2は、信号品質検出回路21−5から供給された情報に基づいて、品質のよい方のOFDM周波数領域信号を選択することを指示する選択信号を選択回路21−1に出力する。信号品質検出回路21−5から制御回路21−2に対しては、伝送路歪みの補償が除算回路8−4により行われることによって得られたOFDM周波数領域信号の品質を表す情報と、除算回路21−4により行われることによって得られたOFDM周波数領域信号の品質を表す情報がそれぞれ供給されるようになされている。また、制御回路21−2は、フィルタ選択信号を周波数補間回路8−3と周波数補間回路21−3に出力する。
周波数補間回路21−3は、周波数方向の伝送路特性を補間することによって、伝送路歪み補償回路8の時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。
周波数補間回路21−3も図4に示される構成と同じ構成を有している。周波数補間回路21−3は、図5に示されるようにフィルタ帯域の異なる複数の補間フィルタを用いて得られた補間結果を表す信号の中から、いずれかの信号を制御回路21−2から供給されたフィルタ選択信号に従って選択する。周波数補間回路21−3は、選択した信号を伝送路特性の推定結果を表す信号として除算回路21−4に出力する。
除算回路21−4は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路21−3から供給された全てのサブキャリアの伝送路特性を表す信号の成分を除算し、伝送路による歪みの成分をOFDM周波数領域信号から除去する。除算回路21−4は、歪みの成分を除去した伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号を選択回路21−1と信号品質検出回路21−5に出力する。
信号品質検出回路21−5は、除算回路8−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号の品質と、除算回路21−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号の品質をそれぞれ検出し、検出した品質を表す信号品質情報を制御回路21−2に出力する。例えば、品質はノイズの量によって定められ、信号品質検出回路21−5においては、それぞれの伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が検出される。
図8は、信号品質検出回路21−5の構成例を示す図である。
図8に示されるように、信号品質検出回路21−5は、硬判定回路21−5a、減算回路21−5b、2乗演算回路21−5c、キャリア方向平均化回路21−5d、および時間方向平均化回路21−5eから構成される。除算回路8−4または除算回路21−4から出力された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号は硬判定回路21−5aと減算回路21−5bに供給される。
硬判定回路21−5aは、PSKやQAMなどの変調方式に従って、伝送路歪み補償後信号を対象として硬判定を行う。硬判定回路21−5aは、判定結果である硬判定値を減算回路21−5bに出力する。
減算回路21−5bは、硬判定値と伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号の値の差を2乗演算回路21−5cに出力する。硬判定値とOFDM周波数領域信号の差がノイズ量となる。
2乗演算回路21−5cは、減算回路21−5bにより算出されたノイズ量を2乗し、パワーに変換する。2乗演算回路21−5cは、2乗演算によって求められたノイズのパワーをキャリア方向平均化回路21−5dに出力する。
キャリア方向平均化回路21−5dは、2乗演算回路21−5cにより求められたパワーのキャリア方向の平均を取ることによって、その精度を向上させる。キャリア方向平均化回路21−5dは、パワーのキャリア方向の平均を時間方向平均化回路21−5eに出力する。
1つのフィルタ選択信号を複数シンボルに渡って適用する場合、時間方向に平均を取ることも可能となる。この場合、時間方向平均化回路21−5eは、同じフィルタ選択信号が制御回路21−2から出力されているときに生成された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号に含まれるノイズのパワーの時間方向の平均を算出し、算出した時間方向の平均を表す情報を制御回路21−2に出力する。時間方向平均化回路21−5eに対しては、それまでの演算に用いられた情報を消すためのリセット信号が、フィルタ選択信号が変更される毎に入力される。
ここで、制御回路21−2によるフィルタ帯域の選択と伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号の選択のシーケンスについて説明する。
図9は、選択シーケンスの例を示す図である。
図9において、それぞれの状態を表す楕円の中に示される文字は制御回路21−2から周波数補間回路8−3および周波数補間回路21−3に出力されるフィルタ選択信号を表し、ある状態から他の状態への遷移を表す矢印の近傍に示される文字はその遷移が起こる条件とそのときに制御回路21−2から出力される信号の内容を表す。矢印の近傍に示される文字のうち、スラッシュ(/)の左側は遷移条件(アクションリスト)を表し、右側は信号の内容(次の遷移先の状態)を表す。
以下、制御回路21−2から周波数補間回路8−3に対して出力されるフィルタ選択信号をFLT_Aとし、制御回路21−2から周波数補間回路21−3に対して出力されるフィルタ選択信号をFLT_Bとする。また、伝送路歪みの補償が除算回路8−4により行われることによって得られたOFDM周波数領域信号の品質を表す情報を信号品質情報NPWR_Aとし、除算回路21−4により行われることによって得られたOFDM周波数領域信号の品質を表す情報を信号品質情報NPWR_Bとする。
さらに、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて周波数補間フィルタ選択回路11により選択されるフィルタ帯域をBWX(X=0〜3)とする。周波数補間フィルタ選択回路11から制御回路21−2に供給されるフィルタ選択信号はこのBWXを表す。なお、遅延プロファイルの状態は図6を参照して説明した状態とする。すなわち、パスP、パスQ、パスRの3つのパスがあり、このうちのパスPとパスQだけが遅延プロファイル推定回路10によっては検出可能とされ、パスRはパワーが小さいために検出できないものとされている。
初期状態である状態s0は、FLT_A=BWX,FLT_B=BW0の状態である。状態s0においては、遅延プロファイルに基づいて選択されたフィルタ帯域を選択することが周波数補間回路8−3に対して指示されることになる。制御回路21−2においては、信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bに基づいて、FLT_A=BWX,FLT_B=BW0としたときに除算回路8−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量と除算回路21−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が比較される。
図10の上段に示されるように、BWX=BW3である場合、未検出のパスRが存在することから、除算回路8−4においては伝送路歪みを補償しきれず、受信性能の劣化が起こる。これに対して、図10の下段に示されるように、周波数補間回路21−3においては未検出のパスRをも含むフィルタ帯域BW0の補間フィルタを用いて補間が行われ、その補間結果を表す信号に基づいて除算回路21−4において伝送路歪みが補償される。
信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報はNPWR_A>=NPWR_Bとなり、X=3であるので制御回路21−2の状態は状態s0から状態s1に遷移する。信号品質情報の値が大きいほどノイズの量が多く、ノイズの量を検出する元になったOFDM周波数領域信号の品質が悪いことになる。
このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BW2に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
