地上ディジタル放送等では、データ(信号)の変調方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)(直交周波数分割多重)が採用されている。
OFDMでは、伝送帯域内に多数の直交するサブキャリア(副搬送波)が設けられ、それぞれのサブキャリアの振幅や位相にデータを割り当る、PSK(Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)等のディジタル変調が行われる。
OFDMでは、多数のサブキャリアで伝送帯域を分割するため、1つ(1波)のサブキャリアあたりの帯域は狭くなり、変調速度は遅くなるが、トータル(サブキャリアの全体)の伝送速度は、従来の変調方式と変わらない。
上述したように、OFDMにおいては、複数のサブキャリアに対してデータの割り当てが行なわれることから、変調は、逆フーリエ変換を行うIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)演算によって行うことができる。また、変調の結果得られるOFDM信号の復調は、フーリエ変換を行うFFT(Fast Frourier Transform)演算によって行うことができる。
したがって、OFDM信号を送信する送信装置は、IFFT演算を行う回路を用いて構成することができ、OFDM信号を受信する受信装置は、FFT演算を行う回路を用いて構成することができる。
また、OFDMでは、後述するガードインターバルと呼ばれる信号区間を設けることで、マルチパスに対する耐性を向上させることができる。さらに、OFDMでは、既知の信号(受信装置側で分かっている信号)であるパイロット信号が、時間方向や周波数方向に離散的に挿入され、受信装置では、そのパイロット信号が、同期や、伝送路特性の推定に利用される。
OFDMは、マルチパスに対する耐性が強いため、マルチパス妨害の影響を強く受ける地上ディジタル放送等で採用されている。OFDMを採用した地上ディジタル放送の規格としては、例えば、DVB-T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)や、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)等がある。
OFDMでは、データは、OFDMシンボルと呼ばれる単位で送信(伝送)される。
図1は、OFDMシンボルを示す図である。
OFDMシンボルは、変調時にIFFTが行われる信号期間である有効シンボルと、その有効シンボルの後半の一部の波形が、そのまま、有効シンボルの先頭にコピーされたガードインターバルとから構成される。
OFDMシンボルの有効シンボルの長さ、すなわち、ガードインターバルを含まない長さである有効シンボル長が、Tu[秒]であり、OFDMのサブキャリアどうしの間隔が、Fc[Hz]であるとすると、式Fc=1/Tuの関係が成り立つ。
OFDMでは、図1に示したように、OFDMシンボルの先頭に、ガードインターバルを設けることで、マルチパスに対する耐性を向上させている。
地上ディジタル放送では、OFDM伝送フレームと呼ばれる単位が定義され、このOFDM伝送フレームは、複数のOFDMシンボルによって構成される。
例えば、ISDB-T規格においては、204個のOFDMシンボルで、1つのOFDM伝送フレームが構成される。そして、このOFDM伝送フレームを単位として、パイロット信号を挿入する位置が、あらかじめ定められている。
各サブキャリアの変調に、QAM系の変調を用いるOFDMにおいては、送信時に、マルチパス等により、データのOFDMを行って得られるOFDM信号のサブキャリアの振幅や位相が、サブキャリアごとに異なる影響を受ける。
このため、受信装置では、送信装置から受信したOFDM信号のサブキャリアの振幅及び位相が、送信装置が送信したOFDM信号のサブキャリアの振幅及び位相に等しくなるように、送信装置から受信したOFDM信号を等化する歪み補正を行う。
すなわち、OFDMでは、送信装置において、振幅及び位相があらかじめ定められている既知のパイロット信号(の伝送シンボル)が、OFDMシンボルを構成する伝送シンボル(サブキャリア)として離散的に挿入される。そして、受信装置において、パイロット信号の振幅及び位相に基づいて、伝送路の特性(周波数特性)である伝送路特性が推定され、その伝送路特性を表す伝送路特性データを用いて、OFDM信号の歪み補正が行われる。
図2は、OFDMシンボル内の、パイロット信号(の伝送シンボル)の配置パターンの例を示す図である。
なお、図2において(後述する図5、図6、図14、及び、図15でも同様)、横軸は、OFDM信号のサブキャリアを特定するサブキャリア番号を表し、縦軸は、OFDM信号のOFDMシンボルを特定するOFDMシンボル番号を表す。
サブキャリア番号は、周波数に対応し、OFDMシンボル番号は、時間に対応する。
図2において、丸印(白丸印、及び、黒丸印)は、OFDM信号のサブキャリア、あるいは、OFDMシンボルを構成する伝送シンボル(送信装置側で、サブキャリアを変調するデータとしての、IQコンスタレーション(constellation)上のシンボル)を表す。
また、図2において、黒丸印は、パイロット信号の伝送シンボルを表す。
図2では、パイロット信号の伝送シンボルは、OFDM信号の、あらかじめ定められた複数の位置に配置されている。
すなわち、図2では、パイロット信号(の伝送シンボル)は、時間方向には、4個のOFDMシンボル(OFDMシンボル番号)ごとに配置され、周波数方向には、12個のサブキャリア(サブキャリア番号)ごとに配置されている。
パイロット信号には、SP(Scattered Pilot)と呼ばれるパイロット信号や、CP(Continual Pilot)と呼ばれるパイロット信号がある。
SPは、所定数のサブキャリア(伝送シンボル)ごとに周期的に配置され、伝送路特性の推定に用いられる。CPは、同一の周波数(あらかじめ決められた周波数)のサブキャリアに配置される。
図2は、SPの配置パターンの例を示している。
DVB-TやISDB-Tでは、SPの配置パターンは、1通りのパターンに固定されているが、DVB-T.2(Digital Video Broadcasting - Second Generation Terrestrial)では、SPの配置パターンとして、複数のパターン(8通りのパターン)が定められており、SPは、その複数のパターンのうちの1つのパターンに従って配置される。
図3は、OFDM信号を受信する、従来の受信装置の一例の構成を示すブロック図である。
図3において、受信装置は、アンテナ11、チューナ12、BPF(バンドパスフィルタ)13、A/D(Analog/Digital)変換部14、直交復調部15、オフセット補正部16、FFT制御部17、FFT部18、伝送路特性推定部19、伝送路歪み補正部20、及び、誤り訂正部21を備えている。
アンテナ11は、図示せぬ放送局の送信装置から送信(放送)されてくるOFDM信号の放送波を受信し、その放送波を、RF(Radio Frequency)信号に変換して、チューナ12に供給する。
チューナ12は、アンテナ11からのRF信号から、所定の周波数帯域の信号を抽出し、IF(Intermidiate Frequency)信号に周波数変換して、BPF13に供給する。
BPF13は、チューナ12からのIF信号をフィルタリングし、A/D変換部14に供給する。A/D変換部14は、BPF13からのIF信号をA/D変換し、その結果得られるディジタル信号のIF信号を、直交復調部15に供給する。
直交復調部15は、所定の周波数(キャリア周波数)のキャリアを用いて、A/D変換部14からのIF信号を直交復調し、その結果得られるベースバンドのOFDM信号を出力する。
ここで、直交復調部15が出力するOFDM信号は、FFT演算がされる前(送信装置側で、IQコンスタレーション上の伝送シンボルがIFFT演算された直後)の時間領域の信号であり、以下、OFDM時間領域信号ともいう。
OFDM時間領域信号は、実軸成分(I(In Phase)成分)と虚軸成分(Q(Quadrature Phase)成分)とを含む、複素数で表される複素信号である。
OFDM時間領域信号は、直交復調部15からオフセット補正部16に供給される。
オフセット補正部16は、直交復調部15からのOFDM時間領域信号を対象として、A/D変換部104でのサンプリングオフセット(サンプリングのタイミングのずれ)の補正や、直交復調部15のキャリアの周波数のオフセット(送信装置で用いられているキャリアの周波数とのずれ)の補正を行う。
さらに、オフセット補正部16は、例えば、同一チャンネル妨害や隣接チャンネル妨害を除去するためのフィルタリング等を、必要に応じて行う。
オフセット補正部16で処理が施されたOFDM時間領域信号は、FFT制御部17とFFT部18とに供給される。
FFT制御部17は、オフセット補正部16からのOFDM時間領域信号の相関を演算すること等によって、FFT部18でのFFT演算の対象とする、OFDM時間領域信号の区間であるFFT区間の開始位置(FFT開始位置)を検出し、そのFFT開始位置を表すタイミング信号を、FFT部18に供給する。
FFT部18は、FFT制御部17から供給されるタイミング信号に従って、オフセット補正部16からのOFDM時間領域信号のFFT演算を行う。OFDM時間領域信号のFFT演算により、サブキャリアで送信されてきたデータ、すなわち、IQコンスタレーション上の伝送シンボルを表すOFDM信号が得られる。
ここで、OFDM時間領域信号のFFT演算により得られるOFDM信号は、周波数領域の信号であり、以下、OFDM周波数領域信号ともいう。
FFT部18は、FFT演算によって得られたOFDM周波数領域信号を、伝送路特性推定部19と、伝送路歪み補正部20とに供給する。
伝送路特性推定部19は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号において、図2に示したように配置されたパイロット信号(SP)を用いて、OFDM信号の各サブキャリア(伝送シンボル)に対する伝送路特性を推定する。そして、伝送路特性推定部19は、その伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、伝送路歪み補正部20に供給する。
伝送路歪み補正部20は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号を対象とし、OFDM信号のサブキャリアが伝送路で受けた振幅と位相の歪みを補正する歪み補正を、伝送路特性推定部19からの伝送路特性データを用いて行い(例えば、OFDM周波数領域信号を、伝送路特性データで除算すること等で、OFDM周波数領域信号の歪み補正を行い)、その歪み補正後のOFDM周波数領域信号を、誤り訂正部21に供給する。
誤り訂正部21は、伝送路歪み補正部20からのOFDM周波数領域信号を対象として、必要な誤り訂正処理、すなわち、例えば、デインターリーブや、デパンクチャ(de-puncture)、ビタビ復号、拡散信号除去、LDPC(Low Density Parity Check)復号、RS(リードソロモン)復号を行い、その結果得られる復号データを出力する。
図4は、図3の伝送路特性推定部19の構成例を示すブロック図である。
図4において、伝送路特性推定部19は、パイロット抽出部31、基準信号生成部32、推定部33、時間方向補間部34、及び、周波数方向補間部35を備える。また、周波数方向補間部35は、位置調整部36、フィルタ中心制御部37、アップサンプル部38、及び、補間フィルタ39を備える。
FFT部18から伝送路特性推定部19に供給されるOFDM周波数領域信号は、パイロット抽出部31に供給される。
パイロット抽出部31は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号から、例えば、図2に示したように配置されたSPの伝送シンボルを抽出し、推定部33に供給する。
基準信号生成部32は、送信装置がOFDM信号に含ませるのと同一のSP(の伝送シンボル)を生成し、OFDM周波数領域信号に含まれるパイロット信号の伝送シンボルに対する伝送路特性の推定において基準となる基準信号として、推定部33に供給する。
ここで、ISDB−T規格やDVB−T規格等では、パイロット信号の伝送シンボルは、所定のデータをBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調した信号であり、基準信号生成部32は、その所定のデータをBPSK変調した伝送シンボルを生成し、基準信号として、推定部33に供給する。
