以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1を参照して、回転自走式内視鏡システムの構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システム1の構成を説明する概略図である。
この回転自走式内視鏡システム(以下では適宜、単に内視鏡システムと略称する。)1は、回転自走式内視鏡(以下では適宜、単に内視鏡と略称する。)2と、制御装置3と、モニタ4と、フットスイッチ5と、プリンタ6と、を備えている。
内視鏡2は、手元側の操作部11から細長の挿入部12を延設している。この挿入部12は、被検体内に実際に挿入され得る挿入部本体13と、この挿入部本体13をサポートするための後述するようなその他の各部と、を含んで構成されている。そして、挿入部12は、操作部11に対して着脱自在となっていて、例えば、1回の使用毎に廃棄されるようなディスポーザブルなものとして構成されている。
挿入部本体13の外周側には、外周面に螺旋状凸部が形成された回転筒体14が、挿入軸周りに回動可能となるように設けられている。
挿入部本体13におけるこの回転筒体14の先端側には、自在に湾曲可能な湾曲部15が設けられていて、回転筒体14の先端がこの湾曲部15の基端側の当付部に当接して、回転により発生した推進力を伝達するようになっている。
この湾曲部15に連設された挿入部本体13の最先端側には、先端硬性部16が設けられている。この先端硬性部16には、撮像/照明部や、送気ノズル、送水ノズル、吸引口などが配設されている。
このような挿入部本体13は、未使用時および使用終了後に、その大部分が挿入部12を構成する収納ケース17内に収納されるようになっている。この収納ケース17は、例えば平板に近い直方体形状の箱体をなしており、何れの主面を天地として載置することも可能となっていて、各主面の四隅には載置用の脚部17aが設けられている。この収納ケース17は、内側の高さが、回転筒体14の直径よりもやや大きく、回転筒体14の直径の2倍よりも小さくなるように構成されている。これにより、収納ケース17は、回転筒体14に加わる回転力によって挿入部本体13が捻れてのたうつのを防止するようになっている。すなわち、挿入部本体13が捻れてのたうつと、回転力が捻れに費やされてしまい、推進されるための力として十分に伝達されなくなってしまうためである。
同様の理由により、収納ケース17と操作部11との間は挿入部12を構成する操作部側案内管18により、収納ケース17から先端側の所定長さ分は挿入部12を構成する先端側案内管19により、それぞれ捻れてのたうつのを防止されながら、保護されるようになっている。
先端側案内管19よりもさらに先端側には、挿入部本体13の外周に遊嵌されるように、被検体内へ挿入する際に用いられる挿入補助具20が設けられている。なお、挿入補助具20の内部には、抵抗力発生機構が設けられている。抵抗力発生機構の構成は、後に詳述する。この回転自走式内視鏡システム1は、例えば、経肛門により大腸等へ内視鏡2を自動挿入する際に用いることが考えられるが、挿入補助具20は、このときに肛門部を保護しながら挿入を円滑に行うことができるようにするためのものである。
また、挿入部12の手元側には、操作部11の後述するモータボックス32と接続するためのコネクタ部21が設けられている。
一方、操作部11は、各種の操作釦等が頭部31aに設けられたグリップ部31と、このグリップ部31の先端側に連設されたモータボックス32と、を有している。
モータボックス32は、回転筒体14を駆動するための回転駆動部としてのモータ81(図2参照)を内蔵するものであり、上述した湾曲部15を湾曲させるための図示しない湾曲ワイヤも、このモータボックス32とコネクタ部21との接続を介して、湾曲ノブ側の駆動機構へ接続されるようになっている。
その他、撮像/照明部への信号線等も、このモータボックス32とコネクタ部21との接続を介して、制御装置3側への信号線と電気的に接続されるようになっている。
掌で把持するためのグリップ部31の頭部31aには、送気や送水を行うための送気/送水ボタン33、吸引を行うための吸引ボタン34、静止画像を撮像するための撮像ボタン35、観察画像中における上(U)または下(D)方向へ上述した湾曲部15を湾曲させるためのU/D用湾曲ノブ36、観察画像中における右(R)または左(L)方向へ該湾曲部15を湾曲させるためのR/L用湾曲ノブ37、回転筒体14の前進/停止/後退を操作するための回転操作レバー38などが設けられている。
このグリップ部31の頭部31aからは、撮像/照明部と制御装置3との信号の伝達を行うための電気ケーブル39が延設されており、その先端側に設けられたコネクタ39aが、制御装置3のコネクタ受けに接続されるようになっている。
また、挿入部12の手元側のコネクタ部21からは、挿入部本体13内に配設されている送気チューブ41、送水チューブ42、吸引チューブ43が延出されており、これらのチューブの基端側にコネクタ44が設けられている。
このコネクタ44は、送気中継チューブ46、送水中継チューブ47、吸引中継チューブ48の先端側に設けられたコネクタ45と着脱可能に接続されるようになっており、接続時には、送気チューブ41と送気中継チューブ46とが、送水チューブ42と送水中継チューブ47とが、吸引チューブ43と吸引中継チューブ48とが、それぞれ連通される。
なお、上述したような送気チューブ41,送水チューブ42,吸引チューブ43、および送気中継チューブ46、送水中継チューブ47、吸引中継チューブ48も、ディスポーザブルな挿入部12の一部である。
これらの送気中継チューブ46、送水中継チューブ47、および吸引中継チューブ48は、電気ケーブル39に対して、1つまたは複数(図1に示す例では3つ)の仮固定具51を用いて着脱可能に固定されるようになっている。そして、送気中継チューブ46、送水中継チューブ47、および吸引中継チューブ48が、電気ケーブル39に対して固定されることにより、各々が垂れ下がる等がなくなって、内視鏡2の取り回しが容易になる。
上述したような各中継チューブ46〜48は、基端側を制御装置3に接続されるようになっている。ここに、制御装置3は、撮像/照明部の制御や、送気/送水/吸引の制御、駆動制御部としてモータ81の制御などを行うためのものであり、側面部に、送気/送水に用いられる送水タンク53が取り付けられるようになっている。
より詳しくは、吸引中継チューブ48は、基端側が制御装置3の挿入部側吸引接続部66に接続されるようになっている。なお、この挿入部側吸引接続部66は、制御装置3の表面に固定された挿入部側吸引接続部保持部材65に対して着脱可能に取り付けられている。また、送気中継チューブ46および送水中継チューブ47の基端側には送気送水口金49が設けられており、この送気送水口金49が、送気送水コネクタ52を介して、制御装置3に設けられた送気送水コネクタ接続部67に接続されるようになっている。ここに、送気送水コネクタ52は、送気送水コネクタ接続部67に接続されるものであって、さらに、上述した送気送水口金49と、送水タンク53から延設される送水管54と、を接続するためのものであり、単独の部材として構成されている。
上述した挿入部側吸引接続部66は、挿入部側吸引チューブ68の一端側に設けられている。この挿入部側吸引チューブ68は、制御装置3の正面に設けられたピンチバルブ69に挟み込まれた後に、分岐部71に接続されている。この分岐部71からは、リーク側チューブ72が分岐されており、このリーク側チューブ72は、先端に設けられた接続部73を介して、制御装置3内のリーク管路へ接続されている。
上述した挿入部側吸引接続部66、挿入部側吸引チューブ68、分岐部71、リーク側チューブ72、接続部73は、予め組み立てられた一体的な部材として構成されており、これらの内の分岐部71が、制御装置3に設けられた係止部75に係止され、着脱可能に固定されるようになっている。
そして、分岐部71には吸引器接続口金が設けられており、吸引器7から延設される吸引器側吸引チューブ7aの先端が接続されるようになっている。この吸引器7は、例えば病院等に備え付けのものを用いることが可能である。ただし、回転自走式内視鏡システム1自体に、システム構成の一部として吸引器7を設けるようにしてももちろん構わない。
制御装置3には、電源スイッチ61や、電源状態を表示するLED62、各種の操作等を行うためのフロントパネル63などが設けられている。ここに、フロントパネル63は、スタンバイスイッチや回転筒体14の回転を制御するためのスイッチ等を含んで構成されている。
フットスイッチ5は、制御装置3に着脱可能に接続されるようになっており、回転筒体14を前進させるための前進ボタン5aと、回転筒体14を後退させるための後退ボタン5bと、を有して構成されている。なお、ここではフットスイッチ5を、回転筒体14の回転を制御するために用いているが、その他の用途に利用するようにしても構わない。
このようにして、回転筒体14は、操作部11の回転操作レバー38、フットスイッチ5、制御装置3の何れを用いることによっても、回転状態を操作することが可能となっている。