状態s1は、FLT_A=BW2,FLT_B=BW0の状態である。制御回路21−2においては、信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bに基づいて、FLT_A=BW2,FLT_B=BW0としたときに除算回路8−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量と除算回路21−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が比較される。
状態s1においても、図11の上段に示されるように未検出のパスRが存在することから、除算回路8−4においては伝送路歪みを補償しきれず、受信性能の劣化が起こる。これに対して、図11の下段に示されるように、周波数補間回路21−3においては未検出のパスRをも含むフィルタ帯域BW0の補間フィルタを用いて補間が行われ、その補間結果を表す信号に基づいて除算回路21−4において伝送路歪みが補償される。
信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報はNPWR_A>=NPWR_Bとなり、X=3であるので制御回路21−2の状態は状態s1から状態s3に遷移する。
このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BW1に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
状態s3は、FLT_A=BW1,FLT_B=BW0の状態である。制御回路21−2においては、信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bに基づいて、FLT_A=BW1,FLT_B=BW0としたときに除算回路8−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量と除算回路21−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が比較される。
状態s3においても、図12の上段に示されるように未検出のパスRが存在することから、除算回路8−4においては伝送路歪みを補償しきれず、受信性能の劣化が起こる。これに対して、図12の下段に示されるように、周波数補間回路21−3においては未検出のパスRをも含むフィルタ帯域BW0の補間フィルタを用いて補間が行われ、その補間結果を表す信号に基づいて除算回路21−4において伝送路歪みが補償される。
信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報はNPWR_A>=NPWR_Bとなり、X=3であるので制御回路21−2の状態は状態s3から状態s0に遷移する。X=2であるときも同様に制御回路21−2の状態は状態s3から状態s0に遷移する。
このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BWXに切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
このように、遅延プロファイル推定回路10の検出限界を超えるパスRが存在するような環境にあり、除算回路8−4においては伝送路歪みを補償しきれない場合であっても、除算回路21−4により生成されたOFDM周波数領域信号が選択信号SEL=FLT_Bに従って選択されるようにすることにより、パスRをも含めた形で伝送路歪みの補償を行った結果を誤り訂正回路9に供給することができ、受信性能の劣化を防ぐことができる。
他の場合も同様にして制御回路21−2の状態が適宜遷移する。例えば、状態s0においてNPWR_A<NPWR_Bであるとき、状態s0が維持される。
一方、状態s0においてNPWR_A>=NPWR_Bであり、かつ、X=2であるとき、制御回路21−2の状態は状態s0から状態s3に遷移する。このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BW1に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
状態s1においてNPWR_A<NPWR_Bであり、かつ、X=3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s1から状態s2に遷移する。このとき、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW3に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路8−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Aが制御回路21−2から出力される。
状態s2は、FLT_A=BW2,FLT_B=BW3の状態である。制御回路21−2においては、信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bに基づいて、FLT_A=BW2,FLT_B=BW3としたときに除算回路8−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量と除算回路21−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が比較される。
状態s2においてNPWR_A<NPWR_Bであり、かつ、X=3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s2から状態s1に遷移する。このとき、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW0に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路8−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Aが制御回路21−2から出力される。
一方、状態s2においてNPWR_A>=NPWR_Bであり、かつ、X=3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s2から状態s0に遷移する。このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BWXに、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW0にそれぞれ切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
状態s3においてNPWR_A<NPWR_Bであり、かつ、X=2または3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s3から状態s4に遷移する。このとき、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW2に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路8−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Aが制御回路21−2から出力される。
状態s4は、FLT_A=BW1,FLT_B=BW2の状態である。制御回路21−2においては、信号品質検出回路21−5から供給される信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bに基づいて、FLT_A=BW1,FLT_B=BW2としたときに除算回路8−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量と除算回路21−4により生成されるOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量が比較される。
状態s4においてNPWR_A<NPWR_Bであり、かつ、X=2または3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s4から状態s3に遷移する。このとき、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW0に切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路8−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Aが制御回路21−2から出力される。