推定部33は、パイロット抽出部31からのSPの伝送シンボルを、基準信号生成部32からの基準信号で除算することにより、SPの伝送シンボルに対する伝送路特性(以下、SP伝送路特性ともいう)を推定し、その伝送路特性の推定値であるSP伝送路特性データを、時間方向補間部34に供給する。
ここで、OFDM信号が伝送路で受ける歪み(マルチパス等に起因する歪み)は、OFDM信号に対する乗算となる。したがって、OFDM信号が伝送路で受ける歪み成分であるSP伝送路特性の推定は、パイロット抽出部31からのSPの伝送シンボルを、基準信号で除算することで行うことができる。
時間方向補間部34は、推定部33からのSP伝送路特性データを、シンボル番号方向(時間方向)に用いて、時間方向の補間を行い、その補間後のデータである時間方向補間特性データを、周波数方向補間部35に供給する。
周波数方向補間部35は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データを周波数方向に補間するフィルタリングを行うことにより、周波数方向の補間がされた伝送路特性、つまり、OFDMシンボルの各伝送シンボル(各サブキャリア)に対する伝送路特性を推定した推定値である伝送路特性データ(以下、周波数方向補間特性データともいう)を、伝送路歪み補正部20に供給する。
すなわち、周波数方向補間部35では、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データが、位置調整部36、及び、フィルタ中心制御部37に供給される。
位置調整部36は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データの位相を、フィルタ中心制御部37からの最適位置情報に応じて調整(回転)し、位相の調整後の時間方向補間特性データを、アップサンプル部38に供給する。
一方、フィルタ中心制御部37には、時間方向補間部34から時間方向補間特性データが供給される他、FFT部18から、OFDM周波数領域信号が供給される。
フィルタ中心制御部37は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ、すなわち、SPを用いて求められたSP伝送路特性データ(の時間方向の補間を行って得られる時間方向補間特性データ)を、フィルタ中心の位置を調整しながら図示せぬ補間フィルタでフィルタリングすることにより、OFDM周波数領域信号の各伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データ(周波数方向補間特性データ)を求める。
さらに、フィルタ中心制御部37は、伝送路特性データを用いて、FFT部18からのOFDM周波数領域信号(の伝送シンボル)の歪み補正を行い、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を、所定の伝送シンボルを対象として求める。
ここで、フィルタ中心制御部37では、例えば、ISDB-Tについては、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)/AC(Auxiliary Channel)の伝送シンボルを対象として、DVB-Tについては、TPS(Transmission Parameters Signalling)の伝送シンボルを対象として、信号品質が求められる。
信号品質としては、歪み補正後の伝送シンボルのノイズ量に相当する、例えば、歪み補正後の伝送シンボルと、その伝送シンボルの硬判定値との(IQコンスタレーション上での)距離を採用することができる。この場合、信号品質は、値が小さいほど、品質が良いことを表す。
フィルタ中心制御部37は、(図示せぬ補間フィルタの)フィルタ中心の位置を調整しながら、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を求め、信号品質が最良になるフィルタ中心の位置(以下、最適位置ともいう)を求める。
そして、フィルタ中心制御部37は、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置が、最適位置になるように、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置を制御する。
すなわち、フィルタ中心制御部37は、最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36に供給する
位置調整部36は、上述したように、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データの位相を、フィルタ中心制御部37からの最適位置情報に応じて調整し、すなわち、時間方向補間特性データを、IQコンスタレーション上で回転し、これにより、いわば相対的に、後述する補間フィルタ39での、時間方向補間特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置を、最適位置情報が表す位置にする。
アップサンプル部38は、以上のようにして、位置調整部36で得られる位相の調整後の時間方向補間特性データのサンプル値どうしの間に、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数に等しい、例えば、2個のゼロを補間することにより、データ量(サンプル値の数)を元の3倍にした時間方向補間特性データを生成し、補間フィルタ39に供給する。
補間フィルタ39は、周波数方向の補間のためのフィルタリングを行うLPF(Low Pass Filter)であり、アップサンプル部38からの時間方向補間特性データをフィルタリングする。
補間フィルタ39によるフィルタリングにより、アップサンプル部38でのゼロの補間によって時間方向補間特性データに生じる繰り返し成分が除去され、周波数方向の補間がされた伝送路特性、すなわち、OFDMシンボルの伝送シンボル(サブキャリア)のそれぞれに対する伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データが求められる。
以上のようにして補間フィルタ39で得られた周波数方向補間特性データは、OFDM信号の歪み補正に用いる伝送路特性データとして、伝送路歪み補正部20に供給される。
ここで、伝送路特性推定部19は、補間フィルタ39で求められた伝送路特性データの他、フィルタ中心制御部37で求められた最適位置情報も、伝送路歪み補正部20に供給する。
伝送路歪み補正部20では、伝送路特性推定部19からの最適位置情報に応じて、FFT部18からのOFDM周波数領域信号の位相が調整(回転)され、その後、そのOFDM周波数領域信号が、伝送路特性推定部19からの伝送路特性データで除算されることで、OFDM周波数領域信号の歪み補正が行われる。
図5は、図4の時間方向補間部34が、図2に示した配置のSPの位置の伝送路特性データ(SP伝送路特性データ)を用いて求める、時間方向の補間がされた伝送路特性の推定値である時間方向補間特性データを説明する図である。
図5において、丸印(白丸印、及び、斜線を付した丸印)は、OFDM信号の伝送シンボル(サブキャリア)を表す。
また、図5において、斜線を付した丸印は、時間方向補間特性データに、伝送路特性の推定値が含まれる(時間方向補間特性データのサンプル値が存在する)伝送シンボルを表す
時間方向補間部34での時間方向の補間によれば、図2に示したようにSPが配置されているOFDM信号からは、図5に示すように、各OFDMシンボルについて、(周波数方向に)3個の伝送シンボルごとの伝送路特性の推定値を得ることができる。
図6は、図4の周波数方向補間部35が、図5に斜線を付した丸印で示した伝送シンボルの伝送路特性の推定値である時間方向補間特性データを用いて求める、周波数方向の補間がされた伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データを説明する図である。
周波数方向補間部35は、周波数方向に、3個の伝送シンボルごとに伝送路特性の推定値が得られている時間方向補間特性データをサブキャリア番号方向(周波数方向)に補間することで、図6において斜線を付した長方形で囲む、OFDMシンボルの伝送シンボルのそれぞれの伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データを求める。
すなわち、周波数方向補間部35では、位置調整部36において、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データの位相が、フィルタ中心制御部37から供給される最適位置情報に従って調整され、位相の調整後の時間方向補間特性データが、アップサンプル部38に供給される。
アップサンプル部38は、位置調整部36からの時間方向補間特性データ(図5)のサンプル値どうしの間に、2個のゼロを補間することにより、データ量を元の3倍にした時間方向補間特性データを生成し、補間フィルタ39に供給する。
すなわち、位置調整部36からアップサンプル部38に供給される時間方向補間特性データは、図5に示したように、周波数方向に見て、3個の伝送シンボルごとの伝送路特性の推定値が並ぶ系列になっている
したがって、位置調整部36からアップサンプル部38に供給される時間方向補間特性データについては、周波数方向に見て、伝送路特性が推定されている伝送シンボルどうしの間に、伝送路特性が推定されていない伝送シンボルが2個だけ存在する。このため、アップサンプル部38では、伝送路特性が推定されていない2個の伝送シンボルに対する伝送路特性のサンプル点となる2個のゼロが補間される。
以上のように、アップサンプル部38で補間されるゼロの数は、時間方向補間部34で得られる時間方向補間特性データが、周波数方向に見て、幾つの伝送シンボルごとの伝送路特性の推定値の系列になっているかによって異なる。
上述のように、アップサンプル部38において、位置調整部36からの時間方向補間特性データのサンプル値どうしの間に、2個のゼロが補間されると、その補間の結果得られる時間方向補間特性データ(以下、0値補間特性データともいう)は、時間領域において、繰り返し成分を含むものとなる。
すなわち、時間方向補間特性データは、OFDM周波数領域信号から求められるデータであり、周波数領域のデータである。
そして、時間方向補間特性データと、その時間方向補間特性データにゼロを補間して得られる0値補間特性データとは、アナログ信号としては、同一の信号であるので、時間方向補間特性データの時間領域のデータと、0値補間特性データの時間領域のデータとは、周波数成分が同一のデータとなる。
また、時間方向補間特性データは、3個の伝送シンボルごとの伝送路特性の推定値の系列である。周波数方向の伝送シンボル(サブキャリア)どうしの間隔は、上述したように、Fc=1/Tu[Hz]であるから、(周波数方向に)3個の伝送シンボルごとの伝送路特性の推定値の系列である時間方向補間特性データのサンプル値(推定値)どうしの間隔は、3Fc=3/Tu[Hz]である。
したがって、時間方向補間特性データのサンプル値どうしの間に、2個のゼロが補間されることによって得られる0値補間特性データのサンプル値どうしの間隔は、Fc=1/Tu[Hz]となる。
一方、サンプル値どうしの間隔が3Fc=3/Tu[Hz]の時間方向補間特性データは、時間領域では、1/3Fc=Tu/3[秒]を1周期とするデータである。
また、サンプル値どうしの間隔がFc=1/Tu[Hz]の0値補間特性データは、時間領域では、1/Fc=Tu[秒]を1周期とするデータ、すなわち、時間方向補間特性データの周期の3倍を1周期とするデータである。
以上のように、時間方向補間特性データの時間領域のデータと周波数成分が同一で、かつ、時間方向補間特性データの時間領域のデータの周期の3倍を1周期とする0値補間特性データの時間領域のデータは、時間方向補間特性データの時間領域のデータが3回繰り返されたものとなる。
すなわち、図7は、0値補間特性データの時間領域のデータを示している。
なお、以下では、説明を簡単にするために、マルチパスが2つのパス(メインパスと1つのエコー)から構成される(2波環境である)こととする。
図7において(後述する図10でも同様)、横軸は、時間を表し、縦軸は、パス(OFDM信号)のパワーレベルを表している。
周期がTu[秒]の0値補間特性データ(の時間領域のデータ)は、周期がTu/3[秒]の時間方向補間特性データ(の時間領域のデータ)に対応するマルチパスが、3回繰り返されたものとなる。