モニタ4は、制御装置3に着脱可能に接続されており、撮像/照明部により撮像されているモニタ画像を表示するとともに、回転筒体14の回転状態、回転筒体14の回転に要するトルクの状態、など、各種の情報も表示するようになっている。
プリンタ6は、制御装置3に着脱可能に接続されるようになっており、内視鏡2の撮像ボタン35が押圧されたときに、制御装置3の制御に基づいて、静止画像をプリントアウトするようになっている。
次に、図2を参照して、回転自走式内視鏡2における回転筒体14の駆動機構の構成に
ついて説明する。図2は、回転自走式内視鏡2における回転筒体14の駆動機構の構成を示す図である。
操作部11のモータボックス32内には、回転駆動部としてのモータ81が内蔵されている。このモータ81は、例えば、正転駆動および逆転駆動が可能なものとなっている。そして、このモータ81の単位時間当たりの回転数は、該モータ81に付随して配設された回転検出手段たる回転検出部82により検出されるようになっている。
モータ81から発生された回転駆動力は、減速機83を介して減速された後に、第1プーリ84に伝達されるようになっている。この第1プーリ84にはベルト85が掛けられており、該ベルト85はさらに第2プーリ86に掛けられている。こうして、第1プーリ84の駆動力は、ベルト85を介して第2プーリ86に伝達されるようになっている。
この第2プーリ86は、回転伝達部材87を介して回転筒体14と回動一体となるように構成されている。従って、第2プーリ86に伝達された回転駆動力により、回転筒体14が挿入部本体13の挿入軸周りに回転されるようになっている。ただし、回転されるのは回転筒体14のみであり、回転筒体14の内部に位置する挿入部本体13の内蔵物(撮像/照明部への信号線や、送気チューブ41、送水チューブ42、吸引チューブ43など)は回転の影響を受けることはない。
なお、この図2に示す例では、ベルト85およびプーリ84,86を用いて、モータ8
1の駆動力を回転筒体14へ伝達するようにしているが、例えば、図3に示すように構成
しても良い。図3は回転自走式内視鏡2における回転筒体14の駆動機構の構成の他の例を示す図である。
この図3に示す例では、モータ81から発生された回転駆動力は、減速機83を介して減速された後に、第1ギヤ84Aに伝達されるようになっている。この第1ギヤ84Aは第2ギヤ86Aに噛合しており、この第2ギヤ86Aは、回転伝達部材87を介して回転筒体14と回動一体となるように構成されている。
さらに、これら図2や図3に示したような例に限らず、その他の種々の駆動機構を用いて、モータ81の駆動力を回転筒体14へ伝達することが可能である。加えて、これら図2や図3に示したような例においては、モータ81からの駆動力を、回転筒体14の手元側端から伝達するようにしていたが、これに限らず、回転筒体14の何れか一の部分(あるいは全部)において伝達するようにすれば良い。従って、駆動力の伝達を行う一の部分は、回転筒体14の基端側であっても先端側であっても途中であっても構わない。
回転筒体14は、例えば、金属素線を螺旋状に巻回し、結果的に外周面に螺旋状凸部が形成されるようにした部材である。より具体的には、金属素線は、ステンレス等の金属でなる細長の平板である。そして、この金属素線を、長手方向に垂直な断面が略S字状をなすように形成する。その後、断面略S字状の金属素線を、隣接するピッチの辺縁同士が係合し合うように螺旋状に巻回することにより、総体として細長の管状をなす回転筒体14を形成したものである。
そして、この回転筒体14が回転すると、外周面の螺旋状凸部が被検体の体腔内壁と当接して推力が発生し、該回転筒体14自体が挿入方向へ進行しようとする。このとき、回転筒体14の先端面が、湾曲部15基端側の突当部に当接して湾曲部15および先端硬性部16を押圧し、挿入部本体13が被検体内へ挿入されるようになっている。
挿入部本体13の先端部に設けられた湾曲部15は、さらに先端側に連設される先端硬性部16を所望の方向へ向けるために、U/D(アップ/ダウン)方向、およびR/L(ライト/レフト)方向へ自在に湾曲するための部位である。
先端硬性部16には、被検体を撮像するための撮像光学系およびCCD等の撮像素子(撮像部)と、撮像される被検体を照明するための照明光学系およびLED等の光源(照明部)と、を備えた撮像/照明部が配設されている。この先端硬性部16には、さらに、光学系を洗浄するための送水ノズルと、この送水ノズルによる洗浄後の水滴を吹き飛ばすための送気ノズルと、吸引を行うための吸引口と、が配設されている。送水ノズルは送水チューブ42に、送気ノズルは送気チューブ41に、吸引口は吸引チューブ43に、それぞれ接続されている。
次に、図4を用いて、挿入補助具20内部に設けられた、進行力調整部としての抵抗力発生機構の構成について説明する。図4は、挿入補助具20内部に設けられた抵抗力発生機構の構成を説明する図であり、図4(a)は、移動板154a、154bの間隔が広くなされた状態を、図4(b)は、移動板154a、154bの間隔が狭くなされた状態を示している。
図4(a)(b)に示すように、本実施の形態における抵抗力発生機構は、回転弾性体151と、回転リング152a,152bと、ベアリング153a,153bと、移動板154a,154bと、アクチュエータ155とから構成されている。回転弾性体151は、所定の厚みを有する円盤に、その回転軸と同軸に所定の径の孔が設けられた、略ドーナツ状の形状を有している。孔の内径は回転筒体14の外径よりも大きくなされており、回転弾性体151の孔に回転筒体14が挿通されている。すなわち、回転弾性体151の回転軸は、回転筒体14の回転軸と同軸になるように配置されている。
回転リング152a,152bは、回転弾性体151と同様に、所定の厚みを有する円盤に、その回転軸と同軸に所定の径の孔が設けられた、略ドーナツ状の形状を有している。ただし、回転弾性体151は所定の力を加えられると弾性力が働いて厚みが変化するのに対し、回転リング152a,152bは剛性体であり、厚みは変化しない点が異なっている。
回転リング152a,152bに設けられた孔の内径は、回転筒体14の外形よりも大きくなされており、回転弾性体151に設けられた孔の内径とほぼ同一になされている。また、回転リング152a,152bの外径は、(回転弾性体151に外部から力が加えられない状態における)回転弾性体151の外径よりも大きくなされている。
回転リング152a,152b、及び回転弾性体151の回転軸は同軸に配置されており、回転リング152a,152bにおけるリング状の面の一面が、それぞれ回転弾性体151の先端側の面と基端側の面とに密着されている。すなわち、一対の回転リング152a,152bとで回転弾性体151を挟み込むように配置されている。従って、回転リング152a,152bの孔にも回転筒体14が挿通されている。
回転リング152a,152bは、それぞれベアリング153a,153bを介して、一対の移動板154a,154bに回動自在に組み付けられている。移動板154a,154bは、アクチュエータ155に接続されており、アクチュエータ155は、図示しない制御装置3に接続されている。すなわち、制御装置3からの制御指示に従って、アクチュエータ155が作動することにより、移動板154aと移動板154bとが回転筒体14の軸方向に移動し、移動板154aと移動板154bとの間隔が変更される。
移動板154aと移動板154bとの間隔が広くなされた状態(図4(a)に示す状態)では、回転リング152a,152bによって、回転弾性体151を圧縮する力も伸張する力も働いていない。このような状態では、回転弾性体151の孔の内径は、回転筒体14の外径よりも大きいので、回転弾性体151と回転筒体14とは接触していない。従って、回転弾性体151による接触抵抗が生じないため、回転筒体14は、回転軸方向(被検体に挿入する方向、及び、被検体から抜去る方向)に移動したり、回転軸を中心として回転したり、自由に動作することができる。
一方、制御装置3からの制御指示に従い、移動板154aと移動板154bとの間隔が狭くなされた状態(図4(b)に示す状態)では、回転リング152aと回転リング152bとの間隔も同様に狭くなされるため、回転弾性体151を回転軸方向に圧縮する力が働く。このような状態では、回転弾性体151は回転リング152a,152bに押しつぶされるため、中心に設けられた孔の内径が小さくなる。孔の内径が回転筒体14の外径以下になると、回転弾性体151と回転筒体14とが接触する。
この結果、回転筒体14は、回転弾性体151、及び、回転リング152a,152b、と一体となって動作するため、単独で自由に動作することができなくなる。回転リング152a,152bが移動板154a,154bに回動自在に組み付けられているので、回転筒体14は回転軸を中心とする回転動作は、図4(a)の状態と同様に、自由に動作することができる。しかしながら、回転リング152a,152b、及び移動板154a,154bは、回転筒体14の回転軸方向には移動しないように固定されているため、回転筒体14は、回転軸方向への移動動作は制限され、自由に動作することができなくなる。