一方、状態s4においてNPWR_A>=NPWR_Bであり、かつ、X=2または3であるとき、制御回路21−2の状態は状態s4から状態s0に遷移する。このとき、周波数補間回路8−3に対するフィルタ選択信号はFLT_A=BWXに、周波数補間回路21−3に対するフィルタ選択信号はFLT_B=BW0にそれぞれ切り替えられる。また、選択回路21−1に対する選択信号SELとして、除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号の方を選択することを指示するSEL=FLT_Bが制御回路21−2から出力される。
以上のような選択シーケンスは、OFDM受信機101において受信処理が行われている間、常時動作させることができ、これにより、最適なOFDM周波数領域信号を常に選択することが可能になる。すなわち、プロファイルが逐次変動するような環境でも追従性が高いといえる。
また、2つの周波数補間回路で用いられる補間フィルタのフィルタ帯域を適応的に制御することができ、データを破綻させずに、受信性能の劣化を防ぐことが可能になる。基本的には、選択回路21−1により選択されなかった方の伝送路歪み補償後信号の生成の元になった伝送路特性を求めるのに用いられた周波数補間回路のフィルタ帯域を変えるように、フィルタ帯域が適応的に制御されることになる。
ここで、以上のような構成を有するOFDM受信機101の処理について説明する。以下のフローチャートの各ステップの処理は、番号順に行われるだけでなく、適宜、他のステップの処理と並行して行われたりもする。
はじめに、図13のフローチャートを参照して、OFDM受信機101のOFDM復調処理について説明する。
ステップS1において、チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号を周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
ステップS2において、A/D変換回路3は、IF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
ステップS3において、直交復調回路4は直交復調を行い、OFDM時間領域信号を搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、および遅延プロファイル推定回路10に出力する。
ステップS4において、FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されるFFTトリガーパルスに基づいてFFT区間を設定し、FFT演算を行う。FFT回路6は、FFT演算を行うことによって得られたOFDM周波数領域信号をSP抽出回路8−1、除算回路8−4、および除算回路21−4に出力する。
ステップS5において、SP抽出回路8−1は、OFDM周波数領域信号からSP信号を抽出し、SP信号の配置位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−1は、推定した伝送路特性を表す信号を時間方向伝送路特性推定回路8−2に出力する。
ステップS6において、時間方向伝送路特性推定回路8−2は、3サブキャリア毎の時間方向の伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性を表す信号を周波数補間回路8−3、遅延プロファイル推定回路10、および周波数補間回路21−3に出力する。
ステップS7において、遅延プロファイル推定回路10は、遅延プロファイルを推定し、遅延プロファイルをFFT区間制御回路7と周波数補間フィルタ選択回路11に出力する。
ステップS8において、周波数補間フィルタ選択回路11は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて遅延広がりを求め、遅延広がりに応じたフィルタ帯域を選択する。周波数補間フィルタ選択回路11は、選択したフィルタ帯域を指定するフィルタ選択信号を制御回路21−2に出力する。
ステップS9において、FFT区間制御回路7は、直交復調回路4から供給されたOFDM時間領域信号と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、決定したFFT区間を指定するFFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
ステップS10において、周波数補間回路8−3は、周波数方向の伝送路特性を補間することによって、時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定し、推定結果を表す信号を除算回路8−4に出力する。補間結果を表す複数の信号の中からどの信号を伝送路特性の推定結果を表す信号として出力するのかは、制御回路21−2から供給されたフィルタ選択信号FLT_Aに基づいて選択される。
ステップS11において、除算回路8−4は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路8−3から供給された信号に基づいて伝送路による歪みの成分を除去する。除算回路8−4は、歪みの成分を除去したOFDM周波数領域信号を選択回路21−1と信号品質検出回路21−5に出力する。
ステップS12において、誤り訂正回路9に出力するOFDM周波数領域信号を選択する信号選択処理が行われる。信号選択処理については図14のフローチャートを参照して後述する。
ステップS13において、誤り訂正回路9は、デインタリーブ処理、デンパンクチャ、ビタビ復号、拡散信号除去、RS復号などの各種の処理を選択回路21−1から供給されたOFDM周波数領域信号に対して施し、復号データを後段の回路に出力する。
以上の処理が、信号の受信を行っている間、OFDM受信機101により繰り返される。
次に、図14のフローチャートを参照して、図13のステップS12において行われる信号選択処理について説明する。
OFDM受信機101においては、信号の受信が行われている間、常時、図13の処理と並行して図14の処理が行われる。
ステップS21において、制御回路21−2は、フィルタ選択信号FLT_Aを周波数補間回路8−3に出力し、フィルタ選択信号FLT_Bを周波数補間回路21−3に出力する。フィルタ選択信号FLT_A,FLT_Bは図9を参照して説明した選択シーケンスに従って選択される。
ステップS22において、周波数補間回路21−3は、周波数方向の伝送路特性を補間することによって、時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定し、推定結果を表す信号を除算回路21−4に出力する。補間結果を表す複数の信号の中からどの信号を伝送路特性の推定結果を表す信号として出力するのかは、制御回路21−2から供給されたフィルタ選択信号FLT_Bに基づいて選択される。
ステップS23において、除算回路21−4は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路21−3から供給された信号に基づいて伝送路による歪みの成分を除去する。除算回路21−4は、歪みの成分を除去したOFDM周波数領域信号を選択回路21−1と信号品質検出回路21−5に出力する。なお、周波数補間回路8−3による伝送路特性の補間は図13のステップS10において行われ、除算回路8−4による伝送路歪みの補償はステップS11において行われている。
ステップS24において、信号品質検出回路21−5は、除算回路8−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量を検出し、信号品質情報NPWR_Aを制御回路21−2に出力する。
ステップS25において、信号品質検出回路21−5は、除算回路21−4から供給された伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号に含まれるノイズの量を検出し、信号品質情報NPWR_Bを制御回路21−2に出力する。
ステップS26において、制御回路21−2は、信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bを比較し、品質のよい方のOFDM周波数領域信号を選択することを指示する選択信号SELを選択回路21−1に出力する。
ステップS27において、選択回路21−1は、除算回路8−4から供給されたOFDM周波数領域信号と、除算回路21−4から供給されたOFDM周波数領域信号のうちの品質のよい方のOFDM周波数領域信号を制御回路21−2から供給された選択信号に従って選択し、選択したOFDM周波数領域信号を誤り訂正回路9に出力する。その後、図13のステップS11に戻り、それ以降の処理が行われる。