いま、0値補間特性データにおいて、3回繰り返される時間方向補間特性データに対応するマルチパスのうちの、2回目(中央)のマルチパス(図7において斜線を付して示す)を、周波数方向補間特性データとして抽出する所望マルチパスということとすると、周波数方向補間特性データに対応する所望マルチパスを得るには、他のマルチパスを除去する必要がある。
そこで、補間フィルタ39(図4)は、0値補間特性データをフィルタリングすることで、所望マルチパス以外のマルチパスを除去し、これにより、周波数方向補間特性データに対応する所望マルチパスを抽出する。
なお、0値補間特性データは、周波数領域のデータであり、補間フィルタ39での0値補間特性データのフィルタリングは、補間フィルタ39のフィルタ係数と、周波数領域のデータである0値補間特性データとの畳み込みとなる。
周波数領域での畳み込みは、補間フィルタ39の通過帯域としての、時間領域での窓関数との乗算になるので、補間フィルタ39での0値補間特性データのフィルタリングは、時間領域において、0値補間特性データ(の時間領域のデータ)と、補間フィルタ39の通過帯域としての窓関数との乗算として表すことができる。
図7では(後述する図10でも同様)、0値補間特性データのフィルタリングが、0値補間特性データと、補間フィルタ39の通過帯域(に対応する窓関数)との乗算として表されている。
0値補間特性データにおいて、3回繰り返されているマルチパスの周期は、Tu/3[秒]であるので、補間フィルタ39を、例えば、3回繰り返されているマルチパスの周期Tu/3[秒]と同一の帯域幅の、-Tu/6ないし+Tu/6の帯域を通過帯域とするLPFとすることで、周波数方向補間特性データに対応する所望マルチパスを抽出することができる。
なお、補間フィルタ39の通過帯域の帯域幅を調整することにより、0値補間特性データ(時間方向補間特性データ)に含まれる雑音を低減することができる(例えば、特許文献1を参照)。
また、フィルタ中心制御部37(図4)では、所望マルチパスが、図7に示したように、補間フィルタ39の通過帯域内に含まれるように、その通過帯域の中心の位置(フィルタ中心の位置)が制御される。
すなわち、上述したように、フィルタ中心制御部37は、歪み補正後のOFDM信号(周波数領域OFDM信号)の信号品質を最良にするフィルタ中心の位置(最適位置)を求め、その最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36(図4)に供給する。
位置調整部36では、所望マルチパスが、図7に示したように、補間フィルタ39の通過帯域内に含まれるように、時間方向補間特性データの位相が、フィルタ中心制御部37から供給される最適位置情報に応じて調整(回転)される。
その結果、補間フィルタ39のフィルタ中心(通過帯域の中心)の位置は、相対的に、所望マルチパスが、補間フィルタ39の通過帯域内に含まれるように制御される。
ここで、所望マルチパスの一部のパスが、補間フィルタ39の通過帯域に含まれていない場合、伝送路特性推定部19での伝送路特性の推定精度が劣化し、その結果、歪み補正後のOFDM周波数領域信号に含まれるノイズが大となって、信号品質が低下する。
そのため、フィルタ中心制御部37は、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質が最良になるフィルタ中心の位置(最適位置)を求め、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置が、最適位置になるように、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置を制御する。
ところで、DVB-TやISDB-Tでは、SPの配置パターンは、1通りのパターンに固定されており、さらに、信号品質を求める対象のTPSの伝送シンボルや、TMCC/ACの伝送シンボルの位置も固定であるため、SPからの伝送路特性の推定、伝送路特性の推定値を用いてのOFDM周波数領域信号の歪み補正、及び、歪み補正後のOFDM周波数領域信号のTPSの伝送シンボルや、TMCC/ACの伝送シンボルの信号品質の算出を行い、その信号品質が最良になるように、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置を制御することができる。
一方、DVB-T.2では、上述したように、SPの配置パターンとして、複数のパターン(8通りのパターン)が定められており、その複数のパターンのうちのいずれか1つのパターンが選択され、そのパターンに従って、SPが配置されている。そして、DVB-T.2では、SPの配置パターンの情報が、OFDM信号に別途含めて送信されてくる。
この場合、OFDM信号に含まれる、SPの配置パターンの情報が復号されるまでは、SPの配置パターンを認識することができず、その結果、信号品質が最良になるように、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置を制御することが困難となって、伝送路特性の推定精度が劣化する。
すなわち、DVB-T.2(のブルーブック)では、T2フレーム(T2 frame)と呼ばれるフレームが定義され、データは、T2フレーム単位で送信される。
T2フレーム(のOFDM信号)は、P1及びP2と呼ばれる2種類のプリアンブル(Preamble)信号を含み、そのプリアンブル信号には、OFDM信号の復調等の処理に必要な情報が含まれる。
図8は、T2フレームのフォーマットを示す図である。
T2フレームには、1個のP1のOFDMシンボル(以下、P1シンボルともいう)、1個以上のP2のOFDMシンボル(以下、P2シンボルともいう)、1個以上のデータ(Normal)のOFDMシンボル(以下、データシンボルともいう)、及び、必要なFC(Frame Closing)のOFDMシンボルが、その順で含まれる。
P1(P1 Signalling)には、ビットS1及びS2が含まれる。
ビットS1及びS2は、フレームがT2フレームであるのかどうかや、フレームとして、T2フレームとFEF(Future Extension Frame)とが混在するのかの情報を含む。
さらに、ビットS1及びS2は、P1シンボル以外のOFDMシンボル(P2シンボル、データシンボル、及び、FCのOFDMシンボル)が、SISO(Single Input Single Output)、及び、MISO(Multiple Input, Single Output)のうちのいずれの方式(伝送方式)で伝送されてくるのかの情報や、P1シンボル以外のOFDMシンボルのFFT演算を行うときのFFTサイズ(1回のFFT演算の対象とするサンプル(伝送シンボル)(サブキャリア)の数)等を含む。
なお、DVB-T.2では、1個のOFDMシンボルを構成する伝送シンボル(サブキャリア)の数、つまり、FFTサイズとしては、1K,2K,4K,8K,16K、及び、32Kの6種類が規定されている。
但し、P1シンボル以外のOFDMシンボルについては、上述の6種類のFFTサイズのいずれも使用可能であるが、P1シンボルについては、上述の6種類のFFTサイズのうちの、1Kのみが使用される。
また、P2シンボル、データ(Normal)シンボル、及び、FCのOFDMシンボルでは、FFTサイズ、及び、GI(ガードインターバル)長として、同一の値が採用される。
ここで、P1シンボルは、P2シンボルの復調に必要な伝送方式やFFTサイズ等を含むので、P2シンボルを復調するには、P1シンボルを復調する必要がある。
P2には、L1pre(L1 pre Signalling)、及び、L1post(L1 post Signalling)からなるL1が含まれる。
L1preは、受信装置が、L1postの復号を行うのに必要なパラメータ、及び、データシンボル(及びFCのOFDMシンボル)の復調に必要なパラメータを含む。
すなわち、L1preには、例えば、L1postの変調方式(BPSK等)等が、L1postの復号を行うのに必要なパラメータとして含まれる。さらに、L1preには、例えば、パイロット信号(SP)の伝送シンボルの配置パターンを表すパイロットパターン(PP)、OFDM信号を伝送する伝送帯域の拡張の有無(Extended carrier mode、又は、Normal carrier mode)、1つのT2フレームに含まれるOFDMシンボルの数(T2フレーム長)等が、データシンボルを復調するのに必要なパラメータとして含まれる。
ここで、DVB-T.2では、データシンボルにおける、SPの伝送シンボルの配置パターンとして、8通りのパイロットパターンPP1ないしPP8が定められており、データシンボルにおいて、SPの伝送シンボルは、その8通りのパイロットパターンPP1ないしPP8のうちの1つのパイロットパターンに従って配置されている。L1preには、データシンボルのSPの伝送シンボルの配置パターンとしてのパイロットパターンが含まれている。
L1postは、受信装置が、PLP(Physical Layer Pipe)にアクセスするのに必要な情報を含む。
すなわち、L1postには、PLPの変調方式や、T2フレーム内のPLPのサイズや位置の情報等が、PLPにアクセスするのに必要な情報として含まれる。
受信装置では、P1シンボルを検出して復号し、GI長を推定すると、P2シンボルを復調することができる。さらに、P2シンボルを復調すると、L1preを復号することができ、L1preを復号すると、L1postを復号することができる。そして、その後、データシンボル(及びFCのOFDMシンボル)を復調することができる。
なお、図8では、T2フレームに、2個のP2シンボルが配置されているが、DVB-T.2では、T2フレームに配置されるP2シンボルの数は、P2シンボル(及びデータシンボル)のFFTサイズによって決まる。
例えば、P2シンボルのFFTサイズが、32K及び16Kである場合、T2フレームには、1個のP2シンボルが配置される。また、例えば、P2シンボルのFFTサイズが、8Kである場合、T2フレームには、2個のP2シンボルが配置される。
図9は、P1シンボルの構成を示す図である。
P1シンボルは、1K(=1024)個の伝送シンボルを有効な有効シンボルとして有する。
そして、P1シンボルは、有効シンボルの、先頭側の一部分B1を周波数シフトした信号B1'を、有効シンボルの前側(時間的に先行する側)にコピーし、かつ、有効シンボルの残りの部分B2を周波数シフトした信号B2'を、有効シンボルの後ろ側(時間的に後行する側)にコピーした、サイクリック(cyclic)な構造になっている。
以上のように、P1シンボルは、サイクリックな構造になっているので、受信装置では、OFDM信号の相関を演算することにより、P1シンボルを検出することができる。
そして、受信装置では、P1シンボルを検出して復号し、さらに、GI長を推定すると、P2シンボルを復調し、L1(L1pre及びL1post)を復号することができる。
したがって、P2シンボルを復調しないと、L1を復号することができず、データシンボルのパイロットパターンを認識することができない。
そして、データシンボルのパイロットパターンを認識することができないと、データシンボルを用いて、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置を制御することはできない。
以上から、受信装置において、データシンボルを用いた、補間フィルタ39(図4)のフィルタ中心の位置の制御(以下、フィルタ中心位置制御ともいう)は、L1を復号し、データシンボルのパイロットパターンを認識(取得)した後でなければ、行うことができない。
したがって、受信装置では、OFDM信号の受信を開始した後、L1を復号するまでは、フィルタ中心位置制御を行うことができない。
[本発明を適用した受信装置の一実施の形態]
図11は、本発明を適用した受信装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
なお、図中、図3の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
図11の受信装置は、アンテナ11ないしFFT部18、伝送路歪み補正部20、及び、誤り訂正部21を有する点で、図3の場合と共通する。
但し、図11の受信装置は、図3の伝送路特性推定部19に代えて、伝送路特性推定部101が設けられている点で、図3の場合と相違する。
伝送路特性推定部101には、FFT部18からOFDM周波数領域信号が供給される。
伝送路特性推定部101は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号に含まれるP2シンボル(プリアンブルシンボル)や、データシンボルを用いて、OFDM信号の各伝送シンボル(サブキャリア)に対する伝送路特性を推定し、その伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、伝送路歪み補正部20に供給する。