このように、移動板154aと移動板154bとの間隔を制御することにより、回転筒体14の回転軸方向への移動を制御することができる。
次に、図5から図9を用いて、モータ81による回転筒体14の駆動制御について説明する。図5は、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの一例を、波形として示した図である。また、図6から図9は、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの別の例を、波形として示した図である。
この図5に示す例においては、正転方向(回転筒体14を被検体内へ進行させる方向)に所定の回転数で一定時間Δt1aだけモータ81を回転させ、続いて逆転方向(回転筒体14を被検体から抜去る方向)に、正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt2a(ただし、Δt2a<Δt1a)だけモータ81を回転させ、といった動作を繰り返して行う駆動パターンを示している。
回転筒体14は、上述したように、例えば、金属素線を螺旋状に巻回して構成されている。そして、回転筒体14の基端側をモータ81により一定時間Δt1aだけ正転方向に駆動すると、内部には弾性エネルギーが蓄積されると共に、先端側が一定量だけ回転する。続いて、逆転を開始し、回転筒体14の基端側をモータ81により一定時間Δt2aだけ逆転方向に駆動すると、正転時に回転筒体14内に蓄積された弾性エネルギーが開放される
その後は上述と同様に、正転、逆転、のパターンを繰り返して行う。このような繰り返しパターンでモータ81を駆動させることにより、回転筒体14に弾性エネルギーを蓄積させることなく、回転筒体14を被検体内に挿入することができる。
なお、本実施の形態においては、回転筒体14が正転、逆転を繰り返して行うようモータ81を駆動させればよく、駆動波形の形状や周期、正転と逆転との間に設ける停止時間などは自由に設定することができる。例えば、上述したような正転、逆転を単純に繰り返す駆動パターンの他に、図6〜図9に示すような駆動パターンを用いることができる。
図6に示す例においては、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1bだけモータ81を回転させた後、一定時間Δt2bだけモータ81を停止させる。続いて、逆転方向に正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt3b(Δt3b<Δt1b)だけモータ81を回転させた後、一定時間Δt4bだけモータ81を停止させる。このように、正転、停止、逆転、停止、といった動作を繰り返して行う駆動パターンを用いることもできる。
図7に示す例においては、正転を開始すると、回転数を徐々に増加させて、所定の回転数に達したところでその回転数を一定時間Δt1dだけ維持する。続いて、回転数を徐々に減少させ、回転数がゼロになったら逆転方向に回転数を徐々に増加させ、正転方向の回転数と同じ回転数に達したところでその回転数を一定時間Δt2d(ただし、Δt2d<Δt1d)だけ維持する。このように、駆動波形が台形波になるような駆動パターンを用いることもできる。
なお、回転筒体14が正転と逆転とを規則的に繰り返して行うような駆動パターンであればよく、上述した矩形波や台形波の他、駆動波形が鋸波や正弦波などの駆動パターンを用いることもできる。
図8に示す例においては、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1eだけモータ81を回転させ、続いて、逆転方向に正転方向の回転数と異なる回転数(この場合、正転方向の回転数より大きい回転数)で一定時間Δt2e(ただし、Δt2e<Δt1e)だけモータ81を回転させる。このように、正転の回転数と逆転の回転数を異なる回転数にして、正転、逆転、正転、逆転の動作を繰り返して行う駆動パターンを用いることもできる。
図9に示す例においては、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1fだけモータ81を回転させた後、逆転方向に正転方向の回転数と異なる回転数(この場合、正転方向の回転数より大きい回転数)で一定時間Δt2f(ただし、Δt2f<Δt1f)だけモータ81を回転させる。続いて、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt3f(Δt1f>Δt3f)だけモータ81を回転させた後、逆転方向に所定の回転数で一定時間Δt4f(Δt2f>Δt4f)だけモータ81を回転させる。
このように、正転時間(Δt1f、Δt3f、…)と逆転時間(Δt2f、Δt4f…)とを経過時間や回転筒体14の挿入長さなどに応じて変化させながら、正転、逆転、正転、逆転の動作を繰り返して行う駆動パターンを用いることもできる。なお、ここでは、駆動開始からの時間が長くなるにつれて、正転時間と停止時間との両方を短くするようにしているが、これに限るものではない。また、連続的に駆動周期を変更するようにしているが、段階的に変更するようにしてもよい。
次に、図4,図10を用いて、回転筒体14の駆動パターンに応じた移動板154a,154bの間隔の制御について説明する。図10(a)は、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの一例を、波形として示した図であり、図10(b)は、図10(a)の駆動パターンにおける移動板154a,154bの間隔の経時変化を示すタイムチャートである。
なお、図10(a)に示す駆動パターンは、図5に示す駆動パターンと同様、正転と逆転の回転数が等しく、一定時間の正転時間と一定時間の逆転時間を繰り返し行うパターンを示している。
回転筒体14の正転を開始し、所定の回転数で一定時間Δt1gだけモータ81を回転させている間、制御装置3によってアクチュエータ155が制御され、移動板154aと移動板154bとの間隔が広くなされる。(図4(a)に示す状態になされる)。この状態においては、回転弾性体151の孔の内径は、回転筒体14の外径よりも大きいので、回転弾性体151と回転筒体14とは接触していない。従って、回転弾性体151による接触抵抗が生じないため、回転筒体14は、回転軸方向(被検体に挿入する方向、及び、被検体から抜去る方向)に移動したり、回転軸を中心として回転したり、自由に動作することができる。
次に、逆転を開始し、回転筒体14の基端側をモータ81により一定時間Δt2gだけ逆転方向に駆動すると、この間、制御装置3によってアクチュエータ155が制御され、移動板154aと移動板154bとの間隔が狭くなされる。(図4(b)に示す状態になされる)。すると、回転リング152aと回転リング152bとの間隔も同様に狭くなされるため、回転弾性体151を回転軸方向に圧縮する力が働く。このような状態では、回転弾性体151は回転リング152a,152bに押しつぶされるため、中心に設けられた孔の内径が小さくなる。孔の内径が回転筒体14の外径以下になると、回転弾性体151と回転筒体14とが接触する。
この結果、回転筒体14は、回転弾性体151、及び、回転リング152a,152b、と一体となって動作するため、単独で自由に動作することができなくなり、回転軸方向への移動動作は制限する力が加わる。螺旋形状になされた回転筒体14により発生した逆行推進力(回転筒体14が被検体から抜去られる方向に働く推進力)を、上述の制限力が打ち消すため、逆転時における回転筒体14の後退力は小さくなる。(すなわち、逆転時には、回転筒体14が腸壁に対して空回りする。)従って、逆転時における抜去量は正転時における挿入量に比べて小さくなる。
このように、本実施の形態においては、正転と逆転とを繰り返しながら回転筒体14を被検体に挿入することで、正転時に回転筒体14に蓄積された弾性エネルギーを逆転時に開放することができるため、腸管を動かさないようにすることができる。また、挿入補助具20内部に抵抗力発生機構を設けており、逆転時には回転筒体14に加わる後退力が小さくなるようになされているため、逆転時の抜去量を小さくすることができ、効率的に回転筒体14を被検体内に挿入することができ、検査時間を短縮することができる。
また、抵抗力発生機構は、従来の挿入補助具20内部に、回転弾性体151と、回転リング152a,152bと、ベアリング153a,153bと、移動板154a,154bと、アクチュエータ155とを組み込むだけの簡単かつ単純な構成で実現できるため、単純な構造で安価に製造することができる。
更に、回転筒体14に抵抗力を与える回転弾性体151を回転リング152a,152bで挟み込む構造を用いることで、逆転時に回転筒体14が抜去られる方向に動くことを確実に防止することができ、効率的に被検体内に回転筒体14を挿入することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて、具体的に説明する。