以上の処理により、受信性能の劣化を防ぐことが可能になる。
<変形例>
図15は、他のOFDM受信機の構成例を示すブロック図である。図7のOFDM受信機101の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。
図15に示されるOFDM受信機102の構成は、周波数補間フィルタ選択回路11が設けられていない点で図7のOFDM受信機101の構成と異なる。すなわち、図7のOFDM受信機101においては、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて周波数補間フィルタ選択回路11により選択されたフィルタ帯域と同じフィルタ帯域を選択することを指示するフィルタ選択信号が、図9を参照して説明した選択シーケンスに従って制御回路21−1から適宜出力されるものとしたが、OFDM受信機102においては、制御回路21−2自身によりフィルタ帯域が常に選択されるようになされている。制御回路21−2自身によるフィルタ帯域の選択には、信号品質情報NPWR_AとNPWR_Bが参照される。
このように、周波数補間フィルタ選択回路11が設けられていない場合であっても、除算回路8−4から出力されたOFDM周波数領域信号と除算回路21−4から出力されたOFDM周波数領域信号のうち、最適なOFDM周波数領域信号を品質に基づいて選択することができ、受信性能の劣化を防ぐことが可能になる。
以上においては、周波数補間回路8−3と周波数補間回路21−3、除算回路8−4と除算回路21−4をそれぞれ1つの回路によって実現することができるものとしたが、反対に、除算回路8−4により生成されたOFDM周波数領域信号の品質を検出する信号品質検出回路と、除算回路21−4により生成されたOFDM周波数領域信号の品質を検出する信号品質検出回路とが別々の回路によって実現されるようにしてもよい。
すなわち、フィルタ帯域の異なる複数の補間フィルタを用いて補間処理を行うことによって全サブキャリアの伝送路特性を複数得ることができ、それに基づいて伝送路歪みの補償を行うことによって複数の伝送路歪み補償後の信号を得ることができ、かつ、それぞれの伝送路歪み補償後の信号の品質を検出することができれば、周波数補間回路、除算回路、信号品質検出回路はどのような形で実現されるようにしてもよい。
また、品質を検出する対象となる信号として、伝送路歪みの補償後(等化後)の信号ではなく、誤り訂正後の信号が用いられるようにしてもよい。
さらに、2つの伝送路歪みの補償後の信号を生成し、その中から1つの信号を選択するのではなく、3以上の信号を生成し、その中から最も品質のよい信号を選択するようにしてもよい。
<第2の実施の形態>
以上においては、補間フィルタの通過帯域(フィルタ帯域)の幅を調整して信号品質を向上させる場合について説明したが、通過帯域の幅に加えて、通過帯域の中心位置(中心周波数)を調整するようにしてもよい。
図16A乃至Dは、補間フィルタの通過帯域の幅を可変、中心位置を固定とした場合の信号品質について説明する図である。
横方向が時間方向を表し、縦方向がパスのパワーを表す。上向きの白抜きの三角は補間フィルタの通過帯域の中心位置を表す。
図16Aは、受信信号のプロファイルの例を示す図である。パスP,Q,Rの3つのパスが存在する場合について説明する。
図16B,Cに示すように、一部のパスを通過帯域に含めることができないような補間フィルタをかけた場合、最終的に得られる歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質は、全てのパスを含めるように補間フィルタをかけた場合に得られる信号品質と較べて悪い。
全てのパスが通過帯域に含まれるように補間フィルタをかけた例を図16Dに示す。歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質は、帯域BW3,BW2,BW1の補間フィルタを用いて得られた信号品質の中でも最も良い。
図17A乃至Dは、補間フィルタの通過帯域の幅をBW2として固定、中心位置を可変とした場合の信号品質について説明する図である。
図17Aは、図16Aと同じパスP,Q,Rを示す図である。
図17Bに示す位置p1が通過帯域の中心位置になるようにして補間フィルタをかけた場合、その通過帯域にはパスRが含まれない。
位置p1から右方向に若干ずらして図17Cに示す位置p2が通過帯域の中心位置になるようにして補間フィルタをかけた場合、その通過帯域にはパスP,Q,Rが全て含まれる。歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質は、全てのパスが通過帯域に含まれないような位置を中心位置とした図17B等に示す場合の信号品質と較べて良くなる。
位置p2から右方向に若干ずらして図17Dに示す位置p3が通過帯域の中心位置になるようにして補間フィルタをかけた場合、その通過帯域からはパスPが外れてしまう。
補間フィルタの通過帯域の幅を可変、中心位置を固定とした図16の場合、通過帯域の幅を固定、中心位置を可変にした図17の場合のいずれの場合においても、通常、その調整の仕方によっては全てのパスを通過帯域に含めることができる。
図18A,Bは、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置の両方を可変にした場合の信号品質について説明する図である。
図18Aは、通過帯域の幅をBW1、中心位置を位置p11として補間フィルタをかけた場合の例を示す図である。
図18Bは、通過帯域の幅をBW2とするとともに、中心位置を位置p11から右方向に若干ずらして位置p12として補間フィルタをかけた場合の例を示す図である。
図18A,Bのいずれの補間フィルタの通過帯域にも全てのパスを収めることができるが、両者の補間フィルタを用いて得られた歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質を較べた場合、図18Bの補間フィルタを用いた場合の信号品質の方が良くなる。
これは、図18A,Bに示すように実際には全域にわたって白色雑音が重畳されており、全てのパスを含みつつ、白色雑音をできるだけ通過帯域に含まないような補間フィルタを設定するのが望ましいためである。図18Aの補間フィルタと図18Bの補間フィルタを較べた場合、図18Bの補間フィルタの方が、通過帯域に含まれる白色雑音の量が一点鎖線で囲んで示す分だけ少なくなる。
以下で説明する受信機においては、このように、全てのパスを含みつつ、白色雑音をできるだけ通過帯域に含まないような補間フィルタが設定される。
図19は、OFDM受信機103の構成例を示すブロック図である。
図19に示す構成のうち、図7等の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。
図19のOFDM受信機103の構成は、主に、周波数補間フィルタ選択回路11がなくなるとともに、最適周波数補間フィルタ選択回路21に替えて最適フィルタ係数選択回路31が設けられている点が図7等の構成と異なる。また、周波数方向に伝送路特性を補間する処理である周波数補間処理を行う回路として、補間フィルタの通過帯域の幅、中心位置を係数に従って変えて周波数補間処理を行う周波数補間回路32が伝送路歪み補償回路8に設けられている。
チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号をIF信号に周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
A/D変換回路3は、IF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
直交復調回路4は、搬送波生成回路5から供給された搬送波を用いて直交復調を行うことによってOFDM時間領域信号を取得し、出力する。
搬送波生成回路5は、所定の周波数の搬送波を生成し、直交復調回路4に出力する。
FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されたFFTトリガーパルスに基づいてFFT区間を設定し、FFT区間内のOFDM時間領域信号を対象としてFFT演算を行う。FFT回路6は、FFT演算を行うことによって抽出した各サブキャリアに直交変調されているデータを表すOFDM周波数領域信号をSP抽出回路8−1、除算回路8−4、および最適フィルタ係数選択回路31に出力する。