伝送路歪み補正部20は、FFT部18から供給されるOFDM周波数領域信号について、伝送路特性推定部101から供給される伝送路特性データを用いて、歪み補正を行い、その歪み補正後のOFDM周波数領域信号を、誤り訂正部21に供給する。
[伝送路特性推定部101の構成例]
図12は、図11の伝送路特性推定部101の構成例を示すブロック図である。
なお、図中、図4の伝送路特性推定部19と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
図12において、伝送路特性推定部101は、パイロット抽出部31ないし周波数方向補間部35を有する点、並びに、周波数方向補間部35に、位置調整部36、アップサンプル部38、及び、補間フィルタ39が設けられている点で、図4の伝送路特性推定部19と共通する。
但し、伝送路特性推定部101は、周波数方向補間部35に、フィルタ中心制御部37に代えて、フィルタ中心制御部111が設けられている点で、図4の伝送路特性推定部19と相違する。
フィルタ中心制御部111には、時間方向補間部34から、時間方向補間特性データが供給されるとともに、FFT部18から、OFDM周波数領域信号が供給される。フィルタ中心制御部111は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ、及び、FFT部18からのOFDM周波数領域信号を用いて、フィルタ中心位置制御を行う。
すなわち、フィルタ中心制御部111は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ(周波数方向の補間がされていない伝送路特性の推定値である補間前伝送路特性データ)に、位置調整部36、アップサンプル部38、及び、補間フィルタ39が行うのと同様の処理を施し、OFDM周波数領域信号の各伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データ(周波数方向補間特性データ)を求める。
具体的には、フィルタ中心制御部111は、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ(補間前伝送路特性データ)を、フィルタ中心の位置を調整しながら後述する補間フィルタ54(図16)でフィルタリングすることにより、OFDM周波数領域信号の各伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データを求める。
さらに、フィルタ中心制御部111は、伝送路特性データを用いて、FFT部18からのOFDM周波数領域信号(の伝送シンボル)の歪み補正を、伝送路歪み補正部20と同様に行い、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を、所定の伝送シンボルを対象として求める。
以上のように、フィルタ中心制御部111は、(図示せぬ補間フィルタの)フィルタ中心の位置を調整しながら、信号品質を求め、信号品質が最良になる(より良くなる)フィルタ中心の位置(以下、最適位置ともいう)を求める。
そして、フィルタ中心制御部111は、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置が、最適位置になるように、補間フィルタ39のフィルタ中心の位置(補間フィルタ39の通過帯域)を制御する。
すなわち、フィルタ中心制御部111は、最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36に供給する
位置調整部36は、上述したように、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ(補間前伝送路特性データ)の位相を、フィルタ中心制御部111からの最適位置情報に応じて調整し、すなわち、時間方向補間特性データを、IQコンスタレーション上で回転し、これにより、相対的に、後段の補間フィルタ39での、時間方向補間特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、最適位置情報が表す位置にされる。
アップサンプル部38は、以上のようにして位置調整部36で得られる位相の調整後の時間方向補間特性データの周波数方向に、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数に等しい個数のゼロを補間し、その結果得られる0値補間特性データを、補間フィルタ39に供給する。
補間フィルタ39は、アップサンプル部38からの0値補間特性データをフィルタリングする。
補間フィルタ39によるフィルタリングにより、アップサンプル部38でのゼロの補間によって時間方向補間特性データに生じる繰り返し成分が除去され、周波数方向の補間がされた伝送路特性、すなわち、OFDMシンボルの伝送シンボル(サブキャリア)のそれぞれに対する伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データが求められる。
以上のようにして補間フィルタ39で得られた周波数方向補間特性データは、OFDM信号の歪み補正に用いる伝送路特性データとして、伝送路歪み補正部20に供給される。
なお、図12では、フィルタ中心制御部111は、伝送路特性推定部101の内部に設けられているが、フィルタ中心制御部111は、伝送路特性推定部101の外部に設けることが可能である。
[受信装置の処理]
図13は、図11の受信装置の処理の概要を説明するフローチャートである。
受信装置は、電源がオンにされ、又は、所定のチャンネル(放送局の番組)が選択されると、T2フレームの受信を開始する。そして、受信装置は、ステップS11において、T2フレームのP1シンボルの検出、復号を行い、ステップS12において、GI長を推定する。
受信装置は、ステップS13において、P1シンボルの復号、及び、GI長の推定によって認識される、P2シンボルのFFTサイズや、T2フレームに含まれるP2シンボル全体の長さ等に基づいて、P2シンボルを復調する。
受信装置は、P2シンボルの復調後、ステップS14において、そのP2シンボルに含まれるL1preを復号する。
さらに、受信装置は、ステップS15において、L1preの復号によって認識される、L1postの復号に必要な情報に基づいて、P2シンボルに含まれるL1postを復号する。
その後、受信装置は、L1pre及びL1postの復号によって認識される、データシンボルの復調、及び、データシンボルに含まれるデータ(PLP)の復号に必要な情報に基づいて、ステップS16において、データシンボルを復調し、ステップS17において、そのデータシンボルに含まれるデータ(及びFC)を復号する。
以上のように、P2シンボルが復調され、そのP2シンボルに含まれるL1(L1pre及びL1post)が復号され、さらに、データシンボルの復調、及び、そのデータシンボルに含まれるデータの復号が行われると、以降のT2フレームについては、定常状態の処理が行われる。
すなわち、受信装置は、次のT2フレームを受信し、ステップS18において、そのT2フレームに含まれるP2シンボルを復調して、ステップS19において、そのP2シンボルに含まれるL1postを復号する。
ここで、L1postには、データ(PLP)の位置や大きさ等のデータの復号に必要な情報が含まれるが、データ(PLP)の位置や大きさは、T2フレームごとに変化することがあるので、L1postは、T2フレームごとに復号される。
その後、受信装置は、直前のステップS19で復号したL1postに含まれる情報に基づいて、T2フレーム(直前のステップS19でL1postを復号したT2フレーム)に含まれるデータシンボルの復調を、ステップS20で行い、そのデータシンボルに含まれるデータの復号を、ステップS21で行う。
そして、受信装置が、さらに次のT2フレームを受信すると、処理は、ステップS21からステップS18に戻り、以下、同様の定常状態の処理が繰り返される。
[データシンボルのパイロット信号の配置]
図14は、DVB-T.2のデータシンボルのパイロット信号(SP)の配置パターンを示す図である。
なお、図2で説明したように、図14において、横軸は、周波数(サブキャリア番号)を表し、縦軸は、時間(OFDMシンボル番号)を表す。
DVB-T.2では、SPの配置パターンであるパイロットパターンとして、DVB-TやISDB-Tのように、1通りのパイロットパターンだけが定められているのではなく、8通りのパイロットパターンPP1ないしPP8が定められている。
図14は、パイロットパターンPP1及びPP4それぞれのデータシンボルを示している。
図14において、矩形は、伝送シンボルを表し、白抜きの矩形は、データの伝送シンボル(Data cell)を表す。また、斜線を付してある矩形は、SP(の伝送シンボル)を表し、黒で塗りつぶしている矩形は、エッジパイロット(Edge pilot)(の伝送シンボル)を表す。
パイロットパターンPP1では、SPが存在する周波数の間隔(列の間隔)Dxが3に、SPが存在する周波数(列)におけるSPどうしの時間の間隔Dyが4に、周波数方向のSPの間隔Dx×Dyが12に、それぞれなっている。
また、パイロットパターンPP4では、SPが存在する周波数の間隔(列の間隔)Dxが12に、SPが存在する周波数(列)におけるSPどうしの時間の間隔Dyが2に、周波数方向のSPの間隔Dx×Dyが24に、それぞれなっている。
データシンボルのパイロットパターン(の情報)は、L1preに含まれており、したがって、データシンボルを用いたフィルタ中心位置制御は、P2シンボルを復調し、そのP2シンボルに含まれるL1preを復号するまでは、行うことができない。
[P2パイロット信号の配置]
図15は、DVB-T.2のP2シンボルに含まれるパイロット信号(P2パイロット信号)の配置パターンを示す図である。
なお、DVB-T.2では、OFDM信号を伝送する伝送帯域の拡張が可能であり、図15において、エクステンディッドキャリアモード(Extended carrier mode)は、伝送帯域を拡張したモードであり、ノーマルキャリアモード(Normal carrier mode)は、伝送帯域を拡張しないモードである。
また、図15において、フィジカルキャリア(physical carrier)番号k'は、OFDMシンボルの中心のサブキャリアのサブキャリア番号を0とした場合のサブキャリア番号であり、ロジカルキャリア(logical carrier)番号kは、OFDMシンボルの左端のサブキャリア(周波数の最も低いサブキャリア)のサブキャリア番号を0とした場合のサブキャリア番号である。
さらに、図15には、図示していないが、左端及び右端の伝送シンボル(サブキャリア)は、エッジパイロット信号の伝送シンボルになっている。
また、図15において、P2シンボルのFFTサイズは、8Kであり、このため、T2フレームには、2個のP2シンボルが配置されている。
すなわち、図15において、上から1番目と2番目との2つのOFDMシンボルは、T2フレームにおいて、P1シンボルに続くP2シンボルであり、3番目以降のOFDMシンボルは、T2フレームにおいて、P2シンボルに続くデータシンボルである。
また、図15では、P2シンボルに含まれるP2パイロット信号の他、データシンボルに含まれるSP(Scattered Pilot)とCP(Continual Pilot)も、図示してある。
さらに、図15において、トーンリザベーションセル(Tone Reservation cell)とは、PAPR(peak to average power ratio)を軽減する値が設定される伝送シンボルである。
すなわち、OFDMシンボルの伝送シンボルの値に偏りがある場合には、OFDM信号の送信装置でのIFFTによって得られるOFDM時間領域信号に、大きなピークが生じ、そのピークが、送信装置や受信装置でクリップされることによって、OFDM信号の受信性能が劣化する。
トーンリザベーションセルには、そのようなピークを軽減させるための値が設定される。
DVB-T.2において、P2シンボルのP2パイロット信号は、各OFDMシンボル(P2シンボル)の同一の周波数に、周期的に配置される。
但し、DVB-T.2において、P2パイロット信号の配置の周期Dxは、P2シンボルのFFTサイズに依存し、FFTサイズが、32Kである場合には、周期Dxは、6であり、FFTサイズが、16K以下である場合には、周期Dxは、3である。