本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、図1〜図4を用いて説明した第1の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であり、また、回転筒体14の駆動パターンに応じた移動板154a,154bの間隔の制御も、図4、図10を用いて説明した第1の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であるため、ここではモータ81による回転筒体14の駆動制御についてについてのみ説明し、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図5〜図9を用いて説明した、第1の実施の形態の回転筒体14の駆動制御では、逆転方向に回転筒体14を回転させる時間Δt2aが、正転方向に回転筒体14を回転させる時間Δt1aよりも短くなるような駆動パターンを設定している。
一方、本実施の形態の回転筒体14の駆動制御では、図11に示すように、正転方向に回転筒体14を回転させる時間Δt1hと、逆転方向に回転筒体14を回転させる時間Δt2hとが等しくなるように駆動パターンを設定する。図11は、第2の実施の形態における、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの一例を、波形として示した図である。
すなわち、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1hだけモータ81を回転させ、続いて逆転方向に、正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt2g(ただし、Δt2h=Δt1h)だけモータ81を回転させ、といった動作を繰り返して行う駆動パターンを用いて、回転筒体14を駆動させる。
正転方向に回転筒体14を回転させる時間と、逆転方向に回転筒体14を回転させる時間、及び、正転方向の回転数と逆転方向の回転数とを同じ時間に設定することで、正転を開始する時点での回転筒体14の回転量(位相)と、正転→逆転の1サイクルを終了した時点での回転筒体14の回転量(位相)とが一致する。
このように、本実施の形態においては、正転方向の回転筒体14の回転量と、逆転方向の回転筒体14の回転量とを同一に設定して回転筒体14を駆動しているので、正転→逆転を何ステップ行っても、回転筒体14の回転を開始させる初期位置からの回転量が一定量以下に抑えることができるため、回転筒体14に回転による弾性エネルギーが蓄積させることをより確実に防止することができる。
また、回転量が常に一体量以下に抑えられるため、例えば、回転筒体14にチューブや電気ケーブルなどを接続する際に、ある一定量の回転に対して耐性のあるチューブなどで直接接続することができ、スリップリングなどの複雑な構成が不要となるため、構成を簡素化することができる。
なお、本実施の形態においては、回転筒体14の正転方向の回転量と、逆転方向の回転量とが一致するようなステップを繰り返す駆動パターンを設定すればよく、駆動波形の形状や周期、間に停止時間を挿入するなど、自由に設定することができる。
従って、上述したように回転時間と回転数の両方を正転時と逆転時で一定させる他に、例えば、図12から図14に示すような駆動パターンを用いることができる。図12から図14は、第2の実施の形態における、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの別の例を、波形として示した図である。
図12に示す例においては、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1iだけモータ81を回転させ、続いて、逆転方向に正転方向の回転数と異なる回転数(この場合、正転方向の回転数より大きい回転数)で一定時間Δt2i(ただし、Δt2i<Δt1i)だけモータ81を回転させる。このとき、正転方向の回転量と逆転方向の回転量とが一致するように、逆転方向の回転数・回転時間を設定する。
このように、正転方向の回転量と逆転方向の回転量とを一致させれば、正転の回転時間と逆転の回転時間を異なる時間にし、かつ、正転の回転数と逆転の回転数を異なる回転数にして、正転、逆転、正転、逆転の動作を繰り返して行う駆動パターンを用いることもできる。
図13に示す例においては、駆動波形の1ステップを、正転→停止→正転→逆転と、複数の正逆転を組み合わせて形成しており、1ステップの中で、正転量と逆転量とが一致するように正転方向の回転数・回転時間と逆転方向の回転数・回転時間とを設定している。
すなわち、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1jだけモータ81を回転させた後、一定時間Δt2jだけモータ81を停止させる。続いて、正転方向に先の正転と同じ回転数で一定時間Δt1j´だけモータ81を回転させた後、逆転方向に正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt3j(ただし、Δt3j=Δt1j+Δt1j´)だけモータ81を回転させる。
このように駆動パターンを設定することで、駆動パターンの1ステップの中で、正転量(時間Δt1jにおける正転量と時間Δt1j´における正転量との和)と、逆転量(時間Δt3jにおける逆転量)とを一致させることができる。
図14に示す例においては、各ステップの時間を、経過時間や回転筒体14の挿入長さなどに応じて変化(図14の場合、減少)させるが、1ステップの中で、正転量と逆転量とが一致するように正転方向の回転数・回転時間と逆転方向の回転数・回転時間とを設定している。
すなわち、1ステップ目では、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt1kだけモータ81を回転させた後、逆転方向に正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt2k(ただし、Δt2k=Δt1k)でモータ81を回転させる。続く2ステップ目では、正転方向に所定の回転数で一定時間Δt3k(ただし、Δt3k<Δt1k)だけモータ81を回転させた後、逆転方向に正転方向の回転数と同じ回転数で一定時間Δt4k(ただし、Δt4k=Δt3k)でモータ81を回転させる。
このように、1ステップの中における正転量と逆転量とを一致させれば、各ステップの時間や回転量をステップ毎に変化させるような駆動パターンを用いることができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて、具体的に説明する。
本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、挿入補助具20内部に設けられた抵抗力発生機構の構成を除き、第1,第2の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であるため、ここでは抵抗力発生機構についてについてのみ説明し、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図15を用いて、挿入補助具20内部に設けられた抵抗力発生機構の構成について説明する。図15は、挿入補助具20内部に設けられた抵抗力発生機構の構成を説明する図であり、図15(a)は、ローラ301の回転軸に直交し、回転筒体14の回転軸を含む面で挿入補助具20を切断したときの切断面を示す概略図であり、図15(b)は、図15(a)の切断面を回転筒体14の回転軸周りに90度回転させた切断面を示す概略図である。
図15(a)(b)に示すように、本実施の形態における抵抗力発生機構は、1対のローラ301と、ローラ301を制動させるブレーキ機構302とから構成されている。ローラ301は、例えばシリコンゴムなどで形成されており、略円柱体の形状を有している。図15(b)に示すように、ローラ301の側面の全体には、回転軸方向に所定の間隔で所定深さの溝が形成されている。なお、各溝は、円柱体の上面端から底面端まで直線的に形成されている。
図15(a)に示すように、1対のローラ301は、互いの回転軸が並行になるように配置されている。また、1対のローラ301の間に回転筒体14が挟まれ、かつ、回転筒低14の表面と回転ローラ301の溝が形成された側面とが接触するように、回転ローラ301は配置されている。すなわち、回転ローラ301は、回転筒体14に接し、回転筒体14の回転軸方向に回転するよう配置されている(回転ローラ301の回転軸と、回転筒体14の回転軸とが直交するように配置されている)。
従って、回転筒体14は回転ローラ301によって回転動作を阻害されないが、軸方向に移動する(挿入・抜去動作を行う)場合は、回転ローラ301との間で抵抗力が発生し、動作に影響を与えるよう構成されている。