FFT区間制御回路7は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、FFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
伝送路歪み補償回路8のSP抽出回路8−1は、OFDM周波数領域信号からSP信号を抽出し、SP信号に対する伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−1は、推定した伝送路特性を表す伝送路特性データを時間方向伝送路特性推定回路8−2に出力する。
時間方向伝送路特性推定回路8−2は、SP信号が配置されているサブキャリアの時間方向に並ぶ各OFDMシンボルに対する伝送路特性を推定する。時間方向伝送路特性推定回路8−2は、3サブキャリア毎の伝送路特性を表すデータである時間方向特性推定データを最適フィルタ係数選択回路31、周波数補間回路32、および遅延プロファイル推定回路10に出力する。
周波数補間回路32は、最適フィルタ係数選択回路31から供給される係数に基づいて、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を変え、周波数補間処理を行う。
図20は、周波数補間回路32の構成例を示す図である。
図20に示すように、周波数補間回路32は、3倍アップサンプリング回路41と補間フィルタ回路42から構成される。
3倍アップサンプリング回路41は、時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された時間方向特性推定データのサンプル値どうしの間に、新たなサンプル値として例えば2個のゼロを補間する。3倍アップサンプリング回路41は、サンプル値の数を元のデータの3倍にした時間方向特性推定データを補間フィルタ回路42に出力する。
補間フィルタ回路42は、周波数方向の伝送路特性の補間のためのフィルタリングを行うLPF(Low Pass Filter)からなり、3倍アップサンプリング回路41からの時間方向特性推定データをフィルタリングする。フィルタリングに用いられるLPF(補間フィルタ)の通過帯域の幅と中心位置が、最適フィルタ係数選択回路31から供給された係数により調整される。
補間フィルタ回路42は、通過帯域の幅と中心位置を調整した補間フィルタを用いてフィルタリングを行うことによって、ゼロの補間によって時間方向特性推定データに生じる折り返り成分を除去し、周波数方向に補間をした伝送路特性を求める。補間フィルタ回路42は、周波数方向に補間を行った伝送路特性、すなわち、全サブキャリアの伝送路特性を表すデータである周波数方向特性補間データを除算回路8−4に出力する。
1シンボルからGIを除いた区間の長さである有効シンボル長をTuとすると、補間フィルタの通過帯域の幅としては、例えば、約Tu/3[秒]に相当する幅以下の幅が用いられる。
補間フィルタの通過帯域の幅について説明する。
図21は、時間方向特性推定データを示す図である。
図21に示すような時間方向特性推定データが、図2に示すようにして配置されるSP信号に対する伝送路特性データを用いて時間方向伝送路特性推定回路8−2により求められる。図21において、白丸と斜線を付した丸は、OFDM信号のサブキャリア(伝送シンボル)を表す。また、斜線を付した丸は、時間方向伝送路特性推定回路8−2での処理後に伝送路特性が推定されている伝送シンボルを表す。
SP信号に対する伝送路特性データを用いて時間方向に伝送路特性の推定が行われることによって、図21に示すように、3サブキャリア毎に、各OFDMシンボルに対する伝送路特性が求められる。図21に示すような伝送路特性を表す時間方向特性推定データが時間方向伝送路特性推定回路8−2から周波数補間回路32に供給される。
図22は、周波数方向特性補間データを示す図である。
周波数補間回路32においては、3サブキャリア毎の伝送路特性を表す時間方向特性推定データをサブキャリア番号方向に用いて、図22において斜線を付した範囲で囲む、OFDMシンボルのサブキャリアのそれぞれの伝送路特性が求められる。
具体的には、3倍アップサンプリング回路41においては、時間方向特性推定データのサンプル値どうしの間に2個のゼロを補間することにより、データ量を元のデータの3倍にした時間方向特性推定データが生成される。
3倍アップサンプリング回路41に入力される時間方向特性推定データは、図21に示すような3サブキャリア毎の伝送路特性を表すサンプル値の系列である。従って、この時間方向特性推定データについては、伝送路特性が推定されているサブキャリアどうしの間に、伝送路特性が推定されていないサブキャリアが2個だけ存在する。このため、3倍アップサンプリング回路41においては、伝送路特性が推定されていない2個のサブキャリアに対する伝送路特性のサンプル点となる2個のゼロが補間される。
なお、補間されるゼロの数は、時間方向伝送路特性推定回路8−2で得られる時間方向特性推定データが、いくつのサブキャリア毎の伝送路特性を表す伝送路特性データであるかによって異なる。
このように、時間方向特性推定データのサンプル値どうしの間に2個のゼロが補間されると、その補間の結果として得られる時間方向特性推定データは、時間領域においては、折り返り成分を含むものとなる。以下、適宜、ゼロが補間された時間方向特性推定データを0値補間特性データという。
時間方向特性推定データが折り返り成分を含む理由について説明する。
時間方向特性推定データはOFDM周波数領域信号から求められるデータであり、周波数領域のデータである。
そして、時間方向特性推定データと、その時間方向特性推定データにゼロを補間して得られる0値補間特性データとは、アナログ信号としては同一の信号である。時間方向特性推定データの時間領域のデータと、0値補間特性データの時間領域のデータとは、周波数成分が同一のデータとなる。
また、時間方向特性推定データは、3サブキャリア毎の伝送路特性を表すサンプル値の系列である。有効シンボル長をTu[秒]、サブキャリアどうしの間隔をFc[Hz]とすると式Fc=1/Tu[Hz]が成り立つから、3サブキャリア毎の伝送路特性を表すサンプル値の系列である時間方向特性推定データのサンプル値どうしの間隔は3Fc=3/Tu[Hz]である。
従って、時間方向特性推定データのサンプル値どうしの間に2個のゼロが補間されることによって得られる0値補間特性データのサンプル値どうしの間隔は、Fc=1/Tu[Hz]となる。
一方、サンプル値どうしの間隔が3Fc=3/Tu[Hz]の時間方向特性推定データは、時間領域では、1/3Fc=Tu/3[秒]を1周期とするデータである。
また、サンプル値どうしの間隔がFc=1/Tu[Hz]の0値補間特性データは、時間領域では、1/Fc=Tu[秒]を1周期とするデータ、すなわち、時間方向特性推定データの周期の3倍を1周期とするデータである。
以上のように、時間方向特性推定データの時間領域のデータと周波数成分が同一であって、その周期の3倍を1周期とする0値補間特性データの時間領域のデータは、時間方向特性推定データの時間領域のデータが3回繰り返されたものとなる。
図23は、0値補間特性データの時間領域のデータの例を示す図である。
ここでは、主波と遅延波の2つのパスがある場合について説明する。図23の横軸は時間を表し、縦軸はパスのパワーレベルを表している。
周期がTu[秒]の0値補間特性データは、時間領域で見ると、周期がTu/3[秒]の時間方向特性推定データに対応するマルチパスが3回繰り返されたものとなる。
いま、図23において斜線を付して示す中央のマルチパスを周波数方向特性補間データとして抽出するものとすると、周波数方向特性補間データに対応する所望のマルチパスを得るには他のマルチパスを除去する必要がある。
そこで、補間フィルタ回路42においては、0値補間特性データをフィルタリングすることで、所望マルチパス以外のマルチパスを除去し、周波数方向特性補間データに対応する所望マルチパスを抽出することが行われる。
なお、0値補間特性データは周波数領域のデータであり、補間フィルタ回路42での0値補間特性データのフィルタリングは、補間フィルタのフィルタ係数と、周波数領域のデータである0値補間特性データとの畳み込みとなる。
周波数領域での畳み込みは時間領域での窓関数との乗算になるので、0値補間特性データのフィルタリングは、時間領域においては、0値補間特性データと、補間フィルタ回路42の通過帯域に対応する窓関数との乗算として表すことができる。図23の太線で示す窓関数は、0値補間特性データのフィルタリングとしての乗算に用いられる、補間フィルタ回路42の通過帯域に対応する関数を表している。
