JP5097529B2 - プロピレン・エチレン系樹脂組成物およびそれからなる容器 - Google Patents
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Description
プロピレン−エチレン共重合体(A)100重量部に対して、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、又はジテルペン酸類の金属塩から選ばれる1種以上の造核剤(B)0.05〜0.15重量部と、中和剤(C)0.01〜0.6重量部を含有し、tert−ブチルアルコール含量が0.5ppm以下、かつガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC 1 〜C 13 の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が1ppm以下であり、しかも0℃で測定される衝撃強度が4.6〜5.3kJ/m 3 であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
プロピレン−エチレン共重合体(A)100重量部に対して、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、又はジテルペン酸類の金属塩から選ばれる1種以上の造核剤(B)0.05〜0.15重量部と、中和剤(C)0.01〜0.6重量部を含有し、tert−ブチルアルコール含量が0.5ppm以下、かつガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC 1 〜C 13 の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が1ppm以下であり、しかも0℃で測定される衝撃強度が4.6〜5.3kJ/m 3 であることを特徴とする。
また、本発明の容器は、このプロピレン・エチレン系樹脂組成物を射出成形して得られるものである。以下に本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の各成分、製造方法、容器の特徴について詳細に説明する。
1.プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)
(1)構成
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、エチレン含量が1.5〜5.0質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(I)と、エチレン含量が15〜35質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(II)からなるプロピレン−エチレン共重合体(A)であって、プロピレン・エチレンランダム共重合体(I)の比率は、86〜93質量%の範囲であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体(II)の比率は、7〜14質量%である。
また、プロピレン・エチレンランダム共重合体(II)の比率が7質量%未満であると、耐衝撃性が不足し、容器に食品充填後、低温流通過程で落下による商品破損が増大する。一方、14質量%を越えると、剛性が不足し、容器をフィルムでシールした蓋をはがす際に、容器が変形して剥離が困難となる。
なお、プロピレン・エチレン共重合体(II)の比率は、後述のメタロセン系触媒を用いた重合時の第一反応器または第二反応器の重合温度、重合圧力、滞留時間、また原料モノマー組成の調製などの重合条件を調製して、設定することができる。
なお、重量平均分子量Mwが3,000以下の成分量は、プロピレン−エチレン共重合体の製造時に使用する触媒の選択、重合方法、組成物の製造方法等、各種工程で制御可能である。
(i)使用する分析装置
(a)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(b)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(a)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(b)サンプル濃度:4mg/mL
(c)注入量:0.4mL
(d)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(e)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:質量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(f)溶出時溶媒流速:1mL/分
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(a)検出器:MCT
(b)分解能:8cm−1
(c)測定間隔:0.2分(12秒)
(d)一測定当たりの積算回数:15回
(iv)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
(a)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(b)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
上記溶出分別された各溶出部分の分子量は、Mw(40)、Mw(100)、Mw(140)と定義される。全体の分子量分布は、3分別で得られたデータを合計し、計算で求めた。これより、後述の重量平均分子量が3,000以下の成分の含量(質量%)は、積算して求められる。
また、各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン・プロピレン・ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(質量%)に換算して求める。
Wc(質量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100…(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:質量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:質量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量(単位:質量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
式(I)の意味は、以下の通りである。すなわち、式(I)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみを含み、プロピレン単独重合体部分(PP)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEP含有量に寄与するが、フラクション1にはEP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30質量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレン含有量(B40)が40質量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75質量%)はEP由来、1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の質量%(W40)からEPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
(a)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA
40、A100とする(単位はいずれも質量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(b)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は質量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB100=100と定義する。B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとEPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができる。すなわち、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量である。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB
100=100として解析を行う。
(c)上記の理由から下記式(II)に従い、EPの比率(Wc)を求める。
Wc(質量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100…(II)
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないEP含有量(質量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つEP含有量(質量%)を示す。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量をB40とする。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和をフラクション1の平均エチレン含有量A40とする。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、EPの大部分、もしくはプロピレン単独重合体部分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、EP中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140にはEP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることから、EPの比率やEPのエチレン含有量の計算からは排除する。
EPのエチレン含有量(質量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc…(III)
(ただし、Wcは先に求めたEPの比率(質量%)である。)
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の製造は、メタロセン錯体と有機アルミニウムオキシ化合物、ルイス酸、アニオン性化合物あるいは粘土鉱物からなる、いわゆるメタロセン触媒が用いられる。
(ii)珪素架橋としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル、4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(2−エチル、4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル、4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル、4−フェナントリル、インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル、4−(4−tertブチル、3−クロロ、フェニル)アズレニル)ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
(iii)ゲルマン架橋としては、上記の(ii)珪素架橋のシリレンをゲルミレンに置き換えた化合物が用いられる.また、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物は、そのまま、好適な化合物として例示される。さらに、例示化合物のジクロリドは、その他のハライドや、メチル基、イソブチル基、フェニル基、ヒドリド基、ジメチルアミド、ジエチルアミド基等に置き換えた化合物も,好適化合物として例示可能である。
非限定的な(i)有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウム、テトライソブチルメチルアルミニウムビスペンタフルオロフェノキシド、等があげられる。(ii)ルイス酸としては、BR3(式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えば、トルフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(p−トリル)ボラン、トリス(o−トリル)ボラン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボランなどが挙げられ、また、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、等の無機化合物も例示される。(iii)イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボレートなどが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレートなどが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、等が例示される。(iv)粘土鉱物としては,モンモリロナイト、マイカ、テニオライト、ヘクトライト、あるいはそれらの酸・塩基処理した変性体、その他の無機酸化物との複合体、等が例示される。
上記に示した重合は、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよく、第一段階の重合は気相又は液相中、特には不活性溶媒を用いないプロピレンバルク液相中、あるいは気相中で実施するのが好ましく、また、第二段階の重合は気相中で実施するのが好ましく、各段階の滞留時間は各々0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間とする。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)と共に使用する造核剤(B)は、一般な各種の公知の造核剤が使用可能である。
これらのうち,好ましい造核剤は、有機燐酸エステル金属塩、有機ジカルボン酸金属塩であり、更に好ましくは、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、のような架橋した置換芳香族基を有する燐酸エステル金属塩、あるいは、2−シクロヘキサンジカルボン酸ナトリウム、1,2−ノルボルナンジカルボン酸ナトリウム、1,2−ノルボルナンジカルボン酸マグネシウムのような脂環式炭化水素ジカルボン酸金属塩があげられる。金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩等が例示され、より好ましくはナトリウム、カリウム等の1族金属である。
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体組成物には、中和剤(C)を含有させる。
その他の中和剤としては、ケイ酸アルミニウムカルシウム、亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の金属の酸化物及び水酸化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等を挙げることができる。金属の酸化物及び水酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