ブレーキ機構302は、例えば、回転するディスク状の部材の円盤状の対向する2つの面に、ゴムなどの弾性部材を押し当てることにより、ディスク状の部材と弾性部材との間に働く摩擦力を利用して制動力を得る、いわゆるディスクブレーキとして構成されている。このように構成することで、ディスク状部材に弾性部材を押し当てる力を調整することにより、制動力を調整することが可能となっている。ディスク状部材に弾性部材が接触しないように調整すれば、制動力をゼロとする、すなわち、ブレーキとして機能させないことも可能である。
ブレーキ機構302は、一対の回転ローラ301のそれぞれと接続されており、ブレーキ機構302で発生させた制動力は、回転ローラ301に伝わって回転動作を制御するよう構成されている。(制動力が強いほど、回転ローラ301の回転動作がしにくくなるように抵抗力が働くようになされている)。また、ブレーキ機構302は図示しない制御装置3にも接続されている。すなわち、制御装置3からの制御指示に従って、ブレーキ機構302で所定の力の制動力が発生し、その制動力が回転ローラ301に伝えられて回転動作が制御されるようになされている。
次に、図16を用いて、回転筒体14の駆動パターンとブレーキ機構302で発生させる制動力との関係について説明する。図16(a)は、モータ81により回転筒体14を駆動する駆動パターンの一例を、波形として示した図であり、図16(b)は、図16(a)の駆動パターンにおけるブレーキ機構302で発生させる制動力の経時変化を示すタイムチャートである。
なお、図16(a)に示す駆動パターンは、図11に示す駆動パターンと同様、正転と逆転の回転量及び回転時間が等しく、一定時間の正転時間と一定時間の逆転時間を繰り返し行うパターンを示している。
回転筒体14の正転を開始し、所定の回転量で一定時間Δt1lだけモータ81を回転させている間、制御装置3によってブレーキ機構302が制御され、ローラ301に制動力を加えずに自由に回転できるようになされる。この状態においては、回転筒体14はローラ301から抵抗力を受けないため、回転軸方向(被検体に挿入する方向、及び、被検体から抜去る方向)に移動したり、回転軸を中心として回転したり、自由に動作することができる。
次に、逆転を開始し、回転筒体14の基端側をモータ81により一定時間Δt2lだけ逆転方向に駆動すると、この間、制御装置3によってブレーキ機構302が制御され、ローラ301に制動力が加えられる。この状態においては、回転筒体14はローラ301から抵抗力を受けるため、回転軸方向への移動動作は制限する力が加わる。その結果、逆転時における回転筒体14の後退力は小さくなる。(すなわち、逆転時には、回転筒体14が腸壁に対して空回りする。)従って、逆転時における抜去量は正転時における挿入量に比べて小さくなる。
このように、本実施の形態においては、正転と逆転とを繰り返しながら回転筒体14を被検体に挿入することで、正転時に回転筒体14に蓄積された弾性エネルギーを逆転時に開放することができるため、腸管を動かさないようにすることができる。また、挿入補助具20内部に抵抗力発生機構を設けており、逆転時には回転筒体14に加わる後退力が小さくなるようになされているため、逆転時の抜去量を小さくすることができ、効率的に回転筒体14を被検体内に挿入することができ、検査時間を短縮することができる。
また、ローラ301とブレーキ機構302とを用いて抵抗力発生機構を構成しているため、回転筒体14に任意の抵抗力を加えることができ、逆転時における回転筒体14の抜去量を容易に調整することができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて、具体的に説明する。
本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、回転筒体14aの構成を除き、図1及び図2を用いて説明した第1〜第3の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であるため、ここでは回転筒体14aの構成についてについてのみ説明し、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、モータ81による回転筒体14aの駆動制御は、第1〜第3の実施の形態における回転筒体14の駆動制御と同一であるので、説明を省略する。
本実施の形態における回転筒体14aの構成について、図17を用いて説明する。図17は、第4の実施の形態における回転筒体14aを、回転軸を含む長手方向の切断面を示した図であり、図17(a)は、チューブ102,103が加圧されていない状態を、図17(b)は、第2チューブ103のみ加圧された状態を示している。
図17(a)に示すように、回転筒体14aは、細長で中心に空洞を有するチューブ状の可とう管101の外周に、扁平な断面を有する2つのチューブ102,103を長手方向が互いに接するように束にしたものを螺旋状に巻回して接着し、伸縮性のある被覆104で可とう管101と2つのチューブ102,103の表面を覆い、結果的に外周面に螺旋状凸部が形成されるようにした部材である。なお、一体化された2つのチューブ102,103は、隣接するピッチの辺縁同士が一定の間隔を有するように回転筒体14aに螺旋状に巻回されている。
可とう管101は、例えば、ポリウレタンなど弾性を有する素材からなる中空のチューブである。2つのチューブ102,103は、同一の略楕円形の断面形状を有する中空のチューブであり、例えば、アクリル系エラストマーなど、弾性を有し、内部の気体が外部に通過しないような気密性の高い素材からなるチューブである。被覆104は、例えばポリウレタンなどの弾性を有する素材で形成されている。このとき、2つのチューブ102,103の間に形成された被膜104の面と、可とう管101の回転軸とはほぼ並行である。
2つのチューブ102,103は、それぞれ先端側の一端が封止され、基端側は図示しない加圧手段に接続されている。加圧手段としては、例えばエアポンプを用いることができる。加圧手段と2つのチューブ102,103との接続部は後に詳述する。図示しない加圧手段は、2つのチューブ102,103をそれぞれ独立に加圧することが可能になされており、加圧されたほうのチューブは、長手方向の長さを変えずに径方向に膨らみ、結果として、断面形状が楕円形から円形に変化する(図17(b)参照)。
図17(b)に示すように、例えば加圧手段によって第2チューブ103のみが加圧されると、第2チューブ103の内部に充填されている気体(例えば空気)の圧力が上昇し、径方向に内側から外側へチューブ103を押し出す力が働くため、第2チューブ103の断面が楕円形状から円形状に変化する。一方、第1チューブ102は加圧されていないため、断面は初期状態の楕円形状を保っている。
第2チューブ103が径方向に膨らむことにより、第2チューブ103の外側を覆っている被膜104も伸張し、可とう管101からの距離が大きくなる。この結果、第1チューブ102と第2チューブ103との間に形成された被膜104の面105(以下、第1面という)は、可とう管101の回転軸に対して所定の角度θ1をもって形成される。
一方、加圧された第2チューブ103と可とう管101との間に形成された被膜104の面106(以下、第2面という)は、可とう管の回転軸に対して、角度θ1より大きな角度θ2をもって形成される。
このように、2本のチューブ102,103のうちどちらか一方のチューブが加圧されると、被膜104には、可とう管101の回転軸に対して小さな角度θ1を有する第1面105と、大きな角度θ2を有する第2面106とが形成される。
次に、2本のチューブ102,103と加圧手段との接続部について、図18を用いて具体的に説明する。図18は、チューブ102,103と加圧手段との接続部の構成を説明する図であり、図18(a)は、挿入部12のコネクタ部21と操作部11のコネクタ部110とを説明する断面図を、図18(b)は、図18(a)の状態から挿入部12のコネクタ部21と操作部11のコネクタ部110とが接続された状態を説明する断面図を示している。
図18(a)に示すように、挿入部12側のコネクタ部21は、先端側が回転筒体14aの基端に嵌着するフランジ形状をしており、後端側に略円柱状に延出している形状をしており、合成樹脂などの非導電性材から形成されている。
また、挿入部12のコネクタ部21は、後端に延出する部位の外周に周溝111,112が形成されている。そして、これら周溝111,112の両端を形成する外周部には、それぞれDLCコーティングされたOリング113が、ここでは3つ設けられている。
また、挿入部12のコネクタ部21には、先端側の面で一端がそれぞれ開口し、一方の他端が周溝111で開口する流体通路114と、他方の他端が周溝112で開口する流体通路115と、が形成されている。一方の流体通路114は、コネクタ部21の先端側面において、第1チューブ102と連通するように接続されている。また、他方の流体通路115は、コネクタ部21の先端側面において、第2チューブ103と連通するように接続されている。
さらに、ここでは図示していないが、内視鏡2の先端硬性部16に、例えば、送気ノズル、送水ノズル、吸引口が配置されている場合には、その数に対応して、流体通路、及びチューブは各種内視鏡機能に要する流体給排のために必要な数が設けられるものである。