3回繰り返されているマルチパスの周期はTu/3[秒]である。よって、補間フィルタを、例えば、3回繰り返されているマルチパスの周期Tu/3[秒]と同一の幅の、−Tu/6〜+Tu/6の帯域を通過帯域とするLPFとすることで、周波数方向特性補間データに対応する所望マルチパスを抽出することができる。
補間フィルタ回路42において適宜用いられる補間フィルタの通過帯域の幅であるTu/3は、このように、時間方向の伝送路特性の推定によっていくつのサブキャリア毎の伝送路特性を求めることができるのかによって定まる。
補間フィルタ回路42は、周波数補間処理により推定した全サブキャリアの伝送路特性の推定結果を図19の除算回路8−4に出力する。
除算回路8−4は、周波数補間回路32から供給された全サブキャリアの伝送路特性に基づいて、OFDM周波数領域信号に含まれる歪みを補正して等化を行う。除算回路8−4は、歪みを補正したOFDM周波数領域信号(伝送路歪み補償後のOFDM周波数領域信号)を誤り訂正回路9に出力する。
OFDM信号が伝送路で受けるマルチパス等に起因する歪みはOFDM信号に対する乗算となる。OFDM信号が伝送路で受ける歪みの補正は、実際に受信されたOFDM信号を伝送路特性で除算することで実現される。
誤り訂正回路9は、各種の処理を施すことによって得られたデータを復号データとして後段の回路に出力する。
遅延プロファイル推定回路10は、伝送路の遅延プロファイルを推定し、遅延プロファイルをFFT区間制御回路7に出力する。
最適フィルタ係数選択回路31は、通過帯域の幅と中心位置を変えた補間フィルタを用いて複数の条件の下で周波数補間処理を試行する。例えば、図5のフィルタ帯域BW0乃至BW3のそれぞれの通過帯域について、中心位置を所定の幅ずつずらした各条件の下で周波数補間処理が試行される。
また、最適フィルタ係数選択回路31は、周波数補間処理を試行することによって求めた全サブキャリアの伝送路特性に基づいて、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の歪みを補正する。最適フィルタ係数選択回路31は、歪みを補正したそれぞれのOFDM周波数領域信号の品質を計算する。
最適フィルタ係数選択回路31は、最も良い品質が得られた補間フィルタを選択し、その補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表す係数を周波数補間回路32に出力する。
最適フィルタ係数選択回路31においては、例えばシンボル毎に、最も良い品質の信号を得ることのできる補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置が求められる。
図24は、最適フィルタ係数選択回路31の構成例を示す図である。
コントローラ51は、同一シンボルのデータを保持し、保持する同一シンボルのデータが読み出されるように、メモリ52と53の読み書きを制御する。また、コントローラ51は、試行用の補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表すトライアル係数を周波数補間回路54と最適値選択回路57に出力する。
メモリ52は、コントローラ51による制御に従って、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号を1シンボル分保持する。メモリ52により保持された1シンボルのOFDM周波数領域信号は伝送路歪み補正回路55により読み出される。
メモリ53は、コントローラ51による制御に従って、時間方向伝送路特性推定回路8−2により推定された3サブキャリア毎の伝送路特性を表すデータである時間方向特性推定データを1シンボル分保持する。メモリ53により保持された1シンボルの時間方向特性推定データは周波数補間回路54により読み出される。
周波数補間回路54は、図20の周波数補間回路32と同様の構成を有する。周波数補間回路54は、時間方向特性推定データのサンプル値を3倍にアップサンプリングし、コントローラ51から供給されるトライアル係数に従って通過帯域の幅と中心位置を調整した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行う。
周波数補間回路54は、周波数補間処理を行うことによって得られた全サブキャリアの伝送路特性を伝送路歪み補正回路55に出力する。
周波数補間回路54においては、同一のシンボルから得られたデータを対象として、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を変えて周波数補間処理が複数回行われ、それぞれの周波数補間処理によって得られた伝送路特性が出力される。通過帯域の幅と中心位置によって上述したようにパスが補間フィルタの通過帯域に含まれたり含まれなかったりするから、周波数補間処理によって求められる伝送路特性は、コントローラ51により設定されるトライアル係数毎に適宜異なるものになる。
伝送路歪み補正回路55は、周波数補間回路54から伝送路特性が供給される毎に、メモリ52から読み出した1シンボルのOFDM周波数領域信号に含まれる伝送路の歪みを補正する。伝送路歪み補正回路55は、歪みを補正したOFDM周波数領域信号を信号品質計算回路56に出力する。
信号品質計算回路56は、伝送路歪み補正回路55から1シンボルのOFDM周波数領域信号が供給される毎にその品質を計算し、計算した品質を試行結果として最適値選択回路57に出力する。例えば、信号品質計算回路56は、OFDM周波数領域信号に含まれるノイズのパワーを計算し、その値を出力する。
最適値選択回路57は、信号品質計算回路56により計算された品質を順次保持し、それを、対象としている1シンボルのOFDM周波数領域信号について、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を変えて全パターンの試行が完了するまで続ける。
最適値選択回路57は、全パターンの試行結果を取得した場合、最も良い品質のOFDM周波数領域信号を生成するのに用いられた補間フィルタを選択し、選択した補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を特定する。最適値選択回路57においては、対象としている1シンボルのOFDM周波数領域信号については、どの程度の幅の通過帯域を有する補間フィルタを使って、どの位置を通過帯域の中心位置としたときに最も良い品質の信号が得られるのかが特定されることになる。
最適値選択回路57は、選択した補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表す係数を周波数補間回路32に出力する。
以下、適宜、最も良い品質のOFDM周波数領域信号を生成するのに用いられた補間フィルタを最適フィルタという。周波数補間回路32においては、通過帯域の幅と中心位置について、最適フィルタと同じ特性(同じ幅と中心位置の通過帯域)を有する補間フィルタを用いて周波数補間処理が行われる。
[受信機の動作]
次に、以上のような構成を有するOFDM受信機103の動作について説明する。
はじめに、図25のフローチャートを参照して、OFDM受信機103の受信処理について説明する。
各ステップの処理は、番号順に行われるだけでなく、適宜、他のステップの処理と並行して、または前後して行われる。
ステップS51において、チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号を周波数変換し、IF信号を出力する。
ステップS52において、A/D変換回路3は、IF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を出力する。
ステップS53において、直交復調回路4は直交復調を行い、OFDM時間領域信号を出力する。
ステップS54において、FFT回路6は、FFT区間制御回路7による制御に従ってFFT演算を行い、OFDM周波数領域信号を出力する。
ステップS55において、SP抽出回路8−1は、OFDM周波数領域信号からSP信号を抽出し、SP信号に対するサブキャリアの伝送路特性を推定する。
ステップS56において、時間方向伝送路特性推定回路8−2は、3サブキャリア毎の伝送路特性を推定し、時間方向特性推定データを出力する。
ステップS57において、遅延プロファイル推定回路10は、時間方向特性推定データに基づいて遅延プロファイルを推定する。