図15では、P2シンボルのFFTサイズは、上述したように、8Kであり、したがって、P2パイロット信号の配置の周期Dxは、3になっている。
なお、P2パイロット信号は、時間方向には、すき間を空けずに配置される。
P2シンボルには、P2パイロット信号が含まれるので、そのP2パイロット信号を用いて、伝送路特性の推定を行うことは、可能である。
しかしながら、P2シンボルには、ISDB-TのTMCC/ACの伝送シンボルや、DVB-TのTPSの伝送シンボルが存在しないため、TMCC/ACの伝送シンボルや、TPSの伝送シンボルを対象として、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を求めることはできず、したがって、その信号品質を向上させるフィルタ中心位置制御も、行うことはできない。
そこで、図12のフィルタ中心制御部111は、L1preの伝送シンボルを対象として、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を求め、その信号品質を向上させるフィルタ中心位置制御を行う。
[フィルタ中心制御部111の構成例]
図16は、図12のフィルタ中心制御部111の構成例を示すブロック図である。
フィルタ中心制御部111は、P2シンボルの復調、及び、そのP2シンボルに含まれるL1preの復号が行われ、データシンボルのパイロットパターン(の情報)が取得されるまでは、P2シンボルの伝送シンボルを用いて、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を最良にするように、フィルタ中心位置制御を行う。
そして、フィルタ中心制御部111は、L1preが復号され、そのL1preに含まれるパイロットパターンが取得された後は、そのパイロットパターンに従ってSPの伝送シンボルが配置されたデータシンボルの伝送シンボルを用いて、歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質を最良にするように、フィルタ中心位置制御を行う。
ここで、P2シンボル(の伝送シンボル)を用いたフィルタ中心位置制御を、捕捉モードのフィルタ中心位置制御ともいい、データシンボル(の伝送シンボル)を用いたフィルタ中心位置制御を、追従モードのフィルタ中心位置制御ともいう。
フィルタ中心制御部111は、図16に示すように、フィルタリング位置設定部51、位置調整部52、アップサンプル部53、補間フィルタ54、シンボル抽出部55、伝送路歪み補正部56、及び、信号品質計算部57を有する。
フィルタ中心制御部111において、FFT部18からのOFDM周波数領域信号は、シンボル抽出部55に供給され、時間方向補間部34からの時間方向補間特性データ(補間前伝送路特性データ)は、位置調整部52に供給される。
ここで、パイロット抽出部31(図12)は、P2シンボルについては、P2パイロット信号(の伝送シンボル)を抽出し、データシンボルについては、SP(の伝送シンボル)を抽出する。
P2シンボルのP2パイロット信号の位置は、P1シンボルの検出、及び、復号が行われた後、そのP1シンボルに含まれるビットS1及びS2から認識されるP2シンボルのFFTサイズから特定される。
したがって、受信装置の電源がオンにされた後(又は、所定のチャンネル(放送局の番組)が選択された後)、P1シンボルの検出、及び、復号が行われることによって、P2シンボルのFFTサイズが認識され、P2パイロット信号の位置が特定された後に、パイロット抽出部31は、P2パイロット信号を抽出することができる。
また、データシンボルのSPの位置は、P1シンボルの検出、及び、復号、さらには、P2シンボルの復調、及び、L1preの復号が行われた後、そのL1preから認識されるパイロットパターンから特定される。
したがって、受信装置の電源がオンにされた後、P1シンボルの検出、及び、復号、さらには、P2シンボルの復調、L1preの復号が行われることによって、データシンボルのパイロットパターンが認識され、データシンボルのSPの位置が特定された後に、パイロット抽出部31は、SPを抽出することができる。
パイロット抽出部31で抽出されたパイロット信号(P2シンボルのP2パイロット信号、及び、データシンボルのSP)の伝送シンボルは、推定部33(図12)に供給される。
推定部33は、パイロット抽出部31からのパイロット信号の伝送シンボルを用い、その伝送シンボルに対する伝送路特性を、上述したようにして推定し、その伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、時間方向補間部34に供給する。
ここで、データシンボルのSPは、図14に示したように、時間方向に、すき間を空けて配置されている。
このため、時間方向補間部34は、推定部33からの伝送路特性データが、データシンボルのSPの伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である場合には、推定部33からの伝送路特性データの時間方向の補間を行い、その補間後のデータである時間方向補間特性データとして出力する。
一方、P2シンボルのP2パイロット信号は、図15に示したように、時間方向には、すき間を空けずに配置される(あるいは、P2シンボルとしてOFDMシンボルは、T2フレームに、1つOFDMシンボルしか存在しない)ので、そのようなP2パイロット信号から推定される伝送路特性データについては、時間方向の補間を行う必要はない。
このため、時間方向補間部34は、推定部33からの伝送路特性データが、P2シンボルのP2パイロット信号の伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である場合には、推定部33からの伝送路特性データを、そのまま出力する。
以上のように、時間方向補間部34は、推定部33からの伝送路特性データの時間方向の補間を行って、その補間後のデータを出力する場合と、推定部33からの伝送路特性データの時間方向の補間を行わずに、その伝送路特性データをそのまま出力する場合とがあるが、時間方向補間部34が出力するデータは、どちらの場合も、周波数方向の補間の対象となるので、以下、補間前伝送路特性データともいう。
位置調整部52には、以上のような、時間方向補間部34が出力する補間前伝送路特性データが供給される。
フィルタリング位置設定部51は、補間フィルタ54のフィルタ中心(通過帯域の中心)の位置を合わせる、補間前伝送路特性データ上の位置であるフィルタリング位置を設定し、そのフィルタリング位置を表す位置情報を、位置調整部52に供給する。
フィルタリング位置設定部51は、複数のフィルタリング位置を設定し、その複数のフィルタリング位置それぞれと、各フィルタリング位置に対して、信号品質計算部57から供給される信号品質を対応付けて記憶する。
そして、フィルタリング位置設定部51は、信号品質が最良になるフィルタリング位置である最適位置を求め、その最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36に供給することで、(相対的に)、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置を制御する。
位置調整部52、アップサンプル部53、及び、補間フィルタ54は、図12の位置調整部36、アップサンプル部38、及び、補間フィルタ39と、それぞれ同様の処理を行う。
すなわち、位置調整部52は、時間方向補間部34からの補間前伝送路特性データの位相を、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に応じて調整し、位相の調整後の補間前伝送路特性データを、アップサンプル部53に供給する。
ここで、位置調整部52では、図12の位置調整部36と同様に、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に応じて、時間方向補間部34からの補間前伝送路特性データが、IQコンスタレーション上で回転され、これにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前伝送路特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、位置情報が表すフィルタリング位置に合わせられる。
アップサンプル部53は、図12のアップサンプル部38と同様に、位置調整部52からの補間前伝送路特性データのサンプル値どうしの間に、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数に等しい個数のゼロを補間し、その補間の結果得られる0値補間特性データを、補間フィルタ54に供給する。
ここで、位置調整部52からアップサンプル部53に供給される補間前伝送路特性データが、例えば、図14に示した、パイロットパターンPP1のデータシンボルのSPから得られた伝送路特性の推定値である場合には、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数Dx-1は、2個であるので、アップサンプル部53では、2個のゼロが補間される。
また、位置調整部52からアップサンプル部53に供給される補間前伝送路特性データが、例えば、図14に示した、パイロットパターンPP4のデータシンボルのSPから得られた伝送路特性の推定値である場合には、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数Dx-1は、11個であるので、アップサンプル部53では、11個のゼロが補間される。
さらに、位置調整部52からアップサンプル部53に供給される補間前伝送路特性データが、例えば、図15に示した、FFTサイズが8KのP2シンボルのP2パイロット信号から得られた伝送路特性の推定値である場合には、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数Dx-1は、2個であるので、アップサンプル部53では、2個のゼロが補間される。
補間フィルタ54は、図12の補間フィルタ39と同様のLPFであり、アップサンプル部53からの0値補間特性データをフィルタリングする。
補間フィルタ54によるフィルタリングにより、アップサンプル部53でのゼロの補間によって補間前伝送路特性データ(に0値を補間した0値補間特性データ)に生じる繰り返し成分が除去され、周波数方向の補間がされた伝送路特性、すなわち、OFDMシンボルの伝送シンボル(サブキャリア)のそれぞれに対する伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データが求められる。
以上のようにして補間フィルタ54で得られた周波数方向補間特性データは、OFDM信号の歪み補正に用いる伝送路特性データとして、伝送路歪み補正部56に供給される。
シンボル抽出部55は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号から、信号品質計算部57での信号品質の計算の対象となる伝送シンボル(以下、対象シンボルともいう)を抽出し、伝送路歪み補正部56に供給する。
ここで、P2シンボルを用いたフィルタ中心位置制御が行われる捕捉モードでは、シンボル抽出部55は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号としてのP2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルを、対象シンボルとして抽出する。
L1preの伝送シンボルは、P2シンボルの先頭側に詰める形で配置され、さらに、周波数インタリーブ(周波数方向の位置を入れ替えるインターリーブ)が施されている。
DVB-T.2では、周波数インタリーブでの伝送シンボルの入れ替え方が定められており、その入れ替え方に基づき、P2シンボルにおけるL1preの伝送シンボルの位置を特定することができる。
シンボル抽出部55は、周波数インタリーブでの伝送シンボルの入れ替え方に基づき、P2シンボルにおけるL1preの伝送シンボルの位置を特定し、P2シンボルから、L1preの伝送シンボルを、対象シンボルとして抽出する。
また、データシンボルを用いたフィルタ中心位置制御が行われる追従モードでは、シンボル抽出部55は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号としてのデータシンボルに含まれるCPの伝送シンボルを、対象シンボルとして抽出する。
CPの伝送シンボルは、データシンボルの、あらかじめ定められた特定の周波数の伝送シンボルであるから、シンボル抽出部55は、その特定の周波数の伝送シンボルであるCPの伝送シンボルを、対象シンボルとして、データシンボルから抽出する。