操作部11側のコネクタ部110は、挿入部12側のコネクタ部21と着脱自在になされており、基端側から図示しない加圧装置と接続されている。
操作部11側のコネクタ部110は、先端面の略中央に、内部に向かって、挿入部12側のコネクタ部21の延出した部位と略同じ円柱形状の係合穴部116が形成されている。
また、操作部11側のコネクタ部110には、後端面で一端がそれぞれ開口し、係合穴部116の周面上で他端が穴軸方向にずれて開口する、ここでは2つのみ図示された、流体通路117,118が形成されている。これら流体通路117,118は、挿入部12側のコネクタ部21の周溝111,112の離間距離に対応して係合穴部116の穴軸方向にずれて開口している。また、操作部11側のコネクタ部110の後端面側において、流体通路117,118は、それぞれチューブ119,120を介して図示しない加圧手段と接続されている。
尚、ここでも、2つの流体通路117,118、及びチューブ119,120のみ図示しているが、挿入部12側のコネクタ部21の流体通路111,112、及びチューブ102,103の数に合わせて、これらは各種内視鏡機能に要する流体給排のために必要な数が設けられるものである。
挿入部12側のコネクタ部21と、操作部11側のコネクタ部110とが接続されると、図18(b)に示すように、係合穴部116を形成する内周面に各Oリング113が当接し、コネクタ部21の各周溝111,112が互いに気密が保持された状態となる。
そのため、コネクタ部21の流体通路114とコネクタ部110の流体通路117とが、周溝111を介して気密に連通した状態となり、また、コネクタ部21の流体通路115とコネクタ部110の流体通路118と、が周溝112を介して気密に連通した状態となる。
従って、図示しない加圧手段によって、回転筒体14aに設けられたチューブ102,103内部を加圧することができる。
次に、図19〜図21を用いて、回転筒体14aの挿入時及び抜去時における、チューブ102,103への加圧方法を説明する。図19は、挿入時に回転筒体14aが正回転している状態における、回転筒体14a挿入部位の断面図を、図20は、挿入時に回転筒体14aが逆回転している状態における、回転筒体14a挿入部位の断面図を示している。また、図21は、抜去時における回転筒体14a挿入部位の断面図を示している。
なお、各図において、回転筒体14aを被検体内に挿入する方向を、紙面右側から左側に向かう方向(図19,図20中の矢印の方向)として表記している。また、回転筒体14aを被検体から抜去る方向を、紙面左側から右側に向かう方向(図21中の矢印の方向)として表記している。また、図19〜図21は、被検体の腸内に回転筒体14aを挿入(もしくは抜去)している場合について示している。
まず、被検体内に回転筒体14aを挿入する場合について説明する。図19,図20に示すように、回転筒体14aの挿入時には、図示しない加圧手段を用いて第2チューブ103のみ加圧する。その結果、第1チューブ102と第2チューブ103との間に形成された被膜104である第1面105は、可とう管101の回転軸に対して所定の角度θ1をもって形成される。
一方、加圧された第2チューブ103と可とう管101との間に形成された被膜104である第2面106は、可とう管101の回転軸に対して、角度θ1より大きな角度θ2をもって形成される。
回転筒体14aが正回転している状態では、図19に示すように、腸壁201と第2面106とが接しながら回転筒体14aが挿入されていく。上述のように、第2面106は、可とう管101の回転軸に対して大きな角度θ2を有しているため、腸壁201との間で大きな推進力(挿入方向への力)が発生する。この推進力は、先端硬性部16が腸管などから受ける前進抵抗よりも大きくなるため、挿入方向への移動量は大きくなる。
一方、回転筒体14aが逆回転している状態では、図20に示すように、腸壁201と第1面105とが接しながら回転筒体14aが挿入されていく。上述のように、第1面105は、可とう管101の回転軸に対して小さな角度θ1を有しているため、腸壁201との間で小さな推進力(抜去方向への力)しか発生しない。その結果、逆回転時には、回転筒体14aが腸壁201に対して空回りしてしまうため、抜去方向への移動量は小さくなる。
次に、被検体内から回転筒体14aを抜去る場合について説明する。図21に示すように、回転筒体14aの抜去時には、図示しない加圧手段を用いて第1チューブ102のみ加圧する。その結果、加圧された第1チューブ102と可とう管101との間に形成された被膜104である第3面107は、可とう管101の回転軸に対して、所定の角度θ3をもって形成される。
一方、第1チューブ102と第2チューブ103との間に形成された被膜104である第4面108は、可とう管101の回転軸に対して、角度θ3より小さな角度θ4をもって形成される。
回転筒体14aが抜去方向に正回転している状態(挿入時における逆回転の状態)では、図21に示すように、腸壁201と第3面107とが接しながら回転筒体14aが抜去られていく。上述のように、第3面106は、可とう管101の回転軸に対して大きな角度θ3を有しているため、腸壁201との間で大きな推進力(抜去方向への力)が発生する。その結果、抜去方向への移動量は大きくなる。
また、回転筒体14aが抜去方向に逆回転している状態(挿入時における正回転の状態)では、腸壁201と第4面108とが接しながら回転筒体14aが抜去られていく。上述のように、第4面105は、可とう管101の回転軸に対して小さな角度θ4を有しているため、腸壁201との間で小さな推進力(挿入方向への力)しか発生しない。その結果、回転筒体14aが腸壁201に対して空回りしてしまうため、挿入方向への移動量は小さくなる。
従って、挿入時・抜去時のいずれにおいても、回転筒体14aを所望の方向に効率よく挿入、もしくは抜去ることが可能となる。
このように、本実施の形態においては、逆行方向への推進力が進行方向への推進力よりも小さくなるような回転筒体14aを用いているので、回転筒体14aにかかる回転軸方向の力が被検体から受ける推進力のみになり、回転筒体14aにかかる回転軸方向の圧縮力を小さくすることができ、より柔軟な回転筒体14aを用いることができる。
また、可とう管101の外周に、加圧手段に接続された2本のチューブ102,103を巻回して回転筒体14aを構成し、回転筒体14aを進行させたい方向に応じてチューブ102,103のどちらか1本のみに加圧手段を用いてチューブの断面形状を変化させ、回転筒体14aの回転軸に対して角度の異なる2つの面を形成させる抵抗力発生機構を用いることで、回転方向の抵抗を大きくすることなく軸方向の推進力のみを調整することが可能となる。
更に、回転筒体14aに形成する2つの面と回転軸との角度を変更する手段を備えているため、抜去時にも挿入時と同様に、回転筒体14aを正転と逆転をと切り替えながら回転筒体14aを抜去ることで、腸管を動かさないようにし、かつ、効率よく回転筒体14aを被検体から抜去ることができる。
また、回転筒体14aに形成する2つの面と回転軸との角度を変更する手段として、加圧手段と2本のチューブ102,103を用いているので、回転筒体14aに形成する2つの面の角度を、回転筒体14aの螺旋の全長にわたって均一に調整することができる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて、具体的に説明する。
本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、回転筒体14bの構成を除き、図1及び図2を用いて説明した第1〜第3の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であるため、ここでは回転筒体14bの構成についてについてのみ説明し、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、モータ81による回転筒体14bの駆動制御は、第1〜第3の実施の形態における回転筒体14の駆動制御と同一であるので、説明を省略する。
本実施の形態における回転筒体14bの構成について、図22を用いて説明する。図22は、第5の実施の形態における回転筒体14bを、回転軸を含む長手方向の断面図である。
図22に示すように、回転筒体14bは、細長で中心に空洞を有するチューブ状の可とう管251の外周に、回転軸方向に所定の範囲だけ摺動可能に螺旋体252を組み付け、伸縮性のある被覆253で可とう管251と螺旋体252の表面を覆い、結果的に外周面に螺旋状凸部が形成されるようにした部材である。
可とう管251は、例えば、ポリウレタンなど弾性を有する素材からなる中空のチューブである。螺旋体252は、例えば長方形の断面を有するSUS製素線を、可とう管251の外径よりもわずかに大きな内径を有し、かつ、隣接するピッチの辺縁同士が一定の間隔を有するように、螺旋状に巻回したコイルとして構成することができる。