ステップS58において、最適フィルタ係数選択回路31はフィルタ係数選択処理を行う。フィルタ係数選択処理によって選択された係数は周波数補間回路32に出力される。フィルタ係数選択処理については図26のフローチャートを参照して後述する。
ステップS59において、FFT区間制御回路7は、FFT回路6によるFFT演算を制御する。
ステップS60において、周波数補間回路32は、時間方向特性推定データのサンプル値のアップサンプリングを行い、フィルタ係数選択処理によって選択された係数に基づいて通過帯域の幅と中心位置を調整した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行う。
ステップS61において、除算回路8−4は、周波数補間処理により得られた全サブキャリアの伝送路特性に基づいて、OFDM周波数領域信号に含まれる歪みを補正する。
ステップS62において、誤り訂正回路9は、歪みが補正されたOFDM周波数領域信号に対して誤り訂正等の処理を施し、復号データを出力する。
以上の処理が、信号の受信を行っている間、OFDM受信機103により繰り返される。
次に、図26のフローチャートを参照して、図25のステップS58において行われるフィルタ係数選択処理について説明する。
この処理は、1シンボルのOFDM周波数領域信号が図24のメモリ52から読み出されるとともに、1シンボル分の時間方向特性推定データがメモリ53から読み出されたときに開始される。メモリ52から読み出されるOFDM周波数領域信号とメモリ53から読み出される時間方向特性推定データは同じシンボルについての信号、データである。
ステップS71において、コントローラ51は、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を選択し、選択した幅と中心位置を表すトライアル係数を出力する。
ステップS72において、周波数補間回路54は、トライアル係数に従って通過帯域の幅と中心位置を調整した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行う。
ステップS73において、伝送路歪み補正回路55は、周波数補間処理によって求められた伝送路特性に基づいて、OFDM周波数領域信号に含まれる伝送路の歪みを補正する。
ステップS74において、信号品質計算回路56は、歪みが補正されたOFDM周波数領域信号の品質を計算する。信号品質計算回路56により計算された品質は最適値選択回路57により保持される。
ステップS75において、信号品質計算回路56は、対象のシンボルについて、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を変えて全パターンの周波数補間処理を試行したか否かを判定する。全パターンの周波数補間処理を試行していないとステップS75において判定された場合、ステップS71に戻り、通過帯域の幅と中心位置のうちの少なくともいずれかを変えて以上の処理が繰り返される。
一方、全パターンの周波数補間処理を試行したとステップS75において判定された場合、ステップS76において、最適値選択回路57は、全パターンの試行結果に基づいて最適フィルタを選択する。最適値選択回路57は、最適フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表す係数を出力する。
その後、図25のステップS58に戻り、それ以降の処理が行われる。
以上の処理により、歪み補正後のOFDM周波数領域信号として最も良い品質の信号を最終的に得ることができる通過帯域の幅、中心位置を有する補間フィルタを使って周波数補間処理を周波数補間回路32に行わせることができる。イメージとしては、図18Bに示すような、通過帯域に全てのパスを含みつつ、白色雑音をできるだけ含まないような補間フィルタを用いて周波数補間処理が行われることになる。
図9を参照して説明したシーケンス処理で最適なフィルタの通過帯域を求める場合、正しい解を得るためには十分な数の積算が必要になる。なぜなら、固定の受信環境にあっても白色雑音などの受信状況は微小に変化しており、異なるシンボルのデータを対象として周波数補間処理、歪みの補正等を行い、試行結果である信号品質を比較すると逆転現象が起こりうるからである。逆転現象は、本来、他の補間フィルタより品質の良い信号を得ることができる補間フィルタであるにもかかわらず、受信状況が影響して、他の補間フィルタより品質の悪い信号しか得ることができなくなるような現象である。
従って、以上のようにして補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を選択することにより、図9のシーケンス処理を行う場合に較べて、正しい解を得るまでの時間を短縮することが可能になる。
また、同期引き込み時間を短縮することができ、OFDM受信機103が移動体であり、受信環境が時変動な環境であっても、環境の変動に対する追従性を持たせることが可能になる。
さらに、同一のシンボルを対象として複数の条件下で処理を行って得られた信号の品質を比較するようにしたため、受信状況が時間によって変動する場合であってもその影響を受けることがなく、比較結果を安定させることが可能になる。
<変形例1>
図27は、最適フィルタ係数選択回路31の他の構成例を示すブロック図である。
図27の構成のうち、図24の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
図27の周波数補間回路54は周波数補間回路54−1乃至54−Nにより構成され、伝送路歪み補正回路55は伝送路歪み補正回路55−1乃至55−Nにより構成される。信号品質計算回路56は信号品質計算回路56−1乃至56−Nにより構成される。
コントローラ51は、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表すトライアル係数1乃至Nを周波数補間回路54−1乃至54−Nと最適値選択回路57に出力する。トライアル係数1乃至Nは、それぞれ異なる補間フィルタの特性を表す。
周波数補間回路54−1乃至54−Nは、それぞれ、コントローラ51から供給されるトライアル係数に従って通過帯域の幅と中心位置を調整した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行う。周波数補間回路54−1乃至54−Nにより、異なる条件下での周波数補間処理が時間的に並行して行われることになる。
周波数補間回路54−1乃至54−Nは、それぞれ、周波数補間処理を行うことによって得られた全サブキャリアの伝送路特性を伝送路歪み補正回路55−1乃至55−Nに出力する。
伝送路歪み補正回路55−1乃至55−Nは、それぞれ、周波数補間回路54−1乃至54−Nから供給された伝送路特性を用いて、メモリ52から読み出した1シンボルのOFDM周波数領域信号に含まれる伝送路の歪みを補正する。伝送路歪み補正回路55−1乃至55−Nは、それぞれ、歪み補正後のOFDM周波数領域信号を信号品質計算回路56−1乃至56−Nに出力する。
信号品質計算回路56−1乃至56−Nは、それぞれ、伝送路歪み補正回路55−1乃至55−Nから1シンボルのOFDM周波数領域信号が供給される毎にその品質を計算し、最適値選択回路57に出力する。
最適値選択回路57は、信号品質計算回路56−1乃至56−Nにより計算された品質を保持する。最適値選択回路57は、全パターンの試行結果に基づいて最適フィルタを選択し、その通過帯域の幅と中心位置を表す係数を周波数補間回路32に出力する。
このように、異なる条件下での周波数補間処理、伝送路の歪みを補正する処理、および信号品質を計算する処理が時間的に並行して行われるようにすることにより、周波数補間回路32に係数を出力するまでにかかる時間を短縮することができる。
図27に示すように周波数補間回路54、伝送路歪み補正回路55、信号品質計算回路56のそれぞれを複数の回路で構成するのではなく、周波数補間回路54だけを複数の回路によって構成し、伝送路歪み補正回路55と信号品質計算回路56をそれぞれ1つの回路で構成することも可能である。
<変形例2>
図28は、OFDM受信機104の構成例を示すブロック図である。
図28の構成のうち、図19の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
図28の例においては、重心位置の情報がFFT区間制御回路7から最適フィルタ係数選択回路31に供給されるようになされている。