[LiAl2(OH)6]2X・mH2O
(式中において、Xは、CO3、SO4またはHPO4であり、mは0〜3の数である。)好適に使用されるリチウムとアルミニウムとの複合水酸化物塩を例示すると、例えば
[LiAl2(OH)6]2CO3・1.6H2O
[LiAl2(OH)6]2SO4・1.2H2O
[LiAl2(OH)6]2HPO4・1.4H2O
などを挙げることができる。かかるリチウムとアルミニウムの複合水酸化物塩は、上記の各種の造核剤に対して効果的に作用し、プロピレン・エチレン系樹脂組成物の剛性を高める。中和剤(C)の使用量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.6重量部、より好ましくは0.02〜0.5重量部、特に好ましくは0.04〜0.15重量部である。中和剤(C)の配合量が0.01重量部未満では、耐酸化発熱性が劣り、0.6重量部を超えると効果が飽和しコストアップになる上、過剰な分が成形加工時に金型表面に移行して汚染したり、容器等の内容物へ移行して風味を損なったりして好ましくない。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物には、さらに、必要に応じて、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の付加的成分(任意成分)を添加することができる。
1.プロピレン・エチレン系樹脂組成物の製造
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、上記構成成分(A)、成分(B)、任意成分(C)、およびその他の任意成分を通常の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造されるが、これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、以下の特性(3)、(4)、(6)を満たし、さらに必要に応じて、特性(1)、(2)、(5)を満たす必要がある。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFRCは、JIS K−7210−1995(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定され、5〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分である。MFRCが前記範囲未満であると成形性が不十分となる傾向があり好ましくない。また、過剰に高くなると、力学物性が低下しもろくなる。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量は、1質量%以下、好ましくは0.7質量%以下である。
重量平均分子量が3,000以下の成分は、成形時の揮発性成分となり、金型へのブリード付着物や、ガス発生、外観不良、臭気悪化等を引き起こす。また、金型への付着物除去のため、生産を中断することとなり、生産性を低下させる。特に、ハイサイクル薄肉射出容器の場合、揮発性分によるガス発生は、金型内で急速なガスの断熱圧縮による発熱となり、成形時の焼けトラブルを引き起こす。
なお、重量平均分子量が3,000以下の成分量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造時に使用する触媒の選択,重合方法、組成物の製造方法等、各種の工程で制御可能である。
ここで、重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用し、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。その総量中から重量平均分子量が3,000以下となる部分を計算により積算して求める値である。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物のtert−ブチルアルコール含量は、1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下である。tert−ブチルアルコール含量が1ppmを超えると臭気が悪くなり、食品容器の材料としては敬遠される。なお、この化合物が残存する理由は、明確ではないが、各種添加剤の分解や、組成物あるいは容器製造時、酸素共存で熱酸化劣化により生成する。従って、成形法や、成分(B)、成分(C)、任意成分の量や選択の各種工程で制御が可能である。その有効な手段は、酸素不存在下での組成物製造、溶融成形、局所的高温下での成形の排除等である。ここで、tert−ブチルアルコール含量の測定は、後述の方法による。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物中のガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和は、1ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5ppm以下である。
造粒、押出、射出成形等の加工工程において、有酸素環境による樹脂劣化によってカルボン酸等の酸素含有化合物が生成し、臭気悪化の原因となる。この発生を抑制するには酸化防止剤の強化があるが、過剰配合となると、容器から内容物へ添加剤が移行し、臭い、味の変化を引き起こす。これを防止するために、成形機を窒素雰囲気下に置く方法や、低温成形等が提案されているが、完全な窒素雰囲気下にすることが困難かつ、生産効率向上に足枷となる。また、低温成形では、樹脂の溶融流動性が著しく低下し、充填不足、流動むら等の外観不良を引き起こす。本発明の樹脂組成物を使用した場合、射出成形による容器、特に薄肉容器において、良流動性であるが故に成形加工温度を低下せしめ、かつハイサイクルでの生産継続が可能であるため、上記のような酸素含有物生成を抑制できる。
(i)測定および評価概要
組成物あるいは成形容器を所定の重量切り出し200℃で加熱し、そこで発生する揮発成分を−150℃で捕集した後、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で各揮発成分の分離・検出および同定を行う。
各揮発成分の定量はn−エイコサンを標準とした値で計算する。ここで、対象揮発成分は、炭素数13までの飽和直鎖脂肪族カルボン酸およびtert−ブタノールである。
(a)加熱追い出し(ダイナミックヘッドスペース)装置:ゲステル社製 TDS−A
試料0.3±0.03gを加熱追い出し管に充填し、ヘリウムを20ml/minの流量で通気させながら、200℃で30分間加熱および揮発成分を熱抽出する。ここで、試料から発生した揮発成分は、加熱中、ガスクロマトグラフに用いたカラム先端を液体窒素で−150℃に冷却することにより捕集する。
また、捕集した成分は、捕集カラム部分を12℃/sの速度で250℃に加熱することにより脱着して分離カラムに導入する。
(b)ガスクロマトグラフ(GC):アジレント社製 HP6890
用いたカラムは、アジレント社製のHP−INNO Wax(長さ:60m、内径:0.25mm、液相膜厚:0.5μm)である。
カラムの昇温条件は、40℃×15min〜5℃/min〜250℃×30minであり、カラム流量は1.4ml/minである。
(c)マススペクトロメーター(MS):アジレント社製 5973
測定成分のイオン化には電子衝撃(EI)法を用いる。
(a)1−2の測定によって得られたクロマトグラムから、下記に示す特定質量(m/z)イオンを用いて各成分のピーク面積(A)を算出する。
(a−1)飽和直鎖脂肪族カルボン酸:ギ酸はm/z46、プロピオン酸はm/z74、これ以外の物質はm/z60
(a−2)tert−ブタノール:m/z59
(b)既知量のn−エイコサンを試料と同条件で測定し、マススペクトロメーターの感度[n−エイコサンのトータルイオン面積]/[n−エイコサンの注入重量](B)を求める。