伝送路歪み補正部56は、シンボル抽出部55からの対象シンボルのOFDM周波数領域信号の歪み補正を、図12の伝送路歪み補正部20と同様にして行う。
すなわち、伝送路歪み補正部56は、シンボル抽出部55からの対象シンボルのOFDM周波数領域信号を、補間フィルタ54からの伝送路特性データで除算することで、対象シンボルの歪み補正を行い、対象シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号を、信号品質計算部57に供給する。
なお、伝送路歪み補正部56には、フィルタリング位置設定部51から位置情報も供給される。伝送路歪み補正部56では、図12の伝送路歪み補正部20と同様に、伝送路歪み補正部56からの位置情報に応じて、シンボル抽出部55からの対象シンボルのOFDM周波数領域信号の位相が調整(回転)され、その後、そのOFDM周波数領域信号が、伝送路特性推定部19からの伝送路特性データで除算されることで、OFDM周波数領域信号の歪み補正が行われる。
信号品質計算部57は、伝送路歪み補正部56からの対象シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質の計算を行い、その信号品質を、フィルタリング位置設定部51に供給する。
ここで、対象シンボルが、CPの伝送シンボルである場合には、CPの伝送シンボルの値は、既知の値であるので、その既知の値と、対象シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号との距離(差)等を、対象シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質として求めることができる。
一方、対象シンボルが、L1preの伝送シンボルである場合には、L1preの伝送シンボルは、CPのように既知の値ではないが、DVB-T.2では、BPSKのみが行われる伝送シンボル(BPSKシンボル)であり、硬判定によって、比較的信頼性の高い値(硬判定値)を求めることができる。
そこで、信号品質計算部57は、伝送路歪み補正部56からの対象シンボルとしてのL1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号(又は、歪み補正前のOFDM周波数領域信号)の硬判定を行い、その結果得られる硬判定値、つまり、IQコンスタレーション上の座標(I,Q)である(1,0)又は(-1,0)と、対象シンボルとしてのL1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号との距離等を、対象シンボルとしてのL1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質として求める。
[捕捉モードのフィルタ中心位置制御]
図17は、図16のフィルタ中心制御部111が行う、捕捉モードのフィルタ中心位置制御を説明するフローチャートである。
捕捉モードのフィルタ中心位置制御は、受信装置(図11)において、電源がオンにされ(又は、所定のチャンネル(放送局の番組)が選択され)、最初のT2フレームの受信、そのT2フレームに含まれるP1シンボルの検出、復号が行われた後、P2シンボルの復調が開始されると、開始される。
フィルタリング位置設定部51は、ステップS41において、補間フィルタ54のフィルタ中心(通過帯域の中心)の位置を合わせる、補間前伝送路特性データ上の位置であるフィルタリング位置の候補となる候補位置を、複数である所定数だけ設定して、処理は、ステップS42に進む。
ここで、フィルタリング位置設定部51では、例えば、P2シンボルのFFT開始位置を中心とする、補間前伝送路特性データ上の所定の範囲を等分する複数の位置等を、所定数の候補位置に設定することができる。
ステップS42では、フィルタリング位置設定部51は、所定数の候補位置のうちの、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置の1つを、フィルタリング位置に設定し、そのフィルタリング位置を表す位置情報を、位置調整部52に供給して、処理は、ステップS43に進む。
ステップS43では、位置調整部52は、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に応じて、時間方向補間部34からの補間前伝送路特性データを、IQコンスタレーション上で回転し、これにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前伝送路特性データ(に0値の補間を行った0値補間特性データ)のフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、位置情報が表すフィルタリング位置に合わせられる。
すなわち、いまの場合、パイロット抽出部31(図12)は、P2シンボルのP2パイロット信号の伝送シンボルを抽出し、推定部33(図12)に供給する。
推定部33は、パイロット抽出部31からのP2パイロット信号の伝送シンボルを用い、その伝送シンボルに対する伝送路特性を推定し、その伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、時間方向補間部34に供給する。
時間方向補間部34は、推定部33からのP2パイロット信号の伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、そのまま、補間前伝送路特性データとして出力する。
位置調整部52には、以上のような、時間方向補間部34が出力する補間前伝送路特性データとしての、P2パイロット信号の伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値(以下、補間前P2特性データともいう)が供給される。
そして、位置調整部52では、時間方向補間部34が出力する、補間前P2特性データが、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に従って回転され、これにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前P2特性データに0値を補間した0値補間特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、位置情報が表すフィルタリング位置に合わせられる。
位置調整部52において回転された補間前P2特性データは、アップサンプル部53に供給され、処理は、ステップS43からステップS44に進む。
ステップS44では、アップサンプル部53は、位置調整部52からの補間前P2特性データのサンプル値どうしの間に、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数に等しい個数のゼロを補間し、その補間の結果得られる0値補間特性データ(以下、0値補間P2特性データともいう)を、補間フィルタ54に供給して、処理は、ステップS45に進む。
ステップS45では、補間フィルタ54が、アップサンプル部53からの0値補間P2特性データをフィルタリングし、これにより、周波数方向の補間がされた伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データを求めて、伝送路歪み補正部56に供給する。
一方、ステップS46において、シンボル抽出部55は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号から、P2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルを、信号品質計算部57での信号品質の計算の対象となる伝送シンボルである対象シンボルとして抽出し、伝送路歪み補正部56に供給して、処理は、ステップS47に進む。
ステップS47では、伝送路歪み補正部56は、シンボル抽出部55からの対象シンボルとしてのL1preの伝送シンボルのOFDM周波数領域信号を、補間フィルタ54からの周波数方向補間特性データで除算することで、L1preの伝送シンボルの歪み補正を行い、そのL1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号を、信号品質計算部57に供給して、処理は、ステップS48に進む。
ステップS48では、信号品質計算部57は、伝送路歪み補正部56からのL1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質の計算を行い、その信号品質を、フィルタリング位置設定部51に供給して、処理は、ステップS49に進む。
すなわち、信号品質計算部57は、例えば、伝送路歪み補正部56から歪み補正後のOFDM周波数領域信号が供給される、1フレームのT2フレームの中の1個または複数のP2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルそれぞれについて、硬判定を行い、その結果得られる硬判定値と、L1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号との距離の総和を、L1preの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質として求めて、フィルタリング位置設定部51に供給する。
ステップS49において、フィルタリング位置設定部51は、フィルタリング位置(に設定されている候補位置)と、そのフィルタリング位置に対して、信号品質計算部57から供給された信号品質とを対応付けて一時記憶し、所定数の候補位置のすべてを、フィルタリング位置に設定したかどうかを判定する。
ステップS49において、所定数の候補位置のすべてが、まだ、フィルタリング位置に設定されていないと判定された場合、すなわち、所定数の候補位置の中に、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置がある場合、処理は、ステップS42に戻り、フィルタリング位置設定部51は、所定数の候補位置のうちの、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置の1つを、フィルタリング位置に設定する。
そして、フィルタリング位置設定部51は、フィルタリング位置を表す位置情報を、位置調整部52に供給して、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS49において、所定数の候補位置のすべてが、フィルタリング位置に設定されたと判定された場合、処理は、ステップS50に進み、フィルタリング位置設定部51は、最良の信号品質と対応付けられているフィルタリング位置を、最適位置に決定する。
さらに、フィルタリング位置設定部51は、最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36(図12)に供給し、これにより、(相対的に)、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置を制御する。
その後、次のT2フレームが受信されるのを待って、処理は、ステップS50からステップS41に戻り、以下、L1preに含まれるパイロットパターンが取得されるまで、同様の処理が繰り返される。
以上のように、捕捉モードのフィルタ中心位置制御では、フィルタ中心制御部111(図16)は、推定部33においてP2シンボル(プリアンブルシンボル)に含まれるP2パイロット信号の伝送シンボルを用いて求められる、P2パイロット信号の伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である補間前伝送路特性データ(に0値を補間した0値補間特性データ)を、フィルタ中心の位置となるフィルタリング位置を調整しながら補間フィルタ54でフィルタリングすることにより、周波数方向の補間がされた周波数方向補間特性データ(P2シンボルの各伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データ)を求める。
さらに、フィルタ中心制御部111は、周波数方向補間特性データを用いて、P2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルの歪み補正を行い、その歪み補正後のL1preの伝送シンボルの信号品質を求める。