FFT区間制御回路7は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、FFTトリガーパルスを出力するとともに、例えば下式(1)に基づいて決定した重心位置の情報を最適フィルタ係数選択回路31に出力する。各パスの到来時刻とパワーは、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルにより表される。
なお、遅延プロファイルは、ある1シンボルに注目したときにGIの区間とGIのコピー元の区間が同じ信号であることを利用して、GIの区間を基準とした他の区間との相関に基づいて求められるようにしてもよい。重心位置の決定の仕方についても適宜変更可能である。
最適フィルタ係数選択回路31は、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を変えて周波数補間処理を行うが、この際、通過帯域の中心位置については、FFT区間制御回路7により求められた重心位置を中心として定まる範囲でだけ変えて処理を行う。
図29は、図28の最適フィルタ係数選択回路31の構成例を示すブロック図である。
図29の構成のうち、図24の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。FFT区間制御回路7から出力された重心位置の情報はコントローラ51に入力される。
コントローラ51は、メモリ52と53の読み書きを制御するとともに、補間フィルタの通過帯域の幅と中心位置を表すトライアル係数を周波数補間回路54と最適値選択回路57に出力する。
図30A,Bは、補間フィルタの通過帯域の中心位置の可変範囲の例を示す図である。
図30Aに示すようにパスP,Q,Rがあり、黒塗りの上向き三角によって示す位置が重心位置として求められた場合について説明する。
この場合、重心位置をgp、補間フィルタの通過帯域の幅をBWXとすると、最適フィルタ係数選択回路31は、図30Bに示すように、補間フィルタの通過帯域の中心位置を−BWX/2+gpから+BWX/2+gpの範囲内で変えて周波数補間処理を行う。
このように、補間フィルタの通過帯域の中心位置の可変範囲を制限することにより、制限なく中心位置を変えて周波数補間処理を試行する場合に較べて、試行回数を減らすことができる。
可変範囲の基準となる位置として重心位置を用いるものとしたが、最も早く到来するパスの位置と最も遅く到来するパスの位置の間の位置であれば、どのような位置が基準として用いられるようにしてもよい。
例えば、遅延プロファイルに基づいて求められる、最も早く到来するパスの位置と最も遅く到来するパスの位置の中心位置を中心として前後にBWX/2だけ広げた範囲を可変範囲とするようにしてもよい。
<変形例3>
図31は、OFDM受信機105の構成例を示すブロック図である。
図31の構成のうち、図19の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
図31の例においては、最適フィルタの通過帯域の中心位置の情報が、最適フィルタ係数選択回路31から遅延プロファイル推定回路10にフィードバックされるようになされている。
また、周波数補間回路32が用いる補間フィルタは、通過帯域の幅がTu/3[秒]の固定であり、通過帯域の中心位置だけが可変であるものとする。最適フィルタ係数選択回路31での周波数補間処理に用いられる試行用の補間フィルタも、通過帯域の幅がTu/3[秒]の固定であり、通過帯域の中心位置だけが可変なものになる。
図32は、図31の最適フィルタ係数選択回路31の構成例を示すブロック図である。
図32の構成のうち、図24の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
周波数補間回路54は、コントローラ51から供給されるトライアル係数に従って、Tu/3[秒]の幅の通過帯域を有する補間フィルタの通過帯域の中心位置を調整し、周波数補間処理を行う。
最適値選択回路57は、全パターンの試行結果に基づいて最適フィルタを選択し、最適フィルタの通過帯域の中心位置を表す係数を周波数補間回路32に出力する。
また、最適値選択回路57は、最適フィルタの通過帯域の中心位置を表す情報を出力する。最適値選択回路57から出力された情報は遅延プロファイル推定回路10に入力される。
図31の遅延プロファイル推定回路10は、時間方向伝送路特性推定回路8−2から供給された時間方向特性推定データと、最適フィルタ係数選択回路31から供給された最適フィルタの通過帯域の中心位置を表す情報に基づいて遅延プロファイルを推定する。
図33A乃至Dは、遅延プロファイルの推定について説明する図である。
ここでも、図33Aに示すようなパスP,Q,Rがある場合について説明する。
遅延プロファイル推定回路10においては、時間方向特性推定データに対してIFFTを施すことによって遅延プロファイルが求められる。IFFTの性質上、図33Bに示すように、SP信号の間隔(図2)の逆数にあたるTu/3毎にパスの折り返りが発生する。
折り返り成分のパスを含むパス全体から抽出された所望のパスの構成が遅延プロファイルとなるが、IFFTの結果だけを見た場合、パスPの前にあるパスR’が折り返り成分のパスなのか、実際のパスなのかを遅延プロファイル推定回路10は判断できない。
そこで、各パスが折り返り成分のパスであるか否かを判断する仕組みが必要となり、その判断に、最適フィルタの通過帯域の中心位置が用いられる。
上述したように、全てのパスが補間フィルタの通過帯域に収まらないと歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質は悪くなる。
また、実在しない折り返り成分のパスが補間フィルタの通過帯域に含まれる場合も、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の品質は悪くなる。
つまり、最適フィルタを選択することは、結果として、折り返り成分のパスを通過帯域に含まないような補間フィルタを選択することになる。最適フィルタの通過帯域には、実在する全てのパスが収まっているとともに、折り返り成分のパスが含まれていないと考えられる。
遅延プロファイル推定回路10においては、このことが利用され、遅延プロファイルが推定される。
すなわち、遅延プロファイル推定回路10は、図33Cに示すように、最適フィルタの通過帯域の中心位置と同じ位置を中心として−Tu/6から+Tu/6の範囲内にあるパス以外のパスを削除し、図33Dに示すような所望のパスを抽出する。図33Dのパスの構成は、図33Aに示す実際のパスの構成と同じ構成である。
このように、最適フィルタの通過帯域の中心位置を用いることにより、例えば、実際には最も早く到来するパスであるのにそれより前にパスがあると判断してしまうといったような、パスの前後関係の誤認識を防ぐことが可能になる。パスの前後関係を正しく認識することにより、遅延プロファイルの推定結果の確度を向上させることが可能になる。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図34は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73は、バス74により相互に接続されている。
バス74には、さらに、入出力インタフェース75が接続されている。入出力インタフェース75には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部76、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部77、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部78、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部79、光ディスクや半導体メモリなどのリムーバブルメディア81を駆動するドライブ80が接続されている。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU71が、例えば、記憶部78に記憶されているプログラムを入出力インタフェース75及びバス74を介してRAM73にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
CPU71が実行するプログラムは、例えばリムーバブルメディア81に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供され、記憶部78にインストールされる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。