(c)(a)の各成分の面積を(b)の感度および測定に供した試料重量でそれぞれ除することにより、各成分のn−エイコサン換算発生濃度(C)を計算する。
(d)各成分の標準物質のGC/MS測定を行ない、各成分の[特定質量イオン]/[トータルイオン]の強度比(D)を算出する。
(e)(c)の特定質量イオンを用いたn−エイコサン換算濃度を(d)の強度比で除して(C/D)、トータルイオン強度におけるn−エイコサン換算発生濃度(E)を算出す
る。
規格番号:JIS K−7171(ISO178)準拠
試験機:精密万能試験機オートグラフAG−20kNG(島津製作所製)
試験片の採取方向:流れ方向
試験片の形状:厚み2.0mm 幅25.0mm 長さ40.0mm
試験片の作成方法:射出成形平板を上記寸法に打ち抜き
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間以上放置
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
試験片の数:5
支点間距離:32.0mm
試験速度:1.0mm/min
試験機:サーボパルサ高速衝撃試験機 EHF−2H−20L形−恒温槽付
試験片の採取方向:流れ方向
試験片の形状:JIS K7162−5A形
試験片の作成方法:射出成形平板を上記形状に打ち抜き
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間以上放置
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
試験片の数:5
引張速度:2m/sec
測定温度:23℃、および0℃(0℃の場合は恒温槽を0℃に設定し、試料をセットして恒温槽の温度が設定温度±1℃に維持された状態で10分以上保持してから測定を行う)
1.製造
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を用いた射出成形体容器は、その成形加工法によって特に限定されず、通常の射出成形法、射出圧縮成形法又は射出発泡成形法を用いることが可能である。
例えば、型締め力50〜300tonの中〜小型射出成形機において、直径50〜150mm、容量30〜500cc、平均肉厚0.2〜2mmのカップ状容器を、成形温度150〜250℃、射出圧力20〜200MPa等の条件で成形することができる。
本発明の射出成形体(容器)は、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和は、1ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5ppm以下である。
容器中のC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸は、押出、射出成形等の加工工程において、有酸素環境による樹脂劣化によってカルボン酸等の酸素含有化合物が生成し、臭気悪化の原因となる。この発生を抑制するには酸化防止剤の強化があるが、過剰配合となると、容器から内容物へ添加剤が移行し、臭い、味の変化を引き起こす。これを防止するために、成形機を窒素雰囲気下に置く方法や、低温成形等が提案されているが、完全な窒素雰囲気下にすることが困難かつ、生産効率向上に足枷となる。また、低温成形では、樹脂の溶融流動性が著しく低下し、充填不足、流動むら等の外観不良を引き起こす。本発明の樹脂組成物を使用した場合、射出成形による容器、特に薄肉容器において、良流動性であるが故に成形加工温度を低下せしめ、かつハイサイクルでの生産継続が可能であるため、上記のような酸素含有物生成を抑制できる。
ここで、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の測定は、前述の方法による。
また、容器中のtert−ブタノール含量は、1ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5ppm以下である。tert−ブタノール含量が1ppmを超えると容器の臭気が悪くなり、食品容器として敬遠される。なお、この化合物が残存する理由は、明確ではないが、各種添加剤の分解や、組成物あるいは容器製造時、酸素共存で熱酸化劣化により生成する。従って、成形法や、成分(B)、成分(C)、任意成分の量や選択の各種工程で制御が可能である。その有効な手段は、酸素不存在下での組成物製造、溶融成形、局所的高温下での成形の排除等である。ここで、tert−ブタノール含量の測定は、前述の方法による。
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、上記の性能を発現できる素材であることから、種々の成形品に成形して用いることができるが、中でもプリン、ヨーグルト等のデザート容器、もずく容器、ジュース容器等食品を入れる容器が好ましい。
1.物性、評価方法
(1)臭気:射出成形で得られたカップ状容器を数mm角にカットし、約80gを容量300mLの清潔な共栓付き三角フラスコに封入し,80℃に昇温・保持された熱風循環乾燥機内で2時間加熱した後,パネラーによる官能評価を行った。パネラーは事前テストにより選定された5名とした。臭気の判定基準は,下記の6段階とし,5人の平均値で表した。
0級 無臭
1級 やっと感じられる
2級 感じられる(臭いの質が分かる)
3級 かなり臭う(楽に感じる)
4級 強く臭う
5級 激しく臭う(耐えられないほど強烈)
(3)落下衝撃:射出成形で得られたカップ状容器に水を約180ml(200mlの90%)入れ、口部を食品包装用ラップフィルムと輪ゴムでシールし、5℃に調整した低温恒温槽で2時間状態調整した。その後、一つずつ容器を取り出して、素早く落下させ、破壊数が50%の確率になる高さを求めた。落下に供した容器は一度限りの使用として、繰り返し使用はしない。
1点:0〜5個/容器 (ほとんど目立たない)
2点:5〜20個/容器 (わずかに目立つ)
3点:20個/容器 以上 (非常に目立つ)
1点:反りがほとんど目立たない
2点:反りがわずかに目立つ
3点:反りが非常に目立つ
1点:浮き上がりがほとんど目立たない
2点:浮き上がりがわずかに目立つ
3点:浮き上がりが非常に目立つ
1点:ほとんど目立たない
2点:わずかに目立つ
3点:非常に目立つ
規格番号:JIS K−7136(ISO14782)JIS K−7361−1準拠
測定機:曇り度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)
試験片厚み:2mm
試験片の作成方法:射出成形平板
状態の調節:成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間放置
試験片の数:3
透明性(ヘイズ)は、35%以下であれば合格、30%以下であることがより好ましい。
(1)プロピレン−エチレン共重合体
下記の製造例1−12で得られたプロピレン−エチレン共重合体(それぞれ、PP−1〜PP−12と示す)を用いた。各重合体の特性を表1に示す。
製造例1(プロピレン−エチレン共重合体の製造法)
予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=18μm 粒度分布=10〜40μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、4.0を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は675gであった。
(珪酸塩の乾燥)化学処理した珪酸塩を、1Lのフラスコにいれ、窒素気流下で200℃に加熱したオイルバスを用いて加熱した。1時間そのままの状態で保持した後、窒素の流通を停止し、フラスコ内を真空ポンプで減圧して減圧乾燥を実施した。オイルバスの温度は200℃のままで、2時間乾燥を継続した。その後、オイルバスからフラスコを取り出し、窒素で常圧に戻した。乾燥珪酸塩を得た。