そして、フィルタ中心制御部111は、信号品質を最良にするフィルタリング位置である最適位置を求め、これにより、(相対的に)、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置を、最適位置に合わせる(一致させる)ように制御する。
したがって、図11の受信装置では、OFDM信号の受信を開始した後、P2シンボルに含まれるL1を復号する前に、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置を、最適位置に合わせる制御が、P2シンボルを用いて行われるので、例えば、遅延広がりがTu/(2×Dx)を超えるような、遅延広がりが大のマルチパス(但し、遅延広がりがTu/Dx以下のマルチパス)であっても、そのマルチパスの全体を、補間フィルタ39の通過帯域に含めることができ、補間フィルタ39が出力する周波数方向補間特性データの精度の劣化を防止すること、すなわち、伝送路特性の推定精度の劣化を防止することができる。
その結果、図11の受信装置では、伝送路歪み補正部20において、P2シンボルについて、適切な歪み補正(受信装置で受信したOFDM信号のサブキャリアの振幅及び位相を、送信装置が送信したOFDM信号のサブキャリアの振幅及び位相により近くする歪み補正)が行われるので、P2シンボルに含まれるL1の復号に失敗することを防止すること(復号の失敗の可能性を、極めて低くすること)ができる。
なお、図17の捕捉モードのフィルタ中心位置制御では、P2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルを、信号品質の計算の対象とする対象シンボルとしたが、対象シンボルとしては、その他、P2シンボルに含まれる、L1pre及びP2パイロット信号の伝送シンボル以外の伝送シンボルを採用することが可能である。
但し、対象シンボルとして、P2シンボルに含まれる、L1pre及びP2パイロット信号の伝送シンボル以外の伝送シンボルを採用する場合には、その伝送シンボルの変調方式は、L1preの伝送シンボルのように、BPSKであるとは限らないため、何らかの方法で、対象シンボルとして採用する伝送シンボルの変調方式を認識する必要がある。
さらに、対象シンボルとして採用する伝送シンボルの変調方式が、BPSK以外の、QPSKや、16QM等の4値以上の多値変調(ディジタル変調)である場合には、対象シンボルの信号品質の計算において、硬判定によって求められる硬判定値の信頼性が、BPSKシンボルであるL1preの伝送シンボルを対象シンボルとする場合に比較して低下する。
また、図17の捕捉モードのフィルタ中心位置制御では、P2シンボルに含まれるP2パイロット信号の伝送シンボルのすべてを用いて、伝送路特性の推定を行い、P2シンボルに含まれるL1preの伝送シンボルを、対象シンボルとして、その対象シンボルであるL1preの伝送シンボルの歪み補正後の信号品質を求めたが、伝送路特性の推定は、P2シンボルに含まれるP2パイロット信号の伝送シンボルの一部を用いて行い、信号品質は、P2シンボルに含まれるP2パイロット信号の伝送シンボルの残りを対象シンボルとして求めることが可能である。
この場合、対象シンボルとなるP2パイロット信号の伝送シンボルは、値が既知であるため、硬判定をせずに、歪み補正後の対象シンボルの信号品質を求めることができる。
但し、伝送路特性の推定において、P2シンボルに含まれるP2パイロット信号の伝送シンボルの一部しか用いない場合には、補間フィルタ39及び54において補間する周波数方向の伝送シンボルの数が多くなるので、補間フィルタ39及び54の通過帯域が狭くなり(補間フィルタ39及び54の通過帯域を狭くする必要があり)、その結果、伝送路特性の推定を精度良く行うことができるマルチパスの遅延広がりも小になる。
[追従モードのフィルタ中心位置制御]
図18は、図16のフィルタ中心制御部111が行う、追従モードのフィルタ中心位置制御を説明するフローチャートである。
追従モードのフィルタ中心位置制御は、受信装置(図11)において、L1preに含まれる、データシンボルのパイロットパターンが認識(取得)されると、開始される。
すなわち、受信装置は、図17で説明したように、捕捉モードのフィルタ中心位置制御において、P2シンボルを用いて、精度の劣化を防止した伝送路特性の推定を行うが、捕捉モードのフィルタ中心位置制御によって、P2シンボルに含まれるL1の復号に成功し、L1preに含まれる、データシンボルのパイロットパターンを認識(取得)すると、捕捉モードのフィルタ中心位置制御(図17)を終了し、追従モードのフィルタ中心位置制御(図18)を開始する。
追従モードのフィルタ中心位置制御では、ステップS61において、フィルタリング位置設定部51は、図17のステップS41と同様に、フィルタリング位置の候補となる候補位置を、複数である所定数だけ設定して、処理は、ステップS62に進む。
ここで、ステップS61では、フィルタリング位置設定部51において、例えば、直前に終了した捕捉モードのフィルタ中心位置制御(図17)で得られた最適位置を中心とする、補間前伝送路特性データ上の所定の範囲を等分する複数の位置等を、所定数の候補位置に設定することができる。
ステップS62では、フィルタリング位置設定部51は、所定数の候補位置のうちの、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置の1つを、フィルタリング位置に設定し、そのフィルタリング位置を表す位置情報を、位置調整部52に供給して、処理は、ステップS63に進む。
ステップS63では、位置調整部52は、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に応じて、時間方向補間部34からの補間前伝送路特性データを、IQコンスタレーション上で回転し、これにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前伝送路特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、位置情報が表すフィルタリング位置に合わせられる。
すなわち、いまの場合、データシンボルのパイロットパターンが認識されているので、パイロット抽出部31(図12)は、パイロットパターンに従い、データシンボルのSPの伝送シンボルを抽出し、推定部33(図12)に供給する。
推定部33は、パイロット抽出部31からのSPの伝送シンボルを用い、その伝送シンボルに対する伝送路特性を推定し、その伝送路特性の推定値である伝送路特性データを、時間方向補間部34に供給する。
時間方向補間部34は、推定部33からのSPの伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値である伝送路特性データの時間方向の補間を行い、その補間の結果得られる時間方向補間特性データである補間前伝送路特性データ(以下、補間前SP特性データともいう)を出力する。
位置調整部52には、以上のような、時間方向補間部34が出力する補間前SP特性データ(SPの伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値の時間方向の補間を行ったデータ)が供給される。
そして、位置調整部52では、時間方向補間部34が出力する、補間前SP特性データが、フィルタリング位置設定部51からの位置情報に従って回転され、これにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前SP特性データに0値の補間を行った0値補間特性データのフィルタリング時のフィルタ中心の位置が、位置情報が表すフィルタリング位置に合わせられる。
位置調整部52において回転された補間前SP特性データは、アップサンプル部53に供給され、処理は、ステップS63からステップS64に進む。
ステップS64では、アップサンプル部53は、位置調整部52からの補間前SP特性データのサンプル値どうしの間に、周波数方向に見て、伝送路特性の推定値が求められていない伝送シンボルの個数に等しい個数のゼロを補間し、その補間の結果得られる0値補間特性データ(以下、0値補間SP特性データともいう)を、補間フィルタ54に供給して、処理は、ステップS65に進む。
ステップS65では、補間フィルタ54が、アップサンプル部53からの0値補間SP特性データをフィルタリングし、これにより、周波数方向の補間がされた伝送路特性の推定値である周波数方向補間特性データを求めて、伝送路歪み補正部56に供給する。
一方、ステップS66において、シンボル抽出部55は、FFT部18からのOFDM周波数領域信号から、データシンボルに含まれる、既知の値の、例えば、CPの伝送シンボルを、信号品質計算部57での信号品質の計算の対象となる伝送シンボルである対象シンボルとして抽出し、伝送路歪み補正部56に供給して、処理は、ステップS67に進む。
ステップS67では、伝送路歪み補正部56は、シンボル抽出部55からの対象シンボルとしてのCPの伝送シンボルのOFDM周波数領域信号を、補間フィルタ54からの周波数方向補間特性データで除算することで、CPの伝送シンボルの歪み補正を行い、そのCPの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号を、信号品質計算部57に供給して、処理は、ステップS68に進む。
ステップS68では、信号品質計算部57は、伝送路歪み補正部56からのCPの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質の計算を行い、その信号品質を、フィルタリング位置設定部51に供給して、処理は、ステップS69に進む。
すなわち、CPの伝送シンボルは、既知の値であるので、信号品質計算部57は、例えば、伝送路歪み補正部56から歪み補正後のOFDM周波数領域信号が供給される、1フレームのT2フレームの中の1個又は複数個のデータシンボル(OFDMシンボル)に含まれるCPの伝送シンボルそれぞれについて、そのCPの伝送シンボルの既知の値と、CPの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号との距離の総和を、CPの伝送シンボルの歪み補正後のOFDM周波数領域信号の信号品質として求めて、フィルタリング位置設定部51に供給する。
ステップS69において、フィルタリング位置設定部51は、フィルタリング位置(に設定されている候補位置)と、そのフィルタリング位置に対して、信号品質計算部57から供給された信号品質とを対応付けて一時記憶し、所定数の候補位置のすべてを、フィルタリング位置に設定したかどうかを判定する。
ステップS69において、所定数の候補位置のすべてが、まだ、フィルタリング位置に設定されていないと判定された場合、すなわち、所定数の候補位置の中に、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置がある場合、処理は、ステップS62に戻り、フィルタリング位置設定部51は、所定数の候補位置のうちの、まだ、フィルタリング位置に設定していない候補位置の1つを、フィルタリング位置に設定する。
そして、フィルタリング位置設定部51は、フィルタリング位置を表す位置情報を、位置調整部52に供給して、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS69において、所定数の候補位置のすべてが、フィルタリング位置に設定されたと判定された場合、処理は、ステップS70に進み、フィルタリング位置設定部51は、最良の信号品質と対応付けられているフィルタリング位置を、最適位置に決定する。
さらに、フィルタリング位置設定部51は、最適位置を表す最適位置情報を、位置調整部36(図12)に供給し、これにより、(相対的に)、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置を制御する。
その後、処理は、ステップS70からステップS61に戻り、次のデータシンボルについて、以下、同様の処理が繰り返される。
以上のように、追従モードのフィルタ中心位置制御では、データシンボルを用いて、補間フィルタ39(図12)のフィルタ中心の位置が制御される。
なお、図18の追従モードのフィルタ中心位置制御では、SPの伝送シンボルを用いて推定された、SPの伝送シンボルに対する伝送路特性の推定値(SP伝送路特性データ)の時間方向の補間を行い、その補間によって得られる補間前SP特性データの周波数方向に0値を補間することによって得られる0値補間SP特性データを、補間フィルタ54(及び補間フィルタ39)でのフィルタリングの対象としたが、補間フィルタ54では、SP伝送路特性データについて、時間方向の補間を行わず、かつ、周波数方向の0値の補間を行うことによって得られる0値補間SP特性データを、フィルタリングの対象とすることができる。