被覆253は、例えばポリウレタンなどの弾性を有する素材で形成されている。螺旋体252の摺動範囲を除き、被覆253は可とう管251に接着されている。また、被覆253と螺旋体252も接触する面は接着されている。従って、可とう管251、螺旋体252、被覆253は、一体となって回転軸の周りを回転動作する。
螺旋体252の基端側の端部には、リング254が設けられており、更に、リング254はアクチュエータ255に接続されている。リング254は、例えばSUS製でDLCコーティングを施すことにより摩擦係数が小さくなされており、回転筒体14bに対してその回転軸方向に容易に滑るよう構成されている。
また、リング254はアクチュエータ255によって、回転筒体14bの回転軸方向に駆動される。螺旋体252は回転軸方向に十分な耐圧縮力を有しており、アクチュエータ255によってリング254が駆動されると、リング254が接続されている螺旋体252の一端から他端まで駆動力が伝達され、その全長にわたって可とう管251に対して摺動する。
次に、図23〜図25を用いて、挿入時及び抜去時における回転筒体14bの制御について説明する。図23は、挿入時に回転筒体14bが正回転している状態における、回転筒体14b挿入部位の断面図を、図24は、挿入時に回転筒体14bが逆回転している状態における、回転筒体14b挿入部位の断面図を示している。また、図25は、抜去時における回転筒体14b挿入部位の断面図を示している。
なお、各図において、回転筒体14bを被検体内に挿入する方向を、紙面右側から左側に向かう方向(図23,図24中の矢印の方向)として表記している。また、回転筒体14bを被検体から抜去る方向を、紙面左側から右側に向かう方向(図25中の矢印の方向)として表記している。また、図23〜図25は、被検体の腸内に回転筒体14bを挿入(もしくは抜去)している場合について示している。
まず、被検体内に回転筒体14bを挿入する場合について説明する。図23,図24に示すように、回転筒体14bの挿入時には、アクチュエータ255によってリング254を基端側に滑らせ、螺旋体252をその全長にわたって基端側(紙面左側から右側に向かう方向)に摺動させる。その結果、螺旋体252を形成する素線の先端側に接していた被覆253が抜去方向に引っ張られ、可とう管251の回転軸に対して所定の角度θ1´をもった第1´面351が形成される。
一方、螺旋体252を形成する素線の基端側に接していた被膜253は、螺旋体252の摺動によって撓み、可とう管251の回転軸に対してほぼ垂直な角度θ2´をもった第2´面352が形成される。
回転筒体14bが正回転している状態では、図23に示すように、腸壁353と第2´面352とが接しながら回転筒体14bが挿入されていく。上述のように、第2´面352は、可とう管251の回転軸に対してほぼ垂直な角度θ2´を有しているため、腸壁353との間で大きな推進力(挿入方向への力)が発生する。この推進力は、先端硬性部16が腸管などから受ける前進抵抗よりも大きくなるため、挿入方向への移動量は大きくなる。
一方、回転筒体14bが逆回転している状態では、図24に示すように、腸壁353と第1´面351とが接しながら回転筒体14bが挿入されていく。上述のように、第1´面351は、可とう管251の回転軸に対して小さな角度θ1´を有しているため、腸壁351との間で小さな推進力(抜去方向への力)しか発生しない。その結果、逆回転時には、回転筒体14bが腸壁353に対して空回りしてしまうため、抜去方向への移動量は小さくなる。
次に、被検体内から回転筒体14bを抜去る場合について説明する。図25に示すように、回転筒体14bの抜去時には、アクチュエータ255によってリング254を先端側に滑らせ、螺旋体252をその全長にわたって先端側(紙面右側から左側に向かう方向)に摺動させる。その結果、螺旋体252を形成する素線の先端側に接していた被膜253は、螺旋体252の摺動によって撓み、可とう管251の回転軸に対してほぼ垂直な角度θ3´をもった第3´面354が形成される。
一方、螺旋体252を形成する素線の基端側に接していた被覆253は挿入方向に引っ張られ、可とう管251の回転軸に対して所定の角度θ4´をもった第4´面355が形成される。
回転筒体14bが抜去方向に正回転している状態(挿入時における逆回転の状態)では、図25に示すように、腸壁353と第3面354とが接しながら回転筒体14bが抜去られていく。上述のように、第3面354は、可とう管251の回転軸に対して大きな角度θ3´を有しているため、腸壁353との間で大きな推進力(抜去方向への力)が発生する。その結果、抜去方向への移動量は大きくなる。
また、回転筒体14bが抜去方向に逆回転している状態(挿入時における正回転の状態)では、腸壁353と第4面355とが接しながら回転筒体14bが抜去られていく。上述のように、第4面355は、可とう管251の回転軸に対して小さな角度θ4´を有しているため、腸壁353との間で小さな推進力(挿入方向への力)しか発生しない。その結果、回転筒体14bが腸壁353に対して空回りしてしまうため、挿入方向への移動量は小さくなる。
従って、挿入時・抜去時のいずれにおいても、回転筒体14bを所望の方向に効率よく挿入、もしくは抜去ることが可能となる。
このように、本実施の形態においては、可とう管351の外周に螺旋体352を巻回して全体を被覆353で覆って回転筒体14bを形成し、螺旋体352を回転軸方向に摺動させることで被覆353と回転軸との間に角度の異なる2つの面を形成しているので、螺旋体352を摺動させる位置を調整することでこれらの角度を簡単に調整することができる。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて、具体的に説明する。
本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、回転筒体14cの構成を除き、図1及び図2を用いて説明した第1〜第3の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様であるため、ここでは回転筒体14cの構成についてについてのみ説明し、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、モータ81による回転筒体14cの駆動制御は、第1〜第3の実施の形態における回転筒体14の駆動制御と同一であるので、説明を省略する。
本実施の形態における回転筒体14cの構成について、図26,図27を用いて説明する。図26は、第6の実施の形態における回転筒体14cを、回転軸を含む長手方向の断面図である。また、図27は、螺旋体401を構成する素線の断面図である。図27は、図26において丸Aで囲んだ部分の螺旋体401を拡大している。
図26に示すように、回転筒体14cは、例えば断面形状が略円形のSUS製の素線を、隣接するピッチの辺縁同士が一定の間隔を有するように、螺旋状に巻回したコイル状の螺旋体401で構成される。
図27に示すように、螺旋体401を構成する素線の周囲の一部、詳しくは、回転筒体14cの中心軸に対して外周側であり、かつ、基端側に位置する1/4周程度の部位は、例えばサンドブラストなどによって表面に細かい凹凸形状が施されている。従って、螺旋体401には、表面が滑らかであり摩擦係数が小さい面402(以下、第1″面と示す)と、表面に細かい凹凸形状が施されており摩擦係数が大きい面403(以下、第2″面と示す)の2つの摩擦係数が異なる面が形成されている。
次に、図26を用いて挿入時における回転筒体14cの動作について説明する。なお、図26において、回転筒体14cを被検体内に挿入する方向を、紙面右側から左側に向かう方向として表記している。また、図26は、被検体の腸内に回転筒体14cを挿入している場合について示している。
まず、被検体内に回転筒体14cを挿入する場合について説明する。図26に示すように、回転筒体14cの挿入時には、腸壁404と第2″面403とが接しながら回転筒体14cが挿入されていく。上述のように、第2″面403は摩擦係数が大きいため、腸壁404との間で大きな推進力(挿入方向への力)が発生する。この推進力は、先端硬性部16が腸管などから受ける前進抵抗よりも大きくなるため、挿入方向への移動量は大きくなる。
一方、回転筒体14cが逆回転している状態では、腸壁404と第1″面402とが接しながら回転筒体14cが挿入されていく。上述のように、第1″面402は、摩擦係数が小さいため、腸壁404との間で小さな推進力(抜去方向への力)しか発生しない。その結果、逆回転時には、回転筒体14cが腸壁404に対して空回りしてしまうため、抜去方向への移動量は小さくなる。従って、回転筒体14cを腸管内に効率よく挿入することが可能となる。