(触媒の調製)内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に乾燥珪酸塩20gを導入し、混合ヘプタン116ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを200mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)0.96mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕218mg(0.3mM)と混合ヘプタン87mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)3.31mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調製した。
(予備重合/洗浄)続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに、先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを240mlデカントした。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液8.5ml添加した後に、40℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.1g含む予備重合触媒が得られた。
(第一工程)
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.8ml(2.0mmol)を加え、エチレン26g、水素120ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、60℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を60℃に維持して60分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、エチレン含有量3.1質量%、MFR26.5g/10分であった。
(第二工程)
温度を40℃に制御し、水素を30ml導入し、さらに比例制御装置を使用し、エチレンとプロピレンとの混合ガスに対するエチレンのガス組成が40mol%になるように調整して導入した。昇温し、温度が65℃、圧力が1.8MPaとなったのち、第二工程の重合を開始した。30分間重合を継続した。その間、圧力が1.8MPaを下回らないように13mol%のガス組成のエチレン、プロピレン混合ガスを導入した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。残存ガスをパージした。回収したポリマーは60℃減圧乾燥機にて乾燥した。収量は317g、触媒効率は16500g/gであった。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、第二工程で生成したポリマーのエチレン含有量16.2質量%であった。全体のプロピレン−エチレン共重合体のMFRは26.4g/10分であった。
製造例1と同様の触媒を用いて、プロピレン−エチレン共重合体の製造を行った。重合条件および重合結果を表1に示す。
チーグラー・ナッタ系触媒を用いて、プロピレン−エチレン共重合体の製造を行った。
(固体成分触媒の製造) 窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12000ミリリットルを導入して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。ついで、n−ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、四塩化珪素0.6リットル、n−ヘプタン8リットルを導入し固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.55重量パーセント含まれていた。
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn−ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n−ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し2時間反応させ、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒390gを得た。
得られた固体成分触媒中には、チタンが1.35質量%含まれていた。
(第一工程)
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリエチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液3.3ml(4.0mmol)を加え、水素1000ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、65℃に昇温しその温度を維持した。上記の固体重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として15mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持して60分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、MFRは25.5g/10分であった。
(第二工程)
温度を40℃に制御し、水素を500ml導入し、さらに比例制御装置を使用し、エチレンとプロピレンとの混合ガスに対するエチレンのガス組成が30mol%になるように調整して導入した。昇温し、温度が65℃、圧力が1.8MPaとなったのち、第二工程の重合を開始した。30分間重合を継続した。その間、圧力が1.8MPaを下回らないように30mol%のガス組成のエチレン、プロピレン混合ガスを導入した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。残存ガスをパージした。回収したポリマーは60℃減圧乾燥機にて乾燥した。収量は450g、触媒効率は31000g/gであった。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、第二工程で生成したポリマーのエチレン含有量16質量%であった。全体のプロピレン−エチレン共重合体のMFRは29g/10分であった。
(i)造核剤(B−1):有機燐酸エステル金属塩(旭電化工業社;NA11)
(ii)造核剤(B−2):有機ジカルボン酸金属塩(Milliken chemical社製;HPN−68)
(iii)造核剤(B−3):タルク(林化成社製;ミクロホワイト#5000S)
(iv)造核剤(B−4):ソルビトール(三井化学ファイン社製;NC−6)
(1)樹脂組成物の製造
プロピレン−エチレン共重合体(A)として、製造例1で得られたパウダー(PP−1)100重量部に対して、造核剤(B−1)0.15重量部、中和剤のステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤のペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバスペシャルティケミカルズ社製;以下RA1010と略す。)0.02重量部、リン系酸化防止剤のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファィト(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製;以下RA168と略す。)0.02重量部、スリップ剤としてオレイン酸アミド0.15重量部を添加し、スーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm,押出量15kg/hで造粒し、プロピレン−エチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