SP伝送路特性データについて、時間方向を行わず、かつ、周波数方向の0値の補間を行うことによって得られる0値補間SP特性データを、補間フィルタ54(及び補間フィルタ39)でのフィルタリングの対象とする場合には、補間フィルタ54において補間する周波数方向の伝送シンボルの数が多くなるので、補間フィルタ54の通過帯域が狭くなり(補間フィルタ54の通過帯域を狭くする必要があり)、その結果、伝送路特性の推定を精度良く行うことができるマルチパスの遅延広がりも小になる。
但し、この場合、伝送路特性の推定を精度良く行うことができるマルチパスの遅延広がりが小になるのと引き替えに、時間変動の大きな伝送路について、伝送路特性の推定精度を向上させることができる。
また、図18の追従モードのフィルタ中心位置制御では、CP以外の伝送シンボルを対象シンボルとして、信号品質を求めることができる。
すなわち、データシンボルの、あらかじめ決められた位置に、BPSKやQPSK等の、小さい値の多値変調の伝送シンボルを配置しておき、その伝送シンボルを対象シンボルとして、硬判定を行い、信号品質を求めることができる。
[受信システムの構成例]
図19は、図11の受信装置を適用した受信システムの第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図19において、受信システムは、取得部201、伝送路復号処理部202、及び、情報源復号処理部203から構成される。
取得部201は、例えば、テレビジョン放送の番組等のデータを、OFDMで変調したOFDM信号を取得する。
すなわち、例えば、図示せぬ放送局や、webサーバが、OFDM信号を送信するようになっており、取得部201は、そのOFDM信号を取得する。
ここで、OFDM信号が、例えば、放送局から、地上波や、衛星波、CATV(Cable Television)網等を介して放送されてくる場合には、取得部201は、チューナやSTB(Set Top Box)等で構成される。また、OFDM信号が、例えば、webサーバから、IPTV(Internet Protocol Television)のようにマルチキャストで送信されてくる場合には、取得部201は、例えば、NIC(Network Interface Card)等のネットワークI/F(Interface)で構成される。
取得部201は、例えば、地上ディジタル放送、衛星ディジタル放送、CATV網、インターネットその他のネットワーク等の、図示せぬ伝送路を介して、OFDM信号を取得し、伝送路復号処理部202に供給する。
伝送路復号処理部202は、取得部201が伝送路を介して取得したOFDM信号に対して、復調、及び、伝送路で生じる誤りを訂正する処理を少なくとも含む伝送路復号処理を施し、その結果得られる信号を、情報源復号処理部203に供給する。
すなわち、取得部201が伝送路を介して取得したOFDM信号は、伝送路で生じる誤りを訂正するための誤り訂正符号化が、少なくとも施されたOFDM信号であり、伝送路復号処理部202は、そのようなOFDM信号に対して、例えば、復調、及び、誤り訂正処理等の伝送路復号処理を施す。
ここで、誤り訂正符号化としては、例えば、LDPC符号化や、リードソロモン符号化等がある。
情報源復号処理部203は、伝送路復号処理が施された信号に対して、圧縮された情報を元の情報に伸張する処理を少なくとも含む情報源復号処理を施す。
すなわち、取得部201が伝送路を介して取得したOFDM信号には、情報としての画像や音声等のデータ量を少なくするために、情報を圧縮する圧縮符号化が施されていることがあり、その場合、情報源復号処理部203は、伝送路復号処理が施された信号に対して、圧縮された情報を元の情報に伸張する処理(伸張処理)等の情報源復号処理を施す。
なお、取得部201が伝送路を介して取得したOFDM信号に、圧縮符号化が施されていない場合には、情報源復号処理部203では、圧縮された情報を元の情報に伸張する処理は行われない。
ここで、伸張処理としては、例えば、MPEGデコード等がある。また、伝送路復号処理には、伸張処理の他、デスクランブル等が含まれることがある。
以上のように構成される受信システムでは、取得部201において、例えば、画像や音声等のデータに対して、MPEG符号化等の圧縮符号化が施され、さらに、LDPC符号化等の誤り訂正符号化が施されたOFDM信号が、伝送路を介して取得され、伝送路復号処理部202に供給される。
伝送路復号処理部202では、取得部201からのOFDM信号に対して、伝送路復号処理が施され、その結果得られる信号が、情報源復号処理部203に供給される。
情報源復号処理部203では、伝送路復号処理部202からの信号に対して、MPEGデコード等の情報源復号処理が施され、その結果得られる画像、又は音声が出力される。
以上のような図19の受信システムは、例えば、ディジタル放送としてのテレビジョン放送を受信するテレビチューナ等に適用することができる。
なお、取得部201、伝送路復号処理部202、及び、情報源復号処理部203は、それぞれ、1つの独立した装置(ハードウェア(IC(Integrated Circuit)等))、又はソフトウエアモジュール)として構成することが可能である。
また、取得部201、伝送路復号処理部202、及び、情報源復号処理部203については、取得部201と伝送路復号処理部202とのセットや、伝送路復号処理部202と情報源復号処理部203とのセット、取得部201、伝送路復号処理部202、及び、情報源復号処理部203のセットを、1つの独立した装置として構成することが可能である。
ここで、図11の受信装置は、取得部201及び伝送路復号処理部202に適用することができる。
図20は、図11の受信装置を適用した受信システムの第2実施の形態の構成例を示すブロック図である。
なお、図中、図19の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
図20の受信システムは、取得部201、伝送路復号処理部202、及び、情報源復号処理部203を有する点で、図19の場合と共通し、出力部211が新たに設けられている点で、図19の場合と相違する。
出力部211は、例えば、画像を表示する表示装置や、音声を出力するスピーカであり、情報源復号処理部203から出力される信号としての画像や音声等を出力する。すなわち、出力部211は、画像を表示し、あるいは、音声を出力する。
以上のような図20の受信システムは、例えば、ディジタル放送としてのテレビジョン放送を受信するTVや、ラジオ放送を受信するラジオ受信機等に適用することができる。
なお、取得部201において取得された信号に、圧縮符号化が施されていない場合には、伝送路復号処理部202が出力する信号が、情報源復号処理部203をバイパスして、出力部211に供給される。
図21は、図11の受信装置を適用した受信システムの第3実施の形態の構成例を示すブロック図である。
なお、図中、図19の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
図21の受信システムは、取得部201、及び、伝送路復号処理部202を有する点で、図19の場合と共通する。
但し、図21の受信システムは、情報源復号処理部203が設けられておらず、記録部221が新たに設けられている点で、図19の場合と相違する。
記録部221は、伝送路復号処理部202が出力する信号(例えば、MPEGのTSのTSパケット)を、光ディスクや、ハードディスク(磁気ディスク)、フラッシュメモリ等の記録(記憶)媒体に記録する(記憶させる)。
以上のような図21の受信システムは、テレビジョン放送を録画するレコーダ等に適用することができる。
なお、図21において、受信システムは、情報源復号処理部203を設けて構成し、情報源復号処理部203で、情報源復号処理が施された後の信号、すなわち、デコードによって得られる画像や音声を、記録部221で記録することができる。
[本発明を適用したコンピュータの説明]
次に、上述した一連の処理は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
そこで、図22は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示している。
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク305やROM303に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、プログラムは、リムーバブル記録媒体311に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体311は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。ここで、リムーバブル記録媒体311としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto Optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリ等がある。
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体311からコンピュータにインストールする他、通信網や放送網を介して、コンピュータにダウンロードし、内蔵するハードディスク305にインストールすることができる。すなわち、プログラムは、例えば、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することができる。
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)302を内蔵しており、CPU302には、バス301を介して、入出力インタフェース310が接続されている。
CPU302は、入出力インタフェース310を介して、ユーザによって、入力部307が操作等されることにより指令が入力されると、それに従って、ROM(Read Only Memory)303に格納されているプログラムを実行する。あるいは、CPU302は、ハードディスク305に格納されたプログラムを、RAM(Random Access Memory)304にロードして実行する。
これにより、CPU302は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU302は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース310を介して、出力部306から出力、あるいは、通信部308から送信、さらには、ハードディスク305に記録等させる。
なお、入力部307は、キーボードや、マウス、マイク等で構成される。また、出力部306は、LCD(Liquid Crystal Display)やスピーカ等で構成される。
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。
また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
すなわち、本発明は、DVB-T.2のOFDM信号を受信する場合の他、例えば、パイロットパターンを含むプリアンブル信号の伝送シンボル、及び、パイロット信号の伝送シンボルが、あらかじめ定められた位置に配置されたプリアンブルのOFDMシンボルであるプリアンブルシンボルと、データの伝送シンボルが配置され、かつ、パイロット信号の伝送シンボルが、あらかじめ定められた複数のパイロットパターンのうちの、プリアンブル信号に含まれるパイロットパターンに従って配置されたデータのOFDMシンボルであるデータシンボルとを含むOFDM信号等を受信する場合に適用可能である。
また、本実施の形態では、位置調整部52(図16)において、補間前伝送路特性データを、IQコンスタレーション上で回転することにより、相対的に、補間フィルタ54での、補間前伝送路特性データ(から得られる0値補間特性データ)のフィルタリング時のフィルタ中心の位置を制御するようにしたが、補間フィルタ54でのフィルタリング時のフィルタ中心の位置の制御は、その他、補間フィルタ54のフィルタ係数を変更することによって行うことが可能である。
補間フィルタ39のフィルタ中心の位置の制御も、同様である。
さらに、フィルタ中心位置制御(図17、図18)では、フィルタリング位置を、信号品質が向上するように、徐々に変更しながら、信号品質を求め、信号品質の極値が検出されたときのフィルタリング位置を、最適位置とすることが可能である。