このように、本実施の形態においては、軸対称の断面形状(例えば、円形断面)を有する素線を巻回し、所定の一部の面に摩擦係数を異ならせるための加工を施すことで、摩擦係数の異なる2つの面を有する螺旋体401で回転筒体14cを構成しているので、螺旋体401を簡単に形成することができ、安価に回転筒体14cを形成することができる。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態に係わる回転自走式内視鏡システムについて説明する。本実施の形態における回転自走式内視鏡システムの構成は、回転筒体14aの構成を除き、図1,図2,及び図15を用いて説明した第3の実施の形態の回転自走式内視鏡システムと同様である。また、回転筒体14aの構成は、図17を用いて説明した第4の実施の形態の回転筐体14aと同様である。更に、モータ81による回転筒体14aの駆動制御(駆動パターン)は、第1〜第3の実施の形態における回転筒体14の駆動制御と同一である。
すなわち、本実施の形態の回転自走式内視鏡システムは、第3の実施の形態の抵抗力発生機構と、第4の実施の形態の回転筒体14aとを組み合わせたものである。従って、回転筒体14aを挿入する際に、正転時には、回転筒体14aはローラ301から制動力を受けないために回転軸方向に自由に移動することができ、かつ、回転筒体14aの中心軸に対して角度の大きい第2面106が被検体と接触することにより、挿入方向に推進力を得る。これにより、回転筒体14aは確実に挿入方向に移動することができる。
一方、回転筒体14aの逆転時には、回転筒体14aにはローラ301から回転軸方向に動かないよう制動力を受けて、かつ、回転筒体14aの中心軸に対して角度の小さい第1面105が被検体と接触することにより、小さな推進力しか得られないため、抜去方向への移動量がより低減される。
すなわち、上述した第1〜第3の実施の形態に示した抵抗力発生機構と、第4〜第6の実施の形態に示した回転筒体14a〜14cとを組み合わせることにより、より確実に逆転時の抜去方向への回転筒体14の移動を抑制することができ、挿入効率が向上して検査時間をより短縮することができる。
なお、上述した第4〜第6の実施の形態に示した回転筒体14a〜14cは、例えば特開昭63−201563に開示されているような、回転筒体14に対する回転供給装置を備えた回転自走式内視鏡システムにも使用することができる。
回転供給装置を備える場合、装置のばらつきなどによって、回転筒体14がネジ効果により挿入方向に移動する速度と、回転供給装置が回転筒体14を送り出す速度とが一致しない場合がある。回転供給装置が回転筒体14を送り出す速度のほうが速い場合、回転筒体14は被検体内、及び回転供給装置から力が加えられるため、座屈などに繋がる恐れがある。
このような状況を回避するために、回転供給装置による送り出し速度を意図的に遅くする方法もあるが、挿入効率が悪くなり、検査時間が長くなってしまう。しかしながら、上述した第4〜第6の実施の形態に示した回転筒体14a〜14cを用いる場合、回転供給装置と回転筒体14a〜14c自身の移動速度とが一致しない場合でも、挿入効率を損ねることなく、検査時間を短縮することができる。
すなわち、回転供給装置による送り出し速度のほうが速い場合は、回転筒体14a〜14cに設けられた、回転軸とのなす角が小さい面(第1面105、第1´面351、第1″面402)と被検体とが接触するため、その抵抗力が小さくなる。
一方、回転供給装置による送り出し速度のほうが遅い場合は、回転筒体14a〜14cに設けられた、回転軸とのなす角が大きい面(第2面106、第2´面352、第2″面403)と被検体とが接触するため、挿入方向に大きな推進力を得ることができる。従って、回転供給装置による送り出し速度を遅くすることなく、座屈などが防止でき、挿入効率を損ねることなく、検査時間を短縮することができる。
以上の実施の形態から、次の付記項に記載の点に特徴がある。
(付記項1)挿入部に設けられ、外周側の少なくとも一部に螺旋が設けられた回転筒体と、前記回転筒体を前記挿入部の軸周りに回転させるための回転駆動手段と、を備える回転自走式内視鏡システムにおいて、前記回転筒体を正回転と逆回転とを交互に行うよう前記回転駆動手段を制御する制御手段と、正回転時の前進力よりも逆回転時の後退力を小さくする抑制手段と、を備えることを特徴とする回転自走式内視鏡システム。
(付記項2)前記制御手段が、正回転量と逆回転量とが同一であるステップを繰り返すよう前記回転駆動手段を制御することを特徴とする、付記項1に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項3)前記抑制手段が、逆回転時の逆行推進力に抵抗する力を発生する抵抗力発生手段で構成されることを特徴とする、付記項1に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項4)前記抵抗力発生手段が、前記回転筒体に着脱可能な回転板と、前記回転板が軸方向へ移動しないように保持する保持手段と、で構成されることを特徴とする、付記項3に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項5)前記抵抗力発生手段が、前記回転筒体に接し、前記回転筒体の軸方向に回転するローラと、前記ローラに回転抵抗を加える回転抵抗手段と、で構成されることを特徴とする、付記項3に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項6)前記抑制手段が、前記回転筒体に設けられ、正回転時にある進行推進力を発生する第1の面と、逆回転時に前記進行推進力よりも小さい逆行推進力を発生する第2の面と、で構成させることを特徴とする、付記項1に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項7)前記第1の面及び前記第2の面が、挿入軸に対して互いに傾斜が異なることを特徴とする、付記項6に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項8)前記回転筒体が、前記挿入部の進行方向に応じて、前記第1の面の傾斜と前記第2の面の傾斜の少なくとも一方を能動的に変更する変更手段を有することを特徴とする、付記項7に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項9)前記変更手段が、前記挿入部に設けられ、螺旋の少なくとも一部を構成する少なくとも一対の弾性管と、前記弾性管に接続され、前記弾性管を加圧するための加圧手段と、で構成されることを特徴とする、付記項8に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項10)前記変更手段が、前記挿入部の少なくとも一部を構成する可とう管と、前記可とう管の少なくとも一部に設けられ、前記可とう管に対して軸方向に摺動可能な螺旋部材と、前記螺旋部材を前記可とう管に対して摺動させる駆動手段と、前記螺旋部材及び前記可とう管の外周に施された弾性被覆と、で構成されることを特徴とする、付記項8に記載の回転自走式内視鏡システム。
(付記項11)前記第1の面及び前記第2の面が、被挿入物に対して互いに異なる摩擦抵抗を有することを特徴とする、付記項6に記載の回転自走式内視鏡システム。
1…回転自走式内視鏡システム、2…回転自走式内視鏡、3…制御装置、4…モニタ、5…フットスイッチ、5a…前進ボタン、5b…後退ボタン、6…プリンタ、7…吸引器、7a…吸引器側吸引チューブ、11…操作部、12…挿入部、13…挿入部本体、14,14a,14b,14c…回転筒体、15…湾曲部、16…先端硬性部、17…収納ケース、17a…脚部、18…操作部側案内管、19…先端側案内管、20…挿入補助具、21…コネクタ部、31…グリップ部31、31a…頭部、32…モータボックス、33…送気/送水ボタン、34…吸引ボタン、35…撮像ボタン、36…U/D用湾曲ノブ、37…R/L用湾曲ノブ、38…回転操作レバー、39…電気ケーブル、39a…コネクタ、41…送気チューブ、42…送水チューブ、43…吸引チューブ、44,45…コネクタ、46…送気中継チューブ、47…送水中継チューブ、48…吸引中継チューブ、49…送気送水口金、51…仮固定具、52…送気送水コネクタ、53…送水タンク、54…送水管、61…電源スイッチ、62…LED、63…フロントパネル、65…挿入部側吸引接続部保持部材、66…挿入部側吸引接続部、67…送気送水コネクタ接続部、68…挿入部側吸引チューブ、69…ピンチバルブ、71…分岐部、72…リーク側チューブ、73…接続部、75…係止部、81…モータ、82…回転検出部、83…減速機、84…第1プーリ、84A…第1ギヤ、85…ベルト、86…第2プーリ、86A…第2ギヤ、87…回転伝達部材、101…可とう管、102,103…チューブ、104…被覆、105…第1面、106…第2面、110…コネクタ部、111,112…周溝、113…Oリング、114,115,117,118…流体通路、116…係合穴部、119,120…チューブ、151…回転弾性体、152a,152b…回転リング、153a,153b…ベアリング、154a,154b…移動板、155…アクチュエータ、201…腸壁、251…可とう管、252…螺旋体、253…被覆、254…リング、255…アクチュエータ、301…ローラ、302…ブレーキ機構、351…第1´面、352…第2´面、353…腸壁、354…第3面、355…第4面、401…螺旋体、402…第1″面、403…第2″面、404…腸壁、