得られたプロピレン−エチレン系樹脂組成物のペレットの物性等を表2に示す。
(2)射出成形による容器の製造
上記で得られた樹脂組成物ペレット試料を東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力80Mpa、充填時間1秒±0.2秒で成形できるように成形温度170℃〜280℃で調整し、金型冷却水温度40℃、成形サイクル15秒で容量200ml、肉厚0.7mmのカップ状容器を成形した。
また、同じく東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力60MPa、成形温度230℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル30秒で1辺120mm、肉厚2mmのシートを成形した。
また、同じく東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力60MPa、2次圧力50MPa、成形温度230℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル10秒で長辺110mm、短辺70mm、高さ45mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形した。
射出成形したカップ状容器、箱型容器及びシートを、恒温恒湿状態(温度23±2℃、湿度50±5%)で48時間状態調整し、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
成分(A)として、製造例2で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−2)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。
成分(A)として、製造例3で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−3)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。
成分(A)として、製造例4で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−4)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。
成分(A)として、製造例5で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−5)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。
造核剤(成分(B))として、造核剤(B−2)、造核剤(B−3),造核剤(B−4)を表2に記載の量を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
造核剤(B−1)を添加しない以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例6で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−6)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。
成分(A)として製造例7で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−7)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例8で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−8)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例9で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−9)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例10で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−10)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例11で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−11)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
成分(A)として製造例12で得られたプロピレン−エチレン共重合体(PP−12)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
これに対して、比較例1では造核剤(B)を添加しないためにIzod衝撃値、落下衝撃、ヘイズが悪化している。比較例2では、プロピレン−エチレン共重合体(II)を含まないため、Izod衝撃値およびスタック性がやや悪く、比較例3では、プロピレン−エチレン共重合体(I)のエチレン含量が0であるため、容器の外観、反り、スタック性、ヘイズが悪化している。
また、比較例3〜7は、プロピレン−エチレン共重合体(I)(II)の比率、エチレン含量のいずれかが本発明の範囲から外れるので、Izod衝撃値、容器の外観、反り、スタック性、ヘイズのいずれかが悪化していることが分かる。また、比較例8は、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて得られたプロピレン−エチレン共重合体で、Mw3000以下の含量、およびt−ブタノールの含量が多く、容器の反り、スタック性、金属汚染の値が悪化している。
Claims (3)
- メタロセン系触媒を用いて、逐次重合することで得られた、エチレン含量が1.5〜5.0質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(I)86〜93質量%と、エチレン含量が15〜35質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(II)7〜14質量%からなるプロピレン・エチレン系樹脂組成物であって、
プロピレン−エチレン共重合体(A)100重量部に対して、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、又はジテルペン酸類の金属塩から選ばれる1種以上の造核剤(B)0.05〜0.15重量部と、中和剤(C)0.01〜0.6重量部を含有し、tert−ブチルアルコール含量が0.5ppm以下、かつガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC 1 〜C 13 の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が1ppm以下であり、しかも0℃で測定される衝撃強度が4.6〜5.3kJ/m 3 であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物。 - プロピレン−エチレン共重合体(A)のMFR(230℃、荷重2.16kg)が5〜100g/10分であり、かつ重量平均分子量(Mw)3,000以下である成分の総含量が1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる容器。
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